(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】光干渉断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/00 20230101AFI20240627BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240627BHJP
H04N 25/53 20230101ALI20240627BHJP
H04N 25/77 20230101ALI20240627BHJP
【FI】
H04N25/00
G01N21/17 630
H04N25/53
H04N25/77
(21)【出願番号】P 2020133011
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2020027369
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 光人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智史
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208812(JP,A)
【文献】特表2014-508922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/53
H04N 25/77
G01N 21/17
G01S 7/481
G01S 17/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
往復動作する可動ミラーを含むミラーデバイスと、
対象物を支持する支持部と、
前記光源から出射された光を第1光及び第2光に分割し、前記可動ミラーによって反射された前記第1光、及び、前記対象物によって反射された前記第2光を結合することで、干渉光を生成するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって生成された前記干渉光を検出する光センサと、
少なくとも前記光センサと電気的に接続された制御部と、を備え、
前記光センサは、複数の画素を含み、
前記複数の画素のそれぞれは、入射光に応じて電荷を発生する受光部、前記受光部で発生した電荷を転送するための複数の転送ゲート、及び、前記受光部で発生した電荷を排出するための排出ゲートを含み、
前記制御部は、前記干渉光のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた少なくとも3つの時間範囲において前記複数の転送ゲートが順次に電荷転送状態となり、且つ、前記少なくとも3つの時間範囲以外の時間範囲において前記排出ゲートが電荷排出状態となるように、前記光センサに電気信号を付与する、光干渉断層撮影装置。
【請求項2】
前記可動ミラーは、前記ミラーデバイスにおいて共振動作することで往復動作する、請求項1に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項3】
前記可動ミラーは、1kHz以上の周波数で往復動作する、請求項1又は2に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項4】
前記複数の画素は、二次元に配列されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項5】
前記ミラーデバイスは、MEMSミラーデバイスである、請求項1~4のいずれか一項に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項6】
前記複数の画素のそれぞれは、前記受光部で発生した電荷を前記複数の転送ゲート及び前記排出ゲート側に引き寄せるフォトゲート電極を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項7】
前記少なくとも3つの時間範囲のそれぞれは、前記インターフェログラム信号の位相がπ/2ずつずれた時間を中心とする時間範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の光干渉断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層撮影装置として、TD-OCT(Time Domain-Optical Coherence Tomography)と称される手法を利用した装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。TD-OCTでは、光源から出射された光を第1光及び第2光に分割し、第1光を可動ミラーに入射させると共に第2光を対象物に入射させる。このとき、光軸方向に沿って可動ミラーを平行移動させながら、可動ミラーによって反射された第1光、及び、対象物によって反射された第2光(具体的には、対象物の内部又は表面で反射又は散乱された第2光)を結合することで、干渉光を生成し、生成した干渉光を検出することで、干渉光のインターフェログラム信号を取得する。取得したインターフェログラム信号をその包絡線に変換し、変換したインターフェログラム信号の包絡線を深さ方向における対象物の構造とみなすことで、対象物の像(断層像)を取得することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Stephan Beer and Peter Seitz, “REAL-TIME TOMOGRAPHIC IMAGING WITHOUTX-RAYS: A SMART PIXEL ARRAY WITH MASSIVELY PARALLEL SIGNAL PROCESSING FORREAL-TIME OPTICAL COHERENCE TOMOGRAPHY PERFORMING CLOSE TO THE PHYSICAL LIMITS”,Published in: Research in Microelectronics and Electronics, 2005 PhD, Date ofConference: 28-28 July 2005, Date Added to IEEE Xplore: 12 December 2005, PrintISBN: 0-7803-9345-7, DOI: 10.1109/RME.2005.1542955, Publisher: IEEE, ConferenceLocation: Lausanne, Switzerland, Page: 135-138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光干渉断層撮影装置においては、干渉光のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することが、対象物の像を精度良く生成する上で重要である。
【0005】
本発明は、干渉光のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる光干渉断層撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光干渉断層撮影装置は、光源と、往復動作する可動ミラーを含むミラーデバイスと、対象物を支持する支持部と、光源から出射された光を第1光及び第2光に分割し、可動ミラーによって反射された第1光、及び、対象物によって反射された第2光を結合することで、干渉光を生成するビームスプリッタと、ビームスプリッタによって生成された干渉光を検出する光センサと、少なくとも光センサと電気的に接続された制御部と、を備え、光センサは、複数の画素を含み、複数の画素のそれぞれは、入射光に応じて電荷を発生する受光部、受光部で発生した電荷を転送するための複数の転送ゲート、及び、受光部で発生した電荷を排出するための排出ゲートを含み、制御部は、干渉光のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた少なくとも3つの時間範囲において複数の転送ゲートが順次に電荷転送状態となり、且つ、少なくとも3つの時間範囲以外の時間範囲において排出ゲートが電荷排出状態となるように、光センサに電気信号を付与する。
【0007】
この光干渉断層撮影装置では、可動ミラーを往復動作させることで、インターフェログラム信号の時間変化を周期的なものとし、インターフェログラム信号の包絡線への変換を容易化している。そして、光センサが含む複数の画素のそれぞれにおいては、干渉光のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた少なくとも3つの時間範囲において複数の転送ゲートが順次に電荷転送状態となり、且つ、当該少なくとも3つの時間範囲以外の時間範囲において排出ゲートが電荷排出状態となる。これにより、少なくとも3つの時間範囲のそれぞれにおいて受光部で発生した電荷のみを信号電荷として取得することができる。よって、この光干渉断層撮影装置によれば、例えば、可動ミラーの往復動作の速さが一定でない場合や、電荷の取得が一定時間間隔で実施されない場合であっても、干渉光のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。
【0008】
本発明の光干渉断層撮影装置では、可動ミラーは、ミラーデバイスにおいて共振動作することで往復動作してもよい。これによれば、干渉光のインターフェログラム信号を高速で取得することができる。また、可動ミラーが共振動作することで、可動ミラーの往復動作の速さが一定とならなくなるが、その場合にも、上述したように、干渉光のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。
【0009】
本発明の光干渉断層撮影装置では、可動ミラーは、1kHz以上の周波数で往復動作してもよい。これによれば、干渉光のインターフェログラム信号を高速で取得することができる。また、可動ミラーが1kHz以上の周波数で往復動作することで、可動ミラーの往復動作の速さが一定となり難くなるが、その場合にも、上述したように、干渉光のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。
【0010】
本発明の光干渉断層撮影装置では、複数の画素は、二次元に配列されていてもよい。これによれば、対象物における所定領域の像を一度に生成することができる。
【0011】
本発明の光干渉断層撮影装置では、ミラーデバイスは、MEMSミラーデバイスであってもよい。これによれば、可動ミラーを高速で往復動作させることができる。
【0012】
本発明の光干渉断層撮影装置では、複数の画素のそれぞれは、受光部で発生した電荷を複数の転送ゲート及び排出ゲート側に引き寄せるフォトゲート電極を更に含んでもよい。これによれば、受光部で発生した電荷の転送及び排出を高速で実施することができるため、対象物の像を短時間で生成することができる。
【0013】
本発明の光干渉断層撮影装置では、少なくとも3つの時間範囲のそれぞれは、インターフェログラム信号の位相がπ/2ずつずれた時間を中心とする時間範囲であってもよい。これによれば、干渉光のインターフェログラム信号をその包絡線に変換するための演算を単純化することができる。演算を単純化することで、演算の一部又は全部をハードウエアで実現することが可能となり、全体的な高速処理に寄与することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、干渉光のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる光干渉断層撮影装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態の光干渉断層撮影装置の構成図である。
【
図2】
図1に示されるミラーデバイスの平面図である。
【
図3】
図2に示されるIII-III線に沿ってのミラーデバイスの断面図である。
【
図4】
図1に示される光センサの画素の平面図である。
【
図6】信号電荷の蓄積動作を説明するためのポテンシャル分布図である。
【
図7】不要電荷の排出動作を説明するためのポテンシャル分布図である。
【
図8】
図1に示される光センサの各画素において取得される干渉光のインターフェログラム信号を示すグラフである。
【
図9】
図1に示される光センサの各画素に付与される電気信号のタイミングチャートである。
【
図10】可動ミラーの位置の時間変化と干渉光の強度の時間変化との関係を示すグラフである。
【
図11】可動ミラーの位置の時間変化と干渉光の強度の時間変化との関係を示すグラフである。
【
図12】可動ミラーの位置の時間変化と干渉光の強度の時間変化との関係を示すグラフである。
【
図13】可動ミラーの位置の時間変化と干渉光の強度の時間変化との関係を示すグラフである。
【
図15】変形例の光センサの受光部を説明するための図である。
【
図16】変形例の光センサの受光部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[光干渉断層撮影装置の構成]
【0017】
図1は、一実施形態の光干渉断層撮影装置の構成図である。
図1に示される光干渉断層撮影装置100は、TD-OCTを利用した装置である。光干渉断層撮影装置100は、光源10と、ミラーデバイス20と、支持部30と、ビームスプリッタ40と、光センサ50と、制御部60と、を備えている。
【0018】
光源10は、低コヒーレント光である光L0を出射する。光源10は、例えば、650nmの中心波長及び20μmのコヒーレンス長を有する光を出射するSLD(Super Luminescent Diode)である。
【0019】
ミラーデバイス20は、可動ミラー21を含んでいる。可動ミラー21は、可動ミラー21のミラー面21aに垂直な方向に沿って往復動作する。
【0020】
支持部30は、対象物Sを支持する。支持部30は、例えば、対象物Sを搬送するベルトコンベアである。対象物Sは、例えば、包装用の透明プラスチックフィルムである。
【0021】
ビームスプリッタ40は、光源10から出射された光L0を第1光L1及び第2光L2に分割し、可動ミラー21によって反射された第1光L1、及び、対象物Sによって反射された第2光L2(具体的には、対象物Sの内部又は表面で反射又は散乱された第2光L2)を結合することで、干渉光L10を生成する。
【0022】
光センサ50は、ビームスプリッタ40によって生成された干渉光L10を検出する。光センサ50は、複数の画素51、及び、CMOS読出回路(図示省略)を含んでいる。複数の画素51は、二次元に配列されている。複数の画素51、及び、CMOS読出回路(図示省略)は、半導体基板(例えば、シリコン基板)にモノリシックに形成されている。
【0023】
制御部60は、光源10、ミラーデバイス20、支持部30及び光センサ50のそれぞれと電気的に接続されている。制御部60は、各部を動作させるための電気信号を生成して当該電気信号を各部に付与する信号生成部としての機能、及び、光センサ50から出力された電気信号を処理する信号処理部としての機能を有している。制御部60は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)等の集積回路、EEPROM(ElectricallyErasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリ、PC(PersonalComputer)等を含んでいる。
【0024】
本実施形態では、光源10から出射された光L0は、コリメートレンズ70によってコリメートされてビームスプリッタ40に入射する。ビームスプリッタ40に入射した光L0のうち、第1光L1は、ビームスプリッタ40によって反射されて可動ミラー21に入射し、可動ミラー21によって反射されてビームスプリッタ40に入射する。ビームスプリッタ40に入射した光L0のうち、第2光L2は、ビームスプリッタ40を透過して対象物Sに入射し、対象物Sによって反射されてビームスプリッタ40に入射する。
【0025】
ビームスプリッタ40に入射した第1光L1は、ビームスプリッタ40を透過する。ビームスプリッタ40に入射した第2光L2は、ビームスプリッタ40によって反射される。これにより生成された第1光L1及び第2光L2の干渉光L10は、リレーレンズ80を介して光センサ50の各画素51に入射する。リレーレンズ80は、ビームスプリッタ40と光センサ50との間に配置されたレンズによって構成されており、対象物Sの実像を複数の画素51上に結像する。
【0026】
なお、リレーレンズ80は、ビームスプリッタ40と支持部30との間に配置されたレンズによって構成されていてもよい。或いは、リレーレンズ80は、ビームスプリッタ40と光センサ50との間に配置されたレンズ及びビームスプリッタ40と支持部30との間に配置されたレンズによって構成されていてもよい。また、ビームスプリッタ40とミラーデバイス20との間に集光レンズが配置されていてもよい。これは、可動ミラー21のミラー面21aの径が小さい場合に有効である。また、
図1に示されるミラーデバイス20の位置に支持部30が配置され、
図1に示される支持部30の位置にミラーデバイス20が配置されてもよい。
[ミラーデバイスの構成]
【0027】
図2は、
図1に示されるミラーデバイス20の平面図である。
図3は、
図2に示されるIII-III線に沿ってのミラーデバイス20の断面図である。
図2及び
図3に示されるように、ミラーデバイス20は、可動ミラー21に加え、ベース22、枠部23、複数の弾性支持部24を含んでいる。可動ミラー21、ベース22、枠部23及び複数の弾性支持部24は、SOI(Silicon On Insulator)基板200によって構成されている。つまり、ミラーデバイス20は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーデバイスである。SOI基板200は、支持層201、デバイス層202及び中間層203を有している。支持層201及びデバイス層202は、それぞれ、半導体層(例えば、シリコン層)である。中間層203は、支持層201とデバイス層202との間に配置された絶縁層(例えば、酸化シリコン層)である。
【0028】
ベース22は、支持層201によって形成されており、例えば、円板状を呈している。ベース22は、開口22aを有している。開口22aは、ベース22の厚さ方向から見た場合に、例えば、ベース22の中心を中心とする円形状を呈している。ベース22の厚さは、例えば、320μm程度である。
【0029】
枠部23は、デバイス層202によって形成されており、例えば、円環状を呈している。枠部23は、ベース22における中間層203側の表面22bに、中間層203を介して配置されている。枠部23の厚さは、例えば、30μm程度である。中間層203の厚さは、例えば、1.5μm程度である。
【0030】
可動ミラー21は、デバイス層202によって形成されており、例えば、円板状を呈している。可動ミラー21は、枠部23の内側に配置されており、ベース22の厚さ方向において開口22aと対向している。可動ミラー21における開口22aとは反対側の表面21bには、ミラー面21aを構成する金属膜25が配置されている。可動ミラー21の厚さは、例えば、30μm程度である。可動ミラー21の直径は、例えば、500μm程度である。
【0031】
複数の弾性支持部24は、デバイス層202によって形成されている。各弾性支持部24は、ベース22の厚さ方向から見た場合に、例えば、ベース22の中心を中心とする円弧状を呈している。各弾性支持部24は、枠部23と可動ミラー21との間に配置されている。各弾性支持部24の一端は、枠部23に接続されており、各弾性支持部24の他端は、可動ミラー21と接続されている。各弾性支持部24は、ベース22の厚さ方向において、ベース22における開口22aの周辺部分22cと対向している。各弾性支持部24と周辺部分22cとの間には、隙間が形成されている。
【0032】
ベース22の表面22bには、一対の電極パッド26が配置されている。各電極パッド26は、ベース22の表面22bが露出するように枠部23及び中間層203に形成された開口23a内に位置している。枠部23における中間層203とは反対側の表面23bには、一対の電極パッド27が配置されている。一対の電極パッド26及び一対の電極パッド27は、ベース22の厚さ方向から見た場合に、電極パッド26と電極パッド27とが交互いに並ぶように、ベース22の中心を中心として90度間隔で配置されている。各電極パッド26,27には、制御部60(
図1参照)と電気的に接続されたワイヤ28が接続されている。
【0033】
以上のように構成されたミラーデバイス20では、制御部60(
図1参照)からワイヤ28を介して各電極パッド26,27に電気信号が付与されると、各弾性支持部24と周辺部分22cとの間に静電気力が周期的に生じる。これにより、各弾性支持部24が周期的に弾性変形し、可動ミラー21が、ミラー面21aに垂直な方向に沿って往復動作する。可動ミラー21は、ミラーデバイス20において共振動作することで、1kHz以上(例えば、100kHz)の周波数で往復動作する。
[光センサの構成]
【0034】
図4は、
図1に示される光センサ50の画素51の平面図である。
図5の(a)は、
図4に示されるVa-Va線に沿っての画素51の断面図であり、
図5の(b)は、
図4に示されるVb-Vb線に沿っての画素51の断面図である。
図4及び
図5に示されるように、光センサ50は、互いに対向する第1主面1a及び第2主面1bを有する半導体基板1を備えている。半導体基板1は、第1主面1a側に位置するp型の第1半導体領域3と、第1半導体領域3よりも不純物濃度が低く且つ第2主面1b側に位置するp
-型の第2半導体領域5と、からなる。半導体基板1は、例えば、p型の半導体基板上に、当該半導体基板よりも不純物濃度が低いp
-型のエピタキシャル層を成長させることにより得ることができる。半導体基板1の第2主面1b(第2半導体領域5)上には、絶縁層7が形成されている。
【0035】
絶縁層7上には、フォトゲート電極PGが配置されている。フォトゲート電極PGは、例えば、平面視で長方形状を呈している。半導体基板1(第2半導体領域5)におけるフォトゲート電極PGに対応する領域(
図5において、フォトゲート電極PGの下方に位置する領域)は、入射光に応じて電荷を発生する受光部2として機能する。すなわち、光センサ50は、2次元状に配列された複数の受光部2を備えている。
【0036】
第2半導体領域5には、フォトゲート電極PGから離れて位置する領域それぞれに、不純物濃度が高いn型の第3半導体領域9a,9bが対向して形成されている。第3半導体領域9aは、受光部2で発生した電荷を蓄積するための第1電荷蓄積部であり、第3半導体領域9bは、受光部2で発生した電荷を蓄積するための第2電荷蓄積部である。第3半導体領域9a,9bは、フォトゲート電極PGを挟んで対向して配置されている。第3半導体領域9a,9bは、例えば、平面視で正方形状を呈している。
【0037】
第2半導体領域5には、フォトゲート電極PGから離れて位置する領域それぞれに、不純物濃度が高いn型の第3半導体領域9c,9dが対向して形成されている。第3半導体領域9cは、受光部2で発生した電荷を蓄積するための第3電荷蓄積部であり、第3半導体領域9dは、受光部2で発生した電荷を蓄積するための第4電荷蓄積部である。第3半導体領域9c,9dは、フォトゲート電極PGを挟んで対向して配置されている。第3半導体領域9c,9dは、例えば、平面視で正方形状を呈している。
【0038】
第3半導体領域9a,9cは、後述する第4半導体領域11aを挟んで対向して配置されている。第3半導体領域9b,9dは、後述する第4半導体領域11bを挟んで対向して配置されている。
【0039】
第2半導体領域5には、各フォトゲート電極PGから離れて位置する領域それぞれに、不純物濃度が高いn型の第4半導体領域11a,11bが形成されている。第4半導体領域11a,11bは、受光部2で発生した電荷を外部に排出するための電荷排出部である。本実施形態では、第4半導体領域11a,11bは、フォトゲート電極PGに対して3対配置されている。第4半導体領域11a,11bは、フォトゲート電極PGを挟んで対向して配置されている。第4半導体領域11a,11bは、例えば、平面視で正方形状を呈している。
【0040】
なお、本実施形態では、「不純物濃度が高い」とは例えば不純物濃度が1×1017cm-3程度以上のことであって、「+」を導電型に付けて示す。一方、「不純物濃度が低い」とは例えば10×1015cm-3程度以下のことであって、「-」を導電型に付けて示す。各半導体領域の厚さ/不純物濃度は以下のとおりである。第1半導体領域3の厚さ:10~1000μm/不純物濃度:1×1012~1019cm-3。第2半導体領域5の厚さ:1~50μm/不純物濃度:1×1012~1015cm-3。第3半導体領域9a,9b及び第4半導体領域11a,11bの厚さ:0.1~1μm/不純物濃度:1×1018~1020cm-3。
【0041】
半導体基板1(第1半導体領域3及び第2半導体領域5)には、バックゲート又は貫通電極などを介してグランド電位などの基準電位が与えられる。
【0042】
絶縁層7上には、フォトゲート電極PGに対応して、転送電極TX1、転送電極TX2、転送電極TX3及び転送電極TX4が配置されている。転送電極TX1は、フォトゲート電極PGと第3半導体領域9aとの間に位置し、フォトゲート電極PGから離れて配置されている。転送電極TX2は、フォトゲート電極PGと第3半導体領域9bとの間に位置し、フォトゲート電極PGから離れて配置されている。転送電極TX3は、フォトゲート電極PGと第3半導体領域9cとの間に位置し、フォトゲート電極PGから離れて配置されている。転送電極TX4は、フォトゲート電極PGと第3半導体領域9dとの間に位置し、フォトゲート電極PGから離間して配置されている。転送電極TX1~TX4は、例えば、平面視で長方形状を呈している。
【0043】
半導体基板1(第2半導体領域5)における転送電極TX1に対応する領域(
図5において、転送電極TX1の下方に位置する領域)は、受光部2で発生した電荷を第1電荷蓄積部である第3半導体領域9aに転送するための転送ゲート4aとして機能する。半導体基板1(第2半導体領域5)における転送電極TX2に対応する領域(
図5において、転送電極TX2の下方に位置する領域)は、受光部2で発生した電荷を第2電荷蓄積部である第3半導体領域9bに転送するための転送ゲート4bとして機能する。
【0044】
半導体基板1(第2半導体領域5)における転送電極TX3に対応する領域(
図5において、転送電極TX3の下方に位置する領域)は、受光部2で発生した電荷を第3電荷蓄積部である第3半導体領域9cに転送するための転送ゲート4cとして機能する。半導体基板1(第2半導体領域5)における転送電極TX4に対応する領域(
図5において、転送電極TX4の下方に位置する領域)は、受光部2で発生した電荷を第4電荷蓄積部である第3半導体領域9dに転送するための転送ゲート4dとして機能する。
【0045】
絶縁層7上には、フォトゲート電極PGに対応して、複数(ここでは6つ)の転送電極TX5が配置されている。複数の転送電極TX5のうちのフォトゲート電極PGの一方側の一部は、フォトゲート電極PGと第4半導体領域11aとの間に位置し、転送電極TX1及び転送電極TX3を挟んでフォトゲート電極PGから離れて配置されている。複数の転送電極TX5のうちのフォトゲート電極PGの他方側の残部は、フォトゲート電極PGと第4半導体領域11bとの間に位置し、転送電極TX2及び転送電極TX4を挟んでフォトゲート電極PGから離れて配置されている。転送電極TX5は、例えば、平面視で長方形状を呈している。
【0046】
半導体基板1(第2半導体領域5)における一方側の転送電極TX5に対応する領域(
図5において、一方側の転送電極TX5の下方に位置する領域)は、受光部2で発生した電荷を電荷排出部である第4半導体領域11aに転送するための排出ゲート6aとして機能する。半導体基板1(第2半導体領域5)における他方側の転送電極TX5に対応する領域(
図5において、他方側の転送電極TX5の下方に位置する領域)は、受光部2で発生した電荷を電荷排出部である第4半導体領域11bに転送するための排出ゲート6bとして機能する。このように、排出ゲート6a,6bは、受光部2で発生した電荷を排出するためのものである。
【0047】
なお、転送電極TX1~TX5のフォトゲート電極PGとの対向方向の長さ寸法、すなわち、転送電極TX1~TX5のゲート幅は、転送電極TX1~TX5において信号電荷及び不要電荷の高速転送が可能となるフォトゲート電極PGの領域をカバーするように、信号電荷及び不要電荷の転送可能な距離に応じて決定される。
【0048】
絶縁層7には、第1半導体領域3の表面を露出させるためのコンタクトホールが設けられている。コンタクトホール内には、第3半導体領域9a~9d及び第4半導体領域11a,11bを外部に接続するための導体13が配置される。半導体基板は一例としてSiからなり、絶縁層7は一例としてSiO2からなる。フォトゲート電極PG、転送電極TX1~TX5は、一例としてポリシリコンからなる。なお、これらは他の材料を用いてもよい。
【0049】
上述したように、第3半導体領域9a~9dは、入射光に応じて受光部2で発生した電荷を蓄積するためのものである。転送電極TX1~TX4に印加される電荷転送信号の位相は、互いに異なっている。1つの画素51に入射した光は、受光部2において電荷に変換され、受光部2で発生した電荷は、電圧が印加されたフォトゲート電極PGによって、転送ゲート4a~4d及び排出ゲート6a,6b側に引き寄せられる。引き寄せられた電荷は、信号電荷として、フォトゲート電極PG及び転送電極TX1~TX4に印加される電圧により形成されるポテンシャル勾配にしたがって、転送電極TX1~TX4の方向に走行する。
【0050】
転送電極TX1~TX4に正電位を与えると、転送電極TX1~TX4の下のポテンシャルがフォトゲート電極PGの下の部分の半導体基板1(第2半導体領域5)のポテンシャルより電子に対して低くなり、負の電荷(電子)は、転送電極TX1~TX4の方向に引き込まれ、第3半導体領域9a~9dによって形成されるポテンシャル井戸内に蓄積される。
【0051】
n型の半導体は、正にイオン化したドナーを含んでおり、正のポテンシャルを有し、電子を引き付ける。転送電極TX1~TX4に、上記正電位よりも低い電位(グランド電位)を与えると、転送電極TX1~TX4によるポテンシャル障壁が生じ、半導体基板1で発生した電荷は、第3半導体領域9a~9dには引き込まれない。
【0052】
第4半導体領域11a,11bは、入射光に応じて受光部2で発生した不要電荷を収集して外部に排出するためのものである。1つの画素51に入射した光は、受光部2において電荷に変換され、受光部2で発生した電荷は、電圧が印加されたフォトゲート電極PGによって、転送ゲート4a~4d及び排出ゲート6a,6b側に引き寄せられる。引き寄せられた電荷は、不要電荷として、フォトゲート電極PG及び転送電極TX5に印加される電圧により形成されるポテンシャル勾配にしたがって、転送電極TX5の方向に走行する。
【0053】
転送電極TX5に正電位を与えると、転送電極TX5の下のポテンシャルがフォトゲート電極PGの下の部分の半導体基板1(第2半導体領域5)のポテンシャルより電子に対して低くなり、負の電荷(電子)は、転送電極TX5の方向に引き込まれ、第4半導体領域11a,11bによって形成されるポテンシャル井戸内に蓄積される。転送電極TX5に、上記正電位よりも低い電位(グランド電位)を与えると、転送電極TX5によるポテンシャル障壁が生じ、半導体基板1で発生した電荷は、第4半導体領域11a,11b内には引き込まれない。
【0054】
図6は、信号電荷の蓄積動作を説明するための「半導体基板1の第2主面1b近傍におけるポテンシャル分布」を示す図である。
図7は、不要電荷の排出動作を説明するための「半導体基板1の第2主面1b近傍におけるポテンシャル分布」を示す図である。
図6及び
図7では、下向きがポテンシャルの正方向である。
図6において、(a)及び(b)は、
図4の横方向の断面の横方向に沿ったポテンシャル分布を示し、(c)は、
図5の横方向の断面の横方向に沿ったポテンシャル分布を示す。
図7において、(a)は、
図4の横方向の断面の横方向に沿ったポテンシャル分布を示し、(b)は、
図5の横方向の断面の横方向に沿ったポテンシャル分布を示す。
【0055】
図6及び
図7には、転送電極TX1の直下の領域(転送ゲート4a)のポテンシャルφ
TX1、転送電極TX2の直下の領域(転送ゲート4b)のポテンシャルφ
TX2、転送電極TX5の直下の領域(排出ゲート6a,6b)のポテンシャルφ
TX5、フォトゲート電極PG直下の受光部2のポテンシャルφ
PG、第3半導体領域9aのポテンシャルφ
FD1、第3半導体領域9bのポテンシャルφ
FD2、第4半導体領域11aのポテンシャルφ
OFD1、第4半導体領域11bのポテンシャルφ
OFD2が示されている。
【0056】
フォトゲート電極PGの直下の受光部2のポテンシャルφPGは、無バイアス時における隣接する転送電極TX1,TX2、及び、転送電極TX5直下の領域のポテンシャル(φTX1,φTX2,φTX5)を基準電位とすると、この基準電位よりも高く設定されている。この受光部2のポテンシャルφPGはポテンシャルφTX1,φTX2,φTX5よりも高くなり、この領域のポテンシャル分布は図面の下向きに凹んだ形状となる。
【0057】
図6を参照して、信号電荷の蓄積動作を説明する。転送電極TX1に印加される電荷転送信号の位相が0度のとき、転送電極TX1には正の電位が与えられ、転送電極TX2には、逆相の電位、すなわち位相が180度の電位(グランド電位)が与えられる。この場合、
図6の(a)に示されるように、受光部2で発生した負の電荷eは、転送電極TX1直下の領域のポテンシャルφ
TX1が下がることにより、第3半導体領域9aのポテンシャル井戸内に流れ込む。
【0058】
一方、転送電極TX2直下の領域のポテンシャルφTX2は下がらず、第3半導体領域9bのポテンシャル井戸内には、電荷は流れ込まない。第3半導体領域9a,9bでは、n型の不純物が添加されているため、正方向にポテンシャルが凹んでいる。
【0059】
転送電極TX2に印加される電荷転送信号の位相が0度のとき、転送電極TX2には正の電位が与えられ、転送電極TX1には、逆相の電位、すなわち位相が180度の電位(グランド電位)が与えられる。この場合、
図6の(b)に示されるように、受光部2で発生した負の電荷eは、転送電極TX2直下の領域のポテンシャルφ
TX2が下がることにより、第3半導体領域9bのポテンシャル井戸内に流れ込む。一方、転送電極TX1直下の領域のポテンシャルφ
TX1は下がらず、第3半導体領域9aのポテンシャル井戸内には、電荷は流れ込まない。これにより、信号電荷が第3半導体領域9bのポテンシャル井戸に収集されて、蓄積される。このように、ここでは、受光部2に対してポテンシャルの傾斜が形成される。
【0060】
転送電極TX1及び転送電極TX2に位相が180度ずれた電荷転送信号が印加されている間、転送電極TX5にはグランド電位が与えられている。このため、
図6の(c)に示されるように、転送電極TX5直下の領域のポテンシャルφ
TX3は下がらず、第4半導体領域11a,11bのポテンシャル井戸内には、電荷は流れ込まない。
【0061】
以上により、信号電荷が第3半導体領域9a,9bのポテンシャル井戸に収集されて、蓄積される。第3半導体領域9a,9bのポテンシャル井戸に蓄積された信号電荷は、外部に読み出される。なお、以上の例では、転送電極TX1及び転送電極TX2の組について説明したが、転送電極TX3及び転送電極TX4の組についても同様である。
【0062】
以上のように、転送電極TX1~TX4に対して所定の電位が付与され、それらの直下の領域、すなわち、転送ゲート4a~4dが、第3半導体領域9a~9dのそれぞれに電荷を転送可能な状態であることを、電荷転送状態であると称する場合がある。また、転送ゲート4a~4dが電荷転送状態であることを、転送ゲート4a~4dがON状態であると称する場合もある。
【0063】
引き続いて、
図7を参照して、不要電荷の排出動作を説明する。転送電極TX1及び転送電極TX2(更に、転送電極TX3及び転送電極TX4)には、グランド電位が与えられている。このため、
図7の(a)に示されるように、転送電極TX1及び転送電極TX2直下の領域のポテンシャルφ
TX1,φ
TX2は下がらず、第3半導体領域9a,9bのポテンシャル井戸内には、電荷は流れ込まない。
【0064】
一方、転送電極TX5には正の電位が与えられる。この場合、
図7の(b)に示されるように、受光部2で発生した負の電荷eは、転送電極TX5直下の領域のポテンシャルφ
TX5が下がることにより、第4半導体領域11a,11bのポテンシャル井戸内に流れ込む。以上により、不要電荷が第4半導体領域11a,11bのポテンシャル井戸に収集される。第4半導体領域11a,11bのポテンシャル井戸に収集された不要電荷は、外部に排出される。
【0065】
以上のように、転送電極TX5に対して所定の電位が付与され、それらの直下の領域、すなわち、排出ゲート6a,6bが、第4半導体領域11a,11bのそれぞれに電荷を転送可能な状態であることを電荷転排出態であると称する場合がある。また、排出ゲート6a,6bが電荷転送状態であることを、排出ゲート6a,6bがON状態であると称する場合もある。
【0066】
なお、光センサ50は、画素51に設けられたリセットトランジスタ(図示省略)を含む。リセットトランジスタにリセット電圧を印加することにより、リセット処理が実行される。リセット電圧は、フォトゲート電極PGの電位を基準として正の電圧である。これにより、電荷蓄積部である第3半導体領域9a~9d等に蓄積された電荷が外部に排出されて電荷が蓄積されていない状態となる。
[制御部の動作]
【0067】
図8は、
図1に示される構成において、両矢印のいずれか一方向に、光L0のコヒーレンス長よりも長い距離に渡って、可動ミラー21を移動させたときに、光センサ50の各画素51において取得される干渉光L10のインターフェログラム信号を示すグラフである。インターフェログラム信号の包絡線は、深さ方向における対象物Sの構造を表す。包絡線の幅は、光L0のコヒーレンス長によって決まり、深さ方向における光干渉断層撮影装置100の分解能を規定する。可動ミラー21の駆動を短い距離の往復動作とし、可動ミラー21の動作時の速さを一定とする場合には、
図8に示されるインターフェログラム信号から一部の時間範囲の分が切り取られ、そこで得られるインターフェログラム信号が時間的に往復する形態の信号となる。光干渉断層撮影装置100では、干渉光L10のインターフェログラム信号の周期が、光源10から出射される光L0の中心波長(或いは、ピーク波長)の半分に対応する。そこで、制御部60は、干渉光L10のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた4つの時間範囲において4つの転送ゲート4a,4b,4c,4dが順次に電荷転送状態となり、且つ、当該4つの時間範囲以外の時間範囲において複数の排出ゲート6a,6bが同時に電荷排出状態となるように、光センサ50の各画素51に電気信号を付与する。
【0068】
以下、干渉光L10のインターフェログラム信号の周期をTとして、光センサ50の各画素51に付与される電気信号について、より詳細に説明する。
図9は、光センサ50の各画素51に付与される電気信号のタイミングチャートである。
【0069】
電気信号VTX1は、転送電極TX1に付与される電気信号であって、周期Tで繰り返される時間範囲T1(<t/4)において、転送ゲート4aを電荷転送状態(ON状態)とする電気信号である。電気信号VTX2は、転送電極TX2に付与される電気信号であって、周期Tで繰り返される時間範囲T2(<t/4)において、転送ゲート4bを電荷転送状態(ON状態)とする電気信号である。電気信号VTX2は、電気信号VTX1に対してT/4だけ位相が遅れている。
【0070】
電気信号VTX3は、転送電極TX3に付与される電気信号であって、周期Tで繰り返される時間範囲T3(<t/4)において、転送ゲート4cを電荷転送状態(ON状態)とする電気信号である。電気信号VTX3は、電気信号VTX2に対してT/4だけ位相が遅れている。電気信号VTX4は、転送電極TX4に付与される電気信号であって、周期Tで繰り返される時間範囲T4(<t/4)において、転送ゲート4dを電荷転送状態(ON状態)とする電気信号である。電気信号VTX4は、電気信号VTX3に対してT/4だけ位相が遅れている。
【0071】
電気信号VTX5は、複数の排出ゲート6a,6bに同時に付与される電気信号であって、時間範囲T1,T2,T3,T4以外の時間範囲(換言すれば、周期T/4で繰り返される時間範囲T5)において、複数の排出ゲート6a,6bを電荷排出状態(ON状態)とする電気信号である。なお、各時間範囲T1,T2,T3,T4は、互いに同一の長さである。また、各時間範囲T1,T2,T3,T4は、時間範囲T5よりも短い。
【0072】
制御部60は、以上の電気信号VTX1,VTX2,VTX3,VTX4,VTX5を光センサ50の各画素51に付与することで、干渉光L10のインターフェログラム信号の各周期Tにおいて、4つの干渉光L10の強度V0,V1,V2,V3を取得する。制御部60は、取得した4つの干渉光L10の強度V0,V1,V2,V3に基づいて、干渉光L10のインターフェログラム信号の各周期Tにおいて、
AMP成分=[{(V3-V1)2+(V2-V0)2}1/2]/2
OFF成分=(V0+V1+V2+V3)/4
を取得する。これにより、制御部60は、光センサ50の各画素51について干渉光L10のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く再現することができ、対象物Sの像(断層像)を精度良く生成することができる。
[作用及び効果]
【0073】
光干渉断層撮影装置100では、可動ミラー21を往復動作させることで、インターフェログラム信号の時間変化を周期的なものとし、インターフェログラム信号の包絡線への変換を容易化している。そして、光センサ50が含む各画素51においては、干渉光L10のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた4つの時間範囲において複数の転送ゲート4a,4b,4c,4dが順次に電荷転送状態となり、且つ、当該4つの時間範囲以外の時間範囲において排出ゲート6a,6bが同時に電荷排出状態となる。これにより、4つの時間範囲のそれぞれにおいて受光部2で発生した電荷のみを信号電荷として取得することができる。よって、光干渉断層撮影装置100によれば、干渉光L10のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。以上のような信号電荷の取得は、可動ミラー21の往復動作の速さが一定でなく、干渉光L10のインターフェログラム信号が非対称形状となるような場合に、特に有効である。
【0074】
光干渉断層撮影装置100では、可動ミラー21が、ミラーデバイス20において共振動作することで往復動作する。これにより、干渉光L10のインターフェログラム信号を高速で取得することができる。また、可動ミラー21が共振動作することで、可動ミラー21の往復動作の速さが一定とならなくなるが、その場合にも、上述したように、干渉光L10のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。
【0075】
光干渉断層撮影装置100では、可動ミラー21が、1kHz以上の周波数で往復動作する。これにより、干渉光L10のインターフェログラム信号を高速で取得することができる。また、可動ミラー21が1kHz以上の周波数で往復動作することで、可動ミラー21の往復動作の速さが一定となり難くなるが、その場合にも、上述したように、干渉光L10のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。なお、可動ミラー21が、1kHz未満の周波数で往復動作するような場合には、通常の二次元センサ(高速カメラ等)を用いて、二次元画像をデジタル化してから画像処理を実施することで、干渉光L10のインターフェログラム信号をその包絡線に変換し得る。しかし、可動ミラー21が、1kHz以上の周波数で往復動作するような場合には、通常の二次元センサ(高速カメラ等)を用いて干渉光L10のインターフェログラム信号をその包絡線に変換することは、困難である。
【0076】
光干渉断層撮影装置100では、複数の画素51が二次元に配列されている。これにより、対象物Sにおける所定領域の像を一度に生成することができる。なお、単一のPDで干渉光L10を検出するような場合には、波形データを高速でAD変換した後にデジタル信号処理を実施することで、干渉光L10のインターフェログラム信号をその包絡線に変換し得る。しかし、二次元に配置された複数のPDで干渉光L10を検出するような場合には、波形データを高速で処理して干渉光L10のインターフェログラム信号をその包絡線に変換することは、困難である。
【0077】
光干渉断層撮影装置100では、ミラーデバイス20がMEMSミラーデバイスである。これにより、可動ミラー21を高速で往復動作させることができる。
【0078】
光干渉断層撮影装置100では、各画素51がフォトゲート電極PGを含んでいる。これにより、受光部2で発生した電荷の転送及び排出を高速で実施することができるため、対象物Sの像を短時間で生成することができる。つまり、干渉光L10のインターフェログラム信号の包絡線を高速に取得することができるため、対象物Sの像を瞬間像として生成することが可能となる。対象物Sの像を瞬間像として生成し得ることは、例えば、対象物Sが支持部30によって搬送されるような場合等、対象物Sが移動体である場合に、極めて有効である。
[変形例]
【0079】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、各時間範囲T1,T2,T3,T4が互いに同一の長さであったが、各時間範囲T1,T2,T3,T4は、互いに同一の長さでなくてもよい。上記実施形態では、排出ゲート6a,6bを電荷排出状態とする時間範囲T5の開始タイミングが、各転送ゲート4a,4b,4c,4dを電荷転送状態とする各時間範囲T1,T2,T3,T4の終了タイミングと一致していたが、時間範囲T5の終了タイミングが各時間範囲T1,T2,T3,T4の開始タイミングと一致していれば、時間範囲T5の開始タイミングは、各時間範囲T1,T2,T3,T4の終了タイミングから遅れてもよい。
【0080】
制御部60は、干渉光L10のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた少なくとも3つの時間範囲において複数の転送ゲート(転送ゲート4a,4b,4c,4dのうちの少なくとも2つ)が順次に電荷転送状態となり、且つ、当該少なくとも3つの時間範囲以外の時間範囲において排出ゲート(排出ゲート6a,6bのうちの少なくとも1つ)が電荷排出状態となるように、光センサ50に電気信号を付与してもよい。
【0081】
干渉光L10のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた少なくとも3つの時間範囲において電荷を取得すれば、干渉光L10のインターフェログラム信号を再現し得る理由は、次のとおりである。まず、干渉光L10のインターフェログラム信号Iは、位相差の正弦関数で表すことができる。すなわち、I=A+B・cosφと表わすことができる。ここで、光L0の中心波長をλとする。例えば、ミラーデバイス20が、最大変位量L、角振動数ωで正弦波振動の往復運動をしているとする。このとき、φ=(2π/λ)・L・sin(ωt)+φ0となる。更に、例えば、L=λ/2とすると、
I=A+B・cos{π・sin(ωt)+φ0}
となる。当該式において、未知数はA,B,φ0であるから、干渉光L10のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた少なくとも3つの時間範囲において電荷を取得すれば、干渉光L10のインターフェログラム信号から、その包絡線を表すBの値を再現することができる。
【0082】
干渉光L10のインターフェログラム信号の各周期において電荷を取得する少なくとも3つの時間範囲(例えば、4つの時間範囲)のそれぞれは、干渉光L10のインターフェログラム信号の位相がπ/2ずつずれた時間を中心とする時間範囲であってもよい。これによれば、干渉光L10のインターフェログラム信号をその包絡線に変換するための演算を単純化することができる。演算を単純化することで、演算の一部又は全部をハードウエアで実現することが可能となり、全体的な高速処理に寄与することが可能となる。例えば、上述したI=A+B・cosφにおいて、初期位相をφ0とし、初期位相から0,π/2,π,3π/2だけ位相がずれたときのIをそれぞれI0,Iπ/2,Iπ,I3π/2とすると、
I0=A+B・cos(0+φ0)=A+B・cosφ0
Iπ/2=A+B・cos(π/2+φ0)=A-B・sinφ0
Iπ=A+B・cos(π+φ0)=A-B・cosφ0
I3π/2=A+B・cos(3π/2+φ0)=A+B・sinφ0
となる。よって、I0-Iπ=2B・cosφ0及びI3π/2-Iπ/2=2B・sinφ0を導出することができ、それらの二乗和からBを求めることができる。
【0083】
図10は、「可動ミラー21の位置の時間変化」と「初期位相φ
0=0の場合の干渉光L10の強度の時間変化」との関係を示すグラフである。
図11は、「可動ミラー21の位置の時間変化」と「初期位相φ
0=π/2の場合の干渉光L10の強度の時間変化」との関係を示すグラフである。
図12は、「可動ミラー21の位置の時間変化」と「初期位相φ
0=πの場合の干渉光L10の強度の時間変化」との関係を示すグラフである。
図13は、「可動ミラー21の位置の時間変化」と「初期位相φ
0=3π/2の場合の干渉光L10の強度の時間変化」との関係を示すグラフである。
【0084】
図10、
図11、
図12及び
図13に示されるいずれの場合にも、電荷を取得する4つの時間範囲のそれぞれを、位相がπ/2ずつずれた時間を中心とする時間範囲とすると、電荷の取得は、一定時間間隔では実施されないことになる。このような場合にも、光干渉断層撮影装置100では、干渉光L10のインターフェログラム信号の1周期ごとに、互いに離れた4つの時間範囲において電荷を取得するため、干渉光L10のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。
【0085】
例えば、干渉光L10のインターフェログラム信号の1周期を4つ時間範囲(連続する時間範囲)に分けて、各時間範囲において電荷を積算して取得すると(すなわち、電荷の排出を全く実施せずに、全ての電荷を信号電荷として取得すると)、例えば、可動ミラー21の往復動作の速さが一定でない場合や、電荷の取得が一定時間間隔で実施されない場合に(後者の場合には、可動ミラー21の往復動作の速さが一定であったとしても)、干渉光L10のインターフェログラム信号をその包絡線に精度良く変換することができない。光干渉断層撮影装置100によれば、いずれの場合にも、干渉光L10のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。
【0086】
光センサ50において、各画素51は、
図14に示されるように、2つの転送ゲート4a,4bを含むものであってもよい(
図14には、2つの転送ゲート4a,4bに対応する2つの転送電極TX1,TX2が示されている)。つまり、各画素51は、複数の転送ゲートを含むものであればよい。光センサ50において、複数の画素51は、一次元に配列されていてもよい。ミラーデバイス20は、可動ミラー21を磁力によって往復動作させるものであってもよいし、或いは、可動ミラー21をピエゾアクチュエータ等の駆動源によって往復動作させるものであってもよい。本発明によれば、可動ミラーの動作の速さが一定でないミラーデバイスを備える光干渉断層撮影装置において、干渉光のインターフェログラム信号の包絡線を精度良く取得することができる。このとき、可動ミラーの移動量が制御信号に対して歪んでいる場合には、光センサの各転送ゲートを電荷転送状態とする各時間範囲を、可動ミラーの移動量の歪みに合わせて調整することで、容易に補償をすることが可能である。
【0087】
上記光センサ50では、受光部2としてフォトゲート構造のものを例示した。しかしながら、受光部2は、フォトゲート構造に限定されず他の構造であってもよい。一例として、
図15の(a)に示されるように、受光部2は、埋め込みPD構造であってもよい。この場合には、受光部2は、第2主面1b側において第2半導体領域5に設けられたp
+型の半導体領域2Bと、半導体領域2Bの直下において第2半導体領域5に設けられたn型の半導体領域2Aと、によって構成される。
【0088】
この場合も、高速電荷転送を行うために、受光部2にポテンシャルの傾斜を設けることができる。そのための構成の一例としては、
図15の(b)及び(c)に示されるように、n型の半導体領域2Aが、例えば転送ゲート4aに向かうにつれて不純物濃度が高くなるように配列された複数(ここでは3つ)のn型の半導体領域2a,2b,2cを含むことにより、電界の勾配をつける構成が挙げられる。なお、
図15の(b)は模式的な断面図であり、
図15の(c)は平面図である。
【0089】
受光部2にポテンシャルの傾斜を設けるための構成としては、
図16に示されるように、n型の半導体領域2Aが、一対のn型の半導体領域2d,2eと、半導体領域2d,2eに挟まれると共に、例えば転送ゲート4aに向かうにつれて幅Wが拡大するn
+型の半導体領域2fと、を含むことにより、電界の勾配をつける構成であってもよい。なお、
図16は、第2主面1b側からの平面図である。
【符号の説明】
【0090】
100…光干渉断層撮影装置、2…受光部、4a,4b,4c,4d…転送ゲート、6a,6b…排出ゲート、10…光源、20…ミラーデバイス、21…可動ミラー、30…支持部、40…ビームスプリッタ、50…光センサ、51…画素、PG…フォトゲート電極、60…制御部、L0…光、L1…第1光、L2…第2光、L10…干渉光、S…対象物。