IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチバン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-植物用貼付剤 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】植物用貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/50 20060101AFI20240627BHJP
   A01P 13/00 20060101ALI20240627BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20240627BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20240627BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20240627BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A01N43/50 Q
A01P13/00
A01N25/34 A
A01M21/04 D
A01M7/00 V
A01M1/20 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020068532
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165240
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 一博
(72)【発明者】
【氏名】富谷 俊樹
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-222554(JP,A)
【文献】特開平08-242695(JP,A)
【文献】特開昭63-051301(JP,A)
【文献】実開昭59-178301(JP,U)
【文献】実開昭49-099725(JP,U)
【文献】特開2001-048710(JP,A)
【文献】特開平01-279804(JP,A)
【文献】実開昭60-144442(JP,U)
【文献】特開平10-060390(JP,A)
【文献】特開2006-255562(JP,A)
【文献】実開昭49-000066(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N、A01P、A01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明の基材と、該基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを有し、
前記粘着剤層が、薬剤とエマルジョン系粘着剤又はハイドロコロイド系粘着剤とを含有し、
前記薬剤が、浸透移行性を有する、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、及び植物成長調整剤から選ばれる1つ以上である植物用貼付剤。
【請求項2】
前記基材が、樹脂フィルム、又は、樹脂フィルムの積層体である請求項1記載の植物用貼付剤。
【請求項3】
前記基材が、ポリオレフィン系材料、アクリル系材料、ポリエステル系材料、生分解性プラスチック材料及びセルロース系材料の少なくとも1種で構成される請求項1又は2記載の植物用貼付剤。
【請求項4】
前記除草剤が、アミノ酸生合成阻害剤である請求項記載の植物用貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在日本で生育している外来植物は、街路樹や防砂林などの土地開発によって移植されたもの、又は材木の輸入によってその種子が持ち込まれたものである。近年、外来植物には、成長が早く、やせ地でも生育するものがあり、野生化して在来種の植生を乱すことが問題となっている。また、外来植物に限らず、クズ、竹等の繁殖力の強い植物が生育し続けると、周辺の植物の生育を阻害する。
繁殖力の強い大型の植物の駆除方法としては、伐採、除草剤の散布、巻き枯らし及び除草剤の樹幹注入等が挙げられる。しかしながら、伐採はチェーンソーを用いた大掛かりな作業となる。また、除草剤散布では、枯らしたくない有用植物まで枯らしてしまう場合がある。さらに、除草剤の巻き枯らし又は樹幹注入では、予め、樹皮をチェーンソーで剥ぐ、又は幹に切り目や穴を開ける必要があり、作業が煩雑である。
【0003】
一方、公知の除草剤には、種々のタイプがあり、少量で効果が発現するものと一定量が必要なものとが存在する。少量で効果が発現するものは、効率は良いが、除草剤の飛散(ドリフト)によって有用植物まで枯死させるので散布には向かない。また、一定量の除草剤が必要なものは、繁殖力の強い大型の植物を駆除するには、大量の農薬が必要となるため、有用植物に影響する場合がある。さらに、土壌への残留性が高い農薬を使用した場合には、ドリフトにより有用植物を枯死させるだけでなく、その後、一定期間、植物が繁殖できない状況となる危険性もある。またさらに、除草剤の散布は、作業者の除草剤の被曝は避けられず、近隣住民に配慮すると、夜間など人の往来が減少した時間帯に作業しなければならず、作業者の負荷も大きい。
【0004】
そこで、上記の方法とは異なる除草方法として、特許文献1に、ガムシートの粘着剤層面にインドール酢酸様活性の除草剤であるピクロラムをラノリンに混合させて基材に塗布した除草シートが提案されている。
また、粘着剤層を備える貼付剤においては、支持体として、様々な性質を有するプラスチックを用いることが提案されている。例えば、特許文献2には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリ塩化ビニルからなる植物処理用貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭49-99725号公報
【文献】特開平08-242695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
除草シートにおいては、通常、紫外線による薬剤の分解を防止するため、例えば金属膜層を積層したフィルムなどを基材としており、その外観は不透明となっている。しかしながら、基材を不透明とすると、貼付剤を貼付した直下の植物の幹や枝の色相や状態を知ることができないという問題がある。また、植物に除草シートを適用し、薬物の効果が認められたかどうか除草シートの評価を行うときに、植物に貼付剤を適用した当時は確実に植物が生きていたかどうかについて知る機能は、従来の除草シートにはなかった。
また、使用後に除草シートの様子を見る際、基材が透明であると、樹木の色と区別がつきにくく、除草シートを貼付した箇所を探すのに手間がかかっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、使用中及び使用後に貼付箇所が判明しやすく、農薬の効果を把握しやすい植物用貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、薬剤を含有させる粘着剤と基材の材料を、特定の組み合わせとすることによって、耐候性があり、かつ使用中又は使用後に貼付箇所が判明しやすい植物用貼付剤を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、透明又は半透明の基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを有し、粘着剤層が、薬剤とエマルジョン系粘着剤又はハイドロコロイド系粘着剤とを含有する植物用貼付剤である。
【0009】
基材は、樹脂フィルム、又は、樹脂フィルムの積層体であることが好ましい。
【0010】
基材は、ポリオレフィン系材料、アクリル系材料、ポリエステル系材料、及びセルロース系材料の少なくとも1種で構成されることが好ましい。
【0011】
薬剤は、浸透移行性を有する、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、及び植物成長調整剤から選ばれる1つ以上であることが好ましい。
【0012】
除草剤は、アミノ酸生合成阻害剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の植物用貼付剤によれば、使用中及び使用後に貼付箇所が判明しやすく、農薬の効果を把握しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の植物用貼付剤の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。
【0016】
[植物用貼付剤]
本発明の実施形態について図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明の植物用貼付剤10は、透明又は半透明の基材11と、基材11の一方の面に設けられた粘着剤層12とを有し、粘着剤層は、薬剤とエマルジョン系粘着剤又はハイドロコロイド系粘着剤とを含有する。
以下、植物用貼付剤の各構成の詳細について説明する。
【0017】
(基材)
本発明の植物用貼付剤10は、透明又は半透明であり、樹木の幹又は茎に巻き付けて使用するものであるため、基材11としては、可撓性又は柔軟性があり、幹又は茎への密着性を有し、農薬の蒸発及び漏洩を防ぐような物性を有するものである。
本発明において、「透明または半透明」とは、光透過率が、波長400nm以上800nm以下の可視光波長域において、少なくとも30%以上のことであり、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上、さらにより好ましくは90%以上のことである。光透過率は、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
また、基材11の全光線透過率は、30%以上100%以下であることが好ましい。全光透過率は、例えば、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック--全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
【0018】
基材11は、樹脂フィルムが好ましい。また、基材11は、ポリオレフィン系材料、アクリル系材料、ポリエステル系材料、及びセルロース系材料の少なくとも1種で構成されることが好ましい。
ポリオレフィン系材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、エチレンブテン-1共重合体、エチレンオクテン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられる。アクリル系材料としては、ポリビニルアルコール系材料、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。ポリエステル系材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、脂肪族ポリエステル等が挙げられる。セルロース系材料としては、アセテート、セロファン等が挙げられる。基材11は、エコロージュ(登録商標)(三菱ケミカル(株)製)などのポリ乳酸が主成分の生分解性プラスチックであってもよい。さらに、上記各種材料の1種又は2種以上の混合物又は積層構造を用いることができる。
これらの中でも、アクリル系材料は、UV(紫外線)を反射することから、紫外線による薬剤の分解を防止することができるので、好ましい。また、セロファンや生分解性プラスチックの場合は、貼付剤を対象となる植物に貼付したままでも、土壌とともに自然に分解されるため、好ましい。
【0019】
-基材の厚さ-
基材11の厚さは、伸び、引張り強さ、作業性などの物理的性質、及び幹又は茎の表面への追随性を考慮して適宜選択可能であるが、5μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。基材11の厚さが5μm未満であると、植物用貼付剤10の強度及び取り扱い性が低下して、幹や茎への貼付が困難になり、樹皮との接触によって破れる場合がある。また、基材11の厚さが200μmを超えると、植物用貼付剤10を幹や茎に巻く際、幹や茎に追随しにくくなり、剥がれやすくなる。
また、基材11が樹脂フィルムの場合は、その厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
【0020】
なお、基材11の厚さが、ごく薄い場合は、基材11の粘着剤層12が設けられている面(一方の面ともいう)とは反対の面(他方の面ともいう)に、後述するキャリアフィルムを設けてもよい。
【0021】
基材11の大きさは、対象植物の大きさ及び除草剤の濃度によって適宜選択することができる。
【0022】
なお、基材11が樹脂フィルムである場合は、粘着剤層12と基材11の投錨性を向上することを目的に、基材11の一方の面及び他方の面の少なくとも一方にサンドブラスト処理、コロナ処理等の処理を行ってもよい。
【0023】
基材11は、フェノールやアミン類等の酸化防止剤又はベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ベンゾエート類等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤を本発明の効果を阻害しない程度に含有してもよい。
【0024】
(粘着剤層)
粘着剤層12は、薬剤とエマルジョン系粘着剤又はハイドロコロイド系粘着剤とを含有するものであり、植物から蒸散する水分を吸収して白濁化するものである。
エマルジョンは界面活性剤を含んでおり、水との親和性が高い。また、ハイドロコロイドは吸収性のある物質を粘着剤層中に含んでおり、水を吸収する性質がある。これらの粘着剤は、水を含むことにより、白濁化する。
ここで、「白濁化する」とは、粘着剤が水分を吸収して直接的に貼付した直下を正確に確認できないまで、粘着剤が白色に着色したものをいう。さらに具体的には、植物に貼付した貼付剤が、例えば1m離れた箇所から目視したときに、貼付剤が白く濁って見え、貼付剤の下の植物の茎や幹の色、状態を正確に確認できない場合をいう。
【0025】
-エマルジョン系粘着剤-
「エマルジョン系粘着剤」とは、水性溶媒に非水溶性粘着剤(粘着性高分子化合物)が微粒子状に分散したエマルジョンを意味する。
非水溶性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ラテックス、その他の合成樹脂を含有する粘着剤などが挙げられる。エマルジョン系粘着剤は、粘着剤(粘着性高分子化合物)のモノマーを乳化重合することにより好適に製造することができる。乳化重合においては、水性溶媒中でモノマーとともに乳化剤(界面活性剤)、重合開始剤を混合して、重合反応を進行させることにより水分散型の重合体(エマルジョン)を得ることができる。中でも、農薬の幹や茎への浸透性が良いという観点から、アクリルエマルジョン系粘着剤、ラテックスが好ましい。これら粘着剤は1種を単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
エマルジョン系粘着剤を構成するアクリル系共重合体は、例えば、2種以上のアクリル系重合性化合物を乳化重合して共重合体を得ることによって製造することができる。
アクリル系重合性化合物としては、例えば、ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、2-カルボキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、アリルアルコール、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレートモノマー、第2級アミノ基含有(メタ)アクリレートモノマー、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレートモノマー、アミド基を形成する窒素原子上に3級アミノ基を含有する置換基が結合した第3級アミノ基含有N-置換(メタ)アクリルアミドモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセテート、スチレン、アセトアセチル(メタ)アクリレート、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロピオキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、(メタ)アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシヘキシルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシドデシルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシオクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、アジピン酸ジヒドラジド、トリメチロールプロパン、エチレンジオキシメタンフェタミン等が挙げられる。
これらの中でも(メタ)アクリル酸アルキルエステル、特定の官能基を有するモノマーまたは親水性モノマー、共重合可能な他の不飽和結合を有するモノマーを1種類以上共重合させたもので、ブチルアクリレート、イソノニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートを含むものが好ましい。
【0027】
粘着剤層中の共重合体の含有量は、粘着剤の安定性、薬物の保持性などの観点から、60質量%以上97質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
また、共重合体の粒子の平均粒径は、樹木の幹や茎への粘着力を確保する観点から、30nm以上1000nm以下であることが好ましい。
【0028】
エマルジョン系粘着剤には、公知の適宜な架橋剤を含有し得る。その架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン系化合物、キレート系架橋剤等が挙げられる。それらの架橋剤の含有量は特に限定されない。また、必要に応じて、ロジン樹脂、テルペン樹脂、脂肪系炭化水素樹脂、脂環炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、クマロン樹脂、これらの共重合体、変性物、水添物等の粘着付与剤を添加してもよい。
【0029】
-ハイドロコロイド系粘着剤-
「ハイドロコロイド系粘着剤」は、可塑性ゴムからなる連続相(母材)に吸水性のコロイド粒子(吸水剤)が分散して存在している構造を有し、その多くは、一定時間で自重の3~5倍程度の水を吸収し得るように調製されている。水等を吸水してもその母材が一体性を失うことがないように調整される。ハイドロコロイド系粘着剤は、一般的にエラストマー、粘着付与樹脂、可塑剤、その他の成分で構成される。
【0030】
粘着剤を構成するエラストマーとしては、植物へ接着性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、その例としては、天然又は合成の粘性ゴム状物質、例えば、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)等の合成ゴムやアクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、及びシリコーン系エラストマー等のエラストマーなどから選ばれた少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)や粘度平均分子量(Flory法による。以下同じ。)が、分子量が約30000~120000の中分子量ポリイソブチレンゴムが特に望ましい。これらの材料は、1種または2種以上を用いることができる。SISの市販品として、クインタック3421(登録商標、日本ゼオン株式会社製)等がある。
【0031】
また、吸水性及び/又は水膨張性のポリマーからなるハイドロコロイド粉末としては、特に限定されないが、吸液能の大きいポリマーが望ましい。例えば、ポリアクリル酸及び/又はその塩、アクリル酸/ビニルアルコールポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース(ナトリウム塩やカルシウム塩を含む。)、メチルビニルエーテル/マレイン酸の長鎖ポリマー、カルボキシメチルセルロース(CMC,ナトリウム塩やカルシウム塩を含む。)、澱粉-アクリル酸塩グラフトポリマー、アクリル酸-アクリルアミドコポリマー、アルギン酸及び/又はそのナトリウム塩、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、ポリビニルピロリドン等のハイドロコロイド粒子(親水性ポリマー)が挙げられ、これらから選ばれた少なくとも1種あるいは1種以上を混合して用いてもよい。CMCの市販品としては、セロゲンF-3H(登録商標、第一工業製薬株式会社製)等がある。
【0032】
これらハイドロコロイド粉末の配合量は、適度な吸水速度と吸水量を得るために、例えばカルボキシメチルセルロース・ナトリウムやカルボキシメチルセルロースであれば、粘着剤組成物全成分の総質量に対して10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の割合で使用することが、吸液性、特に吸水性、創傷部位との接着性、及び適度な保形性の観点から望ましい。
【0033】
-粘着付与樹脂-
粘着剤を構成する粘着付与樹脂としては、一般に疎水性ゴムベース成分と相溶して粘着性を発現させる疎水性の樹脂であり、具体的にはロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油系樹脂、C5/C9系石油系樹脂、DCPD系石油系樹脂、クマロン・インデン樹脂、またこれらの水添物などが挙げられる。
粘着付与樹脂の具体例としては、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂のアルコン(登録商標)P-125(荒川化学工業株式会社)、水添テルペン樹脂のクリアロン(登録商標)P150(ヤスハラケミカル株式会社)などが挙げられる。
上記粘着付与樹脂は、例えば、上記クリアロンP150であれば、粘着剤組成物の全エラストマー成分の100質量部に対して20質量部以上200質量部以下、好ましくは50質量部以上180質量部以下の量で存在していることが好ましい。
【0034】
-可塑剤-
粘着剤を構成する可塑剤(軟化剤)としては、パラフィン系、ナフテン系、等の石油系プロセスオイルやひまし油、大豆油などの植物油、及び植物油由来の脂肪酸エステルなどの軟化剤を使用してもよい。また、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸と、例えば、炭素原子数8以上10以下程度のアルキル基を有するモノアルコールとの二塩基酸エステル系可塑剤;前記香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等のグリコールとの重縮合により得られるポリエステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、クエン酸エステル等のその他の可塑剤なども使用することができる。これら2つ以上を併用することもできる。
本発明において、可塑剤は、粘着剤の総質量に対して、0.5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、11質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
-その他成分-
さらに粘着剤には、一般的なゴム系粘着剤で使用する、酢酸トコフェロール及び/又はその誘導体、アスコルビン酸及び/又はその誘導体、亜硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、ビスフェノール系、ヒンダードアミン系、ベンゾイミダゾール系などの老化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤などを1種又は複数の組合せで適宜添加してもよい。
また粘着剤には、例えば充填剤、脱臭剤、芳香剤などを配合してもよく、或いは内部凝集力を高めるために架橋剤を適宜配合させてもよい。
これらの任意成分の配合量は、通常、粘着剤全成分の総質量に対して5質量%以下である。
【0036】
植物用貼付剤は、粘着剤あるいは支持体の粘着剤層側を着色するものとして、着色剤を用いることもできる。この場合、着色剤は、植物から蒸散される水分を粘着剤が吸収して、着色剤が水分を含むことにより変色して着色するものである。
ここで、「着色する」とは、粘着剤あるいは基材上にある着色剤が植物からの水分の存在により色が変化して貼付剤の外観に変化を与えるものであり、貼付剤を植物への適用する前と後を比較して色が変化していることを視覚的に認識できることを意味する。
【0037】
着色剤としては、食用色素、酸性染料、塩基性染料、直接染料、酸性媒染染料、反応染料から選ばれる少なくとも一種類であることが好ましい。例えば市販の青色1号、青色4号、青色404号、黄色4号、赤色102号等である。酸性染料は、例えばカヤノールレッドNBR、ブリリアントスカーレット3B、アシッドファストオレンジ SG、アマランス、アシッドローダミン B、エオシン G、アシッドミリングレッド RS、アリザリンダイレクトブルーAGG、インジゴカルミンブルー G、アシッドミリングシアニン 5Rが挙げられる。塩基性染料は、例えばカチオンレッド 6B、カチオンピンク FG、クリスタルバイオレット、メチレンブルー Bが挙げられる。直接染料は、例えばカヤノールライトレッドF5B、ダイレクトファストスカーレット4BS、ベンゾパープリン4B、ダイレクトファストオレンジS、ダイレクトロージュリンレッドB、クロランチファストレッド6BLL、シリアスレッド4B、シリアススプラレッドバイオレットRL、シリアススプラバイオレットBL、ダイレクトスカイブルー5Bが挙げられる。酸性媒染染料は、例えばクロムオレンジA、クロムオレンジGR、クロムレッドB、クロムブリリアントレッドB、クロムブリリアントバイオレットR、クロムブラウンPGが挙げられる。反応染料は、例えばリアクトンレッド2B-F、プロシオンルビンBS、シバクロンバイオレットF2R-A、プロシオンブリリアントブルーRSが挙げられる。水溶性染料は単独または複数がインキに配合される。
【0038】
バインダは、例えば水溶性の微粉末であるデキストリン等が使用され、例えばデキストリンに着色剤を混合して粘着剤中に配合するか、基材の粘着剤層積層側にインクジェット法や塗布などの方法によって基材に全面あるいは格子状などのパターンで積層されていることが好ましい。着色剤は、水に溶解して発色するものであり、不可逆的な色変化である。
【0039】
-粘着剤層の厚さ-
粘着剤層12の厚さは、エマルジョンの場合は10μm以上300μm以下、ハイドロコロイド粘着剤の場合は、100μm以上3000μm以下であることが好ましい。
【0040】
粘着剤層12は、単一の粘着剤層からなる構成としてもよく、複数の粘着剤層を積層した構成としてもよい。粘着剤層12が複数の粘着剤層を積層して形成された構成である場合、種類の異なる粘着剤層を積層したものとすることができる。
【0041】
-植物用貼付剤全体の厚さ-
さらに、植物用貼付剤10全体の厚さは、幹又は茎への追随性を考慮すると、15μm以上500μm以下であることが好ましく、25μm以上250μm以下であることが、より好ましい。
【0042】
(薬剤)
本発明の植物用貼付剤に用いる薬剤としては、浸透移行性を有する、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、又は植物成長調整剤であることが好ましい。
殺虫剤としては、例えばピリプロキシフェン、フェノキシカルブ、メソプレン、ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、ヘキサフルムロン等のベンゾイルウレア化合物、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアメトキサム、チアクロプリド、クロチアニジン、ジノテフランのネオニコチノイド系殺虫剤、ブプロフェジン、ピリフルキナゾン、及びメチダチオンが挙げられる。中でも、ブプロフェジン、ピリフルキナゾン、及びメチダチオンが好ましい。
【0043】
殺菌剤としては、一般的な防黴剤又は抗細菌剤として知られている化合物及び抗菌作用を有するとして知られている天然製油類等を例示することができる。防黴剤又は抗細菌剤としては、例えば、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-3-n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メトキシカルボニルベンズイミダゾール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-メタンスルホニルピリジン、2-チオシアノメチベンゾチアゾール、2,2-ジチオ-ビス-(ピリジン-1-オキサイド)、3,3,4,4-テトラハイドロチオフェン-1,1-ジオキサイド、4,5-ジクロロ-1,2-ジチオラン-3-オン、5-クロロ-4-フェニル-1,2-ジチオラン-3-オン、N-メチルピロリドン、フェニル-(2-シアノ-2-クロロビニル)スルホン、メチレンビスチオシアネート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、2,2-ジブロモ-2-エタノール、2-ブロモ-4′-ヒドロキシアセトフェノン、ジブロモニトリルプロピオンアミド、2-ブロモ-2-ブロモメチルグルタルニトリル、過炭酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過ほう酸ナトリウム、オルトフェニルフェノール、ジフェニル、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、パラクロロメタキシレノール、パラヒドロキシ安息香酸n-ブチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸メチル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロロへキシジン、グルコン酸クロロヘキシジン、2-ピリジンチオール-1-オキサイド、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛塩、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、N,N′-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムブロマイド)、4,4′-(テトラメチレンジアミノ)ビス(1-デシルピリジニウムブロマイド)等を具体的に挙げることができる。
【0044】
また、天然製油類としては、例えば、シネオール、ヒノキチオール、メントール、テルピネオール、ボルネオール、ノポール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、ジメチルオクタノール、チモール等を例示することができる。
【0045】
さらに、ヨード系抗菌剤も例示することができ、例えば、2,3,3-トリヨードアリルアルコール類、2,3,3-トリヨードアリルエーテル類、2,3,3-トリヨードアリルアゾール類、3-ヨード-2-プロパギルブチルカルバミン酸、4-クロロフェニル(3-ヨードプロパギル)ホルマール、ヨードプロパギルアゾール類、ジヨード-パラ-トリスルホン、ポピドンヨード、ベンジルヨード酢酸エステル及びパラニトロベンジルヨード酢酸エステルを挙げることができる。
【0046】
除草剤は、浸透移行性を有すること、人への安全性が高いことが必要である。これらの要件を満たし、効率よく被着体を枯死させることができる除草剤としては、アミノ酸生合成阻害剤が挙げられる。アミノ酸生合成阻害剤には、グルタミンの生合成を阻害するグルタミン合成酵素阻害剤、必須アミノ酸である分枝アミノ酸の生合成を阻害する分枝アミノ酸生合成阻害剤(アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤)、及び芳香族アミノ酸の生合成を阻害する芳香族アミノ酸生合成阻害剤(5-エノールピルボイルシキミ酸-3-リン酸(EPSP)合成酵素活性阻害剤)がある。その中でも、アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤及び5-エノールピルボイルシキミ酸-3-リン酸(EPSP)合成酵素活性阻害剤が好ましい。これらの除草剤は、いずれか1種で用いてもよく、生合成を抑制するアミノ酸の種類を問わず、複数を混合して使用してもよい。
【0047】
アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤としては、スルホニルウレア系、イミダゾリノン系、トリアゾロピリミジン系、ピリミジニル(チオ)ベンゾエート系、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン系を挙げることができる。
スルホニルウレア系の有効成分は、アミドスルフロン、アジムスルフロン、ベンスルフロンメチル、クロリムロンエチル、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメトスルフロンメチル、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルピルスルフロン、ホラムスルフロン、ハロスルフロンメチル、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、メソスルフロン、メトスルフロンメチル、ニコスルフロン、オキサスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、リムスルフロン、スルホメツロンメチル、スルホスルフロン、チフェンスルフロンメチル、トリアスルフロン、トリフロキシスルフロン、トリフルスルフロンメチル、トリトスルフロンが挙げられる。
イミダゾリノン系の有効成分は、イマザピック、イマザメタベンズメチル、イマザモックス、イマザピル、イマザキン、イマゼタピルが挙げられる。
トリアゾロピリミジン系の有効成分は、クロランスラムメチル、ジクロスラム、フロラスラム、フルメツラム、メトスラム、ペノキススラムが挙げられる。
ピリミジニル(チオ)ベンゾエート系の有効成分は、ビスピリバック-ナトリウム塩、ピリベンゾキシム、ピリフタリド、ピリチオバック-ナトリウム塩、ピリミノバックメチルが挙げられる。
スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン系の有効成分は、フルカルバゾン-ナトリウム塩、プロポキシカルバゾン-ナトリウム塩が挙げられる。
【0048】
5-エノールピルボイルシキミ酸-3-リン酸(EPSP)合成酵素活性阻害剤としては、グリシン系が挙げられる。有効成分としては、グリホサート、グリホサートトリメシウム塩(スルホサート)が挙げられる。
【0049】
除草剤の量は、有用植物への影響を考慮して、樹皮5cmに対して、1μg以上4500μg以下であることが好ましく、3μg以上3000μg以下であることがより好ましい。このような除草剤の量となるように、濃度と量を調整することが好ましい。
【0050】
植物成長調整剤化合物としては、1-メチルシクロプロペン、1,3-ジフェニルウレア、2,3,5-トリヨード安息香酸、IAA、IBA、MCPA、MCPB、4-CPA、5-アミノレブリン酸塩酸塩、6-ベンジルアミノプリン、アブシシン酸、AVG、アンシミドール、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム類、クロルメコートクロリド、クロロプロファム、塩化コリン、クロプロップ、シアナミド、シクラニリド、ダミノジッド、デカン-1-オール、ジクロプロップ、ジケグラック、ジメチピン、ジクワット、エテホン、エチクロゼート、フルメトラリン、フルルプリミドール、ホルクロルフェヌロン、ホルモノネチン、ジベレリンA、ジベレリンA3、ヒメキサゾール、イナベンフィド、イソプロチオラン、カイネチン、リポキトオリゴ糖、メフルイジド、酸化型グルタチオン、ペンディメタリン、シントフェン、シアン酸ナトリウム、ストレプトマイシン、チジアズロン、トリアペンテノール、ウニコナゾールP、3-[(6-クロロ-4-フェニルキナゾリン-2-イル)アミノ]プロパン-1-オールなどが挙げられる。
【0051】
これらの薬剤の含有量は、通常0.01質量%以上99質量%以下、好ましくは1質量%以上80質量%以下、より好ましくは2質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上30質量%以下の範囲である。
【0052】
-薬剤濃度-
粘着剤層中の農薬濃度としては、粘着剤層用組成物100質量%に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
粘着剤層12は、任意成分として、液状ゴム、架橋剤、軟化剤(可塑剤)、pH調整剤、酸化防止剤(抗酸化剤、防腐剤)、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤及び着色料等の、粘着剤層に通常配合され得る添加剤を含有してもよい。
【0054】
(剥離紙)
本発明の植物用貼付剤10は、ロール状あるいはシート状として提供するために、粘着剤層側の表面に剥離紙を貼付してもよい。貼付される剥離紙としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム;上記のプラスチックフィルムに離型処理を施した加工シート;紙;紙に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックフィルムやそれらに離型処理を施した加工シートを積層したラミネート加工紙;これらのフィルム又はシートを相互に積層させた積層フィルム又はシートなどの、無色又は着色したシートを用いることができる。
剥離紙の厚さは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上300μm以下がより好ましく、40μm以上200μm以下が更に好ましい。
【0055】
また、本発明の植物用貼付剤10は、製品の保存安定性の観点から、例えば遮光性のあるアルミ袋に密閉されていてもよい。
【0056】
本発明の植物用貼付剤10の製造方法は特に限定されないが、一例として、粘着剤層12及び農薬を混合して粘着剤層用組成物を調製し、これを基材11上に塗布し、乾燥工程を経ることによって得ることができる。本実施形態で使用する粘着剤層の中には、粘着剤層中での農薬の安定化、貼付したときの農薬の浸透性を促進させるために添加剤を混合することができる。
【0057】
[植物用貼付剤の使用方法]
本発明の植物用貼付剤10は、植物又は樹木の茎又は幹に粘着剤層12を密着させるように巻き付け、枯死するまで、所望の日数、放置して使用するものである。
例えば、一年性及び多年性の広葉雑草、クズなどのつる性類、雑かん木の場合は、30日以上放置することが好ましい。ササ類、大型の樹木の場合は、45日以上放置することが好ましい。
茎又は幹の植物用貼付剤10を巻き付ける場所は、特に制限はなく、適宜選択してよい。
【0058】
本発明の植物用貼付剤は、除草剤が設けられた粘着性シートを幹又は茎に巻き付けるだけであるため、除草剤を希釈して散布する手間が省かれ、有用植物に影響を及ぼすことなく対象植物のみを枯死させることができる。
また、本発明の植物用貼付剤は、従来の散布方法と同程度の濃度の農薬溶液に比べ少量で効率よく作用するため、土壌の汚染や、周囲へのドリフト、作業者への被曝を抑えることができる。
【0059】
また、本発明の植物用貼付剤は、粘着剤にエマルジョン系粘着剤又はハイドロコロイド系粘着剤を用いることにより、植物の茎や葉の貼付された部分が密閉され、植物から放出される水分が大気中に放出されず、粘着剤層と植物の間の湿度が上昇する。この水分(湿度)が、粘着剤層の農薬を効率的に植物へ放出及び浸透させると推測する。また、蒸散された水分によって、粘着剤層のエマルジョン系粘着剤又はハイドロコロイド系粘着剤が時間経過とともに白濁する。本発明の植物用貼付剤は、粘着剤層が白濁すると、基材が透明又は半透明であるため、使用中又は使用後に植物用貼付剤を貼付した位置を見つけやすいという利点がある。着色剤を用いた場合は、貼付前と貼付後で色調が異なるため、効果は同様に発現する。
【0060】
特に、粘着剤層中に薬剤を添加して粘着機能と除草機能の両方を持たせようとすると、薬剤と粘着剤層を構成する材料との相性から、除草剤を所望の量添加できない場合があるため、貼付剤中の薬物の放出性を考慮して粘着剤を選択する必要がある。本発明の植物用貼付剤は、適用時に植物が生きていたことを確認することができ、対象植物を確実に枯死させることが可能であり、土壌の汚染や、周囲へのドリフト、作業者への被曝を抑えることができる。また生分解性のフィルムを基材に用いた場合は、土壌中に廃棄した場合に分解されて自然に還るため好ましい。
【実施例
【0061】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例及び比較例に用いる、基材、粘着剤層の材料、対象植物、及び農薬(除草剤)を以下に示す。
(1)基材:
・ポリオレフィン系材料(ポリエチレンフィルム、厚さ100μm)
・ポリエステル系材料(ポリ乳酸フィルム、厚さ50μm)
・セルロース系材料(セロファンフィルム、厚さ35μm)
・蒸着アルミポリエチレンテレフタレート(蒸着アルミPET、厚さ25μm)
(2)粘着剤層:
・アクリルエマルジョン系粘着剤(2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)をベースにした粘着剤)
・溶剤系アクリル粘着剤(2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)をベースにした粘着剤)
・ハイドロコロイド系粘着剤(SIS/LIR30/水添テルペン樹脂/CMC)
なお、SISは、スチレン・イソブチレン・スチレンを意味し、LIR30は、株式会社クラレ製のポリイソプレンを意味し、CMCは、カブボキシメチルセルロースを意味する。
(3)対象植物:ツバキ
(4)農薬:除草剤(イマザピル(ALS阻害剤))
【0062】
[実施例1]
アクリルエマルジョン系粘着剤(2-EHA系)に農薬濃度が5質量%となるように除草剤を添加して、粘着剤層用組成物を調製した。この粘着剤層用組成物を、シリコーン系剥離剤を塗布した剥離シート上に、粘着剤厚が30μmとなるように塗布及び乾燥し、紫外線吸収剤であるチヌビン0.01%を含有したポリエチレンフィルム基材(100μm)とラミネートして裁断し、植物用貼付剤を作製した。
【0063】
[実施例2]
基材として、生分解性のあるポリ乳酸フィルム(厚さ50μm)を用い、粘着剤厚を50μmとした以外は、実施例1と同様に植物用貼付剤を作製した。
【0064】
[実施例3]
アクリルエマルジョン系粘着剤の代わりに、粘着剤として、ハイドロコロイド系粘着剤(組成比:SIS/LIR30/水添テルペン樹脂/CMC/農薬=27/9/23/10/26)を用いて、粘着剤層の厚さを200μmとし、支持体をセロファンフィルム(厚さ35μm)とした以外は実施例1と同様に植物用貼付剤を作製した。
【0065】
[比較例1]
基材として、蒸着アルミPETを用いた以外は、実施例1と同様に、植物用貼付剤を作製した。
【0066】
[比較例2]
実施例1の植物用貼付剤をアルミパネルに貼付して、野外で放置した。
【0067】
[比較例3]
実施例1のアクリルエマルジョン系粘着剤(2-EHA系)を、溶剤系アクリル粘着剤(2-EHA系)とした以外は、実施例1と同様に、植物用貼付剤を作製した。
【0068】
次に、本発明の植物用貼付剤の実用試験を行った。
【0069】
[実用試験]
上記実施例及び比較例について、以下のようにして実用試験を行い、試験前後に後述の評価を行った。
1.上記実施例、比較例の植物用貼付剤をツバキの土面から約2~3cm離した箇所に巻きつけた。
2.試験期間:2019年6月16日から2019年9月5日まで
【0070】
[評価]
上記実施例及び比較例について、以下の評価項目について評価した。評価結果を表1に示す。
【0071】
(残葉の状態)
ツバキの葉の状況を観察し、以下の基準で評価した。
A:樹木全体の葉の80%以上が落葉している
B:樹木全体の50%以上80%未満が落葉している
C:樹木全体の50%未満が落葉している
【0072】
(粘着剤の着色(白濁)の状態)
期間終了時に、粘着剤が着色(白濁)し、基材を通して粘着剤の着色が確認できるかどうか調べた。
A:基材を通して粘着剤が白濁又は着色していることを確認した
B:基材を通して粘着剤の色を確認できなかったため、貼付剤を剥離したところ粘着剤が白濁又は着色していた
C:粘着剤は白濁又は着色していなかった
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、透明なフィルムを用いた実施例1から3については、樹木全体の80%以上の葉が落葉しており、農薬の効き目が良好であることがわかった。また、透明な基材を用いているので、基材を通して粘着剤の着色又は白濁状態を観察できた。
一方、基材として蒸着アルミPETフィルムを用いた比較例1では、農薬の効き目は良好であったが、基材を通して、粘着剤の着色又は白濁の状況を観察できなかった。
また、比較例2では、粘着剤の着色又は白濁がなかった。
さらに、溶剤系アクリル粘着剤を用いた比較例3では、農薬の効き目は確認できたが、粘着剤は着色又は白濁しなかった。
【0075】
以上より、本発明の植物用貼付剤は、エマルジョン系粘着剤又はハイドロコロイド系粘着剤を用いることにより、粘着剤が、樹木からの水分を吸収して着色又は白濁することがわかった。また、透明又は半透明の基材を用いていることにより、使用中から使用後にかけて薬剤の効果を確認することができ、使用後には貼付箇所が判明しやすい。
【符号の説明】
【0076】
10 植物用貼付剤
11 基材
12 粘着剤層
図1