IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 根上工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-中空粒子及びその製造方法 図1
  • 特許-中空粒子及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】中空粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/14 20060101AFI20240627BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240627BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240627BHJP
   C08G 18/74 20060101ALI20240627BHJP
   C08G 18/78 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B01J13/14
C08G18/00 A
C08G18/73
C08G18/74
C08G18/78
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024511380
(86)(22)【出願日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2023004941
(87)【国際公開番号】W WO2023188897
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2022055547
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028048
【氏名又は名称】根上工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慶
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康平
(72)【発明者】
【氏名】小川 幸大
(72)【発明者】
【氏名】辰田 咲奈
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181988(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/035382(WO,A1)
【文献】特開2005-041948(JP,A)
【文献】特許第6924533(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/02- 13/22
C08G 18/00- 71/04
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン結合及びウレア結合のうち少なくともウレア結合を有するポリマーによって形成された外殻部と、前記外殻部に内包された中空部を備えた中空粒子であり、
前記ポリマーは、イソシアネート成分と、水及びポリオールのうち少なくとも水との反応生成物であり、
前記イソシアネート成分は、自己乳化型イソシアネート及び非自己乳化型イソシアネートのうち、少なくとも自己乳化型イソシアネートを含む、中空粒子。
【請求項2】
前記自己乳化型イソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートの少なくとも一方から形成された、3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートであり、
前記ポリイソシアネートは、分子中に、ビュウレット構造、イソシアヌレート構造、又はアダクト構造を備え、親水基をさらに有する、請求項1に記載の中空粒子。
【請求項3】
前記イソシアネート成分の総質量のうち、前記自己乳化型イソシアネートの割合は、10~100質量%である、請求項2に記載の中空粒子。
【請求項4】
平均粒子径が0.1~300μmである、請求項3に記載の中空粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の中空粒子を製造する方法であって、
前記イソシアネート成分と、水と、有機溶剤とを含む混合液を攪拌しながら加熱し、前記イソシアネート成分を懸濁重合して前記外殻部を形成することにより、前記外殻部に内包された前記水及び前記有機溶剤を有する樹脂粒子を含むスラリーを得る工程と、
前記スラリーを加熱し、前記樹脂粒子から前記有機溶剤を除去する工程を有する、中空粒子の製造方法(但し、前記混合液の総質量から水を除いた基準質量に対して、キシレンを30質量%以上含む場合と、水酸基価20mgKOH未満のポリオールを1質量%以上含む場合を除く)。
【請求項6】
前記混合液に含まれる前記有機溶剤の質量(M1)と、前記混合液に含まれる前記イソシアネート成分の総質量(M2)との比(M2/M1)が、0.6~4.0である、請求項5に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項7】
前記スラリーを加熱する温度が100℃以下である、請求項6に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶剤が、トルエン、メチルエチルケトン、又は酢酸エチルである、請求項7に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項9】
前記混合液に含まれる前記有機溶剤の質量(M1)と、前記混合液に含まれる前記水の質量(M3)との比(M3/M1)が、2.0~6.0である、請求項8に記載の中空粒子の製造方法。
【請求項10】
前記混合液に含まれる前記イソシアネート成分は、前記非自己乳化型イソシアネートを含み、
前記混合液に含まれる前記非自己乳化型イソシアネートの質量(M4)と、前記混合液に含まれる前記自己乳化型イソシアネートの質量(M5)との比(M5/M4)が、1.0~10.0である、請求項9に記載の中空粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子及びその製造方法に関する。本願は、2022年3月30日に、日本に出願された特願2022-055547号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に空間が形成された中空粒子が、様々な分野で利用されている。中空粒子は、樹脂で形成された外殻の中に気体が閉じ込められた粒子であるため、熱及び振動が伝達されにくい、光を拡散しやすい、軽量である等の性質を有する。これらの性質を利用して、断熱材、防音材、光拡散材、軽量化剤等の用途に利用されている。
【0003】
特許文献1、2には、ウレタン又はウレア結合を有する有機ポリマーで形成されたシェル部を有する中空粒子の製造方法が記載されている。これらの中空粒子には、ウレタン系樹脂、尿素樹脂等の有機系樹脂材料に対する親和性が良く、有機系樹脂材料に添加して撹拌等の処理を経てもシェルのひび割れが生じにくく中空構造を安定に維持することが期待される。また、環境や人体に対する影響が少ないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6924533号公報
【文献】国際公開第2019/181988号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の中空粒子の製造において、シェル部の原料であるイソシアネート化合物として親油性のポリメリックMDIを用いている。中空粒子の形成には水中での懸濁重合が必要であるため、イソシアネートを乳化するためにアクリル系高分子型界面活性剤が大量に添加される。これらの原料由来の色によって中空粒子が着色してしまい、化粧料や光拡散材等の用途への展開が難しくなる懸念がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の中空粒子の製造において、油相中のイソシアネートを油水界面に移動させ、中空構造の形成を促進させるために、沸点が150℃以上の化合物(具体的には沸点175℃のリモネン)を反応液に配合している。この高沸点化合物は、反応液中で形成された中空粒子の中空部に内包されているので、目的の中空粒子を得るために、200℃程度に加熱して中空部から除去する必要がある。しかしながら、このような高温加熱処理は、シェル部を構成するウレタン樹脂の劣化を引き起こす懸念がある。樹脂性能が劣化してしまうと、各種用途の材料に配合された際の分散性や中空構造の耐久性が悪化する恐れがある。
【0007】
本発明は、イソシアネートの自己乳化性を活かして容易に中空構造を形成することが可能な中空粒子の製造方法と、自己乳化型イソシアネートを原料とする中空粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] ウレタン結合及びウレア結合のうち少なくともウレア結合を有するポリマーによって形成された外殻部と、前記外殻部に内包された中空部を備えた中空粒子であり、前記ポリマーは、イソシアネート成分と、水及びポリオールのうち少なくとも水との反応生成物であり、前記イソシアネート成分は、自己乳化型イソシアネート及び非自己乳化型イソシアネートのうち、少なくとも自己乳化型イソシアネートを含む、中空粒子。
[2] 前記自己乳化型イソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートの少なくとも一方から形成された、3つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートであり、前記ポリイソシアネートは、分子中に、ビュウレット構造、イソシアヌレート構造、又はアダクト構造を備え、親水基をさらに有する、[1]に記載の中空粒子。
[3] 前記イソシアネート成分の総質量のうち、前記自己乳化型イソシアネートの割合は、10~100質量%である、[1]又は[2]に記載の中空粒子。
[4] 平均粒子径が0.1~300μmである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の中空粒子。
[5] [1]~[4]のいずれか一項に記載の中空粒子を製造する方法であって、前記イソシアネート成分と、水と、有機溶剤とを含む混合液を攪拌しながら加熱し、前記イソシアネート成分を懸濁重合して前記外殻部を形成することにより、前記外殻部に内包された前記水及び前記有機溶剤を有する樹脂粒子を含むスラリーを得る工程と、前記スラリーを加熱し、前記樹脂粒子から前記有機溶剤を除去する工程を有する、中空粒子の製造方法(但し、前記混合液の総質量から水を除いた基準質量に対して、キシレンを30質量%以上含む場合と、水酸基価20mgKOH未満のポリオールを1質量%以上含む場合を除く)。
[6] 前記混合液に含まれる前記有機溶剤の質量(M1)と、前記混合液に含まれる前記イソシアネート成分の総質量(M2)との比(M2/M1)が、0.6~4.0である、[5]に記載の中空粒子の製造方法。
[7] 前記スラリーを加熱する温度が100℃以下である、[5]又は[6]に記載の中空粒子の製造方法。
[8] 前記有機溶剤が、トルエン、メチルエチルケトン、又は酢酸エチルである、[5]~[7]のいずれか一項に記載の中空粒子の製造方法。
[9] 前記混合液に含まれる前記有機溶剤の質量(M1)と、前記混合液に含まれる前記水の質量(M3)との比(M3/M1)が、2.0~6.0である、[5]~[8]のいずれか一項に記載の中空粒子の製造方法。
[10] 前記混合液に含まれる前記イソシアネート成分は、前記非自己乳化型イソシアネートを含み、前記混合液に含まれる前記非自己乳化型イソシアネートの質量(M4)と、前記混合液に含まれる前記自己乳化型イソシアネートの質量(M5)との比(M5/M4)が、1.0~10.0である、[5]~[9]のいずれか一項に記載の中空粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の中空粒子の製造方法によれば、自己乳化型イソシアネートを用いているので反応液中にイソシアネートを乳化するために大量の界面活性剤を添加する必要がないだけでなく、容易に中空粒子を形成することができる。また、反応液中で形成した中空粒子の中空部に内包された有機溶剤として、高沸点化合物を使用する必要もないので、高温で加熱乾燥せずとも中空粒子に内包された有機溶剤を容易に除去することができ、目的の中空粒子の高温加熱による劣化の懸念がない。さらに、着色を引き起こす原料を使用する必要もないので、中空粒子を脱色する工程も不要になる。
本発明の中空粒子にあっては、原料がシンプルであるため、外殻部を構成するウレタン結合またはウレア結合を有するポリマーの本来の特性が充分に発揮される。この結果、各種用途の材料に配合された際の分散性や中空構造の耐久性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で製造した中空粒子のSEM像である。
図2】実施例1で製造した中空粒子のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における「水酸基価」は、試料中の水酸基をアセチル化して、そのアセチル化に使用した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの量を、前記試料1.0gに対するmg数で表したものである。つまり、水酸基価は試料中の水酸基の含有量を示す尺度となる。水酸基価は、JIS K 0070:1992に規定されている中和滴定法を用いて測定される。
本発明における「平均粒子径」は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、島津製作所製SALD2100)を用いて測定した体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)のことである。
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態だけに限定されるものではない。
【0012】
≪中空粒子≫
本発明の第一態様は、ウレタン結合及びウレア結合のうち少なくともウレア結合を有するポリマーによって形成された外殻部と、前記外殻部に内包された中空部を備えた中空粒子である。中空部には空気等の気体が含まれており、通常の乾燥した状態であれば水分等の液体は実質的に含まれない。中空粒子の全体が視野に入る倍率で中空粒子を電子顕微鏡で観察すると、外殻部の表面は基本的には滑らかであり、外殻部を貫通して中空部と外部とを連通する貫通孔や多孔質構造は存在しない。中空粒子の中空部は単一の空間であることが多いが、数個に分かれた空間であってもよい。これらの構造を有する中空粒子は多孔質粒子とは完全に区別される。
【0013】
前記ポリマーは、イソシアネート成分と、水及びポリオールのうち少なくとも水との反応生成物である。通常、水とイソシアネートが反応するとウレア結合が形成され、ポリオールとイソシアネートが反応するとウレタン結合が形成される。
本明細書において、ポリウレタン結合またはポリウレア結合を有するポリマーをポリウレタンポリウレアと総称することがある。
前記イソシアネート成分は、自己乳化型イソシアネート及び非自己乳化型イソシアネートのうち、少なくとも自己乳化型イソシアネートを含む。
【0014】
<イソシアネート成分>
[自己乳化型イソシアネート]
自己乳化型イソシアネートは、水中に添加し、攪拌した際に、水中で微粒子として分散することが可能なイソシアネート化合物である。一つの実施形態として、自己乳化型イソシアネート1gを20℃のイオン交換水100gに添加し、穏やかに攪拌すると、沈降して油溜まり若しくは油滴を形成せず、水中で分散された状態となるイソシアネート化合物が挙げられる。
具体的には、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートの少なくとも一方から形成され、分子内にビュウレット、イソシアヌレート、アダクトよりなる群からなるいずれか1つの構造を有するポリイソシアネートポリマーに、親水基(例えば、ヒドロキシ基、オキシアルキレン基、カルボキシ基等)が導入された化合物であることが好ましい。ここで、イソシアネート基は親水基に該当しないものとする。また、自己乳化イソシアネートが水酸基を複数有する場合にも、後述のポリオールに該当しないものとする。
【0015】
上記構造のうちビュウレット構造、イソシアヌレート構造は、ジイソシアネート(分子内に2つのイソシアネート基を有するイソシアネート)が3量体となることによって形成される。イソシアヌレート構造を有する3量体を「ヌレート体」と呼ぶことがある。また、アダクト構造は、例えば、ジイソシアネートと、分子内に3つ以上の活性水素基を有する化合物(例えば、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール)とが付加することによって形成される。
【0016】
自己乳化型イソシアネートとしては特に制限なく、公知のものを使用することができる。自己乳化型イソシアネートの具体例としては、バーノック DNW-5500,DNW-6000(DIC株式会社)、Basonat HW1000,HW180PC,LR9056,LR9080(BASF)、タケネート WD-720,WD-725,WD-730,WB-700,WB-820,WB-920(三井化学株式会社)、デュラネート WB40-100,WB40-80D,WT20-100,WT30-100,WE50-100(旭化成ケミカルズ株式会社)、バイヒジュール 3100,304,305,XP2451/1,XP2487/1、XP2547,XP2655,XP2700,DN,DA-L,401-70(住化バイエルウレタン株式会社)等が挙げられる。
自己乳化型イソシアネートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
[非自己乳化型イソシアネート]
イソシアネート成分には、自己乳化型イソシアネート以外のイソシアネート、すなわち非自己乳化型イソシアネートが含まれていてもよい。非自己乳化型イソシアネートを含むと、中空粒子の平均粒子径が大きくなる傾向がある。
非自己乳化型イソシアネートは、自己乳化型ではないイソシアネートである。第一実施形態として、水中に添加し、攪拌した際に、水中で微粒子として分散することが実質的に不可能なイソシアネート化合物が挙げられる。第二実施形態として、非自己乳化型イソシアネート1gを20℃のイオン交換水100gに添加し、穏やかに攪拌すると、数秒~数分のうちに、沈降して油溜まり若しくは油滴を形成するイソシアネート化合物が挙げられる。
非自己乳化型イソシアネートはイソシアネート基を2つ以上有する多官能イソシアネートであることが好ましい。
非自己乳化型イソシアネートとしては特に制限なく、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、これらのイソシアネートモノマーから形成された変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアネート-1-1-メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o-、m-若しくはp-キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
芳香族イソシアネートとしては、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4、4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、m-若しくはp-フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ナフタリン-1、5-ジイソシアネート、ジフェニルー4,4’-ジイソシアネート、3、3’-ジメチルジフェニル-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネートカーボジイミド変性ジフェニルメタジイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンイソシアネート又はジフェニルエーテルジイソシアネート等のイソシアネートモノマー類が挙げられる。
【0020】
変性ポリイソシアネートとしては、例えば、過剰のイソシアネートモノマーの1種単独若しくは2種以上を、各種の多価アルコール等のポリヒドロキシ化合物と反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート、イソシアネートモノマーを重合させることによって得られる、イソシアヌレート環を含んだポリイソシアネート、イソシアネートモノマーと水と反応させて得られる、ビュレット結合を含んだポリイソシアネート等が挙げられる。
【0021】
イソシアネート成分の総質量のうち、自己乳化型イソシアネートの割合は、10~100質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、30~60質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると単一空間の中空構造の形成が容易になる。上記範囲の上限値100質量%未満であると、中空粒子の平均粒子径を大きくすることができる。
【0022】
<ポリオール>
ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(質量平均分子量Mw300~2000が好ましい)、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、アクリルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
ポリオールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリオールの水酸基価は例えば20~2000mgKOH/gが好ましい。
【0023】
イソシアネート成分とポリオールとが反応してウレタン結合が形成されると、外殻部を構成するポリマーがウレタン結合を含むことにより、中空粒子に柔軟性、弾力性を付与することができる。
【0024】
<平均粒子径>
本態様の中空粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、0.1μm~300μm、1.0μm~200μm、3.0μm~100μm、5.0μm~50μm、8.0μm~30μmの範囲とすることができる。中空粒子の用途に応じて適宜選択される。
【0025】
《中空粒子の製造方法》
本発明の第二態様は、イソシアネート成分と、水と、有機溶剤とを含む混合液(反応液)を撹拌しながら加熱し、前記イソシアネート成分を懸濁重合して前記外殻部を形成することにより、前記外殻部に内包された前記水及び前記有機溶剤を有する樹脂粒子を含むスラリーを得る工程(重合工程)と、前記スラリーを加熱し、前記樹脂粒子から前記有機溶剤を除去する工程(有機溶剤除去工程)を有する、中空粒子の製造方法である。
但し、前記反応液の総質量から水を除いた基準質量に対して、キシレンを30質量%以上含む場合と、水酸基価20mgKOH未満のポリオールを1質量%以上含む場合を除く。
換言すると、前記基準質量に対して、キシレンが30質量%以上含まれる反応液は、本態様の反応液として用いない。また、前記基準質量に対して、水酸基価20mgKOH未満のポリオールが1質量%以上含まれる反応液は、本態様の反応液として用いない。
本態様の製造方法により、第一態様の中空粒子を容易に製造することができる。
【0026】
前記反応液に水酸基価20mgKOH未満のポリオールが含まれると、中空化が困難になる場合がある。このため、前記反応液の総質量から水を除いた基準質量に対して、水酸基価が20mgKOH未満のポリオールの含有量は少ないほど好ましく、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。
【0027】
<重合工程>
本工程で用いるイソシアネート成分の説明は第一態様のイソシアネート成分の説明と同様であり、ここで重複する説明は省略する。
【0028】
前記有機溶剤は、中空粒子の中空構造の形成に寄与するとともに、反応液中で中空粒子が形成された直後では、外殻部に内包されている。つまり、目的の中空粒子の中空部内に水及び有機溶剤が含まれた状態の粒子(目的の中空粒子と区別して樹脂粒子という。)が形成される。この有機溶剤を後段の工程で樹脂粒子から除去することを容易にする観点から、有機溶剤の1.0気圧における沸点は150℃未満が好ましく、130℃以下が好ましく、115℃以下がさらに好ましい。また、水と任意の割合で混合されたときに100℃以下の共沸点が存在する有機溶剤が好ましい。
【0029】
水と任意の割合で混合されたときに100℃以下で共沸し難い若しくは共沸しない有機溶剤(非共沸有機溶剤)や、高沸点有機溶剤(例えば1気圧における沸点が115℃超、130℃超又は150℃以上)の、前記反応液に含まれる量は少ないほど好ましい。前記反応液の総質量から水の質量を除いた基準質量に対して、非共沸有機溶剤または高沸点有機溶剤の含有量は30質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。例えば、前記基準質量に対するキシレンの含有量は30質量%未満が好ましく、5質量%未満がより好ましく、1質量%未満がさらに好ましく、実質的に含まれないことが最も好ましい。
【0030】
好適な有機溶剤としては、例えば、芳香族化合物(例えば、トルエン、ベンゼン等)、エステル化合物(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン化合物(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、飽和脂肪族炭化水素(例えば、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-オクタン等)などが挙げられる。これらの中でも、上記観点から、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルが特に好ましい。
本工程の有機溶剤は、ポリオール以外の有機溶剤であることが好ましい。
本工程の有機溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上の併用でもよい。
【0031】
前記反応液の総質量から水の質量を除いた基準質量に対する有機溶剤の合計の含有量は、20~50質量%が好ましく、25~45質量%がより好ましく、30~40質量%がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、中空構造を容易に形成でき、後段の工程で樹脂粒子から有機溶剤を容易に除去することができる。
【0032】
前記反応液の総質量から水の質量を除いた基準質量に対する前記イソシアネート成分の合計の含有量は、50~80質量%が好ましく、55~75質量%がより好ましく、60~70質量%がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、中空構造を容易に形成でき、上述した好適な範囲の平均粒子径を有する中空粒子を容易に形成することができる。
【0033】
前記反応液の総質量から水の質量を除いた基準質量に対する自己乳化型イソシアネートの含有量は、12~45質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましく、18~35質量%がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、中空構造を容易に形成でき、上述した好適な範囲の平均粒子径を有する中空粒子を容易に形成することができる。
【0034】
前記反応液に非自己乳化型イソシアネートが含まれる場合、前記反応液の総質量から水の質量を除いた基準質量に対する非自己乳化型イソシアネートの含有量は、20~50質量%が好ましく、25~45質量%がより好ましく、30~42質量%がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、中空構造を容易に形成でき、上述した好適な範囲の平均粒子径を有する中空粒子を容易に形成することができる。
【0035】
前記反応液に含まれる有機溶剤の合計の質量(M1)と、前記反応液に含まれるイソシアネート成分の総質量(M2)との比(M2/M1)は、0.6~4.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.2~2.5がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、中空構造を容易に形成でき、後段の工程で樹脂粒子から有機溶剤を容易に除去することができる。
【0036】
前記反応液に含まれる有機溶剤の合計の質量(M1)と、前記反応液に含まれる前記水の質量(M3)との比(M3/M1)は、1.5~6.0が好ましく、2.5~5.0がより好ましく、3.0~4.5がさらに好ましく、3.5~4.0が特に好ましい。
上記の好適な範囲であると、中空構造を容易に形成でき、後段の工程で樹脂粒子から有機溶剤を容易に除去することができる。
【0037】
前記反応液に非自己乳化型イソシアネートが含まれる場合、非自己乳化型イソシアネートの質量(M4)と、前記反応液に含まれる自己乳化型イソシアネートの質量(M5)との比(M5/M4)は、0.4~10.0が好ましく、0.6~2.0がさらに好ましく、0.7~1.5がさらに好ましく、0.8~1.2が特に好ましく、0.9~1.1が最も好ましい。
上記の好適な範囲であると、中空構造を容易に形成でき、上述した好適な範囲の平均粒子径を有する中空粒子を容易に形成することができる。
【0038】
調製した反応液を攪拌しながら加熱する方法は常法で行うことができる。加熱時の反応液の温度は例えば50~80℃が好ましい。この好ましい温度において、重合反応は3~12時間程度で完了することができる。反応終了後、次の工程に進む。
【0039】
[懸濁安定剤・界面活性剤]
前記反応液には、粒子合成の安定化に寄与する懸濁安定剤、界面活性剤を添加してもよい。
懸濁安定剤としては、例えば、セルロース系水溶性樹脂(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、第3リン酸塩類、ゼラチン等が挙げられる。
懸濁安定剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。懸濁安定剤の添加量は、ビーズ原料(粒子を形成する原料であって、有機溶剤及び水以外)100質量部に対して0~30質量部であることが好ましい。懸濁安定剤の添加量が前記範囲内であれば、懸濁状態を充分に安定化させることができる。
また、懸濁状態を安定化させるために、水に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両面界面活性剤のいずれであってもよいし、2種以上を使用してもよい。
懸濁安定剤、界面活性剤は、粒子の形成材料である前述したポリオールと区別されるものである。
【0040】
<有機溶剤除去工程>
前段の重合工程で得た反応後の溶液に樹脂粒子が含まれたスラリーを加熱し、樹脂粒子に含まれる有機溶剤を除去する。スラリーの加熱温度としは、樹脂粒子の外殻部の劣化を抑制する観点から、150℃未満が好ましく、130℃以下が好ましく、115℃以下がさらに好ましい。この好ましい温度において、好ましくは0.5~3時間、より好ましくは1~2時間で、樹脂粒子中の有機溶剤を除去することができる。
前段の重合工程で使用した有機溶剤が、水と任意の割合で混合されたときに100℃以下の共沸点を有するものであれば、本工程における加熱によって水と共沸しうるので、より容易に除去できる。なお、スラリーを加熱する際にスラリーを密封して加圧する必要はない。
【0041】
<乾燥工程>
前段の有機溶剤除去工程を経たスラリーは、水と樹脂粒子とを含む。スラリーを固液分離して得た樹脂粒子の中空部には水分が残留している可能性があるので、樹脂粒子を乾燥雰囲気下において乾燥させることが好ましい。乾燥処理によって、中空部から水を完全に除去することができる。乾燥温度としては例えば50~80℃が好ましい。この好ましい温度において、乾燥処理は12~24時間程度で完了することができる。
以上の工程により、目的の中空粒子が得られる。
【実施例
【0042】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例だけに限定されるものではない。
【0043】
各例で製造した乾燥後の中空粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製SALD2100)を用いて測定した体積基準の平均粒子径である。
【0044】
(実施例1)
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水600gを仕込み、この中に、後で形成された樹脂粒子をスラリー中で分散させるためのゼラチン5.0gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、トルエン160.0g、自己乳化イソシアネートであるデュラネートWB40-100の120.0g、非自己乳化イソシアネートであるイソホロンジイソシアネートヌレート体120.0g、ウレタン化触媒であるジブチル錫ジラウレート12.0mgを混合して、プレポリマー液を調製した。
前記分散媒を、攪拌機の回転数400rpmで攪拌しながら、前記プレポリマー液を添加して、重合用懸濁液を調製した。次いで、攪拌を継続しながら、重合用懸濁液を70℃に昇温し、5時間反応させて、中空粒子の外殻部になるポリウレタンポリウレアを形成させ、トルエン及び水が内包された樹脂粒子を得た(重合工程)。その後、100℃に昇温し、1時間保持して、樹脂粒子内部からトルエンを揮発させた(有機溶剤除去工程)。これにより、トルエンが除かれた樹脂粒子が水中に分散したスラリーを得た。
次いで、前記スラリーを室温まで冷却した後、ろ過により固液分離し、回収した樹脂粒子を水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、内部に残留する水を充分に除去し、体積平均粒子径8.6μmの球状の中空粒子を得た。中空粒子の内部構造を確認するために、固定用樹脂に埋めた中空粒子を輪切りして撮像したSEM像を図1~2に示す。SEM像から、外殻部(シェル)が単一の内部空間を包囲した中空粒子であることが確認された。
【0045】
(実施例2~14)
有機溶剤の種類又は量、外殻部形成用重合原料の種類又は量、ウレタン化触媒の量、ポリオールの量、分散媒の量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして球状の中空粒子を得た。
表中の「外殻部形成用重合原料中の自己乳化イソシアネート比率」は外殻部形成用自己乳化イソシアネートと外殻部形成用非自己乳化イソシアネートの合計量を100質量%とした際の外殻部形成用自己乳化イソシアネートの質量%である。
表中の「有機溶剤比率」は、外殻部形成用重合原料と中空部形成用有機溶剤との合計量を100質量%とした際の有機溶剤の質量%である。
実施例5,6で用いた非自己乳化イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートヌレート体である。
実施例12~14で用いたポリオールは、ポリエチレングリコール(分子量:600、水酸基価:187mgKOH/g)またはポリエチレングリコール(分子量:1000、水酸基価:112.2mgKOH/g)である。
実施例2~14で製造した中空粒子についても、図示しないがSEMを撮像し、外殻部が単一の内部空間を包囲した中空粒子であることを確認した。
【0046】
(比較例1)
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水600gを仕込み、この中にゼラチン5.0gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、トルエン160.0g、イソホロンジイソシアネートヌレート体240.0g、ウレタン化触媒であるジブチル錫ジラウレート12.0mgを混合して、プレポリマー液を調製した。
前記分散媒を、攪拌機の回転数400rpmで攪拌しながら、前記プレポリマー液を添加して、重合用懸濁液を調製した。次いで、攪拌を継続しながら、重合用懸濁液を70℃に昇温し、5時間反応させて、外殻部になるポリウレタンポリウレアを形成させ、樹脂粒子を得た(重合工程)。その後、100℃に昇温し、1時間保持して、樹脂粒子内部に内包されている可能性のあるトルエンを揮発させた(有機溶剤除去工程)。これにより、樹脂粒子が水中に分散したスラリーを得た。
次いで、前記スラリーを室温まで冷却した後、ろ過により固液分離し、回収した樹脂粒子を水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、体積平均粒子径185.9μmの球状の樹脂粒子を得た。この樹脂粒子の内部構造をSEM像で確認したところ、図示しないが、中空化は全く起きていなかった。この原因は、自己乳化イソシアネートをプレポリマー液に配合しなかったことであると考えられた。
【0047】
(比較例2)
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水600gを仕込み、この中にゼラチン5.0gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、キシレン160.0g、デュラネートWB40-100の120.0g、イソホロンジイソシアネートヌレート体の120.0g、ウレタン化触媒であるジブチル錫ジラウレート12.0mgを混合して、プレポリマー液を調製した。
前記分散媒を、攪拌機の回転数400rpmで攪拌しながら、前記プレポリマー液を添加して、重合用懸濁液を調製した。次いで、攪拌を継続しながら、重合用懸濁液を70℃に昇温し、5時間反応させて、外殻部になるポリウレタンポリウレアを形成させ、樹脂粒子を得た(重合工程)。その後、100℃に昇温し、1時間保持して、樹脂粒子内部からキシレンの除去を試みた(有機溶剤除去工程)。しかし、1013hPaで100℃以下ではキシレンが水と共沸せず、キシレンが揮発しないため、キシレンを内包した樹脂粒子が水中に分散したスラリーを得た。
次いで、前記スラリーを室温まで冷却した後、ろ過により固液分離し、回収した樹脂粒子を水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、体積平均粒子径10.0μmの球状の樹脂粒子を得た。この樹脂粒子では、内包したキシレンを除去することが出来ず、目的の中空粒子が得られなかった。この原因は、選択した有機溶剤の沸点が高く、水と共沸し難いことであると考えられた。
【0048】
(実施例8)
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水600gを仕込み、この中にゼラチン5.0gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、トルエン60.0g、デュラネートWB40-100の170.0g、イソホロンジイソシアネートヌレート体の170.0g、ウレタン化触媒であるジブチル錫ジラウレート17.0mgを混合して、プレポリマー液を調製した。
前記分散媒を、攪拌機の回転数400rpmで攪拌しながら、前記プレポリマー液を添加して、重合用懸濁液を調製した。次いで、攪拌を継続しながら、重合用懸濁液を70℃に昇温し、5時間反応させて、外殻部になるポリウレタンポリウレアを形成させ、樹脂粒子を得た(重合工程)。その後、100℃に昇温し、1時間保持して、樹脂粒子内部に内包されている可能性のあるトルエンを揮発させた(有機溶剤除去工程)。これにより、樹脂粒子が水中に分散したスラリーを得た。
次いで、前記スラリーを室温まで冷却した後、ろ過により固液分離し、回収した樹脂粒子を水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、体積平均粒子径6.5μmの球状の樹脂粒子を得た。このポリウレタン粒子の内部構造をSEM像で複数確認したところ、図示しないが、少数の粒子では中空化が起きていたが、大半の粒子で中空化は起きていなかった。この結果は、有機溶剤の添加量が少ないと、中空化される粒子の割合が減じることを示していると考えられる。
【0049】
(比較例3)
2L攪拌機付きセパラブルフラスコに水600gを仕込み、この中にゼラチン5.0gを溶解して分散媒を調製した。
これとは別に、トルエン160.0g、デュラネートWB40-100の120.0g、イソホロンジイソシアネートヌレート体の120.0g、ポリエチレングリコール(分子量:6000、水酸基価:18.7mgKOH/g)の8.0g、ウレタン化触媒であるジブチル錫ジラウレート12.0mgを混合して、プレポリマー液を調製した。
前記分散媒を、攪拌機の回転数400rpmで攪拌しながら、前記プレポリマー液を添加して、重合用懸濁液を調製した。次いで、攪拌を継続しながら、重合用懸濁液を70℃に昇温し、5時間反応させて、外殻部になるポリウレタンを形成させ、樹脂粒子を得た(重合工程)。その後、100℃に昇温し、1時間保持して、樹脂粒子内部に内包されている可能性のあるトルエンを揮発させた(有機溶剤除去工程)。これにより、樹脂粒子が水中に分散したスラリーを得た。
次いで、前記スラリーを室温まで冷却した後、ろ過により固液分離し、回収した樹脂粒子を水で充分洗浄した後、70℃で20時間乾燥して、体積平均粒子径27.0μmの球状の樹脂粒子を得た。このポリウレタン粒子の内部構造をSEM像で複数確認したところ、図示しないが、ほぼ全ての粒子で中空化は起きていなかった。この結果は、ポリオールの水酸基価が少ないと、中空化される粒子の割合が極端に減じることを示していると考えられる。
【0050】
【表1A】
【0051】
【表1B】
図1
図2