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特許7510874マイコプラズマ及びブタサーコウイルスに対する皮内混合ワクチン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】マイコプラズマ及びブタサーコウイルスに対する皮内混合ワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/295 20060101AFI20240627BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240627BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240627BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61K39/295
A61K39/00 J
A61K39/12
A61K39/39
A61P37/04
A61P31/20
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020533815
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018085844
(87)【国際公開番号】W WO2019121916
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】17382893.0
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517209868
【氏名又は名称】ヒプラ シエンティフィック エセ.エレ.ウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モンテイン ギラルト,ジョルディ
(72)【発明者】
【氏名】プチヴェルト モラス,エステル
(72)【発明者】
【氏名】モロス サンス,アレキサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】シトゥハ アルナウ,マルタ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512450(JP,A)
【文献】国際公開第2017/162741(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/182872(WO,A1)
【文献】特表2011-520771(JP,A)
【文献】INGELVAC CIRCOFLEX -MYCOFLEX MATERIAL SAFETY DATA SHEET,BOEHRINGER INGELHEIM,2008年06月23日,PAGE(S):1-9,http://www.bi-vetmedica.com/content/dam/internet/ah/vetmedica/com_EN/MSDS/Ingelvac CircoFlex-Mycoflex_msds.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の1又は複数の抗原、ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原、アジュバント、並びに薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含み、
前記マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原が、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの単離タンパク質、弱毒化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形態であり、並びに、
該ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原が、0.1μg/用量~5μg/用量の量のPCV2 ORF2タンパク質を含む、家畜の真皮にワクチンを投与することによるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療での使用のための混合ワクチン。
【請求項2】
前記PCV2 ORF2タンパク質の量が、0.5μg/用量~4μg/用量である、請求項1に記載混合ワクチン。
【請求項3】
前記マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原が、不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞の形態であり、10細胞/用量~1011細胞/用量の量である、請求項1~2のいずれか1項に記載混合ワクチン。
【請求項4】
ブタを冒す別の疾患又は病態に対する使用のための、下記によって形成される群から選択される微生物から選択される1又は複数のさらなる抗原を含む、請求項1~3のいずれかに記載混合ワクチン:アクチノバチルス属(Actinobacillus sp.)、ブラキスピラ属(Brachyspira sp.)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、ストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)、イソスプラ属(Isospora sp.)、エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ属(Leptospira sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、クロストリジウム属(Clostridium sp.)、マイコプラズマ属(Mycoplasma sp.)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、大腸菌(Escherichia coli)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後発育不全症候群(periweaning failure to thrive syndrome)作用物質、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、カリシウイルス、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びトルクテノウイルス(TTV)。
【請求項5】
前記アジュバントが、鉱油と、疎水性添加剤、両親媒性添加剤及びそれらの組み合わせから選択される添加剤とを含むアジュバントエマルジョンである、請求項1~4のいずれか1項に記載混合ワクチン。
【請求項6】
前記添加剤が、イソプレン単位のポリマー、ブロックコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載混合ワクチン。
【請求項7】
前記添加剤が、式(I)の非イオン性ブロックコポリマーである、請求項5~6のいずれか1項に記載混合ワクチン:
【化1】

(式中、aは2~130までの整数であり、bは15~67までの整数である。)
【請求項8】
aが101であり、bが56である、請求項7に記載混合ワクチン。
【請求項9】
前記家畜がブタである、請求項1~8のいずれか1項に記載混合ワクチン。
【請求項10】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、アジュバント、及びブタサーコウイルスの1又は複数の抗原を含み、
前記マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原が、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの単離タンパク質、弱毒化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形態であり、並びに、
該ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原が、0.1μg/用量~5μg/用量の量のブタサーコウイルスPCV2 ORF2タンパク質を含む、皮内混合ワクチン。
【請求項11】
前記マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原が、弱毒化及び/又は不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞の形態であり、10細胞/用量~1011細胞/用量の量である、請求項10に記載の皮内混合ワクチン。
【請求項12】
以下からなる微生物の群から選択される1又は複数のさらなる抗原をさらに含む、請求項10又は11に記載の皮内混合ワクチン:アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブラキスピラ属(Brachyspira)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クラミジア属(Chlamydia)及びクラミドフィラ属(Chlamydophila)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エリシペロスリクス属(Erysipelothrix)、エシェリヒア属(Escherichia)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イソスプラ属(Isospora)、ローソニア属(Lawsonia)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ナイセリア属(Neisseria)、パスツレラ属(Pasteurella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)及びエルシニア属(Yersinia)、並びにブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後発育不全症候群(periweaning failure to thrive syndrome)作用物質、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、カリシウイルス、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びそれらの組み合わせ。
【請求項13】
前記アジュバントが、鉱油と、疎水性添加剤、両親媒性添加剤及びそれらの組み合わせから選択される添加剤とを含むアジュバントエマルジョンである、請求項10~12のいずれか1項に記載の皮内混合ワクチン。
【請求項14】
前記添加剤が、式(I)の両親媒性非イオン性ブロックコポリマーである、請求項13に記載の皮内混合ワクチン:
【化2】

(式中、aは2~130までの整数であり、bは15~67までの整数である。)
【請求項15】
aが101であり、bが56である、請求項14に記載の皮内混合ワクチン。
【請求項16】
(a)請求項10~15いずれか1項に定義される皮内混合ワクチン、
(b)任意選択で、ワクチンの皮内送達に適した送達デバイス、及び
(c)任意選択で、その使用に関する説明書、
を備えたワクチン接種パーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月22日に出願の欧州特許出願第17382893号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、ワクチンの分野に関し、より具体的には、様々な微生物に対して同時に防御する皮内送達用のワクチンに関する。特に、本発明は、マイコプラズマ抗原及びブタサーコウイルス抗原を含む皮内混合ワクチン、並びに家畜の免疫化のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)及びブタサーコウイルス2型(PCV2)は、ブタを冒す最も重要な病原体の2つであり、養豚業において大きな経済的損失を引き起こしている。
【0004】
マイコプラズマは、細胞膜の周りに細胞壁がない細菌属である。マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mhyo)を含むいくつかの種はブタに病原性があり、ブタを冒す伝染性の高い慢性疾患であるブタ流行性肺炎を引き起こすことが知られている。他のモリキュート同様、M.ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)はサイズが小さく(400~1200nm)、ゲノムが小さく(893~920キロベースペア)、細胞壁がない。
【0005】
ブタ流行性肺炎は、体重増加の減少及び飼料効率の低下により、養豚業における経済的損失の重要な原因である。特に、この疾患は、数週間続く慢性的な咳、くすんだ被毛、成長の遅延、及び不潔な外観を引き起こす。感染した動物では、特に腹側の頂葉と心葉に、硬化した紫から灰色の領域の特徴的な病変が観察される。この疾患の死亡率は低いが、罹患したブタは日和見病原体による二次感染を起こしやすく、死亡又はストレスを引き起こす。
【0006】
Mhyo感染症の治療は抗生物質に限定されており、この抗生物質は感染を完全に除去するものではないので、現在のところ効果がない。ワクチンは疾患の重症度を軽減することが判明しているが、感染したブタでの疾患の発生を防ぐことはできない。
【0007】
畜産業界にとってもう1つの重要な病原体は、ブタサーコウイルスである。ブタサーコウイルス(PCV)は、サーコウイルス科のウイルスファミリーに属し、特有の一本鎖環状ゲノムを含む小さな非エンベロープDNAウイルスである。ウイルスのカプシドは正二十面体で、直径約17nmである。
【0008】
PCVには主に2つの認識された遺伝子型:PCV1型(PCV1)、及びPCV2型(PCV2)がある。PCV2は、ブタサーコウイルス1型(PCV1)と約80%の配列同一性を共有している。ただし、一般的には非病原性のPCV1とは対照的に、ブタのPCV2感染は最近、まとめてブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)(ブタサーコウイルス疾患-PCVDとしても知られている)と呼ばれる多くの疾患症候群に関連付けられている。離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)は、一般にPCVADの主要な臨床症状であると見なされている。PMWSは5~18週齢のブタを冒す。PMWSは臨床的に発育不良(wasting)、皮膚の蒼白、活力減退(unthriftiness)、呼吸窮迫、下痢、黄疸(icterus及びjaundice)を特徴とする。一部の罹患したブタでは、すべての症状の組み合わせが現れるが、他の罹患したブタは、これらの症状の1つ又は2つしか有さない。剖検中、顕微鏡的及び肉眼的病変も複数の組織及び臓器に現れ、病変の最も一般的な部位はリンパ系臓器である。PCV2に感染したブタの死亡率は80%に達し得る。現在、ブタをPCV2から防御するためのワクチンがいくつか市場に出ている。
【0009】
Mhyo又はブタサーコウイルスに対する動物の免疫化に現在利用可能なワクチンの大部分は、皮下(皮下組織に)又は筋肉内(筋肉に)のいずれかに投与される。しかし、これらの投与経路は皮膚の免疫系を迂回し、抗原提示細胞の重要な常駐集団を有さない脂肪又は筋肉組織に抗原を送達する。筋肉組織に送達された抗原は、一過性の抗原提示細胞によってピックアップされるか、又は単に流入領域リンパ節に循環すると考えられる。
【0010】
それとは反対に、近年、ワクチン投与の代替経路、すなわち皮内(ID)経路が主導権を獲得している。皮内ワクチンは、抗原提示細胞を多数含む解剖学的空間である真皮に直接抗原を送達するため、一定量の抗原を皮下又は筋肉内注射するよりも免疫原性が高くなる可能性がある。したがって、以下の両方におけるいくつかの利点:免疫原性(低応答者における免疫応答を改善する能力、及びいくつかのアジュバントの必要性の回避など)と、いくつかの実際的な問題(IDワクチンは無針注射器による送達が一般的であるため、従来の皮下又は筋肉内経路より容易で安全な投与、及び医療従事者の針刺し損傷及び動物の血管又は神経損傷のリスクの減少)とによりID経路の使用が促されている。
【0011】
ただし、ワクチンのタイプ(すなわち、不活化、弱毒化など)とその製剤化(用量、アジュバントなど)によって、特定のワクチンが皮内投与可能かどうかを条件付けすることができる。例えば、アルミニウムベース又は水中油型アジュバントを含有するワクチンは、皮内投与後に許容できない局所反応原性を示す可能性がある。
【0012】
IDワクチンの例として、次のいずれかに対するブタ免疫化のためのワクチン、Mhyo(Porcilis(登録商標)M Hyo ID Once)又はブタサーコウイルス(Porcilis(登録商標)PCV ID)が現在市販されている。現在、PCV2及びMhyoを含有する市販の二価IDワクチンは市場では入手できない。
【0013】
これら2つの一般的な感染症から動物を防御するために、従事者は2回のワクチン接種を行う必要があり、作業の時間と費用が重複し、上記のワクチン及び動物の取り扱いに関連するリスクが高まる。
【0014】
複数回のワクチン接種に由来する警告を解決するために、免疫化の分野では、単一のワクチンにさまざまな抗原を組み合わせようとするのが一般的である。これは、防御が追求される病原体が特定の動物種の一般的な病原体である場合に特に重要である。しかし、混合ワクチンの開発は簡単ではない。単独で投与された特定の抗原と比較して、他の成分と組み合わせた場合の抗原の免疫原性の低下は、干渉として知られている。混合ワクチンの製剤化において遭遇するさらなる問題は、経時的なそれら複合抗原の固有の安定性である。溶液中のワクチンは、その抗原成分の免疫原性を低下させる経時的過程、例えば、抗原の分解又はそれらが吸着されていたアジュバントからの抗原の脱着を経る可能性がある。混合ワクチンに関連する別の問題は、新しい条件下ですべての抗原の安全性と活性を維持する必要があるため、投与又は製剤の経路の変更、又は用量節約戦略を実施したい場合に、さらに複雑な層が追加されることである。
【0015】
混合ワクチンの例は、特許文献1に提供されており、マイコプラズマ及びブタサーコウイルス感染から動物を防御するための筋肉内組換え混合ワクチンの使用が開示されている。しかし、前記特許出願に開示されているワクチンの製剤は、その量の多さ、及びそのアジュバントの反応原性のため、皮内注射には適さない。また、前述のように、製剤及び/又は投与経路の変更は簡単ではなく、安全性及び有効性を判断するための広範なテストが必要である。
【0016】
さらに最近、特許文献2は、マイコプラズマ及びブタサーコウイルスに対する皮内混合ワクチンを開示した。しかし、この文書では、著者らはアジュバントエマルジョンのいくつかの特定の組み合わせのみが効率的で安全なワクチンを提供することを示している。さらに、前記文書で提示された実験データは、免疫化を達成するために高濃度のPCV2抗原が必要であることを明らかにしている。
【0017】
効果的なワクチンはMhyo及びPCV2の影響を減らすことができたが、両方の病原体は世界中のブタ生産者に課題を作り続けている。前述のように、PCV2及びMhyoを含有する市販の二価IDワクチンは市場では入手できない。Porcilis(登録商標)PCV Mhyo及びSuvaxyn(登録商標)Circo+MH RTUなど、IM投与用の2価ワクチンのみが存在する。
【0018】
上記を考慮して、いくつかの感染症に対して防御しながらワクチン接種の数を減らすことを可能にする、ブタの防御のための皮内混合ワクチンのレパートリーを拡大する必要性が残っている。単純で安全な投与手順で異なる病態に対する複数の防御を可能にする新規の皮内混合ワクチンの開発は、動物の健康の分野における前進を表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】国際公開第2014009586号パンフレット
【文献】国際出願公開第2017162741号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明者らは、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ抗原とブタサーコウイルス抗原とを組み合わせる混合ワクチンが、皮内投与された場合でも、両方の微生物の感染から動物を防御する免疫応答を効率的に開始できることを発見した。
【0021】
重要なことに、皮内経路を介した投与は、一般的に無針注射器を介して行われ、動物と従事者の両方への健康リスクを減らしながら、ワクチン接種手順を非常に容易にする。さらに、本発明のワクチンは、両方の病原体に由来する抗原を単一の作用組成物中に含有するという利点を示し、これにより、投与の回数及びそれらに関連するリスクを低減することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、第1の態様では、本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原、並びに薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含み、該ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原が、0.1μg/用量~10μg/用量の量のPCV2 ORF2タンパク質を含み、家畜の真皮にワクチンを投与することによるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療での使用のための混合ワクチンを提供する。
【0023】
この態様はまた、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、及びブタサーコウイルスの1又は複数の抗原を含み、該ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原が、0.1μg/用量~10μg/用量の量のPCV2 ORF2タンパク質を含む混合ワクチンの、家畜の真皮に医薬品を投与することによるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療用医薬品の製造のための使用として製剤化することもできる。この実施形態はまた、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、及びブタサーコウイルスの1又は複数の抗原を含み、該ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原が、0.1μg/用量~10μg/用量の量のPCV2 ORF2タンパク質を含む混合ワクチンを用いて、特に家畜の真皮にワクチンを投与することによるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療のために、それを必要とする家畜を皮内免疫化する方法として製剤化される。
【0024】
驚くべきことに、そして実施例1で観察され得るように、本発明者らは、本発明の混合ワクチンが、PCV2抗原量を大幅に減少させた場合であっても(1μg/用量未満でさえ)効率的かつ安全であることを見出した。さらに、混合ワクチンは単回用量で効果的であった。混合ワクチンは一般に、抗原干渉、すなわち他の抗原と組み合わせた場合の抗原免疫原性の低下を打ち消すために、一価ワクチンよりも高い抗原量を必要とするため、これは完全に予想外であった。
【0025】
本発明の第2の態様は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、及びブタサーコウイルスの1又は複数の抗原を含み、該ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原が、0.1μg/用量~10μg/用量の量のブタサーコウイルスPCV2 ORF2タンパク質を含む皮内混合ワクチンを提供する。
【0026】
第3及び最後の態様では、本発明は、(a)本発明の第2の態様で定義される皮内混合ワクチン、(b)任意選択で、ワクチンの皮内送達に適した送達デバイス、及び(c)任意選択で、その使用に関する説明書、を備えたワクチン接種パーツキットを提供する。
【0027】
本発明者らはまた、皮内ワクチン用の特定のアジュバント製剤を使用することにより、免疫化の効率を維持し、同時に安全性が改善されたことも予期せず発見した(図1及び図2を参照)。
【0028】
したがって、第4の態様では、本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原、鉱油と、疎水性添加剤、両親媒性添加剤及びそれらの組み合わせから選択される添加剤とを含むアジュバントエマルジョン、並びに薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体を含む皮内混合ワクチンに言及する。
【0029】
第5の態様では、本発明は、家畜において医薬品として使用するための第4の態様の皮内混合ワクチンを提供する。
【0030】
第6の態様では、本発明は、(a)第4の態様で定義される皮内混合ワクチン、(b)任意選択で、ワクチンの皮内送達に適した送達デバイス、及び(c)任意選択で、その使用に関する説明書、を備えたワクチン接種パーツキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例1に関連する図1は、本発明のワクチンによるワクチン接種後の様々な時点におけるワクチン接種された子ブタの体温を示す。D0(+3h)はワクチン接種後3時間に相当し、D0(+6h)はワクチン接種後6時間、D1はワクチン接種の1日後、D2は、ワクチン接種の2日後に相当する。ワクチン接種された子ブタA~Gの群は、実施例1に記載されている。
図2】実施例1に関連する図2は、本発明のワクチンによるワクチン接種後の様々な時点における子ブタの局所反応スコアを示す。D0(+3h)はワクチン接種後3時間に相当し、D0(+6h)はワクチン接種後6時間、D1、D2、D7、D14及びD21は、それぞれ、ワクチン接種の1日後、2日後、7日後、14日後及び21日後に相当する。ワクチン接種された子ブタA~Gの群は、実施例1に記載されている。
図3】実施例1に関連する図3は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによるチャレンジ感染後27日目におけるワクチン接種されたブタの肺病変スコアを示す。ワクチン接種された子ブタA~Gの群は、実施例1に記載されている。
図4】実施例2に関連する図4は、本発明のワクチンによるワクチン接種後の様々な時点における子ブタの局所反応スコアを示す。D0(+3h)はワクチン接種後3時間に相当し、D0(+6h)はワクチン接種後6時間、D1、D2、D7、D14及びD21は、それぞれ、ワクチン接種の1日後、2日後、7日後、14日後及び21日後に相当する。ワクチン接種された子ブタA~Eの群は、実施例2に記載されている。
図5】実施例2に関連する図5は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによるチャレンジ感染後28日目におけるワクチン接種されたブタの中央肺表面の罹患領域の割合を示す。ワクチン接種された子ブタA~Eの群は、実施例2に記載されている。
図6】実施例2に関連する図6は、PCV2チャレンジ後7日目(D7)、14日目(D14)、21日目(D21)、及び28日目(D28)におけるワクチン接種されたブタのPCV2 ORF2のセロコンバージョン(S/P比)を示している。ワクチン接種された子ブタA~Eの群は、実施例2に記載の通りである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の出願時点で本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。ただし、潜在的なあいまいさが発生した場合は、本明細書において提供される定義が、辞書や外部定義よりも優先される。さらに、文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0033】
「抗原」という用語は、対象が免疫応答、例えば、体液性及び/又は細胞性免疫応答を開始することができる分子を指す。組成物の意図される機能に応じて、1又は複数の抗原が含まれ得る。
【0034】
本明細書において使用される「医薬品」という用語は、広く認められているヒトを含む動物の疾患を治癒、治療又は予防するために使用される医薬又は獣医薬(薬、薬品、又は単に薬物とも呼ばれる)の同義語である。薬物はさまざまな方法で分類される。1つの重要な区別は、通常は化学合成に由来する従来の低分子薬物と、組換えタンパク質、ワクチン、治療に使用される血液製剤(IVIGなど)、遺伝子治療、モノクローナル抗体及び細胞治療(幹細胞治療など)を含む生物医薬品との区別である。本発明において、医薬品は、好ましくは獣医用医薬品であり、さらにより好ましくは獣医用のワクチンである。
【0035】
本明細書で使用する「ワクチン」という用語は、動物に投与したときに、該動物の免疫応答を直接的又は間接的に誘発する、又は誘発できる、適切な賦形剤及び/又は担体を伴う免疫原性組成物を意味する。特に、本発明のワクチンは、対象への投与時に、宿主において防御的に細胞性又は抗体媒介性の免疫学的応答を誘発する。「皮内ワクチン」という用語は、真皮内に投与されるワクチンを指す。「混合ワクチン」という用語は、ワクチンが単一の調製物中に様々な抗原を含有し、2以上の疾患、又は2以上の微生物によって引き起こされる1つの疾患に対して防御することを意味する。したがって、ワクチンは、「有効成分」として「免疫原性組成物」を含み、本明細書で使用される場合、ヒトを含む脊椎動物に投与すると、該組成物に対して細胞性又は抗体媒介性免疫応答の免疫学的応答を宿主においてを誘発する物質を指す。免疫原性組成物は、とりわけ殺傷又は弱毒化された細菌又はウイルスなどの抗原特性を有する分子、及びさらに免疫原性ポリペプチドを含む。免疫原性ポリペプチドは一般に抗原性と呼ばれる。分子は、それが免疫グロブリン(抗体)又はT細胞抗原受容体などの免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用することができる場合、「抗原性」である。抗原性ポリペプチドは、少なくとも約5個、特に少なくとも約10個、少なくとも15個、少なくとも20個又は少なくとも50個のアミノ酸のエピトープを含む。エピトープとも呼ばれるポリペプチドの抗原性部分は、抗体又はT細胞受容体の認識に対して免疫優性の部分であるか、又は抗原性部分を免疫化のための担体ポリペプチドに結合させることにより、分子に対する抗体を生成するために使用される部分であり得る。免疫原性組成物は、この説明によれば、活性分子、前記分子を含む組成物、又は特定の免疫反応が望まれる複数の抗原分子を含む組成物に関する。
【0036】
「免疫学的有効量」又は「免疫学的有効用量」という表現については、疾患の治療又は予防いずれかのために、動物において感染症の付随事象を低減する、若しくはその重症度を軽減する、又は疾患の発生を低減する免疫応答を、誘発する、又は誘発することができる量又は用量の抗原を、単回用量又は一連の一部として投与することを意味する。免疫学的有効量又は有効用量はまた、疾患の治療又は予防のいずれかのための抗体の産生を誘導することができる。この量は、対象の体調を含む様々な要因に応じて変化し、当業者が容易に決定することができる。
【0037】
「不活性化細胞」という用語は、培養で増殖させた後、熟練者に完全に公知である主要な不活化方法として、物理的手段(熱など)又は化学的手段(ホルムアルデヒド、BEI、又は他のよく知られた不活性化剤との接触など)で殺した細胞を指す。「不活性化細胞」は、全細胞、又は例えば、細胞溶解物及び上清回収細胞を含む部分細胞であり得る。「弱毒化細胞」という用語は、その毒性を低下させた生存能力のある複製コンピテント細胞を指す。
【0038】
「家畜」という用語は、食糧などの商品を生産するために飼育された飼育動物又は家畜に関連する。特に、家畜は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、家禽(産卵家禽を含む)、及びウマ動物などの食品生産動物に関する。より具体的には、それは、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、家禽及びウマ動物などの食品生産動物に関する。さらにより詳細には、本発明はブタ種に関する。
【0039】
「担体」という用語は、免疫原性成分以外の薬学的に許容される成分として理解されるべきである。担体は、有機、無機、又はその両方であり得る。当業者に周知の適切な担体には、限定するものではないが、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体(油滴又はリポソーム)及び不活性ウイルス粒子などの大型のゆっくりと代謝される巨大分子が含まれる。
【0040】
「薬学的に許容される賦形剤又は担体」という表現は、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを指す。各成分は、医薬組成物の他の成分と適合性があるという意味で薬学的に許容されなければならない。また、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性又は他の問題若しくは合併症なしに、合理的な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織又は臓器と接触して使用するのに適している必要がある。特に、皮内経路での使用に適している必要がある。
【0041】
本明細書で使用される場合、「宿主」又は「対象」という用語は、本発明の免疫原性組成物又はワクチンが投与される、それを必要とする標的個体、とりわけヒト、哺乳動物、家畜、又は本発明の組成物をワクチン接種される感受性の高い任意の他の動物種を意図する。特に、哺乳動物はブタ種に由来し、より詳細にはブタである。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ブタ(pig)」又は「ブタ(swine)」という用語は、とりわけ、それらの生産サイクルの任意の年齢又は任意の段階のブタ、雄ブタ、雌ブタ、若雌ブタ及び子ブタを含む。
【0043】
「予防する」、「予防すること」、又は「予防」という用語には、限定するものではないが、症状、臨床徴候、障害、状態又は疾患のリスクを減少、軽減又は改善すること、及び症状、臨床徴候、障害、状態又は疾患から動物を防御することが含まれる。予防は予防的に適用又は投与することができる。
【0044】
「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は、限定するものではないが、既存の症状、臨床徴候、障害、状態又は疾患の進行又は重症度を抑制、遅延、停止、軽減、改善又は逆転することを含む。治療は、治療的に適用又は投与することができる。
【0045】
成分の「w/w%」又は「重量当たりの重量パーセント」という用語は、組成物の総重量に対する、又は特に述べられている場合は他の成分の総重量に対する単一成分の量を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「鉱油」は、石油及び/又は異なる医薬品グレードの流動パラフィンなどの無機物に由来する炭化水素の様々な複合混合物を指す。これらの混合物は、例えばMarcol52、Drakeol5、Eolane130などの商品名で販売されている。
【0047】
「両親媒性化合物又は添加剤」については、親水性(水親和性、極性)及び親油性(脂肪親和性)の両方の特性を有する化合物と理解されるべきである。そのような化合物は、両親媒性(amphiphilic又はamphipathic)と呼ばれる。一般的な両親媒性物質は、石鹸、洗剤、及びリポタンパク質である。両親媒性化合物の他の例は、サポニン、リン脂質、糖脂質、ポリソルベートである。両親媒性化合物は、親油性(通常は炭化水素)構造と親水性極性官能基(イオン性又は非荷電のいずれか)を有する。ブロックコポリマーの特定のケースでは、ブロックの1つのモノマーユニットは親油性構造を有し、他のブロックのモノマーユニットは極性官能基を有する。両親媒性ブロックコポリマーの例は、ポロキサマー(ポリエチレン及びポリオキシプロピレンの単位を含むブロックコポリマー)である。親油性部分と親水性部分の両方を持つ結果として、一部の両親媒性化合物は水に溶解し、ある程度は非極性有機溶媒に溶解する。水性溶媒と有機溶媒とからなる非混和性の二相系に配置すると、両親媒性化合物は2つの相を分割する。疎水性部分と親水性部分の程度が、分割の程度を決定する。「疎水性添加剤又は化合物」は、水を阻む化合物として理解されるべきである。化学では、水をはじく物質の性質を指す。実際には、該物質は水にはじかれるのではなく、水に対する引力の欠如である。疎水性物質は疎水性を示し、疎水性物質(hydrophobe)と呼ばれることがある。疎水性分子は、水にさらされるのではなく、グループ化してミセルを形成する非極性分子になる傾向がある。一般的な疎水性物質は、油、コレステロール、レシチン、又はイソプレン単位のポリマーである。イソプレン単位の疎水性ポリマーの例はスクアレンである。本明細書で使用される「疎水性」は、とりわけ、ヒルデブランド溶解度パラメータδを使用して試験することができる。「ヒルデブランド溶解度パラメータ」という用語は、物質の凝集エネルギー密度を示すパラメータを指す。パラメータδは以下のように決定される:
【0048】
δ=(ΔЕ/V)1/2
【0049】
式中、δは溶解度パラメータ(саl/сmЗ1/2であり、ΔЕは蒸発のエネルギー、cal/モルであり、及びVはモル体積、сmЗ/モルである。代替の定義方法では、疎水性添加剤は分配係数(P)の対数(logP)が0より大きい(logP>0)添加剤である(すなわち、スクアレンはオクタノール/水でlogP=14.1を有する)。逆に、親水性添加剤は、logP<0の添加剤である。分配係数(P)又は分布係数(D)は、平衡状態にある2つの非混和性相の混合物中の化合物の濃度の比率である。したがって、この比率は、これらの2つの相における化合物の溶解度の差の尺度である。分配係数は一般に、化合物の非イオン化種の濃度比を指し、分布係数は、化合物のすべての種(イオン化+非イオン化)の濃度比を指す。当業者は、このパラメータを計算する方法を知っていると思われる。
【0050】
「ブロックコポリマー」は、共有結合によって連結された2以上のホモポリマーサブユニットを含むポリマーである。ホモポリマーサブユニットの結合には、ジャンクションブロックと呼ばれる中間の非繰り返しサブユニットが必要な場合がある。2つ又は3つの異なるブロックを有するブロックコポリマーは、それぞれジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーと呼ばれる。これらのジブロック及びトリブロックコポリマーは、連続ジブロック及びトリブロックコポリマー又はグラフト化されたジブロック及びトリブロックコポリマーであり得る。概略的に、連続ジブロックコポリマーは次の構造-(A)n-(B)m-を有し、連続トリブロックコポリマーは、構造-(A)n-(B)m-(A)p-に対応し、グラフトコポリマーは、1つの複合材料の線形主鎖と別の複合材料のランダムに分布した分枝とを有するセグメント化コポリマーである。
【0051】
上記のように、本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、及びPCV2の1又は複数の抗原を含み、ブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療に使用するための皮内混合ワクチンを提供する。
【0052】
PCV2の異なる遺伝子型、例えば、PCV2a、PCV2b、PCV2c及びPCV2dは、第1の態様の特定の実施形態に包含される。現在、a~eと名付けられている5つの異なるPCV2遺伝子型がある。PCV2の遺伝子型は、ORF2(カプシド)中のヌクレオチド置換数をORF2の総ヌクレオチド(702nt)で割ることによって決定され、この分率はp-距離(p-distance)と呼ばれる。p-距離が0.035を超える場合、ウイルスには新しい遺伝子型が与えられる(Segales J.ら、「PCV-2genotype definition and nomenclature」、Vet Rec.、2008年、162(26)巻、867~8頁)。これは紛らわしい点があるが、少なくとも命名法は標準化されている。PCV2のORF2は、約233アミノ酸のタンパク質をコードしている。PCV2 ORF2は全て、本発明での使用に適している。異なる遺伝子型のPCV2 ORF2配列は、Segalesら、2008年、又はXiaoら、「Global molecular genetic analysis of porcine circovirus type2(PCV2)sequences confirms the presence of four main PCV2 genotypes and reveals a rapid increase of PCV2d」、J Gen Virol、2015年、96(Pt 7)巻、1830~41頁に開示されている。PCV3などの他の新しいブタサーコウイルス(Palinski R.ら、「A Novel Porcine Circovirus Distantly Related to Known Circoviruses Is Associated with Porcine Dermatitis and Nephropathy Syndrome and Reproductive Failure」、2016年、91(1)巻に開示)もまた、本発明に包含される。
【0053】
本発明は、すべてのPCV2 ORF2タンパク質変異体、例えば、とりわけ、GenBank受託番号AAC35310(バージョンAAC35310.1)、AAC35331(バージョンAAC35331.1)、又はABX71779(バージョンABX71779.1)のものを包含することを意図する。
【0054】
皮内混合ワクチン中のマイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、及びブタサーコウイルスの1又は複数の抗原は、免疫学的有効量である。
【0055】
第1の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチン中のPCV2 ORF2タンパク質の量は、0.1μg/用量~10μg/用量である。より特定の実施形態では、PCV2 ORF2タンパク質の量は、0.1μg/用量~5μg/用量であり、より好ましくは、PCV2 ORF2タンパク質の量は、0.5μg/用量~4μg/用量である。
【0056】
以下の実施例に示されるように、家畜の効率的な免疫化は、本発明のワクチンが0.6μg/用量という低い量のPCV2 ORF2タンパク質を含有する場合であっても、これにより達成された。上述のように、混合ワクチンは一般に、抗原干渉を補償するために用量あたりより高い量の抗原を必要とすることを考えると、これは驚くべきことである。このワクチンはシングルショットのプロトコルでも効果的であり、さらなる追加免疫を必要としなかった。したがって、2用量プロトコルは必要なかった。
【0057】
さらに、それは、大量の抗原を含有する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ及びブタサーコウイルスに対する先行技術の皮内混合ワクチン(国際公開第2017162741号パンフレットなど)と比べて真の利点と考えられる。
【0058】
この特定の組み合わせにより、そして実施例に示されるように、マイコプラズマ・ハイオニューモニエとブタサーコウイルスとの両方の抗原に対するブタの効果的な免疫化が達成された。
【0059】
第1の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの単離タンパク質、弱毒化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞及びそれらの組合わせからなる群から選択される形態である。より具体的には、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原は、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞の形態である。さらに具体的には、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原は、不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞溶解物の形態である。
【0060】
特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、第1の態様の皮内混合ワクチン中の抗原は、ブタサーコウイルスの1又は複数のタンパク質を発現する不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ変異株細胞として提供される。これらのマイコプラズマ・ハイオニューモニエ変異株細胞は、特に、ゲノム又はそのサイトゾルに組み込まれた、ブタサーコウイルスの少なくとも1つのタンパク質をコードする1又は複数の外因性DNA配列を含む。
【0061】
特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、本発明の混合ワクチンの不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞は、Laboratorios HIPRA、S.A.によってLeibniz-Institut Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen(DSMZ)に寄託された(そして申請者HIPRAに移された)Mhyoの変異株に由来し、受託番号DSM 26020のMhyoの変異株、受託番号DSM26034のMhyoの変異株、受託番号DSM 26027のMhyoの変異株、及び受託番号DSM26033のMhyoの変異株から選択される。これらすべての変異株は、2012年5月29日にDSMZに寄託された。これらは生存が宣言された。
【0062】
第1の態様の別の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、1又は複数のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ抗原は、10細胞/用量~1011細胞/用量の量の弱毒化及び/又は不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞の形態である。より具体的には、10細胞/用量~1011細胞/用量、より具体的には10細胞/用量~1011細胞/用量の量である。
【0063】
第1の態様のより特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、第1の態様による使用のための皮内混合ワクチンはブタを冒す別の疾患又は病態に対する使用のためのものであり、該ワクチンは下記によって形成される群から選択される微生物から選択される1又は複数のさらなる抗原を含む:アクチノバチルス属(Actinobacillus sp.)、ブラキスピラ属(Brachyspira sp.)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、ストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)、イソスプラ属(Isospora sp.)、エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ属(Leptospira sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、クロストリジウム属(Clostridium sp.)、マイコプラズマ属(Mycoplasma sp.)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、大腸菌(Escherichia coli)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後発育不全症候群(periweaning failure to thrive syndrome)作用物質、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、カリシウイルス、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びトルクテノウイルス(TTV)。
【0064】
予期せぬことに、本発明者らはまた、第1の態様による使用のための皮内混合ワクチンの製剤において、アジュバントの特定の選択を使用して、有効性を維持し、同時に安全性が改善されることも発見した。特に、以下の実施例1に示すように、特定のアジュバントはワクチン接種後の体温上昇を軽減し、局所反応の重症度を軽減した。
【0065】
したがって、第1の態様のより特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチンはさらにアジュバントを含む。別の実施形態では、アジュバントは、鉱油及び添加剤を含むアジュバントエマルジョンであり、前記添加剤は、疎水性添加剤、両親媒性添加剤及びそれらの組み合わせから選択される。より特定の実施形態では、添加剤は、イソプレン単位のポリマー、ブロックコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。より具体的には、イソプレン単位のポリマーはスクアレンであり、ブロックコポリマーは非イオン性ブロックコポリマーである。より具体的には、非イオン性ブロックコポリマーはポロキサマーである。さらに具体的には、ポロキサマーは、式(I)のものである(式中、aは2~130までの整数であり、bは15~67までの整数である。):
【化1】
【0066】
さらに具体的には、aは101であり、bは56である。
【0067】
より特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、非イオン性ブロックコポリマーは、Poloxamer407(Sigma)、Pluronic F-127(Acofarma)、Kolliphor P407(BASF)、Koliphor P188(BASF)などのPoloxamer188、Pluronic L121(BASF)などのPoloxamer L121である。より具体的には、非イオン性ブロックコポリマーは、Poloxamer407(シグマ)である。特に、有用なポロキサマーは、親水性-親油性バランス(HLB)が10~30、より具体的には18~24のものである。HLBは、化合物が親水性又は親油性であることの程度の尺度であり、当業者に公知の標準的な手順で決定される。
【0068】
アジュバントにおける添加剤として使用されるイソプレン単位の他のポリマー候補としては、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セスタテルペン、スクアレンとは異なる他のトリテルペン、及びテトラテルペンが挙げられる。
【0069】
このアジュバントの組み合わせ(鉱油及び添加剤)は、以下に対する1価の抗原性IDワクチン:Mhyo(Porcilis(登録商標)M Hyo ID Once)又はブタサーコウイルス(Porcilis(登録商標)PCV ID)の直接的な組み合わせからは教示も示唆もされていない驚くべき効果と考えられる。上記のように、特定のワクチンを皮内投与できるかどうかを条件付ける要因は多く、混合ワクチンの開発は簡単ではない。克服すべき課題の中には、他の成分と組み合わせると抗原の免疫原性が低下するものがある。また、時間の経過に伴う複合抗原の固有の安定性、抗原の分解、用量節約戦略における各抗原の活性の維持、及び組み合わせて一緒に投与した場合のすべての抗原の安全性と有効性との間の適切なバランスを得ることの問題もある。
【0070】
第1の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチンは、鉱油と、疎水性添加剤、両親媒性添加剤及びそれらの組み合わせから選択される添加剤とを含み、鉱油の濃度が5w/w%~40w/w%であり、添加剤の濃度が0.5w/w%~5w/w%であるアジュバントエマルジョンをさらに含む。より具体的には、鉱油の濃度は10w/w%~25w/w%であり、添加剤の濃度は0.5w/w%~2w/w%である。より具体的には、鉱油の濃度は21.2w/w%であり、添加剤の濃度は0.5w/w%である。すべてのパーセンテージは、組成物の総重量に対するものである。
【0071】
さらに、第1の態様のより特定の実施形態では、皮内混合ワクチンは、5w/w%~40w/w%の濃度の鉱油、及び添加剤として0.5w/w%~5w/w%の濃度の非イオン性ブロックコポリマーをアジュバント中に含む。さらにより特定の実施形態では、非イオン性ブロックコポリマーは、式(I)のポロキサマーである。より具体的には、aが101であり、bが56である式(I)のポロキサマーである。
【0072】
【0073】
より特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、第1の態様による使用のための皮内混合ワクチンは、アルキルフェノールエトキシレート、エトキシル化ソルビタンエステル、エトキシル化脂肪アルコール、エトキシル化脂肪酸、脂肪酸アルカノールアミド、エトキシル化脂肪酸アルカノールアミド、エトキシル化脂肪アミン、脂肪アミンオキシド、脂肪アミドアミンオキシド、脂肪酸グリセリド、スクロースエステル、アルキルポリグリコシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、及びエトキシル化とプロポキシル化脂肪アルコール、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される界面活性剤を更に含む。より具体的には、界面活性剤はソルビタンモノオレエートである。
【0074】
別の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチンは、ソルビタンPolysorbate80、Montanox80、Tween80、Simulsol、Macrogol、及びそれらの混合物からなる群から選択される乳化剤をさらに含む。より具体的には、乳化剤はPolysorbate80である。
【0075】
別の特定の実施形態では、本発明のような皮内混合ワクチンのワクチン用量は、0.05~0.5ml、特に0.1~0.2mlで構成される。
【0076】
ワクチンは単回又は複数回用量で投与することができる。当技術分野で周知のように、複数回投与のワクチン接種は、最初の免疫化用量の投与、その後追加免疫用量として作用する1又は複数回の追加用量の投与からなる。本発明の実施形態では、ワクチンは、好ましくは単回投与である。
【0077】
第1の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、家畜はブタである。
【0078】
上記で詳述したように、本発明はまた、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、及びブタサーコウイルスの1又は複数の抗原を含む皮内混合ワクチンを提供する。
【0079】
本発明の第1の態様による使用のための皮内混合ワクチンのすべての特定の実施形態は、本発明の第2の態様の皮内混合ワクチンにも当てはまる。
【0080】
第2の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、1又は複数のマイコプラズマ・ハイオニューモニエ抗原は、10細胞/用量~1011細胞/用量の量の弱毒化及び/又は不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞の形態である。より具体的には、10細胞/用量~1011細胞/用量、より具体的には10細胞/用量~1011細胞/用量の量である。
【0081】
この第2の態様の混合ワクチン中のマイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、及びブタサーコウイルスの1又は複数の抗原は、免疫学的有効量である。
【0082】
第2の態様の別の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチンは1つ又は複数のさらなる抗原をさらに含み、該さらなる抗原は、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブラキスピラ属(Brachyspira)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クラミジア属(Chlamydia)及びクラミドフィラ属(Chlamydophila)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エリシペロスリクス属(Erysipelothrix)、エシェリヒア属(Escherichia)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イソスプラ属(Isospora)、ローソニア属(Lawsonia)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ナイセリア属(Neisseria)、パスツレラ属(Pasteurella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)及びエルシニア属(Yersinia)、並びにブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後発育不全症候群(periweaning failure to thrive syndrome)作用物質、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、カリシウイルス、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びそれらの組み合わせからなる微生物の群から選択される。
【0083】
第2の態様の別の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、ワクチンはアジュバントをさらに含む。別の実施形態では、アジュバントは、鉱油と、疎水性添加剤、両親媒性添加剤及びそれらの組み合わせから選択される添加剤とを含むアジュバントエマルジョンである。より特定の実施形態では、添加剤は、イソプレン単位のポリマー、ブロックコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。より具体的には、イソプレン単位のポリマーはスクアレンであり、ブロックコポリマーは非イオン性ブロックコポリマーである。より具体的には、非イオン性ブロックコポリマーはポロキサマーである。さらに具体的には、ポロキサマーは、式(I)のものである(式中、aは2~130までの整数であり、bは15~67までの整数である。):
【化2】
【0084】
さらに具体的には、aは101であり、bは56である。より特定の実施形態では、非イオン性ブロックコポリマーは、Poloxamer407(Sigma)、Pluronic F-127(Acofarma)、Kolliphor P407(BASF)、Koliphor P188(BASF)などのPoloxamer188、Pluronic L121(BASF)などのPoloxamer L121である。より具体的には、Poloxamer407(Sigma)である。
【0085】
第2の態様のより特定の実施形態では、皮内混合ワクチンは、5w/w%~40w/w%の濃度の鉱油、及び添加剤として0.5w/w%~5w/w%の濃度の非イオン性ブロックコポリマーをアジュバント中に含む。さらにより特定の実施形態では、非イオン性ブロックコポリマーは、式(I)のポロキサマーである。より具体的には、aが101であり、bが56である式(I)のポロキサマーである。
【0086】
第2の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、第2の態様の皮内混合ワクチンは、家畜の医薬品として使用するためのものである。
【0087】
より具体的には、第2の態様の皮内混合ワクチンは、家畜の真皮にワクチンを投与することによるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療での使用のためのものである。
【0088】
本発明はまた、本発明の第2の態様のワクチンを含むワクチン接種キットを提供する。より詳細には、ワクチン接種キットは、マイコプラズマ属及び/又はブタサーコウイルスによって引き起こされる疾患の予防及び/又は治療に使用するためのものである。より詳細には、マイコプラズマによって引き起こされるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療に使用するためのものである。
【0089】
上記で開示したように、本発明はまた、鉱油と、疎水性添加剤、両親媒性添加剤及びそれらの組み合わせから選択される添加剤とを含むアジュバントエマルジョンを含む皮内ワクチンを提供する。
【0090】
第4の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチンの添加剤は、イソプレン単位のポリマー、ブロックコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。より具体的には、イソプレン単位のポリマーはスクアレンであり、ブロックコポリマーは非イオン性ブロックコポリマーである。特定の実施形態では、添加剤はブロックコポリマーである。より具体的には、ブロックコポリマーは非イオン性ブロックコポリマーである。より具体的には、非イオン性ブロックコポリマーはポロキサマーである。さらに具体的には、非イオン性ブロックコポリマーは、式(I)のポロキサマーである(式中、aは2~130までの整数であり、bは15~67までの整数である。):
【化3】
【0091】
さらに具体的には、ポロキサマーはaが101、bが56である。より特定の実施形態では、非イオン性ブロックコポリマーは、Poloxamer407(Sigma)、Pluronic F-127(Acofarma)、Kolliphor P407(BASF)、Koliphor P188(BASF)などのPoloxamer188、Pluronic L121(BASF)などのPoloxamer L121である。より具体的には、非イオン性ブロックコポリマーはPoloxamer407(Sigma)である。
【0092】
アジュバントにおける添加剤として使用されるイソプレン単位の他のポリマー候補としては、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セスタテルペン、スクアレンとは異なる他のトリテルペン、及びテトラテルペンが挙げられる。
【0093】
第4の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチンは、鉱油の濃度が5w/w%~40w/w%であり、添加剤の濃度が0.5w/w%~5w/w%であるアジュバントエマルジョンをさらに含む。より具体的には、鉱油の濃度は10w/w%~25w/w%であり、添加剤の濃度は0.5w/w%~2w/w%である。より具体的には、鉱油の濃度は21.2w/w%であり、添加剤の濃度は0.5w/w%である。すべてのパーセンテージは、ワクチン組成物の総重量に対するものである。
【0094】
さらに、この第4の態様のより特定の実施形態では、皮内混合ワクチンは、5w/w%~40w/w%の濃度の鉱油、及び添加剤として0.5w/w%~5w/w%の濃度の非イオン性ブロックコポリマーをアジュバント中に含む。さらにより特定の実施形態では、非イオン性ブロックコポリマーは、式(I)のポロキサマーである。より具体的には、aが101であり、bが56である式(I)のポロキサマーである。
【0095】
第4の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチン中のマイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの単離タンパク質からなる群から選択される形態であり、例えば限定するものではないが、Minionら、「The genome sequence of Mycoplasma hyopneumoniae strain 232,the agent of swine mycoplasmosis」、J.Bacteriol.、2004年、186(21)巻、7123~7133頁に記載のP46、P65、P97、及びP102表面タンパク質;Vasconcelosら、「Swine and poultry pathogens:the complete genome sequences of two strains of Mycoplasma hyopneumoniae and a strain of Mycoplasma synoviae」、J.Bacteriol.、2005年、187(16)ら、5568~5577頁に記載のP76、P146、P216アドヘシン若しくはP95膜タンパク質、又はCaronら、「Diagnosis and differentiation of Mycoplasma hyopneumoniae and Mycoplasma hyorhinis infections in pigs by PCR amplification of the p36and p46genes」、J.Clin.Microbiol.、2000年、38(4)巻、1390~1396頁に記載のp36細胞質タンパク質、又はリボソームRNA、弱毒化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞、及びそれらの組み合わせである。より具体的には、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原は、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞の形態である。さらにより具体的には、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原は、不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞溶解物の形態である。
【0096】
第4の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原は、不活化ブタサーコウイルス粒子、弱毒化ブタサーコウイルス粒子、ブタサーコウイルスの単離タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形態である。より具体的には、ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原は、ブタサーコウイルスの単離タンパク質である。さらに具体的には、1又は複数の抗原は、ORF1、ORF2、及びORF3タンパク質を含む群から選択される。より具体的には、抗原はORF2タンパク質である。
【0097】
別の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、ブタサーコウイルスは、ブタサーコウイルス2型(PCV2)である。
【0098】
PCV2の異なる遺伝子型、例えば、PCV2a、PCV2b、PCV2c及びPCV2dは、第1の態様の特定の実施形態に包含される。現在、a~eと名付けられている5つの異なるPCV2遺伝子型がある。PCV2の遺伝子型は、ORF2(カプシド)中のヌクレオチド置換数をORF2の総ヌクレオチド(702nt)で割ることによって決定され、この分率はp-距離(p-distance)と呼ばれる。p-距離が0.035を超える場合、ウイルスには新しい遺伝子型が与えられる(Segalesら、2008年)。これは紛らわしい点があるが、少なくとも命名法は標準化されている。PCV2のORF2は、約233アミノ酸のタンパク質をコードしている。PCV2 ORF2は全て、本発明での使用に適している。さまざまな遺伝子型のPCV2 ORF2配列は、Segalesら、2008年、又はXiaoら、2015年に開示されている。PCV3(Palinski R.ら、2016年に開示されている)などの他の新しいブタサーコウイルスも本発明に包含される。
【0099】
本発明は、すべてのPCV2 ORF2タンパク質変異体、例えば、とりわけ、GenBank受託番号AAC35310(バージョンAAC35310.1)、AAC35331(バージョンAAC35331.1)、又はABX71779(バージョンABX71779.1)のものを包含することを意図する。
【0100】
第4の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチン中の抗原は、ブタサーコウイルスの1又は複数のタンパク質を発現する不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ変異株細胞である。
【0101】
第4の態様の別の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mhyo)細胞は、Leibniz-Institut DSMZに寄託されたMhyoの変異株に由来し、受託番号DSM 26020のMhyoの変異株、受託番号DSM26034のMhyoの変異株、受託番号DSM26027のMhyoの変異株、及び受託番号DSM26033のMhyoの変異株から選択される。
【0102】
この第4の態様の皮内混合ワクチン中のマイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原、及びブタサーコウイルスの1又は複数の抗原は、免疫学的有効量である。特定の実施形態では、ブタサーコウイルス抗原の量は、0.1μg/用量~10μg/用量、より具体的には0.1μg/用量~5μg/用量、さらにより具体的には0.5μg/用量~4μg/用量である。別の特定の実施形態では、混合ワクチン中のマイコプラズマ・ハイオニューモニエの抗原の量は、10細胞/用量~1011細胞/用量である。より具体的には、10細胞/用量~1011細胞/用量、より具体的には10細胞/用量~1011細胞/用量の量である。
【0103】
別の特定の実施形態では、本発明のような皮内混合ワクチンのワクチン用量は、0.05~0.5ml、特に0.1~0.2mlを含む。
【0104】
第4の態様の別の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、皮内混合ワクチンは1つ又は複数のさらなる抗原をさらに含み、該さらなる抗原は、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブラキスピラ属(Brachyspira)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クラミジア属(Chlamydia)及びクラミドフィラ属(Chlamydophila)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エリシペロスリクス属(Erysipelothrix)、エシェリヒア属(Escherichia)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イソスプラ属(Isospora)、ローソニア属(Lawsonia)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ナイセリア属(Neisseria)、パスツレラ属(Pasteurella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)及びエルシニア属(Yersinia)、並びにブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後発育不全症候群(periweaning failure to thrive syndrome)作用物質、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、カリシウイルス、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びそれらの組み合わせからなる微生物の群から選択される。
【0105】
上記で開示したように、本発明はまた、家畜の医薬品として使用するための皮内混合ワクチンを提供する。
【0106】
第5の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、ワクチンは、家畜におけるマイコプラズマ・ハイオニューモニエによって引き起されるブタ流行性肺炎、及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療に使用するためのものである。この実施形態は、本発明の第5の態様の皮内混合ワクチンの、家畜の真皮に医薬品を投与することによるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療用医薬品の製造のための使用として製剤化することもできる。この実施形態はまた、特にマイコプラズマよって引き起こされるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療のために、第5の態様の混合ワクチンを用いてそれを必要とする家畜を皮内免疫化する方法として製剤化することができる。
【0107】
第5の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、家畜はブタである。
【0108】
第5の態様の特定の実施形態では、ワクチンは、さらなる疾患の予防及び/又は治療に使用するためのものであり、該ワクチンは下記によって形成される群から選択される微生物から選択される1又は複数のさらなる抗原を含む:アクチノバチルス属(Actinobacillus sp.)、ブラキスピラ属(Brachyspira sp.)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、ストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)、イソスプラ属(Isospora sp.)、エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ属(Leptospira sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、クロストリジウム属(Clostridium sp.)、マイコプラズマ属(Mycoplasma sp.)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、大腸菌(Escherichia coli)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後発育不全症候群(periweaning failure to thrive syndrome)作用物質、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、カリシウイルス、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びトルクテノウイルス(TTV)。
【0109】
上記のように、本発明はまた、(a)第4の態様の皮内混合ワクチン、(b)任意選択で、ワクチンの皮内送達に適した送達装置、及び(c)任意選択で、その使用に関する説明書、を含むワクチン接種パーツキットに関する。
【0110】
第6の態様の特定の実施形態では、任意選択で上記又は下記の任意の実施形態と組み合わせて、ワクチン接種キットは、マイコプラズマ属及び/又はブタサーコウイルスによって引き起される疾患の予防及び/又は治療に使用するためのものである。より具体的には、マイコプラズマによって引き起こされるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療に使用するためのものである。
【0111】
説明及び特許請求の範囲を通して、「含む」という単語及びその単語の変形は、他の技術的特徴、添加物、成分又は工程を除外することを意図するものではない。さらに、「含む」という言葉は、「からなる」という場合も包含する。本発明の追加の目的、利点及び特徴は、説明を検討することにより当業者に明らかになるか、又は本発明の実施により習得することができる。以下の実施例及び図面は例示のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。図面に関連し、特許請求の範囲の中で括弧内に配置された参照符号は、特許請求の範囲の明瞭度を高めるための試みであり、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。さらに、本発明は、本明細書に記載された特定の好ましい実施形態のすべての可能な組み合わせを網羅する。
【0112】
本発明の具体的条項は以下の通りである:
【0113】
第1項 以下を含む皮内混合ワクチン:
-マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の1又は複数の抗原;
-ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原;
鉱油と、疎水性添加剤、両親媒性添加剤及びそれらの組み合わせから選択される添加剤とを含むアジュバントエマルジョン;並びに
-薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体。
【0114】
第2項 添加剤が、イソプレン単位のポリマー、ブロックコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、第1項に記載の皮内混合ワクチン。
【0115】
第3項 添加剤がブロックコポリマーである、第2項に記載の皮内混合ワクチン。
【0116】
第4項 ブロックコポリマーが非イオン性ブロックコポリマーである、第3項に記載の皮内混合ワクチン。
【0117】
第5項 非イオン性ブロックコポリマーがポロキサマーである、第4項に記載の皮内混合ワクチン。
【0118】
第6項 ポロキサマーが式(I)のものである、第5項に記載の皮内混合ワクチン(式中、aが2~130の整数であり、bが15~67の整数である。):
【化4】
【0119】
第7項 ポロキサマーにおいて、aが101であり、bが56である、第6項に記載の皮内混合ワクチン。
【0120】
第8項 マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原が、マイコプラズマ・ハイオニューモニエの単離タンパク質、弱毒化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形態である、第1項~第7項のいずれかに記載の皮内混合ワクチン。
【0121】
第9項 マイコプラズマ・ハイオニューモニエの1又は複数の抗原が、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞の形態である、第8項に記載の皮内混合ワクチン。
【0122】
第10項 ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原が、不活化ブタサーコウイルス粒子、弱毒化ブタサーコウイルス粒子、ブタサーコウイルスの単離タンパク質、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される形態である、第1項~第9項のいずれかに記載の皮内混合ワクチン。
【0123】
第11項 ブタサーコウイルスの1又は複数の抗原が、ブタサーコウイルスの単離タンパク質の形態である、第1項~第10項のいずれかに記載の皮内混合ワクチン。
【0124】
第12項 抗原が、ブタサーコウイルスの1又は複数のタンパク質を発現する不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ変異株細胞である、第1項~第11項のいずれかに記載の皮内混合ワクチン。
【0125】
第13項 不活性化マイコプラズマ・ハイオニューモニエ細胞が、Leibniz-Institut DSMZに寄託されたMhyoの変異株に由来し、受託番号DSM26020のMhyoの変異株、受託番号DSM26034のMhyoの変異株、受託番号DSM 26027のMhyoの変異株、及び受託番号DSM26033のMhyoの変異株から選択される、第12項に記載の皮内混合ワクチン。
【0126】
第14項 以下からなる微生物の群から選択される1又は複数のさらなる抗原をさらに含む、第1項~第13項のいずれかに記載の皮内混合ワクチン:アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、ブラキスピラ属(Brachyspira)、ブルセラ属(Brucella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クラミジア属(Chlamydia)及びクラミドフィラ属(Chlamydophila)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、エリシペロスリクス属(Erysipelothrix)、エシェリヒア属(Escherichia)、フランシセラ属(Francisella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イソスプラ属(Isospora)、ローソニア属(Lawsonia)、レジオネラ属(Legionella)、レプトスピラ属(Leptospira)、リステリア属(Listeria)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ナイセリア属(Neisseria)、パスツレラ属(Pasteurella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、リケッチア属(Rickettsia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、トレポネーマ属(Treponema)、ビブリオ属(Vibrio)及びエルシニア属(Yersinia)、並びにブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後発育不全症候群(periweaning failure to thrive syndrome)作用物質、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、カリシウイルス、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びそれらの組み合わせ。
【0127】
第15項 家畜の医薬品として使用するための、第1項~第14項のいずれかに定義されている皮内混合ワクチン。
【0128】
第16項 マイコプラズマ・ハイオニューモニエによって引き起こされるブタ流行性肺炎及び/又はブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)の予防及び/又は治療に、並びに任意選択で、ブタを冒す別の疾患又は病態に対して使用するための、第15項に記載の使用のための皮内混合ワクチン。
【0129】
第17項 家畜がブタである、第15項~第16項のいずれかに記載の使用のための皮内混合ワクチン。
【0130】
第18項 さらなる疾患の予防及び/又は治療に使用するためのものであり、下記によって形成される群から選択される微生物から選択される1又は複数のさらなる抗原を含む、第15項~第17項のいずれかに記載の皮内混合ワクチン:アクチノバチルス属(Actinobacillus sp.)、ブラキスピラ属(Brachyspira sp.)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、ストレプトコッカス属(Streptococcus sp.)、イソスプラ属(Isospora sp.)、エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、レプトスピラ属(Leptospira sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、クロストリジウム属(Clostridium sp.)、マイコプラズマ属(Mycoplasma sp.)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、大腸菌(Escherichia coli)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後発育不全症候群(periweaning failure to thrive syndrome)作用物質、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、カリシウイルス、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びトルクテノウイルス(TTV)。
【0131】
第19項
(a)第1項~第14項のいずれかに定義されている皮内混合ワクチン、
(b)任意選択で、ワクチンの皮内送達に適した送達装置、及び
(c)任意選択で、その使用に関する説明書、を含むワクチン接種パーツキット。
第20項マイコプラズマ属及び/又はブタサーコウイルスによって引き起こされる疾患の予防及び/又は治療に使用するための、第19項に定義されたワクチン接種パーツキット。
【実施例
【0132】
実施例1:
ブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)、及び流行性肺炎に対するさまざまな皮内混合ワクチンの安全性及び有効性:用量あたり固定PCV2 ORF2濃度において。
【0133】
この研究の目的は、子ブタにおける流行性肺炎(EP)及びブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)に対する、M.ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)とPCV2との異なる混合皮内ワクチン製剤の安全性及び有効性を評価することであった。研究は無作為化された完全盲検ベースで行われた。
【0134】
M.ハイオニューモニエに対する抗体を有さない、6週齢の合計47匹の子ブタを研究のために選択した。動物はPCV2に対する母体由来の抗体が高かった。子ブタを、5匹の子ブタを含むグループFを除いて、それぞれ7匹の子ブタの6つの処置グループ(グループA~G)に割り当てた。
【0135】
すべての子ブタに、無針装置(国際公開第2016102619号パンフレット、HIPRA SCIENTIFIC、S.L.U.、Spainに開示されているものなど)を用いて対応する製剤の単回用量0.2mlを皮内経路により研究の0日目にワクチン接種した。グループA~Eの混合ワクチンは、同じ抗原性物質、0.6μg/用量のPCV2 ORF2タンパク質と、1.57x1010のM.ハイオニューモニエ不活性化細胞/用量とを含有した。グループFには、IDALワクチン接種器(MSD Animal Health)を用いて市販ワクチンPORCILIS(登録商標)MHYO ID ONCE(M.hyo抗原のみを含有する一価ワクチン)の単回用量0.2mLを投与し、同時に針付注射器系で筋肉内経路によって、市販のワクチンPORCILIS(登録商標)PCV(PCV2 ORF2抗原のみを含有する一価ワクチン)の単回用量2mLを投与した。最後に、グループGには、グループA~Eと同じ方法で皮内経路により0.2mlのプラセボ(PBS)を投与した。
【0136】
さらに各グループに対して異なるアジュバントを試験した。
・グループA:21.2%の鉱油を含有するM.hyo/PCV2混合ワクチン。
・グループB:21.2%の鉱油と2%のブロックコポリマー(Poloxamer407、BASF)とを含有するM.hyo/PCV2混合ワクチン。
・グループC:30%の鉱油と5%のスクアレンとを含有するM.hyo/PCV2混合ワクチン。
・グループD:21.2%の鉱油と5%のスクアレンとを含有するM.hyo/PCV2混合ワクチン。
・グループE:Montanide IMS251(SEPPIC)を含有するM.hyo/PCV2混合ワクチン。
・グループF:PORCILIS(登録商標)MHYO ID ONCE及びPORCILIS(登録商標)PCV(それぞれ、M.hyo一価IDワクチン及びPCV2 ORF2一価IMワクチン;MSD Animal Health)、両方とも、それぞれのEU販売承認の製品概要(EU Marketing Authorisation,Summary of Product Characteristics)に基づいてアジュバントとして鉱油と酢酸dl-α-トコフェリルとを含有する。
・グループG:プラセボ、PBSを注射した。
【0137】
研究29日目に、すべての子ブタに、病原性PCV2b及び病原性M.ハイオニューモニエをチャレンジした。3ml/子ブタのPCV2b病原性株を鼻腔内(各鼻孔に1.5ml)に接種した。M.ハイオニューモニエ感染については、気管内経路を使用して、10ml/子ブタの病原性M.ハイオニューモニエ株を接種した。
【0138】
安全性
すべての子ブタの臨床徴候を毎日観察した。安全性評価の主な変数は、体温とワクチン接種に対する局所的及び全身的反応とであった。
【0139】
ワクチン接種の日(ワクチン接種前、及びワクチン接種の3時間後と6時間後)及びワクチン接種後2日目まで、各子ブタの体温を観察し、記録した。
【0140】
ワクチンの局所反応を、0日目(ワクチン接種後3時間及び6時間)及びワクチン接種後1、2、7、14及び21日目に観察した。これらの反応を、局所反応スコアの平均によって評価した。スコアを、ワクチン接種の時点での病変のサイズ、色、及び外観(存在する場合)に基づいて計算した。
【0141】
結果を図1及び図2にまとめる。
【0142】
体温の上昇は、すべてのグループで、ワクチン接種後6時間で最大ピークに達した。ワクチン接種後の1日で体温は基礎値に戻った。高い平均ピーク値は、IMS251(SEPPIC)を含有する、グループEのD0(ワクチン接種後+6h)で最大1.7℃増加(41.7℃)したのに対し、対照群の値は39~40℃の範囲であった。異なる鉱油濃度(それぞれ21.2%、30%+スクアレン、及び21.2%+スクアレン)を含有するワクチン接種グループA、C、Dの平均体温上昇は、0.9~1.5℃であった。グループB(鉱油21.2%+Poloxamer407)は、対照グループG及びグループF(一価のPorcilis(登録商標)MHYO ID ONCEとPorcilis(登録商標)PCVとを同時にワクチン接種した)で得られた値と非常に近いわずか0.5℃の体温上昇を記録した。2%のPoloxamer407+鉱油をアジュバントとして加えたワクチンを投与されたグループは、この成分を含まない同等の混合プロトコルのワクチングループの体温を低下させることが実証された。
【0143】
目視検査及び触診により評価された局所反応に関して、対照群の動物には局所反応がなかった。Montanide IMS251(グループE)は、ワクチン接種後2日まで、他のグループの製剤と比較して高い局所反応スコアを記録した。この研究ではまた、混合ワクチン中の鉱油濃度が高いほど、最長の局所反応が記録されることが明らかになった。グループFのPorcilis MHYO ID ONCEは、グループBと比較して、ワクチン接種後14日目、及び21日目まで持続する高い局所反応を有した。Poloxamer407を添加した21.2%の鉱油を含有するグループBにおいて、最高の局所安全性が達成された。
【0144】
有効性
ワクチン接種前の21日目及び1日目、並びにワクチン接種後14、21、31、45、53及び56日目にすべての動物から血液サンプルを収集した。PCV2及びMhyoに対する抗体についてサンプルを試験した。Mhyoの有効性を、異なる処置グループのM.ハイオニューモニエ様病変に罹患した表面によって評価した。
【0145】
M.ハイオニューモニエ(M.hyopneuminae)の有効性
チャレンジの有効性評価の主な変数は、肺病変のスコア化であった。各肺葉を、M.ハイオニューモニエ様の病変(すなわち、肺硬化)に罹患した組織の割合に応じて0から5の間でスコア化した。
【0146】
【表1】
【0147】
総肺重量に対する各肺葉の寄与を考慮した0~5の範囲の加重スコアを取得するために、次の式を適用した:
【0148】
(RA×0.11)+(LA×0.05)+(RC×0.1)(LC×0.06)+(RD×0.34)+(LD×0.29)+(I×0.05)=加重スコア
【0149】
次に、加重スコア値を使用して、罹患した肺の割合を計算した。
【0150】
感染27日後(D56)、すべての動物を人道的に安楽死させた。剖検中、動物をM.ハイオニューモニエの肺病変について分析した。すべてのワクチン接種グループは、対照PBSグループよりも病変スコアが低かった。
【0151】
研究では、Montanide IMS251(グループE)及びPorcilis(登録商標)MHYO ID ONCE+Porcilis(登録商標)PCV(グループF)が最も高い肺病変スコアを示したのに対し、鉱油のみ、又はスクアレンやポロキサマー407などの他の成分との組合わせを含有する製剤に基づいたグループA~Dは、より良好に作用し、肺病変スコアが比較的小さかった。より高い濃度(30%)の鉱油を含有するグループCは、Mhyoのチャレンジに対する有効性の点でより良い結果をもたらしたが、21.2%の鉱油と2%のブロックコポリマー(Poloxamer407)とを含有する製剤をワクチン接種したグループBは、安全性及び有効性の両方においてよりよく作用した。
【0152】
PCV2の有効性
PCV2のセロコンバージョンを、ワクチン接種されずにチャレンジされたグループ(グループG)を除くすべてのグループでチャレンジ後に観察した。
【0153】
したがって、これらのM.hyo/PCV2皮内混合ワクチン(グループA~Eに投与された製剤)は、用量あたり含有されるORF2 PCV2カプシドタンパク質が少量であっても、PCV2チャレンジに対する効果的な応答を達成することが実証された。
【0154】
実施例2:
ブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)及び流行性肺炎に対する皮内ワンショット混合ワクチンの安全性及び有効性:用量あたり異なるPCV2 ORF2濃度で。
【0155】
この研究の目的は、用量あたり異なる濃度のPCV2 ORF2タンパク質を含み、さらに異なる濃度の鉱油を含むように製剤化した場合の、子ブタにおける流行性肺炎(EP)及びブタサーコウイルス関連疾患(PCVAD)に対する、M.ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)とPCV2との異なる混合皮内ワクチンの安全性及び有効性を評価することであった。
【0156】
研究は無作為化された完全盲検ベースで行われた。
【0157】
この試験では、M.ハイオニューモニエに対する抗体を有さず、PCV2に対する母親由来の抗体のレベルが低い、4週齢の雄又は雌の合計50匹の子ブタを使用した。子ブタはそれぞれ10匹の動物(A~D)の4つの処置グループに割り当てられ、グループEは監視グループとして機能した。各グループは、研究の0日目に異なるワクチン接種処置を受けた。
【0158】
1.グループA:用量当たり3×1010の不活化M.ハイオニューモニエ細胞と1.25μgのPCV2 ORF2タンパク質とを含み、21.2%の鉱油と0.5%のブロックコポリマーとをアジュバントとした混合ワクチンの単回用量0.2mlを皮内にワクチン接種した。
2.グループB:用量当たり2.2×1010の不活化M.ハイオニューモニエ細胞と1.49μgのPCV2 ORF2タンパク質とを含み、15%の鉱油と0.5%のブロックコポリマーとをアジュバントとして含有するワクチンの単回用量0.2mlを皮内にワクチン接種した。
3.グループC:子ブタに2つの市販のワクチンを同時投与した。子ブタに、0.2mlのPORCILIS(登録商標)MHYO ID ONCE(MSD Animal Health)ワクチンを皮内投与で、及び2mlのPORCILIS(登録商標)PCV2(MSD Animal Health)を首の反対側に筋肉内に投与した。
4.グループD:このグループには、ワクチン接種されずにチャレンジされたグループとして、2mlのPBSを筋肉内に投与した。
5.グループE:このグループは、ワクチン接種されず、チャレンジされていないグループとして、0.2mlのPBSを皮内に投与した。
【0159】
PCV2とM.ハイオニューモニエとの同時感染モデルを使用して、ワクチンの有効性を評価した。実験的チャレンジを、ワクチン接種の4週間後にグループA、B、C、及びDに対して鼻腔内感染によって実施した。グループEは感染させず、ワクチン接種されず、チャレンジされていない対照として機能した。子ブタに、以下の接種材料:(i)カニューレにより各動物の鼻腔内に接種された3mlの病原性PCV2b株(各鼻孔に1.5ml)、及び(ii)カニューレにより接種された5ml/子ブタの病原性M.ハイオニューモニエ株(各鼻孔に2.5ml)を投与した。M.ハイオニューモニエのチャレンジを3日間連続して繰り返した。
【0160】
チャレンジ後28日目(試験56日目)にブタを人道的に安楽死させた。混合ワクチンの有効性を評価するために、M.ハイオニューモニエの肺病変をスコア化した。扁桃、鼠径部、腸間膜及び縦隔のリンパ節をQ-PCRによるPCV2定量化のために収集した。さらに、局所反応及び全身反応を研究中に評価した。
【0161】
結果
・安全性
ワクチン接種の前に、子ブタの健康状態を観察した。体温を、ワクチン接種前0日目、ワクチン接種後4時間及び6時間、並びにワクチン接種後1、2、及び3日目にすべての子ブタについて記録した。局所反応を、0日目(ワクチン接種後4時間及び6時間)、及びワクチン接種後1、2、3、7及び14日目に記録した。
【0162】
各グループの平均体温上昇を計算した。すべてのワクチン接種グループでは、ワクチン接種後6時間で平均体温がわずかに上昇した。グループAの最大温度上昇は1.03℃であり、ブタのワクチンでは許容範囲であった。
【0163】
すべてのワクチン接種グループで、動物は局所反応を示した。しかし、鉱油+ブロックコポリマーのアジュバントを含有するグループA及びBの方がよりよく作用した。グループAとBの両方では、最初の局所反応スコアのピークはワクチン接種の日とワクチン接種後1日目に観察されたが、この局所反応はワクチン接種後3日後に急速に減少した。対照的に、グループC(Porcilis(登録商標)MHYO ID ONCE及びPorcilis(登録商標)PCVをワクチン接種)には、ID経路に関連する重要な局所病変があり、14日目(局所病変が監視された最終日)まで持続した。
【0164】
この結果に基づいて、MhyoとPCV2との皮内混合ワクチンA及びBは良好な安全性プロファイルをもたらしたと結論付けることができる。局所反応に関しては、1価のPorcilis(登録商標)MHYO ID ONCEワクチンは14日目まで重要な局所反応を引き起こし、これと比較して二価の皮内ワクチンA及びBは局所病変の減少がワクチン接種後2日目に見られたため、MhyoとPCV2との皮内混合ワクチンA及びBは、市販の1価ワクチンをワクチン接種した場合よりも安全であると結論づけることができる。
【0165】
さらに、Porcilis(登録商標)PCV2を筋肉内ワクチン接種されたグループCの10匹の子ブタのうち1匹はアナフィラキシー反応を示したが、皮内ワクチンをワクチン接種された20匹の子ブタ(グループA及びB)は1匹も全身反応を示さなかった。皮内ワクチン接種は、どの製剤であっても、全身反応の点で筋肉内ワクチンよりも安全であったと結論付けることができる。
【0166】
・M.ハイオニューモニエの有効性
チャレンジの有効性評価の主な変数は、肺病変のスコア化であった。スコアは、実施例1に記載のように計算した。
【0167】
研究の終わりに、すべての動物を人道的に安楽死させた。剖検中、動物をM.ハイオニューモニエの肺病変について分析した。
【0168】
M.ハイオニューモニエの肺病変の結果から、二価の皮内混合ワクチンA及びBは、陰性対照グループと比較して、罹患した肺の割合を明らかに減少させたことが示された(図2)。また、2価のMhyoとPCV2とのワクチンA及びBを使用すると、肺病変領域の大幅な減少が観察されたことも示されている。
【0169】
・PCV2の有効性。
有効性評価の主な変数は、Q-PCRにより測定されたPCV2ウイルス血症の減少であった。PCV2のセロコンバージョン、PCR陽性動物の割合、及び臨床徴候も評価した。
【0170】
血清中のPCV2 IgG抗体は、ブタサーコウイルス2型抗体テストキット(BioChek)を使用して、感染後7、14、21、28日目に分析した。S/P比を計算した(図6)。結果は、すべてのワクチン接種グループが、対照グループと比較して大幅にセロコンバージョンを増加させたので、すべてのワクチンの有効性を実証している。
【0171】
Q-PCRは、感染後7、14、21、及び28日目(研究35、42、49、56日目)に血清及び鼻腔スワブについて行った。各サンプルのPCV2ゲノムDNAをPCRで定量化した。研究の最後にすべての動物を剖検し、肺、扁桃、縦隔、腸間膜、及び鼠径部のリンパ節などのさまざまな組織のPCV2力価を分析した。
【0172】
結果は、Q-PCRによるPCV2陽性動物の割合が、陰性対照グループと比較してワクチン接種グループで減少したことを示した。
【0173】
さまざまな組織におけるPCV2力価の低下は、すべてのワクチン接種グループと陰性対照との間で有意差があった。これらの結果は、M.hyo/PCV2混合ワクチンA及びBがPCV2に対して有効であったことも実証した。
【0174】
結論として、鉱油及びブロックコポリマーを含有する皮内M.hyo/PCV2混合ワクチンは、市販の1価のIDワクチンよりもさらに安全な安全プロファイルをもたらした。同時に、新しいM.hyo/PCV2混合ワクチンA及びBはまた、PCV2及びM.ハイオニューモニエに対して有効な応答を示した。
【0175】
この研究では、これらのM.hyo/PCV2皮内混合ワクチン(グループA及びB)は、用量あたり含有されるORF2 PCV2カプシドタンパク質が少量であっても、効果的なPCV2応答を達成することが実証された。
【0176】
引用リスト
WO2014009586
WO2016102619
WO2017162741
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図2
図3
図4
図5
図6