(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】口腔ケア粒子及び該粒子の投与のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240627BHJP
A61C 17/00 20060101ALI20240627BHJP
A61C 17/02 20060101ALI20240627BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240627BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K8/02
A61C17/00 Z
A61C17/02 Z
A61K8/73
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2019519742
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2017076144
(87)【国際公開番号】W WO2018073106
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-15
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ホッテンボス バルト
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】小石 真弓
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-527356(JP,A)
【文献】特開平8-169811(JP,A)
【文献】国際公開第2016/050573(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/046141(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/055967(WO,A1)
【文献】特表2008-546756(JP,A)
【文献】特開2001-163768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア剤の歯間空間への供給のための薬剤であって、前記薬剤は、口腔に受容可能な放出基剤を有する粒子に含まれた1つ以上の口腔ケア剤を有し、前記粒子は、弾力的に変形可能であり、歯間空間にフィットするよう圧縮されることが可能であり、前記粒子は、最長の寸法が6mm以下であり、最短の寸法が1mm以上であり、少なくとも1つの寸法が1.5乃至3mmの範囲内である、3つの直交する方向の寸法により定義される粒子サイズを持つ、薬剤。
【請求項2】
前記粒子は、複数の内部空隙を有する、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記空隙は、分散された空気ポケットを有する、請求項2に記載の薬剤。
【請求項4】
前記放出基剤は、食用のヒドロゲルである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
前記3つの寸法の全てが、1.5mm乃至2.5mmの範囲内である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
前記粒子は、略球形の形状を持つ、請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
前記最長の寸法は、前記最短の寸法の1.5乃至3倍である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項8】
前記粒子は、略幅広の球形の形状を持つ、請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
前記粒子は、粘膜接着性のものである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項10】
前記1つ以上の口腔ケア剤は、歯垢防止剤、歯石防止剤、歯肉炎防止剤、虫歯防止剤、抗菌剤、歯周炎防止剤、鉱化剤、漂白剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選択された、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項11】
対象の歯の隣接歯間へ口腔ケア剤を提供する方法であって、前記方法は、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の薬剤に含まれる粒子を提供するステップと、1つ以上の隣接歯間にフィットするよう前記粒子が十分に圧縮されることを可能とするよう前記粒子に圧力をかけるステップと、前記圧縮された粒子を供給するステップと、を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔ケアの分野におけるものであり、粒子の形をとる口腔ケア剤の投与のためのシステム及び方法に関する。特に、本発明は、接着ゲル粒子の歯間投与に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の口腔、特に歯及び歯肉は、一般に口腔ケア剤の必要を持つ。例えば、フッ化物、ミネラル補給剤、歯垢防止剤、歯石除去剤、歯肉炎防止剤、抗菌剤及びその他を考慮されたい。
【0003】
斯かる薬剤は一般に、歯磨き粉及び/又は口腔洗浄液から投与される。例えば唾液が存在するといった、口腔の典型的な環境のため、本分野における標準的な困難性は、歯磨き粉及び口腔洗浄液からの活性剤が、塗布の後に急速に濃度を減少させることである。それ故、これら活性剤が、長時間に亘って口を保護することができず、従って1日に数回塗布される必要がある。
【0004】
本分野における興味深い発展は、粒子の形をとる口腔ケア剤を提供することである。これら口腔ケア剤は、例えば固体粒子、ゲル粒子又は気泡であり得る。斯かる粒子は特に、口腔ケア活性剤の制御された放出(例えば持続的な放出)を提供するよう機能する。このことは、より長時間に亘り口腔ケア剤の濃度を維持する、又は口腔ケア剤の濃度の減少を低速化させる、魅力的な方法となる見込みがある。粒子、特にゲル粒子は、一般に小さな固体の体積(典型的には1乃至2%)を持ち、それ故活性薬剤の大きな体積を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吐き出されにくい又は飲み込まれにくいような態様で口腔ケア剤を提供することは、継続的な課題である。特に、好適には隣接歯間に供給され保持されることによって、より持続性を持つ、即ち自然に与えられた場合よりも口腔において長い滞留時間を持つ、口腔ケア剤を提供することが望ましい。隣接歯間における保持のような持続性は、口腔ケア剤の投与の非侵襲的な特性に関して特定の役割を担う。このことは、薬剤を循環させて局所的にではなく体系的に作用させるために、身体に薬剤を注入することとは異なる。
【0006】
細菌は隣接歯間に容易に蓄積し疾患を引き起こし得るため、隣接歯間は口腔疾患に最も影響を与える口腔内の領域である。歯肉炎及び虫歯のような一般的な疾患は、隣接歯間において最も優勢となる。隣接歯間に低速放出型の歯垢防止剤を供給することは、斯かる疾患を防止する又は減少させることを可能とし得る。
【0007】
一般的な抗菌口腔洗浄を用いる場合の現在の用法におけるように、制御された放出(持続性の放出のような)のための口腔ケア粒子は便利にも、20乃至30mlの薬剤による30秒の洗浄によって単に提供される懸濁液から供給される。しかしながら、隣接歯間における供給のためには、このことは最適とは程遠い。特に、洗浄の場合、薬剤の殆どが吐き出され、粒子の殆どが隣接歯間の外の他の口腔内面に付着することとなる。より締まった隣接歯間は、全く処置されないこととさえなり得る。利用可能な僅かながらの改善は、過剰な量の低速放出型の粒子の適用であり得る。しかしながら、その結果は、僅かでないにしろ、依然として最適ではない。更に、低速放出型の系は、一般的な口腔内洗浄成分よりも一般的に高価であるため、過剰な量の低速放出型の粒子の適用は、経済的な理由により望ましくないものとなり得る。
【0008】
特開平2001-163768は、口腔ケア剤のための持続的な放出薬剤を記載している。該薬剤は、歯間領域に挿入されることを基本的に可能とする形状を持つ。典型的には、該形状は棒状に記載され、他の形状(柱型、円錐型、平面型、円柱型、角柱型又は楔形)が想到される。この適用は一般に、手動で為される必要がある。棒の比較的小さなサイズを考慮すると、このことは非常に複雑なタスクである。典型的には空気又は水を圧力下で放出する、ジェット装置を用いて利用されることができる、口腔ケアのための持続的な放出薬剤を提供することが望ましいものとなり得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的に好適に対処するため、本発明は一態様においては、口腔ケア剤の隣接歯間への供給のための薬剤であって、前記薬剤は、口腔に受容可能な放出基剤を有する粒子に含まれた1つ以上の口腔ケア剤を有し、前記粒子は、弾力的に変形可能であり、歯間空間にフィットするよう圧縮されることが可能な薬剤に関する。
【0010】
他の態様においては、本発明は、対象の歯の隣接歯間への少なくとも1つの口腔ケア剤を有する粒子の投与のためのシステムであって、前記システムは、以上に定義された薬剤及び圧力装置を有し、前記圧力装置は、前記薬剤に含まれる粒子を充填されるよう構成され、歯間空間への前記粒子の噴出を可能とするよう構成されたシステムを提示する。
【0011】
更なる態様においては、本発明は、対象の歯の隣接歯間へ口腔ケア剤を提供する方法であって、前記方法は、以上の薬剤に含まれる粒子を提供するステップと、1つ以上の隣接歯間にフィットするよう前記粒子が十分に圧縮されることを可能とするよう前記粒子に圧力をかけるステップと、前記1つ以上の隣接歯間に前記圧縮された粒子を供給するステップと、を有する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の圧縮可能な粒子の適用の前後の歯のモデルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般的な意味において、本発明は、歯間空間にフィットするよう圧縮されることができる弾力的に変形可能な粒子に口腔ケア剤を含ませることにより、該歯間空間に斯かる口腔ケア剤を導入するという賢明な洞察に基づく。歯用ケア剤の分野においては、粒子は一般に、例えば粒又は粉のような単一の離散的な固体材料であると理解される。このタイプの粒子は、歯間空間へと圧縮されると、粒子の弾力性が、膨張力をもたらす。この力は自然に、該圧縮の方向とは逆の方向に働き、従って周囲環境の方向へと働く。このことは、粒子が歯の間に保持されることに寄与し、特に容易に再び洗い取られることを防止するよう機能する。更なる利点として、本発明の粒子は、例えば給水栓からの高圧により、口の中の唾液の流れよりも十分に強い力で水ジェットを適用することによって、望まれる場合には除去されることができる。
【0014】
「歯間(interdental)」及び「歯間空間(interdental space)」なる語は、歯の間の空間又は間隙を表す。本分野においては、該空間は「隣接歯間(interproximal space)」とも呼ばれる。
【0015】
本発明の薬剤の粒子は、歯間空間にフィットするよう圧縮されることが可能である。従って該粒子は、圧縮される前には、該粒子が導入されるべき歯間空間の間隙サイズよりも大きいことは、理解されるであろう。また、圧縮されていない粒子の適切なサイズは、圧縮後の望ましいサイズよりも過度に大きくなく、そのため歯間空間にフィットするために粒子に必要とされる圧縮の程度が大きくなり過ぎないようにされることも理解されるであろう。
【0016】
一般的なガイダンスとして、歯間空間の典型的な間隙は、最も広い場所で1mm乃至1.5mmであることに留意されたい。従って、粒子の少なくとも1つの寸法(例えば幅)は、一般的に1mmよりも大きく、好適には1.5mmより大きい。口の中で利用可能な空間、及び口の中の異物を感じたときの対象の一般的な感度を考慮すると、該粒子の最長の寸法は大きくないことが望ましく、一般的には大きくても6mmであり、好適には5mm以下である。該粒子は、例えば球形、幅広の(長細の)球形、扁球形、又は斯かる形状の不規則な変形のような、種々の形状を持っても良い。従って、該粒子は、異なる方向に異なる寸法を持ち得る。それ故、粒子サイズは、3つの直交する方向(一般にはx軸、y軸及びz軸と理解される)の寸法を参照して定義され得る。上述した粒子サイズに関しては、これら3つの寸法のうち、最長の寸法が大きくても6mmであり、最小の寸法は少なくとも1mmである。典型的な歯間空間の間隙サイズを参照すると、少なくとも1つの寸法は、1.5乃至3mmの範囲内であることが好適である。好適には、以上の3つの寸法の全てにおいて、長さは1.5mm乃至2.5mmの範囲内である。
【0017】
興味深い実施例においては、該粒子は略球形の形状を持つ。ここで該球形は、好適には1.5mm乃至2.5mmの範囲内である直径を持つ。他の興味深い実施例においては、該粒子は長細の形状を持つ。この利点は、斯かる粒子は、歯間空間の大きな部分を満たすことが可能である点である。ここで、最長の寸法は好適には、最短の寸法の1.5乃至3倍である。好適な長細の形状は、幅広の球状形状である。この形状は、丸まった先端部又は尖った先端部を持ち得る。該粒子が、幅広の球形の端部に向かうにつれて、即ち尖った先端に向けて、狭まる直径を持つことが有利であり、その理由は、斯かる粒子は一般に、本発明のシステムにおいて用いられる圧縮可能で弾力的に変形可能な粒子の圧縮及び後続する膨張の効果に加えて、歯間空間に挟まれるため、粒子が適所にとどまることに寄与するよう機能するからである。
【0018】
本発明のシステムにおいて用いられる粒子は、口に許容可能な放出基剤を有する。本発明は、弾力的に変形可能であり圧縮されることができる特性を持つ粒子を利用する。ゴム材料のような弾性材料は良く知られているため、当該特性は多くの材料により提供され得ることは理解されるであろう。化学者にとっては、高分子材料の、エラストマーの場合にも、含まれる薬剤(ここでは口腔ケア剤)の所望の放出性に組成を適合させることが一般に可能である。一般にこのことは、対象の薬剤のタイプに応じて、高分子主鎖、側鎖、官能基、又はこれらの組み合わせの親水性又は疎水性の特性を適合させることを含む。
【0019】
好適には、口腔ケア剤の歯間への供給の分野において、放出基剤は食用のヒドロゲルである。好適なヒドロゲルは、キトサン、アルギン酸塩、カラゲナン、キサンタンガム、及びこれらの混合物から成る群から選択された材料から、斯かる材料を一般的に架橋することによりつくられる。これらヒドロゲルは、本分野において良く知られている。好適には、本発明のシステムにおいて用いられるヒドロゲルは、粘膜接着性のものであり、その更に好適な例はゲル化キトサンである。また、粒子が口腔ケア受容可能接着層により被覆されることも可能である。該粒子は水和していても良いが、乾燥形態であっても良い。無水ゲルとして知られるもののような、水とは異なる湿った薬剤が用いられても良い。
【0020】
粘膜接着性の材料(粘膜に接着することが可能な生体接着性の材料の一形態である)は、本分野においては良く知られており、例えば粘膜接着性の薬剤の供給システムについて広く利用可能な知識から良く知られている。
【0021】
当業者は、圧縮可能であり弾力的に変形可能なヒドロゲルを製造することが十分に可能である。このことは一般に、キトサンのようなゲル形成成分の水溶液を提供し、該水溶液を、三塩基性若しくは四塩基性の塩又はその混合物のような架橋剤を有する架橋剤水溶液と混合する方法により達成される。
【0022】
典型的には、キトサンは3800乃至20000ドルトンの範囲の分子量で生成される。弾力的に変形可能なヒドロゲルを生成するため、10000ドルトンを超えるような、例えば15000乃至20000ドルトンの比較的高い分子量のキトサンを用いることが好適である。同様の考察は、他のゲル形成成分についても当てはまる。また、比較的高い度合いの架橋を適用することが好適である。
【0023】
好適な実施例においては、該粒子の圧縮可能性は、複数の空隙の存在により向上させられる。斯かる空隙は、泡のような混入された空気ポケット(材料に分散させられた空気ポケット)、又は気孔を有する典型的により開いた構造(スポンジ状構造のような)の形をとっても良い。空隙は、空気で満たされても良いし、又は窒素のような不活性ガスにより満たされても良いことは、理解されるであろう。気体(空気)の泡は、種々の方法で、架橋/ゲル化ステップの直前の処理の間に混入されても良い。このことは、ゲル化液体に空気を混入し、好適には泡発生器を適用することにより、例えば小さな穴を持つ管を介して気体(窒素又は空気のような)を提供することにより、為されても良い。これらの泡は次いで、液体と混合され、架橋され空隙を有する液滴又はジェットに帰着する。
【0024】
これら粒子は、1つ以上の口腔ケア剤を含む。特に、これらケア剤は、歯間(隣接歯間)に投与されることが望ましい薬剤である。好適な薬剤は、歯垢防止剤、歯石防止剤、歯肉炎防止剤、虫歯防止剤、抗菌剤、歯周炎防止剤、鉱化剤、漂白剤、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。歯間空間に好適に保持される利点について、特に斯かる薬剤の持続させられた放出のため、本発明における使用のために好適な薬剤は、抗菌剤である。これらは例えば、フェノール成分及びサリチルアミド、並びに、亜鉛、銅及び塩化第一錫及び硝酸銀のような塩の形をとる、亜鉛、銅、銀及び錫イオンのような特定の金属イオンの供給源を含む。これらは、使用されるときに、本分野において知られた少量で存在する。一般的に用いられる典型的な口腔ケア剤は、グルコン酸クロルヘキシジン、クエン酸亜鉛、塩化ベンゼトニウム、乳酸亜鉛、フェノール化合物(例えばチモール、メントール、オイカリプトール)、トリクロサン、ハーブエキス(例えばサンギナリン)である。
【0025】
本発明の薬剤は、歯間空間に入るために十分に粒子を圧縮及び/又は変形させるよう粒子に力を加えることにより、対象の歯の隣接歯間に投与されることができる。このことは、個々の粒子に力をかけ、斯かる粒子を歯間空間に供給することにより、実現され得る。このことは、更なる歯間空間に更なる粒子を供給するため繰り返されても良い。圧力は手動で与えられても良く、投与も手動で行われても良い。しかしながら、好適には、圧力をかけること及び粒子を投与することの両方が、最適な歯間空間において、典型的には口腔内に粒子を強制的に噴射して入れる、適切な圧力装置によって実行される。圧力装置を用いる場合、該薬剤の投与は、複数の粒子に力をかけ、典型的には歯間空間に向けて、複数の粒子を口腔内に噴射することによって、実現され得る。このことは迅速で容易な動作であるが、過剰な粒子の損失にも導く。一度に1つの粒子を噴射することが好適である。
【0026】
一般的に、該粒子は、粒子収容容器から圧力装置に移送され、該容器は別個の容器であっても良いし、又は噴射装置に関連する若しくは完全に内蔵された収容区画であっても良い。移送は手動で実行されても良いし、又は、例えば粒子を機械的に圧縮し、該粒子を手動で若しくは機械的に動作させられるプランジャにより圧縮するように機械的に実行されても良い。好適には、該粒子の移送は、気体(特に空気)又は液体(特に水)の流れにより実行される。以上の手法の組み合わせも可能である。例えば、該粒子は、空気パルスによって供給装置に輸送され供給され、該供給装置の先端における機械的な押し出し機構により歯の間に圧縮されても良い。
【0027】
本発明はまた、対象の歯の隣接歯間への、以上に定義されたような粒子の投与のためのシステムに関する。該システムは、主な構成要素として以上に定義されたような薬剤と、圧力装置と、を有する。該圧力装置は、該薬剤に含まれる粒子を充填され、隣接歯間への該粒子の噴射を可能とするよう構成される。該圧力装置は好適には、流体ジェット生成器であり、更に好適には口腔洗浄器である。
【0028】
口腔洗浄器のようなジェット生成装置は、歯間洗浄(フロス)のような目的のために、本分野において利用されてきた。この目的のため、歯間洗浄器としても知られるこれら装置は、非常に有効であることが分かっている。隣接歯間の効果的な洗浄は通常、当該空間への物質の供給とは不調和となる。逆に、歯間洗浄は、隣接歯間に含まれる物質(特に歯垢)の除去の目的を果たすものである。以上によれば、国際特許出願公開WO2013/093798は、10m/s乃至300m/s、例えば50m/sの噴射速度を記載している。本発明においては、斯かる生成装置は、隣接歯間に保持されるべき物質を供給する目的のためにも用いられる。このことは、例えば国際特許出願公開WO2016/050573に記載されている。
【0029】
流体ジェットのような口腔ケア剤を有する粒子の導入は、流体ジェットを生成することが可能ないずれの装置又はユニットによって実行されても良い。例えば、一実施例においては、この手段は、望ましいジェット速度を生成するのに十分な圧力の下で液体を供給されるノズルであっても良い。本発明の方法においては、該ノズルは、例えば口腔内に流体ジェットを導入するよう、口に向けられる。好適には、該装置は、隣接歯間に直接に到達することが可能であるよう構成される。この目的のため、該ノズルは、好適には隣接歯間への直接の位置決めが可能となるような、口腔内の所望の位置に放出される流体ジェットを向けるときに十分な精度を実現する寸法を持つ先端部を持つ、柔軟な又は剛性を持つ管の形をとっても良い。代替としては、注射器が利用されても良い。口腔洗浄器は一般に、口腔内の隣接歯間のような個々の位置に対する個別の正確な洗浄を意図されたものであるため、単一のノズルを持つ。
【0030】
興味深い実施例においては、例えば予め付勢されたばねにより駆動されるプランジャポンプにより、約0.1mlのパルス状のジェット供給が提供される。各射出の後、ばねを付勢する間、より大きな懸架容器(例えば容器ユニット)から、注射器が再充填されても良い。
【0031】
当業者は、上述した目的に適した装置及びノズルを認識するであろう。特に適切なタイプの装置は、歯間洗浄器及び液体により支援されるフロッシング装置を含む、口腔洗浄器である。
【0032】
歯間洗浄器のような口腔洗浄器は一般に、液体の供給源と、選択された量の液体を該液体の供給源から液体通路へと移動させるためのシステムと、ポンプ若しくは加圧気体の供給源又はこれらの組み合わせのような駆動ユニットと、選択された量の気体を該液体に接触させるよう放出し、液体が該洗浄器のノズル部から放出されるようにするための制御構成と、を有する。適切な装置は、数あるなかでも、国際特許出願公開WO2010/055433、国際特許出願公開WO2010/055434、国際特許出願公開WO2008/012707、国際特許出願公開WO2014/068431に記載されている。
【0033】
本発明が適用される口腔洗浄器は特に、一度に用いられる単一のノイズに基づいて機能する。これらの装置は、個々の隣接歯間に個別に液体のジェットを供給するために用いられるよう構成される。また、口腔洗浄器は、使用の際に、大部分を口の外に保ちながら、又は少なくとも歯には触れないよう、手で保持される装置であることは理解されるべきである。このことは、歯の上に基本的に配置され、使用の間に口の中に保持される、マウスピースのような装置とは反対である。斯かる装置の間の基本的な違いは、本分野においては知られており、例えば米国特許出願公開US2013/236851の背景部分を参照されたい。
【0034】
本発明における使用に適した流体ジェット生成装置は、連続的なジェット、若しくはジェットの別個の噴射、又はこれらの両方を提供するよう構成されても良い。本発明の使用及び方法のため、単一の噴射が提供されることができる場合、好適である。このことは、一度に1つずつ、種々の隣接歯間に以上に説明された粒子を投与する際の、大きな正確さを実現する。斯かる好適な装置は、本分野においては良く知られている。
【0035】
好適には、供給装置は、圧縮及び供給に先立ち粒子を保持するための容器を備える。例えば、該装置は、容器が別個のモジュールとして装着されることを可能とする再閉塞可能な開口を備えても良い。斯かるモジュールは好適には、新しい粒子によって該装置を満たすことを容易化するため、交換可能である。また、斯かるモジュールはこのとき、異なる口腔ケア剤を持つ別の粒子を投与するために交換されても良い。
【0036】
興味深い実施例においては、粒子保持のための容器は、流体ジェット生成器のノズルと流体連通するよう構成される。粒子はこのとき好適には、懸濁液体に保持され、ノズルに流体接続した当該容器に供給され、各空気パルスで、粒子がノズルに充填される。該接続は好適にはベンチュリ部を備え、このことは、該容器からの粒子の球を充填するよう機能する減圧に帰着する。該ノズルは好適には、粒子よりも広くなるよう構成され、これによれば該球を歯に容易に移送することができる。好適には、該ノズルは、粒子の最大寸法よりも、例えば5乃至25%(例えば10乃至20%)のように、僅かにのみ広い。
【0037】
流体ジェット生成器は、口腔洗浄器に関して以上に議論されたように、歯間洗浄器のようなものとなる。容器ユニットは、流体ジェット生成器の一部であって良いが、別個のユニットであっても良く、このとき流体連通が、容器の出口とジェット生成器の入り口との間に提供される。斯かる流体連通は、互いに対する適切な固定を伴う、適切な管又は流線により提供されても良い。また、ジェット生成器ユニットは、カートリッジのための保持器を備えても良く、このとき該カートリッジは、液体のための容器として機能する。容器が流体連通する液体の供給源は、例えば粒子を有する懸架部として、容器自体に存在しても良い。また、該液体の供給源は一方の容器から提供されても良く、粒子は別の容器から提供されても良い。該液体の供給源は、外部の供給源であっても良く、該外部の供給源に、本発明のシステムが連結されるか、又は本発明のシステムが接続されても良く、これにより、粒子のための容器ユニットと該液体の供給源との間に必要な流体連通を提供しても良い。
【0038】
本発明のシステムは好適には、電動歯ブラシ、電気フロッシング装置及びこれらの組み合わせから成る群から選択された、歯を洗浄するための歯用機器を更に有する。斯かる歯用機器は、種々の機能を備えても良い。該機器は典型的には歯ブラシを示し、好適には電動歯ブラシを示し、更に好適には振動ブラシヘッドを持つ音波歯ブラシを示す。
【0039】
本発明の噴射システムをそれ自体で既に備えていない場合には、本発明のシステムにことによると含まれるような電動フロッシング装置は、一般的に空気を噴射すること、液体を噴霧すること、又はこれらの組み合わせにより、歯間空間を洗浄するよう機能する装置を示す。
【0040】
該システムは、パッケージングされたもの又は合わせて備えられるものではなく、別個の構成要素として、種々の部分を有しても良いことは、理解されるべきである。
【0041】
好適には、少なくとも1つの口腔ケア剤を有する粒子を保持する容器は、例えば組成部物を保持するボトル又はチューブ(口腔洗浄液のボトル又は歯磨き粉のチューブのような)の形をとる、別個のエンティティとして備えられても良い。該容器はまた、供給装置に装着されても良く、特に、例えば、供給ポンプを備えた、Philips社のSonicare AirFloss(登録商標)又はPhilips社のSonicare Toothbrush(登録商標)のような、電動歯ブラシ(別個の流体供給システムを備えて設計されたもの)、フロッシング装置又は口腔洗浄器に、斯かる装着のために適したカートリッジとして装着されても良い。
【0042】
更なる興味深い実施例においては、本発明によるシステムは、電源モジュールと、該電源モジュールに着脱可能に装着されることができる1つ以上の歯用機器ヘッドと、を有する。このことは典型的には、電動歯ブラシ及び/又は電気フロッシング装置を持つことを示し、好適にはいずれも歯用機器ヘッドの形をとる機能モジュールとして提供される。
【0043】
本発明は図面及び以上の記述において詳細に説明され記載されたが、斯かる説明及び記載は説明するもの又は例示的なものであって限定するものではないとみなされるべきであり、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。
【0044】
例えば、流体ジェット生成器が2つ以上の容器を備え、それぞれの容器が異なる口腔ケア剤を保持する実施例で本発明を動作させることも可能である。
【0045】
図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する他の変形が理解され実行され得る。請求項において、「有する(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0046】
要約すると、口腔ケア剤の歯間への供給のための薬剤が開示される。該薬剤は、口腔内に許容可能な放出基剤を有する粒子のなかに含まれる1つ以上の口腔ケア剤を有し、該粒子は、弾力的に変形可能であり、歯間空間にフィットするよう圧縮されることが可能である。該粒子は斯くして、歯間空間のサイズよりも僅かに大きいサイズで提供されることができる。圧縮により、該粒子は歯間空間に挿入されることができ、特に噴射されることができ、その際に再び膨張する該粒子の傾向が、唾液により洗い流され易くなることなく、該粒子が供給された空間において該粒子を保持する力をもたらす。
【0047】
以下、本発明は更に、例及び図を参照しながら説明される。これらは本発明を説明するものであり、限定するものではない。
【0048】
例1
圧縮可能な球の形をとる粒子が、キトサンヒドロゲルからつくられた。0.1MのHCl+0.1%のCPCにおける2重量%の高粘度キトサン溶液が、4分間混合器(Philips社のSonicare(登録商標)歯ブラシ)を用いて泡に変化させられた。キトサンの泡(2ml)は、20mlの0.1MのNaOHに滴下され、中程度の回転速度で撹拌されて該滴を架橋した。泡のないキトサンゲルは弾性的な挙動を示すが、泡は球の圧縮可能性を増大させる。これらの球は、ヒドロゲル泡として特徴付けられ得る。該球は、NaOH溶液から取り出され、僅かに酸性の2mMのNaH2PO4溶液に入れられた。
【0049】
例2
粒子の歯間供給は、隣接歯間の解剖学的モデルにおいて試験された。例1の球は、水なしで(空気パルスのみで)「AirFloss(登録商標)ultra」を用いてモデルの歯間空間(Typodont Frasaco AG3)に供給された。該球はノズルに配置され、該ノズルは歯間空間に当てられ、単一のパルスが与えられて球を供給した。
図1に示されるように、球(1)は2つの歯(2)の間の歯間空間に、好適に供給された。左側の図は、該球の供給の前の歯モデルを示し、右側の図は該球が供給された図を示す。給水栓の下での適度な洗浄は該球を除去しなかったが、より高い圧力での給水栓は該球を除去し、望ましい場合には該球が取り除かれることもできることを示している。