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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20240627BHJP
   A61F 13/535 20060101ALI20240627BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/535 100
A61F13/53 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020122774
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019135
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-140770(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150728(WO,A1)
【文献】特開2003-153953(JP,A)
【文献】特表2005-515020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置され、フラッフパルプを含有しない吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、高吸収性シートと、前記高吸収性シートの少なくとも幅方向の両端面および着用者の非肌側面を覆う親水性シートと、を備え、
前記高吸収性シートは、
前記着用者の肌側に位置するポリウレタン連続多孔質体シートと、
前記ポリウレタン連続多孔質体シートの、前記着用者の非肌側に対向配置され、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを前記スパンボンド不織布の繊維と前記パルプ繊維ウェブのパルプ繊維とが絡み合った状態で一体化された複合型不織布と、
前記ポリウレタン連続多孔質体シートと前記複合型不織布との間に形成される接合部と、
前記ポリウレタン連続多孔質シートと、前記複合型不織布と、前記接合部と、で囲まれた複数のブロック状の閉空間と、
複数の前記ブロック状の閉空間内に封入された高吸収性ポリマーと、を備えることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記ポリウレタン連続多孔質体シートは、坪量が30g/m以上300g/m以下であり、且つ見かけ密度が100kg/m以上200kg/m以下である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ポリウレタン連続多孔質体シートは、骨格表面が親水性である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記複合型不織布の、テンシロンでの引張試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な引張強度が1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記スパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンよりなる群から選ばれた1種又は2種の合成樹脂からなる繊維を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記複合型不織布は、前記パルプ繊維ウェブの表面が前記高吸収性ポリマーに接するように配置される、請求項1~のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記高吸収性シートにおける前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m以上300g/m以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
請求項1~7に記載の吸収性物品を生産する方法であって、
前記複合型不織布は、前記スパンボンド不織布と、前記パルプ繊維ウェブと、を水流交絡処理により一体化する、吸収性物品を生産する方法。
【請求項9】
前記水流交絡処理が、所定の間隔を空けて直線状に配置された複数のウォータージェットノズルからウォータージェットを噴射することにより実施され、前記ウォータージェットノズルの穴直径Φが0.06mm以上0.15mm以下であり、且つ前記ウォータージェットノズルの間隔が0.4mm以上1.0mm以下である、請求項8に記載の吸収性物品を生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、で構成されている。近年、吸収性物品には、吸収性物品を着けていることが目立たない、また着用時に違和感がなく、つけている感がない製品が望まれている。このような要望に応えるため、薄型の吸収体を用いた吸収性物品が多く提案されている。
【0003】
特許文献1には、トップシートと吸収体との間に配置されたセカンドシートを備え、吸収体が0.12g/cmより高い密度を有し、セカンドシートが1.5×10N以上の毛細管力を有する吸収性物品が開示されている。特許文献1には、吸収体の密度とセカンドシートの毛細管力を最適化することで、吸収体の薄さと優れた吸収力とを高いレベルで両立して、着用時に安心と、快適な着用感を与えることができる、と記載されている。
【0004】
特許文献2には、不織布及び高吸収性ポリマーを含んで構成される上部吸収層と、親水性多孔体及び高吸収性ポリマーを含んで構成される下部吸収層と、を有し、下部吸収層は実質的に縦長であり、下部吸収層の幅方向中央部は、下部吸収層の他の部位に比して、高吸収性ポリマーの分布量が少ない吸収性物品が開示されている。特許文献2には、下層吸収層に親水性多孔体を用い、高吸収性ポリマーの分布を最適化することで、体液拡散性、液保持性を高く維持しつつ、厚みを薄く、吸収速度を速くすることができる、と記載されている。
【0005】
特許文献3には、ウレタン発泡体を使用した吸収体として、第1表面と第2表面とを有する基材層、第1表面と第2表面とを有する高吸収性ポリマー材料層、及び第1表面と第2表面とを有する接着剤層を有し、高吸収性ポリマー材料層は接着剤層と基材層との間に含まれ、高吸収性ポリマー材料層の第2表面は、基材層の第1表面に接触し、高吸収性ポリマー材料層の第1表面は接着剤層の第2表面に接触し、基材層は発泡体材料層を備える吸収性コアが開示されている。特許文献3には、基材層上に安定して取り付けられた層中に高吸収性ポリマー材料層を有する発泡体層を組み込むことで、フィット性が良く快適であり、コア吸収能力の利用率を維持できる、と記載されている。
【0006】
特許文献4には、プラスチック発泡体層及び/又はラテックス発泡体層(以下これらを総称して「発泡体層」ともいう)と、水性液体を吸収する高吸収性ポリマー粒子とからなり、所定量の高吸収性ポリマー粒子が発泡体層の上、下又は間に面方向に配置され、発泡体層:高吸収性ポリマーの量的比率が1:500乃至50:1である層状体が吸収体として開示されている。特許文献4には、前述の構成により、層状体の、水性液体に対する吸収性能、特に荷重下での吸収性能が向上する、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-67897号公報
【文献】特開2009-131349号公報
【文献】特開2014-140770号公報
【文献】特表平09-509909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薄型の吸収性物品を設計する場合、通常、吸収性物品の大部分を占める吸収体の薄型化が検討される。これに対し、特許文献1~4の吸収体を、それぞれ上述の構成を維持したまま、薄型化、軽量化すると、ある程度の吸収性能を犠牲にしなければならない。特に、吸収体面積の狭い軽失禁製品や尿取りパッドにおいては十分な吸収性能が保たれない。また、体液吸収の速さと逆戻り量の少なさは、吸収性能の指標としてどちらも重要であるが、従来の薄型吸収体においては両者を高い次元で満たすことは難しい。
【0009】
本発明は、薄型で、繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、逆戻り量が少なく、体液の拡散に優れ、吸収性及び着用感の良好な吸収体を備える吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリウレタン連続多孔質体シートと、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化してある複合型不織布、及び高吸収性ポリマー粒子を用いて薄型吸収体を形成することで、目的に叶う吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の、薄型吸収体を備える吸収性物品に係る。
【0011】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらの間に配置され、フラッフパルプを含有しない吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、高吸収性シートと、前記高吸収性シートの少なくとも一部を包む親水性シートと、を備え、
前記高吸収性シートは、
着用者の肌側に位置するポリウレタン連続多孔質体シートと、
前記ポリウレタン連続多孔質体シートの、前記着用者の非肌側に対向配置され、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化してある複合型不織布と、
前記ポリウレタン連続多孔質体シートと前記複合型不織布との間に介在し、これらの間の空間を独立した複数のブロック状の閉空間に分割する接合部と、
複数の前記ブロック状の閉空間内に封入された高吸収性ポリマーと、を備えることを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記ポリウレタン連続多孔質体シートは、坪量が30g/m以上300g/m以下であり、且つ見かけ密度が100kg/m以上200kg/m以下である、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記ポリウレタン連続多孔質体シートは、骨格表面が親水性である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記複合型不織布の、テンシロンでの引張試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な引張強度が1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下である、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記スパンボンド不織布は、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンよりなる群から選ばれた1種又は2種の合成樹脂からなる繊維を含む、上記(1)~(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記複合型不織布は、前記スパンボンド不織布と、前記パルプ繊維ウェブと、の水流交絡処理による一体化物である、上記(1)~(5)のいずれかの吸収性物品。
(7)前記水流交絡処理が、所定の間隔を空けて直線状に配置された複数のウォータージェットノズルからウォータージェットを噴射することにより実施され、前記ウォータージェットノズルの穴直径Φが0.06mm以上0.15mm以下であり、且つ前記ウォータージェットノズルの間隔が0.4mm以上1.0mm以下である、上記(6)の吸収性物品。
(8)前記複合型不織布は、前記パルプ繊維ウェブの表面が前記高吸収性ポリマーに接するように配置される、上記(1)~(7)のいずれかの吸収性物品。
(9)前記高吸収性シートにおける前記高吸収性ポリマーの坪量が30g/m以上300g/m以下である、上記(1)~(8)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、逆戻り量が少なく、体液の拡散に優れ、吸収性及び着用感の良好な薄型吸収体を備える吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式平面図である。
図2図1に示すX-X切断線における幅方向模式断面図である。
図3図1に示すY-Y切断線における長手方向模式断面図である。
図4】高吸収性シート前駆体の構成を示す模式断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式断面図である。
図6】比較例1に係る吸収性物品の構成を示す幅方向断面図である。
図7】比較例2に係る吸収性物品の構成を示す幅方向断面図である。
図8】比較例3に係る吸収性物品の構成を示す幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液吸収の前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する方向である。肌側面とは、吸収性物品を着用したときに、着用者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0015】
<吸収性物品(第1実施形態)>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の吸収性物品50について説明する。図1図3は、第1実施形態に係る吸収性物品50を示す。図4は、接合部23形成前の高吸収性シート25の前駆体25Aを示す。なお、図1では、高吸収性シート25の構成を明確にするために、敢えて実線で示している。また、これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0016】
本実施形態の吸収性物品50は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用でき、例えば、軽失禁製品、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。これらの中でも軽失禁製品、尿吸収パッド等としての使用が好ましい。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品50とを組み合わせてもよい。吸収性物品50の、長手方向の寸法、及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品50の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途の吸収性物品を容易に得ることができる。
【0017】
吸収性物品50は、図1及び図2に示すように、これを着用したときに相対的に着用者の肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して配置され、吸収性物品50を着用したときに相対的に着用者の非肌側に位置する液不透過性のバックシート30と、トップシート10とバックシート30との間に配置された吸収体20と、トップシート10の肌側表面に設けられた一対の立体ギャザー40と、を備える。吸収体20はトップシート10とバックシート30との間に挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート10を通して吸収体20に吸収及び保持される。吸収性物品50の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0018】
本実施形態によれば、着用者の肌側に配置されたポリウレタン連続多孔質体シート21と、着用者の非肌側に配置された複合型不織布(スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した不織布)22との層間に、高吸収性ポリマー12を封入可能な複数のブロック状閉空間27が形成されるように接合部23で部分的に接合した高吸収性シート25を備え、かつ高吸収性シート25の一部又は全部を親水性シート24で覆った吸収体20として備えている。吸収体20は、繰り返し吸収の際に吸収速度が低下せず、体液の拡散性に優れている。
【0019】
吸収体20は、より具体的には、
第1に、着用者の肌側に位置するポリウレタン連続多孔質体シート21が細孔を多く含み、柔軟性や弾力性に富む構造であることから、高吸水性ポリマー12自体の硬さ及び体液を吸収した膨潤後の硬さを感じ難く、
第2に、着用者の非肌側に位置する複合型不織布22のパルプ繊維ウェブと高吸収性ポリマー12とが接するように構成した場合には、パルプ繊維ウェブ(特に水流交絡により一体化したパルプ繊維ウェブ)が凹凸に富み、更にブロック状閉空間27内に高吸水ポリマー12が配置され、その結果として高吸収性ポリマー12のズレ、移動が抑えられて、体液の吸収後も厚さや触感を長手方向、幅方向でより均一に保つことができることから、着用感が向上し、
第3に、複合型不織布22のパルプ繊維ウェブが体液を一時的に保持する機能を有することから、体液の逆戻りを顕著に防止することができ、
第4に、ポリウレタン連続多孔質体シート21及び複合型不織布22がともに体液拡散性に富み、また、前述のように高吸収性ポリマー12のズレや移動が少なく、結果として高吸収性ポリマー12の体液吸収に伴うゲルブロッキングが発生し難く、高吸収性シート25中の略全ての高吸収性ポリマー12が体液吸収に利用されることから、繰返し吸収時でも最初の吸収時の体液吸収速度を維持し、複数回の体液排出にも対応可能な吸収能力を有している。
従って、本実施形態の吸収体20を含む吸収性物品50は、薄型でありながら、体液拡散性に優れ、体液吸収の前後を問わず着用感が良好で、複数回の体液吸収を経ても吸収速度及び吸収量が高水準に維持され、体液の逆戻りが高度に防止されたものになる。
【0020】
以下、シート状の各構成部材について、トップシート10、吸収体20、バックシート30及び立体ギャザー40の順でさらに詳しく説明する。なお、これらの構成部材は、シート状以外の立体構造を有していてもよい。
【0021】
(トップシート)
トップシート10は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体20を挟んで、バックシート30に対向して配置される。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合があることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等の不織布が挙げられる。
【0022】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。また、肌への刺激を低減させる観点から、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有させてもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、18g/m以上400g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0023】
(吸収体)
本実施形態の吸収体20は、その長手方向の寸法が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体20の幅方向の寸法は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は90mm以上190mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上480mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅方向寸法がともに60mm以上160mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する股部の幅方向寸法が50mm以上140mm以下の範囲である。また、吸収体20の厚み寸法は、後述する構成を採用することにより、例えば、1mm以上5mm以下の範囲の、薄型にすることができる。吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0024】
吸収体20は、図2図4に示すように、高吸収性シート25と、高吸収性シート25の全体を包む親水性シート24と、を備えている。本実施形態では、親水性シート24は、高吸収性シート25の非肌側面から内三つ折り(以下「C折り」ともいう)され、その幅方向両端部周辺が高吸収性シート25の肌側で重なり合い、高吸収性シート25の肌側面、非肌側面、及び幅方向両端面を覆い、高吸収性シート25の全体を包むように構成されている。このように構成することで、例えば、トップシート10を透過してきた体液が、高吸収性シート25の全域にほぼ均一に行き渡り、体液拡散性が向上する。
【0025】
(高吸収性シート)
高吸収性シート25は、吸収性物品50を身体に着用したときに、相対的に着用者の肌側に位置するポリウレタン連続多孔質体シート21と、ポリウレタン連続多孔質体シート21に対向するように配置され、相対的に着用者の非肌側に位置する複合型不織布22と、ポリウレタン連続多孔質体シート21と複合型不織布22との間に部分的に介在し、これらの間の空間を独立した複数のブロック状閉空間27に分割する接合部23と、複数のブロック状閉空間27内に封入された高吸収性ポリマー12とを備え、フラッフパルプを含有しない所謂高吸収性シートの1種である。高吸収性シート25は、主に複数のブロック状閉空間27内に高吸収性ポリマー12を封入し、体液拡散性や吸収速度を低下させる一因となる高吸収性ポリマー12のゲルブロッキングが非常に起こり難いという特性を有している。この高吸収性シート25を、親水性シート24による体液拡散性の向上と組み合わせることにより、初めて前述のような優れた効果を得ることができる。
【0026】
本実施形態の高吸収性シート25は、ポリウレタン連続多孔質体シート21と複合型不織布22との間の空間が、接合部23により、複数のブロック状閉空間27に分割されている。接合部23は、ポリウレタン連続多孔質体シート21と複合型不織布22との間に部分的に介在し、両者を接合している。本実施形態の接合部23は、平面視帯状の形状を有し、高吸収性シート25の四周の縁辺に沿って設けられ、さらに、高吸収性シート25の幅方向の一の縁辺から他の縁辺に向けて略平行にかつ略等間隔で略直線状に延びる複数の幅方向横断型の接合部23が設けられている。幅方向横断型の接合部23は、本実施形態の3本に限定されず、1本、2本又は4本以上でもよい。また、幅方向横断型の接合部23に限定されず、長手方向横断型の接合部23を1又は複数本設けてもよく、幅方向横断型の接合部23と長手方向横断型の接合部23の両方を設けてもよく、斜め方向横断型の接合部23を1又は複数本設けてもよく、円環状の接合部23を同心円状に設けてもよい。ここで、斜め方向とは、幅方向及び長手方向のいずれにも交差する方向である。
【0027】
接合部23の幅は特に限定されず、高吸収性シート25の幅方向及び長手方向の各寸法等に応じて広い範囲から適宜選択できるが、ブロック状閉空間27の密閉性等の観点から、例えば、1mm以上10mm以下の範囲である。接合部23の幅を前述の範囲から選択することにより、ブロック状閉空間27の密閉性が吸収性物品50の使用終期まで良好に保持され、吸収速度、吸収量等の吸収性能や、着用感等が良好に維持される。接合部23の幅が1mm未満では、高吸収性ポリマー12の体液吸収による膨潤や、吸収性物品50に対して不意の外力が負荷されること等により、ブロック状閉空間27の密閉性が損なわれ、高吸収性シート25の吸収性能が低下する傾向がある。接合部23の幅が10mmを超えると、相対的にブロック状閉空間27における高吸収性ポリマー12の膨潤可能容積が減少し、また、高吸収性ポリマー12の収容量又は坪量が低下し、十分な吸収性能が得られない傾向がある。
【0028】
接合部23は、例えば、図4に示す高吸収性シート25の前駆体25Aの所定個所に、熱溶着、超音波溶着等を施すことにより、形成できる。ここで、高吸収性シート25の前駆体25Aは、ポリウレタン連続多孔質体シート21と複合型不織布22との間に高吸収性ポリマー12を所定の坪量で挟持したものである。また、高吸収性シート25よりも大寸の前駆体25Aの所定個所に接合部23を形成した後、接合部23に沿って切断し、所望寸法の高吸収性シート25としてもよい。また、接合部23は、前駆体25Aのポリウレタン連続多孔質体シート21と複合型不織布22との間における接合部形成予定領域にホットメルト接着剤を配し、加熱又は加圧加熱することによっても形成できる。
【0029】
高吸収性シート25の内部には、ポリウレタン連続多孔質体シート21と複合型不織布22と周囲に配置された接合部23とで囲まれた、互いに独立した複数のブロック状の閉空間27が形成されている。閉空間27は、例えば、内部空間、隙間等の形態を有している。また、閉空間27は、ポリウレタン連続多孔質体シート21と複合型不織布22とが未接合で部分的に又は全体的に重なった形態を有していることもある。各閉空間27には所定量の高吸収性ポリマー12が封入されている。高吸収性ポリマー12の一部又は全部が、各閉空間27内において、ポリウレタン連続多孔質体シート21及び/又は複合型不織布22にホットメルト接着剤により固着されていてもよい。ブロック状の閉空間27に高吸収性ポリマー12を封入することにより、後述する複合型不織布22のパルプ繊維ウェブによる効果も相まって、高吸収性ポリマー12のズレ、移動、高吸収性シート25からの脱落を抑制し、ゲルブロッキングによる吸収性能の低下を防止することができる。
【0030】
本実施形態では、略同じ形状で略同じ寸法の平面視形状を有するブロック状の閉空間27が配列されているが、これに限定されず、2以上の異なる形状及び/又は異なる寸法を有する平面視形状のブロック状の閉空間27が配列されていてもよい。このとき、ブロック状の閉空間27の平面視形状は特に制限されず、例えば、正方形状、長方形状、ひし形状、平行四辺形状、三角形以上の多角形状等が挙げられる。
【0031】
(ポリウレタン連続多孔質体シート)
ポリウレタン連続多孔質体シート21は、連続気泡発泡体である軟質ポリウレタンフォーム(以下単に「軟質ポリウレタンフォーム」ともいう)を含む液透過性シートである。ポリウレタン連続多孔質体シート21の具体例としては、ポリウレタンの柔軟性、弾力性等の各種特性を高吸収性シート25に付与する観点から、例えば、軟質ポリウレタンフォームを全体の50質量%以上含有するシート、軟質ポリウレタンフォームからなるシート、軟質ポリウレタンフォームの粒子及び/又は繊維を他の合成樹脂中に分散させて成形した複合シート、軟質ポリウレタンフォームからなる粒子及び/又は繊維を、不織布、編物、織物等の繊維製品中に混在させた複合シート等が挙げられる。軟質ポリウレタンフォームからなるシートには、ポリウレタンの合成、連続気泡発泡及び成形を同時に又は連続的に実施して得られる発泡シートが包含される。これらの中でも、前述の発泡シートが好ましい。
【0032】
軟質ポリウレタンフォームは、公知の製造方法に従って、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート等の原料化合物、発泡剤、整泡剤、触媒等の添加剤等を混合し、得られた混合物を加熱して発泡させることにより得ることができる。また、原料化合物を加熱下に反応させつつ、気体系の発泡剤を注入してもよい。原料化合物の種類、添加剤の種類と添加量、発泡時の加熱温度、発泡時間、発泡時の加圧力といった反応条件を適宜選択することにより、発泡倍率、見掛け密度、引張強度、引張破断伸び、伸長応力、平均摩擦係数、摩擦係数変動等の各特性を調整できる。
【0033】
軟質ポリウレタンフォームの発泡倍率は、例えば、10倍以上60倍以下の範囲である。このような発泡倍率を有する軟質ポリウレタンフォームは、高吸収性シート25を薄型化するために薄層化しても、柔軟性や弾力性に富み、フィット感が良好で、さらに体液を吸収して膨潤した後の高吸収性ポリマー12のゴツゴツ感を緩和することができ、吸収性物品50の着用感を向上させることができる。
【0034】
ポリウレタン連続多孔質体シート21の坪量は、特に限定されないが、液透過性と柔軟性、弾力性等とを高水準で両立させることや、通気性を高め、蒸れを少なくすること等の観点から、例えば、30g/m以上300g/m以下の範囲、又は50g/m以上250g/m以下の範囲である。また、ポリウレタン連続多孔質体シート21の見かけ密度は、特に限定されないが、吸収性物品50の軽量化やフィット性、高吸収性シート25への機械的強度の付与等の観点から、例えば、100kg/m以上200kg/m以下の範囲、又は120kg/m以上180kg/m以下の範囲である。
【0035】
ポリウレタン連続多孔質体シート21の厚みは、例えば、1.0mm以上4.0mm以下の範囲、又は1.5mm以上3.2mm以下の範囲である。厚みを前述の範囲とすることにより、高吸収性シート25の体液拡散性や剛性維持と、吸収性物品50の着用感、フィット感とを高水準でバランス良く両立させることができる。厚みは、例えば、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて、無荷重条件下で測定することができる。
【0036】
好ましい実施形態では、例えば高吸収性シート25の体液拡散性を一層向上させるために、ポリウレタン連続多孔質体シート21に主成分(全体の50質量%以上)として含まれる軟質ポリウレタンフォームは、その骨格表面が親水性である。骨格表面が親水性である軟質ポリウレタンフォームの具体例としては、例えば、骨格自体が親水性である軟質ポリウレタンフォーム(前者)、骨格表面に親水性基を導入した軟質ポリウレタンフォーム(後者)等が挙げられる。前者は、例えば、原料化合物のポリオール成分としてポリアルキレンオキシドポリオールを含有するものを用いることにより得ることができる。後者は、軟質ポリウレタンフォームに公知の方法に従って界面活性剤やエチレンオキシド化合物等を反応させることにより得ることができる。
【0037】
軟質ポリウレタンフォームの骨格表面が親水性であるか否かは、次の方法により判断することができる。まず、軟質ポリウレタンフォーム(幅10mm以上、長さ10mm以上)を撓みがないように静置する。そして、軟質ポリウレタンフォーム上にイオン交換水の水滴(0.05mL)を10滴たらし、軟質ポリウレタンフォームに吸収されるまでの時間を測定する。この時間が5秒以内である場合、又は8滴以上の水滴が吸収された場合を親水性であると判断する。
【0038】
(複合型不織布)
複合型不織布22は、スパンボンド不織布と、スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に積層され一体化されたパルプ繊維ウェブと、を含む。ここで、「一体化」とは、少なくとも吸収性物品50の使用終期までにスパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとが部分的でも剥離してその機能が大きく低減することがない状態にあることを意味する。スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとを一体化することにより、複合型不織布22ひいては高吸収性シート25の強度や柔らかさ、風合い等を向上させることができる。また、パルプ繊維ウェブは、表面に凹凸を有していることから、ブロック状の閉空間27内において、高吸収性ポリマー12がその凹凸にはまり込んで、高吸収性ポリマー12の位置ずれ、移動等が起こり難くなる。その結果、ブロック状の閉空間27内での高吸収性ポリマー12のゲルブロッキングが発生せず、吸収速度や吸収量等の吸収性能の低下が抑制される。
【0039】
好ましい実施形態では、例えば、吸収体20中での逆戻り性防止等に寄与するパルプ繊維ウェブが高吸収性シート25の内側に位置して高吸収性ポリマー12と接し、例えば吸収体20への強度付与等に寄与するスパンボンド不織布が外方を臨むように、複合型不織布22が配置される。スパンボンド不織布の坪量は例えば7g/m以上20g/m以下の範囲であり、パルプ繊維ウェブの坪量は例えば30g/m以上70g/m以下の範囲である。不織布及びパルプ繊維ウェブの各坪量を前記範囲とすることにより、複合型不織布の坪量を後述する適切な範囲に調整することが容易になる。
【0040】
別の好ましい実施形態では、複合型不織布22は、スパンボンド不織布と、パルプ繊維ウェブと、の水流交絡による一体化物である。該一体化物は、例えば、スパンボンド不織布の表面に、バインダーを用いることなく、パルプ繊維をウォータージェットで交絡し、一体化してパルプ繊維ウェブを設けた複合型不織布22である。このような複合型不織布22では、スパンボンド不織布の一方の表面においてスパンボンド不織布を構成する繊維とパルプ繊維とが絡み合ってパルプ繊維ウェブが一体化されると共に、パルプ繊維の一部がスパンボンド不織布を厚み方向に突き抜けて他方の面に露出した状態になっており、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとが極めて強固に結合している。また、水流交絡の加圧により、パルプ繊維ウェブ表面の凹凸が一層顕在化し、高吸収性ポリマー12のずれ、移動等を防止する効果がさらに大きくなる。
【0041】
前述の水流交絡処理は、所定の間隔を空けて直線状に配置された複数のウォータージェットノズルからウォータージェットを噴射することにより実施される。ここで、ウォータージェットノズルの穴直径Φは、例えば、0.06mm以上0.15mm以下の範囲であり、且つウォータージェットノズルの間隔は、例えば、0.4mm以上1.0mm以下の範囲である。
【0042】
ここで使用されるパルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルースおよびダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、スパンボンド不織布としては特に限定されないが、複合型不織布22全体の強度や通液性等の観点から、ナイロン(商標名)、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンよりなる群から選ばれた1種又は2種の合成樹脂からなる繊維を含んで構成されたスパンボンド不織布が好ましく、合成樹脂製繊維としてポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布がより好ましく、ポリプロピレン繊維からなるスパンボンド不織布がさらに好ましい。
【0043】
複合型不織布22において、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとの重量割合(スパンボンド不織布/パルプ繊維ウェブ)は、例えば40/60重量%以上10/90重量%以下の範囲である。パルプ繊維ウェブの含有量が60質量%未満であると、複合型不織布22が風合いや汗の吸収に乏しく蒸れやすくなる傾向があり、90質量%を超えると複合型不織布22が硬くなる傾向がある。
【0044】
複合型不織布22の、テンシロンでの引張試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な引張強度が1.5N/25mm以上5.0N/25mm以下の範囲である。複合型不織布22が前述のような引張強度を有することにより、高吸収性シート25の強度が向上して体液の吸収及び保持性能を高めることができる。
【0045】
複合型不織布22の坪量は、製品の厚みや強度等の観点から、例えば、30g/m以上80g/m以下の範囲又は40g/m以上60g/mの範囲である。30g/m未満では,複合型不織布22が柔らかくなり過ぎて製造歩留まりが低下するとともに、体液吸収後に破れ易くなる傾向があり、80g/mを超えると複合型不織布22が硬さや厚みを増すことで、吸収体20が硬くなり着用感やフィット感を損なう傾向がある。
【0046】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、尿を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。高吸収性シート25における高吸収性ポリマー12の坪量は、例えば、30g/m以上300g/m以下の範囲である。
【0047】
また、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマー12の使用を避けることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、高吸収性シート25が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減する観点から、高吸収性ポリマー12としては中位粒子径を有する粒子状の高吸収性ポリマー12を用いることが好ましい。該中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0048】
高吸収性ポリマー12は、複数のブロック状の閉空間27内に接着することなく封入してもよいが、その一部又は全部をポリウレタン連続多孔質体シート21及び/又は複合型不織布22の各対向面にホットメルト接着剤により接着してもよい。このとき、高吸収性ポリマー12の体液吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないという観点から、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m以下の範囲である。ホットメルト接着剤としては融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0049】
(親水性シート)
親水性シート24としては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、ティシュペーパー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。親水性不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布等が挙げられる。これらの中でも、入手性やコスト等の観点から、ティシュペーパー、親水性不織布等が好ましく、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布等の親水性不織布がより好ましい。また、親水性シート24の坪量は、例えば7g/m以上45g/m以下の範囲又は13g/m以上50g/m以下の範囲である。
【0050】
(バックシート)
バックシート30は、吸収体20が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布の積層体である複合不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布、これらの2種以上の積層体である複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等が挙げられる。
【0051】
バックシート30の坪量は、例えば強度及び加工性の点から、15g/m以上40g/m以下の範囲である。また、装着時の蒸れを防止する観点から、通気性を有するバックシート30が好ましい。バックシート30に通気性を付与するには、例えば、樹脂フィルムにフィラーを配合する方法、バックシート30に穿孔のためにエンボス加工を施す方法等を利用できる。ここで、フィラーとしては炭酸カルシウムが挙げられ、フィラーを公知の方法に従って配合できる。
【0052】
(立体ギャザー)
吸収性物品50は、図1に示すように、例えば、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品50の長手方向に沿って、トップシート10の肌側面の幅方向両側端部付近に、一対の立体ギャザー40を備えている。本実施形態の立体ギャザー40は、幅方向一端がバックシート30の肌側面の幅方向両側端部付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両側端部付近に固定され、その幅方向他端はトップシート10に固定されない自由端40aである。自由端40a付近には弾性伸縮部材(不図示)が長手方向に沿って配設され、自由端40aに起立性を付与し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。
【0053】
立体ギャザー40の幅方向一端の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10とバックシート30との各縁辺を部分的又は全体的に接合し、内部に吸収体20を収納した袋体の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。なお、本実施形態の吸収性物品50は、立体ギャザー40を含まない実施形態をも包含する。
【0054】
立体ギャザー40を構成するシート部材としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は液不透過性の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の積層体である複合不織布等が挙げられる。弾性伸縮部材としては、この分野での常用品を特に限定なく使用でき、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が挙げられる。
【0055】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、吸収体20をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置に立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。そして、吸収性物品50が尿取りパッドや軽失禁パッドである場合は、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折りたためばよい。また、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を必要に応じて設けることができる。
【0056】
<吸収性物品(第2実施形態)>
図5は、第2実施形態に係る吸収性物品51を示す。吸収性物品51は、吸収体20に代えて吸収体26を備え、かつトップシート10と吸収体26との間にトランスファシート11を備える以外は、吸収性物品50と同じ構成及び同じ変形例を有している。
【0057】
(吸収体)
吸収体26は、親水性シート24が高吸収性シート25の全部ではなく、一部を包む以外は、吸収体20と同じ構成及び同じ変形例を有している。より具体的には、親水性シート24は、高吸収性シート25の非肌側面からC折りされているが、その幅方向両端部は高吸収性シート25の肌側で重なり合わずに対向している。したがって、親水性シート24は、高吸収性シート25の非肌側面、幅方向の両端面、及び肌側面の幅方向両端部付近を覆い、高吸収性シート25の肌側面の幅方向中央部付近を覆っていない。このような実施形態でも、トランスファシート11との組み合わせにより、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0058】
(トランスファシート)
トランスファシート11は、トップシート10と吸収体26との間に配置され、例えば、トップシート10を透過してきた体液を集約的に吸収体26に移行する。トランスファシート11としては透液性を有する基材であれば特に限定されないが、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布等の同種又は異種の不織布積層体等の複合不織布、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。これらの中でも、体液の立体ギャザー40への移行を防止する観点から、エアスルー不織布が好ましい。トランスファシート11の坪量は例えば20g/m以上の範囲又は20g/m以上60g/m以下の範囲である。
【0059】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0060】
以下、本実施形態について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。なお、本実施形態は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
ポリウレタン連続多孔質体シート(軟質ポリウレタンフォーム、連続気泡体、1枚当たり坪量の80g/m、見かけ密度160kg/m、発泡倍率6.3、厚み2mm)を用意した。該多孔質体シートから幅20mm、長さ50mmの試料を作製し、平板な実験台上に載置した状態でその表面にイオン交換水の水滴(0.05mL)を10滴たらしたところ、該水滴を5秒以内に吸収したことから、該多孔質体の少なくとも表面の骨格は親水性であることを確認した。
【0062】
次に、複合型不織布(厚み0.5mm)を用意した。複合型不織布は、ポリプロピレン製スパンボンド不織布(坪量15g/m)の一方の面に、水流交絡によりパルプ繊維ウェブ(パルプ繊維ウェブ1枚当たりの坪量40g/m)を一体化した水流交絡一体化物であった。なお、この複合型不織布は、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブとの積層体に対し、0.67mmの等間隔で3,000本のウォータージェットノズル(穴直径Φ0.1mm)を直線状に配列した水流交絡装置からウォータージェットを噴射して作製されたものであった。また、複合型不織布の、テンシロンでの引張試験において、25mm幅に形成した試験片を縦方向に2mm伸ばすのに必要な引張強度は3N/25mmであった。
【0063】
上述のポリウレタン連続多孔質体シートと、複合型不織布のパルプ繊維ウェブとの間に、接合部形成予定領域を除いて、表1に示す坪量でSAPを配置し、超音波溶着により、図1と同様の幅3mmの接合部を形成し、表1に示す寸法を有する高吸収性シートを作製した。この高吸収性シートの肌側面、非肌側面及び幅方向両端面を図2と同様にしてスパンボンド不織布(親水性シート、坪量15g/m)で包み、吸収体を作製した。
【0064】
トップシートとしてエアスルー不織布(20g/m)、バックシートとして通気性ポリエチレンフィルム(坪量35g/m)及び上記で得られた吸収体を用い、尿取りパッドである、実施例1の吸収性物品を作製した。
【0065】
(比較例1~3)
ポリウレタン連続多孔質体シート及び複合型不織布の位置を入れ替える以外は実施例1と同様にして作製された吸収体31(図6、比較例1)、複合型不織布に代えてポリウレタン連続多孔質体シートを用いる以外は実施例1と同様にして作製された吸収体32(図7、比較例2)、又はポリウレタン連続多孔質体シートに代えて複合型不織布を用いる以外は実施例1と同様にして作製された吸収体33(図8)を用い、実施例1と同様にして、尿取りパッドである比較例1~3の吸収性物品を作製した。
【0066】
実施例1及び比較例1~3で得られた吸収性物品を次の評価試験に供した。結果を表1に示す。
(総吸収量)
実施例1及び比較例1~3の各吸収性物品を生理食塩水中に5分間浸漬した後、金網上で30秒間水切りし、吸収前後の重量差を計測し、総吸収量とした。
(繰返し吸収速度)
実施例1及び比較例1~3の各吸収性物品の上に、底面140mm×100mm、外径40mm、内径35mm、重量1400gの治具を載置し、荷重下に100mlの生理食塩水を10分間隔で3回注水し、3回目の注水分100mlを吸収する時間を測定し、繰返し吸収速度とした。
(液戻り量)
繰返し吸収速度の3回目の測定終了後、10分放置し、径55mmのろ紙を載せ、さらにその上に35gf/cmの荷重下になるように錘を載せ、1分間経過後にろ紙に吸収された水分量を測定し、逆戻り量とした。
(拡散長さ)
繰返し吸収速度の3回目の測定終了後、生理食塩水を吸収した部分の最大長さを測定し、拡散長さとした。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から、ポリウレタン連続多孔質体シートと複合型不織布とで高吸収性ポリマーを挟持し、かつ接合部により形成された複数のブロック状の閉空間内に高吸収性ポリマーを封入した上で、ポリウレタン連続多孔質体シートと複合型不織布とを所定の位置に配置することにより、総吸収量が多く、繰返し吸収速度が速く、液戻り量が少なく、拡散長さが大きい(体液拡散性が良好)薄型の高吸収性シートが得られることがわかる。
【符号の説明】
【0069】
10 トップシート
11 トランスファシート
12 高吸収性ポリマー
20、26、31、32、33 吸収体
21 ポリウレタン連続多孔質体シート
22 複合型不織布
23 接合部
24 親水性シート
25 高吸収性シート
25A 高吸収性シート前駆体
27 閉空間
30 バックシート
40 立体ギャザー
50、51 吸収性物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8