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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】アクリルゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/16 20060101AFI20240627BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20240627BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20240627BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C08L33/16
C08K5/37
C08K5/372
C09K3/10 E
C09K3/10 Q
C09K3/10 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020147088
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041720
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】根上 哲郎
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/010615(WO,A1)
【文献】特開平08-157679(JP,A)
【文献】特開平10-053684(JP,A)
【文献】特開2009-001657(JP,A)
【文献】特開平11-071495(JP,A)
【文献】特開2018-203917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F、C08L、C08C19
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ハロゲン含有アクリルゴムと、(B)トリアジンチオール系架橋剤と、(C)テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩からなる群から選択される1又は2つの架橋促進剤と、を含有し、
前記ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、前記トリアジンチオール系架橋剤を0.8質量部以上4.0質量部以下、前記1又は2つの架橋促進剤を0.1質量部以上含有し、且つ、
テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩の各々の含有量が、前記ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して8.0質量部以下であることを特徴とする、アクリルゴム組成物。
【請求項2】
前記ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、テトラベンジルチウラムジスルフィドを0.1質量部以上8.0質量部以下含有する、請求項1に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、テトラベンジルチウラムジスルフィドとジベンジルジチオカルバミン酸塩を各々0.1質量部以上8.0質量部以下含有する、請求項1又は2に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項4】
前記トリアジンチオール系架橋剤が2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンである、請求項1乃至3までのいずれか1項に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項5】
ジベンジルジチオカルバミン酸塩がジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛である、請求項1乃至4までのいずれか1項に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項6】
さらに、少なくとも1つの充填剤を含有する、請求項1乃至5までのいずれか1項に記載のアクリルゴム組成物。
【請求項7】
前記アクリルゴム組成物がボンデットピストンシール用アクリルゴム組成物である、請求項1乃至6までのいずれか1項に記載のアクリルゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両の自動変速機(AT)内部のクラッチ締結に、ボンデッドピストンシール(以下、「BPS」ともいう。)が使用されている。BPSは、一般に、自動変速機の内部において油圧作動(往復運動)する金属環と、この金属環に架橋接着されてシール作用をなすゴム状弾性材とを備えている。
【0003】
現在、BPS用のゴム状弾性材として、約-30℃~+150℃の使用環境温度に対応させるため、耐熱性、耐寒性及び耐油性に優れたアクリルゴムが広く使用されている。アクリルゴムは、ポリマーの特性上、必要に応じて二次架橋を付与し、架橋密度を高くして使用するのが通例である。特に、ハロゲン含有アクリルゴムは、耐寒性に優れ、高温短時間で架橋が可能であるため好ましく、ハロゲン含有アクリルゴムの架橋点に応じた架橋剤、架橋促進剤等が配合されたゴム組成物に調製される。
【0004】
アクリルゴム組成物に要求される特性を満足させるため、とりわけ特性への影響が大きい因子である架橋系が検討される。ハロゲン含有アクリルゴムに適用可能な架橋系として、トリアジン誘導体とジチオカルバミン酸誘導体とを含む架橋系が知られている。例えば、架橋剤として2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンを使用する場合、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸金属塩、又は、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムスルフィドを架橋促進剤として所定の配合量で使用することで、引張強度、圧縮永久歪み(CS)等の機械的特性が満足される。
【0005】
しかしながら、これらの架橋促進剤を使用する場合、架橋時に発生する窒素酸化物、アクリルゴム中に残留する窒素酸化物等が反応し、TRGS 552で規制されている発がん性対象のN-ニトロソアミンを生成するため、環境の面で好ましくない。また、これらの架橋促進剤は高速架橋が可能である反面、アクリルゴム組成物をゴム生地として貯蔵する際にスコーチが発生する場合がある。
【0006】
一方、他の架橋系として、硫黄又は硫黄供与体と高級脂肪酸金属石鹸とを含む架橋系が知られている。特許文献1には、ハロゲン含有アクリルゴムの架橋に関して、硫黄又は硫黄供与化合物と高級脂肪酸金属塩とを含む加硫系が開示されている。高級脂肪酸金属塩として、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸バリウム等が例示されている。
【0007】
しかしながら、この架橋系においては、TRGS 552で規制されている発がん性対象のN-ニトロソアミンの発生を防止し、良好な貯蔵安定性を示すものの、圧縮永久歪み(CS)に劣る傾向にある。そのため、いずれの架橋剤系を用いても、環境に配慮しつつ、架橋性、圧縮永久歪み及び貯蔵安定性の各特性をいずれも十分に発揮させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-181209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、架橋性が良好であり、かつ環境性能、架橋性、貯蔵安定性及び圧縮永久歪みに優れたアクリルゴム組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ハロゲン含有アクリルゴムに、特定の架橋剤と架橋促進剤とを所定の配合量で適用することにより、架橋性が良好であり、かつ環境性能、圧縮永久歪み及び貯蔵安定性の各特性をいずれも十分に発揮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の実施態様に係るアクリルゴム組成物は、(A)ハロゲン含有アクリルゴムと、(B)トリアジンチオール系架橋剤と、(C)テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの架橋促進剤と、を含有し、前記ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、前記トリアジンチオール系架橋剤を0.8質量部以上4.0質量部以下、前記少なくとも1つの架橋促進剤を0.1質量部以上含有し、且つ、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩の各々の含有量が、前記ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して8.0質量部以下である。
【0012】
本発明の一実施態様において、アクリルゴム組成物は、前記ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、テトラベンジルチウラムジスルフィドを0.1質量部以上8.0質量部以下含有する。
【0013】
本発明の一実施態様において、アクリルゴム組成物は、前記ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、テトラベンジルチウラムジスルフィドとジベンジルジチオカルバミン酸塩を各々0.1質量部以上8.0質量部以下含有する。
【0014】
本発明の一実施態様において、前記トリアジンチオール系架橋剤は2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンである。
【0015】
本発明の一実施態様において、ジベンジルジチオカルバミン酸塩はジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛である。
【0016】
本発明の一実施態様において、アクリルゴム組成物は、さらに、少なくとも1つの充填剤を含有する。
【0017】
本発明の一実施態様において、アクリルゴム組成物は、ボンデットピストンシール用アクリルゴム組成物である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、架橋性が良好であり、かつ環境性能、貯蔵安定性及び圧縮永久歪みに優れたアクリルゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態に係るアクリルゴム組成物は、ベースゴム材料としての(A)ハロゲン含有アクリルゴムと、架橋系としての、(B)トリアジンチオール系架橋剤、及び(C)テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの架橋促進剤とを含有する。また、アクリルゴム組成物中、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対するトリアジンチオール系架橋剤の含有量は0.8質量部以上4.0質量部以下である。さらに、アクリルゴム組成物は、少なくとも1つの架橋促進剤を0.1質量部以上含有し、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩の各々の含有量は、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して8.0質量部以下である。本実施形態に係るアクリルゴム組成物において、特定の架橋剤及び架橋促進剤を、それぞれ所定の含有量の範囲内で配合させることにより、架橋性が良好であり、かつ環境性能(TRGS 552で規制されている発がん性対象のN-ニトロソアミンの発生防止)、貯蔵安定性及び圧縮永久歪みのいずれの特性も優れたアクリルゴム組成物を得ることができる。以下、本実施形態に係るアクリルゴム組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0020】
<ゴム成分>
(A)ハロゲン含有アクリルゴム
本実施形態において、アクリルゴム組成物は、主となるゴム成分としてハロゲン含有アクリルゴムを含む。ハロゲン含有アクリルゴムは、アクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルコキシアルキルエステルを主たるモノマー成分(約60~99.9質量%)とし、架橋点となる活性ハロゲン基を有する架橋性モノマー(約0.1~10質量%)を共重合させたアクリルゴムである。このような共重体には、任意に他のビニル化合物が30質量%以下の範囲内でさらに共重合されていてもよい。主モノマー成分であるアクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルコキシアルキルエステルと他のモノマー成分との共重合は、特に限定されるものではないが、例えば、ラジカル重合開始剤を使用して、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状-懸濁重合等の適宜の重合方法で実施することができる。
【0021】
アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~20のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等があり、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルである。
【0022】
アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、アルコキシ基の炭素数が1~4のアクリル酸アルコキシアルキルエステルが挙げられる。具体的には、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸メトキシエトキシエチル等があり、好ましくはアクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチルである。
【0023】
活性ハロゲン基を有する架橋性モノマーとしては、例えば、2-クロロエチルビニルエーテル、2-クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロリド、ビニルクロロアセテート、アリルクロルアセテート等が挙げられる。
【0024】
ハロゲン含有アクリルゴムは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。このようなハロゲン含有アクリルゴムを使用することより、アクリルゴム組成物の耐熱性、耐寒性及び耐油性を向上させることができる。また、ハロゲン含有アクリルゴムは市販品を用いてもよい。ハロゲン含有アクリルゴムの市販品としては、ガラス転移温度(Tg)が-42℃以下の超耐寒グレードの製品が好ましく、例えば、ユニマテック社製の「Nоxtite(登録商標)PA404N」、「Nоxtite(登録商標)PA404K」等を用いることができる。
【0025】
<架橋系>
本実施形態において、ハロゲン含有アクリルゴムは、特定のトリアジンチオール系架橋剤と特定のチウラム系及び特定のジチオカルバミン酸塩系から選択される少なくとも1つの架橋促進剤とを含む架橋系によって架橋される。このような架橋系において、特定の架橋剤及び架橋促進剤をそれぞれ所定の含有量の範囲内で配合させることにより、TRGS 552で規制されている発がん性対象のN-ニトロソアミンの発生を防止できると共に、高速架橋が可能であり、さらには、優れた貯蔵安定性と圧縮永久歪みの両立化を図ることができる。
【0026】
(B)トリアジンチオール系架橋剤
トリアジンチオール系架橋剤は、ハロゲン含有アクリルゴムに対する架橋剤として作用する硫黄供与化合物である。このようなトリアジンチオール系架橋剤として、例えば、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジメチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジエチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジ-n-プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジ-イソプロピルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジ-n-ブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-n-ヘキシルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-n-オクチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール等が挙げられる。これらの中でも、硫黄対比で安定した圧縮永久歪みが得られる観点から、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンが好ましい。トリアジンチオール系架橋剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
トリアジンチオール系架橋剤の含有量は、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、0.8質量部以上4.0質量部以下であり、好ましくは1.2質量部以上4.0質量部以下である。トリアジンチオール系架橋剤の含有量が0.8質量部以上であることにより、架橋速度の遅延及び硬度の低下を抑制し、優れた架橋性を示す。また、トリアジンチオール系架橋剤の含有量が4.0質量部以下であることにより、耐熱性の悪化や架橋密度が高くなり過ぎて架橋生成物が脆くなることを防止し、優れた圧縮永久歪みを示す。
【0028】
(C)架橋促進剤
架橋促進剤は、トリアジンチオール系架橋剤によるハロゲン含有アクリルゴムの架橋反応を促進する作用を有する。このような架橋促進剤として、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの架橋促進剤が用いられる。これらの中でも、テトラベンジルチウラムジスルフィドを単独で、又は、テトラベンジルチウラムジスルフィドとジベンジルジチオカルバミン酸塩とを併用することが好ましい。特に、テトラベンジルチウラムジスルフィドとジベンジルジチオカルバミン酸塩との併用により、アクリルゴム組成物の各特性をバランスよく向上させることができる。
【0029】
ジベンジルチオカルバミン酸塩としては、例えば、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルルジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸カドミウム、ジベンジルジチオカルバミン酸鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸ビスマス、ジベンジルジチオカルバミン酸鉄、ジベンジルジチオカルバミン酸テルル等が挙げられる。これらの中でもジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛が好ましい。
【0030】
少なくとも1つの架橋促進剤の含有量、すなわち、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩のうちいずれかを単独で、又はいずれかを併用する場合の架橋促進剤の含有量の下限値は、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、0.1質量部以上であり、好ましくは1質量部以上である。少なくとも1つの架橋促進剤の含有量が0.1質量部以上であることにより、架橋速度の向上を図ることができ、優れた架橋性を示す。
【0031】
また、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩の各々の含有量、すなわち、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩のうちいずれかを単独で、又はいずれかを併用する場合における各化合物の含有量の上限値は、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して8.0質量部以下である。テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩の各化合物の含有量が8.0質量部以下であることにより、架橋反応時に発生するガスの抑制や、未反応の架橋促進剤が原因となり、熱負荷での発火を防止することができる。特に、アクリルゴム組成物が、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、テトラベンジルチウラムジスルフィドを0.1質量部以上8.0質量部以下含有することにより、架橋性、貯蔵安定性、圧縮歪み特性をバランスよく向上させることができ、テトラベンジルチウラムジスルフィドとジベンジルジチオカルバミン酸塩を各々0.1質量部以上8.0質量部以下含有することにより、これらの特性をよりバランスよく向上させることができる。
【0032】
(充填剤)
本実施形態に係るアクリルゴム組成物は、必要に応じて、さらに充填剤を含んでいてもよい。充填剤として、例えば、カーボンブラック、グラファイト及びシリカ等が挙げられる。これらの充填剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
カーボンブラックは、公知の材料を適宜選択することができ、例えば、アクリルゴム材料で一般的に使用される高耐摩耗性(HAF:High Abrasion Furnace)カーボンブラック、良押出性(FEF:Fast Extruding Furnace)カーボンブラック、中補強性(SRF:Semi-Reinforcing Furnace)カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックの市販品として、例えば、東海カーボン社製「Seast 3」(HAFカーボン)、東海カーボン社製「Seast G-SO」(FEFカーボン)、東海カーボン社製「Seast G-S」(SRFカーボン)等が挙げられる。カーボンブラックの含有量は、特に限定されるものではないが、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、30質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上120質量部以下であることが更に好ましい。
【0034】
シリカは、公知の材料を適宜選択することができるが、アクリルゴム材料で一般的に使用され、混練作業性が良好であることが好ましい。一般的に使用されるシリカとは、ハロゲン化けい酸又は有機けい素化合物の熱分解法、けい砂を加熱還元し、気化したSiOを空気酸化する方法等で製造される乾式法シリカ、又はけい酸ナトリウムの熱分解法等で製造される湿式法シリカ等が挙げられる。具体的には、BET比表面積が10~400m/gの範囲(好ましくは50~380m/gの範囲)、平均一次粒子径が1~100nmの範囲のシリカであることが好ましい。
シリカの市販品として、例えば、トクヤマ社製「Reolosil(登録商標)CP102」(平均一次粒子径:16nm、BET比表面積:100~150m/g)等が挙げられる。その他、日本アエロジル社製「AEROSIL(登録商標)200」、東ソー・シリカ社製「Nipsil(登録商標)ER#100」、「Nipsil(登録商標)E74P」、エボニックジャパン社製「Ultrasil(登録商標)360」等をそのまま用いることもできる。シリカの含有量は、特に限定されるものではないが、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して、3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、4質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上12.5質量部以下であることが更に好ましい。
【0035】
グラファイトは、公知の材料を適宜選択することができ、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、天然黒鉛であることが好ましい。具体的には、平均粒子径が1μm以上100μm以下の範囲のグラファイトであることが好ましく、1μm以上50μm以下の範囲のグラファイトであることがより好ましい。このようなグラファイトとして、例えば、東日本カーボン社製「グラファイト A-0」(平均粒子径:5μm)、中越黒鉛工業所社製「グラファイト G-6S」(平均粒子径:10μm)等が挙げられる。グラファイトの含有量は、特に限定されるものではないが、ハロゲン含有アクリルゴム100質量部に対して3質量部以上30質量部以下であることが好ましく、4質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上15質量部以下であることが更に好ましい。
【0036】
<他の成分>
本実施形態に係るアクリルゴム組成物は、必要に応じて、上記の成分以外にさらに他の配合成分を含んでいてもよい。他の配合成分として、例えば、可塑剤、補強剤、老化防止剤、光安定剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0037】
<アクリルゴム組成物の製造方法>
本実施形態に係るアクリルゴム組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上述したゴム成分、架橋剤及び架橋促進剤と、任意に、充填剤及びその他の配合成分を配合した後、オープンロール等の開放式混練機、加圧式ニーダ、インターミックス、バンバリーミキサ等の密閉式混練機等の混練機を用いて混練することにより製造することができる。また、必要に応じて、各成分の予備混練を施してもよい。
【0038】
未架橋のアクリルゴム組成物を架橋させる場合、一次架橋条件は、一般に、加熱温度が150~250℃であり、架橋時間が1~30分である。また、架橋時の加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱等の適宜の方法を採用することができる。また、所定形状でプレス加熱して架橋させたのち、150℃~200℃で1~24時間のオーブン加熱、蒸気加熱、熱風加熱等により二次架橋させてもよい。
【0039】
本実施形態に係るアクリルゴム組成物において、当該アクリルゴム組成物から作製したゴム生地を加硫プレスにより所定の形状に加硫成形することにより、所望とする加硫成形品を製造することができる。そのような加硫成形品(アクリルゴム組成物)は、例えば自動車等の輸送機械、一般機器・装置、電子・電気、建築等の幅広い分野において、シール材として有用であり、特に、自動変速機のボンデットピストンシール(BPS)としての適用に好適である。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0041】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
ハロゲン含有アクリルゴム(「Nоxtite(登録商標)PA404N」、ユニマテック社製)100質量部に、カーボンブラック(「Seast G-SO」、東海カーボン社:FEFカーボン)82質量部、シリカ(「Reolosil(登録商標)CP102」、トクヤマ社製)5質量部、グラファイト(「グラファイト A-0」、東日本カーボン社製)5質量部、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(「ノクセラー(登録商標)TCA」、大内新興社製)2.2質量部、及びテトラベンジルチウラムジスルフィド(「ノクセラー(登録商標)TBZTD」、大内新興社製)4.2質量部をそれぞれ配合し、密閉式加圧ニーダ及びオープンロールを用いて混練することでハロゲン含有アクリルゴム組成物を作製した。
【0043】
得られたアクリルゴム組成物について、下記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
<環境性能>
TRGS 552で規制されている発がん性対象のN-ニトロソアミンを発生する架橋剤を使用していない場合を「〇」、使用している場合を「×」と評価し、「〇」であれば環境性に優れていると評価した。
【0045】
<架橋性>
得られたハロゲン含有アクリルゴム組成物について、JIS K6300-2:2001に準拠した架橋性を評価した。試験温度が200℃、試験時間が12分の場合におけるt10(10%架橋時間)とt90(90%架橋時間)を「ロータレス・レオメータ RLR-4」(東洋精機社製)を用いて測定した。
【0046】
・判定基準:t10
t10が25秒以上60秒未満の場合、架橋誘導時間が優れている「○」と評価した。t10が15秒以上25秒未満又は60秒以上90秒以下の場合、架橋誘導時間が良好である「△」と評価した。t10が15秒未満の場合、架橋誘導時間が短く、スコーチしやすいため不良である「×」とし、90秒を超える場合も短時間架橋が困難となるため不良である「×」とそれぞれ評価した。
【0047】
・判定基準:t90
t90が244秒未満の場合、架橋時間が短く、架橋速度が優れている「○」と評価した。t90が244秒以上301秒未満の場合、架橋時間及び架橋速度が良好である「△」と評価した。t90が301秒以上の場合、架橋時間が長く、架橋速度が不良である「×」と評価した。
【0048】
<貯蔵安定性>
貯蔵安定性は、ムーニースコーチ特性(T5)により評価した。具体的には、得られたハロゲン含有アクリルゴム組成物について、JIS K6300-2:2013に準拠した、試験温度125℃におけるムーニー粘度計(L形ロータ)を用いた最低ムーニー粘度V、最低ムーニー粘度Vから5ポイント(t5)増加するまでの時間(スコーチタイム)を測定し、これらを基準に評価した。
【0049】
・判定基準:最低ムーニー粘度V
初期の最低ムーニー粘度Vに対する14日放置後の 最低ムーニー粘度Vの変化率が20%未満の場合、粘度の変化率が少なく、貯蔵安定性に優れている「〇」と評価し、変化率が20%以上40%以下の場合、貯蔵安定性が良好である「△」と評価し、変化率が40%を超える場合、貯蔵安定性が不良である「×」と評価した。
【0050】
・判定基準:スコーチタイム(t5)
14日放置後のスコーチタイム(t5)が10分以上である場合、貯蔵安定性に優れている「〇」と評価し、スコーチタイム(t5)が5分以上10分未満の場合、貯蔵安定性が良好である「△」と評価し、スコーチタイム(t5)が5分未満である場合、貯蔵安定性が不良である「×」と評価した。
【0051】
<圧縮永久歪み(CS)>
得られたハロゲン含有アクリルゴム組成物を200℃で各サンプルのt90(秒)+120(秒)の条件下で加熱し、厚み12.5mm×直径φ29mmの圧縮永久歪み用大形試験片を作製した。得られた試験片について、JIS K 6262:2013に準拠した150℃で70時間後の圧縮永久歪み(CS)(%)を評価した。圧縮永久歪み(CS)(%)が62%以下である場合、圧縮永久歪み(CS)が優れている「〇」と評価し、圧縮永久歪み(CS)(%)が62%を超える場合、圧縮永久歪み(CS)が劣っている「×」と評価した。
【0052】
<常態特性>
得られたハロゲン含有アクリルゴム組成物を200℃で各サンプルのt90(秒)の条件下で加熱し、それぞれ厚み2mmの架橋ゴムシートを作製した。得られた架橋ゴムシートについて、JIS K6253:2012に準拠したタイプAデュロメーターによりゴム硬度(ポイント)を測定した。
【0053】
(実施例2)
テトラベンジルチウラムジスルフィドの配合量を2.2質量部に変更し、さらにジベンジルチオカルバミン酸亜鉛(「ノクセラー(登録商標)ZTC」、大内新興社製)4.4質量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
(実施例3)
テトラベンジルチウラムジスルフィドの配合量を6.2質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例4)
2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンの配合量を1.2質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
(実施例5)
2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンの配合量を4.0質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
(実施例6)
テトラベンジルチウラムジスルフィドの配合量を1.0質量部、ジベンジルチオカルバミン酸亜鉛の配合量を8.0質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例7)
テトラベンジルチウラムジスルフィドの配合量を8.0質量部、ジベンジルチオカルバミン酸亜鉛の配合量を1.0質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
(実施例8)
テトラベンジルチウラムジスルフィド4.2質量部に代えてジベンジルチオカルバミン酸亜鉛(「ノクセラー(登録商標)ZTC」、大内新興社製)4.7質量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0060】
(実施例9)
テトラベンジルチウラムジスルフィド4.2質量部に代えてテトラキス(2-エチルへキシル)チウラムジスルフィド(「ノクセラー(登録商標)TOT」、大内新興社製)7.0質量部(有効成分量:4.9質量部)を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
(実施例10)
テトラベンジルチウラムジスルフィドの配合量を2.1質量部に変更し、さらにテトラキス(2-エチルへキシル)チウラムジスルフィド(「ノクセラー(登録商標)TOT」、大内新興社製)3.5質量部(有効成分量:2.45質量部)を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)
テトラベンジルチウラムジスルフィド4.2質量部に代えてジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(「ノクセラー(登録商標)EZ」、大内新興社製)2.8質量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0063】
(比較例2)
テトラベンジルチウラムジスルフィド4.2質量部に代えてジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(「ノクセラー(登録商標)BZ」、大内新興社製)3.6質量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0064】
(比較例3)
テトラベンジルチウラムジスルフィド4.2質量部に代えてテトラメチルチウラムジスルフィド(「ノクセラー(登録商標)TT」、大内新興社製)1.9質量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0065】
(比較例4)
2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン2.2質量部に代えて硫黄(「金華印コロイド硫黄 A」、鶴見化学工業社製)0.3質量部を加え、さらに、ステアリン酸カリウム(「ノンサール(登録商標)SK-1」、日本油脂社製)0.25質量部及びステアリン酸ナトリウム(「NSソープ」、花王社製)3.0質量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0066】
(比較例5)
テトラベンジルチウラムジスルフィド4.2質量部に代えて水酸化カルシウム(「Caldic #1000」、近江化学社製)1.0重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0067】
(比較例6)
2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンの配合量を0.4質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0068】
(比較例7)
2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジンの配合量を5.0質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0069】
(比較例8)
テトラベンジルチウラムジスルフィド不含としたこと以外は、実施例1と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0070】
(比較例9)
テトラベンジルチウラムジスルフィドの配合量を10.0質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてアクリルゴム組成物を作製して、上記の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
上記表1及び表2に示される各成分は、下記の通りである。
・ハロゲン含有アクリルゴム(「NOXTITE(登録商標)PA-404N」、ユニマテック社製)
・シリカ(「Reolosil(登録商標)CP102」、トクヤマ社製)
・グラファイト(「グラファイト A-0」、東日本カーボン社製)
・2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(「ノクセラー(登録商標)TCA」、大内新興社製)
・硫黄(「金華印コロイド硫黄 A」、鶴見化学工業社)
・テトラベンジルチウラムジスルフィド(「ノクセラー(登録商標)TBZTD」、大内新興社製)
・テトラキス(2-エチルへキシル)チウラムジスルフィド(「ノクセラー(登録商標)TOT」、大内新興社製)
・テトラメチルチウラムジスルフィド(「ノクセラー(登録商標)TT」、大内新興社製)
・ジベンジルチオカルバミン酸亜鉛(「ノクセラー(登録商標)ZTC」、大内新興社製)
・ジエチルチオカルバミン酸亜鉛(「ノクセラー(登録商標)EZ」、大内新興社製)
・ジブチルチオカルバミン酸亜鉛(「ノクセラー(登録商標)BZ」、大内新興社製)
・水酸化カルシウム(「Caldic #1000」、近江化学社製)
・ステアリン酸カリウム(「ノンサール(登録商標)SK-1」、日本油脂社製)
・ステアリン酸ナトリウム(「NSソープ」、花王社製)
【0074】
表1から分かるように、アクリルゴム組成物中に、トリアジンチオール系架橋剤と、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの架橋促進剤とが、それぞれ所定の含有量の範囲内で配合された実施例1~10では、架橋性が良好であり、かつ環境性能、貯蔵安定性及び圧縮永久歪みのいずれの特性も優れていた。
【0075】
比較例1~3では、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド及びジベンジルジチオカルバミン酸塩とは異なる架橋促進剤を使用しているため、TRGS 552で規制されている発がん性対象のN-ニトロソアミンが発生し、環境性能に劣っていた。また、架橋促進剤としてテトラメチルチウラムジスルフィドを使用した比較例3では、架橋性、貯蔵安定性及び圧縮永久歪みのいずれの特性も不良「×」を示した。
【0076】
比較例4では、架橋剤として硫黄を使用しているため、圧縮永久歪みに劣っていた。また、架橋促進剤として水酸化カルシウムを使用した比較例5では、架橋性及び貯蔵安定性に劣っていた。
【0077】
比較例6では、架橋剤の含有量が0.8質量部未満であるため、架橋性に劣っており、比較例7では、架橋剤の含有量が4.0質量部を超えているため、圧縮永久歪みに劣っていた。
【0078】
比較例8では、架橋促進剤不含であるため、架橋性が劣っており、架橋成形品を作製することができなかった。比較例9では、架橋促進剤を過剰に含むため、アウトガスの発生、および熱負荷に伴う発火するリスクがあり、架橋成形品を作製することができなかった。