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特許7510910磁気共鳴イメージング装置、画像処理装置および画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240627BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20240627BHJP
   G01R 33/56 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 382
G01N24/00 530C
G01N24/00 530Y
G01R33/56
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021139158
(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公開番号】P2023032832
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】横沢 俊
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
(72)【発明者】
【氏名】神波 一穂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 善隆
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 将宏
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-244848(JP,A)
【文献】Pizzolato, Marco et al.,Adaptive phase correction of diffusion-weighted images,NeuroImage,2020年02月01日,Volume 206,https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2019.116274
【文献】Feihong, Liu,Gaussianization of Diffusion MRI Magnitude Data Using Spatially Adaptive Phase Correction,[オンライン],2019年05月,[検索日 2023.12.16], インターネット:<DOI:10.13140/RG.2.2.34492.51846>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00-24/14
G01R 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から発生する核磁気共鳴信号を計測する撮像部と、
前記撮像部が取得した核磁気共鳴信号を用いて前記被検体の画像を生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、複数回の撮像により得られた複数の複素画像に対し、複素画像毎に位相補正を行う位相補正部と、位相補正後の複数の複素画像を加算する複素加算部と、
前記複素画像またはその位相情報を持つ画像に対し平滑化度が異なる2種以上の平滑化処理を行う平滑化部と、
前記平滑化部において異なる平滑化度で平滑化した結果を、信号ノイズ比を用いて算出した重みを用いて重み付け加算する重み付け加算部と、を有し、
前記位相補正部は、前記重み付け加算部で重み付け加算した後に得られる複素画像の位相を用いて、前記複素画像の位相補正を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記画像処理部は、前記複素画像の強度情報から前記信号ノイズ比を算出するノイズレベル算出部と、前記信号ノイズ比に基づいて、前記重みを算出する重み算出部とをさらに備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記重み算出部は、前記平滑化部において平滑化度の大きい処理結果に対する重みとして、相対的に信号ノイズ比の低い領域で大きく、相対的に信号ノイズ比の高い領域で小さくなる重みを算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記重み算出部は、前記平滑化部において平滑化度の大きい処理結果に対する重みとして、背景領域の重みを1、被検体からの信号がある信号領域の重みをゼロとなる重みを算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記平滑化部は、前記複素画像に対し平滑化を行い、
前記位相補正部は、前記重み付け加算部で重み付け加算した後に得られる複素画像を位相画像に変換した後、当該位相画像を用いて補正前の複素画像の位相補正を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項5記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記平滑化部は、前記複素画像から取り出した位相成分からなる複素画像に対し、平滑化を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記平滑化部は、前記複素画像から作成した位相画像に対し平滑化を行い、
前記位相補正部は、前記重み付け加算部で重み付け加算した後に得られる位相画像を用いて補正前の複素画像の位相補正を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記平滑化部は、ガウシャンフィルタ、ローパスフィルタ、及び、正則化処理から選択される1ないし複数のフィルタを用いて平滑化処理を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記平滑化部が用いる2種以上のフィルタは、カーネルサイズが異なることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記複数の複素画像は、拡散強調イメージングによって取得した画像である磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記平滑化部が用いるフィルタの平滑度に関するユーザ指定を受け付けるGUIを、表示装置に表示させる表示制御部をさらに備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記重みに関するユーザ指定を受け付けるGUIを、表示装置に表示させる表示制御部をさらに備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
磁気共鳴イメージング装置が撮像した画像を処理する画像処理装置であって、
複素画像またはその位相情報を持つ画像に対し、平滑化度が異なる2種以上の平滑化処理を行う平滑化部と、
前記平滑化部において異なる平滑化度で平滑化した結果を、信号ノイズ比に基いて算出した重みを用いて重み付け加算する重み付け加算する重み付け加算部と、
前記複素画像の強度情報に基づいて、信号ノイズ比を算出するノイズレベル算出部と、
前記信号ノイズ比に基づいて、前記重み付け加算部が用いる重みを算出する重み算出部と、
前記重み付け加算部で重み付け加算した後に得られる複素画像の位相を用いて、前記複素画像の位相補正を行う位相補正部と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像処理装置であって、
複数の複素画像を複素加算する複素加算部をさらに含み、
前記複素加算部は、前記位相補正部によって位相補正された後の複数の複素画像を加算することを特徴とする画像処理装置。
【請求項15】
磁気共鳴イメージング装置が複数回の撮像により得た複数の複素画像を処理する画像処理方法であって、
前記複数の複素画像のそれぞれについて、
平滑化度が異なる2種以上の平滑化処理を行う平滑化ステップと、
前記複素画像の強度画像の信号値に基づいて信号ノイズ比を算出し、前記信号ノイズ比を用いて重みを算出するステップと、
前記2種以上の平滑化処理毎に得られる画像を、前記重みを用いて重み付け加算するステップと、
重み付け加算して得た画像を用いて、前記複素画像の位相を補正するステップと、
位相が補正された前記複数の複素画像を複素加算するステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の画像処理方法であって、
前記複数の複素画像は、拡散強調イメージングにより得た画像であることを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴イメージング装置で得られた画像を処理する画像処理装置および方法に関し、特に複素画像を加算する際の各複素画像の位相を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)では、信号ノイズ比(SNR)を改善するために、複数回の撮像を行ってその結果得られる複数の画像を加算する場合が多々ある。特に、水の拡散度合いを強調する拡散強調イメージング(DWI)のような撮像では、Motion Probing Gradient (MPG) パルスと呼ばれる強度の大きな傾斜磁場を印加することにより、動いている磁化の位相が変化し信号が低下するという問題があり、加算することによりSNRを向上する技術は重要である。
【0003】
通常MRIで得られる画像は、位相情報を含む複素画像として得られる。この複素画像を加算して1つの画像を得る手法には、複素のまま加算する複素加算と、画像を絶対値にした上で加算する絶対値加算とがあり、画像間で位相が揃っている場合には複素加算、画像間で位相が揃わない場合には絶対値加算が適切である。DWIの場合には、血流や脳脊髄液流などの生理的な体動によって位相が揃わないので、絶対値加算を用いることが多い。
【0004】
一般に、画像に含まれるノイズはガウス分布を示すが、絶対値画像にした場合、画像の背景領域などSNRが低い領域では、レイリー分布に近づき、非ガウス性となる。このため複数の絶対値画像を加算した場合にノイズの低減効果が十分に得られない。
【0005】
一方、複素加算では、このようなノイズの非ガウス性に起因する問題はないものの、複素加算する場合には、複数の画像間である程度位相を揃える処理が必要であり、そのための位相補正技術が提案されている。例えば、非特許文献1には、複数の画像それぞれについてローパスフィルタなどで大域的な位相変動を補正した上で複素加算を行うことが記載されている。非特許文献1には、フィルタのサイズ(平滑度)を異ならせた場合に複素加算の結果がどのようになるかについての報告もされており、フィルタサイズには、アーチファクトの発生とノイズ低減効果とのトレードオフがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Diffusion Tensor Imaging (DTI) With RetrospectiveMotion Correction for Large-Scale Pediatric Imaging、Samantha J. Holdsworth, JOURNAL OF MAGNETIC RESONANCE IMAGING 36:961-971 (2012)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、非特許文献1に記載されるようなフィルタを用いた平滑化は、ノイズ低減効果の高い、すなわち平滑度の高いフィルタを用いると被検体からの信号がある領域(信号領域という)にアーチファクトが発生しやすく、逆にこのようなアーチファクトの発生を抑制するようなフィルタを用いるとノイズ低減効果が低下する、というトレードオフの問題があり、両者を解決することができていない。
【0008】
本発明は、簡便な手法で適切な位相補正を行い、信号領域のアーチファクトの発生を抑え、背景領域のノイズを低減することができる手法を提案することを課題とする。なお本明細書では、信号領域はSNRの高い領域(例えばSNRが5以上)、背景領域はSNRの低い領域(例えばSNRが1以下)のことを示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、複素画像(或いはその位相情報を持つ画像)に対し、平滑化度の異なる2種以上の平滑化処理を行い、これにより得られた平滑化位相画像を、それぞれ、強度画像の信号値等に基づく重みを用いて加算し、補正用の位相画像とする。これにより、例えば、信号領域では平滑化度を弱くし、背景領域では平滑化度を強くして位相補正を行うのと同等の位相補正を実現し、一つのフィルタのトレードオフの問題を解決する。
【0010】
即ち、本発明のMRI装置は、被検体から発生する核磁気共鳴信号を計測する撮像部と、前記撮像部が取得した核磁気共鳴信号を用いて前記被検体の画像を生成する画像処理部と、を備え、前記画像処理部は、複数回の撮像により得られた複数の複素画像に対し、複素画像毎に位相補正を行う位相補正部と、位相補正後の複数の複素画像を加算する複素加算部と、を備える。画像処理部は、さらに、前記複素画像またはその位相情報を持つ画像に対し平滑化度が異なる2種以上の平滑化処理を行う平滑化部と、前記平滑化部において異なる平滑化度で平滑化した結果を重み付け加算する重み付け加算部と、を有し、前記位相補正部は、前記重み付け加算部で重み付け加算した後に得られる複素画像の位相を用いて、前記複素画像の位相補正を行う。
【0011】
また本発明の画像処理方法は、磁気共鳴イメージング装置が複数回の撮像により得た複数の複素画像を処理する画像処理方法であって、前記複数の複素画像のそれぞれについて、以下ステップを含む処理を行う。
平滑化度が異なる2種以上の平滑化処理を行う平滑化ステップ、前記複素画像の強度画像の信号値に基づいて、重みを算出するステップ、前記平滑化処理毎に平滑化された画像を、前記重みを用いて重み付け加算するステップ、重み付け加算して得た画像を用いて、前記複素画像の位相を補正するステップ、及び、位相が補正された前記複数の複素画像を複素加算するステップ。
【0012】
前記複数の複素画像は、例えば、拡散強調イメージングにより得た画像である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複素画像に対し、平滑度の異なるフィルタを適用し、その結果を所定の分布を持つ重みで、重み付け加算することで、画像の領域によって平滑度の異なるフィルタで処理したのと同じ結果を得ることができる。
【0014】
例えば、強度画像の信号値に応じて算出した重みを用いて重み付け加算することで、信号ノイズ比が異なる領域(例えば信号領域と背景領域)のそれぞれについて適切に平滑化された位相画像を得ることができる。この平滑化された位相画像を用いて補正した位相の複素画像を複素加算することで、加算後の画像においてアーチファクトの発生を抑制しながら、ノイズ低減効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用されるMRI装置の全体概要を示す図
図2】実施形態のMRI装置の計算機の機能ブロック図
図3】撮像部が実行するDWIシーケンスの一例を示す図
図4】実施形態1の画像処理部の処理を示すフロー図
図5】実施形態の位相補正部の処理を示す説明図
図6】重みの一例を示す図
図7】実施形態の平滑化部及び重み付け加算部の処理を示す説明図
図8】実施形態の画像処理部による処理の効果を説明する図
図9】表示装置に表示されるGUIの例を示す図
図10】本発明の画像処理装置の実施形態を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のMRI装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
まず本発明が適用されるMRI装置の構成を説明する。MRI装置1の構成は、図1に示すように、一般的なMRI装置の構成と同様であり、被検体が置かれる検査空間に均一な静磁場を発生するマグネット11と、マグネット11が発生する静磁場に対し磁場勾配を与える傾斜磁場コイル12と、被検体にパルス状の高周波磁場を印加し被検体の組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせる送信コイル及び被検体から発生する核磁気共鳴信号を受信する受信コイルを備えたプローブ13と、受信コイルに接続された受信器14と、送信コイルが接続された高周波磁場発生器15と、傾斜磁場コイル12が接続された傾斜磁場電源16と、受信器14、高周波磁場発生器15及び傾斜磁場電源16を所定のパルスシーケンスに従って制御するシーケンサ17と、計算機20とを備えている。上述した要素のうち計算機20を除く要素を包括して、ここでは撮像部10という。
【0018】
撮像部10の受信器14が受信した核磁気共鳴信号は、デジタル化され計測データとして計算機20に渡される。
【0019】
撮像部10を構成する各部の構造、機能などは、公知のMRI装置と同様であり、また本発明は公知の種々のタイプのMRI装置や要素に適用することができるので、ここでは撮像部10の詳細な説明は省略する。
【0020】
計算機20は、CPUやGPUとメモリを備えたコンピュータやワークステーションで構成することができ、撮像部10の動作の制御機能及び撮像部10が取得した計測データや計測データから再構成した画像に対し種々の演算を施す画像処理機能を有する。計算機20の各機能は、例えば各機能のプログラムをCPU等がアップロードし実行することで実現される。ただし計算機20の機能の一部は、プログラマブルIC(ASICやFPGA)などのハードウェアで実現することも可能である。またMRI装置1に無線或いは有線で接続された遠隔の計算機やクラウド上に構築された計算機において、計算機20の機能を実現する場合もあり得る。
【0021】
計算機20は、制御や演算に必要なデータや結果(中間的な結果を含む)を保存する記憶装置(記憶媒体30)やユーザにGUIや演算結果を表示したり、ユーザからの指定を受け付けたりするためのUI(ユーザーインターフェイス)部40を備えている。UI部40は、図示を省略した表示装置や入力装置を含む。
【0022】
本実施形態のMRI装置は、計算機20における処理、特に撮像部10が取得した核磁気共鳴信号或いはそれから再構成した画像(複素画像)の処理に特徴がある。具体的には、計算機20は、同一被検体について複数回の撮像により得た複数の複素画像を加算する複素加算部と、加算に供される各複素画像の位相を補正する位相補正部とを備える。位相補正部では、強度の異なる平滑化処理を行い、処理結果を重み付け加算して複素画像の位相補正を行う。
【0023】
上記機能を実現する計算機20の構成例を図2に示す。図示するように、計算機20は計測制御部211、表示制御部212、及び画像処理部22を含み、画像処理部22には、ノイズレベル算出部221、重み算出部222、平滑化部223―1、223-2、重み付け加算部224、位相補正部225、複素加算部226などが含まれる。なお図2には示していないが、画像処理部22は、通常のMRI装置の計算機が備える画像再構成のための機能、例えば、フーリエ変換或いは逆変換を行う機能或いは逐次近似演算機能などが含まれる。また撮像の態様に応じて必要な機能が追加されてもよいし、図2に含まれる機能部の一部が省略される場合もある。
【0024】
計測制御部211は、ユーザが設定した、或いは予め検査プロトコル等で設定されているパルスシーケンス及び撮像条件(撮像パラメータ)に基づき、撮像に用いるパルスシーケンスを算出し、シーケンサ17に設定し、シーケンサ17を介して撮像部10の動作を制御する。
【0025】
表示制御部212は、UI部40に備えられた表示装置に、画像処理によって得られる画像やユーザ指定を受け付けるためのGUIなどを表示するための制御を行う。
【0026】
画像処理部22は、計測データを用いた画像再構成、再構成された画像(複素画像)の位相補正、位相補正後の複素画像の複素加算等を行う。
【0027】
以下、上記構成のMRI装置の動作と画像処理部22の処理の詳細を説明する。
MRI装置1は、計測制御部211の制御のもと撮像が開始されると、シーケンサ17にセットされたパルスシーケンスに従って撮像が行われる。ここでは一例として、上述した位相補正の効果が顕著に得られるDWIのパルスシーケンスを用いた撮像(DWI)を行うものとする。典型的なDWIのパルスシーケンスの一例を図3に示す。図3において、RF、Sig.はそれぞれ高周波磁場パルス(RFパルス)の印加タイミング及びエコー信号取得タイミングを示し、Gs、Gp、Grは、スライス方向、位相エンコード方向及び読み出し方向の傾斜磁場パルスの印加タイミングを示す。
【0028】
図3に示すようDWIのパルスシーケンスは、スピンエコー系EPIシーケンスで、スライス選択傾斜磁場302、304とともに励起用RFパルス301、及び反転RFパルス303を印加した後、ブリップ状の位相エンコード傾斜磁場パルス305を印加するとともに読み出し傾斜磁場パルス306の極性を反転させながら印加し、エコー信号307を発生させる。DWIでは、さらに反転RFパルス303の印加前後に、一対の強度の大きいMPGパルス308、309を印加することで、静止したスピンはMPGパルス308で大きく変化した位相がMPGパルス309で戻されるのに対し、動きのあるスピンは動きの方向に応じて大きな位相変化を受けることとなる。従って、ランダムな方向に水分子が拡散している領域では、位相がばらつくため信号が低下し、拡散の小さい組織と大きい組織との差が大きい高コントラストの画像を得ることができる。
【0029】
図3では、一例としてMPGパルスの印加軸が読み出し方向Grの場合を示しているが、MPGパルスの印加軸は3軸(Gs、Gp、Gr)のいずれでもまたそれらの組み合わせであってもよい。また図3では1軸に位相エンコードする二次元のシーケンスを示したが、Gs軸についても位相エンコードを加える三次元のシーケンスでもよい。
【0030】
上述したDWIシーケンスの実行によって収集されたエコー信号307は受信器14で受信された後、デジタル化した計測データとして計算機20に渡される。
【0031】
シーケンサ17は、上述したパルスシーケンスを繰り返し、同一の被検体について、1枚の画像に必要な数のエコー信号からなる計測データ(k空間データ)を複数収集する。すなわち複数の撮像を行って複数の画像用データを収集する。計算機20は、複数の画像用データを加算し、1枚の画像を再構成する。
【0032】
次に、計算機20における画像再構成(画像処理部22の処理)の実施形態を、説明する。
<実施形態1>
本実施形態の処理を、図4を参照して説明する。
【0033】
まず画像処理部22は、撮像毎に得られる計測データ(k空間データ)を、逆フーリエ変換することにより画像データに変換する(S401)。これにより撮像毎に1つの画像が得られる。この画像は、強度情報と位相情報を持つ複素画像である。つまり図7に示すように、複素画像500は強度画像500Mと位相画像501とで構成される。
【0034】
画像処理部22は、複数の複素画像を複素加算して1枚の画像とするが(S407)、それに先立って、各複素画像(位相画像)の位相補正を行う。位相補正は、図5に示すように、補正前の複素画像(或いは位相画像)501に対し、平滑化を行い大域的な位相変動を補正する。平滑化後の複素画像(或いは位相画像)503と補正前の複素画像501との位相差分を取ることで、差分画像505として、大域的な位相変動が補正された補正後複素画像(位相が補正された画像)を得る。例えば、以下のような複素除算を行うことで、補正後複素画像505を得ることができる。
【0035】
【数1】
ここで、Ccorr(x,y)は補正後の複素画像、C(x,y)は補正前の複素画像、φF(x,y)は平滑化した位相画像をあらわす。
【0036】
この平滑化において、本実施形態では、平滑化の程度が異なる処理を行い、平滑化後の位相画像を、重み付け加算して、平滑化後位相画像502とする。
【0037】
なお平滑化は、位相情報と強度情報を含む複素画像をそのまま平滑化する手法、複素画像から位相成分を取り出し、位相成分のみを含む複素画像を平滑化する手法、複素画像から位相画像を作成し平滑化する手法などいくつかの手法を取りえる。重み付け加算で得られる結果は、元の複素画像の位相が平滑化されたものであるが、手法に応じて結果である画像や上述した位相補正に用いる位相画像502とするまでの処理が異なる。手法の詳細は後述するが、本実施形態では、複素画像或いは位相成分のみからなる複素画像に平滑化を行う場合を例に説明する。
【0038】
強度が異なる平滑化によって得た結果に対する重みは、強度画像に対応する分布を持つ重みで、画像の位置に応じて複数の平滑化結果に乗じる重みが異なる。重みを算出する基準は、限定されるものではないが、例えば、強度画像の信号値(信号ノイズ比)に基づいて算出することができる。例えば、平滑化度の大きい平滑化画像の重みは、被検体からの信号がある領域(信号領域)より背景領域が大きく、平滑化度の小さい平滑化画像の重みは、逆に被検体からの信号がある領域(信号領域)より背景領域が小さくなるようにする。
【0039】
このため、まず、ノイズレベル算出部221は、画像のSNR(分布)を算出する。SNRは、強度画像(絶対値画像)の強度分布(画素値)をM、ノイズレベルをηとすると、式(2)で表すことができる(S402)。
【0040】
【数2】
式(2)において、x、yは画素の位置を示す。
【0041】
ノイズレベルηは、例えば、画素値の標準偏差から算出する方法、画像のエッジを除去した後、画素値の平均値や分散から算出する方法、画像の背景領域(例えば4隅)の標準偏差から求める手法など種々の手法があり、いずれを採用してもよい。また、本実施形態では空間的なノイズ量は一様としたが、パラレルイメージング再構成で算出されるG因子などの情報などを元にノイズの空間分布を仮定してもよい。また、強度画像M(x,y)については、重み画像におけるノイズの影響を低減するため、メディアンフィルタなどで平滑化した強度画像を用いてもよい。または、計算時間を短縮させるために、平滑化部で実施している弱い平滑化を行った複素画像の強度成分をそのまま用いてもよい。
【0042】
次に重み算出部222は、ノイズレベル算出部221が算出したSNRを用いて、後述する2つの平滑化部223-1、223-2が平滑化を行った位相画像(平滑化位相)を重み付け加算する際の重みW、Wを算出する(S403)。重みは、SNRの変化に対し単調増加(単調減少)するものであれば特に限定されないが、例えば、図6に示すように、SNRが下側の閾値t1以下の画素については重みをゼロとし、上側の閾値t2以上の画素については重みを1とするような関数を用いることができる。
【0043】
例えばWは、次式(3)で算出することができる。
【数3】
【0044】
は、逆に、t1以下では重みを1、t2以上では重みをゼロとする関数(W=1-W)を用いて算出する。立ち上がりの始まりと終わりを規定する閾値t1、t2は、限定されるものではないが、例えば、
t1=1、t2=5
に設定することができる。このような値とすることで、ノイズ分布の非ガウス性が増大し、ほぼレイリー分布となる背景領域と、ノイズ分布がほぼガウス分布となる信号領域とを重み付けによって峻別することができる。なお閾値は、デフォルトで設定しておいてもよいし、後述するGUIを介してユーザ設定或いはユーザ調整を受け付けてもよい。
【0045】
一方、平滑化部223-1、223-2は、それぞれ、平滑化の強度が異なるフィルタを用いて複素画像または位相画像501の平滑化を行う(S404)。位相画像501は、処理対象である複素画像Cをその絶対値画像|C|で除算することにより(Cφ=C/|C|)、位相成分Cφを取り出し、この位相成分のみの複素画像を位相画像501とすることができる。平滑化は、複素画像Cに対して行ってもよい。位相成分のみを取り出した場合には、絶対値の情報が混入しないという特徴があり、複素画像をそのまま用いた場合には、逆に絶対値の情報が保持されるという特徴がある。対象とする部位や診断すべき疾患などに応じて適宜選択可能にしてもよい。
【0046】
フィルタとしては、ガウシャンフィルタ、ローパスフィルタなどの公知の平滑化フィルタを用いることができる。また、例えば、複素画像に対してガウシャンフィルタを適用する場合は、複素画像の実数成分(実数画像)と虚数成分(虚数画像)それぞれに対して、適当なカーネルサイズのガウシャンカーネルを畳み込み演算を実施することで、平滑化後の複素画像を算出することができる。平滑化の強度は、用いるフィルタ関数のカーネルサイズ(フィルタサイズともいう)を異ならせることにより強めたり弱めたりすることができ、カーネルサイズを大きくすることで平滑化の強度を大きくし、カーネルサイズを小さくすることで平滑化の強度を小さくすることができる。
【0047】
なお、本明細書では、平滑化強度を異ならせるパラメータのことを総称してカーネルサイズとよぶ。例えば、正則化処理によって画像の平滑化を行う場合は、正則化パラメータが本明細書におけるカーネルサイズに相当する。また、本明細書では、カーネルサイズが大きいほど平滑化強度が大きくなるものと定義して説明している。しかし、一般的にカーネルサイズと平滑化強度の関係は、平滑化の手法やカーネルサイズによって変化するため、この定義に限られない。
【0048】
カーネルサイズは、重みの閾値と同様に、デフォルトで設定しておいてもよいし、GUIを介したユーザ設定を受け付けてもよい。平滑化の強度を予め設定する場合、例えば、背景領域におけるノイズ低減効果との関係や、信号領域におけるアーチファクト発生量との関係等に基づき、適切な値を設定することができる。具体的には、強度の大きいフィルタについては、フィルタサイズを大きくすると背景領域におけるノイズ低減効果が増加し、あるサイズ以上で一定値となるので、一定値となる範囲での最小値に設定することができる。一方、強度の小さいフィルタについては、信号領域にアーチファクトを生じなくなる最大のフィルタサイズを強度小のフィルタサイズとすることができる。但しこれらの手法に限定されず、経験的に予測できるノイズレベルをもとにフィルタサイズをデフォルトで設定しておいてもよいし、それに対しユーザ調整を行うようにしてもよい。
【0049】
次に、重み付け加算部224が、2つの平滑化部223-1、223-2で処理された平滑化位相を、重み算出部222が算出した重みW、Wを用いて重み付け加算する(S405)。具体的には図7に示すように、強度小のフィルタ(フィルタサイズσ)を用いた平滑化部223-1で平滑化された位相502-1に対し、重みWを乗じ、強度大のフィルタ(フィルタサイズσ)を用いた平滑化部223-2で平滑化された位相502-2に対し、重みWを乗じ、これらを加算し、平滑化位相503を得る。なお、上述の「位相」502-1、502-2、503は、平滑化の結果を意味するものであり、ここでは位相成分のみからなる位相画像であるが、複素画像そのものに対し平滑化処理をした場合には、平滑化複素画像と読み替えるものとする。
【0050】
このように2つの平滑化結果(平滑化した位相画像)を重み付け加算することにより、SNRの高い領域即ち信号領域では、信号値を損なうことのなく弱い強度の平滑化が行われ、SNRの低い領域即ち背景領域ではノイズ低減効果の高い平滑化が行われる。
【0051】
位相補正部225は、図5に示したように、元の複素画像の位相(位相画像)501と平滑化位相503との差分を取り、補正後の位相505を得る(S406)。この際、複素画像をそのまま平滑化した場合には、重み付け加算後の複素画像CF(CF=CsWs+CLWL)を、次式(4)により位相画像φFに変換し、平滑化位相503として用いる。
φF=arg(CF) (4)
元の位相画像501と平滑化位相画像503との差分は上述したように、式(1)を用いた複素除算により行う。
【0052】
以上の処理S402~S406を加算すべき全ての複素画像に対して行った後、複素加算部226は、処理前の複素画像500の位相画像501を補正後の位相505に置き換えて、強度画像500Aとともに複素加算し(次式(5))、1枚の加算画像Xcmpを得る(S407)。
【0053】
【数5】
式(5)中、Ccorr iはn枚の補正後複素画像を構成する個々の(i番目の)複素画像を表す。
【0054】
得られた加算画像は、強度画像や位相画像に変換された後に、表示制御部212によりUI部40の表示装置にそれらが表示され、必要に応じて記憶装置30に格納される。
【0055】
上記処理により得られる加算画像は、信号領域について過度に位相補正することなくノイズが効果的に低減されているので、アーチファクトの発生が抑制され、ノイズが低減された画像となる。
【0056】
本実施形態のMRI装置によれば、複数の複素画像を複素加算する際に、各複素画像の位相を補正する処理として、平滑化の強度が異なる平滑化を行って得た複数の平滑化結果に対し、領域によって異なるノイズ特性に応じた重み付けを行って加算することで、ノイズ特性に応じた平滑化処理を行ったのと同様の結果が得られ、従来の平滑化処理ではトレードオフであったノイズ低減とアーチファクト抑制とを同時に達成することができる。
【0057】
特にSNR向上に重要なDWIの複素加算において、加算される各複素画像に対し精度のよい位相補正を行うことができ、診断に役立つDWI画像を提供することができる。
また本実施形態のMRI装置によれば、二つの平滑化手段を設けるとともに、平滑化後の位相を重み付け加算するという簡便な構成で、上記課題を解決することができる。本手法は、脳脊髄流の影響がある頭部領域や呼吸動の影響がある腹部領域など、生理的体動に起因する位相変動が大きい部位に対して特に有効である。
【0058】
図8は、本実施形態の位相補正を行って複素加算した画像(A)と、従来法により複素加算した画像(B)とを示す。従来法では、一つのフィルタサイズで平滑化して位相補正し、複素加算したものであり、この例では背景信号のノイズを十分低減できる大きさのカーネルサイズのフィルタを用いている。
【0059】
このような従来法による画像では、生理的体動の大きい部位、即ち空間的な位相変化が大きい部位では位相補正が不十分となり、撮像間で位相が揃わない。このため、加算後の画像に、(B)に矢印で示すように、信号欠損のようなアーチファクトが生じてしまう。
【0060】
これに対し、本発明の方法で位相補正後に複素加算した画像(A)では、SNRに応じた適応的なカーネルサイズの設定を行い、信号領域は弱い平滑化、背景領域は強い平滑化を行った位相で補正しているので、信号領域の位相を撮像間で揃えつつ、背景領域のノイズを十分低減することが可能となる(右図)。
【0061】
<実施形態1の変形例>
以上、本実施形態のMRI装置の構成と動作について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、対象である撮像方法を変更したり、上述した要素を別な要素で置換したり、新たな要素を追加したりするなどの種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、実施形態1では、平滑化の対象として、複素画像そのもの或いは複素画像から取り出した位相成分のみからなる複素画像を用いる場合を説明したが、複素画像から位相画像を生成し、位相画像に対し平滑化処理と重み付け加算を行ってもよい。
【0063】
その場合には、まず、式(4)と同様に複素画像Cのargを求め、位相画像φを作成する。作成した位相画像は位相アンラップ処理を施した後、平滑化を行う。位相画像に対する平滑化は、複素画像の平滑化と同様のフィルタを用いてもよいし、位相画像をフーリエ変換し、フーリエ変換後のデータの低域のみを取り出し逆フーリエ変換してもよく、取り出す低域の領域の広さを異ならせることで、平滑化度を異ならせることができる。
【0064】
その後、平滑化後の位相画像を重み付け加算することは実施形態1と同様である。この変形例は、実施形態1では不要であったアンラップ処理が必要となるが、実数として処理できるので、既存の様々な平滑化手法(正則化処理等)を適用しやすいという利点がある。
【0065】
その他の変形例として、例えば、上述の実施形態では、平滑化部は、平滑化度が高いものと低いものの2種を備える場合を示したが、平滑化度が中間的な平滑化部をさらに加えてもよく、これらの重みを強度画像の信号(SNR)に応じて、設定してもよい。また上記実施形態では、撮像方法がDWIである場合を説明したが、撮像方法の如何を問わず複数の画像の複素加算を行う場合には、本発明を適用することができる。
【0066】
<実施形態2>
本実施形態は、画像処理部22における処理、特に重み算出部222及び平滑化部223-1、223-2の処理に対し、ユーザ指定を受け付けるためのGUIの実施形態である。その他の構成は実施形態1と同様であり、重複する説明は省略する。
【0067】
図9(A)、(B)に、表示制御部212がUI部40の表示装置に表示させるGUIの例を示す。図9に示す例は、いずれも撮像条件設定画面900において、画像を加算する手法(複素加算か絶対値加算か)と複素加算の場合の位相平滑化条件を設定させるGUIであり、(A)は、複素加算が選択された場合に、平滑化部223-1、223-2で用いるフィルタサイズを受け付けるボックス901、902を設けた例、(B)はさらに重み算出部222が算出する重み関数の閾値を受け付けるボックス903、904を設けた例である。これらボックスには、初期値として設定された値を表示しておいてもよい。なお図9に示す例では、ボックスに数値を入力することとしているが、複素加算を選択したときにメニューが表示されるプルダウンメニュー方式のGUIとするなど、表示の態様は図9に示すものに限定されない。
【0068】
ユーザは、例えば、表示装置に表示された画像(複素加算後の画像)から、さらに背景のノイズを低減する必要があるか、アーチファクトが十分に抑制されているか、などを確認し、ノイズを低減したい場合には、設定されているフィルタサイズ(大)の値をより大きな値に変更したり、アーチファクト抑制が不十分な場合には、フィルタサイズ(小)をより小さくしたり、(B)のGUIの閾値(例えば閾値2)の値を小さくするなどの調整を行う。
【0069】
画像処理部22は、GUIを介して受け付けた新たなフィルタサイズや重みの閾値に変更して、図4に示す処理S402~S407を行う。処理内容は実施形態1と同様である。
また画像処理部22に、平滑化度の異なる2種類より多い種類の平滑化部223が備えられている場合には、それらのいずれかをユーザが選択する構成とすることもでき、GUIとして平滑化部223を選択するボックスなどを表示させてもよい。
【0070】
本実施形態によれば、ユーザが画像を確認しながら、より診断に有用な画像を得ることができる。
【0071】
<実施形態3>
上述した実施形態では、MRI装置1の画像処理部22が複素加算及び位相補正などの処理を行う場合を説明したが、MRI装置1から独立した画像処理装置2において、画像処理部22が行う処理の全て或いは一部を行うことも可能である。これにより、MRI装置1の画像処理部22の計算負荷を軽減することができる。またMRI装置1とは異なる場所で、事後的な画像処理が可能となる。
【0072】
図10に、画像処理装置2の構成例を示す。この画像処理装置2は、MRI装置1との間で公知の通信手段や記憶媒体等によりデータの授受が可能な装置であり、MRI装置1から受領した複数の複素画像に対し、所定の位相補正処理を行う機能を持つ。
【0073】
この機能を実行するため、画像処理装置2内には、図2に示したMRI装置1の計算機20の画像処理部22と同様の機能部、即ち、ノイズレベル算出部221、重み算出部222、平滑化部223-1、223-2、重み付け加算部224、位相補正部225、複素加算部226が備えられている。これらの機能は、上述したMRI装置1の画像処理部22と同様であり、重複した説明は省略する。この画像処理装置2にも、UI部を設けて、実施形態2で説明したようなフィルタサイズや重みの閾値についてのユーザ指示を受け付けてもよい。
【0074】
なお図10では、画像処理装置2の機能は、MRI装置の画像処理部22の機能と同じである場合を示したが、画像処理部22の処理の一部、例えば、平滑化部及び重み付け加算部の機能のみを画像処理装置2で行い、その結果をMRI装置に戻し、位相補正及び複素加算をMRI装置側で行ってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1:MRI装置、2:画像処理装置、5:被検体、10:撮像部、20:計算機、22:画像処理部、30:記憶装置、40:UI部、211:計測制御部、212:表示制御部、221:ノイズレベル算出部、222:重み算出部、223-1:平滑化部、223-2:平滑化部、224:重み付け加算部、225:位相補正部、226:複素加算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10