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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240627BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 451
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020184599
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074506
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 行弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲右
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-192690(JP,A)
【文献】特開2010-089356(JP,A)
【文献】特開2011-037196(JP,A)
【文献】特開2020-104507(JP,A)
【文献】特開2017-167487(JP,A)
【文献】実開昭63-135174(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記液体を噴射する噴射部と、
前記噴射部を駆動するための駆動信号を伝送する、1または複数の基板と、
前記基板に設けられており、前記液体噴射ヘッドの外部のフレームグランドに対して電気的に接続された接点と、
前記接点の電位に基づいて、前記接点における前記フレームグランドとの間の接続状態に関する検知を行う検知部と
を備えた液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記液体噴射ヘッドの内部に入力される電源と、
前記電源と前記接点との間に接続された第1抵抗体と
を更に備え、
前記接点の電位が、前記第1抵抗体を用いて規定されている
請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記基板は、
前記基板の内部に設けられた基板グランドと、
前記基板グランドと前記接点との間に接続された第2抵抗体と
を含んでいる
請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記複数の基板として、前記駆動信号を出力する駆動デバイスをそれぞれ有する、複数の駆動基板が設けられていると共に、
前記複数の駆動基板がそれぞれ、前記接点と前記第2抵抗体とを含んでいる
請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記複数の駆動基板と前記液体噴射ヘッドの外部との間を中継する、中継基板を更に備え、
前記中継基板上に、前記第1抵抗体が配置されている
請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記接点が、前記中継基板上に更に設けられていると共に、
前記中継基板上に、前記検知部が配置されている
請求項5に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記検知部は、
前記接続状態に関する情報を格納すると共に、
前記接続状態に関する情報を、前記液体噴射ヘッドの外部へと出力する
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記検知部は、
前記接点の電位が閾値電位を超えている場合には、前記接続状態の異常が発生したと判定すると共に、
前記接続状態の異常の発生を、前記液体噴射ヘッドの外部へと通知する
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記検知部は、
前記接続状態の異常の発生を示す信号と、
前記液体噴射ヘッドの内部における、前記接続状態の異常以外の他のエラーの発生を示す信号と、
の論理合成信号に基づいて、前記液体噴射ヘッドの外部への通知を行う
請求項8に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドを備えた液体噴射記録装置が様々な分野に利用されており、液体噴射ヘッドとしては、各種方式のものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-68981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような液体噴射ヘッドでは一般に、使用する際の利便性を向上させることが求められている。使用する際の利便性を向上させることが可能な、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射する噴射部と、この噴射部を駆動するための駆動信号を伝送する1または複数の基板と、この基板に設けられており、液体噴射ヘッドの外部のフレームグランドに対して電気的に接続された接点と、この接点の電位に基づいて、接点におけるフレームグランドとの間の接続状態に関する検知を行う検知部と、を備えたものである。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、使用する際の利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
図2】変形例1に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
図3】変形例2に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
図4】変形例3に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
図5】変形例4に係る液体噴射装置の概略構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(接点の電位に基づいて接続状態に関する検知を行う基本構成例)
2.変形例
変形例1(実施の形態において第2抵抗体を省いた場合の例)
変形例2(検知部としてコンパレータの代わりにCPUを設けた場合の例)
変形例3(各種のエラー信号同士の論理合成信号を用いた通知を行う場合の例)
変形例4(複数の駆動基板の各々について接続状態に関する検知を行う場合の例)
3.その他の変形例
【0010】
<1.実施の形態>
[プリンタ5の概略構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5の概略構成例を、ブロック図で表したものである。
【0011】
なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
プリンタ5は、後述するインク9を利用して、被記録媒体(例えば、図1中に示した記録紙P)に対し、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。このプリンタ5は、図1に示したように、インクジェットヘッド1および印刷制御部2を主に備えている。
【0013】
なお、インクジェットヘッド1は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応し、プリンタ5は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
(A.印刷制御部2)
印刷制御部2は、インクジェットヘッド1に対して、各種の情報(データ)を供給するものである。具体的には図1に示したように、印刷制御部2は、インクジェットヘッド1内(後述する駆動デバイス41等)に対してそれぞれ、印刷制御信号Scを供給するようになっている。
【0015】
なお、この印刷制御信号Scには、例えば、画像データ、吐出タイミング信号、および、インクジェットヘッド1を動作させるための電源電圧等が、含まれるようになっている。
【0016】
また、図1中には、詳細は後述するが、この印刷制御部2内のグランドを、制御部グランドGND2として示している。なお、この制御部グランドGND2は、後述する駆動基板13内における基板グランドGND1と、電気的に接続されている。
【0017】
(B.インクジェットヘッド1)
インクジェットヘッド1は、図1中の破線の矢印で示したように、後述する複数のノズル孔Hnから記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。このインクジェットヘッド1は、図1に示したように、1つの噴射部11と、1つのI/F(インターフェース)基板12と、1つの駆動基板13とを、備えている。
【0018】
なお、駆動基板13は、本開示における「基板」の一具体例に対応している。また、I/F基板12は、本開示における「中継基板」の一具体例に対応している。
【0019】
(B-1.噴射部11)
噴射部11は、図1に示したように、複数のノズル孔Hnを有しており、これらのノズル孔Hnからインク9を噴射する部分である。このようなインク9の噴射は、駆動基板13上の後述する駆動デバイス41から供給される駆動信号Sd(駆動電圧Vd)に従って、行われるようになっている(図1参照)。
【0020】
このような噴射部11は、図1に示したように、アクチュエータプレート111およびノズルプレート112を含んで構成されている。なお、この噴射部11(アクチュエータプレート111)に対するインク9の供給は、例えば、インクジェットヘッド1内のインクタンク(図1中に図示せず)から、インク供給管を介して行われるようになっている。
【0021】
(ノズルプレート112)
ノズルプレート112は、ポリイミド等のフィルム材または金属材料により構成されたプレートであり、図1に示したように、上記した複数のノズル孔Hnを有している。これらのノズル孔Hnは、所定の間隔をおいて並んで形成されており、例えば円形状となっている。
【0022】
(アクチュエータプレート111)
アクチュエータプレート111は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート111には、複数のチャネル(圧力室)が設けられている。これらのチャネルは、インク9に対して圧力を印加するための部分であり、所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルは、圧電体からなる駆動壁(不図示)によってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている。
【0023】
このようなチャネルには、インク9を吐出させるための吐出チャネルと、インク9を吐出させないダミーチャネル(非吐出チャネル)とが、存在している。言い換えると、吐出チャネルにはインク9が充填される一方、ダミーチャネルにはインク9が充填されないようになっている。なお、各吐出チャネルに対するインク9の充填は、例えば、そのような各吐出チャネルに共通して連通する流路(共通流路)を介して、行われるようになっている。また、各吐出チャネルは、ノズルプレート112におけるノズル孔Hnと個別に連通している一方、各ダミーチャネルは、ノズル孔Hnには連通しないようになっている。これらの吐出チャネルとダミーチャネルとは、所定の方向に沿って、交互に並んで配置されている。
【0024】
また、上記した駆動壁における対向する内側面にはそれぞれ、駆動電極が設けられている。この駆動電極には、吐出チャネルに面する内側面に設けられたコモン電極(共通電極)と、ダミーチャネルに面する内側面に設けられたアクティブ電極(個別電極)とが、存在している。これらの駆動電極と、後述する駆動デバイス41との間は、駆動基板13を介して電気的に接続されている。これにより、駆動基板13を介して、駆動デバイス41から各駆動電極に対し、前述した駆動電圧Vd(駆動信号Sd)が印加されるようになっている(図1参照)。
【0025】
(B-2.駆動基板13)
駆動基板13は、図1に示したように、I/F基板12と噴射部11との間を電気的に接続する基板である。この駆動基板13は、前述したノズルプレート112におけるインク9の噴射動作を、個別に制御するようになっている。
【0026】
このような駆動基板13は、図1に示したように、駆動デバイス41と、電源VDDと、基板グランドGND1と、接点130と、第1抵抗体R1と、第2抵抗体R2とを、備えている。
【0027】
駆動デバイス41は、噴射部11におけるノズル孔Hnからインク9を噴射させるための、駆動信号Sd(駆動電圧Vd)を出力するデバイスである。このような駆動デバイス41は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成されている。
【0028】
電源VDDは、インクジェットヘッド1の内部に入力される電源である。基板グランドGND1は、駆動基板13の内部におけるグランドである。
【0029】
接点130は、図1に示したように、インクジェットヘッド1の外部のフレームグランドFG(シャーシグランド)に対して、電気的に接続された接点である。このフレームグランドFGは、プリンタ5内におけるインクジェットヘッド1の外部の金属部材(プリンタバーなど)に対して電気的に接続されており、このプリンタ5内で接地されているグランドのことである。なお、このようなフレームグランドFGは、後述する各変形例(変形例1~4に係る、後述するプリンタ5A~5Dおよびインクジェットヘッド1A~1D)においても、同様の内容に対応するグランドである。
【0030】
第1抵抗体R1は、図1に示したように、電源VDDと接点130との間に接続されている抵抗体である。また、第2抵抗体R2は、図1に示したように、基板グランドGND1と接点130との間に接続されている抵抗体であり、詳細は後述するが、放電用の抵抗体としても機能するようになっている。このようにして、電源VDDと基板グランドGND1との間では、これらの第1抵抗体R1および第2抵抗体R2が、互いに直列接続されており、第1抵抗体R1と第2抵抗体R2との間の接続点が、接点130に接続されている(図1参照)。
【0031】
ここで、駆動基板13における接点130の電位(接点電位Vse)は、詳細は後述するが、第1抵抗体R1および第2抵抗体R2を用いて規定されるようになっている。また、図1に示したように、このような接点電位Vseは、接点130(第1抵抗体R1と第2抵抗体R2との間の接続点)から所定の接続ライン(電圧検出ライン)を介して、I/F基板12側(後述するコンパレータ121)へと出力されている。
【0032】
(B-3.I/F基板12)
I/F基板12は、図1に示したように、駆動基板13とインクジェットヘッド1の外部(印刷制御部2)との間を、中継する基板(中継基板)である。このI/F基板12は、コンパレータ(比較器)121を備えている。
【0033】
コンパレータ121は、上記した接点電位Vseに基づいて、接点130におけるフレームグランドFGとの間の接続状態(接点130とフレームグランドFGとの間の接続状態)に関する検知を行うものである。つまり、このコンパレータ121は、そのような接続状態に関する検知を行う、検知部として機能するようになっている。
【0034】
このコンパレータ121は、図1に示したように、接点電位Vseと所定の閾値電位Vthとの比較結果に応じて、上記した接続状態に関する検知を行うようになっている。具体的には、接点電位Vseが閾値電位Vth以下である場合には(Vse≦Vth)、コンパレータ121は、上記した接続状態が正常である(接点130がフレームグランドFGに接続されている)と判定する。一方、接点電位Vseが閾値電位Vthを超えている場合には(Vse>Vth)、コンパレータ121は、上記した接続状態の異常が発生した(接点130がフレームグランドFGと接続されていない)と判定する。また、このような接続状態の異常が発生した場合には、図1に示したように、コンパレータ121は、そのような接続状態の異常の発生を示す信号(第1エラー信号Ser1)を、インクジェットヘッド1の外部(印刷制御部2)へと出力する。これにより、そのような接続状態の異常の発生が、コンパレータ121からインクジェットヘッド1の外部へと通知されるようになっている。
【0035】
ここで、接点電位Vseを利用した、上記した接続状態に関する検知の手法は、詳細には以下の通りである。まず、フレームグランドFGは、前述したように、通常はプリンタ5内で接地されていることから、接地電位である0[V]となっているはずである。したがって、接点130がフレームグランドFGと正常に接続されている場合には、この接点130の電位(接点電位Vse)=0[V]となる。一方、接点130がフレームグランドFGと接続されていない場合(接続状態の異常が発生した場合)には、接点電位Vseは、以下の式にて規定されることになる。つまり、この場合の接点電位Vseは、第1抵抗体R1と第2抵抗体R2とによる、電源VDDに対する分圧値となる。このようにして、接点電位Vseの値に応じて、上記した接続状態に関する検知を行うことが、可能となっている。
・Vse=VDD×{R2/(R1+R2)}
【0036】
ちなみに、上記した閾値電位Vthの値としては、一例として0.5[V]が挙げられる。これは、例えば以下の理由によるものである。すなわち、まず、インクジェットヘッド1内で使用されている金属部材と、駆動基板13における基板GND1とは、いずれも、インク9と接触するようになっている。したがって、このインク9が例えば水性インクである場合において、これらの金属部材と基板GND1との間に、1[V]程度の電位差が発生すると、電気化学反応(酸化還元反応)が起こる可能性がある。そして、このような電気化学反応が起こった場合、インク9による金属部材の損傷や、インク9と接液している電極(噴射部11内の電極)の損傷が、生じるおそれがある。これらのことから、Vth=0.5[V]に設定することで、このような電気化学反応による異常の発生についても、接点電位Vseを利用して検出(エラーとして検出)することが可能となる。また、一般的な非水性インクに関しても、1[V]よりも高い電位差(おおよそ5[V]以下)で電気化学反応が起こることが多い。したがって、このVth=0.5[V]という条件は、インク9として非水性インクを使用する場合のインクジェットヘッド1においても、有効な値であると言える。
【0037】
ここで、このようなコンパレータ121は、本開示における「検知部」の一具体例に対応している。また、上記した第1エラー信号Ser1は、本開示における「接続状態の異常の発生を示す信号」の一具体例に対応している。
【0038】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ5の基本動作)
このプリンタ5では、以下のようなインクジェットヘッド1によるインク9の噴射動作を用いて、被記録媒体(記録紙P等)に対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。具体的には、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0039】
まず、駆動基板13上の駆動デバイス41は、噴射部11におけるアクチュエータプレート111内の前述した駆動電極(コモン電極およびアクティブ電極)に対し、駆動電圧Vd(駆動信号Sd)を印加する。具体的には、駆動デバイス41は、前述した吐出チャネルを画成する一対の駆動壁に配置された各駆動電極に対し、駆動電圧Vdを印加する。これにより、これら一対の駆動壁がそれぞれ、その吐出チャネルに隣接するダミーチャネル側へ、突出するように変形する。
【0040】
このとき、駆動壁における深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁がV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁の屈曲変形により、吐出チャネルがあたかも膨らむように変形する。このように、一対の駆動壁での圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルの容積が増大する。そして、吐出チャネルの容積が増大することにより、インク9が吐出チャネル内へ誘導されることになる。
【0041】
次いで、このようにして吐出チャネル内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルの内部に伝播する。そして、ノズルプレート112のノズル孔Hnにこの圧力波が到達したタイミング(またはその近傍のタイミング)で、駆動電極に印加される駆動電圧Vdが、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁が復元する結果、一旦増大した吐出チャネルの容積が、再び元に戻ることになる。
【0042】
このようにして、吐出チャネルの容積が元に戻る過程で、吐出チャネル内部の圧力が増加し、吐出チャネル内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔Hnを通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(図1参照)。このようにしてインクジェットヘッド1におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作が行われる。
【0043】
(B.インクジェットヘッド1における作用・効果)
続いて、本実施の形態のインクジェットヘッド1における作用および効果について、従来の一般的なインクジェットヘッドの場合と比較しつつ、詳細に説明する。
【0044】
(B-1.一般的なインクジェットヘッドについて)
まず、産業のインクジェットプリンタでは一般に、インクを噴霧していることから、被記録媒体上の被記録面が帯電することで、インクジェットヘッドにおいて静電気放電を発生させるケースがある。また、インクジェットヘッドにおける噴射部を駆動する際には、大きな駆動ノイズを発生させることがあり、このような駆動ノイズによって、プリンタ内の他のインクジェットヘッドにおいて誤動作を引き起こす可能性もある。
【0045】
このような不具合を回避するため、例えば前述した特許文献1では、インクジェットヘッドにおけるヘッドカバーなどを接地電位としており、被記録媒体などに発生した静電気に起因した、インクジェットヘッド内の電気回路の破損や誤作動を防ぐようにした手法が、提案されている。このように、インクジェットヘッドでは、電気回路が搭載されている基板内のグランド(基板グランド)や、フレームグランドが、適切に接続されていなければならないと言える。
【0046】
つまり、上記した特許文献1の手法のように、インクジェットヘッド自身の静電気対策の経路が確実に取られていたとしても、そのインクジェットヘッドとプリンタのフレームグランドとが、適切に接続されていなければ、被記録媒体などから発生した静電気を、適切に放電させることはできない。また、このフレームグランド自体は、プリンタにおけるグランドではあるが、例えば配線ミスなどにより、フレームグランドに電位が生じていることも有り得る。
【0047】
このようにして、フレームグランドと基板グランドとの接続状態を検知しておくことは、重要であると言えるものの、例えばテスターなどの外部機器を用いて検知(検査)したり、検知する度にインクジェットヘッドの動作を停止させたりするのは、非常に煩雑である。つまり、そのような検知の手法では、インクジェットヘッドを使用する際の利便性が、低下してしまうと言える。
【0048】
(B-2.作用・効果)
そこで、本実施の形態のインクジェットヘッド1では、以下のような構成となっていることで、例えば、以下のような作用および効果が得られる。
【0049】
すなわち、まず、このインクジェットヘッド1では、駆動基板13においてフレームグランドFGと電気的に接続された接点130について、フレームグランドFGとの間の接続状態に関する検知が、この接点130の電位(接点電位Vse)に基づいて、コンパレータ121において行われる。これにより、そのような接続状態(接点130とフレームグランドFGとの間の接続状態)に関する検知が、インクジェットヘッド1内(インクジェットヘッド1自身)で実行できるようになり、例えばテスターなどの外部機器を用いて検知(検査)する必要が無くなる。
【0050】
その結果、本実施の形態では、インクジェットヘッド1を使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【0051】
また、本実施の形態では、インクジェットヘッド1内の電源VDDと接点130との間に接続された第1抵抗体R1を用いて、上記した接点電位Vseが規定されることから、この接点電位Vseに基づいて上記した接続状態に関する検知を行う際に、以下のようになる。すなわち、このような第1抵抗体R1を用いることで、接点電位Vseを、インクジェットヘッド1内で容易に規定できるようになる結果、利便性を更に向上させることが可能となる。
【0052】
更に、本実施の形態では、駆動基板13において、基板グランドGND1と接点130との間に、第2抵抗体R2が接続されていることで、以下のようになる。すなわち、まず、基板グラントGND1とフレームグランドFGと接点130との間がそれぞれ、適切に接続されているのかについても、インクジェットヘッド1内で検知できるようになる。また、例えば、インクジェットヘッド1単体の場合においても、前述したように、第1抵抗体R1と第2抵抗体R2とによる分圧値(電源VDDに対する分圧値)を確認することで、これらの第1抵抗体R1および第2抵抗体R2の実装状態がそれぞれ正常なのか否かについても、検知できるようになる。更に、この第2抵抗体R2は、前述したように、放電用の抵抗体としても機能する。これにより、例えば、インクジェットヘッド1の製造時にそのインクジェットヘッド1の筐体等に蓄積された電荷(静電気放電を引き起こす電荷)を、フレームグランドFG側の経路(放電経路)から基板グランドGND1へと、ゆっくりと放電させて帯電を防止することができる。したがって、そのような静電気放電に起因して、駆動基板13上の駆動デバイス41等がダメージを受けてしまうこと(静電気破壊のおそれ)が、防止される。これらのことから、利便性の更なる向上を図りつつ、インクジェットヘッド1の信頼性を向上させることも可能となる。
【0053】
加えて、本実施の形態では、接点電位Vseが閾値電位Vthを超えている場合には、コンパレータ121において、上記した接続状態の異常が発生したと判定されるとともに、そのような異常の発生が、第1エラー信号Ser1として、コンパレータ121からインクジェットヘッド1の外部(例えば、印刷制御部2等の上流回路)へと通知される。これにより、例えばそのような上流回路において、上記した接続状態の異常の発生の有無を容易に把握することができ、そのような異常の発生時に対処する(例えば、インクジェットヘッド1の動作停止など)ことが可能となる。その結果、インクジェットヘッド1における故障や誤動作を防止して、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0054】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~4)について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0055】
[変形例1]
(構成)
図2は、変形例1に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5Aの概略構成例を、ブロック図で表したものである。この変形例1のプリンタ5Aは、実施の形態のプリンタ5(図1参照)において、インクジェットヘッド1の代わりにインクジェットヘッド1Aを設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0056】
なお、このインクジェットヘッド1Aは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、プリンタ5Aは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0057】
インクジェットヘッド1Aは、図2に示したように、インクジェットヘッド1(図1参照)において、駆動基板13の代わりに駆動基板13Aを設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0058】
この駆動基板13Aは、駆動基板13(図1参照)において、前述した第2抵抗体R2を設けないようにした(省いた)ものとなっており、他の構成は同様となっている。したがって、この変形例1では実施の形態の場合とは異なり、前述した接点130の電位(接点電位Vse)が、第1抵抗体R1のみを用いて規定されるようになっている。
【0059】
なお、このような駆動基板13Aは、本開示における「基板」の一具体例に対応している。
【0060】
(作用・効果)
このような構成の変形例1においても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0061】
[変形例2]
(構成)
図3は、変形例2に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5Bの概略構成例を、ブロック図で表したものである。この変形例2のプリンタ5Bは、実施の形態のプリンタ5(図1参照)において、インクジェットヘッド1の代わりにインクジェットヘッド1Bを設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0062】
なお、このインクジェットヘッド1Bは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、プリンタ5Bは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0063】
インクジェットヘッド1Bは、図3に示したように、インクジェットヘッド1(図1参照)において、I/F基板12の代わりにI/F基板12Bを設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0064】
このI/F基板12Bは、I/F基板12(図1参照)において、前述したコンパレータ121の代わりにCPU(Central Processing Unit)122を設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0065】
なお、I/F基板12Bは、本開示における「中継基板」の一具体例に対応している。また、CPU122は、本開示における「検知部」の一具体例に対応している。
【0066】
CPU122は、前述したコンパレータ121と同様に、接点電位Vseに基づいて、接点130とフレームグランドFGとの間の接続状態に関する検知を、行うものである。また、CPU122は、コンパレータ121と同様に、この接点電位Vseが閾値電位Vthを超えている場合には、上記した接続状態の異常が発生したと判定し、インクジェットヘッド1Bの外部(印刷制御部2)に対して、前述した第1エラー信号Ser1を出力するようになっている。
【0067】
ここで、このCPU122は、コンパレータ121とは異なり、上記した接点130とフレームグランドFGとの間の接続状態に関する情報を、接続状態情報Icnとして格納するようになっている。このような接続状態情報Icnとしては、接点130とフレームグランドFGとの間の接続状態に関して、例えば、正常状態、あるいは、異常電位や断線等の異常状態などを示す情報が、含まれるようになっている。また、例えば図3に示したように、CPU122は、このような接続状態情報Icnを、例えば印刷制御情報Sc等が伝送されるデータ伝送ラインLdtを介して、インクジェットヘッド1Bの外部(印刷制御部2)へと出力するようになっている。
【0068】
(作用・効果)
このような構成の変形例2においても、基本的には実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0069】
また、特にこの変形例2では、上記した接続状態情報IcnがCPU122内に格納されて、インクジェットヘッド1の外部(例えば、印刷制御部2等の上流回路)へと出力されることから、以下のようになる。すなわち、例えばそのような上流回路において、そのような接続状態情報Icnを把握することができ、異常状態の発生時に即座に対処する(例えば、インクジェットヘッド1の動作停止など)ことが可能となる。その結果、利便性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0070】
[変形例3]
(構成)
図4は、変形例3に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5Cの概略構成例を、ブロック図で表したものである。この変形例3のプリンタ5Cは、変形例2のプリンタ5B(図3参照)において、インクジェットヘッド1Bの代わりにインクジェットヘッド1Cを設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0071】
なお、このインクジェットヘッド1Cは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、プリンタ5Cは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0072】
インクジェットヘッド1Cは、図4に示したように、インクジェットヘッド1B(図3参照)において、I/F基板12Bの代わりにI/F基板12Cを設けると共に、駆動基板13の代わりに駆動基板13Cを設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0073】
I/F基板12Cは、I/F基板12B(図3参照)において、前述したCPU122の代わりにCPU122Cを設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0074】
なお、I/F基板12Cは、本開示における「中継基板」の一具体例に対応している。また、CPU122Cは、本開示における「検知部」の一具体例に対応している。
【0075】
このCPU122Cは、基本的にはCPU122と同様の機能を有しているが、このCPU122とは異なり、前述した第1エラー信号Ser1の代わりに、以下のような合成エラー信号Serを、インクジェットヘッド1Cの外部(印刷制御部2)へと出力する(図4参照)。つまり、CPU122Cは、このような合成エラー信号Serに基づいて、インクジェットヘッド1Cの外部への通知を行うようになっている。
【0076】
ここで、この合成エラー信号Serは、図4に示したように、第1エラー信号Ser1と第2エラー信号Ser2との、論理合成信号である(Ser=Ser1+Ser2)。第1エラー信号Ser1は、前述したように、接点130とフレームグランドFGとの間の接続状態の異常の発生を示す信号である。一方、第2エラー信号Ser2は、インクジェットヘッド1Cの内部における、そのような接続状態の異常以外の、他のエラーの発生(例えば、駆動基板13C等におけるオーバーヒート(温度エラー)の発生など)を示す信号である。
【0077】
なお、この第2エラー信号Ser2は、本開示における「他のエラーの発生を示す信号」の一具体例に対応している。また、上記した合成エラー信号Serは、本開示における「論理合成信号」の一具体例に対応している。
【0078】
上記した駆動基板13Cは、駆動基板13(図1図3参照)において、ダイオードD1を更に設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0079】
なお、このような駆動基板13Cは、本開示における「基板」の一具体例に対応している。
【0080】
ダイオードD1は、図4に示したように、駆動基板13C内の第1抵抗体R1に対して、並列接続されている。つまり、このダイオードD1は、電源VDDと接点130(第1抵抗体R1と第2抵抗体R2との間の接続点)との間に、配置されている。また、ダイオードD1のアノードが接点130側に位置すると共に、ダイオードD1のカソードが電源VDD側に位置しており、ダイオードD1が逆方向に配置されるようになっている。このようなダイオードD1は、駆動基板13Cにおける保護素子(電源保護ダイオード)として機能するようになっている。具体的には、このようなダイオードD1が配置されていることで、例えば、電源VDDよりも高い電圧がフレームグランドFGに印加された場合に、駆動基板13C内の各素子(駆動デバイス41等)が電気的に破壊されてしまうおそれを、回避することが可能となっている。
【0081】
(作用・効果)
このような構成の変形例3においても、基本的には変形例2等と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0082】
また、特にこの変形例3では、第1エラー信号Ser1と第2エラー信号Ser2との論理合成信号(合成エラー信号Ser)に基づいて、インクジェットヘッド1Cの外部への通知を行うようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば、上記した接続状態の異常の発生と、上記した他のエラーの発生とを、個別に通知する必要がなくなる。つまり、この合成エラー信号Serに基づく通知のみ(1種類の通知)を、インクジェットヘッド1Cの外部(例えば、印刷制御部2等の上流回路)へと出力すれば済むようになる。これにより、上記した接続状態の発生および他のエラーの発生をそれぞれ、例えばそのような上流回路において、容易に把握できるようになる。その結果、利便性を、より一層向上させることが可能となる。
【0083】
[変形例4]
(構成)
図5は、変形例4に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ5Dの概略構成例を、ブロック図で表したものである。この変形例4のプリンタ5Dは、変形例2のプリンタ5B(図3参照)において、インクジェットヘッド1Bの代わりにインクジェットヘッド1Dを設けるようにしたものとなっており、他の構成は基本的には同様となっている。ただし、この変形例4においては、図5に示したように、インクジェットヘッド1DにおけるフレームグランドFG1(ヘッド筐体の金属フレーム部分など)と、プリンタ5DにおけるフレームグランドFG2(プリンタ筐体の金属フレーム部分など)とが、ねじ止め等によって電気的に接続されている(符号Pc参照)状態を、示している。また、この図5の例では、制御部グランドGND2(およびこれに電気的に接続された基板グランドGND1)が、フレームグランドFG2と電気的に接続されている。
【0084】
なお、このインクジェットヘッド1Dは、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、プリンタ5Dは、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応している。
【0085】
インクジェットヘッド1Dは、図5に示したように、インクジェットヘッド1B(図3参照)において、I/F基板12Bの代わりにI/F基板12Dを設けると共に、1つの駆動基板13の代わりに、複数の駆動基板13D(この例では、2つの駆動基板13Da,13Db)を設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0086】
I/F基板12Dは、I/F基板12B(図3参照)において、前述したCPU122の代わりにCPU122Dを設けると共に、前述した第1抵抗体R1およびダイオードD1と、接点130cとを、更に設けるようにしたものとなっており、他の構成は同様となっている。
【0087】
なお、I/F基板12Dは、本開示における「中継基板」の一具体例に対応している。また、CPU122Dは、本開示における「検知部」の一具体例に対応している。
【0088】
接点130cは、基本的にはこれまでに説明した接点130と同様に、インクジェットヘッド1Dの外部のフレームグランドFG1に対して、電気的に接続された接点である(図5参照)。このように、この変形例4では、各駆動基板13Da,13Db上の接点(後述する接点130a,130b)に加え、このI/F基板12D上にも、接点130cが設けられている。
【0089】
第1抵抗体R1およびダイオードD1はそれぞれ、前述した駆動基板13Cの場合と同様の配置構成となっている(図4図5参照)。すなわち、第1抵抗体R1は、インクジェットヘッド1Dの内部に入力される電源VDDと、上記した接点130cとの間に、接続されている。また、ダイオードD1は、I/F基板12D内において、この第1抵抗体R1に対して並列接続されている。なお、この変形例4においても、このダイオードD1は、I/F基板12Dにおける保護素子(電源保護ダイオード)として機能するようになっている。
【0090】
CPU122Dは、基本的には、前述したCPU122C(図4参照)と同様の機能を有している。ただし、このCPU122Dは、CPU122Cとは異なり、I/F基板12D内で検知された接点電位Vse(上記した接点130cの電位)に基づいて、接続状態(後述する接点130a,130bとフレームグランドFG1との間の接続状態など)に関する検知を行うようになっている。ちなみに、接点130cとフレームグランドFG1との間の接続状態については、以下のようにして検知を行うことが可能となっている。すなわち、この変形例4では、前述した変形例1で説明した回路(駆動基板13Aにおける接点130付近の第1抵抗体R1を含む回路)を、I/F基板12D内に設けた場合となることから、仮に、接点130cとフレームグランドFG1とが接続されていない場合は、接点電位Vse=VDDとなる。したがって、このような接点電位Vseに基づいて、接点130cとフレームグランドFG1との間の接続状態についても、検知することが可能となっている。
【0091】
上記した駆動基板13Daは、図5に示したように、駆動デバイス41と、接点130aと、基板グランドGND1と、第2抵抗体R2aと、コンデンサC2aとを、備えている。同様に、駆動基板13Dbは、駆動デバイス41と、接点130bと、基板グランドGND1と、第2抵抗体R2bと、コンデンサC2bとを、備えている。
【0092】
なお、これら駆動基板13D(13Da,13Db)はそれぞれ、本開示における「基板」の一具体例に対応している。
【0093】
接点130a,130bはそれぞれ、上記した接点130cと同様に、インクジェットヘッド1Dの外部のフレームグランドFG1に対して、電気的に接続された接点である(図5参照)。
【0094】
第2抵抗体R2aは、前述した第2抵抗体R2と同様に、駆動基板13Daにおける基板グランドGND1と接点130aとの間に接続されている(図5参照)。同様に、第2抵抗体R2bは、駆動基板13Dbにおける基板グランドGND1と接点130bとの間に接続されている(図5参照)。これらの第2抵抗体R2a,R2bはそれぞれ、第2抵抗体R2と同様に、放電用の抵抗体としても機能するようになっている。
【0095】
コンデンサC2aは、駆動基板13Daにおいて、上記した第2抵抗体R2aに対して並列接続されている(図5参照)。同様に、コンデンサC2bは、駆動基板13Dbにおいて、上記した第2抵抗体R2bに対して並列接続されている(図5参照)。このようなコンデンサC2a,C2bがそれぞれ設けられていることで、例えば、各駆動基板13Da,13Dbから発生したノイズが、インクジェットヘッド1Dの金属筐体に伝播した場合に、以下のようになる。すなわち、そのようなノイズが、これらのコンデンサC2a,C2bを介して、各駆動基板13Da,13Db内の基板グランドGND1へと戻るようになっている。
【0096】
(作用・効果)
このような構成の変形例4においても、基本的には変形例2等と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0097】
また、特にこの変形例4では、インクジェットヘッド1D内に複数の駆動基板13D(13Da,13Db)が設けられていると共に、これらの駆動基板13Da,13Dbがそれぞれ、接点130a,130bと、第2抵抗体R2a,R2bとを含んでいる。これにより、そのような場合(例えば、噴射部11内に、複数のノズル列が並行して配置されているような場合)においても、複数の駆動基板13Da,13Dbの各々についての下記の検知が、インクジェットヘッド1D内で実行できることになる。すなわち、複数の駆動基板13Da,13Dbの各々について、上記した接続状態(接点130a,130b,130cとフレームグランドFG1との間の接続状態)に関する検知や、基板グラントGND1とフレームグランドFG1と接点130a,130b,130cとの間がそれぞれ適切に接続されているのかの検知が、インクジェットヘッド1D内で実行できることになる。その結果、利便性を、より一層向上させることが可能となる。
【0098】
ここで、上記した各種の検知等に関して、インクジェットヘッド1D単体の場合(フレームグランドFG2に接続されていない場合:製造時の検査などで使用)と、このインクジェットヘッド1Dがプリンタ5Dに実装されている場合(図5に示した場合)との各々について、より具体的に説明すると、以下の通りである。
【0099】
まず、インクジェットヘッド1D単体の場合には、接点130a,130b,130cとフレームグランドFG1との接続状態に関して、以下の(A)~(C)の3通りの場合が有り得る。
(A)インクジェットヘッド1D単体が正常な場合
・この場合の接点電位Vseは、実施の形態にて説明したように、第1抵抗体R1と第2抵抗体R2(ただしこの場合は、2つの第2抵抗体R2a,R2bの並列抵抗値)とによる、電源VDDに対する分圧値となる。
(B)インクジェットヘッド1D単体にて、接点130cがフレームグランドFG1に接続されていない場合
・この場合の接点電位Vseは、実施の形態にて説明したように、Vse=VDDとなる。
(C)インクジェットヘッド1D単体にて、接点130cはフレームグランドFG1に接続されているが、接点130a,130bの少なくとも一方が、フレームグランドFG1に接続されていない場合
・この場合、2つの第2抵抗体R2a,R2bの並列抵抗値が、上記(A)の場合から変化することから、この場合の接点電位Vseについても、上記(A)の場合とは異なる値となる。
【0100】
一方、インクジェットヘッド1D(上記(A)のようにして正常と判定されたもの)を、プリンタ5Dに実装した場合には、以下のようにして、プリンタ5Dとインクジェットヘッド1Dとの間のねじ止め等による接続状態に関して、検知することができる。すなわち、まず、この場合、図5に示したように、インクジェットヘッド1DのフレームグランドFG1と、プリンタ5DのフレームグランドFG2とが、ねじ止め等によって電気的に接続されている(符号Pc参照)。このため、これらのフレームグランドFG1,FG2同士は、同電位となる。また、フレームグランドFG2は、前述したように、制御部グランドGNDおよび基板グランドGND1とそれぞれ、電気的に接続されている。したがって、プリンタ5Dとインクジェットヘッド1Dとが正常に接続されている場合には、接点電位Vse=0[V]となる。一方、プリンタ5Dとインクジェットヘッド1Dとが正常に接続されていない場合には、上記(A)の場合と同じ状態となることから、接点電位Vseは上記したように、第1抵抗体R1と第2抵抗体R2とによる、電源VDDに対する分圧値となる。
【0101】
更に、この変形例4では、複数の駆動基板13Da,13Dbとインクジェットヘッド1Dの外部(印刷制御部2)との間を中継するI/F基板12D上に、第1抵抗体R1が配置されていることで、以下のようになる。すなわち、まず、例えば、これら複数の駆動基板13Da,13Db上にそれぞれ、第1抵抗体R1を設ける場合には、接点130a,130bの電位および検知部(CPU)をそれぞれ、複数の駆動基板13Da,13Dbごとに、個別に設ける必要がある。このため、そのような場合には、各駆動基板13Da,13Db上の回路規模が、増大してしまうおそれがある。一方で、例えば、複数の駆動基板13Da,13Dbのうちの1つの駆動基板上にのみ、第1抵抗体R1を設けるようにした場合には、この第1抵抗体R1を設けた駆動基板の実装状態のみが、他の駆動基板の実装状態とは異なることとなる。このため、そのような場合には、複数の駆動基板13Da,13Db全体の管理コストが、増大するおそれがある。これに対してこの変形例4では、上記したように、I/F基板12D上に第1抵抗体R1が配置されていることから、上記したような、各駆動基板13Da,13Db上の回路規模の増大や、複数の駆動基板13Da,13Db全体の管理コストの増大を、回避することができる。その結果、回路規模の縮小化や、製造上の管理コストの削減を、図ることが可能となる。
【0102】
加えて、この変形例4では、上記したI/F基板12D上にも接点130cが設けられていると共に、このI/F基板12D上に検知部(CPU122D)が配置されている。これにより、例えば、そのような検知部が、I/F基板12Dや駆動基板13Da,13Dbの外部に配置されている場合と比べ、以下のようになる。すなわち、まず、インクジェットヘッド1D全体の小型化を図ることが可能となる。また、I/F基板12Dや駆動基板13Da,13Dbの外部に、上記した検知部を配置した場合には、その検知部自体についても、フレームグランドFG1との接続状態の確認を要することになる。これに対してこの変形例4では、そのような接続状態の確認が不要となることから、利便性の更なる向上を図ることも可能となる。
【0103】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0104】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタおよびインクジェットヘッドにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0105】
具体的には、例えば、I/F基板や駆動基板等の構成については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の構成であってもよい。また、上記実施の形態等では、駆動基板が1つまたは2つ設けられている場合を例に挙げて説明したが、例えば、駆動基板が3つ以上設けられていてもよい。更に、上記実施の形態等では、本開示における「基板」の一例として、駆動信号Sdを出力する駆動デバイス41を有する、駆動基板を挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、駆動信号Sdを伝送する基板であれば、駆動基板ではなくてもよい。加えて、上記実施の形態等では、中継基板としてのI/F基板を、インクジェットヘッド内に設けた場合について説明したが、この場合には限られず、例えばインクジェットヘッド内に、そのような中継基板(I/F基板)を設けないようにしてもよい。また、上記実施の形態等では、本開示における「検知部」の一例として、コンパレータやCPUを挙げて説明したが、これらの例には限られず、他の構成によって検知部を実現するようにしてもよい。
【0106】
更に、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの数値例については、実施の形態等で説明した数値例には限られず、他の数値であってもよい。加えて、上記実施の形態等では、検知部による検知方法やエラー通知方法について、具体的な手法を挙げて説明したが、これらの手法には限られず、他の手法を用いるようにしてもよい。
【0107】
また、インクジェットヘッドの構造としては、各タイプのものを適用することが可能である。すなわち、例えば、アクチュエータプレート111における各吐出チャネルの延在方向の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。あるいは、例えば、各吐出チャネルの延在方向に沿ってインク9を吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのインクジェットヘッドであってもよい。更には、プリンタの方式としても、上記実施の形態等で説明した方式には限られず、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式など、各種の方式を適用することが可能である。
【0108】
更に、例えば、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッド、あるいは、インク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドのいずれであっても、本開示を適用することが可能である。
【0109】
また、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0110】
更に、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0111】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0112】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0113】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体を噴射する液体噴射ヘッドであって、
前記液体を噴射する噴射部と、
前記噴射部を駆動するための駆動信号を伝送する、1または複数の基板と、
前記基板に設けられており、前記液体噴射ヘッドの外部のフレームグランドに対して電気的に接続された接点と、
前記接点の電位に基づいて、前記接点における前記フレームグランドとの間の接続状態に関する検知を行う検知部と
を備えた液体噴射ヘッド。
(2)
前記液体噴射ヘッドの内部に入力される電源と、
前記電源と前記接点との間に接続された第1抵抗体と
を更に備え、
前記接点の電位が、前記第1抵抗体を用いて規定されている
上記(1)に記載の液体噴射ヘッド。
(3)
前記基板は、
前記基板の内部に設けられた基板グランドと、
前記基板グランドと前記接点との間に接続された第2抵抗体と
を含んでいる
上記(2)に記載の液体噴射ヘッド。
(4)
前記複数の基板として、前記駆動信号を出力する駆動デバイスをそれぞれ有する、複数の駆動基板が設けられていると共に、
前記複数の駆動基板がそれぞれ、前記接点と前記第2抵抗体とを含んでいる
上記(3)に記載の液体噴射ヘッド。
(5)
前記複数の駆動基板と前記液体噴射ヘッドの外部との間を中継する、中継基板を更に備え、
前記中継基板上に、前記第1抵抗体が配置されている
上記(4)に記載の液体噴射ヘッド。
(6)
前記接点が、前記中継基板上に更に設けられていると共に、
前記中継基板上に、前記検知部が配置されている
上記(5)に記載の液体噴射ヘッド。
(7)
前記検知部は、
前記接続状態に関する情報を格納すると共に、
前記接続状態に関する情報を、前記液体噴射ヘッドの外部へと出力する
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
(8)
前記検知部は、
前記接点の電位が閾値電位を超えている場合には、前記接続状態の異常が発生したと判定すると共に、
前記接続状態の異常の発生を、前記液体噴射ヘッドの外部へと通知する
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の液体噴射ヘッド。
(9)
前記検知部は、
前記接続状態の異常の発生を示す信号と、
前記液体噴射ヘッドの内部における、前記接続状態の異常以外の他のエラーの発生を示す信号と、
の論理合成信号に基づいて、前記液体噴射ヘッドの外部への通知を行う
上記(8)に記載の液体噴射ヘッド。
(10)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の液体噴射ヘッドを備えた
液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0114】
1,1A~1D…インクジェットヘッド、11…噴射部、111…アクチュエータプレート、112…ノズルプレート、12,12B~12D…I/F基板、121…コンパレータ、122,122D…CPU、13,13A,13C,13D,13Da,13Db…駆動基板、130,130a~130c…接点、2…印刷制御部、41…駆動デバイス、5…プリンタ、9…インク、P…記録紙、Hn…ノズル孔、Sc…印刷制御信号、Sd…駆動信号、Ser…合成エラー信号、Ser1…第1エラー信号、Ser2…第2エラー信号、Vd…駆動電圧、Vse…接点電位、Vth…閾値電位、Icn…接続状態情報、Ldt…データ伝送ライン、VDD…電源、FG,FG1,FG2…フレームグランド、GND1…基板グランド、GND2…制御部グランド、R1…第1抵抗体、R2,R2a,R2b…第2抵抗体、D1…ダイオード(保護素子)、C2a,C2b…コンデンサ。
図1
図2
図3
図4
図5