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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/12 20060101AFI20240627BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20240627BHJP
   E05F 15/605 20150101ALI20240627BHJP
【FI】
B60J5/12
B60J5/10 Z
E05F15/605
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020200332
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022088081
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岡 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 孝次
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-299232(JP,A)
【文献】実開昭61-101088(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037096(US,A1)
【文献】特開2009-173254(JP,A)
【文献】特開2020-029252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10 ; B60J 5/12
E05F 15/605
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に回転可能に連結されている上側ドアと前記上側ドアに回転可能に連結されており且つ車両内側から車両外側に向かって凹む凹部が形成されている下側ドアとを備えたドアを駆動する駆動装置であって、
前記上側ドアと前記下側ドアとを回転可能に連結する連結部から隔てた位置で前記下側ドアの前記凹部に形成されている空間内に設けられ、前記上側ドア又は前記下側ドアを駆動する駆動力を発生する駆動部と、
前記駆動部から前記連結部まで延在して前記上側ドアと前記下側ドアとに接続され、前記駆動力に基づいて伸縮する軸部を備え、前記軸部を伸ばすことで、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくし、前記軸部を縮めることで、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする調整部と、
を備え
前記駆動部は、前記折れ曲がりの度合いにかかわらず前記空間内に位置し、前記軸部は、前記空間から突出しているときに前記折れ曲がりを可能とする、
駆動装置。
【請求項2】
車両本体に回転可能に連結されている上側ドアと前記上側ドアに回転可能に連結されている下側ドアとを備えたドアを駆動する駆動装置であって、
前記上側ドアと前記下側ドアとを回転可能に連結する連結部から隔てた位置に設けられ、前記上側ドア又は前記下側ドアを駆動する駆動力を発生する駆動部と、
前記駆動力に基づいて前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを変化させる調整部と、
を備え、
前記調整部は、前記上側ドアから前記下側ドアに渡って敷設されているケーブルを備え、
前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくする場合、前記ケーブルを繰り出し、
前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする場合、前記ケーブルを巻き取る駆動装置。
【請求項3】
車両本体に回転可能に連結されている上側ドアと前記上側ドアに回転可能に連結されている下側ドアとを備えたドアを駆動する駆動装置であって、
前記上側ドアと前記下側ドアとを回転可能に連結する連結部から隔てた位置に設けられ、前記上側ドア又は前記下側ドアを駆動する駆動力を発生する駆動部と、
前記駆動力に基づいて前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを変化させる調整部と、
を備え、
前記調整部は、前記上側ドアに接続されている第1リンクと、前記下側ドアに接続されている第2リンクとを備え、
前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくする場合、前記第1リンクと前記第2リンクの成す角度を大きくし、
前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする場合、前記角度を小さくする駆動装置。
【請求項4】
前記連結部は、車幅方向において離れて配置される2つの連結部を含み、
前記駆動部及び前記調整部の少なくとも一方は、前記2つの連結部の間に配置されている請求項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記連結部は、前記上側ドアと前記軸部とを連結するボールジョイント、ピンジョイントまたはユニバーサルジョイントである請求項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上側ドアと上側ドアに回転可能に連結されている下側ドアとを備えているドアを駆動する駆動ユニットが開示されている。特許文献1に開示されている駆動ユニットは、上側ドアに対する下側ドアの角度を変化させるための装置である。当該駆動ユニットは、モータ、減速機、及びアームを備え、下側ドアを回転可能に支持するヒンジも有する。ヒンジは、上側ドアと下側ドアとを連結する連結部である。
【0003】
アームは、一端が上側ドアに固定され、他端が減速機の支持軸に固定されている。アームが支持軸を中心にして回動することにより、上側ドアに対する下側ドアの相対的な角度が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-173254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている駆動ユニットでは、連結部であるヒンジに対して、駆動部であるモータが一体に組み合わされている。この場合、ドアの重量などの仕様によってモータの能力が決定されるが、能力が高いモータほどサイズが大きくなり得るため、モータをヒンジに組み合わせて配置することが難しくなる。その結果、ドアの設計の自由度が制約され得るという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、ドアの設計の自由度を向上させることができる駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る駆動装置の一態様は、車両本体に回転可能に連結されている上側ドアと前記上側ドアに回転可能に連結されており且つ車両内側から車両外側に向かって凹む凹部が形成されている下側ドアとを備えたドアを駆動する駆動装置であって、前記上側ドアと前記下側ドアとを回転可能に連結する連結部から隔てた位置で前記下側ドアの前記凹部に形成されている空間内に設けられ、前記上側ドア又は前記下側ドアを駆動する駆動力を発生する駆動部と、前記駆動部から前記連結部まで延在して前記上側ドアと前記下側ドアとに接続され、前記駆動力に基づいて伸縮する軸部を備え、前記軸部を伸ばすことで、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくし、前記軸部を縮めることで、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする調整部と、を備え、前記駆動部は、前記折れ曲がりの度合いにかかわらず前記空間内に位置し、前記軸部は、前記空間から突出しているときに前記折れ曲がりを可能とする
本発明に係る駆動装置の他の態様は、車両本体に回転可能に連結されている上側ドアと前記上側ドアに回転可能に連結されている下側ドアとを備えたドアを駆動する駆動装置であって、前記上側ドアと前記下側ドアとを回転可能に連結する連結部から隔てた位置に設けられ、前記上側ドア又は前記下側ドアを駆動する駆動力を発生する駆動部と、前記駆動力に基づいて前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを変化させる調整部と、を備え、前記調整部は、前記上側ドアから前記下側ドアに渡って敷設されているケーブルを備え、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくする場合、前記ケーブルを繰り出し、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする場合、前記ケーブルを巻き取る。
本発明に係る駆動装置のさらに他の態様は、車両本体に回転可能に連結されている上側ドアと前記上側ドアに回転可能に連結されている下側ドアとを備えたドアを駆動する駆動装置であって、前記上側ドアと前記下側ドアとを回転可能に連結する連結部から隔てた位置に設けられ、前記上側ドア又は前記下側ドアを駆動する駆動力を発生する駆動部と、前記駆動力に基づいて前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを変化させる調整部と、を備え、前記調整部は、前記上側ドアに接続されている第1リンクと、前記下側ドアに接続されている第2リンクとを備え、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくする場合、前記第1リンクと前記第2リンクの成す角度を大きくし、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする場合、前記角度を小さくする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドアの設計の自由度を向上させることができる駆動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る駆動装置が適用される車両100の後部の一例を示す外観図
図2A】本発明の実施の形態に係る駆動装置10が設けられているドア1の一例を示す拡大図
図2B】本発明の実施の形態に係る駆動装置10が設けられているドア1の一例を示す拡大図
図3】本発明の実施の形態に係る駆動装置10の構成例を示す図
図4A】駆動装置10の動作を説明するための図
図4B】駆動装置10の動作を説明するための図
図5A】駆動装置10の動作を説明するための図
図5B】駆動装置10の動作を説明するための図
図6A】駆動装置10の動作を説明するための図
図6B】駆動装置10の動作を説明するための図
図7A】駆動装置10の動作を説明するための図
図7B】駆動装置10の動作を説明するための図
図8A】駆動装置10の動作を説明するための図
図8B】駆動装置10の動作を説明するための図
図9A】駆動装置10の動作を説明するための図
図9B】駆動装置10の動作を説明するための図
図10A】駆動装置10の動作を説明するための図
図10B】駆動装置10の動作を説明するための図
図11A】駆動装置10の動作を説明するための図
図11B】駆動装置10の動作を説明するための図
図12】本発明の実施の形態に係る駆動装置10の第1変形例を説明するための図
図13】本発明の実施の形態に係る駆動装置10の第2変形例を説明するための図
図14】上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを大きくするときの動作を説明するための図
図15】上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを大きくするときの動作を説明するための図
図16】上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを小さくするときの動作を説明するための図
図17】上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを小さくするときの動作を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態に係る駆動装置が適用される車両100の後部の一例を示す外観図である。車両100は、車両100の後部に形成されている開口部100aを開状態、又は閉状態にするドア1を備えている。
【0012】
開状態は、開口部100aが開放された状態であり、開口部100aを介して、荷物などを車両100に出し入れできる状態である。閉状態は、開口部100aを閉塞した状態である。
【0013】
ドア1は、例えば上側ドア1aと下側ドア1bとを備えている中折れ式のテールゲートである。なおドア1は、車両100のテールゲートに限定されず、例えば跳ね上げ式乗降用ドアなどでもよい。
【0014】
上側ドア1aは、車両本体に、2つのヒンジ2a、2aを介して回転可能に取り付けられている。上側ドア1aには、2つのヒンジ2b、2bを介して、下側ドア1bが回転可能に連結されている。2つのヒンジ2b、2bは、上側ドア1aと下側ドア1bとを連結する連結部の一例である。以下では、2つのヒンジ2a、2aを区別しない場合、単に「ヒンジ2a」と称する。また、以下では、2つのヒンジ2b、2bを区別しない場合、単に「ヒンジ2b」と称する。
【0015】
次に図2及び図3を参照して、本発明の実施の形態に係る駆動装置10の構成例を説明する。図2A及び図2Bは本発明の実施の形態に係る駆動装置10が設けられているドア1の一例を示す拡大図である。図2Aにはドア1の斜視図、図2Bにはドア1の側面図が示されている。図3は本発明の実施の形態に係る駆動装置10の構成例を示す図である。
【0016】
図2Aに示すように、ドア1には、2種類のヒンジ2a、2bと、駆動装置10とが設けられている。2種類のヒンジ2a、2bは、ドア1の左右方向、すなわち車幅方向に離れて配置されている。駆動部11及び調整部60の少なくとも一方は、車幅方向において離れて設けられた2つのヒンジ2bの間に配置されている。
【0017】
なお、ヒンジ2a、及びヒンジ2bの数は2つに限定されず、それぞれ1つ以上であればよい。例えば、ヒンジ2a、及びヒンジ2bの数がそれぞれ1つの場合、ヒンジ2a、及びヒンジ2bは、ドア1の車幅方向の中央部に設けられ、駆動装置10は、ドア1の車幅方向の中央部又は下側ドア1bの左右方向の縁部付近に設けられる。
【0018】
[駆動装置10の構成]
駆動装置10は、駆動部11、アウターケーシング12、ガイド部13、ケーブル14、及びケーブルエンド15を備えている。
【0019】
[駆動部11の構成]
駆動部11は、ケーブル14の巻き取りと繰り出しを行うことによって、下側ドア1bを駆動する駆動力を発生する装置である。上側ドア1aは、PLG(Power Lift Gate)ユニットにより駆動される。
【0020】
駆動部11は、ヒンジ2bから一定距離隔てた位置であって、下側ドア1bの下端部付近、かつ、下側ドア1bの左右方向の中央部付近に設けられている。
【0021】
なお、駆動部11が設けられている位置は、下側ドア1bの左右方向の中央部付近に限定されず、下側ドア1bの左右方向の縁部付近でもよい。ただし、下側ドア1bが、車両内側から車両外側に向かって凹む凹部が形成されているドアの場合、駆動部11を、下側ドア1bの凹部に形成されている空間に設けることが好ましい。
【0022】
このように構成することで、下側ドア1bの凹部を有効利用できるため、駆動部11によって荷室空間が狭くなることを防止できる。
【0023】
駆動部11は、モータと、モータの回転をドラムに伝達するウォームギヤ等の動力伝達部とを備えている。
【0024】
モータが順方向に回転すると、モータの回転運動が、動力伝達部を介してドラムに伝達されることにより、ドラムが順方向に回転する。この場合、ケーブル14がドラムに巻き取られる。
【0025】
一方、モータが逆方向に回転すると、ドラムが逆方向に回転する。この場合、ケーブル14がドラムから繰り出される。
【0026】
[調整部60の構成]
調整部60は、モータが発生する駆動力に基づいて、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを変化させる。具体的には、調整部60は、上述したドラムと、上述した駆動部11と、ケーブル14とを備えている。
【0027】
調整部60は、ドラムの回転により、ケーブル14を巻き取ることによって、ケーブル14を引っ張る引張力を発生する。
【0028】
[ケーブル14の構成]
ケーブル14は、駆動部11で発生した駆動力に基づいて、上側ドア1aと下側ドア1bとを引き合わせる引張力を伝達する。ケーブル14は、例えば、金属素線、樹脂繊維素線などを撚り合わせた可撓性を有するケーブルである。
【0029】
ケーブル14の一端は、駆動部11が備えているドラムに接続されている。ケーブル14の他端は、駆動部11からガイド部13に向かい、そこからケーブルエンド15にまで伸びている。
【0030】
ケーブル14の全体の内、駆動部11からガイド部13までの部分は、ケーブル14を保護するためのアウターケーシング12に覆われている。
【0031】
[ケーブルエンド15の構成]
ケーブルエンド15は、ケーブル14の端部を上側ドア1aに固定するための金属製の部材である。ケーブルエンド15は、例えば上側ドア1aの下端部付近に固定されている。
【0032】
[ガイド部13の構成]
ガイド部13は、ケーブル14を移動可能に支持しながらその案内方向を転換する部材である。
【0033】
図3に示すように、ガイド部13は、例えば図2Aに示されるケーブル14を搬送するガイド13aと、ガイド13aを図2Aに示されるドア1に固定するブラケット13bと、図2Aに示されるケーブル14をガイド13aの外部に引き出し、また、ケーブル14がガイド13a側に引き込まれた場合に、ケーブルエンド15に当たってケーブルエンド15の動きを止めるストッパー13cとを備えている。
【0034】
このように構成されている駆動装置10では、ケーブル14を巻き取ることによって、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを小さくすることができる。
【0035】
また、ケーブル14を繰り出すことによって、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを大きくすることができる。駆動装置10の動作の具体例は後述する。
【0036】
次に図4Aから図11Bを参照して駆動装置10の動作を説明する。図4Aから図11Bは、駆動装置10の動作を説明するための図である。
【0037】
図4A図5A図6A図7A図8A図9A図10A及び図11Aには、ドア1の開閉状態が示され、図4B図5B図6B図7B図8B図9B図10B及び図11Bには、駆動装置10の動作状態が示されている。
【0038】
以下では、まず図4から図7を参照して、ドア1を開くときの駆動装置10の動作を説明する。
【0039】
図4Aに示すようにドア1が全閉状態の場合、図4Bに示すようにケーブルエンド15は、ガイド部13の近くに位置している。
【0040】
全閉状態のドア1を開く場合、上側ドア1aの開動作と連動して、図5Bに示すように、ケーブル14が繰り出される。これにより、上側ドア1aと下側ドア1bとを引き合わせる引張力が弱められる。従って、図5Aに示すように、下側ドア1bが重力によって垂れ下がり、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが大きくなる。
【0041】
さらに上側ドア1aが開かれると、図6Bに示すように、ケーブル14がさらに繰り出される。従って、図6Aに示すように、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが、さらに大きくなる。
【0042】
このように、上側ドア1aの開動作と連動して、ケーブル14が繰り出されることによって、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが大きくなる。これにより、例えばドア1の正面に人、壁などの障害物が存在する場合でも、下側ドア1bが障害物に接触することを防止できる。
【0043】
上側ドア1aが開ききったところで、ケーブル14が巻き取られると、図7Aに示すように、上側ドア1aの端部にある平坦部分に対して下側ドア1bの端部にある平坦部分が押し付けられ、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが小さくなり、上側ドア1aと下側ドア1bとが引き合わされた状態で保持され、ドア1が全開状態となる。なお、ドア1の周囲に存在する壁等から車両までの距離が近い場合、ドア1を全開にできないため、ケーブル14巻き取り量を減らして、上側ドア1aに対して下側ドア1bを折り曲げた状態のままにしてもよい。
【0044】
次に、図8から図11を参照してドア1を閉じるときの駆動装置10の動作を説明する。
【0045】
図8Aに示すようにドア1が全開状態の場合、ケーブルエンド15は、ガイド部13の近くに位置している。
【0046】
全開状態のドア1を閉じる場合、図9Bに示すように、ケーブル14が繰り出されることによって、図9Aに示すように、繰り出されたケーブル14の量に従って下側ドア1bが重力によって垂れ下がり、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが大きくなる。
【0047】
ケーブル14が一定量繰り出された後、図10Aに示すように上側ドア1aの閉動作が開始されると、図10Bに示すように、上側ドア1aの閉動作に連動して、ケーブル14が巻き取られる。
【0048】
これにより、上側ドア1aと下側ドア1bとを引き合わせる引張力が強められる。そして、上側ドア1aの端部にある平坦部分に対して下側ドア1bの端部にある平坦部分が押し付けられた結果、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが小さくなる。このように、上側ドア1aの閉動作に連動して、ケーブル14が巻き取られることによって、下側ドア1bの下端部が車両本体に接触することを防止できる。
【0049】
上側ドア1aの閉動作とケーブル14の巻き取りが継続されると、図11Aに示すように、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが最も小さくなった状態で、ドア1が全閉状態となる。
【0050】
以上に説明したように、本実施の形態に係る駆動装置10では、連結部であるヒンジ2bから一定距離隔てた位置に、駆動部11が設けられている。そして、調整部60には、駆動部11bのモータで発生した駆動力を利用して、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを変化させるためのケーブル14が用いられている。
【0051】
従って、下側ドア1bが、車両内側から車両外側に向かって凹む凹部が形成されているドアである場合、駆動部11を、下側ドア1bの凹部に形成されている空間に設けることが可能になる。これにより、下側ドア1bの凹部を有効利用できるため、駆動部11によって荷室空間が狭くなることを防止できる。
【0052】
従来の駆動ユニットでは、中折れ式のテールゲートの下側ドアを駆動するため、ヒンジにモータが組み合わされている。この場合、ドアの重量などの仕様によってモータの能力が決定されるが、能力が高いモータほどサイズが大きくなり得るため、モータをヒンジに組み合わせて配置することが難しくなる。その結果、ドアの設計の自由度が制約され得る。
【0053】
これに対して、本実施の形態に係る駆動装置10を、中折れ式の下側ドア1bの任意の場所に設置することによって、ドア1の設計の自由度を向上させることができる。
【0054】
以下では、図12から図17を参照して、本発明の実施の形態に係る駆動装置10の変形例について説明する。
【0055】
図12は本発明の実施の形態に係る駆動装置10の第1変形例を説明するための図である。第1変形例に係る駆動装置10は、モータの回転運動を直線運動に変換することによってドア1を駆動する装置である。
【0056】
第1変形例に係る駆動装置10は、駆動部30と、駆動部30に収容されて駆動部30に対して進退移動する軸部31とを有する。第1変形例に係る駆動装置10は、駆動部30に対して軸部31が進退移動することで、上側ドア1a又は下側ドア1bを駆動する駆動力を発生する。
【0057】
駆動部30の下端部は、第1接続部30aによって、下側ドア1bの下端部付近に接続されている。第1接続部30aは、ボールジョイント、ピンジョイント、ユニバーサルジョイントなどで構成されている。
【0058】
軸部31の上端部は、第2接続部30bによって、上側ドア1aの下端部付近に接続されている。第2接続部30bも、ボールジョイント、ピンジョイント、ユニバーサルジョイントなどで構成されている。第2接続部30bは、上側ドア1aと軸部31とを連結する連結部の一例である。
【0059】
図12に示すように、駆動部30は、第2接続部30bから一定距離隔てた位置に設けられている。そして、駆動部30は、モータと、モータの回転を軸部31に伝達する遊星ギア、スクリューナット等の動力伝達部とを備えている。
【0060】
[調整部60Aの構成]
図12に示される調整部60Aは、モータが発生する駆動力に基づいて、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを大きくし、又は上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを小さくする。具体的には、調整部60Aは、上述した動力伝達部と、軸部31とを備えている。
【0061】
調整部60Aは、動力伝達部によって、モータの回転運動が直線運動に変換されることによって、軸部31を伸縮させる。
【0062】
駆動部30のモータが順方向に回転すると、モータの回転運動が、動力伝達部によって直線運動に変換されて、軸部31に伝達される。これにより、軸部31が前進する。前進は、軸部31が駆動部30の内部から駆動部30の外部に向かって移動することである。前進は、軸部31が、駆動部30の内部から駆動部30の外部に向かって伸びることでもある。
【0063】
軸部31が前進することによって、下側ドア1bが垂れ下がるので、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが大きくなる。
【0064】
一方、駆動部30のモータが逆方向に回転すると、軸部31が後退する。後退は、軸部31が駆動部30の外部から駆動部30の内部に向かって移動することである。後退は、軸部31が、駆動部30の外部から駆動部30の内部に向かって縮むことでもある。
【0065】
軸部31が後退することによって、上側ドア1aの端部にある平坦部分に対して下側ドア1bの端部にある平坦部分が押し付けられた結果、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが小さくなる。
【0066】
以上に説明したように、第1変形例に係る駆動装置10では、連結部である第2接続部30bから一定距離隔てた位置に、駆動部30が設けられている。そして、調整部60Aには、駆動部30のモータで発生した駆動力を利用して、上側ドア1aと下側ドア1bに接続されて、伸縮する軸部31が用いられている。
【0067】
従って、下側ドア1bが、前述したような凹部が形成されているドアである場合、駆動部30を、下側ドア1bの凹部に形成されている空間に設けることが可能になる。これにより、下側ドア1bの凹部を有効利用できるため、駆動部30によって荷室空間が狭くなることを防止できる。その結果、第1変形例に係る駆動装置10を、中折れ式のドア1に適用することによって、ドア1の設計の自由度を向上させることができる。
【0068】
図13は本発明の実施の形態に係る駆動装置10の第2変形例を説明するための図である。第2変形例に係る駆動装置10は、モータの回転力が伝達されるリンク機構を利用してドア1を駆動する装置である。
【0069】
第2変形例に係る駆動装置10は、駆動部40と、上側ドア1aに接続されている第1リンク41と、下側ドア1bに接続されている第2リンク42とを備えている。
【0070】
[駆動部40の構成]
駆動部40は、下側ドア1bに設けられており、第2リンク42を回転させることにより、下側ドア1bを駆動する駆動力を発生する装置である。駆動部40は、モータと、第2リンク42に接続される回転軸とを備えている。
【0071】
駆動部40の回転軸には、第2リンク42の一端が接続されている。第2リンク42の他端には、第1リンク41の一端が回転可能に接続されている。第1リンク41の他端は、上側ドア1aに回転可能に接続されている。
【0072】
上側ドア1aには、ヒンジ50を介して、下側ドア1bが回転可能に連結されている。そして、駆動部40は、ヒンジ50から一定距離隔てた位置に設けられている。
【0073】
ヒンジ50は、ボールジョイント、ピンジョイント、ユニバーサルジョイントなどで構成されている。
【0074】
[調整部60Bの構成]
図13に示される調整部60Bは、モータが発生する駆動力に基づいて、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを大きくし、又は、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを小さくする。具体的には、調整部60Bは、上述した駆動部40の回転軸と、第1リンク41と、第2リンク42とを備えている。
【0075】
調整部60Bは、第1リンク41及び第2リンク42によって、駆動部40の回転軸の回転運動が直線運動に変換されることによって、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを変化させる。
【0076】
次に図14から図17を参照して、第2変形例に係る駆動装置10の動作を説明する。以下では、図14及び図15を参照して、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを大きくするときの動作を説明し、その後、図16及び図17を参照して、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを小さくするときの動作を説明する。
【0077】
図14及び図15は、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを大きくするときの動作を説明するための図である。
【0078】
図14に示すように、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが小さい状態で、駆動部40が備えているモータが順方向に回転すると、モータの回転運動が回転軸を介して第2リンク42に伝達される。これにより第2リンク42は、回転軸を中心に、第1回転方向42aに回転する。
【0079】
これにより、図15に示すように、第1リンク41と第2リンク42との成す角度が大きくなり、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いも大きくなる。
【0080】
図16及び図17は、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを小さくするときの動作を説明するための図である。
【0081】
図16に示すように、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いが大きい状態で、駆動部40が備えているモータが逆方向に回転すると、モータの回転運動が回転軸を介して第2リンク42に伝達される。これにより第2リンク42は、回転軸を中心に、第1回転方向42aとは反対の第2回転方向42bに回転する。
【0082】
第2リンク42が第2回転方向42bに回転し続けると、図17に示すように、第1リンク41と第2リンク42との成す角度が小さくなり、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いも小さくなる。
【0083】
以上に説明したように、第2変形例に係る駆動装置10では、ヒンジ50a、50bから一定距離隔てた位置に、駆動部40が設けられている。そして、調整部60Bには、駆動部40のモータで発生した駆動力を利用して、上側ドア1aに対する下側ドア1bの折れ曲がりの度合いを変化させるための、第1リンク41及び第2リンク42が用いられている。
【0084】
従って、下側ドア1bの重量が大きくなった場合でも、第1リンク41及び第2リンク42の長さを調整することにより、駆動部40で発生するトルクを容易に変えることができるため、モータのサイズを大きくすることなく、下側ドア1bを容易に駆動することができる。その結果、第2変形例に係る駆動装置10を、中折れ式のドア1に適用することによって、ドア1の設計の自由度を向上させることができる。
【0085】
なお、例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0086】
(1)駆動装置は、上側ドアと前記上側ドアに回転可能に連結されている下側ドアとを備えたドアを駆動する駆動装置であって、前記上側ドアと前記下側ドアとを回転可能に連結する連結部から隔てた位置に設けられ、前記上側ドア又は前記下側ドアを駆動する駆動力を発生する駆動部と、前記駆動力に基づいて前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを変化させる調整部と、を備える。
【0087】
(2)前記調整部は、前記上側ドアから前記下側ドアに渡って敷設されているケーブルを備え、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくする場合、前記ケーブルを繰り出し、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする場合、前記ケーブルを巻き取る。
【0088】
(3)前記調整部は、前記上側ドアと前記下側ドアとに接続されて伸縮する軸部を備え、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくする場合、前記軸部を伸ばし、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする場合、前記軸部を縮める。
【0089】
(4)前記調整部は、前記上側ドアに接続されている第1リンクと、前記下側ドアに接続されている第2リンクとを備え、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを大きくする場合、前記第1リンクと前記第2リンクの成す角度を大きくし、前記上側ドアに対する前記下側ドアの折れ曲がりの度合いを小さくする場合、前記角度を小さくする。
【0090】
(5)連結部は、車幅方向において離れて配置される2つの連結部を含み、前記駆動部及び前記調整部の少なくとも一方は、前記2つの連結部の間に配置されている。
【0091】
(6)前記下側ドアは、車両内側から車両外側に向かって凹む凹部が形成されているドアであり、前記駆動部及び前記調整部の少なくとも一方は、前記凹部に形成されている空間に設けられている。
【0092】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等などの意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0093】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る駆動装置は、ドアの設計の自由度を向上させることができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0095】
1 ドア
1a 上側ドア
1b 下側ドア
2a ヒンジ
2a ヒンジ
2a ヒンジ
2b ヒンジ
2b ヒンジ
2b ヒンジ
10 駆動装置
11 駆動部
12 アウターケーシング
13 ガイド部
13a ガイド
13b ブラケット
13c ストッパー
14 ケーブル
15 ケーブルエンド
30 駆動部
30a 第1接続部
30b 第2接続部
31 軸部
40 駆動部
41 第1リンク
42 第2リンク
42a 第1回転方向
42b 第2回転方向
50a ヒンジ
50b ヒンジ
60 調整部
60A 調整部
60B 調整部
100 車両
100a 開口部
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17