(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】地盤改良材料スラリーおよび地盤改良工法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/44 20060101AFI20240627BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20240627BHJP
C09K 17/42 20060101ALI20240627BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20240627BHJP
C09K 17/22 20060101ALI20240627BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20240627BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240627BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
C09K17/44 P
C09K17/48 P
C09K17/42 P
C09K17/10 P
C09K17/22 P
C09K17/02 P
E02D3/12 101
C09K103:00
(21)【出願番号】P 2020164858
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘樹
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123176(JP,A)
【文献】特開2020-147681(JP,A)
【文献】特開2017-155141(JP,A)
【文献】特開2000-169209(JP,A)
【文献】国際公開第2020/027191(WO,A1)
【文献】特開2018-012622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00 - 17/52
E02D 3/12
E02D 17/00 - 17/20
C04B 2/00 - 32/02
C04B 40/00 - 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントおよび/または高炉スラグ微粉末と、ポリアクリル酸類およびアルカリ金属炭酸塩からなる粘性低減剤と、水とを含む地盤改良材料スラリーであって、
前記地盤改良材料スラリー中の塩素の量が、40ppm~2000ppmであり、
前記地盤改良材料スラリーのpH値が10~13、酸化還元電位が-0.4~0.1Vである地盤改良材料スラリー。
【請求項2】
さらに、流動化剤を含有する請求項1に記載の地盤改良材料スラリー。
【請求項3】
前記流動化剤が、ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤である請求項2に記載の地盤改良材料スラリー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の地盤改良材料を、噴射圧5MPa以上、噴射量10L/min以上で地盤中に噴射する地盤改良工法。
【請求項5】
前記地盤改良材料スラリーと地盤を構成する粘性土とを混合してスライムとした際の、当該スライム作製4時間後の粘度が30,000mPa・s以下である請求項4に記載の地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に高圧噴射し、地盤を硬化、安定化させる地盤改良材料スラリーおよび地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤のような不良地盤を改良するためには、軟弱な地盤を硬化、安定化させなければならない。地盤安定化工法としては、例えば、地盤改良材料スラリーを、高圧で地中深くに噴射し、土と混合して硬化させ安定化する工法がある(非特許文献1)。
この工法は、地中に地盤改良材料スラリーを噴射する管を挿入し、管を回転させながら管先端付近から地盤改良材料スラリーを高圧噴射し、地中の土を切削すると同時に、切削された土と地盤改良材料スラリーとが混合された混合土を別の管内を通して地上へ排出しながら、一定速度で管を上昇させ、地中を地盤改良材料スラリーと土との混合物で置換して硬化させ、地盤を安定化させる工法である。
【0003】
切削により地盤改良材料スラリーと土を混合した場合、セメント粒子と土の粒子が電気的作用により互いに凝集するため、地盤改良材料スラリーと土との混合物である混合土の粘性が上昇し、そのため、これを地上へ排出できにくくなるといった課題があった。
【0004】
混合土の粘性を低下させるものとして、リン酸塩、アルカリ金属含有物(硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機酸およびアンモニウム塩等を含有する物質を組み合わせたものが知られている(特許文献1~7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】坪井直道著、「薬液注入工法の実際」鹿島出版会、昭和56年3月25日改訂版第2刷発行、第5~9頁
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平05-254903号公報
【文献】特開平06-206747号公報
【文献】特開平07-206495号公報
【文献】特開平07-069695号公報
【文献】特開2004-143041号公報
【文献】特開平09-194835号公報
【文献】特許第3554496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの地盤改良材料は粘性を低下できる一方で、地盤改良材料スラリーと土(地盤)との混合物(スライム)を含む混合土の強度が低くなり、軟弱地盤の十分な硬化ができないといった課題があった。
以上から、本発明は、地盤を構成する粘性土と混合してスライムとした際に当該スライムの安定的な圧送が可能で、地盤中に注入した際に十分な硬化状態が得られる地盤改良材料スラリーを提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、地盤改良工法において、前記課題を解決すべく種々検討を行った結果、特定の粘性低減剤を使用し、地盤改良材料スラリーに含まれる塩素の量を特定の範囲にすることで、スライムの安定的な圧送が可能で、軟弱地盤を十分に硬化できる強度を発現するとの知見を得て本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]セメントおよび/または高炉スラグ微粉末と、ポリアクリル酸類およびアルカリ金属炭酸塩からなる粘性低減剤と、水とを含む地盤改良材料スラリーであって、前記地盤改良材料スラリー中の塩素の量が、40ppm~2000ppmであり、前記地盤改良材料スラリーのpH値が10~13、酸化還元電位が-0.4~0.1Vである地盤改良材料スラリー。
[2] さらに、流動化剤を含有する[1]に記載の地盤改良材料スラリー。
[3] 前記流動化剤が、ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤である[2]に記載の地盤改良材料スラリー。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の地盤改良材料を、噴射圧5MPa以上、噴射量10L/min以上で地盤中に噴射する地盤改良工法。
[5] 前記地盤改良材料スラリーと地盤を構成する粘性土とを混合してスライムとした際の、当該スライム作製4時間後の粘度が30,000mPa・s以下である[4]に記載の地盤改良工法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、地盤を構成する粘性土と混合してスライムとした際に当該スライムの安定的な圧送が可能で、地盤中に注入した際に十分な硬化状態が得られる地盤改良材料スラリーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
【0012】
[地盤改良材料スラリー]
本発明の地盤改良材料スラリーは、セメントおよび/または高炉スラグ微粉末と、ポリアクリル酸類およびアルカリ金属炭酸塩からなる粘性低減剤と、水とを含み、好ましくは、セメントおよび/または高炉スラグ微粉末と、ポリアクリル酸類およびアルカリ金属炭酸塩からなる粘性低減剤と、水とからなる。
【0013】
地盤改良材料スラリー中の塩素の量は、40ppm~2000ppmである。塩素の量が、40ppm未満だと、強度の低下をもたらしてしまう。塩素の量が、2000ppmを超えると、地盤を構成する粘性土と混合してスライムとした際に当該スライムの安定的な圧送が困難となる。
塩素の量は、50~1500ppmであることが好ましく、100~1000ppmであることがより好ましく、250~1000ppmであることがさらに好ましく、300~800ppmであることがよりさらに好ましい。塩素の量は、例えば、地盤改良材料スラリーを作製する際に塩素を含有する混和剤を添加して調整することができる。また、塩素の量は後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0014】
また、地盤改良材料スラリーのpH値は10~13であり、酸化還元電位は-0.4~0.1Vである。
当該pH値が10未満であると、強度が低下してしまい、13を超えると粘性が低下してしまう。pHは、10~13であることが好ましく、11~13であることがより好ましい。pHは、酸又はアルカリ等を添加して調整することができる。pHは、pH計を用いることで測定することができる。
【0015】
酸化還元電位は-0.4V未満、または、0.1Vを超えると粘性を維持することができなくなる。酸化還元電位は、-0.4~0.1Vであることが好ましく、-0.2~0Vであることがより好ましい。
酸化還元電位は、酸化還元電位(ORP)計を用いることで測定することができる。そして、酸化還元電位を上記範囲とするには、スラリー中に酸素をバブリングさせることで調整することができる。
【0016】
以下、本発明の地盤改良材料スラリーについてより具体的に説明する。
(セメント、高炉スラグ微粉末)
セメントは特に限定されるものではなく、セメントとしては、例えば、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や石膏や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、ならびに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等のポルトランドセメント、ならびに、市販されているセメント系固化材、市販されている微粒子セメント等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、通常セメントに使用されている成分、例えば石膏等の量を増減して調製されたものも使用可能である。
【0017】
高炉水砕スラグ微粉末とは、高炉から副生する高炉スラグのうち、急冷されて非晶質化したものを粉砕し、微粉末にしたものを総称するものである。高炉水砕スラグ微粉末については、JISに制定されている。高炉水砕スラグ微粉末の粉末度は、特に限定されるものではなく、JISで制定されているもので充分である。具体的には、ブレーン比表面積(JIS R 5201)で4000~8000cm2/gの範囲のものが好ましい。
【0018】
セメント及び高炉スラグ微粉末のそれぞれの使用量は、地盤改良材料スラリー1m3中、50~400kgが好ましく、100~300kgがより好ましい。50~400kg/m3であることで軟弱地盤を十分に硬化することができる。
【0019】
(粘性低減剤)
粘性低減剤は、粘性低減効果、強度発現性を高める第一成分として、アルカリ金属炭酸塩を使用する。アルカリ金属炭酸塩としては、具体的に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。好ましいアルカリ金属炭酸塩は、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムであり、より好ましいものは炭酸ナトリウムである。
【0020】
アルカリ金属炭酸塩の使用量は、地盤改良材料スラリー1m3中、1~30kgが好ましく、1~20kg/m3がより好ましい。1kg/m3以上であることで、スライム粘性の低減効果と強度発現性が得られやすくなる。また、30kg/m3以下であることで粘性が直ぐ上昇しにくくなる。
【0021】
ポリアクリル酸類とは、ポリアクリル酸やその誘導体またはそれらの塩類であって、具体的には、ポリアクリル酸やポリアクリル酸エステル共重合体またはそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩等が使用可能であるが、入手し易いことからナトリウム塩の使用が好ましく、共重合体としては架橋分岐型が好ましい。特に、本発明では、ポリアクリル酸ナトリウム、中でも低重合度の水に可溶な重合体で、固形分が90%以上、25℃における40%濃度のスラリー粘度が10,000cps以下の可溶性重合度タイプのものの使用が、高い粘性低減効果が得られる点から好ましい。
【0022】
ポリアクリル酸類の使用量は、地盤改良材料スラリー1m3中、1~30kgが好ましく、1~20kgがより好ましい。1kg/m3以上であることで、スライム粘性の低減がしやすくなり、30kg/m3以下であると強度が低下せず、経済性が優れる。
【0023】
また、地盤改良材料スラリーにおける、粘度の低減及び地盤改良の施工後に高い強度発現に寄与する観点から、ポリアクリル酸類のpHは6~10であることが好ましく、7~9であることがより好ましい。pHは、pH計を用いることで測定することができる。そして、pHを6~10とするには、ポリアクリル酸類に対して酸又はアルカリ等を添加して調整することができる。
【0024】
さらに地盤改良材料スラリーにおける、粘度の低減及び地盤改良の施工後に高い強度発現に寄与する観点から、ポリアクリル酸類の酸化還元電位は0~200mVであることが好ましく、40~120mVであることがより好ましい。酸化還元電位は、酸化還元電位(ORP)計を用いることで測定することができる。そして、酸化還元電位を0~200mVとするには、当該混合物に対して酸素をバブリングさせることで調整することができる。
【0025】
粘性低減剤の使用形態は、粉末のもの、溶液化したものいずれも使用可能であるが、溶液化したものを使用する場合、水と混合して使用することが好ましい。溶解時間の短縮や均質な溶液を得ることが可能である。
【0026】
(流動化剤)
本発明では、流動化剤を併用することで、さらに粘性を低減させる優れた効果が得られる。流動化材としては減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤である。特に本発明では、ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤を併用することで、優れた粘性を低減させる効果が得られる。ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤は特に限定されるものでなく、市販のものが使用できる。その形状も粉末状、液体状の何れも使用可能である。
【0027】
流動化剤(特にナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤)の使用量は、地盤改良材料スラリー1m3中、1~30kgが好ましく、1~20kgがより好ましい。1kg/m3が未満ではスライム粘性の低減が難しく、30kg/m3より多いと強度が低下する、かつ、経済性に優れない。
【0028】
(水)
水の使用量は、土の含水比等で異なる。特に限定されるものではないが、セメントと高炉スラグ微粉末から選ばれる1種以上100部に対して、30~500部が好ましく、50~300部がより好ましい。30部未満ではスライムの流動性が小さく、一方500部を超えると強度発現性を阻害する場合がある。
【0029】
(その他の成分)
本発明の地盤改良材料スラリーには、本発明の効果を阻害しない範囲で種々のその他の成分を含有させてもよい。例えば、消泡剤、膨張材、急硬材、急結剤、高強度混和剤、発泡剤、起泡剤、防水剤、増粘剤、防凍剤、収縮低減剤、凝結調整剤、ベントナイトなどの粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体、ポリマー、繊維等が挙げられる。
【0030】
ポリアクリル酸類は一般に空気連行性がある。そのため地盤改良材料スラリーを練り混ぜた時に空気量が過大になって圧送できない可能性があるが、消泡剤の添加により所定の空気量にコントロールすることも可能である。消泡剤としては、シリコーン系、ノニオン系、アルコール系、脂肪酸系、エーテル系、脂肪酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエーテル系及びフッ素系等のものが挙げられる。特に限定されるものではない。
消泡剤の使用量は、地盤改良材料スラリー1m3中、0.01~1kgが好ましく、0.1~0.5kgがより好ましい。
【0031】
以上のような本発明の地盤改良材料スラリーは、当該地盤改良材料スラリーと地盤を構成する粘性土(水分を多く含み粘性を有する土で、シルトまたは粘土に分類される)とを混合してスライムとした際の、当該スライム作製4時間後の粘度が30,000mPa・s以下であることが好ましく、15000mPa・s以下であることがより好ましい。近年では、スライムの安定した排出が困難であり、加水や減水剤の後添加により、スライムの廃棄量が多くなっていた。さらに、夏場の工事では高温時にスライムの粘性が上昇し、廃泥ピッドまで排出できないという課題があった。しかし、スライム作製4時間後の粘度が30,000mPa・s以下であることで、上記のような課題が解決される。
当該スライム作製4時間後の粘度が30,000mPa・s以下とするには、本発明の地盤改良材料スラリーにおいて、特に、pH、ORPを調整すればよい。
本発明の地盤改良材料スラリーは、35℃の高温環境下でも、スライムの粘度が混合後4時間で30,000mPa・s以下であり、スライムの廃棄が容易である。
【0032】
[地盤改良工法]
本発明の地盤改良工法は、本発明の地盤改良材料を、噴射圧5MPa以上、噴射量10L/min以上で地盤中に噴射する方法である。以下に、本発明の地盤改良工法についてより詳細に説明する。
【0033】
まず、地盤改良が必要な箇所を削孔する。削孔径は特に限定されるものではなく、注入ロッドが挿入できる大きさであればよい。削孔の深さは、改良したい領域により変わるが、10~50m程度が一般的である。
【0034】
次に、二重管や三重管構造の注入ロッドを挿入し、地盤改良材料スラリーをグラウトポンプ、超高圧ポンプ、又はコンプレッサーなどを用いて圧送し、二重管又は三重管のノズルから噴射する。
地盤改良材料スラリーの圧送圧力は大きい方が好ましいが、二重管、三重管、又はこれらのノズルの磨耗等を考慮すると、地盤改良材料スラリーを噴射圧5MPa以上、噴射量10L/min以上で地盤に噴射することが好ましい。効率的に改良半径が大きくでき、経済的である。
【0035】
地盤改良材料スラリーの送液量は特に限定されるものではないが、30~800リットル/min程度が好ましい。
このように地中で高圧噴射された地盤改良材料スラリーは、土と一緒に混合攪拌され、また、注入ロッドは回転しながら一定速度で地上へ上昇するので、最終的には地盤改良材料スラリーと土とからなる円柱状の杭が地中に形成される。
この杭の直径は、地盤の硬さを示すN値等の土の条件や噴射の圧送圧力等の施工条件により変化し、特に限定されるものではないが、0.5~20mが適当である。杭の長さは3m~50m程度のものが形成可能である。
【0036】
以上のような地盤改良工法スライムによれば、夏場の工事でも高温時にスライムの粘性が上昇しづらく、廃泥ピッドまで排出しやすい。また、35℃の高温環境下でも、スライムの粘度が混合後4時間で30,000mPa・s以下であれば、スライムの廃棄が容易である。
【実施例】
【0037】
以下、実験例に基づき本発明を詳細に説明する。
(実験例1)
セメント、高炉スラグ微粉末、炭酸ナトリウム、流動化剤、及びポリアクリル酸類を表1に示すように組み合わせ、地盤改良材料スラリーを調製した。水は、セメントと高炉スラグ微粉末の合計100部に対して150部添加した。pHは水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整し、ORPは酸素でバブリングさせ調整し、塩素量は塩素含有混和剤(材質名:塩化ナトリウム)を用いて調整した。
次いで、粘性土1m3に対して地盤改良材料スラリーを1m3混合してスライムを得、粘度及び圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
試験は、温度35℃、湿度80%の環境下で行った。
【0038】
<使用材料>
セメントとしては、実験No.1-8、1-17以外では、普通ポルトランドセメント(市販品、密度3.04g/cm3)を使用し、実験No.1-8、1-17では、試製セメント(セメント工場の調合原料及び化学成分の調整に各種市販の純薬を用い、SO3量の調整には純薬の無水石膏を用いて調製したセメント、塩素量1.5ppm、ブレーン値3,450cm2/g)を用いた。
高炉スラグ微粉末:高炉スラグ微粉末、市販品、密度2.89g/cm3、比表面積6010cm2/g
炭酸ナトリウム:工業品
流動化剤:ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤(工業品)
粘性土:東京湾産粘性土、含水率30%、湿潤密度1.73g/cm3
ポリアクリル酸類:ポリアクリル酸ナトリウム、工業品、質量平均分子量6,000、pH8、ORP0.5V。なお、pHはpH計を用いて測定し、ORPは酸化還元電位計を用いて測定した。
【0039】
<測定方法>
粘度:得られたスライムを回転数20rpmの条件下でB型粘度計により、練混ぜから4時間まで測定した。
圧縮強度:得られたスライムを直径5cm×高さ10cmの型枠に流し込み、硬化後脱型して得た供試体を、温度35℃で封緘養生し、材齢28日における圧縮強度を測定した。
塩素濃度:作製した地盤改良材料スラリーについて、JIS R 5202に準拠して塩素濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、スライムの粘性を長時間下げて安定的にスライムの排出ができ、さらに軟弱地盤を十分に硬化、安定化できる高い強度を発現する地盤改良材料スラリーが提供され、主に土木分野で好適に使用できる。