(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】結合材組成物ベースの低保管時間のブレーキパッド用摩擦材料及び関連するブレーキパッド
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20240627BHJP
F16D 69/02 20060101ALI20240627BHJP
F16D 65/092 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C09K3/14 530C
C09K3/14 520F
C09K3/14 520G
C09K3/14 520M
F16D69/02 E
F16D65/092 B
(21)【出願番号】P 2021520990
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(86)【国際出願番号】 IB2019058737
(87)【国際公開番号】W WO2020079562
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】102018000009461
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514040893
【氏名又は名称】ハイデルベルクセメント・アクチエンゲゼルシャフト
(73)【特許権者】
【識別番号】595137882
【氏名又は名称】フレーニ ブレンボ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】FRENI BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランピネッリ、フラーヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ボンファンティ、アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】サングイネーティ、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】サメラ、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ボッタリコ、ルカ
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/068541(WO,A1)
【文献】特表2016-532831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)多成分ブレーキパッド配合物と、
ii)下記a)~c)を含む水硬性結合材ベースの結合材組成物又はマトリクスと、
a)質量で少なくとも2/3がケイ酸カルシウム[3CaO・SiO
2]及び[2CaO・SiO
2]で構成され、残部がAl
2O
3、Fe
2O
3、及び/又は他の少量酸化物からなる、一般的なセメントクリンカーからなる水硬性結合材;
b)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属及び/又はケイ素の1又は複数の塩及び/又は水酸化物及び/又は酸化物から選択される活性化剤;
c)ポゾラン活性を有する1又は複数の材料又は潜在水硬活性を有する1又は複数の材料、及び/又はこれらの混合物;
を含む又はからなり、前記結合材組成物又はマトリクスは水との水和反応によって硬化される、ブレーキパッド用摩擦材料であって、
前記水硬性結合材a)は、規格UNI EN196-6:2010の空気透過法(Blaine)に従って測定される、10,000~13,000cm
2/gの範囲内の粉末度を有すること、及び
成分c)は、規格UNI EN196-6:2010の空気透過法(Blaine)に従って測定される、6,000~9,000cm
2/gの範囲内の粉末度を有すること、
を特徴とする、ブレーキパッド用摩擦材料。
【請求項2】
前記水硬性結合材a)は、タイプIのポルトランドセメントクリンカー、タイプIIIの高炉セメント、タイプIVのポゾランセメント、及びこれらの混合物である、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項3】
前記結合材組成物ii)の成分b)は、酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び/又はシリケートから選択される、請求項1又は請求項2に記載の摩擦材料。
【請求項4】
前記結合材組成物ii)の成分c)は、ポゾラン活性を有する1又は複数の材料、及び/又は高炉スラグなどの潜在水硬活性を有する1又は複数の材料;水和石灰;天然石灰石から選択される、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の摩擦材料。
【請求項5】
前記水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)は、前記摩擦材料を構成する混合物の合計重量に対して3~60重量%の範囲内の量で存在する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の摩擦材料。
【請求項6】
前記水硬性結合材a)は、前記結合材組成物ii)の合計重量に対して0.5~95重量%の範囲内の量で存在し、前記活性化剤b)は、前記結合材組成物ii)の合計重量に対して0.5~50重量%の範囲内の量で存在し、前記ポゾラン活性を有する材料及び/又は潜在水硬活性を有する材料c)は、存在するとき、前記結合材組成物ii)の合計重量に対して0.5~95重量%の範囲内の量で存在し、骨材が、前記結合材組成物ii)の合計重量に対して0~20重量%の範囲内の量で存在していてもよく、種々の添加剤が、前記結合材組成物ii)の合計重量に対して0~5重量%の範囲内の量で存在していてもよい、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の摩擦材料。
【請求項7】
添加される水の総量が、前記水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)の合計重量に対して25~150重量%の範囲内の量である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の摩擦材料。
【請求項8】
前記多成分ブレーキパッド配合物i)は、前記摩擦材料を構成する混合物の合計重量に対して30~97重量%の範囲内の量で存在する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の摩擦材料。
【請求項9】
前記多成分ブレーキパッド配合物i)は、いずれも前記多成分ブレーキパッド配合物i)の合計重量に対して計算した量で、5~15重量%の範囲内の量の少なくとも1の潤滑剤、8~25重量%の範囲内の量の少なくとも1の研磨剤、8~25重量%の範囲内の量の少なくとも1の炭素含有成分、及び15~30重量%の範囲内の量の少なくとも1の改質剤を含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の摩擦材料。
【請求項10】
i)金属酸化物、鋼繊維、アラミド繊維、亜クロム酸塩、金属硫化物、グラファイト、コークス、金属粉末、及びバライトから選択される成分を含む多成分ブレーキパッド配合物と、
ii)a)11,840cm
2/gの粉末度を有する、タイプIのポルトランドセメント52.5、b)ケイ酸カリウム及び水酸化カリウム単独若しくは混合物、又は水酸化ナトリウム、c)6,760cm
2/gの粉末度を有するスラグ、並びに水、をベースとする結合材組成物
からなる、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の摩擦材料。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の摩擦材料と、金属性支持基体と、からなるブレーキパッド。
【請求項12】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の、水硬性結合材ベースの結合材組成物と多成分ブレーキパッド配合物とを含む摩擦材料の、ブレーキパッ
ドへの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合材組成物ベースの低減された保管時間のブレーキパッド用摩擦材料及び関連するブレーキパッドに関する。
【0002】
本発明は、知られているように、例えば幅広い操作条件の範囲内で均一且つ信頼性のある性能を保証する組成物を有さなければならない、ブレーキパッド用摩擦材料の範囲内にある。
【背景技術】
【0003】
特に、車両用ディスクブレーキパッドは、特に要求が多い操作条件下で動作するため、信頼性及び同時に耐久性を確保しなければならないため、製造者らは、関連する摩擦材料の特徴及び性能を絶えず改良しようとしてきた。
【0004】
ブレーキパッドは、一般に金属性の支持体と、種々の材料で構成される、摩擦を保証する層と、からなる。パッドの効率(すなわち、制動能力)又は持続時間は、摩擦材料の組成及び同材料の特性を適切に選択することによって好適になり得る。
【0005】
最新技術では、例えば、スチールと、可変量の異なるタイプの金属(例えば:銅、アルミニウム、亜鉛など)と、を含有し、結合要素として、熱硬化性樹脂、中でもそのようなものとしてフェノール樹脂及び/又は変性/誘導フェノール樹脂(シリコン、アクリル、エポキシ)を含む摩擦材料が開発されている。これらの熱硬化性樹脂は、摩擦材料の組成物の合計重量に対して5重量%~20重量%の範囲内の百分率で多数のブレーキパッド用摩擦材料に存在していて、ブレーキパッド配合物の熱成形プロセスを必要とし、また、ブレーキパッドの最適な最終性能、例えば:制動能力、損耗耐性及び摩耗耐性など;を保証する。
【0006】
熱硬化性フェノール樹脂の使用は、しかしながら、種々の不利点、まず第1に、環境保護持続可能性及び潜在毒性の問題を有する。加工の際、さらには最終製品の使用の際の熱酸化分解の結果として、これらの樹脂は、実際、樹脂の基本的な成分であるフェノール及びホルムアルデヒドに由来する確認されている毒性及び/又は潜在的毒性物質を放出し得る。規則EC 1272/2008によると、フェノールは、皮膚との長期接触の場合に有害であり得る毒性物質として、また、クラス3の変異原として分類される。環境中へのフェノールの混入を低減するために代替物の模索が多数の工業的研究分野において活発であり;この問題はまた、摩擦材料の分野においても直面している。新規の摩擦材料についての研究活動の中で、出願人らは、熱硬化性フェノール樹脂不含の、例えば、幅広い操作条件の範囲内で均一且つ信頼性のある性能を保証する水硬性結合材ベースの結合材組成物が開発された特許出願国際公開第2014/203142号及び国際公開第2017/068541号を提出した。
【0007】
国際公開第2014/203142号において、既に完全に熱硬化性フェノール樹脂に取って代わる、ブレーキパッドの全体での改良された性能を確保している水硬性結合材ベースの結合材組成物が開発された。制動能力、耐損耗性、耐摩耗性などは、熱硬化性樹脂中の結合材を用いて製造された最新技術に係るブレーキパッドのものに匹敵し、国際公開第2014/203142号に係る摩擦材料のトライボロジー特性は、「SAE J2522」と呼ばれる試験(以下、「AK Master」と示す)を通して求められた。AK Master試験は、性能試験であり、一対のパッドを種々の制動条件下で試験する:走行段階の後、一連の制動を、異なる圧力及び速度及び温度(低、中、及び高)、並びに、低温制動及び高速道路制動などの特徴的な制動でシミュレーションする。
【0008】
特許出願国際公開第2014/203142号の目的の材料は、上記AK Master試験に見事に合格し、圧縮成形プロセスを通してのセメント系ブレーキパッドの製造も可能にした。
【0009】
特許出願国際公開第2014/203142号の目的の材料は、しかしながら、スポーツカーにおけるブレーキ系の熱及び集中的な使用への耐性を検証するために与えられたより厳しい温度条件に類似するかかる条件下で、より要求の多い試験に供されたときに(例えば、「内部高温試験」と呼ばれるトライボロジー試験に供されたときに)、より低い性能を有することが判明している。この材料は、実際、「内部高温試験」によって特定される条件下では、かなりの表面剥離を有する。
【0010】
熱硬化性有機樹脂不含のシリケートベースの結合材マトリクスを含むブレーキ系の製造は、最新技術、より詳細には、米国特許第5,433,774号からも公知である。これらのシリケートベースの系は、場合によりアルカリ酸化物及びアルミネートの添加によって、水に少なくとも部分的に可溶である酸化ケイ素及び他のシリケートの混合物が低温で三次元の緻密なマトリクスを生じさせる硬化プロセスによって、低温で且つ高圧の非存在下で概して生成される。このプロセスにおいて、水は、ブレーキ系の形成反応には関与しないが、もっぱら溶媒として作用して、完全に蒸発する。米国特許第’774号は、国際公開第’142号に記載の摩擦材料としても、フェノール樹脂不含の摩擦材料を結果として既に記載しているが、この摩擦材料はしかしながら、「内部高温試験」に供されるとき性能の観点で満足のいくものではない。特許出願国際公開第2017/068541号において、水硬性結合材ベースの結合材組成物又はマトリクスがその後特定され、摩擦/ブレーキ材料の製造、及び、前記摩擦材料の、「内部高温試験」によって特定される条件下においても熱機械的仕様などの必要な技術仕様を満足し、同時に高い環境持続性を保証するブレーキパッドへの使用を可能にする。
【0011】
限定された保管時間を有するフェノール樹脂を用いて製造されたパッドとは異なり、上に示した特許出願に記載のセメント系摩擦材料を用いて製造されたパッドは、28日の保管又は硬化時間を特徴としており、つまり、28日の保管又は硬化時間後にのみパッドの最終仕上げが実行できる。セメント系材料ベースのブレーキパッドの分野では、保管又は硬化時間を短縮しこれにより取り付け時間を早めて、同時にしかしながら、機械的特性を実質的に変化させないようにする必要性が特に感じられる。保管又は硬化時間の短縮はまた、こうして製造されたセメントパッドのコストを削減するために特に重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、そのため、
i)多成分ブレーキパッド配合物と、
ii)下記a)~c)を含む水硬性結合材ベースの結合材組成物又はマトリクスと、
a)質量で少なくとも2/3がケイ酸カルシウム[3CaO・SiO2]及び[2CaO・SiO2]で構成され、残部がAl2O3、Fe2O3、及び/又は他の少量酸化物からなる、一般的なセメントクリンカーからなる水硬性結合材;
b)アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属及び/又はケイ素の1又は複数の塩及び/又は水酸化物及び/又は酸化物から選択される活性化剤;
c)ポゾラン活性を有する1又は複数の材料又は潜在水硬活性を有する1又は複数の材料、及び/又はこれらの混合物;
を含む又はからなり、前記結合材組成物又はマトリクスは水との水和反応によって硬化される、ブレーキパッド用摩擦材料であって、
前記水硬性結合材a)は、規格UNI EN196-6:2010の空気透過法(Blaine)に従って測定される、10,000~13,000cm2/gの範囲内、より好ましくは10,500~12,500cm2/gの範囲内、さらにより好ましくは10,700~12,000cm2/gの範囲内の粉末度を有すること、及び
成分c)は、規格UNI EN196-6:2010の空気透過法(Blaine)に従って測定される、6,000~9,000cm2/gの範囲内、好ましくは6,700~8,000cm2/gの範囲内の粉末度を有すること、
を特徴とする、ブレーキパッド用摩擦材料に関する。
【0013】
本発明はまた、i)多成分ブレーキパッド配合物と、ii)水硬性結合材ベースの結合材組成物と、iii)金属性支持基体と、からなるブレーキパッドにも関する。
【0014】
本発明の更なる目的は、前記摩擦材料の、ブレーキパッド及び他の工業用途への使用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る摩擦材料のトライボロジー特徴を試験する際には、既に示したように、特許出願国際公開第2017/068541号に記載のように「内部高温試験」と呼ばれる試験を使用した。
【0017】
この試験は、キャリパー、ディスク及びブレーキパッドを含めた実験セットアップが組み立てられている動的ベンチにおいて行われ、この動的ベンチは、フル装備の車両の質量に等しい慣性負荷をシミュレートするフライホイールが接続されている、選択された車両の駆動軸に取り付けられる系を複製している。第1の走行段階は、3m/s2の制御された減速及び100℃の初期ディスク温度で80Km/h~30Km/hの60のブレーキ適用を与える。この試験は、そして、一連の制動からなっていて、全てが、定義された初期速度が、車両の最高速度及び90Km/hに等しい最終速度の80%に等しく、減速が7m/s2以上である。合計で25制動が行われ、80秒の冷却時間が組み込まれて、続いて、上記で示されているのと同様な速度及び減速条件下で、しかし上記で特定されている初期ディスク温度に系を冷却した後に、5制動が行われる。
【0018】
本発明に係る摩擦材料は、国際公開第’541号に係る材料のように上記の試験に合格し、また、特許出願国際公開第’142号及び米国特許第’774号に記載の摩擦材料に対してより高い性能を有することが判明する。
【0019】
さらに、とりわけ、本発明に係る摩擦材料は、7日の保管又は硬化時間を特徴としており、最新技術のすべてのセメントベースの摩擦材料の28日に対して大幅に短縮されている。7日目の終わりに、構想される仕上げ、つまりパッドのサイズ調整とその後のワニス塗りを行うことができる。
【0020】
本発明の目的の摩擦材料の水硬性結合材ベースの結合材組成物は、そのため、本発明に係るブレーキパッドのための全体に改良された性能に加え、保管又は硬化時間、これにより取り付けを早め、極端に厳しい試験条件下でも機械的特性を改良するか実質的に変化させないようにするという点で、最新技術のセメントベースの摩擦材料に対してより良好な結果が得られることを可能にする。本発明に係る結合材組成物は、実際に、熱硬化性樹脂ベースの材料を使用する従来の製品だけでなく、他のタイプのセメント系結合材を使用する既知の製品に関しても、摩擦、耐損耗性及び耐摩耗性、制動能力、耐久性、並びに他の特性の観点で実質的に同様な性能を発揮する。
【0021】
本発明に係る摩擦材料の基本的な利点は、最新技術において既に知られているセメント系組成物ベースの摩擦材料に対して、本発明に係る摩擦材料が、保管又は硬化時間の大幅な短縮及びそれゆえ早められた取り付けを特徴とし、同時に上記の高温試験に合格し、こうして既述の先行技術に記載のセメントベースの摩擦材料と同等又はそれ以上の性能を発揮するということにある。
【0022】
本発明に係る、用語「水硬性結合材ベースの結合材組成物又はマトリクス」は、そのため、水硬性結合材、活性化剤、並びに、ポゾラン活性を有する1又は複数の材料又は潜在水硬活性を有する1又は複数の材料及び/又はこれらの混合物を含む又はこれらからなる、粉末形態の材料を指す。
【0023】
用語「水硬性結合材」は、粉末形態の材料であって、水と混合されると、温度条件(ただし、4℃(この温度では、前記水はもはや水和反応に利用可能な形態でなくなる)より高いことを条件とする)に関わらず水和によって硬化し、硬化後、その耐性及び安定性を維持する前記材料を指す。
【0024】
本発明に係る摩擦材料の結合材組成物に存在する水硬性結合材a)は、規格UNI EN197.1:2011によって定義されている、いずれかの一般的なセメントクリンカー、すなわち、質量で少なくとも2/3がケイ酸カルシウム[3CaO・SiO2]及び[2CaO・SiO2]で構成され、残部がAl2O3、Fe2O3、及び他の少量酸化物からなる水硬性材料(例えば、ポルトランドセメントクリンカー)を含む。
【0025】
少量酸化物は、一般的なクリンカーに通常存在する他の金属の酸化物であって、前記セメントクリンカーの合計重量に対して約2~3重量%に等しい少量で存在する、前記の他の金属の酸化物、例えば、酸化マグネシウム及び/又は酸化カリウムを指す。
【0026】
上述の規格UNI EN197.1:2011によって定義されている白色、灰色又は着色されたセメントもまた、1965年5月26日のN.595のイタリア法に定義されている、保持バリア、セメント系凝集物及び水硬性石灰用の所謂セメント、並びに無機シリケートと一緒に、本発明に係る水硬性結合材の広い定義の範囲内に含まれる。
【0027】
本発明に係る「水硬性結合材」として好ましいセメントは、ポルトランドセメントタイプI、高炉セメントタイプIII、ポゾランセメントタイプIV、及びこれらの混合物である。
【0028】
前記「水硬性結合材」a)は、それゆえ好ましくは、ポルトランドセメントタイプI、高炉セメントタイプIII、ポゾランセメントタイプIV、及びこれらの混合物であり、規格UNI EN196-6:2010の空気透過法(Blaine)に従って測定される、10,000~13,000cm2/gの範囲内、より好ましくは10,500~12,500cm2/g、さらにより好ましくは10,700~12,000cm2/gの範囲内の粉末度を有する。
【0029】
これらの特定のタイプのセメントの選択は、実際に、熱安定性及び機械的耐性をさらに増加させることを可能にし、これは10,700~12,000cm2/gの範囲内の好適粉末度に粉砕されたポルトランドセメントタイプIの場合に最大である。
【0030】
本発明に係る水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)はまた、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属及び/又はケイ素の1又は複数の塩及び/又は水酸化物及び/又は酸化物から選択される活性化剤である成分b)を含む。アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び/又はケイ素の塩及び/又は水酸化物及び/又は酸化物は、粉末形態で又は種々の濃度の溶液で添加され得る。
【0031】
これらの物質の例は:酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及びシリケートである。これらの物質の好ましい例は:酸化ケイ素、酸化カリウム、水酸化カリウム、及びシリケートである。
【0032】
本発明に係る水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)はまた、好ましくはマイクロシリカ、フライアッシュ、ポゾラン、シリカフューム、メタカオリンなどのポゾラン活性を有する1又は複数の材料、及び/又は高炉スラグなどの潜在水硬活性を有する1又は複数の材料;水和カルシウム;天然石灰石からなる成分c)も含まなければならない。
【0033】
成分c)は、規格UNI EN196-6:2010の空気透過法(Blaine)に従って測定される、6,000~9,000cm2/gの範囲内、好ましくは6,700~8,000cm2/gの範囲内の粉末度を有する。
【0034】
本発明に係る結合材組成物の好適成分c)は、6,700~8,000cm2/gの範囲内の粉末度を好ましくは有する、高炉スラグ又はメタカオリンから選択される。
【0035】
高炉スラグの非限定例は以下の化学組成を有するものである(XRD分析):
【0036】
【0037】
水硬性結合材a)及び成分c)を混合することによって得られる混合物の、規格UNI EN196-6:2010の空気透過法(Blaine)に従って測定される粉末度は、8,000~11,000cm2/gの範囲内であり、好ましくは9,400~9,800cm2/gの範囲内であり、より好ましくは9,500cm2/gである。
【0038】
本発明の目的で、水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)はまた、骨材も含み得る。
【0039】
前記骨材、又は、不活性骨材とも呼ばれる不活性生成物は、規格UNI EN13139:2003及びUNI EN12620:2008によって定義されている、石灰質骨材、シリカ骨材、又はシリカ石灰質骨材から選択され得る。これらの骨材は、任意の形態、破砕された又は球形の形態の、石英の石灰質骨材、又はシリカ石灰質骨材から好適に選択され得る。前記骨材は、鉱物起源の1又は複数の充填剤、例えば、規格UNI EN13139:2003の定義による微細な粒子サイズを有する、石灰質充填剤、シリカ充填剤、若しくはシリカ石灰質充填剤、又は石英を含み得る。
【0040】
本発明の目的で、水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)はまた、防水剤若しくは撥水剤又は添加剤も含有し得る。これらの剤は、シランなどの有機性の広範な化合物を含む。
【0041】
上記成分に加えて、本発明の目的の摩擦材料に存在する水硬性結合材ベースの結合組成物ii)は、混合物の特性を具体的な要件に適合させるための種々の他の添加剤を含み得る。これらの添加剤の例は、好ましくはポリカルボン酸タイプの超流動化剤、収縮防止剤、硬化及び/又は凝結促進剤、レオロジー改質剤、又は物理機械特性の改質剤、例えばセルロース又はラテックスなど、膨張剤、曝気剤、脱気剤及び接着剤であり得る。これらの添加剤は、本発明の目的で所望により存在する。
【0042】
水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)は、前記摩擦材料を形成する混合物の合計重量に対して3~60重量%の範囲内の量で存在し、前記摩擦材料を形成する混合物の合計重量(成分i)及び成分ii)の和によって与えられる)に対して好ましくは5~52重量%の範囲内の量で存在する。
【0043】
前記摩擦材料を形成する混合物の合計重量に対する前記5~52重量%の好ましい量は、剪断プロセスにおいて且つ熱酸化条件下で機械的シール特性に関して最適な摩擦材料が得られることを可能にする。
【0044】
水硬性結合材ベースの前記結合材組成物ii)において、水硬性結合材a)は、結合材組成物ii)の合計重量に対して0.5~95重量%、好ましくは10~93重量%の範囲内の量で存在し、活性化剤b)は、結合材組成物ii)の合計重量に対して0.5~50重量%の範囲内の量で存在し、ポゾラン活性を有する材料及び/又は潜在水硬活性を有する材料c)は、付与される場合、結合材組成物ii)の合計重量に対して0.5~95重量%、好ましくは10~93重量%の範囲内の量で存在し、骨材が結合材組成物ii)の合計重量に対して0~20重量%の範囲内の量で存在していてもよく、異なる性質の添加剤が結合材組成物ii)の合計重量に対して0~5重量%の範囲内の量で存在していてもよい。
【0045】
水硬性結合材a)とポゾラン活性を有する材料及び/又は潜在水硬活性を有する材料c)との最適な重量比は、75:25~60:40の範囲内であり、好ましくは65:35に等しい。
【0046】
さらに、本発明に係る好ましい水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)において、水硬性結合材a)は10,000~13,000cm2/gの範囲内の粉末度を有するタイプIのポルトランドセメントであり、ポゾラン活性を有する材料及び/又は水硬性を有する材料c)は6,000~9,000cm2/gの間で変化する粉末度を有る高炉スラグであり、65:35に等しい重量比である。
【0047】
本発明の目的で、前記水硬性結合材の硬化プロセスに必要な、添加される水の総量は、水硬性結合材ベースの前記結合材組成物ii)の合計重量に対して、25~150重量%の範囲内の量、好ましくは50~150重量%の範囲内の量である。
【0048】
前記水の一部は、前記パッドの成形工程の際の初期のプレス段階において取り除かれる。
【0049】
より詳細には、結合材組成物ii)は、その量が3~60重量%の範囲内であり、成分a)、成分b)及び成分c)と、場合により、前記結合材組成物を参照して上記に示した前記骨材及び添加剤とで構成される。水の量は、そのため、前記結合組成物の合計重量に対して25~150%の範囲内である。
【0050】
本発明に係る摩擦材料は、結合材組成物ii)及び硬化プロセスに必要な水に加えて、繊維、潤滑剤、研磨剤、摩擦調整剤及び/又は他の付加的な材料を含む又はこれらからなる「多成分ブレーキパッド配合物」i)も含む材料である。
【0051】
本発明に係る摩擦材料は、前記摩擦材料を形成する混合物の合計重量に対して3~60重量%の範囲内の量で存在する、水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)、及び水硬性結合材ベースの結合材組成物ii)の合計重量に対して25~150重量%の範囲内の量の水に加えて、前記摩擦材料を形成する混合物の合計重量に対して30~97重量%の範囲内の量、好ましくは50~95%の範囲内の量の多成分ブレーキパッド配合物i)も含む。
【0052】
本発明に係る摩擦材料の多成分ブレーキパッド配合物i)は、いずれも前記多成分ブレーキパッド配合物i)の合計重量に対する計算で、5~15重量%の範囲内の量の少なくとも1の潤滑剤、8~25重量%の範囲内の量の少なくとも1の研磨剤、8~25重量%の範囲内の量の炭素を含有する少なくとも1の成分、15~30重量%の範囲内の量の少なくとも1の改質剤を含む。
【0053】
本発明に係る摩擦材料の多成分ブレーキパッド配合物i)は、多成分ブレーキパッド配合物i)の合計重量に対して2~30重量%の範囲内の量の1又は複数の繊維を所望により含み得る。
【0054】
繊維の可能な例は、これらから、本発明に係る摩擦材料の多成分ブレーキパッド配合物i)において使用される繊維が選択され、ポリアクリロニトリルベースの繊維、ポリアミド、セルロース繊維、金属繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、硬質ウール、スラグウール、ロックウールなどの合成鉱物繊維、鋼繊維、及び炭素繊維であり得る。
【0055】
潤滑剤の可能な例は、これらから、本発明に係る摩擦材料の多成分ブレーキパッド配合物i)において使用される潤滑剤が選択され、有機潤滑剤及び金属潤滑剤、金属硫化物(硫化スズ、硫化亜鉛、硫化鉄、及び硫化モリブデンなど)の混合物、窒化ホウ素、スズ粉末並びに亜鉛粉末であり得る。
【0056】
潤滑剤は、好ましくは金属硫化物から選択される。
【0057】
モース硬度を基準にして一般に分類される研磨剤の可能な例は、これらから、本発明に係る摩擦材料の多成分ブレーキパッド配合物i)において使用される研磨剤が選択され、鉱物繊維、酸化ジルコニウム、ジルコン、ケイ酸ジルコニウム、マイカ、アルミナ、ケイ酸塩鉱物、マグネシウム、ジルコニウム及び/又はアルミニウム、シリカ、二酸化ケイ素、砂、炭化ケイ素、酸化鉄、亜クロム酸鉄、酸化マグネシウム、及びチタン酸カリウムであり得る。
【0058】
本発明に係る摩擦材料における研磨剤は、6を超えるモーススケールによる硬度を有する金属酸化物及び他の研磨剤から好ましくは選択される。
【0059】
炭素含有成分の可能な例は、これらから、本発明に係る摩擦材料の多成分ブレーキパッド配合物i)の前記成分が選択され、天然グラファイト、合成グラファイト、石油コークス、脱硫石油コークス、及びカーボンブラックであり得る。
【0060】
上述の炭素含有成分は、好ましくはグラファイト及びコークスから選択される。
【0061】
改質剤の可能な例は、これらから、本発明に係る摩擦材料の多成分ブレーキパッド配合物i)の改質剤が選択され、石灰、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、バライト、フッ素化化合物、金属粉末、粉末形態のゴム又はリサイクルゴム(粉砕)及び種々の他のタイプの摩擦粉末であり得る。
【0062】
改質剤は、好ましくはバライト及び金属粉末から選択される。
【0063】
本発明に係る好ましい摩擦材料は、
ii)a)11,840cm2/gの粉末度を有するポルトランドセメント タイプI 52.5、b)ケイ酸カリウム及び水酸化カリウム単独若しくは混合物、又は水酸化ナトリウム、c)6,760cm2/gの粉末度を有するスラグ、並びに水、をベースとする結合材組成物と、
i)金属酸化物、鋼繊維、アラミド繊維、亜クロム酸塩、金属硫化物、グラファイト、コークス、金属粉末、及びバライトから好ましくは選択される成分を含む多成分ブレーキパッド配合物と、
からなる。
【0064】
<調製プロセス>
上記に列挙されている種々の成分、及び、具体的には、結合材組成物ii)、多成分ブレーキパッド配合物i)、及び水は、前記摩擦材料を形成し、また、示唆されているように且つ示唆されている割合で混合されると、最新技術に係るセメント系材料の性能よりも高い性能を有するクラスの摩擦材料を提供する。
【0065】
完全な均質化のために、前記摩擦材料を形成する前記セメント、水及び他の成分は、次いでブレーキパッドの製造のための成形プロセスに供される、好適なコンシステンシーを有する均質で塊の無いペーストが得られるまで、適切な割合で混合される。
【0066】
こうして得られたブレーキ混合物は、その後、4~90℃、好ましくは20~25℃の範囲内の温度、及び1~6kN/cm2、好ましくは2~5kN/cm2の範囲内の圧力で圧縮成形プロセスに供され、前記温度及び圧力条件は、本発明に係る摩擦材料から出発するブレーキパッドの成形に最適であることが判明している。
【0067】
成形後の硬化又は保管の約7日後に、パッドを以下に示すように特性決定及び試験する。
【0068】
予め選択された配合により前記成形プロセスによって製造されたパッドの特性決定は、以下の態様の評価をベースとする:
A)エッジのプロファイルの均一性及び規則性、並びに形状欠陥の不在;
B)圧縮率及び表面硬度;
C)AK Master及び「内部高温試験」と呼ばれる試験を通して求められる、前記摩擦材料のトライボロジー特性。
【0069】
特性決定A)及び特性決定B)は以下の試験によって行う:
A)エッジのプロファイルの均一性及び規則性、並びに形状欠陥の不在:これは、基本的に、以下のパラメータを観察することにある成形試験の評価である:A1)前記材料による金型の均質な充填、結果としての、欠陥を有さない製品の製造;A2)起こり得る表面酸化又は異常な膨張の観察。これらの観察は、目視検証によって、並びに前記最終製品の平坦度及び平行度測定によって行われる。
【0070】
B)ISO-6310に従う「圧縮率」及びJIS D4421に従う「表面硬度」;かかる圧縮率及び表面硬度は、それぞれ、圧縮レジメン下での寸法変動の尺度、並びに、前記パッドの表面の周辺部及び中央部間の機械特性の均質性指数を提供する。
【0071】
摩擦材料について、規格ISO-6310に従う許容可能な圧縮率値は、20~120ミクロンの範囲内の値であり、一方で、規格JIS D4421に従う許容可能な表面硬度値(HRR)は、10~120の範囲内の値である。
【0072】
C)トライボロジー特性
摩擦材料のトライボロジー特性は、SAE J2522と呼ばれる(「AK Master」と呼ばれる)試験及び「内部高温試験」を通して求められる。
【0073】
AK Master試験は、性能試験であり、ここでは、一対のパッドを種々の制動条件下で試験する:走行段階の後、一連の制動を、異なる圧力及び速度(低、中、及び高)、並びに低温制動及び高速道路制動などの特徴的な制動でシミュレーションする。
【0074】
「内部高温試験」は、キャリパー、ディスク及びブレーキパッドを含めた実験セットアップが組み立てられている動的ベンチにおいて実施され、この動的ベンチは、フル装備の車両の質量に等しい慣性負荷をシミュレートするフライホイールが接続されている、選択された車両の駆動軸に取り付けられた系を複製している。第1の走行段階は、3m/s2の制御された減速及び100℃の初期ディスク温度で80Km/h~30Km/hの60制動を与える。この試験は、続いて、一連の制動からなっていて、全てが、定義された初期速度が、車両の最高速度及び90Km/hに等しい最終速度の80%に等しく、減速が7m/s2以上である。合計で25制動がなされ、80秒の冷却時間が組み込まれて、続いて、上記で示されているのと同じ速度及び減速条件下で、しかし上記で特定されている初期ディスク温度に系を冷却した後に、5制動が行われる。
【0075】
本発明に係る摩擦材料の主な利点は、前記材料が、実際に、使用の際又は製造の際のいずれかで、大気中にフェノール性誘導体又はフェノール-ホルムアルデヒド誘導体が放出されないような、より一層高い環境保護持続可能性を有するブレーキパッドが製造されることを可能にすることである。さらに、本発明に係る結合材組成物の固有の特性のおかげで、これらの特性が、フェノール樹脂を含有する材料の性能と類似する性能、並びに、例えば上記の先行技術に記載のセメント系結合材料を含有する材料の性能と類似するかそれよりも高い性能を保証する。
【0076】
本発明に係る摩擦材料の基本的な利点は、パッドのセットアップ及び使用をはるかに早める、わずか7日の保管/硬化時間に関連しており、且つ、驚くべきことに、非常に短い硬化時間にもかかわらず、本発明に係る摩擦材料の機械特性は実質的に不変のままである。
【0077】
本発明のさらなる特徴及び利点は、例示的且つ非限定的な目的で提供されている以下の実施例から明らかになる。
【実施例】
【0078】
<実施例1>
以下の表1に示す組成を有する摩擦材料を調製した。
【0079】
【0080】
より詳細には、前記摩擦材料を、約11,840cm2/g(blaine)に等しい粉末度にまで過剰粉砕したポルトランドセメント タイプI 52.5R Caluscoとおよそ6,760cm2/gに等しい粉末度を有する高炉スラグとを含有する結合材組成物を前記摩擦材料の合計重量に対して10.1重量%に等しい百分率で使用して調製した。
【0081】
セメントは結合材組成物の65重量%を構成し、一方でスラグは結合材組成物の約35重量%を構成する。
【0082】
得られる混合物はそれゆえ9,500cm2/gに等しい粉末度を有する。
【0083】
結合材組成物の粒子サイズ分布を
図1に示し、レーザー研削を用いた粒度測定データを、Rosin-Rammler-Sperling-Bennet(RRSB)関数による勾配及び位置パラメータx’及びnを含め表2に示す。表3は、規格EN 13892-2:2005に従う結合材組成物の物理機械特性を示す。
【0084】
【0085】
【0086】
こうして製造した摩擦材料は、室温条件(20-25℃)及び4.5kN/cm2の圧力下、適切な圧縮金型を用いて成形され、77cm2の表面及び1.5cmの厚さを有するパッドの製造をもたらす。
【0087】
より詳細には、本実施例において示されている試験において使用されている金型は、77cm2の表面及び1.5cmの厚さを有するパッドの製造を提供する金型である。
【0088】
成形(硬化時間)後およそ7日目に、前記パッドに通常の方法に従ってワニスを塗り、続いて、以下に記載するように特性決定及び試験した。
【0089】
表1に示す配合から得られたパッドを目視で観察したところ、これらのパッドは、表面酸化又は異常な膨張のいずれも示さなかった。
【0090】
こうして得られた最終製品のHRR表面硬度試験を次いで規格JIS D4421に従って実施して、80の平均値を得、また、前記パッドの周辺及び中心表面領域間で機械特性の良好な均質性を示した。
【0091】
この均質性の態様は、潜在的な脱離点を有さず、また、高い耐損耗性を特徴とする摩擦材料を製造するのに極めて重要である。
【0092】
前記エッジのプロファイルの均一性及び規則性、並びに前記パッドの前記周辺部に対する均質性は、フェノール樹脂を結合材として使用するパッドの典型的な値に対して類似する又は改良された損耗を有するのに必須の要素である。
【0093】
ISO-6310:2009に従う「圧縮率」試験は、35.6ミクロンに等しい平均値を示した。
【0094】
AK Master試験に従い試験された前記パッドは、0.30mmの損耗値(この値は、前記パッド対について行われた測定の平均を指す)、0.37に等しい平均摩擦係数を示したが、前記パッド及びディスクの外観は、熱硬化性樹脂を用いて得られる常套的なパッドによって示される基準について目視で許容可能であることが判明した。
【0095】
上記の「内部高温試験」に従って試験したパッドは、前記試験の最後に剥離及び/又は広範且つ著しいクラックによるいずれの材料の脱離も示していない。
【0096】
<実施例2(比較)>
実施例1の表1に示すのと同様な組成を用いて摩擦材料を調製した。
【0097】
より詳細には、前記摩擦材料を、約6,100cm2/g(blaine)に等しい粉末度にまで過剰粉砕したポルトランドセメント タイプI 52.5R Caluscoと約3,900cm2/gに等しい粉末度を有する高炉スラグとを含有する結合材組成物を前記摩擦材料の合計重量に対して10.1重量%に等しい百分率で使用して調製した。
【0098】
セメントは結合材組成物の65重量%を構成し、一方でスラグは結合材組成物の約35重量%を構成する。
【0099】
得られる混合物はそれゆえ5,430cm2/gに等しい粉末度を有する。
【0100】
レーザー研削を用いた粒度測定データを、Rosin-Rammler-Sperling-Bennet(RRSB)関数による勾配及び位置パラメータx’及びnを含め表4に示す。表5は、規格EN 13892-2:2005に従う結合材組成物の物理機械特性を示す。
【0101】
【0102】
【0103】
摩擦材料の残部は多成分ブレーキパッド配合物からなる。
【0104】
摩擦材料の各成分の百分率量は、摩擦材料を構成する混合物のみの合計重量に対する重量分率である。
【0105】
こうして製造した摩擦材料は、室温条件(20-25℃)及び4.5kN/cm2の圧力下、適切な圧縮金型を用いて成形され、77cm2の表面及び1.5cmに等しい厚さを有するパッドの製造をもたらす。
【0106】
より詳細には、本実施例において示されている試験において使用されている金型は、77cm2の表面及び1.5cmに等しい厚さを有するパッドの製造を提供する金型である。
【0107】
成形(硬化時間)後およそ28日目に、前記パッドに通常の方法に従ってワニスを塗り、続いて、以下に記載するように特性決定及び試験した。28日目より前ではパッドの特性決定を行うことが不可能であった。
【0108】
表1に示す配合から得られたパッドを目視で観察したところ、これらのパッドは、表面酸化又は異常な膨張のいずれも示さなかった。
【0109】
こうして得られた最終製品のHRR表面硬度試験を次いで規格JIS D4421に従って実施して、90の平均値を得、また、前記パッドの周辺及び中心表面領域間で機械特性の良好な均質性を示した。
【0110】
この均質性の態様は、潜在的な脱離点を有さず、また、高い耐損耗性を特徴とする摩擦材料を製造するのに極めて重要である。
【0111】
前記エッジのプロファイルの均一性及び規則性、並びに前記パッドの前記周辺部に対する均質性は、フェノール樹脂を結合材として使用するパッドの典型的な値に対して類似する又は改良された損耗を有するのに必須の要素である。
【0112】
ISO-6310:2009に従う「圧縮率」試験は、30ミクロンに等しい平均値を示した。
【0113】
AK Master試験に従い試験された前記パッドは、0.30mmの損耗値(この値は、前記パッド対について行われた測定の平均を指す)、0.36に等しい平均摩擦係数を示したが、前記パッド及びディスクの外観は、熱硬化性樹脂を用いて得られる常套的なパッドによって示される基準について目視で許容可能であることが判明した。
【0114】
実施例1及び実施例2の結果を分析すると、実施例1のパッド、すなわち、9,740cm2/gに等しい粉末度を有する結合材組成物から出発して得られたパッドは、実施例2のパッド、すなわち、5,430cm2/gに等しい粉末度を有する結合材組成物から出発して得られたパッドに対して、物理機械特性においてわずかな改良を示したが、非常に驚くべきことに、たった7日の保管又は硬化後のAK master試験の結果(摩擦係数及びパッドの摩耗)は、28日の硬化又は保管時間を要する実施例2のパッドについて得られるのと十分に類似していることが着目され得る。