(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】トルク変動抑制装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/18 20060101AFI20240627BHJP
F16F 15/30 20060101ALI20240627BHJP
H02K 19/06 20060101ALI20240627BHJP
H02K 7/18 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
F16F15/18 A
F16F15/30 Z
H02K19/06 Z
H02K7/18 B
(21)【出願番号】P 2020187286
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】劉 勇
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-044025(JP,U)
【文献】特開昭62-242152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/18
F16F 15/30
H02K 19/06
H02K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのトルク変動を抑制するためのトルク変動抑制装置であって、
径方向内側に突出する複数の第1突極、及び前記第1突極に巻かれる複数のコイル、を有し、回転不能に配置される筒状のステータと、
磁性材料によって構成され径方向外側に突出する第2突極を有し、前記ステータの径方向内側に配置され、前記エンジンに接続されるように構成されるロータと、
前記各コイルに流れる電流を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記エンジンに関する情報及び前記エンジンの回転角度に関する情報に基づき、前記コイルに流れる電流を制御し、
前記エンジンに関する情報は、前記エンジンの気筒数を含む、
トルク変動抑制装置。
【請求項2】
前記複数のコイルは、互いに同相となるように互いに連結される、
請求項1に記載のトルク変動抑制装置。
【請求項3】
前記複数のコイルは、互いに直接接続されている、
請求項1又は2に記載のトルク変動抑制装置。
【請求項4】
前記複数のコイルは、互いに直列接続されている、
請求項1から3のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【請求項5】
前記複数のコイルは、互いに並列接続されている、
請求項1から3のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【請求項6】
前記第1突極の数は、前記第2突極の数の整数倍である、
請求項1から5のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【請求項7】
前記第1突極の数は、前記第2突極の数と同じである、
請求項1から6のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【請求項8】
前記ロータは、フライホイールによって構成される、
請求項1から7のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【請求項9】
前記ロータは、ダンパ装置の構成部材によって構成される、
請求項1から7のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記エンジンからの情報に基づき、前記エンジンが気筒休止していると判断すると、気筒休止モードを実行し、
前記制御部は、前記気筒休止モードにおいて、休止している気筒が本来であればトルクを出力するタイミングにおいて、前記ロータに第1アシストトルクを付加するように前記各コイルに電流を流すアシスト動作を実行するとともに、前記ロータにブレーキトルクを付加するように前記各コイルに電流を流すブレーキ動作を実行しない、
請求項1から9のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記気筒休止モードにおいて、休止していない気筒がトルクを出力するタイミングにおいて、前記
ロータに前記第1アシストトルクよりも小さい第2アシストトルクを付加するように前記各コイルに電流を流すアシスト動作を実行する、
請求項10に記載のトルク変動抑制装置。
【請求項12】
前記ステータは、筒状のステータ本体部を有し、
前記各第1突極は、前記ステータ本体部の内周面から径方向内側に突出し、
前記ステータ本体部と前記各第1突極とは、一つの部材によって構成される、
請求項1から11のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【請求項13】
前記ロータは、円板状のロータ本体部を有し、
前記第2突極は、前記ロータ本体部の外周面から径方向外側に突出する、
請求項1から12のいずれかに記載のトルク変動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク変動抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エンジンなどの駆動源のトルク変動を抑制するために、エンジンのクランクシャフトにフライホイールを設けている(特許文献1参照)。駆動源のトルク変動を十分に抑制するために、フライホイールは大きなイナーシャを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、フライホイールは、トルク変動を十分に抑制するために、大きなイナーシャを有している。しかしながら、フライホイールが大きなイナーシャを有することによって、応答性が悪化するという問題が生じる。
【0005】
本発明の課題は、応答性の悪化を抑制しつつ駆動源のトルク変動を抑制することができるトルク変動抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係るトルク変動抑制装置は、駆動源のトルク変動を抑制するように構成されている。このトルク変動抑制装置は、筒状のステータと、ロータとを備えている。ステータは、複数の第1突極、及び複数のコイルを有する。各第1突極は、径方向内側に突出する。各コイルは、第1突極に巻かれている。ステータは、回転不能に配置されている。ロータは、第2突極を有する。第2突極は、磁性材料によって構成される。第2突極は、径方向外側に突出する。ロータは、ステータの径方向内側に配置される。ロータは、駆動源に接続されるように構成される。
【0007】
この構成によれば、コイルを励磁状態とすることによって、第2突極が第1突極に近付く際にロータの回転方向にトルクが付加される。また、コイルを励磁状態とすることによって、第2突極が第1突極から離れる際にロータの回転方向とは逆の方向にトルクが付加される。このため、エンジンの出力トルクが低いときにロータの回転方向にトルクを付加し、エンジンの出力トルクが高いときにロータの回転方向とは逆の方向にトルクを付加することによって、エンジンのトルク変動を抑制することができる。なお、ロータは、駆動源に直接的に接続されていてもよいし、間接的に接続されていてもよい。また、フライホイールのイナーシャを大きくすることなくトルク変動を抑制できるため、応答性の悪化も抑制できる。
【0008】
好ましくは、複数のコイルは、互いに同相となるように互いに連結される。
【0009】
好ましくは、複数のコイルは、互いに直接接続されている。
【0010】
複数のコイルは、互いに直列接続されていてもよいし、互いに並列接続されていてもよい。
【0011】
好ましくは、第1突極の数は、第2突極の数の整数倍である。
【0012】
好ましくは、第1突極の数は、第2突極の数と同じである。
【0013】
好ましくは、ロータは、フライホイールによって構成される。
【0014】
好ましくは、ロータは、ダンパ装置の構成部材によって構成される。
【0015】
好ましくは、トルク変動抑制装置は、各コイルに流れる電流を制御する制御部をさらに備える。
【0016】
好ましくは、制御部は、駆動源に関する情報及び駆動源の回転角度に関する情報に基づき、コイルに流れる電流を制御する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、応答性の悪化を抑制しつつ駆動源のトルク変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図6】12気筒エンジンにおけるエンジン回転角度とトルクとの関係を示すグラフ。
【
図7】4気筒エンジンにおけるエンジン回転角度とトルクとの関係を示すグラフ。
【
図8】4気筒エンジンの気筒休止時におけるエンジン回転角度とトルクとの関係を示すグラフ。
【
図9】制御部による制御方法の一例を示すフローチャート。
【
図10】制御部による制御方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態に係るトルク変動抑制装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、トルク変動抑制装置の回転軸が延びる方向である。また、周方向とは、回転軸を中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸を中心とした円の径方向である。
【0020】
[トルク変動抑制装置]
図1に示すように、トルク変動抑制装置100は、ステータ2、及びロータ3を備えている。トルク変動抑制装置100は、エンジン(駆動源の一例)のトルク変動を抑制するように構成されている。
【0021】
[ステータ]
ステータ2は、ハウジング又はフレームなど(図示省略)に取り付けられている。このため、ステータ2は、回転不能である。ステータ2は、筒状である。ステータ2は、ステータ本体部21と、複数の第1突極22と、複数のコイル23とを有する。
【0022】
ステータ本体部21は、筒状である。ステータ本体部21は、ハウジング又はフレームなどに取り付けられている。第1突極22は、ステータ本体部21の内周面から径方向向内側に突出する。各第1突極22は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。好ましくは、各第1突極22は、周方向において等間隔に配置されている。なお、本実施形態では、第1突極22の数は6個である。このため、第1突極22は、60度毎に配置されている。なお、第1突極22の間隔は、エンジンの燃焼間隔の約数とすることが好ましい。
【0023】
ステータ本体部21と第1突極22とは、一つの部材によって構成されている。ステータ本体部21及び第1突極22は、磁性材料によって構成されている。例えば、ステータ本体部21及び第1突極22は、例えば、電磁鋼板などによって構成することができる。
【0024】
コイル23は、第1突極22に巻かれている。複数のコイル23は、互いに同相となるように互いに連結されている。すなわち、各コイル23は、互いに連動して動作するように互いに連結されている。また、複数のコイル23は、互いに直接接続されている。すなわち、各コイル23の間にスイッチなどの素子は介在していない。このため、各コイル23は全て、同じタイミングで励磁状態、又は非励磁状態となる。つまり、トルク変動抑制装置100の相数は1である。
【0025】
なお、複数のコイル23は、互いに直列接続されていてもよいし、互いに並列接続されていてもよい。
【0026】
[ロータ]
ロータ3は、エンジンに接続されるように構成されている。具体的には、ロータ3は、エンジンのクランクシャフト101に取り付けられており、このクランクシャフト101を介してエンジンに取り付けられている。ロータ3は、クランクシャフト101と一体的に回転する。なお、ロータ3は、フライホイールである。ロータ3は、回転軸Oを中心に回転可能である。
【0027】
ロータ3は、ステータ2の径方向内側に配置されている。ロータ3は、ロータ本体部31と、複数の第2突極32とを有している。ロータ本体部31と複数の第2突極32とは、一つの部材によって構成されているが、ロータ本体部31と複数の第2突極32とは、互いに別々の部材であってもよい。
【0028】
ロータ本体部31は、円板状である。ロータ本体部31は、クランクシャフト101に取り付けられている。詳細には、ロータ本体部31の中央の貫通孔に、クランクシャフト101が嵌合している。
【0029】
第2突極32は、ロータ本体部31の外周面から径方向外側に突出する。各第2突極32は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。好ましくは、各第2突極32は、周方向において等間隔に配置されている。なお、本実施形態において、第2突極32の数は6個である。このため、第2突極32は、60度毎に配置されている。
【0030】
ロータ本体部31及び第2突極32は、磁性材料によって構成されている。例えば、ロータ本体部31及び第2突極32は、電磁鋼板などによって構成されている。
【0031】
第1突極22の数は、第2突極32の数の整数倍である。好ましくは、第1突極22の数は、第2突極32の数と同じである。なお、本実施形態では、第1突極22及び第2突極32の数は、それぞれ6個である。周方向において、各第1突極22が配置される間隔と、第2突極32が配置される間隔とは、同じである。
【0032】
[駆動回路]
図2に示すように、トルク変動抑制装置100は、駆動回路10を有している。なお、
図2において、複数のコイル23を併せて一つのコイル23として示している。この駆動回路10は、直流電源11と、第1スイッチ12、第2スイッチ13、及び複数のコイル23を有している。また、駆動回路10は、第1ダイオード14及び第2ダイオード15を有している。
【0033】
第1スイッチ12及び第2スイッチ13は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)によって構成されている。第1スイッチ12及び第2スイッチ13は、ベースに電流が流れるとスイッチオン状態となり、ベースへの電流を停止するとスイッチオフ状態となる。
【0034】
なお、トルク変動抑制装置100は、第1スイッチ12及び第2スイッチ13を制御する制御部16をさらに有する。制御部16は、例えば、マイクロコンピュータ等によって構成することができる。
【0035】
この駆動回路10は、オンモード及びオフモードとなる。オンモードでは、制御部16は、第1スイッチ12及び第2スイッチ13をともにオン状態とする。これにより、各コイル23に電流が増加する向きに電圧が加わる。この結果、各コイル23は、励磁される。
【0036】
オフモードでは、制御部16は、第1スイッチ12及び第2スイッチ13をともにオフ状態とする。これにより、各コイル23に流れていた電流が第1ダイオード14及び第2ダイオード15を通って直流電源11へと逆流する。この結果、各コイル23の励磁状態が解除される。
【0037】
[動作方法]
次に、上述したトルク変動抑制装置100の動作について
図3~5を用いて説明する。
図3~5において、ロータは反時計回りに回転しているものとする。まず、
図3の状態(径方向視において、第2突極32が第1突極22と重複し始めるとき)から、
図4の状態(径方向視において、第2突極32の中心と第1突極22の中心とが合わさったとき)の間にあるときに、コイル23を励磁する。これによって、第1突極22によって第2突極32が反時計回りの方向に向かって吸引される。この結果、ロータ3は、エンジンの出力トルクに、反時計回りのアシストトルクを付加することができる。以下、ロータ3がアシストトルクを付加する動作を、アシスト動作と称する。なお、全てのコイル23が励磁されるため、全ての第2突極32が、反時計回りの方向に向かって吸引される。
【0038】
次に、
図4の状態から
図5の状態(径方向視において、第2突極32が第1突極22との重複が終わるとき)の間にあるときに、コイル23を励磁する。これによって、第1突極22によって第2突極32が時計回りの方向に向かって吸引される。この結果、ロータ3は、エンジンの出力トルクに、時計回りのブレーキトルクを付加することができる。以下、ロータ3がブレーキトルクを付加する動作を、ブレーキ動作と称する。なお、全てのコイル23が励磁されるため、全ての第2突極32が、時計回りの方向に向かって吸引される。
【0039】
なお、コイル23の励磁を解除することによって、第2突極32は第1突極22に吸引されず、トルク変動抑制装置100は動作しない。すなわち、トルク変動抑制装置100によるアシストトルク及びブレーキトルクの付加は行われない。このトルク変動抑制装置100の状態を、以下では、ニュートラル動作と称する。
【0040】
次に、一例として、トルク変動抑制装置100を12気筒エンジンに取り付けたときの動作について説明する。
図6は、エンジンの回転角度とトルクの関係を示すグラフである。
図6中の線Aがエンジンの出力トルクを示し、線Bがトルク変動抑制装置100によってエンジンの出力トルクに付加されるトルク(アシストトルク及びブレーキトルク)を示す。
図6に示すように、12気筒エンジンの燃焼間隔は、60度である。このため、エンジンの出力トルクのプラス側のピーク、及びマイナス側のピークは、それぞれ60度間隔で出現する。
【0041】
まず、エンジンの出力トルクがマイナスのピーク(例えば、
図6の15度)及びその前後にあるとき、トルク変動抑制装置100は、アシスト動作を実行する。すなわち、エンジンの出力トルクがマイナスのピーク及びその前後にあるとき、トルク変動抑制装置100は、
図3の状態から
図4の状態の間にある。一例として、エンジン回転角度θが、2n×30度<θ<(2n+1)×30度(ただし、nは0以上の整数である。)の範囲にあるときに、アシスト動作を実行する。
【0042】
一方、エンジンの出力トルクがプラスのピーク(例えば、
図6の45度)及びその前後にあるとき、トルク変動抑制装置100は、ブレーキ動作を実行する。すなわち、エンジンの出力トルクがプラスのピーク及びその前後にあるとき、トルク変動抑制装置100は、
図4の状態から
図5の状態の間にある。以上により、トルク変動抑制装置100によって、エンジンのトルク変動が抑制される。一例として、エンジン回転角度θが、(2n+1)×30度<θ<(2n+2)×30度(ただし、nは0以上の整数である。)の範囲にあるときに、ブレーキ動作を実行する。
【0043】
次に、別の一例として、トルク変動抑制装置100を4気筒エンジンに取り付けたときの動作について説明する。
図7は、エンジンの回転角度とトルクの関係を示すグラフである。
図7中の線Aがエンジンの出力トルクを示し、線Bがトルク変動抑制装置100の出力トルクを示す。
図7に示すように、4気筒エンジンの燃焼間隔は、180度である。このため、エンジンの出力トルクのプラス側のピーク、及びマイナス側のピークは、それぞれ180度間隔で出現する。
【0044】
まず、エンジンの出力トルクがマイナスのピーク(例えば、
図7の15度)及びその前後にあるとき、トルク変動抑制装置100は、アシスト動作を実行する。すなわち、エンジンの出力トルクがマイナスのピーク及びその前後にあるとき、トルク変動抑制装置100は、
図3の状態から
図4の状態の間にある。一例として、エンジン回転角度θが、6n×30度<θ<(6n+1)×30度(ただし、nは0以上の整数である。)の範囲にあるときに、アシスト動作を実行する。
【0045】
一方、エンジンの出力トルクがプラスのピーク(例えば、
図7の45度)及びその前後にあるとき、トルク変動抑制装置100は、ブレーキ動作を実行する。すなわち、エンジンの出力トルクがプラスのピーク及びその前後にあるとき、トルク変動抑制装置100は、
図4の状態から
図5の状態の間にある。一例として、エンジン回転角度θが、(6n+1)×30度<θ<(6n+2)×30度(ただし、nは0以上の整数である。)の範囲にあるときに、ブレーキ動作を実行する。
【0046】
また、エンジンの出力トルクが安定している間(例えば、
図7の60~180度の間)は、トルク変動抑制装置100は、ニュートラル動作を実行する。すなわち、エンジンの回転角度が60~180度の範囲にある間、コイル23は励磁されていない。このため、径方向視において、第2突極32が第1突極22と重複しても、第2突極32は第1突極22に吸引されない。
【0047】
次に、別の一例として、気筒休止するエンジンにトルク変動抑制装置100を取り付けたときの動作について説明する。例えば、4気筒エンジンの2つの気筒を休止させた場合について説明する。まず、4つの気筒が全て機能するときは、上述した4気筒エンジンと同様の動作となる。一方、4気筒エンジンの2つの気筒を休止させた場合、詳細には、第1及び第3気筒のみでトルク出力させる場合、以下のような気筒休止モードを実行する。
【0048】
具体的には、
図8に示すように、第1及び第3気筒による出力トルクのマイナスのピーク及びプラスのピークの前後では、上記
図7と同様に、アシスト動作とブレーキ動作を実行する。一方、休止させた第2及び第4気筒が本来であればトルクを出力しているタイミング近傍でアシスト動作を実行するとともに、そのアシストトルクを増幅させる。なお、このときブレーキ動作は実行しない。すなわち、気筒休止モードでは、休止している気筒が本来であればトルクを出力しているタイミング近傍において、アシスト動作を実行するとともに、ブレーキ動作を実行しない。なお、
図8において、線Aがエンジンの出力トルクを示し、線Bがトルク変動抑制装置100の出力トルクを示す。
【0049】
[制御方法]
図9は、トルク変動抑制装置100の制御方法の一例について示すフローチャートである。
図9に示すように、制御部16は、まず、トルク変動抑制装置100が取り付けられたエンジンに関する情報を取得する(ステップS1)。具体的には、エンジンの気筒数や、
図6及び
図7に示すようなエンジンの回転角度とエンジンの出力トルクとの関係に関する情報を、制御部16はエンジン情報として取得する。
【0050】
次に、制御部16は、取得したエンジン情報に基づき、動作モードを設定する(ステップS2)。具体的には、
図10に示すように、制御部16は、まず、エンジンが12気筒か否か判断する(ステップS20)。そして、制御部16は、エンジンの気筒数が12気筒であると判断すると(ステップS20のYes)、60度周期でアシスト動作及びブレーキ動作を実行するように動作モードを設定する(ステップS21)。
【0051】
制御部16は、エンジンの気筒数が12気筒でないと判断すると(ステップS20のNo)、次に、エンジンの気筒数が6気筒か否か判断する(ステップS22)。そして、制御部16は、エンジンの気筒数が6気筒であると判断すると(ステップS22のYes)、120度周期でアシスト動作、ブレーキ動作、及びニュートラル動作を実行するように動作モードを設定する(ステップS23)。
【0052】
制御部16は、エンジンの気筒数が6気筒でないと判断すると(ステップS22のNo)、次に、エンジンの気筒数が4気筒か否か判断する(ステップS24)。そして、制御部16は、エンジンの気筒数が4気筒であると判断すると(ステップS24のYes)、180度周期でアシスト動作、ブレーキ動作、及びニュートラル動作を実行するように動作モードを設定する(ステップS25)。
【0053】
制御部16は、エンジンの気筒数が4気筒でないと判断すると(ステップS24のNo)、次に、エンジンの気筒数が3気筒か否か判断する(ステップS26)。そして、制御部16は、エンジンの気筒数が3気筒であると判断すると(ステップS26のYes)、240度周期でアシスト動作、ブレーキ動作、及びニュートラル動作を実行するように動作モードを設定する(ステップS27)。
【0054】
制御部16は、エンジンの気筒数が3気筒でないと判断すると(ステップS26のNo)、次に、エンジンの気筒数が2気筒か否か判断する(ステップS28)。そして、制御部16は、エンジンの気筒数が2気筒であると判断すると(ステップS28のYes)、360度周期でアシスト動作、ブレーキ動作、及びニュートラル動作を実行するように動作モードを設定する(ステップS29)。
【0055】
制御部16は、エンジンの気筒数が2気筒でないと判断すると(ステップS28のNo)、エンジンが単気筒であるとして、720度周期でアシスト動作、ブレーキ動作、及びニュートラル動作を実行するように動作モードを設定する(ステップS211)。
【0056】
次に、
図9に示すように、制御部16は、エンジンからの情報に基づき、エンジンが気筒休止しているか否かを判断する(ステップS3)。
【0057】
制御部16は、エンジンが気筒休止していると判断すると(ステップS3のYes)、ステップS2で設定した動作モードを気筒休止モードに変更する(ステップS4)。一方、制御部16は、エンジンが気筒休止していないと判断すると(ステップS3のNo)、ステップS2で設定した動作モードのままで次の処理に進む。
【0058】
次に、車両が始動すると、制御部16は、車両に設置された角度センサから、エンジンの回転角度に関する情報を取得する(ステップS5)。
【0059】
続いて、制御部16は、ステップS5において取得した回転角度情報に基づき、上記ステップS2又はステップS4において設定した動作モードをトルク変動抑制装置100が実行するように、駆動回路10を制御する(ステップS6)。
【0060】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0061】
変形例1
上記実施形態では、ロータ3はフライホイールによって構成されているが、ロータ3の構成はこれに限定されない。例えば、ダンパなどの構成部材をロータ3とすることができる。
【0062】
変形例2
上記実施形態では、第1突極22及び第2突極32の数は、それぞれ6個であったが、第1突極22及び第2突極32の数はこれに限定されない。例えば、第1突極22及び第2突極32の数は、それぞれ12個としたり、それぞれ3個としたり、種々の変更が可能である。
【0063】
変形例3
上記実施形態では、第1突極22の数と第2突極32の数とは互いに同じであったが、第1突極22の数と第2突極32の数とは互いに異なってもよい。例えば、第1突極22の数を1個、第2突極32の数を6個としてもよいし、第1突極22の数を2個、第2突極32の数を6個としてもよいし、種々の変更が可能である。
【0064】
変形例4
制御部16は、各コイル23に掛かる電圧のデューティ比を制御してもよい。例えば、エンジンの出力トルクに合わせて、トルク変動抑制装置100が適切なトルクを付加することができるように、制御部16はデューティ比を制御することができる。
【0065】
また、制御部16は、ブレーキ動作において各コイル23に掛かる電圧のデューティ比を小さくしてもよい。例えば、制御部16は、ブレーキ動作におけるデューティ比を、アシスト動作におけるデューティ比よりも小さくすることができる。これによって、ブレーキ動作の際に、ロータ3に回生ブレーキトルクを発生させることができる。
【0066】
変形例5
ロータ3の第2突極32に永久磁石を取り付けてもよい。これにより、アシストトルク及びブレーキトルクを増加させることができる。
【符号の説明】
【0067】
2 ステータ
22 第1突極
23 コイル
3 ロータ
32 第2突極
100 トルク変動抑制装置