(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】被検査部品搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 35/04 20060101AFI20240627BHJP
B65G 15/12 20060101ALI20240627BHJP
B65H 59/38 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B65G35/04
B65G15/12
B65H59/38
(21)【出願番号】P 2023215342
(22)【出願日】2023-12-21
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595139646
【氏名又は名称】東京技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】横山 和久
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-219253(JP,A)
【文献】特開2003-128243(JP,A)
【文献】特開昭61-119504(JP,A)
【文献】実開平7-23732(JP,U)
【文献】特開2022-32082(JP,A)
【文献】特開昭61-100361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 35/04
B65G 15/12
B65H 59/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に走行する2本の搬送ワイヤーで被検査部品を一方向に搬送する搬送路と、各搬送ワイヤーをそれぞれ巻き付ける一対の搬送リール機構とを形成した被検査部品搬送機構であって、
各搬送リール機構は、一対のステッピングモーターに夫々連動する巻取リールと供給リールとを備えると共に、テンション用エアシリンダに装着して上下動自在に設けられ、供給リールの回転速度が巻取リールの巻き取り速度より遅くなると搬送リール機構が上昇するように構成し、
搬送ワイヤー巻き取り時の搬送リール機構の高さを検出すると共にこの高さが一定になるように供給リールの回転速度を調整するように構成したことを特徴とする被検査部品搬送装置。
【請求項2】
前記搬送リール機構は、前記巻取リールと前記供給リールとを水平に支持する移動プレートが設けられると共に、前記テンション用エアシリンダは固定基板に上下動自在に連結され、前記テンション用エアシリンダに固定した移動プレートの高さで前記搬送リール機構の高さを検出する請求項1記載の被検査部品搬送装置。
【請求項3】
前記移動プレートの高さは、前記固定基板に設置した位置検出センサで検知する請求項2記載の被検査部品搬送装置。
【請求項4】
前記固定基板における前記搬送リール機構より上部の位置に一対のワイヤープーリーを装着し、該ワイヤープーリー相互間の前記搬送ワイヤーで前記搬送路を形成する請求項2記載の被検査部品搬送装置。
【請求項5】
前記供給リールは、前記巻取リールに巻き取られた前記搬送ワイヤーを高速逆回転で巻き戻すように構成した請求項1記載の被検査部品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤー搬送による画像処理検査に使用される被検査部品搬送装置に係り、例えば、マイクロネジ等の微小な被検査部品を搬送するのに好適な被検査部品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当発明者は、先に特許文献1記載の披検査部品搬送機構を発明している。この搬送機構は、平行に移動する2本の搬送ワイヤーに、ボルト等の披検査部品を吊下げて搬送する装置である。このとき使用する搬送ワイヤーは、大量の被検査部品を順次搬送するために、両端部を溶接した無限端ワイヤーが使用される。
【0003】
ところが、両端部の溶接が可能なワイヤーは、太さ0.4ミリ程度が限界であり、ワイヤーの径がこれより細くなると現在の技術では無限端ワイヤーを製作することができない。そのため、被検査部品のサイズが小さくなるほど十分な精度の画像処理検査を行うことが困難な状況になっていた。
【0004】
そこで当発明者は、特許文献2に記載の被検査部品搬送装置を新たに提案した。この装置は、無限端ワイヤーでは検査が困難な軸径2ミリ以下のマイクロネジ等の微小な被検査部品を搬送できるように構成したものである。
【0005】
すなわち、無限端ワイヤーを使用せず、平行に走行する2本の搬送ワイヤー1をそれぞれ巻き付ける一対の巻取りリール2と、2本の搬送ワイヤー1とで被検査部品Pを搬送する搬送装置10を構成し、この搬送装置10を水平方向に反転させる反転機20に設置したものである。そして、この反転機20が反転すると、逆転した巻取りリール2から巻き戻される搬送ワイヤー1で再び被検査部品Pを搬送する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3136508号公報
【文献】特許第4636421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2に記載の装置は、搬送装置10を水平方向に反転させる構成なので、反転するごとに搬送装置10の上流側端部を直進フィーダの下流側端部に合わせる必要があり、この調整に手間を要する課題があった。
【0008】
また、搬送装置10を反転させる反転機20を設けた構成により、構成が複雑になることから、製造コストやメンテナンスにおける課題も残されていた。
【0009】
そこで、構成を簡略化するため、反転する一対の巻き取りリール2の代わりに、固定式の二対の巻き取りリールを使用して搬送する構成に変更すると、搬送路のテンションを維持することが困難になることが判った。
【0010】
すなわち、特許文献2の装置は、1個の巻き取りリール2に1本の搬送ワイヤー1を巻き付けた構成なので、搬送ワイヤー1のテンションは常に一定になる。そのため、一対の巻き取りリール2と2本の搬送ワイヤー1で形成される搬送路3のテンションを保つことが可能である。
【0011】
ところが、固定式の二対の巻き取りリールに2本の搬送ワイヤーを巻き付けて搬送路を形成すると、各巻き取りリールに巻付ける各搬送ワイヤーのテンションが夫々異なることから、各搬送ワイヤーのテンションを一定にすることが困難になる。特に、極細径のワイヤーでは、僅かなテンションの違いによっても被検査部品が脱落したり搬送ワイヤーが外れたりする不都合が生じる。
【0012】
そこで本発明は、上述の課題を解消すべく創出されたもので、極細径ワイヤーを使用した場合でも、搬送路のテンションを一定に保ち正確な検査が可能になる被検査部品搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、平行に走行する2本の搬送ワイヤー1で被検査部品Pを一方向に搬送する搬送路2と、各搬送ワイヤー1をそれぞれ巻き付ける一対の搬送リール機構10とを形成した被検査部品搬送機構であって、各搬送リール機構10は、一対のステッピングモーター13、14に夫々連動する巻取リール11と供給リール12とを備えると共に、テンション用エアシリンダ16に装着して上下動自在に設けられ、供給リール12の回転速度が巻取リール11の巻き取り速度より遅くなると搬送リール機構10が上昇するように構成し、搬送ワイヤー1巻き取り時の搬送リール機構10の高さを検出すると共にこの高さが一定になるように供給リール12の回転速度を調整するように構成したことにある。
【0014】
第2の手段の前記搬送リール機構10は、前記巻取リール11と前記供給リール12とを水平に支持する移動プレート15が設けられると共に、前記テンション用エアシリンダ16は固定基板20に上下動自在に連結され、前記テンション用エアシリンダ16に固定した移動プレート15の高さで前記搬送リール機構10の高さを検出するものである。
【0015】
第3の手段の前記移動プレート15の高さは、前記固定基板20に設置した位置検出センサ18で検知するものである。
【0016】
第4の手段は、前記固定基板20における前記搬送リール機構10より上部の位置に一対のワイヤープーリー17を装着し、該ワイヤープーリー17相互間の前記搬送ワイヤー1で前記搬送路2を形成するものである。
【0017】
第5の手段の前記供給リール12は、前記巻取リール11に巻き取られた前記搬送ワイヤー1を高速逆回転で巻き戻すように構成したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のごとく、搬送ワイヤー1巻き取り時の搬送リール機構10の高さを検出し、この高さが一定になるように供給リール12の回転速度を調整するように構成したことにより、搬送路2の搬送ワイヤー1に加わるテンションを一定にすることが可能になった。この結果、太さが0.1~0.2mm以下という極細のワイヤーを使用して被検査部品Pを搬送することができる。
【0019】
しかも、両端部の溶接が不可能な搬送ワイヤー1を使用しても、従来の反転する装置は不要になり、搬送路2の位置は常に一定なので、装置全体の構成も簡素化することができる。
【0020】
このように本発明によると、極細径ワイヤーを使用した場合でも、搬送路のテンションを一定に保ち正確な検査が可能になるなどといった本発明独自の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明搬送装置の一実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一対の搬送リール機構を示す斜視図である。
【
図3】本発明の片側の搬送リール機構を示す斜視図である。
【
図4】本発明の片側の搬送リール機構を示す正面図である。
【
図5】本発明の片側の搬送リール機構を示す側面図である。
【
図6】本発明の片側の搬送リール機構を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明搬送装置は、例えば、画像処理検査に使用される。図示例では、搬送路2の周囲に、この搬送路2を撮影ポイントとして各アングルから指向させたカメラCを複数配して、マイクロネジ等の微小な被検査部品を画像検査する際に使用する検査装置である(
図1参照)。
【0023】
本発明搬送装置は、平行に走行する2本の搬送ワイヤー1で被検査部品Pを一方向に搬送する搬送路2を有する(
図2参照)。そして、各搬送ワイヤー1をそれぞれ巻き付ける一対の搬送リール機構10を使用する。
【0024】
各搬送リール機構10は、巻取リール11と供給リール12とを有する(
図3参照)。これらは一対のステッピングモーター13、14に夫々連動し、巻取リール11と供給リール12との回転は、各ステッピングモーター13、14で調整する。そして、供給リール12に巻かれた搬送ワイヤー1を巻取リール11に巻き取る際に、巻取リール11のステッピングモーター13の回転で巻き取る。このとき、供給リール12も巻取リール11の回転に合わせてステッピングモーター14で回転する。
【0025】
更に、搬送リール機構10は、テンション用エアシリンダ16に連結して上下動自在に設けられる(
図4参照)。図示例では、巻取リール11と供給リール12とを水平に支持する移動プレート15を設けている。更に、この移動プレート15をテンション用エアシリンダ16に固定し、固定基板20に固定した前記テンション用エアシリンダ16で移動プレート15を上下動自在に支持する(
図5参照)。したがって、搬送リール機構10は、移動プレート15と共に上下動する(
図4参照)。
【0026】
また、この固定基板20には、搬送リール機構10より上部の位置に一対のワイヤープーリー17を装着している(
図4参照)。このワイヤープーリー17相互間に架け渡した搬送ワイヤー1で搬送路2を形成している。
【0027】
そのため、供給リール12の回転速度が巻取リール11の巻き取り速度より遅いと搬送リール機構10が上昇する構成になっている。このとき、搬送路2の搬送ワイヤー1のテンションは高くなる。そこで、供給リール12の回転速度を速めて巻取リール11の回転速度に合わせると、搬送リール機構10が下がり、搬送ワイヤー1のテンションも下がることになる。
【0028】
ところが、巻取リール11、供給リール12の巻き径には、違いがあるため、その分、移動プレート15が上下に移動する。そこで、搬送ワイヤー1巻き取り時の搬送リール機構10の高さを検出するために、固定基板20に位置検出センサ18を配置し、移動プレート15の高さを検出している。この移動プレート15の高さが一定になるように、産業用PCで供給リール12の回転速度を調整することで、搬送路2の搬送ワイヤー1のテンションを一定に保持するものである。
【0029】
すなわち、移動プレート15の上下位置は、位置検出センサ18により、基準位置よりも上か下かが検出される。この信号を元に、移動プレート15が上に移動した場合には、供給リール12を一定量増速することで、移動プレート15を下向き移動に変化させる。
【0030】
逆に、移動プレート15が下に移動した際には、供給リール12を一定量減速することで、移動プレート15を上向き移動に変化させる。搬送路2の搬送ワイヤー1による搬送中は、この動作を繰り返しながら、移動プレート15の上下位置、すなわち搬送リール機構10の上下位置を一定の位置に保つことで、搬送路2の搬送ワイヤー1のテンションを一定に保持する。
【0031】
供給リール12の搬送ワイヤー1が巻取リール11に巻き取られた後は、供給リール12を逆回転して供給リール12に巻き戻す。このとき、ステッピングモーター14の高速逆回転により、搬送ワイヤー1を高速で巻き戻すように構成している。
【0032】
尚、本発明の搬送装置はボルト等の部品類に限定されるものではなく、多くの分野での使用が可能である。また、本発明装置の構成は図示例に限定されるものではなく、搬送リール機構10や固定基板20等の形状、構造等の設計変更は任意に行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
1 搬送ワイヤー
2 搬送路
10 搬送リール機構
11 巻取リール
12 供給リール
13 ステッピングモーター
14 ステッピングモーター
15 移動プレート
16 テンション用エアシリンダ
17 ワイヤープーリー
18 位置検出センサ
20 固定基板
【要約】
【課題】極細径ワイヤーを使用した場合でも、搬送路のテンションを一定に保ち正確な検査が可能になる被検査部品搬送装置を提供する。
【解決手段】2本の搬送ワイヤー1で被検査部品Pを一方向に搬送する搬送路2を設ける。各搬送ワイヤー1を巻き付ける一対の搬送リール機構10を構成する。各搬送リール機構10に、一対のステッピングモーター13、14を設ける。各モーターに連動する巻取リール11と供給リール12とを備える。搬送リール機構10をテンション用エアシリンダ16にて上下動自在に支持する。搬送ワイヤー1巻き取り時の搬送リール機構10の高さを検出する。この高さが一定になるように供給リール12の回転速度を調整する。
【選択図】
図1