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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B41J2/01 121
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021045919
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144764
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】三好 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】清本 博史
(72)【発明者】
【氏名】日吉 唯
(72)【発明者】
【氏名】深沢 大志
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-043647(JP,A)
【文献】特開2012-223978(JP,A)
【文献】特開2021-049669(JP,A)
【文献】特開2012-078808(JP,A)
【文献】特開2020-187299(JP,A)
【文献】国際公開第2009/060972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非着色微粒子を含んだ第1インクを記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に非着色印刷層を形成する第1供給装置と、
加熱によって消色する着色顔料粒子と中空樹脂粒子とを含んだ第2インクを、前記非着色印刷層を形成した前記記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に着色印刷層を形成する第2供給装置と
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
前記非着色印刷層と前記着色印刷層との組み合わせが、前記着色印刷層のパターンとは異なるパターンを形成するように、前記第1及び第2供給装置の動作を制御するコントローラを更に備えた請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記着色顔料粒子の平均粒子径D1と前記非着色微粒子の平均粒子径D2とは、不等式:0.5<D2/D1<5で表される関係を満たす請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記非着色微粒子は、前記着色顔料粒子を消色したものであるか、又は、呈色性化合物を含んでいないこと以外は前記着色顔料粒子と同様である請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2供給装置は、インクジェット方式で前記第2インクを前記記録媒体上へ供給する請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
非着色微粒子を含んだ第1インクを記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に非着色印刷層を形成することと、
加熱によって消色する着色顔料粒子と中空樹脂粒子とを含んだ第2インクを、前記非着色印刷層を形成した前記記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に着色印刷層を形成することと
を含む画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消色可能なインクを用いて記録媒体に印刷できる画像形成装置が知られている。消色可能なインクは、所定の温度で消色して不可視の状態となる。しかしながら、消色したインクは、視認できてしまう場合がある。これは、消色可能なインクに含まれる着色顔料粒子の光散乱効果などによるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-78808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、消色後のインク(消色跡)を目立たないようにする画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、
非着色微粒子を含んだ第1インクを記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に非着色印刷層を形成する第1供給装置と、
加熱によって消色する着色顔料粒子を含んだ第2インクを、前記非着色印刷層を形成した前記記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に着色印刷層を形成する第2供給装置と
を備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式図。
図2図1に示す画像形成装置の制御系の概略構成を示すブロック図。
図3】感温変色性色彩記憶性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフ。
図4】別の感温変色性色彩記憶性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.画像形成装置
実施形態に係る画像形成装置は、非着色微粒子を含んだ第1インクを記録媒体上へ供給して、記録媒体上に非着色印刷層を形成する第1供給装置と、加熱によって消色する着色顔料粒子を含んだ第2インクを、非着色印刷層を形成した記録媒体上へ供給して、記録媒体上に着色印刷層を形成する第2供給装置とを備えている。
【0008】
「第2インク」は、画像形成用インクであり、記録媒体上に着色印刷層を形成し、加熱により消色する。このため、本明細書において「第2インク」は、熱消色性インクとも呼ぶ。熱消色性インクは、加熱により消色するものであれば、その後、冷却により再度発色してもよいし、再度発色しなくてもよい。「第1インク」は、画像形成に寄与せず、記録媒体上に非着色印刷層を形成し、これにより、消色後の熱消色性インク(すなわち消色跡)を目立たなくする役割を果たす。このため、本明細書において「第1インク」は、消色跡軽減インクとも呼ぶ。
【0009】
以下、実施形態に係る画像形成装置の一例を、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式図である。図2は、図1に示す画像形成装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0010】
図1に示す画像形成装置は、インクジェットプリンタ70である。インクジェットプリンタ70は、例えば記録媒体である用紙Pを搬送しながら、画像形成等の各種処理を行う装置である。
【0011】
インクジェットプリンタ70は、筐体80と、筐体80の上部に設けられた排紙トレイ72と、筐体80内部に設けられた、給紙装置40、搬送装置50、保持ローラ73、保持装置75、第1供給装置10、乾燥装置30、第2供給装置20、除電剥離装置77、クリーニング装置79及び反転装置78とを備えている。
【0012】
給紙装置40は、給紙カセット71と、ピックアップローラ84とを備えている。給紙カセット71は、用紙Pなどの記録媒体を収容する。ピックアップローラ84は、搬送用モータを駆動することで回転する。これにより、給紙カセット71に収容された記録媒体のうち最上層のものがピックアップされる。
【0013】
搬送装置50は、給紙カセット71から保持ローラ73を経由し、排紙トレイ72にわたって形成される搬送路Aに沿って用紙Pを搬送する。
【0014】
搬送装置50は、搬送路Aに沿って設けられた複数のガイド部材81~83や、複数の搬送用ローラ85~89を備えている。搬送用ローラとしては、給紙ローラ対85、レジストローラ対86、分離ローラ対87、搬送ローラ対88、排出ローラ対89が設けられている。これらの搬送用ローラ85~89は、搬送用モータを駆動することで回転する。これにより、用紙Pは、搬送路Aに沿って下流側に送られる。
【0015】
搬送路Aにおけるレジストローラ対86のニップ近傍には、用紙Pの先端位置を検知する用紙位置センサ107が設けられている。さらに、ユーザによって各種の項目が設定可能なオペレーションパネルが設けられている。また、インクジェットプリンタ70の内部には、インクジェットプリンタ70の内部の温度を検出する温度センサ108が設けられている。そのほか、用紙Pの搬送状況を監視するためのセンサなどが各所に配置されている。
【0016】
保持ローラ73は、回転軸90と、アルミニウムからなる円筒状の円筒フレーム91と、円筒フレーム91の表面に形成された絶縁層92とを備えている。円筒フレーム91は、接地されていて、帯電ローラ97による帯電時には対抗電極として電位が0Vに保持される。保持ローラ73は、用紙Pを保持した状態で回転することにより用紙Pを搬送する。ここでは、図1に示される矢印に示される向きに回転することにより、用紙Pを時計回りに搬送する。
【0017】
保持ローラ73の周りには、上流側から下流側に向かって順番に、保持装置75と、第1供給装置10と、乾燥装置30と、第2供給装置20と、除電剥離装置77と、クリーニング装置79とが設けられている。
【0018】
保持装置75は、用紙Pを保持ローラ73の外面に押圧することで、用紙Pを保持ローラ73の表面(外周面)に吸着させる。保持装置75は、用紙Pを保持ローラ73に対して押圧する押圧装置93と、静電気により用紙Pを保持ローラ73に吸着させる吸着装置94とを備えている。
【0019】
押圧装置93は、回転軸950と、保持ローラ73の表面に対向して配置される押圧ローラ95(押圧部材)と、押圧ローラ95を駆動する押圧モータとを備えている。
【0020】
押圧ローラ95は、回転することにより、保持ローラ73の表面を第1の押圧力で押し付ける第1状態と、第1の押圧力よりも小さい第2の押圧力で押し付ける第2状態と、保持ローラ73から離間して押圧力が解除される第3状態とに遷移する。
【0021】
押圧ローラ95と保持ローラ73間にかかる力は、用紙Pが変形せず、また、画質が低下しないような適正値に設定される。用紙Pが保持ローラ73と押圧ローラ95のニップ部を通過する際に、押圧ローラ95により用紙Pが保持ローラ73に押し付けられる。これにより、用紙Pが保持ローラ73に密着する。
【0022】
押圧ローラ95の外周面は、絶縁材からなる絶縁層951で覆われ、帯電した用紙Pの電荷が押圧ローラ95を介してリークしないようになっている。
【0023】
吸着装置94は、押圧ローラ95の下流側に配置される帯電ローラ97を備えている。帯電ローラ97は、帯電可能な金属製の帯電軸970と帯電軸970の外周に形成された表層部971とを有し、保持ローラ73に対向して配置されている。この帯電ローラ97に対しては、電荷の供給が可能である。また、帯電ローラ97は、保持ローラ73に対して、移動可能になっている。
【0024】
帯電ローラ97が保持ローラ73に近接した状態で、帯電ローラ97に電力が供給されると、帯電ローラ97と接地された円筒フレーム91との間に電位差が生じる。その結果、用紙Pを保持ローラ73に吸着させる方向の静電気力が発生(帯電)する。この静電気力により、用紙Pは、保持ローラ73の表面に吸着する。
【0025】
第1供給装置10は、保持ローラ73の下方に配置され、消色跡軽減インクのためのインクジェットヘッド11を備えている。インクジェットヘッド11は、画像形成前の処理、即ち前処理として、用紙Pに消色跡軽減インクを吐出して、非着色印刷層を形成する。
【0026】
例えば、消色跡軽減インクは、用紙Pの全面に供給してもよいし、画像形成用インクの吐出により着色印刷層が形成される予定の領域以外の領域に供給してもよい。すなわち、消色跡軽減インクは、少なくとも、画像形成用インクの吐出により着色印刷層が形成される予定の領域以外の所定の領域に供給すればよい。より具体的には、消色跡軽減インクは、非着色印刷層のパターンと着色印刷層のパターンとの組み合わせから、着色印刷層のパターンの識別を困難とすることができるように供給すればよい。
【0027】
乾燥装置30は、第1供給装置10の下流に設けられ、用紙Pに塗布された消色跡軽減インクを乾燥させる。乾燥装置30は、ヒータであってもよいし、加熱空気を送風する送風機であってもよい。消色跡軽減インクを完全に乾燥させたい場合には、保持ローラ73を、消色跡軽減インクが塗布された用紙Pを保持した状態で1周以上回転させ、その後、画像形成を行ってもよい。
【0028】
第2供給装置20は、保持ローラ73に保持された用紙Pに画像を形成する。第2供給装置20は、保持ローラ73の上方に配置され、4色の熱消色性インクのための4つのインクジェットヘッド21、22、23、24を備えている。4つのインクジェットヘッド21、22、23、24は、用紙Pにインクを吐出する。例えば、インクジェットヘッド21、22、23、24は、それぞれ、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの熱消色性インクを吐出する。これにより用紙Pに画像が形成される。
【0029】
第2供給装置20は、図1に示されるとおり、カラー画像を形成できるように、画像形成用インクのための複数のインクジェットヘッドを備えていてもよい。あるいは、第2供給装置20は、単色の画像を形成できるように、画像形成用インクのための1つのインクジェットヘッドを備えていてもよい。
【0030】
なお、記録媒体に塗布された熱消色性インクを乾燥させるための乾燥装置を、第2供給装置20の下流に設けてもよい。この乾燥装置は、画像が形成された記録媒体を、消色温度未満の温度に加熱可能なものである。
【0031】
除電剥離装置77は、除電装置101と剥離装置102とを備えている。
除電装置101は、用紙Pの除電を行う。除電装置101は、第2供給装置20よりも下流側に設けられ、帯電可能な除電ローラ103を備えている。除電装置101は、電荷を供給して用紙Pを除電することで、用紙Pを保持ローラ73から剥離しやすい状態にする。
【0032】
剥離装置102は、除電後に保持ローラ73の表面から用紙Pを剥離する。剥離装置102は、除電装置101の下流側に設けられ、移動可能な分離爪105を備えている。分離爪105は、分離爪105が用紙Pと保持ローラ73の間に挿入される剥離位置と、分離爪105が保持ローラ73から退避する退避位置との間で移動可能である。分離爪105は、剥離位置に配置されたときに、用紙Pを保持ローラ73の表面から剥離する。なお、図1では、剥離位置にある分離爪105が破線で示され、退避位置にある分離爪105が実線で示されている。
【0033】
クリーニング装置79は、保持ローラ73をクリーニングする。クリーニング装置79は、除電剥離装置77よりも下流側に設けられている。クリーニング装置79は、保持ローラ73に当接する当接位置と保持ローラ73から退避する離間位置とで移動動作可能なクリーニング部材と、クリーニング部材を動作させるクリーニングモータとを備えている。クリーニング部材が、保持ローラ73の表面に当接した状態で、保持ローラ73が回転することにより、保持ローラ73の表面がクリーニングされる。
【0034】
反転装置78は、剥離装置102の下流側に設けられ、剥離装置102で剥離された用紙Pを反転させて再び保持ローラ73の表面上に供給する。反転装置78は、例えば用紙Pを前後方向逆にスイッチバックさせる所定の反転経路に沿って用紙Pを案内することにより、用紙Pを反転させる。
【0035】
インクジェットプリンタ70は、図2に示す画像情報入力部100及びコントローラ120を更に備えている。
【0036】
画像情報入力部100は、用紙Pなどの記録媒体に印刷すべき画像情報を外部記録媒体やネットワークから取り込む。画像情報入力部100は、この画像情報をコントローラ120へ供給する。
【0037】
コントローラ120は、記憶部130及び処理部140を含んでいる。記憶部130は、例えば、一次記憶装置(例えば、Random Access Memory;RAM)と二次記憶装置(例えば、Read Only Memory;ROM)とを含んでいる。処理部140は、プロセッサ(例えば、Central Processing Unit;CPU)を含んでいる。二次記憶装置は、例えば、プロセッサが解釈及び実行するプログラムを記憶している。一次記憶装置は、例えば、画像情報入力部100等が供給した画像情報、二次記憶装置が記憶しているプログラム、及びプロセッサが演算処理によって生成したデータ等を一次記憶する。プロセッサは、一次記憶装置が記憶しているプログラムを解釈及び実行する。
【0038】
コントローラ120は、このようにして、画像情報入力部100等から供給された画像情報に基づいて、給紙装置40、第1供給装置10、第2供給装置20、乾燥装置30及び搬送装置50等の動作を制御する。
【0039】
コントローラ120は、記録のための画像処理を開始し、画像データに対応した画像信号を生成するとともに、給紙装置40及び搬送装置50の各ローラ、第1供給装置10及び第2供給装置20の各インクジェットヘッド、及び乾燥装置30等の動作を制御する制御信号を生成する。
【0040】
具体的には、コントローラ120は、消色跡軽減インクにより形成された非着色印刷層と熱消色性インクにより形成された着色印刷層との組み合わせが、着色印刷層のパターンとは異なるパターンを形成するように、第1供給装置10及び第2供給装置20の動作を制御することができる。すなわち、コントローラ120は、消色跡軽減インクが、少なくとも、着色印刷層が形成される予定の領域以外の所定の領域に供給されるように、第1供給装置10及び第2供給装置20の動作を制御することができる。
【0041】
より具体的には、非着色印刷層は、以下で例示するように形成することができる。非着色印刷層は、例えば、ベタ印刷とすることができる。ベタ印刷による非着色印刷層の形成は、着色印刷層のパターンを完全に識別できないようにすることができる点で優れている。あるいは、非着色印刷層は、例えば、網点、ストライプ、又は市松模様状の規則的なパターンを有するように形成してもよい。あるいは、非着色印刷層は、着色印刷層が表示する文字列とは無関係な文字列、例えば、ランダムな文字列のパターンを有するように形成してもよい。あるいは、非着色印刷層は、不規則なパターンを有するように形成してもよい。非着色印刷層のパターンは、それと着色印刷層のパターンとの組み合わせから、着色印刷層のパターンの識別を困難とするものであれば任意のパターンとすることができる。
【0042】
上述したインクジェットプリンタ70は、消色装置と組み合わせて使用することができる。消色装置は、非着色印刷層と着色印刷層が形成された記録媒体を、消色温度以上に加熱可能なものである。消色装置は、特に限定されないが、例えば、ヒータなどの加熱装置であってもよいし、摩擦による加熱装置であってもよい。
【0043】
上述したインクジェットプリンタ70は、熱消色性インク用のインクジェットヘッド21、22、23、24を備えた第2供給装置に加えて、消色跡軽減インク用のインクジェットヘッド11を備えた第1供給装置10を備えている。このため、上述したインクジェットプリンタ70を用いて非着色印刷層と着色印刷層の形成を行い、その後、消色した場合、非着色印刷層に含まれる非着色微粒子が、着色顔料粒子が付着している部分と、付着していない部分との間の光沢差を軽減させることができ、これにより、消色跡を目立たなくすることができる。
【0044】
ここでは、画像形成装置の一例としてインクジェット式の画像形成装置について説明したが、画像形成装置はこれに限定されない。画像形成装置としては、例えば、スクリーン印刷、凹版印刷、及び凸版印刷式の印刷法を用いた画像形成装置であってもよい。
【0045】
また、上述の画像形成装置の例は、インクジェット方式で消色跡軽減インク及び熱消色性インクを記録媒体上へ供給している。第2供給装置は、インクジェット方式で熱消色性インクを記録媒体上へ供給し、第1供給装置は、インクジェット方式以外の印刷方式で消色跡軽減インクを記録媒体上へ供給してもよい。例えば、消色跡軽減インクを、記録媒体の全面に塗布されるように、ローラ塗布により記録媒体上へ供給し、その後、熱消色性インクをインクジェット方式で記録媒体上へ供給してもよい。
【0046】
2.画像形成方法
上述の画像形成装置を用いて、熱消色性インクの消色跡が目立たない画像形成を行うことができる。したがって、別の側面によれば、画像形成方法が提供される。すなわち、実施形態に係る画像形成方法は、非着色微粒子を含んだ消色跡軽減インクを記録媒体上へ供給して、記録媒体上に非着色印刷層を形成することと、加熱によって消色する着色顔料粒子を含んだ熱消色性インクを、非着色印刷層を形成した記録媒体上へ供給して、記録媒体上に着色印刷層を形成することとを含む。このようにして形成された画像は、加熱により消色することが可能である。
【0047】
この方法は、「1.画像形成装置」の欄の説明を参照して実施することができる。上述のとおり、この方法は、消色後に、非着色印刷層に含まれる非着色微粒子が、着色顔料粒子が付着している部分と、付着していない部分との間の光沢差を軽減させることができ、これにより、消色跡を目立たなくすることができるという効果を奏する。
【0048】
3.インク
以下、上述の画像形成装置及び画像形成方法で使用されるインク、すなわち、熱消色性インク及び消色跡軽減インクについて説明する。
【0049】
3-1.熱消色性インク
熱消色性インクは、加熱によって消色する着色顔料粒子と、分散媒(例えば水)とを含むことができる。着色顔料粒子は、熱消色性を示す公知の顔料を使用することができる。着色顔料粒子は、消色後に再度発色させることができない不可逆タイプであってもよいし、消色と発色を繰り返すことができる可逆タイプであってもよい。
【0050】
着色顔料粒子は、好ましくはマイクロカプセル粒子である。一例によれば、マイクロカプセル粒子は、内包物として、(a)呈色性化合物と、(b)顕色剤と、(c)消色剤とを含む。(a)呈色性化合物は、色を決める成分であり、顕色剤に電子を供与し、発色する化合物とすることができる。代表的な呈色性化合物としてロイコ染料が挙げられる。(b)顕色剤は、呈色性化合物から電子を受け取り、呈色性化合物の顕色剤として機能する化合物とすることができる。(c)消色剤は、呈色性化合物及び顕色剤による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生じさせる化合物とすることができる。かかる(a)~(c)の成分を含むマイクロカプセル粒子は、可逆タイプであり、公知である。
【0051】
したがって、(a)~(c)の成分は、それぞれ、公知の成分を使用することができる。また、(a)~(c)の成分の配合割合は、適宜決定することができる。
【0052】
マイクロカプセル顔料としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載されている、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1℃から7℃)を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を用いることができる(図3参照)。
【0053】
また、特開2006-137886号公報、特開2006-188660号公報、特開2008-45062号公報、特開2008-280523号公報等に記載されている、大きなヒステリシス特性を示す可逆熱変色性組成物を内包させたマイクロカプセル顔料を用いることもできる。即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2からt3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させたマイクロカプセル顔料を用いることもできる(図4参照)。
【0054】
色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させたマイクロカプセル顔料の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図4では、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
【0055】
変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるt2とt3の間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0056】
前記完全消色温度t4は、ヒーターの熱や、摩擦部材と印刷面との擦過によって生じる摩擦熱等により消色する温度である。摩擦部材と印刷面との擦過によって生じる摩擦熱等により消色する温度としては、例えば、50℃以上90℃以下であり、好ましくは55℃以上85℃以下、より好ましくは60℃以上80℃以下の範囲にあり、完全発色温度t1は冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度とすることができ、例えば、0℃以下であり、好ましくは-50℃以上-5℃以下、より好ましくは-50℃以上-10℃以下の範囲にある。
【0057】
以下に前記可逆熱変色性組成物の(a)、(b)、(c)成分について具体的に化合物を例示する。
【0058】
前記(a)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(b)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
前記電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられ、これらのうちフタリド化合物およびフルオラン化合物が好ましい。
【0059】
前記フタリド化合物としては、例えばジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、およびそれらの誘導体などが挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、ならびにそれらの誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0060】
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアミノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジペンチルアミノフルオラン、
2-(ジベンジルアミノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(N-メチルアニリノ)-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、
1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジエチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジ-n-ブチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(N-エチル-N-i-アミルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジブチルアミノ)-8-(ジペンチルアミノ)-4-メチル、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジメチルアミノ)-2-メトキシフェニル〕-3-(1-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル〕-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル〕-3-(1-ペンチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-[4-(ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル]-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシ-キナゾリン、
4,4′-(エチレンジオキシ)-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
等を挙げることができる。
【0061】
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する前記化合物の他、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、クロロ基等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0062】
前記(b)成分、即ち電子受容性化合物は、(a)成分から電子を受け取り、(a)成分の顕色剤として機能する化合物である。
前記電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群及びその誘導体、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して(a)成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物があり、これらの中でも活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
【0063】
活性プロトンを有する化合物及びその誘導体としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物及びその金属塩、カルボン酸及びその金属塩、好ましくは、芳香族カルボン酸、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、並びにアゾ-ル系化合物及びその誘導体、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体が挙げられ、これらの中でも、有効な熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
【0064】
前記フェノール性水酸基を有する化合物はモノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、更にビス型、トリス型フェノール等およびフェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、少なくともベンゼン環を2以上有するものが好ましい。また、これら化合物は置換基を有していてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0065】
前記活性プロトンを有する化合物の金属塩が含む金属としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛およびモリブデン等が挙げられる。
【0066】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン等がある。
【0067】
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0068】
(c)成分としては、色濃度-温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコールまたはフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコールまたはエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコールまたは分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0069】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコールまたはn-ヘプチルアルコールと炭素数10~16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17~23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
【0070】
具体的には、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等を挙げることができる。
【0071】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
【0072】
また、総炭素数が12~24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0073】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0074】
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等を挙げることができる。
【0075】
酸アミド類としては、ヘキサン酸アミド、ヘプタン酸アミド、オクタン酸アミド、ノナン酸アミド、デカン酸アミド、ウンデカン酸アミド、ラウリル酸アミド、トリデカン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ドコサン酸アミド等を挙げることができる。
【0076】
また、(c)成分として、国際公開WO2020/209118の段落[0053]~[0072]で例示した化合物を用いることもできる。
【0077】
更に、マイクロカプセル粒子には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0078】
マイクロカプセル粒子は、内包物/壁膜=7/1~1/1(質量比)の範囲であることが好ましい。壁膜の比率が範囲内にあることにより、発色時の色濃度の低下及び鮮明性の低下を防止することができる。マイクロカプセル粒子は、より好適には、内包物/壁膜=6/1~1/1(質量比)の範囲内である。
【0079】
マイクロカプセル粒子は、化学的、物理的に安定であり、これにより、種々の使用条件において、同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができる点で優れている。
【0080】
マイクロカプセル化は、公知の方法により行うことができる。カプセルの隔膜の材質としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質したりすることもできる。
【0081】
着色顔料粒子は、例えば300~5000nm、好ましくは300~4000nm、より好ましくは500~3000nmの平均粒子径を有する。粒子径が小さくなると、発色性が低下する傾向がある。粒子径が大きくなると、熱消色性インク中の分散性やインクジェット吐出性が悪くなる傾向がある。
【0082】
マイクロカプセル顔料の平均粒子径としては、等体積球相当の粒子の平均粒子径(メジアン径)を用いる。その最適測定としては直接的測定法にてキャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置である島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD7000を用いて測定できる。
【0083】
上記直接的測定法としては、キャリブレーションは、顕微鏡で撮影した画像から個々の粒子の面積(2次元)を計測して相当径を測定する、画像解析法、コールターカウンターを用いて検出器の微小な穴(アパチャー)に定電流を流し、その穴を粒子が通過する際に生じるインピーダンスの変化から相当径を測定する、コールター法(電気的検知帯法)などが挙げられ、レーザー測定法のキャリブレーションはこれらによって得られた値を元に行なう。
【0084】
画像解析法による平均粒子径の測定は、例えば、マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「マックビュー」を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することができる。
【0085】
コールター法による平均粒子径の測定は、全ての粒子、あるいは、大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合に適用可能であり、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度分布測定装置「Multisizer 4e」を用いて測定することができる。
【0086】
着色顔料粒子は、熱消色性インク全量に対し、例えば5~40質量%、好ましくは10~40質量%、更に好ましくは10~35質量%の量で配合することができる。
【0087】
熱消色性インクは、着色顔料粒子に加えて中空樹脂粒子を含むことが好ましい。一例によれば、中空樹脂粒子は、粒子内部に1つの中空部を有する。中空樹脂粒子は、樹脂からなる外殻部と外部との間の界面に加え、外殻部と中空部との間の界面を有している。中空樹脂粒子は、外殻部と外部との間の屈折率の違い、及び、外殻部と中空部との間の屈折率の違いにより光散乱効果を有する。中空樹脂粒子は、かかる光散乱効果を有していれば、形状や材質は特に限定されない。中空樹脂粒子は、1つの中空部を有していてもよいし、複数の中空部を有していてもよい。また、中空樹脂粒子と同様の効果を奏する粒子として、多孔質粒子を使用することもできる。多孔質粒子は、連続気孔のみを有していてもよいし、不連続気孔のみを有していてもよいし、連続気孔と不連続気孔の両方を有していてもよい。
【0088】
中空樹脂粒子は、一般的には、球状の形状を有する。中空樹脂粒子の材質は、例えば、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、架橋型スチレン-アクリル樹脂等のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、マレイン系樹脂などが挙げられる。
【0089】
中空樹脂粒子は、熱消色性インク中で沈殿しにくいことが望まれるため、中空樹脂粒子の材質は、熱消色性インクの分散媒とほぼ同等の比重を有するものが好ましい。中空樹脂粒子は、熱消色性インクに配合されたときに中空部分が分散媒で満たされ得る。このため、中空樹脂粒子の材質が、熱消色性インクの分散媒とほぼ同等の比重を有するものである場合、熱消色性インク中での中空樹脂粒子の沈殿をより確実に抑制することができる。
【0090】
中空樹脂粒子は、例えば200~1500nm、好ましくは300~1500nm、より好ましくは300~1300nmの平均粒子径を有する。粒子径が小さくなると、光散乱効果が低下する傾向がある。粒子径が大きくなると、インクの保存安定性やインクジェット吐出性が悪くなる傾向がある。
【0091】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、上記で説明した「着色顔料粒子の平均粒子径を求める方法」と同じ方法により取得される値を指す。
【0092】
中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができ、市販されているものも使用可能である。中空樹脂粒子としては、例えば、NIPOL MH8109(平均粒子径1000nm)(日本ゼオン株式会社)、ローペイクOP-84(平均粒子径550nm)(ダウ・ケミカル社)、ローペイクHP-1055(平均粒子径1000nm)(ダウ・ケミカル社)、ローペイクHP-433(平均粒子径450nm)(ダウ・ケミカル社)、ローペイクHP-91(平均粒子径1000nm)(ダウ・ケミカル社)、SX-866(A)(平均粒子径300nm)(JSR株式会社)、SX8782(D)(平均粒子径300nm)(JSR株式会社)などを使用することができる。
【0093】
中空樹脂粒子は、単一種類を使用してもよいし、複数種類を組み合わせて使用してもよい。
【0094】
上述の着色顔料粒子と中空樹脂粒子との平均粒子径比は、特に限定されないが、例えば1:0.04~1:5、好ましくは1:0.07~1:5、より好ましくは1:0.1~1:3とすることができる。
【0095】
中空樹脂粒子は、熱消色性インク中に、着色顔料粒子100質量部に対して、例えば5~100質量部、好ましくは10~50質量部の量で配合することができる。中空樹脂粒子の量が少ないと、中空樹脂粒子の果たす光散乱効果が低下する傾向がある。中空樹脂粒子の量が多いと、インクの発色性に影響を及ぼしたり、インクの保存安定性やインクジェット吐出性が悪くなったりする傾向がある。
【0096】
上述のとおり、中空樹脂粒子は光散乱効果を有するため、中空樹脂粒子を含む熱消色性インクは、消色後の消色跡を目立たなくすることができる。また、中空樹脂粒子は、樹脂から構成されていることと、熱消色性インクに配合されたときに中空部分が分散媒で満たされ得ることから、熱消色性インクの分散媒中で沈殿しにくく分散性がよい。このため、中空樹脂粒子は、熱消色性インクに配合されたときに隠蔽力が小さく、インクの発色性に影響を及ぼしにくい。
【0097】
したがって、中空樹脂粒子を熱消色性インクに配合すると、熱消色性インクの発色性及び消色性を向上させることができる。
【0098】
熱消色性インクは、着色顔料粒子、中空樹脂粒子、及び分散媒に加えて、添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば、安定化剤、調粘剤、防腐剤、保湿剤、濡れ剤、消泡剤等の汎用的な助剤をさらに含んでいてもよい。
【0099】
3-2.消色跡軽減インク
消色跡軽減インクは、無色透明なインクである。消色跡軽減インクは、非着色微粒子と、分散媒(例えば水)とを含むことができる。本明細書において「非着色」とは、透明ないし白色をいう。
【0100】
上述のとおり、消色跡軽減インクは、記録媒体上に非着色印刷層を形成し、これにより、消色後の熱消色性インク(すなわち消色跡)を目立たなくする役割を果たす。具体的には、消色跡軽減インクに含まれる非着色微粒子が、熱消色性インクにより着色印刷層が形成されている領域以外の領域に付着すると、消色後に、熱消色性インクの着色顔料粒子が付着している部分と、付着していない部分との間の光沢差を軽減させることができ、これにより、消色跡を目立たなくすることができる。
【0101】
したがって、消色跡軽減インクに含まれる非着色微粒子としては、熱消色性インクの着色顔料粒子と同様のサイズを有する粒子、または消色後の着色顔料粒子と同様な光散乱効果を有する粒子が好ましい。非着色微粒子は、好ましくはマイクロカプセル粒子である。
【0102】
非着色微粒子は、例えば300~5000nm、好ましくは300~4000nm、より好ましくは500~3000nmの平均粒子径を有する。
【0103】
非着色微粒子の平均粒子径は、上記で説明した「着色顔料粒子の平均粒子径を求める方法」と同じ方法により取得される値を指す。
【0104】
非着色微粒子のサイズを着色顔料粒子のサイズとの関係で表した場合、着色顔料粒子の平均粒子径D1と非着色微粒子の平均粒子径D2とは、不等式:0.5<D2/D1<5で表される関係を満たすことが好ましい。かかる関係を満たすと、消色後に、着色顔料粒子が付着している部分と、非着色微粒子が付着している部分との間の光沢差がほとんどなく、消色後の熱消色性インク(消色跡)をとりわけ目立たなくすることができる。
【0105】
非着色微粒子は、例えば、無色透明な樹脂粒子である。かかる非着色微粒子として、無色透明なポリエステル樹脂粒子などを使用することができる。無色透明な樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができ、市販されているものも使用可能である。無色透明な樹脂粒子としては、例えば、エポスターMX200W(平均粒子径350nm)(株式会社日本触媒)、エポスターMX300W(平均粒子径450nm)(株式会社日本触媒)、ビニブラン902(平均粒子径500nm)(日信化学工業株式会社)などを使用することができる。
【0106】
あるいは、非着色微粒子は、着色顔料粒子を消色した粒子であってもよい。かかる非着色微粒子として、着色顔料粒子を消色温度以上の温度に加熱して消色させることにより調製された粒子を使用することができる。ここで原料として使用される着色顔料粒子は、「3-1.熱消色性インク」の欄で説明した着色顔料粒子であり、好ましくはマイクロカプセル粒子であり、内包物として、(a)呈色性化合物と、(b)顕色剤と、(c)消色剤とを含む。
【0107】
かかる非着色微粒子は、同一の記録媒体に塗布される熱消色性インクに含まれる着色顔料粒子を原料として用いて調製したものであることが好ましい。この場合、着色印刷層に含まれる着色顔料粒子と、非着色印刷層に含まれる非着色微粒子とが全く同一のものであるため、消色後に、着色顔料粒子が付着している部分と、非着色微粒子が付着している部分との間の光沢差がなく、消色後の熱消色性インク(消色跡)をとりわけ目立たなくすることができる。
【0108】
非着色微粒子の原料として使用される着色顔料粒子は、消色後に再度発色させることができない不可逆タイプであってもよいし、消色と発色を繰り返すことができる可逆タイプであってもよい。
【0109】
可逆タイプの着色顔料粒子を原料として用いて非着色微粒子を調製した場合、以下の利点を有することができる。すなわち、消色後の記録媒体を再度冷却することがあっても、非着色微粒子が再度発色するため、消色された画像がどのような画像であったか認識できなくすることができる。この利点は、非着色印刷層をベタ印刷した場合にとりわけ顕著である。
【0110】
なお、不可逆タイプの着色顔料粒子を原料として用いて非着色微粒子を調製した場合は、熱消色性インクに含まれる着色顔料粒子も不可逆タイプを用いると、同様の利点を有することができる。すなわち、消色後の記録媒体を再度冷却することがあっても、着色顔料粒子も非着色微粒子も再度発色しないため、消色された画像がどのような画像であったか認識できなくすることができる。
【0111】
あるいは、非着色微粒子は、呈色性化合物を含んでいないこと以外は着色顔料粒子と同様である粒子であってもよい。かかる非着色微粒子として、着色顔料粒子を、呈色性化合物を入れないで調製することにより得られた粒子を使用することができる。かかる非着色微粒子は、呈色性化合物を含んでいないことを除けば、「3-1.熱消色性インク」の欄で説明した着色顔料粒子と同じである。すなわち、非着色微粒子は、好ましくはマイクロカプセル粒子であり、内包物として、(b)顕色剤と、(c)消色剤とを含む。
【0112】
かかる非着色微粒子は、同一の記録媒体に塗布される熱消色性インクに含まれる着色顔料粒子を、呈色性化合物を入れないで調製することにより得られたものであることが好ましい。この場合、着色印刷層に含まれる着色顔料粒子と、非着色印刷層に含まれる非着色微粒子とが、呈色性化合物の有無を除けば同一であるため、消色後に、着色顔料粒子が付着している部分と、非着色微粒子が付着している部分との間の光沢差がなく、消色後の熱消色性インク(消色跡)をとりわけ目立たなくすることができる。
【0113】
非着色微粒子は、消色跡軽減インク全量に対し、例えば5~40質量%、好ましくは10~40質量%、更に好ましくは10~35質量%の量で配合することができる。
【0114】
消色跡軽減インクは、非着色微粒子及び分散媒に加えて、添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば、安定化剤、調粘剤、防腐剤、保湿剤、濡れ剤、消泡剤等の汎用的な助剤をさらに含んでいてもよい。
【実施例
【0115】
[1]着色顔料粒子の作製
ロイコ染料としての3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド2質量部、顕色剤としての1,1-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4質量部、顕色剤としての1,1-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)n-デカン4質量部、消色剤としてのデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル50質量部からなる成分を均一に加温溶解した。得られた混合物を、カプセル化剤としての芳香族多価イソシアネートプレポリマー30質量部及び助溶剤40質量部と混合し、得られた溶液を10%ポリビニルアルコール水溶液240質量部中に乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた。その後、反応剤として水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に6時間攪拌を続けて無色のカプセル粒子を得た。さらに、このカプセル粒子分散体を遠心分離後、冷凍庫(-30℃)に入れて発色させ、イオン交換水を添加することで、30wt%の着色顔料粒子を含有する微粒子分散体を得た。得られた微粒子分散体を、上記で説明した「着色顔料粒子の平均粒子径を求める方法」に従って測定したところ、その平均粒子径(メジアン径)は1.3μmであった。完全消色温度は60℃である。
【0116】
[2]消色跡軽減インクの作製
<消色跡軽減インクAの作製>
ポリエステル樹脂(酸価10mgKOH/g、Mw15000、Tg58℃)30質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製ネオペレックスG15)1質量部、イオン交換水69質量部を混合し、水酸化カリウムにてpHを12に調整し、分散液を得た。得られた分散液を高圧式ホモジナイザーNANO3000(美粒社製)に投入し、150℃、100MPaの処理を施し、樹脂微粒子分散体を得た。得られた分散体の分散径を、上記で説明した「着色顔料粒子の平均粒子径を求める方法」に従って測定したところ、平均粒子径(メジアン径)は1.0μmであった。
【0117】
上記の樹脂微粒子分散体33質量部、グリセリン30質量部、吐出安定剤として日信化学工業社製のサーフィノール(登録商標)465を1質量部、防腐剤としてLonza社製のプロキセル(登録商標)xL-2を0.2質量部、純水35.8質量部とを混合し、スターラを用いて1時間攪拌し、その後濾過した。これにより、消色跡軽減インクAを得た。
【0118】
<消色跡軽減インクBの作製>
[1-1]の欄で得た着色顔料粒子を60℃に加温し、24時間放置することで消色をした。消色済みの着色顔料粒子33質量部、グリセリン30質量部、吐出安定剤として日信化学工業社製のサーフィノール(登録商標)465を1質量部、防腐剤としてLonza社製のプロキセル(登録商標)xL-2を0.2質量部、純水35.8質量部とを混合し、スターラを用いて1時間攪拌し、その後濾過した。これにより、消色跡軽減インクBを得た。
【0119】
[3]熱消色性インクの作製
<熱消色性インクAの作製>
[1-1]の欄で得た着色顔料粒子33質量部、グリセリン30質量部、中空樹脂粒子としてNIPOL MH8109(平均粒子径1000nm)(日本ゼオン株式会社)を2質量部、吐出安定剤として日信化学工業社製のサーフィノール(登録商標)465を1質量部、防腐剤としてLonza社製のプロキセル(登録商標)xL-2を0.2質量部、純水33.8質量部とを混合し、スターラを用いて1時間攪拌し、その後濾過した。これにより、熱消色性インクAを得た。
【0120】
<熱消色性インクBの作製>
[1-1]の欄で得た着色顔料粒子33質量部、グリセリン30質量部、吐出安定剤として日信化学工業社製のサーフィノール(登録商標)465を1質量部、防腐剤としてLonza社製のプロキセル(登録商標)xL-2を0.2質量部、純水35.8質量部とを混合し、スターラを用いて1時間攪拌し、その後濾過した。これにより、熱消色性インクBを得た。
【0121】
[4]消色性の評価
上述の「消色跡軽減インク」及び「熱消色性インク」を用いて消色性の評価を行った。具体的には、以下に記載のインクを使用して、実施例1~3及び比較例1~2を実施した。
実施例1:非着色微粒子として無色透明な樹脂粒子を含む「消色跡軽減インクA」
添加剤として中空樹脂粒子を含む「熱消色性インクA」
実施例2:非着色微粒子として無色透明な樹脂粒子を含む「消色跡軽減インクA」
添加剤として中空樹脂粒子を含まない「熱消色性インクB」
実施例3:非着色微粒子として着色顔料粒子を消色させた粒子を含む「消色跡軽減インクB」
添加剤として中空樹脂粒子を含む「熱消色性インクA」
比較例1:消色跡軽減インクによる前処理を実施しなかった
添加剤として中空樹脂粒子を含まない「熱消色性インクB」
比較例2:消色跡軽減インクによる前処理を実施しなかった
添加剤として中空樹脂粒子を含む「熱消色性インクA」
【0122】
<実施例1>
インクジェットプリンタを使用して印刷を行った。
まず、ピエゾヘッドを搭載した東芝テック社製のインクジェットプリンタを使用して、消色跡軽減インクAを記録媒体上に一辺が10cmの正方形状の領域になるようにベタ印刷を行い、これにより形成した印刷層は、ドライヤで10秒間に亘って加熱することで定着させた。このとき、記録媒体の表面温度は50℃以下であった。記録媒体としてはユポ紙を用いた。
【0123】
次に、同じくピエゾヘッドを搭載した東芝テック社製のインクジェットプリンタを使用して、熱消色性インクAでアルファベットの文字を印字した。これにより形成した印刷層は、ドライヤで10秒間に亘って加熱することで定着させた。このとき、記録媒体の表面温度は50℃以下であった。
【0124】
次に印刷物を80℃に加熱し、消色させた。
消色後の消色跡を確認したところ、消色跡はほとんどわからず文字の判別はできなかった。
【0125】
<実施例2>
前処理として消色跡軽減インクAを、印字用インクとして熱消色性インクBを用いた以外は実施例1と同様の評価を実施した。
消色後の消色跡を確認したところ、文字があることはうっすらと分かるが読み取れなかった。
【0126】
<実施例3>
前処理として消色跡軽減インクBを、印字用インクとして熱消色性インクAを用いた以外は実施例1と同様の評価を実施した。
消色後の消色跡を確認したところ、消色跡はほとんどわからず文字の判別はできなかった。
【0127】
<比較例1>
ピエゾヘッドを搭載した東芝テック社製のインクジェットプリンタを使用して、熱消色性インクBでアルファベットの文字を印字した。これにより形成した印刷層は、ドライヤで10秒間に亘って加熱することで定着させた。このとき、記録媒体の表面温度は50℃以下であった。
【0128】
次に印刷物を80℃に加熱し、消色させた。
消色後の消色跡を確認したところ、文字の判別ができた。
【0129】
<比較例2>
ピエゾヘッドを搭載した東芝テック社製のインクジェットプリンタを使用して、熱消色性インクAでアルファベットの文字を印字した。これにより形成した印刷層は、ドライヤで10秒間に亘って加熱することで定着させた。このとき、記録媒体の表面温度は50℃以下であった。
【0130】
次に印刷物を80℃に加熱し、消色させた。
消色後の消え跡を確認したところ、角度によってはうっすらと文字の判別ができた。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 非着色微粒子を含んだ第1インクを記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に非着色印刷層を形成する第1供給装置と、
加熱によって消色する着色顔料粒子を含んだ第2インクを、前記非着色印刷層を形成した前記記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に着色印刷層を形成する第2供給装置と
を備えた画像形成装置。
[2] 前記非着色印刷層と前記着色印刷層との組み合わせが、前記着色印刷層のパターンとは異なるパターンを形成するように、前記第1及び第2供給装置の動作を制御するコントローラを更に備えた[1]に記載の画像形成装置。
[3] 前記着色顔料粒子の平均粒子径D1と前記非着色微粒子の平均粒子径D2とは、不等式:0.5<D2/D1<5で表される関係を満たす[1]又は[2]に記載の画像形成装置。
[4] 前記非着色微粒子は、前記着色顔料粒子を消色したものであるか、又は、呈色性化合物を含んでいないこと以外は前記着色顔料粒子と同様である[1]乃至[3]の何れか1に記載の画像形成装置。
[5] 前記第2供給装置は、インクジェット方式で前記第2インクを前記記録媒体上へ供給する[1]乃至[4]の何れか1に記載の画像形成装置。
[6] 前記第2インクは、中空樹脂粒子を更に含む[1]乃至[5]の何れか1に記載の画像形成装置。
[7] 非着色微粒子を含んだ第1インクを記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に非着色印刷層を形成することと、
加熱によって消色する着色顔料粒子を含んだ第2インクを、前記非着色印刷層を形成した前記記録媒体上へ供給して、前記記録媒体上に着色印刷層を形成することと
を含む画像形成方法。
【符号の説明】
【0132】
10…第1供給装置、11…インクジェットヘッド、20…第2供給装置、21…インクジェットヘッド、22…インクジェットヘッド、23…インクジェットヘッド、24…インクジェットヘッド、30…乾燥装置、40…給紙装置、50…搬送装置、70…インクジェットプリンタ、71…給紙カセット、72…排紙トレイ、73…保持ローラ、75…保持装置、77…除電剥離装置、78…反転装置、79…クリーニング装置、80…筐体、81…ガイド部材、82…ガイド部材、83…ガイド部材、84…ピックアップローラ、85…給紙ローラ対、86…レジストローラ対、87…分離ローラ対、88…搬送ローラ対、89…排出ローラ対、90…回転軸、91…円筒フレーム、92…絶縁層、93…押圧装置、94…吸着装置、95…押圧ローラ、950…回転軸、951…絶縁層、97…帯電ローラ、970…帯電軸、971…表層部、101…除電装置、102…剥離装置、103…除電ローラ、105…分離爪、107…用紙位置センサ、108…温度センサ、A…搬送路、P…用紙、100…画像情報入力部、120…コントローラ、130…記憶部、140…処理部、t…加熱消色型のマイクロカプセル顔料の完全発色温度、t…加熱消色型のマイクロカプセル顔料の発色開始温度、t…加熱消色型のマイクロカプセル顔料の消色開始温度、t…加熱消色型のマイクロカプセル顔料の完全消色温度、ΔH…ヒステリシス幅
図1
図2
図3
図4