(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】二枚刃ドリル
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B23B51/00 S
B23B51/00 M
B23B51/00 L
B23B51/00 K
(21)【出願番号】P 2020192219
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城 健太郎
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-190618(JP,A)
【文献】特開2007-144526(JP,A)
【文献】特開2015-093351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00、02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切刃の数が2である、回転軸を中心に回転する二枚刃ドリルであって、
前記二枚刃ドリルは、ボディと、前記ボディの先端に取り付けられるダイヤモンドとを備え、前記ダイヤモンドは、
第一すくい面と、
前記第一すくい面に連続して前記第一すくい面との間で内周側第一切刃を形成する第一逃げ面と、
一部分が前記第一すくい面の回転方向後ろ側に位置し、他の部分が前記第一すくい面に連続して前記第一すくい面との間で前記内周側第一切刃の外側に位置する外周側第一切刃を形成する第二逃げ面と、
前記回転軸を中心として前記第一すくい面と点対称の位置に設けられる第二すくい面と、
前記第二すくい面に連続して前記第二すくい面との間で内周側第二切刃を形成する第三逃げ面と、
一部分が前記第二すくい面の回転方向後ろ側に位置し、他の部分が前記第二すくい面に連続して前記第二すくい面との間で前記内周側第二切刃の外側に位置する外周側第二切刃を形成する第四逃げ面と、
前記内周側第一切刃および前記外周側第一切刃を有する第一切刃と、
前記内周側第二切刃および前記外周側第二切刃を有する第二切刃とを備え、
前記第二逃げ面の回転方向後端が第二ねじれ溝先端稜を形成し、
前記第四逃げ面の回転方向後端が第一ねじれ溝先端稜を形成し、
前記第一切刃から前記第一ねじれ溝先端稜までの領域が第一ねじれ溝であり、
前記第二切刃から前記第二ねじれ溝先端稜までの領域が第二ねじれ溝であり、
前記回転軸方向から見て前記第一逃げ面の面積と前記第三逃げ面の面積は同じであり、
前記回転軸方向から見て前記第二逃げ面の面積と前記第四逃げ面の面積は同じであり、
前記回転軸を中心とした
前記第一逃げ面と前記第二逃げ面との境界である第一稜線を通る回転面と前記第一逃げ面との距離は同一円周上において前記第一切刃から遠ざかるにつれて小さくなり、前記回転面と前記第二逃げ面との距離は同一円周上において前記第二切刃から遠ざかるにつれて大きくなり、
前記内周側第一切刃、前記外周側第一切刃、前記内周側第二切刃および前記外周側第二切刃は
前記回転軸方向から見て湾曲しており、
前記回転軸方向から見て前記第一逃げ面の面積/前記第二逃げ面の面積の値が0.08以上0.35以下であり、
前記回転軸方向から見て前記内周側第一切刃の回転直径/前記第一切刃の回転直径は0.45以上0.85以下であり、
前記回転軸方向から見て前記第一逃げ面および前記第二逃げ面の合計面積/前記第一ねじれ溝の面積の値は1.0以上1.4以下である、二枚刃ドリル。
【請求項2】
前記第一逃げ面の面積/前記第二逃げ面の面積の値が0.08以上0.30以下である、請求項1に記載の二枚刃ドリル。
【請求項3】
前記第一逃げ面および前記第二逃げ面の合計面積/前記第一ねじれ溝の面積の値は1.0以上1.3以下である、請求項1または2に記載の二枚刃ドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二枚刃ドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドリルは、たとえば特開2010-253573号公報(特許文献1)および特開2014-12317号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-253573号公報
【文献】特開2014-12317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のドリルでは、さらなる性能の向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、切刃の数が2である、回転軸を中心に回転する二枚刃ドリルである。二枚刃ドリルは、ボディと、ボディの先端に取り付けられるダイヤモンドとを備える。ダイヤモンドは、第一すくい面と、第一すくい面に連続して第一すくい面との間で内周側第一切刃を形成する第一逃げ面と、一部分が第一すくい面の回転方向後ろ側に位置し、他の部分が第一すくい面に連続して第一すくい面との間で内周側第一切刃の外側に位置する外周側第一切刃を形成する第二逃げ面と、回転軸を中心として第一すくい面と点対称の位置に設けられる第二すくい面と、第二すくい面に連続して第二すくい面との間で内周側第二切刃を形成する第三逃げ面と、一部分が第二すくい面の回転方向後ろ側に位置し、他の部分が第二すくい面に連続して第二すくい面との間で内周側第二切刃の外側に位置する外周側第二切刃を形成する第四逃げ面と、内周側第一切刃および外周側第一切刃を有する第一切刃と、内周側第二切刃および外周側第二切刃を有する第二切刃とを備える。第二逃げ面の回転方向後端が第二ねじれ溝先端稜を形成し、第四逃げ面の回転方向後端が第一ねじれ溝先端稜を形成する。第一切刃から第一ねじれ溝先端稜までの領域が第一ねじれ溝である。第二切刃から第二ねじれ溝先端稜までの領域が第二ねじれ溝である。回転軸方向から見て第一逃げ面の面積と第三逃げ面の面積は同じである。回転軸方向から見て第二逃げ面の面積と第四逃げ面の面積は同じである。回転軸を中心とした回転面と第一逃げ面との距離は同一円周上において第一切刃から遠ざかるにつれて小さくなる。回転面と第二逃げ面との距離は同一円周上において第二切刃から遠ざかるにつれて大きくなる。内周側第一切刃、外周側第一切刃、内周側第二切刃および外周側第二切刃は湾曲している。回転軸方向から見て第一逃げ面の面積/第二逃げ面の面積の値が0.08以上0.35以下である。回転軸方向から見て内周側第一切刃の回転直径/第一切刃の回転直径は0.45以上0.85以下である。回転軸方向から見て第一逃げ面および第二逃げ面の合計面積/第一ねじれ溝の面積の値は1.0以上1.4以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1中の矢印IIで示す方向からみた二枚刃ドリル1の正面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿った二枚刃ドリル1の断面図である。
【
図4】
図4は、
図2中のIV-IV線に沿った二枚刃ドリル1の断面図である。
【
図5】
図5は、
図1中のVで囲んだ部分の二枚刃ドリル1の拡大図である。
【
図6】
図6は、
図2中の矢印VIで示す方向からみた二枚刃ドリル1の側面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の斜視図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の斜視図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の回転軸方向からみた第一ねじれ溝61の面積と、第一逃げ面31および第二逃げ面32の合計の面積とを示す二枚刃ドリル1の正面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の回転軸方向からみた内周側第一切刃141の回転直径D11と第一切刃41の回転直径D21とを示す二枚刃ドリル1の正面図である。
【
図11】
図11は、比較例に従った、内周側第一切刃141が第一外周端部143まで到達し、内周側第二切刃241が第二外周端部243まで到達するとともに内周側第一切刃141と内周側第二切刃241は凹形状に湾曲している二枚刃ドリルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0008】
図1は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の側面図である。
図2は、
図1中の矢印IIで示す方向からみた二枚刃ドリル1の正面図である。
図3は、
図2中のIII-III線に沿った二枚刃ドリル1の断面図である。
図4は、
図2中のIV-IV線に沿った二枚刃ドリル1の断面図である。
【0009】
図1から
図4で示すように、二枚刃ドリル1は、切刃の数が2であり、回転軸100を中心に回転する。二枚刃ドリルは、ボディ8と、ボディ8の先端に取り付けられるダイヤモンド7とを備える。ダイヤモンド7は、第一すくい面101と、第一すくい面101に連続して第一すくい面101との間で内周側第一切刃141を形成する第一逃げ面31と、一部分が第一すくい面101の回転方向後ろ側に位置し、他の部分が第一すくい面101に連続して第一すくい面101との間で内周側第一切刃141の外側に位置する外周側第一切刃142を形成する第二逃げ面32と、回転軸100を中心として第一すくい面101と点対称の位置に設けられる第二すくい面102と、第二すくい面102に連続して第二すくい面102との間で内周側第二切刃241を形成する第三逃げ面33と、一部分が第二すくい面102の回転方向後ろ側に位置し、他の部分が第二すくい面102に連続して第二すくい面102との間で内周側第二切刃241の外側に位置する外周側第二切刃242を形成する第四逃げ面34と、を備える。
【0010】
第一切刃41は、内周側第一切刃141および外周側第一切刃142を有する。第二切刃42は、内周側第二切刃241および外周側第二切刃242を有する。
【0011】
第二逃げ面32の回転方向後端が第二ねじれ溝先端稜52を形成する。第四逃げ面34の回転方向後端が第一ねじれ溝先端稜51を形成する。第一切刃41から第一ねじれ溝先端稜51までの領域が第一ねじれ溝61である。第二切刃42から第二ねじれ溝先端稜52までの領域が第二ねじれ溝62である。
【0012】
回転軸100方向から見て第一逃げ面31の面積と第三逃げ面33の面積は同じである。回転軸100方向から見て第二逃げ面32の面積と第四逃げ面34の面積は同じである。
【0013】
回転軸100を中心とした回転面9と第一逃げ面31との距離は同一円周上において内周側第一切刃141から遠ざかるにつれて小さくなる。回転面9と第二逃げ面32との距離は同一円周上において内周側第一切刃141から遠ざかるにつれて大きくなる。
【0014】
回転軸100を中心とした回転面9と第三逃げ面33との距離は同一円周上において内周側第二切刃241から遠ざかるにつれて小さくなる。回転面9と第四逃げ面34との距離は同一円周上において内周側第二切刃241から遠ざかるにつれて大きくなる。
【0015】
内周側第一切刃141、外周側第一切刃142、内周側第二切刃241および外周側第二切刃242は湾曲している。回転軸100方向から見て第一逃げ面31の面積/第二逃げ面32の面積の値が0.08以上0.35以下である。
【0016】
この値が0.08未満となると第一逃げ面31が小さくなり過ぎて第一切刃41の強度が低下する。その結果、第一切刃41にチッピングが発生するとともにこのチッピングに起因して加工面粗さが悪化する。この値が0.35を超えると第一逃げ面31が大きくなりすぎて第一逃げ面31と工作物との間に切屑が詰まりやすくなるため切屑の排出性が悪化する。
【0017】
より好ましくは、回転軸100方向から見て第一逃げ面31の面積/第二逃げ面32の面積の値が0.08以上0.30以下である。
【0018】
回転軸100方向から見て内周側第一切刃141の回転直径/第一切刃41の回転直径は0.45以上0.85以下である。この値が0.45未満となると第一逃げ面31が小さくなり過ぎて第一切刃41の強度が低下する。その結果、第一切刃41にチッピングが発生するとともにこのチッピングに起因して加工面粗さが悪化する。この値が0.85を超えると第一逃げ面31が大きくなりすぎて第一逃げ面31と工作物との間に切屑が詰まりやすくなるため切屑の排出性が悪化する。
【0019】
回転軸100方向から見て第一逃げ面31および第二逃げ面32の合計面積/第一ねじれ溝61の面積の値は1.0以上1.4以下である。この値が1.0未満であれば第一逃げ面31および第二逃げ面32の合計面積が小さくなり過ぎて第一切刃41の強度が低下する。その結果、第一切刃41にチッピングが発生するとともにこのチッピングに起因して加工面粗さが悪化する。この値が1.4を超えると第一ねじれ溝61の面積が小さくなりすぎて切屑の排出が困難となる。さらに切屑によって第一切刃41にチッピングが生じ、これに起因して加工面粗さが悪化する。
【0020】
より好ましくは、回転軸100方向から見て第一逃げ面31および第二逃げ面32の合計面積/第一ねじれ溝61の面積の値は1.0以上1.3以下である。
【0021】
二枚刃ドリル1は、長手方向に延びるボディ8と、ボディ8の先端にたとえばろう付けで取り付けられたダイヤモンド7とを有する。ダイヤモンド7は、たとえば単結晶ダイヤモンドまたは多結晶ダイヤモンドであり、好ましくは多結晶ダイヤモンドである。
【0022】
二枚刃ドリル1は、回転軸100を中心として回転する。
図1では、根元部分が大径でダイヤモンド7が設けられる先端部分が小径である。しかしながら、すべての部分において外径が一定であってもよい。
【0023】
図2で示すように、二枚刃ドリル1は回転中心3を中心として点対称形状とされている。具体的には、第一逃げ面31と第三逃げ面33が回転中心3を中心として点対称である第二逃げ面32と第四逃げ面34とが回転中心3を中心として点対称である。第一ねじれ溝61と第二ねじれ溝62が回転中心3を中心として点対称である。
【0024】
第一稜線71と第二稜線72が回転中心3を中心として点対称である。第三稜線73と第四稜線74が回転中心3を中心として点対称である。第一切刃41と第二切刃42が回転中心3を中心として点対称である。内周側第一切刃141と内周側第二切刃241が回転中心3を中心として点対称である。外周側第一切刃142と外周側第二切刃242が回転中心3を中心として点対称である。第一ねじれ溝先端稜51と第二ねじれ溝先端稜52が回転中心3を中心として点対称である。
【0025】
第一稜線71、第二稜線72、第三稜線73および第四稜線74は回転中心3から放射状に外周側に延びる。第一稜線71は第一逃げ面31と第二逃げ面32との境界である。第二稜線72は第三逃げ面33と第四逃げ面34との境界である。第三稜線73は第一逃げ面31と第四逃げ面34との境界である。第四稜線74は第二逃げ面32と第三逃げ面33の境界である。
【0026】
図2で示す面において回転中心3が最も高い部分に位置する。第一稜線71、第二稜線72、第三稜線73および第四稜線74は回転中心3から遠ざかるにつれて高さが低くなるように延びている。
【0027】
第一外周端部143は外周側第一切刃142と外周円とが交わる部分である。第二外周端部243は外周側第二切刃242と外周円とが交わる部分である。内周側第一切刃141、外周側第一切刃142、内周側第二切刃241および外周側第二切刃242は凸形状に湾曲している。これに対して第一ねじれ溝先端稜51および第二ねじれ溝先端稜52は凹形状に湾曲している。二枚刃ドリル1は矢印Rで示す方向に回転する。
【0028】
図3で示すように、回転面9は第一稜線71を通る面である。二枚刃ドリル1が矢印Rで示す方向に回転すると
図3で示す断面において第一稜線71が回転面9上を移動する。第一稜線71から回転方向に沿って離れるにつれて第一逃げ面31および第二逃げ面32は回転面9から回転方向と垂直方向に離れる。
【0029】
内周側第一切刃141は第一すくい面101と第一逃げ面31との境界に形成される。内周側第一切刃141は工作物と接触して工作物を加工する領域である。内周側第一切刃141で加工された工作物から切屑が発生して切屑が第一すくい面101に沿って流れて排出される。
【0030】
図4で示すように、回転面9は第二稜線72を通る面である。二枚刃ドリル1が矢印Rで示す方向に回転すると
図4で示す断面において第二稜線72が回転面9上を移動する。第二稜線72から回転方向に沿って離れるにつれて第三逃げ面33および第四逃げ面34は回転面9から回転方向と垂直方向に離れる。
【0031】
内周側第二切刃241は第二すくい面102と第三逃げ面33との境界に形成される。内周側第二切刃241は工作物と接触して工作物を加工する領域である。内周側第二切刃241で加工された工作物から切屑が発生して切屑が第二すくい面102に沿って流れて排出される。
【0032】
図5は、
図1中のVで囲んだ部分の二枚刃ドリル1の拡大図である。
図6は、
図2中の矢印VIで示す方向からみた二枚刃ドリル1の側面図である。
図5および
図6で示すように、二枚刃ドリル1の先端に回転中心3が設けられている。回転中心3の両側に第一ねじれ溝61および第二ねじれ溝62が設けられている。第一ねじれ溝61および第二ねじれ溝62は二枚刃ドリル1の外周面にらせん状に設けられている。二枚刃ドリル1の外周面には201および202が設けられている。そのため二枚刃ドリル1の外径は先端側と根元側とで異なる。先端側の外径はD1であり、根元側の外径はD2であり、D2はD1よりも小さい。
【0033】
図7および
図8は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の斜視図である。
図7および
図8で示すように回転中心3を中心として第一逃げ面31、第二逃げ面32、第三逃げ面33および第四逃げ面34が外周に向かって延びている。二枚刃ドリル1の先端は回転中心3を中心とする錐形状とされている。
【0034】
第一ねじれ溝61の先端が第一すくい面101である。第二ねじれ溝62の先端が第二すくい面102である。
【0035】
図9は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の回転軸方向からみた第一ねじれ溝61の面積と、第一逃げ面31および第二逃げ面32の合計の面積とを示す二枚刃ドリル1の正面図である。第一ねじれ溝61の面積は点線の斜線を付した部分の面積である。線83は回転中心3と第一ねじれ溝先端稜51の外周端部81とを結ぶ線である。
【0036】
第一逃げ面31と第二逃げ面32との合計の面積は一点鎖線の斜線を付した部分の面積である。第一逃げ面31および第二逃げ面32の合計面積/第一ねじれ溝61の面積の値は1.0以上1.4以下である。
【0037】
第二ねじれ溝62の面積は第一ねじれ溝61の面積と同じである。第三逃げ面33および第四逃げ面34の合計の面積は第一逃げ面31および第二逃げ面32の合計の面積と同じである。
【0038】
回転軸100方向から見て第一逃げ面31の面積、第二逃げ面32の面積、第三逃げ面33の面積、および第四逃げ面34の面積を測定するには、KEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX-1000で取得した回転軸100方向から見た画像を基に、デジタルマイクロスコープに付属の解析ソフトの計測機能の中の面積計測(多角形)を使い、測定を行う。測定する面の位置(輪郭)を決めるため、測定する面の輪郭線上に測定点を入力するが、測定点は測定長さ1mm当たり50点入力するものとする。
【0039】
図10は、実施の形態に従った二枚刃ドリル1の回転軸方向からみた内周側第一切刃141の回転直径D11と第一切刃41の回転直径D21とを示す二枚刃ドリル1の正面図である。
【0040】
回転軸100方向から見て内周側第一切刃141の回転直径、第一切刃41の回転直径、を測定するには、デジタルマイクロスコープVHX-1000で取得した回転軸100方向から見た画像を基に、デジタルマイクロスコープに付属の解析ソフトの計測機能の中のメイン計測(直径)を使い、測定を行う。内周側第一切刃141の外周端部144と内周側第二切刃241の外周端部244とを通り回転中心3を中心とする円110の直径D11を測定し、これを内周側第一切刃141の回転直径とする。外周側第一切刃142の外周端部である第一外周端部143と外周側第二切刃242の外周端部である第二外周端部243とを通り回転中心3を中心とする円120の直径D21を測定し、これを第一切刃41の回転直径とする。
【0041】
[本開示の実施形態の詳細]
(実施例)
第一逃げ面31面積/第二逃げ面32面積、内周側第一切刃141回転直径/第一切刃41回転直径、第一・第二逃げ面31,32の合計面積/第一ねじれ溝61の面積を様々に変更した
図1から10で示す形状の二枚刃ドリル1を準備した。ボディ8の材質は超硬合金、ダイヤモンド7の材質は多結晶ダイヤモンドとした。詳細を表1において示す。
【0042】
【0043】
この二枚刃ドリルを用いて以下の条件で切削加工を行った。
【0044】
切削対象物:単結晶Si(φ300mm×T10mm)
外径D1:φ0.75mm
外径D2:φ0.72mm
回転数:12000mim-1
送り:0.00125mm/rev
潤滑:水溶性クーラント(濃度8%)
寿命の判断:加工面粗さが、Ra100nmを超えるか、または、工具が折損するか、のいずれか早いほうを寿命とした。
【0045】
加工穴数が1000となる毎、および寿命に達した段階で、各試料番号の切屑の排出状況、切刃(第一切刃41)チッピングの有無、および加工面粗さを測定した。切屑の排出状況、切刃チッピングの寸法測定をKEYENCE製デジタルマイクロスコープVHX-1000により行った。加工面粗さの測定をzygo製3D表面粗さ/形状測定機Nexviewにより行った。
【0046】
切屑排出状況については1000穴加工毎および寿命に達した段階で、二枚刃ドリルの外観を確認し、各測定時に二枚刃ドリルの溝部に切屑の堆積が無かったものを「A」とし、一度でも溝部に切屑の堆積があったものを「B」とした。
【0047】
刃先のチッピングの有無に関しては1000穴加工毎および寿命に達した段階で、各測定時にチッピングの大きさが0.02mm未満であるものを「A」とし、一度でもチッピングの大きさが0.02mm以上となったものを「B」とした。
【0048】
この結果からは、第一逃げ面31面積/第二逃げ面32面積が0.08以上0.35以下の範囲、内周側第一切刃141の回転直径/第一切刃41の回転直径が0.45以上0.85以下の範囲であれば好ましい特性が得られることが分かった。
【0049】
さらに、第一逃げ面31の面積/第二逃げ面32の面積の値が0.08以上0.30以下である場合により長寿命であることが分かった。
【0050】
第一逃げ面31面積/第二逃げ面32面積、内周側第一切刃141回転直径/第一切刃41回転直径、第一・第二逃げ面31,32の合計面積/第一ねじれ溝61の面積を様々に変更した
図1から10で示す形状の二枚刃ドリル1を準備した。
【0051】
図11は、比較例に従った、内周側第一切刃141が第一外周端部143まで到達し、内周側第二切刃241が第二外周端部243まで到達するとともに内周側第一切刃141と内周側第二切刃241は凹形状に湾曲している二枚刃ドリルの正面図である。
図11で示すように、内周側第一切刃141が第一外周端部143まで到達し、内周側第二切刃241が第二外周端部243まで到達するとともに内周側第一切刃141と内周側第二切刃241は凹形状に湾曲している二枚刃ドリル(試料番号131-134)を準備した。ボディ8の材質は超硬合金、ダイヤモンド7の材質は多結晶ダイヤモンドとした。詳細を表2において示す。
【0052】
【0053】
この二枚刃ドリルを用いて以下の条件で切削加工を行った。
【0054】
切削対象物:単結晶Si(φ300mm×T10mm)
外径D1:φ0.75mm
外径D2:φ0.72mm
回転数:12000mim-1
送り:0.00125mm/rev
潤滑:水溶性クーラント(濃度8%)
寿命の判断:寿命の判断:加工面粗さが、Ra100nmを超えるか、または、工具が折損するか、のいずれか早いほうを寿命とした。
【0055】
表1と同様の基準で、加工穴数が1000となる毎、および寿命に達した段階で、各試料番号の切屑の排出状況、切刃(第一切刃41)チッピングの有無、および加工面粗さを測定した。各試料番号の切屑の排出状況を測定した。さらに表1と同様の評価を行った。これらの結果を表2において示す。
【0056】
この結果からは、第一および第二逃げ面31,32の合計面積/第一ねじれ溝61の合計面積の値が1.0以上1.4以下が0.08以上0.35以下の範囲、内周側第一切刃141回転直径/第一切刃41回転直径が0.45以上0.85以下の範囲であれば好ましい特性が得られることが分かった。
【0057】
さらに、第一逃げ面31および第二逃げ面32の合計面積/第一ねじれ溝の面積61の値は1.0以上1.3以下である場合により長寿命であることが分かった。
【0058】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 二枚刃ドリル、3 回転中心、7 ダイヤモンド、8 ボディ、9 回転面、31 第一逃げ面、32 第二逃げ面、33 第三逃げ面、34 第四逃げ面、41 第一切刃、42 第二切刃、51 第一ねじれ溝先端稜、52 第二ねじれ溝先端稜、61 第一ねじれ溝、62 第二ねじれ溝、71 第一稜線、72 第二稜線、73 第三稜線、74 第四稜線、100 回転軸、101 第一すくい面、102 第二すくい面、141 内周側第一切刃、142 外周側第一切刃、143 第一外周端部、144,244 外周端部、201,202 段差、241 内周側第二切刃、242 外周側第二切刃、243 第二外周端部。