(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240627BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20240627BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240627BHJP
【FI】
H01G4/30 512
H01G4/30 201A
H01G4/30 311F
H01G4/30 517
H01G2/06 500
H01G13/00 311Z
(21)【出願番号】P 2018156573
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏彰
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】山本 章裕
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212295(JP,A)
【文献】特開2002-353625(JP,A)
【文献】特開2000-012378(JP,A)
【文献】特開平09-129482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30, 4/38, 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未焼成の第1セラミックシート上に所定厚さの内部電極パターンを形成し、
前記第1セラミックシートにおける前記内部電極パターンの周囲の非電極形成領域上に、前記非電極形成領域に面する前記所定厚さの空間部の75%以上100%未満を占めるように誘電体パターンを形成し、
前記内部電極パターンと前記誘電体パターンとが形成された前記第1セラミックシートを第1方向に積層し、かつ、前記内部電極パターンが形成されていない未焼成の第2セラミックシートを前記第1セラミックシートの積層体上に前記第1方向に積層することで、
前記第1方向に積層された複数の内部電極を含む積層部と、前記積層部を前記第1方向から覆い前記第1方向の厚みがそれぞれ15μm以下である一対のカバー部と、前記第1方向に向いた第1平坦領域を含む第1主面と、前記第1平坦領域とは反対側の前記第1方向に向いた第2平坦領域を含む第2主面と、を有し、
前記第1方向の寸法が、前記第1方向に直交する第2方向の寸法の1.1倍以上1.6倍以下であり、
前記第1平坦領域は、前記第1主面の前記第2方向中央部に形成され、
前記第2平坦領域は、前記第2主面の前記第3方向中央部に形成された、
セラミック素体を形成し、
前記複数の内部電極に接続され、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に相互に対向する一対の外部電極を形成し、
前記第1平坦領域の前記第
2方向の寸法は、前記セラミック素体の前記第
2方向の寸法の82%以上100%未満であり、
前記第2平坦領域の前記第
3方向の寸法は、前記セラミック素体の前記第
3方向の寸法の89%以上100%未満である
積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品、それが実装された積層セラミック電子部品実装基板及び積層セラミック電子部品包装体、並びに積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セラミック素体内に複数の内部電極が積層された、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品が知られている。積層セラミック電子部品は、携帯情報端末、その他の電子機器の回路基板に実装され、幅広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、複数の導体層及び複数のセラミック誘電体層が交互に積層された積層部を内部に含む素体の厚みが、長さ方向の中央部において最大になりかつ長さ方向の両端部において最小となるように、及び幅方向の中央部において最大になりかつ幅方向の両端部において最小となるように、2つの主面が外側に向けて膨出した形状に構成された積層セラミックコンデンサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、携帯情報端末等の電子機器の小型化が進み、回路基板上でのセラミック電子部品の実装面積は制限されている。その一方で、積層セラミックコンデンサの高容量化等、積層セラミック電子部品の電気的特性の向上が求められている
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、回路基板内に占める実装面積を増大させずに電気的特性を向上させることが可能な積層セラミック電子部品、積層セラミック電子部品実装基板及び積層セラミック電子部品包装体、並びに積層セラミック電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、一対の外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、第1方向に積層された複数の内部電極と、上記第1方向に向いた第1平坦領域を含む第1主面と、上記第1平坦領域とは反対側の上記第1方向に向いた第2平坦領域を含む第2主面と、を有する。
上記一対の外部電極は、上記複数の内部電極に接続され、上記第1方向に直交する第2方向に相互に対向する。
上記セラミック素体の上記第1方向の寸法は、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向の寸法の1.1倍以上1.6倍以下である。
上記第1平坦領域は、上記第1主面の上記第2方向中央部に形成される。
上記第2平坦領域は、上記第2主面の上記第3方向中央部に形成される。
【0008】
この構成により、上記セラミック素体を主面の面積を維持したまま高さを大きくして構成でき、内部電極の積層数を増加させることができる。したがって、回路基板内に占める実装面積を増大させずに、電気的特性を向上させることが可能な積層セラミック電子部品を実現することができる。
さらに、上記セラミック素体は、第1主面の第2方向の中央部に第1平坦領域が形成される。これにより、実装時に積層セラミック電子部品を移載するための吸着ノズルが平坦領域に密着でき、第1平坦領域を安定して保持することができる。したがって、積層セラミック電子部品における実装時の不具合を防止することができる。加えて、上記セラミック素体は、第2主面の第3方向の中央部に第2平坦領域が形成される。これにより、回路基板上への積層セラミック電子部品の配置時及びはんだ付け工程において、積層セラミック電子部品の傾きを抑制することができる。このため、積層セラミック電子部品と他の電子部品とを高密度に実装することが可能となる。
【0009】
上記第1平坦領域の上記第3方向の寸法は、上記セラミック素体の上記第3方向の寸法の80%以上100%未満であってもよい。
また、上記第2平坦領域の上記第2方向の寸法は、上記セラミック素体の上記第2方向の寸法の80%以上100%未満であってもよい。
【0010】
これにより、積層セラミック電子部品における実装時の吸着安定性及び回路基板上での姿勢の安定性をさらに高め、不具合をより確実に防止することができる。
【0011】
本発明の他の形態に係る積層セラミック電子部品実装基板は、回路基板と、複数の積層セラミック電子部品と、を具備する。
上記積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、一対の外部電極と、を有し、上記一対の外部電極を介して上記回路基板に実装される。
上記セラミック素体は、上記第1方向に向いた第1平坦領域を含む第1主面と、上記第1平坦領域とは反対側の上記第1方向に向いた第2平坦領域を含む第2主面と、を有する。
上記一対の外部電極は、上記複数の内部電極に接続され、上記第1方向に直交する第2方向に相互に対向する。
上記セラミック素体の上記第1方向の寸法は、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向の寸法の1.1倍以上1.6倍以下である。
上記第1平坦領域は、上記第1主面の上記第2方向中央部に形成される。
上記第2平坦領域は、上記第2主面の上記第3方向中央部に形成される。
上記積層セラミック電子部品は、上記第2平坦領域が上記回路基板と上記第1方向に対向し、上記第1平坦領域が上記第1方向上方を向くように上記回路基板に実装される。
【0012】
さらに、上記積層セラミック電子部品実装基板は、
上記セラミック素体と、上記一対の外部電極と、をそれぞれ有する複数の積層セラミック電子部品をさらに具備してもよい。
この場合、上記複数の積層セラミック電子部品は、上記第3方向に沿って、上記セラミック素体の上記第3方向の寸法の30%以下の間隔をあけて上記回路基板に実装される。
【0013】
上記構成の積層セラミック電子部品では、第1主面及び第2主面のそれぞれに平坦領域を有するため、実装時の姿勢の安定性を高めることができる。これにより、複数の積層セラミック電子部品を回路基板上に高密度で実装することができる。
【0014】
上記積層セラミック電子部品は、上記第2方向の中央部に形成された第1平坦領域が吸着ノズルによって第1方向に吸着された状態で回路基板上に載置される。このため、上記積層セラミック電子部品実装基板では、上記第2方向の中央部に形成された第1平坦領域が上記第1方向上方を向き、上記第3方向中央部の第2平坦領域が上記第1方向下方を向くように積層セラミック電子部品が上記回路基板に実装される。
【0015】
本発明のさらに他の形態に係る積層セラミック電子部品包装体は、積層セラミック電子部品と、収容部と、封止部と、を具備する。
上記積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、一対の外部電極と、を有し、上記一対の外部電極を介して上記回路基板に実装される。
上記セラミック素体は、第1方向に積層された複数の内部電極と、上記第1方向に向いた第1平坦領域を含む第1主面と、上記第1平坦領域とは反対側の上記第1方向に向いた第2平坦領域を含む第2主面と、を有する。
上記一対の外部電極は、上記複数の内部電極に接続され、上記第1方向に直交する第2方向に相互に対向する。
上記セラミック素体の上記第1方向の寸法は、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向の寸法の1.1倍以上1.6倍以下である。
上記第1平坦領域は、上記第1主面の上記第2方向中央部に形成される。
上記第2平坦領域は、上記第2主面の上記第3方向中央部に形成される。
上記収容部は、上記積層セラミック電子部品を収容し、かつ取り出し口が形成された凹部を有する。
上記封止部は、上記凹部の上記取り出し口を覆う。
上記積層セラミック電子部品は、上記第1平坦領域を上記取り出し口側に向けて上記凹部に収容される。
【0016】
この構成により、封止部が剥離されると取り出し口から第1平坦領域が露出することになる。したがって、積層セラミック電子部品の姿勢を変えることなく、上記吸着ノズルを第1平坦領域に密着させることができ、実装を円滑に行うことができる。
【0017】
本発明のさらに他の形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
未焼成のセラミックシート上に所定厚さの内部電極パターンを形成する工程を含む。
上記セラミックシートにおける上記内部電極パターンの周囲の非電極形成領域上に、上記非電極形成領域に面する上記所定厚さの空間部の75%以上100%未満を占めるように誘電体パターンが形成される。
上記内部電極パターンと上記誘電体パターンとが形成された上記セラミックシートを第1方向に積層することで、上記第1方向に積層された複数の内部電極を有し、上記第1方向の寸法が、上記第1方向に直交する第2方向の寸法の1.1倍以上1.6倍以下であるセラミック素体が形成される。
上記複数の内部電極に接続され、上記第1方向及び上記第2方向に直交する第3方向に相互に対向する一対の外部電極が形成される。
【0018】
これにより、各セラミックシート上に内部電極パターンのみならず、誘電体パターンも形成される。誘電体パターンを上記空間部の75%以上を占めるように形成することで、積層されたセラミックシートが内部電極パターンと誘電体パターンの間隙に沈み込むことを防止できる。これにより、多数のセラミックシートを積層したセラミック素体においても、領域ごとの高さ寸法のバラつきを抑え、第1主面及び第2主面各々に平坦領域を形成することができる。また、誘電体パターンを上記空間部の100%未満とすることで、内部電極パターンに対して誘電体パターンがわずかにずれた場合に、誘電体パターンが内部電極パターン上に重なってしまうことを防止することができる。これによっても、セラミック素体における高さ寸法のバラつきを抑え、上記平坦領域を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、回路基板内に占める実装面積を増大させずに電気的特性を向上させることが可能な積層セラミック電子部品、積層セラミック電子部品実装基板及び積層セラミック電子部品包装体、並びに積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサの
図1のA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサの
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサの断面の微細組織を示す図である。
【
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図9】
図8AのC-C'線に沿った部分断面図である。
【
図10】
図9と同様の部分断面図であり、
図7のステップS02を説明する図である。
【
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図12】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ包装体の平面図である。
【
図14】上記包装体の
図12のD-D'線に沿った断面図である。
【
図15】上記積層セラミックコンデンサの実装工程を示す模式的な断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ実装基板の断面図である。
【
図17】上記積層セラミックコンデンサ実装基板の側面図である。
【
図18】上記実施形態の比較例に係る積層セラミックコンデンサ実装基板の側面図である。
【
図19】複数の積層セラミックコンデンサを備えた積層セラミックコンデンサ実装基板の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が適宜示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0022】
[積層セラミックコンデンサ10の基本構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0023】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15とを具備する。
【0024】
セラミック素体11は、典型的には、X軸方向を向いた2つの端面11a,11bと、Y軸方向を向いた2つの側面11c,11dと、Z軸方向を向いた2つの主面11e,11fと、を有する。セラミック素体11の各面を接続する稜部は面取りされている。
なお、セラミック素体11の形状は、上記のものに限定されない。つまり、セラミック素体11は、
図1~3に示すような直方体形状でなくてもよい。
【0025】
外部電極14,15は、X軸方向に相互に対向し、セラミック素体11の両端面11a,11bを覆うように構成される。外部電極14,15は、両端面11a,11bに接続する4つの面(2つの主面11e,11f及び2つの側面11c,11d)に延出している。これにより、外部電極14,15のいずれにおいても、X-Z平面に平行な断面及びX-Y平面に平行な断面の形状がU字状となっている。
【0026】
セラミック素体11は、積層部16と、カバー部17と、を有する。積層部16は、内部電極12,13がセラミック層18を介してZ軸方向に交互に積層された構成を有する。カバー部17は、積層部16のZ軸方向上下面をそれぞれ覆っている。
【0027】
内部電極12,13は、セラミック層18を介して、Z軸方向に交互に積層されている。第1内部電極12は、端面11aに引き出されることで第1外部電極14に接続され、第2外部電極15から離間している。第2内部電極13は、端面11bに引き出されることで第2外部電極15に接続され、第1外部電極14から離間している。
【0028】
また、内部電極12,13は、側面11c,11dには引き出されていない。このため、積層部16の側面11c,11d側には、誘電体セラミックスからなるサイドマージンが形成されている。
【0029】
内部電極12,13は、典型的にはニッケル(Ni)を主成分として構成され、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。なお、内部電極12,13は、ニッケル以外に、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)の少なくとも1つを主成分としていてもよい。
【0030】
セラミック層18は、内部電極12,13間に配置され、誘電体セラミックスによって形成されている。セラミック層18は、積層部16における容量を大きくするために、高誘電率の誘電体セラミックスで形成される。
上記高誘電率の誘電体セラミックスとして、チタン酸バリウム(BaTiO3)系材料の多結晶体、つまりバリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の多結晶体が用いられる。これにより、大容量の積層セラミックコンデンサ10が得られる。
なお、セラミック層18は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系などで形成されてもよい。
【0031】
カバー部17も、誘電体セラミックスによって形成されている。カバー部17を形成する材料は、絶縁性セラミックスであればよいが、セラミック層18と同様の誘電体セラミックスを用いることによりセラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0032】
上記の構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層18に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0033】
なお、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の基本構成は、
図1~3に示す構成に限定されず、適宜変更可能である。
【0034】
[セラミック素体の詳細な構成]
図3に示すように、セラミック素体11は、Z軸方向の高さ寸法Tが、Y軸方向の幅寸法Wの1.1倍以上1.6倍以下であることを特徴とする。これにより、セラミック素体11におけるX-Y平面の断面積を増加させることなく、内部電極12,13の積層数を増やして積層セラミックコンデンサ10の容量を増やすことができる。
【0035】
ここで、セラミック素体11の高さ寸法Tとは、積層セラミックコンデンサ10のX軸方向中央部で切断したY-Z断面(
図3参照)において、セラミック素体11のY軸方向中央部のZ軸方向に沿った寸法をいう。高さ寸法Tは、本実施形態において、幅寸法W及び後述する長さ寸法Lとの関係で規定することができる。
【0036】
セラミック素体11の幅寸法Wは、積層セラミックコンデンサ10のX軸方向中央部で切断したY-Z断面(
図3参照)において、セラミック素体11のZ軸方向中央部のY軸方向に沿った寸法をいう。幅寸法Wは特に限定されず、例えば0.10mm以上1.50mm以下とすることができる。
【0037】
セラミック素体11の長さ寸法Lは、高さ寸法Tの1.0倍より大きく1.5倍以下でもよい。これにより、積層セラミックコンデンサ10の実装面積を増大させずに高さ寸法Tを拡大して容量を増やせるとともに、後述する製造時や実装時のハンドリングを円滑に行うことができる。
【0038】
セラミック素体11の長さ寸法Lは、積層セラミックコンデンサ10のY軸方向中央部で切断したX-Z断面(
図2参照)において、セラミック素体11のZ軸方向中央部のX軸方向に沿った寸法をいう。長さ寸法Lは特に限定されず、例えば0.20mm以上2.00mm以下とすることができる。
【0039】
内部電極12,13の層数をさらに増やして積層セラミックコンデンサ10の容量をより大きくするため、カバー部17の厚さを薄くしてもよい。一例として、カバー部17のZ軸方向の寸法(厚さ)は、15μm以下でもよい。
【0040】
積層セラミックコンデンサ10の容量をさらに大きくするため、内部電極12,13間のセラミック層18の厚さを薄くしてもよい。例えば、セラミック層18のZ軸方向の平均寸法(平均厚さ)は、例えば1.0μm以下であり、さらに0.5μm以下でもよい。
【0041】
なお、セラミック層18の平均厚さは、セラミック層18の複数箇所において測定された厚さの平均値として求めることができる。セラミック層18の厚さを測定する位置や数は任意に決定可能である。以下、
図4を参照しながら、セラミック層18の平均厚さTの測定方法の一例について説明する。
【0042】
図4は、走査型電子顕微鏡によって12.6μm×8.35μmの視野で観察したセラミック素体11の断面の微細組織を示す図である。この視野内の6層のセラミック層18について、2μmの等間隔の矢印で示された5箇所の厚さを測定する。そして、得られた30箇所の厚さの平均値を平均厚さとすることができる。
【0043】
このように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、実装面積を増大させずに高さ寸法Tが拡大され、内部電極12,13を多く積層することができるため、大容量が実現できる。
一方、従来は、実装時の取り扱いが困難であったため、幅寸法Wよりも高さ寸法Tの大きい積層セラミックコンデンサを実現することが難しかった。
【0044】
そこで、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10では、一方の主面(第1主面)11eが、Z軸方向に向いた第1平坦領域F1を有し、他方の主面(第2主面)11fが第1平坦領域F1とは反対側のZ軸方向に向いた第2平坦領域F2を有する。この構成により、後述するように、幅寸法Wよりも高さ寸法Tが大きくても実装時の取り扱い性を高めることができる。
【0045】
第1平坦領域F1は、主面11eのX軸方向中央部に形成される平坦な領域である。第2平坦領域F2は、主面11fのY軸方向中央部に形成される平坦な領域である。主面11e,11fの周縁部は、これらの中央部のX軸方向及びY軸方向外方に位置し、第1平坦領域F1及び第2平坦領域F2から延出する曲面で構成される。
【0046】
図5は、
図3の部分拡大図である。同図を用いて、第1平坦領域F1について詳細に説明する。
第1平坦領域F1は、セラミック素体11のY-Z断面において、主面11eのY軸方向中心点Cを通りZ軸方向に直交する(Y軸方向と平行な)第1仮想線L1と、第1仮想線L1に平行でセラミック素体11の高さ寸法Tの1%(T*0.01)の間隔を有する第2仮想線L2とを規定したときに、第2仮想線L2と主面11eとの交差する2点間の領域をいう。ここでいう「主面11eのY軸方向中心点C」とは、主面11eのY軸方向に沿った幅寸法における中心を言うものとする。
図5では、主面11eのY軸方向中心点Cを矢印で示し、仮想線L1,L2を太い一点鎖線で示している。
【0047】
第1平坦領域F1を上記のように規定することにより、第1平坦領域F1のY軸方向に沿った幅寸法Wfは、第2仮想線L2と主面11eとの交差する2点間のY軸方向に沿った距離となる。第1平坦領域F1の幅寸法Wfは、セラミック素体11の幅寸法Wの80%以上100%未満とすることができる。これにより、第1平坦領域F1の幅寸法Wfを十分に確保でき、実装時の取り扱い性をさらに高めることができる。
【0048】
図6は、
図2の部分拡大図である。同図を用いて、第2平坦領域F2について詳細に説明する。
第2平坦領域F2は、セラミック素体11のY軸方向中央部のX-Z断面において、主面11fのX軸方向中心点C'を通りZ軸方向に直交する(X軸方向と平行な)第3仮想線L3と、第3仮想線L3に平行でセラミック素体11の高さ寸法Tの1%(T*0.01)の間隔を有する第4仮想線L4とを規定したときに、第4仮想線L4と主面11fとの交差する2点間の領域をいう。ここでいう「主面11fのX軸方向中心点C'」とは、主面11fのX軸方向に沿った長さ寸法における中心を言うものとする。
図6では、主面11fのX軸方向中心点C'を矢印で示し、仮想線L3,L4を太い二点鎖線で示している。
【0049】
第2平坦領域F2を上記のように規定することにより、第2平坦領域F2のX軸方向に沿った長さ寸法Lfは、第4仮想線L4と主面11fとの交差する2点間のX軸方向に沿った距離となる。第2平坦領域F2の長さ寸法Lfは、セラミック素体11の長さ寸法Lの80%以上100%未満とすることができる。これにより、セラミック素体11のX軸方向周縁部まで第2平坦領域F2を延在させることができ、外部電極14,15を第2平坦領域F2上に形成することができる。したがって、積層セラミックコンデンサ10の実装時の姿勢を安定させ、取り扱い性をさらに高めることができる。
【0050】
第1平坦領域F1及び第2平坦領域F2を有する積層セラミックコンデンサ10は、以下の製造方法により製造することができる。
【0051】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図7は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図8~12は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図7に沿って、
図8~12を適宜参照しながら説明する。
【0052】
(ステップS01:内部電極パターン形成)
ステップS01では、積層部16を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102上に、内部電極パターン112,113を形成する。
【0053】
セラミックシート101,102は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。誘電体セラミックスとしては、例えば粒子径が20nm~200nmである粉体を用いることができる。セラミックシート101,102は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102の厚さは限定されないが、例えば、1.5μm以下となるように調整される。
【0054】
図8は、セラミックシート101,102の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102が、個片化されていない大判のシートとして構成される。
図8には、積層セラミックコンデンサ10ごとに個片化する際の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。
【0055】
図8に示すように、第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極パターン112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極パターン113が形成されている。
【0056】
内部電極パターン112,113は、任意の導電性ペーストをセラミックシート101,102に塗布することによって形成することができる。導電性ペーストの塗布方法は、公知の技術から任意に選択可能である。例えば、導電性ペーストの塗布には、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0057】
第1セラミックシート101上の各内部電極パターン112は、1本の切断線Ly1又はLy2を跨いでX軸方向に延びる略矩形に構成される。各内部電極パターン112は、切断線Ly1、Ly2及びLxで切断されることにより、各積層セラミックコンデンサ10の第1内部電極12を形成する。切断線Ly1又はLy2上の内部電極パターン112は、端面11aに露出する引出し部に対応する。
【0058】
第1セラミックシート101では、切断線Ly1を跨いで延びる内部電極パターン112がX軸方向に沿って配置された第1列と、切断線Ly2を跨いで延びる内部電極パターン112がX軸方向に沿って配置された第2列とが、Y軸方向に交互に並んでいる。第1列では、X軸方向に隣接する内部電極パターン112同士が切断線Ly2を挟んで相互に対向する。第2列では、X軸方向に隣接する内部電極パターン112同士が切断線Ly1を挟んで相互に対向する。つまり、Y軸方向に隣接する第1列と第2列では、内部電極パターン112が、1チップ分ずつX軸方向にずれて配置されている。
【0059】
第2セラミックシート102上の内部電極パターン113も、内部電極パターン112と同様に構成される。但し、第2セラミックシート102では、第1セラミックシート101の第1列に対応する列の内部電極パターン113が、切断線Ly2を跨いで延び、第1セラミックシート101の第2列に対応する列の内部電極パターン113が、切断線Ly1を跨いで延びる。つまり、内部電極パターン113は、内部電極パターン112とはX軸方向又はY軸方向に1チップ分ずれて形成されている。
【0060】
非電極形成領域Nは、セラミックシート101,102における内部電極パターン112,113が形成されていない領域である。第1セラミックシート101において、非電極形成領域Nは、X軸方向に隣り合う内部電極パターン112の間の切断線Ly1、Ly2に沿って延びる複数の帯領域と、Y軸方向に隣り合う内部電極パターン112の間の切断線Lxに沿って延びる複数の帯領域とで構成される。非電極形成領域Nは、全体として、これらの帯領域が相互に交わった格子状に形成される。非電極形成領域Nは、積層セラミックコンデンサ10におけるサイドマージンとエンドマージンとに対応する。
第2セラミックシート102における非電極形成領域Nも、同様に構成される。
【0061】
図9は、
図8AのC-C'線に沿った部分断面図である。
図9では、セラミックシート101,102上に所定の厚さd1で内部電極パターン112,113が形成されている。内部電極パターン112,113の厚さd1は、内部電極パターン112の平均の厚さであり、例えば、セラミック層18の平均厚さと同様に、複数箇所において測定された厚さの平均値として求めることができる。
【0062】
非電極形成領域N上には、隣接する内部電極パターン112,113に挟まれた空間部Sが形成されている。空間部Sは、非電極形成領域Nに面する厚さがd1の空間領域とする。すなわち空間部Sは、非電極形成領域Nの面積に厚さd1を乗じた体積を有する。
図9及び9では、空間部Sを太い破線で囲って示している。
【0063】
(ステップS02:誘電体パターン形成)
ステップS02では、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102における内部電極パターン112,113の周囲の非電極形成領域N上に、誘電体パターンPを形成する。
【0064】
図10は、
図9と同じ位置の断面図であって、空間部Sに誘電体パターンPが形成された態様を示す。
誘電体パターンPは、セラミックペーストをセラミックシート101,102の非電極形成領域Nに塗布することによって形成することができる。セラミックペーストは、誘電体セラミックスを主成分とするものであればよいが、セラミックシート101,102と同様の誘電体セラミックスを用いることで、焼成時における内部応力が抑制される。セラミックペーストの塗布には、例えばスクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0065】
本実施形態において、誘電体パターンPは、空間部Sの75%以上100%未満を占めるように形成される。すなわち、誘電体パターンPは、内部電極パターン112,113の厚さd1に非電極形成領域Nの面積を乗じた空間部Sの体積の、75%以上100%未満の体積を有する。
【0066】
誘電体パターンPの平均厚さは、空間部Sの厚さd1以下であればよく、例えばd1を100%としたときに80%以上100%以下であってもよい。誘電体パターンの平均厚さは、内部電極パターン112,113の厚さと同様に測定した場合の平均値とすることができる。
【0067】
セラミックシート101,102は、内部電極パターン112,113の周囲に誘電体パターンPが形成されていない間隙Qを有していてもよい。内部電極パターン112,113と誘電体パターンPとの間に間隙Qを設けることにより、誘電体パターンPが内部電極パターン112,113上に形成されることを防止することができる。
【0068】
(ステップS03:積層)
ステップS03では、ステップS01,S02で準備したセラミックシート101,102及び第3セラミックシート103を、
図11に示すように積層することにより積層シート104を作製する。第3セラミックシート103は、内部電極パターン112,113及び誘電体パターンPが形成されていないセラミックシートである。なお、
図11では、間隙Qの記載を省略している。
【0069】
積層シート104は、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層された電極積層シート105と、第3セラミックシート103のみが積層された2つのカバー積層シート106と、を有する。2つのカバー積層シート106は、電極積層シート105のZ軸方向上下面にそれぞれ設けられる。電極積層シート105は、焼成後の積層部16に対応する。カバー積層シート106は、焼成後のカバー部17に対応する。
【0070】
電極積層シート105におけるセラミックシート101,102の積層数は、焼成後に所望の容量及び高さ寸法Tが得られるように調整される。
カバー積層シート106における第3セラミックシート103の積層数も図示の例に限定されず、適宜調整される。
【0071】
積層シート104は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
【0072】
(ステップS04:切断)
ステップS04では、ステップS03で得られた積層シート104を切断線Lx,Lyに沿って切断することにより、未焼成のセラミック素体111を作製する。
【0073】
図12は、ステップS04で得られるセラミック素体111の斜視図である。
同図に示すように、未焼成のセラミック素体111は、X軸方向を向いた2つの端面111a,111bと、Y軸方向を向いた2つの側面111c,111dと、Z軸方向を向いた2つの主面111e,111fと、を有する。電極積層シート105が切断された部分は、未焼成の積層部116として構成される。カバー積層シート106が切断された部分は、未焼成のカバー部117として構成される。
【0074】
未焼成のセラミック素体111は、焼成後に、Z軸方向の高さ寸法TがY軸方向の幅寸法の1.1倍以上1.6倍以下となるような外形を有する。また、主面111e,111fには、それぞれ、第1平坦領域F1及び第2平坦領域F2と同様に規定される未焼成の第1平坦領域Fu1及び第2平坦領域Fu2が形成されている。未焼成の第1平坦領域Fu1のY軸方向における幅寸法は、第1平坦領域F1と同様に、未焼成のセラミック素体111の幅寸法の80%以上100%未満とすることができる。同様に、未焼成の第2平坦領域Fu2のX軸方向における長さ寸法は、第2平坦領域F2と同様に、未焼成のセラミック素体111の長さ寸法の80%以上100%未満とすることができる。なお、未焼成のセラミック素体111は、切断後、バレル研磨等によって面取りされてもよい。その場合は、第1平坦領域Fu1の幅寸法及び第2平坦領域Fu2の長さ寸法が上記範囲内となるように行われる。
【0075】
(ステップS05:焼成)
ステップS05では、ステップS04で得られた未焼成のセラミック素体111を焼結させることにより、
図1~3に示すセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS05により、積層部116が積層部16になり、カバー部117がカバー部17になる。焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0076】
(ステップS06:外部電極形成)
ステップS06では、ステップS05で得られたセラミック素体11に外部電極14,15を形成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。
【0077】
ステップS06では、まず、セラミック素体11の一方のX軸方向端面を覆うように未焼成の電極材料を塗布し、セラミック素体11の他方のX軸方向端面を覆うように未焼成の電極材料を塗布する。セラミック素体11に塗布された未焼成の電極材料に、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において焼き付け処理を行って、セラミック素体11に下地膜を形成する。そして、セラミック素体11に焼き付けられた下地膜の上に、中間膜及び表面膜を電解メッキなどのメッキ処理で形成して、外部電極14,15が完成する。
【0078】
なお、上記のステップS06における処理の一部を、ステップS05の前に行ってもよい。例えば、ステップS05の前に未焼成のセラミック素体111のX軸方向両端面に未焼成の電極材料を塗布し、ステップS05において、未焼成のセラミック素体111を焼成すると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて外部電極14,15の下地層を形成してもよい。また、脱バインダー処理したセラミック素体111に未焼成の電極材料を塗布して、これらを同時に焼成してもよい。
【0079】
このように製造されたセラミック素体11は、
図1~3に示すように、Z軸方向の高さ寸法TがY軸方向の幅寸法Wの1.1倍以上1.6倍以下であり、かつ、平坦領域F1,F2を有する。平坦領域F1,F2は、ステップS02において、空間部Sの75%以上100%未満を占める誘電体パターンPを形成することにより形成される。
【0080】
仮に誘電体パターンを形成しない場合、内部電極パターンの厚さに起因して、内部電極パターンが積層された容量形成部分と、非電極形成領域が積層されたサイドマージン部分及びエンドマージン部分とのZ軸方向の高さ寸法に差が生じる。さらに、セラミックシートの積層数が多いほど、すなわち積層セラミックコンデンサの高さ寸法が大きいほど、上記部分間のZ軸方向の高さの差が大きくなる。このため、積層されたセラミックシートが圧着及び切断されたセラミック素体では、X軸方向及びY軸方向周縁部からX軸方向及びY軸方向中央部に向かう高さ寸法が漸増し、主面がZ軸方向に凸な曲面状に構成される。
【0081】
また、仮に誘電体パターンを非電極形成領域全体(すなわち空間部の100%を占める状態)に形成しようとした場合、誘電体パターンがわずかにずれただけで内部電極パターンに重なってしまう。これにより、重なりの部分の厚さが厚くなり、セラミック素体におけるZ軸方向の高さが不均一となる。
【0082】
一方、誘電体パターンの空間部に占める割合が75%未満の場合には、内部電極パターンと誘電体パターンとの間隙が大きくなる。このため、積層されたセラミックシートが圧着時に間隙内に沈み込んでしまい、やはりセラミック素体におけるZ軸方向の高さが不均一となる。
【0083】
本実施形態では、誘電体パターンPが空間部Sの75%以上を占めるように形成されることで、ステップS03で積層されたセラミックシートが間隙Q内に沈み込まない程度に、間隙Qを小さくすることができる。これにより、電極積層シート105におけるZ軸方向の高さを均一に形成することができ、未焼成のセラミック素体111に平坦領域Fu1,Fu2が形成される。したがって、焼成後のセラミック素体11にも平坦領域F1,F2が形成される。
【0084】
また、誘電体パターンPが空間部Sの100%未満を占めるように形成されることで、非電極形成領域N上に狭い間隙Qを設けることができる。これにより、誘電体パターンPが内部電極パターン112,113に対してわずかにずれた場合でも、間隙Qにより当該ずれが緩衝される。したがって、内部電極パターン112,113上に誘電体パターンPが重なってしまうリスクを低下させることができる。
【0085】
さらに、製造後の積層セラミックコンデンサ10は、第1平坦領域F1をZ軸方向上方及び第2平坦領域F2をZ軸方向下方に向けた状態で、包装体100として包装される。これにより、積層セラミックコンデンサ10が包装体100から取り出されて電子機器に実装される実装工程を円滑に行うことができる。
以下、包装体100の構成及び積層セラミックコンデンサ10の実装方法について詳細を説明する。
【0086】
[積層セラミックコンデンサ10の包装体100の構成]
図13は、積層セラミックコンデンサ10の包装体100の平面図であり、
図14は、
図13のD-D'線に沿った断面図である。なお、本実施形態に係る包装体100の構成は、
図13及び14に示す構成に限定されない。
【0087】
包装体100は、例えばY軸方向に長手を有し、Z軸方向に所定の深さを有し、複数の積層セラミックコンデンサ10を収容する。
包装体100は、収容部110と、封止部120と、複数の積層セラミックコンデンサ10と、を備える。
【0088】
収容部110は、Y軸方向に沿って所定の間隔で形成された複数の凹部110aを有する。
収容部110は、典型的にはキャリアテープであるが、積層セラミックコンデンサ10を収容する凹部110aが格子状に配列されたチップトレイ等であってもよい。また、収容部110を構成する材料も特に限定されず、例えば合成樹脂や紙等であってもよい。
【0089】
凹部110aは、収容部110のZ軸方向上面110cから下方に向かって形成され、各積層セラミックコンデンサ10を収容可能なサイズを有する。凹部110aの上面110c側には、取り出し口110bが形成される。取り出し口110bは、積層セラミックコンデンサ10の凹部110aへの収容及び凹部110aからの取り出しに用いられる。
【0090】
封止部120は、収容部110上に剥離可能に配置され、凹部110aの取り出し口110bをZ軸方向から覆うように構成される。封止部120は、典型的にはカバーテープであるが、収容部110から剥離可能であり、凹部110aを封止する機能を有する部材であれば特に限定されない。また、封止部120は、収容部110と同種の材料で形成されてもよく、異なる材料で形成されてもよい。
【0091】
積層セラミックコンデンサ10は、凹部110aに、第1平坦領域F1を取り出し口110b側(Z軸方向上方)に向け、第2平坦領域F2を凹部110aの底面110d(Z軸方向下方)に向けた状態で収容されている。取り出し口110b側の第1平坦領域F1は、好ましくは幅寸法Wfがセラミック素体11の幅寸法Wの80%以上100%未満となるように形成される。凹部110aの底面110d側の第2平坦領域F2は、好ましくはX軸方向における長さ寸法Lfがセラミック素体11の長さ寸法Lの80%以上100%未満となるように形成される。
【0092】
[積層セラミックコンデンサ10の実装方法]
図15は、積層セラミックコンデンサ10の実装工程を示す模式的な断面図であり、
図14に対応する断面を示す。
図16は、積層セラミックコンデンサ10が実装された積層セラミックコンデンサ実装基板(実装基板)200のY軸方向から見た断面図である。
図17は、実装基板200のX軸方向から見た側面図である。
積層セラミックコンデンサ10は、包装体100から1個ずつ取り出され、電子機器の回路基板210に実装される。以下、
図15~17を参照しつつ説明する。
【0093】
まず、封止部120が収容部110から剥離される。続いて、
図15に示すように、チップマウンタの吸着ノズルMにより、包装体100の取り出し口110bから積層セラミックコンデンサ10が取り出される。吸着ノズルMは、Z軸方向上方から取り出し口110b側を向いている第1平坦領域F1を吸着し、保持する。
【0094】
吸着ノズルMは、第1平坦領域F1を吸着した状態で、積層セラミックコンデンサ10を回路基板210上に移動させる。吸着ノズルMは、回路基板210上の所定の位置に積層セラミックコンデンサ10を配置した後、吸着を解除する。このときも、第1平坦領域F1はZ軸方向上方を向き、第2平坦領域F2はZ軸方向下方を向いている。
【0095】
その後、積層セラミックコンデンサ10の外部電極14,15と回路基板210とがはんだHなどによってZ軸方向に接合されることで、
図16及び
図17に示すような積層セラミックコンデンサ10が実装された実装基板200が形成される。
実装基板200においても、第1平坦領域F1がZ軸方向上方を向き、第2平坦領域F2がZ軸方向下方を向いた状態で積層セラミックコンデンサ10が実装されている。すなわち、実装基板200では、第2平坦領域F2が回路基板210とZ軸方向に対向している。
【0096】
ここで、誘電体パターンが空間部の体積の75%以上100%未満の体積で形成されない場合、
図18に示す積層セラミックコンデンサ10'のように、セラミック素体11'の主面11'e,11'fの中央部が曲面となる。この場合、吸着ノズルMの先端とセラミック素体の主面との間に隙間が生じ、吸着ノズルMの吸着が不十分となる。したがって、実装工程において、積層セラミックコンデンサの主面を吸着できない、移動の途中で落とす、といった不具合が発生するおそれがある。あるいは、
図18に示すように、積層セラミックコンデンサ10'が回路基板210に配置される際にバランスを崩し、回路基板210に対して大きく傾いた状態で接合されるおそれがある。
【0097】
本実施形態では、セラミック素体11の主面11e,11fに第1平坦領域F1及び第2平坦領域F2が形成され、これらの平坦領域F1,F2をそれぞれZ軸方向上方及び下方に向けた状態で積層セラミックコンデンサ10が包装される。これにより、吸着ノズルMの先端とセラミック素体11の第1平坦領域F1とが密着し、吸着ノズルMが第1平坦領域F1を安定して吸着することができる。したがって、吸着ノズルMによる吸着時の不具合を防止し、積層セラミックコンデンサ10の実装を円滑に行うことができる。
【0098】
加えて、回路基板210側の主面11fに第2平坦領域F2が形成されることにより、回路基板210に面する外部電極14,15の表面も略平坦に形成される。これにより、はんだHなどによる回路基板210への接合時の姿勢を安定させることができ、回路基板210に対して傾いて接合されることを防止できる。したがって、回路基板210において、隣接する他の電子部品との接触を防止でき、積層セラミックコンデンサ10と他の電子部品とを高密度に実装することが可能となる。また、一方の外部電極が回路基板のランドパターンから離間するチップ立ちを抑制することができ、実装時の不具合をより確実に防止できる。
【0099】
図19は、回路基板210に実装された複数の積層セラミックコンデンサ10を備えた実装基板200の構成例を示す側面図である。
同図に示すように、一つの回路基板210上に複数の積層セラミックコンデンサ10を配置する場合には、Y軸方向に沿って、セラミック素体11の幅寸法Wの30%以下の間隔Rをあけて積層セラミックコンデンサ10を実装することができる。これにより、複数の積層セラミックコンデンサ10を回路基板210上に高密度で実装でき、実装基板200の高機能化及び省スペース化を実現できる。なお、間隔Rは、Y軸方向において隣接する積層セラミックコンデンサ10の間の最も狭い部分の間隔とする。
【0100】
また、積層セラミックコンデンサ10では、セラミック素体11の高さ寸法Tを幅寸法Wの1.1倍以上1.6倍以下とすることにより、幅寸法Wよりも高さ寸法Tが大きくとも重心を安定させることができる。このため、包装体100の凹部110a内及び実装工程において、積層セラミックコンデンサ10の倒れを防止し、積層セラミックコンデンサ10の高さ方向がZ軸方向に一致する姿勢で積層セラミックコンデンサ10を取り扱うことができる。したがって、これによっても積層セラミックコンデンサ10の実装を円滑に行うことができる。
【0101】
さらに、セラミック素体11の長さ寸法Lを高さ寸法Tの1.0倍より大きく1.5倍以下とすることによっても、セラミック素体11の重心を安定させることができる。したがって、積層セラミックコンデンサ10の実装時における取り扱い性をより高めることができる。
【0102】
このように、積層セラミックコンデンサ10によれば、内部電極12,13の積層数を増やしても実装時の不具合を防止できるため、実装面積を変えずに容量を高めることができる。したがって、大容量であって、電子機器の小型化に貢献できる積層セラミックコンデンサ10を実現することができる。
【0103】
[実施例及び比較例]
本実施形態の実施例及び比較例として、上記の製造方法に基づいて積層セラミックコンデンサ10のサンプルを作製し、形状、吸着ノズルMに対する吸着率及び実装不良率について調べた。
【0104】
まず、積層セラミックコンデンサの各サンプル(実施例1~3、比較例1及び2)を作製した。各サンプルのサイズは、長さ寸法(L)0.69mm、幅寸法(W)0.39mm、高さ寸法(T)0.55mmの第1サイズ、長さ寸法(L)1.15mm、幅寸法(W)0.65mm、高さ寸法(T)1.00mmの第2サイズ、及び長さ寸法(L)1.20mm、幅寸法(W)0.75mm、高さ寸法(T)0.85mmの第3サイズの3種類であった。すなわち、高さ寸法に対する長さ寸法の比(L/T)は1.15~1.41、幅寸法に対する高さ寸法の比(T/W)は1.13~1.54であった。また以下の各評価では、各実施例及び各比較例につきそれぞれ3種類のサイズを各100個ずつ、合計1500個のサンプルを用いた。
【0105】
実施例1~3、比較例1の各サンプルでは、それぞれ誘電体パターンを形成した。内部電極パターンの厚さに非電極形成領域の面積を乗じた空間部の体積に対する誘電体パターンの体積率(空間占有率)を、表1に示す。なお、同表に示す空間占有率の値は、各実施例及び各比較例のそれぞれ300個のサンプルについての平均値とした。
実施例1では上記空間占有率が95%、実施例2では90%、実施例3では75%であり、いずれも75%以上100%未満であった。一方、比較例1では上記空間占有率が50%であった。比較例2については、誘電体パターンを形成していないため、空間占有率は0%であった。
【0106】
【0107】
また、積層セラミックコンデンサの幅寸法(W)に対する一方の平坦領域の幅寸法(Wf)の割合(Wf/W)及び長さ寸法(L)に対する他方の平坦領域の長さ寸法(Lf)の割合(Lf/L)を測定した。結果を、表1に示す。なお、同表に示す幅寸法の割合の値及び長さ寸法の割合の値は、各実施例及び各比較例のそれぞれ300個のサンプルについての平均値とした。また、各サンプルにおける幅寸法の割合の値としては、各サンプルの2つの主面のうち任意の一方の主面の平坦領域の当該幅寸法の割合の値を採用し、各サンプルにおける長さ寸法の割合の値としては、各サンプルの他方の主面の平坦領域の当該長さ寸法の割合の値を採用した。
【0108】
上記幅寸法の割合は、実施例1では85%、実施例2では83%、実施例3では82%であり、実施例1~3では、いずれも80%以上であった。一方、比較例1では上記幅寸法の割合が65%、比較例2では35%であり、いずれも80%未満であった。
また、上記長さ寸法の割合は、実施例1では92%、実施例2では90%、実施例3では89%であり、実施例1~3では、いずれも80%以上であった。一方、比較例1では上記長さ寸法の割合が79%、比較例2では65%であり、いずれも80%未満であった。
【0109】
上記幅寸法の割合(Wf/W)及び上記長さ寸法の割合(Lf/L)は、誘電体パターンの空間占有率と正の相関が見られた。具体的には、空間占有率が75%以上100%未満の実施例1~3では、いずれもWf/W及びLf/Lが80%以上であるが、空間占有率が50%以下の比較例1,2では、いずれもWf/W及びLf/Lが80%未満となった。このことから、誘電体パターンの空間占有率を75%以上100%未満とすることにより、上記幅寸法の割合及び上記長さ寸法の割合が80%以上となるように平坦領域を形成できることが確認された。
【0110】
続いて、包装体の凹部を有する収容部を準備し、上記幅寸法の割合の大きい方の平坦領域を有する主面を取り出し口側に向けた状態で、各サンプルを凹部に収容した。そして、チップマウンタの吸着ノズルにより各サンプルの取り出し口側の主面を吸着しようと試みた。各実施例及び各比較例のそれぞれ300個のサンプル中、当該主面を吸着できたものの割合を「吸着率」として求めた。結果を表1に示す。
【0111】
同表に示すように、実施例1~3は、いずれも吸着率が99%であり、ほぼ全てのサンプルで吸着が可能であり、実装時の取り扱い性が良好であることが確認された。一方、比較例1の吸着率は92%、比較例2の吸着率は85%であり、1割~2割程度のサンプルで吸着が失敗した。このため、比較例1,2では、実施例1~3よりも実装時の取り扱い性が劣ることが確認された。
【0112】
次に、回路基板上に上記幅寸法の20%の間隔を空けて設けたランドパターンにクリームはんだを印刷し、吸着できたサンプルを上記ランドパターン上に配置し、リフロー炉ではんだ接合を行った。各実施例及び各比較例において、吸着及び配置ができたサンプル中、隣接する部品と接触したもの、又はチップ立ちにより一方のランドパターンとの離間が確認できたものの割合を「実装不良率」として求めた。結果を表1に示す。
【0113】
同表に示すように、実施例1~3は、いずれも実装不良率が1%であり、ほぼ全てのサンプルで良好な実装が可能であることが確認された。一方、比較例1で5%、比較例2で9%の実装不良が発生した。このため、比較例1,2では、実施例1~3よりも実装時の取り扱い性が劣ることが確認された。
【0114】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0115】
例えば、積層セラミックコンデンサ10では、積層部16がZ軸方向に複数に分割して設けられていてもよい。この場合、各積層部16において内部電極12,13がZ軸方向に沿って交互に配置されていればよく、積層部16が切り替わる部分において第1内部電極12又は第2内部電極13が連続して配置されていてもよい。
【0116】
また、上記実施形態では、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、本発明は、対を成す内部電極が交互に配置される積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、圧電素子などが挙げられる。
【符号の説明】
【0117】
10…積層セラミックコンデンサ(セラミック電子部品)
11…セラミック素体
11e…第1主面
11f…第2主面
12,13…内部電極
14,15…外部電極
F1…第1平坦領域
F2…第2平坦領域
100…包装体(積層セラミック電子部品包装体)
200…実装基板(積層セラミック電子部品実装基板)
210…回路基板