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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】自動ドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/73 20150101AFI20240627BHJP
   E05F 15/74 20150101ALI20240627BHJP
【FI】
E05F15/73
E05F15/74
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020113495
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022012015
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 絢一
(72)【発明者】
【氏名】林 孝次郎
(72)【発明者】
【氏名】神宮 貴志
(72)【発明者】
【氏名】岸本 陽
(72)【発明者】
【氏名】河路 直樹
(72)【発明者】
【氏名】飯白 豊充
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-167435(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043511(WO,A1)
【文献】特開2009-007801(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0023788(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内と室外とを隔てる引戸と、
前記引戸近傍に設けられた検知エリア内の人又は物を検知する保護センサと、
前記引戸の開又は閉指示が入力される指示入力部と、
前記引戸を開又は閉駆動制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記指示入力部に開又は閉指示が入力されたときに前記引戸を全開状態又は全閉状態にする通常運転により前記引戸を駆動制御でき、
前記保護センサが検知状態であり、且つ前記指示入力部に開又は閉指示が入力されている場合、前記制御部は前記指示入力部に開又は閉指示が入力されている前記引戸を開又は閉駆動制御し、
前記保護センサが検知状態であり、且つ前記指示入力部に開又は閉指示が入力されているときに、前記指示入力部に開又は閉指示が入力されている間は前記引戸を開又は閉駆動制御している状態で、前記保護センサが検知状態から非検知状態に移行した場合、前記制御部は前記引戸の運転方式を前記通常運転に変更する、自動ドア装置。
【請求項2】
前記保護センサが検知状態であり、且つ前記指示入力部に開又は閉指示が入力されている間、前記制御部が前記引戸を開又は閉駆動制御するときに、前記引戸が動くことを報知する報知部を備える、請求項に記載の自動ドア装置。
【請求項3】
室内と室外とを隔てる引戸と、
前記引戸の戸先の近傍に設けられた閉検知エリア内の人又は物を検知する閉保護センサと、
前記室内に設けられ前記引戸の閉指示が入力される閉指示入力部と、
前記引戸を閉駆動制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記閉指示入力部に閉指示が入力され、且つ前記閉保護センサが検知状態のときに、前記閉指示入力部に閉指示が入力されている間だけ前記引戸を閉駆動制御するインチング運転により前記引戸を閉じ
前記制御部は、前記閉指示入力部に閉指示が入力されたときに前記引戸を全閉状態にする通常運転により前記引戸を駆動制御でき、
前記インチング運転により前記引戸を閉駆動制御しているときに前記閉保護センサが検知状態から非検知状態に移行した場合、前記制御部は、前記引戸の運転方式を前記インチング運転から前記通常運転に変更する、自動ドア装置。
【請求項4】
前記インチング運転により前記制御部が前記引戸を閉駆動制御する場合、前記閉指示入力部に閉指示を入力し続けるよう促す報知部を備える、請求項に記載の自動ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、公共の多機能トイレ等の特定の施設では利用者の出入りの利便性を向上させるために、利用者の存在をセンサにより検知し、検知結果に基づいて引戸を開閉する自動ドア装置が用いられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-163408号公報
【0004】
特許文献1に記載されているような自動ドア装置は、トイレの内外にそれぞれ開閉スイッチ及びセンサを備えている。利用者がトイレを利用する場合、利用者はトイレ内に入ってからトイレ内の開閉スイッチを操作して引戸を閉じる。自動ドア装置は、トイレ内外のセンサにより人又は物の存在を検知し人又は物が特定の検知範囲内に存在しないことを確認して引戸を閉じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当然のことながら、引戸近傍にセンサの検知範囲を設定して人等の安全性を確保することは重要である。一方でセンサの検知結果にしたがって画一的に引戸を操作すると、例えば引戸の移動経路から外れた位置にいる人又は物をセンサが検知して引戸を閉じられない、利用者自身がセンサの検知範囲内に入ってしまい引戸を閉じられない等の様々な要因により利用者の意図通りに引戸が開閉しない場合がある。
【0006】
本開示は、安全性を確保しつつ、より利用者の意図に則して引戸を制御でき利便性をより高められる自動ドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は一態様において、室内と室外とを隔てる引戸と、引戸近傍に設けられた検知エリア内の人又は物を検知する保護センサと、引戸の開又は閉指示が入力される指示入力部と、引戸を開又は閉駆動制御する制御部とを備え、制御部は、保護センサが検知状態であり、且つ指示入力部に開又は閉指示が入力されている間、引戸を開又は閉駆動制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動ドア装置の正面図である。
図2】自動ドア装置が設置された多機能トイレの平面図である。
図3】自動ドア装置の制御機構のブロック図である。
図4】自動ドア装置の上面図である。
図5】自動ドア装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0010】
実施形態では多機能トイレの出入口に設けられた自動ドア装置について説明する。自動ドア装置は、多機能トイレ以外にも例えば工場の搬出入口のように自動ドア装置の引戸を挟んで両側に開閉スイッチが配置される様々な場所に適用できる。
【0011】
図1は自動ドア装置の正面図であり、図2は自動ドア装置が設置された多機能トイレの平面図である。図1及び図2に示すように自動ドア装置10は、四方が壁12により囲まれた多機能トイレ14の出入口16に設置される。自動ドア装置10は、固定部18と、引戸20と、無目22とを備える。固定部18は、壁12に固定されており無目22と床面との間を視覚的に遮断する。引戸20は固定部18に対して水平方向に、開状態と閉状態との間で移動する。引戸20は、正面(図1の方向)から見たときに開状態において固定部18と重なり、引戸20が開状態にあるとき固定部18の横の出入口16(開口)が開く。引戸20は、閉状態において固定部18と横並びになり出入口16を閉じる。なお、この例では引戸20は多機能トイレ14の室内側に設けられており、開状態において固定部18の室内側の面と対向するよう配置されている。しかしながら、引戸20を室外側に設けて開状態において固定部18の室外側の面と対向するよう配置してもよい。
【0012】
多機能トイレ14内には、利用者が利用する洗面台24、便器26、おむつ替え台28等の設備が設けられている。本実施形態では、洗面台24、及び便器26は自動ドア装置10から離れた個室の奥側に配置されるものとする。また本実施形態では、おむつ替え台28は、図示のように個室の手前側(自動ドア装置側)に配置されるものとする。自動ドア装置10の近傍には、後述する自動ドア装置10の保護センサの検知エリア30が設けられている。検知エリア30は、自動ドア装置の開口の室外側にある室外側閉検知エリアS2と、開口の室内側にある室内側閉検知エリアS3と、開検知エリアS4とを含む。検知エリアについては、無目22の構成と共に後述する。以下、本明細書において、室外側閉検知エリアS2と室内側閉検知エリアS3とを区別しない場合には、「閉検知エリアS2,S3」と総称することがある。
【0013】
自動ドア装置10は、利用者が自動ドア装置10に対して引戸20の開指示又は閉指示を入力する指示入力部36を備える。指示入力部36は、室外側に設けられた室外側指示入力部36oと、室内側に設けられた室内側指示入力部36iとを含む。室内側指示入力部36i及び室外側指示入力部36oは、それぞれ出入口16付近に設けられる。室外側指示入力部36o、及び室内側指示入力部36iの各々は、開ボタン38と閉ボタン40とを備える。開ボタン38及び閉ボタン40は、利用者が引戸20の開指示又は閉指示を自動ドア装置に入力するときに押される。以下、本明細書において、開ボタン38のうち室内側の開ボタンを指す場合には開ボタン38iと称し、室外側の開ボタンを指す場合には開ボタン38oと称することがある。閉ボタン40についても、同様に閉ボタン40i又は閉ボタン40oと称することがある。
【0014】
自動ドア装置10は、出入口16内に検知エリアS1を有する補助光電センサ42を備える。補助光電センサ42は、投光部44と、受光部46とを含む。投光部44と受光部46は、出入口16を挟んで幅方向反対側に配置され、両者の間が補助光電センサ42の検知エリア(補助検知エリア)S1となる。補助光電センサ42は、投光部44からの光を受光部46に向けて照射し、受光部46で光を受け取れたか(検知できたか)により、補助検知エリアS1内に人又は物が存在するかを検知する。自動ドア装置10は、補助光電センサ42の検知結果に基づいて補助光電センサ42の検知エリアS1内に人又は物が存在するかを検知できる。
【0015】
無目22は、出入口16の上部に配置され、上述した保護センサ48等を含む引戸20の制御機構を内蔵する。無目22の表面には、出入口16の室外側に検知エリア(室外側閉検知エリアS2)を有する室外側閉保護センサ50oと、出入口16の室内側に検知エリア(室内側閉検知エリアS3)を有する室内側閉保護センサ50iと、開状態の引戸20が待機する位置と重複する検知エリア(開検知エリアS4)を有する開保護センサ52とが設けられている。本明細書において、室外側閉保護センサ50oと、室内側閉保護センサ50iと、開保護センサ52とを総称して保護センサ48と称することがある。また、室外側閉保護センサ50oと、室内側閉保護センサ50iとを総称して、閉保護センサ50と総称することがある。
【0016】
各保護センサ48は、対応する検知エリアS2~S4に向けて近赤外線を投射し、その反射光を受光する近赤外線センサにより構成される。より具体的には保護センサ48は、検知エリアS2~S4を複数の小検知エリアに分割し、それぞれの小検知エリアに対応させた複数の近紫外線センサを備える。基本的には保護センサ48は、いずれかの小検知エリア内で人又は物が検知された場合、検知エリアS2~S4内で人又は物が検知されたものと判断する。
【0017】
図3は、自動ドア装置の制御機構のブロック図である。
【0018】
図3に示すように自動ドア装置10は、多機能トイレ自動ドア制御器(以下、単に「ドア制御器」ということがある)54と、ドアコントローラ56とを備える。指示供給制御部としてのドア制御器54は、例えば一般的な建物の出入口用の自動ドア装置に備えられていない、多機能トイレに特有の機能を実現するための制御器である。このような機能としては、開閉ボタン38,40の入力結果を受けドアコントローラ56に対して引戸20の駆動指示を供給する機能、及び後述する報知部58を介して利用者に所定の通知を行う機能がある。またドア制御器54が、必要に応じて保護センサ48の検知結果を読み出しこれに基づいてドアコントローラ56に対して引戸20の駆動指示を供給してもよい。
【0019】
駆動制御部としてのドアコントローラ56は、保護センサ48の検知結果、補助光電センサ42の検知結果、及びドア制御器54からの駆動指示に基づいて引戸20の駆動源となるモータ60を制御する。ドアコントローラ56は、ドア制御器54を介して開閉ボタン38,40の入力結果を受け取り、引戸20を施錠するための電気錠62を制御する。
【0020】
ドア制御器54及びドアコントローラ56は、一体として自動ドア装置10の制御部を構成する。ドア制御器54及びドアコントローラ56は、同一のハードウェア及びソフトウェアにより構成されてもよいし、別々のハードウェア及びソフトウェアにより構成されてもよい。例えば一般的な建物の出入口用の自動ドア装置を多機能トイレの自動ドア装置として転用する場合、一般的な建物の出入口用の自動ドア装置に対してドア制御器54及び指示入力部36を追加することで自動ドア装置10を構成してもよい。
【0021】
報知部58は、利用者を含む自動ドア装置10の周囲にいる人に向けて所定の通知を行う。報知部58としては、聴覚的に人に通知を行うスピーカー、視覚的に人に通知を行う電光掲示板等を用いることができる。報知部58から出力される通知は、予め決定された複数種類の通知の中から、ドア制御器54が状況に応じて選択した通知である。このような通知としては、引戸20が駆動する旨の通知、引戸20の操作方法のガイダンス、室内で異常が発生した旨の通知等がある。
【0022】
本実施形態では図3に示す各構成のうち、ドアコントローラ56、ドア制御器54、モータ60、保護センサ48、及び報知部58は無目22内に内蔵されている。各構成は無目22内に内蔵される必要はなく、ドア制御器54を指示入力部36と共に壁内に埋め込んだり、報知部58を室内の壁に固定したりする等、様々な配置が想定される。
【0023】
次に、自動ドア装置10の基本的な動作について説明する。
【0024】
多機能トイレ14の室内に人がいない状態では、自動ドア装置10は引戸20を閉状態に保持する。利用者が引戸20の室外側に到着して室外側指示入力部36oの開ボタン38oを一度押下すると、開ボタン38oを介して入力された開指示は室外側指示入力部36oからドア制御器54に供給される。ドア制御器54は、ドアコントローラ56に対して引戸20を開くよう開駆動指示を供給する。ドアコントローラ56は、開保護センサ52により開検知エリアS4内に人又は物が存在しないことを確認し、モータ60を駆動して引戸20を閉状態から開状態に通常運転で移行させる。ドア制御器54は、インチング運転及び通常運転の二種類の運転方式により引戸20を駆動させる。インチング運転は、利用者が指示入力部36のボタンを押している間だけ引戸20を駆動制御する運転方式である。つまり、ドア制御器54は、利用者による指示入力部36のボタンの操作に応じてインチング運転、又は寸動運転により引戸20を開閉させる。インチング運転により引戸20が全閉状態又は全開状態になった場合、ドア制御器54は運転方式を通常運転に戻してもよい。通常運転は、利用者が一度ボタンを押して離せば、押されたボタンに対応する駆動指示にしたがって引戸20を連続運転により、全閉状態又は全開状態に駆動制御する運転方式である。指示入力部36に開指示又は閉指示が入力されて一旦、通常運転が開始すると、いずれかの保護センサ48が検知状態になってドア制御器54が優先信号を発しない限り、ドアコントローラ56は引戸20が全閉状態又は全開状態になるまで引戸20を駆動し続ける。これにより出入口16が開き利用者は室内に入れるようになる。入室後、利用者は室内側指示入力部36iの閉ボタン40iを一度押下する。これによりドア制御器54に閉指示が供給される。ドア制御器54は、ドアコントローラ56に対して引戸20を閉じるよう閉駆動指示を供給する。ドアコントローラ56は、室内側閉保護センサ50i及び室外側閉保護センサ50oにより室内側閉検知エリアS3及び室外側閉検知エリアS2内に人又は物が存在しないことを確認し、かつ補助光電センサ42により補助検知エリアS1内に人又は物が存在しないことを確認した上でモータ60を駆動して引戸20を開状態から閉状態に通常運転により移行させる。これにより、利用者の安全を確保した上で、引戸20を開閉できる。一連の動作中、補助検知エリアS1内を検知する補助光電センサ42が検知状態になると、ドア制御器54は、ドアコントローラ56を介してモータ60を停止、又は逆転させることで引戸20の閉動作を中止する。
【0025】
次に、自動ドア装置10のさらなる動作について説明する。
【0026】
〔第1動作〕
図2を参照して説明したように、室内側指示入力部36iは出入口16近傍に設けられており、多機能トイレ14の設計によっては室内側指示入力部36iの位置と、室内側閉検知エリアS3の位置とが上面視において近接するか、重複する場合がある。例えば利用者が車椅子や歩行補助器を利用している場合、利用者自身が室内側閉検知エリアS3外にいても、車椅子等の一部が室内側閉検知エリアS3内に入ってしまうことが考えられる。このような状態では、室内側閉保護センサ50iにより室内側閉検知エリアS3内で人又は物が検知される。従来技術の自動ドア装置は、このような状態で閉ボタンが押されても引戸を閉じないように構成される。
【0027】
また、例えば多機能トイレ14が人通りの多い通路に沿って設けられている場合、利用者とは無関係な人又は物が室外側閉検知エリアS2内に入ることもある。従来技術の自動ドア装置10は、利用者と無関係な人又は物が室外側閉検知エリアS2内に存在するときに利用者が引戸20を閉じようとしても、引戸20を閉じないように構成される。
【0028】
また、例えば多機能トイレ14の室内側にあるおむつ替え台28や清掃道具等が開検知エリアS4に存在することも考えられる。従来技術の自動ドア装置は、開検知エリア内を検知する開保護センサが人又は物を検知している状態(以下、単に「センサが検知状態にある」という)で、利用者が室内側指示入力部36iの開ボタンを一度押下しても引戸を開かないよう構成される。特に開検知エリアが引戸の移動経路に対して大きいマージンをもって設定されている場合、引戸が開検知エリア内の物に当たることがないにも関わらず引戸が開けないことがある。
【0029】
実施形態による自動ドア装置10は、指示入力部36に開指示又は閉指示が入力され、且つ保護センサ48が検知状態の場合、インチング運転により引戸20を開閉する。インチング運転は、指示入力部36の閉ボタン40が押下されている間だけ、モータ60を駆動させる運転形態である。ドア制御器54は、閉ボタン40が押下されている間だけドアコントローラ56に対してモータ60の駆動指示を供給し、閉ボタン40が離されるとモータ60の駆動指示を停止する。これにより、利用者の意図通りに引戸20を駆動できる。
【0030】
例えば車椅子を利用している利用者が室内に入り、車椅子の一部が室内側閉検知エリアS3に入っている状態で引戸20を閉じるために室内側の閉ボタン40iを一度押下したとする。自動ドア装置10は、室内側閉保護センサ50iにより室内側閉検知エリアS3内に車椅子の存在を検知する。自動ドア装置10は、利用者が閉ボタン40iを押下し続けている間だけ引戸20を開状態から閉状態に向けて駆動する。利用者が閉ボタン40iを離すとただちに自動ドア装置10は引戸20を停止させる。ドア制御器54は、室内側閉検知エリアS3内を検知する室内側閉保護センサ50iが検知状態にあるときに、室内側の閉ボタン40iが一度押されたときに、閉ボタン40iを押し続けている間だけ引戸20が駆動する旨、及び引戸20に接触しないよう注意する旨等のアナウンスを、報知部58を介して行ってもよい。またインチング運転中は、通常運転時よりも低速で引戸20を駆動させるのがよい。
【0031】
利用者が室内側閉検知エリアS3付近にいる場合、室外側閉検知エリアS2、及び室内側閉検知エリアS3は利用者の視界の範囲内にある。したがって、利用者は目視により室外側閉検知エリアS2、及び室内側閉検知エリアS3の安全を確認しながら自動ドア装置10を制御できる。これにより、利用者の意図に則して引戸20を開閉できるようになり利便性を向上させられ、同時に安全性を確保できる。
【0032】
また、特に開検知エリアS4が室内側に設けられている設計では、開検知エリアS4も利用者の視界の範囲内にある。したがって、開検知エリアS4内を検知する開保護センサ53が検知状態のときにインチング運転を許容することによっても同様の効果が得られる。
【0033】
インチング運転を行っている状態で、検知エリア30内の人又は物が移動し、保護センサ48が非検知状態になった場合、ドア制御器54は、ドアコントローラ56に対して通常運転を実施するよう指示を出してもよい。具体的にはドア制御器54は、保護センサ48の検知状態が変化したか否かを判断し、判断結果に基づいて運転方式を変更する。つまりドア制御器54は判断部としての機能も有する。これにより、引戸20の運転方式がインチング運転から通常運転に変更され、閉ボタン40が離されても引戸20が駆動し続けて全閉状態に移行する。運転方式が変更された場合、ドア制御器54は、閉ボタン40を離しても引戸20を全閉状態に移行させることができる旨を、報知部58を介してアナウンスしてもよい。
【0034】
どの保護センサ48が検知状態のときにインチング運転を許容するかについては、自動ドア装置10が適用される環境(特に、室内側指示入力部36iを操作する人の視界)に応じて適宜設定できるようにしてもよい。
【0035】
〔第2動作〕
自動ドア装置10は、第1動作に加えて、又は第1動作に替えて以下の第2動作を行ってもよい。自動ドア装置10は、室外側閉保護センサ50oが検知状態で、室内側指示入力部36iの閉ボタン40iが押された場合、室外側閉保護センサ50oの検知結果に関わらず引戸20を閉じてもよい。室外側閉保護センサ50o検知状態で、室内側指示入力部36iの閉ボタン40iが押される事例としては、利用者が室内から引戸20を閉じようとしているにも関わらず、室外側の通路等に利用者とは無関係な人又は物が存在する場合がある。従来の自動ドア装置では、このような状況においては室内側の閉スイッチが押されても引戸を閉じない。これに対して自動ドア装置10のドア制御器54は、室外側閉保護センサ50oの検知結果に関わらず、ドアコントローラ56に対して引戸20を閉じるために閉駆動指示を供給する。図2に示すように室外側閉検知エリアS2は、室内側指示入力部36iが設けられている位置から視認できる。したがって、利用者が視認できる室外側閉保護センサ50oの検知結果に関わらず引戸20を閉じても安全性を確保できる。これにより安全性を確保しつつ、利便性を高められる。
【0036】
ドアコントローラ56は、補助光電センサ42の検知結果も参照し、室外側閉保護センサ50o及び補助光電センサ42が検知状態である場合には、安全性を確保する観点から引戸20を駆動しない。つまり自動ドア装置10は、第2動作において補助光電センサ42が非検知状態になった場合にのみ引戸20を閉駆動する。
【0037】
また、ドア制御器54は、室外側閉保護センサ50oが検知状態にあるときに引戸20を閉駆動する場合、引戸20の速度を通常運転時の速度から低速に変化する指示をドアコントローラ56に供給してもよい。これにより安全性をさらに高められる。
【0038】
また、ドア制御器54は、第2動作を行う際に引戸20を閉じる旨、及び引戸20に接触しないよう注意する旨のアナウンスを、報知部58を介して行ってもよい。また、ドア制御器54は、引戸20を閉じる際に引戸20を閉じる旨に加えて、引戸20を停止又は開駆動制御させる操作方法を、報知部58を介して報知してもよい。この場合、ドア制御器54は、例えば室外側指示入力部36oの開ボタン38oを押すことで引戸20を停止又は開駆動制御できる旨を、報知部58を介してアナウンスしてもよい。また例えばドア制御器54は、開ボタン38oを点滅させる等の視覚的手段により操作方法を報知してもよい。つまり開ボタン38o等の指示入力部36が報知部の一部をなすことも想定される。これにより、利用者に加えて通行者に対しても操作方法を知らせることができる。
【0039】
このような第2動作により、利用者とは無関係な人又は物が検知エリア30内にいる場合において、安全性を確保しつつ利用者の利便性を高められる。
【0040】
〔第3動作〕
自動ドア装置10は、第1動作及び第2動作に加えて、又は第1動作及び第2動作に替えて以下の第3動作を行ってもよい。自動ドア装置10は、指示入力部36に開指示又は閉指示が入力され、且つ保護センサ48が検知状態の場合、保護センサ48が非検知状態になるまで引戸20を駆動しないよう、制御を行ってもよい。具体的には、いずれかの保護センサ48が検知状態で、室内側指示入力部36i又は室外側指示入力部36oに開指示又は閉指示が入力された場合、ドア制御器54は、保護センサ48が非検知状態になるまで、ドアコントローラ56に対する引戸20の駆動指示を保留する。保護センサ48が非検知状態になった後、ドア制御器54は、ドアコントローラ56に対して、指示入力部36に入力された指示に応じた引戸20の駆動指示を供給する。
【0041】
このようにドア制御器54からドアコントローラ56に対する駆動指示を保留することで、保護センサ48が非検知状態になった後に自動的に引戸20を駆動できる。これにより、利用者が何度も指示入力部36を操作する必要がなくなる。
【0042】
また、ドア制御器54は、第3動作にしたがってドアコントローラ56に対する駆動指示を保留している間、検知エリア30内で人又は物が検知されなくなったら引戸20を駆動させる旨のアナウンスを、報知部58を介して行ってもよい。
【0043】
また、ドア制御器54は、第3動作にしたがって引戸20を駆動している間に、再び検知エリア30内で人又は物が検知された場合、ドアコントローラ56に対して引戸20を停止させる指示を供給してもよい。さらにこの場合、ドア制御器54は、検知エリア30内の人又は物が検知されなくなった後、利用者からの開指示又は閉指示を待たずに引戸20の駆動を再開してもよい。これにより、利用者は、引戸20が停止する度に指示入力部36を操作する必要がなくなる。
【0044】
〔第4動作〕
自動ドア装置10は、第1動作乃至第3動作に加えて、又は第1動作乃至第3動作に替えて以下の第4動作を行ってもよい。自動ドア装置10は、指示入力部36に開指示又は閉指示が入力され、且つ保護センサ48が検知状態の場合、所定時間経過するまで引戸20を駆動しないよう、制御を行ってもよい。具体的には、いずれかの保護センサ48が検知状態で、室内側指示入力部36i又は室外側指示入力部36oに開指示又は閉指示が入力された場合、ドア制御器54は、所定時間が経過するまでドアコントローラ56に対する引戸20の駆動指示を保留する。所定時間は、利用者が自身の安全を確保できる位置に移動するために要する時間(例えば、2~10秒)を考慮して決定される。所定時間が経過したら、ドア制御器54は、指示入力部36に入力された指示に応じた引戸20の駆動指示をドアコントローラ56に供給する。
【0045】
所定時間の計測は、開指示又は閉指示が入力されたときに開始してもよいし、例えば利用者が再び開指示又は閉指示が入力したときに開始してもよい。いずれの場合もドア制御器54は、所定時間の経過後に引戸20が駆動する旨、又は所定時間の計測を開始するためには再び開指示又は閉指示を入力する必要がある旨のアナウンスを、報知部58を介して行ってもよい。この例では、ドア制御器54及び報知部58が案内部として機能する。
【0046】
このように所定時間が経過するまで引戸20を駆動しないようにすることで、指示入力部36を操作してから利用者が自身の安全を確保するまで引戸20の開閉を遅らせられる。第4動作は、例えば指示入力部36がいずれかの検知エリア30内に設けられているか、検知エリア30付近に設けられている場合に特に有益である。
【0047】
このようにドア制御器54からドアコントローラ56に対する駆動指示を所定時間が経過するまで供給しないようにすることで、利用者が安全を確保する時間的猶予が得られる。これにより、例えば自動ドア装置10が狭い空間に設置される等の理由により、指示入力部36が検知エリア30内に設けられていたとしても、安全性を確保しながら利便性を向上させられる。
【0048】
〔第5動作〕
自動ドア装置10は、引戸20を開駆動する際に、以下の第5動作で説明するように開検知エリアS4の様態を状況に応じて変化させてもよい。検知エリアの様態とは、検知エリアの形状、面積、又は位置の少なくともいずれかをいう。つまり自動ドア装置10は、引戸20の位置等の状況に応じて、検知エリアS4の面積等の様態を予め決定された様態に変化させる。状況によっては自動ドア装置10は、検知エリアS4の様態を変化させず、初期の様態に固定したまま検知を行うこともある。開検知エリアS4を状況に応じて変化させる制御は、第1乃至第4動作に基づいて引戸20を開駆動する際に行っても良いし、第1乃至第4動作によらず単独で実行してもよい。
【0049】
自動ドア装置10のドア制御器54は、室内側指示入力部36i又は室外側指示入力部36oの開ボタン38が押されたときに、開検知エリアS4の様態を変化させる。この場合、ドア制御器54は、検知エリア制御部として機能する。以下、変化した開検知エリアを「可変開検知エリアS40」と称する。図2に示す例では、閉状態にある引戸20の戸尻側の空間が開検知エリアS4として定められており、開保護センサ52は開検知エリアS4全体内の人又は物を検知する。しかしながら、例えば開検知エリアS4の戸尻側端部近傍に人又は物が存在している状態で引戸20を開いたとしても、直ちに安全性が損なわれない場合が多い。したがって自動ドア装置10は、開検知エリアS4を可変にして、引戸20の戸尻側端部から所定距離だけを可変開検知エリアS40とし、それ以外の領域を可変開検知エリアS40から除外する。つまり、ドア制御器54は検知エリアの面積を変化させる。
【0050】
図4は、自動ドア装置の上面図であり、可変開検知エリアを示す。図中、破線は理論上、開保護センサにより検知可能なエリア(図2の開検知エリアS4)を示す。図4に示すように可変開検知エリアS40は、引戸20の戸尻側の端から一定の距離L1の範囲内のみであり、開検知エリアS4よりも小さい。また、ドア制御器54は、引戸20の移動に伴って可変開検知エリアS40の位置を変化させる。なお、引戸20の主面方向に沿った可変開検知エリアS40の幅W1は固定され、常に一定である。したがって自動ドア装置10は、引戸20の戸尻側の端から離れた位置で人又は物が検知されている場合でも、引戸20を開ける。これにより、安全性を確保しつつ、利便性を高められる。可変開検知エリアS40の面積を変化させる場合、ドア制御器54は、引戸20の戸尻から一定の距離L1の範囲内にある小検知エリアに対応する近赤外線センサのみを稼働させ、それ以外の近赤外線センサを停止させる。これにより可変開検知エリアS40が小さくなる。ドア制御器54は、可変開検知エリアS40の位置を変化させる場合、引戸20の移動に伴って稼働又は停止させる近赤外線センサを順次切り替える。
【0051】
また、可変開検知エリアS40の面積を変化させて、引戸20の戸尻と共に移動させることは、引戸20の戸尻側の端が通過した箇所(引戸の移動方向とは反対側のエリア)を、可変開検知エリアS40から除くことを意味する。引戸20が開いている際に、引戸20の戸尻側の端が通過した箇所内で人又は物が検知されても、直ちに安全性が損なわれないと考えられる。したがって、引戸20の移動に伴って可変開検知エリアS40から一部のエリアを除いても、安全性を確保しつつ、利便性を高められる。
【0052】
また、第5動作において、室外側指示入力部36oの開ボタン38が押された場合に限り、自動ドア装置10は開検知エリアS4を可変にせず、全ての近紫外線センサを稼働して開検知エリアS4を固定してもよい。この場合、外側からは開検知エリアS4が視認できないため、開検知エリアS4を固定することで安全性を確保できる。
【0053】
〔第6動作〕
自動ドア装置10は、引戸20を閉駆動する際に、以下の第6動作で説明するように閉検知エリアS2,S3を状況に応じて変化させてもよい。閉検知エリアS2,S3を状況に応じて変化させる制御は、第1乃至第4動作に基づいて引戸20を閉駆動する際に行っても良いし、第1乃至第4動作によらず単独で実行してもよい。また、自動ドア装置10が引戸20を開駆動する際には第5動作によって開き、引戸20を閉駆動する際には第6動作によって閉じてもよい。
【0054】
自動ドア装置10のドア制御器54は、室内側指示入力部36i又は室外側指示入力部36oの閉ボタン40oが押されたときに、閉検知エリアS2,S3を可変にする。以下、変化した有効になっている閉検知エリアを「可変閉検知エリアS50」と称する。図2に示す例では、開状態にある引戸20の戸先側の室内外の空間が閉検知エリアS2,S3として定められており、閉保護センサ50は閉検知エリアS2,S3全体内の人又は物を検知する。しかしながら、例えば閉検知エリアS2,S3の戸先側端部近傍に人又は物が存在している状態で引戸20を閉じたとしても、直ちに安全性が損なわれない場合が多い。したがって自動ドア装置10は、閉検知エリアS2,S3を可変にして、引戸20の戸先側端部から所定距離だけが可変閉検知エリアS50とし、それ以外の領域を可変閉検知エリアS50から除外する(つまり無効にする)。
【0055】
図5は、自動ドア装置の上面図であり、可変閉検知エリアを示す。図中、破線は理論上、閉保護センサにより検知可能なエリア(図2の閉検知エリアS2,S3)を示す。なお、図5では室内側閉検知エリア及び室外側閉検知エリアの両方が可変となっているが、一方のみ閉検知エリアを可変にしてもよい。図5に示すように可変閉検知エリアS50は、引戸20の戸先側の端から一定の距離L2の範囲内のみであり、かつ可変閉検知エリアS50は引戸20の移動に伴って検知可能なエリア内で移動する。なお、引戸20の主面方向に沿った可変閉検知エリアS50の幅W2は固定され、常に一定である。したがって自動ドア装置10は、引戸20の戸先側の端から離れた位置で人又は物が検知されている場合でも、引戸20を閉じられる。これにより、安全性を確保しつつ、利便性を高められる。可変閉検知エリアS50を変化させる場合、ドア制御器54は、引戸20の戸先から一定の距離L2の範囲内にある小検知エリアに対応する近赤外線センサのみを稼働させ、それ以外の近赤外線センサを停止させる。ドア制御器54は、引戸20の移動に伴って稼働又は停止させる近赤外線センサを切り替える。
【0056】
また、可変閉検知エリアS50を可変にして、引戸20の戸先と共に移動させることは、引戸20の戸先側の端が通過した箇所(引戸の移動方向とは反対側のエリア)を、可変閉検知エリアS50から除くことを意味する。引戸20が閉じている際に、引戸20の戸先側の端が通過した箇所内で人又は物が検知されても、直ちに安全性が損なわれないと考えられる。したがって、引戸20の移動に伴って可変閉検知エリアS50から一部のエリアを除いても、安全性を確保しつつ、利便性を高められる。
【0057】
また、第6動作において、指示入力部36に閉指示が入力されること以外の要因で引戸20を閉駆動する際には、閉検知エリアS2,S3を可変にせず、全ての近紫外線センサを稼働して閉検知エリアS2,S3を固定してもよい。指示入力部36に閉指示が入力されること以外の要因で引戸20を閉駆動する場合としては、例えば利用者が退室後に引戸20を閉じ忘れ、引戸20が所定時間以上開いている場合が想定される。このような場合、付近に利用者がいないことが想定されるため、自動ドア装置10は閉検知エリアS2,S3を固定し、固定された閉検知エリアS2,S3内の検知結果に基づいて引戸20を閉駆動する。
【0058】
以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0059】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0060】
10 :自動ドア装置
20 :引戸
30 :検知エリア
36 :指示入力部
36i :室内側指示入力部
36o :室外側指示入力部
42 :補助光電センサ
48 :保護センサ
50 :閉保護センサ
50i :室内側閉保護センサ
50o :室外側閉保護センサ
52 :開保護センサ
54 :多機能トイレ自動ドア制御器
56 :ドアコントローラ
58 :報知部
S1 :補助検知エリア
S2 :室外側閉検知エリア
S3 :室内側閉検知エリア
S4 :開検知エリア
S40 :可変開検知エリア
S50 :可変閉検知エリア
図1
図2
図3
図4
図5