(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】極板の製造方法、及び、電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240627BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 Z
(21)【出願番号】P 2021201607
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】若松 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中藤 広樹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 尚範
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228398(JP,A)
【文献】特開2014-078360(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104024(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131195(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と活物質層とを含む極板の製造方法であって、
活物質を混錬することによって合材を作製することと、
前記合材を前記集電体に塗布することによって前記集電体上に前記活物質層を形成することと、
前記活物質層が所定の厚みとなるように前記活物質層をプレスすることと、を含み、
前記合材は、前記合材に使用した前記活物質の比表面積と前記合材に使用した前記活物質のタップ密度とに基づく目付量で前記集電体に塗布され、
比表面積が第1面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第1面積よりも小さい第2面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さく、
比表面積が前記第1面積である且つタップ密度が第1密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第1面積である且つタップ密度が前記第1密度よりも大きい第2密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さい極板の製造方法。
【請求項2】
比表面積が前記第2面積である且つタップ密度が
前記第1密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第2面積である且つタップ密度が
前記第2密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さい請求項
1に記載の極板の製造方法。
【請求項3】
集電体と活物質層とを含む極板の製造方法であって、
活物質を混錬することによって合材を作製することと、
前記合材を前記集電体に塗布することによって前記集電体上に前記活物質層を形成することと、
前記活物質層が所定の厚みとなるように前記活物質層をプレスすることと、を含み、
前記合材は、前記合材に使用した前記活物質の比表面積と前記合材に使用した前記活物質のタップ密度とに基づく目付量で前記集電体に塗布され、
比表面積が第1面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第1面積よりも小さい第2面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さく、
比表面積が前記第2面積である且つタップ密度が第1密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第2面積である且つタップ密度が前記第1密度よりも大きい第2密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さい極板の製造方法。
【請求項4】
集電体と活物質層とを含む極板を備える電池の製造方法であって、
活物質を混錬することによって合材を作製することと、
前記合材を前記集電体に塗布することによって前記集電体上に前記活物質層を形成することと、
前記活物質層が所定の厚みとなるように前記活物質層をプレスすることと、を含み、
前記合材は、前記合材に使用した前記活物質の比表面積と前記合材に使用した前記活物質のタップ密度とに基づく目付量で前記集電体に塗布され、
比表面積が第1面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第1面積よりも小さい第2面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さく、
比表面積が前記第1面積である且つタップ密度が第1密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第1面積である且つタップ密度が前記第1密度よりも大きい第2密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さい電池の製造方法。
【請求項5】
集電体と活物質層とを含む極板を備える電池の製造方法であって、
活物質を混錬することによって合材を作製することと、
前記合材を前記集電体に塗布することによって前記集電体上に前記活物質層を形成することと、
前記活物質層が所定の厚みとなるように前記活物質層をプレスすることと、を含み、
前記合材は、前記合材に使用した前記活物質の比表面積と前記合材に使用した前記活物質のタップ密度とに基づく目付量で前記集電体に塗布され、
比表面積が第1面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第1面積よりも小さい第2面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さく、
比表面積が前記第2面積である且つタップ密度が第1密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第2面積である且つタップ密度が前記第1密度よりも大きい第2密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さい電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極板の製造方法、及び、電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、極板を備える電池が記載されている。極板は、集電体と、集電体上の活物質層とを含む。活物質層は、例えば、活物質を含む合材が集電体に塗布されることによって形成される。活物質層は、集電体に形成された後、プレスされる。これにより、極板が製造される。
【0003】
特許文献1には、活物質層に含まれる活物質の比表面積が極板の性能に影響することと、活物質層がプレスされることによって活物質層に含まれる活物質の比表面積が増加することと、について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
合材に使用される活物質には、物性にばらつきがある場合がある。例えば、同種の活物質であっても、比表面積、タップ密度などが異なる場合がある。合材に使用される活物質の物性が異なると、同じ条件で活物質層をプレスしても、活物質層に含まれる活物質の比表面積の増加量が異なる場合がある。そのため、合材ごとに活物質の物性が異なると、極板の性能がばらつくおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する極板の製造方法は、集電体と活物質層とを含む極板の製造方法であって、活物質を混錬することによって合材を作製することと、前記合材を集電体に塗布することによって前記集電体上に前記活物質層を形成することと、前記活物質層が所定の厚みとなるように前記活物質層をプレスすることと、を含み、前記合材は、前記合材に使用した前記活物質の比表面積と前記合材に使用した前記活物質のタップ密度とに基づく目付量で前記集電体に塗布される。
【0007】
極板の性能は、極板の反応面積によって決まる。極板の反応面積は、活物質層に含まれる活物質の比表面積に依存する。活物質層に含まれる活物質の比表面積は、活物質層がプレスされることによって増加する。プレスによる活物質層の厚みの変位量が大きいほど、活物質層に含まれる活物質の比表面積の増加量が大きくなる。
【0008】
所定の厚みとなるように活物質層がプレスされる場合、プレスによる活物質層の厚みの変位量は、プレスされる前の活物質層の厚みによって決まる。プレスされる前の活物質層の厚みは、集電体に塗布される合材の目付量に影響される。合材の目付量が大きいほど、プレスされる前の活物質層の厚みが大きくなりやすい。すなわち、合材の目付量が大きいほど、プレスによる活物質層の厚みの変位量が大きくなりやすい。
【0009】
合材に使用した活物質のタップ密度が異なると、合材ごとの目付量が同じであってもプレスされる前の活物質層の厚みが異なることがある。具体的には、合材ごとの目付量が同じである場合、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスされる前の活物質層の厚みが大きくなりやすい。すなわち、合材ごとの目付量が同じである場合、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスによる活物質の比表面積の増加量が大きくなりやすい。
【0010】
上記方法によれば、合材に使用した活物質の比表面積と合材に使用した活物質のタップ密度、すなわち合材に使用した活物質の物性に基づいて、合材ごとに目付量が異なる。合材の目付量は、プレスされる前の活物質層の厚みに影響する。プレスされる前の活物質層の厚みは、プレスによる活物質層の厚みの変位量に影響する。プレスによる活物質層の厚みの変位量は、プレスによる活物質の比表面積の増加量に影響する。したがって、合材に使用した活物質の物性に基づいて合材の目付量を変更すると、プレスによる活物質の比表面積の増加量が変わる。すなわち、合材に使用した活物質の物性に基づいて合材の目付量を調整することにより、プレスによる活物質の比表面積の増加量を調整できる。これにより、極板の反応面積のばらつきが低減される。その結果、極板の性能のばらつきが低減される。
【0011】
上記極板の製造方法において、比表面積が第1面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第1面積よりも小さい第2面積である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さくてもよい。
【0012】
上記方法によれば、比表面積が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が小さく、比表面積が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が大きい。したがって、比表面積が第1面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第2面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、プレスによる活物質の比表面積の増加量が小さい。すなわち、元々の比表面積が大きい活物質についてはプレスによる比表面積の増加量が小さく、元々の比表面積が小さい活物質についてはプレスによる比表面積の増加量が大きい。これにより、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0013】
上記極板の製造方法において、比表面積が前記第1面積である且つタップ密度が第1密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第1面積である且つタップ密度が第1密度よりも大きい第2密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さくてもよい。
【0014】
合材に使用した活物質の比表面積が同じであっても、その活物質のタップ密度が異なると、プレスによる活物質の比表面積の増加量がばらつく場合がある。合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスされる前の活物質層の厚みが大きくなりやすい。すなわち、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスによる活物質層の厚みの変位量が大きくなりやすい。したがって、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスによる活物質の比表面積の増加量が大きくなりやすい。
【0015】
上記方法によれば、タップ密度が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が大きく、タップ密度が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が小さい。したがって、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスされる前の活物質層の厚みについてばらつきが低減される。すなわち、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質の比表面積の増加量についてばらつきが低減される。これにより、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0016】
上記極板の製造方法において、比表面積が前記第2面積である且つタップ密度が第1密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合、比表面積が前記第2面積である且つタップ密度が第1密度よりも大きい第2密度である前記活物質を使用した前記合材で前記極板を製造する場合と比べて、前記合材の目付量が小さくてもよい。
【0017】
合材に使用した活物質の比表面積が同じであっても、その活物質のタップ密度が異なると、プレスによる活物質の比表面積の増加量がばらつく場合がある。合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスされる前の活物質層の厚みが大きくなりやすい。すなわち、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスによる活物質層の厚みの変位量が大きくなりやすい。したがって、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスによる活物質の比表面積の増加量が大きくなりやすい。
【0018】
上記方法によれば、タップ密度が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が大きく、タップ密度が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が小さい。したがって、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスされる前の活物質層の厚みについてばらつきが低減される。すなわち、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質の比表面積の増加量についてばらつきが低減される。これにより、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0019】
上記課題を解決する電池の製造方法は、集電体と活物質層とを含む極板を備える電池の製造方法であって、活物質を混錬することによって合材を作製することと、前記合材を集電体に塗布することによって前記集電体上に前記活物質層を形成することと、前記活物質層が所定の厚みとなるように前記活物質層をプレスすることと、を含み、前記合材は、前記合材に使用した前記活物質の比表面積と前記合材に使用した前記活物質のタップ密度とに基づく目付量で前記集電体に塗布される。
【0020】
上記方法によれば、上述した極板の製造方法と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、極板の性能のばらつきが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】極板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】合材ごとの目付量が同じである場合における活物質層の厚みを示すグラフである。
【
図6】プレスによる活物質層の変位量とプレスによる活物質の比表面積の増加量との関係を示すグラフである。
【
図7】合材ごとの目付量が同じである場合における活物質の比表面積の増減を示すグラフである。
【
図8】活物質の物性に基づき合材ごとの目付量が異なる場合における活物質層の厚みを示すグラフである。
【
図9】活物質の物性に基づき合材ごとの目付量が異なる場合における活物質の比表面積の増減を示すグラフである。
【
図10】プレスによる活物質層の厚みの変位量とプレスによる活物質の比表面積の増加量とを合材ごとに示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
極板の製造方法及び電池の製造方法について、図を参照しながら説明する。まず、極板を備える電池について説明する。電池は、例えば、リチウムイオン二次電池である。電池は、これに限らず、例えば、アルカリ二次電池でもよいし、その他の電池でもよい。
【0024】
図1に示すように、電池10は、ケース11と、ケース11の開口を塞ぐ蓋体12とを備える。電池10は、正極端子13と、負極端子14とを備える。正極端子13と負極端子14とは、蓋体12から延びる。
【0025】
電池10は、電極体15を備える。電極体15は、ケース11内に位置する。電極体15は、電解液とともにケース11に収容される。電極体15は、正極端子13と負極端子14とに接続される。正極端子13及び負極端子14の形状は、
図1に示す形状に限らず、その他の形状でもよい。
【0026】
図2に示すように、電極体15は、正極板16と、負極板17と、セパレータ18とセパレータ19とを含む。電極体15は、正極板16、負極板17、セパレータ18、及び、セパレータ19が巻き重ねられた積層体である。正極板16、セパレータ18、負極板17、及び、セパレータ19は、この順に積層された状態で巻き重ねられる。セパレータ18及びセパレータ19は、例えば、樹脂製の不織布である。
【0027】
正極板16は、正極集電体21と、正極活物質層22とを含む。正極集電体21は、例えば、金属箔である。正極集電体21は、例えば、アルミニウムを含む材料で構成される。
【0028】
正極集電体21は、接続部分23を有する。接続部分23は、正極端子13と電気的に接続される部分である。接続部分23は、正極集電体21の端部に位置する。接続部分23は、正極集電体21において正極活物質層22が位置しない部分である。
【0029】
正極活物質層22は、正極集電体21上に位置する。正極活物質層22は、正極集電体21の片面又は両面に位置する。正極活物質層22は、正極活物質を含む。正極活物質層22は、正極活物質を含む合材を正極集電体21に塗布することによって形成される。
【0030】
正極活物質は、例えば、リチウムを吸蔵、及び、放出可能な材料である。正極活物質は、例えば、リチウム含有複合酸化物である。リチウム含有複合酸化物は、リチウムと、リチウム以外の他の金属元素とを含む酸化物である。
【0031】
負極板17は、負極集電体24と、負極活物質層25とを含む。負極集電体24は、例えば、金属箔である。負極集電体24は、例えば、銅を含む材料で構成される。
負極集電体24は、接続部分26を有する。接続部分26は、負極端子14と電気的に接続される部分である。接続部分26は、負極集電体24の端部に位置する。接続部分26は、負極集電体24において負極活物質層25が位置しない部分である。
【0032】
負極活物質層25は、負極集電体24上に位置する。負極活物質層25は、負極集電体24の片面又は両面に位置する。負極活物質層25は、負極活物質を含む。負極活物質層25は、負極活物質を含む合材を負極集電体24に塗布することによって形成される。
【0033】
負極活物質は、例えば、リチウムを吸蔵、及び、放出可能な材料である。負極活物質は、例えば、炭素材料である。負極活物質は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛である。
【0034】
次に、極板の製造方法について説明する。極板の製造方法とは、正極板16の製造方法であり、負極板17の製造方法である。正極板16と負極板17とにおいては、使用する材料が異なるが、製造方法が共通している。そのため、以降では、正極板16及び負極板17を極板、正極集電体21及び負極集電体24を集電体、正極活物質層22及び負極活物質層25を活物質層、正極活物質及び負極活物質を活物質、と称することがある。
【0035】
図3に示すように、まず、ステップS11において、活物質を混錬することによって、合材を作製する。例えば、合材は、混錬機により活物質が混錬されることによって作製される。合材は、活物質の他に、結着剤、溶媒、導電剤、分散剤などの材料が混錬されることによって作製されてもよい。本例では、合材は、活物質、結着剤、溶媒が混錬されることによって作製される。結着剤は、活物質同士の結着力を高めるための材料である。導電剤は、合材に導電性を付与するための材料である。分散剤は、活物質を均一に分散させるための材料である。活物質のみを混錬することによって合材を作製する場合、活物質は、粘着性を有する材料であることが好ましい。ステップS11の処理によって、ペースト状の合材が作製される。
【0036】
なお、上記以外にも、増粘剤等の他の材料を混錬しても良い。
次に、ステップS12において、合材を集電体に塗布する。例えば、合材は、スリットコーター、ダイコーターなどの塗布装置によって集電体に塗布される。ステップS12の処理によって、集電体上に活物質層が形成される。
【0037】
合材は、予め定められた目付量で集電体に塗布される。目付量は、塗布装置を制御することによって変更される。合材が集電体に塗布されると、第1厚みの活物質層が形成される。第1厚みは、合材の目付量によって決まる。
【0038】
次に、ステップS13において、活物質層をプレスする。例えば、活物質層は、プレス機によってプレスされる。このとき、プレス機は、集電体と活物質層とをプレスする。ステップS13の処理によって、極板が製造される。その極板から電極体15を製造することによって、電池10を製造できる。
【0039】
活物質層は、予め定められた第2厚みとなるようにプレスされる。第2厚みは、プレス機を制御することによって変更される。活物質層がプレスされると、活物質層が第1厚みから第2厚みに圧縮される。すなわち、第1厚みは、プレス前の活物質層の厚みである。第2厚みは、プレス後の活物質層の厚みである。
【0040】
極板を製造する過程において、活物質層を乾燥させてもよい。活物質層は、プレス後に乾燥させられてもよいし、プレス前に乾燥させられてもよい。例えば、活物質層は、温風が吹き付けられることによって乾燥させられてもよいし、真空中に位置することによって乾燥させられてもよい。
【0041】
電池10の性能は、極板の性能に依存する。極板の性能は、極板の反応面積によって決まる。そのため、極板を製造するにあたっては、極板の反応面積のばらつきを低減することが肝要である。極板の反応面積は、活物質層に含まれる活物質の比表面積に依存する。
【0042】
合材の作製に使用される活物質においては、物性にばらつきがある場合がある。例えば、サプライヤーから提供されるロットごとに、活物質の物性が異なる場合がある。具体的には、活物質の比表面積、活物質のタップ密度が異なる場合がある。活物質の物性にばらつきがあると、極板の性能がばらつくおそれがある。
【0043】
図4に示すように、物性がそれぞれ異なる第1活物質、第2活物質、第3活物質、及び、第4活物質を考える。第1活物質、第2活物質、第3活物質、及び、第4活物質は、それぞれ同種の活物質である。第1活物質においては、比表面積が第1面積であり、タップ密度が第1
密度である。第2活物質においては、比表面積が第1面積であり、タップ密度が第2
密度である。第3活物質においては、比表面積が第2面積であり、タップ密度が第1
密度である。第4活物質においては、比表面積が第2面積であり、タップ密度が第2密度である。第1面積は、第2面積よりも大きい。第1密度は、第2密度よりも小さい。
【0044】
次に、第1活物質を使用した合材、第2活物質を使用した合材、第3活物質を使用した合材、及び、第4活物質を使用した合材でそれぞれ極板を製造することを考える。第1活物質を使用した合材、第2活物質を使用した合材、第3活物質を使用した合材、及び、第4活物質を使用した合材においては、活物質の物性がそれぞれ異なるのみで、その他に使用した材料、材料の重量比などは同じである。活物質の質量についても同じである。
【0045】
図5に示すように、第1活物質を使用した合材、第2活物質を使用した合材、第3活物質を使用した合材、及び、第4活物質を使用した合材が同じ目付量でそれぞれ集電体に塗布されると、活物質層の第1厚みに差が生じる。具体的には、第1活物質を含む活物質層の第1厚み及び第3活物質を含む活物質層の第1厚みは、第2活物質を含む活物質層の第1厚み及び第4活物質を含む活物質層の第1厚みよりも大きい。これは、活物質のタップ密度が異なるためである。
【0046】
合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、合材の密度が小さくなる。そのため、合材ごとの目付量が同じである場合、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、活物質層の第1厚みが大きくなる。したがって、合材ごとの目付量が同じである場合、タップ密度の小さい活物質を含む活物質層の第1厚みは、タップ密度の大きい活物質を含む活物質層の第1厚みよりも、大きくなる。
【0047】
第1活物質を含む活物質層、第2活物質層を含む活物質層、第3活物質を含む活物質層、及び、第4活物質を含む活物質層は、それぞれプレスされることによって第2厚みに圧縮される。第2厚みは、合材に使用した活物質の物性によらず、一律である。これは、電池10を製造するにあたって、極板の厚みが一定であることが好ましいためである。使用する合材ごとに極板の厚みが異なると、電極体15の厚みに影響する。この場合、電池10の設計が複雑になる。
【0048】
第1活物質を含む活物質層、第2活物質を含む活物質層、第3活物質を含む活物質層、及び、第4活物質を含む活物質層がそれぞれプレスされると、プレスによる活物質層の厚みの変位量に差が生じる。具体的には、第1活物質を含む活物質層の厚みの変位量と第3活物質を含む活物質層の厚みの変位量とは、第2活物質を含む活物質層の厚みの変位量及び第4活物質を含む活物質層の厚みの変位量よりも、大きい。
【0049】
第1厚みが大きいほど、プレスによる活物質層の厚みの変位量が大きくなる。したがって、合材ごとの目付量が同じである場合、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスによる活物質層の厚みの変位量が大きくなる。
【0050】
活物質層が含む活物質の比表面積は、活物質層がプレスされることによって、増加する。これは、活物質層がプレスされることによって、活物質層に含まれる活物質の形状が変化するためだと考えられる。
【0051】
図6に示すように、プレスによる活物質層の厚みの変位量に基づいて、活物質の比表面積の増加量が変化する。具体的には、プレスによる活物質層の厚みの変位量が大きいほど、活物質の比表面積の増加量が大きくなる。したがって、合材ごとの目付量が同じである場合、合材に使用した活物質のタップ密度が小さいほど、プレスによる活物質の比表面積の増加量が大きくなる。
【0052】
図7に示すように、活物質の比表面積は、プレスに限らず、極板を製造する過程で変化する。比表面積は、例えば、BET法によって測定できる。
合材作製前における活物質の比表面積は、例えば、混錬機に投入される前における活物質の比表面積である。合材作製前における第1活物質の比表面積は、第1面積である。合材作製前における第2活物質の比表面積は、第1面積である。合材作製前における第3活物質の比表面積は、第2面積である。合材作製前における第4活物質の比表面積は、第2面積である。
【0053】
合材作製後における活物質の比表面積は、合材が含む活物質の比表面積である。
図7に示すように、合材作製後において、合材作製前と比べて、活物質の比表面積が低下する。これは、混錬により、活物質の表面形状が変化するからである。また、活物質が結着剤に覆われることも比表面積が低下する要因の一つと考えられる。
【0054】
塗布後における活物質の比表面積は、プレス前の活物質層が含む活物質の比表面積である。塗布後においては、合材作製後と比べて、活物質の比表面積がほとんど変化しない、又は、若干低下する。
【0055】
プレス後における活物質の比表面積は、プレス後の活物質層が含む活物質の比表面積である。プレス後においては、塗布後と比べて、活物質の比表面積が増加する。
図7に示す例では、プレス後において、第1活物質、第2活物質、第3活物質、及び、第4活物質の順で、比表面積が大きい。
【0056】
合材作製前における活物質の比表面積の違いは、プレス後における活物質の比表面積の違いとして作用しやすい。また、活物質のタップ密度の違いは、プレスによる活物質の比表面積の増加量の違いに繋がる。そのため、合材に使用した活物質の物性が異なると、プレス後における活物質の比表面積がばらつきやすい。プレス後における活物質の比表面積のばらつきは、極板の反応面積のばらつきに繋がる。したがって、合材に使用した活物質の物性が異なると、極板の性能がばらつきやすい。
【0057】
図8に示すように、本例では、合材に使用した活物質の物性に基づいて、合材ごとに目付量が異なる。例えば、使用者が塗布装置を操作することによって、合材に使用した活物質の物性に基づいて合材の目付量が変更される。合材に使用した活物質の物性を塗布装置が特定することによって、合材の目付量が自動的に変更されてもよい。
【0058】
第1活物質を使用した合材の目付量は、第1目付量である。第2活物質を使用した合材の目付量は、第2目付量である。第3活物質を使用した合材の目付量は、第3目付量である。第4活物質を使用した合材の目付量は、第4目付量である。第1目付量、第2目付量、第3目付量、及び、第4目付量は、この順で小さい。すなわち、第1目付量は、第2目付量よりも小さい。第2目付量は、第3目付量よりも小さい。第3目付量は、第4目付量よりも小さい。
【0059】
本例では、合材に使用した活物質の比表面積に基づいて、合材ごとに目付量が異なる。比表面積が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。例えば、比表面積が第1面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第2面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。具体的には、第1活物質又は第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合、第3活物質又は第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。このように、本例では、比表面積が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量を小さくし、比表面積が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量を大きくする。
【0060】
図9に示すように、合材の目付量を変更すると、プレスによる活物質の比表面積の増加量が変更される。比表面積が第1面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第2面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量を小さくすることによって、プレスによる活物質の比表面積の増加量が小さくなる。具体的には、第1活物質又は第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合、第3活物質又は第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量を小さくすることによって、プレスによる活物質の比表面積の増加量が小さくなる。
【0061】
極板を製造するにあたって、元々の比表面積が大きい活物質についてはプレスによる比表面積の増加量を小さくし、元々の比表面積が小さい活物質についてはプレスによる比表面積の増加量を大きくするように、合材の目付量が変更される。すなわち、比表面積が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合、プレスによる活物質の比表面積の増加量を小さくするために、合材の目付量を小さくする。比表面積が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合、プレスによる活物質の比表面積の増加量を大きくするために、合材の目付量を大きくする。これにより、元々の比表面積の差を低減するように、プレスによって活物質の比表面積が増加する。その結果、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0062】
図8に示すように、本例では、合材に使用した活物質の比表面積に加えて、合材に使用した活物質のタップ密度に基づいて、合材ごとに目付量が異なる。合材に使用した活物質の比表面積が同じであっても、その活物質のタップ密度が異なると、合材の密度が異なる。そのため、合材に使用した活物質の比表面積が同じであっても、合材ごとの目付量が同じである場合、第1厚みに差が生じる。すなわち、合材に使用した活物質の比表面積が同じであっても、その活物質のタップ密度が異なると、プレスによる活物質の比表面積の増加量に差が生じやすい。したがって、合材作製前における活物質の比表面積が同じであっても、その活物質のタップ密度が異なると、プレス後における活物質の比表面積がばらつきやすい。
【0063】
本例では、比表面積が第1面積であって且つタップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第1面積であって且つタップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。具体的には、第1活物質を使用した合材で極板を製造する場合、第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。第1活物質を使用した合材で極板を製造する場合、第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量を小さくすることによって、プレスによる活物質の比表面積の増加量の差が小さくなる。
【0064】
本例では、比表面積が第2面積であって且つタップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第2面積であって且つタップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。具体的には、第3活物質を使用した合材で極板を製造する場合、第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。第3活物質を使用した合材で極板を製造する場合、第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量を小さくすることによって、プレスによる活物質の比表面積の増加量の差が小さくなる。
【0065】
極板を製造するにあたって、タップ密度が小さい活物質についてはプレスによる比表面積の増加量を小さくし、タップ密度が大きい活物質についてはプレスによる比表面積の増加量を大きくするように、合材の目付量が変更される。これにより、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質の比表面積の増加量の差が低減される。その結果、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0066】
本例では、第1活物質を使用した合材で極板を製造する場合と第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、第1厚みが一致するように合材の目付量が調整されている。そのため、第1活物質を使用した合材で極板を製造する場合と第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質層の厚みの変位量が一致する。したがって、第1活物質を使用した合材で極板を製造する場合と第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質の比表面積の増加量が一致する。その結果、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0067】
本例では、第3活物質を使用した合材で極板を製造する場合と第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、第1厚みが一致するように合材の目付量が調整されている。そのため、第3活物質を使用した合材で極板を製造する場合と第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質層の変位量が一致する。したがって、第3活物質を使用した合材で極板を製造する場合と第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質の比表面積の増加量が一致する。その結果、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0068】
第1活物質又は第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合、プレスによる活物質層の厚みの変位量は、第1変位量である。第3活物質又は第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合、プレスによる活物質層の厚みの変位量は、第2変位量である。第1変位量は、第2変位量よりも小さい。
【0069】
図9に示すように、合材に使用した活物質の比表面積に加えてタップ密度に基づいて合材の目付量を変更することによって、プレス後における第1活物質の比表面積とプレス後における第2活物質の比表面積との差が低減される。同様に、合材に使用した活物質の比表面積に加えてタップ密度に基づいて合材の目付量を変更することによって、プレス後における第3活物質の比表面積とプレス後における第4活物質の比表面積との差が低減される。
【0070】
図10に示すように、本例では、第1活物質を使用した合材で極板を製造する場合、プレスによる活物質の比表面積の増加量は、第1増加量である。第2活物質を使用した合材で極板を製造する場合、プレスによる活物質の比表面積の増加量は、第1増加量である。第3活物質を使用した合材で極板を製造する場合、プレスによる活物質の比表面積の増加量は、第2増加量である。第4活物質を使用した合材で極板を製造する場合、プレスによる活物質の比表面積の増加量は、第2増加量である。第1増加量は、第2増加量よりも小さい。
【0071】
プレスによる活物質層の厚みの変位量が大きい第3活物質及び第4活物質は、プレスされることによって、割れたり崩れたりする。そのため、第3活物質及び第4活物質においては、第1活物質及び第2活物質に比べて、プレスによる比表面積の増加量が大きい。
【0072】
合材の目付量を変更することによって、プレスによる活物質の比表面積の増加量が変更される。これにより、合材に使用した活物質の物性にばらつきがある場合でも、プレス後における活物質の比表面積を所望の比表面積となるように調整できる。したがって、プレス後における活物質の比表面積、すなわち活物質層に含まれる活物質の比表面積が所望の比表面積となるように、合材に使用した活物質の物性に基づき合材の目付量を変更することによって、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0073】
次に、上記実施形態の効果について説明する。
(1)極板の製造方法は、活物質を混錬することによって合材を作製することを含む。極板の製造方法は、合材を集電体に塗布することによって集電体上に活物質層を形成することを含む。極板の製造方法は、活物質層が第1厚みから第2厚みとなるように活物質層をプレスすることを含む。合材は、合材に使用した活物質の比表面積と合材に使用した活物質のタップ密度とに基づく目付量で集電体に塗布される。活物質層は、活物質層の厚みが所定の厚み(均一な厚み)となるようにプレスされる。
【0074】
上記方法によれば、合材に使用した活物質の比表面積と合材に使用した活物質のタップ密度、すなわち合材に使用した活物質の物性に基づいて、合材ごとに目付量が異なる。合材の目付量は、プレスされる前の活物質層の厚みに影響する。プレスされる前の活物質層の厚みは、プレスによる活物質層の厚みの変位量に影響する。プレスによる活物質層の厚みの変位量は、プレスによる活物質の比表面積の増加量に影響する。したがって、合材に使用した活物質の物性に基づいて合材の目付量を変更すると、プレスによる活物質の比表面積の増加量が変わる。すなわち、合材に使用した活物質の物性に基づいて合材の目付量を調整することにより、プレスによる活物質の比表面積の増加量を調整できる。これにより、極板の反応面積のばらつきが低減される。その結果、極板の性能のばらつきが低減される。
【0075】
(2)比表面積が第1面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第1面積よりも小さい第2面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。
【0076】
上記方法によれば、比表面積が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が小さく、比表面積が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が大きい。したがって、比表面積が第1面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第2面積である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、プレスによる活物質の比表面積の増加量が小さい。すなわち、元々の比表面積が大きい活物質についてはプレスによる比表面積の増加量が小さく、元々の比表面積が小さい活物質についてはプレスによる比表面積の増加量が大きい。これにより、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0077】
(3)比表面積が第1面積である且つタップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第1面積である且つタップ密度が第1密度よりも大きい第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。
【0078】
上記方法によれば、タップ密度が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が大きく、タップ密度が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が小さい。したがって、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、第1厚みのばらつきが低減される。すなわち、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質の比表面積の増加量についてばらつきが低減される。これにより、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0079】
(4)比表面積が第2面積である且つタップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合、比表面積が第2面積である且つタップ密度が第1密度よりも大きい第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と比べて、合材の目付量が小さい。
【0080】
上記方法によれば、タップ密度が大きい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が大きく、タップ密度が小さい活物質を使用した合材で極板を製造する場合に合材の目付量が小さい。したがって、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、第1厚みのばらつきが低減される。すなわち、タップ密度が第1密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合と、タップ密度が第2密度である活物質を使用した合材で極板を製造する場合とで、プレスによる活物質の比表面積の増加量についてばらつきが低減される。これにより、極板の反応面積のばらつきが低減される。
【0081】
上記実施例は、以下のように変更して実施できる。上記実施例及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・電極体15は、正極板16、負極板17、セパレータ18、及び、セパレータ19を巻き重ねた構造に限らない。例えば、電極体15は、正極板16、負極板17、セパレータ18、及び、セパレータ19を巻き重ねることなく積み重ねた構造でもよい。
【0082】
・実施例では、活物質の物性に基づき合材の目付量を4段階で変更したが、これに限らない。活物質の物性に基づいて、合材の目付量を2段階で変更してもよいし、3段階で変更してもよい。また、合材の目付量を5段階以上で変更してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…電池
16…正極板
17…負極板
21…正極集電体
22…正極活物質層
24…負極集電体
25…負極活物質層