(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20240627BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20240627BHJP
【FI】
H01L33/48
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2020123907
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 稔
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037582(JP,A)
【文献】特開2020-047817(JP,A)
【文献】特開2018-137428(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0118634(KR,A)
【文献】特開2013-074273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が搭載されるとともに、環形状を有する基板金属層が固着された基板接合面を有する基板と、
ガラスからなり、前記半導体発光素子の放射光を透過する窓部と、前記基板金属層に対応する大きさを有する環形状のフランジ金属層が固着されたフランジ接合面を有するフランジとを備え、前記半導体発光素子を収容する空間を有して前記基板に封止接合された透光キャップと、を有し、
前記フランジ金属層は、前記フランジに固着され、前記フランジとの線熱膨張係数差が1×10
-6・K
-1以内の第1の金属層と、前記第1の金属層上に形成された第2の金属層とからな
り、
前記フランジ接合面は円環形状を有し、平坦部と前記平坦部から突出し前記フランジ接合面の当該円環と同心の円環状凸部である押圧環を有し、
前記押圧環は断面が半円形である
半導体発光装置。
【請求項2】
前記フランジ金属層の最表面層は金(Au)層、銀(Ag)層及び銅(Cu)層のいずれかであり、
前記基板金属層の最表面層は前記フランジ金属層の前記最表面層と同一金属の金属層であり、
前記フランジ金属層及び前記基板金属層は、前記同一金属のナノサイズ金属粒子の接合層によって接合されている、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第1の金属層は、ニッケル/コバルト/鉄(Ni-Co-Fe)系の金属からなる請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記透光キャップは、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス又は珪酸塩ガラスからなる、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記基板金属層は前記基板上に形成されたニッケル/コバルト/鉄(Ni-Co-Fe)系の第3の金属層と、前記第3の金属層上に形成された第4の金属層とからなる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記基板金属層は前記基板に固着され、前記フランジ金属層の最表面層と同一金属の金属層である、請求項
2に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記フランジは平坦底面を有し、前記フランジ金属層の前記第1の金属層は、前記平坦底面上に溶着され、前記平坦底面から突出し当該円環と同心の円環状凸部である押圧環を有する、請求項
1に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記基板は、前記基板及び前記フランジの接合部と、前記半導体発光素子が接合された搭載部と、の間に形成された環形状の溝を有する、請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記基板は外周部に立設された枠を有し、前記半導体発光素子を収容する前記空間は、前記枠によって画定され、前記透光キャップの前記フランジは前記枠の頂面に接合されている、請求項1ないし
8のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記透光キャップは平板形状を有する、請求項1ないし
9のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記半導体発光素子は窒化アルミ系の発光素子である、請求項1ないし
10のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記半導体発光素子は、波長265~415nmの紫外光を発光する発光素子である、請求項
11に記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置、特に紫外光を放射する半導体発光素子が内部に封入された半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を半導体パッケージの内部に封入する半導体装置が知られている。半導体発光モジュールの場合では、半導体発光素子が載置された支持体に、発光素子からの光を透過するガラスなどの透明窓部材が接合されて気密封止される。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、半導体発光素子を収容する凹部が設けられた基板と、窓部材とが接合された半導体発光モジュールが開示されている。
【0004】
また、特許文献3、4には、紫外線発光素子が搭載された実装基板と、スペーサと、ガラスにより形成されたカバーとが接合された紫外光発光装置が開示されている。
【0005】
また、非特許文献1には、銅ナノ粒子を用いた低温焼結技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-18873号公報
【文献】特開2018-93137号公報
【文献】特開2016-127255号公報
【文献】特開2016-127249号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】東北大学、三井金属鉱業株式会社、https://www.mitsui-kinzoku.co.jp/wp-content/uploads/topics_190130.pdf、2020-03-04
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基板と窓部材との間の封止性、接合信頼性について一層の向上が求められている。紫外光を放射する半導体発光素子、特にAlGaN系の半導体発光素子は、気密が不十分であると劣化し易く、当該半導体発光素子が搭載された半導体装置には高い気密性が求められる。
【0009】
また、AlGaN系結晶は水分によって劣化する。特に、発光波長が短波長になるほどAl組成が増加して劣化し易い。そこで、発光素子を収めるパッケージ内部に水分が侵入しない気密構造として、基板とガラス蓋を金属接合材で気密する構造が採用されていたが、多湿環境下又は水回りで使用される場合に気密が十分でないという問題があった。
【0010】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、長期の使用においても高い気密性が維持される高い信頼性、及び、耐湿性、耐腐食性など高い耐環境性を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1実施形態による半導体発光装置は、
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子が搭載されるとともに、環形状を有する基板金属層が固着された基板接合面を有する基板接合面を備えた基板と、
ガラスからなり、前記半導体発光素子の放射光を透過する窓部と、前記基板金属層に対応する大きさを有する環形状のフランジ金属層が固着されたフランジ接合面を有するフランジとを備え、前記半導体発光素子を収容する空間を有して前記基板に封止接合された透光キャップと、を有し、
前記フランジ金属層は、前記フランジに固着され、前記フランジとの線熱膨張係数差が1 ×10-6・K-1以内の第1の金属層と、前記第1の金属層上に形成された第2の金属層とからなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。
【
図1B】半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。
【
図1C】半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
【
図1D】半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す図である。
【
図1E】第1の実施形態の透光キャップ13の1/4部分を模式的に示す斜視図である。
【
図2A】
図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
【
図2B】
図2Aの接合部(W部)の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図3A】基板11と透光キャップ13の接合前の状態を模式的に示す断面図である。
【
図3B】基板11と透光キャップ13の接合後の状態を模式的に示す断面図である。
【
図4A】基板11及びフランジ部13Bの接合部の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図4B】基板11及びフランジ部13Bの接合部の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図5】第2の実施形態による半導体発光装置30における、基板11及びフランジ部13Bの接合部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図6A】フランジ金属層21と基板金属層12との接合方法について説明する部分拡大断面図である。
【
図6B】フランジ金属層21と基板金属層12との接合方法について説明する部分拡大断面図である。
【
図7】基板金属層12がフランジ金属層21の最表面金属層である金属層21Mと同一金属のCu層(金属層12M)である場合を示す部分拡大断面図である。
【
図8A】接合部24と半導体発光素子15が接合された配線電極14との間に溝11Gが形成されていることを示す部分拡大断面図である。
【
図8B】第2の実施形態による半導体発光装置30の内部構造及び基板11の上面を模式的に示す上面図である。
【
図9A】第3の実施形態による半導体発光装置50の断面を模式的に示す断面図である。
【
図9B】基板11と平板状の透光キャップ13とが接合された部分Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
【
図10】押圧環21Aの他の構造を模式的に示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
[第1の実施形態]
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。
図1Bは、半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。
図1Cは、半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
図1Dは、半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す図である。
図1Eは、透光キャップ13の1/4部分を模式的に示す斜視図である。
【0014】
また、
図2Aは、
図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
図2Bは、
図2Aの接合部(W部)の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
【0015】
図1A及び
図1Bに示すように、半導体発光装置10は、矩形板形状の基板11と、半円球状のガラスからなる透光性窓である透光キャップ13と、が接合されて構成されている。より詳細には、基板11の上面上には、円環状の金属層12(以下、基板金属層12ともいう。)が形成され、透光キャップ13と接合されている。
【0016】
なお、基板11の側面がx方向及びy方向に平行であり、基板11の上面がxy平面に平行であるとして示している。
【0017】
図1E及び
図2Aに示すように、透光キャップ13は、半円球状のドーム部13Aと、ドーム部13Aの底部に設けられたフランジ部13Bとからなる。
【0018】
図2Bには、フランジ部13B及びフランジ部13Bに固着された金属層が拡大して示されている。フランジ部13Bは円環板形状を有している。フランジ部13Bの底面にはフランジ金属層21が固着されており、フランジ接合面が形成されている。
【0019】
より詳細には、フランジ金属層21は、フランジ部13Bの底面に固着された低熱膨張金属層21K(第1の金属層)と、その上に形成された下地金属/金(Au)層21L(第2の金属層)とからなる。低熱膨張金属層21Kは、例えばニッケル-コバルト-鉄(Ni-Co-Fe)系低熱膨張金属、又はコバール(Kovar)(登録商標)である。下地金属/金層21Lは、例えばニッケルを下地金属とするニッケル/金層(Ni/Au層)である。すなわち、本実施例の場合、フランジ金属層21は、Kovar/Ni/Au層として構成されている。例えば、Ni-Co-Fe金属と同じ熱膨張係数に調整されたガラスとNi-Co-Fe金属とを溶着した接合部の強度は、約数百℃以上の耐熱性と高い圧縮応力耐性を有する。
【0020】
なお、下地金属/金(Au)層21Lにおいて、下地金属及び金(Au)の間にPd、Pt等のバリア金属を挿入してもよい。
【0021】
基板金属層12上にキャップ接合層22によってフランジ金属層21が接合されることによって接合部24が形成され、基板11と透光キャップ13との気密が保たれている。
【0022】
基板11は、ガス等を透過しないセラミック基板である。例えば、高い熱伝導率を有し、気密性に優れた窒化アルミニウム(AlN)が用いられる。AlNセラミックの熱伝導率は150~170(W/m・K)であり、また熱膨張係数は4.5~4.6 (10-6・K-1)である。
【0023】
なお、基板11の基材としては、アルミナ(Al2O3)等の気密性に優れた他のセラミックを用いることができる。
【0024】
透光キャップ13は、半導体発光装置10内に配された発光素子15からの放射光を透過する透光性のガラスからなる。例えば、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス又は珪酸塩系ガラスを好適に用いることができる。
【0025】
本実施例の接合部24においては、固いが脆いAlN基板11と、展性のあるフランジ金属層21と、固いが脆い透光キャップ13で構成されている。コバール(Kovar)(登録商標)等の低熱膨張金属層21Kは展延性を有し、基板11と透光キャップ13と間で応力緩衝体として機能する。
【0026】
また、接合される部材の熱膨張係数(線熱膨張係数)の差を1 (×10-6・K-1)以内とすることで、発光素子15の駆動による熱履歴、雰囲気温度等の変動による気密接合部24へ掛かる応力の低減を可能としている。すなわち、透光キャップ13と低熱膨張金属層21Kとの熱膨張係数の差を1 (×10-6・K-1)以内、又は低熱膨張金属層21Kと基板11との熱膨張係数の差を1 (×10-6・K-1)以内であることが好ましい。
【0027】
具体的には、珪酸塩系ガラスの透光キャップ13の熱膨張係数α=5.8(×10-6・K-1)、低熱膨張金属層21Kのコバール(登録商標)の熱膨張係数α=5.1 (×10-6・K-1)、AlNセラミックの基板11の熱膨張係数α=4.5(×10-6・K-1)である。
【0028】
半導体発光装置10内の封入ガスとしては、ドライな窒素ガスや酸素含有割合が低いドライな空気などを用いることができ、あるいは内部を真空としてもよい。
【0029】
図1Dに示すように、基板11上には、半導体発光装置10内の配線電極である第1配線電極(例えば、アノード電極)14A及び第2配線電極(例えば、カソード電極)14Bが備えられている(以下、特に区別しない場合には、配線電極14と称する。)。発光ダイオード(LED)又は半導体レーザなどの半導体発光素子15が第1配線電極14A上に金属接合層15Aによって接合され、発光素子15のボンディングパッド15Bがボンディングワイヤ18Cを介して第2配線電極14Bに電気的に接続されている。
【0030】
発光素子15は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層を含む半導体構造層が形成されたアルミ窒化ガリウム(AlGaN)系の半導体発光素子(LED)である。また、発光素子15は、半導体構造層が、反射層を介して導電性の支持基板(シリコン:Si)上に形成(接合)されている。
【0031】
発光素子15は、支持基板の半導体構造層が接合された面の反対面(発光素子15の裏面とも称する)にアノード電極を備え(図示せず)、基板11上の第1配線電極14Aに電気的に接続されている。また、発光素子15は、半導体構造層の支持基板が接合された面の反対面(発光素子15の表面とも称する)にカソード電極(パッド15B)を備え、ボンディングワイヤを介して第2配線電極14Bに電気的に接続されている。
【0032】
発光素子15は、前述するように支持基板に半導体構造層を接合したタイプ以外に、半導体構造層から放射される光を透光する成長基板上に半導体構造層を有するものを用いることもできる。
例えば、成長基板が導電性の場合においては、成長基板の裏面(半導体構造層の反対の面)にカソード電極を備え(図示せず)、半導体構造層の上面にアノード電極(ボンディングワイヤ接続用のパッド電極)を備える。当該発光素子は、カソード電極を第1配線電極14A上に金属接合層15Aを介して接合され、パッド電極と第2配線電極14Bはボンディングワイヤ18Cを介して電気的に接続される。
【0033】
また、成長基板が絶縁性の場合においては、半導体構造層の上面側のp型半導体層上にアノード電極を備え、n型半導体層上にカソード電極を備える。当該発光素子は、アノード電極とカソード電極の各々を、第1配線電極14Aと第2配線電極14Bの各々に、金属接合層を介して接合されている。
【0034】
発光素子15は、波長265~415nmの紫外光を発光する窒化アルミ系の発光素子であることが好適である。具体的には、発光中心波長が、265nm、275nm、355nm、365nm、385nm、405nm又は415nmの発光素子を用いた。
【0035】
窒化アルミ系の紫外線を放射する発光素子(UV-LED素子)を構成する半導体結晶のAl組成は高く、酸素(O2)や水分(H2O)によって酸化劣化され易い。なお、発光素子15の第1配線電極14Aへの接合にフラックス等の有機物を含む接合部材を用いた場合には、当該残留フラックス(有機物)による発光素子表面への炭化物堆積が起こる。封入ガスに若干のO2を混合することで炭化物堆積は防止でき、同時に、混合したO2は発光素子15を劣化させる以前に不活性化されるので問題とならない。
【0036】
また、基板11上には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bに接続されたツェナーダイオード(ZD)である保護素子16が設けられ、発光素子15の静電破壊を防止する。
【0037】
図1Cに示すように、基板11の裏面には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bにそれぞれ接続された第1実装電極17A及び第2実装電極17B(以下、特に区別しない場合には、実装電極17と称する。)が設けられている。具体的には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bの各々は、金属ビア18A、18B(以下、特に区別しない場合には、金属ビア18と称する。)を介してそれぞれ第1実装電極17A及び第2実装電極17Bに接続されている。
【0038】
配線電極14、実装電極17及び金属ビア18は、例えば、タングステン/ニッケル/金(W/Ni/Au)、もしくは、ニッケルクロム/金/ニッケル/金 (NiCr/Au/Ni/Au)である。
【0039】
図2Aを参照すると、半導体発光装置10は配線回路基板(図示しない)上に実装されるように構成され、第1実装電極17A及び第2実装電極17Bへの電圧印加によって、発光素子15は発光し、発光素子15の表面(光取り出し面)からの放射光LEは透光キャップ13を経て外部に放射される。
【0040】
次に、基板11と透光キャップ13のフランジ部13Bとの接合について説明する。
(透光キャップ13及びフランジ部13B)
まず、
図1A、
図1B及び
図1Eに示すように、透光キャップ13は、半円球状の窓部であるドーム部13Aと、ドーム部13Aの底部(端部)から延在するフランジ部13Bとからなる。フランジ部13Bは円柱状の外形を有している。より詳細には、フランジ部13Bの底面はドーム部13Aの中心と同心の円環形状(中心:C)を有している。すなわち、フランジ部13Bの外縁(外周)は、フランジ部13Bの内縁(内周)と同心である。
【0041】
図3Aは、基板11と透光キャップ13の接合前の状態を模式的に示す断面図である。フランジ部13Bの円環状底面の半径方向(幅方向)の中央部には、フランジ部13Bの底面(フランジ接合面)と同心円の円周に沿って凸部13Cが形成されている。すなわち、フランジ部13Bの底面は、平坦面と当該平坦面から突出した凸部13Cとが形成されている(以後、円環状凸部と称することもある)。また、円環状凸部13Cの当該同心円の円周に垂直な断面形状は半円形であるが、これに限定されない。例えば、矩形状又は台形状であってもよい。
(フランジ金属層21)
また、上記したように、フランジ部13Bの底面にはフランジ金属層21が固着されている。フランジ金属層21は低熱膨張金属/Ni/Au層(Au層が最表面層)として形成されている。凸部13C及びフランジ金属層21によって、フランジ部13Bの底面に沿って、表面が金属で被覆された円環状の凸部である押圧環21Aが形成されている。
【0042】
このようなフランジ金属層21は、予め成形した透光キャップ13の底面に、当該底面に対応した形状に成形した低熱膨張金属を900℃で溶着して低熱膨張金属層21Kを形成し、次に低熱膨張金属層21Kの表面に下地金属/金層21Lを電子ビーム蒸着(EB蒸着)等によって積層することで形成できる。
【0043】
なお、押圧環21Aの形成は、上記の構造に限定されるものではない。例えば、
図10に示すように、フランジ部13Bの底面を平坦面とし、当該平坦底面に対応し、円環状凸部21Cを有する形状に成形した低熱膨張金属をフランジ部13Bの当該平坦底面に溶着して低熱膨張金属層21KC(第1の金属層)を形成してもよい。
【0044】
この場合、低熱膨張金属層21KCの表面に下地金属/金層21Lを電子ビーム蒸着(EB蒸着)等によって積層することでフランジ金属層21を形成することができる。
【0045】
すなわち、低熱膨張金属層21KC(第1の金属層)の円環状凸部21C及び低熱膨張金属層21KC上に形成された下地金属/金層21Lは、円環形状を有するフランジ部13Bの平坦底面から突出し当該円環と同心の円環状凸部である押圧環21Aとして機能する。
なお、以下において、低熱膨張金属層21Kと平坦底面に溶着される低熱膨張金属層21KCとを特に区別しない場合には、低熱膨張金属層21Kとして説明する。
(基板金属層12)
図1A及び
図1Dに示すように、基板11上には、円環形状を有する金属環体である基板金属層12が固着され、基板接合面が形成されている。より詳細には、基板金属層12が固着されている基板11の接合領域は平坦であり、基板金属層12は、フランジ部13Bの底面に対応する形状(すなわち、円環形状)及び大きさを有している。あるいは、基板金属層12は、フランジ部13Bの底面のフランジ金属層21の全体を包含する大きさを有している。
【0046】
基板金属層12は、第1配線電極14A、第2配線電極14B、発光素子15及び保護素子16とは電気的に絶縁され、これらを取り囲むように形成されている。
【0047】
円環状の基板金属層12上に、円環状の接合材が載置され、加熱しつつ、透光キャップ13に力Fを印加し押圧することによって、
図3Bに示すように、基板11に透光キャップ13が接合された円環状のキャップ接合層22が形成される。
【0048】
基板金属層12は、基板11上に、順にタングステン/ニッケル/金を積層した構造(W/Ni/Au)あるいは、ニッケルクロム/金/ニッケル/金を積層した構造(NiCr/Au/Ni/Au)を有している。
【0049】
キャップ接合層22となる接合材は、例えば、フラックスを含まない円環状のAuSn(金スズ)シートであり、Snを20wt%含有するもの(溶融温度:約280℃)を用いた。金スズ合金シートの両表面に、Au(10~30nm)層を備えることもできる。AuSn合金の酸化を防ぎ、後述するキャップ接合工程において安定な接合を可能とするので気密性を向上する。また、このAu層は、溶融固化(接合)時に、キャップ接合層22に溶解される。
[発光装置10の製造方法]
以下に、発光装置10の製造方法について、詳細かつ具体的に説明する。
(素子接合工程)
まず、基板11の第1配線電極14A上に、素子接合のための揮発性ソルダーペーストはんだを塗布する。揮発性ソルダーペーストとしては、融点付近に沸点を有するフラックスと金錫合金(Au-Sn)の微粒子からなる揮発性ソルダーペーストはんだを用いた。金錫合金の組成は、溶融温度が約300℃となるAu-Sn:22wt%のものを用いた。これは、キャップ接合層22(Au-Sn:20wt%)より溶融温度を高くし、キャップ接合工程中に発光素子15を接合している金属接合層15Aが再溶融して、発光素子15が脱落することを防ぐ。粒子サイズは、数nm~数十μmである。フラックスは、例えば、発光素子15の光(365nm)で炭化するロジン類、アルコール類、糖類、エステル類、脂肪酸類、油脂類、重合油類、界面活性剤等からなる有機物である。
【0050】
次に、発光素子15を揮発性ソルダーペースト上に載せて、基板を330℃まで加熱して、AuSnを溶融・固化して第1配線電極14A上に発光素子15を接合する。なお、保護素子16を搭載する場合には同時に行う。このとき、揮発性ソルダーペーストに含まれるフラックスは殆ど揮発する。このように形成された金属接合層15Aの融点は、発光素子15の裏面電極と、第1配線電極14Aの表面に設けられたAu層を融解して固化するので330℃以上となる。
【0051】
次に、発光素子15の上部電極のボンディングパッド15Bと第2配線電極14Bとの間をボンディングワイヤ18C(Auワイヤ)によって電気的に接続する。
(キャップ接合工程)
素子接合工程後の基板11と、透光キャップ13とをキャップ接合装置にセットする。次に、基板11及び透光キャップ13の雰囲気を真空状態にし、温度275℃で15分加熱処理(アニール処理)する。
【0052】
続いて、基板11及び透光キャップ13の雰囲気を封入ガスであるドライ窒素(N2)ガス、1気圧(101.3kPa)で満たす。次に、基板11の基板金属層12上に環状AuSnシート(キャップ接合層22の接合材)載せ、さらにその上に透光キャップ13を載せ押圧する。
【0053】
図3Aに示すように、透光キャップ13を環状AuSnシートに押圧しつつ、300℃まで加熱する。加熱により、AuSnシートは押圧環21Aに密着した部分から内側および外側に向かって溶融し、金属層12および21の金を若干量溶融しつつ固化する、又は冷却により固化する(
図3B)。以上のように、基板11及び透光キャップ13が接合され、半導体発光装置10が完成する。
【0054】
なお、本工程で用いた環状AuSnシートにはAu-Sn20wt%(溶融温度280℃)のAu-Sn合金を用いた。
[基板11及びフランジ部13Bの接合部]
上記した基板11及びフランジ部13Bの接合によって、
図4Aに示すように、押圧環21Aが溶融したAuSnを押し広げた円環状の領域が狭窄接合領域JNを形成する。また、押圧環21Aの内側及び外側、すなわち狭窄接合領域JNの内側及び外側に、上面視において(フランジ部13Bに垂直な方向(z方向)から視たとき)、それぞれ円環状の内側接合領域JIと外側接合領域JOが形成される。
【0055】
この場合、押圧環21Aの頂部及び基板金属層12は、押圧環21Aの頂部の全周に渡って一定の間隔(間隙)GAで接合される。なお、以下においては、説明及び理解の容易さのため、内側領域JI、狭窄接合領域JN及び外側接合領域JOの幅をそれぞれ同一符号(JI、JN、JO)を用いて説明する。
【0056】
なお、上記接合工程において、さらに押圧環21Aが溶融したAuSnを押し広げ、押圧環21Aの頂部が基板金属層12に突き当たるまで押圧することができる。この場合、
図4Bに示すように、押圧環21Aの頂部と基板金属層12とが接する円形状の接続線、すなわち押圧環21A及び基板金属層12の間に接合材(AuSn)が存在しない円形状の接続部JLが形成され、この部分に線状の気密構造が形成される。
【0057】
すなわち、押圧環21Aの頂部が基板金属層12に密着した円形状の気密構造が形成される。この場合、円形状の接続部JLにおいて、押圧環21Aの頂部及び基板金属層12の間隔(間隙)GA=0である。
【0058】
上記したように、押圧環21Aによって、キャップ接合層22は、押圧環21Aの中心を境に、内側接合領域JI、狭窄接合領域JN及び外側接合領域JOの3領域に区分される。押圧環21Aは、接合材の押圧部であると同時に、キャップ接合層22の領域区分、及び位置決めの機能を有する。
【0059】
また、押圧環21Aは、押圧環21Aの頂部と基板金属層12との間の間隙(ギャップ)GAの制御による接合材のオーバーフロー防止の機能を有する。
【0060】
内側接合領域JI及び外側接合領域JOは、押圧環21Aに対してフィレットとしての機能を有し、シェア強度、すなわち横方向(接合面に平行な方向)の破壊強度を向上する。
【0061】
さらに、間隙GA=0の場合には、狭窄接合領域JNは、押圧環21Aの頂部と基板金属層12とが位置JL(
図4B)で線状(円状)に接した線状気密として働き、内側接合領域JI及び外側接合領域JOは、帯状気密として働く。
【0062】
従って、接合結晶部を薄く、もしくは無くすことができ、リーク発生の原因となる金属粒界面の面積を極小化できるため、気密歩留まりを向上できる。
【0063】
また、内側接合領域JI及び外側接合領域JOのキャップ接合層22は、押圧環21Aを起点に内側および外側に向かって溶融しつつ固化するので応力の内在を防ぎ、接合層22を形成する金属粒界間に間隙ができることを防止できるため、気密歩留まりを向上できる。
【0064】
狭窄接合領域を採用し、線状気密又は帯状気密にすることにより、接合不良が発生する領域を小さくできるため、気密性を向上することができる。また、リーク発生の原因となる金属粒界面の面積を極小化できるため、気密性を向上することができる。さらに、狭窄接合領域とその両側に気密構造を有するため高い気密信頼性が得られる。また、さらに、金属粒界間に間隙ができることを防止できるため、気密性を向上することができる。
【0065】
なお、押圧環21Aは、内側接合領域JI及び外側接合領域JOの幅が等しくなる(すなわち、幅JI=JO)ように構成されていることが好ましい。すなわち、押圧環21Aは、円環状のフランジ金属層21(フランジ接合面)の当該円環の幅の中心を円周とする円に沿って設けられている。
【0066】
また、フランジ金属層21に低熱膨張金属層21Kを用いることによって、ガラス製のフランジ部13Bの円環状凸部13Cが保護され、キャップ接合工程において力が集中する円環状凸部13Cが欠けるなどして気密不良を起こすことを防止できる。
【0067】
また、フランジ部13Bの底面を平坦にして、円環状凸部21Cを有する形状に成形した低熱膨張金属をフランジ部13Bの当該平坦底面に溶着して低熱膨張金属層21KCを設ける構造によって、透光キャップ13を基板11へ強く押圧することが可能となり、押圧環21Aの先端を基板金属層12に接触させることができる(GA=0)。
【0068】
また、透光キャップ13の窓部であるドーム部13Aの肉厚は、全体が等厚であるように、又は中央部を厚く(凸メニスカスレンズ)して配光を狭くし、又は周囲を厚く(凹メニスカスレンズ)して配光を広くすることができる
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態による半導体発光装置30における、基板11及びフランジ部13Bの接合部を拡大して示す部分拡大断面図である。
【0069】
本実施形態の半導体発光装置30が、上記した第1の実施形態の半導体発光装置10と異なるのはフランジ部13B及び基板11の接合部であり、その他の構成は第1の実施形態の半導体発光装置10と同様である。
【0070】
本実施形態の半導体発光装置30においては、フランジ金属層21がナノサイズ金属粒子の接合層22によって基板金属層12に接合されることによって接合部24が形成され、基板11と透光キャップ13との気密が保たれている。
(フランジ金属層21)
フランジ部13Bの底面は円環形状を有し、フランジ部13Bの底面にはフランジ金属層21が固着されている。フランジ金属層21は、低熱膨張金属層21K及び金属層21Mから構成されている(金属層21Mが最表面)。より具体的には、フランジ金属層21は、コバール(登録商標)/Cu層からなる。
(基板金属層12)
再度、
図1A及び
図1Dを参照すると、基板11上には、円環形状を有する金属環体である基板金属層12が固着され、基板接合面が形成されている。基板金属層12は、フランジ部13Bの底面に対応する形状(すなわち、円環形状)及び大きさを有している。あるいは、基板金属層12は、フランジ部13Bの底面のフランジ金属層21の全体を包含する形状及び大きさを有していてもよい。
【0071】
基板金属層12は、低熱膨張金属層12K(第3の金属層)及び金属層12M(第4の金属層)から構成されている(金属層12Mが最表面)。より具体的には、コバール(登録商標)層/Cu層からなる。基板金属層12は、セラミック基板である基板11にAMB(Active Metal Brazing)法によってコバール(登録商標)/Cu箔を接合することができる。
【0072】
基板金属層12の最表面層(金属層12M)は、フランジ金属層21の最表面層又は終端金属層(金属層21M)と同一の金属(本実施形態の場合、Cu)の層によって形成されている。
(接合層22及び接合方法)
本実施形態の接合層22は、銅ナノ粒子によって形成されている。
図6A及び
図6Bを参照してフランジ金属層21と基板金属層12との接合方法について説明する。
【0073】
図6Aに示すように、低熱膨張金属層21K及び最表面金属層(Cu層)21Mからなるフランジ金属層21の下面(最表面金属層の表面)に銅ナノ粒子混合液を塗布する。
【0074】
塗布して形成した銅ナノ粒子の堆積体を100~300℃で加熱して残留溶媒(及び仮バインダー)を除去する。溶媒(仮バインダー)が除去された銅ナノ粒子は、バインダー除去時の加熱により弱く結着(弱く焼結)する。
【0075】
次に、基板11と透光キャップ13とを押圧して密着させて固定する。このとき、仮結着した銅ナノ粒子は破砕され、フランジ金属層21及び基板金属層12に食い込ませつつ広げる。
【0076】
続いて、
図6Bに示すように、発光素子15の金属接合層15Aが再溶融しないように、基板11の裏面を冷却しつつ、フランジ部13Bのガラス面外側からレーザ光LBを照射し、フランジ金属層21、銅ナノ粒子(金属ナノ粒子接合層22)及び基板金属層12を200~500℃に加熱して、銅ナノ粒子を焼結し、気密性のキャップ接合層を形成する。焼結温度は、200℃なら30~180分程度、500℃なら数分程度加熱して銅ナノ粒子を焼結する。尚、Au-Snなど素子接合部材の再溶融温度(330℃程度)以下で焼成する場合は、全体をオーブンで加熱して焼結しても良い。
【0077】
以上のように、フランジ金属層21及び基板金属層12が、ナノサイズ金属粒子の焼結層である接合層22によって接合され、基板11と透光キャップ13との気密封止が保たれる。
【0078】
本実施形態の発光装置においては、フランジ部13Bと、フランジ金属層21のフランジ部13Bと接合する側の金属を低熱膨張金属層21Kとしたことで高い接合強度と高温下における熱膨張係数差を小さくでき、高温下においてもフランジ13Bと低熱膨張金属層21Kが剥離することがないので、フランジ部13側から高出力のレーザ光による加熱を可能としている。
【0079】
なお、
図7に示すように、基板金属層12がフランジ金属層21の最表面金属層である金属層21Mと同一金属のCu層(金属層12M)のみで構成されていても良い。この場合、基板金属層12(すなわち、金属層12M)は、AMB(Active Metal Brazing)法又はDBC(Direct Bonding of Copper)法等によって基板11上に接合して形成することができる。
(ナノサイズ金属粒子の接合層22)
接合層22のナノサイズ金属粒子は、銅ナノ粒子に限らず、他の金属、例えば金(Au)又は銀(Ag)等であっても良い。フランジ金属層21及び基板金属層12の最表面層(金属層12M)を金(Au)層とする場合には、当該最表面金属層と同一金属のナノサイズ金属粒子である金ナノ粒子を用いる。
【0080】
例えば、基板金属層12の場合、AMB法等によって基板11上に接合されたCu層上に、Ni/Auメッキを施して最表面金属層が金(Au)層である金属層12Mを形成しても良い。
[第2の実施形態の改変例]
図8Aは第2の実施形態の改変例であり、例えば高周波加熱装置を用いて金属ナノ粒子接合層22及び基板金属層12を加熱して、金属ナノ粒子を焼結し、気密性のキャップ接合層を形成する場合を模式的に示している(図中RFは高周波加熱装置の誘導コイルである)。
図8Bは、半導体発光装置30の内部構造及び基板11の上面を模式的に示す上面図である。
【0081】
本改変例においては、
図6Aに示した場合と同様に、フランジ金属層21が低熱膨張金属層21K及び金属層(Cu層)21Mによって構成され、基板金属層12が低熱膨張金属層12K及び金属層12Mによって構成されている。
【0082】
フランジ金属層21の下面に金属ナノ粒子混合液が塗布され、100~300℃の加熱により溶媒(及び仮バインダー)が除去された後、誘導コイルRFによって200~500℃に加熱され、金属ナノ粒子を焼結して、気密性のキャップ接合層22が形成される。
【0083】
本実施形態の発光装置においては、フランジ部13Bと、フランジ金属層21のフランジ部13Bと接合する側の金属を低熱膨張金属層21Kとしたことで高い接合強度と高温下における熱膨張係数差を小さくでき、高温下においてもフランジ13Bと低熱膨張金属層21Kが剥離することがないので、高出力の誘導加熱を可能としている。
【0084】
本改変例においては、
図8A及び
図8Bに示すように、基板11には、接合部24と半導体発光素子15が接合された搭載部との間、すなわち半導体発光素子15が接合された配線電極14との間に、断熱のための溝11Gが環状に形成されている。誘導コイルRF又はレーザ光LBなどによって金属ナノ粒子を焼結する際の熱が半導体発光素子15等の接合部へ伝達することを抑制できる。
[第3の実施形態]
図9Aは、本発明の第3の実施形態による半導体発光装置50の断面を模式的に示す断面図である。半導体発光装置50は上記した実施形態の半導体発光装置10,30とは異なり、透光キャップ13は円盤状の平板である。
図9Bは、基板11と透光キャップ13とが接合された部分Wを拡大して示す部分拡大断面図である。
【0085】
より詳細には、透光キャップ13の円環形状の外縁部がフランジ部13Bであり、その内側が透光部である窓部13Aである。フランジ部13Bの底面(すなわち、透光キャップ13の底面の円環形状外周部)には円環形状のフランジ金属層21が固着されている。
【0086】
図9Bに示すように、フランジ金属層21がナノサイズ金属粒子の接合層22によって基板金属層12に接合されることによって接合部24が形成され、基板11と透光キャップ13との気密が保たれている。
【0087】
本実施形態の半導体発光装置50においては、基板11は、半導体発光素子15をその内部に収容する空間である凹部RCを有している。より詳細には、基板11は、基板11の外周部に立設されて形成された枠11Aによって画定される円柱状の凹部RCを有するハウジング構造(枠構造)として構成されている。枠11Aの平坦な頂面上に透光キャップ13が接合されている。半導体発光素子15は、凹部RCの底面の基板11上に接合層15Aによって接合されて設けられている。
【0088】
本実施形態の半導体発光装置50によれば、基板11の枠11Aによって、高周波加熱又はレーザ光LB等によって金属ナノ粒子を焼結する際の熱が半導体発光素子15等の接合部へ伝達することが抑制される。従って、気密封止する際の熱によって半導体発光素子15等及びその接合部が劣化されず、高い気密性能を有する半導体発光装を提供することができる。
【0089】
また、本実施形態による半導体発光装置50においては、透光キャップ13は、円盤状の平板で構成されており、加工が容易であり、基板との接合の均一性も高く、コストも低減できる。なお、透光キャップ13は円盤状に限らず矩形状又は多角形形状等を有していてもよい。また、透光キャップ13の接合面が矩形形状又は多角形形状を有する場合であっても、基板金属層12及びフランジ金属層21の角部に丸み(R面取り)が設けてあれば十分な気密接合性を得ることが可能となる。
【0090】
また、基板11が半導体発光素子15を収容する凹部RCを有する場合、基板金属層12及びフランジ金属層21の形状に応じて、凹部RCは角柱形状、多角柱形状を有していてもよく、また、角部がR面加工(面取り)された角柱形状を有していてもよい。
【0091】
上記したように、本実施形態による半導体発光装置によれば、長期の使用においても高い気密性が維持される高い信頼性、及び、耐湿性、耐腐食性など高い耐環境性を有する半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0092】
10,30 半導体発光装置
11 基板
11A 枠
11G 溝
12 基板金属層
12K:低熱膨張金属層(第3の金属層)
12M:金属層(第4の金属層)
13 透光キャップ
13A 窓部
13B フランジ部
13C,13D 凸部
14,14A,14B 配線電極
15 半導体発光素子
21 フランジ金属層
21A 押圧環
21K、21KC:低熱膨張金属層(第1の金属層)
21M:金属層(第2の金属層)
24:接合部
GA,GB 間隙
JI 内側接合領域
JN 狭窄接合領域
JO 外側接合領域
RC 凹部