(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】印刷指示装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240627BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240627BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
G06F3/12 326
G06F3/12 303
G06F3/12 373
G06F3/12 367
G06F3/12 391
G06F3/12 359
H04N1/00 127B
H04N1/00 127Z
B41J29/38
(21)【出願番号】P 2021008854
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】安宅 宏之
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196761(JP,A)
【文献】特開2000-315146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
H04N 1/00
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データを格納する親機としての機能を有すると共に前記印刷データを取得して印刷を行う子機としての機能を有する複数の印刷装置と通信する通信部と、
前記親機に格納させる印刷データを送出する印刷データ送出処理部と、
前記印刷データを印刷した子機から印刷完了情報を受領する印刷完了受領処理部と、
受領した印刷完了情報に基づいて対応する印刷装置の印刷に係る履歴を更新する印刷履歴管理部と、
新たな印刷データを送出する場合、更新された履歴に基づいて最もよく印刷に使用された印刷装置を特定し、特定された印刷装置が現在の親機と異なる場合に特定された印刷装置を親機に切り替えて切り替わった親機へ前記新たな印刷データを送出させる親機設定部とを備え、
前記印刷完了情報が、印刷を行った子機を他の子機と識別する子機識別情報および子機として実行可能な印刷機能に係る情報を含み、
前記印刷履歴管理部は、受領した印刷完了情報に基づいて子機として実行可能な印刷機能に係る前記情報を子機毎に管理し、
前記印刷データの印刷が特定の印刷機能を用いる場合、前記親機設定部は、その印刷機能を子機として実行可能な印刷装置に対象を絞り込んで最もよく印刷に使用された印刷装置を特定する印刷指示装置。
【請求項2】
印刷データを格納する親機としての機能を有すると共に前記印刷データを取得して印刷を行う子機としての機能を有する複数の印刷装置と通信する通信部と、
前記親機に格納させる印刷データを送出する印刷データ送出処理部と、
前記印刷データを印刷した子機から印刷完了情報を受領する印刷完了受領処理部と、
受領した印刷完了情報に基づいて対応する印刷装置の印刷に係る履歴を更新する印刷履歴管理部と、
新たな印刷データを送出する場合、更新された履歴に基づいて最もよく印刷に使用された印刷装置を特定し、特定された印刷装置が現在の親機と異なる場合に特定された印刷装置を親機に切り替えて切り替わった親機へ前記新たな印刷データを送出させる親機設定部とを備え、
前記通信部は、前記子機としての機能のみを有する他の印刷装置とさらに通信し、
前記親機および前記子機としての機能を有する印刷装置は前記印刷データの印刷後に印刷完了情報を送出し、前記子機としての機能のみを有する印刷装置は前記印刷データの印刷後に印刷完了情報を送出せず、
前記親機設定部は、受領した印刷完了情報に基づいて更新された対応する印刷装置の印刷に係る履歴に基づいて親機の切り替えに係る処理を行う印刷指示装置。
【請求項3】
前記
印刷履歴管理部は、印刷完了情報の受領回数を送信元の子機毎にカウントし、
前記親機設定部は、子機毎にカウントされた前記受領回数を参照して最もよく印刷に使用された印刷装置を特定する請求項
1または2に記載の印刷指示装置。
【請求項4】
前記親機設定部は、親機の設定を切り替える場合、子機としての機能を有する各印刷装置に対して親機の設定を前記特定された印刷装置に切り替えるように指示を送る請求項
1または2に記載の印刷指示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷指示装置および印刷制御方法に関し、より詳細には親機としての機能を有する印刷装置に印刷データを送って格納させ、子機としての機能を有する印刷装置が親機に格納された印刷データを取得して印刷できるようにする印刷指示装置および印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の印刷装置が通信可能に接続された環境で、その何れかをプリントサーバとして稼働させることで専用のプリントサーバを不要とする印刷システムが知られている。上述のように通信可能に接続された印刷装置のうちの何れかをプリントサーバ(親機)として稼働させて専用のプリントサーバを不要とする印刷システムを、この明細書でプリントリリース機能とも呼ぶ。
【0003】
プリントリリース機能を用いた印刷の流れは、例えば以下のようなものである。複数の印刷装置のうち何れか1台の印刷装置を予め親機として設定しておく。ユーザーは、印刷すべきデータを情報機器で作成する。その情報機器は、プリントリリース機能を用いた印刷を行う際は作成された印刷データを親機に送る。親機は、情報機器から送られた印刷データを受信してメモリに格納する。以上のように、親機として設定した印刷装置に印刷データが保存された後、ユーザーは親機に格納された印刷データを出力し得る印刷装置(子機)の所へ行く。そして、子機の操作部を用いて印刷させるべき印刷データを選択して印刷の実行を指示する。
【0004】
子機は親機にアクセスし、親機のメモリに格納されている前記印刷データを取得して印刷を行う。子機が親機と同じ印刷装置である場合は、自機のメモリに格納されている印刷データを印刷する。以上のように、印刷データを親機に格納しておくことで、通信可能に接続された複数の印刷装置の何れからも印刷の出力が可能になる。
【0005】
何れを親機とするかは、ユーザーが決めてもよい。例えば、ユーザーからの印刷指示を受け付ける印刷指示装置(情報処理装置)のプリンタドライバの操作画面で、親機を指定してもよい。プリンタドライバの操作画面に、印刷すべき文書データ(印刷データ)の送出先装置となる「使用対象プリンタ」(文書格納装置、親機)を指定する装置指定欄が配された態様が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
あるいは、親機の設定をユーザーが行わなくとも、ネットワークに接続している画像形成装置間でやりとりを行って所定の基準に基づいて親機(マスター機)を判定し決定するものが知られている。所定の基準は、それら画像形成装置で共有している機器情報が最も新しいこと、あるいはマシンスペックが最も高いこと等である。そうして決定された、マスター機は、そのマスター機に管理されるメンバー機(子機)の登録を受付けてメンバーリストを作成・管理する。また、メンバー機から機器情報を取得し、取得した機器情報を管理する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-190146号公報
【文献】特開2011-186897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プリントリリース機能において、印刷を出力する画像形成装置がその印刷データを格納する親機であれば、通信を介して印刷データを送受する処理がない。従って、ネットワークに負荷をかけないばかりか、印刷データの転送に要する時間を短縮できる。出力する印刷データのユーザーによる選択を受付けるために、メモリに格納されている印刷データを子機の操作部に表示する際に子機は親機から情報を取得する。印刷を出力する画像形成装置が親機であれば、その際にもネットワークに負荷をかけないばかりかデータの転送に要する時間を短縮できる。
【0009】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、複数の印刷装置の何れかを親機として稼働させるプリントリリース機能に対応した印刷システムにおいて、最もよく印刷に用いられた印刷装置を親機とするように設定を変更して印刷データの転送に係る負荷を軽減するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、印刷データを格納する親機としての機能を有すると共に前記印刷データを取得して印刷を行う子機としての機能を有する複数の印刷装置と通信する通信部と、前記親機に格納させる印刷データを送出する印刷データ送出処理部と、前記印刷データを印刷した子機から印刷完了情報を受領する印刷完了受領処理部と、受領した印刷完了情報に基づいて対応する印刷装置の印刷に係る履歴を更新する印刷履歴管理部と、新たな印刷データを送出する場合、更新された履歴に基づいて最もよく印刷に使用された印刷装置を特定し、特定された印刷装置が現在の親機と異なる場合に親機を特定された印刷装置に切り替えて切り替わった親機へ前記新たな印刷データを送出させる親機設定部とを備える印刷指示装置を提供する。
【0011】
また、異なる観点からこの発明は、印刷データを格納する親機としての機能を有すると共に前記印刷データを取得して印刷を行う子機としての機能を有する複数の印刷装置と通信する印刷指示装置の制御部が、前記親機に格納させる印刷データを送出するステップと、前記印刷データを印刷した子機から印刷完了情報を受領するステップと、受領した印刷完了情報に基づいて対応する印刷装置の印刷に係る履歴を更新するステップと、新たな印刷データを送出する場合、更新された履歴に基づいて最もよく印刷に使用された印刷装置を特定し、特定された印刷装置が現在の親機と異なる場合に親機を特定された印刷装置に切り替えて切り替わった親機へ前記新たな印刷データを送出させるステップとを備える印刷制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
この発明による印刷装置は、新たな印刷データを送出する場合、更新された履歴に基づいて最もよく印刷に使用された印刷装置を特定し、特定された印刷装置が現在の親機と異なる場合に親機を特定された印刷装置に切り替える親機設定部を備えるので、複数の印刷装置の何れかを親機として稼働させる印刷システムにおいて、最もよく印刷に用いられた印刷装置を親機とするように設定を変更して印刷データの転送に係る負荷を軽減できる。
この発明による印刷装置の制御方法も同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この実施形態における画像形成システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す複合機100の構成を示すブロック図である。
【
図3】この実施形態において、印刷指示装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】この実施形態において、印刷されるべきデータの移動および印刷完了情報の通知を示す説明図である。
【
図5】この実施形態において、印刷指示装置が印刷データを親機に送信する設定の一例を示す説明図である。
【
図6】この実施形態において、プリントリリース機能に係る印刷データのデータ構成を示す説明図である。
【
図7】この実施形態において、子機の操作部に表示されるプリントリリース機能を用いた印刷に係る操作画面の第1の説明図である。
【
図8】この実施形態において、子機の操作部に表示されるプリントリリース機能を用いた印刷に係る操作画面の第2の説明図である。
【
図9】この実施形態における印刷完了情報のデータ構成の一例を示す説明図である。
【
図10】この実施形態における印刷管理テーブルの例を示す説明図である。
【
図11】実施の形態1において、印刷指示装置が印刷データ送出処理部および親機設定部として実行する処理を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態1において、親機の設定変更に係る指示を受信した子機の制御部が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態1において、子機の制御部が、プリントリリース機能を用いた印刷に際して実行する処理を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態1において、印刷完了情報の受領および印刷履歴の更新に関して印刷指示装置の処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態2において、
図11に対応する処理を示すフローチャートである。
【
図16】実施の形態2において、
図12に対応する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(実施の形態1)
≪印刷システムおよび画像形成装置の構成≫
図1は、この実施形態における画像形成システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、前記画像形成システムは、プリントリリース機能に対応する複合機100、200、201および202、ノート型コンピュータ210およびデスクトップコンピュータ211がネットワーク199に接続されている。複合機100は、プリントリリース機能に関する親機および子機として機能する。複合機200、201および202は、プリントリリース機能に関する子機として機能する。そのうち、複合機200および201は、親機としても機能し得るが現在は親機として設定されていない。一方、複合機202は、子機としてのみ機能し、親機として機能することはできない。
【0015】
ノート型コンピュータ210、デスクトップコンピュータ211は、複合機100、200、201、202の何れかで印刷されるべきコンテンツ(印刷データ)を作成し、プリントリリース機能を用いた印刷を行う場合は親機としての複合機100に作成した印刷データを送る。
親機の設定は、例えば一つのネットワーク199に複数の画像形成装置が接続される際、設置を行うサービスエンジニアやネットワークを管理するアドミニストレータが任意の1台を選択して初期設定される。子機の設定も同様である。なお、ネットワーク199に接続された複合機がプリントリリース機能に対応していれば少なくとも子機として機能し得るが、子機として機能させたくない複合機があれば子機として設定しないでおくことができてもよい。この実施形態において、印刷指示装置として機能するノート型コンピュータ210およびデスクトップコンピュータ211は、親機の設定を他の複合機に切り替えることができる。
【0016】
図2は、この実施形態における画像形成装置の代表例として、
図1に示す複合機100の構成を示すブロック図である。この実施形態における他の複合機200、201および202についても同様の構成である。ただし、複合機202については親機として機能するための構成を備えない。
図2に示すように、複合機100は、通信部101、記憶デバイス102、画像形成部103、制御部104および操作部105を備える。
通信部101は、ネットワーク・インターフェイス回路であって、ネットワーク199を介して接続された外部の機器と通信を行うための回路である。通信は、有線であっても無線であってもよく、通信方式は問わない。
【0017】
記憶デバイス102は、不揮発性の記憶装置であって、後述する制御部104のプロセッサが実行するプログラムを格納する。さらに、子機あるいはプリントリリース機能を用いない通常の印刷装置として機能する際に画像形成部103が印刷する印刷データを格納する。その際には、ノート型コンピュータ210やデスクトップコンピュータ211から受信した印刷データを格納する。さらに、親機として機能する際にはプリントサーバとして印刷データを格納する。記憶デバイス102の具体的なハードウェアの例として、フラッシュメモリーやハードディスク装置が挙げられる。
【0018】
画像形成部103は、記憶デバイス102に格納された印刷データを印刷する。印刷は、その方式を問わないが一例として電子写真方式が挙げられる。
制御部104は、プロセッサを中心として入出力回路やタイマー回路などの周辺回路を含む回路である。制御部104は、複合機100の各部の動作を制御する。
【0019】
図3は、この実施形態において、印刷指示装置の代表例としてノート型コンピュータ210の構成を示すブロック図である。デスクトップコンピュータ211も同様の構成を有する。
図3に示すように、ノート型コンピュータ210は、通信回路111、メモリ112、表示部113、操作検出部114および処理部115を備える。
通信回路111は、ネットワーク・インターフェイス回路であって、ネットワーク199を介して接続された外部の機器と通信を行うための回路である。通信は、有線であっても無線であってもよく、通信方式は問わない。
【0020】
メモリ112は、プロセッサが実行するプログラムやデータを格納する。さらに、複合機100、200、201および202に印刷させる印刷データを生成して格納する。あるいは外部のサーバ等の機器から取得して格納する。さらに、プリントリリース機能を用いた印刷を行う各複合機について管理する印刷に係る履歴のデータを格納する。メモリ112を構成する具体的なハードウェアの例として、DRAMとハードディスク装置やSSD(Solid State Drive)などの組合せが挙げられる。
表示部113は、液晶やOLED(Organic Light Emitting Diode)を用いた表示装置である。
操作検出部114は、ユーザーからの指示を受け付ける回路であって、一例として操作スイッチや表示装置の表面に配置されたタッチパネルが挙げられる。
表示部113および操作検出部114は、ユーザーインターフェースに係るハードウェアである。
【0021】
処理部115は、印刷データ送出処理部121、印刷完了受領処理部122、印刷履歴管理部123および親機設定部124を含む。
印刷データ送出処理部121は、プリントリリース機能の親機に格納する印刷データを生成しあるいは取得して送出する処理を行う。言い換えると、印刷データ送出処理部121は処理部115が実行する処理のうちプリンタドライバとして印刷データを生成して送出する処理に係るものである。印刷完了受領処理部122は、処理部115が実行するプリンタドライバとしての処理のうち、プリントリリース機能を用いた印刷を行った子機から印刷完了情報を受領してそれに伴う処理を行うものである。印刷履歴管理部123は、処理部115が実行するプリンタドライバとしての処理のうち、受領した印刷完了情報に基づいて、その印刷完了情報の送信元である印刷装置について管理している印刷に係る履歴を更新するものである。親機設定部124は、処理部115が実行するプリンタドライバとしての処理のうち、各印刷装置についての印刷に係る履歴を参照してその履歴に基づいてプリントリリース機能に係る親機の設定を必要に応じて更新するものである。
【0022】
以上のように、複数の画像形成装置がネットワーク199を介して通信可能に接続された
図1の印刷システムにおいて、ユーザーは通常の印刷を行うことができると共に、プリントリリース機能を用いて印刷を行うことができる。
まず、通常の印刷について簡単に述べる。ユーザーが例えばノート型コンピュータ210で印刷すべきデータを作成したとする。その場合、ユーザーはネットワーク199を介して接続された複合機100、200、201および202の何れかへ印刷すべきデータを送信する。送信先の複合機は、送信された印刷データに基づいて印刷を行う。以上が、通常の印刷である。
【0023】
次に、プリントリリース機能を用いた印刷について述べる。
図1に示す印刷システムにおいて、何れかの複合機が親機として設定されている。その親機をプリントサーバとして用いた印刷を実行する。専用のPCサーバを用意しなくても親機がプリントサーバとして機能し、記憶デバイス102に印刷データを格納する。子機として機能する複合機100、200、201および202の何れかは、親機の記憶デバイス102に格納された印刷データを取得して印刷を行う。複合機100が子機として機能する場合は、自機の記憶デバイス102に格納された印刷データを用いて印刷を行う。複合機200、201および202の何れかが子機として機能する場合は、親機100の記憶デバイス102に格納された印刷データを、通信を介して取得したうえで印刷を行う。
【0024】
≪プリントリリース機能を用いた印刷の操作手順≫
図4~
図8は、この実施形態においてプリントリリース機能を用いた印刷を説明する説明図である。
図4は、この実施形態において、印刷されるべきデータの移動および印刷完了情報の通知を示す説明図である。
図4で、ユーザーが例えばノート型コンピュータ210で印刷すべきコンテンツ、即ち印刷データを作成したものとする。その場合ユーザーは、作成された印刷データを、ネットワーク199を介した親機100へ送信する(
図4に示す矢印(1)参照)。
【0025】
図5は、ノート型コンピュータ210で印刷データを親機に送信する設定の一例を示す説明図である。
図5は、ノート型コンピュータ210にインストールされたプリンタドライバが表示させるポップアップウィンドウの一例である。デスクトップコンピュータ211で印刷データを親機に送信する場合も同様である。
印刷を行う際に、ユーザーは
図5に示すプリンタドライバの「印刷設定」ウィンドウ220の「ジョブハンドリング」の画面で、必要に応じてユーザーに対応したログイン名とパスワードを用いてログインする。
【0026】
図5に示す「印刷設定」ウィンドウ220の画面には、「認証」チェックボックス221、認証方式選択リスト222、ログイン名入力欄223およびパスワード入力欄224が設けられている。ユーザーが、「認証」チェックボックス221にチェックを入れ、認証方式選択リスト222のドロップダウンリストで「ログイン名/パスワード」によるユーザー認証を選択し、ログイン名入力欄223にユーザーに対応するログイン名を入力し、パスワード入力欄224にパスワードを入力すると、印刷データ送出処理部121は、入力されたログイン名とパスワードを用いた印刷データの生成および送出の処理を行う。
【0027】
印刷データの生成および送出の処理に係る種々の設定項目のうち、プリントリリース機能を用いて印刷を行うか否かの選択肢として「プリントリリース」チェックボックス225が用意されている。ユーザーが「プリントリリース」チェックボックス225にチェックを入れると印刷データ送出処理部121は、通常の印刷ではなくプリントリリース機能を用いた印刷が選択されたものと判断する。そして、生成した印刷データを親機に設定されている複合機100へ送る(
図4に示す矢印(1)参照)。
【0028】
図6は、この実施形態においてノート型コンピュータ210が複合機100へ送信するプリントリリース機能に係る印刷データのデータ構成を示す説明図である。
図6に示すように、印刷データ300は、通常の印刷でなくプリントリリース機能を用いた印刷であることを示す印刷種別データ301および印刷指示装置としてのノート型コンピュータ210を識別する印刷指示装置識別情報302を含む。
【0029】
図6に示す例において、印刷種別データ301は、印刷データ300を親機に保持すべきことを示すフラグである。また、
図6に示す例において印刷指示装置識別情報302は、印刷指示装置のIPアドレスである。ただし、IPアドレスに限らず、複合機100、200、201および202がネットワーク199上の印刷指示装置を特定できる情報であればよい。ユーザー認証を伴った印刷の場合、印刷データ300はさらに、ユーザーが指定したログイン名およびパスワードを含む。
ノート型コンピュータ210から印刷データ300を受信した子機としての複合機100の制御部104は、受信した印刷データ300を自機の記憶デバイス102に格納する。
【0030】
ユーザーが
図5に示す「プリントリリース」チェックボックス225にチェックを入れなければ、印刷データ送出処理部121は、通常の印刷が選択されたと判断する。その場合、印刷データ送出処理部121は、
図5に図示しないプリンタドライバの操作画面に、印刷を行う印刷装置の選択肢として複合機100、200、201および202を表示させる。それらのうち何れかをユーザーが選択すると、印刷データ送出処理部121は、選択された複合機へ印刷データ300を送信する。印刷データ300を受信した複合機は、印刷を実行して出力する。プリントリリース機能でない通常の印刷に係る印刷データ300の場合、印刷種別データ301、即ち、印刷データ300を親機に保持すべきことを示すフラグはオフ(No)である。
【0031】
以上が、印刷指示装置としてのノート型コンピュータ210でプリントリリース機能を用いて印刷を行うためにユーザーが行う操作の手順である。ただし、プリントリリース機能を用いた印刷を実行する場合、ユーザーはさらに子機で操作を行う必要がある。
ユーザーは、印刷データ300を出力したい複合機(子機としての複合機)が設置されている場所へ行き、その複合機の操作部105を操作して出力させる印刷データ300を選択して子機に印刷を実行させる。子機は、複合機100、200、201および202のうちの何れであってもよい。ここでは、複合機200を子機として印刷を実行させるものとする。
【0032】
図7および
図8は、子機としての複合機200の操作部105に制御部104が表示させるプリントリリース機能用いた印刷に係る操作画面の説明図である。なお、以下の操作は、他の複合機100、201および202が子機として印刷を行う場合についても同様である。
図7は、子機としての複合機200の操作部105に表示されるホーム画面の一例を示す説明図である。ユーザーは、印刷データ300を出力させたい複合機200が設置されている場所へ行き、操作部105に表示される画面を用いて印刷に係る指示を行う。
図7に示すホーム画面230に表示される「プリントリリース」キー231をユーザーがタッチすると、複合機200の制御部104は、
図8に示す印刷指示画面233を操作部105に表示させる。
【0033】
図8に示すように、制御部104は、印刷指示画面233に親機である複合機100の記憶デバイス102に格納されているプリントリリース機能に係る印刷データの一覧(ジョブリスト234)を表示させる。ジョブリスト234は、親機の記憶デバイス102に格納されているプリントリリース機能に係る各ジョブの印刷データについて、ファイル名、その印刷データに係るログイン名、印刷データが生成された日付の項目が含まれる。印刷指示画面233にジョブリスト234を表示させるため、子機の制御部104は親機に設定されている複合機100にアクセスし、記憶デバイス102に格納されている印刷データのうちプリントリリース機能を用いた印刷に係るジョブの印刷データについて情報を取得する。
【0034】
子機である複合機200の制御部104は、ジョブリスト234に表示させた印刷データについて、ユーザーによる選択を受付ける。何れかの印刷データがユーザーによってタッチされると、その操作に応答して制御部104は、タッチされた印刷データが選択されたものとして、他の印刷データと識別できるように表示させる。
図8の例では、上から2つ目の印刷データ(ファイルA4_03P.pdf)が、印刷対象データとして選択された状態を示している。ジョブリスト234において、ユーザーに選択された印刷対象データ235は、背景がグレーで表示されると共に左端にチェックが表示されている。
【0035】
図8に示すジョブリスト234のうち何れかの印刷データが選択された状態で、複合機200の制御部104は、印刷指示画面233の右側の部数設定欄236や、その下にあるオプションのチェックボックスの設定を受付ける。そして、右下にある「印刷」キー237がタッチされると、その操作に応答して制御部104は、親機である複合機100にアクセスして記憶デバイス102に格納された印刷データのうち選択された印刷データ300の送信を要求する。その要求に応答して、親機である複合機100から子機である複合機200へ印刷データ300が送られる(
図4に示す矢印(2)参照)。その印刷データ300を受領した複合機200の制御部104は、画像形成部103に受領した印刷データ300を印刷させ出力させる。
【0036】
印刷が終了したら、子機である複合機200は、印刷指示装置であるノート型コンピュータ210へ印刷完了情報を送信する(
図4に示す矢印(3)参照)。子機である複合機200が親機である複合機100から受領する印刷データ300は、印刷指示装置としてのノート型コンピュータ210を識別する印刷指示装置識別情報302を含む。この例で、印刷指示装置識別情報302は、印刷指示装置であるノート型コンピュータ210のIPアドレスである。子機である複合機200は、印刷指示装置識別情報302を手掛かりに、印刷完了情報を印刷指示装置であるノート型コンピュータ210へ送信する。
【0037】
図9は、この実施形態における印刷完了情報のデータ構成の一例を示す説明図である。
図9に示す例において、印刷完了情報310は印刷を行った子機の識別情報としてのIPアドレスを含む。さらに、ネットワーク199に接続された機器がそれぞれ有する固有の値であるマシンIDを含む。さらにまた、印刷に係る種々の機能について、子機の構成(実行可能な機能)を表す情報を含む。例えば、カラー印刷が可能か否か、ステープルが可能か否かといった情報である。マシンIDは、ネットワーク199を管理する図示しない機器がネットワーク199に接続された機器に対して固有の値を割り当てることによって設定されてもよい。あるいは、ネットワーク199に接続された各機器が所定の規則に従ってやり取りを行い自律的に固有の値を設定してもよい。
【0038】
以上、複合機200を子機としてプリントリリース機能を用いた印刷を行う例を述べた。複合機100、201または202を子機として印刷を行う場合も同様の操作手順および処理である。ただし、複合機100を子機とする場合は、親機と子機が同じ複合機になるため、自機の記憶デバイス102に格納された印刷データをジョブリスト234として表示し、選択された印刷データを取得して印刷を行う。従って、ジョブリスト234を表示させるために親機の記憶デバイス102に格納されている印刷データに係る情報を取得する処理およびジョブリスト234を用いて選択された印刷データを取得する処理は、複合機100内で行われ、ネットワーク199の通信を伴わない。
なお、この実施形態において、子機としてのみの機能を有する複合機202は、プリントリリース機能を用いた印刷を行った場合に印刷指示装置に印刷完了情報を送信しないものとする。
【0039】
≪子機の印刷頻度に基づく親機設定の切替え≫
印刷指示装置としてのノート型コンピュータ210の印刷履歴管理部123は、プリントリリース機能を用いた印刷の履歴を管理する。
図10は、この実施形態において印刷履歴管理部123が履歴の管理に用いる印刷管理テーブル320を示す説明図である。
図10に示すように、印刷管理テーブル320は、ネットワーク199に接続された複合機100、200、201および202のうちで親機として機能し得る複合機100、200および201を管理の対象とする。印刷の頻度に基づき親機設定を切替えるための管理だからである。
【0040】
この実施形態において、印刷管理テーブル320は、対象とする各複合機について、親機設定、子機使用カウンタ、IPアドレスおよび子機属性を格納する。親機設定の項目は、現在親機として設定されている複合機を示している。
図10に示す例では、複合機100が親機として設定されている。子機使用カウンタの項目は、各複合機が子機としてどれだけ印刷に使用されたかを記憶するカウンタである。印刷履歴管理部123は、子機から印刷完了情報310(
図9参照)を受信したらその印刷完了情報に含まれるIPアドレスから送信元の子機を特定し、対応する子機使用カウンタをカウントアップする。この例では、1だけ増やすものとする。これに限らず、例えば子機の使用頻度を印刷頁数に応じたものとする場合は、印刷頁数分だけカウントアップするようにしてもよい。なお、印刷完了情報に含まれるIPアドレスを判定して対応する子機使用カウンタを特定する代わりに、印刷完了情報に含まれるマシンIDを判定して対応する子機使用カウンタを特定してもよい。
【0041】
印刷履歴管理部123は、後述する親機設定部124が新たな親機を設定したらすべての子機使用カウンタをリセットしてもよい。あるいは、予め定められた期間が経過する毎に印刷履歴管理部123がすべての子機使用カウンタをリセットしてもよい。
印刷管理テーブル320のIPアドレスの項目は、子機から受信した最新の印刷完了情報に含まれるIPアドレスを格納する。子機属性の項目は、子機から受信した最新の印刷完了情報に含まれるマシンIDおよび子機の構成を表す情報を格納する。
【0042】
親機設定部124は、印刷履歴管理部123が管理する印刷管理テーブル320を参照し、親機の設定を更新する処理を行う。
また、親機設定部124は、印刷データ送出処理部121が印刷データを親機に送信する際に、印刷管理テーブル320を参照して、管理対象の複合機のうち子機使用カウンタの値が最も大きいものを特定する。即ち、プリントリリース機能を用いた印刷で最もよく印刷に使用された複合機を特定する。
図10に示す例では、複合機200の子機使用カウンタの値10が最も大きい。しかし、現在親機に設定されているのは、複合機100である。
親機設定部124は、判定の結果に基づいて親機の設定を、現在の複合機100からプリントリリース機能を用いた印刷で最もよく印刷に使用された複合機200に切替える。
【0043】
具体的には、印刷管理テーブル320の親機設定において、親機を複合機100から複合機200へ変更する。そして、印刷データ送出処理部121に対し、印刷データの送出先である親機をこれまでの複合機100から新たに複合機200に変更したことを知らせる。複合機200に印刷データが送出されるようにする。
さらに、ネットワーク199に接続されているすべての子機として機能し得る複合機、即ち複合機100、200、201および202に対して、親機の設定をこれまでの複合機100から新たに複合機200に変更したことを知らせる。新たな親機として設定された複合機200が、印刷指示装置から送信される印刷データを記憶デバイス102に格納するようにするためである。また、各子機が、新たに親機として設定された複合機200から印刷データを取得するようにするためである。
【0044】
≪親機切替えの処理に係るフローチャート≫
この実施形態において、印刷指示装置としてノート型コンピュータ210の処理部115が実行する処理および子機として複合機200の制御部104が実行する処理を、フローチャートに沿って説明する。なお、親機としての処理についてはフローチャートを用いた説明を省略している。
なお、この実施形態において、ネットワーク199内に唯一台の親機が設定されるものとする。
【0045】
図11は、ノート型コンピュータ210の処理部115が、印刷データ送出処理部121および親機設定部124として実行する処理を示すフローチャートである。
図11に示すように、印刷データ送出処理部121として処理部115は、プリントリリース機能を用いた印刷がユーザーによって選択され、親機への印刷データの送出する局面がくるのを待つ(ステップS11)。その局面が到来したら、親機設定部124として処理部115は印刷管理テーブル320を参照し、印刷管理テーブル320に登録された複合機のうちで子機使用カウンタの値が最大の複合機を特定する(ステップS29)。そして、特定された複合機が、現在設定されている親機と異なるか否かを判定する(ステップS31)。
【0046】
最大の子機使用カウンタ値に対応する複合機が現在設定されている親機と異なる場合(ステップS31のYes)、親機設定部124として処理部115は、現在設定されている親機を、最大の子機使用カウンタ値に対応する複合機に変更するように親機変更の処理を行う。即ち、プリントリリース機能に係る印刷データの送信先を、最大の子機使用カウンタ値に対応する複合機に変更する(ステップS33)。
図10に示す例では、現在親機として設定されている複合機100から複合機200へ親機の設定を変更する。なお、この実施形態において、印刷管理テーブル320に登録される複合機は、親機として機能し得るものに限られる。その仕組みについては後述する。
【0047】
続いて、親機設定部124としての処理部115は、ネットワーク199に接続されている、子機として機能し得る複合機100、200、201および202へ、親機の設定を変更するように指示する(ステップS35)。ここで処理部115は、親機の設定変更に係る指示に、新たに親機として設定する複合機のIPアドレスを付加する。新たな親機に対応する複合機のIPアドレスは、印刷管理テーブル320を参照することで得られる。
図10に示す例では、複合機100から複合機200へ親機の設定を変更するように複合機100、200、201および202へ指示を送る。
【0048】
そして、印刷データ送出処理部121として処理部115は、設定されている親機へプリントリリース機能に係る印刷データ(
図6参照)を送信する(ステップS39)。
図10に示す例では、新たに設定された複合機200へ印刷データを送信する。
なお、前述のステップS31の判定において、特定された複合機が現在の親機と同一である場合は(ステップS31のNo)、親機の設定を変更せずに(ステップS33およびS35の処理をスキップ)、プリントリリース機能に係る印刷データを親機へ送信する(ステップS39)。
【0049】
続いて、親機の設定変更に係る指示を受信した子機の処理について述べる。
図12は、親機の設定変更に係る指示を受信した子機の制御部104が実行する処理を示すフローチャートである。
図12に示すように、子機として機能し得る各複合機100、200、201および202のそれぞれの制御部104は、印刷指示装置から親機の設定変更に係る指示を受信すると(ステップS41のYes)、以下の処理を行う。即ち、現在の親機の設定を、受信した指示に基づく新たな親機に変更し(ステップS47)、処理を終了する。
この実施形態において、親機の設定変更に係る指示には、新たな親機に対応するIPアドレスが付加されている。記憶デバイス102は、現在設定されている親機のIPアドレスを格納している。制御部104は、記憶デバイス102に格納されている親機のIPアドレスを、親機の設定変更に係る指示に付加されているIPアドレスに置き換えて格納させる。
【0050】
続いて、プリントリリース機能を用いた印刷に係る子機の処理について述べる。
図13は、この実施形態において、子機として機能する複合機の制御部104が、プリントリリース機能を用いた印刷に際して実行する処理を示すフローチャートである。
図13に示すように、制御部104は、ホーム画面230で「プリントリリース」キー231がタッチされたと認識すると(ステップS51のYes)、現在設定されている親機にアクセスする。そして、親機の記憶デバイス102に格納されているプリントリリース機能に係る印刷データの情報を取得する(ステップS53)。そして、操作部105に印刷指示画面233を表示させ、親機から取得した情報を用いてジョブリスト234を印刷指示画面233に表示させる(ステップS55)。
【0051】
ジョブリストの中から何れかのジョブに係る印刷データがユーザーによって選択されたら(ステップS57のYes)、制御部104は、選択されたジョブに係る印刷データ(
図6参照)を親機から取得する(ステップS59)。そして、取得された印刷データを用いた印刷を実行する(ステップS61)。
印刷が完了したら、子機の制御部104は、自機が親機としても機能し得るか否かを判定する(ステップS63)。親機としても機能し得る場合(ステップS65のYes)に限って、印刷完了情報を印刷指示装置へ送信し(ステップS65)、処理を終了する。なお、送信先の印刷指示装置のIPアドレスは、印刷データに含まれている。
【0052】
前記ステップS63の判定において、自機が子機のみとして機能する場合は(ステップS63のNo)、印刷完了情報を印刷指示装置へ送信しない。
親機として機能し得る複合機のみから印刷完了情報が送信されるので、後述するように印刷指示装置の印刷管理テーブル320には、親機として機能し得る複合機のみが登録され、子機使用カウンタがカウントアップされる。
【0053】
図14は、印刷完了情報の受領および印刷履歴の更新に関して印刷指示装置の処理部115が実行する処理を示すフローチャートである。
図14に示すように、印刷完了受領処理部122として処理部115は、子機から印刷完了情報を受信すると(ステップS71のYes)、印刷履歴管理部123として処理部115は、送信元の子機が既に印刷管理テーブル320に登録されているか否かを判定する(ステップS73)。既に登録済みであれば(ステップS73のYes)、処理部115は、対応する子機使用カウンタのカウントアップへ処理を進めるが、未登録であれば(ステップS73のNo)、送信元の子機を印刷管理テーブル320に登録する(ステップS75)。
【0054】
そして、印刷完了受領処理部122として処理部115は、送信元の子機に対応する子機使用カウンタの値をカウントアップする(ステップS77)。
さらに、印刷完了受領処理部122として処理部115は、受信した印刷完了情報に基づいて送信元の子機に対応する管理テーブルのIPアドレスおよび子機属性の項目の内容を更新し(ステップS79)、処理を終了する。
以上が、プリントリリース機能を用いた印刷に関して印刷指示装置および子機が実行する処理である。
【0055】
(実施の形態2)
≪親機設定に係る処理≫
実施の形態1では、ネットワーク199にただ1台の親機が存在することを前提としている。それに対してこの実施形態は、複数の親機が存在することを許容する。そして、プリントリリース機能を用いた印刷の設定に応じた印刷機能を有する子機のうちで、使用頻度の高いものを親機として設定する。
例えば、プリントリリース機能を用いた印刷の設定がステープルを使用するものである場合を例に挙げて、この実施形態について述べる。
図10に示す印刷管理テーブル320によれば、ステープルが可能なものは複合機201であり、複合機100および複合機200はステープル印刷ができない。
【0056】
印刷指示装置としてノート型コンピュータ210が機能する場合、その処理部115は、親機設定部124として印刷管理テーブル320を参照し、子機使用カウンタの値が最大の複合機を特定する。その際に、印刷管理テーブル320に登録された全ての複合機を対象とするのではなく、ステープル印刷が可能な複合機のみを対象に子機使用カウンタの値が最大の複合機を特定する。
図10に示す例では、複合機201のみがステープル可能であるため、複合機201が親機の候補として特定される。
【0057】
従って、親機設定部124は、プリントリリース機能を用いた印刷がステープル機能を用いる場合は複合機201に親機の設定を切替える。一方、プリントリリース機能を用いた印刷がステープル機能を用いない場合は、実施の形態1で述べたように複合機200に親機の設定を切替える。
別の例として、プリントリリース機能を用いた印刷がカラー印刷である場合について述べる。
図10に示す例では、複合機200および201がカラー印刷に対応しているが、複合機100はカラー印刷に対応していない。従って、親機設定部124は、カラー印刷が可能な複合機200および201のうち、子機使用カウンタの値が最大の複合機として複合機200を特定する。
【0058】
従って、親機設定部124は、プリントリリース機能を用いた印刷がカラー印刷である場合は複合機200に親機の設定を切替える。実施の形態1で述べたように、カラー印刷でない場合も複合機200に親機の設定を切替えるので、カラー印刷か否かにかかわらず結果は同じである。ただし、子機使用カウンタが最大値を有する複合機を探す対象がカラー印刷の場合とモノクロ印刷の場合で異なる。
【0059】
この実施形態のように、ネットワーク199に複数の親機が存在する場合、子機が印刷を実行する際にどの親機に印刷データが格納されているかを知る必要がある。これは。次のようにして実現される。
まず、印刷指示装置の親機設定部124は、新たな複合機を親機に設定する際、ネットワークに接続されている子機としての各複合機に対して、新たな親機のIPアドレスが親機として未登録の場合は、追加登録するように指示する。即ち、実施の形態1では、印刷指示装置が親機の設定を変更する際、ネットワーク199に接続された子機としての各複合機に、親機として設定する複合機のIPアドレスが付加された親機の設定変更に係る指示を送信すると述べた。この実施形態では、それに代えて、子機としての各複合機に、親機として設定する複合機のIPアドレスが付加された親機の設定追加に係る指示を送信し、そのIPアドレスで特定される複合機が親機として未だ登録されていなければ、登録を追加するように指示する。
【0060】
また、印刷指示画面233にジョブリスト234を表示する際、子機の制御部104は、親機にアクセスして親機の記憶デバイス102に格納されたプリントリリース機能に係る印刷データの情報を取得することを実施の形態1で述べた。この実施の形態では、子機の制御部104は、ネットワーク199に接続された親機として機能し得る各複合機に対して、その記憶デバイス102に格納されたプリントリリース機能に係る印刷データの情報を要求する。親機として、記憶デバイス102に該当する印刷データを格納している複合機は、その情報を子機へ送信する。
【0061】
子機の制御部104は、複数の親機から格納された印刷データに係る情報を受信すると、それらの情報を送信元の親機と関連付けて子機の記憶デバイス102に格納し、ジョブリスト234を表示する。従って、子機の制御部104がジョブリスト234に表示する印刷データに係る情報は、それぞれどの親機に格納されているかが紐付けられて子機の記憶デバイス102に格納されている。何れかの印刷データがユーザーに選択されると、子機の制御部104は、選択された印刷対象データ235に係る情報に紐付けられた親機から、印刷データを取得する。
【0062】
≪フローチャート≫
図15は、実施の形態1の
図11に対応する、この実施形態のフローチャートである。
図11と対応する処理には同じ符号を付しているので、同一の処理については説明を簡略化する。
図15に示すように、印刷データ送出処理部121として処理部115は、プリントリリース機能に係る印刷データを送出する局面が到来したら(ステップS11のYes)、以下の処理を行う。即ち、その印刷ジョブについて特定の機能が設定されているか否かを判定して、特定の機能が設定されている場合は、印刷管理テーブル320を参照する際に対象の複合機を絞り込むようにする。
【0063】
図15の例で、まず、親機設定部124としての処理部115は、カラー印刷が指定された印刷ジョブか否かを判定する(ステップS13)。カラー印刷が指定されている場合(ステップS13のYes)、後述するステップS29において印刷管理テーブルを参照する場合に対象の複合機をカラー印刷が可能なものに絞り込む(ステップS15)。
続いて処理部115は、ステープル機能が設定された印刷ジョブか否かを判定する(ステップS17)。ステープル機能が設定されている場合(ステップS17のYes)、後述するステップS29において印刷管理テーブルを参照する場合に対象の複合機をステープルが使用可能なものに絞り込む(ステップS19)。
【0064】
図15では、カラー印刷およびステープル機能についての判定を示しているが、その他の印刷設定についても同様の判定を行って絞り込みを行えばよい。
その後の、処理部115が実行する処理は、実施の形態1とほぼ同様である。
親機設定部124として処理部115は印刷管理テーブル320を参照し、印刷管理テーブル320に登録された複合機のうちで子機使用カウンタの値が最大の複合機を特定する(ステップS29)。実施の形態1と異なるのは、ステップS13~S19の判定によって絞り込まれたものを対象とする点である。そして、特定された複合機が、現在設定されている親機と異なるか否かを判定する(ステップS31)。
【0065】
最大の子機使用カウンタ値に対応する複合機が現在設定されている親機と異なる場合(ステップS31のYes)、親機設定部124として処理部115は、現在設定されている親機を、最大の子機使用カウンタ値に対応する複合機に変更するように親機変更の処理を行う(ステップS33)。
【0066】
続いて、親機設定部124としての処理部115は、子機として機能し得る複合機に対して、新しい親機のIPアドレスが未登録の場合は登録するように指示する(ステップS35)。このようにして、新しい親機が追加で登録される。なお、この実施形態においても、実施の形態1と同様に、現在設定されている親機を子機使用カウンタが最大の複合機に単純に変更する場合がある。その場合については、実施の形態で述べたステップS35のように、親機設定部124としての処理部115は、親機の設定を単純に変更するように子機としての各複合機に指示する。
【0067】
そして、印刷データ送出処理部121として処理部115は、設定されている親機へプリントリリース機能に係る印刷データ(
図6参照)を送信する(ステップS39)。
特定された複合機が現在の親機と同一である場合は(ステップS31のNo)、親機の設定を変更せずに(ステップS33およびS35の処理をスキップ)、プリントリリース機能に係る印刷データを親機へ送信する(ステップS39)。
【0068】
続いて、この実施形態において親機の登録に係る指示を受信した子機の処理について述べる。
図16は、この実施形態において、親機の登録に係る指示を受信した子機の制御部104が実行する処理を示すフローチャートである。実施の形態1における
図12に対応するフローチャートである。
【0069】
図16示すように、子機として機能し得る各複合機の制御部104は、印刷指示装置から親機の登録に係る指示を受信すると(ステップS41のYes)、受信した指示に係る親機が、未登録のものであるか、既に親機として登録されているかを判定する(ステップS43)。未登録の親機である場合(ステップS43のYes)、受信した指示に係る親機を新たな親機として追加登録し(ステップS45)、処理を終了する。
図13および
図14に対応する処理については、実施の形態1とほぼ同様であり、親機設定に係る処理で述べた内容から当業者であれば容易に推測できるので説明を省略する。
【0070】
(実施の形態3)
実施の形態1で、子機のみとして機能する複合機は印刷完了情報を送信しないことを述べた。この実施形態では、その点についてより詳しく述べる。
子機のみとして機能する複合機が印刷完了情報を印刷指示装置に送信する構成も可能であり、その態様もこの発明の範疇に含まれる。その場合、親機として機能し得るか否かを印刷完了情報の子機属性に含めて印刷指示装置へ送信すればよい。印刷指示装置の印刷履歴管理部123が子機のみとして機能する複合機について子機使用カウンタをカウントアップしないようにするためである。
【0071】
しかし、この実施形態において子機使用カウンタは、子機としての印刷頻度が最も高い複合機を親機とするために用いられる。親機として機能できず、子機のみとして機能する複合機を管理の対象に含めても、通信および処理の負荷が増えるだけで意味がない。
従って、この実施形態において、子機のみとして機能する複合機は、プリントリリース機能を用いた印刷を行っても印刷完了通知を印刷指示装置へ送らない。
【0072】
印刷完了通知を受信しない子機については、印刷指示装置の印刷履歴管理部123が印刷管理テーブル320にその子機を登録することはない。
図14のステップS71~S75に示すように、子機からの印刷完了情報の受信を契機に印刷履歴管理部123が送信元の子機を印刷管理テーブル320に登録するからである。
子機のみとして機能する複合機は印刷完了情報を送信しないように構成することで、子機のみとして機能する複合機は管理テーブルの対象にならず、無駄に通信および処理の負荷が増えることがない。
【0073】
以上に述べたように、
(i)この発明による印刷指示装置は、印刷データを格納する親機としての機能を有すると共に前記印刷データを取得して印刷を行う子機としての機能を有する複数の印刷装置と通信する通信部と、前記親機に格納させる印刷データを送出する印刷データ送出処理部と、前記印刷データを印刷した子機から印刷完了情報を受領する印刷完了受領処理部と、受領した印刷完了情報に基づいて対応する印刷装置の印刷に係る履歴を更新する印刷履歴管理部と、新たな印刷データを送出する場合、更新された履歴に基づいて最もよく印刷に使用された印刷装置を特定し、特定された印刷装置が現在の親機と異なる場合に親機を特定された印刷装置に切り替えて切り替わった親機へ前記新たな印刷データを送出させる親機設定部とを備えることを特徴とする。
【0074】
この発明は、印刷データを格納するプリントサーバ(親機)としての機能および前記親機に格納された印刷データを取得して印刷する子機としての機能を備える印刷装置と通信可能に接続された印刷指示装置に係るものである。その具体的な態様は、例えば、通信機能を備えるパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。複数の印刷装置は、親機および機能を兼ね備えたものを少なくとも1台含み、他は子機の機能のみを備えたものであってもよい。
【0075】
前述の実施形態において
図1に示されるノート型コンピュータおよびデスクトップコンピュータは、この発明の印刷指示装置に相当する。
また、印刷履歴管理部は、プリントリリース機能を用いた印刷の履歴を管理するが、その履歴の内容は親機の切り替えに関するものである。その具体的な態様の一例は、前述の実施形態において
図10に示す印刷管理テーブルである。印刷管理テーブルは、親機として機能し得る各複合機について、現在親機に設定されているか否か、子機としての印刷を行った回数、他の複合機と識別するためのIPアドレスおよび子機として対応可能な印刷設定に係る機能を表す子機属性を管理する。
親機設定部は、印刷管理テーブルを参照して、最もよく印刷に使用された印刷装置を親機とするように設定を変更する。
【0076】
プリントリリース機能に係る印刷データを格納する親機とその印刷データを印刷する子機が同じ複合機であれば、印刷データやそれに関する情報をネットワーク経由で転送する処理が不要になり、印刷ジョブを効率よく処理できる。この発明によれば、プリントリリース機能を用いた印刷を行った子機から印刷指示装置へ印刷完了時に情報を通知し、印刷指示装置がその情報を集計する。そして、印刷頻度の高い子機を自律的に親機に変更することで、ジョブを効率よく処理できるようにする。
【0077】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記履歴管理部は、印刷完了情報の受領回数を送信元の子機毎にカウントし、前記親機設定部は、子機毎にカウントされた前記受領回数を参照して最もよく印刷に使用された印刷装置を特定してもよい。
このようにすれば、印刷完了情報の受領回数を子機毎にカウントすることで、最もよく印刷に使用された印刷装置を特定できる。
【0078】
(iii)前記親機設定部は、親機の設定を切り替える場合、子機としての機能を有する各印刷装置に対して親機の設定を前記特定された印刷装置に切り替えるように指示を送ってもよい。
このようにすれば、親機の設定を切り替える場合に、子機としての各印刷装置との整合性が維持された状態で切り替えが行われる。
【0079】
(iv)前記印刷完了情報が、印刷を行った子機を他の子機と識別する子機識別情報および子機が実行可能な印刷機能に係る情報を含んでいてもよい。
このようにすれば、子機から提供される子機が実行可能な印刷機能に係る情報を用いて、印刷の設定に応じた印刷機能を有する子機のうちで、使用頻度の高いものを親機として設定することができる。
【0080】
(v)前記親機設定部は、親機の設定を切り替える場合、子機としての機能を有する各印刷装置に対して親機の設定を前記特定された印刷装置に切り替えるように指示を送ってもよい。
このようにすれば、親機の設定を切替える際に、子機としての各印刷装置にそれを知らせることで整合性を確保できる。
【0081】
(vi)前記通信部は、前記子機としての機能のみを有する他の印刷装置とさらに通信し、前記親機および前記子機としての機能を有する印刷装置は前記印刷データの印刷後に印刷完了情報を送出し、前記子機としての機能のみを有する印刷装置は前記印刷データの印刷後に印刷完了情報を送出せず、前記親機設定部は、受領した印刷完了情報に基づいて更新された対応する印刷装置の印刷に係る履歴に基づいて親機の切り替えに係る処理を行ってもよい。
このようにすれば、子機としての機能のみを有する印刷装置は印刷完了情報を送出しないようにすることで、子機としての機能のみを有する印刷装置を除いた印刷管理テーブルを用いて親機の設定を管理することができる。
【0082】
(vii)この発明の一態様は、印刷データを格納する親機としての機能を有すると共に前記印刷データを取得して印刷を行う子機としての機能を有する複数の印刷装置と通信する印刷指示装置の制御部が、前記親機に格納させる印刷データを送出するステップと、前記印刷データを印刷した子機から印刷完了情報を受領するステップと、受領した印刷完了情報に基づいて対応する印刷装置の印刷に係る履歴を更新するステップと、新たな印刷データを送出する場合、更新された履歴に基づいて最もよく印刷に使用された印刷装置を特定し、特定された印刷装置が現在の親機と異なる場合に親機を特定された印刷装置に切り替えて切り替わった親機へ前記新たな印刷データを送出させるステップとを備える印刷制御方法を含む。
【0083】
この発明の態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0084】
100,200,201,202:複合機、 101:通信部、 102:記憶デバイス、 103:画像形成部、 104:制御部、 105:操作部、 111:通信回路、 112:メモリ、 113:表示部、 114:操作検出部、 115:処理部、 121:印刷データ送出処理部、 122:印刷完了受領処理部、 123:印刷履歴管理部、 124:親機設定部、 199:ネットワーク、 210:ノート型コンピュータ、 211:デスクトップコンピュータ、 220:「印刷設定」ウィンドウ、 221:「認証」チェックボックス、 222:認証方式選択リスト、 223:ログイン名入力欄、 224:パスワード入力欄、 225:「プリントリリース」チェックボックス、 230:ホーム画面、 231:「プリントリリース」キー、 233:印刷指示画面、 234:ジョブリスト、 235:印刷対象データ、 236:部数設定欄、 237:「印刷」キー
300:印刷データ、 301:印刷種別データ、 302:印刷指示装置識別情報、 310:印刷完了情報、 320:印刷管理テーブル