(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】テルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/005 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A23D7/005
(21)【出願番号】P 2020070272
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 祥貴
(72)【発明者】
【氏名】門脇 章夫
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-171920(JP,A)
【文献】特開平01-176443(JP,A)
【文献】特開平01-176442(JP,A)
【文献】特開2008-143841(JP,A)
【文献】特開昭59-007106(JP,A)
【文献】特開昭59-001405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/06
A61K 9/00-9/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化物の外相が多価アルコール又は多価アルコール水溶液である乳化組成物であって、界面活性剤(A)、テルペノイド配糖体(B)、及び食用油脂(C)を含有し、界面活性剤(A)が、構成するポリグリセリンの平均重合度が3以上、構成する脂肪酸の炭素数が12以上、及びIOBが1以上であるポリグリセリン脂肪酸エステル、又はIOBが1.5以上のショ糖脂肪酸エステルであり、食用油脂(C)がパーム油、ヤシ油及び中鎖脂肪酸含有トリグリセリドからなる群より選択される少なくとも1種以上であり、乳化組成物中に含有するAとBの質量比率が1:30~30:1、かつBとCの質量比率が1:10~10:1であることを特徴とする、テルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物。
【請求項2】
テルペノイド配糖体(B)の平均分子量が500~1500であり、テルペノイド配糖体を構成するテルペノイドの炭素数が10、15、20、30のいずれかのイソプレノイドである請求項1記載のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物。
【請求項3】
多価アルコールがグリセリン又は糖アルコールであり、水の含有比率が多価アルコールに対して50質量%以下である請求項1又は2記載のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物。
【請求項4】
テルペノイド配糖体(B)と食用油脂(C)を混合した油相を調製する工程と、この油相を多価アルコール又は多価アルコール水溶液と界面活性剤(A)を含有するD相中に添加して乳化組成物を調製する工程を有する、請求項1~3いずれか記載のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物の製造方法。
【請求項5】
テルペノイド配糖体(B)と食用油脂(C)を混合したものを油相とし、この油相を多価アルコール又は多価アルコール水溶液と界面活性剤(A)を含有するD相中に添加して乳化組成物を調製することを特徴とする請求項1~3いずれか記載のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物の安定化方法。
【請求項6】
請求項1~3いずれか記載のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物を含有する飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物及びその製造方法、さらには該テルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物を含有した飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品において乳化組成物の使用用途は広く、香料、酸化防止剤、機能性素材等を安定的に飲食品へ添加する目的で乳化組成物とすることが知られている。例えば、香料は、飲食品に風味や香味を付与する添加物として使用されており、酸化防止剤は飲食品の風味劣化を防止する添加物として幅広く使用されている。これらは目的に応じて水溶性、油溶性のものが用いられるが、油溶性の香料成分や酸化防止剤成分はそのままでは水系の飲食品への添加が困難であるため、界面活性剤を用いて水中に分散可能な乳化組成物として調製される。
分子構造に親水基と疎水基を含有する両親媒性の素材は界面活性能力を有すとされている。そして一部の機能性素材も同様の構造を有しており、弱いながらも一定の乳化効果を示すことが知られている。しかしながらその能力は決して強いものではなく単独での乳化安定化は難しい。また自身が界面活性能を有しているため、界面活性剤を共存させての乳化を実施する際、寧ろ不安定化を引き起こし乳化が困難である場合も多い。その一例としてテルペノイド配糖体が挙げられる。テルペノイド配糖体を含有した安定的な乳化組成物を調製した報告は少なく、乳化組成物への配合量に大きく制限が生じているのが実情である。テルペノイド配糖体は有用な機能を有しているものも多く、安定に乳化組成物に配合する調製方法が求められている。
安定な乳化組成物を調製する方法は数多く報告されているが、テルペノイド配糖体を配合したO/D乳化組成物の調製方法は報告されていなかった。
【0003】
O/D乳化を利用した技術が過去に報告されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかしながら、単にO/D乳化を実施しているだけでありテルペノイド配糖体を配合した安定的な乳化は達成されていなかった。
さらに、テルペノイドを含有する水中油型エマルションの技術が報告されている(例えば、特許文献3、4参照。)。
しかしながら、何れも水中油型エマルション(O/W乳化組成物)であり、本願発明のO/D乳化組成物ではなく、また使用されているのはテルペノイドでありその配糖体ではなかった。
このように、難乳化性物質の乳化組成物調製方法は様々な検討がなされているが、テルペノイド配糖体を含有するO/D乳化組成物に関しては十分な乳化安定性と実用性を有するものはほとんど無く、更なる開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2009-95277号公報
【文献】特開平2017-143753号公報
【文献】特許第4438908号
【文献】特開2017-057226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来技術に鑑みてなされたものであり、テルペノイド配糖体を含有する乳化組成物の乳化安定性を向上させることを可能とし、さらには飲食品での分散性に優れ、安定に飲食品に添加することのできる乳化組成物の開発を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、実用的な量のテルペノイド配糖体を含有し、十分な乳化安定性と、飲食品中への分散性に優れる乳化組成物を開発するため鋭意検討した結果、界面活性剤(A)、テルペノイド配糖体(B)、及び食用油脂(C)を含有し、乳化組成物中に含有するAとBの質量比率が1:30~30:1、かつBとCの質量比率が1:10~10:1であるO/D乳化組成物とすることで、さらには、テルペノイド配糖体(B)と食用油脂(C)を混合した油相を調製する工程と、この油相を多価アルコール又は多価アルコール水溶液と界面活性剤(A)を含有する水相中に添加して乳化組成物を調製する工程を有する製造方法とすることで、安定的な乳化組成物を得ることが可能となり、飲食品中への分散性にも優れることを見出し、本発明に至ったものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物は、従来の乳化組成物と比較して乳化安定性に優れ、さらには飲食品中への分散性に優れるという利点がある。本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物を用いることにより、長期間保存される飲食品中等、経時的な乳化不安定化が懸念される条件下においても安定的に使用することができ、品質の良好なテルペノイド配糖体を含有する飲食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物は、十分な乳化安定性及び飲食品中での分散性を得るために、界面活性剤、テルペノイド配糖体、及び食用油脂を含有し、乳化組成物中に含有する界面活性剤とテルペノイド配糖体の質量比率と、テルペノイド配糖体と食用油脂の質量比率が一定の範囲内であることを特徴とするO/D乳化組成物であることを特徴とする。
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物の調製方法としては種々の方法が知られているが、その中でも、水相への混合時に微細なO/W乳化組成物を得る方法として界面科学的手法を用いたD相乳化法が知られている。D相乳化法とは、界面活性剤を含有する多価アルコール溶液又は多価アルコール水溶液(D相)に油相を添加して乳化する方法であり、これによってテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物が得られる。このO/D乳化組成物を水相に混合することで微細なO/W乳化組成物を得ることができる。
【0009】
本発明の界面活性剤とは、特に限定されるものではないが、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド(酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド)、ポリオキシエチレン誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン(大豆レシチン、菜種レシチン、卵黄レシチン、ひまわりレシチン)、酵素分解レシチン(大豆酵素分解レシチン、菜種酵素分解レシチン、卵黄酵素分解レシチン)等が挙げられ、これらの群より選ばれる1種又は2種以上を併用してもよい。各種の乳化不安定化要因による乳化破壊に対し安定な乳化構造を維持するといった観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有することが望ましく、その他の界面活性剤を1種又は2種以上を併用してもよいが、界面活性剤全量中のポリグリセリン脂肪酸エステル含有割合は、好ましくは50質量%以上の割合であり、より好ましくは75質量%以上である。
【0010】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルは、特に限定されるものではないが、好ましくは構成する脂肪酸の炭素数が12以上及び構成するポリグリセリン平均重合度が3以上であり、より好ましくは構成する脂肪酸の炭素数が12~18及び構成するポリグリセリンの平均重合度が3以上、水酸基価が770以上1200以下であり、かつ全ての水酸基のうち1級水酸基が50%以上である。炭素数12~18の脂肪酸とはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等を挙げられる。一方で、炭素数が12に満たない脂肪酸で構成されるポリグリセリン脂肪酸エステルでは乳化力に劣る場合や、このようなポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物では、その香味が飲食品の風味に影響する場合があり、炭素数が18を超える脂肪酸で構成されるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物では、乳化安定性が不十分となる場合がある。
【0011】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度は次式によって算出できる。原料となるポリグリセリンの水酸基価は基準油脂分析試験法(2,3,6,2-1996ヒドロキシル価(ピリジン-無水酢酸法))を用いて測定することができる。
m=74n+18
OHV=56110(n+2)/m
n:ポリグリセリンの平均重合度
m:ポリグリセリンの平均分子量
OHV:ポリグリセリンの水酸基価
【0012】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンにおける全ての水酸基のうちの1級水酸基の割合は、以下のようにして炭素原子に対する核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定方法を用いて測定することができる。ポリグリセリン500mgを重水2.8mlに溶解し、ろ過後ゲートつきデカップリングにより13C-NMR(125MHz)スペクトルを得る。ゲートデカップルド測定手法によりピーク強度は炭素数に比例する。1級水酸基と2級水酸基の存在を示す13C化学シフトはそれぞれメチレン炭素(CH2OH)が63ppm付近、メチン炭素(CHOH)が71ppm付近であり、2種それぞれのシグナル強度の分析により、1級水酸基と2級水酸基の存在比を算出する。但し、2級水酸基を示すメチン炭素(CHOH)は、1級水酸基を示すメチレン炭素に結合するメチン炭素にさらに隣接するメチレン炭素ピークと重なり、それ自体の積分値を得られないため、メチン炭素(CHOH)と隣り合うメチレン炭素(CH2)の74ppm付近のシグナル強度により積分値を算出する。
【0013】
本発明のIOBとは、「Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)」の略であって、化合物の有機値に対する化合物の無機値の比に対応する値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標である。具体的には、IOB=無機性値/有機性値として表される。
無機性値、有機性値のそれぞれについては、甲田らの報告(甲田善生著、有機概念図―基礎と応用―11頁~17頁、三共出版、1984年発行参照。)に基づき、分子中の炭素原子1個について有機性値が20、同水酸基1個について無機性値が100といったように、各種原子又は官能基に応じた無機性値、有機性値が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の無機性値、有機性値を積算することによって、当該有機化合物のIOBが算出することができる。
【0014】
本発明の界面活性剤のIOBは、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.2以上である。IOBが1より小さい場合、油溶性の素材を水中に安定的に分散することが困難となる場合がある。
【0015】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物中の界面活性剤の含有割合は、界面活性剤の種類やその他の成分量によっても異なり一概には決定できないが、O/D乳化組成物を構成し、及び十分な乳化安定性を得るため、好ましくは0.5質量%以上である。0.5質量%未満では安定な乳化粒子を維持することが困難となる場合があり、水系の飲食品へ添加時に油溶性成分が分離する場合がある。
【0016】
本発明におけるテルペノイド配糖体とは、テルペノイドと糖にて構成され、構成するテルペノイドとは、一般的には五炭素化合物であるイソプレンユニットを構成単位とする一群の天然物化合物であり、特に限定されるものではないが、例えば、リモネン、シメン、テルピネン、テルピノレン、ピネン、リナロール、シトラール、ゲラニオール、メントール、チモール、カルバクロール、チオテルピネオール等のモノテルペン類及びその誘導体、バレンセン、ノートカトン、カリオフィレン、フムレン、ビサボレン、クベベン、ファルネセン、カジネン等のセスキテルペン類及びその誘導体、カーウェオール、カフェストール、ステビオール、レチノール、レチナール、フィトール等のジテルペン類及びその誘導体、スクアレン、ラノステロール、ククルビタン等のトリテルペン類及びその誘導体が挙げられ、テルペノイド配糖体とはこれらテルペノイドに糖が付加した化合物を指す。本発明におけるテルペノイド配糖体の組成は限定されるものではないが、好ましくはテルペノイド配糖体の平均分子量が500~1500であり、より好ましくはテルペノイド配糖体を構成するテルペノイドが炭素数10、15、20、30のいずれかのイソプレノイドを含有するものであり、最も好ましくはテルペノイド配糖体を構成するテルペノイドと糖のモル比率が1:1~1:5である。
【0017】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物中のテルペノイド配糖体の含有割合は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは0.5~20質量%であり、最も好ましくは1~10質量%である。
【0018】
本発明の食用油脂とは、食用に用いられる油脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、パーム油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、米油、ゴマ油、オリーブ油、グレープシード油、落花生油、亜麻仁油、乳脂、ラード、牛脂、魚油、中鎖脂肪酸含有トリグリセリド等の油脂、これら油脂を、混合、分別、水素添加、及びエステル交換等の群より選ばれる1種又は2種以上の加工を行った油脂が挙げられる。より安定な乳化構造を維持するといった観点から、好ましくは食用油脂が中鎖脂肪酸含有トリグリセリドを含有し、より好ましくは食用油脂を構成する脂肪酸の全量中のカプリル酸の含有割合が20質量%以上となる食用油脂が望ましい。
【0019】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物中の食用油脂の含有割合は、特に限定されるものではないが、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。
【0020】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物に含有される界面活性剤、テルペノイド配糖体、食用油脂の質量比率は、乳化組成物の乳化安定性の観点から次式を満たすことを必要とする。
界面活性剤:テルペノイド配糖体=1:30~30:1
テルペノイド配糖体:食用油脂=1:30~30:1
【0021】
本発明における多価アルコールとは、1つの分子内に2個以上の水酸機を有する化合物の総称であり特に限定されるものではないが、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、ソルビタン、キシロース、アラビノース、マンノース、乳糖、砂糖、カップリングシュガー、ブドウ糖、酵素水飴、酸糖化水飴、麦芽糖水飴、麦芽糖、異性化糖、果糖、還元麦芽糖、還元澱粉水飴、蜂蜜等が挙げられる。O/D乳化組成物を構成すること、及び十分な乳化安定性を得るために、好ましくは多価アルコールにグリセリン、ソルビトール、マルチトールのいずれかを含有する。
本発明における多価アルコール水溶液中の水の含有割合は、好ましくは多価アルコールに対して50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
【0022】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物は、多価アルコール又は多価アルコール水溶液中で調製する場合において、多価アルコール又は多価アルコール水溶液中に界面活性剤を溶解させた後、テルペノイド配糖体と食用油脂を添加し、乳化装置を用い乳化することにより得られる。テルペノイド配糖体の添加方法は特に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤を溶解させた多価アルコール又は多価アルコール水溶液中に添加する方法、又は食用油脂中に混合して油相として添加する方法等が挙げられ、より安定な乳化組成物を得る観点で、好ましくは食用油脂中に混合して油相として添加する方法である。
【0023】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物は、十分な乳化安定性と分散性を得ることを可能とするため、好ましくは水中分散時に平均粒子径1.0μm以下の乳化粒子径となるように調製する。乳化粒子径の粒度分布測定法としては、特に限定されるものではないが、例えば、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、動的光散乱法、レーザー回折法等が挙げられ、それぞれの原理に対応した市販の粒度分布計等を用いることができる。本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物を水中に分散させた時の乳化粒子径は、例えば、ベックマンコールター社の粒度分布測定器(L-230)を用いることで容易に測定することができる。
【0024】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物には必要に応じて公知の酸化防止剤を併用してもよい。特に限定されるものではないが、例えば、油溶性酸化防止剤(カンゾウ油抽出物、ゴマ油不けん化物、γ-オリザノール、ナタネ油抽出物、トコフェロール)、水溶性酸化防止剤(L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸エステル、L-アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸、クロロゲン酸、ブドウ種子抽出物、ヒマワリ抽出物、ヤマモモ抽出物、食用カンナ抽出物、ブルーベリー葉抽出物等)、水や油に難溶である酸化防止剤(ドクダミ抽出物、アオイ花抽出物、ピメンタ抽出物等)、金属封鎖剤(グルコン酸、コウジ酸、フィチン酸、ポリリン酸、キチン、キトサン等)、アミノ酸類、クエン酸等の有機酸類又その塩類、リン酸等の無機酸類又その塩類、ヘスペリジン、ヘスペレチン等が挙げられ、これらの群より選ばれる1種又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物には必要に応じて公知の香料を併用してもよい。特に限定されるものではないが、例えば、精油、エキストラクト、オレオレジン、回収フレーバー、単離香料等の天然香料素材やアルコール類、エステル類、アルデヒド類、ケトン類、ラクトン類等の合成香料素材の群より選ばれる1種又は2種以上を混合したものが挙げられ、形態として、油溶性香料、水溶性香料、乳化香料、粉末香料等の香料が挙げられ、これらの群より選ばれる1種又は2種以上併用してもよい。
【0026】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物には必要に応じて公知の高甘味度甘味料を併用してもよい。特に限定されるものではないが、例えば、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、ソーマチン、グリチルリチン、甘草、羅漢果等が挙げられ、これらの群より選ばれる1種又は2種以上併用してもよい。
【0027】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物を調製する乳化装置は、特に限定されるものではないが、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
【0028】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物は、親水性乳化剤を含有する多価アルコール又は多価アルコール水溶液に、油相を添加・攪拌することにより得ることができる。例えば、界面活性剤を含有する多価アルコールを、40~80℃の温度で、ホモミキサーを用い500~20000rpm、好ましくは1000~10000rpmで攪拌し、この中に油相を少量ずつ添加した後、上記の温度を保持したまま1~60分間、好ましくは5~30分間の条件下にて攪拌する。攪拌後、好ましくは高圧ホモジナイザー等を使用する。ホモジナイザーの均質化圧力は5MPa以上であり、好ましくは20MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上であり、最も好ましくは100MPa以上である。テルペノイド配糖体は多価アルコール又は多価アルコール水溶液、油相いずれに添加してもよいが、好ましくは油相に添加する。
【0029】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物を含有する飲食品とは、特に限定されるものではないが、例えば、柑橘果汁や野菜果汁等の果実飲料又は野菜ジュース、コーラ、ジンジャエール、サイダー等の炭酸飲料、スポーツドリンク、ビタミン含有飲料等の清涼飲料水、アルコール飲料、ミネラル含有飲料、コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、抹茶等の嗜好性飲料及びそれらに乳性分を配合した乳含有嗜好性飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、ゼリー、プディング、ムース等のデザート類、ケーキ、クラッカー、ビスケット、パイ、饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含有する焼菓子や蒸菓子等の菓子類、米菓、スナック類、アイスクリームやシャーベット等の冷菓並びに氷菓、チューインガム、ハードキャンディ、ヌガーキャンデー、ゼリービーンズ等を含有する糖菓一般、果実フレーバーソースやチョコレートソース等のソース類、バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類、イチゴジャムやマーマレード等のジャム、菓子パン等のパン、焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ等の調味料、蒲鉾等の練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜、冷凍食品等が挙げられる。食品への使用においては、食品原料及び各種食品添加物に適当な濃度となるように混合し使用してもよい。
以下、本発明の態様を実施例によりさらに記載し、開示する。この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1、比較例1
表1、2に記載の界面活性剤とテルペノイド配糖体を用い、下記記載のO/D乳化組成物調製方法にて、本発明品1~20のO/D乳化組成物、比較品1、2を調製した。
【0031】
【0032】
【0033】
O/D乳化組成物調製方法1
全量1000gのO/D乳化組成物を調製するため、表3又は4に記載の配合割合にて、多価アルコールに界面活性剤及びテルペノイド配糖体を2Lのビーカーに添加し60℃に加温した。ホモミキサーを用い適宜攪拌し、この中に食用油脂を少量ずつ添加した後、上記の温度を保持したまま30分間攪拌し、本発明品又は比較品を調製した。
【0034】
O/D乳化組成物調製方法2
全量1000gのO/D乳化組成物を調製するため、表3又は4に記載の配合割合にて、テルペノイド配糖体と食用油脂を1Lのビーカーに添加し、ホモミキサーを用い適宜攪拌し、この中にテルペノイド配糖体を添加した油相を調製した。別途多価アルコールに界面活性剤を2Lのビーカーに添加し60℃に加温した。ホモミキサーを用い適宜攪拌し、この中にテルペノイド配糖体を添加した油相を少量ずつ添加した後、上記の温度を保持したまま30分間攪拌し、本発明品又は比較品を調製した。
【0035】
O/D乳化組成物調製方法3
全量1000gのO/D乳化組成物を調製するため、表3又は4に記載の配合割合にて、テルペノイド配糖体と食用油脂を1Lのビーカーに添加し、ホモミキサーを用い適宜攪拌し、この中にテルペノイド配糖体を添加した油相を調製した。別途多価アルコールに界面活性剤を2Lのビーカーに添加し60℃に加温した。ホモミキサーを用い適宜攪拌し、この中にテルペノイド配糖体を添加した油相を少量ずつ添加した後、上記の温度を保持したまま30分間攪拌した。攪拌終了後水を加え、60℃で高圧ホモジナイザー処理をし、本発明品又は比較品を調製した。
【0036】
乳化安定性評価方法
得られた本発明品1~20のO/D乳化組成物、比較品1、2について、25℃の恒温槽に1ヶ月保管、又は55℃の恒温槽に1週間保管し乳化安定性を評価した。性状については、乳化又は分離の状態を目視で観察することで、下記評価基準にて評価した。その結果を表3又は4に記載した。
【0037】
評価基準
20:外観に変化は見られない。
15:外観に大きな変化は見られないが下層部に濃度勾配が見られる。
10:油相の分離は見られないが全体的に濃度勾配が見られる。
5:上部に若干の油滴が観察される。
1:油相と水相が完全に分離している。
【0038】
【0039】
【0040】
処方例1 缶コーヒー
コーヒー抽出液(Bx3.0) 30.0g
牛乳 20.0g
乳化剤 0.1g
重曹 0.1g
本発明品8 0.1g
水 残部
合計 100.0g
上記処方に従って各成分を混合し、加熱溶解後、ホモジナイザー(15MPa)にて均質化した。缶に充填後、121℃で30分間レトルト殺菌した。得られた缶コーヒーは油脂の分離もなく安定な状態であった。
【0041】
処方例2 ヨーグルト
A:水 35.3g
脱脂粉乳 9.0g
無塩バター 5.0g
B:水 47.0g
HMペクチン 0.5g
本発明品9 0.2g
Aの各成分を混合して50℃で加熱溶解した。これを、80℃で10分間加熱して調製したBの混合物に配合して、全量を水にて97gに調製した。次いでホモジナイザー(15MPa)にて均質化し、90℃で5分間殺菌した。40℃まで冷ました後、スターターヨーグルト3gを加え容器に充填し、40℃恒温器にて6時間発酵させてヨーグルトを調製した。得られたヨーグルトは油脂の分離もなく安定な状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のテルペノイド配糖体含有O/D乳化組成物を用いることにより、長期間保存される飲食品中等、経時的な乳化不安定化が懸念される条件下においても安定的に使用することができ、品質の良好なテルペノイド配糖体を含有する飲食品を提供することが可能となる。