(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】疑似ADS-B標的を検出し、位置を特定する方法及び、かかる方法を実装する二次レーダシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/933 20200101AFI20240627BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20240627BHJP
G01S 13/76 20060101ALI20240627BHJP
G01S 3/22 20060101ALI20240627BHJP
G01S 7/36 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01S13/933
G01S7/02 218
G01S13/76
G01S3/22
G01S7/36
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019103500
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511148123
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ビヨー
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-238388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0119515(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0215963(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0159378(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0288627(US,A1)
【文献】米国特許第05101209(US,A)
【文献】欧州特許第02960671(EP,B1)
【文献】欧州特許第03088911(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00 - 3/74
G01S 5/00 - 5/14
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
G01S 19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの二次レーダを含むレーダシステムによりADS-Bスプーファの発生元を検出し、位置特定する方法であって、ADS-Bスプーファは疑似ADS-Bスキッタであり、ADS-Bスキッタは、前記システムの前記レーダの受信機を含む受信機に送信される航空機位置情報信号であり、前記ADS-Bスキッタは、アンテナ(1)の異なるベアリングにおいてある時間にわたり検出され、前記方法は、各二次レーダについて、少なくとも、
-ADS-Bスプーファを検出する第一のステップと、
-前記ADS-Bスプーファ発生元の方位角位置を位置特定する第二のステップであって、
・ADS-Bスキッタの検出時に、前記二次レーダの前記アンテナの方位角と、前記アンテナの和パターン、前記アンテナの差パターン、及び標的からの応答をブロックし、拒絶するための前記アンテナの制御パターンの受信出力とを測定する動作と、
・検出された各ADS-Bスキッタに関する前記スプーファの方位角の少なくとも1つの仮定を生成し、保存する動作であって、前記仮定は前記アンテナの前記方位角と前記スプーファの推定ベアリングの仮定の和と等しく、前記推定ベアリングは、一方で前記和パターン上の前記受信出力と前記制御パターン上の前記受信出力との比と、他方で前記差パターン上の前記受信出力と前記制御パターン上の前記受信出力との比とのペアと、前記アンテナの異なる既知の考えうるベアリングに関する同じペアとの間の収束により特徴付けられる動作と、
を含む第二のステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第二のステップはまた、ある期間にわたる前記仮定の累積を生成し、前記ADS-Bスプーファの方位角は前記仮定の関数であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーダシステムは少なくとも2つの二次レーダを含み、前記方法は、前記ADS-Bスプーファ発生元を距離の点で位置特定する第三のステップを含み、前記第三のステップは、各二次レーダの方位角の角セグメント(51、52、53)を交差させ、前記ADS-Bスプーファ発生元からレーダまでの距離は前記方位角の角セグメントの交差から前記レーダまでの距離であり、方位角の角セグメントは前記第二のステップで得られた前記方位角を中心とする角セグメントであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記交差の角度偏差により、前記ADS-Bスプーファ発生元の方位角の点での位置の精度が得られることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方位角の仮定の前記生成には、
-前記受信出力の測定精度
-累積された仮定の数
-前記アンテナのパターンの読取の精度
からの幾つかの許容差が使用されることを特徴とする、請求項2~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
ADS-Bスプーファの方位角の前記仮定は、前記アンテナ
のパターンの方位角の点での幾つかの精度を並行して利用し、前記方位角は、ピッチ間隔に応じて規定され、移動中のスプーファ発生元を位置特定するための前記ピッチ間隔は、固定された発生元を位置特定する場合より大きいことを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第二のステップにおいて、前記仮定は、
-固定されたADS-Bスプーファ発生元を位置特定するために、ある時間にわたり、
-移動中のADS-Bスプーファ発生元を位置特定するために、より短時間にわたり、
累積されることを特徴とする、請求項2~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第二のステップにおいて、レーダのレベルにおける前記ADS-Bスプーファの前記仮定は、異なる仰角カットによる方位角アンテナパターンに基づく幾つかの仮定を並行して利用することにより、方位角及び仰角の両方において算定されることを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第二のステップにおいて、レーダのレベルにおける前記ADS-Bスプーファの前記仮定は、異なる仰角カットによる方位角アンテナパターンに基づく幾つかの仮定を並行して利用することにより、方位角及び仰角の両方において算定され、前記第三のステップにおいて、前記システムは少なくとも3つの二次レーダを含み、前記ADS-Bスプーファは、各二次レーダの立体角セグメントの交差点により、方位角、距離、及び高度の点で位置特定され、立体角セグメントは、前記第二のステップで得られた前記方位角と前記仰角を中心とする立体角のセグメントであることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項10】
前記第三のステップにおいて、前記ADS-Bスプーファの前記位置特定は、
-前記第二のステップで規定された前記位置特定の質
-前記レーダの各々により規定された前記位置特定の不確実さ
-前記受信機の各々に関する前記ADS-Bスプーファの距離
に応じて行われることを特徴とする、請求項3、4または9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第一のステップは、前記レーダシステムの外部の検出手段により行われること特徴とする、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の方法の前記第一のステップ及び前記第二のステップを実行できることを特徴とする二次レーダ。
【請求項13】
請求項12に記載の少なくとも2つの二次レーダと、前記レーダとの通信が可能であり、請求項3、4、9または10の何れか1項に記載の方法の前記第三のステップを実行することのできる処理手段と、を含むことを特徴とする二次レーダシステム。
【請求項14】
前記処理手段は、前記レーダの1つに組み込まれることを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次レーダによる疑似ADS-B情報の発生元の検出及び位置特定の方法に関する。それはまた、かかる方法を実装する二次レーダシステムにも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の分野は、とりわけ標的の位置のリフレッシュレートの増大が航空機を相互により接近させ、それゆえ航空機の離陸及び着陸率を増大させる手段であるような航空交通管制(ATC:air traffic control)である。航空機により供給される位置情報は、レーダ質問信号に応答してトリガされるのではなく、航空機の送信手段から自動的に送信される。この非要請の位置情報は「スキッタ」、より具体的にはADS-B_outスキッタと呼ばれ、そのもとになるのは“Automatic Dependent Surveillance-Broadcast(放送型自動位置情報伝送・監視)である。
【0003】
ADS-B_out「スキッタ」は、1秒のオーダの期間で送信され、したがって標的位置のリフレッシュレートを2秒より高くできる可能性があり、これは、4~6秒のオーダである従来のレーダの期間と対照的である。
【0004】
ADS-B_out情報の1つの主な欠点は、モードSプロトコルの設計により保護されないことであり、これはモードSレーダによっても利用され、ADS-B_out情報が依拠するプロトコルである。その結果、偽装航空機が、地上で生成されたADS-B_outメッセージによりローエンドのコンピューティングマシンに基づき疑似スキッタ(「スプーファ」という)を送信することを、本物の航空機が行うように容易かつ安価に模擬できてしまう。
【0005】
悪意のある組織はそれゆえ、ATCに実際の混乱の種を撒き、さらには本物の航空機間のインシデント、又はアクシデントを誘発させることにも至りかねない。この脆弱性から、実際には、ADS-B_outは一般に、航空交通管制においてそれ自体の動作性に基づいては使用されていない。
【0006】
WAM(Wide Area Multilateration:広域マルチラテレーション)を用いてADS-Bスキッタを検出するための解決策が文献で提案されている。この解決策に伴う限界は、WAMのそれである。監視対象の1平方メートルあたりのコストが高く、地理的な対象範囲が限定される。最後に、これは、小型であり、したがって集束されないアンテナの使用による電磁波公害を生じさせる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの目的は特に、上記の欠点を克服することである。このために、本発明の主旨は、少なくとも1つの二次レーダを含むレーダシステムによりADS-Bスプーファの発生元を検出し、位置特定する方法であり、ADS-Bスプーファは疑似ADS-Bスキッタであり、ADS-Bスキッタは、前記システムのレーダの受信機を含む受信機に送信される航空機位置情報信号であり、前記ADS-Bスキッタは、アンテナの異なるベアリングにおいてある時間にわたり検出され、前記方法は、各二次レーダについて、少なくとも、
-ADS-Bスプーファを検出する第一のステップと、
-前記ADS-Bスプーファ発生元の方位角における位置を位置特定する第二のステップであって、
・二次レーダのアンテナの方位角と、ADS-Bスキッタの検出時のアンテナの和、差、及び制御パターンの受信出力とを測定する動作と、
・検出された各ADS-Bスキッタに関する前記スプーファの方位角の少なくとも1つの仮定を生成し、保存する動作であって、前記仮定は前記アンテナの方位角と前記スプーファの推定ベアリングの仮定との和と等しく、前記推定ベアリングは、一方で和パターン上の受信出力と制御パターン上の受信出力との比と、他方で差パターン上の受信出力と制御パターン上の受信出力との比のペア間の収束と、異なる既知の考えうるアンテナベアリングの同じペアとにより特徴付けられるような動作と、
を含む第二のステップと、
を含む。
【0008】
前記第二のステップはまた、例えば、ある期間にわたる前記仮定の累積を生成し、前記ADS-Bスプーファの方位角は前記仮定の関数である。
【0009】
前記レーダシステムが少なくとも2つの二次レーダを含む特定の実装例において、前記方法は、前記ADS-Bスプーファ発生元を距離の点で位置特定する第三のステップを含み、前記第三のステップは、各二次レーダの方位角の角セグメントを交差させ、前記ADS-Bスプーファ発生元からレーダまでの距離は前記交差点から前記レーダまでの距離であり、方位角の角セグメントは前記第二のステップで得られた方位角を中心とする角セグメントである。
【0010】
前記交差点の角度偏差により、例えば前記ADS-Bスプーファ発生元の方位角の点での位置の精度が得られる。
【0011】
前記方位角の仮定の生成には例えば:
-前記出力の測定精度
-累積された仮定の数
-アンテナパターンの読取の精度
からの幾つかの許容差が使用される。
【0012】
ADS-Bスプーファの方位角の前記仮定は、例えば、前記アンテナパターンの方位角の点での幾つかの精度を並行して利用し、前記方位角は、ピッチ間隔に応じて規定され、移動中のスプーファ発生元を位置特定するための方位角ピッチ間隔は、固定された発生元を位置特定する場合より大きい。
【0013】
前記第二のステップにおいて、前記仮定は例えば:
-固定されたADS-Bスプーファ発生元を位置特定するために、ある時間にわたり、
-移動中のADS-Bスプーファ発生元を位置特定するために、より短時間にわたり、
累積される。
【0014】
前記第二のステップにおいて、レーダのレベルにおける前記ADS-Bスプーファの前記仮定は、例えば、異なる仰角カットによる方位角アンテナパターンに基づく幾つかの仮定を利用することにより、方位角と仰角の両方において算定される。
【0015】
前記第三のステップにおいて、前記システムは少なくとも3つの二次レーダを含み、前記ADS-Bスプーファは例えば、各二次レーダの立体角セグメントの交差点により、方位角、距離、及び高度の点で位置特定され、立体角セグメントは、前記第二のステップで得られた方位角と仰角を中心とする立体角のセグメントである。
【0016】
前記第三のステップにおいて、前記ADS-Bスプーファの位置特定は例えば:
-前記第二のステップで規定された位置特定の質
-前記レーダの各々により規定された前記位置特定の不確実さ
-前記受信機の各々に関する前記ADS-Bスプーファの距離
に応じて行われる。
【0017】
前記第一のステップは例えば、前記レーダシステムの外部の検出手段により行われる。
【0018】
前記発明の他の主旨は、前述の方法の少なくとも初めの2つのステップを実行する二次レーダである。
【0019】
本発明のまた別の主旨は、上述の種類の少なくとも2つのレーダと、前記2つのレーダとの通信が可能であり、前述の方法の前記第三のステップを実行することのできる処理手段と、を含む二次レーダシステムである。前記処理手段は、例えば前記レーダの1つに組み込まれる。
【0020】
本発明の他の特徴と利点は、下記を表す添付の図面に照らした以下の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】モードS二次レーダのある例示的なブロック図である。
【
図2】
図1のレーダのブロック図上での本発明のハードウェア実装のある例である。
【
図3a】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3b】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3c】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3d】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3e】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3f】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3g】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3h】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3i】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図3j】本発明による方法のステップのある実施形態の図である。
【
図4】スプーファの検出及び方位角位置特定の精度の図である。
【
図5a】本発明による方法の第三の考えうるステップの実装の図である。
【
図5b】本発明による方法の第三の考えうるステップの実装の図である。
【
図5c】本発明による方法の第三の考えうるステップの実装の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
モードS二次レーダのある例示的なブロック図を示す
図1に関して、このようなレーダの原理を概説する。この原理(質問器と航空機との間のモードS交換は、ICAO附属書10 vol.4に詳しく定義されている)は:
-以下の何れか、すなわち
・受信者に対して、そのモードSアドレス(24ビットフィールド)により指定される1つの標的
・又は送信機の識別子(コード _IC識別子)
を示す選択的質問を送信することと、
-以下のような、すなわち
・送信機の識別子、すなわち標的の同じモードSアドレスを示し、
・その主な内容が、
・DF4:高度を定義
・DF5:識別情報を定義(コードA)
・DF20:その数が特にそれを求めた質問を通じて既知である高度及びBDSレジスタを定義
・DF21:その数もまた、それを求めた質問を通じて既知である識別情報(コードA)とBDSレジスタを定義
のメッセージに依存する
選択的応答を受け取ることと
からなる。
【0023】
以下の説明の中では、レーダは基本的にモードSプロトコルの局面で検討され、それが、本発明には関わらないものの、二次監視レーダの最も包括的な構成内に存在するSSR及びIFFプロトコルを処理する機能も有するか否かを問わない。
【0024】
その標準的な利用において、二次レーダは同期モードで動作し、すなわち、それは質問を送信し、それと一致する応答を待ち、それによって、(方位角と距離における)測定により標的を位置特定し、標的を(モードSアドレスにより)識別できる。
【0025】
このタスクを効率的に行うために、レーダは幾つかのパターン11、12、14、15を有するアンテナ1を備えており、それぞれの役割は従来、
-標的からの同期応答を質問し、検出するための、以下、SUMとされる和パターン11、
-SUMビーム内で標的を精密に位置特定するための、以下、DIFFとされる差パターン12、
-主SUMビーム内にないアンテナと対向し、二次SUMローブにより質問された標的からの応答をブロックし、拒絶するための、CONT_frontとされる、第一の制御パターン15、
-アンテナの背後にある(したがって、必ずしもSUMビーム内にあるとは限らないが、SUMフロントローブのリークにより質問される)標的からの応答をブロックし、拒絶するための、CONT_backとされる、第二の制御パターン14
である。
【0026】
ミッション、及びしたがってレーダに対して期待される効率に応じて、アンテナは:
-幾つかのパターンのもの、すなわち
・4パターン:SUM、DIFF、CONT_Front、CONT_Back
・3パターン:SUM、DIFF、CONT(CONT_FrontとCONT_Backはアンテナレベルで結合される)
・2パターン:SUM、DIFF/CONT(DIFF、CONT_Front、CONT_Backはアンテナレベルで結合される)
-異なる寸法のもの、すなわち
-幅において
・大きい幅を有して、強力なゲインを提供する微細な主ビームを有し、選択的で方位角において正確であり、
-高さにおいて
・大きい高さを有し、ゲインと地面からの反射に対する保護がより大きい、大垂直口径(LVA:large vertical aperture)型(主としてATC)であり
・小さい高さを有し、モビリティを向上させる「ビーム」型(主としてIFF)
であり得る。
【0027】
SUM及びDIFFパターンは従来、小さく、ローブは3dB、2.4°~10°であるのに対し、CONT_Front及びCONT_Backパターンの各々はそれぞれ実際には180°を覆域とする。
【0028】
アンテナはまた、
-「機械的」及び回転式と呼ばれる固定パターンのもの、
-電子スキャンによる、「AESA」と呼ばれる固定式又は回転式の進化パターンのもの
とすることができる。
【0029】
本特許の以下の文章の中では、使用されるアンテナパターンの数に関係なく、またアンテナが回転式アンテナか固定式アンテナかを問わず、他の構成も同様に扱うことができる点を念頭に置きながら、最も包括的なアンテナ構成、すなわち4つの回転アンテナパターンが説明されている。しかしながら、説明を簡単にするために、CONT_Front及びCONT_Backの代わりにCONTを使うことにより、3つのパターンの構成を使用できる。
【0030】
同じモードSプロトコルを使用するADS-Bスキッタ受信機の基本原理(メッセージはICAO附属書10 vol.4により詳しく定義されている)は、以下を含む。
-以下のような非要請の、したがって非同期の選択的応答を受信する:
・送信機の識別情報を示す:上述の選択的質問及び応答時に、レーダに送信されたものと同じ、標的のモードSアドレス(24ビットフィールド)、
・メッセージの内容(DF=17)の性質、その性質はメッセージのTCフィールドにより変化する:
・1~4「航空機識別」
・5~8「表面位置」
・9~18「エアボーンポジション(Baro Alt)」
・19「エアボーンベロシティ」
・20~22「エアボーンポジション(GNSS Height)」
・23「テストメッセージ」
・24「サーフィスシステムステータス」
・25~27「留保」
・28「拡張スキッタACステータス」
・29「標的ステート及びステータス(V.2)」
・30「留保」
・31「航空機運航ステータス」
【0031】
上記のリストは例として挙げたものであり、指示的で非限定的である。
【0032】
したがって、この標準的利用において、ADS-B_in受信機は非同期モードで動作し、すなわち、それは360°にわたってモードSメッセージを探知し、レーダによる標的の位置(方位角と距離)及び識別(モードSアドレス)の探知と非常によく似ている。
【0033】
このタスクを効率的に行うために、ADS-B_in受信機は、
-一般的な構成である、覆域が360°の無指向性アンテナ、
-又は、全体で覆域が360°となる幾つかのワイドパターンアンテナ:
・最も広く使用される構成である、覆域が180°より広いバックトゥバックの2つのアンテナ
・より珍しい例であるが、覆域が120°より広い3つのアンテナ、又は実際には、覆域が90°より広い4つのアンテナ
を備え、これらの唯一の役割は、(サムタイプの)固有パターンを通じて標的からの非同期応答を検出し、その内容を前述のフォーマットにしたがって復号することである。
【0034】
二次レーダとADS-B_in受信機がほとんど同じ(応答メッセージの同じ1090MHzの周波数、同じ波形、同じデータ構造)であるメッセージを利用することから、レーダの中に、非同期ADS-Bスキッタを、レーダのアンテナの異なる標的を通じてそれを探知し、限定ではないが主として無指向性パターンを通じてそうすることによって探知する機能を、
-無指向性アンテナパターンに関連する受信機能:CONT
-又は、各々が2つの半指向性アンテナパターンの一方に関連付けられる2つの受信機:CONT_front及びCONT_Back
の何れかによって組み込むことは容易である。
【0035】
ADS-Bスキッタの探知は、検出において、CONTに加えて、SUM又は、さらにはSUM及びDIFFパターンを利用することによっても補足できる。
【0036】
ADS-Bメッセージの分析だけがADS-Bに特異である点に留意すべきである。それ以外、特にアンテナ下垂ケーブル、レーダが回転式レーダである場合は回転ジョイント、及び1090MHz信号のベースバンドへの転移はすべて、レーダのすべてのアンテナパターンに共通である。
【0037】
本発明をより詳しく説明する前に、
図1のモードSレーダ構成要素について述べる。ブロック図はモードSレーダの:
-左側部分100での質問の生成を通じた、
-右側部分200での関連する応答の同期処理を通じた
同期動作のほか、
左右間の横向きの矢印を通じた両者間の同期
を示している。
【0038】
主要要素の機能は前述のとおり。
【0039】
アンテナ1により、1030MHzの質問又はそれに対する、4つのパターン、すなわちSUM、DIFF、CONT_Front、及びCONT_Back、もしくは3つのパターン(SUM、DIFF、CONT)による、又は2つのパターン(SUM、DIFF/CONT)によるその1090MHzの応答の放射が確実に行われる。
【0040】
回転アンテナのための回転ジョイント2及びアンテナ下垂ケーブルにより、
-レーダの回転部分と固定部分との間の4つのパターンについて独立して1030MHzで送信され、1090MHzで受信される信号のRF結合、
-アンテナのメインローブの軸の方位角位置201の放送
が確実に行われる。
【0041】
RF処理は、
-4つのパターンについて独立して1030MHzで送信され、1090MHzで受信される信号間のRF結合を確実にするデュプレクサ又はサーキュレータ3、
-確実に
-SUMパターンでの1030MHzの質問の送信
-CONT_Front及びCONT_Backパターンによる1030MHzでのSUMローブの外にあるトランスポンダのブロック
-異なる二次プロトコル:IFF、SSR、及びモードSに関するこれ
を行う送信機4、
-異なる二次プロトコルIFF、SSR、及びモードSに関する4つのパターンSUM、DIFF CONT_Front及びCONT_Backによる1090MHzの応答の受信を確実に行う受信機5
を含む。
【0042】
リアルタイム処理は、
-異なる二次プロトコルIFF、SSR、及びモードSに関する質問及び探索期間に関連する期間のリアルタイム管理を確実に行う空間時間管理6
-確実に
・異なる二次プロトコルIFF、SSR、及びモードSに関する質問に関連する探索期間中の応答処理、
・4つのパターン、すなわち
・SUM:メインローブで受信された応答を検出するため
・DIFF:SUMメインローブで受信された、おそらく検出のための応答を方位角において精密に位置特定するため
・CONT_Front及びCONT_Back:メインDIFFローブにおける検出の場合、二次SUM及びDIFFローブで受信された応答を拒絶するため
を利用することによって、アンテナのメインローブ内の同期応答の検出及び復号
を行う信号処理7
を含む。
【0043】
アンテナのメインローブ内の処理は、
-確実に
・異なる二次プロトコルIFF、SSR、及びモードSに関して次のローブで行われる予定のトランザクション(質問と応答)の準備
・行われたばかりのトランザクションのステートに応じた、将来の「ロールコール」期間中のモードS質問及び応答の実行
を行う、ローブ内にある標的の管理8、
-質問中に使用されたプロトコルによりローブで受信された同期応答からの、異なる二次プロトコルIFF、SSR、及びモードSの各々に関するプロットの構成を確実に行うエクストラクタ9
を含む。
【0044】
多回転処理10は、
-標的(アンテナランデブ)の位置の予測と、内部及び外部リクエストと前回の回転のトランザクションのステータスに応じてこれらの位置で実行されるべきタスクの準備とを確実に行う、覆域内の標的について実行されるモードSタスクの管理101と、
-パフォーマンスレベル(特に疑似プロットの排除と復号データの制御)を改善し、その将来の位置を予測するための標的の追尾を確実に行う、覆域内の標的のプロットの関連付けと追尾102と
を含む。
【0045】
使用者とのインタフェースにより、レーダは異なるリクエストを考慮し、プロット及び追尾された標的を表示できる。
【0046】
図2は、本発明に固有の要素を補足した
図1のレーダのブロック図を提示することによって、本発明のハードウェア実装を示す。これらの要素は破線で示されている。
【0047】
モードSレーダの動作は同期しているが、
図2は、本発明のために追加された処理が、送信には関連付けられず、アンテナのメインローブの軸の方位角位置のみ利用していることを示している。
【0048】
要素のほとんどは変更されないままであり、それによってモードSレーダの動作的動作における本発明の非侵入性が裏付けられる。特に、ADS-Bスプーファへの選択的な質問は、何れの新しい標的についても、モードSレーダの動作の従来のモードにしたがってそれをレーダと同時に位置特定しようとするために追加されている。
【0049】
追加された主な要素の役割は前述のとおりである。
-リアルタイム処理6において:
・空間時間管理601は
・アンテナのメインローブの方位角位置をモードS非同期応答の処理21に送信する602(下記参照)
-信号処理7において:
・4つのパターンSUM、DIFF、CONT_Front及びCONT_Backを別々に、ただし同等に利用することによって、同期応答の検出と復号を確実に行う、モードS非同期応答の永久処理が追加され(質問に関連する探知期間とは独立している):
・受信したすべての非同期応答を検出して、DF=17タイプのこれらの応答を復号し、そこからメッセージデータ及びモードSアドレスを抽出し、
・復号された各応答をその以下の特徴、すなわち、検出時間、検出時のアンテナのメインローブの方位角、メインローブ内の応答のミスアラインメント(モノパルス電圧)、及びSUM、DIFF、CONT_Front及びCONT_Backで受信された出力で補足され、SUM上のスキッタの検出の場合、応答はそれに、ローブにおける方位角でそれを精密に位置特定するオフボアサイト角度測定電圧を割り当てることにより、同期応答として処理でき、
・同期応答は、SUM、DIFF及びCONT_Front上で測定された出力、検出時間、及びアンテナ方位角により補足される。
-メインローブでの処理において:
・モードSのエクストラクタ901で、
・モードSプロットは各々について、SUM、DIFF、CONT_Frontで測定された出力とアンテナ方位角を伴うそれらの同期応答で補足される。
-多回転処理10において:
・プロットの関連付け及び覆域内の標的の追尾101は、
・SUM、DIFF、CONT_Frontで測定された出力とアンテナ方位角で捕捉された応答と共にモードSアドレスと共に追尾結果を送信し、
・ADS-Bスキッタの処理22が追加され、これは、
・以下、すなわち
・誤検出及び誤復号をフィルタ処理するためのADS-Bスキッタのトラッキングを確実に行い、
・放送する前にレーダの同期追尾結果と比較することによって、ADS-B追尾結果の有効性を確認し、
・おそらく新しい(レーダにより「オールコール」でまだ検出されていない)ために、レーダ同期追尾結果と相関しないADS-B追尾結果について、(失敗した場合に、複数回転にわたり必要であれば)SUMパターンの通過中にその予想された位置におけるレーダによる選択的質問を必要とする
ADS-Bリモート処理、
・以下、すなわち
・レーダによる選択的質問で検出できないADS-B追尾結果、すなわちADS-B追尾結果の有効性が確認されず、おそらくADS-Bスプーファと考えられる場合のため
・スプーファのADS-Bスキッタの各検出のSUM、DIFF、CONT_Front及びCONT_Back上で受信した出力情報の、(工場又は現場での)測定されたパターンとの相関関係によるスプーファの方位角位置の計算のため
のADS-Bスプーファ処理
を含む。
【0050】
本発明による方法は、
-レーダレベルでADS-Bスプーファを検出する第一のステップ、
-レーダレベルでADS-Bスプーファの位置の方位角における事前位置特定を行う第二のステップ
の少なくとも2つのステップを含む。
【0051】
この第二のステップに続いて第三のステップを行うことができる:
-この第三のステップは、典型的には管制センタレベルで、マルチレーダ構成によりADS-Bスプーファの方位角及び距離におけるより正確な位置特定を行う。
【0052】
検出後に疑似ADS-Bスキッタ(スプーファ)の発生元の位置特定を行う目的は、レーダレベル及び管制センタレベルの両方においてスキッタの放送にこの情報が含まれないようにすることであり、その特定の目的はまた、位置特定の場所でのユニットの介入を可能にすることにより、この発生元の活動をできるだけ早く停止させることである。すべてのADS-Bスキッタ受信装置のすべてが必ずしも本発明を実装できるとは限らないことから、素早い動作が肝要である。
【0053】
ADS-Bの通常の使用者は航空機に搭載されたACAS衝突防止システムであり、これらの衝突防止システムもスプーファを使用しようとしていることに留意すべきである。
【0054】
第一のステップで使用される、他の能動センサ(WAM型のレーダ又はセンサ)を使ってADS-Bスプーファを検出する手段は、当業者に知られている。検出情報はまた、レーダの外部の手段によっても供給できる。
【0055】
しかしながら、レーダ内蔵ADS-B_in受信バージョンでは、検出手段の目的は:
-通常の使用者への標準的なCAT021出力の中でADS-Bスキッタのデータを外部に放送する前にADS-Bスキッタの有効性を確認すること、
-通常の使用者への標準的なCAT021出力から「異常」と考えられるスキッタを排除し、又は疑わしいとマーキングすることであって、これらのスキッタは特に、
・これらのADS-Bスキッタにより放送される位置でレーダによりADS-B標的が検出されないこと
・レーダ検出と放送されたADS-B位置との間に位置ずれがあること
・スキッタを検出したレーダアンテナパターンのゲインを考慮することにより、レーダから報告された距離に応じた出力のずれがあること
・レーダにより抽出されたデータとADS-Bスキッタにより放送されたそれらとの間に送信データの内容のずれがあること
・受信したスキッタレートが(その他の標的により適用される)ADS-標準とは異なること
により特徴付けられることができること、
-この目的専用の新しい出力におけるADS-Bスプーファの存在を、監督センタ、演繹的にマルチレーダセンタに報告すること
である。
【0056】
ADS-B応答はレーダ用とされる同期モードS応答と構造的に同じであるが、データは、一方でDF04、DF05、DF20、及びDF21と、他方でDF17との間で異なる点に留意すべきである。したがって、レーダ受信機とADS-B受信機との間に処理の類似性があり、
-波形においては:1090MHzのキャリア周波数及び信号の変調(PPM)
-メッセージ構造においては:同じモードSメッセージ構造(プレアンプル、データ、及びCRC)
の共通の処理により、信頼性が確保される。
【0057】
モードSのレーダ標的と同様に、ADS-BスキッタはそのモードSアドレス(モードS及び、WANレーダとADS-B_in受信機と故意に共通とされている)により特定される。
【0058】
さらに、ADS-Bスキッタ受信機能はレーダに組み込まれ、それによって、有利な点として、
-SUMとCONTとの間のゲインの差は従来、SUMに有利に平均で20dBに近いため、最も高い可能性としてCONTパターン(又はアンテナの種類に応じてCONT_front、CONT_back)上で受信されたADS-B応答が、ADS-Bスキッタが存在すると報告された方位角及び距離位置における同じアンテナのSUMパターンにより同期モードで質問されなければならないことを確実にすること、
-スキッタを送信した標的の位置の変化に関するいかなる不確実性も防止して、この選択的質問に対する応答性が高くなることを確実にすること、
-必要に応じて、
・以下における、周囲の他の標的に関するレーダまでのその報告された距離に応じたスキッタの受信出力:実際、レーダとADS-Bにおいて受信された他の標的については、その距離に応じて、非常に近いインスタンスで(典型的に、レーダの回転に応じて4~6秒未満)、平均出力偏差を評価することが可能である
・SUMパターンでのレーダによる同期受信
・おそらくCONTパターンでのADS-Bによる非同期受信
・その飛行挙動
の分析によりこの最初の分析を補足すること
が可能となる。
【0059】
ADS-Bスプーファの方位角における事前位置特定を行う第二のステップは、本発明に特異である。したがって、それは主として、第一の検出ステップにおいてスプーファとして検出された、又は疑わしいとマーキングされたADS-Bスキッタに適用される。説明を容易にするために、ADS-Bスプーファ位置特定という用語が使用されてもよく、実際にそれはADS-Bスプーファの発生元の位置特定に関係していると理解される。
【0060】
理論上、ADS-B受信を組み込んだ二次レーダによるADS-Bスプーファの方位角における事前位置特定は、レーダのメインローブにおけるADS-Bスキッタの検出から行うことができる。この場合、スキッタの検出に関連付けられるモノパルス機能により、単独スキッタの場合のレーダのそれと同じ精度でスキッタ発生元の方位角を測定することが可能となる。しかしながら、これが可能なのは、
-ADS-Bスキッタの受信が、すべてのパターンで検出するレーダからの同期応答のように、各(同期又は非同期)応答にパターンごとの出力と、そのスキッタがあるという非同期応答に割り当てられたモノパルスの値の両方を関連付けることによって処理される場合、
-スキッタの検出が、(モノパルス機能が動作するベアリングにおける)+/-1.2°のオーダ(従来3dBローブ)であるメインロープの中で、すなわちしたがって、0.66%と等しい2.4/360の、したがって非常に低い時間的確率で実行される場合
に限られる。
【0061】
したがって、この位置特定モードでの確率は非常に低いが正確である。
【0062】
有利な点として、この第二のステップにおいて、本発明は、特に時間的確率の意味において、より効率的な位置特定モードを使用する。以下に詳述するこのモードは、ADS-Bスキッタが異なるベアリングでアンテナパターンに遭遇し(又はそれをサンプリングし)、ベアリングはアンテナの主軸に関して整列していないという事実を利用することにある。パターンごとの出力の測定と共にアンテナがわかることにより、ベアリングの、したがって受信した各スキッタに関する方位角の仮定を算定することが可能となる。これらの仮定の累積により、最も確率の高い方位角を明らかにできる。
【0063】
ここで、この位置特定モードについて詳しく説明する。ADS-Bスキッタが非同期の性格であり、レーダにより何れの瞬間にも受信されることから、これらは異なるベアリングでアンテナパターンをサンプリングする。より具体的には、これらは異なるベアリングでアンテナパターンによりピックアップされる。
【0064】
実際に、各ADS-Bスキッタはまた、アンテナの異なるバターン(SUM、DIFF及びCONT)に応じた振幅のほか、アンテナの時間と方位角において認定される。
【0065】
典型的なATCアンテナ又は、さらにはIFFの従来のアンテナに関して、パターンはベアリングにおいて大きく変化することが知られている。その結果、明らかに、相対的なSUM対CONT及びDIFF対CONT出力は、ADS-Bスキッタが受信されたベアリングの修飾子である。したがって、スキッタの受信の瞬間のアンテナ方位角を考慮に入れることにより、各スキッタに、スキッタの発生源であるADS-B発生元の方位角における考えうる位置の1つ又は複数の仮定を関連付けることが可能となる。
【0066】
図3a~3jは、例として、上述の方法を示している。この例において、レーダは、典型的に3つのパターン、すなわちSUM、DIFF、及びCONTを有するIFFアンテナを含む。アンテナの回転期間は4.8秒である。方位角100°にあるADS-Bスプーファは、かなり低いレートで(期間は0.5秒と等しい)周期的にスキッタを送信する。
【0067】
これに関して、
図3a~3jはオーダNの1回転にわたるSUM、DIFF、及びCONTパターン上でのスプーファのスキッタの異なる位置を示しており、パターンはアンテナと共に回転する。SUM、DIFF、及びCONTパターンは図中、それぞれ31、32、33で示される。
【0068】
この図において、アンテナ回転の開始は、SUMパターンが方位角0°に中心を置くアンテナの位置に対応する。この状態は、
図3aの略図により示されている。それに続く
図3b~3eの略図は、方位角において37.5°(2つのADS-Bスキッタ間の方位角の平均偏差)だけずれたアンテナ位置(SUMパターンの中心はこの方位角にある)を連続的に表しており、すると、位置は75°、112.5°、及び150°だけずれ、スプーファは常に100°の方位角に留まる。
【0069】
同様に、
図3f~3jの略図は、上から下に連続的にアンテナ回転の第二の部分を表し、アンテナ位置は187.5°225°262.5°、300°、及び337.5°である。
【0070】
ADS-Bスキッタを検出するたびに、本発明による方法は、アンテナの方位角における位置とアンテナパターンの各々で受信されたれレベルを、例として下表が示すように関連付ける。
【0071】
【0072】
ADS-Bスプーファに必要な方位角の事前位置特定の精度に応じて、これらの数値は、各ADS-Bスキッタに関して、回転Nの終わりに同じ標的の過去の回転におい取得されたものと共に累積される。
【0073】
方位角の事前位置特定の精度は、
-受信したスキッタの数(好ましくは、標的が空間中で移動している場合には、短時間)に、
-スキッタの出力、したがって演繹的にレーダとスプーファとの間の距離に、
-スプーファが生成するスキッタのレート(より多いパターンサンプリングポイント)に、
-反射又は複数の経路によるパターンの変形の可能性を考慮に入れるために、次のステップにおけるその使用現場でのアンテナのパターンの使用に
関連付けられると考えることができる。
【0074】
レーダレベルで、したがって、ADS-Bスキッタの発生元の方位角における事前位置特定を行う第二のステップは、その出力特性と、レーダ及びADS-B_inセンサに共通のパターンの知識とを利用して、方位角におけるその位置を推定することにある。前述のように、測定は、所望の位置特定精度に応じて複数回の回転にわたり累積できる。
【0075】
CONT、SUM、及びDIFFで受信された出力の測定(dBm単位)の各トリプレットから、dB単位のSUM対CONT(SUM/CONT)及びDIFF対CONT(DIFF/CONT)の相対的出力ペアを算定することは容易である。
【0076】
各スキッタについて取得されたNdB内の数値のペアが得られたベアリングについて、アンテナパターンが探知される。すると、アンテナの方位角における位置がスキッタの瞬間に関連付けられて、スプーファの方位角の1つ、又は複数の仮定がなされる:
Az(Sp)=Az(A)+G(S_ADS-B) (1)
式中、
-Az(Sp)はスプーファの方位角の仮定であり、
-Az(A)はアンテナの方位角であり、
-G(S_ADS-B)はADS-Bスキッタのベアリングの推定である。
【0077】
スプーファの発生元の方位角は、これらの仮定の関数である。同じく既知の複数の確率関数を使って、この方位角を特定することができる。
【0078】
SUM、DIFF、及びCONTアンテナパターンの知識は、ベアリングのこれらの推定のすべてを形成するために必要である。そのために、これらのパターンは例えば、アンテナが製造された工場で、又はレーダが動作のために配置された現場で測定される。これらのパターンの測定は、幾つかの要素に応じて調整が可能な出力許容差で、また複数の方式によるアンテナのパターンの定義の精度で行うことができる。
【0079】
許容差の数値は幾つかの要素、特に
-出力測定の精度:それが高いほど、Nを小さくすることができ、Nはベアリングの仮定を保持するための許容差の値である
-方位角における事前位置特定が見つかると予想される収束速度、すなわち、スプーファの方位角事前位置特定を送信できるまでに累積される仮定の数、
-現場のアンテナのパターンの正確な知識、すなわち、実際に、アンテナパターンの評価可能な精度(アンテナパターンの読取りの精度)
に関連付けられる。
【0080】
第三のステップで実行される方位角における位置特定のこのプロセスはもちろん、本発明による方法を実行するレーダシステムで使用される二次レーダの数であるMが1より大きい場合、システムの異なる二次レーダにより同時に実行することができる。
【0081】
同じモードSアドレスを有する各ADS-Bスキッタの発生元について、方位角の連続的な仮定は、以下の2つの方式で累積される:
-例えば1回又は複数回のアンテナ回転の持続時間とすることのできる短時間で方位角において移動する標的(移動する標的は例えば、ショートレンジのドローンに埋め込まれたスプーファ発生元である)に適しているもの。この場合、複数回の独立した不正確な事前位置特定を行い、その後、標的を追尾して、その動きを評価し、法以下に組におけるその次の位置を予測することが好ましい
-又は、より良い精度を得るための、より長い時間にわたって(アンテナの回転がより多く、例えば10回転)安定している標的に適しているもの。
【0082】
移動中のスプーファをおおまかに位置特定するために、平均ピッチインタバルでの方位角精度を、例えば0.5°~1°に選択できる。固定されたスプーファを精密に位置特定するために、非常に細かいピッチ間隔を選択することができ、例えばこれは0.1°である。
【0083】
このプロセスはもちろん、両方の方式で同時に実行し、あらゆる種類のスプーファの運動に適応させることができる。
【0084】
図4は、この第二のステップのレーダ信号の処理によって得られた固定スプーファの位置特定の精度を、検出されたスキッタの数の関数として、すなわち1回又は複数回のアンテナ回転にわたり累積されたこれらのスキッタの方位角の仮定の数の関数として示す。
【0085】
要約すれば、ADS-Bスキッタの受信時に、これはSUM、DIFF、及びCONTアンテナパターン間の相対的な出力測定で補足される。これらをアンテナパターンのそれらと相関させることにより、スキッタの受信の瞬間のアンテナの主軸に関するミスアラインメント(このミスアラインメントはベアリングである)の幾つかの仮定が得られる。アンテナの方位角はすると、スプーファの方位角の異なる仮定を計算するために使用される(前述の関係(1)参照)。
【0086】
この同じスプーファ(同じモードSアドレスを有する)の各スキッタについて、方位角の異なる仮定を累積することにより、最も確率の高い方位角を特定することができる。それゆえ、
図4が示すように、スプーファから受け取ったスキッタの数が大きいほど、その方位角の位置特定はより正確となる。
【0087】
この
図4で考慮されているスプーファは、方位角100°に位置付けられた
図3a及び3bのそれである。
図4は、異なる数のスキッタについて得られた方位角の仮定の相関ピークを、方位角の関数として示している。これは、それぞれ10、20、30、40、50、及び60のスキッタに対応する6つの相関プロット41、42、43、44、45、46を示す。この例において、30のスキッタで位置特定の有用な精度が得られ(プロット43)、位置特定の改善は、スキッタの増大に応じて得られる(プロット44~46)ことがわかる。
【0088】
図5a~5cは、本発明による方法の第三のステップを示す。
【0089】
この第三のステップの原理は、幾つかのレーダの事前位置特定(第二のステップで得られる)を交差させて、
レーダの事前位置特定の交差を実現することにより、
-第二のステップで得られた方位角における位置が不十分であると考えられる場合に、(レーダに関する)ADS-Bスプーファの方位角の位置の精度を高め、
-(レーダに関する)ADS-Bスプーファからの距離を計算する
ことであり、これらの事前位置特定は、
-事前位置特定の質(相関ピークのレベル)
-レーダの各々のレベル(そのレーダについて得られた相関ピークの相対レベル)でのこの事前位置特定の不確実性
-スプーファから別のレーダまでの距離
により重み付けされる。
【0090】
図5aは、点R1に位置する第一のレーダのスプーファの方位角における位置を示す。第一のレーダにより得られた方位角は、1つのレータの覆域51’内の角セグメント51により表される。
【0091】
図5bには、第二のレーダとこの第二のレーダに関するスプーファの方位角の表現とが追加されている。この第二のレーダは点R2に位置する。スプーファの方位角は、レーダの覆域52’の領域内の角セグメント52により表される。スプーファのより精度の高い方位角が2つの方位角の、すなわち2つの角セグメント51、52の交差点にある。この交差点はまた、レーダに関するスプーファの距離も供給し、標的はこの交差点内に位置する。
【0092】
図5cには第三のレーダが追加されている。この第三のレーダは、点R3に位置する。スプーファの方位角は、レーダの覆域53’の領域内の角セグメント53により表される。スプーファのより精度の高い方位角は、3つの方位角、すなわち3つの角セグメント51、52、53の交差点にある。この交差点はまた、レーダに関するスプーファの距離の測定の精度も改善する。
【0093】
従来、改善された方位角と距離の測定値は、レーダにより、レーダR1、R2、R3のうちの1つの処理手段の中に、又は独立したコンピュータの中に格納できる演算センタに供給される方位角測定値(角セグメント51、52、53)から計算される。方位角データは、他の箇所から既知となっている通信手段により送信される。
【0094】
また、レーダレベルで標的を仰角において事前位置特定することも可能である(最終的に、
図5a~5cにしたがって第二のステージでマルチレーダシステムによってそれを仰角において位置特定するもので、これはスプーファを備えるドローンの場合に適当である)。
【0095】
そのために、方位角の仮定は、前述のものと同じ方法にしたがって方位角パターンの仰角における幾つかのカットを利用することにより並行して実施され、これは各カットについて独立して行われる。
【0096】
スキッタの積分期間の終わりに異なる仰角カットからの最も高い相関ピークを保持することにより、方位角と仰角の事前位置特定が同時に規定される。
【0097】
実装される原理は依然として、標的の方位角及び仰角における事前位置特定について決定を下す前に、スキッタの積分時間中にわたり、標的が方位角においても仰角においても移動していないと仮定することにある点に留意すべきである。したがって、これは固定された標的又は、あまり動き回らない標的についても、典型的に最大で数回のレーダアンテナ回転で、引き続き有効である。ドローンは、センサにより検知されるその方位角速度が平均に留まるようにするために、レーダに近付きすぎてはならない。
【0098】
本発明はまた、有利な点として、ADS-B送信機の特定の故障のケースを検出し、位置特定するためにも使用できる。特に、本発明は、航空交通管制(ATC)の安全性を高め、特に位置逸脱を示すスキッタに関する疑いを排除又は確認するために使用できる。特に、第二のステップで生成された方位角事前位置特定情報は、安全性を高めるために、不一致の場合にADS-Bアラート専用のリンクを通じてATCセンタに送信できる。
【0099】
本発明を回転アンテナについて説明した。連続的なランダム照準により方位角内で移動するビームを有する非回転アンテナを提供することも可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 アンテナ
2 回転ジョイント
3 デュプレクサ
4 送信機
5 受信機
6 空間時間管理
7 信号処理
8 管理
9 エクストラクタ
10 多回転処理
11、12、14、15 パターン
21、22 処理
41、42、43、44、45、46 相関プロット
51、52、53 角セグメント
51’、52’、53’ 覆域
100 左側部分
101 管理
102 追尾
200 右側部分
201 方位角位置
601 空間時間管理
901 エクストラクタ