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特許7510822医用画像ファイル処理装置及び医用画像ファイル処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】医用画像ファイル処理装置及び医用画像ファイル処理方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/00 20180101AFI20240627BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240627BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240627BHJP
   G06F 21/62 20130101ALI20240627BHJP
【FI】
G16H30/00
A61B5/00 D
G06T1/00 200B
G06F21/62 354
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020147030
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041681
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神長 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】石神 英俊
(72)【発明者】
【氏名】竹井 浩二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山形 佳史
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00- 5/01
G06T 1/00
G06F 21/60-21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
読影レポートを取得する取得部と、
前記読影レポートの内容に基づいて、前記読影レポートに対応する医用画像ファイルを分類する分類部と、
を備える医用画像ファイル処理装置。
【請求項2】
前記分類の結果に応じた内容の匿名化処理により、前記医用画像ファイルの匿名化処理を行う匿名化部、
をさらに備える請求項1に記載の医用画像ファイル処理装置。
【請求項3】
前記読影レポートの内容に基づいて、前記読影レポートに対応する医用画像ファイルの診断目的を決定する決定部と、
前記分類の結果と、前記決定の結果との組み合わせに応じた内容の匿名化処理により、前記医用画像ファイルの匿名化処理を行う匿名化部と、
をさらに備える請求項1に記載の医用画像ファイル処理装置。
【請求項4】
前記医用画像ファイルの利用目的を決定する決定部と、
前記分類の結果と、前記決定の結果との組み合わせに応じた内容の匿名化処理により、前記医用画像ファイルの匿名化処理を行う匿名化部と、
をさらに備える請求項1に記載の医用画像ファイル処理装置。
【請求項5】
前記医用画像ファイルは、医用画像データと、その付帯情報とを含む、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医用画像ファイル処理装置。
【請求項6】
コンピュータに、
読影レポートを取得する機能と、
前記読影レポートの内容に基づいて、前記読影レポートに対応する医用画像ファイルを分類する機能と、
実現させるためのプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像ファイル処理装置及び医用画像ファイル処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関で取得された画像データや、医療機関で採取された検査結果、検体、解析前のデータ等の臨床データである医用画像データを含む医用画像ファイルは、医薬品や医療機器の開発のための研究に利用される。医用画像ファイルは、被検者(例えば、医療機関で受診した患者)の同意を得ることで第三者が利用可能となる。
【0003】
医用画像ファイルは、その付帯情報(即ち、タグ情報)が付与された上で、研究機関に提供される。タグ情報の匿名化方法としては、タグ情報の全ての要素を一律に匿名化する技術や、暗号化・復号を行う技術等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/146357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医用画像ファイルを、対応する読影レポートの内容に従って分類することができる。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像ファイル処理装置は、取得部と、分類部とを備える。取得部は、読影レポートを取得する。分類部は、読影レポートの内容に基づいて、読影レポートに対応する医用画像ファイルを分類する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置の構成を示す概略図。
図2図2は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置が備えられる医用画像ファイル処理システムの構成を示す概略図。
図3図3は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置の機能の一例を示すブロック図。
図4図4は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置において、読影レポートの属性の判定方法を説明するための図。
図5図5は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置において、読影レポートの属性の判定方法を説明するための図。
図6図6は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置において、医用画像ファイルの分類方法を説明するための図。
図7図7は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置において、医用画像ファイルの診断目的の決定方法を説明するための図。
図8図8は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置において、医用画像ファイルの匿名化方法を説明するための図。
図9図9は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置における、医用画像ファイルの処理方法をフローチャートとして示す図。
図10図10は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置において、医用画像ファイルの利用目的に基づく匿名化方法を説明するための図。
図11図11は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置において、医用画像ファイルの利用目的に基づく匿名化方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像ファイル処理装置及び医用画像ファイル処理方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る医用画像ファイル処理装置の構成を示す概略図である。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る医用画像ファイル処理装置10を示す。医用画像ファイル処理装置10は、医用画像データとその付帯情報(即ち、タグ情報)とを含む医用画像ファイルを、適正に匿名化する装置である。医用画像ファイル処理装置10は、読影レポート管理装置(データサーバ)や、ワークステーションや、読影端末等であり、ネットワークを介して接続された医用画像システム上に設けられる。なお、医用画像ファイル処理装置10は、オフラインの装置であってもよい。
【0011】
医用画像ファイル処理装置10は、処理回路11と、記憶回路12と、入力インターフェース13と、ディスプレイ14と、ネットワークインターフェース15とを備える。
【0012】
処理回路11は、入力インターフェース13を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用画像ファイル処理装置10の動作を制御する。例えば、処理回路11は、プロセッサによって実現される。なお、処理回路11の機能については、図3を用いて後述する。
【0013】
記憶回路12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、及び光ディスク等によって構成される。記憶回路12は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。記憶回路12は、処理回路11において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータ等を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ14への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース13によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。なお、記憶回路12は、記憶部の一例である。
【0014】
入力インターフェース13は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路11に出力する。なお、医用画像ファイル処理装置10は、入力デバイスがディスプレイ14と一体に構成されたタッチパネルを備えてもよい。また、入力デバイスは、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものに限られるものではない。例えば、入力回路が、医用画像ファイル処理装置10とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路11へ出力する構成も入力インターフェース13の例に含まれる。なお、入力インターフェース13は、入力部の一例である。
【0015】
ディスプレイ14は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、及び有機EL(Electro Luminescence)パネル等の表示デバイスである。ディスプレイ14は、処理回路11に接続されており、処理回路11の制御に従って生成された各種の情報及び画像を表示する。なお、ディスプレイ14は、表示部の一例である。
【0016】
ネットワークインターフェース15は、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによって構成される。ネットワークインターフェース15は、各規格に応じた通信制御を行い、電話回線を通じてネットワークN(図2に図示)に接続することができる機能を有しており、これにより、医用画像ファイル処理装置10をネットワークに接続させることができる。なお、ネットワークインターフェース15は、通信部の一例である。
【0017】
続いて、医用画像ファイル処理装置10が適用されるシステムについて説明する。
【0018】
図2は、医用画像ファイル処理装置10が備えられる医用画像ファイル処理システムの構成を示す概略図である。
【0019】
図2は、医用画像ファイル処理装置10が備えられる医用画像ファイル処理システム1を示す。医用画像ファイル処理システム1は、図1に示す医用画像ファイル処理装置10と、1又は複数の読影レポート管理装置(例えば、医療機関のデータサーバ)20と、1又は複数の医用画像ファイル利用装置(例えば、研究機関端末)30とを備える。医用画像ファイル処理装置10と、読影レポート管理装置20と、医用画像ファイル利用装置30とは、ネットワークNを介して相互に通信可能なように接続される。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続等を適用することができる。ここで、電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹のLAN(Local Area Network)やインターネット網の他、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク及び衛星通信ネットワーク等を含む。
【0020】
医用画像ファイル処理装置10は、匿名加工医療機関の内部に設けられるか、又は、匿名加工医療機関の外部(例えば、医用機関の内部)に設けられ、適切な方法により医用画像ファイルに対して匿名化処理を施す。例えば、医用画像ファイル処理装置10は、医用画像ファイルのタグ情報の各要素に対して、削除、変更、又は暗号化(又は、秘匿化)を施す。
【0021】
読影レポート管理装置20は、医療機関の内部に設けられるか、又は、医療機関の外部に設けられ、医療機関により当該医療機関を利用する被検者に対する検査等で得られた医用画像ファイルに基づく読影レポートを管理する。例えば、複数の医療機関の各別に、1基の読影レポート管理装置20が備えられる。医用画像ファイルは、医用画像データとそのタグ情報とを含む。医用画像データとしては、例えば、医療機関で取得された画像データや、医療機関で採取された検査結果、検体、解析前のデータ等の臨床データに基づいて作成された読影レポート等が挙げられる。タグ情報は、被検者の個人情報、例えば、被検者の氏名、年齢、身長、体重等の要素を含む。
【0022】
読影レポート管理装置20は、コンピュータの一般的な構成を備える。例えば、読影レポート管理装置20は、処理回路と、メモリと、DB(Database)と、入力インターフェースと、ディスプレイと、ネットワークインターフェース(図示省略)とを備える。DBは、読影レポートとともに、医用画像ファイルを格納する記憶部である。DBは、処理回路による制御により、医用画像データを、患者情報や取得日時等のタグ情報とともに保管する。また、DBは、処理回路11による制御により、保管する医用画像ファイルの中から、要求に従った特定の医用画像ファイルを外部に提供する。
【0023】
医用画像ファイル利用装置30は、被検者に関する医用画像データを利用する研究者が操作する利用者端末である。例えば、複数の研究機関の各別に、1基の医用画像ファイル利用装置30が備えられる。医用画像ファイル利用装置30は、医用画像ファイル処理装置10に、心筋梗塞画像データの提供を要求したり、肝細胞癌画像データの提供を要求したり、再構成用の学習データの提供を要求したりする。
【0024】
医用画像ファイル利用装置30は、コンピュータの一般的な構成を備える。例えば、医用画像ファイル利用装置30は、処理回路と、メモリと、入力インターフェースと、ディスプレイと、ネットワークインターフェース(図示省略)とを備える。
【0025】
続いて、医用画像ファイル処理装置10の機能について説明する。
図3は、医用画像ファイル処理装置10の機能の一例を示すブロック図である。
【0026】
図3に示すように、処理回路11は、記憶回路12に記憶された、又は、処理回路11内に直接組み込まれたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、取得機能111と、分類機能112と、決定機能113と、匿名化機能114とを実現する。以下、機能111~114がコンピュータプログラムの実行によりソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能111~114の全部又は一部の機能は、ASIC等の回路により実現されてもよい。
【0027】
取得機能111は、ネットワークN、又は、可搬型記録媒体を介して、読影レポートの情報を取得する機能を含む。なお、取得機能111は、取得部の一例である。
【0028】
分類機能112は、取得機能111によって取得された読影レポートの内容を解析して、当該読影レポートの属性を判定する機能を含む。
【0029】
図4及び図5は、医用画像ファイル処理装置10において、読影レポートの属性の判定方法を説明するための図である。
【0030】
図4及び図5に示すように、読影レポートには、読影者によって入力されたコメント欄が存在する。分類機能112は、読影者によって入力されたコメントを文章解析し、予め設定された各項目がコメントに含まれているか(YES)、又は、含まれていないか(NO)を判定する。分類機能112は、各項目の判断結果の組み合わせを、読影レポートの属性として設定する。図4に示す例では、当該読影レポートの属性は、「造影:NO」と、「心臓:YES」と、「心筋梗塞:YES」との組み合わせである。図5に示す例では、当該読影レポートの属性は、「造影:YES」と、「心臓:YES」と、「心筋梗塞:YES」との組み合わせである。
【0031】
図3の説明に戻って、分類機能112は、さらに、判定された読影レポートの属性に従って、取得機能111によって取得された読影レポートに対応する医用画像ファイル(医用画像データ自体と、そのタグ情報とを含む)を分類(又は、ラベリング)する機能を含む。なお、分類機能112は、分類部の一例である。
【0032】
図6は、医用画像ファイル処理装置10において、医用画像ファイルの分類方法を説明するための図である。
【0033】
図6に示すように、読影レポートの属性に応じて予め分類が設定されている。読影レポートの属性が図4に示す「造影:NO」と、「心臓:YES」と、「心筋梗塞:YES」との組み合わせである場合、分類機能112は、当該読影レポートに対応する医用画像ファイルを、「心筋梗塞画像」又は「造影なし」に分類する。「心筋梗塞画像」は、大区分に該当し、「造影なし」は、小区分に該当する。
【0034】
一方で、読影レポートの属性が図5に示す「造影:YES」と、「心臓:YES」と、「心筋梗塞:YES」との組み合わせである場合も、分類機能112は、当該読影レポートに対応する医用画像ファイルを、「心筋梗塞画像」又は「造影あり」に分類する。「心筋梗塞画像」は、大区分に該当し、「造影あり」は、小区分に該当する。
【0035】
図3の説明に戻って、決定機能113は、取得機能111によって取得された読影レポートの内容に基づいて、当該読影レポートに対応する医用画像ファイルの診断目的を決定する機能を含む。なお、決定機能113は、決定部の一例である。
【0036】
図7は、医用画像ファイル処理装置10において、医用画像ファイルの診断目的の決定方法を説明するための図である。
【0037】
図4に示す読影レポートの内容である場合、決定機能113は、「造影剤なし」であることから、医用画像ファイルの診断目的を、「心筋梗塞のリスク診断」と決定する。一方で、図5に示す読影レポートの内容である場合、決定機能113は、「造影剤あり」であることから、医用画像ファイルの診断目的を、「画像差による診断」と決定する。
【0038】
ここで、決定機能113は、読影レポートのコメントの内容に基づいて医用画像ファイルの診断目的を決定する処理を行うものである。この処理には、例えばコメントの内容と診断目的とを関連付けたルックアップテーブル(LUT)が用いられてもよい。また、この処理には、機械学習が用いられてもよい。また、機械学習としてCNN(畳み込みニューラルネットワーク)や畳み込み深層信念ネットワーク(CDBN:Convolutional Deep Belief Network)等の、多層のニューラルネットワークを用いた深層学習が用いられてもよい。
【0039】
図3の説明に戻って、匿名化機能114は、取得機能111によって取得された読影レポートに対応する医用画像ファイルに応じた内容の匿名化処理を行う機能を含む。その場合、決定機能113は不要である。又は、匿名化機能114は、取得機能111によって取得された読影レポートに対応する医用画像ファイルに対して、分類機能112による分類結果と、決定機能113による決定結果との組み合わせに応じた内容の匿名化処理を行う機能を含む。以下、匿名化機能114が、分類結果と、決定結果との組み合わせに応じた内容で医用画像ファイルのタグ情報に対して匿名化処理を行う場合を例にとって説明する。なお、匿名化機能114は、匿名化部の一例である。
【0040】
図8は、医用画像ファイル処理装置10において、医用画像ファイルの匿名化方法を説明するための図である。
【0041】
図8に示すように、心筋梗塞のリスクを診断したいと決定される診断目的には、「心電情報のタグの匿名化なし」と、「身長、体重、年齢、性別のうち、2つのタグの匿名化なし」という匿名化方法が割り当てられる。また、第1区分の場合、体重と年齢とは匿名度を低くする一方、身長と性別とは完全に匿名化する。一方で、造影画像データと、非造影画像データとの差を診断したいと決定される診断目的には、「心電情報のタグの匿名化なし」と、「造影剤情報のタグの匿名化なし」という匿名化方法が割り当てられる。なお、匿名化処理の内容は、匿名化の度合い(レベル)を含んでもよい。匿名化の度合いに関して、「k-匿名性」という評価指標が広く用いられている。「k-匿名性」を満たすようにタグ情報の各要素を加工することで、個人が特定される確率をk分の1以下に低減させることができる。
【0042】
このように、医用画像ファイル処理装置10は、読影レポートの内容を解析することで、当該読影レポートに対応する医用画像ファイルを分類することができる。また、医用画像ファイル処理装置10は、読影レポートの内容から医用画像ファイルの診断目的を決定することで、分類と診断目的とに応じた匿名化方法を決定することができる。
【0043】
続いて、医用画像ファイル処理装置10における医用画像ファイルの処理方法について説明する。
【0044】
図9は、医用画像ファイルの処理方法をフローチャートとして示す図である。図9において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0045】
取得機能111は、ネットワークN、又は、可搬型記録媒体を介して、読影レポートの情報を取得する(ステップST1)。分類機能112は、取得機能111によって取得された読影レポートの内容を解析して、当該読影レポートの属性を判定する(ステップST2)。なお、読影レポートの属性を判定方法について、図4及び図5を用いて説明したとおりである。
【0046】
分類機能112は、ステップST2によって判定された読影レポートの属性に従って、ステップST1によって取得された読影レポートに対応する医用画像ファイル(医用画像データ自体と、そのタグ情報とを含む)を分類する(ステップST3)。なお、医用画像ファイルの分類方法については、図6を用いて説明したとおりである。決定機能113は、ステップST1によって取得された読影レポートの内容に基づいて、当該読影レポートに対応する医用画像ファイルの診断目的を決定する(ステップST4)。なお、医用画像ファイルの診断目的の決定については、図7を用いて説明したとおりである。
【0047】
匿名化機能114は、ステップST1によって取得された読影レポートに対応する医用画像ファイルに対して、ステップST3による分類結果と、ステップST4による決定結果との組み合わせに応じたタグ情報の匿名化処理を行う(ステップST5)。なお、匿名化方法については図8を用いて説明したとおりである。
【0048】
ステップST5によって匿名化処理が行われた医用画像ファイルは、医用画像ファイル利用装置30の要求により、ネットワークNを介して医用画像ファイル利用装置30(図2に図示)に提供される。医用画像ファイル利用装置30では、匿名化処理は匿名化の度合い(レベル)も含む、匿名化の目的はAIの学習用途に限定しない。
【0049】
以上のように、医用画像ファイル処理装置10によれば、医用画像ファイルの全ての情報を匿名化するのではなく、医用画像ファイルのうち、読影レポートの内容に応じて選択された情報のみを匿名化することができる。それにより、匿名が必要な情報の匿名化を行いつつ、医用画像ファイルの利用の効果を拡張することができる。
【0050】
(変形例)
上述の例では、医用画像ファイルの診断目的に基づいて、医用画像ファイルの匿名化方法を決定する場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、医用画像ファイル処理装置10は、医用画像ファイル利用装置30における医用画像ファイルの利用目的に基づいて、医用画像ファイルの匿名化方法を決定してもよい。その場合、決定機能113は、医用画像ファイル利用装置30からの要求に応じて、当該読影レポートに対応する医用画像ファイルの利用目的を決定する機能を含む。
【0051】
また、匿名化機能114は、取得機能111によって取得された読影レポートに対応する医用画像ファイルに対して、分類機能112による分類結果と、決定機能113による決定結果との組み合わせに応じた内容の匿名化処理を行う機能を含む。
【0052】
図10及び図11は、医用画像ファイルの利用目的に基づく匿名化方法を説明するための図である。
【0053】
図10に示すように、医用画像ファイル利用装置30から、利用目的「Spectral Imaging画像に関する解析アプリの精度の向上」のための医用画像ファイルの提供が要求されている。匿名化機能114は、この利用目的「Spectral Imaging画像に関する解析アプリの精度の向上」と、分類結果との組み合わせから、匿名化方法を決定する。医用画像ファイル処理装置10から提供される医用画像ファイルのタグ情報に存在する基準物質情報タグと、画像参照UIDタグとが匿名化されていないので、医用画像ファイル利用装置30は、このタグ情報を含めた研究を行うことができる。
【0054】
図11に示すように、医用画像ファイル利用装置30から、利用目的「解析アプリの精度の向上」のために、「低エネルギーのpure画像(画像処理されていない画像)の学習」の提供が要求されている。匿名化機能114は、この利用目的「低エネルギーのpure画像の学習」と、分類結果との組み合わせから、匿名化方法を決定する。医用画像ファイル処理装置10から提供される医用画像ファイルのタグ情報に存在するkVタグ(管電圧)と、画像参照UIDタグとが匿名化されていないので、医用画像ファイル利用装置30は、このタグ情報を含めた研究を行うことができる。
【0055】
図10及び図11に示す利用目的の他、医用画像ファイル利用装置30には、上位の利用目的「肝細胞癌画像の学習」があり、また、下位の利用目的「カルシウムスコアの精度の向上」や、「非造影画像データと造影画像データとのサブトラクションの精度の向上」がある。また、医用画像ファイル利用装置30には、上位の利用目的「Spectral Imagingの学習」があり、また、下位の利用目的「Spectral Imaging向け解析アプリの精度の向上」や、「低エネルギーのpure画像を高精細に再構成する」がある。匿名化機能114は、医用画像ファイル利用装置30の上位、又は、下位の利用目的に応じて、匿名化方法を決定することができる。
【0056】
ここで、決定機能113は、医用画像ファイル利用装置30の要求内容に基づいて医用画像ファイルの利用目的を決定する処理を行うものである。この処理には、例えば要求内容と利用目的とを関連付けたLUTが用いられてもよい。また、この処理には、機械学習が用いられてもよい。また、機械学習としてCNNや畳み込み深層信念ネットワーク等の、多層のニューラルネットワークを用いた深層学習が用いられてもよい。
【0057】
以上のように、医用画像ファイル処理装置10によれば、医用画像ファイルの全ての情報を匿名化するのではなく、医用画像ファイルのうち、読影レポートの内容と、研究者からの要求とに応じて選択された情報のみを匿名化することができる。それにより、匿名が必要な情報の匿名化を行いつつ、医用画像ファイルの利用の効果を拡張することができる。
【0058】
なお、取得機能111は、取得部の一例である。分類機能112は、分類部の一例である。決定機能113は、決定部の一例である。匿名化機能114は、匿名化部の一例である。
【0059】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医用画像ファイルを、対応する読影レポートの内容に従って分類することができる。
【0060】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 医用画像ファイル処理システム
10 医用画像ファイル処理装置
20 読影レポート管理装置
30 医用画像ファイル利用装置
11 処理回路
111 取得機能
112 分類機能
113 決定機能
114 匿名化機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11