(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置
(51)【国際特許分類】
B26F 3/00 20060101AFI20240627BHJP
B05B 3/02 20060101ALI20240627BHJP
B05B 1/18 20060101ALI20240627BHJP
E01C 23/085 20060101ALI20240627BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20240627BHJP
B23P 17/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B26F3/00 H
B05B3/02 G
B05B1/18
E01C23/085
E04G23/08 E
B26F3/00 L
B23P17/00 A
(21)【出願番号】P 2023040391
(22)【出願日】2023-03-15
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593162291
【氏名又は名称】株式会社フタミ
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 竜一
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-329495(JP,A)
【文献】特開平06-182266(JP,A)
【文献】特開2022-062481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 3/00
B05B 3/02
B05B 1/18
E01C 23/085
E04G 23/08
B23P 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される高圧水を連通させると共に回転可能に構成された回転軸と、前記回転軸を回転させるための回転手段とを備える表面処理装置における前記回転軸に取付けられるウォータージェットノズルであって、
基台部と、
前記基台部と一体成型されて、前記基台部から三方向に放射状に伸びて
いる三つの横方向通水部と、
前記回転軸に連結され、前記回転軸から供給される前記高圧水を縦方向に通水するための縦方向通水路を有する
縦方向通水部とを備え、
前記三つの横方向通水部は、内部に、それぞれ、横方向通水路を有すると共に、各前記横方向通水路に連通する複数の噴射ノズルを有しており、
前記縦方向通水部は、三つの前記横方向通水路と前記縦方向通水路とを連通させるために、横方向に穿孔された三つの通水路を有しており、
三つの
前記横方向通水路は、その先端とは逆の前記基台部の側面側から穿孔された水路であり、
穿孔の際に開けられた前記基台部側の孔は、封止手段によって封止されていることを特徴とする、ウォータージェットノズル。
【請求項2】
前記三つの横方向通水路と前記三つの通水路とが合うように、前記縦方向通水部を位置決めするための位置決め部を備えることを特徴とする、請求項1に記載のウォータージェットノズル。
【請求項3】
前記回転中心から各前記噴射ノズルの距離が異なっていることを特徴とする、請求項1に記載のウォータージェットノズル。
【請求項4】
前記複数の噴射ノズルを保護するためのノズル保護部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載のウォータージェットノズル。
【請求項5】
隣り合う二つの前記横方向通水路の間隔は、120度±10度であることを特徴とする、請求項1に記載のウォータージェットノズル。
【請求項6】
隣り合う二つの前記横方向通水路の間隔は、120度であることを特徴とする、請求項5に記載のウォータージェットノズル。
【請求項7】
供給される高圧水を連通させると共に回転可能に構成された回転軸と、
前記回転軸を回転させるための回転手段と、
前記回転軸に取付けられて回転可能なウォータージェットノズルとを備え、
ウォータージェットノズルは、請求項1に記載の構造を有することを特徴とする、表面処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表面処理装置を用いて、路面表面を処理することを特徴とする、表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向に複数の噴射ノズルを配置しており、回転させて使用されるウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横方向に複数の噴射ノズルを配置した横長の一文字型の給水管によるウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置として、特許文献1及び2に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1では、横方向に複数のノズル(3)及び(3′)を配置した給水管(2)がウォータージェットノズルとなる(括弧内の符号は、特許文献1における符号を意味する。以下同様。)。特許文献1では、給水管(2)の中心部が、ロータリージョイントを介してハウジング(1)に回転自在に保持されている。回転駆動手段(4)がロータリージョイントの回転軸を回転させることで、給水管(2)が回転するように構成されている。別途の高圧水発生手段からの高圧水をノズル(3)から路面等の表面に噴射することで、剥離、はつり作業を行うことができる。給水管(2)の回転中心(P)を中心に、左右に、ノズル(3)及びノズル(3′)が一列に配置されており、各ノズル(3)の中心からの半径と、各ノズル(3′)の中心からの半径とは、異なるようなっている。さらに、特許文献1の
図5に示されているように、一側面視において、各ノズル(3)及び各ノズル(3′)は、回転軸心方向に対して、それぞれ異なる方向に、10度ないし30度の角度(α1)及び(α2)だけ傾斜するように配置されている。
【0004】
特許文献1では、給水管(2)の回転中心(P)からの左右の各ノズル(3)及び各ノズル(3′)の距離を異ならせることで、回転によって得られる同心円の半径が異なることとなるので、高圧水の噴射を密な状態とすることが可能となる。また、各ノズル(3)及び各ノズル(3′)を、一側面視において、回転軸心に対して傾斜させることで、回転方向に対して、常に斜め方向に、高圧水を噴射させることが可能となる。これにより、表面処理(例えば、路面の剥離や洗浄など)の効率を高めることが可能となる。
【0005】
特許文献2に記載のウォータージェットノズル(14)は、供給される高圧水を連通させると共に回転可能に構成された回転軸(7b)を有するロータリージョイント(7)と、回転軸(7b)を回転させるためのエアモータ(8)とを備える表面処理装置20の回転軸7bに取付けられる。ウォータージェットノズル(14)は、回転軸(7b)から供給される高圧水を通すための横長の給水路(14c)と、給水路(14c)と連通して、底面で横長方向に配置された複数の噴射ノズル(14d)とを含む。横長の給水路側を正面とした場合の正面視において、回転軸心に対して、右側の噴射ノズル(14d)は、外側に傾斜しており、左側の噴射ノズル(14d)も、外側に傾斜している。このような構成により、端部や中心部分などに、表面処理残しが生じないようにすることができる。
【0006】
特許文献1及び2に記載のように、従来、一般的に、ウォータージェットノズルは、一文字型である場合が多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4131060号公報
【文献】特開2022-62481号公報
【文献】特許第4510502号公報 段落0043
【文献】特開2004-243460号公報
図13,段落0042
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図13は、従来のウォータージェットノズルによる路面の表面処理の施工結果の一例を示す写真である。
図13に示すように、従来の一文字型のウォータージェットノズルの場合、回転の中心部などで、表面処理残しが生じてしまうことがあった。
【0009】
それゆえ、本発明は、ウォータージェットによる路面など表面処理において、表面処理残しが生じないようにすることができるウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
なお、特許文献3には、「隣接するノズルホルダ(53)間の角度は90度、ノズルホルダ(53)の数は4つとなる。なお、隣接するノズルホルダ(53)間の角度は90度以下であっても良いが、ウォータージェットノズル(27)の回転が安定するよう、全ての角度が均一になるよう設定する。」との記載がある。しかし、上記課題を解決するために、本発明は、回転中心から複数の噴射ノズルが三方向に放射状に配置する構造となっているので、噴射ノズルを取り付ける横方向通水部の間隔は90度よりも大きくなっている。したがって、特許文献3からは、本発明を容易に発明することはできない。
【0011】
なお、特許文献4には、「円板状のノズル取付台(10)の同心円上に3組の噴射ノズル(13、14、15)を等配に設けて噴射ノズル群(12)とするとともに、ノズル取付台(10)を回転軸(11)を介して駆動源(図示せず)に連結し、駆動源の作動時に回転軸(11)及びノズル取付台(10)を介して噴射ノズル(13、14、15)を回転させるように構成したものである。この場合、噴射ノズル群(12)の各噴射ノズル(13、14、15)のノズル径(a、b、c)は、ノズル取付台(10)の回転方向前方側に位置するものから後方側に位置するものにかけて順次大きくなるように設定されている。すなわち、ノズル取付台(10)の回転方向前方側に位置する噴射ノズル(13)のノズル径を(a)、それに続く噴射ノズル(14)のノズル径を(b)、それに続くノズル取付台(10)の回転方向後方側に位置する噴射ノズル(15)のノズル径を(c)としたときに、a<b<cの関係が成り立つように、各噴射ノズル(13、14、15)のノズル径(a、b、c)を設定している。」との記載がある。しかし、特許文献4には、噴射ノズルを取り付ける横方向通水部は存在しない。したがって、特許文献4からは、本発明を容易に発明することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の特徴を有する。
本発明は、供給される高圧水を連通させると共に回転可能に構成された回転軸と、回転軸を回転させるための回転手段とを備える表面処理装置における回転軸に取付けられるウォータージェットノズルであって、回転軸から供給される高圧水を、回転中心から三方向に放射状に通水させるための三つの横方向通水路と、三つの横方向通水路に連通する複数の噴射ノズルとを備える。
【0013】
好ましくは、回転軸に連結され、回転軸から供給される高圧水を縦方向に通水するための縦方向通水路を有する縦方向通水部を備えるとよい。
このとき、縦方向通水部は、三つの横方向通水路と縦方向通水路とを連通させるために、横方向に穿孔された三つの通水路を有するとよい。
【0014】
好ましくは、三つの横方向通水路と三つの通水路とが合うように、縦方向通水部を位置決めするための位置決め部を備えるとよい。
【0015】
好ましくは、三つの横方向通水路を内部に有するための基台部と三つの横方向通水部とを備えるとよい。
【0016】
好ましくは、基台部の側面から三つの横方向通水部に向けて、三つの穴を形成することで、三つの横方向通水路が形成されており、基台部の側面部分が封止手段で塞がれているとよい。
【0017】
好ましくは、回転中心から各噴射ノズルの距離が異なっているとよい。
【0018】
好ましくは、複数の噴射ノズルを保護するためのノズル保護部をさらに備えるとよい。
【0019】
好ましくは、隣り合う二つの横方向通水路の間隔は、120度±10度であるとよい。
【0020】
好ましくは、隣り合う二つの横方向通水路の間隔は、120度であるとよい。
【0021】
好ましくは、隣り合う二つの横方向通水部の間隔は、120度±10度であるとよい。
【0022】
好ましくは、隣接する二つの横方向通水部の間隔は、120度であるとよい。
【0023】
また、本発明は、供給される高圧水を連通させると共に回転可能に構成された回転軸と、回転軸を回転させるための回転手段と、回転軸に取付けられて回転可能なウォータージェットノズルとを備え、ウォータージェットノズルは、上記のいずれかに記載の構造を有する。
【0024】
また、本発明は、上記に記載の表面処理装置を用いて、路面表面を処理することを特徴とする、表面処理方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、回転中心から三方向に放射状に三つの横方向通水路が形成されているため、バランスが良く、ウォータージェットノズルを安定して回転させることができる。ウォータージェットノズルと回転軸との接続部分への負荷を軽減でき、ウォータージェットノズルの回転数を上げることができる。回転数を上げることで、路面などの表面処理の処理残しが生じないようにできる。
【0026】
縦方向通水部を用いる構造を採用することで、回転軸との接続を確実ならしめることができ、ウォータージェットノズルを安定的に回転させることが可能となる。
また、縦方向通水部に三方向に分かれる通水路を用いることで、縦方向通水路から三つの横方向通水路への連通を簡潔な構造で実現できる。
【0027】
位置決め部を用いれば、縦方向通水路から三つの横方向通水路への連通を確実ならしめることができる。
【0028】
基台部と三つの横方向通水部とを用いれば、横方向通水路を実現し易くなる。
【0029】
基台部の側面から三つの横方向通水部に向けて、三つの穴を形成した上で、基台部の側面部分を封止手段で塞げば、シンプルな製造工程での横方向通水路の製造加工が可能となる。
【0030】
回転中心から各噴射ノズルの距離を異ならせることで、噴射ノズルの描く軌跡が同心円状となる。これにより、全体にまんべんなく表面処理が可能となり、仕上がりが綺麗になる。
【0031】
ノズル保護部を用いれば、礫の衝突による噴射ノズルの劣化を防止できる。
【0032】
隣り合う二つの横方向通水路又は横方向通水部の間隔を120度±10度とするか、120度とすることで、ウォータージェットノズルの回転を安定させることが可能となる。
【0033】
このようなウォータージェットノズルを用いた表面処理装置及び表面処理方法によって、処理残しを防止できることになる。
【0034】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における表面処理装置20の概略構成を示す正面である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における表面処理装置20の概略構成を示す左側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における表面処理装置20の概略構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態におけるウォータージェットノズル14の平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態におけるウォータージェットノズル14の底面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の一実施形態におけるウォータージェットノズル14の左側面図である。
図6(b)は、ウォータージェットノズル14における高圧水の流れを示す図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の一実施形態におけるウォータージェットノズル14における
図5のA-A線での一部断面図である。
図7(b)は、ウォータージェットノズル14の横方向通水部14dの右側面図である。
【
図8】
図8は、一実施例におけるウォータージェットノズル14の分解写真である。
【
図9】
図9は、一実施例におけるウォータージェットノズル14の平面写真である。なお、噴射ノズル16は取り付けられていない状態である。
【
図10】
図10は、一実施例におけるウォータージェットノズル14の斜視写真である。
【
図11】
図11は、一実施例におけるウォータージェットノズル14を表面処理装置20に取り付け、高圧水を噴射している状態を示す写真である。
【
図12】
図12は、一実施例におけるウォータージェットノズル14を用いて表面処理したときの施工後の写真である。
【
図13】
図13は、従来の一文字型のウォータージェットノズルを用いて、施工したときの表面処理残りを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(ウォータージェットによる表面処理装置20の全体構成)
図1ないし
図3を参照しながら、ウォータージェットによる表面処理装置20の全体構成について説明する。
【0037】
表面処理装置20は、架台1と、自在車輪2と、固定車輪3と、ハンドル4と、高さ調整ハンドル5と、2つのロックハンドル6と、ロータリージョイント7と、エアモータ8と、筐体9と、カバー10と、連結部11と、ウォータージェットノズル14と、バキューム接続口15とを備える。
【0038】
架台1の前輪は、固定車輪3である。架台1の後輪は、自在車輪2である。ただし、これは、一例であり、両方が自在車輪でもよいし、両方が固定車輪でもよい。架台1には、ハンドル4が取付けられており、使用者は、ハンドル4を持って、表面処理装置20を施工したい場所に移動させることができる。
【0039】
架台1には、4つの連結部11が取付けられている。各連結部11には、L字状金具11aが取付けられている。L字状金具11aに、板状部材を介して、カバー10が取付けられている。このようにして、架台1に、カバー10が取付けられる構造となっている。言うまでもないが、カバー10を架台1に取付ける構造は一例に過ぎず、本発明においては、いかなる取付け構造も採用し得る。
【0040】
カバー10の上部には、2本の支柱6aが取付けられている。筐体9は、ロックハンドル6を介して、支柱6aに上下可能に取付けられる。筐体9は、高さ調整ハンドル5と連結する固定部5cと連結している。高さ調整ハンドル5は、ねじ棒5aと連結している。高さ調整ハンドル5を回転させると、ねじ棒5aが回転し、左右の支柱5bに沿って、固定部5cが上下して、筐体9が上下する構造となっている。高さが調整された後、ロックハンドル6を閉じて、筐体9の高さを固定する。なお、筐体9を上下させるための構造はあくまでも一例に過ぎず、本発明においては、いかなる高さ調整構造も採用し得る。
【0041】
筐体9の上部には、ロータリージョイント7が取付けられている。ロータリージョイント7は、高圧水供給口7aから供給される高圧水を連通する自在継手になっている。ロータリージョイント7は、回転軸7bを有しており、回転軸7bの内部を高圧水が連通する構造となっている。なお、ロータリージョイント7以外に、スイベルジョイントなどが用いられてもよい。すなわち、ロータリージョイント7の部分は、高圧水を連通させることができる回転軸を有する手段であればいかなる構造であってもよい。
【0042】
回転軸7bには、筐体9内部で、プーリー7cが取付けられている。筐体9には、エアモータ8が取付けられている。エアモータ8の回転軸(不図示)には、プーリー8bが取付けられている。プーリー7cとプーリー8bとは、タイミングベルトやチェーンなどの伝達手段8aで連結されている。なお、エアモータ8に供給される空気の入出口については、図示を省略している。かかる伝達機構により、エアモータ8の回転軸が回転すると、ロータリージョイント7の回転軸7bが回転する仕組みになっている。なお、本発明において、エアモータ8以外に、電気モータや油圧モータなどの他の回転手段が使用されてもよいことは言うまでもない。
【0043】
なお、回転軸7bを回転させるための機構は、あくまでも一例に過ぎず、本発明においては、いかなる回転機構も採用し得る。また、伝達手段は、あくまでも一例に過ぎず、歯車など、他の伝達手段でモータの回転が伝達してもよい。
【0044】
カバー10の上部には、回転軸7bを通す穴が開いている。当該穴に、回転軸7bが通される。筐体9の高さを調整することで、回転軸7bも上下し、回転軸7bに連結するウォータージェットノズル14が上下する構造となっている。ウォータージェットノズル14を上下させることで、路面等の表面からのウォータージェットノズル14の高さを調節することができる。
【0045】
カバー10の下部外周には、ブラシ10aが取付けられている。カバー10には、バキューム接続口15が設けられている。バキューム接続口15に、吸引装置(不図示)が接続されて、剥離物や汚水などが吸引される。ブラシ10aを設けることで、剥離物や汚水がカバー10の回りに拡散するのを防止しつつ、吸引装置(不図示)による吸引を可能としている。
【0046】
以上のような構成を有する表面処理装置20は、本願出願人が既に、実用化しているもものであり、具体的な構造に本発明が限定されるものではない。
【0047】
本発明は、表面処理装置20の回転軸7bに取付けられるウォータージェットノズル14の構造に特徴を有するものであり、ウォータージェットノズル14に対して、高圧水が供給し、かつ、回転可能な回転軸7bを回転させるための構造は、特に本発明を限定するものではなく、あらゆる構造を採用できる。
【0048】
以下、ウォータージェットノズル14の実施形態及び実施例について、説明する。
【0049】
(一実施形態)
図4ないし
図7を参照しながら、本発明の一実施形態に係るウォータージェットノズル14について説明する。
【0050】
ウォータージェットノズル14は、円柱状の縦方向通水部14aと、3つの四角柱状の横方向通水部14b,14c,14dと、三角柱状の基台部14eとを備える。ここでは、3つの横方向通水部14b,14c,14dと、基台部14eとは、1つの金属の塊から切削して製造されているとしているが、本発明を限定するものではなく、別々の金属の塊から切削されたものが、接合されていてもよい。なお、円柱状の縦方向通水部14a、3つの四角柱状の横方向通水部14b,14c,14d、及び、三角柱状の基台部14eの具体的な形状は、任意であり、本発明を限定するものではない。
【0051】
ウォータージェットノズル14は、回転中心14sから、三方向に放射状に複数の噴射ノズル16が配置されるように、横方向通水部14b,14c,14dを設けた構造となっている。
すなわち、横方向通水部14bと14cとの間の角度は、120度であり、横方向通水部14cと14dとの間の角度は、120度であり、横方向通水部14dと14bとの間の角度は、120度である。
なお、安定的に回転することができるのであれば、隣り合う横方向通水路の角度を120度としなくてもよく、たとえば、115度,125度,125度のように、多少角度が異なっていても良い。たとえば、隣り合う横方向通水路が120度±10%の範囲の角度であれば、安定的に回転する。
なお、隣り合う横方向通水路の間の角度で特定するのではなく、隣り合う横方向通水部の間の角度で特定してもよい。すなわち、隣り合う横方向通水部の間の角度が120度±10%の範囲の角度であれば、安定的に回転する。
【0052】
回転中心14sは、ロータリージョイント7の回転軸7bの中心と一致している。
回転軸7bの下端は、雄ネジになっている。縦方向通水部14aの上端は、雌ネジ14tになっている。回転軸7bの雄ネジと雌ネジ14tとを連結させることで、回転軸7bに、ウォータージェットノズル14が取付けられる構造となっている。
なお、ここで示す回転軸7bにウォータージェットノズル14を取付けるための構造は、あくまでも一例に過ぎず、高圧水が連通可能となるように、回転軸7bにウォータージェットノズル14が取付けられればよく、その他の連結構造を用いてもよいことは、言うまでもない。
【0053】
縦方向通水部14aの内部には、縦方向通水路14rが形成されている。縦方向通水路14rの下部には、放射状三方向に横方向の通水路14r-1,14r-2,14r-3が形成されている。
なお、構造によっては、縦方向通水部14aを短くするなどして、縦方向通水路14rを構成せずに、回転軸7bからの高圧水をいきなり通水路14r-1,14r-2,14r-3及び横方向通水路14f,14g,14hに供給することも可能であるので、縦方向通水路14rは、必須の構成ではない。
【0054】
基台部14eの中心には、縦方向通水部14aを貫通させて取り付けるための穴が形成されている。
図7に示すように、基台部14eの中心の穴に、縦方向通水部14aを貫通させて、ボルト及びワッシャなどの締結手段17を用いて、基台部14eに縦方向通水部14aが取り付けられている。
【0055】
通水経路が正確に確保される必要があるので、縦方向通水部14aが適切な位置に配置されるよう、基台部14eには、位置決め部18,18が設けられており、縦方向通水部14aに位置決め部18,18に合う面が設けられている。なお、縦方向通水部14aの位置決め手段はこれに限られるものではないことは言うまでもない。
【0056】
縦方向通水部14aの外周に、密閉手段(たとえば、Oリング)19,19を取り付けておくことで、縦方向通水部14aと基台部14eとの連結部分から高圧水が外部に漏れるのが防止される。
【0057】
なお、縦方向通水部14aを基台部14eに貫通させなくても、縦方向通水路14rから、横方向への通水は可能であるから、縦方向通水部14aを基台部14eに貫通させるという構造は必須の構造ではない。
【0058】
図7に示すように、基台部14eの側面14k側から、横方向通水部14dに向けて穴が穿孔されることで、横方向通水路14hが形成される。側面14k側に形成された穴は、球体や芋ネジ等の封止手段14nで塞がれている。
同じく、基台部14eの側面14j側から、横方向連通部14cに向けて穴が穿孔されることで、横方向通水路14gが形成され、封止手段14mで塞がれている。
また、基台部14eの側面14i側から、横方向連通部14bに向けて穴が穿孔されることで、横方向通水路14fが形成され、封止手段14lで塞がれている。
なお、穿孔の仕方や部材の構成によっては、封止手段による封止を行わなくても製造可能であるので、封止手段は必須の構成ではない。
【0059】
横方向通水路14f,14g,14hからは、下方に向けて、複数の噴射用通水路16aが穿孔されている。各噴射用通水路16aの下端には、噴射ノズル16が設けられている。
なお、噴射用通水路16aを介さずに直接噴射ノズルが横方向通水路14f,14g,14hに取り付けられる構造も考え得るので、複数の噴射用通水路16aは、必須の構成ではない。
すなわち、複数の噴射ノズル16は、横方向通水路14f,14g,14hに連通していればよい。
【0060】
回転中心14sから各噴射ノズル16の中心までの距離がそれぞれ異なるように、横方向通水部14b,14c,14d内の横方向通水路14f,14g,14hに向けて、下部から、複数の噴射用通水路16aが穿孔されている。
すなわち、各噴射ノズル16によって描かれる軌跡が同心円状になるように、各噴射用通水路16a及び各噴射ノズル16が配置されている。
なお、回転中心14sから各噴射ノズル16の中心までの距離の内、一部が同じになっていることが本発明から除外されるものではない。
なお、噴射用通水路16a及び噴射ノズル16の数は、本発明を限定するものではない。
【0061】
図6(b)に示すように、高圧水は、縦方向通水部14a内の縦方向通水路14rを通って、通水路14r-1,14r-2,14r-3を経て、三方向に分岐して、横方向通水部14b,14c,14d内の横方向通水路14f,14g,14h、及び、各噴射用通水路16aを通って、各噴射ノズル16から噴射されることとなる。
【0062】
なお、ここでは、各噴射用通水路16aは、横方向通水路14h,14g,14fから垂直に穿孔されていることとしているが、斜めに穿孔されていてもよい。
また、ここでは、各噴射用通水路16aは、一直線に並んで形成されているが、二列以上に並んで形成されていてもよい。
噴射ノズル16の傾斜角度や配列については、周知のあらゆる構造を採用し得る。
【0063】
横方向通水部14b,14c,14dの底面には、それぞれ、ノズル保護部14o,14p,14qが取り付けられている。ノズル保護部14o,14p,14qは、噴射ノズル16から噴射される高圧水に対応する部分に穴を有している。ノズル保護部14o,14p,14qは、表面処理によって生じる礫が噴射ノズル16に衝突して、噴射ノズル16が劣化するのを防止している。
なお、ノズル保護部14o,14p,14qは、なくてもよい。
【0064】
このように、本実施形態のウォータージェットノズル14では、高圧水を回転中心から三方向に送る通水路を備えており、当該通水路から下部に向けて、高圧水を噴射するように、噴射ノズルが取り付けられている。
【0065】
本願出願人による検証の結果、従来の一文字型のウォータージェットノズルと比べて、本実施形態のウォータージェットノズルを用いると、回転が安定することが分かった。
従来の一文字型のウォータージェットノズルの場合、振動が大きく、安定性が低いので、ウォータージェットノズルを接続する部分に負荷がかかり過ぎないように、回転数を制限する必要があった。
しかし、本実施形態のウォータージェットノズルの場合、振動が少なく安定性が高いため、ウォータージェットノズルを接続する部分の負荷が従来の一文字型の場合に比べて小さくなる。そのため、本実施形態のウォータージェットノズルは、回転数を上げて、回転させることが可能となる。
このように回転数を上げた施工が可能となることから、表面を均一に仕上げることが可能となる。
【0066】
本願出願人は、実際に以下に示す実施例を製造して、表面処理施工を行った。以下、実施例とその施工結果について説明する。
【実施例】
【0067】
図8ないし
図11に示すウォータージェットノズル及び表面処理装置を製造した。
図8ないし
図11において、
図1ないし
図7に示した部位と同じ機能を有する部分については、同一の符号を付したので、構造について、詳細説明を省略する。
【0068】
図11に示すように、噴射ノズル16から、高圧水が噴射されることとなるが、高圧水が噴射されながら、ウォータージェットノズル14を回転させて施工を行う。
【0069】
図12に、本実施例による路面の表面処理後の状態を示す。均一に、表面処理がなされ、処理残りがないことが確認できる。
【0070】
一方、
図13は、従来の一文字型のウォータージェットノズルを用いて路面を表面処理した後の状態を示す。
図13に示されているように、一文字型のウォータージェットノズルの場合、中心部分の周辺に処理残りがあるのが確認できる。
【0071】
このように、本実施例による施工結果から、本発明のウォータージェットノズル14による施工は、表面処理残りが少ないことが確認できた。
【0072】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
20 表面処理装置
1 架台
2 自在車輪
3 固定車輪
4 ハンドル
5 高さ調整ハンドル
5a ねじ棒
5b 支柱
5c 固定部
6 ロックハンドル
6a 支柱
7 ロータリージョイント
7a 高圧水供給口
7b 回転軸
7c プーリー
8 エアモータ
8a 伝達手段
8b プーリー
9 筐体
10 カバー
11 連結部
11a L字状金具
14 ウォータージェットノズル
15 バキューム接続口
14a 縦方向通水部
14b,14c,14d 横方向通水部
14e 基台部
14f,14g,14h 横方向通水路
14i,14j,14k 側面
14l,14m,14n 封止手段
14o,14p,14q ノズル保護部
14r 縦方向通水路
14r-1,14r-2,14r-3 通水路
14s 回転中心
14t 雌ネジ
16 噴射ノズル
16a 噴射用通水路
17 締結手段
18 位置決め部
19 密閉手段
【要約】 (修正有)
【課題】ウォータージェットによる路面など表面処理において、表面処理残しが生じないようにすることができるウォータージェットノズル及びそれを用いた表面処理装置を提供する。
【解決手段】表面処理装置における回転軸に取付けられるウォータージェットノズル14であって、回転軸から供給される高圧水を通水する縦方向通水路14rと、縦方向通水路14rと三つの通水路14r-1,14r-2,14r-3を介して連通しており、回転中心14sから三方向に放射状に通水させるための三つの横方向通水路14f,14g,14hと、各横方向通水路14f,14g,14hにおいて、下方に向けて形成された複数の噴射用通水路と、各噴射用通水路の下端において取り付けられた複数の噴射ノズル16とを備える。隣り合う横方向通水路の間隔は120度である。
【選択図】
図4