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特許7510743組換え酸性α-グルコシダーゼを含む製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】組換え酸性α-グルコシダーゼを含む製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20240627BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240627BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240627BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240627BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20240627BHJP
   C12N 15/56 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
A61K38/47
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/12
A61K47/26
A61P3/00
A61P43/00 111
C12N9/26 Z ZNA
C12N15/56
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018551370
(86)(22)【出願日】2017-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 US2017024982
(87)【国際公開番号】W WO2017173060
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】62/315,436
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/457,588
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/473,999
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507170099
【氏名又は名称】アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャー, ヒング
(72)【発明者】
【氏名】テスラー, セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】サンダーランド, ウェンディ
(72)【発明者】
【氏名】ディローン, エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ドー, フン
(72)【発明者】
【氏名】ゴッシャル, ラッセル
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】山村 祥子
【審判官】井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0148556(US,A1)
【文献】Molecular Genetics and Metabolism 2016年2月11日 Vol.117,No.2 Abstract No.160,S66-S67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580
Caplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬製剤であって、
(a)組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団であって、rhGAA分子におけるN-グリカンの40%-60%が複合型N-グリカンであり、
rhGAA分子は、rhGAA1モルあたり、少なくとも3モルのマンノース-6-リン酸(M6P)残基、及び2.0~8.0モルのシアル酸残基を含む、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団;
(b)クエン酸塩緩衝剤;および
(c)マンニトール、ポリソルベート80及びそれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1つの賦形剤
を含み、前記製剤のpHが5.0~7.0である、医薬製剤。
【請求項2】
医薬製剤であって、
(a)組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団であって、rhGAA分子におけるN-グリカンの40%-60%が複合型N-グリカンであり、
rhGAA分子は、rhGAA1モルあたり、少なくとも3モルのマンノース-6-リン酸(M6P)残基を含む、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団;
(b)クエン酸塩緩衝剤;および
(c)マンニトール、ポリソルベート80及びそれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1つの賦形剤
を含み、前記製剤のpHが5.0~7.0であり、
rhGAA分子が、配列番号2のN84、N177、N334、N414、N596、N826およびN869にそれぞれ対応するアミノ酸に、第1の、第2の、第3の、第4の、第5の、第6の、第7の、潜在的なN-グリコシル化部位を含み、rhGAA分子の少なくとも50%が、第1の潜在的なN-グリコシル化部位でビス-マンノース-6-リン酸(ビス-M6P)を有するグリカンを含む、
医薬製剤。
【請求項3】
rhGAA分子が、配列番号2のN84、N177、N334、N414、N596、N826およびN869にそれぞれ対応するアミノ酸に、第1の、第2の、第3の、第4の、第5の、第6の、第7の、潜在的なN-グリコシル化部位を含み、rhGAA分子の少なくとも50%が、第1の潜在的なN-グリコシル化部位でビス-マンノース-6-リン酸(ビス-M6P)を有するグリカンを含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記rhGAAが、5mg/mL~50mg/mLの濃度で存在し、15mg/mLの濃度で存在してもよい、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記rhGAAが、12mg/mL~18mg/mLの濃度で存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記製剤のpHが5.5~7.0であり、6.0であってもよい、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記製剤のpHが5.5~6.0である、請求項1からのいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
クエン酸塩緩衝剤は、カリウム、ナトリウムまたはアンモニウム塩を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
マンニトールは、10mg/mLから50mg/mLの濃度で存在し、且つ/又は、ポリソルベート80は、0.2mg/mLから0.5mg/mLの濃度で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
マンニトールは、20mg/mLの濃度で存在し、且つポリソルベート80は、0.5mg/mLの濃度で存在する、請求項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
(d)アルカリ化剤;および/または
(e)酸性化剤、
をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬製剤であって、
前記アルカリ化剤および酸性化剤は、前記医薬製剤のpHを5.0~6.0に維持する量で存在する、医薬製剤。
【請求項12】
前記rhGAA分子が、rhGAA1モルあたり少なくとも4モルのシアル酸残基を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記rhGAA分子が、rhGAA1モルあたり2.0~8.0モル、3.0~8.0モル、又は4.0~8.0モルのシアル酸残基を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記rhGAA分子が、rhGAA1モルあたり3.0~5.0モルのM6P残基を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
(a)rhGAA分子の集団;
(b)クエン酸ナトリウム;
(c)クエン酸一水和物;
(d)マンニトール;
(e)ポリソルベート80;
(f)水;
(g)任意選択により、酸性化剤;および
(h)任意選択により、アルカリ化剤、
から本質的になる、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬製剤であって、
前記製剤のpHが5.0~6.0であり、任意選択で、rhGAA分子の集団は、15mg/mLの濃度で存在し、クエン酸ナトリウム緩衝剤は、25mMの濃度で存在し、マンニトールは、20mg/mLの濃度で存在し、ポリソルベート80は、0.5mg/mLの濃度で存在する、医薬製剤。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬製剤であって、無色、透明、および可視粒子なしである、医薬製剤。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬製剤を含む医薬組成物であって、医薬製剤は、凍結乾燥されている、医薬組成物。
【請求項18】
患者においてポンペ病を処置するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記医薬製剤が患者に投与される前に希釈される、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
患者においてポンペ病を処置するための、請求項17に記載の医薬組成物であって、患者に投与する前に前記医薬組成物が再構成される、医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬製剤を調製する方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも1つの緩衝剤、少なくとも1つの賦形剤、およびrhGAA分子の集団を含む溶液を調製すること;
(b)任意選択により、前記溶液のpHを調整すること;
(c)任意選択により、前記溶液にさらなる水を加えること;
(d)任意選択により、前記溶液をろ過すること;および
(e)任意選択により、前記溶液を貯蔵すること
を含む、方法。
【請求項22】
請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬製剤を凍結乾燥することを含む、医薬組成物を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の原理および実施形態は、一般に、組換え酸性α-グルコシダーゼ、および特に液体製剤を含む製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンペ病は、酸マルターゼ欠乏症またはII型糖源蓄積症としても知られ、いくつかのリソソーム蓄積症の1つである。リソソーム蓄積症は、リソソームと呼ばれる細胞内区画内の細胞スフィンゴ糖脂質、グリコーゲン、またはムコ多糖類の蓄積を特徴とする常染色体劣性遺伝疾患群である。これらの疾患を有する個体は、これらの物質の1つ以上の加水分解を触媒するのに欠陥がある酵素をコードする変異遺伝子を保有し、それらの物質はリソソームに蓄積する。リソソーム障害の他の例には、ゴーシェ病、GM1-ガングリオシドーシス、フコシドーシス、ムコ多糖症、ハーラー症候群、ニーマン-ピックAおよびB病、およびファブリー病が含まれる。ポンペ病はまた、神経筋疾患または代謝性ミオパチーに分類される。
【0003】
ポンペ病は、約40,000出生で1人発生すると推定されており、酵素リソソームα-グルコシダーゼ(EC:3.2.1.20)(一般に酸性α-グルコシダーゼとしても知られる)をコードするGAA遺伝子の突然変異によって引き起こされる。酸性α-グルコシダーゼは、リソソーム内のグルコースへのその加水分解を触媒することにより、動物におけるグルコースの主要な貯蔵形態である分枝多糖、グリコーゲンの代謝に関与する。ポンペ病に罹患している個体は、不活性であるか、または活性が低下した変異体である欠損酸性α-グルコシダーゼを産生するため、グリコーゲン分解はゆっくりと起こるか、または全く起こらず、グリコーゲンは様々な組織、特に線条筋において、リソソームに蓄積し、進行性の筋力低下および呼吸器不全を含む広範囲の臨床症状を生じる。心臓および骨格筋などの組織は特に影響を受ける。
【0004】
ポンペ病は、酵素欠乏症の程度、発症の重症度および年齢によって大きく異なり、その多くが様々な重症度の疾患症状を引き起こす、GAA遺伝子の500以上の異なる突然変異が同定されている。この疾患は、早期発症または乳児期発症および後期発症という広範なタイプに分類されている。より早期の発症およびより低い酵素活性は、一般に、より重度の臨床経過に関連する。小児ポンペ病は最も重篤であり、完全またはほぼ完全な酸性α-グルコシダーゼ欠乏に起因し、筋緊張の重度な欠如、衰弱、肝臓および心臓の肥大、および心筋症を含む症状を呈する。舌が肥大して突出することがあり、嚥下が困難になることがある。ほとんどの患児は、2歳までに呼吸器または心臓の合併症で死亡する。後期発症のポンペ病は、12ヵ月以上のいずれの年齢でも存在し得、心臓病の関与がなく、短期予後がより良好であることを特徴とする。症状は進行性の骨格筋機能不全に関連し、体幹、近位下肢および隔膜における一般的な筋力低下および呼吸筋の消耗を伴う。成人患者では、重大な症状または運動制限がない場合もある。予後は、一般に、呼吸筋の関与の程度に依存する。ポンペ病に罹患した対象の大部分は、徐々に車椅子の使用および補助換気を必要とする身体的衰弱が進行し、多くの場合に呼吸不全のために生じる早期死亡を伴う。
【0005】
ポンペ病の最近の処置の選択肢には、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)による酵素補充療法(ERT)が含まれる。従来のrhGAA製品は、Genzyme,Inc.社のアルグルコシダーゼアルファ、マイオザイム(登録商標)またはルミザイム(登録商標)の名称で知られている。ERTは、患者の生涯にわたって必要とされる慢性処置であり、静脈内注入によって置換酵素を投与することを含む。次いで、補充酵素は循環中で輸送され、細胞内のリソソームに入り、そこで蓄積されたグリコーゲンを分解するよう作用し、内因性欠損突然変異酵素の欠損した活性を補い、そうして病気の症状を緩和する。
【0006】
rhGAAなどの代替酵素を調製し、貯蔵し、輸送し、患者に投与する方法は困難である。ERTに使用される酵素は、一般に比較的複雑で繊細であり、このため、付随する緩衝剤、賦形剤などの選択が重要なものとなっている。酵素が適切に保存されないと、多くの量を要し得、これにより処置が効果で非効率的なものとなる。
【0007】
いくつかの従来のrhGAA製品は、防腐剤を含まない単回使用バイアルに入った凍結乾燥(フリーズドライ)した粉末として患者に提供される。次いで、rhGAAは、バイアル中で再構成し、次いで希釈し、静脈内投与しなければならない。凍結乾燥は、製造後に酵素を患者に投与する準備が整うまで保存するのに役立つが、このプロセス自体がそれだけで酵素を損傷する可能性がある。したがって、rhGAA製剤中の成分の選択には、タンパク質濃度および活性を保存するのに役立つよう、細心の注意が払われなければならない。
【0008】
さらに、組換え酵素は、野生型酵素と構造的に異なることが多い。組換え酵素のアミノ酸がその野生型の対応物と同一であったとしても、炭水化物の化学的性質に違いがある可能性がある。したがって、新しい組換え酵素が発見されると、酵素のための製剤は、新たに発見された酵素の化学的性質に特異的に開発されなければならない。
【0009】
したがって、酵素活性および濃度を保存する、rhGAAなどの組換え酵素を貯蔵および輸送するための製剤に対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの態様は、医薬製剤に関する。実施形態1において、製剤は、
(a)組換え酸性α-グルコシダーゼが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現し、アルグルコシダーゼアルファの1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位の含有量と比較して、増加した含有量の1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含む、組換え酸性α-グルコシダーゼ;
(b)クエン酸塩、リン酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤;および
(c)マンニトール、ポリソルベート80、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤
を含み、製剤のpHは約5.0~約7.0である。
【0011】
実施形態2は、実施形態1に記載の医薬製剤への改変を含み、組換え酸性α-グルコシダーゼは、約5mg/mL~約50mg/mLの濃度で存在する。
【0012】
実施形態3は、実施形態1または2に記載の医薬製剤への改変を含み、組換え酸性α-グルコシダーゼは、約15mg/mLの濃度で存在する。
【0013】
実施形態4は、実施形態1~3のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、製剤のpHは約5.5~約7.0である。
【0014】
実施形態5は、実施形態1~4のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、製剤のpHは約6.0である。
【0015】
実施形態6は、実施形態1~5のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、少なくとも1つの緩衝剤はクエン酸塩を含む。
【0016】
実施形態7は、実施形態1~6のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、少なくとも1つの緩衝剤はカリウム、ナトリウムまたはアンモニウム塩を含む。
【0017】
実施形態8は、実施形態1~7のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、少なくとも1つの緩衝剤はクエン酸ナトリウムを含む。
【0018】
実施形態9は、実施形態1~8のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、少なくとも1つの緩衝剤は、約10mM~約100mMの濃度で存在する。
【0019】
実施形態10は、実施形態1~9のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、少なくとも1つの緩衝剤は、約25mMの濃度で存在する。
【0020】
実施形態11は、実施形態1~10のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、トレハロース、スクロース、グリシンまたはそれらの組み合わせは排除される。
【0021】
実施形態12は、実施形態1~11のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、少なくとも1つの賦形剤は、約10mg/mL~約50mg/mLの濃度で存在するマンニトールである。
【0022】
実施形態13は、実施形態1~12のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、少なくとも1つの賦形剤は、約0.2mg/mL~約0.5mg/mLの濃度で存在するポリソルベート80である。
【0023】
実施形態14は、実施形態1~13のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、マンニトールは約20mg/mLの濃度で存在し、ポリソルベート80は約0.5mg/mLの濃度で存在する。
【0024】
実施形態15は、実施形態1~14のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、さらに、(d)水、を含む。
【0025】
実施形態16は、実施形態1~15のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、さらに、(d)アルカリ化剤;および/または(e)酸性化剤を含み、アルカリ化剤および酸性化剤は、医薬製剤のpHを約5.0~約6.0に維持する量で存在する。
【0026】
実施形態17は、実施形態1~16のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの少なくとも30%は、1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有する1つ以上のN-グリカン単位を含む。
【0027】
実施形態18は、実施形態1~17のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ1モルあたり平均で0.5~7.0モル含む。
【0028】
実施形態19は、実施形態1~18のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、平均で、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ1モルあたり少なくとも3モルのマンノース-6-リン酸残基、および組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ1モルあたり少なくとも4モルのシアル酸残基を含む。
【0029】
実施形態20は、実施形態1~19のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、7つの潜在的なN-グルコシル化部位を含み、前記組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの少なくとも50%は、第1の部位に2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含有し、前記組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの少なくとも30%は、第2の部位に1つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含有し、前記組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの少なくとも30%は、第4の部位に2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含有し、および前記組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの少なくとも20%は、第4の部位に1つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含有する。
【0030】
実施形態21は、実施形態1~20のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、医薬製剤は、
(a)組換え酸性α-グルコシダーゼ;
(b1)クエン酸ナトリウム;
(b2)クエン酸一水和物;
(c1)マンニトール;
(c2)ポリソルベート80;
(d)水;
(e)任意選択により、酸性化剤;および
(f)任意選択により、アルカリ化剤、
から本質的になり、製剤のpHは約5.0~約6.0である。
【0031】
実施形態22は、実施形態1~21のいずれかに記載の医薬製剤への改変を含み、医薬製剤は、
(a)約15mg/mLの濃度で存在する、前記組換え酸性α-グルコシダーゼ;
(b)約25mMの濃度で存在する、クエン酸ナトリウム緩衝剤;
(c1)約20mg/mLの濃度で存在する、マンニトール;
(c2)約0.5mg/mLの濃度で存在する、ポリソルベート80;および
(d)水;
(e)任意選択により、酸性化剤;および
(f)任意選択により、アルカリ化剤、
から本質的になり、製剤のpHは約5.0~約6.0である。
【0032】
本発明の別の態様は、凍結乾燥した医薬組成物に関する。したがって、実施形態23は、凍結乾燥後の実施形態1~22のいずれかに記載の製剤を含む、医薬組成物に関する。実施形態24は、
(a)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現し、アルグルコシダーゼアルファの1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位の含有量と比較して、増加した含有量の1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含む、組換え酸性α-グルコシダーゼ;
(b)クエン酸塩、リン酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝剤;および
(c)トレハロース、マンニトール、ポリソルベート80、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤、
を含む凍結乾燥した混合物を含む、医薬組成物に関する。
【0033】
本発明の別の態様は、ポンペ病を処置する方法に関する。したがって、実施形態25は、実施形態1~22に記載の医薬製剤を、それを必要とする患者へ投与することを含む。実施形態26は、実施形態25に記載の方法への改変を含み、さらに、医薬製剤を患者に投与する前に希釈することを含む。実施形態27は、実施形態23または24に記載の医薬組成物を再構成すること;および再構成された医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、ポンペ病を処置する方法に関する。
【0034】
本発明の別の態様は、上記医薬製剤を調製する方法に関する。したがって、実施形態28は、実施形態1~22のいずれかに記載の医薬製剤を調製する方法であって、少なくとも1つの緩衝剤、少なくとも1つの賦形剤、および組換え酸性α-グルコシダーゼを水に加えて溶液を提供すること;任意選択により、前記溶液のpHを調整すること;および任意選択により、前記溶液にさらなる水を加えること、を含む方法に関する。実施形態29は、実施形態28に記載の方法への改変を含み、さらに、溶液をろ過することを含む。実施形態30は、実施形態27または28に記載の方法への改変を含み、さらに、溶液を貯蔵することを含む。
【0035】
本発明のさらなる特徴は、以下の明細書記載および添付図面から明らかになる:
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】非リン酸化高マンノースグリカン、モノ-M6Pグリカン、およびビス-M6Pグリカンを示す。
図1B】M6P基の化学構造を示す。
図2A】標的組織(例えば、ポンペ病を有する対象の筋肉組織)に対するM6Pを有するグリカンを介したrhGAAの生産的標的化を記載する。
図2B】非標的組織(例えば、肝臓および脾臓)への非生産的薬物クリアランス、または非標的組織への非M6Pグリカンの結合によって説明される。
図3A】それぞれルミザイム(登録商標)およびマイオザイム(登録商標)のCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示すグラフである。破線はM6P溶出勾配を示す。M6Pによる溶出により、M6P含有グリカンを介して結合したGAA分子がCIMPRに置換された。図2Aに示すように、ルミザイム(登録商標)におけるGAA活性の78%がM6Pの添加前に溶出した。図2Bは、GAAマイオザイム(登録商標)活性の73%がM6Pの添加前に溶出したことを示す。ルミザイム(登録商標)またはマイオザイム(登録商標)におけるrhGAAの22%または27%のみがM6Pで溶出された。これらの図は、これら2つの従来のrhGAA製品における大部分のrhGAAが、標的筋肉組織のCIMPRを標的化するのに必要なM6Pを有するグリカンを欠いていることを示す。
図3B】それぞれルミザイム(登録商標)およびマイオザイム(登録商標)のCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示すグラフである。破線はM6P溶出勾配を示す。M6Pによる溶出により、M6P含有グリカンを介して結合したGAA分子がCIMPRに置換された。図2Aに示すように、ルミザイム(登録商標)におけるGAA活性の78%がM6Pの添加前に溶出した。図2Bは、GAAマイオザイム(登録商標)活性の73%がM6Pの添加前に溶出したことを示す。ルミザイム(登録商標)またはマイオザイム(登録商標)におけるrhGAAの22%または27%のみがM6Pで溶出された。これらの図は、これら2つの従来のrhGAA製品における大部分のrhGAAが、標的筋肉組織のCIMPRを標的化するのに必要なM6Pを有するグリカンを欠いていることを示す。
図4】rhGAAをコードするDNAでCHO細胞を形質転換するためのDNA構築物を示す。CHO細胞を、rhGAAをコードするDNA構築物で形質転換した。
図5A】それぞれマイオザイム(登録商標)およびATB200 rhGAAのCIMPR親和性クロマトグラフィーの結果を示すグラフである。図5Bから明らかなように、ATB200 rhGAA中のrhGAAの約70%はM6Pを含んでいた。
図5B】それぞれマイオザイム(登録商標)およびATB200 rhGAAのCIMPR親和性クロマトグラフィーの結果を示すグラフである。図5Bから明らかなように、ATB200 rhGAA中のrhGAAの約70%はM6Pを含んでいた。
図6】陰イオン交換(AEX)カラムでの捕捉を伴うおよび伴わないATB200 rhGAAのCIMPR親和性クロマトグラフィーの結果を示すグラフである。
図7】ルミザイム(登録商標)およびATB200 rhGAAのPolywax溶出プロファイルを示すグラフである。
図8】BP-rhGAA、ATB200-1およびATB200-2として同定されたATB200 rhGAAの3つの異なる調製物と比較した、ルミザイム(登録商標)のN-グリカン構造の概要を示す表である。
図9A】ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。
図9B】ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。
図9C】ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。
図9D】ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。
図9E】ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。
図9F】ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。
図9G】ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。
図9H】ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。
図10A図10Aは、ATB200 rhGAA(左のトレース)とルミザイム(右のトレース)のCIMPR結合親和性を比較するグラフである。
図10B図10Bは、ルミザイム(登録商標)およびATB200 rhGAAのビス-M6P含有量を比較する表である。
図11A図11Aは、様々なGAA濃度で正常線維芽細胞内のATB200 rhGAA活性(左のトレース)とルミザイム(登録商標)rhGAA活性(右のトレース)とを比較するグラフである。
図11B図11Bは、様々なGAA濃度でポンペ病を有する対象由来の線維芽細胞内のATB200 rhGAA活性(左のトレース)とルミザイム(登録商標)rhGAA活性(右のトレース)とを比較する表である。
図11C図11Cは、健常対象およびポンペ病に罹患した対象由来の線維芽細胞のK取り込みを比較する表である。
図12A図12Aは、溶媒(ネガティブコントロール)、20mg/mlのアルグルコシダーゼアルファ(ルミザイム(登録商標))、または5、10もしくは20mg/kgのATB200と接触させた後の、マウス心筋における組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの用量に対するグリコーゲンの量を示すグラフである。
図12B図12Bは、溶媒(ネガティブコントロール)、20mg/mlのアルグルコシダーゼアルファ(ルミザイム(登録商標))、または5、10もしくは20mg/kgのATB200と接触させた後の、マウス四頭筋における組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの用量に対するグリコーゲンの量を示すグラフである。
図12C図12Cは、溶媒(ネガティブコントロール)、20mg/mlのアルグルコシダーゼアルファ(ルミザイム(登録商標))、または5、10もしくは20mg/kgのATB200と接触させた後の、マウス三頭筋における組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの用量に対するグリコーゲンの量を示すグラフである。
図13】ATB200 rhGAAとシャペロンミグルスタットとの組み合わせが、ミグルスタットシャペロンを含まないルミザイム(登録商標)またはATB200 rhGAAによる処置よりも、GAAノックアウトマウスにおいて著しく良好なグリコーゲンクリアランスを提供したことを示す表である。
図14】ミグルスタットの存在下および非存在下で溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウス由来の心臓、隔膜およびヒラメ筋の一連の電子顕微鏡写真であり、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP-1)のレベルを示す。
図15】ミグルスタットの存在下および非存在下で溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウス由来の心臓およびヒラメ筋の一連の電子顕微鏡写真であり、過ヨウ素酸シッフ試薬(PAS)で染色することによりグリコーゲンレベルを示す。
図16】ミグルスタットの存在下および非存在下で溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウス由来の四頭筋の一連の電子顕微鏡写真(1000x)であり、メチレンブルーで染色して空胞を示した(矢印で示す)。
図17】ミグルスタットの存在下および非存在下で溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウス由来の四頭筋の一連の電子顕微鏡写真(40x)であり、これは、オートファジーマーカー微小管関連タンパク質1A/1B型軽鎖3ホスファチジルエタノールアミンコンジュゲート(LC3A II)およびp62、インスリン依存性グルコーストランスポーターGLUT4およびインスリン非依存性グルコーストランスポーターGLUT1のレベルを示す。
図18A】ミグルスタットの存在下で溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスのワイヤハンドおよび握力筋肉データを示すグラフである。
図18B】ミグルスタットの存在下で溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスのワイヤハンドおよび握力筋肉データを示すグラフである。
図19A】ミグルスタットの存在下および非存在下で、溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスからの四頭筋、三頭筋および心臓細胞におけるグリコーゲンレベルを示すグラフである。
図19B】ミグルスタットの存在下および非存在下で、溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスからの四頭筋、三頭筋および心臓細胞におけるグリコーゲンレベルを示すグラフである。
図19C】ミグルスタットの存在下および非存在下で、溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスからの四頭筋、三頭筋および心臓細胞におけるグリコーゲンレベルを示すグラフである。
図19D】ミグルスタットの存在下および非存在下で、溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスからの四頭筋、三頭筋および心臓細胞におけるグリコーゲンレベルを示すグラフである。
図19E】ミグルスタットの存在下および非存在下で、溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスからの四頭筋、三頭筋および心臓細胞におけるグリコーゲンレベルを示すグラフである。
図19F】ミグルスタットの存在下および非存在下で、溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスからの四頭筋、三頭筋および心臓細胞におけるグリコーゲンレベルを示すグラフである。
図19G】ミグルスタットの存在下および非存在下で、溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウスからの四頭筋、三頭筋および心臓細胞におけるグリコーゲンレベルを示すグラフである。
図20】ミグルスタットの存在下および非存在下で溶媒、アルグルコシダーゼアルファおよびATB200で処置した野生型およびGaaノックアウトマウス由来の外側広筋(VL)の筋線維の一連の顕微鏡写真(100xおよび200x)であり、ジストロフィンシグナルを示す。
図21】ポンペ病を有する成人における経口ミグルスタットと共投与したATB200の静脈内注入の安全性、忍容性、PK、PD、および有効性を評価するための、オープンラベル、一定連続、用量漸増、ヒト初回、第1/2相実験の実験デザインを示す。
図22A】5、10もしくは20mg/kgのATB200、20mg/kgのATB200および130mgのミグルスタット、または20mg/kgのATB200および260mgのミグルスタットの投与後の、ヒト対象における血漿中のGAA総タンパク質の濃度-時間プロファイルを示すグラフである。
図22B】5、10もしくは20mg/kgのATB200、20mg/kgのATB200および130mgのミグルスタット、または20mg/kgのATB200および260mgのミグルスタットの投与後の、ヒト対象における血漿中のGAA総タンパク質の濃度-時間プロファイルを示すグラフである。
図22C】20mg/kgのATB200、20mg/kgのATB200および130mgのミグルスタット、または20mg/kgのATB200および260mgのミグルスタットの投与後の、ヒト対象における血漿中のGAA総タンパク質のAUCを示すグラフである。
図22D】20mg/kgのATB200および260mgのミグルスタットの投与後の、2人の別個のヒト対象における血漿中のGAA総タンパク質の濃度-時間プロファイルを示すグラフである。
図23】130mgまたは260mgのミグルスタットを投与した後のヒト対象における血漿中のミグルスタットの濃度-時間プロファイルを示すグラフである。
図24A】ATB200(5,10および20mg/kg)の漸増用量の投与、次いでATB200(20mg/kg)およびミグルスタット(130および260mg)の共投与後の、ヒト患者におけるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)およびヘキソース四糖(Hex4)レベルの変化を示すグラフである。
図24B】ATB200(5,10および20mg/kg)の漸増用量の投与、次いでATB200(20mg/kg)およびミグルスタット(130および260mg)の共投与後の、ヒト患者におけるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)およびヘキソース四糖(Hex4)レベルの変化を示すグラフである。
図24C】ATB200(5,10および20mg/kg)の漸増用量の投与、次いでATB200(20mg/kg)およびミグルスタット(130および260mg)の共投与後の、ヒト患者におけるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)およびヘキソース四糖(Hex4)レベルの変化を示すグラフである。
図24D】ATB200(5,10および20mg/kg)の漸増用量の投与、次いでATB200(20mg/kg)およびミグルスタット(130および260mg)の共投与後の、ヒト患者におけるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)およびヘキソース四糖(Hex4)レベルの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明は、以下の説明に記載された構成またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行されることが可能である。以下に列挙される実施形態は、以下に列挙されるものだけでなく、本発明の範囲に従った他の適切な組み合わせで組み合わせられ得ることが理解されよう。
【0038】
驚くべきことに、緩衝液および賦形剤の慎重な選択により、優れた安定性を示し、酵素の活性および有効性を維持しつつも酵素の沈殿を最小限に抑えながら、製剤の調製、貯蔵、輸送、再構成および投与に関連するプロセスを行うことができる、組換えGAAタンパク質ATB200の製剤が提供され得ることが発見された。したがって、本発明の一態様は、rhGAA、緩衝剤、および少なくとも1つの賦形剤を含む製剤に関する。1つ以上の実施形態において、rhGAAは、ATB200を含む。いくつかの実施形態において、製剤は液体製剤である。製剤の様々な成分に関する詳細および様々な実施形態を以下に記載する。
【0039】
定義
本明細書で使用される用語は、一般に、本発明の文脈内で、そして各用語が使用される具体的な文脈において、当該技術分野における通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびにそれらを製造および使用する方法を説明する上で、専門家に追加的な指針を提供するために、特定の用語については以下または本明細書の他の箇所で説明する。
【0040】
本明細書では、文言の説明または必要な示唆のために、文脈が他に要する場合を除き、「含む(comprises)」という単語、または「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」などの変形は、包括的な意味、すなわち、述べられた特徴の存在を特定するために使用され、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「ポンペ病」は、酸マルターゼ欠乏症、II型糖源蓄積症(GSDII)、およびII型糖源病とも呼ばれ、ヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素をコードするGAA遺伝子の突然変異を特徴とする、遺伝的リソソーム蓄積症を指すことが意図される。この用語には、乳児期、若年期および成人期発症のポンペ病が含まれるが、これらに限定されない、初期および後期発症形態が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「酸性α-グルコシダーゼ」は、グリコーゲン、マルトース、およびイソマルトースのD-グルコース単位間のα-1,4結合を加水分解するリソソーム酵素を指すことが意図される。別の名称には、リソソームα-グルコシダーゼ(EC:3.2.1.20);グルコアミラーゼ;1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼ;アミログルコシダーゼ;ガンマ-アミラーゼおよびエキソ-1,4-α-グルコシダーゼが含まれるが、これらに限定されるものではない。ヒト酸性α-グルコシダーゼは、17番染色体の長腕(位置17q25.2-q25.3)にマッピングされているGAA遺伝子(National Centre for Biotechnology Information(NCBI)Gene ID 2548)によってコードされている。野生型GAAアミノ酸全配列は、米国特許第8,592,362号明細書に記載される通り、配列番号1に記載され、GenBank受託番号AHE24104.1(GI:568760974)を有する。
【0043】
500を超える突然変異が現在ヒトGAA遺伝子において同定されており、その多くはポンペ病に関連している。酸性α-グルコシダーゼ酵素のミスフォールディングまたは誤処理を生じる突然変異には、T1064C(Leu355Pro)およびC2104T(Arg702Cys)が含まれる。さらに、酵素の成熟および処理に影響を及ぼすGAA突然変異には、Leu405ProおよびMet519Thrが含まれる。酸性α-グルコシダーゼタンパク質の活性には、アミノ酸残基516~521で保存されたヘキサペプチドWIDMNEが必要である。本明細書で使用される場合、略語「GAA」は、酸性α-グルコシダーゼ酵素を指すことが意図され、イタリック体の略語「GAA」は、ヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素をコードするヒト遺伝子を指すことが意図される。したがって、略語「rhGAA」は、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素を指すことが意図される。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「アルグルコシダーゼアルファ」は、[199-アルギニン、223-ヒスチジン]プレプロ-α-グルコシダーゼ(ヒト);Chemical Abstracts登録番号420794-05-0として同定された組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを指すことが意図される。アルグルコシダーゼアルファは、ルミザイム(登録商標)およびマイオザイム(登録商標)として、2016年1月付けで米国におけるGenzymeによる市販が承認されている。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「ATB200」は、同時係属中の特許出願PCT/米国特許出願公開第2015/053252号明細書に記載される組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを指すことが意図され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「グリカン」は、タンパク質またはポリペプチド上のアミノ酸残基に共有結合した多糖類鎖を指すことが意図される。本明細書で使用される場合、用語「N-グリカン」または「N-結合グリカン」は、アミノ酸残基の窒素原子に共有結合によってタンパク質またはポリペプチド上のアミノ酸残基に結合した多糖類鎖を指すことが意図される。例えば、N-グリカンは、アスパラギン残基の側鎖窒素原子に共有結合し得る。グリカンは、1個または数個の単糖単位を含み得、単糖単位は共有結合して直鎖または分枝鎖を形成し得る。少なくとも1つの実施形態において、ATB200に結合したN-グリカン単位は、N-アセチルグルコサミン、マンノース、ガラクトースまたはシアル酸からそれぞれ独立して選択される1つ以上の単糖単位を含み得る。タンパク質上のN-グリカン単位は、質量分析などの任意の適切な分析技術によって決定し得る。いくつかの実施形態において、N-グリカン単位は、Thermo Scientific Orbitrap Velos Pro(商標)質量分析計、Thermo Scientific Orbitrap Fusion Lumos Tribid(商標)質量分析計またはWatersXevo(登録商標)G2-XS QTof質量分析計などの機器を利用する液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)によって決定され得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「高マンノースN-グリカン」は、1~6個またはそれを超えるマンノース単位を有するN-グリカンを指すことが意図される。少なくとも1つの実施形態において、高マンノースN-グリカン単位は、アスパラギン残基に結合したビス(N-アセチルグルコサミン)鎖を含有し、さらに分枝状ポリマンノース鎖に結合し得る。本明細書で交換可能に使用される場合、用語「M6P」または「マンノース-6-リン酸」は、6位がリン酸化された、すなわち、6位のヒドロキシル基に結合したリン酸基を有する、マンノース単位を指すことが意図される。少なくとも1つの実施形態において、1つ以上のN-グリカン単位の1つ以上のマンノース単位が6位でリン酸化されて、マンノース-6-リン酸単位を形成する。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「複合N-グリカン」は、1つ以上のガラクトースおよび/またはシアル酸単位を含むN-グリカンを指すことが意図される。少なくとも1つの実施形態において、複合N-グリカンは、N-アセチルグルコサミン、ガラクトースおよびシアル酸からそれぞれ独立して選択される1つ以上の単糖単位に、1つまたはマンノース単位がさらに結合した高マンノースN-グリカンであり得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「治療有効用量」および「有効量」は、対象において治療応答を生じる、酸性α-グルコシダーゼの量を指すことが意図される。治療応答は、本明細書に記載され、および当該技術分野で公知の、任意の代理臨床マーカーまたは症状を含む、ユーザ(例えば、臨床医)が治療に対する有効な応答として認識する任意の応答であり得る。したがって、少なくとも1つの実施形態において、治療応答は、当該技術分野で公知のものなどのポンペ病の1つ以上の症状またはマーカーの改善または抑制であり得る。ポンペ病の症状またはマーカーとしては、心筋症、心臓肥大、特に体幹または下肢における進行性筋力低下、重度の低血圧、巨舌(および場合により舌の突出)、嚥下、吸い込み、および/または摂食の困難、呼吸不全、肝腫(中度)、顔面筋肉の弛緩、反射消失、運動不耐性、労作性呼吸困難、起座呼吸、睡眠時無呼吸、朝の頭痛、傾眠、脊柱前弯および/または脊柱側弯症、深部腱反射の減少、腰痛、発達的運動マイルストーンの不達成が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「酵素補充療法」または「ERT」は、非天然の精製酵素を、そのような酵素の欠乏を有する個体に導入することを指すことが意図される。投与されるタンパク質は、天然源から、または組換え発現により、得ることができる。この用語はまた、その他の点で精製酵素の投与を必要とするか、または精製酵素の投与から恩恵を受ける個体における精製酵素の導入も指す。少なくとも1つの実施形態において、そのような個体は酵素不全を患っている。導入された酵素は、インビトロで産生された精製組換え酵素、または例えば胎盤または動物の乳などの単離された組織または液体から、または植物から精製されたタンパク質であってもよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、生理学的に許容され、ヒトに投与される場合に典型的には有害な反応を生じない、分子実体および組成物を指すことが意図される。好ましくは、本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、連邦または州政府の規制当局によって承認されているか、または米国薬局方または動物、特にヒトにおける使用のための他の一般に認められている薬局方に列挙されることを意味する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、製剤に含まれる活性成分以外の物質を指し、これは一般に不活性物質である。賦形剤は、活性薬物を、薬物を作用させようとする部位に輸送するのを助け、活性薬物の放出を制御し、または可溶化を助け、または様々な他の機能を果たし得る。賦形剤の例には、緩衝剤、界面活性剤、抗菌剤、抗酸化剤、増量剤、安定剤、等張化剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される「緩衝剤」という用語は、弱酸およびその共役弱塩基の両方を含む溶液を指し、そのpHはアルカリまたは酸の添加によってわずかしか変化しない。以下にさらに説明するように、いくつかの実施形態において、医薬製剤に使用される緩衝剤は、クエン酸塩および/またはリン酸塩緩衝剤である。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト動物を指すことが意図される。少なくとも1つの実施形態において、対象は哺乳動物である。少なくとも1つの実施形態において、対象はヒトである。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「約」および「およそ」は、測定の性質または精度を考慮して、測定された量に対する許容可能な程度の誤差を指すことが意図される。例えば、誤差の程度は、当分野で理解されているように、測定に関して提供された有効数字の数によって示すことができ、測定に関して報告された最も正確な有効数字の±1の変化を含むが、これに限定されるものではない。典型的な例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。あるいは、特に生物系において、用語「約」および「およそ」は、所与の値の1桁倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書に記載の数値は、他に明記しない限りおよそのものであり、用語「約」または「およそ」は、明示的に記載されていない場合に推測できることを意味する。
【0056】
本明細書を通じて、「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、「様々な実施形態」、「1つ以上の実施形態」または「実施形態」は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、材料または性質が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な箇所における「1つ以上の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「様々な実施形態において」、「1つの実施形態において」または「実施形態において」などの表現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0057】
ATB200 rhGAA
この製剤は、酵素補充療法における使用に適した組換えGAA(rhGAA)タンパク質であるATB200を含む。ATB200の構造および産生に関する詳細ならびに変異体を以下に提供する。
【0058】
少なくとも1つの実施形態において、ATB200はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現し、アルグルコシダーゼアルファの1つ以上のマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位の含有量と比較して、増加した含有量の1つ以上のマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含む。rhGAAには7つの潜在的なN結合グリコシル化部位がある。存在するN-結合型オリゴ糖(N-グリカン)のタイプでは、それぞれのグリコシル化部位が不均一であるため、rhGAAは、M6P受容体および他の炭水化物受容体に対して様々な結合親和性を有するタンパク質とN-グリカンとの複合混合物からなる。1つのM6P基(モノ-M6P)を有するN-グリカンを有する高マンノースを含むrhGAAは、低(約6,000nM)親和性でCIMPRに結合する一方、同じN-グリカン(ビス-M6P)上に2つのM6P基を含むrhGAAは、高い(約2nM)親和性で結合する。非リン酸化、モノ-M6Pおよびビス-M6Pグリカンの代表的な構造を図1Aに示す。マンノース-6-P基を図1Bに示す。リソソーム内に入ると、rhGAAは蓄積されたグリコーゲンを酵素的に分解することができる。しかしながら、従来のrhGAAは、M6PおよびビスM6Pを有するグリカンの総レベルが低く、したがって、標的筋細胞は、リソソームへのrhGAAの送達が劣る結果となる。rhGAAの生産的薬物標的化を図2Aに示す。これらの従来の生成物中のrhGAA分子の大部分は、リン酸化されたN-グリカンを有さず、それによりCIMPRに対する親和性が欠如している。非リン酸化高マンノースグリカンはまた、ERTの非生産的クリアランスをもたらすマンノース受容体によって除去され得る(図2B)。
【0059】
ガラクトースとシアル酸を含む他のタイプのN-グリカン、複合糖質もrhGAAに存在する。複合N-グリカンはリン酸化されていないので、それらはCIMPRに対する親和性を有しない。しかし、暴露されたガラクトース残基を有する複合型N-グリカンは、肝細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体に対して中程度から高度の親和性を有し、rhGAAの迅速な非生産的クリアランスをもたらす(図2B)。
【0060】
少なくとも1つの実施形態において、酸性α-グルコシダーゼは、同時係属中の国際特許出願PCT/米国特許出願公開第2015/053252号明細書に記載されるような、本明細書でATB200と称される組換えヒト酸性α-グルコシダーゼである。ATB200は、高親和性(K~2~4nM)でカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CIMPR)に結合し、ポンペ線維芽細胞および骨格筋芽細胞(K取り込み~7~14nM)によって効率的に内在化されることが示されている。ATB200はインビボで特徴付けられ、アルグルコシダーゼアルファ(t1/2~60分)よりも短い見かけの血漿半減期(t1/2~45分)を有することが示された。
【0061】
1つ以上の実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、配列番号2に示される野生型GAAアミノ酸配列を有する。これはアミノ酸残基57~952に対応し、シグナルペプチドおよび前駆体ペプチドを含む最初の56残基を除去する天然の細胞内タンパク質分解処理後の野生型(WT)ヒトGAAと同一である。ATB200アミノ酸配列は、トリプシン消化、続いて液体クロマトグラフィー/質量分析ならびにアミノ酸配列決定によって確認されている。対照的に、現行のケアrhGAA酵素補充療法(ERT)(市販されているアルグルコシダーゼアルファ含有製品はほとんどの国でマイオザイム(登録商標)であり、米国ではルミザイム(登録商標)、Genzyme、Sanofi Companyである)はWT GAAとは異なり、3アミノ酸残基置換:位置199でのヒスチジンのアルギニンへの変化、223でのアルギニンのヒスチジンへの変化、780でのバリンのイソロイシンへの変化を含有する。
【0062】
少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、タンパク質中の1つ以上のアミノ酸残基において翻訳後および/または化学修飾を受ける。例えば、メチオニンおよびトリプトファン残基は酸化を受け得る。別の例として、アスパラギン残基は、アスパラギン酸への脱アミノ化を受け得る。さらに別の例として、アスパラギン酸は、イソアスパラギン酸への異性化を受け得る。したがって、いくつかの実施形態において、酵素は、配列番号1、または配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するものとして最初に発現され、酵素はこれらの翻訳後および/または化学修飾の1つ以上を受ける。そのような改変もまた、本開示の範囲内である。
【0063】
少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、米国特許第8,592,362号明細書に記載されるような、配列番号1に記載の野生型GAAアミノ酸配列を有し、GenBank受託番号AHE24104.1(GI:568760974)を有する。少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、GAA遺伝子の9つの観察されたハプロタイプのうちの最も優勢なものによってコードされるヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素である、グルコシダーゼアルファである。
【0064】
少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、配列番号1に記載の野生型GAAの全長952アミノ酸配列を有するものとして最初に発現され、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、アミノ酸の一部、例えば最初の56アミノ酸を除去する細胞内プロセシングを受ける。したがって、宿主細胞によって分泌される組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、細胞内で最初に発現される組換えヒト酸性α-グルコシダーゼよりも短いアミノ酸配列を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、より短いタンパク質は、シグナルペプチドおよび前駆体ペプチドを含む最初の56アミノ酸が除去され、したがって896個のアミノ酸を有するタンパク質が得られる点でのみ配列番号1と異なる、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し得る。配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれを超える欠失、置換および/または挿入を有するなど、アミノ酸の数における他の変更も可能である。いくつかの実施形態において、rhGAA生成物は、異なるアミノ酸長を有する組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子の混合物を含む。
【0065】
少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、タンパク質中の1つ以上のアミノ酸残基において翻訳後および/または化学修飾を受ける。例えば、メチオニンおよびトリプトファン残基は酸化を受け得る。別の例として、N末端グルタミンはピログルタミン酸を形成することができる。別の例として、アスパラギン残基は、アスパラギン酸への脱アミノ化を受け得る。さらに別の例として、アスパラギン酸残基はイソアスパラギン酸への異性化を受け得る。さらに別の例として、タンパク質中の不対システイン残基は、遊離グルタチオンおよび/またはシステインとジスルフィド結合を形成し得る。したがって、いくつかの実施形態において、酵素は、配列番号1、または配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するものとして最初に発現され、酵素はこれらの翻訳後および/または化学修飾の1つ以上を受ける。そのような改変形態も本開示の範囲内である。
【0066】
好ましくは、全組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子の70、65、60、55、45、40、35、30、25、20、15、10または5%以下が、1つ以上のマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を欠くか、または陽イオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CIMPR)に結合する能力が欠如している。あるいは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子の30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99%、<100%以上が、1つ以上のマンノース-6-リン酸残基を有する少なくとも1つのN-グリカン単位を含む、またはCIMPRに結合する能力を有する。
【0067】
組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子は、そのグリカン上に1、2、3または4個のマンノース-6-リン酸(M6P)基を有し得る。例えば、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子における1つのN-グリカンのみがM6P(モノ-リン酸化)を有していてもよく、単一のN-グリカンが2つのM6P基(ビス-リン酸化)を有していてもよく、または同じ組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子における2つの異なるN-グリカンがそれぞれ単一のM6P基を有していてもよい。組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子はまた、M6P基を有しないN-グリカンを有し得る。別の実施形態において、N-グリカンは、平均して3モル/モルを超えるM6Pおよび4モル/モルを超えるシアル酸を含み、その結果、ヒト酸性α-グルコシダーゼは、平均して組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ1モルあたり少なくとも3モルのマンノース-6-リン酸残基、および組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ1モルあたり少なくとも4モルのシアル酸を含む。平均して組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける総グリカンの少なくとも約3、4、5、6、7、8、9または10%は、モノ-M6Pグリカンの形態であってもよく、例えば、総グリカンの約6.25%が単一のM6P基を有していてもよく、平均して組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける総グリカンの少なくとも約0.5、1、1.5、2.0、2.5、3.0%がビス-M6Pグリカンの形態であり、平均して総組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの25%未満が、CIMPRに結合するリン酸化グリカンを含まない。
【0068】
組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、0.5~7.0モル/モル組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの範囲、または0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5または7.0モル/モル組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを含む部分範囲の任意の中間値のM6Pを担持するN-グリカンの平均含有量を有し得る。組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを分画して、異なる平均数のM6P含有またはビス-M6P含有グリカンを有する組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ調製物を提供することができ、これにより、特定の画分を選択することにより、または選択的に異なる画分を組み合わせることにより、標的組織のリソソームへ標的化する組換えヒト酸性α-グルコシダーゼのさらなるカスタマイズが可能となる。
【0069】
いくつかの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ1モル当たり平均して2.0~8.0モルのM6Pを有する。この範囲には、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5および8.0モルM6P/モル組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを含む、すべての中間値および部分範囲が含まれる。
【0070】
組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおけるN-グリカンの最大60%が完全にシアリル化されていてもよく、例えばN-グリカンの最大10%、20%、30%、40%、50%または60%が完全にシアリル化されていてもよい。いくつかの実施形態において、全N-グリカンの4~20%が完全にシアリル化されている。他の実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおけるN-グリカンの5%、10%、20%または30%以下がシアル酸および末端ガラクトース残基(Gal)を有する。この範囲には、全ての中間値および部分範囲が含まれ、例えば、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける全N-グリカンの7~30%がシアル酸および末端ガラクトースを運ぶことができる。さらに他の実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおけるN-グリカンの5、10、15、16、17、18、19または20%以下が末端ガラクトースのみを有し、シアル酸を含有しない。この範囲には、全ての中間値および部分範囲が含まれ、例えば、組成物中の組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける全N-グリカンの8~19%が、末端ガラクトースのみを有し、シアル酸を含有しない場合がある。
【0071】
本発明の他の実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける総N-グリカンの40、45、50、55~60%が複合型N-グリカンであり;または組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける総N-グリカンの1、2、3、4、5、6、7%以下がハイブリッド型N-グリカンであり;組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける高マンノース型N-グリカンの5、10または15%以下が非リン酸化されており;組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける高マンノース型N-グリカンの少なくとも5%または10%がリン酸化されたモノ-M6Pであり;および/または組換えヒト酸性α-グルコシダーゼにおける高マンノース型N-グリカンの少なくとも1または2%がリン酸化されたビス-M6Pである。これらの値には、全ての中間値および部分範囲が含まれる。組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、上記の1つ以上の含有量範囲を満たし得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ1モル当たり平均して2.0~8.0モルのシアル酸残基を有する。この範囲には、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5および8.0モル残基/モル組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを含む、全ての中間値および部分範囲が含まれる。理論に拘束されるものではないが、シアル酸残基を有するN-グリカン単位の存在は、アシアロ糖タンパク質受容体による組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの非生産的クリアランスを防止し得ると考えられる。
【0073】
1つ以上の実施形態において、rhGAAは、組換えヒトリソソームタンパク質の一定のN-グリコシル化部位にM6Pおよび/またはシアル酸単位を有する。例えば、rhGAAには7つの潜在的なN結合グリコシル化部位がある。これらの潜在的なグリコシル化部位は、配列番号2の次の位置に存在する:N84、N177、N334、N414、N596、N826およびN869。同様に、配列番号1の全長アミノ酸配列に関して、これらの潜在的なグリコシル化部位は、以下の位置に存在する:N140、N233、N390、N470、N652、N882およびN925。rhGAAの他の変異体は、アスパラギン残基の位置に応じて、同様のグリコシル化部位を有し得る。一般に、タンパク質アミノ酸配列におけるASN-X-SERまたはASN-X-THRの配列は、潜在的なグリコシル化部位を示すが、例外として、XはHISまたはPROではあり得ない。
【0074】
様々な実施形態において、rhGAAは、特定のN-グリコシル化プロファイルを有する。1つ以上の実施形態において、rhGAAの少なくとも20%が第1のN-グリコシル化部位でリン酸化される(例えば、配列番号2のN84および配列番号1のN140)。例えば、rhGAAの少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が第1のN-グリコシル化部位でリン酸化され得る。このリン酸化は、モノ-M6Pおよび/またはビス-M6P単位の結果であり得る。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、第1のN-グリコシル化部位でモノ-M6P単位を有する。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、第1のN-グリコシル化部位でビス-M6P単位を有する。
【0075】
1つ以上の実施形態において、rhGAAの少なくとも20%が第2のN-グリコシル化部位でリン酸化される(例えば、配列番号2のN177および配列番号1のN223)。例えば、rhGAAの少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が第2のN-グリコシル化部位でリン酸化され得る。このリン酸化は、モノ-M6Pおよび/またはビス-M6P単位の結果であり得る。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、第2のN-グリコシル化部位でモノ-M6P単位を有する。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、第2のN-グリコシル化部位でビス-M6P単位を有する。1つ以上の実施形態において、rhGAAの少なくとも5%が第3のN-グリコシル化部位でリン酸化される(例えば、配列番号2のN334および配列番号1のN390)。他の実施形態において、rhGAAの5%、10%、15%、20%または25%未満が第3のN-グリコシル化部位でリン酸化される。例えば、第3のN-グリコシル化部位は、非リン酸化高マンノースグリカン、ジ-、トリ-、およびテトラ-アンテナリ複合グリカン、ならびに主要な種としてのハイブリッドグリカンの混合物を有し得る。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも3%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%が第3のN-グリコシル化部位でシアリル化される。
【0076】
1つ以上の実施形態において、rhGAAの少なくとも20%が第4のN-グリコシル化部位でリン酸化される(例えば、配列番号2のN414および配列番号1のN470)。例えば、rhGAAの少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が第4のN-グリコシル化部位でリン酸化され得る。このリン酸化は、モノ-M6Pおよび/またはビス-M6P単位の結果であり得る。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、第4のN-グリコシル化部位でモノ-M6P単位を有する。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、第4のN-グリコシル化部位でビス-M6P単位を有する。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも3%、5%、8%、10%、15%、20%または25%が第4のN-グリコシル化部位でシアリル化される。
【0077】
1つ以上の実施形態において、rhGAAの少なくとも5%が第5のN-グリコシル化部位でリン酸化される(例えば、配列番号2のN596および配列番号1のN692)。他の実施形態において、rhGAAの5%、10%、15%、20%または25%未満が第5のN-グリコシル化部位でリン酸化される。例えば、第5のN-グリコシル化部位は、主要な種として、フコシル化されたジ-アンテナリ複合グリカンを有し得る。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも3%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が第5のN-グリコシル化部位でシアリル化される。
【0078】
1つ以上の実施形態において、rhGAAの少なくとも5%が第6のN-グリコシル化部位でリン酸化される(例えば、配列番号2のN826および配列番号1のN882)。他の実施形態において、rhGAAの5%、10%、15%、20%または25%未満が第6のN-グリコシル化部位でリン酸化される。例えば、第6のN-グリコシル化部位は、主要な種として、ジ-、トリ-、およびテトラ-アンテナリ複合グリカンの混合物を有し得る。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも3%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が第6のN-グリコシル化部位でシアリル化される。
【0079】
1つ以上の実施形態において、rhGAAの少なくとも5%が第7のN-グリコシル化部位でリン酸化される(例えば、配列番号2のN869および配列番号1のN925)。他の実施形態において、rhGAAの5%、10%、15%、20%または25%未満が第7のN-グリコシル化部位でリン酸化される。いくつかの実施形態において、rhGAAの40%、45%、50%、55%、60%または65%未満が第7のN-グリコシル化部位に任意のグリカンを有する。いくつかの実施形態において、rhGAAの少なくとも30%、35%または40%が第7のN-グリコシル化部位にグリカンを有する。
【0080】
様々な実施形態において、rhGAAは、モルrhGAA当たり0~5モルの平均フコース含量、モルrhGAA当たり10~30モルのGlcNAc含量、モルrhGAA当たり5~20モルのガラクトース含量、モルrhGAA当たり10~40モルのマンノース含量、モルrhGAA当たり2~8モルのM6P含有量、およびモルrhGAA当たり2~8モルのシアル酸含有量を有する。様々な実施形態において、rhGAAは、モルrhGAA当たり2~3モルの平均フコース含量、モルrhGAA当たり20~25モルのGlcNAc含量、モルrhGAA当たり8~12モルのガラクトース含量、モルrhGAA当たり22~27モルのマンノース含量、モルrhGAA当たり3~5モルのM6P含有量、およびモルrhGAA当たり4~7モルのシアル酸含有量を有する。
【0081】
組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、CHO細胞株GA-ATB200またはATB200-001-X5-14などのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により、またはそのようなCHO細胞培養物の継代培養物もしくは誘導体により好ましく産生される。配列番号1と少なくとも90%、95%または99%同一であるものなど、酸性α-グルコシダーゼまたは他の変異体酸性α-グルコシダーゼアミノ酸配列の対立遺伝子変異体を発現するDNA構築物を構築し、CHO細胞で発現させることができる。これらの変異体酸性α-グルコシダーゼアミノ酸配列は、例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超える欠失、置換および/または挿入を有するなど、配列番号1に対して欠失、置換および/または挿入を含有してもよい。当業者は、そのようなDNA構築物の産生のためのCHO細胞の形質転換に適した代替的ベクターを選択し得る。
【0082】
GCG配列分析パッケージ(ウィスコンシン大学、ウィスコンシン州マディソン)の一部として利用可能なFASTAまたはBLASTを含む、2つの配列間の同一性を計算するために、様々なアライメントアルゴリズムおよび/またはプログラムを使用することができ、例えば、デフォルト設定で使用することができる。例えば、本明細書に記載され、好ましくは実質的に同じ機能を示す特定のポリペプチドに対して少なくとも90%、95%または99%の同一性を有するポリペプチド、ならびにそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが企図される。別段の指示がない限り、類似度スコアはBLOSUM62の使用に基づく。BLASTPが使用される場合、類似性割合はBLASTP陽性スコアに基づき、配列同一性割合はBLASTP同一性スコアに基づく。BLASTPの「同一性」は、同一の高スコア配列対における総残基の数および割合を示す;およびBLASTPの「陽性」は、整列スコアが正の値を有し、互いに類似している残基の数および割合を示す。これらの同一性または類似性の程度または本明細書に開示されるアミノ酸配列との類似性の任意の中程度の同一性を有するアミノ酸配列が企図され、この開示によって包含される。類似のポリペプチドのポリヌクレオチド配列は、遺伝コードを使用して推定され、従来の手段、特に遺伝子コードを使用してそのアミノ酸配列を逆翻訳することによって得ることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、陽イオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CIMPR)および細胞リソソームを標的とする優れた能力を有する組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ、ならびにインビボでの非生産的クリアランスを減少させるグリコシル化パターンが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を使用して産生できることを見出した。これらの細胞は、アルグルコシダーゼアルファなどの従来の組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ製品よりも、1つ以上のマンノース-6-リン酸残基を有する有意に高いレベルのN-グリカン単位を有する組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを発現するように誘導し得る。これらの細胞によって産生される組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、例えばATB200によって例示されるように、ルミザイム(登録商標)などの従来の酸性α-グルコシダーゼよりも、有意に多くの筋肉細胞標的化マンノース-6-リン酸(M6P)およびビス-マンノース-6-リン酸N-グリカン残基を有する。理論に拘束されるものではないが、この広範なグリコシル化により、ATB200酵素がより効果的に標的細胞に取り込まれることができ、したがって、例えば、はるかに低いM6Pおよびビス-M6P含有量を有するアルグルコシダーゼアルファなど、他の組換えヒト酸性α-グルコシダーゼよりも効率的に循環から除去され得ると考えられる。ATB200は、CIMPRに効率的に結合し、骨格筋および心筋によって効率的に取り込まれ、好ましい薬物動態プロファイルを提供しインビボでの非生産的クリアランスを減少させるグリコシル化パターンを有することが示されている。
【0084】
ATB200の広範なグリコシル化は、例えば、アルグルコシダーゼアルファと比較して、ATB200の免疫原性の低下に寄与し得ることも企図される。当業者によって理解されるように、保存された哺乳動物糖によるタンパク質のグリコシル化は、一般に、生成物の溶解性を高め、生成物の凝集および免疫原性を減少させる。グリコシル化は、タンパク質の凝集を最小限にし、免疫系からタンパク質免疫原性エピトープを遮断することにより、タンパク質免疫原性を間接的に変化させる(Guidance for Industry-Immunogenicity Assessment for Therapeutic Protein Products,US Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration,Center for Drug Evaluation and Research,Center for Biologics Evaluation and Research,August 2014)。したがって、少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与は、抗薬物抗体を誘導しない。少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与は、アルグルコシダーゼアルファの投与によって誘導される抗薬物抗体のレベルよりも対象における抗薬物抗体の発生率を低下させる。
【0085】
同時係属中の国際特許出願PCT/米国特許出願公開第2015/053252号明細書に記載されるように、CHO細胞などの細胞を使用して同文献に記載されるrhGAAを生成することができ、このrhGAAは、本発明で使用され得る。そのようなCHO細胞株の例は、GA-ATB200またはATB200-001-X5-14、またはそこに記載されるようなrhGAA組成物を産生するその継代培養物である。そのようなCHO細胞株は、GAAをコードする1ポリヌクレオチドにつき5、10、15、20またはそれを超えるコピーなどの遺伝子の複数のコピーを含有し得る。
【0086】
ATB200 rhGAAなどの高M6Pおよびビス-M6P rhGAAは、GAAをコードするDNA構築物でCHO細胞を形質転換する。CHO細胞は以前にrhGAAを作製するために使用されていたが、形質転換CHO細胞は、CIMPRを標的とするM6Pおよびビス-M6Pグリカンの高い含有量を有するrhGAAを産生するように培養および選択できたことは認められなかった。
【0087】
驚くべきことに、CHO細胞株を形質転換し、CIMPRを標的化するM6Pまたはビス-M6Pを有するグリカンの高含有量を含有するrhGAAを生成する形質転換体を選択し、この高M6P rhGAAを安定に発現させることが可能であることが見出された。したがって、これらのCHO細胞株を作製するための方法はまた、同時係属中の国際特許出願PCT/米国特許出願公開第2015/053252号明細書に記載されている。この方法は、CHO細胞をGAAまたはGAA変異体をコードするDNAで形質転換すること、GAAをコードするDNAをその染色体に安定に組み込み、安定にGAAを発現するCHO細胞を選択すること、およびM6Pまたはビス-M6Pを有するグリカンの高い含有量を有するGAAを発現するCHO細胞を選択すること、および任意選択により、高いシアル酸含有量を有するおよび/または低い非リン酸化高マンノース含有量を有するN-グリカンを有するCHO細胞を選択することを含む。これらのCHO細胞株は、CHO細胞株を培養し、前記組成物をCHO細胞の培養物から回収することにより、rhGAAおよびrhGAA組成物を生産するために使用され得る。
【0088】
1つ以上の実施形態において、ATB200は、約5~約50mg/mLの範囲の量で存在する。さらなる実施形態において、ATB200は、約5、8、10または12~約18、20、25、30、35、40、45または50mg/mLの範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、ATB200は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30mg/mLの量で存在する。さらなる実施形態において、ATB200は、約15mg/mLの量で存在する。
【0089】
pHおよび緩衝剤
製剤のpHは、約5.0~約7.0または約5.0~約6.0の範囲であり得る。1つ以上の実施形態において、製剤のpHは約5.5~約6.0の範囲である。いくつかの実施形態において、製剤は、約5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9または6.0、6.1、6.2、6.3、6.4または6.5のpHを有する。一般に、列挙される成分の量により、約5.0~約6.0の範囲のpHを生じる。しかし、水酸化ナトリウムおよび/または塩酸などのpH調整剤(すなわち、アルカリ化剤および酸性化剤)を使用することにより、pHを目標pHに調整することができる。
【0090】
製剤はまた、クエン酸塩、リン酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝剤を含む。本明細書中で使用される場合、「緩衝剤」とは、pHの変化を防止するのに役立つ弱酸およびその共役塩基を含有する緩衝剤を指す。クエン酸塩および/またはリン酸塩は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムであってもよい。他の塩には、カリウム塩およびアンモニウム塩が含まれる。1つ以上の実施形態において、緩衝剤はクエン酸塩を含む。さらなる実施形態において、緩衝剤は、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸ナトリウム二水和物およびクエン酸一水和物の混合物)を含む。1つ以上の実施形態において、クエン酸塩を含む緩衝剤は、クエン酸ナトリウムおよびクエン酸を含み得る。いくつかの実施形態において、クエン酸塩およびリン酸塩緩衝剤の両方が存在する。
【0091】
賦形剤
製剤はまた、少なくとも1つの賦形剤を含む。本発明のいくつかの実施形態は、等張化剤を補助するか、増量剤として作用するか、または安定剤として作用する賦形剤を含む。1つ以上の実施形態において、少なくとも1つの賦形剤は、マンニトール、ポリソルベートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0092】
1つ以上の実施形態において、賦形剤は、等張化剤および/または増量剤として作用することができる成分、特にマンニトールを含む。等張化剤は、製剤がヒトの血液と類似または同等の浸透圧を有することを確実にするのに役立つ成分である。増量剤は、製剤(例えば、凍結乾燥されたもの)に質量を加え、ケーキに適切な構造を提供する成分である。
【0093】
1つ以上の実施形態において、等張化剤および/または増量剤の総量は、約10~約50mg/mLの量の範囲である。さらなる実施形態では、等張化剤および/または増量剤の総量は、約10、11、12、13、14または15~約16、20、25、30、35、40、45または50mg/mLの量の範囲である。いくつかの実施形態において、等張化剤および/または増量剤は、マンニトールを含む。1つ以上の実施形態において、マンニトールは、約10~約50mg/mLの量で存在する。さらなる実施形態において、マンニトールは、約10、11、12、13、14または15~約16、20、25、30、35、40、45または50mg/mLの量で存在する。またさらなる実施形態において、マンニトールは、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20mg/mLの量で存在する。いくつかの実施形態において、マンニトールは唯一の等張化剤および/または増量剤である。他の等張化剤および/または増量剤の例には、塩化ナトリウム、スクロースおよびトレハロースが含まれる。
【0094】
いくつかの実施形態において、賦形剤は、ポリソルベート80などの安定剤を作用させることができる成分を含む。安定剤は、疎水性の空気-水界面での凝集体形成を防止または最小限に抑えることができる化合物である。いくつかの実施形態において、安定剤は界面活性剤である。1つ以上の実施形態において、安定剤の総量は、約0.1~約1.0mg/mLの範囲である。さらなる実施形態において、安定剤の総量は、約0.1、0.2、0.3、0.4または0.5~約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mg/mLの範囲である。またさらなる実施形態において、安定剤の総量は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mg/mLである。いくつかの実施形態において、ポリソルベート80のみが安定剤である。したがって、1つ以上の実施形態において、ポリソルベート80は、約0.1~約1.0mg/mLの範囲である。さらなる実施形態において、ポリソルベート80の総量は、約0.1、0.2、0.3、0.4または0.5~約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mg/mLの範囲である。またさらなる実施形態において、ポリソルベート80の総量は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0mg/mLである。
【0095】
1つ以上の実施形態において、特定の化合物を製剤から除外することが望ましい場合がある。例えば、所与の疾患の処置のための製剤を調製する場合、基礎疾患を悪化させる特定の化合物を排除することが望ましいであろう。上記のように、ポンペ病を有する個体は、グリコーゲンを分解する能力が低下しているか、または存在しない。スクロース、トレハロースおよびグリシンなどのいくつかの一般的に使用される賦形剤は、体内のグルコースに変換され得、これはポンペ病を悪化させる。したがって、いくつかの実施形態において、スクロース、トレハロースおよび/またはグリシンは、製剤から除外される。同様に、所与の特定の状況では製剤に最も適したものではない、特定の成分は排除してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、ポロクサマーを排除し得る。
【0096】
例示的な実施形態
1つ以上の実施形態において、製剤は、
(a)ATB200(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現し、アルグルコシダーゼアルファの1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位の含有量と比較して、増加した含有量の1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含む、組換え酸性α-グルコシダーゼ);
(b)クエン酸塩、リン酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝剤;
(c)マンニトール、ポリソルベート80、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤
を含み、または、から本質的になり、製剤のpHは約5.0~約7.0である。
【0097】
いくつかの実施形態において、製剤は、
(a)ATB200(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現し、アルグルコシダーゼアルファの1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位の含有量と比較して、増加した含有量の1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含む、組換え酸性α-グルコシダーゼ);
(b1)クエン酸ナトリウム;
(b2)クエン酸一水和物;
(c1)マンニトール;
(c2)ポリソルベート80;
(d)水;
(e)任意選択により、酸性化剤;および
(f)任意選択により、アルカリ化剤、
を含み、または、から本質的になり、製剤のpHは約5.0~約7.0である。さらなる実施形態において、製剤のpHは約5.5~約6.0の範囲である。またさらなる実施形態において、製剤のpHは約6.0である。
【0098】
特定の実施形態において、製剤は、
(a)約5~30mg/mLまたは約15mg/mLの濃度で存在する、ATB200(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現し、アルグルコシダーゼアルファの1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位の含有量と比較して、増加した含有量の1つまたは2つのマンノース-6-リン酸残基を有するN-グリカン単位を含む、組換え酸性α-グルコシダーゼ);
(b)約10~100mMまたは約25mMの濃度で存在する、クエン酸ナトリウム緩衝剤;
(c1)約10~50mg/mLまたは約20mg/mLの濃度で存在する、マンニトール;
(c2)約0.1~1mg/mLまたは約0.5mg/mLの濃度で存在する、ポリソルベート80;および
(d)水;
(e)任意選択により、酸性化剤;および
(f)任意選択により、アルカリ化剤、
を含み、製剤のpHは約5.0~約7.0である。さらなる実施形態において、製剤のpHは約5.5~約6.0の範囲である。またさらなる実施形態において、製剤のpHは約6.0である。
【0099】
製剤の調製
本発明の別の態様は、本明細書に記載の製剤を調製する方法に関する。1つ以上の実施形態において、製剤は酵素溶液から調製することができる。当技術分野で公知の方法を使用して、必要に応じて、この溶液を濃縮し、標的濃度および緩衝剤に緩衝剤交換してもよい。次いで、さらなる成分(例えば、賦形剤およびpH調節剤)を添加してもよい。次いで、製剤をろ過し、貯蔵容器に入れて貯蔵することができる。
【0100】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載の任意の医薬製剤を調製する方法は、少なくとも1つの緩衝剤、少なくとも1つの賦形剤、および組換え酸性α-グルコシダーゼを水に加えて溶液を提供すること;任意選択により、前記溶液のpHを調整すること;および任意選択により、前記溶液にさらなる水を加えること、を含む。さらなる実施形態において、本方法は、溶液をろ過することをさらに含む。またさらなる実施形態では、本方法は、溶液を貯蔵することをさらに含む。
【0101】
本明細書に記載の製剤の製造のための例示的で非限定的なプロセスは以下の通りである:
1.適切な製造容器内で、バッチ容量の約85~90%の注射用水を添加する。
2.所望の賦形剤および緩衝剤(例えば、クエン酸ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、ポリソルベート80、マンニトール)を加えて溶解し、溶解するまで混合する。
3.ATB200原薬を加えて混合する。
4.必要に応じて調節剤(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム溶液)を用いてpHを目的のpH(例えば、6±0.1)に調節する。
5.注射用に十分な水を加えて最終容量とし、混合する。
6.溶液を滅菌フィルターを通して滅菌レシーバにろ過する。
7.薬品溶液をバイアルに無菌的に充填し、ストッパーを挿入する。
8.すべてのバイアルをキャップし、2~8℃で貯蔵する。
【0102】
1つ以上の実施形態において、調製した状態での製剤は液体形態である。すなわち、製剤は水を含む。この液体製剤は、ケーキまたは粉末を提供するために凍結乾燥(フリーズドライ)プロセスを受けてもよい。したがって、本発明の別の態様は、凍結乾燥後の上記の製剤のいずれかを含む医薬組成物に関する。凍結乾燥した混合物は、ATB200、クエン酸塩、リン酸塩およびそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝剤、ならびにトレハロース、マンニトール、ポリソルベート80、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含み得る。いくつかの実施形態において、他の成分(例えば、他の賦形剤)を凍結乾燥混合物に添加してもよい。凍結乾燥した製剤を含む医薬組成物は、バイアルで提供してもよく、次いで、貯蔵、輸送、再構成および/または患者に投与することができる。
【0103】
患者への処置および投与方法
本発明の別の態様は、ポンペ病の処置方法および/またはポンペ病の処置のための本明細書に記載の製剤の使用に関する。製剤は、調製した状態で、または凍結乾燥および再構成の後に投与することができる。したがって、1つ以上の実施形態において、本方法は、上記の医薬製剤のいずれかを、それを必要とする患者へ投与することを含む。他の実施形態において、本方法は、凍結乾燥した医薬組成物を再構成すること、および再構成された医薬組成物を、それを必要とする患者に投与すること、を含む。いくつかの実施形態において、再構成された医薬組成物は、凍結乾燥の前および/または調製した状態での医薬製剤と類似または同一の構成を有する。いずれの場合でも、医薬製剤または再構成された医薬組成物は、患者への投与前に希釈されてもよい。さらなる実施形態において、医薬製剤または再構成された医薬組成物は、静脈内投与される。
【0104】
1つ以上の実施形態において、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤、および注射部位において痛みを和らげるための局所麻酔剤を含み得る。一般に、成分は、別個に供給されるか、または単位剤形中で一緒に混合されて、例えば、または活性物質の量を示すアンプルまたはサシェなどの密閉容器中の凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として供給される。組成物が注入によって投与される場合、医薬グレードの滅菌水、生理食塩水またはデキストロース/水を含有する注入ボトルで分注し得る。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分が混合され得るように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0105】
他の実施形態において、医薬製剤または再構成された医薬組成物は、心臓もしくは骨格筋(例えば、筋肉内)または神経系(例えば、脳への直接注射;脳室内;髄腔内)などの標的組織への直接投与によって投与される。必要に応じて、複数の経路を同時に使用できる。
【0106】
医薬製剤または再構成された組成物は、治療有効量(例えば、定期的に投与された場合、疾患に関連する症状を改善すること、疾患の発症を予防または遅延させること、および/または疾患の症状の重症度または頻度を軽減することなどにより、疾患を処置するのに十分な投与量)で投与される。疾患の処置における治療上有効量は、性質および疾患の影響の程度に依存し、標準的な臨床技術によって決定し得る。さらに、インビトロアッセイまたはインビボアッセイを、任意選択により、最適な投与量範囲の同定を促進するために使用し得る。少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、約1mg/kg~約100mg/kg、例えば約5mg/kg~約30mg/kg、典型的には約5mg/kg~約20mg/kgの用量で静脈内注入によって投与される。少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kgまたは約100mg/kgの用量で静脈内注入によって投与される。少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、約20mg/kgの用量で静脈内注入によって投与される。少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、約20mg/kgの用量で静脈内注入によって投与される。特定の個体の有効用量は、個体の必要性に応じて、経時的に変化させる(例えば、増加または減少させる)ことができる。例えば、身体疾患もしくはストレスを有する時、または抗酸性α-グルコシダーゼ抗体が存在するようになったかもしくは増加する場合、または疾患の症状が悪化する場合、その量を増加することができる。
【0107】
組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(または組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを含有する組成物または医薬)の治療有効量は、性質および疾患の影響の程度に依存して定期的に、および継続的に投与される。本明細書で使用される場合、「定期的」な投与は、治療有効量が周期的に投与されることを示す(1回投与とは区別される)。間隔は、標準的な臨床技術によって決定することができる。好ましい実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは毎月、隔月;毎週;毎週2回;または毎日投与される。単一の個体に対する投与間隔は、一定間隔である必要はなく、個体の必要性に応じて、経時的に変化させることができる。例えば、身体疾患もしくはストレスを有する時、抗組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ抗体が存在するようになったかもしくは増加する場合、または疾患の症状が悪化する場合、投与の間隔を減少させることができる。
【0108】
1つ以上の実施形態において、医薬製剤または再構成された組成物は、シャペロンの経口投与および医薬製剤または再構成された組成物の静脈内投与などの薬理学的シャペロンと共投与される。様々な実施形態において、薬理学的シャペロンはミグルスタットである。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約200~約400mgの経口用量で、または約200mg、約250mg、約300mg、約350mgもしくは約400mgの経口用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約233mg~約400mgの経口用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約250~約270mgの経口用量で、または約250mg、約255mg、約260mg、約265mgもしくは約270mgの経口用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約260mgの経口用量として投与される。
【0109】
少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットおよび組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、同時に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットおよび組換えヒト酸性α-グルコシダーゼは、連続的に投与される。少なくとも1つの実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与前にミグルスタットを投与する。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与前3時間以内に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与の約2時間前に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与前の2時間以内に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与の約1.5時間前に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与の約1時間前に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与の約50分~約70分前に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与の約55分~約65分前に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与の約30分前に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与の約25分~約35分前に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの投与の約27分~約33分前に投与される。
【0110】
キット
本発明の別の態様は、本明細書に記載の医薬製剤(凍結乾燥後を含む)を含むキットに関する。1つ以上の実施形態において、キットは、(凍結乾燥の前または後の)医薬製剤を含む容器(例えば、バイアル、チューブ、バッグなど)および再構成、希釈および投与のための説明書を含む。
【実施例
【0111】
酵素例1:既存のマイオザイム(登録商標)およびルミザイム(登録商標)のrhGAA製品の限界
現在承認されている唯一のポンペ病処置薬であるマイオザイム(登録商標)およびルミザイム(登録商標)におけるrhGAAの能力を評価するために、これらのrhGAA調製物を(M6P基を有するrhGAAに結合する)CIMPRカラムに注入し、続いて遊離M6勾配で溶出した。画分を96ウェルプレートに集め、GAA活性を4MU-α-グルコース基質によってアッセイした。結合および未結合rhGAAの相対量をGAA活性に基づいて決定し、全酵素の割合として報告した。
【0112】
図3A~Bは、従来のERT(マイオザイム(登録商標)およびルミザイム(登録商標))に関連する問題を示す:マイオザイム(登録商標)のrhGAAの73%(図3B)およびルミザイム(登録商標)のrhGAAの78%(図3A)は、CIMPRに結合しなかった(各図の一番左のピークを参照)。マイオザイム(登録商標)のrhGAAの27%およびルミザイム(登録商標)のrhGAAの22%のみが、筋肉細胞上のCIMPRに標的化し得るM6Pを含んでいた。
【0113】
マイオザイム(登録商標)およびルミザイム(登録商標)の有効用量は、筋肉細胞上のCIMPRを標的とするM6Pを含有するrhGAAの量に対応する。しかしながら、これら2つの従来製品におけるrhGAAの大部分は、標的筋肉細胞上のCIMPR受容体を標的としない。rhGAAの大部分が筋肉細胞に標的化されていない従来のrhGAAの投与は、非標的化rhGAAに対するアレルギー反応または免疫誘導のリスクを増加させる。
【0114】
酵素例2:高含有量のモノ-またはビス-M6P含有N-グリカンを有するATB200 rhGAAを産生するCHO細胞の調製
CHO細胞を、rhGAAを発現するDNAでトランスフェクトし、続いてrhGAAを産生する形質転換体を選択した。rhGAAをコードするDNAでCHO細胞を形質転換するためのDNA構築物を図4に示す。CHO細胞を、rhGAAを発現するDNAでトランスフェクトし、続いてrhGAAを産生する形質転換体を選択した。
【0115】
トランスフェクション後、安定的に組み込まれたGAA遺伝子を含むDG44 CHO(DHFR-)細胞をヒポキサンチン/チミジン欠損(-HT)培地で選択した。
【0116】
これらの細胞におけるGAA発現の増幅は、メトトレキサート処理(MTX、500nM)によって誘導された。大量のGAAを発現する細胞プールはGAA酵素活性アッセイによって同定され、rhGAAを産生する個々のクローンを確立するために使用された。個々のクローンを半固体培地プレート上で生成し、ClonePixシステムにより採取し、24ディープウェルプレートに移した。個々のクローンをGAA酵素活性についてアッセイして、高レベルのGAAを発現するクローンを同定した。GAA活性を決定するための条件培地は、4-MU-α-グルコシダーゼ基質を用いた。GAA酵素アッセイによって測定される、より高レベルのGAAを産生するクローンを生存能力、成長能力、GAA生産性、N-グリカン構造および安定なタンパク質発現についてさらに評価した。強化されたモノ-M6Pまたはビス-M6P N-グリカンを有するrhGAAを発現するCHO細胞株GA-ATB-200を含むCHO細胞株を、この手順を用いて単離した。
【0117】
酵素例3:ATB200 rhGAAの捕捉および精製
本発明によるrhGAAの複数のバッチを、CHO細胞株GA-ATB-200を用いて振盪フラスコおよび灌流バイオリアクタで産生し、CIMPR結合を測定した。異なる産生バッチからの精製ATB200 rhGAAについて、図5Bおよび図6に示されるものと同様のCIMPR受容体結合(約70%)が観察され、これはATB200 rhGAAが一貫して産生され得ることを示す。図3A~Bおよび5A~Bに示されるように、マイオザイム(登録商標)およびルミザイム(登録商標)rhGAAは、ATB200 rhGAAよりも有意に低いCIMPR結合を示した。
【0118】
酵素例4:ルミザイム(登録商標)に対するATB200の分析比較
弱いアニオン交換(「WAX」)液体クロマトグラフィーを使用して、末端リン酸によりATB200 rhGAAを分画した。溶出プロファイルは、増加する量の塩でERTを溶出することによって生成された。プロファイルをUV(A280nm)でモニターした。ATB200 rhGAAをCHO細胞から得て精製した。ルミザイム(登録商標)は商業的供給源から入手した。ルミザイム(登録商標)は、その溶出プロファイルの左側に高いピークを示した。ATB200 rhGAAは、ルミザイム(登録商標)の右側に溶出する4つの顕著なピークを示した(図7)。これにより、この評価がCIMPR親和性ではなく末端電荷によるものであるため、ATB200 rhGAAがルミザイム(登録商標)よりも大幅にリン酸化されたことを確認される。
【0119】
酵素例5:ATB200 rhGAAのオリゴ糖特性
精製したATB200 rhGAAおよびルミザイム(登録商標)グリカンをMALDI-TOFで評価し、各ERT上に見出される個々のグリカン構造を決定した(図8)。ATB200試料は、ルミザイム(登録商標)より少ない量の非リン酸化高マンノース型N-グリカンを含有することが判明した。ルミザイム(登録商標)よりもATB200のM6Pグリカンの含有量が高いほど、ATB200 rhGAAが筋肉細胞をより効果的に標的とする。MALDIによって決定されるモノ-リン酸化およびビス-リン酸化構造の高いパーセンテージは、CIMPR受容体へのATB200の結合が有意に大きいことを示したCIMPRプロファイルと一致する。MALDI-TOF質量分析によるN-グリカン分析は、平均して各ATB200分子が少なくとも1つの天然ビス-M6P N-グリカン構造を含有することを確認した。ATB200 rhGAA上の、このビス-M6P N-グリカンのより高い含有量は、M6P受容体プレート結合アッセイ(KD約2~4nM)においてCIMPRへの高親和性結合と直接相関していた、図10A
【0120】
ATB200 rhGAAも、2つの異なるLC-MS/MS分析技術を用いて部位特異的N-グリカンプロファイルについて分析した。第1の分析では、LC-MS/MS分析前にタンパク質を変性させ、還元し、アルキル化し、消化した。タンパク質の変性および還元中、200μgのタンパク質試料、5μlの1モル/Lトリス-HCl(最終濃度50mM)、75μLの8モル/LグアニジンHCl(最終濃度6M)、1μLの0.5モル/L EDTA(最終濃度5mM)、2μLの1モル/L DTT(最終濃度20mM)およびMilli-Q(登録商標)水を1.5mLチューブに添加して、100μLの全容量を提供した。試料を混合し、乾燥浴中において56℃で30分間インキュベートした。アルキル化中、変性および還元タンパク質試料を5μLの1モル/Lヨードアセトアミド(IAM、最終濃度50mM)と混合し、次いで暗所で30分間インキュベートした。アルキル化後、400μLの予冷されたアセトンを試料に加え、混合物を-80℃で4時間凍結させた。次いで、試料を4℃、13000rpmで5分間遠心分離し、上清を除去した。予冷されたアセトン400μlをペレットに添加し、次いでこれを4℃、13000rpmで5分間遠心分離し、上清を除去した。試料を暗所にて氷上で風乾し、アセトン残留物を除去した。40μLの8M尿素および160μLの100μMNHHCOを試料に添加して、タンパク質を溶解させた。トリプシン消化中、50μgのタンパク質をトリプシン消化緩衝液と添加して最終容積100μlとし、5μLの0.5μg/mLトリプシン(タンパク質対酵素比20/1w/w)を添加した。溶液をよく混合し、37℃で一晩(16±2時間)インキュベートした。2.5μlの20%TFA(最終濃度0.5%)を加えて反応を停止させた。次に、Thermo Scientific Orbitrap Velos Pro(商標)質量分析計を用いて試料を分析した。
【0121】
第2のLC-MS/MS分析では、IAMの代わりにアルキル化試薬としてヨード酢酸(IAA)を用いた以外、同様の変性、還元、アルキル化および消化手順に従ってATB200試料を調製し、Thermo Scientific Orbitrap Fusion Lumos Tribid(商標)質量分析計を用いて分析した。
【0122】
第1および第2の分析の結果を図9A~9Hに示す。図9A~9Hにおいて、第1の分析の結果は左のバー(濃い灰色)で表され、第2の分析の結果は右のバー(薄い灰色)で表される。図9B~9Gにおいて、グリカンの記号命名法はVarki,A.,Cummings,R.D.,Esko J.D.,et al.,Essentials of Glycobiology,2nd edition(2009)に従う。
【0123】
図9A~9Gから分かるように、2つの分析は同様の結果を示したが、その結果の間にはある程度の差異があった。この変化は、使用機器およびN-グリカン分析の完全性を含む多くの要因に起因し得る。例えば、リン酸化されたグリカンのいくつかの種が同定されていないか、および/または定量化されていない場合、リン酸化されたグリカンの総数は過小評価される可能性があり、その部位でリン酸化されたグリカンを有するrhGAAのパーセンテージは、過小評価される可能性がある。別の例として、非リン酸化グリカンのいくつかの種が同定されていないか、および/または定量化されていない場合、非リン酸化グリカンの総数は過大評価される可能性があり、その部位でリン酸化されたグリカンを有するrhGAAのパーセンテージは、過大評価される可能性がある。図9Aは、ATB200のN-グリコシル化部位占有率を示す。図9Aから分かるように、第1、第2、第3、第4、第5および第6のN-グリコシル化部位は、それぞれの潜在的部位で検出されたグリカンを有するATB200酵素の90%超および最大約100%を検出する両分析により、大部分が占有される。しかしながら、第7の潜在的N-グリコシル化部位は、約半分の時間でグリコシル化される。
【0124】
図9Bは、第1の部位であるN84のN-グリコシル化プロファイルを示す。図9Bから分かるように、主要なグリカン種はビス-M6Pグリカンである。第1および第2の分析の両方で、ATB200の75%以上が第1の部位にビス-M6Pグリカンを有していたことが検出された。
【0125】
図9Cは、第2の部位であるN177のN-グリコシル化プロファイルを示す。図9Cから分かるように、主要なグリカン種は、モノ-M6Pグリカンおよび非リン酸化高マンノースグリカンである。第1および第2の分析の両方で、ATB200の40%以上が第2の部位にモノ-M6Pグリカンを有していたことが検出された。
【0126】
図9Dは、第3の部位であるN334のN-グリコシル化プロファイルを示す。図9Dから分かるように、主要なグリカン種は、非リン酸化高マンノースグリカン、ジ-、トリ-、およびテトラ-アンテナリ複合グリカン、ならびにハイブリッドグリカンである。第1および第2の分析の両方で、ATB200の20%以上が第3の部位にシアル酸残基を有していたことが検出された。
【0127】
図9Eは、第4の部位であるN414のN-グリコシル化プロファイルを示す。図9Eから分かるように、主要なグリカン種はビス-M6Pおよびモノ-MGPグリカンである。第1および第2の分析の両方で、ATB200の40%以上が第4の部位にビス-M6Pグリカンを有していたことが検出された。第1および第2の分析の両方で、ATB200の25%以上が第4の部位にモノ-M6Pグリカンを有していたことも検出された。
【0128】
図9Fは、第5の部位であるN596のN-グリコシル化プロファイルを示す。図9Fから分かるように、主要なグリカン種は、フコシル化されたジ-アンテナリ複合グリカンである。第1および第2の分析の両方で、ATB200の70%以上が第5の部位にシアル酸残基を有していたことが検出された。
【0129】
図9Gは、第6の部位であるN826のN-グリコシル化プロファイルを示す。図9Fから分かるように、主要なグリカン種は、ジ-、トリ-、およびテトラ-アンテナリ複合グリカンである。第1および第2の分析の両方で、ATB200の80%以上が第6の部位にシアル酸残基を有していたことが検出された。
【0130】
第7の部位であるN869のグリコシル化の分析は、最も一般的なグリカンがA4S3S3GF(12%)、A5S3G2F(10%)、A4S2G2F(8%)およびA6S3G3F(8%)である、約40%のグリコシル化を示した。
【0131】
図9Hは、7つの潜在的N-グリコシル化部位のそれぞれにおけるリン酸化の概要を示す。図9Gから分かるように、第1および第2の分析の両方で、第1、第2および第4の部位における高いリン酸化レベルが検出された。両方の分析は、ATB200の80%以上が第1の部位でモノ-またはジ-リン酸化されていたこと、ATB200の40%以上が第2の部位でモノ-リン酸化されていたこと、およびATB200の80%以上が第4の部位でモノ-またはジ-リン酸化されていたことを検出した。
【0132】
親水性相互作用液体クロマトグラフィー-蛍光検出-質量分析(HILIC-FLD-MS)法に従って、ATB200の別のグリカン分析を行った。
【0133】
HILIC-FLD-MS分析の結果を以下の表Aに示す。表Aにおいて、3桁の数字の最初の数字はグリカンの枝の数を示し、2番目の数字はコアフコース単位の数を示し、3番目の数字は末端シアル酸単位の数を示す。この命名法を用いて、「303」は0個のコアフコース(2番目の0)および3つの末端シアル酸(最後の3)を有する3分岐型グリカン(最初の3)を表し、「212」は1つのコアフコースおよび2つの末端シアル酸を有する2分岐型グリカンを表し、「404」は0個のコアフコースおよび4つの末端シアル酸を含む4分岐型グリカンを表す、などである。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
このHILIC-FLD-MS分析に基づいて、試験したATB200は、モルATB200当たり2~3モルの平均フコース含量、モルATB200当たり20~25モルのGlcNAc含量、モルATB200当たり8~12モルのガラクトース含量、モルATB200当たり22~27モルのマンノース含量、モルATB200当たり3~5モルのM6P含有量、およびモルATB200当たり4~7モルのシアル酸含有量を有することが期待される。
【0138】
酵素例6:ATB200のCIMPR親和性特性
CIMPRに結合し得るrhGAAの割合がより高いことに加え、その相互作用の質を理解することが重要である。ルミザイム(登録商標)およびATB200 rhGAA受容体結合を、CIMPRプレート結合アッセイを用いて測定した。簡潔には、CIMPR被覆プレートを用いてGAAを捕捉した。様々な濃度のrhGAAを、固定化した受容体に適用し、未結合rhGAAを洗い流した。残りのrhGAA量は、GAA活性によって決定された。図10Aに示すように、ATB200 rhGAAは、ルミザイム(登録商標)より有意に良好に、CIMPRに結合した。
【0139】
図10Bは、ルミザイム(登録商標)、従来のrhGAA、および本発明によるATB200におけるビス-M6Pグリカンの相対含有量を示す。ルミザイム(ルミザイム)(登録商標)では、平均して10%の分子のみがビス-リン酸化グリカンを有する。これを、平均して全てのrhGAA分子が少なくとも1つのビス-リン酸化グリカンを有するATB200と対比する。
【0140】
酵素例7:ATB200 rhGAAは、ルミザイム(登録商標)よりも線維芽細胞により効率的に内在化された
ATB200およびルミザイム(登録商標)rhGAAの相対的な細胞取り込みを、正常およびポンペ(Pompe)線維芽細胞系を用いて比較した。比較は、本発明による5~100nMのATB200 rhGAAと10~500nMの従来のrhGAAルミザイム(登録商標)との比較を含んでいた。16時間のインキュベーション後、外部rhGAAをTRIS塩基で不活性化し、細胞を収集前にPBSで3回洗浄した。内在化GAAは、4MU-α-グルコシド加水分解によって測定され、総細胞タンパク質に対してグラフ化され、その結果は図11A~Bに表される。
【0141】
ATB200 rhGAAはまた、それぞれ効率的に細胞内に内在化することが示され(図11Aおよび11B)、ATB200 rhGAA正常およびポンペ線維芽細胞の両方に内在化し、従来のルミザイム(登録商標)rhGAAよりも高度に内在化していること示す。ATB200 rhGAAは、約20nMで細胞受容体を飽和させる一方、ルミザイム(登録商標)は約250nM必要である。これらの結果から外挿される取り込み効率定数(K取り込み)は、図11Cに示すように、ATB200では2~3nmであり、ルミザイム(登録商標)では56nMである。これらの結果は、ATB200 rhGAAがポンペ病によく標的化された処置であることを示唆している。
【0142】
酵素例8:Gaaノックアウトマウスにおけるグリコーゲン還元
図12A~12Cは、アルグルコシダーゼアルファ(ルミザイム(登録商標))およびATB200の、Gaaノックアウトマウスにおける投与の効果を示す。動物は2回のIVボーラス投与(隔週)を受けた。最終投与の2週間後に組織を収集し、酸性α-グルコシダーゼ活性およびグリコーゲン含有量について分析した。
【0143】
図12A~12Cから分かるように、ATB200は、酸性α-グルコシダーゼ(Gaa)ノックアウトマウスの組織グリコーゲンを用量依存的に激減させることが判明した。20mg/kg用量のATB200は、Gaaノックアウトマウスにおいて、5mg/kgおよび10mg/kg用量レベルよりも大きい割合で貯蔵グリコーゲンを一貫して除去した。しかしながら、図12A~12Cに見られるように、5mg/kgで投与されたATB200は、マウス心臓および骨格筋(四頭筋および三頭筋)におけるグリコーゲンの、20mg/kgで投与されたルミザイム(登録商標)と同様の減少を示した一方、10および20mg/kgで投与されたATB200は、ルミザイム(登録商標)よりも骨格筋におけるグリコーゲンレベルの著しく良好な低下を示した。
【0144】
図15は、アルグルコシダーゼアルファ(ルミザイム(登録商標))およびATB200の、Gaaノックアウトマウスにおける投与の効果を示す。12週齢のGAA KOマウスを、Lumizyme(登録商標)またはATB200、20mg/kg IVで4週間おきに注射した。グリコーゲン測定の最後の酵素用量の14日後に組織を収集した。図13は、四頭筋および三頭筋骨格筋におけるグリコーゲンの相対的減少を示し、ATB200は、ルミザイム(登録商標)よりも大きいグリコーゲンの減少を生じる。
【0145】
酵素例9:Gaaノックアウトマウスにおける筋肉生理学および形態学
Gaaノックアウトマウスに隔週で20mg/kgの組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(アルグルコシダーゼアルファまたはATB200)の2回のIVボーラス投与を与えた。コントロールマウスは、溶媒のみで処置した。ヒラメ筋、四頭筋および隔膜組織は、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの最後の投与の2週間後に収集される。ヒラメ筋および隔膜組織は、グリコーゲンレベルについて過ヨウ素酸シッフ試薬(PAS)で染色することにより、およびリソソーム増殖についてポンペ病においてアップレギュレートされたリソソーム関連膜タンパク質(LAMP1)マーカーのレベルを測定することにより分析した。エポキシ樹脂(Epon)に包埋された四頭筋の半薄切片をメチレンブルーで染色し、電子顕微鏡(1000×)で観察し、空胞の存在の程度を決定した。四頭筋試料を免疫組織化学的に分析して、オートファジーマーカー微小管関連タンパク質1A/1B型軽鎖3ホスファチジルエタノールアミンコンジュゲート(LC3A II)およびp62、インスリン依存性グルコーストランスポーターGLUT4およびインスリン非依存性グルコーストランスポーターGLUT1のレベルを決定した。
【0146】
同様の実験において、Gaaノックアウトマウスに隔週で20mg/kgの組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(アルグルコシダーゼアルファまたはATB200)の4回のIVボーラス投与を与えた。コントロールマウスは、溶媒のみで処置した。心臓筋肉組織を組換えヒト酸性α-グルコシダーゼの最後の投与の2週間後に収集し、グリコーゲンレベルについて過ヨウ素酸シッフ試薬(PAS)で染色することにより、およびリソソーム増殖についてLAMP1のレベルを測定することにより分析した。
【0147】
図14に見られるように、ATB200の投与は、アルグルコシダーゼアルファによる従来の処置と比較して、心臓および骨格筋(ヒラメ筋)組織におけるリソソーム増殖の減少を示した。さらに、図15に見られるように、ATB200の投与は、アルグルコシダーゼアルファによる従来の処置と比較して、心臓および骨格筋(ヒラメ筋)組織における点状のグリコーゲンレベルの減少を示した。
【0148】
同様に、図16に見られるように、ATB200は、未処置のマウスおよびアルグルコシダーゼアルファで処置したマウスと比較して、Gaaノックアウトマウスの四頭筋における筋線維中の空胞の数を有意に減少させた。図17に見られるように、LC3IIおよびp62の両方のレベルは、野生型マウスと比較してGaaノックアウトマウスで増加する。さらに、インスリン依存性グルコーストランスポーターGLUT4およびインスリン非依存性グルコーストランスポーターGLUT1のレベルは、野生型マウスと比較してGaaノックアウトマウスにおいて増加する。酸性α-グルコシダーゼ欠乏に関連する上昇したGLUT4およびGLUT1レベルは、筋線維へのグルコース取り込みの増加に寄与し得、基礎および食物摂取後の両方でグリコーゲン合成の増加をもたらす。
【0149】
酵素例10:Gaaノックアウトマウスにおける筋肉機能
12回の隔週投与の長期実験では、20mg/kgのATB200+10mg/kgのミグルスタットは、握力およびワイヤハング試験(図18A~18B)の両方によって測定されたベースラインからGaaKOマウスの機能的筋力を進行的に増加させた。同一のERT用量(20mg/kg)を受けたアルグルコシダーゼアルファ(ルミザイム(登録商標))処置マウスは、実験の大部分を通して同一条件下で低下することが観察された(図18A~18B)。短期実験と同様に、ATB200/ミグルスタットは、アルグルコシダーゼアルファよりも処置の3ヶ月後(図19A~19C)および6ヶ月後(図19D~19G)に実質的により良好なグリコーゲンクリアランスを有していた。ATB200/ミグルスタットはまた、アルグルコシダーゼアルファと比較して、3ヶ月の処置後、オートファジーおよびLAMP1およびジスフェリンの細胞内蓄積を減少させた(図20)。図18Aにおいて、*は、ルミザイム単独と比較して統計的に有意であることを示す(p<0.05、両側t検定)。図19A~19Gにおいて、*は、ルミザイム(登録商標)単独と比較して統計的に有意であることを示す(p<0.05、一方向ANOVA分析の下でDunnettの方法を用いた多重比較)。
【0150】
まとめると、これらのデータは、ATB200/ミグルスタットが効率的に筋肉を標的とし、細胞機能障害を逆行させ、筋肉機能を改善したことを示す。重要なことに、筋肉構造の明らかな改善ならびにLAMP1およびジスフェリンのオートファジーおよび細胞内蓄積の減少は、機能的筋力の改善と相関する改善された筋肉生理学のための良い代替となり得る。これらの結果は、臨床実験における筋肉生検から有用なバイオマーカーであると判明する可能性のあるGaaKOマウスにおけるポンペ病の治療的処置の効果を評価するために、オートファジーおよびこれらの重要な筋肉タンパク質のモニタリングが合理的で実用的な方法であることを示唆している。
【0151】
図20は、ミグルスタットを伴うまたは伴わない6ヶ月のATB200投与が、GaaKOマウスにおけるジストロフィンの細胞内蓄積を低下させることを示す。ATB200±ミグルスタットについて、ルミザイム(登録商標)よりもジストロフィンの蓄積が大幅に減少した。
【0152】
製剤例1:pHおよび緩衝剤
製剤例の分析方法
外見、pH、タンパク質濃度などについて本明細書に記載した実施例の分析は、特記しない限り、以下の方法に従って行った。
【0153】
外観
透明度、色および可視粒子を含む試料の外観を、YB-2ライトボックスを用いて白黒背景の下で調べた。
【0154】
pH
試料のpHはSevenMulti(商標)pHメーターで測定した。
【0155】
タンパク質濃度
タンパク質濃度は、NanoDrop(商標)2000分光光度計を使用してUV280示度によって決定した。各回2.5μLの試料ですべての測定を2回繰り返し、平均した。
【0156】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)
pHおよび緩衝剤、凍結融解および賦形剤の例については、Agilent 1260 HPLCシステムで、TSKgel(登録商標)G3000 SWXLカラム(Tosoh Bioscience、7.8×300mm、5μm、25℃)を用いてタンパク質モノマーおよびその高分子量種および断片の分離を行った。移動相は、50mMのリン酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウムおよび20mMのクエン酸ナトリウム(pH6.0±0.2)からなっていた。クロマトグラフィーシステムは、1.0mL/分の流速、50μLの注入容量(典型的には1mg/mL)、および均一濃度勾配を用いた20分間の実行時間を使用した。280nmでUV検出器によりシグナルを検出した(参考:360nm)。
【0157】
PS80の例では、Agilent 1260 HPLCシステムで、BioSepTM-SEC-s3000カラム(Pennomenex、7.8×300mm、5μm、25℃)を使用して、タンパク質モノマーおよびその高分子量種およびフラグメントの分離を行った。移動相は、50mMのリン酸ナトリウムおよび100mMの塩化ナトリウム(pH6.2±0.2)からなっていた。クロマトグラフィーシステムは、1.15mL/分の流速、50μLの注入容量(典型的には1mg/mL)、および均一濃度勾配を用いた25分間の実行時間を使用した。シグナルはUV検出器により280nmで検出された。
【0158】
SDS-PAGE(非還元)
報告できる値は、非還元SDS-PAGEにおけるタンパク質の純度および分子量である。試料を過剰のSDSの存在下で、非還元状態で変性させ、均一な負電荷を得た。印加電場(165V)において、これらのSDS被覆種は、ポリアクリルアミドゲルを通して見かけの分子量に基づいて分離された。分離したバンドを、クーマシーブルー染色によって検出した。
【0159】
4-MUG酵素活性
10μLの試料を希釈し、加水分解し(GAAにより、37℃で60分間)、蛍光生成物4-MUを生成した。125μLの1Mグリシンまたは0.1M NaOHを加えて反応を停止させた。
【0160】
一連の4-MU標準を試料で析し、蛍光シグナルに基づいて標準検量線を生成した。RFUの4-MU量への変換は、4パラメータロジスティック回帰モデルに従って回帰した標準曲線とのソフトウェア媒介比較によって達成された。次いで、試料中のGAA酵素活性(ナノモル 4-MU放出/hr/ml GAA)を、4-MU標準曲線に基づいて計算した。
【0161】
4-MUG酵素濃度
10μLの試料およびGAA参照標準を希釈し、蛍光生成物4-MUを生成するために加水分解した(GAAにより、37℃で60分間)。125μLの1M NaOHを加えて反応を停止させた。
【0162】
一連のGAA参照標準を試料で分析し、蛍光シグナルに基づいて標準検量線を生成した。RFUの4-MU量への変換は、4パラメータロジスティック回帰モデルに従って回帰した標準曲線とのソフトウェア媒介比較によって達成された。次いで、試料中のGAA酵素濃度(ナノモル 4-MU放出/hr/ml GAA)を、GAA標準曲線に基づいて計算した。
【0163】
動的光散乱(DLS)
マイクロピペットを用い、40μLの希釈されていない試料のアリコートを40μLの使い捨てキュベットに移した。3つの測定を各サンプルについて行った。
【0164】
粒子:HIAC
200μLの各試料を、ろ過した参照緩衝剤で2000μLに希釈した。試料を3回試験し、450μLを各試験に使用した。1mL当たり1μm、3μm、5μm、10μmおよび25μmの各サイズの粒子の平均数が報告された。
【0165】
MicroCal示差走査熱量測定(DSC)
毛管細胞示差走査熱量測定(DSC)は、試料の温度を上昇させるのに必要な熱量の差と温度の関数としての基準とを検出することにより、タンパク質の熱安定性を測定するために利用される。具体的には、溶液中のタンパク質の相対的安定性の指標である熱転移中点(Tm)を測定するために使用される。
【0166】
試料を参照緩衝剤で約1mg/mLに希釈した。400μLの参照バッファーのアリコートを96ウェルプレートの各奇数番号のウェルに加え、各試料の400μLのアリコートを対応する偶数番号のウェルに加えた。走査温度は10℃~110℃の範囲である。
【0167】
変調示差走査熱量測定(mDSC)
Netzsch示差走査熱量計(DSC204 F1)を用いて、ガラス転移温度(Tg’)および共晶温度(Te)を試験した。試験のために15μLの試料をローディングディスクに充填した。まず、10℃/分の速度で20℃から-60℃まで降温し、このステップにおける冷却曲線からTe値を得た。第2に、温度を10℃/分の速度で-60℃から40℃に上昇させ、加熱曲線からTg’値を分析した。
【0168】
M6P
M6Pを加水分解(4M TFA、100℃、4時間)によって試料から遊離させ、遠心減圧蒸発器で乾燥させた。乾燥したM6Pおよび参照標準を分析前に精製水に懸濁させた。CarboPac PA10 BioLCTM分析カラム(4mm×250mm、3.5μm、100Å、30℃)およびCarboPac PA10 BioLCGuardカラム(4mm×50mm、3.5μm、100Å、30℃)を使用した。移動相は、相A(100mM NaOH)および相B(1M NaOAc、100mM NaOH)からなっていた。クロマトグラフィーシステムは、1mL/分の流速、25μLの注入容量、および勾配を伴う30分間の実行時間を使用した。シグナルは、パルス電流法検出によって検出された。試料中のM6P含有量を標準曲線に基づいて計算した。
【0169】
シアル酸
シアル酸は、加水分解(2M HAc、80℃、2時間)によって薬物分子から放出され、次いで、すべてのサンプルおよび混合標準溶液をDMBで標識し(50℃、暗所で17±0.5時間)、Agilent 1260 HPLCシステムで、Zorbax Eclipse Plus C18カラム(Agilent、4.6mm×100mm、3.5μm、45°C)を用いて分離した。移動相は、相A(9%ACN、7%MeOH)および相B(100%ACN)からなっていた。クロマトグラフィーシステムは、0.5mL/分の流速、20μLの注入容量、および勾配を伴う20分間の実行時間を使用した。蛍光検出器(λex=373nm、λem=448nm)によりシグナルを検出した。試料中のNeu5GcおよびNeu5Ac含量を標準曲線に基づいて計算した。
【0170】
表1に示すように、50mM NaClを含むかまたは含まない25mMリン酸ナトリウムまたは25mMクエン酸ナトリウムを含有する、4.0~8.0の範囲のpHを有する10種類の緩衝剤製剤を調製した。ATB200 4-MUG酵素濃度は1mg/mLであった。
【0171】
【0172】
試料の準備
pHおよび緩衝剤評価実験で使用される物質は、以下の表2に記載されている通りである。
【0173】
【0174】
pH4.0(P40)、5.0(P50)、6.0(P60)、7.0(P70)および8.0(P80)の25mMリン酸ナトリウム緩衝剤、pH6.0(NaClを含まないP60)の25mMリン酸ナトリウム緩衝剤、pH5.0(C50)、5.5(C55)、6.0(C60)および6.5(C65)の50mM NaClを含む25mMクエン酸ナトリウム緩衝剤を調製した。pH4.0では、HClを用いてリン酸ナトリウム緩衝剤(pH4.0)中のpHを調整した。
【0175】
ATB200酵素溶液を、最初に限外ろ過遠心分離装置を用いて15℃および3500rpmの条件下で40分間濃縮した。その後、濃縮酵素溶液を15℃および3500rpmで50分間および55分間、2回の限外ろ過によって上記の3つの異なる緩衝剤へ緩衝剤交換した。続いて、緩衝剤交換した酵素溶液を、タンパク質濃度および4-MUG酵素濃度について分析した。
【0176】
最後に、適切な容量の各緩衝剤を添加して、最終ATB200酵素濃度を1.0mg/mLに調整した。最終ATB200濃度は、UV_A280吸光度および4-MUG酵素濃度の両方によって確認された。
【0177】
溶液を0.22μmのポリエーテルスルホン(PES)フィルターで無菌的にろ過した。
【0178】
各製剤を、分析試験の試料量要件に従って、500μL~1000μLの充填容量で、バイオセーフティーフード内の2mLガラスバイアルに無菌的に充填した。バイアルに栓をし、充填後速やかにクリンプオーバーシールした。
【0179】
試料試験
各製剤のバイアルを5℃および40℃で最長8週間貯蔵し、25℃、100rpmで、回転式振騰器で最長5日間撹拌した(表3参照)。外観、pH、UV濃度、4-MUG酵素濃度、SEC、HIAC、DLS、4-MUG酵素活性、およびDSCの試験について、表3に記載したように、製剤を初期(T0)、5日間(5D)、2週間(2W)、4週間(4W)および8週間(8W)でサンプリングした。
【0180】
【0181】
結果
熱安定性の結果-MicroCal DSC
熱安定性測定の結果を以下の表4に示す。
【0182】
【0183】
より高いTm発症は、特定の製剤においてタンパク質のより良好な熱安定性を示す。したがって、最高の熱安定性を示す製剤は、P50、C55、C50、NaClを含まないP60、P60およびC60であった。これらの結果は、ATB200酵素が弱酸性緩衝剤中で、塩基性条件よりも良好な熱安定性を有することを示している。
【0184】
外観-撹拌
撹拌実験の外観の結果を以下の表5に示す:
【0185】
【0186】
表から分かるように、5日間の撹拌後、NaClを含まないP60、C50、C55、C60、およびC65は、無色、透明、および可視粒子なしを維持したが、P40、P50、P60、P70、およびP80においては、可視粒子が観察された。このデータは、クエン酸ナトリウム緩衝剤が、撹拌後、リン酸ナトリウム緩衝剤よりも製剤をより安定化させることを示している。
【0187】
pH
pH測定の結果を以下の表6に示す:
【0188】
【0189】
データから分かるように、pH5.0~6.5の範囲の50mM NaClを含むリン酸塩緩衝剤およびクエン酸緩衝剤の両方は、全体にわたって所定のpHを維持することができた。緩衝剤交換、濃度調整、5℃および40℃での8週間の貯蔵、および撹拌の間、試料のpHに有意な変化はなかった。
【0190】
対照的に、pHは5℃および40℃の両方で8週間の貯蔵後にNaClを含まないP60では減少し、緩衝剤交換および8週間の貯蔵後にP40では両方の温度でpHが上昇した。しかし、撹拌は、NaClを含まないP40およびP60の両方においてpHの変化をもたらさなかった。
【0191】
タンパク質濃度
タンパク質濃度測定の結果を以下の表7に示す:
【0192】
【0193】
5℃で8週間の貯蔵および5日間の撹拌は、タンパク質濃度に影響しなかった。すべての製剤の間に有意な変化は観察されなかった。
【0194】
対照的に、40℃での貯蔵中、タンパク質濃度は、P50、P60、NaClを含まないP60、C60、およびC65ではわずかに増加し、C50ではわずかに減少し、P40、P70、P80、C55では維持された。40℃試料中に可視粒子が形成されたため、12000rpmで1分間遠心分離した後、40℃/8週間試料を再試験した。この結果は、粒子を含む試料中の遠心分離後のタンパク質濃度の低下を示し、このことは、試料中に存在する粒子が280nmでの吸光に影響を有することを示唆した。
【0195】
4-MUG酵素濃度
4-MUG酵素濃度測定の結果を以下の表8に示す。
【0196】
【0197】
緩衝剤交換後、P80の4-MUG酵素濃度は直ちに0.27mg/mLに低下した。これは、pH8.0が酵素活性に有意に影響を及ぼすことを示した。5℃および40℃の両方で2週間貯蔵した後、酵素濃度はゼロに低下した。P80を除き、5℃で8週間貯蔵した後、ほとんどの製剤の酵素濃度は安定し、P40では少し低下した。
【0198】
対照的に、40℃の貯蔵は明らかに酵素濃度に影響を与えた。2週間後、酵素濃度はP70で消失し、P40およびC65では劇的に低下し、P50では明らかに減少した。4週間後、酵素濃度は減少し続けた。最後に、8週間後、酵素濃度は、P40およびC65では0に近く、pH5.0緩衝剤(P50およびC50)中では0.33mg/mLに低下し、pH5.5~6.0の緩衝剤(P60、NaClを含まないP60、C55、およびC60)中では0.5~0.7mg/mLに低下した。中でも、NaClを含まないP60は最終的に酵素濃度が最も高かった(0.73mg/mL)。この結果は、酵素濃度はpH5.5~6.0の範囲で4-MUG酵素濃度に関して最も保存されていたが、リン酸ナトリウム緩衝剤とクエン酸ナトリウム緩衝剤との間に有意差はなかったことを示す。
【0199】
P80を除き、撹拌実験の間、酵素濃度は有意に変化しなかった。
【0200】
4-MUG酵素活性
4-MUG酵素活性測定の結果を以下の表9に示す:
【0201】
【0202】
4-MUG酵素活性の変化傾向は、4-MUG酵素濃度の変化傾向と対応していた。
【0203】
P80は、試験条件下で4-MUG酵素活性において最悪の安定性を示した。P80の酵素活性は、緩衝剤交換後約70%の減少を示した。その後、酵素活性は、5℃および40℃で2週間貯蔵した後、ほとんど完全に失われた。基本条件は酵素活性に有意に影響した。
【0204】
5℃で8週間貯蔵した後、PS80の酵素活性はほぼ完全に失われ、P40では20%の低下が見られ、他の製剤では有意な変化は観察されなかった。
【0205】
対照的に、40℃の貯蔵により、すべての製剤において酵素活性の明らかな低下が生じた。2週間後、酵素活性はP70ではほとんど完全に失われ、P40およびC65では劇的に減少し、P50では明らかに低下した。酵素活性は、2週間から4週間まで異なる度合で減少し続けた。実験の最後に、酵素活性はC65でほとんど完全に失われ、P40では211.5U/Lに、P50およびC50では約1550U/Lに、C60、P60およびC55では2500~3000U/Lに低下した。製剤のうち、NaClを含まないP60は3549.7U/Lの最高活性を維持した。
【0206】
4-MUG酵素活性の試験結果に基づくと、酵素はpH5.5~6.0の範囲のpHで最も安定化したが、リン酸ナトリウム緩衝剤とクエン酸ナトリウム緩衝剤と間に区別は見られなかった。
【0207】
純度:SEC-HPLC
SEC測定の結果を以下の表10に示す。
【0208】
【0209】
緩衝剤交換後、いくつかの製剤のSEC純度は、出発材料(SECモノマー:98.9%)と比較して有意に減少した。P80では、SECの純度が44.9%に低下し、54.5%の凝集体が形成され;P40では、交換前DSと比較してモノマー%が4.9%減少し、HMW分子より多くのLMWフラグメントが形成され(4.7%VS1.3%);P70では、凝集体の増加に対応して、モノマー%のわずかな減少(1.2%)が見出され;NaClを含まないP60では、モノマー%が2.3%減少した。
【0210】
8週間の5℃貯蔵後、製剤P60、NaClを含まないP60、およびC65のSEC純度は良好に維持されたが、他の製剤のSEC純度はT0と比較して有意に低下した。P40では、SEC純度は74.3%(T0:94.0%)に劇的に低下し、23.4%のLMW断片が形成され;P50およびC50では、モノマーのわずかな減少(5~7%)およびLMW断片の増加(5~7%)があった。P80では、18.2%の減少が見られ、それは主に凝集へ移動していた(14.8%)。P70についても同様に、単量体が10.7%減少し、HMW断片が9.2%増加した。C55では、単量体、HMWおよびLMWの割合がわずかに変化した。
【0211】
40℃で貯蔵すると、すべての製剤において劇的なモノマー%の変化がもたらされた。P70およびP80では、SECモノマーは2週間後に0~0.5%に低下し、C65では22.4%が残っており、8週間後には大部分が凝集体となった。P40、P50およびC50では、主にLMW断片の形成に起因するモノマーの有意な低下(50~90%)があった。P60、NaClを含まないP60、およびC60では、8週間後、SECモノマー%は、それぞれ80.8%、83.6%および77.5%に減少した。
【0212】
SECの結果は、pH6.0がATB200の安定性のために最もよく働き、リン酸ナトリウム緩衝剤とクエン酸ナトリウム緩衝剤との間には有意差が見出されなかったことを示した。さらに、製剤中の塩化ナトリウムの不在は、ATB200の安定性に影響を与えなかった。
【0213】
撹拌実験中、SEC純度はNaClを含まないP60およびP60においてわずかに減少した。P40、P50、P70、P80、C50、C60およびC65では、モノマー%が明らかに減少した。
【0214】
多分散性:DLS
DLS測定の結果を以下の表11に示す。
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
DLSデータは、タンパク質分子の流体力学的半径および粒子の多分散性を反映した。いくつかの試料では乳白色が観察されたので、DLSを使用して不可視粒子を分析した。DLSの結果は、外観による示唆と概ね一致していた。
【0219】
8週間の5℃貯蔵中、タンパク質分子の流体力学的半径および多分散指数(PDI)は安定であり、P60、P70、P80、NaClを含まないP60およびC60と同等であった。流体力学的半径は、他のすべての5つの製剤、特に8週間後のP40において、約10nmから数百nmに変化した。
【0220】
8週間の40℃貯蔵中、すべての製剤において流体力学的半径およびPDIに劇的な変化があった。しかしながら、凝集体の複雑なプロファイルのために、結果に基づいてそれらの製剤を比較することは困難である。
【0221】
撹拌実験では、P80の流体力学的半径およびPDIは劇的に増加し;P40、P50およびC50では、流体力学的半径およびPDIはわずかに増加し;P60、P70、NaClを含まないP60、C55、C60、およびC65では有意な変化は観察されなかった。
【0222】
上記のDLSデータによれば、P60、P70、NaClを含まないP60、C55、C60、およびC65は、P40、P50、P80、およびC50より良好であった。
【0223】
粒子:HIAC
撹拌実験のHIAC測定の結果を以下の表12に示す:
【0224】
【0225】
撹拌実験中、P70では25℃で5日間撹拌した後の粒子数が有意に増加し、他のすべての製剤は同等の粒子数を有していた。
【0226】
概要
全体として、P60およびC60は他の製剤と比較して最も安定した製剤として優れていた。したがって、ATB200は5.0~6.0の範囲で最も安定であると結論付けられた。しかしながら、リン酸塩緩衝剤とクエン酸緩衝剤との区別はできなかった。さらに、製剤中に塩化ナトリウムが存在しないことは、ATB200の安定性に有意な影響を示さなかった。
【0227】
製剤例2:凍結融解
凍結融解プロセス中の安定性について3つの製剤を評価した。3つの製剤を以下の表13に要約する。ATB200酵素の標的濃度は5mg/mLであった。
【0228】
【0229】
試料の準備
ATB200 DSを、透析カセット(20000MWCO)を用いて3つの製剤緩衝剤に緩衝剤交換した。透析は、穏やかに撹拌しながら、5℃で、6~10時間ごとに1回、各3回緩衝剤交換を用いて行った。
【0230】
各透析後、適切な容量の製剤緩衝剤を添加して、最終UV濃度を5mg/mLに調整した。次いで、溶液を0.22μmのPESフィルターで無菌的にろ過した。次いで、各製剤を、分析試験の試料量要件に従って、500μL~1000μLの充填容量で、バイオセーフティーフード内の2mLガラスバイアルに無菌的に充填した。バイアルに栓をし、充填後速やかにクリンプオーバーシールした。
【0231】
凍結融解の前に、各製剤についてバイアルを取り、残りの試料バイアルを凍結融解サイクルに供した。凍結融解後試料バイアルは、予め定められたサンプリング点で採取された。
【0232】
試料試験
3つの凍結融解プロセスを以下のように試験した:
【0233】
プロセス1:制御されない凍結および解凍。試料を-80℃の冷凍機で凍結し、25℃のチャンバーで解凍した。
【0234】
プロセス2:制御された凍結および制御されない融解。試料をFrosty容器に入れ、-80℃の冷凍機で凍結させた。Frosty容器は、1℃/分の凍結速度制御を達成するためにイソプロパノールを使用した。凍結した容器を、試料を融解するために25℃のチャンバーに入れた。温度上昇率は約1℃/分であった。
【0235】
プロセス3:制御された凍結および解凍。凍結乾燥機を用いて試料を凍結および融解した。凍結中に達成された最低試料温度は-47℃であった。試料温度を25℃に上げた。凍結および融解の両方についての温度変化率は、約0.5℃/分で制御した。実験を繰り返して結果を確認した。
【0236】
各プロセスを用いて5または3回の凍結融解サイクルを実施した。凍結融解前後の試料について、以下の試験を行った。外観、濃度(UVおよび酵素)およびSEC-HPLC。試験パラメータの要約を以下の表14に示す。
【0237】
【0238】
結果
外観-第1ラウンド
外観測定の第1ラウンドの結果を以下の表15Aおよび15Bに示す:
【0239】
【0240】
【0241】
T0(凍結融解前)では、対応する製剤緩衝剤を参照として、すべての製剤が無色、わずかに乳白色、および可視粒子を含まないようであった。
【0242】
5サイクルの迅速な凍結融解(プロセス1)後、すべての製剤は、そのT0と比較してより多くの可視粒子を含むようであった。CP60は、5FT後の3つの中で最も少ない粒子を含んでいた。
【0243】
5サイクルの低速凍結融解(プロセス2)後、すべての製剤はT0よりも多くの可視粒子を含むようであったが、プロセス1で処理したものよりは少なかった。5FTサイクル後のCP60試料では、1FTサイクル後のP60およびC60試料よりも少ない粒子が観察された。
【0244】
3サイクルの低速凍結融解(プロセス3)後、すべての製剤はT0よりも多い可視粒子を有するようであった。3つの製剤の間に差はなかった。
【0245】
外観-第2ラウンド
外観測定の第2ラウンドの結果を以下の表23に示す:
【0246】
【0247】
第2ラウンドの低速凍結融解試験(プロセス3)では、第1ラウンドよりも多くのFTサイクルが実施された。5FT後のP60には、T0と比較して多数の可視粒子が現れたが、C60とCP60の両方では少数の粒子が観察された。
【0248】
4-MUG酵素濃度と活性
4-MUG酵素濃度および活性測定の結果を以下の表17(プロセス1~2およびプロセス3の第1ラウンド)および表18(プロセス3の第2ラウンド)に示す。
【0249】
【0250】
【0251】
5サイクルの高速凍結-解凍(プロセス1)後、T0試料と比較して、P60では4-MUGの酵素濃度がわずかに低下したが、C60およびCP60では有意差は認められなかった。
【0252】
Frosty容器(プロセス2)を用いた5サイクルの低速凍結融解の後、3つの処方物のいずれにおいても、T0試料と比較した有意差は観察されなかった。
【0253】
凍結乾燥機を用いた3サイクルの低速凍結融解(プロセス3)の後、T0と比較して、P60およびCP60の両方において明確な酵素濃度の減少があったが、C60に有意な変化はなかった。プロセス3の凍結融解を5サイクルで繰り返し、同じ傾向が観察された。P60試料の酵素濃度は1サイクルのF/T後に18.8%低下し、3サイクル後(53.1%低下)および5サイクル後(68.9%低下)にさらに悪化した。CP60では、3サイクル後に酵素濃度が低下し始め、最終的に5サイクル後にP60と同じレベルまで低下した。C60では、5サイクルの低速凍結融解後にほとんど変化はなかった。
【0254】
4-MUG酵素濃度の結果は、凍結/加熱速度、F/Tサイクル数および緩衝剤タイプがATB200の安定性に影響を与え得ることを示した。クエン酸塩緩衝系(C60)は、使用された凍結融解プロセスにかかわらず良好な安定化効果をもたらした。
【0255】
4-MUG酵素活性の変化傾向は、4-MUG酵素濃度と同じであった。
【0256】
迅速な凍結融解試験(プロセス1)の間、5サイクル後にP60に酵素活性がわずかに低下したが、C60およびCP60では有意な変化は観察されなかった。
【0257】
1℃/分の温度変化(プロセス2)を用いた低速凍結融解試験の間、いずれの試料でも明確な変化は観察されなかった。
【0258】
凍結乾燥機による低速凍結融解試験(プロセス3)では、P60の酵素活性は明らかに低下し、CP60ではわずかに低下した。しかし、C60にはほとんど変化はなかった。プロセス3の凍結融解実験の第2ラウンドにおいて、P60の酵素活性は、1サイクル後に19.1%、3サイクル後に54.1%、5サイクル後に71.2%低下した。CP60では、3サイクル後に酵素活性が低下し始め、5サイクル後にP60と同様のレベルに低下した。5サイクル後のC60の変化は無視できる程度であった。
【0259】
純度:SEC-HPLC
純度測定の結果を以下の表20(プロセス1~2およびプロセス3の第1ラウンド)および表21(プロセス3の第2ラウンド)に示す。
【0260】
【0261】
【0262】
5サイクルの高速F/T(プロセス1)または低速F/T(プロセス2)後のいずれの試料においても、SECモノマー%の変化は検出されなかった。
【0263】
最初の低速F/T試験(プロセス3)では、P60試料は、3サイクル後に(主にHMW種の形成による)明らかなSECモノマー%の低下を示した。また、C60とCP60では明確な変化が生じなかった。第2のプロセス3の低速F/T試験(0.5℃/分)では、P60試料中のモノマーは1サイクル後に低下し始め、5サイクル後、最終的に68.1%低下した。そしてCP60では、モノマー%は3サイクル後に低下し始めたが、P60よりもはるかに程度が低かった。しかし、5サイクル後にはP60と同じレベルに達した。最大5サイクル後のC60における単量体百分率に変化はなかった。
【0264】
SEC純度の結果は、酵素濃度および活性における性能と一致しており、凍結/加熱速度、F/Tサイクル数および緩衝剤タイプが凍結融解プロセス中のATB200安定性に影響を与え得ることを確認した。リン酸ナトリウムを含有する緩衝剤は、SEC結果に基づいて、凍結融解サイクル中においてATB200も保護しなかった。
【0265】
概要
クエン酸緩衝剤(C60)中に配合されたATB200は、他の2つの緩衝剤(P60およびCP60)よりもよく複数の凍結融解サイクルに耐えた。凍結融解プロセスにかかわらず、ATB200はクエン酸緩衝剤中で安定したままであった。
【0266】
製剤例3:賦形剤
8種の製剤(E1-8)を種々の賦形剤で調製した。賦形剤評価試験におけるATB200酵素濃度は5mg/mLであった。3つの緩衝剤、2つの安定剤および1つの界面活性剤を選択して、以下の表22に記載の製剤中のタンパク質安定性を評価した。
【0267】
【0268】
試料の準備
pH6.0の50mM NaClを含有する25mMリン酸ナトリウム緩衝剤、pH6.0の50mM NaClを含有する25mMクエン酸ナトリウム緩衝剤、およびpH6.0の50mM NaClを含有する25mMリン酸ナトリウム-クエン酸塩組み合わせ緩衝剤を別々に調製した。透析カセットを用いてATB200酵素溶液を3つの緩衝剤に交換した。透析は、穏やかに撹拌しながら、5℃で、6~10時間ごとに1回、各3回緩衝剤交換をして行った。
【0269】
透析後、透析液にトレハロース、マンニトールまたはPS80を添加して、表22に示す処方物を調製した。最後に、適量の製剤緩衝剤を添加して、最終ATB200濃度を5mg/mLに調整した。溶液を0.22μmのPESフィルターで無菌的にろ過した。
【0270】
各製剤を約1mLの充填容量を有するバイオセーフティーフード内の2mLガラスバイアルに無菌的に充填した。バイアルに栓をし、充填後速やかにクリンプした。
【0271】
試料試験
製剤E1~8を4つの異なる条件下で試験した。各製剤のバイアルを5℃で12週間(12W)および40℃で8週間(8W)貯蔵し、5サイクルの凍結融解(0.5℃/分)を行い、100rpmで5日間、25℃で撹拌した。サンプリングおよび試験計画を表23に記載する。初期(T0)、2週間(2W)、4週間(4W)、8週間(8W)および12週間(12W)で試料を試験した。
【0272】
【0273】
結果
外観
凍結融解実験測定の外観の結果を、下記表24(冷却器を使用)および表25(凍結乾燥機を使用)に示す。
【0274】
【0275】
【0276】
凍結融解試験の間、PS80を含まないF5およびF6の凍結融解サイクルの増加とともに、可視粒子はわずかに増加した。他の製剤では差異は観察されなかった。
【0277】
概要
PS80(F5およびF6)を含まない製剤は、凍結融解実験においてPS80を含む製剤と同様には機能しなかった。これは、複数回の凍結-解凍サイクル後の可視粒子の形成によって証明された。
【0278】
製剤例4:ヒト全血の溶血
ヒトドナーからの血液の一連の希釈液(1:2、1:3、1:4、1:5および1:10)を生理食塩水中で調製した。脱イオン水と混合した場合、アッセイでは540nmでODが0.8から1.2になるような希釈を使用し、これを血液基質と呼んだ。試験物質、プラセボ、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールの4種類の試料を試験した。試験物質は、pH6.0で25mMのクエン酸ナトリウム、2%のマンニトールおよび0.05%のポリソルベート80を含む製剤中のATB200 rhGAAを特徴とした。プラセボはATB200 rhGAAがないことを除き、試験物質と同じであった。ポジティブコントロールは、注射用の滅菌水であり、pHは5であった。ネガティブコントロールは生理食塩水(0.9NaCl)であり、pHは5であった。
【0279】
生理食塩水、生理食塩水を含むプラセボ、ネガティブコントロール(生理食塩水)およびポジティブコントロール(水)を用いた300、600および1000μg/mlの試験物質(ATB200)をヒトドナーからの血液基質と混合した。試料を37℃で1時間撹拌せずにインキュベートした。インキュベーション後、チューブを室温で、約100xgで10分間遠心分離した。各試料の上清中のヘモグロビンの量を、540nmで分光光度的に分析した。
【0280】
試験物質の溶血%は、式:
によって決定される。
【0281】
水+血液の溶血率は100%である。生理食塩水はネガティブコントロールであった。10%以下の溶血は有意ではないと考えられた。試験物質およびプラセボの各濃度について、溶血%を計算した。
【0282】
下記の表26は、試験した試料の結果を示す。
【0283】
【0284】
ヒト血液基質と、3つの試験物質用量と同じ割合で生理食塩水で希釈したプラセボの3つの試料とのインキュベーションは、ヒト血液の有意な溶血を引き起こさなかった。プラセボで希釈した試料の溶血%は、それぞれ-1.3、-1.3、および0.9%と計算された。300、600および1000μg/mlのATB200を用いたヒト血液基質のインキュベーションは、ヒト血液の有意な溶血を引き起こさなかった。試験物質試料の溶血%は、それぞれ-0.1、-1.5%および-1.5%と計算された。
【0285】
結論として、ATB200製剤は、すべての希釈度でヒト血液と適合性があった。
【0286】
製剤例5:ヒト血漿および血清中の凝集
試験物質投与溶液(3濃度)およびプラセボ(3濃度)を、ドナーからのヒト血漿および血清の等容量と混合した。試験物質は、pH6.0で25mMのクエン酸ナトリウム、2%のマンニトールおよび0.05%のポリソルベート80を含む製剤中のATB200 rhGAAを特徴とした。プラセボはATB200 rhGAAがないことを除き、試験物質と同じであった。
【0287】
試験物質またはプラセボの各用量1mlを、等容量の血漿、血清および生理食塩水と混合した。試料を室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、チューブを巨視的におよび顕微鏡的に沈殿または凝固について検査した。各チューブからのアリコートを、マイクロ遠心分離機で、14,000rpmで10分間遠心分離した。各チューブをペレットの有無について調べた。沈殿/凝固およびペレットを以下のように採点した:
0=陰性
1=非常にわずかな沈殿またはペレット
2=最小限の沈殿またはペレット
3=中程度の沈殿またはペレット
4=著しい沈殿またはペレット
【0288】
下記の表27は、試験した試料の結果を示す。
【0289】
【0290】
各ATB200濃度と混合した場合、ヒトの血漿または血清中に巨視的または顕微鏡的に沈殿は観察されなかった。プラセボ試料では沈殿は認められなかった。すべてのプラセボまたはATB200試料を遠心分離したところ、ペレットは観察されなかった。
【0291】
この研究の結果に基づいて、ATB200製剤は最大1000μg/mlの最終濃度(1000μg/mlを含む)のヒト血漿および血清と適合性であることが判明した。
【0292】
実施例:ポンペ病を有するERT経験患者およびERT未経験患者における、ミグルスタットと共投与した組換え酸性α-グルコシダーゼATB200の薬物動態および安全性データ
この実験は、ミグルスタットと併用投与されたATB200の安全性、忍容性、および薬物動態(PK)を主に評価するよう設計された。GaaノックアウトマウスのPK/薬力学(PD)翻訳モデルから、ヒトにおける20mg/kgのATB200と高用量(例えば、260mg)のミグルスタットとの組み合わせが、最適なグリコーゲン低減を提供することが予測される。
【0293】
以下の説明において、ミグルスタットの「高用量」は約260mgの用量を指し、「低用量」は約130mgの用量を指す。
【0294】
この目的は、この第1/2相試験において、10人の患者からの予備的総GAAタンパク質、ATB200およびミグルスタットPKデータ、および安全性マーカーを評価することであった。
【0295】
これは、ポンペ病を有する成人における経口ミグルスタットと共投与したATB200の静脈内注入の安全性、忍容性、PK、PD、および有効性を評価するための、オープンラベル、一定連続、用量漸増、ヒト初回、第1/2相実験の実験デザインを示す(図21)。来診9を通じた最初の8人のコホート1患者、および最初の2人のコホート3患者からの、平均総GAAタンパク質およびミグルスタットPKの結果の評価を行った。
コホート2および3での投与前に、各用量レベルにおいて、コホート1の2人のセンチネル患者からの安全データをレビューした。
ステージ2および3では、ATB200静脈内注入の開始前にミグルスタットを経口投与した。すべての用量について、ATB200を静脈内に4時間注入した。
コホート2および3の最初の2人の患者は、それぞれのコホートにつきセンチネル患者となった。
【0296】
主要な参加基準
・報告されたGAA酵素活性の欠乏に基づいて、またはGAA遺伝子型判定によって、ポンペ病と診断された18~65才の男性および女性
・試験開始前に2~6年間(コホート2については2年以上)、アルグルコシダーゼアルファを用いてERTを受けた(コホート1)
・現在、隔週の頻度でアルグルコシダーゼアルファを投与されており、投薬中断を生じる薬物関連有害事象なしに最後の2回の注入を完了した(コホート1および2)
・6分間歩行試験(コホート1および3)で200~500メートルを歩くことができなければならない
・直立努力性肺活量は、予測正常値の30%~80%でなければならない(コホート1および3)
・車椅子生活であり、補助なしで歩行することが不能でなければならない(コホート2)
PK分析:
・血漿総GAAタンパク質および活性濃度についての血液試料を収集した
・ステージ1:ATB200注入の開始前、および注入の1、2、3、3.5、4、4.5、5、6、8、10、12および24時間後
・ステージ2および3:ミグルスタット経口投与後1、2、3、4、4.5、5、6、7、9、11、13および25時間
・血漿ミグルスタット濃度の血液試料は、ミグルスタット経口投与の直前(時間0)およびミグルスタット経口投与後1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、9、11および25時間後に採取した。血漿ミグルスタットは、有効なLC-MS/MSアッセイによって決定される
・ATB200についての血漿中の総GAAタンパク質濃度5、10および20mg/kgを、rhGAA特異的「シグネチャー」ペプチド(単数または複数)の有効なLC-MS/MS定量化によって決定した
【0297】
ステージ1およびステージ2を完了したコホート1の患者8人およびステージ3を開始したコホート3の患者2人について予備分析を完了した。
・最初のERTスイッチ患者は、ポンペ病の集団を代表しており、平均5.02年のERTを受けていた(表28)
【0298】
【0299】
総GAAタンパク質
単独で投与された場合、ATB200はわずかに用量比例を上回って増加する(表29および図22A~22D)。変動性は、ミグルスタット投与量とともに増加するようである(図22C)。20mg/kgのATB200と高用量のミグルスタット(260mg)との共投与は、20mg/kgのATB200単独と比較して総GAAタンパク質曝露(AUC)を約25%増加させた。分布半減期(α相)は45%増加し、これは高用量のミグルスタットがATB200を血漿中で安定化させることを示唆している。分布半減期の増加には、投与後約12時間までの、時間から最大血漿濃度までのAUCの増加が付随する。AUCおよび半減期の増加は、末端排出段階の間、対数スケールで観察することができる(図22B)。ATB200は比較的高い分布容積を示した。血漿総GAAタンパク質の性質は、ERT未経験患者(コホート3)とERT経験患者(コホート1)との間で類似しているようである(図22Aおよび22D)。
【0300】
【0301】
ミグルスタットPK
ミグルスタットは用量比例的動態を示した(表30および図23)。血漿ミグルスタットは、単回投与と複数投与の間で同様のようである。
【0302】
【0303】
薬力学
コホート1からのERT経験患者における11回目の来診までに(図24Aおよび24B):
・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は8人中5人の患者で減少し、上昇したベースラインレベルを有する4/4人の患者が標準化された
・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は8人中6人の患者で減少し、上昇したベースラインレベルを有する3/4人の患者が標準化された
・クレアチンホスホキナーゼ(CPK)は8人中6人の患者で減少し、上昇したベースラインレベルを有する2/6人の患者が標準化された
・尿中グルコース四糖(HEX4)濃度は、8人の患者のうち8人で減少した
【0304】
第4週までに、治療未経験コホート(コホート3)の2人の患者において、4つのバイオマーカーレベルがすべて減少した(図24Cおよび24D)。
【0305】
図24A~24Dにおいて、データは平均±標準誤差として表される。
【0306】
安全性
・すべての患者において155回以上の全注入後に重篤な有害事象(AE)または注入関連反応は報告されなかった
・11/13(84%)の患者で報告された、処置により発生したAEは、一般に軽度かつ一時的であった。
・7/13(53%)の患者で報告された処置関連AE:悪心(n=1)、疲労(n=1)、頭痛(n=1)、振戦(n=2)、ざ瘡(n=1)、頻脈(n=1)および低血圧(n=1)。
【0307】
結論
・ATB200単独およびミグルスタットとの併用は、安全かつ十分に忍容されており、これまで輸液関連反応はなかった。
・ATB200単独では暴露において用量比例を上回る増加を示し、これはミグルスタットでさらに増強され、ATB200に対するシャペロンの安定化効果を示唆している。
・標準治療からATB200/ミグルスタットに切り替えた後、患者は一般に筋肉損傷のバイオマーカーの改善を示し、多くの患者が18週目までに正常化を示した。
・ATB200/ミグルスタットで治療された最初の2人の治療未経験患者は、筋肉損傷のすべてのバイオマーカーにおいて強い減少を示した
【0308】
配列
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図19G
図20
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
【配列表】
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