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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】走行支援方法及び走行支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240627BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240627BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240627BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240627BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/04
B60W60/00
B60W30/09
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020113925
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012239
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
(72)【発明者】
【氏名】松下 泰宏
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219868(JP,A)
【文献】特開2012-065222(JP,A)
【文献】特開2017-219427(JP,A)
【文献】特開2007-140992(JP,A)
【文献】特開2019-147487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲の道路情報を取得する取得部と接続されたコントローラを制御する走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記道路情報に基づいて、
前記自車両の走路上であって前記自車両の進行方向に位置する、前記自車両と他車両がすれ違うのに必要な最小道路幅未満の大きさの道路幅を有する狭路区間を検出し、
前記狭路区間を挟んで前記自車両の反対側で前記狭路区間に隣接し、前記最小道路幅以上の大きさの道路幅を有する広路区間を検出し、
前記反対側において前記狭路区間から第1所定距離以上離れた位置にある、前記自車両に対向する対向車両を検出し、
前記広路区間内であって前記狭路区間から前記第1所定距離以内の位置に、前記自車両が走行する車線上において前記自車両の走行を妨げる阻害要因が発生するか否かを判定し、
前記対向車両が検出され、かつ、前記阻害要因が発生すると判定された場合、前記狭路区間の手前で前記自車両を停車させること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記対向車両が検出され、かつ、前記阻害要因が発生しないと判定された場合、
前記狭路区間に前記自車両が到着するタイミングを第1タイミングとし、
前記狭路区間から前記第1所定距離の位置に前記対向車両が到着するタイミングを第2タイミングとし、
前記第1タイミングが前記第2タイミングよりも遅い場合、又は、前記第1タイミングと前記第2タイミングが同時である場合には、前記狭路区間の手前で前記自車両を停車させ、
前記第1タイミングが前記第2タイミングよりも早い場合には、前記狭路区間を走行するように前記自車両を制御すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記対向車両が検出されない場合、前記狭路区間を走行するように前記自車両を制御すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記対向車両として、前記反対側であって、前記狭路区間から前記狭路区間と前記自車両の間の距離に基づいて定めた所定距離以内の対向車両を検出すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記進行方向に沿った前記自車両の長さに基づいて、前記第1所定距離を定めること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記広路区間における前記自車両の走行可能な軌跡を算出し、
前記軌跡に基づいて、前記広路区間における前記自車両が幅寄せして停車することが可能な停車範囲を算出し、
前記停車範囲に停車する前記自車両の先頭位置と前記狭路区間の間の距離のうち最短の距離を、前記第1所定距離として定めること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記広路区間内であって前記狭路区間から第1所定距離以内の位置において、前記車線を含む道路に対して分岐又は合流する接続道路が存在する場合に、前記阻害要因が発生すると判定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記広路区間内であって前記狭路区間から第1所定距離以内の位置において、前記車線上に停車車両が存在する場合に、前記阻害要因が発生すると判定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記広路区間内であって前記狭路区間から第1所定距離以内の位置において、前記車線上に停止線が存在する場合に、前記阻害要因が発生すると判定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載された走行支援方法であって、
前記コントローラは、前記広路区間内であって前記狭路区間から第1所定距離以内の位置において、前記車線上に踏切又は交差点が存在する場合に、前記阻害要因が発生すると判定すること
を特徴とする走行支援方法。
【請求項11】
自車両の周囲の道路情報を取得する取得部と、コントローラとを備える走行支援装置であって、
前記コントローラは、前記道路情報に基づいて、
前記自車両の走路上であって前記自車両の進行方向に位置する、前記自車両と他車両がすれ違うのに必要な最小道路幅未満の大きさの道路幅を有する狭路区間を検出し、
前記狭路区間を挟んで前記自車両の反対側で前記狭路区間に隣接し、前記最小道路幅以上の大きさの道路幅を有する広路区間を検出し、
前記反対側において前記狭路区間から第1所定距離以上離れた位置にある、前記自車両に対向する対向車両を検出し、
前記広路区間内であって前記狭路区間から前記第1所定距離以内の位置に、前記自車両が走行する車線上において前記自車両の走行を妨げる阻害要因が発生するか否かを判定し、
前記対向車両が検出され、かつ、前記阻害要因が発生すると判定された場合、前記狭路区間の手前で前記自車両を停車させること
を特徴とする走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法及び走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
狭路の対面通行で自車両と対向車両のすれ違いが生じる際に、狭路の退避ポイントまでの到達時間、後続車両数に基づいて、自車両と対向車両の優先順位を決定し、当該優先順位に基づいて自車両と対向車両の通行の制御を行う技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-143137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、自車両と対向車両のうち優先順位が高い車両が狭路を通過するまで、優先順位が低い車両は狭路が始まる位置よりも進行方向手前側の位置にて待機する。しかしながら、車両が待機する位置によっては優先順位が高い車両の走行が妨げられ、自車両と対向車両のいずれもが狭路内又は狭路付近で滞留する現象(スタック)が生じる場合がある。スタックの発生は円滑な交通を妨げる原因となる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、狭路の対面通行で自車両と対向車両のすれ違いが生じる際にスタックが生じる可能性を減らして、円滑な交通を実現できる走行支援方法及び走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決するために、本発明の一態様に係る走行支援方法及び走行支援装置は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、狭路区間を挟んで自車両に対向する対向車両を検出し、自車両が位置する側とは反対側で狭路区間に隣接する広路区間内であって狭路区間から第1所定距離以内の位置に、自車両の走行を妨げる阻害要因が発生するか否かを判定し、対向車両が検出され、かつ、阻害要因が発生すると判定された場合、狭路区間の手前で自車両を停車させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、狭路の対面通行で自車両と対向車両のすれ違いが生じる際にスタックが生じる可能性を減らし、円滑な交通を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る走行支援装置の処理を示すフローチャートである。
図3A図3Aは、自車両の走行を妨げる阻害要因が発生しないと判定される場合の例を示す図である。
図3B図3Bは、自車両の走行を妨げる阻害要因が発生すると判定される場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。
【0010】
[走行支援装置の構成]
図1は、本実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る走行支援装置は、自車両の周囲の道路情報を取得する取得部(撮像部71、車載センサ73、地図情報取得部75)と、コントローラ100とを備え、コントローラ100は、有線あるいは無線の通信路によって、撮像部71、車載センサ73、地図情報取得部75、車両制御装置400と接続されている。
【0011】
なお、撮像部71、車載センサ73、車両制御装置400は、自車両に搭載されるが、地図情報取得部75、コントローラ100は、車両に搭載されるものであってもよいし、車両の外部に設置されるものであってもよい。
【0012】
撮像部71は、自車両の周囲の画像を撮像する。例えば、撮像部71はCCD、CMOS等の固体撮像素子を備えたデジタルカメラであり、車両の周囲を撮像して周辺領域のデジタル画像を取得する。撮像部71は、焦点距離、レンズの画角、カメラの垂直方向及び水平方向の角度などが設定されることにより、車両の周囲の所定の範囲を撮像する。
【0013】
なお、撮像部71によって撮像された撮像画像はコントローラ100に出力され、所定の期間の間、図示しない記憶部に記憶される。例えば、撮像部71は所定の時間間隔で撮像画像を取得しており、所定の時間間隔で取得した撮像画像が、過去画像として記憶部に記憶される。過去画像は、当該過去画像の撮像時点から所定の期間を経過した後に削除されるものであってもよい。
【0014】
車載センサ73は、車両に搭載された、レーザレーダやミリ波レーダ、カメラなど、車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出センサなどからなる。車載センサ73は、複数の異なる種類の物体検出センサを備えるものであってもよい。
【0015】
車載センサ73は、車両の周囲の環境を検出する。例えば、車載センサ73は、自車両から検出性能(センサの性能によって決まる検出可能距離)によって定められる所定距離内の他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び停車車両を含む静止物体を検出し、移動物体及び静止物体の車両に対する位置、姿勢、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートなどを検出するものであってもよい。車載センサ73は、検出結果として、例えば車両の上方の空中から眺めた天頂図(平面図ともいう)における、2次元の物体の挙動を出力するものであってもよい。また、車載センサ73は、車両の周囲に存在する標識(道路標識や路面表示された標識)やガイドレール等を検出するものであってもよい。その他にも、車載センサ73は、車両が備える車輪の回転速度や回転速度差を検出して、車両が走行している車線の路面の滑りやすさを検出するものであってもよい。
【0016】
また、車載センサ73は、車両の周囲の環境の他にも、車両の状態を検出する。例えば、車載センサ73は、車両の移動速度(前後方向、左右方向の移動速度、旋回速度)や、車両が備える車輪の転舵角、転舵角の変化速度を検出するものであってもよい。
【0017】
その他、車載センサ73は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)やオドメトリなど車両の絶対位置を計測する位置検出センサなど、車両の絶対位置を計測する位置検出センサを用いて、車両の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する車両の位置、姿勢及び速度を計測するセンサを含んでいてもよい。
【0018】
地図情報取得部75は、車両が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図情報取得部75が取得する地図情報には、車線の絶対位置、車線の接続関係、相対位置関係などの道路構造の情報が含まれる。また、地図情報取得部75が取得する地図情報には、駐車場、ガソリンスタンドなどの施設情報も含まれうる。その他、地図情報には、信号機の位置情報や、信号機の種別、信号機に対応する停止線の位置などが含まれうる。地図情報取得部75は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより地図情報を外部の地図データサーバから取得してもよい。また、地図情報取得部75は、車車間通信、路車間通信を用いて地図情報を取得してもよい。
【0019】
自車両の周囲の道路情報は、撮像部71によって撮像された画像、車載センサ73によって得られた情報、地図情報取得部75によって得られた地図情報によって構成される。その他、自車両の周囲の道路情報は、取得部によって取得される以外にも、車車間通信、路車間通信によって、自車両の外部から取得されるものであってもよい。
【0020】
車両制御装置400は、コントローラ100によって得られた結果に基づいて、自車両を制御する。例えば、車両制御装置400は、所定の走行経路に従って自動運転によって車両を走行させるものであってもよいし、車両の乗員の運転操作を支援するものであってもよい。
【0021】
コントローラ100(制御部または処理部の一例)は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ100には、走行支援装置の一部として機能させるためのコンピュータプログラム(走行支援プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ100は、走行支援装置が備える複数の情報処理回路(110、120、130、140、150、170、180、190)として機能する。
【0022】
なお、ここでは、ソフトウェアによって走行支援装置が備える複数の情報処理回路(110、120、130、140、150、170、180、190)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(110、120、130、140、150、170、180、190)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(110、120、130、140、150、170、180、190)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(110、120、130、140、150、170、180、190)は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
【0023】
コントローラ100は、複数の情報処理回路(110、120、130、140、150、170、180、190)として、自己位置検出部110、車両検出部120、狭路区間検出部130、広路区間検出部140、阻害要因検出部150、判定部170、停止位置設定部180、走行計画作成部190を備える。
【0024】
自己位置検出部110は、撮像部71及び車載センサ73を介して、車両の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する車両の現在の位置を取得する。その他、自己位置検出部110は、車載センサ73を介して車両の現在の速度、加速度、姿勢を取得するものであってもよい。
【0025】
狭路区間検出部130は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、自車両の走路上であって自車両の進行方向に位置する狭路区間を検出する。ここで、狭路区間とは、自車両と他車両(対向車両)がすれ違うことができない道路区間であり、より具体的には、自車両と他車両がすれ違うのに必要な最小道路幅未満の大きさの道路幅を有する。最小道路幅は、自車両の左右方向の幅の2倍程度の値に設定されるものであってもよいし、自車両の幅と他車両の幅の合計値に設定されるものであってもよい。あるいは最小道路幅は、自車両の左右方向の幅の2倍もしくは自車両の幅と他車両の幅の合計値に対して、自車両と他車両がすれ違う際に自車両の運転者が違和感を感じない程度の、予め定めた所定の距離を加算した値であっても良い。最小道路幅は、自車両と他車両とが円滑にすれ違うために必要な最小の道路幅を言い、適宜設定可能な道路幅である。
【0026】
広路区間検出部140は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、狭路区間を挟んで自車両の反対側(狭路区間に対して自車両の進行方向側)に位置する広路区間を検出する。ここで、広路区間とは、自車両と他車両がすれ違うことができる道路区間であり、より具体的には、自車両と他車両がすれ違うのに必要な最小道路幅以上の大きさの道路幅を有する。広路区間は、狭路区間に隣接する。
【0027】
例えば、道路脇に停車車両がある場合、停車車両によって通行可能な範囲が制限されている道路区間は、狭路区間となりうる。図3A図3Bでは、車線TL1、車線TL2からなる片側1車線の道路において、道路脇に停車車両VB1、停車車両VB2のように停車車両が存在することにより、狭路区間RNが生じている例が示されている。
【0028】
車両検出部120は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、自車両の周囲に存在する物体を検出する。特に、車両検出部120は、自車両が走行する道路上を、自車両に向かって走行する対向車両(自車両に対向する対向車両)を検出する。特に、車両検出部120は、狭路区間を挟んで自車両の反対側であって狭路区間から所定距離以内の位置にある、自車両に対向する対向車両を検出する。
【0029】
ここで、対向車両を検出する所定距離は、自車両に対して車載センサ73の検出可能距離だけ離れた位置から狭路区間までの距離であって良い。あるいは、狭路区間と自車両の間の距離に基づいて定められるものであってもよい。例えば、自車両が狭路区間の開始位置まで走行する間に対向車両が移動可能な距離(以下、移動可能距離)と後述する第1所定距離とを加算した距離以上の距離であって、且つ、自車両に対して車載センサ73の検出可能距離だけ離れた位置から狭路区間までの距離未満の距離を、所定距離として定めてもよい。すなわち、車両検出部120は、自車両が狭路区間に到達するまでの間に、狭路区間から後述する第1所定距離だけ離れた位置に到達する可能性の有る対向車両を検出する。なお、移動可能距離は例えば、自車両から狭路区間までの距離を自車両の現在の車速で除算して自車両が狭路区間に到達するまでの所要時間を求め、求めた所要時間に法定速度、あるいは対向車両の速度が検出できる場合には対向車両の速度を乗算する事によって求める事が可能である。
【0030】
阻害要因検出部150は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、広路区間内に発生しうる、自車両の走行を妨げる阻害要因を検出する。阻害要因の例として、自車両が走行する車線上の他車両、自車両が走行する道路に対して分岐又は合流する接続道路に接する領域、停止線、踏切、交差点などが挙げられる。
【0031】
例えば、自車両が走行する道路に対して分岐又は合流する接続道路に接する領域に自車両が到達する到着時刻を予測し、予測した到着時刻において当該領域に他車両が重なっている場合、当該領域を阻害要因として検出する。
【0032】
その他、停止線、踏切、交差点などに自車両が到達する到着時刻を予測し、予測した到着時刻において、停止線、踏切、交差点などの手前で自車両が一時停止する必要がある場合、停止線、踏切、交差点などを阻害要因として検出する。
【0033】
その他、阻害要因検出部150は、狭路区間から第1所定距離以内の位置にある阻害要因を検出するものであってもよい。すなわち、阻害要因検出部150は、狭路区間から第1所定距離以内の位置に阻害要因が発生するか否かを判定するものであってもよい。
【0034】
狭路区間から第1所定距離以内の位置に阻害要因がある場合、狭路区間と阻害要因の位置の間の区間に自車両は収まらない可能性が高い。この場合、自車両が狭路区間を通過完了できず、対向車両の走行を妨げる恐れがある。そのため、狭路区間から第1所定距離以内の位置にある阻害要因については、特に考慮する必要がある。
【0035】
ここで、第1所定距離は、進行方向に沿った自車両の長さに基づいて定められるものであってもよい。その他、広路区間における自車両の走行可能な軌跡に基づいて、広路区間における自車両が幅寄せして停車することが可能な停車範囲を算出し、算出した停車範囲に基づいて第1所定距離を定めてもよい。この場合、停車範囲に停車する自車両の先頭位置と狭路区間の間の距離のうち最短の距離を、第1所定距離として定めてもよい。
【0036】
判定部170は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、自車両を狭路区間の手前で停車させるか否かを判定する。特に、対向車両が検出され、かつ、狭路区間から第1所定距離以内に阻害要因が発生すると判定された場合、判定部170は、狭路区間の手前で自車両を停車させると判定する。
【0037】
その他、判定部170は、狭路区間に自車両が到達するタイミングよりも、対向車両が狭路区間から対向車両進行方向で第1所定距離手前の位置に先に到着する場合、狭路区間の手前で自車両を停車させると判定するものであってもよい。より具体的には、狭路区間に自車両が到着する第1タイミングが、狭路区間から第1所定距離の位置に対向車両が到着する第2タイミングよりも遅い場合には、狭路区間の手前で自車両を停車させると判定するものであってもよい。第1タイミングと第2タイミングが同時である場合には、狭路区間の手前で自車両を停車させると判定してもよい。第1タイミングが第2タイミングよりも早い場合には、狭路区間の手前で自車両を停車させないと判定するものであってもよい。
【0038】
停止位置設定部180は、狭路区間の手前で自車両を停車させると判定された場合に、狭路区間の手前の位置に自車両の停止位置を設定する。
【0039】
なお、設定する停止位置は、狭路区間を通過する対向車両の走行を妨げないよう、狭路区間の端部から所定の距離だけ離れた位置に設定されるものであってもよい。
【0040】
走行計画作成部190は、自車両の走行計画を作成する。特に、自車両の停止位置が設定されている場合には、走行計画作成部190は、自車両が現在位置から走行して当該停止位置に停車するための走行計画を作成する。一方、自車両の停止位置が設定されていない場合には、走行計画作成部190は、自車両が現在位置から走行して狭路区間を通過するための走行計画を作成する。
【0041】
作成された自車両の走行計画は、車両制御装置400に出力され、走行計画に基づいて自車両の走行が制御される。
【0042】
[走行支援装置の処理手順]
次に、本実施形態に係る走行支援装置の処理手順を、図2のフローチャートを参照して説明する。図2に示す走行支援装置の処理は、所定の周期で繰り返し実行されるものであってもよいし、取得部で自車両の周囲の道路情報を取得するたびに実行されるものであってもよい。
【0043】
ステップS101において、取得部は、自車両の周囲の道路情報を取得する。
【0044】
ステップS103において、自車両の周囲の道路情報に基づいて、狭路区間検出部130は狭路区間を検出し、広路区間検出部140は広路区間を検出する。
【0045】
狭路区間が存在する場合(ステップS105でYESの場合)には、ステップS107において、車両検出部120は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、対向車両を検出する。一方、狭路区間が存在しない場合(ステップS105でNOの場合)には、ステップS119において、走行計画作成部190は走行計画を作成し、車両制御装置400により自車両の走行制御が行われる。
【0046】
対向車両が存在する場合(ステップS109でYESの場合)には、ステップS111に進み、対向車両が存在しない場合(ステップS109でNOの場合)には、ステップS119に進む。
【0047】
判定部170により、対向車両が狭路区間から第1所定距離の地点に到達するタイミングよりも、自車両が先に狭路区間に到着すると判定される場合(ステップS111でYESの場合)には、ステップS113に進み、対向車両が狭路区間から第1所定距離の地点に到達するタイミングよりも、自車両が先に狭路区間に到着すると判定されない場合(ステップS111でNOの場合)には、ステップS115に進む。
【0048】
阻害要因検出部150及び判定部170により、狭路区間から第1所定距離以内の位置に阻害要因が発生しうると判定された場合(ステップS113でYESの場合)には、ステップS115において、停止位置設定部180は、狭路区間の手前の位置に自車両の停止位置を設定する。一方、狭路区間から第1所定距離以内の位置に阻害要因が発生しないと判定された場合(ステップS113でNOの場合)には、ステップS119に進む。
【0049】
自車両の停止位置が設定された後、ステップS117において、走行計画作成部190は停止位置に停車するための走行計画を作成し、車両制御装置400により自車両の停車の制御が行われる。
【0050】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、自車両の周囲の道路情報に基づいて、自車両の走路上であって自車両の進行方向に位置する、自車両と他車両がすれ違うのに必要な最小道路幅未満の大きさの道路幅を有する狭路区間を検出し、狭路区間を挟んで自車両の反対側で狭路区間に隣接し、最小道路幅以上の大きさの道路幅を有する広路区間を検出する。そして、反対側の位置にある、自車両に対向する対向車両を検出し、広路区間内であって狭路区間から第1所定距離以内の位置に、自車両の走行を妨げる阻害要因が発生するか否かを判定する。対向車両が検出され、かつ、阻害要因が発生すると判定された場合、狭路区間の手前で自車両を停車させる。
【0051】
これにより、狭路の対面通行で自車両と対向車両のすれ違いが生じる際に、自車両と対向車両のいずれもが狭路区間付近で滞留する現象(スタック)が生じる可能性を減らし、円滑な交通を実現できる。
【0052】
円滑な交通を実現できる理由を、図3A図3Bを用いて説明する。図3Aは、自車両の走行を妨げる阻害要因が発生しないと判定される場合の例を示す図である。図3Bは、自車両の走行を妨げる阻害要因が発生すると判定される場合の例を示す図である。ここで、車線TL1を走行する自車両VSは、狭路区間RNを通過した後、接続道路TL3に進入するものとする。
【0053】
自車両VSが接続道路TL3に進入するためには、対向車両VTが走行する車線TL2を横断する必要がある。そのため、自車両VSと対向車両VTの位置関係によっては、自車両VSの走行が対向車両VTによって妨げられる可能性がある。そのため、領域RSにおいて阻害要因が発生しうる可能性がある。
【0054】
図3Aでは、狭路区間RNと領域RSの間の距離DTは、第1所定距離L2よりも大きい。すなわち、狭路区間RNを通過した後の自車両VSは、対向車両VTが通り過ぎるまで領域RPで待機し、その後、接続道路TL3に進入すればよい。
【0055】
一方、図3Bでは、狭路区間RNと領域RSの間の距離DTは、第1所定距離L2よりも小さい。つまり、自車両VSは、狭路区間RNを通過した後に対向車両VTが通り過ぎるまで待機できる場所がない。もし、自車両VSが狭路区間RNを抜けようとするタイミングで対向車両VTが狭路区間RNの入り口付近に到着していた場合、対向車両VTによって自車両VSの接続道路TL3への進入が妨げられてしまう。また、自車両VSの狭路区間RNの通過が完了しないため、自車両VSによって対向車両VTの狭路区間RNへの進入が妨げられてしまう。つまり、スタックが生じる。
【0056】
したがって、図3Bに示す場合では、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、狭路区間の手前の位置P2で自車両VSを停車させる。その結果、対向車両VTは、狭路区間RNを円滑に通過できる。また、自車両VSは、対向車両VTが狭路区間RNを通過した後に、円滑に狭路区間RNを通過し、更に、接続道路TL3に進入できる。よって、スタックの発生が回避され、円滑な交通が実現される。
【0057】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、対向車両VTが検出され、かつ、阻害要因が発生しないと判定された場合、狭路区間RNに自車両VSが到着する第1タイミングが狭路区間RNから第1所定距離の位置に対向車両VTが到着する第2タイミングよりも遅い場合、又は、第1タイミングと第2タイミングが同時である場合には、狭路区間RNの手前で自車両VSを停車させるものであってもよい。また、第1タイミングが第2タイミングよりも早い場合には、狭路区間RNを走行するように自車両VSを制御するものであってもよい。
【0058】
これにより、自車両VSと対向車両VTが同時に狭路区間RNに進入することが回避され、円滑な交通が実現される。自車両VSと対向車両VTに対して、狭路区間RNへ進入する際の優先度が定まることになるため、自車両VSと対向車両VTが、共に狭路区間RNの手前で一時停止することも回避される。その結果、狭路区間RNに進入する際の、不必要な一時停止も回避され、交通流を妨げることが抑制される。
【0059】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、対向車両VTが検出されない場合、狭路区間RNを走行するように自車両VSを制御するものであってもよい。これにより、狭路区間RNの手前で自車両VSが一時停止することが回避され、交通流を妨げることが抑制される。
【0060】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、狭路区間RNと自車両VSの間の距離に基づいて、所定距離L1を定めるものであってもよい。これにより、狭路区間RNにおいて、自車両VSと走行経路が干渉しうる対向車両VTを抽出できる。また、走行経路が干渉しうる対向車両VTのみを対象として、狭路区間RNの手前での自車両VSの一時停止の有無を判定すればよいことになるため、計算量も削減される。
【0061】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、進行方向に沿った自車両VSの長さに基づいて、第1所定距離L2を定めるものであってもよい。さらには、広路区間RWにおける自車両VSの走行可能な軌跡を算出し、軌跡に基づいて、広路区間RWにおける自車両VSが幅寄せして停車することが可能な停車範囲を算出し、停車範囲に停車する自車両VSの先頭位置と狭路区間RNの間の距離のうち最短の距離を、第1所定距離L2として定めるものであってもよい。これにより、狭路区間RNと阻害要因の位置の間の区間に自車両VSは収まらない状況を回避できる。その結果、狭路区間RNを通過完了していない自車両VSが、対向車両VTの走行を妨げることを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、広路区間内であって狭路区間から第1所定距離以内の位置において、自車両が走行する道路に対して分岐又は合流する接続道路が存在する場合に、阻害要因が発生すると判定するものであってもよい。これにより、スタックが発生しやすい状況を対象として、阻害要因の発生する可能性を判定できる。その結果、円滑な交通が実現される。
【0063】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、広路区間内であって狭路区間から第1所定距離以内の位置において、自車両が走行する車線上に停車車両が存在する場合に、阻害要因が発生すると判定するものであってもよい。これにより、スタックが発生しやすい状況を対象として、阻害要因の発生する可能性を判定できる。その結果、円滑な交通が実現される。
【0064】
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、広路区間内であって狭路区間から第1所定距離以内の位置において、自車両が走行する車線上に停止線が存在する場合に、阻害要因が発生すると判定するものであってもよい。これにより、スタックが発生しやすい状況を対象として、阻害要因の発生する可能性を判定できる。その結果、円滑な交通が実現される。
【0065】
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置は、広路区間内であって狭路区間から第1所定距離以内の位置において、踏切又は交差点が存在する場合に、阻害要因が発生すると判定するものであってもよい。これにより、スタックが発生しやすい状況を対象として、阻害要因の発生する可能性を判定できる。その結果、円滑な交通が実現される。
【0066】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサや、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置や、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0067】
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0068】
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0069】
71 撮像部
73 車載センサ
75 地図情報取得部
100 コントローラ
110 自己位置検出部
120 車両検出部
130 狭路区間検出部
140 広路区間検出部
150 阻害要因検出部
170 判定部
180 停止位置設定部
190 走行計画作成部
400 車両制御装置
図1
図2
図3A
図3B