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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/08 20140101AFI20240627BHJP
   B23K 26/10 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B23K26/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020194918
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083544
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】黒須 雄太
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-244966(JP,A)
【文献】特開2012-061504(JP,A)
【文献】特開昭63-230293(JP,A)
【文献】特開2015-016485(JP,A)
【文献】特開昭62-292293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置されるワークテーブルと、
前記ワークテーブルに載置された前記ワークにレーザビームを照射するレーザ加工ヘッドと、
前記ワークテーブルに備えられ、上端が第1の高さ位置にあってワークを支持する複数の第1ワーク支持部材と、
前記ワークテーブルに備えられ、上端が前記第1の高さ位置にある上昇位置と、前記上端が前記第1の高さ位置よりも低い第2の高さ位置にある下降位置との間を昇降し、前記上端が前記第1の高さ位置にあるときに前記ワークを支持する第2ワーク支持部材と、
前記ワークの板厚が所定値未満のときに前記第2ワーク支持部材を上昇位置にし、前記ワークの板厚が前記所定値以上のときに前記第2ワーク支持部材を前記下降位置にする制御装置と、
を備えたレーザ加工装置。
【請求項2】
前記ワークテーブルは、前記ワークが載置される領域が複数の領域に分割されており、前記複数の領域それぞれに、前記第2ワーク支持部材を独立して昇降させる支持部材昇降構造を備えている請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1ワーク支持部材及び前記第2ワーク支持部材は、上方側が先鋭部となる姿勢で備えられたスキッドであること請求項1又は請求項2記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第2ワーク支持部材が前記下降位置にあるときに、前記先鋭部の向きを上下反転させる反転機構を備えている請求項3記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ワークを支持する複数のスキッドを有するワーク支持装置の加工テーブルと、それを備えたレーザ加工装置とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-051545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークを支持する複数のスキッドを備えたワーク支持装置において、ワークと接触するスキッドのいわゆる剣山とも称される先鋭部は、レーザ加工に伴い損傷し消耗する。また、先鋭部は、レーザ加工によってワークと溶着してしまう場合がある。
先鋭部が損傷又は消耗したスキッドは交換が必要であり、先鋭部がワークと溶着したスキッドは、メンテナンスで修繕する必要がある。
【0005】
スキッドの交換作業中及びメンテナンス作業中は、レーザ加工装置でレーザ加工は行えない。そのため、レーザ加工装置の稼働率を向上すべく、スキッドの交換作業及びメンテナンス作業の回数は、できるだけ少ないことが望まれる。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、稼働率が向上するレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) ワークが載置されるワークテーブルと、
前記ワークテーブルに載置された前記ワークにレーザビームを照射するレーザ加工ヘッドと、
前記ワークテーブルに備えられ、上端が第1の高さ位置にあってワークを支持する複数の第1ワーク支持部材と、
前記ワークテーブルに備えられ、上端が前記第1の高さ位置にある上昇位置と、前記上端が前記第1の高さ位置よりも低い第2の高さ位置にある下降位置との間を昇降し、前記上端が前記第1の高さ位置にあるときに前記ワークを支持する第2ワーク支持部材と、
前記ワークの板厚が所定値未満のときに前記第2ワーク支持部材を上昇位置にし、前記ワークの板厚が前記所定値以上のときに前記第2ワーク支持部材を前記下降位置にする制御装置と、
を備えたレーザ加工装置である。
2) 前記ワークテーブルは、前記ワークが載置される領域が複数の領域に分割されており、前記複数の領域それぞれに、前記第2ワーク支持部材を独立して昇降させる支持部材昇降構造を備えている1)に記載のレーザ加工装置である。
3) 前記第1ワーク支持部材及び前記第2ワーク支持部材は、上方側が先鋭部となる姿勢で備えられたスキッドである1)又は2)に記載のレーザ加工装置である。
4) 前記第2ワーク支持部材が前記下降位置にあるときに、前記先鋭部の向きを上下反転させる反転機構を備えている3)に記載のレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レーザ加工装置の稼働率が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の実施例であるレーザ加工装置91の概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、レーザ加工装置91が備えるワーク支持装置92の第1態様を示す模式的側面図である。
図3図3は、ワーク支持装置92の第2態様を示す模式的側面図である。
図4図4は、ワーク支持装置92が薄板のワークWaを第1態様で支持した状態を示す模式的側面図である。
図5図5は、ワーク支持装置92が厚板のワークWbを第2態様で支持した状態を示す模式的側面図である。
図6図6は、ワークテーブル1Aの領域群ARGを示す上面図である。
図7図7は、レーザ加工装置91Aにおけるエアの系統図である。
図8図8は、スキッド昇降構造SKAの第1態様を示す斜視図である。
図9図9は、スキッド昇降構造SKAの第3態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例)
図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の実施例であるレーザ加工装置91の概略構成を示す斜視図である。説明の便宜のため、上下左右前後の各方向を図1の矢印で示された方向に規定する。左右方向をX軸、前後方向をY軸、上下方向をZ軸とする。
【0011】
図1に示されるように、レーザ加工装置91は、ワーク支持装置92,レーザ加工ヘッド93,及び制御装置94を備えている。
ワーク支持装置92は、ワークテーブル1と、スキッド群2Gと、エア供給部3とを有する。スキッド群2Gは、第1ワーク支持部材である複数の固定スキッド21及び第2ワーク支持部材である複数の昇降スキッド22を含む群である。
固定スキッド21及び昇降スキッド22は、長手を有する薄板状に形成され、長手に沿う一縁部に鋸刃状の先鋭部21a及び先鋭部22aが形成されている。
【0012】
ワークテーブル1は、上面視で長方形のテーブルであって、前端及び後端に、それぞれ前方及び後方に張り出すようにサイドブロック11が取り付けられている。
ワークテーブル1の上部には、板状の固定スキッド21及び昇降スキッド22が、それぞれ複数枚、Y軸方向に延びる姿勢でX軸方向に交互に配置されている。
固定スキッド21及び昇降スキッド22それぞれは、先鋭部21a及び先鋭部22aが上方を向く姿勢でワークテーブル1上に配置されている。
【0013】
レーザ加工ヘッド93は、下端にノズル93aを有し、ノズル93aの先端から下方に向けレーザビームLSを射出する。
レーザ加工ヘッド93は、ワークテーブル1の上方を、不図示の駆動構造によってX,Y,Zの各軸の方向に独立して移動する。
レーザ加工装置91は、ワークテーブル1のスキッド群2Gに載置された板金のワークに対しレーザビームLSを照射して切断などのレーザ加工を施す。
【0014】
制御装置94は、レーザ加工装置91の全体の動作を制御する。
【0015】
次に、ワーク支持装置92について、図2及び図3を参照して詳述する。
ワーク支持装置92は、スキッド群2Gのうちの昇降スキッド22を昇降させるスキッド昇降構造SKを有する。
スキッド昇降構造は、複数のエアシリンダ15,昇降プレート14,昇降スキッド22,エア供給部3,エアの経路6,及び電磁開閉弁5を含んで構成されている。
【0016】
図2は、昇降スキッド22が上昇してその上端22bが高さ位置Haにある第1態様を示す模式的側面図であり、図3は、昇降スキッド22が降下してその上端22bが高さ位置Hbにある第2態様を示す模式的側面図である。高さ位置Haは、第1の高さ位置であって、いわゆるパスラインPLの位置である。高さ位置Hbは、第2の高さ位置である。
【0017】
サイドブロック11の内部において、複数のエアシリンダ15が、サイドブロック11の底フレーム12上に左右方向に離隔して配置されている。図2では、5個のエアシリンダ15a~15eが示されている。
エアシリンダ15a~15eそれぞれのロッド16の先端は、水平に配置された昇降プレート14に固定されている。昇降プレート14には、左右方向に所定のピッチP1で離隔して昇降スキッド22が取り付けられている。
サイドブロック11とワークテーブル1との境界部分に位置するサイドフレーム13には、各昇降スキッド22が昇降に伴って進入するスリット13aが形成されている。
【0018】
サイドフレーム13の上部には、複数の固定スキッド21が左右方向にピッチP1で互いに離隔して取り付けられている。隣接する固定スキッド21と昇降スキッド22との間隔はピッチP1の概ね半分である。
【0019】
エアシリンダ15a~15eとエア供給部3とは、エアを流す経路6が接続されている。経路6の途中には電磁開閉弁5が配置されている。エア供給部3及び電磁開閉弁5の動作は制御装置94によって制御される。
エアシリンダ15a~15eは、エア供給部3から供給されるエアを動力源として、電磁開閉弁5の開閉動作に伴ってロッド16を上昇位置と下降位置との間で昇降させる。エア源として、例えば作業場に一般的に付設されているパージエア供給ラインを用いる。
【0020】
図2に示されるように、ロッド16が上昇位置にある第1態様で、昇降スキッド22の上端22bの高さ位置は、固定スキッド21の上端21bの高さ位置と同じ高さ位置Haにある。
すなわち、ロッド16が上昇位置にある第2態様で、固定スキッド21と昇降スキッド22とは、スキッド群2Gに載置される板状のワークに接触しそのワークを水平姿勢で支持する。
【0021】
図3に示されるように、ロッド16が下降位置にあるときに、昇降スキッド22の上端22bの高さ位置は、高さ位置Haよりも低い高さ位置Hbにある。
すなわち、ロッド16が下降位置にあるときに、スキッド群2Gに載置される板状のワークに対し、固定スキッド21のみが接触してそのワークを水平姿勢で支持する。
【0022】
制御装置94は、ワークテーブル1に載置するワークの板厚に応じ、スキッド群2Gを第1態様及び第2態様のいずれにするかを選択して設定する。
図4に示されるように、制御装置94は、ワークWの板厚が予め設定した所定値未満のワークWaの場合、スキッド群2Gを第1態様とし、図5に示されるように、ワークWの板厚が所定値以上のワークWbの場合、スキッド群2Gを第2態様とする。所定値は、例えば6.0mmである。
【0023】
ワークWaとワークWbとが同じ材質の場合、ワークWaはワークWbよりも板厚が小さく曲げ剛性が小さい。そのため、ワークWaの縁部を含めた全体の姿勢を水平で維持するためには、支持するスキッド群2Gのスキッド数は多い方がよい。
そこで、図4に示されるように、薄板のワークWaを支持するときは、昇降スキッド22を上昇させてワークWaを固定スキッド21及び昇降スキッド22の両方で支持する第1態様とする。
【0024】
図4に示されるように、薄板のワークWaから部分的に切り出された製品Wa1は、仮に、製品Wa1の左縁部近傍を支持する位置にある昇降スキッド221が下降していると、製品Wa1は、曲げ剛性が比較的小さいことから自重によって変形する。そのため、製品Wa1は、左縁部が隣接する固定スキッド21の間に入り込んでパスラインPLよりも下がり右縁部がパスラインPLを上方に越えるように傾く虞がある。
これに対し制御装置94は、薄板のワークWaを第1態様で支持するよう制御するので、製品Wa1の左端が下がり右端が上がるという不具合の要因となる姿勢の傾きはほとんど生じない。
【0025】
すなわち、ワークWa及び製品Wa1は、ワークテーブル1に載置された状態で、姿勢が傾き一部がパスラインPLよりも上方に持ち上がる虞はほとんどない。このため、レーザ加工ヘッド93が低軌道で移動する場合にも、衝突する可能性はほとんどない。
【0026】
図5に示されるように、ワークWbは、ワークWaよりも板厚が大きく曲げ剛性が大きい。そのため、ワークWaは、支持するスキッド群2Gの枚数が少なくても、姿勢を水平に維持できる。すなわち、ワークWbについては、昇降スキッド22を降下させて固定スキッド21のみで支持する第2態様で良好に支持できる。
【0027】
図5に示されるように、ワークWbから部分的に切り出された製品Wb1は、左縁部近傍を支持する昇降スキッド22が下降していても、左右方向において固定スキッド211,212の間に製品Wb1の重心位置があれば、製品Wb1の左端が下がり右端が上がるという不具合の要因となる姿勢の傾きはほとんど生じない。
【0028】
すなわち、ワークWb及び製品Wb1は、ワークテーブル1に載置された状態で、姿勢が傾き一部がパスラインPLよりも上方に持ち上がる虞はほとんどない。このため、レーザ加工ヘッド93が低軌道で移動する場合にも、衝突する可能性はほとんどない。
【0029】
上述のように、レーザ加工装置91は、ワークを支持するスキッドの枚数が、ワークの板厚に応じて設定される。詳しくは、レーザ加工装置91の制御装置94は、ワークの板厚が所定値未満の場合に、そのワークを支持するスキッドの枚数が最大となる第1態様とし、ワークの板厚が所定値以上の場合に、そのワークを支持するスキッドの枚数が最小となる第2態様とする。
これにより、レーザ加工に供される時間が固定スキッド21よりも短いスキッド(昇降スキッド22)が得られるので、スキッドの交換作業及びメンテナンス作業の回数が低減し、稼働率が向上する。
【0030】
上述のワーク支持装置92は、昇降スキッド22の昇降を、ワークテーブル1におけるすべての昇降スキッド22を同期させて行う。
ワーク支持装置92は、変形例として、図6に示されるように、ワークテーブル1を複数の領域に分割し、それぞれの領域で独立して昇降動作を行うワークテーブル1Aを備えたワーク支持装置92Aとしてもよい。
【0031】
図6は、ワークテーブル1Aの上面図であって、X軸方向に3分割、Y軸方向に3分割した9つの領域AR11~AR13,AR21~AR23,AR31~AR33を示す図である。9つの領域をまとめて領域群ARGとも称する。
図7は、ワーク支持装置92Aを備えたレーザ加工装置91Aにおけるエアの系統図である。
【0032】
図7に示されるように、レーザ加工装置91Aは、エア供給部3及び制御装置94を共通とし、領域群ARGのそれぞれの領域に対応した支持部材昇降構造であるスキッド昇降構造(SK11~SK13,SK21~SK23,SK31~SK33)を備えている。すなわち、各領域に、エアシリンダ(1511~1513,1521~1523,1531~1533),経路(611~613,621~623,631~633),及び電磁開閉弁(511~513,521~523,531~533)が設けられている。
具体的には、領域AR21には複数のエアシリンダ1521が配置される。複数のエアシリンダ1521とエア供給部3とは経路621によって接続され、経路621には電磁開閉弁521が配置されている。
これにより、制御装置94は、領域ごとに、独立して昇降スキッド22の昇降動作を制御する。
【0033】
例えば、ワークテーブル1Aに載置されるワークが薄板のワークWaで、大きさが領域AR11及び領域AR12に跨る場合、領域AR11及び領域AR12の昇降スキッド22を上昇させ、他の薄板のワークWaが載置されない領域の昇降スキッド22を下降させておく。これにより、領域AR11及び領域AR12に隣接する領域の昇降スキッド22に対するレーザ加工の影響を抑制することができる。
【0034】
また、ワークテーブル1Aに、薄板のワークWaと厚板のワークWbとの両方を異なる領域に載置し、スキッド群2Gをそれぞれのワークに対応する態様にして支持することもできる。
例えば、薄板のワークWaを領域AR11に載置し、厚板のワークWbを領域AR31に載置する。これに対応して、領域AR11のスキッド群2Gを昇降スキッド22を上昇させた第1態様とし、領域AR31のスキッド群2Gを昇降スキッド22を下降させた第2態様とする。
このようにして、領域AR11で薄板のワークWaのレーザ加工が実行され、領域AR31で厚板のワークWbのレーザ加工が実行される。
【0035】
これにより、領域AR31において、レーザ加工に供される時間が固定スキッド21よりも短いスキッド(昇降スキッド22)が得られるので、スキッドの交換作業及びメンテナンス作業の回数が低減し、レーザ加工装置91Aは稼働率が向上する。
【0036】
また、厚板のワークWbをレーザ加工する場合、制御装置94は、レーザビームが照射される加工経路に対応する領域を予め抽出し、領域群ARGのうち、厚板のワークWbが載置され、かつ加工経路に対応する領域のみを第2態様にするよう制御してもよい。
これによれば、加工経路から離れていてレーザ加工の影響を受けにくいスキッドを厚板のワークWbを支持するスキッドに加えてその枚数を増やすことができる。そのため、厚板のワークWbの縁部の位置が、固定スキッド21から離れている場合でも厚板のワークWbをより安定して支持することができる。
【0037】
レーザ加工装置91において、制御装置94は、昇降スキッド22の昇降動作を、原則レーザ加工を停止している状態で実行する。また、制御装置94は、加工経路に対応する領域の昇降スキッド22を、その領域にレーザビームの照射が行われているときは下降して第2態様とし、その領域でのレーザビームの照射前、及び照射後には上昇した第1態様としてもよい。
この場合、昇降スキッド22は、レーザ加工の影響を受け得る時期には下方に退避して影響を回避し、レーザ加工の影響を受けにくい時期には上昇してワークWを支持する。
【0038】
これにより、レーザ加工の影響を受けにくいスキッド(昇降スキッド22)の数をより増やしてレーザ加工装置91の稼働率を向上させ、ワークWを十分安定して支持して、より高精度のレーザ加工を行うことができる。
【0039】
ワークWの板厚を、例えば薄板,中板,及び厚板の3段階に分け、昇降スキッド22を第1昇降スキッド及び第2昇降スキッドの2種類に分け、3段階のうち板厚が厚いほどワークWを支持するスキッドの枚数を減らすようにしてもよい。この例における板厚の段階は、例えば、薄板は厚さ4.5mm未満、中板は厚さ4.5mm以上かつ10.0mm未満、厚板は10.0mm以上である。
【0040】
この場合、ワークWが薄板の場合は、固定スキッド21,第1昇降スキッド,及び第2昇降スキッドのすべてで支持する。ワークWが中板の場合は、第2昇降スキッドを下降して固定スキッド21及び第1昇降スキッドで支持する。ワークWが厚板の場合は、第1昇降スキッド及び第2昇降スキッドを降下させて固定スキッド21のみで支持する。
これにより、レーザ加工に供される時間が固定スキッド21よりも短いスキッドをより多く得ることができ、スキッドの交換作業及びメンテナンス作業の回数がより低減し、レーザ加工装置91Aは稼働率がより向上する。
【0041】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0042】
スキッド昇降構造SKは、昇降スキッド22を下降させた状態で、昇降スキッド22をその長手方向に延びる軸線まわりに回動できるスキッド昇降構造SKAとしてもよい。スキッド昇降構造SKAによれば、上方を向いていた先鋭部22aを下方を向くように姿勢転換でき、先鋭部22aが受けるレーザ加工の影響を低減させることができる。
【0043】
図8及び図9は、スキッド昇降構造SKAを示す部分斜視図である。
図8に示されるように、スキッド昇降構造SKAは、昇降スキッド22,スキッドホルダ17,昇降プレート141,エアシリンダ15,歯付ベルト19,及びモータMを含んで構成されている。
【0044】
複数の昇降スキッド22は、それぞれ長手方向端部がスキッドホルダ17で保持されている。
スキッドホルダ17は軸状部材であって、同芯で歯付プーリ18が取り付けられている。スキッドホルダ17は、先端の軸部17aが、昇降プレート141から折り曲げで立ち上げられたシャフト支持部142によって前後方向に延びる軸線まわりに回転自由に支持されている。
【0045】
昇降プレート141の端部には、モータ支持部143が形成されており、モータ支持部143には、前後方向に延びる駆動軸を有するモータMが取り付けられている。モータMの駆動軸には歯付プーリ18Mが取り付けられている。
スキッドホルダ17の歯付プーリ18及びモータMの歯付プーリ18Mには、ループ状の歯付ベルト19が掛け渡されており、複数の歯付プーリ18も歯合している。これにより、各歯付プーリ18は、モータMの回転に伴い同じ回転方向に同期して回転する。
上述の構成における、スキッドホルダ17,歯付プーリ18,18M,歯付ベルト19,及びモータMは、昇降スキッド22を反転させる反転機構HKを構成する。
【0046】
昇降プレート141は、エアシリンダ15のロッド16に取り付けられて、エアシリンダ15の動作に伴いロッド16の上下方向の移動に伴い、昇降するようになっている。
制御装置94は、エアシリンダ15及びモータMの動作を制御する。
【0047】
図8は、スキッド昇降構造SKAにおいて、ロッド16が上昇し、昇降スキッド22の先端位置が、不図示の固定スキッド21の先端位置と同じ高さとなる第1態様の状態を示している。昇降スキッド22の先鋭部22aは、上方を向いている。
【0048】
図9では、図8に示される第1態様に対し、エアシリンダ15が動作して、ロッド16が矢印DR1のように下降し、昇降スキッド22は第2態様の位置に下げられている。さらに、モータMが動作して歯付ベルト19を矢印DR2の方向に移動し昇降スキッド22の姿勢が矢印DR3のように180°で上下反転した第3の態様が示されている。
第3の態様において、昇降スキッド22の先鋭部22aは下方を向いているのでレーザ加工の直接の影響をほとんど受けない。そのため、先鋭部22aは、消耗及び損傷がしにくく、スキッド昇降構造SKAを備えたワーク支持装置92及びレーザ加工装置91は、稼働率が向上する。
【0049】
図6に示されるように、スキッド群2Gに、X軸方向に延びる長手スキッド23を含む場合は、長手スキッド23を昇降スキッド22と同期して昇降させてもよい。
長手スキッド23は、固定スキッド21及び昇降スキッド22の撓みが大きくならないように、Y軸方向の中間の一つ又は複数の位置で互いのスリットを係合させるものである。
そこで、長手スキッド23を下降させた場合でも固定スキッド21とのスリット同士の係合が維持されるように、固定スキッド21は、長手スキッド23と係合するスリットが形成された下端部を下方に延長してスリットの係合が維持される形状にする。
【0050】
第1ワーク支持部材及び第2ワーク支持部材として、固定スキッド21及び昇降スキッド22のスキッドを説明したが、ワーク支持部材はスキッドに限定されず、例えば、ブラシ、ワークWを点支持するピン部材などであってもよい。すなわち、スキッド昇降構造SKは、支持部材昇降構造SKと言い換えることができる。
【0051】
制御装置94による昇降スキッド22の昇降動作は、外部からの手動による指示で行う。また、制御装置94は、予め不図示の記憶部に記憶した加工プログラム及びワーク情報から、次に加工するワークの板厚及び形状、並びに、加工経路を把握して、昇降有無及び昇降タイミングを設定してもよい。
【0052】
スキッド群2Gを構成する第1ワーク支持部材及び第2ワーク支持部材として、固定スキッド21及び昇降スキッド22のスキッドを説明したが、第1ワーク支持部材も昇降スキッドとして昇降可能に構成してもよい。すなわち、制御装置94の制御によって、全てのスキッドを任意枚数のスキッド群として又は個別のスキッドとして、選択的に昇降可能としてもよい。
この場合、制御装置94は、スキッド群2Gに載置されるワークの仕様〔形状,大きさ,曲げ剛性(材質及び板厚)〕及び載置領域などに応じて、スキッド群2Gの中から、ワークと接触する上端位置をパスラインの高さ位置Haに上昇させてワークを直接支持するスキッド群、又は個々のスキッドを適切に選択する。
【符号の説明】
【0053】
1 ワークテーブル
11 サイドブロック
12 底フレーム
13 サイドフレーム
13a スリット
14,141 昇降プレート
142 シャフト支持部
143 モータ支持部
15,15a~15e,1511~1513,1521~1523,1531~1533 エアシリンダ
16 ロッド
17 スキッドホルダ
17a 軸部
18,18M 歯付プーリ
19 歯付ベルト
2G スキッド群
21,211,212 固定スキッド
21a 先鋭部
21b 上端
22,221 昇降スキッド
22a 先鋭部
22b 上端
23 長手スキッド
3 エア供給部
5,511~513,521~523,531~533 電磁開閉弁
6,611~613,621~623,631~633 経路
91,91A レーザ加工装置
92,92A ワーク支持装置
93 レーザ加工ヘッド
93a ノズル
94 制御装置
ARG 領域群
AR11~AR13,AR21~AR23,AR31~AR33 領域
Ha,Hb 高さ位置
LS レーザビーム
M モータ
PL パスライン
P1 ピッチ
SK,SKA,SK11~13,SK21~SK23,SK31~SK33 スキッド昇降構造(支持部材昇降構造)
W,Wa,Wb ワーク
Wa1,Wb1 製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9