(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】コーヒー豆焙煎装置、およびコーヒー豆焙煎方法
(51)【国際特許分類】
A23N 12/08 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A23N12/08 A
(21)【出願番号】P 2024011274
(22)【出願日】2024-01-29
【審査請求日】2024-01-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524039148
【氏名又は名称】河村 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100192496
【氏名又は名称】西平 守秀
(72)【発明者】
【氏名】河村 篤
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529079(JP,A)
【文献】特表2023-535676(JP,A)
【文献】特開2018-88908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/08
A23F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒーの生豆をその内部で収納する容器が載置される空間と、
前記容器の内部の前記生豆を加熱して焙煎する加熱部と、
前記加熱部によって焙煎される前記生豆の重量の変化を計測する計量部と、
前記空間の上方から前記容器の内部に向けて送風して前記容器の内部の前記生豆を攪拌する送風部と、を含む、
コーヒー豆焙煎装置。
【請求項2】
前記容器を含んで構成され、
前記容器は上側が開口して形成され、
前記容器の内側壁面の少なくとも一部は、上方に行くに従って水平方向外側に向かって傾斜して形成される、
請求項1に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項3】
前記空間は、その上側が天壁によって画成され、
前記送風部の送風口は、前記天壁に配設され、
前記容器は、前記空間に載置された際にその開口縁が前記天壁に係合または近接するように形成される、
請求項2に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項4】
前記加熱部によって前記生豆が焙煎されたり前記送風部によって前記生豆が攪拌されたりする際に発生するチャフを捕捉するフィルタ部をさらに含み、
前記容器の前記内側壁面が全体的に筒状に形成され、
前記フィルタ部は、その吸気口が、前記容器が前記空間に載置された状態で前記容器の上方にかつ鉛直方向に延びる前記容器の仮想中心軸を通過して配置され、前記吸気口を通じて前記容器の内部から空気を吸気し、
前記送風部は、その送風口が、前記容器が前記空間に載置された状態で前記容器の上方にかつ前記容器の前記仮想中心軸を外れて配設され、前記送風口を通じて前記容器の前記内側壁面に向けて送風する、
請求項2に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項5】
前記送風部は、前記容器の前記内側壁面に対しその周方向に沿って送風する、
請求項4に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項6】
前記加熱部の加熱時間の長短を制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記計量部の計測結果に基づいて、前記加熱時間を制御する、
請求項1に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項7】
前記生豆が前記加熱部によって加熱されることによって、前記生豆が所定期間連続的に爆裂することで発せられる爆ぜ音が間欠的に発生しており、
前記爆ぜ音の発生の有無の検出する音検出部と、
前記音検出部の検出結果に基づいて前記爆ぜ音の発生回数を計数する計数部と、をさらに含み、
前記制御部は、前記計量部の計測結果および前記計数部の計数結果に基づいて、前記加熱時間を制御する、
請求項6に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記送風部が動作開始または動作停止するタイミングも合わせて制御し、
前記制御部は、
第1回目の前記爆ぜ音が発生する期間内では前記送風部を第1の周期で間欠的に動作させ、
第2回目以降の前記爆ぜ音が発生する期間内では前記送風部を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で間欠的に動作させる、
請求項7に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項9】
前記送風部が動作開始または動作停止するタイミングを制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記加熱部による前記生豆の加熱が終了したと判定される場合、前記送風部を動作開始または動作継続させる、
請求項1に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項10】
前記容器は、電磁誘導加熱対応の素材を含んで設けられ、
前記加熱部は、電磁誘導加熱方式である、
請求項1に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【請求項11】
前記容器の底内壁部には、上方に向けて延出する突出部が配設される、
請求項2に記載のコーヒー豆焙煎装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に家庭で使用されるコーヒー豆焙煎装置、およびコーヒー豆焙煎方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より家庭用のコーヒー豆焙煎装置として、コーヒー豆を収容するための焙煎チャンバーと、焙煎チャンバーに熱風を供給するための熱風供給装置と、コーヒー豆の皮を収集するための収集チャンバーと、を含んで構成されるものが知られる(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
この種の装置では、収集チャンバーは焙煎チャンバーと連通しており、焙煎チャンバーの底部には外部と連通する第1の豆出口が設けられ、第1の豆出口には開閉可能なチャンバードアが設けられる。この装置によれば、装置全体を手動で持ち上げて傾けることなく、焙煎されたコーヒー豆を取り出すことができて利便性が高められるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の装置は、焙煎の程度を調整することが可能なものではない。また、前記特許文献1の装置は、焙煎チャンバーに熱風を吹き込むだけの構造であり、焙煎時におけるコーヒーの生豆の攪拌が不十分となり焙煎むらが発生する可能性もある。
【0006】
ここで、コーヒーの生豆を焙煎する際には、その焙煎の程度(焙煎度)を適切に管理するとともに、焙煎むらが発生しないようにすることが重要である。コーヒーの味は焙煎度によって左右される。たとえば焙煎度を下げる(浅煎りにする)と苦味が弱めで酸味が強く、焙煎度を上げる(深煎りにする)と酸味が弱めで苦味が強くなる傾向がある。そして、コーヒーの生豆の焙煎は、加熱の程度が焦げの領域に到達することを要し、焙煎むらの原因は焙煎に使用する容器において生豆とその容器表面との接触状態が影響を与えていると推定される。そのためには、焙煎には攪拌という工程も重要となってくる。
【0007】
そのようなコーヒー豆の焙煎の管理は、広く一般的には“焙煎士”という用語があるほど職人または専門家が行うことがよいとされ、その技能によってコーヒーの美味しさが大きく変わるといわれる。焙煎むらなく、その味に対応する(適した)焙煎度にするには、卓越したその職人などの技能・技術が要するとされる。
【0008】
その一方、一般消費者にとって、前述のような職人がいなくても家庭または店舗などで、飲用直前にコーヒーの生豆を手軽に焙煎可能とすることが好ましい。この点、前記特許文献1の装置は改善の余地があったといえる。
【0009】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、たとえば家庭または店舗などにおいて、焙煎むらの発生を抑制しながら使用者の目的の味に対応する(適する)焙煎度を手軽に実現することができるコーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前述した目的は、後記の構成により達成される。
[1]
コーヒーの生豆をその内部で収納する容器が載置される空間と、
前記容器の内部の前記生豆を加熱して焙煎する加熱部と、
前記加熱部によって焙煎される前記生豆の重量の変化を計測する計量部と、
前記空間の上方から前記容器の内部に向けて送風して前記容器の内部の前記生豆を攪拌する送風部と、を含む、
コーヒー豆焙煎装置。
[2]
前記容器を含んで構成され、
前記容器は上側が開口して形成され、
前記容器の内側壁面の少なくとも一部は、上方に行くに従って水平方向外側に向かって傾斜して形成される、
[1]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[3]
前記空間は、その上側が天壁によって画成され、
前記送風部の送風口は、前記天壁に配設され、
前記容器は、前記空間に載置された際にその開口縁が前記天壁に係合または近接するように形成される、
[2]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[4]
前記加熱部によって前記生豆が焙煎されたり前記送風部によって前記生豆が攪拌されたりする際に発生するチャフを捕捉するフィルタ部をさらに含み、
前記容器の前記内側壁面が全体的に筒状に形成され、
前記フィルタ部は、その吸気口が、前記容器が前記空間に載置された状態で前記容器の上方にかつ鉛直方向に延びる前記容器の仮想中心軸を通過して配置され、前記吸気口を通じて前記容器の内部から空気を吸気し、
前記送風部は、前記送風口が、前記容器が前記空間に載置された状態で前記容器の上方にかつ前記容器の前記仮想中心軸を外れて配設され、前記送風口を通じて前記容器の前記内側壁面に向けて送風する、
[2]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[5]
前記送風部は、前記容器の前記内側壁面に対しその周方向に沿って送風する、
[4]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[6]
前記加熱部の加熱時間の長短を制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記計量部の計測結果に基づいて、前記加熱時間を制御する、
[1]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[7]
前記生豆が前記加熱部によって加熱されることによって、前記生豆が所定期間連続的に爆裂することで発せられる爆ぜ音が間欠的に発生しており、
前記爆ぜ音の発生の有無の検出する音検出部と、
前記音検出部の検出結果に基づいて前記爆ぜ音の発生回数を計数する計数部と、をさらに含み、
前記制御部は、前記計量部の計測結果および前記計数部の計数結果に基づいて、前記加熱時間を制御する、
[6]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[8]
前記制御部は、前記送風部が動作開始または動作停止するタイミングも合わせて制御し、
前記制御部は、
第1回目の前記爆ぜ音が発生する期間内では前記送風部を第1の周期で間欠的に動作させ、
第2回目以降の前記爆ぜ音が発生する期間内では前記送風部を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で間欠的に動作させる、
[7]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[9]
前記送風部が動作開始または動作停止するタイミングを制御する制御部をさらに含み、
前記制御部は、前記加熱部による前記生豆の加熱が終了したと判定される場合、前記送風部を動作開始または動作継続させる、
[1]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[10]
前記容器は、電磁誘導加熱対応の素材を含んで設けられ、
前記加熱部は、電磁誘導加熱方式である、
[1]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[11]
前記容器の底内壁部には、上方に向けて延出する突出部が配設される、
[2]に記載のコーヒー豆焙煎装置。
[12]
コーヒーの生豆を加熱して焙煎する加熱部と、
前記加熱部によって焙煎される前記生豆の重量の変化を計測する計量部と、
前記生豆が前記加熱部によって加熱されることによって前記生豆が所定期間連続的に爆裂することで間欠的に発生する爆ぜ音に対し、前記爆ぜ音の発生の有無を検出する音検出部と、
前記加熱部の加熱時間の長短を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記計量部の計測結果および前記音検出部の検出結果に基づいて、前記加熱時間を制御する、
コーヒー豆焙煎装置。
[13]
コーヒーの生豆を加熱して焙煎する加熱ステップと、
前記加熱ステップで焙煎される前記生豆の重量の変化を計測する計量ステップと、
前記生豆が前記加熱ステップで加熱されることによって前記生豆が所定期間連続的に爆裂することで間欠的に発生する爆ぜ音に対し、前記爆ぜ音の発生の有無を検出する音検出ステップと、を含み、
前記加熱ステップでの加熱時間の長短について、前記計量ステップでの計測結果および前記音検出ステップでの検出結果に基づいて、前記加熱時間を調整する、
コーヒー豆焙煎方法。
【0011】
前記[1]の構成によれば、計量部または計量ステップによる質量変化に基づいて焙煎度を把握または推定し、その質量変化の度合いによって加熱時間を管理(調整)する。また、それと同時に上方から容器の内部の生豆に向けて送風することにより、容器の内部の生豆をその内部で上下運動させながら攪拌する。これにより、焙煎むらの発生を抑制しながら使用者の目的の味に対応する(適する)焙煎度を手軽に実現することができる。すなわち、従前では専門家(たとえば焙煎士)でしかできなかったとされた本格的な焙煎が、たとえば家庭などにおいても容易に再現することができる。
前記[2]の構成によれば、容器の内側壁面は上方に向けて開いて傾斜して形成されるため、上方から吹き付けられる空気(熱風または冷風など)はその内側壁面に沿って流れる。これにより、容器の内部において、その内側壁面に沿って流れる空気は容器の底部で反射して(跳ね返って)上昇して流れる。そのようにして、上下方向に沿った気流(対流も含む)が発生して生豆の攪拌性を高めることができる。
前記[3]の構成によれば、容器の内部で発生する空気の流れ(対流も含む)において、空間の天壁との隙間から空気が流出するのを抑制して循環効率または対流効率を高めることができる。これにより、生豆の攪拌性をさらに向上させることができる。また、生豆を攪拌時または冷却時において容器の外に飛び出すのも合わせて防止することができる。
前記[4]の構成によれば、送風部の送風口は、空間に載置された状態の容器の仮想中心軸を外れて配置され、容器の内側壁面に向けて送風する。これにより、容器の内部の循環効率または対流効率をより高めて生豆の攪拌性をより一層向上させることができる。また、フィルタ部の吸気口は、容器の上方、かつ容器の仮想中心軸上を通過して配置されるため、攪拌に伴って発生するチャフをその循環または対流の中心で効率的に捕捉することができる。
前記[5]の構成によれば、容器の内側が筒状に形成されており、そして送風部が容器の内側壁面の周方向に沿って送風するため、渦巻き状(スパイラル状)の気流が発生する。これにより、焙煎時または冷却時における生豆の攪拌効率を高めることができる。
前記[6]の構成によれば、焙煎度を計量部による計量結果、すなわちその質量変化を検出し、その質量変化の度合いによって加熱時間の長短を制御する。これにより、その目的の味に対応する(適する)焙煎を手軽に実現することができる。
前記[7]の構成によれば、生豆の種類によって爆ぜ温度が異なるため、その爆ぜ初めを検出することによって、その生豆の種類に応じた適切な焙煎を実現することができる。
前記[8]の構成によれば、過度に焙煎が進行しないように制御するため、より適応的に目的に合う焙煎度を効率良く実現することができる。
前記[9]の構成によれば、焙煎完了の際、その後に焙煎が過度に進行しないように冷却送風するため、より一層適応的に目的に合う焙煎度を効率良く実現することができる。
前記[10]の構成によれば、電磁誘導加熱方式でコーヒーの生豆を焙煎するので、従来の熱風方式または燃焼方式などと比較して、エネルギー効率良く加熱して焙煎時間を短縮することができる。また、生豆を直接加熱するのではなく、容器を加熱する方式であるため、送風部との相乗効果によって攪拌性をより高めることができる。
前記[11]の構成によれば、その突出部の存在によって送風時の容器内部の攪拌性を高めることができる。
前記[12]および前記[13]の構成によれば、計量部または計量ステップによる質量変化に基づいて焙煎度を把握または推定し、その質量変化の度合いによって加熱時間を管理(調整)する。またそれと同時に、音検出部または音検出ステップによる爆ぜ音の発生の有無を検出する。生豆の種類によって爆ぜ温度および爆ぜ音が異なるため、加熱と同時にその爆ぜ初めを音の発生の有無によって検出することによって、その生豆の種類に応じた適切な焙煎を実現することができる。さらに、爆ぜ音の発生回数および発生周波数はその焙煎の程度に応じて変化する。そのため、爆ぜ音の発生の有無の検出結果に基づいて、その加熱時間の長短を制御することで過度に焙煎が進行しないように抑制して、適応的に目的に合う焙煎度を効率良く実現することができる。これにより、焙煎を適応的に実現して、使用者の目的の味に対応する(適する)焙煎度を手軽に実現することができる。すなわち、従前では専門家(たとえば焙煎士)でしかできなかったとされた本格的な焙煎が、たとえば家庭などにおいても容易に再現することができる。
なお、さらに爆ぜ音の発生回数を計数してその計数結果も合わせて前述の加熱時間の長短を制御可能に構成してもよい。この場合、さらに精度よく、適応的に目的に合う焙煎度を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、たとえば家庭または店舗などにおいて、焙煎むらの発生を抑制しながら使用者の目的の味に対応する(適する)焙煎度を手軽に実現することができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る第1実施形態のコーヒー豆焙煎装置の外観の一例を説明する外観模式図
【
図2】
図1に示すコーヒー豆焙煎装置の装置本体の内観の一例を説明する縦断面模式図
【
図3】
図1に示す容器の内部で発生する気流の様子の一例を説明する模式図
【
図4】
図1に示す装置本体の機能の一例を説明するブロック図
【
図5】焙煎時に発生する爆ぜ音の一例について説明する模式図
【
図6】
図1に示す装置が実行する動作フローの一例を説明するフロー図
【
図7】第1実施形態に係る第1変形例での容器の内部で発生する気流の様子の一例を説明する模式図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本発明に係る、コーヒー豆焙煎装置、およびコーヒー豆焙煎方法を具体的に開示した1つまたは複数の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえばすでによく知られた事項の詳細説明または実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。また、添付図面のそれぞれは符号の向きに従って視るものとする。
【0017】
また、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0018】
<用語の説明>
「を有する」「を備える」「を含む」および「を含有する」と同義である用語「を含む」または「により特徴づけられる」「を特徴とする」は、包括的または開放型な意味で解釈されるものであり、追加の、挙げられていない要素または方法のステップを排除しない。「を含む」は、請求項の言語で使用される技術用語であり、それは名を挙げられた請求項要素は必須であるが、他の請求項要素が追加されて請求項の範囲内で構成物をさらに形成してもよいことを意味する。
【0019】
また、本明細書において「からなる」という語句を使用する場合には、当該「からなる」という語句は、請求項で特定されていない、いかなる要素、ステップまたは成分も排除する。語句「からなる(またはその変形)」が、プリアンブルの直後ではなくむしろ、請求項の本体の節に現れる場合、それは、その節において示された要素のみを限定し、他の要素が当該請求項全体から排除されるのではない。本明細書において使用する語句「から本質的になる」は、請求項の範囲を、特定された要素または方法ステップに加えて、請求された対象事物の主成分および新規な特徴(単数または複数)に実質的に影響しないものに限定する。
【0020】
用語「を含む」、「からなる」および「から本質的になる」に関して、これら3つの用語の1つが本明細書において使用される場合、本発明で開示されたおよび請求された対象事物は、他の2つの用語のいずれかの使用も含むこともある。従って、そうではないと明示的に挙げなかったいくつかの実施形態において、「を含む」の任意の場合が、「からなる」または「から本質的になる」によって置き換えられ得る。
【0021】
用語「工程」もしくは「ステップ」は、プロセスまたは方法の特徴に関連して、明示的に用いられ、または暗示的に用いられ得る。しかしながら、順番または手順について明記されない限り、このような明示的な工程もしくはステップの間、または暗示的な工程もしくはステップの間における、順番または手順は、限定されない。
【0022】
また、本明細書でいう用語「部」または「装置」とは単にハードウェアによって機械的に実現される物理的構成に限らず、その構成が有する機能をプログラムなどのソフトウェアにより実現されるものも含む。また、1つの構成が有する機能が2つ以上の物理的構成により実現されても、または2つ以上の構成の機能がたとえば1つの物理的構成(たとえば1つの独立した装置)によって実現されていてもかまわない。
【0023】
<コーヒー豆焙煎時の爆ぜ音(ハゼ)>
爆ぜ音(ES1,ES2)は、コーヒーの生豆の焙煎過程でその生豆が所定期間連続的に爆裂することで発せられる連続的な音であり、間欠的に発生する(
図5参照)。
【0024】
一般的に、この爆ぜ音(ES1,ES2)は「ハゼ」と呼ばれる現象として知られる。この現象では、コーヒーの生豆が高温で加熱されることで、その内部の水分が蒸発するとともに化学反応が発生する。この化学反応では、コーヒーの生豆の内部で二酸化炭素または水蒸気などの揮発性のガスまたは成分が生成される。そして、水蒸気およびこれら揮発性のガスの圧力によって生豆の内部構造が耐えられなくなり、生豆の組織が破壊される。その際に、爆ぜる音が間欠的に発生することになる。
【0025】
ハゼの現象は基本的に2回発生するとされる。具体的には、1回目のハゼ(1ハゼ)は、コーヒーの生豆が加熱されることで膨張し始め内部の隙間が塞がると、そこに溜まった水蒸気およびガスなどがその逃げ場を失って内圧が上昇し、連続的な破裂音が発生して爆ぜる。そして、2回目のハゼ(2ハゼ)では、継続的な加熱に伴って煙が発生しその煙の色がわずかに変化し、二酸化炭素などの燃焼ガスの発生が急増する。このガスの一部が内部の隙間に閉じ込められて逃げ場を失い、内圧がさらに上昇して限界を超えた瞬間、破裂音を発しながら爆ぜる。また、1ハゼおよび2ハゼの間には、比較的静かな状態(静音状態)が存在し、つまり爆ぜ音(ES1,ES2:ハゼ)は間欠的に発生する。
なお、1回目のハゼ(爆ぜ音ES1)では爆裂の頻度が2回目のハゼ(爆ぜ音ES2)と比較して少なく、すなわち第1回目の爆ぜ音(ES1)ではコーヒーの生豆の爆裂の頻度は、第2回目の爆ぜ音(ES2)の発生時よりも少ない。そのため音信号としてその周波数は低い(
図5参照)。
【0026】
これらのハゼ(爆ぜ音(ES1,ES2))の発生は焙煎度を規定する指標(目安)であり、後述のように本発明では爆ぜ音(ES1,ES2)の発生の有無も含めて検出し、その検出結果に基づいて焙煎度を管理または制御する。また、本発明では、この爆ぜ音(ES1,ES2)だけではなく、焙煎度を推定する指標として焙煎に伴う生豆の質量変化も取り扱う。そのため、本発明は、後述の1または複数の実施形態に例示するような特別な技術的特徴を有する。
【0027】
<第1実施形態>
図1~
図7に基づいて本発明に係るコーヒー豆焙煎装置10、およびコーヒー豆焙煎方法の第1実施形態について説明する。
【0028】
[・本装置の概略構造について]
図1および
図2を参照しながら、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10の構造の概要について説明する。
図1は、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10の外観の一例を説明する外観模式図である。
図2は、
図1に示すコーヒー豆焙煎装置10の装置本体の内観の一例を説明する縦断面模式図である。
【0029】
本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10は、加熱方式としてマイクロ波方式を採用しており、いわゆる電子レンジの機能を有して構成される。マイクロ波方式の採用により、コーヒー豆焙煎装置10は、調理対象物であるコーヒーの生豆自体に熱を発生させ、熱の伝導時間を要することなく極めて短時間で焙煎することが可能となる。
【0030】
なお、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10はマイクロ波方式とされるが、これに限定されない。その生豆が収納される空間またはその容器80(後述参照)に対し熱エネルギーを加えたり、コーヒーの生豆に直接加熱したりすることが可能であれば、その加熱方式は限定されず、たとえば熱風方式、過熱水蒸気方式なども適宜採用することも可能である。
【0031】
図1および
図2に示すように、コーヒー豆焙煎装置10は箱状の筐体からなり、その筐体の内部に、焙煎室RS(空間の一例)と、加熱部21と、計量部31と、音検出部32と、送風部23と、フィルタ部26と、操作部35と、を含んで構成される。
【0032】
コーヒー豆焙煎装置10の筐体は、磁性金属製の外側筐体部40、およびその外側筐体部40に内設される同じく磁性金属製の内側筐体部50を有して構成され、二重構造(入れ子構造)とされる。その構造により、コーヒー豆焙煎装置10は、マイクロ波を漏洩させることなく安全に対象物(本実施形態ではコーヒーの生豆)に対し加熱することが可能となる。
【0033】
内側筐体部50に焙煎室RSが配設される。焙煎室RSは容器80が載置されるための空間とされる。容器80は、本体部81と取手部84を有して構成され、その内部でコーヒーの生豆を収納する。容器80の本体部81は略お椀状に、その内側周面83(内側壁面の一例)はラッパ状(筒状の一例)に形成される(後述参照)。また、焙煎室RSは、上側が天壁51に、下側が底壁52に、左右両側が左右一対の側壁53に、後側が後壁54によってそれぞれ区画される。また、焙煎室RSの前面は開放とされる。
【0034】
外側筐体部40は、箱状に形成されており、その内部で内側筐体部50および焙煎室RSの全体を上下左右方向に空間スペースを有して包囲する。すなわち、外側筐体部40および内側筐体部50の間には、上側に配置される空間スペース(上側スペースS1)と、下側に配置される空間スペース(下側スペースS2)と、左側に配置される空間スペース(左側スペースS3)と、右側に配置される空間スペース(右側スペースS4)と、がそれぞれ形成される。また、外側筐体部40は、天面41と、底面42と、左右一対の側面43と、背面44と、を有する。
【0035】
外側筐体部40の前面部においてその左右方向一端部には開閉扉45が取り付けられる。開閉扉45は、内側筐体部50の前面開放される開口を開閉自在とする。また、開閉扉45は外側筐体部40の横方向に開閉自在とされ、また、その表裏面にはガラス46が嵌め込まれる(貼設される)。このガラス46を通じて、使用者は閉塞の際に焙煎室RSを観察することが可能となる。ガラス46の表面または裏面には、金属製のメッシュ(不図示)が被覆して敷設されており、マイクロ波の漏洩を防止する。
【0036】
なお、外側筐体部40および内側筐体部50によって画成される四方のスペースS1,S2,S3,S4において、上側スペースS1は下側スペースS2よりもその容量が大きく形成される。右側スペースS4は左側スペースS3よりもその容量が大きく形成される。
【0037】
外側筐体部40の前面において、その開閉扉45の左側部分に操作部35が配設される。操作部35には、各種設定するための複数の操作パネル36および複数の操作ボタン37が配設される。操作部35では、使用者の操作パネル36または操作ボタン37の選択操作によって焙煎の程度が選択されて設定される。たとえば、浅煎りまたは深煎りなどの焙煎度が設定される。
【0038】
加熱部21は、焙煎室RSの右側かつ操作部35の裏側に形成される空間スペース、つまり右側スペースS4に配設される。本実施形態の加熱部21は、複数の電装部品からなり、マイクロ波を発生させるためのマグネトロン22を主に含んで構成される。マグネトロン22は、マイクロ波を励振してそのマイクロ波を焙煎室RSに放射する。焙煎室RSの天壁51および左右一対の側壁53のそれぞれには複数の透過穴55が形成され、その複数の透過穴55を通じてマイクロ波が焙煎室RSの内部に放射される。放射されるマイクロ波は、内側筐体部50の天壁51、側壁53および底壁52によって複数回反射する。その結果、焙煎室RSの内部は、マイクロ波の直接波および輻射波が複雑に交錯する電磁場となり、加熱対象であるコーヒーの生豆はその発生電磁場の影響を受けてその豆本体が直接加熱する。
【0039】
計量部31は、外側筐体部40の底部(すなわち、下側スペースS2)に配設され、焙煎室RSに載置される容器80の全体の質量変化を計量する。つまり、本実施形態では、計量部31は容器80に収納されるコーヒーの生豆の質量変化を計測しており、前述の加熱部21により焙煎される際の質量変化を検出する。計量部31も同様に複数の電装部品からなり、たとえばロードセル(不図示)を主に含んで構成される。計量部31は、その検出結果を制御部11(後述参照)に送信する。
【0040】
音検出部32は、焙煎室RSの上方に形成される、上側スペースS1に配設される。本実施形態の音検出部32も同様に複数の電装部品からなり、たとえば一対のコンデンサマイク33を主に含んで構成される。焙煎室RSの天壁51の左右方向端部のそれぞれには複数の収音穴(不図示)が群形成される。
【0041】
音検出部32の一対のコンデンサマイク33も同様に上側スペースS1に配設される。コンデンサマイク33のそれぞれはその複数の収音穴(不図示)からなる群それぞれに対し内側筐体部50の天壁51の裏側で天壁51に近接して配置される。一対のコンデンサマイク33は、焙煎室RSの内部で発生する音、すなわち本実施形態ではコーヒーの生豆が加熱部21により加熱された際に発生する爆ぜ音ES1,ES2(前述の「<コーヒー豆焙煎時の爆ぜ音(ハゼ)>」を参照)を複数の収音穴を通じて検出する。
【0042】
ここで、前述のように1回目のハゼ(爆ぜ音ES1)では爆裂の頻度が2回目のハゼ(爆ぜ音ES2)と比較して少なく、そのため音信号として第1回目の爆ぜ音ES1の周波数は、第2回目の爆ぜ音ES2と対比して低い(
図5参照)。また、それら第1回目の爆ぜ音ES1および第2回目の爆ぜ音ES2は外部環境を含むそれ以外の音と比べて特異な周波数を有する。そのため、音検出部32は、それら第1回目の爆ぜ音ES1および第2回目の爆ぜ音ES2の検出を、周波数に基づいて行うように構成されてもよい。その場合、生豆の焙煎過程で、周辺環境でノイズが発生しても、精度よく峻別して、さらに第1回目の爆ぜ音ES1および第2回目の爆ぜ音ES2を区別して検出することが可能である。音検出部32は、その検出結果を制御部11に送信する。
【0043】
そして、上側スペースS1には、第1の空気流路60および第2の空気流路70が配設される。第1の空気流路60は、装置本体の外部の雰囲気から焙煎室RSの内部に向けて空気を流通させる(空気を内部に取り込む)。第2の空気流路70は、焙煎室RSの内部の空気を装置本体の外部に向けて空気を流通させる(空気を外部に放出する)。
【0044】
第1の空気流路60は、取込口61および複数の噴射口62(送風口の一例)を有する。取込口61が外側筐体部40に形成される開口である。複数の噴射口62のそれぞれが内側筐体部50に形成される開口である。
【0045】
取込口61は、外側筐体部40の左側の側面43においてその上端部に配置される。複数の噴射口62は、内側筐体部50の天壁51において、容器80が焙煎室RSに載置される状態でその容器80の上方にかつその容器80の仮想中心軸VCを外れるようにしてその仮想中心軸VCの周方向に亘って略等間隔に配置される。複数の噴射口62のそれぞれは、その噴射軸がその上下方向で容器80の仮想中心軸VCの周方向に沿って傾斜して配設される。また、第1の空気流路60は、空気の流れで視てその途中で屈曲して形成される。そのようにして、第1の空気流路60は、外部から取り込んだ空気をその下流側で分流し、その空気を焙煎室RSの容器80の内部に向けて複数箇所から噴射する。
なお、噴射口62にはマイクロ波の漏洩を抑制するための通気性のメッシュ部材(不図示)が被覆して張設される。
【0046】
送風部23は、前述の第1の空気流路60と、吸気ファン24と、空気圧縮部25と、を含んで構成される。
【0047】
吸気ファン24は、第1の空気流路60の上流側端部において取込口61に近接して配設される。吸気ファン24は回転駆動することで取込口61を通じて第1の空気流路60に強制的に空気を取り込む。吸気ファン24は、軸流型の小型ファンでありアウターロータ方のモータに羽根が取り付けられる。
【0048】
空気圧縮部25は、流れ方向で視て吸気ファン24の下流側かつ複数の噴射口62の上流側、すなわち吸気ファン24および複数の噴射口62の間に介装される。空気圧縮部25は、吸気ファン24によって強制的に取り込まれる外部の空気を圧縮してその圧縮の状態で複数の噴射口62に向けて空気を圧送する。その圧送により、複数の噴射口62のそれぞれから空気が勢いよく噴射される。その噴射により、送風部23は、焙煎室RSの上方から容器80の内部に向けて送風(空気を噴射)して、焙煎時に容器80の内部の生豆を攪拌したり、焙煎後にその生豆を冷却したりすることが可能となる。
【0049】
また、吸気ファン24および空気圧縮部25は、制御部11によって駆動制御される。その駆動制御方式として、たとえばその駆動の速度制御またはON/OFF制御などが例示される。そのため、送風部23はその駆動開始および駆動停止が制御され(駆動タイミング制御され)、所定の周期で容器80の内部に対し空気を噴射したりその噴射を停止したりすることが可能となる(後述参照)。
【0050】
そして、第2の空気流路70は、吸気口71および放出口72を有する。吸気口71が内側筐体部50に形成される開口である。放出口72が外側筐体部40に形成される開口である。
【0051】
吸気口71は、内側筐体部50の天壁51において、容器80が焙煎室RSに載置される状態でその容器80の上方かつその容器80の仮想中心軸VCと略同心に配置される。放出口72も同様に、外側筐体部40の天面41においてその仮想中心軸VCと略同心に配置される。そのようにして排出口および放出口72が設けられるため、第2の空気流路70は前述の仮想中心軸VCに沿って鉛直方向の延びて形成され、焙煎室RSの内部の空気を外部に向けて放出(排気)する。
【0052】
フィルタ部26は、前述の第2の空気流路70と、排気ファン27と、フィルタ担体28と、を含んで構成される。
【0053】
排気ファン27も同様に軸流型の小型ファンであり、第2の空気流路70の下流側端部において放出口72に近接して配設される。排気ファン27は回転駆動することで放出口72を通じて第2の空気流路70から強制的に空気を外部に放出する。フィルタ担体28は、流れ方向で視て放出口72の上流側かつ吸気口71の下流側、すなわち放出口72および排出口の間に介装される。フィルタ担体28は、複数のメッシュ(網目)素材(不図示)が積層して構成される。第2の空気流路70を流通する空気はフィルタ担体28を通過し、その際、その空気中の微細な粒子などがそのフィルタ担体28に捕捉され除去される。
【0054】
ここで、加熱部21による焙煎過程および送風部23による攪拌過程で、コーヒーの生豆の皮がチャフとして豆本体から剥離して発生する。このチャフは、焙煎室RSにおいて物理的な埃として空気中に流動し(舞い)、排気ファン27によって内部の空気が強制的に外部に排出される際に、第2の空気流路70を通過する過程でフィルタ担体28に捕捉され除去される。すなわち、本実施形態のフィルタ部26は、前述の加熱部21によって生豆が焙煎されたり前述の送風部23によってコーヒーの生豆が攪拌されたりする際に発生するチャフを捕捉する。
【0055】
[・容器の構造およびその内部の気流について]
図3を参照しながら、本実施形態の容器80の構造およびその内部で発生する空気の流れについて説明する。
図3は、
図1に示す容器80の内部で発生する気流の様子の一例を説明する模式図である。
【0056】
図3に示すように、容器80は、たとえばセラミック素材からなり、本体部81と、取手部84と、を含んで一体的に構成される。
【0057】
容器80の本体部81は、上側が開口する略お椀形状(半球状、ボール状)に形成されており、上方が開口する開口縁部82と、その内部で半球状またはラッパ状(筒状の一例)の内側周面83(内側壁面の一例)と、を有する。内側周面83はその本体部81の開口縁部82(上方、軸方向外方)に行くに従って水平方向外側に向かって傾斜して形成される。またそのとき、内側周面83は、その傾斜は上側に行くに従って漸近的に縮径して凹曲面状に形成される。また、本実施形態では、容器80の本体部81は、前述の焙煎室RSに載置された際にその開口縁がその天壁51に係合または近接して形成される。
【0058】
なお、本実施形態は、容器80の内面は全体的に半球状に形成されるが、底部に平坦面を有して形成されてもよい。また、容器80の内面はその内側周面83が筒状またはラッパ形状に形成されていればよく、その他、たとえば多角形状など種々の形状を適宜採用することが可能である。また、本実施形態では、本体部81の開口縁部82または開口縁は略円状に形成されるが、これに限定されず同様に種々の形状を採用することが可能である。
【0059】
取手部84は、長尺状に形成され、径方向外方に延在する。取手部84は、その基端部で容器80の本体部81に連結して固設される。使用者は、その取手部84をその手で把持して容器80を移動させることが可能である。
【0060】
容器80は、その本体部81の内部にコーヒーの生豆が収納され、その収納の状態で焙煎室RSに載置されて装置本体にセットされる。そして、加熱部21がその生豆をマイクロ波で加熱することで焙煎が進行する。その際には、前述のように、送風部23は、その複数の噴射口62のそれぞれを通じて空気を容器80の内部に向けて噴射する。本実施形態では、その噴射方向は、上下方向に沿って前述の仮想中心軸VCの周方向で傾斜して設定される。換言すれば、その噴射方向は、上側または下側に行くに従って周方向でオフセットするように(ずれるようにして)傾斜して設定される。その設定により、送風部23は、容器80の内側周面83に向けて送風する際にその周方向に沿って(より具体的には周方向斜めに)送風する。
【0061】
その結果、容器80の本体部81では、複数の噴射口62から容器80の内部に噴射される空気がその内側周面83に沿って周回(旋回)して本体部81の底部に向かう空気の渦(スパイラル状の気流)が発生する。そのとき、容器80の本体部81の底部ではその中心に向かう空気の流れが発生する。そして、その底部では空気が合流して上昇気流が発生し、その上昇気流は吸気口71に直接突入して第2の空気流路70に流通する。それにより、加熱による焙煎時の生豆の攪拌が均等かつ確実に実行される。すなわち、焙煎時の生豆の攪拌性をより一層高めることが可能となる。また、その流通の際には、フィルタ部26はそのフィルタ担体28でチャフを捕捉して除去して排気する。
【0062】
[・コーヒー豆焙煎装置の機能的構成について]
図4および
図5を参照しながら、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10の機能の一例について説明する。
図4は、
図1に示す装置本体の機能の一例を説明するブロック図である。
図5は、焙煎時に発生する爆ぜ音ES1,ES2の一例について説明する模式図である。
【0063】
コーヒー豆焙煎装置10の装置本体には、いわゆる汎用のミニコンピュータ(不図示)が内蔵される。ミニコンピュータは、ハードウェア構成として、CPU(不図示、Central Processing Unit)と、記憶装置(不図示)と、を少なくとも含んで構成される。
【0064】
CPUは、その中央演算装置として後述する各種の機能を実現するプログラムを実行する。それにより、CPUは、機能的にコンピュータ全体の制御部11として動作する。
【0065】
記憶装置は、プログラムが記憶保持されるだけではなく、CPUのワーキングメモリーとしても使用される。記憶装置は、たとえばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの種々の記憶装置を含んで構成される。ROMは、電源を切ってもプログラムおよびデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROMにはミニコンピュータの起動時に実行されるBIOS、OS設定などのプログラムやデータが格納される。RAMはプログラムおよびデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。また、本実施形態では、記録装置には、焙煎時における生豆の質量の変化と焙煎度の対応を示す対応マップが少なくとも記憶保持される。
【0066】
そのように、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10はハードウェア構成としてCPUおよび記憶装置を有し、CPUは種々のプログラムまたはデータ(情報)などを記憶装置から読み込んで実行することで各種機能が実現される。その結果、前述のコーヒーの生豆の焙煎(加熱)、送風、計量、音検出に関する各種処理が実行される。
【0067】
図4に示すように、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10は、そのCPUおよび記憶装置などのハードウェアの動作によって実現される機能として、制御部11を有する。さらに、装置本体は、装置のハードウェア構成として制御部11の制御対象とされる、操作部35と、検出部30と、駆動部20と、を含んで構成される。
【0068】
操作部35は、使用者によって選択操作された結果を制御部11に送信する。操作部35は、少なくとも焙煎度を選択可能に構成される。また、制御部11は、その選択結果に基づいて、その選択に対応する質量変化を記憶装置の対応マップから読み込み、その読み込んだ結果を質量閾値(つまり、質量目標値)として設定する。さらに、本実施形態では、その操作部35での焙煎度の選択によって、後述する第1回目の爆ぜ音ES1で焙煎を留めるのか、または第2回目の爆ぜ音ES2まで進行するまで焙煎を行うのか、を決定することが可能である。制御部11は、この選択によってどの程度まで焙煎を進行させるのかを、後述する爆ぜ音ES1,ES2の検出に基づいても実行する。
なお、操作部35の選択については、その他に、コーヒー豆の種類、焙煎時間、タイマーなどが選択可能に構成されてもよい。
【0069】
検出部30は、音検出部32と、計量部31と、を含んで構成され、制御部11にその検出結果を送信する。
【0070】
図5に示すように、音検出部32は、焙煎時に発生する爆ぜ音ES1,ES2の発生の有無を検出する。具体的には、音検出部32は、第1回目の爆ぜ音ES1および第2回目の爆ぜ音ES2のそれぞれに関しその発生時点ST1,ST2および終了時ET1,ET2のそれぞれを検出し、その検出結果を制御部11に都度送信する。当該検出結果に関する情報は、たとえば爆ぜ音ES1,ES2の発生の有無情報および時間情報(爆ぜ音ES1,ES2のそれぞれの発生期間なども含む)が関連付けられて送信される。そして、制御部11はその検出結果に基づいて発生回数を計数する。すなわち、本実施形態では、制御部11は、爆ぜ音ES1,ES2の発生回数を計数する計数部としても機能するように構成される。
【0071】
計量部31は、前述のように外側筐体部40の底部に配置され、焙煎時の容器80の生豆の質量変化を計測し、その計測結果を制御部11に常時(たとえば所定の周期(たとえば数msec)で)送信する。当該計測結果に関する情報は、質量変化情報および時間情報が(たとえば経時的な変化推移として)関連付けられて送信される。
【0072】
駆動部20は、加熱部21と、吸気ファン24と、空気圧縮部25と、排気ファン27と、を含んで構成され、制御部11によって駆動制御される。
【0073】
加熱部21は、前述のようにマグネトロン22を主に含んで構成され、そのマグネトロン22によってマイクロ波を励振して焙煎室RSにそのマイクロ波を放射する。その結果、容器80の生豆が直接加熱して焙煎が進行する。加熱部21は、制御部11によってその加熱部21の加熱時間の長短(加熱開始および加熱終了)が制御される。
【0074】
すなわち、本実施形態の場合、制御部11は、計量部31の計測結果および音検出部32の検出結果(計数結果)に基づいて加熱時間の長短を制御する。たとえば、所定の焙煎度が設定される際、制御部11は前述の対応マップに基づいてそれに対応する質量変化となる時点、つまり前述の質量閾値に到達するまで加熱を継続する。また、制御部11は、第2回目の爆ぜ音ES2の発生が完了する時点E2まで加熱部21にその加熱を少なくとも継続させる。
【0075】
吸気ファン24および空気圧縮部25は、前述の送風部23の少なくとも一部を構成する。吸気ファン24は、焙煎室RSに複数の箇所から噴射するための空気を外部から第1の空気流路60に取り込む。空気圧縮部25は、その取り込まれる空気を圧縮し複数の噴射口62のそれぞれに圧送して容器80の内部に向けて空気を複数箇所から勢いよく送る。吸気ファン24および空気圧縮部25は、制御部11によってその動作開始または動作停止するタイミングが一体的に制御される。そのため、制御部11は、吸気ファン24および空気圧縮部25を含む送風部23の動作開始および動作停止のタイミングを適応的に制御する。それにより、制御部11は、第1の空気流路60の噴射口62から周期的または断続的に容器80に内部に空気を噴射(送る)ことが可能となる。
【0076】
本実施形態の場合、焙煎過程において第1回目の爆ぜ音ES1が発生する期間内では、制御部11は送風部23を第1の周期(たとえば生豆200gの場合、15秒に1回の頻度)で間欠的に動作させる。また、第2回目以降の爆ぜ音ES2が発生する期間内では、制御部11は送風部23を第1の周期よりも短い第2の周期(たとえば生豆200gの場合、10秒に1回の頻度)で間欠的に動作させる。
【0077】
なお、本実施形態では、噴射1回あたりの噴射時間(噴射期間)は数秒~十数秒とその次の噴射時間(間欠時間)に比較して短時間(瞬間的にでもよい)で設定されるが、これに限定されない。その期間は生豆の攪拌性を考慮して適宜調整される。また、ここでいう“間欠時間”とは噴射終了の時間と次の噴射開始の時間との間を示す。そして、周期とはその噴射開始の時間と次の噴射開始の時間、またはその噴射終了の時間と次の噴射終了の時間によって規定される。
【0078】
また、焙煎完了後、つまり加熱部21による生豆の加熱が終了したと判定される場合、制御部11は送風部23の動作開始または動作継続させて、焙煎された生豆を冷却する。
【0079】
排気ファン27は、前述のフィルタ部26の一部として構成される。排気ファン27は、回転駆動することで放出口72を通じて第2の空気流路70から強制的に空気を外部に放出する。そして、その放出の際、焙煎室RSの内部の空気が第2の空気流路70を流通しその途中でフィルタ担体28を通過する。そのときに空気中に含まれるチャフなどがそのフィルタ担体28によって捕捉され除去される。排気ファン27は、制御部11によって焙煎時、すなわち加熱部21が稼働している間は少なくとも駆動制御される。また、排気ファン27は、冷却時においても稼働するように構成されてもよい。
【0080】
[・制御部の動作フローについて]
図6を参照しながら、制御部11の動作フローについて説明する。
図6は、
図1に示す装置が実行する動作フローの一例を説明するフロー図である。
【0081】
まず、使用者は、前述の容器80にコーヒーの生豆を収容する前(収容ステップの前)にアルカリ電解水を用いて生豆を洗浄する(すなわち、洗浄ステップ)。その洗浄ステップにおいて生豆の洗浄をアルカリ電解水で洗浄および除菌を行うと、そのコーヒーについてクリアな口当たりにすることが可能となる。また、コーヒーの味は洗浄時間によって異なるため、その味を洗浄時間によって調整することが可能となる。
【0082】
そして、
図6に示すように、使用者は、前述の容器80にコーヒーの生豆を収納しその収納の状態で焙煎室RSに容器80を載置して開閉扉45を閉める。次に使用者は、操作部35の操作ボタン37を選択操作して焙煎度などを設定する(S1)。このとき、本実施形態では、焙煎度の設定は、第1回目の爆ぜ音ES1または第2回目の爆ぜ音ES2のどちらの発生まで加熱を実行するのか、さらに生豆の質量変化がどれぐらいになれば加熱を停止するのか、によって実行される。前述のように装置本体の記憶装置には、焙煎度および質量変化の対応関係を示す対応マップが記憶保持される。制御部11は当該対応マップを参照して使用者によって選択された焙煎度に対応する質量変化を質量閾値として設定する。
【0083】
またその使用者による操作および設定を受け、制御部11は、加熱部21と、送風部23と、計量部31と、音検出部32と、を一同に駆動制御して装置本体の動作を開始する(S2)。その制御により、加熱部21は、焙煎室RSの容器80の生豆を加熱する。送風部23は、容器80の内部に向けて送風をして攪拌開始するか、あるいは制御部11からの駆動開始の指示を待つ(待機状態)。また、計量部31は、焙煎に伴う容器80の生豆の質量変化を計測するのを開始する。音検出部32は、焙煎による爆ぜ音ES1,ES2の発生の有無を検出するのを開始する。
【0084】
ここで、焙煎が進行すると第1回目の爆ぜ音ES1が発生する。音検出部32はその第1回目の爆ぜ音ES1を検出しその検出結果を制御部11に送信する(S3)。その検出結果に基づいて、制御部11は第1回目の爆ぜ音ES1が発生する期間内(
図5参照)では送風部23を第1の周期で間欠的(断続的)に動作(開始動作および停止動作)させることで送風により生豆を攪拌する(S4)。
【0085】
その攪拌後、制御部11は、前述の使用者の焙煎設定、具体的には第1回目の爆ぜ音ES1の発生で加熱を終了するか(設定焙煎A)、あるいは第2回目の爆ぜ音ES2の発生まで加熱を実行する(設定焙煎B)か否かを判定する(S5)。その設定焙煎Aであると判定される場合(S5のA)、動作フローは、ステップS8に進む。その一方、第2回目の爆ぜ音ES2の発生まで加熱を実行すると焙煎設定される場合(S5のB)、制御部11は、加熱を継続する。
【0086】
なお、本実施形態では、当該ステップS5は、ステップS4の直後の工程に設定されるが、これに限定されない。その焙煎度の設定に応じて、たとえばステップS3の直後の工程に設定されてもよく、また当該ステップS5は複数設定されてもよい。当該ステップS5は、実施の態様に対応して、すなわち焙煎度の細かな設定(焙煎度の精度)に応じて任意にその工程の場所およびその数が設定される。
【0087】
その第1回目の爆ぜ音ES1が止まり次に第2回目の爆ぜ音ES2が発生する。音検出部32はその第2回目の爆ぜ音ES2を検出し検出結果を制御部11に送信する(S6)。その結果に基づいて、次に制御部11は第2回目の爆ぜ音ES2が発生する期間内では送風部23を、前述の第1の周期よりも短い第2の周期で間欠的に動作させる(S7)。そのようにして第1回目の爆ぜ音ES1および第2回目の爆ぜ音ES2のそれぞれが発生する期間内で互いに異なる周期で送風するため、焙煎の進行に対応して適応的に生豆を攪拌することが可能となる。
【0088】
加熱部21の継続的加熱によって焙煎がさらに進行すると、生豆の質量は減少して行く。計量部31は継続的に生豆の質量変化を計測しており、その計測結果を制御部11に常時(所定の周期で)送信する。制御部11は、その計測結果が質量閾値(質量目標値、設定質量変化)に到達したか否かを判定する(S8)。
【0089】
その判定の結果、質量閾値に到達していないと判定される場合(S8のNO)、動作フローは再度ステップS8に戻る。つまり、質量閾値に到達しない限り、動作フローはステップS8を繰り返して実行する。質量閾値に到達したと判定される場合(S8のYES)、制御部11は、焙煎完了と判定し、加熱部21と、計量部31と、音検出部32と、の動作を終了する(S9)。
【0090】
その一方、制御部11は焙煎完了後も送風部23を動作させて送風状態を維持する。それにより、制御部11は、焙煎過程で加熱された生豆を冷却してそれ以上焙煎が進行しないように抑制する(S10)。冷却が完了したと推定される所定期間後に、制御部11は送風部23の動作を停止し送風を止める(S11)。
【0091】
[・本実施形態の特徴および利点について]
以上説明したように、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、コーヒーの生豆をその内部で収納する容器80が載置される焙煎室RS(空間の一例)と、容器80の内部の生豆を加熱して焙煎する加熱部21と、加熱部21によって焙煎される生豆の重量の変化を計測する計量部31と、焙煎室RSの上方から容器80の内部に向けて送風して容器80の内部の生豆を攪拌する送風部23と、を含む。
【0092】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎方法によれば、容器80を用いてコーヒーの生豆をその内部で収納する収容ステップと、焙煎室RS(所定の空間の一例)に容器80を載置する載置ステップと、容器80の内部の生豆を加熱して焙煎する加熱ステップと、加熱ステップによって焙煎される生豆の重量の変化を計測する計量ステップと、空間の上方から容器80の内部に向けて送風して容器80の内部の生豆を攪拌する送風ステップと、加熱ステップによって生豆が焙煎されたり送風ステップによって生豆が攪拌されたりする際に発生するチャフを捕捉する捕捉ステップと、を含む。
【0093】
このため、計量部31または計量ステップによる質量変化に基づいて焙煎度を把握または推定し、その質量変化の度合いによって加熱時間を管理(調整、制御)する。また、それと同時に上方から容器80の内部の生豆に向けて送風することにより、容器80の内部の生豆をその内部で上下運動させながら攪拌する。これにより、焙煎むらの発生を抑制しながら使用者の目的の味に対応する(適する)焙煎度を手軽に実現することができる。すなわち、従前では専門家(たとえば焙煎士)でしかできなかったとされた本格的な焙煎が、たとえば家庭などにおいても容易に再現することができる。
【0094】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、容器80を含んで構成される。容器80は上側が開口して形成される。容器80の内側周面83(内側壁面の一例)の少なくとも一部は、上方に行くに従って水平方向外側に向かって傾斜して形成される。
【0095】
このため、容器80の内側周面83(内側壁面の一例)は上方に向けて開いて傾斜して形成されるため、上方から吹き付けられる空気(熱風または冷風など)はその内側周面83に沿って流れる。これにより、容器80の内部において、その内側周面83に沿って流れる空気は容器80の底部で反射して(跳ね返って)上昇して流れる。そのようにして、上下方向に沿った気流(対流も含む)が発生して生豆の攪拌性を高めることができる。
【0096】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、焙煎室RS(空間の一例)は、その上側が天壁51によって画成される。送風部23の噴射口62(送風口の一例)は、天壁51に配設される。容器80は、焙煎室RSに載置された際にその開口縁が天壁51に係合または近接するように形成される。
【0097】
このため、容器80の内部で発生する空気の流れ(対流も含む)において、空間の天壁51との隙間から空気が流出するのを抑制して循環効率または対流効率を高めることができる。これにより、生豆の攪拌性をさらに向上させることができる。また、生豆を攪拌時または冷却時において容器80の外に飛び出すのも合わせて防止することができる。
【0098】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、加熱部21によって生豆が焙煎されたり送風部23によって生豆が攪拌されたりする際に発生するチャフを捕捉するフィルタ部26をさらに含む。容器80の内側周壁(内側壁面の一例)が全体的に筒状に形成される。フィルタ部26は、その吸気口71が、容器80が焙煎室RS(空間の一例)に載置された状態で容器80の上方にかつ鉛直方向に延びる容器80の仮想中心軸VCを通過して配置され、吸気口71を通じて容器80の内部から空気を吸気する。送風部23は、その噴射口62(送風口の一例)が、容器80が焙煎室RSに載置された状態で容器80の上方にかつ容器80の仮想中心軸VCを外れて配設され、噴射口62を通じて容器80の内側周面83(内側壁面の一例)に向けて送風する。
【0099】
このため、送風部23の噴射口62(送風口の一例)は、空間に載置された状態の容器80の仮想中心軸VCを外れて配置され、容器80の内側周面83(内側壁面の一例)に向けて送風する。これにより、容器80の内部の循環効率または対流効率をより高めて生豆の攪拌性をより一層向上させることができる。また、フィルタ部26の吸気口71は、容器80の上方、かつ容器80の仮想中心軸VC上を通過して配置されるため、攪拌に伴って発生するチャフをその循環または対流の中心で効率的に捕捉することができる。
【0100】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、送風部23は、容器80の内側周面83(内側壁面の一例)に対しその周方向に沿って送風する。
【0101】
このため、容器80の内側が筒状に形成されており、そして送風部23が容器80の内側周面83(内側壁面の一例)の周方向に沿って送風するため、渦巻き状(スパイラル状)の気流が発生する。これにより、焙煎時または冷却時における生豆の攪拌効率を高めることができる。
【0102】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、加熱部21の加熱時間の長短を制御する制御部11をさらに含む。制御部11は、計量部31の計測結果に基づいて、加熱時間を制御する。
【0103】
このため、焙煎度を計量部31による計量結果、すなわちその質量変化を検出し、その質量変化の度合いによって加熱時間の長短を制御する。これにより、その目的の味に対応する(適する)焙煎を手軽に実現することができる。
【0104】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、生豆が加熱部21によって加熱されることによって、生豆が所定期間連続的に爆裂することで発せられる爆ぜ音ES1,ES2が間欠的に発生しており、爆ぜ音ES1,ES2の発生の有無の検出する音検出部32を含む。また、制御部11(計数部の一例)は、音検出部32の検出結果に基づいて爆ぜ音ES1,ES2の発生回数を計数する。制御部11は、その計数結果および計量部31の計測結果に基づいて、加熱時間を制御する。
【0105】
このため、生豆の種類によって爆ぜ温度が異なるため、その爆ぜ初めを検出することによって、その生豆の種類に応じた適切な焙煎を実現することができる。
【0106】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、制御部11は、送風部23が動作開始または動作停止するタイミングも合わせて制御する。制御部11は、第1回目の爆ぜ音ES1が発生する期間内では送風部23を第1の周期で間欠的に動作させ、第2回目以降の爆ぜ音ES2が発生する期間内では送風部23を、第1の周期よりも短い第2の周期で間欠的に動作させる。
【0107】
このため、過度に焙煎が進行しないように制御するため、より適応的に目的に合う焙煎度を効率良く実現することができる。
【0108】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、制御部11は、送風部23が動作開始または動作停止するタイミングを制御する(「前記送風部23が動作開始または動作停止するタイミングを制御する制御部11をさらに含み」の一例)。制御部11は、加熱部21による生豆の加熱が終了したと判定される場合、送風部23を動作開始または動作継続させる。
【0109】
このため、焙煎完了の際、その後に焙煎が過度に進行しないように冷却送風するため、より一層適応的に目的に合う焙煎度を効率良く実現することができる。
【0110】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎装置10によれば、コーヒーの生豆を加熱して焙煎する加熱部21と、加熱部21によって焙煎される生豆の重量の変化を計測する計量部31と、生豆が加熱部21によって加熱されることによって生豆が所定期間連続的に爆裂することで間欠的に発生する爆ぜ音ES1,ES2に対し、爆ぜ音ES1,ES2の発生の有無を検出する音検出部32と、加熱部21の加熱時間の長短を制御する制御部11と、を含む。制御部11は、計量部31の計測結果および音検出部32の検出結果に基づいて、加熱時間を制御する。
【0111】
また、本実施形態のコーヒー豆焙煎方法によれば、コーヒーの生豆を加熱して焙煎する加熱ステップと、加熱ステップで焙煎される生豆の重量の変化を計測する計量ステップと、生豆が加熱ステップで加熱されることによって生豆が所定期間連続的に爆裂することで間欠的に発生する爆ぜ音ES1、ES2に対し、爆ぜ音ES1、ES2の発生の有無を検出する音検出ステップと、を含む。加熱ステップでの加熱時間の長短について、計量ステップでの計測結果および音検出ステップでの検出結果に基づいて、加熱時間を調整する。
【0112】
このため、計量部31または計量ステップによる質量変化に基づいて焙煎度を把握または推定し、その質量変化の度合いによって加熱時間を管理(調整)する。またそれと同時に、音検出部32または音検出ステップによる爆ぜ音ES1、ES2の発生の有無を検出する。生豆の種類によって爆ぜ温度および爆ぜ音ES1、ES2が異なるため、加熱と同時にその爆ぜ初めを音の発生の有無によって検出することによって、その生豆の種類に応じた適切な焙煎を実現することができる。さらに、爆ぜ音ES1、ES2の発生回数および発生周波数はその焙煎の程度に応じて変化する。そのため、爆ぜ音ES1、ES2の発生の有無の検出結果に基づいて、その加熱時間の長短を制御することで過度に焙煎が進行しないように抑制して、適応的に目的に合う焙煎度を効率良く実現することができる。これにより、焙煎を適応的に実現して、使用者の目的の味に対応する(適する)焙煎度を手軽に実現することができる。すなわち、従前では専門家(たとえば焙煎士)でしかできなかったとされた本格的な焙煎が、たとえば家庭などにおいても容易に再現することができる。
なお、さらに本実施形態では、前述のように制御部11(計数部の一例)は爆ぜ音ES1、ES2の発生回数を計数してその計数結果も合わせて前述の加熱時間の長短を制御可能に構成される。この場合、さらに精度よく、適応的に目的に合う焙煎度を実現することができる。
【0113】
[・本実施形態に係る第1変形例について]
図7に基づいて、本実施形態に係るコーヒー豆焙煎装置10の第1変形例について説明する。
図7は、本実施形態に係る第1変形例での容器80の内部で発生する気流の様子の一例を説明する模式図である。
【0114】
図7に示すように、本変形例は、第1の空気流路60の噴射口62は、本実施形態とは異なり噴射軸が上方方向に略一致するように形成(設定)される。そのため、空気は複数の下降気流として複数の噴射口62のそれぞれから噴射され、容器80の内側周面83に沿ってそれぞれ直行して下降し底部に衝突して反射する。その反射の際、容器80の底部の中心で複数の下降気流は合流して上昇気流となって第2の空気流路70の取込口61に直接突入する。
【0115】
この場合、容器80の本体部81では複数の下降気流および上昇気流によって対流が発生する。その対流の発生により、焙煎時の攪拌性を高めて焙煎むらの発生を抑制することができる。
【0116】
また、本変形例では、容器80の底内壁部には、上方に向けて延出する突出部85が配設される。突出部85は、単一に設けられ略円錐状に形成される。具体的には、突出部85は、予め規定される外径および高さ寸法でもってその先端が所定の丸みを有した角形状に形成される。また、その周面はその上方に沿って漸近的な凹曲面に形成される。
【0117】
この場合、その突出部85の存在によって送風時の容器80の内部の攪拌性を高めることができる。
【0118】
[・本実施形態に係る第2の変形例について]
本実施形態に係るコーヒー豆焙煎装置10の第2変形例について説明する。
【0119】
本変形例では、加熱部21の加熱方式がマイクロ波方式ではなく、電磁誘導加熱方式とされる。また、容器80は電磁誘導加熱対応の素材を含んで設けられる。
【0120】
この場合には電磁誘導加熱方式でコーヒーの生豆を焙煎するので、従来の熱風方式または燃焼方式などと比較して、エネルギー効率良く加熱して焙煎時間を短縮することができる。また、生豆を直接加熱するのではなく、容器80を加熱する方式であるため、送風部23との相乗効果によって攪拌性をより高めることができる。
【0121】
[・本実施形態に係る第3変形例について]
本実施形態に係るコーヒー豆焙煎装置10の第3変形例について説明する。
【0122】
本変形例では、下側スペースS2には昇降機構(不図示)が内側筐体部50の底壁52に近接して配設される。昇降機構は、開閉扉45の閉塞動作に連動して内側筐体部50の底壁52を上昇(リフトアップ)可能に構成される。
【0123】
そのため、容器80が焙煎室RSに載置され開閉扉45が閉じられる際、その昇降機構は底壁52をリフトアップすることで容器80の開口縁部82を内側筐体部50の天壁51に対し当接または近接して配置する。
【0124】
<さいごに>
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
たとえば、前述の実施形態では、送風部の送風によってコーヒーの生豆を攪拌するが、これに代えて、容器の本体を加振して(振動させて)その内部の生豆を攪拌可能に構成してもよい。
また、本発明に係る装置を使用して、コーヒー以外の生豆の焙煎にも適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、たとえば家庭または店舗などにおいて、焙煎むらの発生を抑制しながら使用者の目的の味に対応する(適する)焙煎度を手軽に実現することができるコーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎方法として有用である。
【符号の説明】
【0126】
10 :コーヒー豆焙煎装置
11 :制御部
20 :駆動部
21 :加熱部
22 :マグネトロン
23 :送風部
24 :吸気ファン
25 :空気圧縮部
26 :フィルタ部
27 :排気ファン
28 :フィルタ担体
30 :検出部
31 :計量部
32 :音検出部
33 :コンデンサマイク
35 :操作部
36 :操作パネル
37 :操作ボタン
40 :外側筐体部
41 :天面
42 :底面
43 :側面
44 :背面
45 :開閉扉
46 :ガラス
50 :内側筐体部
51 :天壁
52 :底壁
53 :側壁
54 :後壁
55 :透過穴
60 :第1の空気流路
61 :取込口
62 :噴射口
70 :第2の空気流路
71 :吸気口
72 :放出口
80 :容器
81 :本体部
82 :開口縁部
83 :内側周面
84 :取手部
85 :突出部
ES1 :爆ぜ音
ES2 :爆ぜ音
RS :焙煎室
S1 :上側スペース
S2 :下側スペース
S3 :左側スペース
S4 :右側スペース
ST1 :発生時点
ST2 :発生時点
ET1 :終了時
ET2 :終了時
VC :仮想中心軸
【要約】
【課題】たとえば家庭または店舗などにおいて、焙煎むらの発生を抑制しながら使用者の目的の味に対応する(適する)焙煎度を手軽に実現することができるコーヒー豆焙煎装置およびコーヒー豆焙煎方法を提供する。
【解決手段】本開示のコーヒー豆焙煎装置10は、コーヒーの生豆をその内部で収納する容器80が載置される焙煎室RSと、容器80の内部の生豆を加熱して焙煎する加熱部21と、加熱部21によって焙煎される生豆の重量の変化を計測する計量部31と、焙煎室RSの上方から容器80の内部に向けて送風して容器80の内部の生豆を攪拌する送風部23と、加熱部21によって生豆が焙煎されたり送風部23によって生豆が攪拌されたりする際に発生するチャフを捕捉するフィルタ部26と、を含む。
【選択図】
図2