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特許7510867スリッター清掃装置およびスリッター装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】スリッター清掃装置およびスリッター装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/18 20060101AFI20240627BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20240627BHJP
   B26D 1/24 20060101ALI20240627BHJP
   B08B 5/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B26D7/18 E
H01M4/04 Z
B26D1/24 E
B08B5/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020211696
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098263
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】390000804
【氏名又は名称】白山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】安尾 貴充
(72)【発明者】
【氏名】川崎 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊樹
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-033098(JP,A)
【文献】実開平03-036796(JP,U)
【文献】特開2019-188454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00-1/24、7/00-11/00
H01M 4/04
B08B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転刃が電極用原反を切断する際に発生する塵を吸引する吸引ノズルと、
前記吸引ノズルによって吸引された前記塵を集塵機へ誘導する誘導装置とを備え、
前記吸引ノズルは、
前記回転刃の刃先の一部に対向可能であって、切断による前記塵を吸引する第1吸引領域と、
前記電極用原反の切断後の電極搬送経路に対向可能であって、切断による前記塵を吸引する第2吸引領域とを有
前記吸引ノズルは、前記電極搬送経路に沿って延在し、前記第1吸引領域および前記第2吸引領域を形成する一対のガイドプレートと、前記一対のガイドプレートの底部の間を部分的に塞ぐ底面とを有し、
前記誘導装置は、前記集塵機に接続されたチャンバを有し、
前記一対のガイドプレートの前記電極搬送経路の下流側の部分は、前記第1吸引領域及び前記第2吸引領域から吸引された前記塵が前記電極搬送経路の下流側に流れて前記チャンバ内に吸い込まれるよう前記チャンバに接続されている、スリッター清掃装置。
【請求項2】
請求項に記載のスリッター清掃装置において、
前記吸引ノズルは複数個設けられ、
前記チャンバは、切断後の前記電極用原反の幅方向に沿って延在する1つのチャンバであり、
複数の前記吸引ノズルは前記幅方向に離間して前記1つのチャンバに接続されている、
スリッター清掃装置。
【請求項3】
回転刃が電極用原反を切断する際に発生する塵を吸引する吸引ノズルと、前記吸引ノズルによって吸引された前記塵を集塵機へ誘導する誘導装置とを備えるスリッター清掃装置と、
前記回転刃とを備え、
前記吸引ノズルは、
前記回転刃の刃先の一部に対向可能であって、切断による前記塵を吸引する第1吸引領域と、
前記電極用原反の切断後の電極搬送経路に対向可能であって、切断による前記塵を吸引する第2吸引領域とを有し、
前記吸引ノズルは、前記電極搬送経路に沿って延在し、前記第1吸引領域および前記第2吸引領域を形成する一対のガイドプレートを有し、
前記誘導装置は、前記集塵機に接続されたチャンバを有し、
前記一対のガイドプレートの前記電極搬送経路の下流側の部分は、前記チャンバに接続され、
前記回転刃は前記一対のガイドプレートの間に、前記一対のガイドプレートに対して平行に配置され、前記一対のガイドプレートは前記回転刃の回転軸方向から見たときに前記回転刃の前記刃先の一部と重なる位置に配置される、スリッター装置。
【請求項4】
請求項に記載のスリッター装置において、
前記一対のガイドプレートの前記電極搬送経路の上流側の部分は、前記回転刃の回転軸方向から見たときに前記電極搬送経路の下流側から前記回転刃による前記電極用原反の切断位置まで延在する、スリッター装置。
【請求項5】
請求項またはに記載のスリッター装置において、
切断後の前記電極用原反を案内するガイドローラを備え、
前記チャンバは、前記回転刃の回転軸方向から見たときに、前記回転刃と前記ガイドローラの間において切断後の前記電極用原反と交差する方向に延在する部分と、前記ガイドローラが切断後の前記電極用原反と接する位置とは反対側において前記ガイドローラに対向する部分とを含む、略L字形状の断面を有する、スリッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリッター清掃装置およびスリッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極用原反を切断するスリッター装置において、切断された電極に付着している破片を除去する電極清掃部と、切断する刃物に付着した破片を除去する刃清掃部とを備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-33098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スリッター装置によって電極用原反を切断する際には、金属箔に塗布された活物質の粒子が分離することがある。電極から分離した活物質粒子は飛散して周囲を汚染してしまう可能性がある。しかし、上記特許文献1に記載の装置では切断時に分離した活物質粒子を十分に収集できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、スリッター清掃装置は、回転刃が電極用原反を切断する際に発生する塵を吸引する吸引ノズルと、前記吸引ノズルによって吸引された前記塵を集塵機へ誘導する誘導装置とを備え、前記吸引ノズルは、前記回転刃の刃先の一部に対向可能であって、切断による前記塵を吸引する第1吸引領域と、前記電極用原反の切断後の電極搬送経路に対向可能であって、切断による前記塵を吸引する第2吸引領域とを有し、前記吸引ノズルは、前記電極搬送経路に沿って延在し、前記第1吸引領域および前記第2吸引領域を形成する一対のガイドプレートと、前記一対のガイドプレートの底部の間を部分的に塞ぐ底面とを有し、前記誘導装置は、前記集塵機に接続されたチャンバを有し、前記一対のガイドプレートの前記電極搬送経路の下流側の部分は、前記第1吸引領域及び前記第2吸引領域から吸引された前記塵が前記電極搬送経路の下流側に流れて前記チャンバ内に吸い込まれるよう前記チャンバに接続されている
本発明の第2の態様によると、スリッター装置は、第1の態様によるスリッター清掃装置と、前記回転刃とを備え、前記回転刃は前記一対のガイドプレートの間に、前記一対のガイドプレートに対して平行に配置され、前記一対のガイドプレートは前記回転刃の回転軸方向から見たときに前記回転刃の前記刃先の一部と重なる位置に配置される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電極用原反を切断した際に発生する塵を効果的に吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態によるスリッター清掃装置を備えるスリッター装置の概念図である。
図2図2は、図1に示すスリッター装置を上方から見た図である。
図3図3は、電極用原反を切断するスリッター装置の回転刃を示す図である。
図4図4(a)~(c)は、スリッター清掃装置の吸引ノズルおよびチャンバの上面図、正面図および側面図である。
図5図5は、吸引ノズルの斜視図である。
図6図6は、スリッター清掃装置の吸引ノズルとスリッター装置の回転刃との位置関係を説明する図である。
図7図7(a)~(c)は、第2の実施の形態によるスリッター清掃装置の吸引ノズルおよびチャンバの上面図、正面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
-第1の実施の形態-
本発明の第1の実施の形態によるスリッター清掃装置およびスリッター清掃装置を備えるスリッター装置について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、第1の実施の形態によるスリッター清掃装置10を備えるスリッター装置1の概念図である。図2は、図1に示すスリッター装置1を上方から見た図である。図1図2に示すように、スリッター装置1は、電極用原反2を切断する上刃(回転刃)3と下刃(回転刃)4、切断後の帯状の電極21を案内するガイドローラ5,6、および電極用原反2を切断する際に発生する塵や破片を収集するスリッター清掃装置10を備えている。なお、以降の説明においては、電極用原反2を切断する際に発生する塵や破片をまとめて塵と呼ぶ。
【0010】
図3に示すように、スリッター装置1は、電極用原反2の幅方向に離間して配置された複数の上刃3と複数の下刃4とを備えている。複数の上刃3はそれぞれ円板状に形成され、上刃回転軸31回りに回転駆動するように構成されている。複数の下刃4も同様に、それぞれ円板状に形成され、下刃回転軸41回りに回転駆動するように構成されている。電極用原反2は図3に矢印で示す搬送方向に送られ、上刃3と下刃4は電極用原反2を間に挟み込み、上刃3と下刃4のせん断力によって電極用原反2をせん断する。これにより、電極用原反2は複数の帯状の電極21に分離される。上刃3と下刃4によって切断された複数の帯状の電極21は、ガイドローラ5またはガイドローダ6によってスリッター装置1の上方または下方へと案内され、次の処理へと送られる。
【0011】
スリッター清掃装置10は、電極用原反2を切断する際に発生する塵を収集し、ホース11を介して集塵機12に回収するように構成されている。スリッター清掃装置10は、吸引ノズル13、および吸引ノズル13が取り付けられるとともに集塵機12に接続されたチャンバ14から構成される。集塵機12は不図示のフィルタおよびファンを有している。吸引ノズル13は、電極用原反2の切断後の上刃3の直近、および切断直後の電極21が搬送される搬送経路で塵を吸引する。吸引ノズル13で吸引された塵は、チャンバ14およびホース11によって集塵機12まで誘導されて回収される。以下に、スリッター清掃装置10の構成について詳細に説明する。
【0012】
図4(a)~(c)は、スリッター清掃装置10の吸引ノズル13およびチャンバ14の上面図、正面図および側面図であり、図5は、吸引ノズル13の斜視図である。なお、図4(b)の正面図は、吸引ノズル31およびチャンバ14を電極21の搬送方向の上流側から見た場合の図である。電極21の搬送方向の上流側に複数の、ここでは4個の吸引ノズル13が配置され、下流側にチャンバ14が配置される。吸引ノズル13は、電極21の搬送方向の最も下流側の部分でチャンバ14に取り付けられている。各吸引ノズル13は、上刃3に対向可能に配置された第1吸引領域131と、電極21が搬送される搬送経路に対向可能に配置された第2吸引領域132とを有する。複数の吸引ノズル13の第1吸引領域131および第2吸引領域132から吸引された塵は、チャンバ14に吸い込まれる。
【0013】
チャンバ14は電極用原反2の幅と同程度の幅を有する中空の金属製の部材であり、図4(c)の側面図に示すように上刃3の回転軸31方向から見たときに、上刃3とガイドローラ5の間において切断後の電極21と交差する方向に延在する部分と、ガイドローラ5が切断後の電極21と接する位置とは反対側においてガイドローラ5に対向する部分とを含む、略L字形状の断面を有している。チャンバ14の上面には2つの接続開口部17が形成されており、それぞれの接続開口部17に可撓性のホース11(図1参照)が連結される。
【0014】
チャンバ14は、上刃3とガイドローラ5の間の空間からガイドローラ5の上方の空間にわたって配置される。このようにチャンバ14を配置することにより、スリッター装置1の隙間を活用してチャンバ14の内部空間を大きく確保することができる。チャンバ14の内部空間を大きくすることにより、負圧を効率的に発生させることができる。チャンバ14に吸い込まれた塵は、ホース11を介して集塵機12(図1参照)まで誘導されて回収される。チャンバ14は、吸引ノズル13によって吸引された塵を集塵機12へと誘導する誘導装置を構成する。なお、ホース11を省略し、チャンバ14を直接、集塵機12に接続してもよい。
【0015】
各吸引ノズル13は、電極21の搬送経路に沿って延在し、電極21の幅方向に離間した一対のガイドプレート133,134によって構成される。ガイドプレート133,134はそれぞれ平板状の部材であり、電極21が搬送される搬送経路の下流側から上流側に向かって先細となるように形成されている。
【0016】
吸引ノズル13を正面から見た時の右側に配置されるガイドプレート133は、図5に示すように、電極21の搬送経路に沿って傾斜した直線状の第1傾斜部1331と曲線状の第2傾斜部1332、先端部1333、底部1334、および電極2の搬送経路に略直交する方向に延在する取付け部1335を有している。第2傾斜部1332は、第1傾斜部1331よりも急傾斜に形成されている。曲線状の第2傾斜部1332は、例えば上刃3の半径を曲率半径とする円弧形状とすることができる。ガイドプレート133は、取付け部1335に設けられた穴1336を利用して、不図示のねじによりチャンバ14に固定される。
【0017】
また、吸引ノズル13を正面から見た時の左側に配置されるガイドプレート134は、右側のガイドプレート133と同様に、電極21の搬送経路に沿って傾斜した直線状の第1傾斜部1341と曲線状の第2傾斜部1342、先端部1343、底部1344、および電極21の搬送経路に略直交する方向に延在する取付け部1345を有している。第2傾斜部1342は、第1傾斜部1341よりも急傾斜に形成されている。曲線状の第2傾斜部1342は、例えば上刃3の半径を曲率半径とする円弧形状とすることができる。ガイドプレート134は、取付け部1345に設けられた穴1346を利用して、不図示のねじによりチャンバ14に固定される。
【0018】
一対のガイドプレート133,134は、図5に示すように、電極21の幅方向に離間している。ガイドプレート133の第1傾斜部1331および第2傾斜部1332と、ガイドプレート132の第1傾斜部1341および第2傾斜部1342との間に挟まれた領域が、第1吸引領域131を構成する。ガイドプレート133の底部1334とガイドプレート134の底部1344との間に挟まれた領域が、第2吸引領域132を構成する。なお、ガイドプレート133の第1傾斜部と、ガイドプレート132の第1傾斜部1341との間は、部分的にまたは全体が上面135によって塞がれている。また、ガイドプレート133の底部1334とガイドプレート134の底部1344との間は、部分的に底面136によって塞がれている。上面135および底面136のサイズは、上刃3との干渉を避けつつ、吸引ノズル13による吸引圧力と速度を確保するように適切に設定される。
【0019】
図6に、スリッター清掃装置10の吸引ノズル13とスリッター装置1の上刃3との位置関係を説明する図を示す。図6の矢印は、スリッター清掃装置10によって誘導される空気の流れを概略的に示している。なお、図6は、吸引ノズル13と上刃3を電極21の搬送経路の右からから見た図を示しており、吸引ノズル13の一対のガイドプレート133,134のうち、右側のガイドプレート133のみが示されている。
【0020】
平板状のガイドプレート133、134は、円板状の上刃3に対して平行となるように配置される。また、吸引ノズル13は、上刃3の回転軸31方向から見たときに、上刃3の刃先の一部と重なるように配置される。具体的には、ガイドプレート133の第1傾斜部1331および第2傾斜部1332と、ガイドプレート132の第1傾斜部1341および第2傾斜部1342との間に形成された第1吸引領域131に、上刃3の刃先の一部が挿入される。すなわち、一対のガイドプレート133,134で上刃3の刃先の一部を挟むように配置される。
【0021】
ガイドプレート133の先端部1333とガイドプレート134の先端部1343は、上刃3の回転軸31方向から見たときに上刃3による電極用原反2の切断位置まで延在する位置に、もしくは切断位置よりも上流側まで到達する位置に配置される。ここで、切断位置とは、上刃3と下刃4によって電極用原反2を切断する位置であり、上刃3と下刃4が接する位置である。図6の点線の円は、切断位置のおおよその位置を示している。
【0022】
このように配置することにより、電極用原反2を切断した直後に上刃3に付着したり、飛散したりする塵をできる限り漏らさず吸引ノズル13の第1吸引領域131から吸引することができる。また、ガイドプレート133の底部1334とガイドプレート134の底部1344との間に形成された第2吸引領域132は電極用原反2の切断後の搬送経路に沿った電極搬送経路に対向するように配置されており、電極用原反2を切断して分離された電極21の上に載った塵や電極21付近の塵を吸引することができる。第1吸引領域131および第2吸引領域132から吸引された塵は、図6に矢印で示すように誘導されていく。
【0023】
吸引ノズル13の開口幅および開口高さは、塵を効率的に吸引できるようにスリッター装置1の上刃3の大きさに合わせて設定される。ここで、吸引ノズル13の開口幅は一対のガイドプレート133,134の電極21の幅方向における間隔であり、開口高さは、ガイドプレート133,134の最も下流側の高さ、すなわち最大の高さである。例えば、上刃3の厚さが3mm、直径が130mmの場合、吸引ノズル13の開口幅を30mm、開口高さを60mmとする。サイズの異なるガイドプレート133,134を取り付けることで、例えば、開口幅を0~50mm、開口高さを0~80mmの間で調整可能である。なお、チャンバ14の横幅は、電極用原反2の幅と同程度であり、例えば約600mmである。チャンバ14の接続開口部17に取り付けられるホース11の直径は、例えば100mmである。
【0024】
上述したように、ガイドプレート133,134はそれぞれ電極21が搬送される搬送経路の下流側から上流側に向かって先細となるように形成されている。したがって、一対のガイドプレート133,134によって挟まれる空間の断面積は、搬送経路の下流側から上流側に向かって徐々に小さくなる。すなわち、吸引ノズル13の第1吸引領域131および第2吸引領域132から吸引された塵を含む空気を集塵機12へと誘導する誘導経路の断面積は、吸引ノズル13の先端から徐々に大きくなり、チャンバ14へ進入すると一気に増大する。このように構成することにより、誘導経路内部、すなわち吸引ノズル13とチャンバ14内部の圧力損失を大幅に減らし、風量を増加させることができる。
【0025】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)スリッター清掃装置10は、上刃3と下刃4が電極用原反2を切断する際に発生する塵を吸引する吸引ノズル13と、吸引ノズル13によって吸引された塵を集塵機12へ誘導するチャンバ14とを備える。吸引ノズル13は、上刃3の刃先の一部に対向可能であって、切断による塵を吸引する第1吸引領域131と、電極用原反2の切断後の電極搬送経路に対向可能であって、切断による塵を吸引する第2吸引領域132とを有する。これにより、電極用原反2を切断した際に発生する塵を効果的に吸引することができ、切断後の電極21や周囲の環境が塵によって汚染されることを抑制できる。その結果、高品質な電極21を得ることができる。
(2)吸引ノズル13は、電極21の搬送経路に沿って延在し、第1吸引領域131および第2吸引領域132を形成する一対のガイドプレート133,134を有する。電極21の搬送経路に沿って延在させることにより、円板状の上刃3に対して平行となるように配置されるので、上刃3の回転方向に気流が形成され、吸引ノズル13による吸引力を増大させることができる。
(3)誘導装置は、集塵機12に接続されたチャンバ14を有し、一対のガイドプレート133,134の電極搬送経路の下流側の部分は、チャンバ14に接続されている。誘導装置としてチャンバ14を利用することで、負圧を発生させて吸引力を増大させることができる。
(4)吸引ノズル13は複数個設けられ、チャンバ14は、電極21の幅方向に沿って延在する1つのチャンバであり、複数の吸引ノズル13は電極21の幅方向に離間して1つのチャンバ14に接続されている。これにより、負圧を良好に発生させることができるとともに、複数の吸引ノズル13に対して均一に負圧を発生させることができる。
(5)スリッター装置1は、スリッター清掃装置10と、回転刃(上刃3)とを備える。上刃3は一対のガイドプレート133,134の間に、一対のガイドプレート133,134に対して平行に配置され、一対のガイドプレート133,134は回転刃の回転軸方向から見たときに上刃3の刃先の一部と重なる位置に配置される。これにより、切断の際に上刃3に付着した塵を極力、漏らさず吸引ノズル13によって吸引することができる。
(6)一対のガイドプレート133,134の電極搬送経路の上流側の部分は、上刃の回転軸31方向から見たときに電極搬送経路の下流側から上刃3による電極用原反2の切断位置まで延在する。これにより、電極用原反2の切断直後に塵を吸引することができる。
(7)スリッター装置1は、切断後の電極用原反、すなわち帯状の電極21を案内するガイドローラ5を備える。チャンバ14は上刃3の回転軸31方向から見たときに、上刃3とガイドローラ5の間において切断後の電極用原反と交差する方向に延在する部分と、ガイドローラ5が切断後の電極用原反と接する位置とは反対側においてガイドローラ5に対向する部分とを含む、略L字形状の断面を有する。これにより、チャンバ14の内部空間を大きくして負圧を良好に発生させることができる。
【0026】
-第2の実施の形態-
図7(a)~(c)を用いて、本発明の第2の実施の形態によるスリッター清掃装置について説明する。第2の実施の形態におけるスリッター清掃装置の基本的な構成および配置は、上述した第1の実施の形態と同様である。以下では、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0027】
図7(a)~(c)は、本発明の第2の実施の形態によるスリッター清掃装置100の吸引ノズル300およびチャンバ400の上面図、正面図および断面図を示す。図7(b)の正面図は、吸引ノズル300およびチャンバ400を電極21の搬送方向の上流側から見た場合の図である。図7(c)の断面図は、図7(a)のA-A断面図である。
【0028】
吸引ノズル130は、3つの吸引ノズル部310,320,330を備えている。これらの吸引ノズル部310,320,330は、電極21の搬送経路の最も下流側でチャンバ400に取り付けられ、チャンバ400の幅方向に所定の間隔を空けて並んで配置されている。吸引ノズル部310は、チャンバ400の幅方向に関して最も左側に配置され、吸引ノズル部330はチャンバ400の幅方向に関して最も右側に配置され、吸引ノズル部320は吸引ノズル部310と吸引ノズル部320の間に配置される。
【0029】
吸引ノズル部310,320,330は、それぞれ中空のボックス状の部材であり、電極21の搬送経路の下流側から上流側に向かって先細となるように形成されている。最も左側の吸引ノズル部310は、図7(c)に示すように吸引ノズル部320に対向する面に開放部311が設けられている。中間の吸引ノズル部320は、図示は省略するが、吸引ノズル部310に対向する面および吸引ノズル部330に対向する面に、それぞれ上記開放部311と同様の開放部が設けられている。最も右側の吸引ノズル部330は、中間の吸引ノズル部320に対向する面に、上記開放部311と同様の不図示の開放部が設けられている。
【0030】
吸引ノズル部310と吸引ノズル部320との間の隙間、および吸引ノズル部320と吸引ノズル部330との間の隙間に、それぞれスリッター装置1の上刃3が挿入される。吸引ノズル部310と吸引ノズル部320との間の隙間315のうち、上側の部分が上刃3に対向する第1吸引領域316を構成し、下側の部分が電極21が搬送される搬送経路に対向する第2吸引領域317を構成する。また、吸引ノズル部320と吸引ノズル部330との間の隙間325のうち、上側の部分が上刃3に対向する第1吸引領域316を構成し、下側の部分が電極21が搬送される搬送経路に対向する第2吸引領域317を構成する。
【0031】
電極用原反2を切断した直後に上刃3に付着したり、飛散したりする塵は、吸引ノズル300の第1吸引領域316から吸引され、吸引ノズル部310,320,330に形成された開放部311から吸引ノズル部310,320,330内に進入し、チャンバ400に誘導されて集塵機12に収集される。また、電極用原反2を切断して分離された電極21の上に載った塵は、吸引ノズル300の第2吸引領域317から吸引され、吸引ノズル部310,320,330に形成された開放部311から吸引ノズル部310,320,330内に進入し、チャンバ400に誘導されて集塵機12に収集される。
【0032】
上述した第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様に、電極用原反2を切断した際に発生する塵を効率的に吸引することができ、切断後の電極21や周囲の環境が塵によって汚染されることを抑制できる。その結果、高品質な電極21を得ることができる。
【0033】
-変形例-
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0034】
上述した第1の実施の形態では、吸引ノズル13を一対のガイドプレート133,134から構成したが、吸引ノズル13の構成はこれには限定されない。また、吸引ノズル13を構成するガイドプレート133,134が第1傾斜部1331,1341と第2傾斜部1332,1342を有するように形成したが、ガイドプレート133,134の形状はこれには限定されない。例えば、第1傾斜部1331,1341と第2傾斜部1332,1342のいずれかを省略してもよい。また、第2傾斜部1332,1342を曲線状の代わりに直線状に形成してもよい。第1傾斜部1331と第1傾斜部1341との間の領域の全体あるいは一部を閉鎖してもよい。
【0035】
上述した第1の実施の形態では、ガイドプレート133,134は、取付け部1335,1345をねじで固定することによりチャンバ14に取り付けられたが、チャンバ14への取り付け方法はこれには限定されない。例えば、溶接によりガイドプレート133,134をチャンバ14に固定してもよい。また、ガイドプレート133,134が樹脂材で構成されている場合などは、接着によりチャンバ14に固定してもよい。なお、ねじを用いてガイドプレート133,134を取り外し可能に構成することにより、ガイドプレート133,134を取り外して清掃したり、サイズの異なるガイドプレート133,134に取り換えたりすることができる。
【0036】
上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態では、上刃3の刃先の一部が第1吸引領域131,316に挿入されるように構成したが、上刃3と第1吸引領域131,316との位置関係はこれには限定されない。例えば、上刃3の刃先の一部が第1吸引領域131,316と対向するように配置されれば、上刃3の刃先の一部が第1吸引領域131,316に挿入されなくてもよい。また、ガイドプレート133の先端部1333とガイドプレート134の先端部1343は、上刃3の回転軸31方向から見たときに上刃3による電極用原反2の切断位置と重ならない位置、すなわち切断位置よりも下流側に配置されるようにしてもよい。
【0037】
上述した第1の実施の形態では4個の吸引ノズル13を備える例を示し、第2の実施の形態では吸引ノズル130が3個の吸引ノズル部310,320,330を有する例を示した。しかし、吸引ノズル13および吸引ノズル部310,320,330の数はこれらには限定されず、スリッター装置1の仕様に合わせた個数とすることができる。
【0038】
上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態では、チャンバ14,400が略L字形状の断面を持つように形成したが、これには限定されない。チャンバ14,400は、良好な負圧を発生させて吸引ノズル13,300から吸引した塵を集塵機12まで効率よく誘導できるのであれば、どのような形状であってもよい。
【0039】
上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態では、上刃3の下流かつガイドローラ5の上流の空間にスリッター清掃装置10,100の吸引ノズル13,300を配置する例を説明した。しかしこれには限定されず、下刃4に対向するように吸引ノズル13,300を配置し、下刃4の下流においても塵を吸引するように構成してもよい。
【0040】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1:スリッター装置、3:上刃、5:ガイドローラ、10:スリッター清掃装置、11:ホース、12:集塵機、13,300:吸引ノズル、14,400:チャンバ、131,316:第1吸引領域、132,317:第2吸引領域、133,134:ガイドプレート
図1
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図7