(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/407 20060101AFI20240627BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G01N27/407
G01N27/409 100
(21)【出願番号】P 2020181914
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】米津 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】島崎 雄次
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将之
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023985(JP,A)
【文献】特開2015-040716(JP,A)
【文献】特開2013-257192(JP,A)
【文献】特開2019-070601(JP,A)
【文献】実開平01-146155(JP,U)
【文献】米国特許第04756885(US,A)
【文献】国際公開第2016/009929(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/407
G01N 27/409
G01N 27/41
G01N 27/419
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、先端側
に被検出ガスを検知する検知部
及び前記検知部に連通して前記被検出ガスを前記検知部に導入する素子導入孔が形成されたセンサ素子と、
前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで保持する筒状の主体金具と、
前記主体金具の先端側の周囲に固定されると共に、前記センサ素子の前記先端側を取り囲む一重筒状のプロテクタと、
を備えたガスセンサであって、
前記プロテクタは、後端側を向くガス導入孔と、前記ガス導入孔よりも先端側に配置されたガス排出孔とを有し、
前記軸線方向に前記ガス導入孔と前記主体金具の先端向き面との間に隙間Gを有し、
前記軸線方向に沿って後端側へ向かい前記ガス導入孔を見たとき、前記主体金具の前記先端向き面が臨む面積Shが前記ガス導入孔の開口面積Sgの1/2以上であり、
前記素子導入孔の全部は前記主体金具の前記先端向き面の最先端よりも先端側に位置し、
前記隙間Gの距離L1が、前記ガス導入孔の直径Dよりも小さいことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
軸線方向に延び、先端側
に被検出ガスを検知する検知部
及び前記検知部に連通して前記被検出ガスを前記検知部に導入する素子導入孔が形成されたセンサ素子と、
前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで保持する筒状の主体金具と、
前記主体金具の先端側の周囲に固定されると共に、前記センサ素子の前記先端側を取り囲む一重筒状のプロテクタと、
を備えたガスセンサであって、
前記プロテクタは、後端側を向くガス導入孔と、前記ガス導入孔よりも先端側に配置されたガス排出孔とを有し、
前記軸線方向に前記ガス導入孔と前記主体金具の先端向き面との間に隙間Gを有し、
前記軸線方向に沿って後端側へ向かい前記ガス導入孔を見たとき、前記主体金具の前記先端向き面が臨む面積Shが前記ガス導入孔の開口面積Sgの1/2以上であり、
前記素子導入孔の全部は前記主体金具の前記先端向き面の最先端よりも先端側に位置し、
前記隙間Gの距離L1が、前記センサ素子と前記ガス導入孔との径方向の距離L2よりも小さいことを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
前記主体金具の前記先端向き面は、前記径方向に平行な水平面、及び/又は先端側に向かって窄まると共に径方向外側に向くテーパ面を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記ガス導入孔を前記径方向の外側から見たとき、前記プロテクタの内部が見えないことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一重のプロテクタを備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒状の主体金具にセンサ素子を保持し、さらに排ガスに晒されるセンサ素子の先端側を一重又は二重のプロテクタで保護するガスセンサが知られている。このプロテクタにはガス導入孔が設けられているが、排ガスに混入した凝縮水がセンサ素子に到達するのを抑制する耐被水性と、センサ素子の検知部へ速やかに排ガスを導入する応答性とを要求される。ここで、センサ素子は自身のヒータ、又は高温の排ガスによって加熱されており、このセンサ素子に凝縮水が接触すると熱衝撃が生じて素子割れが生じるおそれがある。
そこで、プロテクタを一重として応答性を向上させると共に、プロテクタに設けた水平な段部にガス導入孔を設け、ガス導入孔を主体金具の先端側に臨ませる技術が開発されている(特許文献1)。この技術によれば、排ガスはガス導入孔から一旦主体金具へ向かい、その後、ガス導入孔と主体金具との間の内部空間で向きを変えてプロテクタ内部を先端側へ向かう。このため、凝縮水が自重で排ガスから分離されやすいとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、主体金具側から向きを変えた凝縮水が、そのままセンサ素子の検知部に到達すると、素子割れ等が生じるおそれがあり、耐被水性が不十分となる。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、一重のプロテクタを用いて耐被水性と応答性とを共に向上させることができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のガスセンサは、軸線方向に延び、先端側に被検出ガスを検知する検知部及び前記検知部に連通して前記被検出ガスを前記検知部に導入する素子導入孔が形成されたセンサ素子と、前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで保持する筒状の主体金具と、前記主体金具の先端側の周囲に固定されると共に、前記センサ素子の前記先端側を取り囲む一重筒状のプロテクタと、を備えたガスセンサであって、前記プロテクタは、後端側を向くガス導入孔と、前記ガス導入孔よりも先端側に配置されたガス排出孔とを有し、前記軸線方向に前記ガス導入孔と前記主体金具の先端向き面との間に隙間Gを有し、前記軸線方向に沿って後端側へ向かい前記ガス導入孔を見たとき、前記主体金具の前記先端向き面が臨む面積Shが前記ガス導入孔の開口面積Sgの1/2以上であり、前記素子導入孔の全部は前記主体金具の前記先端向き面の最先端よりも先端側に位置し、前記隙間Gの距離L1が、前記ガス導入孔の直径Dよりも小さいことを特徴とする。
【0006】
このガスセンサによれば、L1<Dとすることで、水滴が被検出ガスとともにガス導入孔から主体金具へ向かうと、この水滴が主体金具の先端向き面に確実に当たって破壊され、細かい水滴となる。このため、この水滴が向きを変えてプロテクタ内部を先端側へ向かい、仮にセンサ素子の先端側に接触しても、大径の水滴がそのままセンサ素子に接触する場合に比べてセンサ素子の熱衝撃が低減されて割れ難くなり、耐被水性を向上させることができる。
ここで、Sh>1/2×Sgとすることで、ガス導入孔の開口面積の1/2以上が主体金具の先端向き面に対向するので、ガス導入孔から主体金具へ向かう水滴が先端向き面に当たる割合が増え、水滴をより確実に先端向き面に当てて細かく破壊させることができる。
さらに、プロテクタは一重であるので、二重プロテクタに比べて被検出ガスがプロテクタ内に流入しやすく、応答性も向上する。
【0007】
なお、L1<Dとした理由は、ガス導入孔からプロテクタ内に導入される水滴の最大径がDであり、仮にL1≧Dであると、ガス導入孔から直径Dの水滴が隙間Gに入った場合、先端向き面に当たらずにプロテクタ内を移動し、大粒のままセンサ素子に接触するおそれがあるからである。
【0008】
本発明の第2の態様のガスセンサは、軸線方向に延び、先端側に被検出ガスを検知する検知部及び前記検知部に連通して前記被検出ガスを前記検知部に導入する素子導入孔が形成されたセンサ素子と、前記センサ素子の径方向周囲を取り囲んで保持する筒状の主体金具と、前記主体金具の先端側の周囲に固定されると共に、前記センサ素子の前記先端側を取り囲む一重筒状のプロテクタと、を備えたガスセンサであって、前記プロテクタは、後端側を向くガス導入孔と、前記ガス導入孔よりも先端側に配置されたガス排出孔とを有し、前記軸線方向に前記ガス導入孔と前記主体金具の先端向き面との間に隙間Gを有し、前記軸線方向に沿って後端側へ向かい前記ガス導入孔を見たとき、前記主体金具の前記先端向き面が臨む面積Shが前記ガス導入孔の開口面積Sgの1/2以上であり、前記素子導入孔の全部は前記主体金具の前記先端向き面の最先端よりも先端側に位置し、前記隙間Gの距離L1が、前記センサ素子と前記ガス導入孔との径方向の距離L2よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
このガスセンサによれば、L1<L2とすることで、水滴が被検出ガスとともにガス導入孔から主体金具へ向かうと、この水滴が主体金具の先端向き面に確実に当たって破壊され、細かい水滴となる。このため、この水滴が向きを変えてプロテクタ内部を先端側へ向かい、仮にセンサ素子の先端側に接触しても、大径の水滴がそのままセンサ素子に接触する場合に比べてセンサ素子の熱衝撃が低減されて割れ難くなり、耐被水性を向上させることができる。
ここで、Sh>1/2×Sgとすることで、主体金具の先端向き面の面積の1/2以上がガス導入孔に対向するので、ガス導入孔から主体金具へ向かう水滴が先端向き面に当たる割合が増え、水滴をより確実に先端向き面に当てて細かく破壊させることができる。
さらに、プロテクタは一重であるので、二重プロテクタに比べて被検出ガスがプロテクタ内に流入しやすく、応答性も向上する。
なお、ガス導入孔から水滴が隙間Gに入り、仮に先端向き面に当たらずにプロテクタ内を移動した場合の水滴の最大径がL1となる。そこで、L1<L2とすれば、最大径L1の水滴であってもセンサ素子から遠ざかるので、センサ素子に接触する可能性が低くなる。
【0010】
本発明のガスセンサにおいて、前記主体金具の前記先端向き面は、前記径方向に平行な水平面、及び/又は先端側に向かって窄まると共に径方向外側に向くテーパ面を構成してもよい。
このガスセンサによれば、ガス導入孔から水平面又はテーパ面に当たった水滴は、下方に向く(水平面)か、径方向外側に向く(テーパ面)、つまり径方向内側に近づかない方向に跳ね返るので、水滴がセンサ素子に接触し難くなる。
これに対し、仮に主体金具の先端向き面が「先端側に向かって窄まると共に径方向内側に向くテーパ面」を有する場合、このテーパ面に当たった水滴は、径方向内側に跳ね返ってセンサ素子に接近する。このため、水滴がセンサ素子に接触して被水し易くなり、耐被水性が低下する場合がある。
【0011】
本発明のガスセンサにおいて、前記ガス導入孔を前記径方向の外側から見たとき、前記プロテクタの内部が見えなくてもよい。
このガスセンサによれば、径方向から水滴がプロテクタの内部、ひいてはセンサ素子に直接接触することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、一重のプロテクタを用いて耐被水性と応答性とを共に向上させることができるガスセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の態様の実施形態にかかるガスセンサの断面図である。
【
図2】先端側後端側へ向かってプロテクタ(ガス導入孔)を見たときの平面図である。
【
図4】本発明の第2の態様の実施形態にかかるガスセンサ1の断面図である。
【
図5】ガス導入孔の向きが異なる実施形態を示す断面図である。
【
図6】ガス導入孔を径方向の外側から見たとき、プロテクタの内部が見える場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様の実施形態について、
図1~
図3に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の態様の実施形態にかかるガスセンサ1の断面図、
図2は先端側から後端側へ向かってプロテクタ51(ガス導入孔56)を見たときの平面図、
図3は
図1のプロテクタ付近の部分拡大図である。
【0015】
図1において、ガスセンサ(全領域空燃比ガスセンサ)1は、センサ素子21と、軸線O方向に貫通してセンサ素子21を挿通させる貫通孔32を有するホルダ(セラミックホルダ)30と、セラミックホルダ30の径方向周囲を取り囲む主体金具11と、プロテクタ51と、を備えている。
センサ素子21のうち、検知部22が形成された先端側が、セラミックホルダ30及び主体金具11より先端に突出している。このように貫通孔32を通されたセンサ素子21は、セラミックホルダ30の後端面側(図示上側)に配置されたシール材(本例では滑石)41を、絶縁材からなるスリーブ43、リングワッシャ45を介して先後方向に圧縮することによって、主体金具11の内側において先後方向に気密を保持して固定されている。
【0016】
なお、センサ素子21の後端側29はスリーブ43及び主体金具11より後方に突出しており、その後端側29に形成された各電極端子24に、シール材85を通して外部に引き出された各リード線71の先端に設けられた端子金具75が圧接され、電気的に接続されている。また、この電極端子24を含むセンサ素子21の後端側29は、外筒81でカバーされている。以下、さらに詳細に説明する。
【0017】
センサ素子21は軸線O方向に延びると共に、測定対象に向けられる先端側(図示下側)に、検知用電極等(図示せず)からなり被検出ガス中の特定ガス成分を検出する検知部22を備えた帯板状(板状)をなしている。センサ素子21の横断面は、先後において一定の大きさの長方形(矩形)をなし、セラミック(固体電解質等)を主体として細長いものとして形成されている。このセンサ素子21自体は、従来公知のものと同じものであり、固体電解質(部材)の先端側に検知部22をなす一対の検知用電極が配置され、これに連なり後端側には、検知用出力取り出し用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。
【0018】
また、本例では、センサ素子21のうち、固体電解質(部材)に積層状に形成されたセラミック材の先端側内部にヒータ(図示せず)が設けられており、後端側には、このヒータへの電圧印加用のリード線71接続用の電極端子24が露出形成されている。なお、図示はしないが、これら電極端子24は縦長矩形に形成され、例えばセンサ素子21の後端側29において、帯板の幅広面(両面)に3つ又は2つの電極端子が横に並んでいる。
なお、センサ素子21の検知部22に、アルミナ又はスピネル等からなる多孔質の保護層23が被覆されている。又、センサ素子21には、検知部22に連通して被検出ガスを検知部22に導入する素子導入孔25が設けられており、素子導入孔25には図示しない多孔質の拡散抵抗層が配置されている。
【0019】
主体金具11は、先後において同心異径の筒状をなし、先端側には小径で後述するプロテクタ51を外嵌して固定するための円筒状の円環状部(以下、円筒部ともいう)12を有し、その後方(図示上方)の外周面には、それより大径をなす、エンジンの排気管への固定用のネジ13が設けられている。そして、その後方には、このネジ13によってセンサ1をねじ込むための多角形の工具係合部14を備えている。また、この工具係合部14の後方には、ガスセンサ1の後方をカバーする保護筒(外筒)81を外嵌して溶接する円筒部15が連設され、その後方には外径がそれより小さく薄肉のカシメ用円筒部16を備えている。
【0020】
なお、このカシメ用円筒部16は、
図1では、カシメ後のために内側に曲げられている。なお、工具係合部14の下面には、ねじ込み時におけるシール用のガスケット19が取着されている。
一方、主体金具11は、軸線O方向に貫通する内孔18を有している。内孔18の内周面は後端側から先端側に向かって径方向内側に先細るテーパ状の段部17を有している。
【0021】
主体金具11の内側には、絶縁性セラミック(例えばアルミナ)からなり、概略短円筒状に形成されたセラミックホルダ30が配置されている。セラミックホルダ30は、先端に向かって先細りのテーパ状に形成された先端向き面30aを有している。そして、先端向き面30aの外周寄りの部位が段部17に係止されつつ、セラミックホルダ30が後端側からシール材41で押圧されることで主体金具11内にセラミックホルダ30が位置決めされ、かつ隙間嵌めされている。
一方、貫通孔32は、セラミックホルダ30の中心に設けられると共に、センサ素子21が略隙間なく通るように、センサ素子21の横断面とほぼ同一の寸法の矩形の開口とされている。
【0022】
センサ素子21は、セラミックホルダ30の貫通孔32に通され、センサ素子21の先端21aをセラミックホルダ30及び主体金具11の先端12aよりも先方に突出させている。
一方、センサ素子21の先端部は、一重の有底円筒状のプロテクタ(保護カバー)51で覆われている。プロテクタ51の後端は主体金具11の円筒部12に外嵌され、溶接されている。又、プロテクタ51の後端寄りの部位には、径方向(軸線O方向に垂直な方向)に沿う段部51dが形成され、段部51dより先端側が小径となっている。
そして、段部51dには後端側を向くガス導入孔56が開口している。
図2に示すように、本例では、ガス導入孔56は段部51dの周方向に等間隔に複数(12個)設けられている。なお、「後端側を向く」とは、ガス導入孔56の周縁のうち、プロテクタ51内側の周縁を通る平面56eの垂線が径方向と角度をなし(径方向と平行でない)、かつガス導入孔56のうちプロテクタ51の内側の周縁が最も後端側に位置する(換言すれば、ガス導入孔56のうちプロテクタ51の外側の周縁より内側の周縁の方が後端側にある)ことをいう。
【0023】
一方、プロテクタ51の先端の底部51a中央にはガス排出孔53(本例では1個)が設けられている。ガス排出孔53は、ガス導入孔56よりも先端側に配置され、ガスセンサ1が取り付けられる取付対象(排気管等)を流れる被検出ガスの流れによってプロテクタ51内のガスがガス排出孔53から外部へ吸い出され、その負圧により、ガス導入孔56から被検出ガスがプロテクタ51内へ導入される。
なお、
図1の例では、プロテクタ51の先端の底部51a中央が平行な2本の切れ目で後端側に切り起こされてカバー51fを形成し、ガス排出孔53は、プロテクタ51の底部51aとカバー51fとの間の隙間に径方向に向いて形成されている。この場合、プロテクタ51を軸線O方向の先端側から見たとき、ガス排出孔53が直接見えないので、ガス排出孔53から凝縮水等の水滴がプロテクタ51内部に侵入することを抑制できる。
【0024】
又、
図1に示すように、センサ素子21の後端側29に形成された各電極端子24には、外部にシール材85を通して引き出された各リード線71の先端に設けられた各端子金具75がそのバネ性により圧接され、電気的に接続されている。そして、この圧接部を含む各端子金具75は、本例ガスセンサ1では、外筒81内に配置された絶縁性のセパレータ91内に設けられた各収容部内に、それぞれ対向配置で設けられている。なお、セパレータ91は、外筒81内にカシメ固定された保持部材82を介して径方向及び先端側への動きが規制されている。そして、この外筒81の先端部を、主体金具11の後端側の円筒部15に外嵌して溶接することで、ガスセンサ1の後方が気密状にカバーされている。
なお、リード線71は外筒81の後端部の内側に配置されたシール材(例えばゴム)85を通されて外部に引き出されており、この小径筒部83を縮径カシメしてこのシール材85を圧縮することにより、この部位の気密が保持されている。
【0025】
因みに、外筒81の軸線O方向の中央よりやや後端側には、先端側が径大の段部81dが形成され、この段部81dの内面がセパレータ91の後端を先方に押すように支持する。一方、セパレータ91はその外周に形成されたフランジ93を外筒81の内側に固定された保持部材82の上に支持させられており、段部81dと保持部材82とによってセパレータ91が軸線O方向に保持されている。
【0026】
次に、本発明の第1の態様の特徴部分について説明する。
図1、
図3に示すように、本実施形態では、軸線O方向に向かい合うガス導入孔56と主体金具11の先端向き面12aとの間に隙間Gを有している。又、
図2に示すように、軸線O方向から後端側へ向かってガス導入孔56を見たとき、主体金具11の先端向き面12aが臨む面積Shがガス導入孔56の開口面積Sgの1/2以上である。なお、Sh及びSgは、それぞれ合計面積であり、例えばSgは個々のガス導入孔56の開口面積を12個合算したものである。
なお、本実施形態では、全ての個々のガス導入孔56について、それぞれの面積Sh1が開口面積Sg1の1/2以上にもなっている。Sh1及びSg1はそれぞれ個々のガス導入孔56に対応する面積を表す。
さらに、素子導入孔25の全部は主体金具11の先端向き面12aの最先端12fよりも先端側に位置し、隙間Gの距離(最先端12fと平面56eとの距離)L1が、ガス導入孔56の直径Dよりも小さい。
【0027】
このように、L1<Dとすることで、凝縮水等の水滴Wが被検出ガスとともにガス導入孔56から主体金具11へ向かうと、この水滴Wが主体金具11の先端向き面12aに確実に当たって破壊され、細かい水滴となる。このため、この水滴が向きを変えてプロテクタ51内部を先端側へ向かい、仮にセンサ素子21の先端側に接触しても、大径の水滴Wがそのままセンサ素子21に接触する場合に比べてセンサ素子21の熱衝撃が低減されて割れ難くなり、耐被水性を向上させることができる。
ここで、Sh>1/2×Sgとすることで、ガス導入孔56の開口面積の1/2以上が主体金具11の先端向き面12aに対向するので、ガス導入孔56から主体金具11へ向かう水滴Wが先端向き面12aに当たる割合が増え、水滴Wをより確実に先端向き面12aに当てて細かく破壊させることができる。
さらに、プロテクタ51は一重であるので、二重プロテクタに比べて被検出ガスがプロテクタ内に流入しやすく、応答性も向上する。
また、L1は0より大きければ良いが、L1>0.5mmであると、プロテクタ51のガスを導入しやすく、好ましい。
【0028】
なお、L1<Dとした理由は、ガス導入孔56からプロテクタ51内に導入される水滴Wの最大径がDであり、仮にL1≧Dであると、ガス導入孔56から直径Dの水滴Wが隙間Gに入った場合、先端向き面12aに当たらずにプロテクタ51内を移動し、大粒のままセンサ素子21に接触するおそれがあるからである。
【0029】
また、素子導入孔25の全部が最先端12fよりも先端側に位置する必要がある理由は以下による。つまり、ガス導入孔56から導入された被検出ガスは先端向き面12aの最先端12fの位置から向きを変えてプロテクタ51内部を先端側へ向かう。そこで、最先端12fよりも先端側に素子導入孔25の全部が位置することで、この被検出ガスを確実にセンサ素子21の検知部22に接触させて検知でき、検知精度が向上する。
素子導入孔25の少なくとも一部が、ガス導入孔56の平面56eよりも先端側に位置すると、被検出ガスをさらに確実にセンサ素子21の検知部22に接触させて検知でき、検知精度がさらに向上する。
【0030】
なお、
図2に示すようにガス導入孔56が複数個ある場合、個々のガス導入孔56と、そのガス導入孔56が個別に対向する主体金具11の先端向き面12aの最先端12fにつき、いずれのガス導入孔56についてもL1<Dの関係にあることが最適である。しかし、複数個あるガス導入孔56のうち少なくとも1つでもL1<Dの関係を満たすガス導入孔56があれば、大粒のままセンサ素子21に到達する水滴の量を減らすことができる。
又、個々のガス導入孔56についてのL1は、後述する
図5、
図6等のように平面56eが斜めな場合も考慮し、最先端12fと、平面56eのうちガス導入孔56の周縁の部位との最短の距離である。
【0031】
次に、本発明の第2の態様の実施形態について、
図4に基づいて詳細に説明する。
図4は、本発明の第2の態様の実施形態にかかるガスセンサのプロテクタ151付近の部分拡大図である。
なお、第2の態様の実施形態にかかるガスセンサは、主体金具11の先端向き面120a1、120a2、及びプロテクタ151以外の構成は、第1の態様の実施形態にかかるガスセンサと同様であるので同一部分についての説明及び図示を省略する。
【0032】
図4に示すように、本実施形態でも、軸線O方向にガス導入孔156と主体金具11の先端向き面120a1、120a2との間に隙間Gを有している。又、図示しないが、軸線O方向から後端側へ向かってガス導入孔156を見たとき、主体金具11の先端向き面120a1、120a2が臨む面積Shがガス導入孔156の開口面積Sgの1/2以上である。
さらに、素子導入孔25の全部は主体金具11の先端向き面120a1、120a2の最先端120fよりも先端側に位置し、隙間Gの距離L1が、センサ素子21とガス導入孔156との径方向の距離L2よりも小さい。
【0033】
このように、L1<L2とすることで、水滴Wが被検出ガスとともにガス導入孔156から主体金具11へ向かうと、この水滴Wが主体金具11の先端向き面120a1、120a2に確実に当たって破壊され、細かい水滴となる。このため、第2の態様においても、大径の水滴Wがそのままセンサ素子21に接触する場合に比べてセンサ素子21の熱衝撃が低減されて割れ難くなり、耐被水性を向上させることができる。
また、L1は0より大きければ良いが、L1>0.5mmであると、プロテクタ51のガスを導入しやすく、好ましい。
【0034】
ここで、第2の態様においては、L1<L2と規定した点が第1の態様と異なる。L1<L2とした理由は以下による。つまり、ガス導入孔156から水滴Wが隙間Gに入り、仮に先端向き面120a1、120a2に当たらずにプロテクタ151内を移動した場合の水滴Wの最大径がL1となる。そこで、L1<L2とすれば、最大径L1の水滴Wであってもセンサ素子21から遠ざかるので、センサ素子21に接触する可能性が低くなるからである。
【0035】
なお、
図4の例では、主体金具11の先端向き面は、径方向に平行な水平面120a1と、水平面120a1の径方向外側に繋がり先端側に向かって窄まると共に径方向外側に向くテーパ面120a2と、を構成する。
このように、主体金具11の先端向き面が「先端側に向かって窄まり、径方向内側に向くテーパ面」を有しない構成とすると、ガス導入孔156から水平面120a1又はテーパ面120a2に当たった水滴Wは、下方に向く(水平面120a1)か、径方向外側に向く(テーパ面120a2)、つまり径方向内側に近づかない方向に跳ね返るので、水滴Wがセンサ素子21に接触し難くなる。
【0036】
これに対し、
図4の破線で示したように、仮にガス導入孔156に対向する主体金具11の先端向き面が「先端側に向かって窄まると共に径方向内側に向くテーパ面120t」を有する場合、このテーパ面120tに当たった水滴Wは、径方向内側に跳ね返ってセンサ素子21に接近する。このため、水平面や径方向外側に向くテーパ面と比較すると、水滴Wがセンサ素子21に接触して被水し易くなり、耐被水性が低下する場合がある。
このため、径方向内側に向くテーパ面よりも、水平面や径方向外側を向くテーパ面とガス導入孔156とが対向している方が望ましく、ガス導入孔156の開口面積の1/2以上が水平面か径方向外側を向くテーパ面と対向していることが望ましい。但し、耐被水性が低下しない範囲で、主体金具11の先端向き面が内側向きテーパ面を含むことを排除するものではない。
【0037】
なお、
図4の例では、水平面120a1とテーパ面120a1のうち、水平面120a1が「主体金具11の先端向き面の最先端12f」に相当する。
又、
図4の例では、プロテクタ151の先端の底部151a中央にガス排出孔153が直接開口している。
【0038】
なお、第2の態様においてガス導入孔156が複数個ある場合、個々のガス導入孔156と、そのガス導入孔56が個別に対向する主体金具11の先端向き面12aの最先端12f及びセンサ素子21につき、いずれのガス導入孔156についてもL1<L2の関係にあることが必要である。
又、個々のガス導入孔156についてのL2は、ガス導入孔156(の周縁)と、そのガス導入孔56が対向するセンサ素子21との最短の距離である。
【0039】
本発明のガスセンサは、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜にその構造、構成を設計変更して具体化できる。
例えば上記実施形態では、プロテクタ51の段部51dが径方向に沿って(平行に)形成され、段部51dに設けられたガス導入孔56のプロテクタ51内側の周縁を通る平面の垂線が径方向と垂直であったが、プロテクタ51の段部が径方向と垂直でない角度を持って形成されてもよい。
【0040】
具体的には、
図5に示すように、プロテクタ51の段部51d2(のプロテクタ51外面側)が径方向外側に向かって先端側へ下がるようなテーパ状をなしてもよい。この場合、段部51d2に設けられたガス導入孔56のプロテクタ51内側の周縁を通る平面の垂線(この垂線は、ガス導入孔56からプロテクタ51内部へ入る水滴Wの流れ方向を示す)も後端に向かって径方向外側へ向く。すなわち、ガス導入孔56からプロテクタ51内部へ入る水滴Wは、センサ素子21から遠ざかる方向へ流れるので、水滴Wがセンサ素子21に接触する可能性が低減する。
【0041】
なお、
図5の例、及び上述した
図3、
図4の例では、ガス導入孔56(156)を径方向の外側から見たとき、プロテクタ51(151)の内部が見えない。このようにすると、径方向から水滴Wがプロテクタの内部、ひいてはセンサ素子21に直接接触することを抑制することができる。
これに対し、
図6に示すように、プロテクタ51の段部51d3が径方向内側に向かって先端側へ下がるようなテーパ状をなし、かつガス導入孔56を径方向の外側から見たとき、プロテクタ51の内部が見える場合を考える。この場合、ガス導入孔56を径方向の外側から見たとき、隙間CLが形成され、この隙間CLから水滴Wがプロテクタの内部、ひいてはセンサ素子21に直接接触して耐被水が低下する場合がある。
【0042】
従って、ガス導入孔を径方向の外側から見たとき、プロテクタの内部が見えないことが好ましい。但し、
図6のようにプロテクタ51の段部51d3が径方向内側に向かって先端側へ下がるようなテーパ状であっても、ガス導入孔56を径方向の外側から見たとき、プロテクタ51の内部が見えないような構成であればよい。プロテクタ51の内部が見えない構成とするには、段部51d3の角度、プロテクタ51の厚み、又はガス導入孔56の径を調整することが挙げられる。
【0043】
また、センサ素子としては、酸素の濃度を測定するものに限定されず、窒素酸化物(NOx)又は炭化水素(HC)等の濃度を測定するものを用いてもよい。
センサ素子としては、筒型のものを用いてもよい。
ガス導入孔やガス排出孔の形状や個数も限定されず、例えば楕円形であってもよい。主体金具の先端向き面の形状も上記に限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1 ガスセンサ
11 主体金具
11e 主体金具の後端向き面
12a、120a1、120a2 主体金具の先端向き面
12f、120f 先端向き面の最先端
21 センサ素子
22 検知部
25 素子導入孔
51,151 プロテクタ
53,153 ガス排出孔
56,156 ガス導入孔
O 軸線