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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電子時計及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   G04G 21/04 20130101AFI20240627BHJP
   G04C 3/00 20060101ALI20240627BHJP
   G04R 20/26 20130101ALI20240627BHJP
   H04B 10/116 20130101ALN20240627BHJP
【FI】
G04G21/04
G04C3/00 B
G04R20/26
H04B10/116
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021001562
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106512
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】荒木 将之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 暁祥
(72)【発明者】
【氏名】西田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】関根 彬允
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 智
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102742(JP,A)
【文献】特開2016-15601(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00 - 99/00
G04C 1/00 - 99/00
G04R 20/26 - 2O/30
H04B 10/00 - 10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端末と光通信をする電子時計であって、
前記制御端末からの光信号を受光して電気信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第1通信方式に従う同期信号を受け付ける同期信号検出部と、
前記同期信号が検出された場合に、前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第2通信方式に従う遷移信号を受け付ける遷移信号検出部と、
前記遷移信号が検出された場合に、前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第3通信方式に従う制御信号を受け付ける制御信号検出部と、
前記制御信号が検出された場合に、前記制御信号に基づいて前記電子時計を制御する制御部と、を有し、
前記同期信号が検出された後に前記遷移信号が検出されなかった場合に、前記制御信号検出部を起動させず、前記同期信号検出部を起動させて前記同期信号を受け付ける動作制御部をさらに有する、
ことを特徴とする電子時計。
【請求項2】
制御端末と光通信をする電子時計であって、
前記制御端末からの光信号を受光して電気信号に変換する光電変換部と、
前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第1通信方式に従う同期信号を受け付ける同期信号検出部と、
前記同期信号が検出された場合に、前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第2通信方式に従う遷移信号を受け付ける遷移信号検出部と、
前記遷移信号が検出された場合に、前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第3通信方式に従う制御信号を受け付ける制御信号検出部と、
前記制御信号が検出された場合に、前記制御信号に基づいて前記電子時計を制御する制御部と、を有し、
前記第1通信方式は、前記第2通信方式に比べて低い通信速度で通信され、
前記第2通信方式は、前記第3通信方式に比べて低い通信速度で通信される、
ことを特徴とする電子時計。
【請求項3】
前記同期信号が検出された場合に、前記変換された電気信号の供給先を前記同期信号検出部から前記遷移信号検出部に切り替え、前記遷移信号が検出された場合に、前記供給先を前記遷移信号検出部から前記制御信号検出部に切り替える切替部をさらに有する、
請求項1又は2に記載の電子時計。
【請求項4】
前記切替部は、前記供給先を前記遷移信号検出部に切り替えてから第1時間が経過するまでに前記遷移信号が検出されなかった場合に、前記供給先を前記同期信号検出部に切り替える、
請求項3に記載の電子時計。
【請求項5】
前記切替部は、前記供給先を前記遷移信号検出部に切り替えてから前記遷移信号とは異なる信号が検出された場合に、前記供給先を前記同期信号検出部に切り替える、
請求項3に記載の電子時計。
【請求項6】
前記同期信号が検出された場合に、前記同期信号検出部を休止させるとともに前記遷移信号検出部を起動させ、前記遷移信号が検出された場合に、前記遷移信号検出部を休止させるとともに前記制御信号検出部を起動させる動作制御部をさらに有する、
請求項2に記載の電子時計。
【請求項7】
前記同期信号検出部及び前記遷移信号検出部は、前記光電変換部からの給電により駆動する、
請求項1-6の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項8】
前記第1通信方式、前記第2通信方式及び前記第3通信方式は、強度変調方式である、
請求項1-7の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項9】
前記第1通信方式は、強度変調方式であり、
前記第2通信方式及び前記第3通信方式は、周波数変調方式である、
請求項1-7の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項10】
前記第1通信方式は、強度変調方式であり、
前記第2通信方式及び前記第3通信方式は、位相変調方式である、
請求項1-7の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項11】
前記第1通信方式及び前記第2通信方式は、強度変調方式であり、
前記第3通信方式は、周波数変調方式である、
請求項1-7の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項12】
前記第1通信方式及び前記第2通信方式は、強度変調方式であり、
前記第3通信方式は、位相変調方式である、
請求項1-7の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項13】
制御端末と光通信をする電子時計の通信方法であって、
光電変換部が、前記制御端末からの光信号を受光して電気信号に変換し、
前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第1通信方式に従う同期信号を受け付け、
前記同期信号が検出された場合に、前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第2通信方式に従う遷移信号を受け付け、
前記遷移信号が検出された場合に、前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第3通信方式に従う制御信号を受け付け、
前記制御信号が検出された場合に、前記制御信号に基づいて前記電子時計を制御し、
前記同期信号が検出された後に前記遷移信号が検出されなかった場合に、前記制御信号を受け付ける制御信号検出部を起動させず、前記同期信号を受け付ける同期信号検出部を起動させて前記同期信号を受け付ける、
ことを含むことを特徴とする通信方法。
【請求項14】
制御端末と光通信をする電子時計の通信方法であって、
光電変換部が、前記制御端末からの光信号を受光して電気信号に変換し、
前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第1通信方式に従う同期信号を受け付け、
前記同期信号が検出された場合に、前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第2通信方式に従う遷移信号を受け付け、
前記遷移信号が検出された場合に、前記光電変換部を介して、前記制御端末から送信された、第3通信方式に従う制御信号を受け付け、
前記制御信号が検出された場合に、前記制御信号に基づいて前記電子時計を制御し、
前記第1通信方式は、前記第2通信方式に比べて低い通信速度で通信され、
前記第2通信方式は、前記第3通信方式に比べて低い通信速度で通信される、
ことを含むことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池を備える電子時計において、太陽電池が携帯電話等の制御端末からの光信号を検出した場合に、光信号の内容に応じて時刻合わせやアラームの設定等の制御動作を実行する技術が知られている。このような電子時計において光信号を検出するための検出回路等を常に駆動しておくと消費電力が大きくなり、電子時計の連続駆動時間が短くなる。そこで、ユーザが電子時計に対してボタンを押下する等の操作をした場合に検出回路が起動されることがなされている。
【0003】
上述した電子時計では、光信号を送信して電子時計に制御動作をさせようとする場合に、ユーザは制御端末と電子時計との両方を操作する必要があり、煩雑であった。特許文献1には、検出回路を低通信レートで駆動させておき、検出回路が低通信レートの同期信号を検出した場合に検出回路を高通信レートに切り替えてデータ信号を受信する電子時計が記載されている。特許文献1に記載の電子時計によれば、ユーザが電子時計に対する操作をすることなく、検出回路の駆動に伴う消費電力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6482464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した同期信号は、光の強弱を所定のパターンに従って時間変化させたものである。検出回路の消費電力を低減するためには同期信号の通信レートを低くすることが好ましい。しかしながら、通信レートを低くすると、電子時計のユーザが日陰から日向に移動した場合等に生じる、電子時計の日常的な使用に伴う受光量の変化が同期信号であると誤検出されるおそれがある。この場合、検出回路が頻繁に高通信レートに切り替えられるため、かえって消費電力が大きくなる。そこで、このような電子時計において、消費電力を低減することが求められていた。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、消費電力を抑えながら、光信号の検出のためのユーザの操作負担を低減することを可能とする電子時計及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子時計は、制御端末と光通信をする電子時計であって、制御端末からの光信号を受光して電気信号に変換する光電変換部と、光電変換部を介して、制御端末から送信された、第1通信方式に従う同期信号を受け付ける同期信号検出部と、同期信号が検出された場合に、光電変換部を介して、制御端末から送信された、第2通信方式に従う遷移信号を受付ける遷移信号検出部と、遷移信号が検出された場合に、光電変換部を介して、制御端末から送信された、第3通信方式に従う制御信号を受付ける制御信号検出部と、制御信号が検出された場合に、制御信号に基づいて電子時計を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る電子時計は、同期信号が検出された場合に、変換された電気信号の供給先を同期信号検出部から遷移信号検出部に切り替え、遷移信号が検出された場合に、供給先を遷移信号検出部から制御信号検出部に切り替える切替部をさらに有する、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る電子時計において、切替部は、供給先を遷移信号検出部に切り替えてから第1時間が経過するまでに遷移信号が検出されなかった場合に、供給先を同期信号検出部に切り替える、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電子時計において、切替部は、供給先を遷移信号検出部に切り替えてから遷移信号とは異なる信号が検出された場合に、供給先を同期信号検出部に切り替える、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る電子時計は、同期信号が検出された場合に、同期信号検出部を休止させるとともに遷移信号検出部を起動させ、遷移信号が検出された場合に、遷移信号検出部を休止させるとともに制御信号検出部を起動させる動作制御部をさらに有する、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る電子時計において、同期信号検出部及び遷移信号検出部は、光電変換部からの給電により駆動する、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る電子時計において、第1通信方式、第2通信方式及び第3通信方式は、強度変調方式である、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る電子時計において、第1通信方式は、強度変調方式であり、第2通信方式及び第3通信方式は、周波数変調方式である、ことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る電子時計において、第1通信方式は、強度変調方式であり、第2通信方式及び第3通信方式は、位相変調方式である、ことが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る電子時計において、第1通信方式及び第2通信方式は、強度変調方式であり、第3通信方式は、周波数変調方式である、ことが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る電子時計において、第1通信方式及び第2通信方式は、強度変調方式であり、第3通信方式は、位相変調方式である、ことが好ましい。
【0018】
本発明に係る通信方法は、制御端末と光通信をする電子時計によって実行される通信方法であって、光電変換部が、制御端末からの光信号を受光して電気信号に変換し、光電変換部を介して、制御端末から送信された、第1通信方式に従う同期信号を受け付け、同期信号が検出された場合に、光電変換部を介して、制御端末から送信された、第2通信方式に従う遷移信号を受け付け、遷移信号が検出された場合に、光電変換部を介して、制御端末から送信された、第3通信方式に従う制御信号を受け付け、制御信号が検出された場合に、制御信号に基づいて電子時計を制御する、ことを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電子時計及び通信方法は、消費電力を抑えながら、光信号の検出のためのユーザの操作負担を低減することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】通信システム10の概略構成の一例を示す図である。
図2】電子時計1の正面図である。
図3】電子時計1の断面図である。
図4】電子時計1の概略構成の一例を示す図である。
図5】同期信号及び遷移信号について説明するための模式図である。
図6】制御端末2の概略構成の一例を示す図である。
図7】電子時計1の状態遷移図である。
図8】通信処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図9】電子時計1の消費電力について説明するための模式図である。
図10】電子時計1aの概略構成の一例を示す図である。
図11】電子時計1aの消費電力について説明するための模式図である。
図12】電子時計1bの概略構成の一例を示す図である。
図13】電子時計1bの状態遷移図である。
図14】第2通信処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図15】電子時計1bの消費電力について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0022】
図1は、本発明に係る通信システム10の概略構成の一例を示す図である。通信システム10は、電子時計1及び制御端末2を有する。電子時計1は、制御端末2と光通信をする時計であり、例えば太陽電池を有する腕時計である。制御端末2は、スマートフォン、携帯電話、タブレットPC(Personal Computer)等の、明滅可能な発光部を有する情報処理端末である。発光部は、例えば制御端末2が備えるカメラのフラッシュとして用いられるLED(Light Emitting Diode)光源であるが、これに限られず、液晶ディスプレイのバックライト等でもよい。
【0023】
制御端末2は、発光部を制御して、所定のパターンに従って光の強弱が変化する光信号を電子時計1に対して照射する。電子時計1は、光信号に含まれる制御信号に基づいて電子時計1を制御する。電子時計1の制御は、例えば、時刻合わせ、タイムゾーンの変更、アラームの設定等である。
【0024】
図2は、電子時計1の正面図であり、図3は、電子時計1の断面図である。図3は、図2のIII-III断面における断面図である。
【0025】
電子時計1は、外装ケース11、風防ガラス12、文字板13、時針141、分針142、秒針143、竜頭16、太陽電池17等を有する。太陽電池17は光電変換部の一例である。電子時計1は、光電変換部の一例としてフォトダイオード等を有してもよい。
【0026】
外装ケース11は、文字板13等を内蔵する扁平な部材である。外装ケース11は、電子時計1の前面に設けられた環状のベゼル111、背面に設けられた裏蓋113及びベゼル111と裏蓋113とを接合する胴112から形成される。
【0027】
ベゼル111は、接着部材114により胴112の前部と接着される。胴112は、その後部において、接着部材115により裏蓋113と接着される。また、胴112の外周部には、バンドを取付けるための取付部118が形成される。また、胴112の外周部には、竜頭16が挿通される竜頭孔が形成される。
【0028】
ベゼル111、胴112及び裏蓋113は、ステンレス鋼により形成される。ベゼル111、胴112及び裏蓋113は、チタン若しくは金等の他の金属又は樹脂等により形成されてもよい。
【0029】
風防ガラス12は、外装ケース11の前面に、ベゼル111に囲まれるようにして取付けられる。風防ガラス12は、円板状に形成された透明のガラス板であり、サファイアガラス又はミネラルガラス等により形成される。風防ガラス12は、接着部材124により胴112の前部と接着され、文字板13、時針141、分針142及び秒針143を覆うことにより、これらを前方から視認可能にしながら保護する。
【0030】
文字板13は、時針141、分針142及び秒針143によって指示される時字131が前面に表示された平板状の部材である。文字板13は、風防ガラス12に平行して外装ケース11に内蔵される。文字板13は、中央に文字板13の表裏を貫通する貫通孔137を有し、貫通孔137には、時針141、分針142及び秒針143の回転軸が挿通される。また、文字板13の前面の外周部分を覆うように、円環形状の第1見返し116が配置される。第1見返し116の外周部分及び外装ケース11の胴112の内周を覆うように、第2見返し117が配置される。
【0031】
時針141、分針142及び秒針143は、文字板13の前面に設けられ、文字板13の背面側の収容部15に収容されたムーブメント14によって、文字板13に表示された時字131を指示するように駆動される。時針141、分針142及び秒針143の回転軸は、同軸の時針パイプ144、分針パイプ145及び秒針パイプ146にそれぞれ挿通されてムーブメント14に接続される。時針141、分針142及び秒針143は、後述するムーブメント14から回転軸を介して回転力を伝達されることにより駆動する。図3では、収容部15に収容されたムーブメント14等の構成の図示が省略されている。
【0032】
竜頭16は、外装ケース11の胴112に設けられた竜頭孔に挿通されてムーブメント14に接続される、回転可能な軸状の部材である。竜頭16の回転力は、時刻合わせのため、ムーブメント14を介して時針141、分針142及び秒針143に伝達され、時針141、分針142及び秒針143を回転させる。
【0033】
太陽電池17は、制御端末2からの光信号を受光して電気信号に変換する部材である。太陽電池17は、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンによって略平板状に形成され、文字板13の後方に、文字板13と対向するように設けられる。太陽電池17は、光電効果によって、電子時計1に入射して文字板13を透過した入射光の強度に応じた電流を発生させる。なお、太陽電池17は、文字板13の外周面に沿ってリング状に設けられてもよい。
【0034】
図4は、電子時計1の概略構成の一例を示す図である。電子時計1は、二次電池151、記憶部152、音声出力部153、切替部18、検出部180及び処理部19をさらに有する。これらの各構成は、収容部15に収容される。
【0035】
二次電池151は、電子時計1の各構成に給電するための部材であり、例えば、リチウムイオン二次電池又はニッケル水素二次電池等である。二次電池151は、太陽電池17が入射光の強度に応じて発生させた電流により充電される。二次電池151と太陽電池17とは、電路の開閉を切り替え可能な電力切替部171を介して接続される。電路の開閉は、二次電池151の電圧に応じて、又は、後述する電子時計1と制御端末2との通信の状態に応じて切り替えられる。これにより、二次電池151の過充電が防止されるとともに、電子時計1と制御端末2との通信に必要な信号が適切に各部に供給される。
【0036】
ムーブメント14は、上述したように時針141、分針142及び秒針143を駆動するための構成である。ムーブメント14は、水晶振動子、制御回路、ステッピングモータ及び複数の歯車から構成される輪列を有するクォーツ式ムーブメントである。水晶振動子は、圧電効果により所定の周波数の電圧信号を生成する。制御回路は分周回路としての機能を有し、水晶振動子が生成した電圧信号の周波数を変換することにより所定の周期のパルス信号を出力する。ステッピングモータは、制御回路が出力したパルス信号に応じて、所定の周期で回転子を所定の角度だけ回転させる。輪列は、回転子の回転力を、回転数を変化させながら時針141、分針142及び秒針143にそれぞれ伝達することにより、時針141、分針142及び秒針143を駆動する。
【0037】
また、制御回路は、処理部19からの駆動制御信号に基づいてパルス信号を出力し、ステッピングモータの回転子を回転させる。また、制御回路は、ステッピングモータに対して出力したパルス信号を監視することにより、時針141、分針142及び秒針143によって指示される指示時刻を取得し、処理部19に供給する。
【0038】
記憶部152は、データ及びプログラムを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。記憶部152は、処理部19による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。
【0039】
音声出力部153は、音声を出力するための構成であり、例えばスピーカを備える。音声出力部153は、処理部19からの音声信号に基づいて音声を出力する。音声出力部153は、例えば、アラーム時刻ごとに供給される音声信号に基づいてアラーム音声を出力する。
【0040】
切替部18は、太陽電池によって光信号から変換された電気信号の供給先を切り替えるための構成であり、第1スイッチ18a、第2スイッチ18b及び第3スイッチ18cを備える。第1スイッチ18a、第2スイッチ18b及び第3スイッチ18cは、太陽電池17と同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184との電路の開閉をそれぞれ切り替える部材である。第1スイッチ18a、第2スイッチ18b及び第3スイッチ18cは、検出部180からの切替制御信号に基づいて電路の開閉を切り替えることにより、電気信号の供給先を切り替える。
【0041】
検出部180は、制御端末2から送信された光信号を検出するための構成であり、動作制御部181、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184を有する。
【0042】
動作制御部181は、切替部18、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184の動作を制御する電子回路である。動作制御部181の動作については図7を用いて後述する。
【0043】
同期信号検出部182は、制御端末2から送信された、第1通信方式に従う同期信号を検出するための構成であり、サンプリング回路及び検出判定回路を有する。サンプリング回路は、太陽電池17によって光信号から変換された電気信号を所定のサンプリング周期でサンプリングする。検出判定回路は、サンプリングされた電気信号が同期信号に対応するパターンに合致した場合、同期信号が検出されたと判定し、判定結果を動作制御部181に供給する。
【0044】
図5(a)は、光信号に含まれる同期信号について説明するための模式図である。同期信号は、それぞれが第1シンボル時間Tsy1だけ継続する複数のシンボルが時間tに応じて順次送信される時系列信号である。各シンボルは、光の強度Iが大きいシンボル(以下、「H」と称する。)又は光の強度Iが小さいシンボル(以下、「L」と称する。)のうちの何れかである。図5(a)に示す例では、同期信号はそれぞれが第1シンボル時間Tsy1だけ継続するHLHの3つのシンボルからなる。
【0045】
図5(b)はサンプリングされた同期信号について説明するための模式図である。サンプリング回路は、例えば第1シンボル時間Tsy1の半分以下の第1サンプリング周期Tsm1で、光信号から変換された電気信号をサンプリングする。検出判定回路は、サンプリングされた電気信号が、同期信号であるHLHのパターンに合致した場合、同期信号が検出されたと判定する。
【0046】
例えば、サンプリングされた電気信号の電圧値が2回続けて第1閾値th1以上の値をとった場合、検出判定回路は、Hのシンボルが送信されたと判定する。また、電圧値が2回続けて第1閾値th1より小さい第2閾値th2未満の値をとった場合、検出判定回路は、Lのシンボルが送信されたと判定する。このような判定を繰り返し、HLHの3つのシンボルが送信されたと判定した場合、検出判定回路は同期信号が検出されたと判定する。
【0047】
第1シンボル時間Tsy1は、例えば1秒である。すなわち、第1通信方式の通信速度は1シンボル毎秒である。この場合、サンプリング回路のサンプリング周期Tsm1は、例えば0.5秒に設定される。また、第1閾値th1及び第2閾値th2の値は、太陽電池17が受光する光の照度に基づいて決定され、例えば第1閾値th1は照度が1万ルクスである場合の電圧値であり、第2閾値th2は照度が500ルクスである場合の電圧値である。
【0048】
なお、シンボルの判定は、第1閾値th1のみに基づいてされてもよい。この場合、検出判定回路は、サンプリングされた電気信号の電圧値が第1閾値th1以上であればHのシンボルが送信されたと判定し、第1閾値th1未満であればLのシンボルが送信されたと判定する。この場合の第1閾値th1は、例えば太陽電池17が受光する光の照度が5000ルクスである場合の電圧値である。なお、閾値の設定及びシンボルの判定基準は、上述した例に限られず、適宜に設定されてよい。
【0049】
図4に戻り、遷移信号検出部183は、制御端末2から送信された、第2通信方式に従う遷移信号を検出するための構成であり、サンプリング回路及び検出判定回路を有する。サンプリング回路及び検出判定回路は、同期信号検出部182のサンプリング回路及び検出判定回路が同期信号を検出する場合と同様にして、遷移信号を検出されたか否かを判定し、判定結果を動作制御部181に供給する。
【0050】
図5(c)は、光信号に含まれる遷移信号について説明するための模式図であり、図5(d)は、サンプリングされた遷移信号について説明するための模式図である。遷移信号は、それぞれが第1シンボル時間Tsy1よりも短い第2シンボル時間Tsy2だけ継続する複数のシンボルからなる時系列信号である。遷移信号のシンボル数は、同期信号のシンボル数よりも多い。図5(c)に示す例では、遷移信号はそれぞれが第2シンボル時間Tsy2だけ継続するHLHLLHの6つのシンボルからなる。
【0051】
第2シンボル時間Tsy2は、例えば0.5秒である。すなわち、第2通信方式の通信速度は2シンボル毎秒である。この場合、サンプリング回路のサンプリング周期Tsm2は、例えば0.25秒に設定される。
【0052】
図4に戻り、制御信号検出部184は、制御端末2から送信された、第3通信方式に従う制御信号を検出するための構成であり、サンプリング回路及び復調回路を有する。サンプリング回路は、太陽電池17によって光信号から変換された電気信号を所定のサンプリング周期でサンプリングする。復調回路は、サンプリングされた電気信号のパターンに基づいて制御信号を復調して制御データに変換する。復調回路は、制御データを処理部19に供給する。
【0053】
制御信号のシンボル時間は、例えば0.01秒以下である。すなわち、第3通信方式の通信速度は、例えば100シンボル毎秒以上である。
【0054】
同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184は、動作制御部181からの制御信号に基づいて起動し、又は休止する。休止するとは、回路の一部又は全部への給電を遮断すること等により回路における消費電力を抑えること(所謂「スリープする」こと)をいう。
【0055】
処理部19は、電子時計1の動作を統括的に制御する構成であり、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部19は、例えばCPU(Central Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)等を備える。処理部19は、記憶部152に記憶されているプログラムに基づいて電子時計1の各構成の動作を制御し、又は処理を実行する。
【0056】
処理部19は、取得部191及び制御部192をその機能ブロックとして備える。これらの各部は、処理部19が実行するプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして電子時計1に実装されてもよい。
【0057】
図6は、制御端末2の概略構成の一例を示す図である。制御端末2は、端末記憶部21、操作部22、発光部23及び端末処理部24を有する。
【0058】
端末記憶部21は、データ及びプログラムを記憶するための構成であり、例えば半導体メモリを備える。端末記憶部21は、端末処理部24による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。
【0059】
操作部22は、制御端末2に対する入力操作を受付けるための構成であり、例えばタッチパネルを備える。操作部22は、キーパッド、キーボード又はマウス等を備えてもよい。操作部22は、ユーザによる入力操作を受付け、受付けた入力操作に対応する入力信号を端末処理部24に供給する。
【0060】
発光部23は、光信号を照射するための構成であり、例えばLED光源を備える。発光部23は、端末処理部24から供給された発光制御信号に基づいて明滅する。また、発光部23は、発光制御信号に基づいてPWM(Pulse Width Modulation)制御等を行うことにより、任意の輝度の光を照射することができる。
【0061】
端末処理部24は、制御端末2の動作を統括的に制御する構成であり、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。端末処理部24は、例えばCPU、LSI、ASIC、DSP等を備える。端末処理部24は、端末記憶部21に記憶されているプログラムに基づいて制御端末2の各構成の動作を制御し、又は処理を実行する。
【0062】
端末処理部24は、受付部241及び発光制御部242をその機能ブロックとして備える。これらの各部は、端末処理部24が実行するプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして制御端末2に実装されてもよい。
【0063】
図7は、電子時計1の状態遷移図である。電子時計1は、同期信号を検出するまでは、同期待ち状態S1にある。同期待ち状態S1において、電子時計1は、同期信号を受け付ける。同期待ち状態S1において、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184は休止している。
【0064】
同期待ち状態S1において同期信号が検出された場合に、同期信号検出部182は、同期信号が検出されたことを示す判定結果を動作制御部181に供給する。動作制御部181は、判定結果に基づいて、同期信号検出部182を休止させるとともに、遷移信号検出部183を起動させる。また、動作制御部181は、切替部18に切替制御信号を供給し、太陽電池17からの電気信号の供給先を同期信号検出部182から遷移信号検出部183に切り替える。これにより、電子時計1は遷移待ち状態S2に遷移し(T12)、遷移信号を受け付ける。
【0065】
遷移待ち状態S2において遷移信号が検出された場合に、遷移信号検出部183は、遷移信号が検出されたことを示す判定結果を動作制御部181に供給する。動作制御部181は、判定結果に基づいて、遷移信号検出部183を休止させるとともに、制御信号検出部184を起動させる。また、動作制御部181は、切替部18に切替制御信号を供給し、太陽電池17からの電気信号の供給先を遷移信号検出部183から制御信号検出部184に切り替える。これにより、電子時計1は制御待ち状態S3に遷移し(T23)、制御信号を受け付ける。
【0066】
遷移待ち状態S2に遷移してから第1時間が経過するまでに遷移信号が検出されなかった場合に、動作制御部181は、遷移信号検出部183を休止させるとともに、同期信号検出部182を起動させる。また、動作制御部181は、切替部18に切替制御信号を供給し、電気信号の供給先を遷移信号検出部183から同期信号検出部182に切り替える。これにより、電子時計1は同期待ち状態S1に遷移する(T21)。なお、第1時間が経過するまでに遷移信号が検出されなかった場合とは、例えば、第1時間が経過するまでに遷移信号を構成する複数のシンボルのうちの先頭のシンボルが検出されなかった場合である。すなわち、第1時間は、遷移待ち状態S2に遷移してから遷移信号の先頭のシンボルを受信するまでの待ち時間である。第1時間は、例えば2秒である。
【0067】
制御待ち状態S3において制御信号が検出された場合に、制御信号検出部184は、制御データを処理部19に供給する。これにより、処理部19は、制御信号に基づいて電子時計1を制御する。また、電子時計1は、再び制御待ち状態S3に遷移する(T33)。
【0068】
制御待ち状態S3に遷移してから第2時間が経過するまでに制御信号が検出されなかった場合に、動作制御部181は、制御信号検出部184を休止させるとともに、同期信号検出部182を起動させる。また、動作制御部181は、切替部18に切替制御信号を供給し、電気信号の供給先を制御信号検出部184から同期信号検出部182に切り替える。これにより、電子時計1は同期待ち状態S1に遷移する(T31)。なお、第2時間が経過するまでに制御信号が検出されなかった場合とは、例えば、第2時間が経過するまでに制御信号を構成する複数のシンボルのうちの先頭のシンボルが検出されなかった場合である。すなわち、第2時間は、制御待ち状態S3に遷移してから制御信号の先頭のシンボルを受信するまでの待ち時間である。第2時間は、例えば5秒である。
【0069】
図8は、通信システム10によって実行される通信処理の流れの一例を示すシーケンス図である。通信処理は、プログラムを実行する処理部19及び端末処理部24が、電子時計1及び制御端末2の各構成と協働することにより実現される。通信処理の開始時には、電子時計1は同期待ち状態S1にあり、同期信号検出部182は同期信号を受け付けている。
【0070】
まず、制御端末2の受付部241は、ユーザによる制御指示を受け付ける(S101)。受付部241は、ユーザによる、操作部22に対する操作を受け付けることにより、制御指示を受け付ける。制御指示は、電子時計1を制御するための指示であり、以下では、時刻合わせの指示であるものとして説明する。
【0071】
続いて、発光制御部242は、同期信号を送信する(S102)。発光制御部242は、同期信号に対応するパターンで発光部23を明滅させることにより、同期信号を含む光信号を電子時計1に送信する。
【0072】
続いて、電子時計1の同期信号検出部182は、同期信号を検出する(S103)。同期信号が検出された場合、電子時計1は遷移待ち状態S2に遷移し、遷移信号検出部183は遷移信号を受け付ける。
【0073】
続いて、制御端末2の発光制御部242は、遷移信号を送信する(S104)。発光制御部242は、あらかじめ設定された、遷移信号に対応するパターンで発光部23を明滅させることにより、遷移信号を含む光信号を電子時計1に送信する。
【0074】
続いて、電子時計1の遷移信号検出部183は、遷移信号を検出する(S105)。遷移信号が検出された場合、電子時計1は制御待ち状態S3に遷移し、制御信号検出部184は、制御信号を受け付ける。
【0075】
続いて、制御端末2の発光制御部242は、制御信号を送信する(S106)。発光制御部242は、端末記憶部21から、S101において入力された制御指示に対応する制御データを取得する。発光制御部242は、制御データに対応するパターンで発光部23を明滅させることにより、制御信号を含む光信号を電子時計1に送信する。制御指示が時刻合わせの指示である場合、制御データは時刻合わせを指示する情報及び時刻合わせの目標時刻を示す情報を含む。
【0076】
続いて、電子時計1の制御信号検出部184は、制御信号を検出する(S107)。制御信号が検出された場合、制御信号検出部184は、制御信号に対応する制御データを処理部19に供給する。取得部191は、供給された制御データを取得する。
【0077】
制御部192は、取得した制御データに基づいて、電子時計1を制御し(S108)、通信処理は終了する。制御部192は、制御データに含まれる、時刻合わせの目標時刻を取得する。制御部192は、ムーブメント14の制御回路から、現在の指示時刻を取得する。制御部192は、目標時刻と指示時刻の差に相当する回数だけステッピングモータを回転させる駆動制御信号をムーブメント14に供給することにより、時刻合わせをする。
【0078】
以上説明したように、電子時計1は、同期信号を受け付け、同期信号が検出された場合に遷移信号を受け付け、遷移信号が検出された場合に制御信号を受け付け、制御信号が検出された場合に電子時計1を制御する。これにより、電子時計1は、消費電力を抑えながら、光信号の検出のためのユーザの操作負担を低減することを可能とする。
【0079】
図9(a)は、電子時計1が通信する場合の消費電力の時間変化について説明するための模式図である。図9(a)においては、電子時計1の消費電力Pとして、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184の消費電力P1と、処理部19の消費電力P2とが分けて図示されており、以降についても同様とする。電子時計1が通信する場合、電子時計1は同期待ち状態S1、遷移待ち状態S2、制御待ち状態S3に順次遷移し、制御待ち状態S3において制御端末2と通信する。同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184の消費電力はこの順に大きくなるため、図9(a)に示すように、消費電力P1は電子時計1が同期待ち状態S1、遷移待ち状態S2、制御待ち状態S3に遷移するに伴い増大する。また、制御待ち状態S3においては取得部191及び制御部192が動作するため、処理部19の消費電力P2も発生する。
【0080】
図9(b)は、電子時計1が通信しない場合の消費電力の時間変化について説明するための模式図である。同期信号は比較的小さな通信速度を有する信号であるため、電子時計1のユーザが日陰から日向に移動した場合等の、電子時計1の日常的な使用に伴う受光量の変化が同期信号であると誤検出される場合がある。したがって、図9(b)に示すように、電子時計1が通信しない場合であっても電子時計1は遷移待ち状態S2に遷移する可能性がある。
【0081】
他方、遷移信号は同期信号の通信速度よりも大きい通信速度を有する信号であるため、電子時計1の日常的な使用に伴う受光量の変化が遷移信号であると誤検出される可能性は小さい。したがって、電子時計1が遷移待ち状態S2に遷移した場合でも、第1時間が経過するまでに遷移信号が検出されなかった場合、電子時計1は同期待ち状態S1に再遷移し、電子時計1が制御待ち状態S3に遷移することはない。これにより、電子時計1が同期信号を誤検出した場合でも、図9(b)に示すように消費電力P1は小さく抑えられ、処理部19の消費電力P2が発生しないため、電子時計1の消費電力が抑えられる。
【0082】
なお、電子時計1は、遷移待ち状態S2に遷移してから遷移信号とは異なる信号が検出された場合に同期待ち状態S1に遷移するようにしてもよい。この場合、遷移信号検出部183は、サンプリングされた電気信号に基づいて、シンボルを順次判定する。遷移信号検出部183は、遷移信号に含まれるシンボルと同数のシンボルを判定した時点で、シンボルの判定結果が遷移信号のパターンと一致するか否かを判定する。判定結果が遷移信号のパターンと一致すると判定された場合、動作制御部181は、切替部18を制御することにより電気信号の供給先を制御信号検出部184に切り替えて、電子時計1を制御待ち状態S3に遷移させる。判定結果が遷移信号のパターンと一致しないと判定された場合、動作制御部181は、切替部18を制御することにより電気信号の供給先を同期信号検出部182に切り替えて、電子時計1を同期待ち状態S1に遷移させる。これにより、同期信号が誤検出された場合に、遷移待ち状態S2に遷移してから同期待ち状態S1に遷移するまでの時間が短くなり、消費電力が低減される。
【0083】
また、遷移信号検出部183は、遷移信号に含まれるシンボルを受信するごとに、受信したシンボルが遷移信号のパターンと一致するか否かを順次判定してもよい。この場合、受信したシンボルパターンと遷移信号のパターンとが一致しないと判定された時点で、動作制御部181は切替部18を制御することにより電気信号の供給先を同期信号検出部182に切り替えて、電子時計1を同期待ち状態S1に遷移させる。このようにすることで、遷移信号に含まれるシンボルと同数のシンボルを受信する前に同期信号の誤検出による電気信号の供給先を同期信号検出部182に切り替える動作が可能となり、消費電力が更に軽減される。
【0084】
上述した説明では、制御指示が時刻合わせの指示であるものとしたが、このような例に限られない。例えば、制御指示はタイムゾーンの変更の指示でもよい。この場合、制御データには、変更後のタイムゾーンの情報が含まれる。そして、通信処理のS108において、制御部192は記憶部152から現在のタイムゾーンの情報を取得する。制御部192は、変更後のタイムゾーンと現在のタイムゾーンとの時差に相当する回数だけステッピングモータを回転させる駆動制御信号をムーブメント14に供給することにより、指示時刻を変更後のタイムゾーンにおける時刻に合わせる。また、制御部192は、変更後のタイムゾーンの情報を現在のタイムゾーンの情報として記憶部152に記憶する。
【0085】
制御指示は、アラームの設定でもよい。この場合、制御データには、アラームの時刻の情報が含まれる。そして、通信処理のS108において、制御部192はアラームの時刻の情報を記憶部152に記憶する。制御部192は、ムーブメント14から定期的に指示時刻を取得し、指示時刻がアラームの時刻に一致した場合に、音声出力部153に音声データを供給してアラーム音を出力する。
【0086】
上述した説明では、電子時計1は切替部18を有するものとしたが、このような例に限られず、電子時計1は切替部18を有しなくてもよい。この場合、太陽電池17からの電気信号は、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184にそれぞれ供給される。
【0087】
上述した説明では、電子時計1は動作制御部181を有するものとしたが、動作制御部181を有しなくてもよい。この場合、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184が休止することはないが、電子時計1が通信をしない場合には処理部19の消費電力が発生しないため、電子時計1の消費電力が抑えられる。
【0088】
上述した説明では、第1通信方式の通信速度は1シンボル毎秒であり、第2通信方式の通信速度は2シンボル毎秒であるものとしたが、このような例に限られず、これらの速度は第2通信方式の通信速度が第1通信方式の通信速度より大きくなる範囲において任意に設定されてよい。また、同期信号及び遷移信号のシンボル数も任意に設定されてよい。もっとも、信号のシンボル数が多くなると検出に長時間を要することとなるため、これらのパラメータは同期信号及び遷移信号の信号長(信号が継続する時間をいい、信号のシンボル数を通信速度で除した値)がそれぞれ5秒以内となるように設定されることが好ましい。
【0089】
上述した説明では、同期信号、遷移信号及び制御信号は、各シンボルがH及びLのうちの何れかをとる、所謂二値変調信号であるものとしたが、このような例に限られない。これらの信号は、各シンボルが3種類以上のシンボルのうちの何れかをとる、所謂多値変調信号でもよい。例えば、電子時計1において、同期信号及び遷移信号が二値変調信号とされ、制御信号が多値変調信号とされてもよい。これにより、電子時計1は、制御データを効率的に通信することを可能とする。
【0090】
また、第1通信方式、第2通信方式及び第3通信方式は、何れも光の強度をシンボルごとに異ならせる強度変調方式であるものとしたが、このような例に限られない。これらの信号は、所定の変調周波数で光の強度を変化させ、その変調周波数をシンボルごとに異ならせる周波数変調方式でもよい。この場合、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184は、サンプリング回路によってサンプリングされた電気信号を復調するためのデジタル信号処理回路をさらに有する。同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184は、太陽電池17からの、周波数変調信号である電気信号を復調するためのクアドラチャ検波回路等のアナログ検波回路をさらに有し、アナログ検波回路によって復調された信号をサンプリング回路に入力するようにしてもよい。
【0091】
これらの信号は、所定の変調周波数で光の強度を変化させ、その位相をシンボルごとに異ならせる位相変調方式でもよい。この場合、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184は、サンプリング回路によってサンプリングされた電気信号を復調するためのデジタル信号処理回路をさらに有する。同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184は、太陽電池17からの、位相変調信号である電気信号を復調するための差動検波回路等のアナログ検波回路をさらに有し、アナログ検波回路によって復調された信号をサンプリング回路に入力するようにしてもよい。
【0092】
また、第1通信方式、第2通信方式及び第3通信方式のうちの少なくとも一部が相互に異なる変調方式を採用してもよい。例えば、第1通信方式が強度変調方式であり、第2通信方式及び第3通信方式が周波数変調方式であるものとしてもよい。また、第1通信方式が強度変調方式であり、第2通信方式及び第3通信方式が位相変調方式であるものとしてもよい。また、第1通信方式及び第2通信方式が強度変調方式であり、第3通信方式が周波数変調方式であるものとしてもよい。また、第1通信方式及び第2通信方式が強度変調方式であり、第3通信方式が位相変調方式であるものとしてもよい。
【0093】
上述した説明では、電子時計1は同期信号検出部182及び遷移信号検出部183をそれぞれ有するものとしたが、両者は単一のハードウェアにより実装されてもよい。この場合、電子時計1は、同期待ち状態S1と遷移待ち状態S2とで、サンプリング回路のサンプリング周期を変更する。これにより、電子時計1が必要とする回路規模を小さくすることができる。
【0094】
上述した説明では、同期信号検出部182及び遷移信号検出部183が検出判定回路をそれぞれ有するものとしたが、このような例に限られない。検出判定回路の機能は、処理部19によって実現されるものとしてもよい。このようにすることで、同期信号検出部182及び遷移信号検出部183のハードウェア構成が簡素化される。
【0095】
図10は、検出判定回路の機能が処理部19によって実現される電子時計1aの概略構成の一例を示す図である。なお、上述した説明と同様の構成には同一の符号を付し、説明を適宜省略する。電子時計1aの処理部19は、取得部191及び制御部192に加えて、同期検出判定部193及び遷移検出判定部194をその機能ブロックとして備える。
【0096】
同期信号検出部182及び遷移信号検出部183は、それぞれサンプリング回路を有する。サンプリング回路は、太陽電池17によって光信号から変換された電気信号を所定のサンプリング周期でサンプリングし、サンプリングされた電気信号のデータを処理部19に供給する。
【0097】
同期検出判定部193は、サンプリングされた電気信号のデータが同期信号に対応するパターンに合致した場合、同期信号が検出されたと判定し、判定結果を動作制御部181に供給する。
【0098】
遷移検出判定部194は、サンプリングされた電気信号のデータが遷移信号に対応するパターンに合致した場合、遷移信号が検出されたと判定し、判定結果を動作制御部181に供給する。
【0099】
図11(a)は、電子時計1aが通信する場合の電子時計1aの消費電力の時間変化について説明するための模式図であり、図11(b)は、電子時計1aが通信しない場合の消費電力の時間変化について説明するための模式図である。図11(a)及び(b)に示されるように、電子時計1aでは、図9を用いて説明した電子時計1の場合と同様に、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184の消費電力P1が発生する。また、電子時計1aでは、同期待ち状態S1及び遷移待ち状態S2において処理部19の同期検出判定部193及び遷移検出判定部194が動作するため、これらの状態においても処理部19の消費電力P2が発生する。もっとも、同期信号及び遷移信号の通信速度は大きくないため、同期待ち状態S1及び遷移待ち状態S2における処理部19の消費電力P2は小さく、全体としての消費電力は抑えられる。
【0100】
なお、電子時計1において、同期信号検出部182の検出判定回路の機能及び遷移信号検出部183の検出判定回路の機能のうちの何れか一方のみが処理部19によって実現されるものとしてもよい。
【0101】
上述した説明では、同期信号検出部182及び遷移信号検出部183は、二次電池151から給電されて駆動するものとしたが、このような例に限られない。同期信号検出部182及び遷移信号検出部183は、太陽電池17から直接に給電されるものとしてもよい。
【0102】
図12は、同期信号検出部182及び遷移信号検出部183が太陽電池17から給電される電子時計1bの概略構成の一例を示す図である。図12に示すように、電子時計1bの同期信号検出部182及び遷移信号検出部183は、太陽電池17からの電気信号を電源として用いる。同期信号検出部182及び遷移信号検出部183は電源回路を有し、電源回路により太陽電池17からの電気信号を平滑化するとともに電圧を調整し、電気信号を電源として用いる。
【0103】
図13は、電子時計1bの状態遷移図である。電子時計1bは、同期待ち状態S1、遷移待ち状態S2及び制御待ち状態S3に加え、休止状態S0をとる点で電子時計1と相違する。休止状態S0は、同期信号検出部182、遷移信号検出部183及び制御信号検出部184の何れもが休止している状態である。同期待ち状態S1、遷移待ち状態S2及び制御待ち状態S3の間の遷移は図7を用いて説明したものと同様であるため、以下では休止状態S0に関する遷移についてのみ説明する。
【0104】
同期待ち状態S1において、太陽電池17から同期信号検出部182に対する給電が所定時間以上中断すると、同期信号検出部182は休止する。これにより、電子時計1bは休止状態S0に遷移する(T10)。同様に、遷移待ち状態S2において、太陽電池17から遷移信号検出部183に対する給電が所定時間以上中断すると、遷移信号検出部183は休止する。このとき、動作制御部181は、切替部18を制御して電気信号の供給先を同期信号検出部182に切り替える。これにより、電子時計1bは休止状態S0に遷移する(T20)。
【0105】
所定時間は、同期信号検出部182又は遷移信号検出部183に対する給電が中断してから、同期信号検出部182又は遷移信号検出部183の回路のキャパシタの放電が完了するまでの時間である。所定時間は、第1シンボル時間よりも長い時間(例えば、2秒)に設定される。これにより、同期信号としてLのシンボルが伝送されている際に電子時計1bが休止状態S0に遷移することがなくなる。
【0106】
休止状態S0において、太陽電池17から同期信号検出部182に対する給電が開始され、所定時間以上継続すると、同期信号検出部182が起動する。これにより、電子時計1bは同期待ち状態S1に遷移する(T01)。
【0107】
図14は、電子時計1bと制御端末2を有する通信システムによって実行される第2通信処理の流れの一例を示すシーケンス図である。第2通信処理の開始時には、電子時計1bは休止状態S0にある。
【0108】
まず、制御端末2の受付部241は、ユーザによる制御指示を受け付ける(S201)。続いて、発光制御部242は、発光部23を制御して同期信号を送信する(S202)。同期信号検出部182は、同期信号を受光した太陽電池17からの給電により起動し、同期信号を受付ける(S203)。これにより、電子時計1bは、同期待ち状態S1に遷移する。
【0109】
続いて、制御端末2の発光制御部242は、発光部23を制御して同期信号を送信する(S204)。発光制御部242が同期信号を継続して送信することにより、同期信号検出部182の起動に時間を要する場合(例えば、回路のキャパシタが完全に放電されている場合等)でも、同期信号検出部182が適切に同期信号を検出することが可能となる。続いて、電子時計1bの同期信号検出部182は、同期信号を検出する(S205)。同期信号が検出された場合、電子時計1bは遷移待ち状態S2に遷移し、遷移信号検出部183は遷移信号を受付ける。
【0110】
続いて、制御端末2の発光制御部242は、発光部23を制御して遷移信号を送信する(S206)。電子時計1bの遷移信号検出部183は、遷移信号を検出する(S207)。遷移信号が検出された場合、電子時計1bは制御待ち状態S3に遷移し、制御信号検出部184は制御信号を受付ける。
【0111】
続いて、制御端末2の発光制御部242は、発光部23を制御して制御信号を送信する(S208)。電子時計1bの制御信号検出部184は、制御信号を検出する(S209)。制御信号が検出された場合、取得部191は制御信号に基づく制御データを取得し、制御部192は制御データに基づいて電子時計1bを制御する(S210)。
【0112】
図15(a)は、電子時計1bが通信する場合の電子時計1bの消費電力の時間変化について説明するための模式図であり、図15(b)は、電子時計1bが通信しない場合の消費電力の時間変化について説明するための模式図である。なお、図15(a)及び(b)に示す消費電力Pは、電子時計1bの連続稼働時間に影響する二次電池151からの給電に基づく消費電力のみを含み、太陽電池17からの給電に基づく消費電力を含まない。すなわち、図15(a)の消費電力P1は、二次電池151からの給電を受ける制御信号検出部184の消費電力のみを含む。
【0113】
電子時計1bでは、同期待ち状態S1及び遷移待ち状態S2において、同期信号検出部182及び遷移信号検出部183は二次電池151ではなく太陽電池17から給電される。したがって、図15(a)及び(b)に示すように、電子時計1bにおいて、二次電池151からの給電に基づく消費電力P1は、同期待ち状態S1及び遷移待ち状態S2においては発生せず、制御待ち状態S3において制御信号検出部184が起動した場合にのみ発生する。また、図9に示した電子時計1の場合と同様に、処理部19の消費電力P2は、制御待ち状態S3においてのみ発生する。これにより、通信をしない場合には、二次電池151からの給電に基づく消費電力P1及びP2が発生しないこととなり、電子時計1bは消費電力を大幅に低減することを可能とする。
【0114】
なお、電子時計1bにおいて、同期信号検出部182及び遷移信号検出部183のうちの何れか一方のみが太陽電池17から給電され、他方は二次電池151から給電されるようにしてもよい。このようにしても、電子時計1bは、通信をしない場合の消費電力を低減することを可能とする。また、切替部18が太陽電池17から給電されるようにしてもよい。
【0115】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 電子時計
17 太陽電池
18 切替部
181 動作制御部
182 同期信号検出部
183 遷移信号検出部
184 制御信号検出部
191 取得部
192 制御部
図1
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