(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】超長期作用性インスリン-FC融合タンパク質および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240627BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20240627BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240627BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240627BHJP
C07K 14/62 20060101ALI20240627BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240627BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240627BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240627BHJP
C12N 15/17 20060101ALI20240627BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240627BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A61K38/28
A61K47/68
A61P3/10
C07K14/62
C07K16/00
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/17
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023217822
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2020573352の分割
【原出願日】2019-06-28
【審査請求日】2024-01-23
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519206793
【氏名又は名称】アクストン バイオサイエンシズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AKSTON BIOSCIENCES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100 Cummings Center,Beverly,Massachusetts 01915(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランカスター,トーマス エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジオン,トッド,シー.
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/073185(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/014091(WO,A1)
【文献】特表2018-505874(JP,A)
【文献】特表2017-537065(JP,A)
【文献】特表2017-536337(JP,A)
【文献】特表2013-535467(JP,A)
【文献】特表2018-512151(JP,A)
【文献】国際公開第2016/044676(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0009869(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリンポリペプチドおよびFc断片を含む融合タンパク質であって、前記インスリンポリペプチドおよび前記Fc断片がリンカーにより接続されており、前記Fc断片が、以下の配列:
DCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号23)
を含み、かつ、
前記インスリンポリペプチドが、以下の配列:
FVNQHLCGSX
1LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2STCSLDQLENYC(配列番号10)
(X
1はDではなく、かつX
2はHではない)
を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
前記インスリンポリペプチドが、以下の配列:
FVNQHLCGSX
1LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2STCSLDQLENYC(配列番号10)
(X
1はHであり、かつX
2はTである)
を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記インスリンポリペプチドおよび前記Fc断片が、以下の配列:
GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号14)
を含むリンカーにより接続されている、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
以下の配列:
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号40)
を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
ホモ二量体である、請求項1~4のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記融合タンパク質のホモ二量体のパーセンテージが90%より高い、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記融合タンパク質に対するインスリン受容体IC
50が5000nMより低いまたはそれに等しい、請求項1~4のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項8】
投与された場合の標的動物の血液または血清中での前記融合タンパク質の血清半減期が
3日より長い、請求項1~4のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項9】
投薬前レベルと比べて対象において血中グルコースレベルの統計的に有意な減少がある時間が、
2日より長い、請求項1~4のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項10】
標的動物における1回目の皮下注射後のNAOCが150FBGL%・日・kg/mgより高い、請求項1~4
のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記標的動物における前記融合タンパク質の1回目の皮下注射後のNAOCに対する前記標的動物における前記融合タンパク質の3回目の週毎の皮下注射後のNAOCの比が0.50より高い、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
医薬組成物として製剤化されている、請求項1~4のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記融合タンパク質が、
3mg/mLまたはより高い濃度において前記医薬組成物中に存在する、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
皮下投与のために好適なものである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
標的動物の血中グルコースレベルを低下させる方法であって、生理学的有効量の請求項1~4のいずれか1項に記載の融合タンパク質またはその医薬組成物を前記標的動物に投与することを含み、前記標的動物がネコである、方法。
【請求項16】
前記標的動物が、糖尿病を有すると診断されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記融合タンパク質が皮下に投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記融合タンパク質が、1日毎、週に2回、または週に1回前記標的動物に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記融合タンパク質が、0.025~0.5mg/kg/週の用量において週に1回前記標的動物に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~4のいずれか1項に記載の融合タンパク質を発現するように操作された細胞。
【請求項21】
前記融合タンパク質をコードする核酸をトランスフェクトされている、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
HEK293細胞またはCHO細胞である、請求項21に記載の細胞。
【請求項23】
請求項1~4のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードするcDNA。
【請求項24】
以下の核酸配列:
atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggcactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaaatgtcctccgcctgagatgctgggtggccctagcatcttcatcttcccgcccaagcccaaggatactctgtccattagcaggacccccgaggtgacctgcctggtggtggacctggggccagacgactctgacgtgcagatcacctggttcgtagacaacacccaggtttacactgccaagaccagtcccagggaggagcagttcagcagcacatacagggtggtgagcgttctgcccatcctgcaccaggactggctgaaaggcaaagagttcaagtgtaaggtgaacagcaagagcctgcccagccccattgaaaggaccatcagcaaggacaagggccagccgcacgagccccaagtctacgtgctgcccccagcacaggaagagctgagcaggaacaaggttagcgtgacatgcctgatcgagggtttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggaaatcaccggccaacccgagcccgagaacaactacaggaccactccgccgcaactggacagcgacgggacctacttcttgtatagcaggctgagcgtggaccggagcaggtggcagaggggcaacacctacacttgcagcgtgagccacgaggccttgcacagccaccacactcagaagagtctgacccagagcccgggatag(配列番号39)
を含む、請求項23に記載のcDNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権および関連出願
本出願は、2019年4月22日に出願された米国仮特許出願第62/837,188号、2019年4月1日に出願された米国仮特許出願第62/827,809号、2019年3月26日に出願された米国仮特許出願第62/824,176号、2018年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/781,378号、2018年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/781,368号、2018年12月3日に出願された米国仮特許出願第62/774,682号、2018年10月9日に出願された米国仮特許出願第62/743,358号、2018年10月3日に出願された米国仮特許出願第62/740,735号、2018年8月17日に出願された米国仮特許出願第62/719,347号、2018年7月23日に出願された米国仮特許出願第62/702,167号、2018年7月16日に出願された米国仮特許出願第62/698,648号、2018年7月11日に出願された米国仮特許出願第62/696,645号、2018年7月3日に出願された米国仮特許出願第62/693,814号、2018年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/692,507号、および2018年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/692,498号に関し、これらの優先権の利益を主張する。上述の各特許出願の内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、インスリン-Fc融合タンパク質の組成物および伴侶動物、例えば、イヌまたはネコにおいて糖尿病を治療するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本技術の背景の以下の記載は、単純に本技術の理解の補助として提供され、本技術に対する先行技術を記載または構成することを認めるものではない。
【0004】
糖尿病は、インスリン欠乏および/またはインスリンの有効でない使用により特徴付けられる慢性状態である。インスリンの絶対的な欠乏を有する糖尿病患者は、1型またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)を有すると分類される。1型糖尿病患者は、膵臓のインスリン産生性β細胞の免疫学的破壊と組み合わさった遺伝的素因を有すると考えられる。これと比較して、依然としてある程度のインスリンを産生できるがインスリン抵抗性または他の機能障害に起因して相対的な欠乏を有する糖尿病患者は、2型または非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)を有すると分類される。2型糖尿病は、遺伝的素因、肥満症、およびある特定の医薬に連鎖している。
【0005】
イヌまたはネコがインスリンを産生せず、またはそれを通常通りに使用できない場合、血糖レベルが上昇して高血糖症が結果としてもたらされる。イヌは、一般に、ヒト1型糖尿病に強い類似性を有する非定型的な糖血症表現型を呈する。イヌはまた、ヒトにおける2型糖尿病に強い類似性を有する非定型的な糖血症を時折呈する。雌イヌはまた、熱中または妊娠中に一時的なインスリン抵抗性を発症することがある。全ての場合に、イヌは、慢性のインスリン注射療法を用いて治療される。ネコは、一般に、ヒト2型糖尿病(すなわち、インスリン抵抗性)に強い類似性を有する非定型的な糖血症表現型を呈するが、疾患が獣医により診断される時点までに、それは進行して1型糖尿病状態(ベータ細胞質量の顕著な損失を伴う膵臓における炎症性疾患)に似たものとなり、ネコは外因性インスリンに依存する。一部の糖尿病ネコは食餌変化および経口医薬を用いて管理することができるが、糖尿病ネコの大部分は、十分な調節を維持するために慢性のインスリン注射療法を与えられる。治療しないままの場合、イヌおよびネコにおける糖尿病は、体重損失、食欲不振、嘔吐、脱水、運動機能の問題、昏睡、そして死にさえ繋がることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
米国におけるイヌの約0.24%およびネコの約0.68%は糖尿病に罹患している。イヌおよびネコのための現行の糖尿病療法としては、1日1回または2回投与されるイヌ用のVetsulin(登録商標)(Intervet Inc., d.b.a. MERCK Animal Health、Summit、NJ)およびネコ用のProZinc(登録商標)(Boehringer Ingelheim Vetmedica、Duluth、Georgia)などのインスリンの使用が挙げられる。頻繁な注射の所有者に対する負担は、多くの場合に、治療レジメンの順守の欠如および過少量投薬を結果としてもたらして、不良な長期健康アウトカムに繋がる。実際に、インスリン療法のコストおよび週当たり14時間まで愛玩動物に投薬を行う実際性は、顕著なパーセンテージの所有者が糖尿病の集中的な管理への代替として愛玩動物のために安楽死を選択することに繋がる。したがって、この疾患に対するコスト効果の高いかつより低い負担の治療オプションの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術の要約
一態様では、本開示は、インスリンポリペプチドおよびFc断片を含む融合タンパク質であって、インスリンポリペプチドおよびFc断片がペプチドリンカーなどのリンカーにより接続されており、Fc断片が非ヒト動物起源であり、かつ以下の配列:DCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号16)を含む、融合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、融合タンパク質のインスリンポリペプチドは、配列FVNQHLCGSX1LVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX2STCSLDQLENYCX3(配列番号6)(X1はDではなく、X2はHではなく、かつX3は存在しないまたはNである)を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質のインスリンポリペプチドは、配列FVNQHLCGSX1LVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX2STCSLDQLENYCX3(配列番号6)(X1はHであり、X2はTであり、かつX3は存在しないまたはNである)を含む。実施形態では、融合タンパク質のインスリンポリペプチドおよびFc断片は、配列GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号14)を含むペプチドリンカーなどのリンカーにより接続されている。
【0008】
実施形態では、融合タンパク質は、配列FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号32)を含む。実施形態では、融合タンパク質は、配列FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCNGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQ
ISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号34)を含む。
【0009】
一態様では、本開示は、インスリンポリペプチドおよびFc断片を含む融合タンパク質であって、インスリンポリペプチドおよびFc断片がペプチドリンカーなどのリンカーにより接続されており、Fc断片が、配列DCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号22)を含む、融合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、融合タンパク質のインスリンポリペプチドは配列FVNQHLCGSX1LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX2STCSLDQLENYC(配列番号10)(X1はDではなく、かつX2はHではない)を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質のインスリンポリペプチドは、配列FVNQHLCGSX1LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX2STCSLDQLENYC(配列番号10)(X1はHであり、かつX2はTである)を含む。実施形態では、インスリンポリペプチドおよびFc断片は、配列GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号14)を含むペプチドリンカーなどのリンカーにより接続されている。
【0010】
実施形態では、融合タンパク質は、配列FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号36)を含む。
【0011】
一態様では、本開示は、インスリンポリペプチドおよびFc断片を含む融合タンパク質であって、インスリンポリペプチドおよびFc断片がペプチドリンカーなどのリンカーにより接続されており、Fc断片が非ヒト動物起源であり、かつ配列DCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号20)を含む、融合タンパク質を提供する。実施形態では、融合タンパク質のインスリンポリペプチドは、配列FVNQHLCGSX1LVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX2STCSLDQLENYCX3(配列番号6)(X1はDではなく、X2はHではなく、かつX3は存在しない)を含む。実施形態では、融合タンパク質のインスリンポリペプチドは、配列FVNQHLCGSX1LVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX2STCSLDQLENYCX3(配列番号6)(X1はHであり、X2
はTであり、かつX3は存在しない)を含む。実施形態では、インスリンポリペプチドおよびFc断片は、以下の配列GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号14)を含むペプチドリンカーなどのリンカーにより接続されている。
【0012】
実施形態では、融合タンパク質は、配列FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号38)を含む。
【0013】
一態様では、本開示は、インスリンポリペプチドおよびFc断片を含む融合タンパク質であって、インスリンポリペプチドおよびFc断片がペプチドリンカーなどのリンカーにより接続されており、Fc断片が、配列DCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号23)を含む、融合タンパク質を提供する。実施形態では、融合タンパク質のインスリンポリペプチドは、配列FVNQHLCGSX1LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX2STCSLDQLENYC(配列番号10)(X1はDではなく、かつX2はHではない)を含む。実施形態では、インスリンポリペプチドは、以下の配列FVNQHLCGSX1LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX2STCSLDQLENYC(配列番号10)(X1はHであり、かつX2はTである)を含む。実施形態では、インスリンポリペプチドおよびFc断片は、配列GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号14)を含むペプチドリンカーなどのリンカーにより接続されている。
【0014】
実施形態では、融合タンパク質は、配列FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号40)を含む。
【0015】
態様では、本明細書に記載の融合タンパク質はホモ二量体を含む。実施形態では、融合タンパク質のホモ二量体のパーセンテージは90%より高い。実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質はHEK293細胞を使用して作られ、かつプロテインAビーズまたはプロテインAカラムを使用する精製後の結果としてもたられるホモ二量体タイターは50mg/Lより高い。実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質のインスリン受容体IC50は5000nMより低いまたはそれに等しい。実施形態では、投与された場合の標的動物の血液または血清中での本明細書に記載の融合タンパク質の血清半減期は約3日より長い。実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質について、投薬前レベル
と比べて対象において血中グルコースレベルの統計的に有意な減少がある時間は、2時間、6時間、9時間、12時間、18時間、1日、1.5日、2日、2.5日、3日、4日、5日、6日、7日、またはより長くのうちの1つより長い。
【0016】
態様では、本明細書に記載の融合タンパク質について、標的動物における1回目の皮下注射後のNAOCは150FBGL%・日・kg/mgより高い。実施形態では、本明細書に記載の融合タンパク質について、標的動物における融合タンパク質の1回目の皮下注射後のNAOCに対する標的動物における融合タンパク質の3回目の週毎の皮下注射後のNAOCの比は0.50より高い。
【0017】
態様では、本明細書に記載されるような融合タンパク質は医薬組成物として製剤化されている。実施形態では、医薬組成物中で融合タンパク質は約3mg/mLまたはより高い濃度において存在する。実施形態では、組成物は皮下投与のために好適なものである。
【0018】
一態様では、標的動物の血中グルコースレベルを低下させる方法であって、生理学的有効量の本明細書に記載されるような融合タンパク質またはその医薬組成物を患者に投与することを含む、方法が記載される。実施形態では、標的動物は、糖尿病を有すると診断されている。実施形態では、標的動物はイヌまたはネコである。一部の実施形態では、融合タンパク質は皮下に投与される。一部の実施形態では、融合タンパク質は、1日毎、週に2回、または週に1回標的動物に投与される。例では、融合タンパク質は、0.025~0.5mg/kg/週の用量において週に1回標的動物に投与される。態様では、本明細書に記載されるような融合タンパク質を発現するように操作された細胞が記載される。例では、細胞は、融合タンパク質をコードする核酸をトランスフェクトされている。例では、細胞はHEK293細胞またはCHO細胞である。
【0019】
一態様では、本明細書に記載されるような融合タンパク質をコードするcDNAが記載される。実施形態では、cDNAは、核酸配列atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggaactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaagtgccccgctcccgagatgctgggcggacccagcgtgttcatcttccctcccaagcccaaggacacactgctgatcgccaggaccccggaggtgacctgcgtggtggtggacctggatcccgaagaccccgaggtgcagatcagctggttcgtggatggaaagcagatgcagaccgccaagacccaaccccgggaagagcagttcaacggcacctacagggtggtgagtgtgttgcccatcggccaccaggactggctgaaggggaagcaattcacatgcaaggttaataacaaggccctgcccagccccatcgagaggaccatcagcaaggccaggggccaggcccaccagccatctgtgtacgtgctgcccccatctagggaggaactgagcaagaacacagtcagccttacttgcctgatcaaggacttcttcccaccggacatagacgtggagtggcagagtaacggccagcaggagcccgagagcaagtataggaccacaccgccccaactggacgaggacggaagctacttcctctacagcaaattgagcgttgacaaaagcaggtggcagcgaggcgacaccttcatctgcgccgtgatgcacgaggctttgcataaccactacacccag
gagagcctgtcccacagccccggatag(配列番号31)を含む。
【0020】
実施形態では、cDNAは、核酸配列atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggaactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcaacggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaagtgccccgctcccgagatgctgggcggacccagcgtgttcatcttccctcccaagcccaaggacacactgctgatcgccaggaccccggaggtgacctgcgtggtggtggacctggatcccgaagaccccgaggtgcagatcagctggttcgtggatggaaagcagatgcagaccgccaagacccaaccccgggaagagcagttcaacggcacctacagggtggtgagtgtgttgcccatcggccaccaggactggctgaaggggaagcaattcacatgcaaggttaataacaaggccctgcccagccccatcgagaggaccatcagcaaggccaggggccaggcccaccagccatctgtgtacgtgctgcccccatctagggaggaactgagcaagaacacagtcagccttacttgcctgatcaaggacttcttcccaccggacatagacgtggagtggcagagtaacggccagcaggagcccgagagcaagtataggaccacaccgccccaactggacgaggacggaagctacttcctctacagcaaattgagcgttgacaaaagcaggtggcagcgaggcgacaccttcatctgcgccgtgatgcacgaggctttgcataaccactacacccaggagagcctgtcccacagccccggatag(配列番号33)を含む。
【0021】
実施形態では、cDNAは、核酸配列atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggcactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaagtgccccgctcccgagatgctgggcggacccagcgtgttcatcttccctcccaagcccaaggacacactgctgatcgccaggaccccggaggtgacctgcgtggtggtggacctggatcccgaagaccccgaggtgcagatcagctggttcgtggatggaaagcagatgcagaccgccaagacccaaccccgggaagagcagttctcaggcacctacagggtggtgagtgtgttgcccatcggccaccaggactggctgaaggggaagcaattcacatgcaaggttaataacaaggccctgcccagccccatcgagaggaccatcagcaaggccaggggccaggcccaccagccatctgtgtacgtgctgcccccatctagggaggaactgagcaagaacacagtcagccttacttgcctgatcaaggacttcttcccaccggacatagacgtggagtggcagagtaacggccagcaggagcccgagagcaagtataggaccacaccgccccaactggacgaggacggaagctacttcctctacagcaaattgagcgttg
acaaaagcaggtggcagcgaggcgacaccttcatctgcgccgtgatgcacgaggctttgcataaccactacacccaggagagcctgtcccacagccccggatag(配列番号35)を含む。
【0022】
実施形態では、cDNAは、核酸配列atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggaactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaaatgtcctccgcctgagatgctgggtggccctagcatcttcatcttcccgcccaagcccaaggatactctgtccattagcaggacccccgaggtgacctgcctggtggtggacctggggccagacgactctgacgtgcagatcacctggttcgtagacaacacccaggtttacactgccaagaccagtcccagggaggagcagttcaacagcacatacagggtggtgagcgttctgcccatcctgcaccaggactggctgaaaggcaaagagttcaagtgtaaggtgaacagcaagagcctgcccagccccattgaaaggaccatcagcaaggacaagggccagccgcacgagccccaagtctacgtgctgcccccagcacaggaagagctgagcaggaacaaggttagcgtgacatgcctgatcgagggtttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggaaatcaccggccaacccgagcccgagaacaactacaggaccactccgccgcaactggacagcgacgggacctacttcttgtatagcaggctgagcgtggaccggagcaggtggcagaggggcaacacctacacttgcagcgtgagccacgaggccttgcacagccaccacactcagaagagtctgacccagagcccgggatag(配列番号37)を含む。
【0023】
実施形態では、cDNAは、核酸配列atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggcactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaaatgtcctccgcctgagatgctgggtggccctagcatcttcatcttcccgcccaagcccaaggatactctgtccattagcaggacccccgaggtgacctgcctggtggtggacctggggccagacgactctgacgtgcagatcacctggttcgtagacaacacccaggtttacactgccaagaccagtcccagggaggagcagttcagcagcacatacagggtggtgagcgttctgcccatcctgcaccaggactggctgaaaggcaaagagttcaagtgtaaggtgaacagcaagagcctgcccagccccattgaaaggaccatcagcaaggacaagggccagccgcacgagccccaagtctacgtgctgcccccagcacaggaagagctgagcaggaacaaggttagcgtgacatgcctgatcgagggtttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggaaatcaccggccaacccga
gcccgagaacaactacaggaccactccgccgcaactggacagcgacgggacctacttcttgtatagcaggctgagcgtggaccggagcaggtggcagaggggcaacacctacacttgcagcgtgagccacgaggccttgcacagccaccacactcagaagagtctgacccagagcccgggatag(配列番号39)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は例示的なインスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体の図式的表現を示す。
【
図2】
図2は、配列番号42のホモ二量体を0日目に0.2mg/kgで静脈内に投薬されたN=3のイヌについての0日目から3日目までの空腹時血中グルコースレベルの平均%を示す。
【
図3】
図3は、配列番号42、44、46、48、および50を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図4】
図4は、配列番号42、52、54、および56を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図5】
図5は、配列番号52のホモ二量体を0日目に0.2mg/kgで静脈内に投薬されたN=3のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの平均%を示す。
【
図6】
図6は、配列番号52のホモ二量体を0日目に0.33mg/kgで皮下に投薬されたN=6のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの平均%を示す。
【
図7】
図7は、配列番号52のホモ二量体を0日目(0.30mg/kg)、28日目(0.33mg/kg)、35日目(0.33mg/kg)、42日目(0.50mg/kg)、49日目(1.00mg/kg)および56日目(1.00mg/kg)に皮下に投薬されたN=3のイヌについての平均の抗薬物抗体タイター(μg/mL)を示す。
【
図8】
図8は、配列番号58、60、62、および64を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図9】
図9は、配列番号64のホモ二量体を0日目(0.33mg/kg)、7日目(0.50mg/kg)、14日目(0.50mg/kg)、および21日目(0.50mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のイヌについての平均の抗薬物抗体タイター(μg/mL)を示す。
【
図10】
図10は、配列番号66のホモ二量体を0日目(0.33mg/kg)および14日目(0.16mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のイヌについての平均の抗薬物抗体タイター(μg/mL)を示す。
【
図11】
図11は、配列番号66のホモ二量体を0日目に0.33mg/kgで皮下に投薬されたN=2のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの平均%を示す。
【
図12】
図12は、配列番号66、68、70、72、74および76を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図13】
図13は、配列番号66、78、80、82、および84を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図14】
図14は、配列番号66、76および86を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図15】
図15は、配列番号66、82、84および88を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図16】
図16は、配列番号32、34、66、90、92および94を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図17】
図17は、配列番号34のホモ二量体を0日目に0.16mg/kgで皮下に投薬されたN=1のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図18】
図18は、配列番号34のホモ二量体を0日目(0.16mg/kg)、14日目(0.16mg/kg)、28日目(0.16mg/kg)、および42日目(0.16mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のイヌについての抗薬物抗体タイター(μg/mL)を示す。
【
図19】
図19は、配列番号32のホモ二量体を0日目に0.33mg/kgで皮下に投薬されたN=1のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図20】
図20は、配列番号32のホモ二量体を0日目(0.33mg/kg)、15日目(0.16mg/kg)、31日目(0.16mg/kg)および45日目(0.15mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のイヌについての0日目から60日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図21】
図21は、配列番号32のホモ二量体を0日目(0.33mg/kg)、15日目(0.16mg/kg)、31日目(0.16mg/kg)および45日目(0.15mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のイヌについての抗薬物抗体タイター(μg/mL)を示す。
【
図22】
図22は、配列番号96のホモ二量体を0日目に0.16mg/kgで皮下に投薬されたN=1のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図23】
図23は、配列番号98のホモ二量体を0日目に0.16mg/kgで皮下に投薬されたN=1のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図24】
図24は、配列番号102および104を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図25】
図25は、配列番号102のホモ二量体を0日目に0.16mg/kgで皮下に投薬されたN=1のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%、および配列番号104のホモ二量体を0日目に0.16mg/kgで皮下に投薬されたN=1のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図26】
図26は、イヌが食餌を与えられた時点に加えて、配列番号36のホモ二量体を皮下に投薬されたN=1のイヌについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図27】
図27は、配列番号106のホモ二量体を0日目に0.8mg/kgで皮下に投薬されたN=3のネコについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの平均%を示す。
【
図28】
図28は、配列番号106、108、110および112を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図29】
図29は、配列番号106のホモ二量体を0日目(0.8mg/kg)、28日目(0.6mg/kg)、35日目(0.6mg/kg)、42日目(0.6mg/kg)および48日目(0.8mg/kg)に皮下に投薬されたN=3のネコについての平均の抗薬物抗体タイター(μg/mL)を示す。
【
図30】
図30は、配列番号108、114、116および118を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図31】
図31は、配列番号106、112、および122を並べた配列比較を示す。「*」は所与の配列位置における全ての配列にわたる完全な相同性を表し、「:」、「.」またはスペースは、所与の配列位置における配列にわたる保存的、中等度、または非常に異なるアミノ酸突然変異をそれぞれ指す。
【
図32】
図32は、配列番号122のホモ二量体を0日目(0.16mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のネコについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図33】
図33は、ネコが食餌を与えられた時点に加えて、配列番号38のホモ二量体を0日目(0.16mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のネコについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図34】
図34は、配列番号38のホモ二量体を0日目(0.16mg/kg)、14日目(0.16mg/kg)、28日目(0.11mg/kg)、および42日目(0.09mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のネコについての抗薬物抗体タイター(μg/mL)を示す。
【
図35】
図35は、配列番号124のホモ二量体を0日目(0.16mg/kg)に皮下に投薬されたN=1のネコについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの%を示す。
【
図36】
図36は、配列番号40のホモ二量体を0日目(0.10mg/kg)に皮下に投薬されたN=3のネコについての0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの平均%を示す。
【
図37】
図37は、配列番号40のホモ二量体を7日目(0.20mg/kg)に皮下に投薬されたN=3のネコについての7日目から14日目までの空腹時血中グルコースレベルの平均%を示す。
【
図38】
図38は、融合タンパク質の「全長aa配列」(配列番号32)およびその対応する核酸配列(配列番号31)を示す。
【
図39】
図39は、融合タンパク質の「全長aa配列」(配列番号34)およびその対応する核酸配列(配列番号33)を示す。
【
図40】
図40は、融合タンパク質の「全長aa配列」(配列番号36)およびその対応する核酸配列(配列番号35)を示す。
【
図41】
図41は、融合タンパク質の「全長aa配列」(配列番号38)およびその対応する核酸配列(配列番号37)を示す。
【
図42】
図42は、融合タンパク質の「全長aa配列」(配列番号40)およびその対応する核酸配列(配列番号39)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
より低い頻度の投薬(例えば、週に1回の注射)を要求するインスリン治療は、所有者に対してより小さい負担となり、より良好な順守、安楽死のより少ない事例、および愛玩動物のより良好なアウトカムに繋がる。所与の種(例えば、イヌまたはネコ)について、糖尿病の超長期作用性の治療のために好適な分子は、所望のホモ二量体製造物の許容されるタイター(例えば、一過的にトランスフェクトされたHEK細胞からの50mg/Lより高い、一過的にトランスフェクトされたHEK細胞からの75mg/Lより高い、一過的にトランスフェクトされたHEK細胞からの100mg/Lより高いホモ二量体タイターなど)と共に哺乳動物細胞、例えば、ヒト胎児腎臓(HEK、例えば、HEK293)細胞において生産可能であるべきである。50mg/Lより高いホモ二量体タイターを有する候補のみが本発明において有用であると考えられ、その理由は、このレベルより低いホモ二量体タイターは、獣医学的製造物のための厳密に低い生産コスト要求を満たすチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるホモ二量体タイターの商用の製造を結果としてもたらさないようであることを経験が実証しているからである。追加的に、分子は、4℃でのIM-9インスリン受容体結合アッセイにおいて測定された場合に認識可能な親和性(例えば、5000nM未満のIC50、4000nM未満のIC50、3000nM未満のIC50、2500nM未満のIC50など)と共にインスリン受容体に結合しなければならない。経験に基づけば、5000nM未満のインスリン受容体活性IC50値を呈する分子のみが、標的種において要求される生物活性を呈するようであるとみなされる。分子はまた、より低い頻度の投薬を正当化するためにインビボで持続的な生物活性を実証(例えば、約2時間、6時間、9時間、12時間、18時間、1日、1.5日、2日、2.5日、3日、4日、5日、6日、7日、またはより長くより大きいグルコース低下活性を実証)しなければならない。分子はまた、標的動物において長期化された系滞留時間を実証しなければならない(例えば、血清半減期は3日またはより長くより大きくなければならない)。生物活性効力および生物活性の継続期間は、実施例11に記載されるように、FBGL%・日・kg/mgの単位を用いてmg/kgでの所与の用量に対して正規化された空腹時血中グルコースパーセント(FBGL%)曲線上の面積(NAOC)を算出することにより定量的に表すことができる。分子が生物活性の増加を実証する場合に該当するようにFBGL%のより大きい低下と共に、およびインスリン-Fc融合タンパク質が作用の継続期間の増加を実証する場合に該当するようにFBGL%が100%に復帰するまでにより長くかかる場合に、NAOCは増加する。本明細書に記載されるように有用であるために、分子は十分に高いNAOC値(例えば、好ましくは150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC、より好ましくは200FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC、よりいっそう好ましくは250FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC)を実証しなければならない。経験に基づけば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値において、標的種における用量要求は、許容される治療コストに達するように十分に低いものとなる。最後に、糖尿病などの慢性疾患を治療するために有用であるために、分子は、抗薬物抗体、殊に、繰返しの投薬後に分子の生物活性を中和する抗体の産生を誘導してはならない。したがって、分子は、標的動物における複数の繰返しの投薬後に生物活性の類似した継続期間および程度(すなわち、NAOC)を実証しなければならない(例えば、分子の1回目の週毎の皮下注射後のNAOCに対する3回目の週毎の皮下注射後のNAOCの比(すなわち、3回目の投薬後のNAOC比(NAOCR))は、好ましい順に、0.50より高い、0.60より高い、0.70より高い、0.80より高い、または0.90より高いまたはより高い)。
【0026】
ヒト臨床使用用の提案される超長期作用性インスリン治療は、インビボでの作用を長期化させるためにヒトFc断片を使用するインスリン-Fc融合タンパク質を含む。ヒトFc断片は免疫原性であり、したがって伴侶動物(例えば、イヌまたはネコ)において抗薬物抗体の産生を誘導し得ることが予期されるので、ヒトFc断片は種特異的(例えば、イヌ科動物またはネコ科動物)Fc断片で置き換えられなければならない。しかしながら、
かなり予想外なことに、ヒトFc断片と種特異的(例えば、イヌ科動物またはネコ科動物)Fc断片との単純な交換は、許容されるホモ二量体タイター(例えば、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)または十分に高いNAOC値(例えば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC)を有する製造物をもたらさないことが見出された。例えば、一部の場合には、Fc断片について特定のアイソタイプ(例えば、イヌ科動物IgGBまたはネコ科動物IgG1b)のみが、高い十分なホモ二量体タイター(例えば、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)および許容可能に高いNAOC値(例えば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC)を有するインスリン-Fc融合タンパク質を結果としてもたらした。他の場合には、インスリンポリペプチドの特定のアミノ酸は標的種において免疫原性であることが見出され、それにより、許容可能に高いNAOC値(例えば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値)および0.5より高い3回目の週毎の皮下投薬後のNAOCR値と共に標的種において非免疫原性および生物活性の両方である比較的少数の実施形態を見出すために部位特異的な突然変異を要求した。さらなる場合には、グリコシル化を予防し、それによりインスリン-Fc融合タンパク質の免疫原性をさらに低減するためにFc断片を突然変異させた場合、予想外なことに、Fc断片中の特定のアミノ酸突然変異のみが所望のホモ二量体タイター(例えば、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)およびNAOC値(例えば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC)に繋がることが発見された。さらには、0.5より高い3回目の週毎の皮下投薬後のNAOCR値も達成しながら所望のホモ二量体タイター(例えば、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)およびNAOC値(例えば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC)を有するこれらのFc突然変異型非グリコシル化インスリンFc融合タンパク質を製造するためにインスリン成分における追加の突然変異が要求されることが発見された。したがって、許容可能に高いホモ二量体タイター(例えば、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)、NAOC値(例えば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値)、および0.5より高い3回目の週毎の皮下投薬後のNAOCR値を有し、伴侶動物(例えば、イヌまたはネコ)における糖尿病の治療のために好適な、生産可能、高純度、長期作用性、生物活性、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質であって、それぞれがインスリンポリペプチド、Fc断片、およびインスリンポリペプチドとFc断片との間のリンカーを含む、融合タンパク質が本明細書において提供される。
【0027】
定義
本明細書において使用される場合、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的目的語の1つまたは1つより多く、例えば、少なくとも1つを指す。本明細書において「含む」という用語と組み合わせて使用される場合の「a」または「an」という語の使用は「1つ」を意味し得るが、それは、「1つまたはより多く」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1つより多く」の意味とも合致する。
【0028】
本明細書において使用される場合、「約」および「おおよそ」は、一般に、測定の性質または精度を考慮して測定された量についての許容される誤差の程度を意味する。例示的な誤差の程度は、値の所与の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
【0029】
本明細書において使用される場合、障害(例えば、本明細書に記載の障害)を治療するために有効な分子、化合物、コンジュゲート、もしくは物質の量、「治療有効量」、または「有効量」は、そのような治療の非存在下で予期されるものを超える、対象の治療、または障害(例えば、本明細書に記載の障害)を有する対象の治癒、和らげること、緩和もしくは改善において、対象への単回または複数回投薬の投与において有効な、分子、化合物、コンジュゲート、または物質の量を指す。
【0030】
本明細書において使用される場合、「アナログ」という用語は、別の化合物またはコンジュゲートの化学構造に類似しているが少なくとも1つの態様においてそれとは異なる化学構造を有する化合物またはコンジュゲート(例えば、本明細書に記載されるような化合物またはコンジュゲート、例えば、インスリン)を指す。
【0031】
本明細書において使用される場合、「抗体」または「抗体分子」という用語は、免疫グロブリン分子(Ig)、免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的活性部分、すなわち、抗原に特異的に結合する、例えば、それと免疫反応を起こす抗原結合部位を含有する分子を指す。本明細書において使用される場合、「抗体ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの可変または定常領域を指す。本明細書において使用される場合、「抗体ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの可変または定常領域を指す。抗体はいくつかのクラス、例えば、哺乳動物(例えば、ヒトおよびネコ科動物)の場合、IgA、IgM、またはIgGを含むことが当該技術分野において報告されている。免疫グロブリンのクラスは、異なるアイソタイプ、例えば、イヌ科動物についてIgGA、IgGB、IgGC、およびIgGD、またはネコ科動物についてIgG1a、IgG1b、およびIgG2にさらに分類することができる。所与の免疫グロブリンクラスの免疫グロブリンアイソタイプは、互いに異なるアミノ酸配列、構造、および機能的特性(例えば、Fc(ガンマ)受容体に対する異なる結合親和性)を含むことを当業者は認識する。「特異的に結合する」または「免疫反応を起こす」は、抗体が所望の抗原の1つまたはより多くの抗原決定基と反応し、かつ他のポリペプチドに対してより低い親和性を有する、例えば、他のポリペプチドと反応しないことを意味する。
【0032】
本明細書において使用される場合、「曲線下面積」または「AUC」という用語は、インスリン-Fc融合タンパク質の所与の用量が投与された後の対象についてのFBGL%対時間曲線下の積分された面積を指す。本明細書において使用される場合、「曲線上面積」または「AOC」という用語は、インスリン-Fc融合タンパク質の生物学的効力の度合として使用され、AOCは、FBGL%対時間曲線下の合計の可能な面積とAUC値との間の差異に等しい。本明細書において使用される場合、「正規化された曲線上面積」、「正規化されたAOC」、または「NAOC」は、投与されたインスリン-Fc融合タンパク質の実際の用量により割られたAOC値である。本明細書において使用される場合、「正規化されたAOC比」または「NAOCR」という用語は、一連の投与におけるインスリン-Fc融合タンパク質の1回目の投与の結果としてもたらされるNAOCに対するインスリン-Fc融合タンパク質の具体的な投与の結果としてもたらされるNAOCの比である。NAOCRは、そのため、繰返しの投与後のインスリン-Fc融合タンパク質の生物学的活性における変化の度合を提供する。
【0033】
本明細書において使用される場合、「生物活性」、「活性」、「生物学的活性」、「効力」、「生物活性効力」、または「生物学的効力」という用語は、インスリン-Fc融合タンパク質が標的対象においてインスリン受容体を活性化させかつ/または血中グルコースレベルにおける低減を発揮する程度を指す。本明細書において使用される場合、「インビトロ活性」または「インスリン受容体活性」は、インスリン-Fc融合タンパク質がインスリン受容体に結合する親和性を指し、典型的には、インスリン-Fc融合タンパク質が競合結合アッセイにおいてインスリン受容体からインスリン参照標準の半分を置換する濃度(すなわち、IC50)により測定される。本明細書において使用される場合、「インビボ活性」は、インスリン-Fc融合タンパク質の投与後の標的対象の空腹時血中グルコースレベルにおける低減の程度および継続期間を指す。
【0034】
本明細書において使用される場合、「生合成」、「組換え合成」、または「組換えにより作られた」という用語は、細胞にインスリン-Fc融合タンパク質をコードする核酸分子(例えば、ベクター)をトランスフェクトすること(例えば、インスリン-Fc融合タ
ンパク質全体が単一の核酸分子によりコードされる場合)によりインスリン-Fc融合タンパク質が宿主細胞内で発現されるプロセスを指す。例示的な宿主細胞としては、哺乳動物細胞、例えば、HEK293細胞またはCHO細胞が挙げられる。細胞は、当該技術分野における標準的な方法を使用して培養することができ、発現されたインスリン-Fc融合タンパク質は、当該技術分野における標準的な方法を使用して細胞培養物から回収および精製されてもよい。
【0035】
本明細書において使用される場合、「細胞表面受容体」という用語は、一般に細胞の膜の外表面上に見出され、かつ可溶性分子、例えば、血液供給中で循環する分子と相互作用する、タンパク質などの分子を指す。一部の実施形態では、細胞表面受容体は、ホルモン受容体(例えば、インスリンホルモン受容体またはインスリン受容体(IR))または抗体(例えば、Fc(ガンマ)受容体、例えば、Fc(ガンマ)受容体I、またはFc新生児受容体、例えば、FcRn)のFc断片もしくはFc領域に結合するFc受容体を含んでもよい。本明細書において使用される場合、「インビトロ活性」または「Fc(ガンマ)受容体活性」または「Fc(ガンマ)受容体結合」または「FcRn受容体活性」または「FcRn結合」は、インスリン-Fc融合タンパク質がFc受容体(例えば、Fc(ガンマ)受容体またはFcRn受容体)に結合する親和性を指し、典型的には、マイクロプレートリーダーにおいて測定されるようなOD 450nm値を使用してアッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)アッセイ)において測定されるような、インスリン-Fc融合タンパク質がその最大結合の半分に達することを引き起こすインスリン-Fc融合タンパク質の濃度(すなわち、EC50値)により測定される。
【0036】
本明細書において使用される場合、「空腹時血中グルコースレベル」または「FBGL」という用語は、食餌が投与されない期間の終了時かつインスリン-Fc融合タンパク質が投与される時点の直前における標的対象における平均血中グルコースレベルを指す。本明細書において使用される場合、「空腹時血中グルコースレベルのパーセント」、「空腹時血中グルコースレベルの%」、または「FBGL%」という用語は、空腹時血中グルコースレベルに対する所与の血中グルコースレベルの比に100を掛けたものを指す。
【0037】
本明細書において使用される場合、「免疫原性の」または「免疫原性」という用語は、所与の分子(例えば、本発明のインスリン-Fc融合タンパク質)の繰返しの投与後に、対象が該分子に特異的に結合することができる抗体(すなわち、抗薬物抗体)を発生させるように標的対象の免疫系を惹起する該分子の能力を指す。本明細書において使用される場合、「中和する」、「中和抗体」、または「中和抗薬物抗体」という用語は、標的対象中の化合物の生物学的活性に干渉する抗体の能力を指す。本明細書において使用される場合、「免疫原性エピトープ」、「免疫原性ホットスポット」、または「ホットスポット」という用語は、抗薬物抗体の中等度のまたは強い結合の原因となる所与の分子(例えば、本発明のインスリン-Fc融合タンパク質)の突然変異またはエピトープを指す。
【0038】
本明細書において使用される場合、「インスリン参照標準」という用語は、(i)哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ、またはネコ)からの天然に存在するインスリン、(ii)Fc断片を含まないインスリンポリペプチド、または(iii)標準治療用インスリン(例えば、商業的に入手可能なインスリン)のうちのいずれか1つである。
【0039】
本明細書において使用される場合、「単量体」という用語は、単一のポリペプチドを含むタンパク質または融合タンパク質を指す。実施形態では、「単量体」は、インスリンポリペプチドおよびFc断片ポリペプチドを含むタンパク質または融合タンパク質、例えば、単一のポリペプチドであって、インスリンおよびFc断片ポリペプチドがペプチド結合により接合されて単一のポリペプチドを形成したものである。実施形態では、単量体は単一の核酸分子によりコードされる。
【0040】
本明細書において使用される場合、「N末端」は、アミノ酸のアルファ-アミノ基(例えば、第2の炭素原子に隣接して位置する1個の炭素原子に共有結合的に連結しており、第2の炭素原子がアミノ酸のカルボニル基の部分である、遊離アミノ)である遊離アミン基を含有するアミノ酸により開始されるタンパク質またはポリペプチドの開始を指す。本明細書において使用される場合、「C末端」は、カルボン酸基を含有するアミノ酸により終了し、カルボン酸基の炭素原子がアミノ酸のアルファ-アミノ基に隣接して位置する、タンパク質またはポリペプチドの末端を指す。
【0041】
本明細書において使用される場合、「薬力学」または「PD」は、一般に、対象におけるインスリン-Fc融合タンパク質の生物学的効果を指す。特に、本明細書においてPDは、インスリン-Fc融合タンパク質の投与後の対象における経時的な空腹時血中グルコースレベルにおける低減の度合を指す。
【0042】
本明細書において使用される場合、「薬物動態」または「PK」は、一般に、その吸収、分布、代謝、および排出の点でのインスリン-Fc融合タンパク質と対象の身体との特徴的な相互作用を指す。特に、本明細書においてPKは、インスリン-Fc融合タンパク質の投与後の所与の時点における対象の血液または血清中のインスリン-Fc融合タンパク質の濃度を指す。本明細書において使用される場合、「半減期」は、薬物排除のための1次指数減衰モデルから算出されるような、対象の血液または血清中のインスリン-Fc融合タンパク質の濃度がその元々の値の半分に達するためにかかる時間を指す。より大きい「半減期」値を有するインスリン-Fc融合タンパク質は、標的対象において作用のより長い継続期間を実証する。
【0043】
アミノ酸またはヌクレオチド配列における「配列同一性」、「配列相同性」、「相同性」または「同一の」という用語は、本明細書において使用される場合、変種のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の指定された連続するセグメントが参照配列のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対してアライメントおよび比較された場合に、同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基が変種および参照配列内に見出されることを記載する。配列アライメントおよび配列間の同一性を決定する方法は当該技術分野において公知であり、これには、類似性のために配列をオーガナイズし、アライメントし、かつ比較するClustal
Omega(該ソフトウェアは、各配列位置をハイライトし、その位置において全ての配列にわたり比較して以下のスコアのうちの1つを割り当てる:「*」(アステリスク)は単一の完全に保存された残基を有する配列位置のためであり、「:」(コロン)は、Gonnet PAM 250マトリックスにおいて0.5より高いスコア付けを有する強く類似した特性の群間の保存を指し示し、「.」(ピリオド)はGonnet PAM 250マトリックスにおいて0.5より低いまたはそれに等しいスコア付けを有する弱く類似した特性の群間の保存を指し示し、「-」(ダッシュ)は、配列ギャップ、すなわち、局所的な相同性が配列のある特定の範囲内の比較の具体的なセット内に存在しないことを指し示し、空白スペース「 」は、比較された配列にわたりその具体的な位置について配列相同性がほとんどまたは全くないことを指し示す。例えば、Ausubel et al., eds. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 19 (Greene Publishing and Wiley- Interscience, New York)を参照)、およびALIGNプログラム(Dayhoff (1978), Atlas of Polypeptide Sequence and Structure 5: Suppl. 3 (National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C.))の使用が含まれる。2つのヌクレオチド配列の最適なアライメントに関して、変種ヌクレオチド配列の連続するセグメントは、参照ヌクレオチド配列に関して追加のヌクレオチドまたは欠失したヌ
クレオチドを有してもよい。同様に、2つのアミノ酸配列の最適なアライメントの目的のために、変種アミノ酸配列の連続するセグメントは、参照アミノ酸配列に関して追加のアミノ酸残基または欠失したアミノ酸残基を有してもよい。一部の実施形態では、参照ヌクレオチド配列または参照アミノ酸配列に対する比較のために使用される連続するセグメントは、少なくとも6、10、15、または20個の連続するヌクレオチド、またはアミノ酸残基を含み、30、40、50、100、またはより多くのヌクレオチドまたはアミノ酸残基であってもよい。変種のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列中にギャップを含めることと関連付けられる増加した配列同一性の訂正は、ギャップペナルティを割り当てることにより行うことができる。配列アライメントの方法は当該技術分野において公知である。
【0044】
実施形態では、2つの配列間の同一性パーセントまたは「相同性」の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成される。例えば、アミノ酸配列の同一性パーセントは、12のギャップオープンペナルティおよび2のギャップ伸長ペナルティ、BLOSUMマトリックス62を用いてaffine 6ギャップ検索を使用してSmith-Waterman相同性検索アルゴリズムを使用して決定される。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムは、Smith and Waterman (1981) Adv.
Appl. Math 2:482-489(参照により本明細書に組み込まれる)において記載されている。実施形態では、ヌクレオチド配列の同一性パーセントは、25のギャップオープンペナルティおよび5のギャップ伸長ペナルティを使用してSmith-Waterman相同性検索アルゴリズムを使用して決定される。配列同一性のそのような決定は、例えば、TimeLogicのDeCypher Hardware Acceleratorを使用して行うことができる。
【0045】
本明細書において使用される場合、「相同性」という用語は、例えば、ベータ鎖、ヘリックス、およびフォールドの、共通の構造的特徴および共通の空間分布を位置付けることにより2つまたはより多くのタンパク質を比較するために使用される。よって、相同のタンパク質構造は空間解析により定義される。構造的相同性の測定は、空間の幾何学的-位相幾何学的特徴を計算することを伴う。三次元(3D)タンパク質構造を生成および解析するために使用される1つのアプローチは相同性モデリング(比較モデリングまたは知識ベースモデリングとも呼ばれる)であり、これは、3D類似性は2D類似性を反映するという事実に基づいて類似した配列を見出すことにより機能する。相同的構造は、配列類似性を必要条件として含意しない。
【0046】
本明細書において使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、イヌ科動物およびネコ科動物を含むことが意図される。例示的なイヌ科動物およびネコ科動物対象としては、疾患もしくは障害、例えば、糖尿病もしくは本明細書に記載の別の疾患もしくは障害を有するイヌおよびネコ、または正常な対象が挙げられる。
【0047】
本明細書において使用される場合、「タイター」または「収率」という用語は、細胞培養物の体積当たりの生合成(例えば、哺乳動物細胞中、例えば、HEK293細胞またはCHO細胞中)の結果としてもたらされる融合タンパク質製造物(例えば、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質)の量を指す。製造物の量は、製造プロセスの任意のステップ(例えば、精製の前または後)において決定されてもよいが、収率またはタイターは常に元々の細胞培養物の体積当たりで記載される。本明細書において使用される場合、「製造物収率」または「総タンパク質収率」という用語は、細胞により発現され、かつ少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィーステップ(例えば、プロテインAまたはプロテインG)を介して精製されたインスリン-Fc融合タンパク質の総量を指し、インスリン-Fc融合タンパク質の単量体、インスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体、およびインスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体のより高次の分子凝集物を含
む。本明細書において使用される場合、「ホモ二量体パーセント」または「ホモ二量体%」という用語は、所望のホモ二量体である融合タンパク質製造物(例えば、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質)の割合を指す。本明細書において使用される場合、「ホモ二量体タイター」という用語は、細胞培養物の体積当たりで報告されるプロテインA精製ステップ後のホモ二量体%および総タンパク質収率の積を指す。
【0048】
本明細書において使用される場合、疾患または障害を有する対象を「治療する」(treat)または「治療する」(treating)という用語は、疾患または障害の少なくとも1つの症状が、治癒され、治され、和らげられ、緩和され、変更され、矯められ(remedied)、寛解され、または改善されるように、対象をレジメン、例えば、本明細書に記載の融合タンパク質などの融合タンパク質の投与に供することを指す。治療することは、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の症状を和らげ、緩和し、変更し、矯め、寛解させ、改善しまたはそれに影響するために有効な量を投与することを含む。治療は、疾患または障害の症状の増悪または悪化を阻害してもよい。
【0049】
インスリン-Fc融合タンパク質の成分および構造
本開示は、ペプチドリンカーを介して種特異的Fc断片に連結したインスリンポリペプチドを含む融合タンパク質(すなわち、インスリン-Fc融合タンパク質)の組成物、および伴侶動物(例えば、イヌまたはネコ)において糖尿病を治療するためのその使用に関する。本明細書において使用される場合、「融合タンパク質」および「インスリン-Fc融合タンパク質」という用語は、ペプチド結合を通じて共有結合的に連結した、例えば異なる供給源(異なるタンパク質、ポリペプチド、細胞など)からの、1つより多くの部分を含むタンパク質を指す。インスリン-Fc融合タンパク質は、(i)各部分をコードする遺伝子を接続して単一の核酸分子とすることおよび(ii)宿主細胞(例えば、HEKまたはCHO)中で以下:(N末端)--インスリンポリペプチド--リンカー--Fc断片--(C末端)のように核酸分子がコードするタンパク質を発現させることにより共有結合的に連結している。完全に組換え合成のアプローチは、インスリンポリペプチドおよびFc断片が別々に合成され、次に化学的に共役される方法よりも好ましい。化学的共役ステップおよびその後の精製プロセスは、生産の複雑性を増加させ、製造物収率を低減し、かつコストを増加させる。
【0050】
本明細書において使用される場合、「二量体」という用語は、共有結合的に連結した2つのポリペプチドを含むタンパク質または融合タンパク質を指す。実施形態では、2つの同一のポリペプチドが共有結合的(例えば、ジスルフィド結合を介して)に連結されて「ホモ二量体」(
図1において図式的に表される)が形成される。ジスルフィド結合は
図1において点線として示され、現実のジスルフィド結合の総数は、
図1に示される数より多いまたは少なくてもよい。実施形態では、ホモ二量体は単一の核酸分子によりコードされ、ホモ二量体は、最初にインスリン-Fc融合タンパク質単量体を形成すること、次に細胞の内部でのさらなるプロセシングにより2つの同一のインスリン-Fc融合タンパク質単量体をホモ二量体に集合させることにより細胞の内部で組換えにより作られる。
【0051】
本明細書において使用される場合、「多量体」、「多量体の」、または「多量体状態」という用語は、Fc融合タンパク質二量体と平衡状態であってもよい、またはFc融合タンパク質二量体の永久的に凝集したバージョン(例えば、Fc融合タンパク質ホモ二量体の二量体、Fc融合タンパク質ホモ二量体の三量体、Fc融合タンパク質ホモ二量体の四量体、または5つもしくはより多くのFc融合タンパク質ホモ二量体を含有するより高次の凝集物)として作用してもよい、Fc融合タンパク質二量体の非共有結合性の会合した形態を指す。Fc融合タンパク質の多量体形態は、インスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体とは異なる物理的、安定性、または薬理学的活性を有してもよいことが予期され得る。
【0052】
インスリンポリペプチド
インスリンポリペプチドは、例えば、膵臓内のランゲルハンスの膵島中のβ細胞により産生されるインスリンまたはインスリンアナログであってもよい。インスリンは、血液からのグルコースの吸収を調節することにより機能する。タンパク質およびグルコースレベルの増加などで刺激されると、インスリンはβ細胞から放出されてインスリン受容体(IR)に結合し、哺乳動物(例えば、ヒト、イヌ科動物、またはネコ科動物)代謝の多くの態様に影響するシグナルカスケードを開始させる。このプロセスの妨害は、いくつかの疾患、特に、糖尿病、インスリノーマ、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、および多嚢胞性卵巣症候群に直接的に関する。本開示のインスリンアナログは、インスリンの構造に関し得るが、1つまたはより多くの改変を含有してもよい。一部の実施形態では、インスリンアナログは、インスリン-Fc融合タンパク質の具体的な特色または特徴に影響し得る、インスリンと比べた少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、付加または化学修飾を含む。例えば、本明細書に記載の改変または変更は、参照標準と比べたインスリン-Fc融合タンパク質の構造、安定性、pH感受性、生物活性、または細胞表面受容体(例えば、インスリンホルモン受容体)への結合親和性に影響してもよい。
【0053】
インスリンのアミノ酸配列は、具体的には脊椎動物において、進化を通じて強く保存されている。例えば、天然のイヌ科動物インスリンはヒトインスリンから1アミノ酸のみ異なり、天然のネコ科動物インスリンはヒトインスリンから4アミノ酸のみ異なる。本明細書において使用される場合、「B鎖」、「Cペプチド」または「C鎖」、および「A鎖」という用語は、
図1に示されるようなインスリンポリペプチドのペプチドセグメントを指す。インスリンは、ジスルフィド結合(例えば、1つまたはより多くのB鎖システイン側鎖チオールおよび1つまたはより多くのA鎖システイン側鎖チオールにより形成されるジスルフィド結合)を介して接続された2つのペプチド鎖(すなわち、B鎖およびA鎖)を含有する51アミノ酸のホルモンである。インスリンのA鎖は21アミノ酸の長さであり、インスリンのB鎖は30アミノ酸の長さである。インスリンの天然の形態において、A鎖は、2つのA鎖システイン側鎖チオールにより形成される1つの鎖内ジスルフィド結合を含有する。参照の目的のために、配列番号1のヒトインスリンA鎖および配列番号2のヒトインスリンB鎖の配列を以下に示す:
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号1)
GIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号2)
【0054】
本明細書において使用される場合、「インスリン」または「インスリンポリペプチド」という用語は、成熟したインスリン、プレプロインスリン、プロインスリン、および天然に存在するインスリン、またはこれらのアナログを包含する。実施形態では、インスリンポリペプチドは全長インスリンポリペプチドまたはその断片であることができる。実施形態では、インスリンポリペプチドは、成熟したインスリン、プレプロインスリン、プロインスリン、または天然に存在するインスリンからの1つまたはより多くの断片を含むことができる。
【0055】
インスリンは、通常、N末端--B鎖:C鎖:A鎖--C末端ポリペプチドとして構築され、C鎖は、生物活性となるために切断される。参照目的のために、C鎖を含むヒトインスリン分子全体(すなわち、ヒトプロインスリン)の配列をC鎖に下線を引いて以下に示す:
FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKTRREAEDLQVGQVELGGGPGAGSLQPLALEGSLQKRGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号3)
一本鎖インスリンポリペプチドの生物活性の2鎖ポリペプチドへの変換は、通常、2つのエンドプロテアーゼ、I型エンドプロテアーゼ、Cペプチド-B鎖接続を妨害するPC
1およびPC3、およびPC2、ならびに正確に正しい部位においてCペプチド-A鎖結合を切断するII型エンドプロテアーゼによりグルコース刺激性のインスリン分泌の前にランゲルハンスの膵島のβ細胞内で達成される。しかしながら、インスリンなどの治療用分子の生合成のために使用される細胞システム(例えば、細菌、酵母、および哺乳動物(例えば、HEKおよびCHO)細胞システム)はこの経路を持たず、したがって、変換は、化学的または酵素的方法を使用して単鎖ポリペプチドの発現および回収後に行われなければならない。発現および回収後にC鎖を切断するための全ての公知の技術は、A鎖のN末端の直前のリジンにおいて終了するようにC鎖を最初に改変することに依拠する。次に、リジン残基のC末端において特異的にペプチド結合をクリップするトリプシンまたはLys-Cファミリーから選択される酵素を使用して、単鎖インスリンポリペプチドは、C鎖のC末端リジンおよびB鎖のN末端から29番目の位置におけるC末端リジンにおいて切断される。一部の場合には、結果としてもたらされる生物活性の2鎖インスリンは、B鎖のN末端から30番目の位置においてクリップされたアミノ酸を再取付けすることなく使用され、一部の場合には、B鎖のN末端から30番目の位置においてクリップされたアミノ酸は、追加の酵素的方法を使用して分子に再び付加される。そのようなプロセスはインスリンでよく機能し、その理由は、それはその2鎖ポリペプチド形態全体に1つのリジンのみを含有するからである。しかしながら、このプロセスは、本明細書において含有されるインスリン-Fc融合タンパク質において使用することはできず、その理由は、全ての公知のFc断片は複数のリジン残基を含有するからである。酵素切断プロセスは、したがって、Fc断片を非機能的部分に消化し、それにより、インビボでインスリンポリペプチドの作用を長期化させるFc断片の能力を排除することになる。したがって、本発明のインスリン-Fc融合タンパク質は、C鎖切断を要求せず、したがってその単鎖形態において生物活性であるインスリンポリペプチドを含まなければならない。
【0056】
多数の生物活性の単鎖インスリンポリペプチドが当該技術分野において記載されてきた。全ての場合に、単鎖インスリンポリペプチドは、特定の長さおよび組成のC鎖の他に、静電バランスを達成し、凝集を予防し、かつインスリン受容体(IR)結合および/または下流のシグナル伝達を増進して天然の2鎖インスリンと同等のレベルにおいて生物活性を達成するために特定のアミノ酸部位において突然変異したA鎖およびB鎖を含有する。本明細書において、ペプチドセグメント上の突然変異の位置は、セグメントの名称(例えば、B鎖、C鎖、A鎖)およびセグメントのN末端からカウントしたアミノ酸の数を使用して記される。例えば、「B16」という表記は、B鎖のアミノ酸配列のN末端から16番目のアミノ酸を指す。「A8」という表記は、A鎖のN末端から8番目のアミノ酸を指す。さらには、アミノ酸が具体的な位置においてその天然の形態から新たなアミノ酸へと突然変異している場合、その位置には新たなアミノ酸のための1文字アミノ酸コードが付記される。例えば、B16Aは、B鎖のアミノ酸配列のN末端から16番目のアミノ酸におけるアラニン突然変異を指し、A8Hは、A鎖のアミノ酸配列のN末端から8番目のアミノ酸におけるヒスチジン突然変異を指す。
【0057】
一例では、配列GGGPRRのC鎖ならびにA鎖およびB鎖における追加の置換を有する単鎖インスリンアナログ(配列番号4)がThe Department of Biochemistry, Case Western Reserve University School of Medicine and the Department of Medicine, University of Chicagoにより開発された(Hua, Q.-x, Nakagawa, S. H., Jia, W., Huang, K., Phillips, N. B., Hu, S.-q.,
Weiss, M. A., (2008) J. Biol. Chem Vol.
283, No. 21 pp 14703-14716を参照)。この例では、A鎖の位置8(すなわち、A8)においてヒスチジンはスレオニンを置換しており、B鎖の位置10(すなわち、B10)においてアスパラギン酸はヒスチジンを置換しており、B鎖
の位置28(すなわち、B28)においてアスパラギン酸はプロリンを置換しており、かつB鎖の位置29(すなわち、B29)においてプロリンはリジンを置換している。各非天然アミノ酸に下線を引いて配列番号4を以下に列記する:
FVNQHLCGSDLVEALYLVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCN(配列番号4)
【0058】
実施形態では、アラニンは、配列番号4におけるB鎖のN末端から位置16(すなわち、B16)においてチロシンを置換して配列番号5を生成してもよく、この位置におけるアラニン置換はインスリン特異的T細胞を活性化させる能力がより低いことが公知である(Alleva, D.G., Gaur, A., Jin, L., Wegmann, D., Gottlieb, P.A., Pahuja, A., Johnson, E.B., Motheral, T., Putnam, A., Crowe, P.D., Ling, N., Boehme, S.A., Conlon,
P.J., (2002) Diabetes Vol. 51, No. 7 pp
2126-2134)。各非天然アミノ酸に下線を引いて配列番号5を以下に列記する:
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCN(配列番号5)
【0059】
一部の実施形態では、予想外なことに、配列番号4および配列番号5における特定のアミノ酸は、標的動物(例えば、イヌまたはネコ)における繰返しの皮下注射後に中和抗薬物抗体の発生に繋がることが発見された。抗薬物抗体は、複数の注射後のNAOCにおける許容できない低減(例えば、0.5未満の3回目の注射後のNAOCR値)に繋がり、関連付けられるインスリン-Fc融合タンパク質を実行不可能なものとした。特に、ヒスチジンへのA8突然変異およびアスパラギン酸へのB10突然変異は抗薬物抗体の特異性の大部分を説明し、そのためインスリン-ポリペプチド上の免疫原性「ホットスポット」(例えば、免疫原性エピトープ)を表すことが本開示の発明に繋がるステップにおいて発見された。したがって、好ましい実施形態では、インスリン-ポリペプチドは、インスリンポリペプチドの位置A8におけるヒスチジンまたは位置B10におけるアスパラギン酸を含有しない。
【0060】
一実施形態では、A8およびB10アミノ酸をそれらの天然のそれぞれスレオニンおよびヒスチジンとして単純に保つことは抗薬物抗体応答を排除し、結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質は標的種において生物活性ではない(例えば、NAOCは150FBGL%・日・kg/mg未満である)ことが確認された。したがって、好適な解決策を見出すために様々なA鎖、B鎖、およびC鎖のバリエーションを用いて実験を行うことが必要であった。ほとんどの変種は50mg/Lより高いホモ二量体タイターを達成せず、それらの目的を満たしたものの多くは標的種における許容されるレベルの生物活性(例えば、150FBGL%・日・kg/mgより高い許容されるNAOC値)に達しなかった。120を超える変種をスクリーニングし、配列番号6_NULLの以下のインスリンポリペプチドを、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、150FBGL%・日・kg/mgより高い標的種におけるNAOC値、最小の免疫原性、および関連付けられるインスリン-Fc融合タンパク質の0.5より高い標的種における3回目の注射後のNAOCR値の達成に関して好適であるとみなした(非天然アミノ酸に下線を引き、欠失した天然アミノ酸を下線を引いたZを用いて表す):
FVNQHLCGSX
1
LVEALELVCGERGFHYZZZZGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2
STCSLDQLENYCX
3
(配列番号6_NULL)
(X1はDではなく、X2はHではなく、かつX3は存在しないまたはNである)。
【0061】
特定の実施形態では、配列番号6_NULLにおいて、X1はHであり、X2はTであ
り、かつX3は存在しないまたはNであり、これは以下の配列番号7_NULL(非天然アミノ酸に下線を引き、欠失した天然アミノ酸を下線を引いたZを用いて表す)を結果としてもたらす:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYZZZZGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCX
3
(配列番号7_NULL)
(X3は存在しないまたはNである)。
【0062】
特定の実施形態では、配列番号7_NULLにおいて、X3は存在せず、これは以下の配列番号8_NULL(非天然アミノ酸に下線を引き、欠失した天然アミノ酸を下線を引いたZを用いて表す)を結果としてもたらす:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYZZZZGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCZ(配列番号8_NULL)
【0063】
特定の実施形態では、配列番号7_NULLにおいて、X3はNであり、これは以下の配列番号9_NULL(非天然アミノ酸に下線を引き、欠失した天然アミノ酸を下線を引いたZを用いて表す)を結果としてもたらす:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYZZZZGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCN(配列番号9_NULL)
【0064】
一部の実施形態では、合成の間のグリコシル化を予防しかつ標的動物(例えば、イヌまたはネコ)における結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質の免疫原性を潜在的に低減するためにFc断片を突然変異させた。予想外なことに、150FBGL%・日・kg/mgより高い標的種におけるNAOC値および0.5より高い標的種における3回目の注射後のNAOCR値と共にインスリン-Fc融合タンパク質を十分に生産可能(例えば、50mg/Lより高いホモ二量体タイターを有する)かつ非免疫原性とするためにさらに別のアミノ酸突然変異がインスリンポリペプチドに要求されるようなインスリンポリペプチドと突然変異したFc断片との間の相互作用があることが発見された。特に、特定の、突然変異した、非グリコシル化Fc断片に連結された場合に、インスリンポリペプチド上のB16アミノ酸をアラニンに突然変異させることが要求されることが発見され、これは以下のインスリンポリペプチド配列番号10_NULL(非天然アミノ酸に下線を引き、欠失した天然アミノ酸を下線を引いたZを用いて表す)を結果としてもたらした:
FVNQHLCGSX
1
LVEALALVCGERGFHYZZZZGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2
STCSLDQLENYCZ(配列番号10_NULL)
(X1はDではなく、かつX2はHではない)。
【0065】
特定の実施形態では、配列番号10_NULLにおいて、X1はHであり、かつX2はTであり、これは以下の配列番号11_NULL(非天然アミノ酸に下線を引き、欠失した天然アミノ酸を下線を引いたZを用いて表す)を結果としてもたらす:
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYZZZZGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCZ - 配列番号11_NULL
【0066】
以下は、上記に示される配列を再記載したものであるが、インスリンポリペプチド配列の表記から存在しない記号Zのアミノ酸が除去されている。ここでもまた、全ての場合において非天然アミノ酸に下線を引いている。混乱を回避するために、Z記号を含有する各元々の配列を、Z記号を除去した新たな配列の上に列記している。2つの別々の表記にもかかわらず、対となる配列は正確に同じインスリンポリペプチドを指す。
配列番号6_NULLは以下の通りに再記載される:
FVNQHLCGSX
1
LVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2
STCSLDQLENYCX
3
(配列番号6)
(X1はDではなく、X2はHではなく、かつX3は存在しないまたはNである)。
配列番号7_NULLは以下の通りに再記載される:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCX
3
(配列番号7)
(X3は存在しないまたはNである)。
配列番号8_NULLは以下の通りに再記載される:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYC
(配列番号8)
配列番号9_NULLは以下の通りに再記載される:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCN
(配列番号9)
配列番号10_NULLは以下の通りに再記載される:
FVNQHLCGSX
1
LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2
STCSLDQLENYC
(配列番号10)
(X1はDではなく、かつX2はHではない)。
配列番号11_NULLは以下の通りに再記載される:
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYC
(配列番号11)
【0067】
リンカー
組換えにより作られるインスリン-Fc融合タンパク質の構築の成功は、インスリンポリペプチドをFc断片に接続するリンカーを要求する。実施形態では、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質は、アミノ酸(例えば、天然または非天然アミノ酸)を含むペプチドインスリンポリペプチドとFc断片との間のリンカーを含む。実施形態では、ペプチドリンカーは核酸分子によりコードされることができ、例えば、単一の核酸分子は、インスリンポリペプチド内の様々なペプチドの他に、ペプチドリンカーおよびFc断片をコードすることができる。ペプチドリンカーの選択(例えば、長さ、組成、疎水性、および二次構造)は、インスリン-Fc融合タンパク質の生産可能性(すなわち、ホモ二量体タイター)、化学的および酵素安定性、生物活性(すなわち、NAOC値)、ならびに免疫原性に影響し得る(Chen, X., Zaro, J., Shen, W.C., Adv Drug Deliv Rev. 2013 October 15;
65(10): 1357-1369)。表1は、ホモ二量体タイターおよび生物活性を向上させることを目標としてインスリン-Fc融合タンパク質の設計において使用されるいくつかのリンカーを列記する。
【表1】
実施形態では、ペプチドリンカーは配列:
GGGGAGGGG(配列番号12)
を含む。
他の実施形態では、ペプチドリンカーは配列:
GGGGSGGGG(配列番号13)
を含む。
好ましい実施形態では、ペプチドリンカーは配列:
GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG(配列番号14)
を含む。
【0068】
配列番号14のもののようなペプチドリンカーを有する組換えにより作られるインスリン-Fc融合タンパク質の構築において、インスリンA鎖のC末端とペプチドリンカーのN末端との間の望ましくない酵素切断の可能性に注意しなければならない。インスリンポリペプチドからのリンカーおよびFc断片の切断は、インスリン-Fc融合タンパク質を、生物活性の延長された継続期間を提供することができないものとする。公知の酵素切断部位がアスパラギン-グリシン結合の間に存在する(Vlasak, J., Ionescu, R., (2011) MAbs Vol. 3, No. 3 pp 253-263)。配列番号14の好ましいペプチドリンカーを含む、多くのペプチドリンカーの実施形態において、N末端アミノ酸はグリシンである。さらには、インスリンA鎖のC末端、すなわち、(A鎖のN末端から21番目のアミノ酸(すなわち、A21))はアスパラギンである。したがって、A21アスパラギンは、A鎖とペプチドリンカーとの間に形成される潜在的に酵素切断可能なアスパラギン-グリシン結合を排除するために配列番号8、配列番号10、および配列番号11のインスリンポリペプチドにおいて省略される。予想外なことに、A鎖のC末端におけるアスパラギンを保持する配列番号9のインスリンポリペプチドから構築されるインスリン-Fc融合タンパク質は、許容されるホモ二量体タイター(すなわち、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)、インビボでの許容される生物活性(すなわち、標的動物における150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC)、および複数回の投薬後の生物活性の持続的なレベル(すなわち、0.5より高い標的動物における3回目の注射後のNAOCR値)を伴う哺乳動物細胞中での生産可能性を実証する。先行する教示に基づいて予測されるものとは反対に、少なくとも本明細書に開示されるFc断片配列を含むインスリン-Fc融合タンパク質について、インスリンポリペプチドとペプチドリンカーとの間にアスパラギン-グリシン連結を含有するインスリン-Fc融合タンパク質の酵素切断または失活のリスクがないことをこの結果は指し示す。
【0069】
Fc断片
「Fc断片」、「Fc領域」、「Fcドメイン」、または「Fcポリペプチド」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために本明細書において使用される。Fc断片、領域、ドメインまたはポリペプチドは、天然配列Fc領域または変種/突然変異体Fc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、それらは、一般に、重鎖のヒンジ領域、重鎖のCH2領域、および重鎖のCH3領域の一部または全体を含む。イヌ科動物またはネコ科動物Fc断片のヒンジ領域は、重鎖のCH1ドメインを重鎖のCH2領域に接続するアミノ酸配列を含み、かつFc融合タンパク質の2つの同一であるが別々の単量体からFc融合タンパク質のホモ二量体を形成するために1つまたはより多くの重鎖間ジスルフィドブリッジを形成する1つまたはより多くのシステインを含有する。ヒンジ領域は、天然に存在するアミノ酸配列または天然に存在しないアミノ酸配列の全体または部分を含んでもよい。
【0070】
Fc受容体(FcR)は、Fc断片または抗体のFc領域に結合する受容体を指す。実施形態では、FcRはイヌ科動物またはネコ科動物FcRの天然配列である。実施形態では、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)のFc断片またはFc領域に結合するものであり、これには、以下の受容体のアレル変種および選択的にスプライシングされた形態を含めて、Fc(ガンマ)受容体I、Fc(ガンマ)受容体IIa、Fc(ガンマ)受容体IIb、およびFc(ガンマ)受容体IIIサブクラスの受容体が含まれるがそれに限定されない。「FcR」としてはまた新生児受容体、FcRnが挙げられ、これは母系IgG分子の胎児への移動の原因となり(Guyer et al., 1976 J. Immunol., 117:587; and Kim et al., 1994, J. Immunol., 24:249)、インビボでの抗体およびFc融合タンパク質のインビボ排出半減期の長期化の原因にもなる。実施形態では、イヌ科動物またはネコ科動物起源のFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質の結合を測定してそれらのFcR結合特性を査定するためにヒト起源のFcRがin vitroで(例えば、アッセイにおいて)使用される。1つの種からの哺乳動物FcR(例えば、ヒト起源のFcR)は第2の種からのFc断片(例えば、イヌ科動物またはネコ科動物起源のFcR)にインビトロで結合できる場合があることを当業者は理解する。実施形態では、イヌ科動物またはネコ科動物の両方の起源のFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質の結合を測定してそれらのFcR結合特性を査定するためにイヌ科動物起源のFcRがin vitroで(例えば、アッセイにおいて)使用される。1つの種からの哺乳動物FcR(例えば、イヌ科動物起源のFcR)は同じ種からのFc断片(例えば、イヌ科動物起源)を含むインスリン-Fc融合タンパク質にインビトロで結合することができ、かつ別の哺乳動物種を起源とするFc断片(例えば、ネコ科動物起源)を含むインスリン-Fc融合タンパク質にもインビトロで結合できる場合があることを当業者は理解する。
【0071】
実施形態では、Fc断片は、哺乳動物IgGのFc領域(例えば、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)、例えば、イヌ科動物IgGA Fc断片(配列番号15)、イヌ科動物IgGB Fc断片(配列番号16)、イヌ科動物IgGC Fc断片(配列番号17)、もしくはイヌ科動物IgGD Fc断片(配列番号18)またはネコ科動物IgG1a断片(配列番号19)、ネコ科動物IgG1b Fc断片(配列番号20)、もしくはネコ科動物IgG2 Fc断片(配列番号21)を含む。実施形態では、多くの場合に天然のイヌ科動物またはネコ科動物IgGアイソタイプFc断片アミノ酸配列中に見出されるC末端リジン(すなわち、Fc断片配列の最後のアミノ酸を表すリジン)は、生産の間の望ましくないアミノ酸配列変種の偶発的な製造を予防するために省略される(例えば、C末端リジンを含有するFc断片は、C末端リジンが省略されたFc断片と混合され、これは細胞内での所望のタンパク質の製造の間に起こり得る(Dick,
LW., (2008) Biotechnol Bioeng. Aug 15;1
00(6) pp1132-43)。したがって、実施形態では、C末端リジンを欠いたイヌ科動物およびネコ科動物Fc断片配列は、
RCTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVMHETLQNHYTDLSLSHSPG(配列番号15)
DCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号16)
CNNCPCPGCGLLGGPSVFIFPPKPKDILVTARTPTVTCVVVDLDPENPEVQISWFVDSKQVQTANTQPREEQSNGTYRVVSVLPIGHQDWLSGKQFKCKVNNKALPSPIEEIISKTPGQAHQPNVYVLPPSRDEMSKNTVTLTCLVKDFFPPEIDVEWQSNGQQEPESKYRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQISLSHSPG(配列番号17)
CISPCPVPESLGGPSVFIFPPKPKDILRITRTPEITCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQPREQQFNSTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIGLPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSPKELSSSDTVTLTCLIKDFFPPEIDVEWQSNGQPEPESKYHTTAPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDTFTCAVMHEALQNHYTDLSLSHSPG(配列番号18)
DCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKAKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIKSFHPPDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFVYSKLSVDRSHWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号19)
DCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号20)
GEGPKCPVPEIPGAPSVFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSNVQITWFVDNTEMHTAKTRPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSAMERTISKAKGQPHEPQVYVLPPTQEELSENKVSVTCLIKGFHPPDIAVEWEITGQPEPENNYQTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSHWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号21)
である。
【0072】
ヒトFcをイヌ科動物IgGAで置き換えることは、イヌにおけるIgGAアイソタイプのFc(ガンマ)エフェクター機能の欠如(ヒトにおけるヒトIgG2アイソタイプとよく似ている)に起因するイヌにおける任意の望ましくない免疫原性を最小化するために好ましい。しかしながら、配列番号5のインスリンポリペプチドおよび配列番号12のペ
プチドリンカーを含有する一実施形態では、予想外なことに、イヌ科動物IgGA断片(配列番号15)を含むインスリン-Fc融合タンパク質は、所望のホモ二量体の低いタイター(すなわち、50mg/L未満のホモ二量体タイター)と共に高度に凝集することが発見された。さらには、化合物は、恐らくはその高いレベルの凝集(例えば、低いホモ二量体%)に起因して、イヌにおいて生物活性ではなかった(すなわち、NAOC値は150FBGL%・日・kg/mg未満であった)。配列番号5のインスリンポリペプチド、イヌ科動物IgGA Fc断片(配列番号15)、および/またはリンカーを突然変異させたにもかかわらず、低い十分な程度の凝集および所望のホモ二量体の高い十分なタイターを有するイヌ科動物IgGA Fc断片に基づく実施形態はなかった。他方、イヌ科動物IgGA Fc断片(配列番号15)をイヌ科動物IgGB Fc断片(配列番号16)で置き換えることは、所望のホモ二量体の比較的高いタイターを有するはるかに凝集の少ない化合物をもたらした。さらには、配列番号5のインスリンポリペプチドおよびイヌ科動物IgGB Fc断片(配列番号16)を含有する化合物はイヌにおいて生物活性であり、複数日にわたりグルコース低下生物活性を呈した(すなわち、NAOC値は150FBGL%・日・kg/mgより高かった)。
【0073】
イヌ科動物IgGA Fc断片に対してイヌ科動物IgGB Fc断片が好ましいことは、配列番号5のインスリンポリペプチドおよび配列番号12のペプチドリンカーからいずれもかなり異なる、配列番号8のインスリンポリペプチドおよび配列番号14のペプチドリンカーを含有する実施形態において確認された。配列番号8のインスリンポリペプチドおよび配列番号14のペプチドリンカーを含有するインスリン-Fc融合タンパク質は、イヌ科動物IgGA(配列番号15)、イヌ科動物IgGB(配列番号16)、イヌ科動物IgGC(配列番号17)、またはイヌ科動物IgGD(配列番号18)免疫グロブリンからのFc断片を使用して合成された。従来の精製方法を使用して、イヌ科動物IgGAおよびイヌ科動物IgGBを含む化合物のみが任意の認識可能なタンパク質収率を示した。しかしながら、以前とまさに同様に、イヌ科動物IgGAバージョンの化合物は低いレベルの生物活性と共に高度に凝集した一方、イヌ科動物IgGBバージョンの化合物は、低い程度の凝集(すなわち、高いホモ二量体%)、所望のホモ二量体の高いタイター(すなわち、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)、およびイヌにおける長期継続期間のグルコース低下生物活性の認識可能なレベル(すなわち、NAOC値は150FBGL%・日・kg/mgより高かった)を呈した。代替的な精製方法を使用して、イヌ科動物IgGCバージョンの化合物が低い程度の凝集と共に回収されたが、それは、恐らくはFcRn受容体に対するその低い親和性に起因して、イヌにおいて生物活性は最小限であった(すなわち、NAOC値は150FBGL%・日・kg/mg未満であった)。したがって、イヌ特異的製造物に関して、イヌ科動物IgGB(配列番号16)は、インスリンポリペプチドの選択にかかわらず、イヌにおいて使用される全てのインスリン-Fc融合タンパク質のための好ましいFc断片である。
【0074】
ヒトFcをネコ科動物IgG2で置き換えることは、ネコにおけるIgG2アイソタイプのFc(ガンマ)エフェクター機能の欠如(ヒトにおけるヒトIgG2アイソタイプとよく似ている)に起因するネコにおける任意の望ましくない免疫原性を最小化するために好ましい。イヌの場合と異なり、配列番号4のインスリンポリペプチドを含有する実施形態において、ネコ科動物IgG2断片(配列番号21)およびネコ科動物IgG1b断片(配列番号20)を含むインスリン-Fc融合タンパク質は、低い程度の凝集(すなわち、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)および認識可能なインスリン受容体親和性(すなわち、5000nM未満のインスリン受容体IC50値)と共に同様に高い収率であることが発見された。しかしながら、予想外なことに、インスリンポリペプチドを配列番号7に変更した場合、ネコ科動物IgG2断片(配列番号21)を含むインスリン-Fc融合タンパク質はネコにおいて生物活性でなかった(すなわち、NAOCは150FBGL%・日・kg/mg未満であった)一方、ネコ科動物IgG1b断片(配列番号20
)を含むインスリン-Fc融合タンパク質は、低い程度の凝集(すなわち、高いホモ二量体%)、所望のホモ二量体の高いタイター(すなわち、50mg/Lより高いホモ二量体タイター)、およびネコにおける長期継続期間のグルコース低下生物活性の認識可能なレベル(すなわち、NAOC値は150FBGL%・日・kg/mgより高かった)を呈した。したがって、ネコ特異的製造物に関して、ネコ科動物IgG1b断片(配列番号20)は、インスリンポリペプチド配列が配列番号7を含む場合に好ましいFc断片である。
【0075】
イヌ科動物IgGBおよびネコ科動物IgG1bアイソタイプは、イヌ科動物IgGAおよびネコ科動物IgG2アイソタイプ対応物より高い親和性でそれらの各々の種特異的Fc(ガンマ)受容体と相互作用することを考慮すると、繰返しの注射後に望ましくない免疫原性のリスクがあるかもしれないし、またはないかもしれない。Fc(ガンマ)相互作用を低減する1つの方法は、宿主細胞中での合成の間にFc断片を脱グリコシル化することまたはそのグリコシル化を予防することを伴う。各IgG断片は、Fc領域の各重鎖のCH2ドメイン中に保存されたアスパラギン(N)-グリコシル化部位を含有する。本明細書において、保存されたN-グリコシル化部位を指すために使用される表記は「cNg」である。合成されたインスリン-Fc融合タンパク質から取り付けられたグリカンを除去する1つのやり方は、cNg部位を突然変異させて、宿主細胞中での製造の間のグリカンの取付けを完全に予防することである。本明細書において、cNg突然変異を記載するために使用される表記はcNg-(置換されたアミノ酸)である。例えば、cNg部位におけるアスパラギンがセリンに突然変異している場合、この突然変異は「cNg-S」と記される。
【0076】
インスリン-Fc融合タンパク質のB鎖のN末端からのcNg部位の絶対位置は、インスリンポリペプチドの長さ、リンカーの長さ、およびcNg部位の前のFc断片中の任意の省略されたアミノ酸に依存して変動する。本明細書において、所与のインスリン-Fc融合タンパク質配列中のcNg部位の絶対位置(インスリン-Fc融合タンパク質のB鎖のN末端からカウントして測定された場合)を指すために使用される表記は「NB(数)」である。例えば、cNg部位がB鎖のN末端からカウントした場合に151番目のアミノ酸位置において見出される場合、この部位の絶対位置はcNg-NB151と称される。さらなる例として、cNg部位がB鎖のN末端からカウントした場合に151番目のアミノ酸位置において見出され、かつこの部位におけるアスパラギンがセリンに突然変異している場合、この突然変異は「cNg-NB151-S」と記述される。
【0077】
配列番号5のインスリンポリペプチドならびにcNg-Q、cNg-S、cNg-D、およびcNg-K突然変異を有するイヌ科動物IgGB Fc断片を含有する実施形態において、予想外なことに、cNg-KおよびcNg-S突然変異を含有する化合物のみが、50mg/Lより高い要求されるホモ二量体タイターおよび最低のFc(ガンマ)RI結合親和性を呈することが発見された。他方、配列番号8のインスリンポリペプチドおよびcNg-S突然変異を有するイヌ科動物IgGB Fc断片を含有する一実施形態において、予想外なことに、結果としてもたらされる化合物は、天然のイヌ科動物IgGB Fc含有対応物と比較してイヌにおいて有意に低い生物活性であることが発見された(すなわち、NAOC値は、天然のグリコシル化部位アミノ酸、例えば、cNg-Nを含有する対応物について有意により低かった)。インスリンポリペプチドの配列番号11について上記したようにB16アミノ酸をアラニンに突然変異させた場合に、生物活性は予想外なことにcNg-S突然変異体において回復した(すなわち、NAOC値は有意に増加した)。以上を合わせると、cNg突然変異の選択とインスリンポリペプチドの組成との間に予想外かつ有意な相互作用があり、好ましい実施形態を同定するために実験が要求される。特定の実施形態では、cNg-S突然変異を含有するイヌ科動物IgGB Fc突然変異体は好ましく、下線を引いたcNg-Sを有する配列は、
DCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVV
DLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号22)
として示される。
特定の実施形態では、cNg-S突然変異を含有するネコ科動物IgG1b Fc突然変異体は好ましい:
DCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号23)
【0078】
インスリン-Fc融合タンパク質
インスリンポリペプチド、Fc断片、およびインスリンポリペプチドとFc断片との間のリンカーを含むインスリン-Fc融合タンパク質が本明細書において提供される。実施形態では、インスリンポリペプチドは、N末端からC末端へ以下の配向性:(N末端)--B鎖--C鎖--A鎖--(C末端)においてドメインを含む。実施形態では、インスリンポリペプチドはFc断片のN末端側に位置する。実施形態では、融合タンパク質は、
図1に示されるように、N末端からC末端へ以下の配向性:(N末端)--インスリンポリペプチド--リンカー--Fc断片--(C末端)(例えば、(N末端)--B鎖--C鎖--A鎖--リンカー--Fc断片--(C末端))においてドメインを含む。
【0079】
好ましい実施形態では、配列番号6の好ましい非免疫原性の、生物活性のインスリンポリペプチドは、配列番号14の好ましいリンカーを使用して配列番号16の好ましいイヌ科動物IgGB Fc断片と組み合わせられて、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、イヌにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびイヌにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号24の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質のファミリーが製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号24を示す:
FVNQHLCGSX
1
LVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2
STCSLDQLENYCX
3
GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号24)
(X1はDではなく、X2はHではなく、かつX3は存在しないまたはNである)。
【0080】
配列番号24を含む好ましい実施形態では、X1はHであり、X2はTであり、かつX3は存在しないまたはNである。選択により、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、イヌにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびイヌにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号25の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質が製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号25を示す:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCX
3
GGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号25)
(X3は存在しないまたはNである)。
【0081】
好ましい実施形態では、配列番号25においてX3は存在しないことにより、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、イヌにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびイヌにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号32の高いホモ二量体をもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質が製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号32を示す:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号32)
【0082】
好ましい実施形態では、配列番号25においてX3はNであることにより、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、イヌにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびイヌにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号34の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質が製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号34を示す:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCNGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号34)
【0083】
好ましい実施形態では、配列番号22の好ましい非グリコシル化の、cNg-S突然変異型イヌ科動物IgGB Fc断片は、配列番号14の好ましいリンカーを使用して配列番号10の好ましいB16A突然変異型インスリンポリペプチド配列と組み合わせられて、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、イヌにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびイヌにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号26の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質のファミリーが製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号26を示す:
FVNQHLCGSX
1
LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2
STCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG
DCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号26)
(X1はDではなく、かつX2はHではない)。
【0084】
好ましい実施形態では、配列番号26においてX1はHであり、かつX2はTであることにより、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、イヌにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびイヌにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号36の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質が製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号36を示す:
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号36)
【0085】
好ましい実施形態では、X3が存在しない配列番号6の好ましい非免疫原性の、生物活性のインスリンポリペプチドは、配列番号14の好ましいリンカーを使用して配列番号20の好ましいネコ科動物IgG1b Fc断片と組み合わせられて、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、ネコにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびネコにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号27の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質のファミリーが製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号27を示す:
FVNQHLCGSX
1
LVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2
STCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号27)
(X1はDではなく、かつX2はHではない)。
【0086】
好ましい実施形態では、配列番号27においてX1はHであり、かつX2はTであることにより、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、ネコにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびネコにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号38の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質が製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号38を示す:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDL
GPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号38)
【0087】
好ましい実施形態では、配列番号23の好ましい非グリコシル化の、cNg-S突然変異型ネコ科動物IgG1b Fc断片は、配列番号14の好ましいリンカーを使用して配列番号10の好ましいB16A突然変異型インスリンポリペプチド配列と組み合わせられて、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、ネコにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびネコにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号28の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質のファミリーが製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号28を示す:
FVNQHLCGSX
1
LVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCX
2
STCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号28)
(X1はDではなく、かつX2はHではない)。
【0088】
好ましい実施形態では、配列番号28においてX1はHであり、かつX2はTであることにより、50mg/Lより高いホモ二量体タイター、ネコにおける150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値、およびイヌにおける一連の繰返しの注射における3回目の注射後に0.5より高いNAOCR値を呈する、配列番号40の高いホモ二量体タイターをもたらす、非凝集性の、生物活性の、非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質が製造される。以下は、非天然アミノ酸に下線を引いた配列番号40を示す:
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号40)
【0089】
一部の実施形態では、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質は、N末端においてリーダーアミノ酸配列を含まない。他の実施形態では、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質は、例えばN末端において、リーダー配列を含む。例示的なリーダー配列としては、アミノ酸配列MEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号30)が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質は、例えば細胞(例えば、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞)中での発現(例えば、組換え発現)のために、リーダー配列を含む核酸分子によりコードされる。ある特定の実施形態では、リーダー配列は、例えば細胞培養物中で、発現の間に切断除去される。リーダー配列をコードする例示的な核酸配列としては、核酸配列:
atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaa
cgactggtgtccactcc(配列番号29)
が挙げられる。
【0090】
配列番号032、034、036、038、および040のインスリン-Fc融合タンパク質をコードする核酸配列(例えば、cDNA)もまた本明細書に開示される。
【0091】
配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質を含む実施形態では、核酸配列(リーダー配列に下線を引いている)は、
atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggaactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaagtgccccgctcccgagatgctgggcggacccagcgtgttcatcttccctcccaagcccaaggacacactgctgatcgccaggaccccggaggtgacctgcgtggtggtggacctggatcccgaagaccccgaggtgcagatcagctggttcgtggatggaaagcagatgcagaccgccaagacccaaccccgggaagagcagttcaacggcacctacagggtggtgagtgtgttgcccatcggccaccaggactggctgaaggggaagcaattcacatgcaaggttaataacaaggccctgcccagccccatcgagaggaccatcagcaaggccaggggccaggcccaccagccatctgtgtacgtgctgcccccatctagggaggaactgagcaagaacacagtcagccttacttgcctgatcaaggacttcttcccaccggacatagacgtggagtggcagagtaacggccagcaggagcccgagagcaagtataggaccacaccgccccaactggacgaggacggaagctacttcctctacagcaaattgagcgttgacaaaagcaggtggcagcgaggcgacaccttcatctgcgccgtgatgcacgaggctttgcataaccactacacccaggagagcctgtcccacagccccggatag(配列番号31)
である。
【0092】
配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質を含む実施形態では、核酸配列(リーダー配列に下線を引いている)は、
atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggaactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcaacggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaagtgccccgctcccgagatgctgggcggacccagcgtgttcatcttccctcccaagcccaaggacacactgctgatcgccaggaccccggaggtgacctgcgtggtggtggacctggatcccgaagaccccgaggtgcagatcagctggttcgtggatggaaagcagatgcagaccgccaagacccaaccccgggaagagcagttcaacggcacct
acagggtggtgagtgtgttgcccatcggccaccaggactggctgaaggggaagcaattcacatgcaaggttaataacaaggccctgcccagccccatcgagaggaccatcagcaaggccaggggccaggcccaccagccatctgtgtacgtgctgcccccatctagggaggaactgagcaagaacacagtcagccttacttgcctgatcaaggacttcttcccaccggacatagacgtggagtggcagagtaacggccagcaggagcccgagagcaagtataggaccacaccgccccaactggacgaggacggaagctacttcctctacagcaaattgagcgttgacaaaagcaggtggcagcgaggcgacaccttcatctgcgccgtgatgcacgaggctttgcataaccactacacccaggagagcctgtcccacagccccggatag(配列番号33)
である。
【0093】
配列番号36のインスリン-Fc融合タンパク質を含む実施形態では、核酸配列(リーダー配列に下線を引いている)は、
atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggcactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaagtgccccgctcccgagatgctgggcggacccagcgtgttcatcttccctcccaagcccaaggacacactgctgatcgccaggaccccggaggtgacctgcgtggtggtggacctggatcccgaagaccccgaggtgcagatcagctggttcgtggatggaaagcagatgcagaccgccaagacccaaccccgggaagagcagttctcaggcacctacagggtggtgagtgtgttgcccatcggccaccaggactggctgaaggggaagcaattcacatgcaaggttaataacaaggccctgcccagccccatcgagaggaccatcagcaaggccaggggccaggcccaccagccatctgtgtacgtgctgcccccatctagggaggaactgagcaagaacacagtcagccttacttgcctgatcaaggacttcttcccaccggacatagacgtggagtggcagagtaacggccagcaggagcccgagagcaagtataggaccacaccgccccaactggacgaggacggaagctacttcctctacagcaaattgagcgttgacaaaagcaggtggcagcgaggcgacaccttcatctgcgccgtgatgcacgaggctttgcataaccactacacccaggagagcctgtcccacagccccggatag(配列番号35)
である。
【0094】
配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質を含む実施形態では、核酸配列(リーダー配列に下線を引いている)は、
atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggaactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctg
ctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaaatgtcctccgcctgagatgctgggtggccctagcatcttcatcttcccgcccaagcccaaggatactctgtccattagcaggacccccgaggtgacctgcctggtggtggacctggggccagacgactctgacgtgcagatcacctggttcgtagacaacacccaggtttacactgccaagaccagtcccagggaggagcagttcaacagcacatacagggtggtgagcgttctgcccatcctgcaccaggactggctgaaaggcaaagagttcaagtgtaaggtgaacagcaagagcctgcccagccccattgaaaggaccatcagcaaggacaagggccagccgcacgagccccaagtctacgtgctgcccccagcacaggaagagctgagcaggaacaaggttagcgtgacatgcctgatcgagggtttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggaaatcaccggccaacccgagcccgagaacaactacaggaccactccgccgcaactggacagcgacgggacctacttcttgtatagcaggctgagcgtggaccggagcaggtggcagaggggcaacacctacacttgcagcgtgagccacgaggccttgcacagccaccacactcagaagagtctgacccagagcccgggatag(配列番号37)
である。
【0095】
配列番号40のインスリン-Fc融合タンパク質を含む実施形態では、核酸配列(リーダー配列に下線を引いている)は、
atggaatggagctgggtctttctcttcttcctgtcagtaacgactggtgtccactccttcgtgaaccagcacctgtgcggctcccacctggtggaagctctggcactcgtgtgcggcgagcggggcttccactacgggggtggcggaggaggttctggtggcggcggaggcatcgtggaacagtgctgcacctccacctgctccctggaccagctggaaaactactgcggtggcggaggtggtcaaggaggcggtggacagggtggaggtgggcagggaggaggcgggggagactgccccaaatgtcctccgcctgagatgctgggtggccctagcatcttcatcttcccgcccaagcccaaggatactctgtccattagcaggacccccgaggtgacctgcctggtggtggacctggggccagacgactctgacgtgcagatcacctggttcgtagacaacacccaggtttacactgccaagaccagtcccagggaggagcagttcagcagcacatacagggtggtgagcgttctgcccatcctgcaccaggactggctgaaaggcaaagagttcaagtgtaaggtgaacagcaagagcctgcccagccccattgaaaggaccatcagcaaggacaagggccagccgcacgagccccaagtctacgtgctgcccccagcacaggaagagctgagcaggaacaaggttagcgtgacatgcctgatcgagggtttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggaaatcaccggccaacccgagcccgagaacaactacaggaccactccgccgcaactggacagcgacgggacctacttcttgtatagcaggctgagcgtggaccggagcaggtggcagaggggcaacacctacacttgcagcgtgagccacgaggccttgcacagccaccacactcagaagagtctgacccagagcccgggatag(配列番号39)
である。
【0096】
インスリン-Fc融合タンパク質の製造
実施形態では、融合タンパク質は、実施例セクションにおいてより詳細に記載されるように細胞により発現させることができる。
【0097】
発現および精製
実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質は、例えば、真核細胞中、例えば、哺乳動物細胞または非哺乳動物細胞中で組換えにより発現させることができる。発現のために使用される例示的な哺乳動物細胞としては、HEK細胞(例えば、HEK293細胞)またはCHO細胞が挙げられる。CHO細胞は様々な株またはサブクラス(例えば、CHO DG44、CHO-M、およびCHO-K1)にさらに分割することができ、これらの細胞株の一部は、実施例セクションに記載されるような具体的な種類の核酸分子(例えば、DNAを含むベクター)または具体的な細胞増殖培地組成物との最適な使用のために遺伝子操作されてもよい。実施形態では、細胞は、インスリン-Fc融合タンパク質をコードする核酸分子(例えば、ベクター)(例えば、インスリン-Fc融合タンパク質全体が単一の核酸分子によりコードされる場合)をトランスフェクトされる。実施形態では、HEK293細胞は、インスリン-Fc融合タンパク質をコードするベクターをトランスフェクトされるが、宿主細胞が認識可能なレベルのインスリン-Fc融合タンパク質の発現を中止する前の期間(例えば、3日、4日、5日、7日、10日、12日、14日、またはより長い)のインスリン-Fc融合タンパク質の一時的な発現のみを結果としてもたらす(すなわち、一過性トランスフェクション)。インスリン-Fc融合タンパク質をコードする核酸配列を一過的にトランスフェクトされたHEK293細胞は、多くの場合に、複数のインスリン-Fc融合タンパク質候補の作製およびスクリーニングを促す組換えタンパク質のより迅速な製造を可能とする。実施形態では、CHO細胞は、宿主細胞DNAに永久的に組み込まれ、細胞が適切に培養される限りインスリン-Fc融合タンパク質の一貫した永久的な発現に繋がるベクターをトランスフェクト(すなわち、安定なトランスフェクション)される。インスリン-Fc融合タンパク質をコードする核酸を安定的にトランスフェクトされるCHO細胞およびCHO細胞系は、多くの場合に、開発により長くかかるが、多くの場合に、より高いタンパク質収率を生じ、かつ低コスト製造物(例えば、獣医学的薬学市場において使用するための製造物)を生産するためにより適する。細胞および細胞系は、当該技術分野における標準的な方法を使用して培養することができる。好ましい実施形態では、配列番号31、33、35、37、および39を有するcDNA配列のいずれか1つを含むHEK細胞が、インスリン-Fc融合タンパク質を発現するために使用される。好ましい実施形態では、配列番号31、33、35、37、および39を有するcDNA配列のいずれか1つを含むCHO細胞が、インスリン-Fc融合タンパク質を発現するために使用される。
【0098】
一部の実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質は、(例えば、細胞の溶解により)細胞から精製または単離される。他の実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質は細胞により分泌され、細胞が生育された細胞培養培地から精製または単離される。インスリン-Fc融合タンパク質の精製は、カラムクロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー)を使用することまたはサイズ、電荷、および/もしくはある特定の分子に対する親和性における差異に基づく他の分離方法を使用することを含むことができる。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質の精製は、例えば、Fc断片を含有するタンパク質が、プロテインAビーズに共有結合的に共役したプロテインAに中性の溶液pHにおいて高親和性で結合することを引き起こすプロテインAビーズまたはプロテインAカラムを使用することにより、Fc断片を含有するタンパク質を選択または濃縮することを伴う。結合したインスリン-Fc融合タンパク質は次に、溶液変数の変化(例えば、溶液pHの減少)によりプロテインAビーズから溶出されてもよい。イオン交換クロマトグラフィーおよび/またはゲル濾過クロマトグラフィーなどの他の分離方法もま
た、代替的または追加的に用いることができる。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質の精製は、タンパク質調製物を濾過または遠心分離することをさらに含む。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質のさらなる精製は、ダイアフィルトレーション(dialfiltration)、限外濾過、および様々なサイズの多孔性膜を通じた濾過の他に、賦形剤を用いる最終の製剤化を含む。
【0099】
精製されたインスリン-Fc融合タンパク質は、様々な方法、例えば、280nmにおける吸光度(例えば、タンパク質収率を決定するため)、サイズ排除もしくはキャピラリー電気泳動(例えば、分子量、凝集パーセント、および/または純度を決定するため)、質量分析(MS)および/もしくは液体クロマトグラフィー(LC-MS)(例えば、純度および/またはグリコシル化を決定するため)、ならびに/またはELISA(例えば、抗インスリン抗体に対する結合の程度、例えば、親和性を決定するため)を使用して、例えば、純度、タンパク質収率、構造、および/または活性について特徴付けることができる。特徴付けの例示的な方法はまた、実施例セクションに記載される。
【0100】
実施形態では、一過的にトランスフェクトされたHEK細胞中での製造およびプロテインA精製後のインスリン-Fc融合タンパク質のタンパク質収率は、5mg/L、10mg/L、または20mg/Lより高い。好ましい実施形態では、一過的にトランスフェクトされたHEK細胞中での製造およびプロテインA精製後のインスリン-Fc融合タンパク質のタンパク質収率は50mg/Lより高い(例えば、60mg/Lより高い、70mg/Lより高い、80mg/Lより高い、90mg/Lより高い、100mg/Lより高い)。実施形態では、一過的にトランスフェクトされたHEK細胞中での製造およびプロテインA精製後のインスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体%は70%より高い(例えば、80%より高い、85%より高い、90%より高い、95%より高い、96%より高い、97%より高い、98%より高い、99%より高い)。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質収率とホモ二量体%との積として算出される、一過的にトランスフェクトされたHEK細胞中での製造およびプロテインA精製後のインスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体タイターは50mg/Lより高い(例えば、60mg/Lより高い、70mg/Lより高い、80mg/Lより高い、90mg/Lより高い、100mg/Lより高い)。50mg/Lより高いホモ二量体タイターを有する候補のみを本発明において有用であると考え、その理由は、このレベルより低いホモ二量体タイターは、獣医学的製造物についての厳密に低い生産コスト要求を満たすCHO細胞における商用の製造タイターを結果としてもたらさないようであることを経験が実証したからである。
【0101】
実施形態では、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞(例えば、CHO細胞系またはCHO細胞クローン)中での製造およびプロテインA精製後のインスリン-Fc融合タンパク質のタンパク質収率は、1L当たり100mgのインスリン-Fc融合タンパク質(例えば、培養培地1L当たりのmg)より高い。好ましい実施形態では、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞(例えば、CHO細胞系またはCHO細胞クローン)中での製造およびプロテインA精製後のインスリン-Fc融合タンパク質のタンパク質収率は、培養培地1L当たり150mgのインスリン-Fc融合タンパク質より高い(例えば、200mg/Lより高い、300mg/Lより高い、400mg/Lより高い、500mg/Lより高い、600mg/Lより高いまたはより高い)。実施形態では、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞(例えば、CHO細胞系またはCHO細胞クローン)中での製造およびプロテインA精製後のインスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体%は70%より高い(例えば、80%より高い、85%より高い、90%より高い、95%より高い、96%より高い、97%より高い、98%より高い、99%より高い)。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質収率とホモ二量体%との積として算出される、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞(例えば、CHO細胞系またはCHO細胞クローン)中での製造およびプロテインA精製後のインスリン-Fc融合タンパク質のホ
モ二量体タイターは150mg/Lより高い(例えば、200mg/Lより高い、300mg/Lより高い、400mg/Lより高い、500mg/Lより高い、600mg/Lより高いまたはより高い)。
【0102】
インスリン-Fc融合タンパク質の機能的な特徴
伴侶動物(例えば、イヌまたはネコ)においてインスリン受容体と相互作用して血中グルコースを低下させる方法であって、対象にインスリン-Fc融合タンパク質、例えば、本明細書に記載の融合タンパク質を投与することを含む、方法が本明細書に記載される。一部の実施形態では、対象は、糖尿病(例えば、イヌ科動物糖尿病またはネコ科動物糖尿病)を有すると診断されている。
【0103】
実施形態では、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質は、実施例7に記載の4℃でのIM-9インスリン受容体結合アッセイにおいてIC50により測定された場合に認識可能な親和性でインスリン受容体に結合する(例えば、5000nM未満のIC50、4000nM未満のIC50、3000nM未満のIC50、2500nM未満のIC50)。経験に基づけば、5000nM未満のインスリン受容体活性IC50値を呈する化合物のみが、標的種において生物活性を呈するようであるとみなされた。一般に、より高い親和性のインスリン受容体結合(すなわち、より低いIC50値)が好ましい。しかしながら、インスリンおよびインスリンアナログ(例えば、本明細書に記載のインスリンポリペプチド)のクリアランスは、主にインスリン受容体への結合、続いてインスリン受容体の内部移行および細胞内での分解を通じて支配される。したがって、高すぎるインスリン受容体結合親和性(すなわち、低すぎるIC50)を有するインスリン-Fc融合タンパク質は、あまりに急速に循環からクリアランスされて、標的動物におけるグルコース低下生物活性の所望の継続期間より短い継続期間を結果としてもたらすことがある。
【0104】
実施形態では、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質は、対象における投与後にグルコースレベル(例えば、血中グルコースレベル)を低下させることができる。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質のグルコース低下活性は、インスリン参照標準のそれより高い。一部の実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質の活性の継続期間は、投薬前の空腹時血中グルコースレベルと比べた空腹時血中グルコースにおける減少、例えば、統計的に有意な減少により測定することができる。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質の活性の継続期間(例えば、投薬前レベルと比べて対象において空腹時血中グルコースレベルにおける統計的に有意な減少がある時間)は約2時間より長い。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質の活性の継続期間(例えば、投薬前レベルと比べて対象において血中グルコースレベルにおける統計的に有意な減少がある時間)は、約6時間、9時間、12時間、18時間、1日、1.5日、2日、2.5日、3日、4日、5日、6日、7日、またはより長くより長い。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質は長期作用性である(例えば、例えば血清中で、長い半減期を有する)。
【0105】
実施形態では、標的動物(例えば、イヌまたはネコ)中のインスリン-Fc融合タンパク質の血清半減期は、インスリン参照標準または対照製剤のそれより長い。実施形態では、標的動物(例えば、イヌまたはネコ)中の(例えば、投与での対象の血液中の)インスリン-Fc融合タンパク質の血清半減期は約2時間より長い。実施形態では、標的動物(例えば、イヌまたはネコ)中のインスリン-Fc融合タンパク質の血清半減期は、約0.5日、1日、2日、または2.5日である。好ましい実施形態では、標的動物(例えば、イヌまたはネコ)中のインスリン-Fc融合タンパク質の血清半減期は約3日またはより長い。
【0106】
実施形態では、効力と生物活性の継続期間との組合せは、FBGL%・日・kg/mg
の単位を用いてmg/kgでの所与の用量に対して正規化された空腹時血中グルコースパーセント(FBGL%)曲線上の面積(NAOC)を算出することにより定量化されてもよい。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質のNAOCは150FBGL%・日・kg/mgより高い(例えば、200FBGL%・日・kg/mgより高い、250FBGL%・日・kg/mgより高いまたはより高い)。ここでもまた、経験に基づけば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値において、標的種における用量要求は、許容される治療コストを達成するために十分に低い。実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質のNAOCは、標的種における繰返しの投薬後に維持されなければならない(すなわち、インスリン-Fc融合タンパク質の1回目の投薬後のNAOCに対する3回目の投薬後のNAOCの比は0.50より高い(例えば、0.60より高い、0.70より高い、0.80より高い、0.90より高い、またはより高い)。
【0107】
一部の実施形態では、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質は、実施例8にしたがって測定された場合に、インスリン-Fc融合タンパク質参照標準の親和性より低い親和性でFc(ガンマ)受容体に結合する。一部の実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質参照標準のFc(ガンマ)受容体親和性に対するインスリン-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体親和性の比は0.50未満(例えば、0.40未満、0.30未満、0.20未満)である。
【0108】
治療の方法および対象選択の特徴
糖尿病(例えば、イヌ科動物糖尿病またはネコ科動物糖尿病)を治療する方法であって、対象にインスリン-Fc融合タンパク質(例えば、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質)を投与することを含む、方法が本明細書に記載される。
【0109】
実施形態では、本明細書に記載の任意の方法において使用される参照標準は参照治療または参照療法を含む。一部の実施形態では、参照は糖尿病治療用の標準治療剤(例えば、イヌ科動物糖尿病用の標準治療剤またはネコ科動物糖尿病用の標準治療剤)を含む。一部の実施形態では、参照標準は、商業的に入手可能なインスリンまたはインスリンアナログである。一部の実施形態では、参照標準は、長期持続性インスリン、中期持続性インスリン、短期持続性インスリン、即効性インスリン、短期作用性、中期作用性、長期作用性インスリンを含む。一部の実施形態では、参照標準は、Vetsulin(登録商標)、Prozinc(登録商標)、インスリンNPH、インスリングラルギン(Lantus(登録商標))、または組換えヒトインスリンを含む。
【0110】
実施形態では、本明細書に記載の任意の方法において使用される参照標準は、糖尿病療法(例えば、イヌ科動物糖尿病療法またはネコ科動物糖尿病療法)のアウトカム、例えば、明細書に記載のアウトカムを含む。
【0111】
実施形態では、参照標準は、療法、例えば、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質療法の開始前の対象におけるマーカー(例えば、血中グルコースまたはフルクトサミン)のレベルであり、対象は糖尿病を有する。実施形態では、伴侶動物(例えば、イヌまたはネコ)における血中グルコースレベルは、療法の開始前に200mg/dLより高い(例えば、250mg/dL、300mg/dL、350mg/dL、400mg/dLまたはより高くより高い)。実施形態では、伴侶動物(例えば、イヌまたはネコ)におけるフルクトサミンレベルは、療法の開始前に250マイクロモル/L、350マイクロモル/Lより高い(例えば、400マイクロモル/L、450マイクロモル/L、500マイクロモル/L、550マイクロモル/L、600マイクロモル/L、650マイクロモル/L、700マイクロモル/L、750マイクロモル/Lまたはより高くより高い)。実施形態では、参照標準は、疾患の存在またはその進行もしくは重症度の度合である。実施形態では、参照標準は、療法、例えば、本明細書に記載のインスリン-Fc融合タ
ンパク質療法の開始前の疾患症状の存在または重症度の度合であり、例えば、対象は糖尿病を有する。
【0112】
医薬組成物および投与の経路
伴侶動物(例えば、イヌまたはネコ)において血中グルコースを低下させるために使用することができる本明細書に記載のインスリン-Fc融合タンパク質を含有する医薬組成物が本明細書において提供される。医薬組成物中のインスリン-Fc融合タンパク質の量および濃度の他に、対象に投与される医薬組成物の量は、臨床的に関連する因子、例えば、対象の医学的に関連する特徴(例えば、年齢、体重、性別、および他の医学的条件など)、医薬組成物中の化合物の溶解度、化合物の効力および活性、ならびに医薬組成物の投与の方式に基づいて選択することができる。投与の経路および投薬レジームに関するさらなる情報について、読者は、Comprehensive Medicinal ChemistryのVolume 5(Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board), Pergamon Press 1990のChapter 25.3を参照されたい。
【0113】
本開示の製剤としては、非経口投与のために好適なものが挙げられる。「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、本明細書において使用される場合、通常は静脈内または皮下注射による、経腸および外用投与以外の投与のモードを意味する。
【0114】
本開示の医薬組成物において用いることができる好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなど)、およびこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散体の場合には要求される粒子サイズの維持により、および界面活性剤、例えば、Tween様の界面活性剤の使用により維持することができる。一部の実施形態では、(例えば、本明細書に記載されるような)医薬組成物は、Tween様の界面活性剤、例えば、ポリソルベート-20、Tween-20またはTween-80を含む。一部の実施形態では、(例えば、本明細書に記載されるような)医薬組成物は、約0.001%~約2%、または約0.005%~約0.1%、または約0.01%~約0.5%の濃度において、Tween様の界面活性剤、例えば、Tween-80を含む。
【0115】
一部の実施形態では、水性担体中のインスリン-Fc融合タンパク質の濃度は約3mg/mLである。一部の実施形態では、水性担体中のインスリン-Fc融合タンパク質の濃度は約6mg/mLである。一部の実施形態では、水性担体中のインスリン-Fc融合タンパク質の濃度は、約8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、12mg/mL、15mg/mLまたはより高い。
【0116】
一部の実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質は、ボーラス、注入、または静脈内プッシュとして投与される。一部の実施形態では、融合タンパク質は、シリンジ注射、ポンプ、ペン、針、または留置カテーテルを通じて投与される。一部の実施形態では、インスリン-Fc融合タンパク質は皮下ボーラス注射により投与される。導入の方法はまた、再チャージ可能または生分解性デバイスにより提供されてもよい。様々な遅延放出ポリマーデバイスが薬物の制御送達のために近年開発およびインビボで試験されており、これにはタンパク質性バイオ医薬品が含まれる。生分解性および非分解性の両方のポリマーを含む、様々な生体適合性ポリマー(ハイドロゲルを含む)を、具体的な標的部位における化合物の持続放出用のインプラントを形成するために使用することができる。
【0117】
投薬量
インスリン-Fc融合タンパク質の実際の投薬量レベルは、具体的な対象(例えば、イヌまたはネコ)について所望の治療奏功を達成するために有効な活性の原料成分の量を得るように変動させることができる。選択される投薬量レベルは、用いられる具体的な融合タンパク質、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、用いられる具体的な化合物の排出の速度、治療の継続期間、用いられる具体的な融合タンパク質と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、治療されている対象の年齢、性別、体重、状態、全般的健康および過去の病歴、ならびに医学分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存する。
【0118】
一般に、インスリン-Fc融合タンパク質の好適な用量は、治療効果を生じさせるために有効な最低用量である量である。そのような有効な用量は、一般に、上記の因子に依存する。一般に、イヌまたはネコのためのインスリン-Fc融合タンパク質の静脈内および皮下用量は、約0.001~約1mg/体重キログラム(例えば、mg/kg)/日、例えば、約0.001~1mg/kg/日、約0.01~0.1mg/kg/日、約0.1~1mg/kg/日、または約0.01~1mg/kg/日の範囲内である。さらに他の実施形態では、融合タンパク質は、0.025~4mg/体重キログラム/週、例えば、0.025~0.5mg/kg/週の用量において投与される。
【0119】
本開示は、上述の任意の医薬組成物および調製物中のインスリン-Fc融合タンパク質の製剤を想定する。さらには、本開示は、以上の任意の投与の経路を介する投与を想定する。当業者は、治療されている状態ならびに治療されている患者の全体的な健康、年齢、およびサイズに基づいて適切な製剤および投与の経路を選択することができる。
【実施例】
【0120】
本技術を以下の実施例によりさらに説明するが、実施例は、いかなる意味でも限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0121】
一般の方法、アッセイ、および材料
実施例1:HEK293細胞中でのインスリン-Fc融合タンパク質の合成および作製方法
インスリン-Fc融合タンパク質を以下のように合成した。特許ソフトウェア(LakePharma、Belmont、CA)を使用して目的の遺伝子配列を構築し、高発現哺乳動物ベクターにクローニングした。トランスフェクションの24時間前にHEK293細胞をシェークフラスコに播種し、無血清化学限定培地を使用して生育させた。一過性トランスフェクションのための(LakePharma、Belmont、CA)標準作業手順を使用して、目的のインスリン-Fc融合タンパク質をコードするDNA発現構築物をHEK293細胞の懸濁液に一過的にトランスフェクトした。20時間後、細胞を計数して生存能力および生存細胞数を決定し、ForteBio(登録商標) Octet(登録商標)(Pall ForteBio LLC、Fremont、CA)によりタイターを測定した。一過性トランスフェクションの製造ランの全体を通じて追加の読取りを行った。培養物を5日目またはその後に回収した。
【0122】
実施例2:CHO細胞中でのインスリン-Fc融合タンパク質の合成および作製方法
CHO細胞系は元々CHO-K1(LakePharma、Belmont、CA)に由来し、当該技術分野において公知の方法を使用して組換え技術により内因性のグルタミンシンセターゼ(GS)遺伝子をノックアウトした。安定発現DNAベクターを設計し、CHO発現およびGS選択のために最適化し、高発現哺乳動物ベクター(LakePharma、Belmont、CA)に組み込んだ。スケールアップ実験の開始前に各完成した構築物の配列を確認した。加湿された5%のCO2インキュベーター中37℃で化学限定培地(CD OptiCHO;Invitrogen、Carlsbad、CA)中で
懸濁液適応CHO細胞を培養した。CHO細胞の培養において血清も他の動物由来の製造物も使用しなかった。
【0123】
指数増殖期の間にCD OptiCHO培地中で生育した約8000万個の懸濁液適応CHO細胞に、MaxCyte(登録商標) STX(登録商標)システム(MaxCyte, Inc.、Gaithersburg、MD)を使用してエレクトロポレーションにより80μgのDNAをトランスフェクトして、各インスリン-Fc融合タンパク質のための安定なCHO細胞系を作製した(DNA構築物はインスリン-Fc融合タンパク質の全長配列を含有する)。24時間後、トランスフェクトされた細胞を計数し、インスリン-Fc融合遺伝子の安定な組込みのための選択下に置いた。トランスフェクトされた細胞を、シェーカーフラスコ中で0.5×106細胞/mLの細胞密度において0~100μMのメチオニンスルホキシイミン(MSX)を含有するCD OptiCHO選択培地に播種し、5%のCO2と共に37℃でインキュベートした。選択プロセスの間に、細胞を遠心沈降させ、CHO安定プールがその増殖速度および生存能力を回復するまで2~3日毎に新鮮な選択培地に再懸濁した。細胞培養物を増殖およびタイターについてモニターした。
【0124】
細胞を2.5×106細胞/mLまで生育させた。細胞バンキング用の回収の時点において、生存能力は95%より高かった。細胞を次に遠心分離し、細胞ペレットを15×106細胞/mL/バイアルの細胞数まで7.5%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含むCD OptiCHO培地に再懸濁した。液体窒素中での貯蔵のためにバイアルを凍結保存した。
【0125】
以下のようにCHO細胞を使用して小スケールアップ製造を行った。100μMのMSXを含有するCD OptiCHO増殖培地中37℃での製造のために細胞をスケールアップし、必要に応じて2~4日毎にフィードし、CD OptiCHO増殖培地には必要に応じて約14~21日間グルコースおよび追加のアミノ酸を添加した。安定プール製造ランから回収された条件培地上清を遠心分離機でのスピニングにより清澄化した。結合緩衝液を用いて予備平衡化したプロテインA(MabSelect、GE Healthcare、Little Chalfont、United Kingdom)カラムにタンパク質を流した。OD280値(NanoDrop、Thermo Scientific)がバックグラウンドレベルまたはそれに近いと測定されるまで洗浄緩衝液を次にカラムに通過させた。低pHの緩衝液を使用してインスリン-Fc融合タンパク質を溶出させ、溶出画分を収集し、各画分のOD280値を記録した。標的インスリン-Fc融合タンパク質を含有する画分をプールし、任意選択的に0.2μMの膜フィルターを使用してさらに濾過した。
【0126】
細胞系を任意選択的にモノクローン性までさらにサブクローニングし、任意選択的に当業者に公知の方法である限界希釈の方法を使用して高タイターインスリン-Fc融合タンパク質発現クローンについてさらに選択した。高タイターのモノクローナルインスリン-Fc融合タンパク質発現細胞系列を得た後、MSXを含まない増殖培地中で、または任意選択的にMSXを含有する増殖培地中で上記のようにインスリン-Fc融合タンパク質の製造を達成して、組換えの、CHOにより作られた、インスリン-Fc融合タンパク質を含有する細胞培養上清を得た。より高い製造物タイターをもたらすことができるクローンについての追加の選択性を発揮するために、MSX濃度を任意選択的に経時的に増加させた。
【0127】
実施例3:インスリン-Fc融合タンパク質の精製
インスリン-Fc融合タンパク質の精製を以下のように行った。一過的または安定的にトランスフェクトされたHEK製造ランから分泌されたインスリン-Fc融合タンパク質
を含有する条件培地上清を回収し、遠心分離により清澄化した。所望のインスリン-Fc融合タンパク質を含有する上清をプロテインAまたはプロテインGカラムに流し、低pH勾配を使用して溶出させた。任意選択的に、インスリン-Fc融合タンパク質の回収は、初期プロテインAまたはプロテインGカラム溶出液を第2のプロテインAまたはプロテインGカラムに再びリローディングすることにより増進させてもよい。その後、所望のタンパク質を含有する溶出された画分をプールし、200mMのHEPES、100mMのNaCl、50mMのNaOAc、pH7.0の緩衝液への緩衝液交換を行った。0.2μmの膜フィルターを使用して最終の濾過ステップを行った。最終のタンパク質濃度を280nmにおける溶液の光学密度から算出した。イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換ビーズ樹脂または陽イオン交換ビーズ樹脂を使用する)、ゲル濾過クロマトグラフィー、または他の方法によるさらなる任意選択的な精製を必要に応じて行った。
【0128】
実施例4:非還元および還元CE-SDSによる構造の確認
200mMのHEPES、100mMのNaCl、50mMのNaOAc、pH7.0の緩衝液に溶解させた精製されたインスリン-Fc融合タンパク質の溶液に対してLabChip(登録商標) GXII(Perkin Elmer、Waltham、MA)においてキャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)分析を行い、電気泳動図をプロットした。非還元条件下で、試料を既知の分子量(MW)のタンパク質標準に対して流し、溶出ピークはインスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体の「見かけ」のMWを表した。
【0129】
還元条件(例えば、インスリン-Fc融合物ホモ二量体のジスルフィド結合を破壊するためにベータ-メルカプトエタノールを使用する)下で、インスリン-Fc融合タンパク質の構造的純度は正確であるらしいことを決定するやり方として、結果としてもたらされたインスリン-Fc融合タンパク質単量体の見かけのMWをインスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体の分子量の半分に対して比較する。
【0130】
実施例5:グリカン除去を用いるLC-MSによる配列同定
質量分析(MS)を介してインスリン-Fc質量の正確な推定値を得るために、MS分析に干渉する可能性がある天然に存在するグリカンを除去するために試料を最初に処理する。200mMのHEPES、100mMのNaCl、50mMのNaOAc、pH7.0の緩衝溶液に溶解させた2.5mg/mLのインスリン-Fc融合タンパク質100μLを最初に、Zeba脱塩カラム(Pierce、ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を使用して5mMのEDTAを含有する0.1MのTris、pH8.0の緩衝液に緩衝液交換する。融合タンパク質中に存在するN結合型グリカン(例えば、cNg-N部位に位置するアスパラギンの側鎖に連結したグリカン)を除去するために1.67μLのPNGase F酵素(Prozyme N-グリカナーゼ)をこの溶液に加え、混合物をインキュベーター中37□で終夜インキュベートする。試料を次にLC-MS(NovaBioassays、Woburn、MA)を介して分析し、これは、グリカンを有しない所望のホモ二量体に対応する分子の分子量を結果としてもたらす。この質量を次にさらに補正するが、その理由は、cNg-アスパラギンからグリカンを切断するために使用される酵素プロセスはまた、アスパラギン側鎖を脱アミノ化してアスパラギン酸を形成させ、そうする際に酵素処理されたホモ二量体は、ホモ二量体中に存在する各鎖について1Daの質量に対応する全体として2Daを獲得するからである。したがって、実際の分子量は、分析試料中のインスリン-Fc融合タンパク質構造の酵素修飾について補正するために、測定された質量マイナス2Daである。
【0131】
実施例6:サイズ排除クロマトグラフィーによるホモ二量体%
280nmの波長において2998フォトダイオードアレイに接続されたWaters
2795HT HPLC(Waters Corporation、Milford、
MA)を使用してインスリン-Fc融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を実行した。0.2mL/分の流速において作動させ、50mMのリン酸ナトリウム、300mMのNaCl、および0.05%w/vのナトリウムアジド(pH6.2)を含む移動相を用いて、目的のインスリン-Fc融合タンパク質を含有する100μLまたはそれより少ない試料をMAbPac SEC-1、5μm、4×300mmカラム(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)に注入した。MAbPac SEC-1カラムは分子サイズ分離の原理において作動する。したがって、より大きい可溶性のインスリン-Fc凝集物(例えば、インスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体の多量体)はより早い保持時間において溶出し、非凝集性のホモ二量体はより後の保持時間において溶出した。分析的SEC-HPLCを介する凝集した多量体ホモ二量体からのホモ二量体の混合物の分離において、非凝集性ホモ二量体のパーセンテージの点でのインスリン-Fc融合タンパク質溶液の純度を確認した。
【0132】
実施例7:4℃における例示的なインスリン-Fc融合タンパク質のインビトロIM-9インスリン受容体結合
ヒトインスリン受容体を発現するヒトIM-9細胞(ATTC# CCL-159)を70~80%の密集度において完全RPMI 5% FBS培地中で培養および維持した。IM-9細胞の培養物を250×g(約1000rpm)において10分間遠心分離して細胞をペレット化した。HBSSまたはPBS緩衝液を用いて細胞を1回洗浄し、8×106細胞/mLの濃度まで冷FACS染色培地(HBSS/2mMのEDTA/0.1%のNa-アジド+4%のウマ血清)に再懸濁し、試験溶液が作られるまで氷上または4℃に保った。1.2mLのチューブ中2×濃度として1:3の段階希釈においてFACS緩衝液にインスリン-Fcタンパク質を希釈(約60μLの体積の各希釈)し、ピペッティングの用意ができるまで溶液を氷冷下に保った。
【0133】
1.25μg/mLの濃度までビオチン化RHIをFACS染色培地に希釈した。40μLの段階希釈された試験化合物および8μLの1.25μg/mLのビオチン-RHIをV底マイクロタイタープレートの各ウェルに加え、遅いボルテックスにより混合し、氷上に置いた。40μLのIM-9細胞懸濁液(8×106細胞/mL)を次にマルチチャンネルピペットにより各ウェルに加え、再び穏やかに混合し、氷上で30分間インキュベートして、IM-9細胞上のインスリン受容体に競合的に結合させた。V底プレートを3000rpmにおいて3分間遠心分離し、上清を吸引することにより、細胞を次に275μLの氷冷したFACS洗浄緩衝液(HBSS/2mMのEDTA/0.1%のNa-アジド+0.5%のウマ血清)を用いて2回洗浄した。細胞を次に、氷上で20分間1:100に希釈されたストレプトアビジン-PE(Life Technologies)を含有する40μLのFACS染色培地に再懸濁した。細胞を次に、275μLの氷冷したFACS緩衝液を用いて1回洗浄し、最後に3%のパラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定した。細胞を次に、275μLの氷冷したFACS緩衝液を用いて1回洗浄し、分析のために250μlのFACS緩衝液に再懸濁した。
【0134】
細胞を含有するV底プレートを次にGuava 8-HTフローサイトメーター(Millipore)において分析した。各濃度の試験化合物についてFACS FL-2チャネルにおいて細胞のメジアン蛍光強度(MFI)によりインスリン受容体へのビオチン化RHIの結合を定量化した。対照ウェルをビオチン化RHIのみを用いて標識し、各試験化合物濃度の結果としてもたらされる阻害パーセント(%)を算出するために使用した。IM-9細胞上のビオチン化RHI結合の試験化合物による阻害%を試験化合物のlog濃度に対してプロットし、試験化合物についてGraphPad Prism(GraphPad Software、La Jolla、CA)を使用して結果としてもたらされたIC50値を算出した。試験化合物のより低いIC50値は、したがって、より低い濃度におけるビオチン化RHI阻害のより高いレベルを指し示し、インスリン受容体へ
のインスリン-Fc融合タンパク質のより強い結合を指し示す。非標識組換えヒトインスリン(RHI)などの対照化合物もまた内部標準として使用して、それに対する所与の化合物のIC50の比(IC50(化合物)/IC50(RHI))を取り得るRHI IC50を生成した。より低いIC50比はRHIにより類似した結合(インスリン受容体へのより強い結合)を有し、より高いIC50比はRHIと比べてインスリン受容体へのより弱い結合を有する。
【0135】
実施例8:インビトロFc(ガンマ)受容体I結合親和性アッセイ
以下のようにELISAアッセイを使用してpH7.4におけるFc(ガンマ)受容体Iへのインスリン-Fc融合タンパク質の結合を実行した。イヌ科動物およびネコ科動物のいずれのFc(ガンマ)受容体Iも商業的に入手可能でなかったので、ヒトFc(ガンマ)受容体I(すなわち、rhFc(ガンマ)受容体I)をサロゲート哺乳動物受容体として使用した。インスリン-Fc化合物をpH9.6において重炭酸ナトリウム緩衝液に10μg/mLまで希釈し、Maxisorp(Nunc)マイクロタイタープレートに4℃で終夜コーティングした後、マイクロプレートストリップをPBST(PBS/0.05%のTween-20)緩衝液を用いて5回洗浄し、Superblockブロッキング試薬(ThermoFisher)を用いてブロッキングした。ビオチン化rhFc(ガンマ)受容体I(組換えヒトFc(ガンマ)R-I;R&D Systems)の段階希釈液を6000ng/mL~8.2ng/mLでPBST/10%のSuperblock緩衝液中で調製し、インスリン-Fc融合タンパク質をコーティングしたマイクロプレートストリップに100μL/ウェルにおいてロードした。マイクロタイタープレートを室温で1時間インキュベートした後、PBSTを用いてマイクロプレートストリップを5回洗浄し、次にPBST/10%のSuperblock緩衝液に1:10000で希釈した100μL/ウェルのストレプトアビジン-HRPをロードした。45分間インキュベートした後、PBSTを用いてマイクロプレートストリップを再び5回洗浄した。TMBを加えて結合したFc(ガンマ)受容体Iタンパク質を明らかにさせ、ELISA中止試薬(Boston Bioproducts)を用いて中止させた。プレートを450nmにおいてELISAプレートリーダーで読み取り、OD値(インスリン-Fcタンパク質へのrhFc(ガンマ)受容体Iの結合に比例する)を各ウェルに加えたrhFc(ガンマ)受容体Iのlog濃度に対してプロットし、GraphPad Prismソフトウェアを使用して結合曲線を生成した。
【0136】
実施例9:イヌ科動物FcRn受容体に対するインスリン-Fc融合タンパク質の親和性のインビトロ測定
イヌ科動物FcRn受容体に対するイヌ科動物またはネコ科動物IgG起源のFc断片を含有するインスリン-Fc融合タンパク質のインビトロ結合親和性を、5.5の溶液pHにおいて実行したELISA技術を介して測定した。わずかに酸性のpHは、Fc断片含有分子がFcRn受容体に結合するための好ましい結合環境である。インビボで、細胞は表面上およびエンドソームの内部にFcRnを発現する。Fc断片を含有する分子は天然のプロセス(例えば、ピノサイトーシスまたはエンドサイトーシス)を通じて細胞に運ばれるので、pHはエンドソーム中でより低いpHに変化し、そこでFcRn受容体は、さもなければエンドソーム-リソソームコンパートメント中で分解されるであろうFc断片含有分子に結合し、それにより、これらの分子がpHが中性により近い(例えば、pH7.0~7.4)細胞表面に再循環することを可能とする。中性pHはFcRn受容体への結合に不利に働き、循環に戻るFc断片含有分子の放出を可能とする。これは、Fc断片含有分子がインビボで長期化された循環薬物動態の半減期を呈する主要な機序である。
【0137】
イヌ科動物またはネコ科動物起源のFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質をpH9.6の重炭酸ナトリウム緩衝液に10μg/mlまで希釈し、RTで1~2時間Maxisorb ELISAプレートストリップに2連でコーティングした。ストリップ
を次にPBST(PBS/0.1%のTween-20)緩衝液を用いて4回洗浄し、Superblockブロッキング試薬(ThermoFisher)を用いてブロッキングした。FcRn結合用のストリップを次にpH5.5のMES/NaCl/Tween(50mMのMES/150mMのNaCl/0.1%のTween-20)緩衝液を用いて再び2回洗浄した後、FcRn試薬(ビオチン化イヌ科動物FcRn;Immunitrack)を添加した。ネコ科動物FcRn試薬は商業的に入手可能なものが見出されなかったため、イヌ科動物Fc断片またはネコ科動物Fc断片のいずれかを含有するインスリン-Fc融合タンパク質をイヌ科動物FcRnへの結合についてアッセイした。ビオチン化FcRn試薬の段階希釈液(1:3X希釈液)を1000ng/ml~0.45ng/mlの濃度においてpH5.5のMES/NaCl/Tween/10%Superblock緩衝液中に調製し、マルチチャンネルピペッタを使用してインスリン-Fc融合タンパク質化合物でコーティングしたストリップに100μL/ウェルにおいてロードした。アッセイプレートを次に室温で1時間インキュベートした。FcRn結合ストリップをpH5.5のMES/NaCl/Tween緩衝液を用いて4回洗浄し、次にpH5.5のMES/NaCl/10%Superblock緩衝液に1:10000で希釈した100μl/ウェルのストレプトアビジン-HRPをロードした。45分間インキュベートした後、pH5.5のMES/NaCl/Tween緩衝液を用いてストリップを再び4回洗浄した。TMBを最後に加えて、結合したビオチン化イヌ科動物FcRn試薬を明らかにし、ELISA中止試薬を用いて顕色を中止させた。プレートを450nmの波長においてELISAプレートリーダーで読み取った。OD値(インスリン-Fc融合タンパク質試験化合物へのイヌ科動物FcRnの結合に比例する)を各ウェルに加えたFcRnのlog濃度に対してプロットし、GraphPad Prismソフトウェアを使用して結合曲線を生成した。各結合曲線のEC50値を算出して異なる化合物間の比較を行った。
【0138】
実施例10:イヌまたはネコにおけるインスリンFc融合タンパク質の単回投与後のインビボ薬力学(PD)の決定のための一般化された手順
以下のように空腹時血中グルコースレベルに対する効果についてインスリン-Fc融合タンパク質を査定した。N=1、2、3またはより多くの健常の、抗体ナイーブの、体重約10~15kgのイヌまたは体重約5kgのネコを各インスリン-Fc融合タンパク質について1匹使用した。アナフィラキシー、嗜眠、苦痛、疼痛などの徴候についても動物を1日2回観察し、任意選択的に一部の化合物について、治療を追加の3回の週毎の皮下注射またはより多くにわたり続けて、中和抗薬物抗体の潜在的な誘導の鍵となる徴候として、化合物のグルコース低下能力が経時的に減じるかどうかを観察した。0日目に、7.0~8.0の溶液pHにおいて0.08~0.80mgのインスリン-Fc融合タンパク質/kg(またはモルベースで1.2~12.3nmol/kgとおおよそ同等もしくは0.4~4.0U/kgとおおよそ同等のインスリン同等物)の用量において10~50mMのリン酸水素ナトリウム、50~150mMの塩化ナトリウム、0.005~0.05%v/vのTween-80、および任意選択的に0.02~1.00mg/mLの濃度の静菌剤(例えば、フェノール、m-クレゾール、またはメチルパラベン)の溶液中に1~10mg/mLの濃度のインスリンFc融合タンパク質ホモ二量体を含有する医薬組成物の静脈内投与または皮下投与のいずれかを介して単回注射を動物に与えた。0日目に、注射の直前および注射の15、30、45、60、120、240、360、および480分後、ならびに注射の1、2、3、4、5、6、および7日後に好適な静脈から血液を収集した。
【0139】
各時点について最小1mLの全血を収集した。約1滴の血液を要求するグルコース計(ACCU-CHEK(登録商標) Aviva Plus)を使用してグルコースレベルの読取りを直ちに決定した。0日目から7日目までの空腹時血中グルコースレベルの平均%(FBGL%)をプロットして所与のインスリン-Fc融合タンパク質の生物活性を査
定した。
【0140】
実施例11:イヌ科動物またはネコ科動物におけるインスリン-Fc融合タンパク質の繰返しの投与後のインビボ薬力学(PD)の決定のための一般化された手順
以下のように繰返しの注射にわたる血中グルコースレベルに対する効果についてインスリン-Fc融合タンパク質を査定した。健常な、抗体ナイーブの、体重約5~20kgのイヌまたはネコを使用し、各動物にインスリン-Fc融合タンパク質の用量を投与した。アナフィラキシー、嗜眠、苦痛、疼痛、および他の負の副作用の徴候について動物を1日2回観察し、任意選択的に一部の化合物について、治療を追加の2~5回までの皮下注射にわたり続けて、インビボでの中和抗薬物抗体の存在の可能性を指し示す、化合物のグルコース低下能力が経時的に減少するかどうかを観察した。0日目に、7.0~8.0の溶液pHにおいて0.08~0.80mgのインスリン-Fc融合タンパク質/kg(またはモルベースで1.2~12.3nmol/kgとおおよそ同等もしくは0.4~4.0U/kgとおおよそ同等のインスリン同等物)の用量において10~50mMのリン酸水素ナトリウム、50~150mMの塩化ナトリウム、0.005~0.05%v/vのTween-80、および任意選択的に0.02~1.00mg/mLの濃度の静菌剤(例えば、フェノール、m-クレゾール、またはメチルパラベン)の溶液中にインスリンFc融合タンパク質を含有する医薬組成物の単回の皮下注射を動物に与えた。0日目に、注射の直前および注射の15、30、45、60、120、240、360、および480分後、ならびに注射の1、2、3、4、5、6、および7日後に好適な静脈から血液を収集した。
【0141】
その後の皮下注射は週に1回以下の頻度で与え、一部の場合には、所与のインスリン-Fc融合タンパク質製剤の薬力学に基づいて異なる間隔において注射を与えた。各インスリン-Fc融合タンパク質についてのその後の注射は、インスリン-Fc融合タンパク質の実証された薬力学に依存して、より高いまたはより低い用量に調整した。例えば、0日目における1回目の注射の用量が血中グルコースの低下において有効でないと見出された場合、注射されるインスリン-Fc融合タンパク質のその後の用量レベルを上向きに調整した。類似した方式において、0日目における1回目の注射の用量が強すぎる方式においてグルコースを低下させることが見出された場合、注射されるインスリン-Fc融合タンパク質のその後の用量レベルを下向きに調整した。暫定用量または最終用量を必要に応じて類似した方式において調整し得ることも見出された。各投薬について、注射の直前ならびに注射の15、30、45、60、120、240、360、および480分、および1、2、3、4、5、6、7日(および任意選択的に14日)後に好適な静脈から血液を収集した。各時点について最小1mLの全血を収集した。約1滴の血液を要求するグルコース計(ACCU-CHEK(登録商標) Aviva Plus)を使用してグルコースレベルの読取りを直ちに決定した。研究の全体からの空腹時血中グルコースレベルの平均%(FBGL%)を時間に対してプロットすることで融合タンパク質の生物活性を決定した。
【0142】
各用量の生物活性を決定するために、以下のように曲線上面積(AOC)分析を実行した。FBGL%対時間データを構築した後、データを次にデータ解析ソフトウェア(GraphPad Prism、GraphPad Software、San Diego
CA)に入力した。ソフトウェアを使用して最初に曲線下面積分析(AUC)を実行し、各用量についてFBGL%対時間曲線下の面積を積分した。AUCデータを所望のAOCデータに変換するために、以下の等式:AOC=TPA-AUCを使用し、ここでTPAは、各用量寿命(例えば、7日、14日など)に100%(100%はy=FBGL%対時間曲線の100%を表す)を掛けることにより得られる総可能面積である。例えば、7日の所与の用量寿命および500FBGL%・日の算出されたAUCは、AOCについて以下を与える:AOC=(100FBGL%×7日)-(500FBGL%・日)=2
00FBGL%・日。解析を一連の注射された用量における各注射された用量について行って、注射1、注射2、注射3などについてのAOC値を得ることができる。
【0143】
インスリン-Fc融合タンパク質の用量は以前に議論したように変動し得るので、所与のインスリン-Fc融合タンパク質についての全ての算出されたAOC値をそのインスリン-Fc融合タンパク質の具体的な用量に対して正規化することが多くの場合により簡便である。そうすることにより、用量レベルが所与の研究の注射にわたり変化する場合であっても、複数の注射にわたるインスリン-Fc融合タンパク質のグルコース低下効力の簡便な比較が可能となる。所与の用量についての正規化されたAOC(NAOC)は、FBGL%・日・kg/mgの単位を用いて以下:NAOC=AOC/Dとして算出され、Dは、mg/kgでの動物に注射された実際の用量である。NAOC値は、所与の動物についての一連の注射における各注射について算出されてもよく、同じインスリン-Fc融合タンパク質製剤を与えられた動物の群にわたり平均化されてもよい。
【0144】
各注射(例えば、注射1、2、3、・・・N)についてNAOC値を得、以下:NAOCR=(NAOC(N回目の注射)/NAOC(注射1))のように所与の注射についての各NAOCを注射1からのNAOCで割ることにより、所与の動物についての一連の注射における各注射についてNAOC比(NAOCR)を算出してもよい。一連の注射におけるN回目の注射についての所与のインスリン-Fcホモ二量体融合タンパク質製剤のNAOCRを評価することにより、所与のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボグルコース低下活性が一連のN回の投薬にわたりその生物活性を実質的に保持したかどうか(例えば、0.5より高いN回目の投薬についてのNAOCR)、または、インビボでの中和抗薬物抗体の形成の可能性を指し示す、所与のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボグルコース低下活性がN回の投薬の過程にわたりその効力の実質的な部分を失ったかどうか(例えば、N回目の投薬のNAOCRが0.5未満である)を決定することができる。好ましい実施形態では、1回目の皮下注射後のNAOCに対する3回目の皮下注射後のNAOCの比は0.5より高い(すなわち、3回目の皮下注射のNAOCRは0.5より高い)。
【0145】
実施例12:イヌ科動物およびネコ科動物血清におけるインビボ薬物動態(PK)の決定のための一般化された手順
以下のようにイヌ科動物血清中のイヌ科動物アイソタイプのFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質の濃度を測定するためのアッセイを構築した。アッセイはサンドイッチELISAフォーマットを含み、該フォーマットでは、血清試料中の治療用化合物がELISAプレートにコーティングされた抗インスリン/プロインスリンモノクローナル抗体(mAb)により捕捉され、次にHRP共役抗イヌ科動物IgG Fc特異的抗体、続いて顕色用のTMB基質システムの使用により検出される。Maxisorp ELISA Plate(Nunc)を5μg/mlのコーティング緩衝液(pH=9.6の炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウム(sodium biocarbonate)緩衝液)中の抗インスリンmAbクローンD6C4(Biorad)を用いて4℃で終夜コーティングする。プレートを次にPBST(PBS+0.05%のTween 20)を用いて5回洗浄し、SuperBlockブロッキング溶液(ThermoFisher)を用いて室温で最低1時間(または4Cで終夜)ブロッキングする。試験血清試料をPBST/SB/20%HS試料希釈緩衝液(PBS+0.1%のTween 20+10%のSuperBlock+20%のウマ血清)に1:20まで希釈する。標準曲線を作るために、目的のインスリン-Fc融合タンパク質を1:2.5の段階希釈において200ng/ml~0.82ng/mlの濃度範囲で試料希釈緩衝液(PBST/SB/20%HS)+5%のプールされたビーグル血清(BioIVT)に希釈する。標準物質および希釈された血清試料をブロッキングされたプレートに100μl/ウェルにおいて2連で加え、室温で1時間インキュベートする。インキュベーション後、試料および標準物質をPB
STを用いて5回洗浄する。HRP共役ヤギ抗イヌ科動物IgG Fc(Sigma)検出抗体をPBST/SB/20%HS緩衝液に約1:15,000まで希釈し、100μlを全てのウェルに加え、暗所下の室温で45分間インキュベートする。プレートをPBSTを用いて5回および脱イオン水を用いて1回洗浄し、100μl/ウェルのTMB(Invitrogen)を室温で8~10分間加えることにより顕色させる。顕色を次に100μl/ウェルのELISA Stop Solution(Boston Bioproducts)の添加により中止させ、SpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して30分以内に吸光度を450nmにおいて読み取る。試料中のインスリン-Fc融合タンパク質化合物の濃度をSoftMaxProソフトウェアを使用して4-PL曲線上の補間により算出する。
【0146】
同様に、以下のようにネコ科動物血清中のネコ科動物アイソタイプのFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質の濃度を測定するためのアッセイを構築した。アッセイはサンドイッチELISAフォーマットを含み、該フォーマットでは、血清試料中の治療用化合物がELISAプレートにコーティングされた抗インスリン/プロインスリンmAbにより捕捉され、次にHRP共役ヤギ抗ネコ科動物IgG Fc特異的抗体、続いて顕色用のTMB基質システムの使用により検出される。Maxisorp ELISA Plate(Nunc)を5μg/mlのコーティング緩衝液(pH=9.6の炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウム緩衝液)中の抗インスリンmAbクローンD6C4(Biorad)を用いて4℃で終夜コーティングする。プレートを次にPBST(PBS+0.05%のTween 20)を用いて5回洗浄し、SuperBlockブロッキング溶液(ThermoFisher)を用いて室温で最低1時間(または4Cで終夜)ブロッキングする。試験血清試料をPBST/SB/20%HS試料希釈緩衝液(PBS+0.1%のTween 20+10%のSuperBlock+20%のウマ血清)に1:20まで希釈する。標準曲線を作るために、目的のインスリン-Fc融合タンパク質化合物を1:2.5の段階希釈において200ng/ml~0.82ng/mlの濃度範囲で試料希釈緩衝液(PBST/SB/20%HS)+5%の正常ネコ血清(Jackson Immunoresearch)に希釈する。標準物質および希釈された血清試料をブロッキングされたプレートに100μl/ウェルにおいて2連で加え、室温で1時間インキュベートする。インキュベーション後、試料および標準物質をPBSTを用いて5回洗浄する。HRP共役ヤギ抗ネコ科動物IgG Fc(Bethyl Lab)検出抗体をPBST/SB/20%HS緩衝液に約1:20,000まで希釈し、100μlを全てのウェルに加え、暗所下の室温で45分間インキュベートする。プレートをPBSTを用いて5回および脱イオン水を用いて1回洗浄し、100μl/ウェルのTMB(Invitrogen)を室温で8~10分間加えることにより顕色させる。顕色を次に100μl/ウェルのELISA Stop Solution(Boston Bioproducts)の添加により中止させ、SpectraMaxプレートリーダー(Molecular
Devices)を使用して30分以内に吸光度を450nmにおいて読み取る。試料中のインスリン-Fc融合タンパク質化合物の濃度をSoftMaxProソフトウェアを使用して4-PL曲線上の補間により算出する。
【0147】
実施例13:イヌ科動物血清中の抗薬物抗体を測定するためのアッセイプロトコール
試験化合物に対するADAを測定するためにMaxisorp ELISA Plate(Nunc)を10μg/mLのコーティング緩衝液(pH=9.6の炭酸塩-重炭酸塩(Biocarbonate)緩衝液)に希釈した目的のインスリン-Fc融合タンパク質を用いて4℃で終夜コーティングする。イヌ科動物IgG起源のFc断片を含有するインスリン-Fc融合タンパク質のインスリン部分に対するADAを測定するために、コーティング緩衝液中の30μg/mLの精製されたインスリンを用いてプレートをコーティングする。プレートを次にPBST(PBS+0.05%のTween 20)を用いて5回洗浄し、SuperBlockブロッキング溶液(ThermoFisher、W
altham MA)を用いて少なくとも1時間(または終夜)ブロッキングする。イヌ科動物IgG単位におけるADAを算出するために、300~4.69ng/mlの濃度のpH=9.6のCarb-Biocarbコーティング緩衝液中のイヌ科動物IgG(Jackson Immunoresearch Laboratories、West
Grove PA)の1:2の段階希釈液を用いてストリップを4℃で終夜直接的にコーティングし、それを使用して7点の偽性標準曲線を作製する。標準物質ストリッププレートもまた洗浄し、SuperBlockブロッキング溶液を用いて少なくとも1時間(または終夜)ブロッキングする。
【0148】
試験血清試料をPBST/SB/20%HS試料希釈緩衝液(PBS+0.1%のTween 20+10%のSuperBlock+20%のウマ血清)に1:100より高いまたはそれに等しくなるまで(典型的には1:200として試験する)希釈し、それを100μL/ウェルにおいて2連でインスリン-Fc融合タンパク質コーティング(またはRHIコーティング)ストリップに加える。イヌ科動物IgGコーティング標準物質ストリップの重複ストリップもまた各プレートに加え、100μL/ウェルのPBST/SB(PBS+0.1%のTween 20+10%のSuperBlock)緩衝液を充填する。プレートをRTで1時間インキュベートし、次にPBSTを用いて5回洗浄する。ADAの検出のために、HRP共役ヤギ抗ネコ科動物IgG F(ab’)2(抗ネコ科動物IgG F(ab’)2試薬はイヌ科動物抗体に対して交差反応する;Jackson Immunoresearch Laboratories、West Grove PA)をPBST/SBに1:10000まで希釈し、試料ウェルおよび標準物質ウェルの両方に100μL/ウェルにおいて加え、暗所下のRTで45分間インキュベートする。プレートをPBSTを用いて5回、次に脱イオン水を用いて1回洗浄し、次に100μL/ウェルのTMB基質(Invitrogen、ThermoFisher Scientific、Waltham MA)を暗所下の室温で15~20分間加えることにより顕色させる。顕色を次に100μL/ウェルのELISA Stop Solution(Boston Bioproducts)の添加により中止させ、SpectraMaxプレートリーダーを使用して30分以内に450nmにおける吸光度を読み取る。SoftMax Pro Software(Molecular Devices、San Jose CA)を使用して4-PL偽性標準曲線においてOD値を補間することにより抗薬物抗体濃度を決定する。
【0149】
検出されるADAの特異性を実証するために、「阻害」アッセイを実行する。薬物阻害ADAアッセイにおいて、血清試料をPBST/SB/20%HS緩衝液に1:100で希釈し、等しい体積の300μg/mLの関連する治療用化合物(1:200の最終の試料希釈および150μg/mLの最終の阻害化合物)と混合し、室温で30~40分間インキュベートして抗薬物抗体を遊離阻害剤(すなわち、治療用化合物)に結合させる。プレインキュベーション後に、試料をインスリン-Fc融合タンパク質コーティング(またはRHIコーティング)ストリップに100μL/ウェルにおいて2連で加える。阻害化合物を含まないPBST/SB/20%HS緩衝液に1:200で希釈した試料もまた、イヌ科動物IgGコーティング標準物質の重複ストリップと共に試料プレートにおいて試験する。アッセイ手順の残りのステップは上記のように実行する。薬物阻害ウェルにおいて測定されるADAは、ADAの特異性を査定するために非阻害のADA濃度とマッチさせる。ADAシグナルの有意な阻害が薬物阻害ウェルにおいて観察される場合、これは、ADAは治療用化合物に特異的であることを意味する。
【0150】
実施例14:ネコ科動物血清中の抗薬物抗体を測定するためのアッセイプロトコール
ネコ科動物IgG起源のFc断片を含有するインスリン-Fc融合タンパク質に対するADAを測定するためにMaxisorp ELISA Plate(Nunc)を10μg/mLのコーティング緩衝液(pH=9.6の炭酸塩-重炭酸塩緩衝液)に希釈した
目的のインスリン-Fc融合タンパク質を用いて4℃で終夜コーティングする。インスリン-Fc融合タンパク質のインスリン部分に対するADAを測定するために、コーティング緩衝液中の30μg/mLの精製されたインスリンを用いてプレートをコーティングする。プレートを次にPBST(PBS+0.05%のTween 20)を用いて5回洗浄し、SuperBlockブロッキング溶液(ThermoFisher、Waltham MA)を用いて少なくとも1時間(または終夜)ブロッキングする。ネコ科動物IgG単位におけるADAを算出するために、300~4.69ng/mlの濃度のpH=9.6の炭酸ナトリウム-重炭酸ナトリウムコーティング緩衝液中のネコ科動物IgG(Jackson Immunoresearch Laboratories、West
Grove PA)の1:2の段階希釈液を用いてストリップを4℃で終夜直接的にコーティングし、それを使用して7点の偽性標準曲線を作製する。標準物質ストリッププレートもまた洗浄し、SuperBlockブロッキング溶液を用いて少なくとも1時間(または終夜)ブロッキングする。
【0151】
試験血清試料をPBST/SB/20%HS試料希釈緩衝液(PBS+0.1%のTween 20+10%のSuperBlock+20%のウマ血清)に1:100より高いまたはそれに等しくなるまで(典型的には1:200として試験する)希釈し、それを100μL/ウェルにおいて2連でインスリン-Fc融合タンパク質コーティング(またはRHIコーティング)ストリップに加える。ネコ科動物IgGコーティング標準物質ストリップの重複ストリップもまた各プレートに加え、100μL/ウェルのPBST/SB(PBS+0.1%のTween 20+10%のSuperBlock)緩衝液を充填する。プレートを室温で1時間インキュベートし、次にPBSTを用いて5回洗浄する。ADAの検出のために、HRP共役ヤギ抗ネコ科動物IgG F(ab’)2(Jackson Immunoresearch Laboratories、West Grove PA)を1:10000の係数でPBST/SBに希釈し、試料ウェルおよび標準物質ウェルの両方に100μL/ウェルにおいて加え、暗所下の室温で45分間インキュベートする。プレートをPBSTを用いて5回、脱イオン水を用いて1回洗浄し、100μL/ウェルのTMB基質(Invitrogen)を暗所下の室温で15~20分間加えることにより顕色させる。顕色を次に100μL/ウェルのELISA Stop Solution(Boston Bioproducts、Ashland MA)の添加により中止させ、SpectraMaxプレートリーダーを使用して30分以内に450nmにおける吸光度を読み取る。SoftMax Pro Software(Molecular Devices、San Jose CA)を使用して4-PL偽性標準曲線においてOD値を補間することにより抗薬物抗体濃度を決定する。
【0152】
実施例15:免疫原性エピトープの同定のためのアッセイ手順
Maxisorp ELISAマイクロプレート(Nunc)を既知のアミノ酸配列を有するインスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体化合物のライブラリーを用いてコーティングし、ライブラリー中の各化合物をELISAマイクロプレートウェルの別々の個々のストリップにコーティングする以外は抗薬物抗体ELISAアッセイの実施例13および14に記載されるものと類似の方式において、コーティングされたプレートをブロッキングする。ライブラリー中の化合物は、異なるインスリンポリペプチドアミノ酸組成を有する広範なインスリン-Fc融合タンパク質を含み、これには、様々なB鎖、C鎖、およびA鎖アミノ酸突然変異、異なるリンカー組成、ならびにヒト起源のものを含む、異なるFc断片組成が含まれる。別々に、実施例13および14に記載されるように、それぞれイヌ科動物またはネコ科動物IgG単位における抗薬物抗体(ADA)を算出するために、一部のプレートストリップウェルをイヌ科動物またはネコ科動物IgG(Jackson Immunoresearch Laboratories、West Grove
PA)の1:2の段階希釈液を用いて直接的にコーティングする。
【0153】
インスリン-Fc融合タンパク質の繰返しの投薬を与えられた個々のイヌまたはネコから得られる血清を抗薬物抗体ELISAアッセイ(イヌについて実施例13およびネコについて実施例14)において最初にスクリーニングする。実施例13または実施例14のアッセイにおいて中等度または高い陽性(例えば、中等度または高いタイターの抗体)を実証した血清試料をPBST/SB/20%HS試料希釈緩衝液(PBS+0.1%のTween 20+10%のSuperBlock+20%のウマ血清)に段階希釈(1:200~1:8000)し、インスリン-Fc融合タンパク質化合物のライブラリーを用いてコーティングされたプレートにRTで1時間加える。インキュベーション後に、プレートをPBSTを用いて5回洗浄する。コーティングされた化合物ライブラリーに交差反応することができるイヌ科動物またはネコ科動物抗体の検出のために、イヌ科動物およびネコ科動物の両方のIgGに交差反応性であるHRP共役ヤギ抗ネコ科動物IgG F(ab’)2(Jackson Immunoresearch Laboratories、West Grove PA)をPBST/SBに1:10000まで希釈し、試料ウェルおよび標準物質ウェルの両方に100μL/ウェルにおいて加え、暗所下のRTで45分間インキュベートする。プレートをPBSTを用いて5回、脱イオン水を用いて1回洗浄し、100μL/ウェルのTMB基質(Invitrogen、ThermoFisher Scientific、Waltham MA)を暗所下のRTで15~20分間加えることにより顕色させる。顕色を次に100μL/ウェルのELISA Stop Solution(Boston Bioproducts、Ashland MA)の添加により中止させ、SpectraMaxプレートリーダーを使用して30分以内に450nmにおける吸光度を読み取る。SoftMax Pro Software(Molecular Devices、San Jose CA)を使用して直接的にコーティングされたイヌ科動物またはネコ科動物IgG抗体対照に対する4-PL偽性標準曲線においてOD値を補間することにより血清試料中に存在する抗化合物交差反応性抗体濃度を決定する。
【0154】
アッセイからの結果としてもたらされた抗体濃度をコーティングされたインスリン-Fc融合タンパク質ライブラリーの既知のアミノ酸組成と相関させることにより、具体的なアミノ酸突然変異またはエピトープが、アッセイにおける総抗体シグナルの0、一部、ほとんど、または全てを引き起こす原因となるかどうかを決定することができ、これは、様々なインスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体への結合なし、弱い結合、または強い結合を指し示す。中等度または強い結合の原因となる突然変異またはエピトープは、本明細書において免疫原性「ホットスポット」と称される。
【0155】
実施例16:高いホモ二量体タイターならびに標的種における許容されるレベルの急性および繰返しの投薬の生物活性を有するインスリン-Fc融合タンパク質を得るための設計プロセス
本発明の詳細な説明に記載の設計目標を満たすためのプロセスは以下のステップを含んだ。最初に、結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質が最小の免疫原性を有する長期作用性の生物活性製造物をもたらす可能性が最も高くなるように配列番号4または配列番号5のインスリンポリペプチドを具体的なIgGアイソタイプの種特異的Fc断片およびリンカーと組み合わせた(例えば、最小のFc(ガンマ)受容体I結合を有する種特異的IgGアイソタイプを選んだ)。所望の融合タンパク質をコードするDNA配列を調製し、ベクター(LakePharma、San Carlos、CA)にクローニングし、次に実施例1に記載の手順にしたがってベクターを使用してHEK細胞に一過的にトランスフェクトした。インスリン-Fc融合タンパク質を次に実施例3にしたがって精製し、実施例6にしたがって全体的なタンパク質収率およびホモ二量体%を測定した。50mg/Lより高いホモ二量体タイターを有する候補のみを許容されると考え、その理由は、このレベルより低いタイターは、獣医学的製造物についての厳密に低い生産コスト要求を満たす商用の製造タイターを結果としてもたらさないようであるからである。
選択されたインスリン-Fc融合タンパク質を次に実施例7に記載されるようにインビトロインスリン受容体結合研究を通じて生物活性の指標についてスクリーニングした。経験に基づけば、5000nM未満のIR活性IC50値を呈する化合物のみを標的種において生物活性を呈するようであるとみなした。インビトロIR IC50値は有用な定性的なスクリーニングツールであるが、それはヒトインスリン受容体を発現するヒトIM-9細胞を利用し、したがって、イヌ科動物またはネコ科動物IRとヒトIRとの間の親和性における一部の小さい差異を捕捉しない可能性がある。さらには、インスリン受容体結合以外の因子が、インビボで化合物の生物活性に影響を及ぼす(例えば、イヌ科動物またはネコ科動物FcRnに対する親和性がインビボで延長された薬物動態排出半減期を可能とする)可能性がある。したがって、生産およびIR活性IC50値の見地から許容される選択されたインスリン-Fc融合タンパク質を目的の動物(例えば、イヌまたはネコ)における生物活性についてさらにスクリーニングして、所望されるものより低い効力および/または生物活性の継続期間(例えば、150FBGL%・日・kg/mg未満のNAOC)を有する任意の材料をスクリーニングにより除外した。ここでもまた、経験に基づけば、150FBGL%・日・kg/mgより高いNAOC値において、標的種における用量要求は、許容される治療コストに達するように十分に低いものとなる。最後に、当該技術分野においてあったとしてもほとんど言及されない追加の評価基準を加えた。以下の実施例においてより詳細に議論するように、1回目の投薬後に標的種において許容されるNAOCレベルを呈する多くのインスリン-Fc融合タンパク質の実施形態は、予想外なことに、繰返しの投薬後にそのレベルの生物活性を維持しない。さらには、ほとんどの場合に、標的種における繰返しの投薬での生物活性の低減は、中和抗薬物抗体の発生と相関している。抗薬物抗体を生成するこの傾向および活性を維持しないことは、そのようなインスリン-Fc融合タンパク質を、イヌ科動物糖尿病またはネコ科動物糖尿病などの慢性疾患の治療において使用するために実用的でないものとする。したがって、最小のレベルの抗薬物抗体と共に許容されるレベルの繰返しの投薬での生物活性(例えば、1回目の投薬に対する3回目の投薬についての0.50より高いNAOCR値)を呈するインスリン-Fc融合タンパク質のみを、本発明において使用するために許容されるとみなした。
【0156】
結果 - イヌ科動物Fc断片を含むインスリン-FC融合タンパク質
実施例17:イヌ科動物Fc IgGAアイソタイプを含むイヌ科動物インスリン-Fc融合タンパク質
配列番号12のペプチドリンカーを使用して配列番号5のインスリンポリペプチド配列およびイヌ科動物IgGAアイソタイプのFc断片(配列番号15)を含むインスリン-Fc融合タンパク質を製造することを試みた。結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質の全長アミノ酸配列は以下の通りである:
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGRCTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVMHETLQNHYTDLSLSHSPG(配列番号42)
【0157】
配列番号42のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK細胞中で合成し、実施例3にしたがって精製した。タンパク質収率はタンパク質精製ステップ後に22mg/Lであった。インスリン-Fc融合タンパク質の構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。ホモ二量体%を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定したところ24%であると決定され、高い程度のホ
モ二量体凝集物を指し示した。結果としてもたらされたホモ二量体タイターはしたがって5mg/Lに過ぎなかった。要約すると、HEK細胞中での配列番号42のインスリン-Fc融合タンパク質の生産は、高いレベルの凝集物および低いホモ二量体タイター(5mg/L)を結果としてもたらし、これは50mg/Lより高いホモ二量体タイターの設計目標を満たさなかった。
【0158】
それにもかかわらず、配列番号42のインスリン-Fc融合タンパク質を生物活性について評価した(as evaluated)。最初に、配列番号42のインスリン-Fc融合タンパク質のインスリン受容体結合を実施例7にしたがって測定したところ2,733nMのIC50値が結果としてもたらされ、化合物はインビボで生物活性であるらしいこと(すなわち、5000nM未満のIC50)を指し示した。
【0159】
次に、実施例10にしたがって、N=3のイヌ科動物への化合物の単回静脈内投与後に配列番号42のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボ薬力学(PD)を測定した。
図2は、配列番号42の空腹時血中グルコースレベルのパーセントを時間の関数として示す。配列番号42のNAOCは、実施例11の手順にしたがって105FBGL%・日・kg/mgであると算出された。配列番号42のインビボ半減期は、実施例12の方法を使用して1日未満であると算出された。比較的低いNAOCは、試料中の凝集物の多い量(すなわち、低いホモ二量体%)の結果であったようであり、可溶性のホモ二量体が循環中に残存したが、依然として1日未満の薬物動態排出半減期を有したに過ぎず、これは週に1回の投与のサポートとはならないようであるとみなされた。
【0160】
実施例18:イヌ科動物IgGAアイソタイプを含むインスリン-Fc融合タンパク質のFc断片領域の突然変異
配列番号42のインスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体%含有量を増加させ、生物活性を向上させ、かつ半減期を増加させることを試みて、突然変異をFc断片CH3領域に挿入して、分子間会合(例えば、分子間のFc断片-Fc断片相互作用)を予防し、かつFcRn受容体へのより強い結合(例えば、FcRnに対するより高い親和性)を促して、再利用および全身循環時間を増加させることを試みた。以下のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK細胞中で合成し、実施例3にしたがって精製し、実施例4~7にしたがって試験し、それを以下に示す。配列番号42に対する配列番号44、46、48、および50の配列アライメントならびにアミノ酸配列における差異を
図3に示す。
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGRCTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVLHEALHSHYTQKSLSLSPG(配列番号44)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGRCTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVLHETLQSHYTDLSLSHSPG(配列番号46)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVE
QCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGRCTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVMHETLQSHYTDLSLSHSPG(配列番号48)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGRCTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVLHETLQNHYTDLSLSHSPG(配列番号50)
【0161】
イヌ科動物IgGA変種に基づくインスリン-Fc融合タンパク質を、対応するタンパク質収率、ホモ二量体%、およびホモ二量体タイターと共に表2に列記する。結果は、IgGA Fc断片への様々な突然変異は、ホモ二量体%およびホモ二量体タイターを向上させる代わりに、5mg/L未満の極めて低いホモ二量体タイターを有する高度に凝集したタンパク質を生じさせたことを示す。そのため、化合物のインビボでの生物活性および薬物動態を評価することはできなかった。
【表2】
【0162】
実施例19:他のイヌ科動物Fc断片アイソタイプを使用したイヌ科動物インスリン-Fc融合タンパク質
上記のように、イヌ科動物IgGAは、イヌ科動物におけるFc(ガンマ)Iエフェクター機能の欠如に起因してイヌのための非免疫原性のインスリン-Fc融合タンパク質を製造するためのFc断片の好ましいアイソタイプであると考えられる(ヒトにおけるヒトIgG2アイソタイプとよく似ている)。しかしながら、イヌ科動物IgGA Fc断片を用いて生産されたインスリン-Fc融合タンパク質は、許容できない低いホモ二量体タイターならびに許容できない低いレベルの生物活性および作用の継続期間と共に高度に凝集した。したがって、他のイヌ科動物IgGアイソタイプ(配列番号16のイヌ科動物IgGB)、配列番号17のイヌ科動物IgGC、および配列番号18のイヌ科動物IgGD)からのFc断片を配列番号42のインスリン-Fc融合物のイヌ科動物IgGA Fc断片用の置換物として評価した。イヌ科動物IgGB、IgGC、およびIgGDアイソタイプに基づくFc断片を含有する3つのインスリン-Fc融合タンパク質を、配列番号42のインスリン-Fc融合タンパク質を作るために使用したものと同じ配列番号5の
インスリンポリペプチドおよび配列番号12のペプチドリンカーを使用して合成した。タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産した。インスリン-Fc融合タンパク質を次に実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。インスリン-Fc融合タンパク質の構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。ホモ二量体%を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。それらの配列を以下に示し、配列番号42に対するそれらの配列アライメント比較を
図4に示す:
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号52)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGCNNCPCPGCGLLGGPSVFIFPPKPKDILVTARTPTVTCVVVDLDPENPEVQISWFVDSKQVQTANTQPREEQSNGTYRVVSVLPIGHQDWLSGKQFKCKVNNKALPSPIEEIISKTPGQAHQPNVYVLPPSRDEMSKNTVTLTCLVKDFFPPEIDVEWQSNGQQEPESKYRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQISLSHSPG(配列番号54)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGCISPCPVPESLGGPSVFIFPPKPKDILRITRTPEITCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQPREQQFNSTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIGLPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSPKELSSSDTVTLTCLIKDFFPPEIDVEWQSNGQPEPESKYHTTAPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDTFTCAVMHEALQNHYTDLSLSHSPG(配列番号56)
結果としてもたらされたタンパク質収率、ホモ二量体%、およびホモ二量体タイターを表3に与える。予想外なことに、イヌ科動物IgGBアイソタイプに基づくFc断片を含む配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質のみが、50mg/Lより高い設計基準を満たすホモ二量体タイターを実証した。イヌ科動物IgGCアイソタイプに基づくFc断片を含む配列番号54のインスリン-Fc融合タンパク質は、全くいかなる化合物ももたらさず、イヌ科動物IgGDアイソタイプに基づくFc断片を含む配列番号56のインスリン-Fc融合タンパク質は、認識可能なタンパク質収率を実証せず、高い程度の凝集、したがって許容できない低いホモ二量体タイターを有した。
【0163】
配列番号52および配列番号56のインスリン-Fc融合タンパク質のインビトロインスリン受容体結合を実施例7の手順にしたがって試験した。配列番号56のインスリン-Fc融合タンパク質は5000nMより高いIC50を実証し、化合物はインビボで生物活性を示さない可能性が非常に高いことを指し示した。しかしながら、配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質は28nMのIC50を実証し、この配列はインビボで生物活性であるらしいことを指し示した。
【表3】
【0164】
実施例20:イヌ科動物IgGBアイソタイプFc断片を有する配列番号5のインスリンポリペプチドを含むインスリン-Fc融合タンパク質のインビボでの有効性
実施例19における有望なホモ二量体タイターおよびインスリン受容体活性の結果を考慮して、N=3の健常な、抗体ナイーブの、体重約10kgのビーグル犬のそれぞれにおける静脈注射後に配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例10にしたがってインビボでの生物活性について試験した。別々の実験において、化合物をN=3のナイーブビーグル犬の皮下に投与した。
図5は、配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質の単回静脈内投与についてのFBGL%対時間を示し、
図6は、配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質の単回皮下投与についてのFBGL%対時間を示し、これらの両方は、配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質はイヌにおいて有意に生物活性であることを実証する。
【0165】
NAOCを実施例11の手順にしたがって算出して、インスリン-Fc融合タンパク質の相対的な生物活性および作用の継続期間を決定した。静脈内に注射された配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質のNAOCは399FBGL%・日・kg/mgであり、これは静脈内に注射された配列番号42のインスリン-Fc融合タンパク質のNAOCの3.8倍であり、イヌ科動物IgGA Fc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質に対するイヌ科動物IgGB Fc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質についての有意に増加した生物活性を示した。皮下に注射された配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質のNAOCは366FBGL%・日・kg/mgであり、静脈内投与を介して得られたものに類似する皮下投与を介する生物活性のレベルを実証した。
【0166】
実施例21:イヌ科動物IgGBアイソタイプFc断片を有する配列番号5のインスリンポリペプチドを含むインスリン-Fc融合タンパク質の繰返しの皮下投薬後のインビボ免疫原性スクリーニング
次に、配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質の繰返し投薬皮下生物活性を実施例11に記載の方法の通りにイヌにおいて試験した。N=3の動物の皮下に0日目、at 35日目、および42日目に投薬を行い、FBGL%を実施例11にしたがって各投薬後の7日ウィンドウにわたり測定した。NAOCおよびNAOCRを各繰返しの皮下注射について実施例11の手順にしたがって算出した。表4に示されるように、イヌにおける繰返しの皮下投薬は、予想外なことに、NAOCRの有意な減少(すなわち、3回目の注射についてのNAOCは1回目の注射についてのNAOCの0.40、または40%に過ぎなかった)により測定されたように3回目の投薬による生物活性の有意な減衰を明らかにした。
【表4】
【0167】
いかなる具体的な説明にも縛られないが、イヌにおける3回目の繰返しの皮下投薬後の配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質の生物活性における有意な低減の原因は、その生物学的活性を中和する抗薬物抗体の発生に起因することが想定された。抗薬物抗体は、インスリン-Fc融合タンパク質のインスリンポリペプチド、リンカー、またはFc断片部分を標的としている可能性がある。免疫原性応答は、抗原提示細胞、Tヘルパー細胞、B細胞、およびそれらの関連付けられるサイトカインの間の相互作用として現れ、薬物に対する内因性の抗体(例えば、抗薬物抗体)の産生に繋がり得る。結合抗体は、インスリン-Fc融合タンパク質に結合することができる全てのアイソタイプであり、これらは実施例13に記載されるようなイムノアッセイにおいて検出され得る。インスリン-Fc融合タンパク質の機能的活性を阻害する中和抗体は、一般に、生物活性のために要求されるエピトープを標的とする。これが該当するかどうかを査定するために、各用量の投与前ならびに実施例11および12に記載の実験の終了時に収集した血清を試験して、実施例13にしたがって抗薬物抗体のレベルを定量化した。
図7に示すように、抗薬物抗体のレベルは化合物の複数回皮下投与と共に実際に増加し、中和抗薬物抗体の生成が、配列番号52のインスリンFc融合タンパク質の3回目の注射後のNAOCRの低減の原因であるらしいことを指し示した。
【0168】
実施例22:免疫原性の潜在的なリスクを低減するためのイヌ科動物IgGBアイソタイプFc断片を有する配列番号5のインスリンポリペプチドを含む非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質
実施例19および20に示したように、配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質は、イヌにおいて許容されるホモ二量体%含有量、ホモ二量体タイター、および生物活性を示したが、糖尿病などの慢性疾患のためのその使用は、繰返しの皮下投薬での生物活性の低減(実施例21)および抗薬物抗体の生成(実施例21)により損なわれる。いかなる具体的な理論にも縛られないが、抗薬物抗体の生成および生物活性の低減の1つのあり得る原因は、イヌ科動物免疫系の様々な受容体(例えば、Fc(ガンマ)受容体、例えば、Fc(ガンマ)RI)とのイヌ科動物IgGB Fc断片の相互作用の増加である。それにもかかわらず、イヌ科動物IgGBアイソタイプは、Fc断片のために使用された場合に、生産可能性および単回投薬での生物活性の設計目標を満たすインスリン-Fc融合タンパク質を結果としてもたらす、4つのイヌ科動物IgGアイソタイプのうちのただ1つのものであった(実施例16)。本発明の詳細な説明に記載されるように、Fc(ガンマ)相互作用を低減する1つの方法は、Fc断片cNg部位を突然変異させて宿主細胞中での合成の間のグリコシル化を予防することを伴う。したがって、cNg部位突然変異を配列番号52のFc断片領域に対して行って、実施例8に記載のインビトロヒトFc(ガンマ)RIアッセイにおける結合により測定された場合の、インビボでのFc(ガンマ)受容体に対するFc断片の結合親和性を低減させた。グリカンの欠如の検証は、実施例5のLC-MS法を使用して行ったが、PNGase F処理ステップを省略した。配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質中のcNg部位の位置はcNg-NB139である。配列番号52に対する突然変異は、cNg-NB139-Qの突然変異を含む配
列番号58、cNg-NB139-Sの突然変異を含む配列番号60、cNg-NB139-Dの突然変異を含む配列番号62、およびcNg-NB139-Kの突然変異を含む配列番号64を含んだ。cNg突然変異型インスリン-Fc融合タンパク質の全長アミノ酸配列を以下に列記し(NB139の位置に下線を引いている)、結果としてもたらされる配列アライメントを
図8に示す(Clustal Omega):
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQF
QGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号58)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQF
SGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号60)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQF
DGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号62)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQF
KGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号64)
インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。インスリン-Fc融合タンパク質の構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。ホモ二量体%を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。表5に示すように、配列番号60、配列番号62、および配列番号64のインスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体タイターは設計目標を満たしたが、予想外なことに、cNg-NB139-Q突然変異を含有する配列番号58のインスリン-Fc融合タンパク質はホモ二量体タイターについての設計目標を満たさなかった。
【表5】
【0169】
残り3つの化合物のうちのいずれが、免疫原性の低減を呈する可能性が最も高いのかを決定するために、Fc(ガンマ)受容体結合を実施例8の手順にしたがって測定した。低いFc(ガンマ)受容体結合は、最小の免疫原性と相関する可能性が最も高い。表6は、これらのインスリン-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体I結合を配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体結合と比較したものであり、これは予想外なことに、cNg-D突然変異を含有する配列番号62のインスリン-Fc融合タンパク質は、cNg-S突然変異を含有する配列番号60およびcNg-K突然変異を含有する配列番号64のインスリン-Fc融合タンパク質の約2倍のFc(ガンマ)受容体結合活性を呈することを実証する。したがって、cNg-S突然変異およびcNg-K突然変異を含有する後者の2つの化合物を含むインスリン-Fc融合タンパク質のみを、イヌにおける繰返しの投薬での生物活性試験のために好適であるとみなした。
【表6】
【0170】
実施例23:非グリコシル化cNg-KおよびcNg-Sイヌ科動物IgGBアイソタイプFc断片を有する配列番号5のインスリンポリペプチドのインビボでの生物活性および免疫原性の評価
cNg-S突然変異を含有する配列番号60のインスリン-Fc融合タンパク質がイヌにおいて繰返しの投薬での生物活性の成績を向上させるかどうかを決定するために、実施例11の手順にしたがって0日目、7日目、14日目、および28日目にN=1のイヌの皮下に化合物を投与した。イヌのFBGL%があまりに低く低下した場合、イヌに食餌を与えて安全なレベルまで血中グルコースを上昇させた。1回目の注射についてのNAOCは191FBGL%・日・kg/mgであり、配列番号60のインスリン-Fc融合タンパク質はインビボで十分に生物活性であることを示した。NAOCおよびNAOCRもまた、実施例11の一般手順にしたがって各その後の投薬について測定し、次の用量が投与
される直前までに用量が投与された時間から算出した。表7に示されるNAOCおよびNAOCRは、配列番号60のインスリン-Fc融合タンパク質は、4回の投薬レジメンの投薬3および4において有意に減少するNAOCRを呈したことを示す。したがって、cNg-S突然変異を含有する配列番号60のインスリン-Fc融合タンパク質は、配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質より4倍低いFc(ガンマ)RI結合を有するにもかかわらず、イヌにおいて繰返しの投薬での生物活性を実証することができなかった。
【表7】
【0171】
cNg-K突然変異を含有する配列番号64のインスリン-Fc融合タンパク質がイヌにおいて繰返しの投薬での生物活性の成績を向上させるかどうかを決定するために、実施例11の手順にしたがって0日目、7日目、14日目、および28日目にN=1のイヌの皮下に化合物を投与した。イヌのFBGL%があまりに低く低下した場合、イヌに食餌を与えて安全なレベルまで血中グルコースを上昇させた。1回目の注射についてのNAOCは449FBGL%・日・kg/mgであり、配列番号64のインスリン-Fc融合タンパク質はインビボで十分に生物活性であることを示した。化合物の薬物動態プロファイルもまた、ELISAを使用して実施例12の方法により測定し、2コンパートメントモデルをデータにフィッティングして、その排出半減期を約0.9日と決定した。NAOCおよびNAOCRもまた、実施例11の一般手順にしたがって各その後の投薬について測定し、次の用量が投与される直前までに用量が投与された時間から算出した。表8に示されるNAOCおよびNAOCRは、配列番号64のインスリン-Fc融合タンパク質は4回の投薬の全体を通じて0.6より高いNAOCRを維持することを示す。したがって、予想外なことに、cNg-K突然変異を含有する配列番号64のインスリン-Fc融合タンパク質は、イヌにおいて繰返しの投薬での生物活性の有意な向上を結果としてもたらす配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質の唯一の非グリコシル化突然変異体であった。
【表8】
【0172】
抗薬物および抗インスリン抗体のレベルもまた、実施例13にしたがって治療(28日)の過程の全体を通じておよび追加の2週間測定した。
図9は、配列番号64のインスリ
ン-Fc融合タンパク質はイヌにおいて繰返しの皮下投薬で抗薬物抗体を依然として生成させたが、抗薬物抗体タイターは配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質により生成されるもの(実施例19)よりはるかに低かったことを示す。
【0173】
実施例24:抗薬物抗体を含有するイヌ科動物血清のスクリーニングならびにインスリンポリペプチドのB10DおよびA8Hの位置における潜在的な免疫原性エピトープの同定
イヌ科動物IgGB Fc断片のcNg部位をLysに突然変異させること(すなわち、cNg-K)は、配列番号5のインスリンポリペプチドおよび配列番号12のペプチドリンカーを含むインスリン融合タンパク質の繰返しの投薬での生物活性を向上させたが(実施例23)、配列番号64の結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質は抗薬物抗体を依然として生じさせた(実施例23)。したがって、配列番号5のインスリンポリペプチドは、予想外なことに、イヌの免疫系が標的とする特定のエピトープ(すなわち、免疫原性「ホットスポット」)を含有し得るという仮説を立てた。したがって、実施例13に記載の血清試料中に存在する抗体の結合特異性を実施例15の一般手順にしたがって評価した。コーティングされたインスリン-Fc融合タンパク質ライブラリーに対する配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質(実施例19)の繰返しの投薬からの抗体含有血清試料の分析は、予想外なことに、B鎖のN末端から10番目の位置(すなわち、B10)におけるアスパラギン酸突然変異、および、別々に、A鎖のN末端から8番目の位置(すなわち、A8)におけるヒスチジン突然変異という2つの主要な「ホットスポット」が配列番号5のインスリンポリペプチド配列内に存在することを実証した。これらの2つの具体的なアミノ酸突然変異を含有するインスリンポリペプチドアミノ酸組成を含むインスリン-Fc融合タンパク質はイヌにおいて免疫原性であるらしく、したがって、繰返しの注射後に生物活性を中和する抗薬物抗体を生じさせるらしいことを結果は示唆する。したがって、B10アスパラギン酸およびA8ヒスチジンを含有しないインスリンポリペプチドは、(例えば、イヌ科動物糖尿病を治療するために)長期間にわたりイヌにおいて繰り返し投薬される必要があるインスリン-Fc融合タンパク質のために好ましいことが決定された。
【0174】
実施例25:免疫原性の潜在的なリスクを低減するためにインスリンポリペプチドのB10DおよびA8H突然変異が天然の組成に回復された配列番号5のインスリンポリペプチドおよび非グリコシル化イヌ科動物IgGBアイソタイプFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質
「ホットスポット」突然変異を置き換えることが、配列番号5のインスリンポリペプチドおよびイヌ科動物IgGBアイソタイプ断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質の免疫原性および繰返しの投薬での生物活性を向上させるのかどうかを評価するために、非天然アミノ酸に下線を引いて以下に列記されるインスリンポリペプチドのB10およびA8アミノ酸がそれらの天然のそれぞれヒスチジンおよびスレオニン組成(配列番号125)に回復された例示的なインスリン-Fc融合タンパク質(配列番号66)を合成した。FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCN(配列番号125)
さらには、非グリコシル化cNg突然変異体の追加の潜在的な利益を考慮して、配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質はcNg-Q突然変異を含有する。配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列全体を以下に与える:
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFQGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHY
TQESLSHSPG(配列番号66)
【0175】
配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。結果としてもたらされたタンパク質収率は21mg/Lに過ぎなかった。構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定された場合のホモ二量体%は98.0%であり、タンパク質は凝集物を比較的含まないことを指し示した。
【0176】
21mg/Lの比較的低いホモ二量体タイターにもかかわらず、配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例11~13の手順にしたがってそれぞれインビボでの生物活性および免疫原性についてイヌにおいて評価した。
図10は、配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質におけるB10DおよびA8H突然変異のそれらの天然のアミノ酸(すなわち、B10HおよびA8T)への回復は親化合物(配列番号52)の免疫原性を有意に低減したことを実証する。
【0177】
しかしながら、
図11に示すように、天然のB10およびA8アミノ酸を含有する配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質は生物活性でなかった(すなわち、NAOCは本質的に0であった)。
【0178】
実施例26:イヌ科動物IgGB Fc断片を含有する関連付けられるインスリン-Fc融合タンパク質の生物活性を向上させるために追加のB鎖およびA鎖突然変異を配列番号125のインスリンポリペプチドに組み込む試み
配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質(実施例25)は配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質(実施例20)と比較して抗薬物抗体を生成しなかったという事実は、配列番号5のインスリンポリペプチドにおけるB10DおよびA8H突然変異は抗薬物抗体の産生の原因となる免疫原性エピトープであるらしいという理論の強い証拠を提供する。しかしながら、配列番号52のそれと比較した配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボ効力の欠如は、これらの2つのアミノ酸突然変異もまた生物活性の許容されるレベルを達成する原因となることを指し示す。配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質についてのインビボ効力の欠如は、実施例7の方法にしたがってインスリン受容体結合アッセイにより測定された場合のその高いIC50(以下の表9に示される)と相関する。したがって、インスリンポリペプチド中に天然のB10およびA8アミノ酸を保つことにより低い程度の免疫原性を維持しながらインスリン-Fc融合タンパク質の生物活性を増加させる(すなわち、5000nM未満、またはより好ましくは4000nM未満、またはよりいっそう好ましくは3000nM未満までインスリン受容体結合アッセイのIC50値を減少させる)ためにさらなる努力が要求される。
【0179】
インスリンB鎖およびA鎖の様々な部分がIRへの強い結合のために要求されることが公知である(Hubbard S.R., “Structural biology:
Insulin meets its receptor”, Nature. 2013; 493(7431):171-172)。したがって、B10およびA8を天然のインスリン中と同じに保ちかつC鎖およびペプチドリンカーを一定に保ったままB鎖またはA鎖の部分を修飾した。これらのインスリン-Fc融合タンパク質のいくつかを実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがっ
て測定した。それらの配列を以下に示し、配列番号66に対する結果としてもたらされる配列アライメントを
図12に示す(Clustal Omega)。
FVNQHLCGSHLVQALYLVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号68)
FVNQHLCGSELVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号70)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGEAGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号72)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFYYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号74)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号76)
【表9】
【0180】
3つの場合(配列番号68、70、および74においてのみ、提案される突然変異は、配列番号66と比較した場合にIR結合を向上させた(すなわち、IC50値を低下させた)。しかしながら、いずれの突然変異も、50mg/Lより高いホモ二量体タイターの生産設計目標を満たす化合物を結果としてもたらさず、一部の場合には、突然変異は有意に低減された生産可能性(例えば、20mg/L未満のホモ二量体タイター)に繋がった。
【0181】
実施例27:イヌ科動物IgGB Fc断片を含有する関連付けられるインスリン-Fc融合タンパク質の生物活性を向上させるためのC鎖突然変異を配列番号125のインスリンポリペプチドに組み込む試み
実施例26において得られた結果は、配列番号125のインスリンポリペプチドのA鎖およびB鎖を突然変異させる全ての試みは、関連付けられるインスリン-Fc融合物の許容できない低いHEKホモ二量体タイター(すなわち、25mg/Lより低いまたはそれに等しいホモ二量体タイター)を結果としてもたらすことを示した。したがって、さらなる実験の必要があった。本実施例では、配列番号125のインスリンポリペプチドのC鎖組成を、それをより長くすることによりまたはその柔軟性を増加させることにより突然変異させた。天然のインスリン(例えば、ヒトインスリン)は、(例えば、Menting, et al.,Nature, 2013; 493(7431): pp241-245に記載されるように)インスリン受容体に結合する際にB鎖およびA鎖の両方のフォールディングの運動を伴う顕著なコンホメーション変化を起こすことが示されている。天然のインスリンは、本発明のインスリンポリペプチドとは異なり、インスリン受容体においてこのコンホメーション変化を自由に起こすことができ、その理由は、その天然の形態において2鎖ポリペプチドであり、A鎖およびB鎖のモビリティを制約するC鎖を伴わない2つのジスルフィド結合のみを通じて接続されているからである。いかなる具体的な理論によっても縛られないが、配列番号125のインスリンポリペプチド内に含有されるC鎖は柔軟性が低すぎる(例えば、B鎖とA鎖との間で簡易な運動を許容しないアミノ酸組成および配列)かつ/または短すぎる(例えば、B鎖のC末端とA鎖のN末端との間に十分なアミノ酸がない)ため、インスリン受容体への強い結合のために要求される分子形状における必要な変化をインスリンポリペプチドが起こすことが予防されるという仮説を立てた。したがって、以下に示され、配列番号66に対する結果としてもたらされる配列アライメントを
図13に示すように(Clustal Omega)、インスリンポリペプチドC鎖におけるバリエーションを有する配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質に基づいていくつかのインスリン-Fc融合タンパク質を合成した。
FVNQHLCGSHLVQALYLVCGERGFFYTDPTQRGGGGGQRGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKG
KQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号78)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号80)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPGGGGGGGGGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号82)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTPGGGGGGGGGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号84)
【表10】
【0182】
インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。最も長いC鎖(GGGGGGSGGGG)を含む1つの場合(配列番号80)においてのみ、C鎖突然変異は、配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質と比較してインスリン受容体結合親和性を有意に向上させた(3000nM未満のIC50)。しかしながら、これらのC鎖突然変異型インスリン-Fc融合タンパク質のいずれも、50mg/Lの生産設計目標より高いホモ二量
体タイターを呈しなかった。実際に、1つの場合(配列番号78)において、C鎖突然変異は、予想外なことに、有意により低いホモ二量体タイターに繋がった。
【0183】
実施例28:生物活性を向上させるために配列番号125のインスリンポリペプチドおよびイヌ科動物IgGB Fc断片を含有するインスリン-Fc融合タンパク質にペプチドリンカーの突然変異を組み込む試み
いかなる具体的な理論によっても縛られないが、配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質の乏しいインスリン受容体結合の別のあり得る理由は、ペプチドリンカーを通じてインスリンポリペプチドに取り付けられたはるかにより大きいFc断片分子の近接性の結果としてもたらされるインスリンポリペプチドとインスリン受容体との間の立体障害を伴うと考えられた。より短いペプチドリンカーまたはより緊密にフォールディングしたペプチドリンカーは、この問題を悪化させる可能性があると考えられたが、より長いペプチドリンカーまたは折畳みに対して抵抗性のペプチドリンカー(例えば、より高い分子剛性を有するリンカー)は、インスリンポリペプチドとFc断片との間により多くの空間を作製することによりこの問題を和らげる可能性がある。インスリンポリペプチドとFc断片との間の空間の増加はまた、インスリン受容体とFc断片との間の距離を増加させて、インスリン受容体結合の間のより少ない干渉に繋がる。配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質を構築するために使用された配列番号12(すなわち、GGGGAGGGG)のペプチドリンカーは、潜在的に短すぎるかつ/または柔軟すぎるという仮説が立てられ、その理由は、リンカーを構成するアミノ酸は側鎖を含有しないからである(すなわち、それはグリシンおよびアラニンアミノ酸のみを含有する)。したがって、この仮説を試験するために、配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質の2つの他のインスリン-Fc融合タンパク質変種を合成した。配列番号76のインスリン-Fc融合タンパク質は、配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質を構築するために使用されたものと同じペプチドリンカーを含有したが、A鎖のN末端から21番目の位置(すなわち、A21)におけるアスパラギンが存在しない(すなわち、des-A21)インスリンポリペプチドを有していた。この具体的な突然変異は、A鎖とペプチドリンカーとの間の接合部がタンパク質収率および/または分子の生物活性に影響するかどうかを調べるために組み込んだ。配列番号86の他のインスリン-Fc融合タンパク質は、このdes-A21N A鎖突然変異および配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質を構築するために使用されたものの2倍より大きい長さのペプチドリンカーを含有する。このより長いペプチドリンカーにおいて、アラニンは好まれず、代わりに極性アミド側鎖を含有するグルタミンで置き換えられる。グルタミン置換は、ペプチドリンカーの親水性の性質を増加させ、リンカーが折り畳まれることを潜在的に予防することが予期された。配列を以下に示し、配列番号66に対する結果としてもたらされる配列アライメントを
図14に示す(Clustal Omega)。
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号86)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQ
LDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号76)
【表11】
【0184】
2つのインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。異なる組成(配列番号86についてGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGG、これに対して配列番号66についてGGGGAGGGGのより長いペプチドリンカーの組込みは、IC50値における有意な低減により測定されたようにインスリン受容体結合を向上させ、より長いリンカーは、他のインスリン-Fc融合タンパク質についてインスリン受容体結合を増加させるための戦略であり得ることを指し示した。しかしながら、より長いリンカーの組込みは依然として、50mg/Lより高い生産設計目標より高くまでホモ二量体タイターを向上させなかった。
【0185】
実施例29:イヌ科動物IgGB Fc断片を含有する関連付けられるインスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体タイターを向上させるために配列番号125のインスリンポリペプチドのB鎖の部分を欠失させる試み
実施例28からの結果は、ペプチドリンカーを改変して、天然のB10およびA8アミノ酸を含有する配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質のインスリン受容体結合親和性を増加させることができることを実証する。しかしながら、ペプチドリンカーの突然変異は、生産設計目標を満たすために十分にホモ二量体タイターを増加させなかった。ホモ二量体タイターは、細胞内合成および細胞内でのプロセシングを含むいくつかの特性の関数であるので、インスリン-Fc分子は、ホモ二量体の2つの単量体の間で分子内でまたは2つもしくはより多くの別々のホモ二量体の間で分子間で合成の間および後において自己会合性(すなわち、凝集性)であるかもしれないという仮説を立てた。この凝集は、実施例1、3、および6に記載の製造プロセスの間に細胞培養上清から得られる許容できない低いホモ二量体タイターに繋がるであろう。インスリン-Fc融合タンパク質分子の間のこの潜在的な相互作用は、部分的には、自己会合して凝集物を形成するインスリンの周知の傾向に起因する可能性がある。インスリンが自己会合する傾向を低減する当該技術分野において公知の1つの方法は、B鎖のC末端の近くのアミノ酸を突然変異させることを伴う。例えば、インスリンリスプロ(B28K;B29P突然変異)およびインスリンアスパルト(B28D突然変異)は、会合および凝集を予防し、そのため溶液中にインスリンの主に単量体形態を生じさせる非天然のB鎖突然変異を有する周知の商用の2鎖インスリンである。凝集を予防する別のアプローチはアミノ酸構造の欠失を伴う。例えば、デスペンタペプチドインスリン(DPPI;Brange J., Dodson G.G., Edwards J., Holden P.H., Whittingham
J.L. 1997b. “A model of insulin fibrils
derived from the x-ray crystal structur
e of a monomeric insulin (despentapeptide insulin)” Proteins 27 507-516を参照)として公知の2鎖インスリンは、B鎖の5つのC末端アミノ酸(YTPKT)が除去されている以外は天然の2鎖ヒトインスリンと同一である。DPPIは、天然の2鎖ヒトインスリンと比較した場合にインスリン受容体に対するより低い結合親和性を有するが、溶液中で完全に単量体であり、すなわち、DPPI分子間に顕著な会合も凝集もない。したがって、分子内および分子間自己会合の可能性を減少させ、かつインスリン-Fc融合タンパク質ホモ二量体タイターを向上させることを試みて、DPPI、インスリンリスプロ、およびインスリンアスパルトについて上記したように部分的なB鎖アミノ酸切断およびB鎖アミノ酸突然変異を使用して配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質のいくつかの変種を構築した。配列を以下に示し、配列番号66に対する結果としてもたらされる配列アライメントを
図15に示す(Clustal Omega)。
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPGGGGGGGGGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号82)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTPGGGGGGGGGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号84)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTQGGGGGGGGGIVEQCCTSICSLYQLENYCGGGGAGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号88)
【表12】
【0186】
インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがっ
てグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。結果としてもたらされた化合物のホモ二量体タイターは1つの場合(配列番号82)においてのみ有意に増加したが、予想外なことに、インスリン受容体親和性は突然変異した化合物(配列番号82、88、および84)の全てについて向上した。
【0187】
実施例30:ホモ二量体タイターおよび生物活性をさらに向上させるために配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質に対するB鎖、C鎖、およびA鎖突然変異、B鎖切断、ならびにリンカー突然変異を組み合わせる試み
実施例26、27、28、および29に示すように、単一の戦略は、イヌ科動物IgGB Fc断片を有する非免疫原性の天然のB10およびA8アミノ酸を含むインスリンポリペプチドを組み込んで、許容されるインスリン受容体活性およびホモ二量体タイターを有するインスリン-Fc融合タンパク質を形成することに成功しなかった。したがって、より長いC鎖、より長いペプチドリンカー、およびB鎖のC末端アミノ酸の切断の概念を組み合わせた。追加的に、自己会合および凝集の傾向を潜在的にさらに減少させるために、生理的pHにおいて負または正に荷電する側鎖基を有するものを含む、より低い疎水性のアミノ酸を使用して天然のインスリン疎水性アミノ酸残基部位に追加の点突然変異を導入した。例となる突然変異には、チロシンをアラニンに、チロシンをグルタミン酸に、イソロイシンをスレオニンに、およびフェニルアラニンをヒスチジンにするものが含まれた。さらには、解析を単純化するために、全ての場合において、イヌ科動物IgGB Fc断片のcNg部位をその天然のアスパラギンに回復させた。これらのインスリン-Fc融合タンパク質変種の配列を以下に示し、配列番号66に対する結果としてもたらされる配列アライメントを
図16に示す(Clustal Omega)。
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFFYTPKTGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号90)
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCNHGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号92)
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCNGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号34)
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDC
PKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号32)
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFFYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号94)
【表13】
【0188】
インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。ある特定のB鎖およびA鎖アミノ酸の疎水性を減少させること、より長いおよびより柔軟なCペプチド配列を使用すること、いくつかのC末端B鎖アミノ酸を切断すること、ならびにより長いペプチドリンカーを使用することの組合せは、最小ホモ二量体タイターおよびインスリン受容体結合活性の設計基準を満たすいくつかの有用なインスリン-Fc融合タンパク質を結果としてもたらしたことを結果は示す。配列番号92、34、32、および94(368d)、(366d)、(218d)、および(375d)は、配列番号66または配列番号90のいずれかより好ましいインスリン受容体IC50値(3000nM未満)およびより好ましいHEKホモ二量体タイター値(100mg/Lより高い)を示した。驚くべきことに、少数のアミノ酸のみを変化させることで、インスリン受容体親和性における複数倍の向上、および配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質の場合、元々の配列番号66のインスリン-Fc融合タンパク質に対するホモ二量体タイターの劇的な増加に繋がる。
【0189】
実施例31:配列番号7のインスリンポリペプチド、配列番号14のペプチドリンカー、および配列番号16のイヌ科動物IgGB Fc断片から構築されたインスリン-Fc融合タンパク質のインビボでの生物活性、繰返しの投薬での生物活性、および免疫原性
実施例30からのポジティブなホモ二量体タイターおよびインスリン受容体結合活性の結果を考慮して、最も有望なインスリン-Fc融合タンパク質のうちの2つ(配列番号3
2および34)をイヌにおいて試験して、繰返しの投薬での生物活性および免疫原性を評価した。各化合物は、配列番号14のより長い、より親水性のペプチドリンカーおよび配列番号16のより生産可能な、より低い凝集性のイヌ科動物IgGB Fc断片を含む。最も重要なことに、両方のインスリン-Fc融合タンパク質は、より低い免疫原性が推定される天然のB10およびA8アミノ酸を有するインスリンポリペプチド(すなわち、一般の配列番号7)を含む。配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質の場合、位置A21におけるアスパラギンが存在する(すなわち、インスリンポリペプチドは配列番号9を含む)。配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質の場合、位置A21におけるアスパラギンは存在しない(すなわち、インスリンポリペプチドは配列番号8を含む)。
【0190】
配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボでの生物活性を実施例10の手順にしたがってN=1のイヌにおいて試験した。単回皮下投薬について
図17に示される結果は、配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質は、実施例11における手順にしたがって算出された1076FBGL%・日・kg/mgのNAOCと共に実際にインビボで生物活性であることを実証する。配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質の薬物動態プロファイルをELISAを使用して実施例12の方法により測定し、2コンパートメントモデルをデータにフィッティングして、その排出半減期を3.5日と決定した。
【0191】
実施例8の手順にしたがって初期注射後14日目、28日目、および42日目にN=1のイヌの皮下に配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質の投与を続けることにより繰返しの投薬での生物活性を次に評価した。イヌのFBGL%があまりに低く低下した場合、イヌに食餌を与えて安全なレベルまで血中グルコースを上昇させた。NAOCおよびNAOCRを実施例11の一般手順にしたがって各その後の用量について測定し、次の用量が投与される直前までに用量が投与された時間から算出した。表14に示されるNAOCおよびNAOCRは、配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質は4回の投薬の全体を通じて0.8より高いNAOCRを維持し、そのため繰返しの投薬での生物活性の設計目標を満たすことを示す。
【表14】
【0192】
配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質の免疫原性を実施例13の手順にしたがって試験した。
図18は、配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質は、繰返しの投薬の実験の全体を通じたインビボでの生物活性の維持と合致して、インビボで明らかな免疫原性を呈しないことを実証する。
【0193】
インスリンポリペプチド鎖のA21におけるアスパラギンが存在しない配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質もまた、イヌにおいて繰返しの投薬での生物活性の成績について評価した。実施例11の手順にしたがって0日目、14日目、28日目、および42日目にN=1のイヌの皮下に化合物を投与した。イヌのFBGL%があまりに低く低
下した場合、イヌに食餌を与えて安全なレベルまで血中グルコースを上昇させた。1回目の注射についてのNAOCは印象的な2278FBGL%・日・kg/mgであり、配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質は、配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質のほぼ2倍の効力においてインビボで十分に生物活性であることを示した。インスリン-Fc融合タンパク質の薬物動態プロファイルをELISAを使用して実施例12の方法により測定し、2コンパートメントモデルをデータにフィッティングして、その排出半減期を4.1±0.7日と決定した。
図19および
図20は、配列番号32のホモ二量体を与えた動物についての単回投薬血中グルコース対照および複数回投薬、複数週血中グルコース対照を示す。NAOCおよびNAOCRもまた、実施例11の一般手順にしたがって各その後の投薬について測定し、次の用量が投与される直前までに用量が投与された時間から算出した。表15に示されるNAOCおよびNAOCRは、配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質は4回の投薬の全体を通じて1.0より高いまたはそれに等しいNAOCRを維持し、そのため実施例16に記載の繰返しの投薬での生物活性の設計目標を満たすことを示す。
【0194】
配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質の免疫原性を実施例13の手順にしたがって試験した。
図21は、配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質は、繰返しの投薬の実験の全体を通じたインビボでの生物活性の維持と合致して、インビボで明らかな免疫原性を呈しないことを実証する。
【表15】
【0195】
本発明の詳細な説明において議論したように、公知の酵素切断部位がアスパラギン-グリシン結合の間に存在する(Vlasak, J., Ionescu, R., (2011) MAbs Vol. 3, No. 3 pp 253-263)。配列番号14のペプチドリンカーを有する配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質中に含有される配列番号8のインスリンポリペプチド中のA鎖中の21番目のアミノ酸(すなわち、A21)におけるアスパラギンを省略することは、A鎖のC末端とペプチドリンカーのN末端との間のアスパラギン-グリシン結合の酵素切断の可能性を排除する。しかしながら、配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質は、配列番号14のペプチドリンカー、およびA21においてアスパラギンを保つ配列番号8のインスリンポリペプチドを含む。したがって、配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質は、合成の間にまたは皮下投与後にインビボで酵素的に消化されることが予期された。しかしながら、かなり予想外なことに、配列番号34のインスリン-Fc融合タンパク質は、許容されるホモ二量体タイターと共にHEK細胞中で生産可能であり、その生物活性を損なう酵素消化の徴候なしにインビボで許容される生物活性を実証した。
【0196】
実施例32:配列番号8の好ましいインスリンポリペプチドおよび配列番号14の好ましいペプチドリンカーを含むインスリン-Fc融合タンパク質の最適な生産可能性およびインビボでの有効性についてのイヌ科動物IgGBアイソタイプFc断片の確認
実施例30および31に記載されるように、新たなインスリンポリペプチドおよびペプ
チドリンカーの組合せは、非免疫原性、高収率、高純度、および高度に生物活性のインスリン-Fc融合タンパク質を結果としてもたらすことが発見されたが、イヌ科動物IgGB Fc断片は、実施例19および20におけるインスリン-Fc融合タンパク質について該当したように、ホモ二量体タイターおよび生物活性に関して依然として好ましいアイソタイプであるのかどうかという疑問が残った。したがって、追加のインスリン-Fc融合タンパク質を設計し、該融合タンパク質では、配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質のインスリンポリペプチド(配列番号8)およびペプチドリンカー(配列番号14)は一定に保ち、配列番号16のイヌ科動物IgGB Fc断片を配列番号15のイヌ科動物IgGA Fc断片、配列番号17のイヌ科動物IgGC Fc断片、または配列番号18のイヌ科動物IgGD Fc断片により置き換えた。これらの結果としてもたらされたインスリン-Fc融合タンパク質変種の配列を以下に示す:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFNGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号32)
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGRCTDTPPCPVPEPLGGPSVLIFPPKPKDILRITRTPEVTCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQSREQQFNGTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIDLPSPIERTISKARGRAHKPSVYVLPPSPKELSSSDTVSITCLIKDFYPPDIDVEWQSNGQQEPERKHRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDPFTCAVMHETLQNHYTDLSLSHSPG(配列番号96)
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGCNNCPCPGCGLLGGPSVFIFPPKPKDILVTARTPTVTCVVVDLDPENPEVQISWFVDSKQVQTANTQPREEQSNGTYRVVSVLPIGHQDWLSGKQFKCKVNNKALPSPIEEIISKTPGQAHQPNVYVLPPSRDEMSKNTVTLTCLVKDFFPPEIDVEWQSNGQQEPESKYRMTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQISLSHSPG(配列番号98)
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGCISPCPVPESLGGPSVFIFPPKPKDILRITRTPEITCVVLDLGREDPEVQISWFVDGKEVHTAKTQPREQQFNSTYRVVSVLPIEHQDWLTGKEFKCRVNHIGLPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSPKELSSSDTVTLTCLIKDFFPPEIDVEWQSNGQPEPESKYHTTAPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQQGDTFTCAVMHEALQNHYTDLSLSHSPG(配列番号100)
【0197】
インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAまたはプロテインGカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。追加的に、イ
ヌ科動物FcRn受容体に対するインスリン-Fc融合タンパク質親和性を実施例8にしたがって測定した。表16に示されるように、イヌ科動物IgGB Fc断片を含む配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質は、これらの配列のうちで最も高いホモ二量体タイターを実証した。イヌ科動物IgGA Fc断片を含む配列番号96のインスリン-Fc融合タンパク質は、プロテインAカラムを使用して精製された場合に不良なホモ二量体タイターを呈したが、プロテインGカラムを使用して精製された場合、ホモ二量体タイターは有意に向上し、50mg/Lより高い設計目標を上回った。同じことが、イヌ科動物IgGC Fc断片を含む配列番号98のインスリン-Fc融合タンパク質について当てはまった。イヌ科動物IgGD Fc断片を含む配列番号100のインスリン-Fc融合タンパク質は、プロテインAカラムまたはプロテインGカラムのいずれかを用いて生成された場合にいかなる化合物ももたらさなかった。したがって、異なるインスリンポリペプチド(配列番号5およびペプチドリンカー(配列番号12)を含有する配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質を用いて実証されたように、イヌ科動物IgGBはホモ二量体タイターに関して好ましいFc断片であった(実施例19を参照)。
【表16】
【0198】
プロテインGを介して精製されたイヌ科動物IgGA Fc断片を含む配列番号96のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボでの生物活性を実施例10の手順にしたがって試験した。
図22に示される結果は、配列番号96のインスリン-Fc融合タンパク質は、実施例11にしたがって算出されたわずか174FBGL%・日・kg/mgのNAOCと共にインビボでいくぶん生物活性であるに過ぎないことを示す。
【0199】
プロテインGを介して精製されたイヌ科動物IgGC Fc断片を含む配列番号98のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボでの生物活性を実施例10の手順にしたがって試験した。
図23に示される結果は、配列番号98のインスリン-Fc融合タンパク質は、実施例11にしたがって算出されたわずか39FBGL%・日・kg/mgのNAOCと共にインビボでいくぶん生物活性であるに過ぎないことを示す。
【0200】
したがって、異なるインスリンポリペプチド(配列番号5)およびペプチドリンカー(配列番号12)を含有する配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質を用いて実証されたように、イヌ科動物IgGBは生物活性に関して好ましいFc断片であった(上記
の実施例19および20ならびに表16を参照)。
【0201】
実施例33:免疫原性の潜在的なリスクを低減するための配列番号8のインスリンポリペプチド、配列番号14のペプチドリンカー、およびイヌ科動物IgGB Fc断片を含む非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質
配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質は設計目標の全てを満たすが(実施例16)、長期間の治療(例えば、6か月、1年、2年またはより長い)にわたる免疫原性のリスクがあるかもしれず、またはないかもしれず、これが起こる場合、糖尿病を治療するためのこのインスリン-Fc融合タンパク質の使用が損なわれ得る。本発明の詳細な説明ならびに実施例21および22に記載されるように、繰返しの投薬後の生物活性の低減の1つのあり得る原因は、中和抗薬物抗体の産生を結果としてもたらすイヌ科動物IgGB Fc断片のイヌの免疫系との望ましくない相互作用である。しかしながら、実施例32に示される結果は、予想外なことに、イヌ科動物IgGBアイソタイプは、所望の生産可能性および生物活性をもたらす、4つのイヌ科動物IgGアイソタイプのうちの唯一のオプションであったことを実証する。したがって、長期の慢性の免疫原性リスクを低減するはずである低いFc(ガンマ)RI受容体結合を有する非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質を達成するためにさらなるFc突然変異を探求した。
【0202】
本発明の詳細な説明に記載されるように、Fc(ガンマ)RI相互作用を低減する1つの方法は、Fc断片cNg部位を突然変異させて宿主細胞中での合成の間のグリコシル化を予防することを伴う。したがって、cNg部位突然変異を配列番号32のFc断片領域に対して行って、実施例8に記載のインビトロヒトFc(ガンマ)RIアッセイにおける結合により測定された場合の、インビボでのFc(ガンマ)受容体に対するFc断片の結合親和性を低減させた。配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質中のcNg部位の位置はcNg-NB151である。配列番号32に対する突然変異は、cNg-NB151-S突然変異を含む配列番号104、および同じcNg-NB151-S突然変異の他にNB119-A突然変異を含む配列番号102を含んだ。NB119-Aは、Lo,
M. et al. “Effector attenuating substitutions that maintain antibody stability and reduce toxicity in mice”, J. Biol. Chem. (2017), pp. 1-20によりマウス抗体における使用のためにのみ記載されたようにFc(ガンマ)RIとの相互作用を低減することをさらに試みて組み込んだ。結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質の全長アミノ酸配列を、
図24に示されるそれらの配列アライメント(Clustal Omega)と共に以下に列記する(明確性のためにNB119およびNB151部位に下線を引いている):FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVV
ALDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQF
SGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号102)
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQF
SGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFI
CAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号104)
【0203】
インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。表17に示すように、cNg-NB151-S突然変異をFc断片に組み込むことはホモ二量体%を減少させ、許容できない高いレベルの凝集を指し示した(すなわち、ホモ二量体%は70%のすぐ上まで低下した)。
【表17】
【0204】
配列番号102および配列番号104のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボでの生物活性を実施例10の手順にしたがってそれぞれN=1のイヌにおいて試験した。単回皮下投薬についての
図25に示される結果は、両方の化合物は配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質よりインビボで有意に低い生物活性であったことを実証する(配列番号104についてのNAOC=574FBGL%・日・kg/mg;配列番号102についてのNAOC=921FBGL%・日・kg/mg)。cNg-NB151-S突然変異をFc断片に組み込んで非グリコシル化バージョンの配列番号32のインスリン-Fc融合タンパク質を製造することは、予想外なことに、結果としてもたらされる化合物のインビボでの生物活性を減少させたことを結果は指し示す。
【0205】
cNg-NB151-S部位突然変異を含有する配列番号104のインスリン-Fc融合タンパク質の凝集の程度を減少させかつ生物活性を向上させることを試みて、凝集の原因となると考えられる領域中の突然変異を用いて様々なインスリン-ポリペプチドB鎖変種を調べた。インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。試験したB鎖変種のうち、B鎖のN末端から16番目のアミノ酸(すなわち、B16)におけるチロシンからアラニンへの置換を含有する1つのインスリンFc融合タンパク質(配列番号36)は、予想外なことに、低い凝集(99%のホモ二量体)と共に高いホモ二量体タイター(105mg/L)を有し、104mg/Lのホモ二量体タイターを結果としてもたらすことが見出された。実施例7にしたがって測定されたインスリン受容体結合は、
2040nMのIC50と共に許容されるものであった。実施例9にしたがって測定されたFcRn受容体結合親和性EC50値は1194ng/mLであった。配列番号36のインスリン-Fc融合タンパク質の薬物動態プロファイルをELISAを使用して実施例12の方法により測定し、2コンパートメントモデルをデータにフィッティングして、その排出半減期を4.1±0.7日と決定した。配列番号36の配列を以下に示す(明確性のためにB16AおよびcNg-NB151-S突然変異に下線を引いている)。
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPAPEMLGGPSVFIFPPKPKDTLLIARTPEVTCVVVDLDPEDPEVQISWFVDGKQMQTAKTQPREEQFSGTYRVVSVLPIGHQDWLKGKQFTCKVNNKALPSPIERTISKARGQAHQPSVYVLPPSREELSKNTVSLTCLIKDFFPPDIDVEWQSNGQQEPESKYRTTPPQLDEDGSYFLYSKLSVDKSRWQRGDTFICAVMHEALHNHYTQESLSHSPG(配列番号36)
【0206】
配列番号36のインスリン-Fc融合タンパク質を次にイヌにおける繰返しの投薬での生物活性の成績について評価した。実施例11の手順にしたがって0日目、7日目、14日目、および28日目にN=1のイヌの皮下に化合物を投与した。イヌのFBGL%があまりに低く低下した場合、イヌに食餌を与えて安全なレベルまで血中グルコースを上昇させた。予想外なことに、配列番号104のインスリン-Fc融合タンパク質と比較して、B16A突然変異を含有する配列番号36のインスリン-Fc融合タンパク質の1回目の注射についてのNAOCは有意により高かった(1185FBGL%・日・kg/mg)。1回目の投薬のインビボでの生物活性のプロットを
図26に示す。化合物の薬物動態プロファイルもまた、ELISAを使用して実施例12の方法により測定し、2コンパートメントモデルをデータにフィッティングして、その排出半減期を3.5日と決定した。NAOCおよびNAOCRもまた、実施例11の一般手順にしたがって各その後の投薬について測定し、次の用量が投与される直前までに用量が投与された時間から算出した。表18に示されるNAOCおよびNAOCRは、配列番号36のインスリン-Fc融合タンパク質は4回の投薬の全体を通じて0.6より高いまたはそれに等しいNAOCRを維持し、そのため繰返しの投薬での生物活性の設計目標を満たすことを示す。以上を合わせると、配列番号32の好適な非グリコシル化cNg-S変種を得るためにインスリンB鎖配列を突然変異させることが必要であったことを結果は指し示す。したがって、配列番号11のインスリンポリペプチドは、cNg突然変異型イヌ科動物IgGB Fc断片を含む非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質のために好ましいものであった。
【表18】
【0207】
最後に、実施例8の手順にしたがってFc(ガンマ)受容体結合活性を測定することにより選択化合物を免疫系と相互作用する可能性について試験した。表19は、これらのインスリン-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体I結合を配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質のFc(ガンマ)受容体結合と比較したものである。非グリコシ
ル化インスリン-Fc融合タンパク質(cNg-S突然変異を通じて達成される)は配列番号52に対する最も低いFc(ガンマ)受容体結合比を呈したことが分かる。
【表19】
【0208】
実施例34:安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系を介して作られたイヌ科動物IgGB起源のFc断片を含む好ましいインスリン-Fc融合タンパク質を使用した例示的なCHOベースの製造ラン
配列番号32、または配列番号36をコードするベクターを用いて安定的にトランスフェクトされた別々のCHO細胞系を実施例2に記載されるように構築した。流加シェークフラスコ14日製造ラン(0.5~2.0Lの培地スケール)を37℃および5%の二酸化炭素においてインキュベーター-シェーカーセットに50万細胞/mLにおいて播種し、増殖培地としてCD OptiCHOをDynamis(ThermoFisher)に置換し、フィードとしてEfficient Feed C(ThermoFisher)を使用した以外は上記の実施例2に記載されるようにランを実行した。フィードを製造ランの3日目に開始して3%v/vにおいて加え、4日目にシェークフラスコ温度を32℃に調整し、インキュベーター-シェーカーの二酸化炭素濃度を5%から2%に低下させた。ランの間に、細胞は800万~1400万細胞/mLに増加し、14日目に製造ランを回収して細胞を除去し、培養上清を実施例3、4、5、および6に記載されるように精製および試験してインスリン-Fc融合タンパク質を得た。表20は、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系を用いる製造ランから得られた生産データを記載する。
【表20】
【0209】
実施例35:安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系を介して作られるイヌ科動物IgGB起源のFc断片を含む好ましいインスリン-Fc融合タンパク質を使用する例示的なCHOベースの製造ラン
配列番号34をコードするベクターを用いて安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系を実施例2に記載されるように構築する。流加シェークフラスコ14日製造ラン(0.5~2.0Lの培地スケール)を37℃および5%の二酸化炭素においてインキュベーター-シェーカーセットに50万細胞/mLにおいて播種し、増殖培地としてCD OptiCHOをDynamis(ThermoFisher)に置換し、フィードとしてEfficient Feed C(ThermoFisher)を使用する以外は実施例2に記載されるようにランを実行する。フィードを製造ランの3日目に開始して3%v/vにおいて加え、4日目にシェークフラスコ温度を32℃に調整し、インキュベーター-シェーカーの二酸化炭素濃度を5%から2%に低下させる。14日目に製造ランを回収して細胞を除去し、培養上清を実施例3、4、5、および6に記載されるように精製および試験してインスリン-Fc融合タンパク質を得る。結果としてもたらされる製造ランは、配列番号34の200mg/Lより高いタンパク質収率、95%より高いホモ二量体、および190mg/Lより高いホモ二量体タイターを与える。
【0210】
結果 - ネコ科動物Fc断片を含むインスリン-FC融合タンパク質
実施例36:ネコ科動物IgG2アイソタイプのFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質
ネコにおいて使用するために好適な製造物を開発するために、以下のアミノ酸配列を有する、配列番号13のペプチドリンカーを使用して配列番号4のインスリンポリペプチド配列およびネコ科動物IgG2アイソタイプのFc断片(配列番号21)を含むインスリン-Fc融合タンパク質を製造することを試みた:
FVNQHLCGSDLVEALYLVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGSGGGGGEGPKCPVPEIPGAPSVFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSNVQITWFVDNTEMHTAKTRPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSAMERTISKAKGQPHEPQVYVLPPTQEELSENKVSVTCLIKGFHPPDIAVEWEITGQPEPENNYQTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSHWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号106)
【0211】
配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK細胞中で合成し、実施例3にしたがって精製した。インスリン-Fc融合タンパク質の構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定された、結果としてもたらされた化合物のホモ二量体%は88%であった。結果としてもたらされたホモ二量体タイターは20mg/Lに過ぎず、これはHEK細胞は高い収率において製造物を作ることができないことの結果としてもたらされた(すなわち、タンパク質精製後のタンパク質収率は23mg/Lに過ぎなかった)。要約すると、HEK細胞中での配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質の生産は、中等度のレベルの凝集物および20mg/Lの低いホモ二量体タイターを結果としてもたらし、これは50mg/Lより高いホモ二量体タイターの設計目標を満たさなかった。
【0212】
それにもかかわらず、配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質を生物活性について評価した。最初に、配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質のインスリ
ン受容体結合を実施例7にしたがって測定したところ22nMのIC50値が結果としてもたらされ、化合物はインビボで生物活性であるらしいこと(すなわち、5000nM未満のIC50)を指し示した。
【0213】
次に、実施例10にしたがって0.8mg/kgの用量におけるN=3のネコへの化合物の単回皮下投与後に配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質のインビボ薬力学(PD)を測定した。
図27は、配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質(161c)についての空腹時血中グルコースレベルのパーセントを時間の関数として示す。インスリン-Fc融合タンパク質のNAOCは、実施例11の手順にしたがって215FBGL%・日・kg/mgであると算出された。驚くべきことに、配列番号5のインスリンポリペプチドおよび配列番号12のペプチドリンカーを含む配列番号42のイヌ用の類似したインスリン-Fc融合タンパク質とは異なり、配列番号106のネコ用のインスリン-Fc融合タンパク質は、はるかに低い凝集であり、かつ標的動物において有意により生物活性であることが見出された。
【0214】
NAOCは許容され、かつ薬物動態データは週に1回の投与をサポートするものであったので、ネコに28日目、35日目、42日目および49日目に追加の皮下投薬を与え、FBGL%を実施例11にしたがって各投薬後の7日ウィンドウにわたり測定した。NAOCおよびNAOCRを各繰返しの皮下注射について実施例11の手順にしたがって算出した。表21に示されるように、ネコにおける繰返しの皮下投薬は、NAOCRの有意な減少により測定されるように、3回目の投薬までに生物活性の有意な減衰を明らかにした(すなわち、3回目の注射についてのNAOCは1回目の注射についてのNAOCの0.40、または40%に過ぎず、4回目の注射についてのNAOCは1回目の注射についてのNAOCの0.10、または10%に過ぎなかった)。ネコにおける繰返しの投薬後の配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質についての生物活性の有意な減衰は、実施例20に示されるイヌにおいて配列番号52のインスリン-Fc融合タンパク質について観察されたものに類似していた。
【表21】
【0215】
実施例37:タンパク質収率、純度、およびインスリン受容体活性に対するインスリンポリペプチド突然変異およびネコ科動物IgG1bまたはIgG2 Fc断片の選択の評価
配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質のホモ二量体%含有量およびタンパク質収率を増加させることを試みて、突然変異をインスリンポリペプチドB鎖(例えば、B16A突然変異)およびペプチドリンカーの配列に挿入した。さらには、配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質を構築するために使用したネコ科動物IgG2 Fc断片(配列番号21)に加えてネコ科動物IgG1b Fc断片(配列番号20)を評価した。結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質配列を以下に示し、配列番号106に対する結果としてもたらされる配列アライメントを
図28に示す(Clustal Omega)。
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGSGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号108)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGAGGGGGEGPKCPVPEIPGAPSVFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSNVQITWFVDNTEMHTAKTRPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSAMERTISKAKGQPHEPQVYVLPPTQEELSENKVSVTCLIKGFHPPDIAVEWEITGQPEPENNYQTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSHWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号110)
FVNQHLCGSDLVEALALVCGERGFFYTDPTGGGPRRGIVEQCCHSICSLYQLENYCNGGGGSGGGGGEGPKCPVPEIPGAPSVFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSNVQITWFVDNTEMHTAKTRPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSAMERTISKAKGQPHEPQVYVLPPTQEELSENKVSVTCLIKGFHPPDIAVEWEITGQPEPENNYQTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSHWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号112)
【0216】
インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。インスリン-Fc融合タンパク質変種を、対応するタンパク質収率、ホモ二量体%、およびホモ二量体タイターと共に表22に列記する。様々な突然変異は、配列番号108のインスリン-Fc融合タンパク質を製造するためにネコ科動物IgG1bアイソタイプFc断片と組み合わせられた場合に、はるかにより高いタンパク質収率を生じさせたが、結果としてもたらされたタンパク質はより凝集したことを結果は示す(例えば、配列番号106より低いホモ二量体%)。ネコ科動物IgG1bは、イヌ科動物インスリン-Fc融合タンパク質の製造のための高度に好ましいFcアイソタイプであるイヌ科動物IgGB Fc断片アイソタイプ(実施例32)に機能がより類似しているので、これは驚くべきことであった。ネコ科動物IgG2アイソタイプを含有する突然変異したネコ科動物組成のうち、インスリンポリペプチドB鎖のB16A突然変異を含むもの(すなわち、配列番号110および配列番号112)は、タンパク質収率およびホモ二量体タイターの向上に繋がった。しかしながら、配列番号110(すなわち、GGGGAGGGG)中に存在する突然変異したリンカーは、配列番号112と比較した場合にタンパク質収率およびホモ二量体タイターにおけるさらなる倍加を提供したようである。
【表22】
【0217】
実施例38:ネコ科動物IgG2アイソタイプFc断片を有する配列番号4のインスリンポリペプチドを含むインスリン-Fc融合タンパク質の繰返しの皮下投薬後のインビボ免疫原性スクリーニング
いかなる具体的な説明にも縛られないが、ネコにおける4回目の繰返しの皮下投薬後の配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質の生物活性における有意な低減(実施例36)の原因は、その生物学的活性を中和する抗薬物抗体の発生に起因することが想定された。抗薬物抗体は、インスリン-Fc融合タンパク質のインスリンポリペプチド、リンカー、またはFc断片部分を標的としている可能性がある。免疫原性応答は、抗原提示細胞、Tヘルパー細胞、B細胞、およびそれらの関連付けられるサイトカインの間の相互作用として現れ、薬物に対する内因性の抗体(例えば、抗薬物抗体)の産生に繋がり得る。結合抗体は、インスリン-Fc融合タンパク質に結合することができる全てのアイソタイプであり、これらは実施例14に記載されるようなイムノアッセイにおいて検出され得る。インスリン-Fc融合タンパク質の機能的活性を阻害する中和抗体は、一般に、生物学的に活性の部位を標的とする。これが該当するかどうかを査定するために、各用量の投与前および実施例11に記載の実験の終了時に収集した血清を試験して、実施例14にしたがって抗薬物抗体のレベルを定量化した。
図29に示すように、抗薬物抗体のレベルは化合物の複数回皮下投与と共に実際に増加し、中和抗薬物抗体の生成が、配列番号106のインスリンFc融合タンパク質の4回目の注射後のNAOCRの低減の原因であるらしいことを指し示した。
【0218】
実施例39:抗薬物抗体を含有するネコ科動物血清のスクリーニングならびにインスリンポリペプチドのB10DおよびA8Hの位置における潜在的な免疫原性エピトープの同定
イヌにおいて配列番号52について観察されたように(実施例20)、配列番号4のインスリンポリペプチドおよび配列番号13のペプチドリンカーを含む配列番号106のインスリン融合タンパク質の繰返しの投薬での生物活性は、抗薬物抗体を依然として生じさせた(実施例38)。したがって、配列番号4のインスリンポリペプチドは、予想外なことに、ネコの免疫系が標的とする特定のエピトープ(すなわち、免疫原性「ホットスポット」)を含有し得るという仮説を立てた。したがって、実施例38に記載の血清試料中に存在する抗体の結合特異性を実施例15の一般手順にしたがって評価した。コーティングされたインスリン-Fc融合タンパク質ライブラリーに対する配列番号106のインスリン-Fc融合タンパク質の繰返しの投薬(実施例38)からの抗体含有ネコ科動物血清試料の分析は、予想外なことに、B10D部位突然変異(すなわち、B鎖のN末端から10番目の位置(すなわち、B10)におけるアスパラギン酸突然変異)、および、別々に、A8H部位突然変異(すなわち、A鎖のN末端から8番目の位置(すなわち、A8)におけるヒスチジン突然変異)におけるヒスチジン突然変異という2つの主要な「ホットスポット」が配列番号4のインスリンポリペプチド配列内に存在することを実証した。これらの2つの具体的なアミノ酸突然変異を含有するインスリンポリペプチドアミノ酸組成を含
むインスリン-Fc融合タンパク質はネコにおいて免疫原性であるらしく、したがって、繰返しの注射後に生物活性を中和する抗薬物抗体を生じさせるらしいことを結果は示唆する。したがって、B10DおよびA8Hを含有しないインスリンポリペプチドは、(例えば、ネコ科動物糖尿病を治療するために)長期間にわたりネコにおいて繰り返し投薬される必要があるインスリン-Fc融合タンパク質のために好ましいことが決定された。
【0219】
実施例40:免疫原性の潜在的なリスクを低減するためにインスリンポリペプチドのB10、A8、および他の部位がさらに突然変異した配列番号4のインスリンポリペプチドならびにグリコシル化および非グリコシル化ネコ科動物IgG1bおよびIgG2アイソタイプFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質
「ホットスポット」突然変異を置き換えることが、配列番号4のインスリンポリペプチドおよびネコ科動物IgG2アイソタイプ断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質の免疫原性および繰返しの投薬での生物活性を向上させるのかどうかを評価するために、インスリンポリペプチドのB10およびA8アミノ酸が、イヌ科動物インスリン-Fc融合タンパク質の多くのために使用された配列番号5のインスリンポリペプチドについて該当するように、それらの天然のそれぞれヒスチジンおよびアラニン組成に回復され、かつB16におけるヒスチジンがアラニンで置き換えられた(すなわち、B16A)配列番号114、116、および118の例示的なインスリン-Fc融合タンパク質を合成した。天然のインスリンのA21N部位もまた欠失させた。この実施例のために、他のインスリンポリペプチドアミノ酸を突然変異させて、構造を天然のネコ科動物インスリンにより類似したものとした(例えば、B30A、A8A、A10V、およびA18H)。結果としてもたらされたインスリンポリペプチドの配列(配列番号120)を、ネコ科動物インスリンに対する非天然アミノ酸に下線を引いて以下に列記する。
FVNQHLCGSHLVEAL
ALVCGERGFFYT
DPA
GGGPRRGIVEQCCASVCSLYQLEHYC(配列番号120)
さらには、実施例22および33において議論した非グリコシル化cNg突然変異体の追加の潜在的な利益を考慮して、評価したインスリン-Fc融合タンパク質のうちの2つ(配列番号116および118)はcNg-S突然変異を含有する。インスリン-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列全体を以下に示し、配列番号108に対する結果としてもたらされる配列アライメントを
図30に示す(Clustal Omega)。
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPAGGGPRRGIVEQCCASVCSLYQLEHYCGGGGAGGGGGEGPKCPVPEIPGAPSVFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSNVQITWFVDNTEMHTAKTRPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSAMERTISKAKGQPHEPQVYVLPPTQEELSENKVSVTCLIKGFHPPDIAVEWEITGQPEPENNYQTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSHWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSP(配列番号114)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPAGGGPRRGIVEQCCASVCSLYQLEHYCGGGGAGGGGGEGPKCPVPEIPGAPSVFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSNVQITWFVDNTEMHTAKTRPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSAMERTISKAKGQPHEPQVYVLPPTQEELSENKVSVTCLIKGFHPPDIAVEWEITGQPEPENNYQTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSHWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号116)
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFFYTDPAGGGPRRGIVEQCCASVCSLYQLEHYCGGGGAGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVALGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEF
KCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号118)
【0220】
インスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。以下の表23は、結果としてもたらされた化合物の生産可能性およびインビトロIR結合パラメーターを示す。
【表23】
【0221】
予想外なことに、3つ全てのインスリン-Fc融合タンパク質は、配列番号108のインスリン-Fc融合タンパク質と比較してはるかに低いタンパク質収率を与えた。実際に、配列番号116のインスリン-Fc融合タンパク質は十分に高いインスリン受容体結合親和性(707nMのIC50)を有していたが、タンパク質収率をほとんど与えなかった。配列番号118のインスリン-Fc融合タンパク質は、許容できない低いタンパク質収率およびホモ二量体タイターを与え、5000nMより高いその高いIR結合IC50値に起因してインビボで生物活性でないようであるとみなされた。配列番号114のタンパク質もまた、許容できない低いタンパク質収率および配列番号108のインスリン-Fc融合タンパク質と比較してはるかに低いインスリン受容体結合親和性(より高いIR IC50値)を与えた。
【0222】
実施例41:配列番号8のインスリンポリペプチド、配列番号14のリンカーおよびネコ科動物IgG2アイソタイプFc断片を含むインスリン-Fc融合タンパク質
免疫原性「ホットスポット」突然変異(すなわち、B10DおよびA8H)を有しないインスリンポリペプチド配列を含むインスリン-Fc融合タンパク質の許容されるタンパク質収率を得ることを試みて、イヌ科動物IgGBアイソタイプFc断片における配列番号8のインスリンポリペプチドおよび配列番号14のペプチドリンカーの使用が高いタンパク質およびホモ二量体タイターならびに許容されるIR結合親和性を結果としてもたらすことを示したイヌ科動物インスリン-Fc融合タンパク質の同時および並行の開発から学習を得た。したがって、配列番号21のネコ科動物IgG2 Fc断片において配列番号8のインスリンポリペプチドおよび配列番号14のペプチドリンカーを使用してネコ科動物インスリン-Fc融合タンパク質を構築して以下の配列を製造した:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGGEGPKCPVPEIPGAPSVFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVD
LGPDDSNVQITWFVDNTEMHTAKTRPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSAMERTISKAKGQPHEPQVYVLPPTQEELSENKVSVTCLIKGFHPPDIAVEWEITGQPEPENNYQTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSHWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号122)
実施例37の配列、配列番号106および112に対する配列番号122の配列アライメントを
図31に示す(Clustal Omega)。
【表24】
【0223】
配列番号122のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1にしたがってHEK293細胞中で生産し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。それらの構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。それらのホモ二量体%含有量を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定し、それらのインスリン受容体結合親和性を実施例7にしたがって測定した。FcRn受容体結合親和性を実施例9にしたがって測定した。タンパク質収率は146mg/Lであり、ホモ二量体%は99%であると決定され、生産設計目標を満たす145mg/Lのホモ二量体タイターを結果としてもたらした。IR結合親和性IC50値は2,536nMであり、化合物はインビボで生物活性であるらしいことを指し示した。FcRn受容体結合親和性EC50値は3114ng/mLであった。したがって、配列番号122のインスリン-Fc融合タンパク質はインビボでさらに試験するための潜在的な候補であった。
【0224】
実施例42:配列番号8のインスリンポリペプチド、配列番号14のペプチドリンカー、および配列番号21のネコ科動物IgG2 Fc断片から構築されたインスリン-Fc融合タンパク質のインビボでの生物活性
配列番号122のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例10にしたがってインビボでの生物活性について試験した。健常な、抗体ナイーブの、体重約5kgのネコを使用した。0日目に、ネコに配列番号122のインスリンFc融合タンパク質を含有する医薬組成物の単回注射を与えた。0日目に、注射の直前および注射の15、30、45、60、120、240、360、および480分後、ならびに注射の1、2、3、4、5、6、および7日後に好適な静脈から血液を収集した。対象の血中グルコースが危険なレベルまで低下した場合、食餌および/またはデキストロース注射を与えて症候性低血糖症を予防した。
【0225】
図32は単回投与のFBGL%を示し、これは、予想外なことに、配列番号122のインスリン-Fc融合タンパク質はインビボでわずかに生物活性であるに過ぎなかったことを示す(本質的に0FBGL%・日・kg/mgのNAOC)。殊に、インスリン-Fc融合タンパク質は凝集せず(すなわち、高いホモ二量体%含有量を有する)、かつイヌにおいて有意な生物活性を呈することが見出されたイヌ科動物インスリン-Fc融合タンパク質(実施例31)と類似した範囲内のIR親和性を分子は呈したので、これは驚くべき
ことであった。1回目の投与における生物活性の欠如に起因して、繰返しの投与は行わなかった。
【0226】
実施例43:配列番号8のインスリンポリペプチドおよび配列番号14のペプチドリンカーを含むインスリン-Fc融合タンパク質の収率、純度、生物活性、および免疫原性に対するネコ科動物IgG2 Fc断片のネコ科動物IgG1bでの置換の評価
イヌおよびネコ長期作用性インスリン研究プログラムは並行して実行されたので、イヌ科動物インスリン-Fc融合タンパク質研究プログラムの学習の一部をネコ科動物インスリン-Fcタンパク質研究プログラムに応用した。イヌ科動物インスリン-Fc研究プログラムからの1つの鍵となる学習は、異なるIgGアイソタイプFc断片(例えば、イヌ科動物IgGA、イヌ科動物IgGB、イヌ科動物IgGC、およびイヌ科動物IgGDアイソタイプ)の選択がどのように劇的に異なる生産およびインビボでの有効性性能に繋がるかであった。したがって、配列番号8のインスリンポリペプチドおよび配列番号14のペプチドリンカーを保ちながら配列番号122のネコ科動物IgG2 Fc断片を配列番号20のネコ科動物IgG1b Fc断片で置き換え、以下のアミノ酸配列が結果としてもたらされた:
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFNSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号38)
【0227】
配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1の手順にしたがってHEK293細胞中で合成し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。構造を非還元および還元LC-MSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。タンパク質収率はこのステージにおいて158mg/Lであった。配列についてのホモ二量体%を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定したところ、99.5%であると決定され、生産設計目標を満たす157mg/Lのホモ二量体タイターを結果としてもたらした。実施例7にしたがって測定されたインビトロでのIM-9インスリン受容体結合IC50値は2398nMであり、これもまた設計目標を満たす。FcRn受容体結合親和性EC50値を実施例9にしたがって測定したところ、1552ng/mLであることが見出された。
【0228】
配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質を次に実施例10にしたがってインビボでの生物活性について試験した。健常な、抗体ナイーブの、体重約5kgのネコに0.16mgのインスリン-Fc融合タンパク質/kgの用量において配列番号38のインスリンFc融合タンパク質を含有する医薬組成物の単回皮下注射を与えた。0日目に、注射の直前および注射の15、30、45、60、120、240、360、および480分後、ならびに注射の1、2、3、4、5、6、および7日後に好適な静脈から血液を収集した。対象の血中グルコースが危険なレベルまで低下した場合、食餌および/またはデキストロース注射を与えて症候性低血糖症を予防した。
【0229】
図33は1回目の投与後のFBGL%を示す。症候性低血糖症を予防するために食餌を動物に定期的に与え、配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質は1838FBGL%・日・kg/mgのNAOCと共にインビボで有意に生物活性であることが示された。化合物の薬物動態プロファイルもまた、ELISAを使用して実施例12の方法により
測定し、2コンパートメントモデルをデータにフィッティングして、その排出半減期を6.3±0.5と決定した。配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質と配列番号122のそれとの間の生物学的活性(インビトロおよびインビボ)における差異は、予想外なことに、インスリンポリペプチド配列が配列番号8におけるように改変された場合に、ネコ科動物IgG1bアイソタイプはFc断片のためにネコ科動物IgG2アイソタイプより好ましいことを実証する。
【0230】
NAOCは許容され、かつ薬物動態データは週に1回の投与をサポートするものであったので、ネコに14日目、28日目、および42日目に追加の皮下投薬を与え、FBGL%を実施例11にしたがって各投薬後の7日ウィンドウにわたり測定した。NAOCおよびNAOCRを各繰返しの皮下注射について実施例11の手順にしたがって算出した。表25に示されるように、配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質は、複数の投薬後にインビボで許容される生物活性を実証した。
【表25】
【0231】
追加的に、実施例14にしたがって任意の抗薬物抗体の存在について試験し、かつそのレベルを定量化するために各用量の投与前および実験の終了後に週に1回で2週間、血清を収集した。
図34に示すように、化合物の複数回投与後にベースラインを上回る抗薬物抗体における測定可能な増加はなかった。したがって、許容されるホモ二量体タイター、インビボでの生物活性、およびネコにおける繰返しの週毎の注射後の持続的な生物活性の設計基準を満たすネコ科動物インスリン-Fc融合タンパク質候補(例えば、配列番号38)を得るために、配列番号4のインスリンポリペプチドを配列番号8のインスリンポリペプチドで置き換え、かつ配列番号21のネコ科動物IgG2 Fc断片の代わりに配列番号20のネコ科動物IgG1b Fc断片を使用することが必要であった。
【0232】
実施例44:免疫原性の潜在的なリスクを低減するための配列番号8のインスリンポリペプチド、配列番号14のペプチドリンカー、およびネコ科動物IgG1b Fc断片を含む非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質
配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質は設計目標の全てを満たすが(実施例43)、長期間の治療(例えば、6か月、1年、2年またはより長い)にわたる免疫原性のリスクがあるかもしれず、またはないかもしれず、これが起こる場合、糖尿病を治療するためのこのインスリン-Fc融合タンパク質の使用が損なわれ得る。本発明の詳細な説明に記載されるように、繰返しの投薬後の生物活性の低減の1つのあり得る原因は、中和抗薬物抗体の産生を結果としてもたらすネコ科動物IgG1b Fc断片のネコの免疫系との望ましくない相互作用である。しかしながら、実施例43に示される結果は、予想外なことに、ネコ科動物IgG1bアイソタイプは、インビボでの生物活性に関してより低い免疫原性のネコ科動物IgG2アイソタイプより好ましかったことを実証する。したがって、長期の慢性の免疫原性リスクを低減するはずである低いFc(ガンマ)RI受容体結合を有する非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質を達成するためにさらなるFc突然変異を探求した。
【0233】
本発明の詳細な説明に記載されるように、Fc(ガンマ)RI相互作用を低減する1つの方法は、Fc断片cNg部位を突然変異させて宿主細胞中での合成の間のグリコシル化を予防することを伴う。したがって、cNg部位突然変異を配列番号38のFc断片領域に対して行って、実施例8に記載のインビトロヒトFc(ガンマ)RIアッセイにおける結合により測定された場合の、インビボでのFc(ガンマ)受容体に対するFc断片の結合親和性を低減させた。配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質中のcNg部位の位置はcNg-NB151である。ここでもまた、実施例33に記載のイヌ科動物インスリン-Fc融合タンパク質からの学習を活用して、cNg-NB151-S突然変異を配列番号38のFc断片に導入した。結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質の全長アミノ酸配列を以下に列記する(明確性のためにcNg-NB151-Sに下線を引いている):
FVNQHLCGSHLVEALELVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号124)
【0234】
配列番号124のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1の手順にしたがってHEK293細胞中で合成し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。インスリン-Fc融合タンパク質の構造を非還元および還元LC-MSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。タンパク質収率はこのステージにおいて202mg/Lであった。配列についてのホモ二量体%を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定したところ、99%であると決定され、生産設計目標を満たす200mg/Lのホモ二量体タイターを結果としてもたらした。しかしながら、実施例7にしたがって測定されたインビトロでのIM-9インスリン受容体結合IC50値は5000nMより高く、これはインビトロでの生物活性についての設計目標の外側である。FcRn受容体結合親和性EC50値を実施例9にしたがって測定したところ、6922ng/mLであった。
【0235】
配列番号124のインスリン-Fc融合タンパク質はインスリン受容体結合の設計目標を満たさなかったが、それを実施例10にしたがってインビボでの生物活性について試験した。健常な、抗体ナイーブの、体重約5kgのネコを使用した。0日目に、ネコに0.16mgのインスリン-Fc融合タンパク質/kgの用量において配列番号124のインスリンFc融合タンパク質を含有する医薬組成物の単回注射を与えた。0日目に、注射の直前および注射の15、30、45、60、120、240、360、および480分後、ならびに注射の1、2、3、4、5、6、および7日後に好適な静脈から血液を収集した。対象の血中グルコースが危険なレベルまで低下した場合、食餌および/またはデキストロース注射を与えて症候性低血糖症を予防した。
【0236】
図35は単回投与についてのFBGL%を示し、これは、配列番号124のインスリン-Fc融合タンパク質は65FBGL%・日・kg/mgのNAOCと共にインビボでいくぶん生物活性であるに過ぎないことを示す。1回目の投与における生物活性の欠如に起因して、繰返しの投与は行わなかった。
【0237】
予想外なことに、配列番号36のイヌ科動物インスリンFc融合タンパク質について実施例33において該当したように、B鎖のN末端から16番目のアミノ酸(B16)がチ
ロシンからアラニンに突然変異するように配列番号124のインスリンポリペプチド配列を突然変異させること(すなわち、B16A)は、配列番号40の結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質を生物活性とすることが見出された。結果としてもたらされるインスリン-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列を以下に示す(明確性のためにB16AおよびcNg-NB151-S突然変異に下線を引いている):
FVNQHLCGSHLVEALALVCGERGFHYGGGGGGSGGGGGIVEQCCTSTCSLDQLENYCGGGGGQGGGGQGGGGQGGGGGDCPKCPPPEMLGGPSIFIFPPKPKDTLSISRTPEVTCLVVDLGPDDSDVQITWFVDNTQVYTAKTSPREEQFSSTYRVVSVLPILHQDWLKGKEFKCKVNSKSLPSPIERTISKDKGQPHEPQVYVLPPAQEELSRNKVSVTCLIEGFYPSDIAVEWEITGQPEPENNYRTTPPQLDSDGTYFLYSRLSVDRSRWQRGNTYTCSVSHEALHSHHTQKSLTQSPG(配列番号40)
【0238】
配列番号40のインスリン-Fc融合タンパク質を実施例1の手順にしたがってHEK293細胞中で合成し、実施例3にしたがってプロテインAカラムを使用して精製した。インスリン-Fc融合タンパク質の構造を非還元および還元CE-SDSにより実施例4にしたがって確認し、配列を実施例5にしたがってグリカン除去を用いてLC-MSによりさらに同定した。タンパク質収率はこのステージにおいて174mg/Lであった。配列についてのホモ二量体%を実施例6にしたがってサイズ排除クロマトグラフィーにより測定したところ、98.9%であると決定され、生産設計基準を満たす172mg/Lのホモ二量体タイターを結果としてもたらした。実施例7にしたがって測定された4635nMのインビトロIM-9インスリン受容体結合IC50値もまた設計目標を満たす。Fc(ガンマ)受容体活性を実施例8にしたがって測定したところ、同じ手順を使用して配列番号38のインスリン-Fc融合タンパク質について得られたものより約4倍低いことが見出され、インスリン-Fc融合タンパク質はネコの免疫系と有害に相互作用する可能性はより低いことを指し示した。FcRn受容体結合親和性EC50値を実施例9にしたがって測定したところ8157ng/mLであった。
【0239】
配列番号40のインスリン-Fc融合タンパク質を次に実施例11にしたがってインビボでの生物活性について試験した。健常な、抗体ナイーブの、体重約5kgのネコを使用した。0日目、7日目、および21日目にネコに0.1mgのインスリン-Fc融合タンパク質/kgの用量において配列番号40のインスリンFc融合タンパク質を含有する医薬組成物の単回皮下注射を与えた。0日目に、注射の直前および注射の15、30、45、60、120、240、360、および480分後、ならびに注射の1、2、3、4、5、6、および7日後に好適な静脈から血液を収集した。対象の血中グルコースが危険なレベルまで低下した場合、食餌および/またはデキストロース注射を与えて症候性低血糖症を予防した。
【0240】
図36は1回目の投与後のFBGL%を示し、これは、配列番号40のインスリン-Fc融合タンパク質は0.1mgのインスリン-Fc融合タンパク質/kgの皮下用量について159FBGL%・日・kg/mgのNAOCと共にインビボで生物活性であることを示す。0.2mgのインスリン-Fc融合タンパク質/kgの2回目のより高い皮下用量は、702FBGL%・日・kg/mgのはるかにより高いNAOCを与え、これは
図37に示される。薬物動態プロファイルをELISAを使用して実施例12の方法により測定し、2コンパートメントモデルをデータにフィッティングしてその排出半減期を決定すると、これは3日より長い。これらの結果は、B16においてアラニンの代わりにチロシンを含む同じ化合物はおおよそ同じ用量(0.16mgのインスリン-Fc融合タンパク質/kg)において非常に弱くのみ生物活性であることを示した配列番号124のインスリン-Fc融合タンパク質を用いて得られた結果とは対照的である。したがって、配列
番号11のインスリンポリペプチドは、cNg突然変異型ネコ科動物IgG1b Fc断片を含む非グリコシル化インスリン-Fc融合タンパク質のために好ましいものであった。
【0241】
複数の投薬後の繰返し可能な生物活性を分析するために、ネコに7日目、21日目、および35日目に配列番号40のインスリン-Fc融合タンパク質のさらなる投薬を与えた。ネコのFBGL%があまりに低く低下した場合、ネコに食餌を与えて安全なレベルまで血中グルコースを上昇させた。NAOCおよびNAOCRを実施例11の一般手順にしたがって各その後の用量について測定し、次の用量が投与される直前までに用量が投与された時間から算出した。表26に示されるNAOCおよびNAOCRは、配列番号40のインスリン-Fc融合タンパク質は複数の投薬後にインビボで生物活性であることを示す。
【表26】
【0242】
追加的に、実施例14にしたがって任意の抗薬物抗体の存在について試験し、かつそのレベルを定量化するために各用量の投与前および実験の終了時に血清を収集した。化合物の複数回投与後にベースラインを上回る抗薬物抗体における測定可能な増加はない。したがって、有意に低減されたFc(ガンマ)受容体活性を有する生産および生物活性の設計基準を満たすネコ科動物インスリン-Fc融合タンパク質を得るために、cNgをセリンに突然変異させるだけではなく、インスリンポリペプチドのB16アミノ酸をアラニンに突然変異させることが必要であった。
【0243】
実施例45:安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系を介して作られたネコ科動物IgG1b起源のFc断片を含む好ましいインスリン-Fc融合タンパク質を使用した例示的なCHOベースの製造ラン
配列番号38をコードするベクターを用いて安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系を上記の実施例2に記載されるように構築した。流加シェークフラスコ14日製造ラン(0.5~2.0Lの培地スケール)を37℃および5%の二酸化炭素においてインキュベーター-シェーカーセットに50万細胞/mLにおいて播種し、増殖培地としてCD
OptiCHOをDynamis(ThermoFisher)に置換し、フィードとしてEfficient Feed C(ThermoFisher)を使用した以外は上記の実施例2に記載されるようにランを実行した。フィードを製造ランの3日目に開始して3%v/vにおいて加え、4日目にシェークフラスコ温度を32℃に調整し、インキュベーター-シェーカーの二酸化炭素濃度を5%から2%に低下させた。ランの間に、細胞密度は800万~1400万細胞/mLまで増加し、14日目に製造ランを回収して細胞を除去し、培養上清を実施例3、4、5、および6に記載されるように精製および特徴付けしてインスリン-Fc融合タンパク質を得た。表27は、これらの安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系の製造ランを介して得られたインスリン-Fc融合タンパク質についての生産データを記載する。
【表27】
【0244】
実施例46:安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系を介して作られるネコ科動物IgG1b起源の好ましいインスリン-Fc融合タンパク質を使用する例示的なCHOベースの製造ラン
配列番号40をコードするベクターを用いて安定的にトランスフェクトされたCHO細胞系を上記の実施例2に記載されるように構築する。流加シェークフラスコ14日製造ラン(0.5~2.0Lの培地スケール)を37℃および5%の二酸化炭素においてインキュベーター-シェーカーセットに50万細胞/mLにおいて播種し、増殖培地としてCD
OptiCHOをDynamis(ThermoFisher)に置換し、フィードとしてEfficient Feed C(ThermoFisher)を使用する以外は上記の実施例2に記載されるようにランを実行する。フィードを製造ランの3日目に開始して3%v/vにおいて加え、4日目にシェークフラスコ温度を32℃に調整し、インキュベーター-シェーカーの二酸化炭素濃度を5%から2%に低下させる。14日目に製造ランを回収して細胞を除去し、培養上清を実施例3、4、5、および6に記載されるように精製および特徴付けしてインスリン-Fc融合タンパク質を得る。結果としてもたらされる製造ランは、配列番号40の200mg/Lより高いタンパク質収率、95%より高いホモ二量体、および190mg/Lより高いホモ二量体タイターを与える。
【0245】
実施例47:例示的なインスリン-Fc融合タンパク質ドメインおよび配列
上記の実施例において使用した例示的なインスリン-Fc融合タンパク質のアミノ酸配列および対応するDNA配列を
図38、39、40、41、および42に示す。
【0246】
均等
請求項において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、そうでないことが指し示されなければまたは文脈から他に明らかでなければ、1つまたは1つより多くを意味することができる。群の1つまたはより多くのメンバーの間に「または」を含む請求項または記載は、そうでないことが指し示されなければまたは文脈から他に明らかでなければ、群メンバーの1つ、1つより多く、または全てが、所与の製造物または方法において存在する、それにおいて用いられる、またはそれに他に関連する場合に、満たされると考えられる。本開示は、群の正確に1つのメンバーが、所与の製造物または方法において存在する、それにおいて用いられる、またはそれに他に関連する実施形態を含む。本開示は、群メンバーの1つより多く、または全てが、所与の製造物または方法において存在する、それにおいて用いられる、またはそれに他に関連する実施形態を含む。
【0247】
さらには、本開示は、列記される請求項の1つまたはより多くからの1つまたはより多くの限定、要素、節、および記述的用語が別の請求項に導入される全てのバリエーション、組合せ、およびパーミュテーションを包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基礎とする請求項に従属する任意の他の請求項中に見出される1つまたはより多くの限定を含むように修飾され得る。要素が、例えばマーカッシュ群形式の、リストとして提示される場合、要素の各亜群もまた開示され、任意の要素を群から除去することができる。一般に、本開示、または本開示の態様が具体的な要素および/または特徴を
含むと言及される場合、本開示のある特定の実施形態または本開示の態様は、そのような要素および/または特徴からなる、またはから本質的になることが理解されるべきである。簡便性の目的のために、それらの実施形態は本明細書においてこれらの言葉で特に示されていない。「含む」(comprise(s))、「含む」(comprising)、「含有する」(contain(s))および「含有する」(containing)という用語は開放的であることが意図され、その使用は追加の要素またはステップを含めることを許容することもまた留意される。範囲が与えられる場合、端点が含まれる。さらには、他に指し示されなければまたは文脈および当業者の理解から他に明らかでなければ、範囲として表される表は、文脈が他に明確に規定しなければ、本開示の異なる実施形態において、範囲の下限の単位の10分の1まで、記載される範囲内の任意の特定の値または部分的範囲をとることができる。
【配列表】