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特許7510931人工装具上に配置するためのセンサキャリア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】人工装具上に配置するためのセンサキャリア
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/70 20060101AFI20240627BHJP
   A61F 2/54 20060101ALI20240627BHJP
   A61F 2/60 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61F2/70
A61F2/54
A61F2/60
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021531488
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 IB2019060297
(87)【国際公開番号】W WO2020110065
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】18209621.4
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521235844
【氏名又は名称】サフェナス メディカル テクノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルティス レイナー
(72)【発明者】
【氏名】ラン ベルンハード
(72)【発明者】
【氏名】ブランドスターター マーチン
(72)【発明者】
【氏名】ピッツシェル アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ムーレンベレンド アンドレアス
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/089543(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/000542(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0206242(US,A1)
【文献】国際公開第98/25552(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/50-80
A61F 5/00-02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工装具上、特に義手または義足上に配置するためのセンサキャリア(10)であって、センサ(15)を収容するための基体(20)を含み、
基体(20)は、センサ(15)を有するセンサ部(25)を有し、
基体(20)は、基体(20)を人工装具部品上に保持するための保持部(30)を有している、
センサキャリアにおいて、
前記基体(20)は、編まれた織物チューブ(21)を有し、
前記保持部(30)は、人工装具部品上に基体(20)を確実に保持することを可能にする第1の編み構造(32)を有し、
前記センサ部(25)は、人工装具部品に対してセンサ(15)を確実に位置決めすることを可能にする、前記第1の編み構造(32)とは異なる編み構造(27)を有することを特徴とする、センサキャリア(10)。
【請求項2】
前記保持部(30)は、その第1の編み構造(32)に加えて、
第1の編み構造(32)とは異なるように形成され、特に、形状的に安定に人工装具部品を包含するように形成された、第2の編み構造(33)を有することを特徴とする、請求項1に記載のセンサキャリア。
【請求項3】
前記保持部(30)は、その第1の編み構造(32)に加えて、
好ましくは第1の編み構造(32)および第2の編み構造(33)とは異なるように形成され、特に弾性を有するように形成された、第3の編み構造(34)を有することを特徴とする、請求項2に記載のセンサキャリア。
【請求項4】
前記保持部(30)の第1の編み構造(32)は、第1の糸太さを有し、
前記保持部(30)の第2の編み構造(33)は、第2の糸太さを有することを特徴とする、請求項2または3に記載のセンサキャリア。
【請求項5】
前記保持部(30)の第3の編み構造(34)は、第3の糸太さを有する、ことを特徴とする、請求項3に記載のセンサキャリア。
【請求項6】
前記センサ部(25)の編み構造(27)は、前記保持部(30)の第1の糸太さとは異なる糸太さを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のセンサキャリア。
【請求項7】
前記編み構造(27、32、33、34)のうちの少なくとも1つは、抵抗性合成繊維から作られることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のセンサキャリア。
【請求項8】
前記センサ部(25)は多層に形成され、
前記センサ部(25)は、前記センサ(15)が埋め込まれたセンサ層(28)を有し、
前記センサは、好ましくは、少なくとも1つの圧力センサおよび/または少なくとも1つの力センサを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のセンサキャリア。
【請求項9】
前記編み構造(27)に加えて、前記センサ部(25)上に、使用状態において人工装具部品とは逆の側の外側保護層(29)が設けられることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載のセンサキャリア。
【請求項10】
人工装具部品に向いた側の内側保護層(26)が設けられることを特徴とする、請求項9に記載のセンサキャリア。
【請求項11】
前記外側保護層(29)および/または前記内側保護層(26)は、
少なくとも一方向に滑り抑制性を有するように形成されており、特に、少なくとも部分的に滑り抑制性材料から作られており、
および/または、
少なくとも一方向に滑り促進性を有するように形成されており、特に、少なくとも部分的に滑り促進性材料から作られており、
好ましくは、滑り抑制性特性または滑り促進性特性を改善するためのプロファイル構造を有することを特徴とする、請求項10に記載のセンサキャリア。
【請求項12】
前記センサ層(28)は、前記外側保護層(29)と前記内側保護層(26)との間に埋め込まれていることを特徴とする、請求項8を引用する請求項9、10または11、に記載のセンサキャリア。
【請求項13】
前記センサ層(28)は、前記センサ部(25)に、材料同士が結合されて配置されていることを特徴とする、請求項8、請求項8を引用する請求項9、10若しくは11、または請求項12に記載のセンサキャリア。
【請求項14】
前記センサ(15)に電気的に接続された制御装置(50)が設けられていることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のセンサキャリア。
【請求項15】
前記制御装置(50)は、前記センサ層(28)の前記センサ(15)に、分離可能に接続されていることを特徴とする、請求項8を引用する請求項14に記載のセンサキャリア。
【請求項16】
前記制御装置(50)は、人工装具部品に、着脱可能に取り付け可能であることを特徴とする、請求項14または15に記載のセンサキャリア。
【請求項17】
前記制御装置(50)は、磁気ホルダ(55)によって人工装具部品に取り付け可能であることを特徴とする、請求項16に記載のセンサキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の、人工装具上に配置するためのセンサキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の人工装具は、センサを有することが多い。典型的には、センサは、人工装具の内部に直接配置され、人工装具に永久的に組み込まれる。例えば、いくつかの圧力センサが、義足の人工装具ソールに組み込まれている。人工装具はまた、しばしば、いくつかの刺激器を有する。これらの刺激器は、いくつかの圧力センサに電気的に接続されている。したがって、刺激器は、圧力センサによって制御または励起され、皮膚を介して患者の残りの四肢に作用する。その結果、刺激器は、人工装具ユーザが圧力センサ上の圧力を知覚することを可能にし、したがって、人工装具ソール上の圧力を「感じる」ことを可能にする。このような装置は、例えば国際公開第98/25552号パンフレットに開示されている。
【0003】
この公知の解決策の欠点は、そのような人工装具システムが、一方では非常に高価であり、他方では、人工装具ユーザにとって、人工装具への適合および習熟の段階に非常に時間がかかることである。さらに、これらは、専門家および/または整形外科医との会合の予定日時を数回決める必要がある。そこでは、刺激器および圧力センサの位置を数回再調整しなければならず、これは、それらが既に恒久的に取り付けられている場合には困難であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第98/25552号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の1つ以上の欠点を克服することである。特に、既存の人工装具を構造的に変更することなく、それらに容易に取り付けることができるセンサキャリアが作られるべきである。センサキャリアは、配置された状態で、人工装具上で確実に機能しなければならず、他方、センサキャリアはまた、再び取り外され、例えば、別の人工装具上に再び容易に取り付け可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。有利なさらなる発展は、説明、図面、図面の説明、および従属請求項に記載されている。
【0007】
人工装具上に配置するための本発明によるセンサキャリアは、センサを収容するための基体を含み、基体は、センサを有するセンサ部を有し、基体は、基体を人工装具部品上に保持するための保持部を有する。基体は、編まれた織物チューブを有する。保持部は、人工装具部品上に基体を確実に保持することを可能にする第1の編み構造を有する。センサ部は、人工装具部品に対してセンサを確実に位置決めすることを可能にする、第1の編み構造とは異なる編み構造を有する。
【0008】
本発明のセンサキャリアは、任意の所望の人工装具上に配置することができ、したがって、センサ自体を有する必要がなく、したがって、より簡単に構成することができる。基体のセンサ部上および保持部上の異なる編み構造を用いて、一方ではセンサが基体に固定され、他方ではセンサが人工装具部品上の予め定められた位置に固定される。保持部上の編み構造は、織物チューブ内にしわが形成されるのを防止する。しわ形成は、センサを人工装具上に不正確に配置させる可能性がある。センサ部上の編み構造は、比較的耐性があるように編まれ、したがって、人工装具を使用するときにセンサにかかる機械的負荷を最小限に抑え、それによって、人工装具の耐用年数を延ばし、人工装具自体の衝撃も少なくする(減衰)。
【0009】
新しいタイプのセンサキャリアは、センサが組み込まれた従来の人工装具と同様に、人工装具ユーザが人工装具の動き/人工装具の足の回転運動を詳細に「感じる」ことを可能にし、その一方で、センサキャリアと共にセンサを容易に取り外せることは、人工装具の容易なクリーニングを実現し、その結果、人工装具を用いる日常の取り扱いを改善する。
【0010】
義足での急勾配地形上での移動/歩行のような困難な動きでさえ、新しいタイプのセンサキャリアを使用して学習することができる。本センサキャリアは任意の人工装具上に配置することができるので、「感じる」人工装具を使用することを人工装具ユーザが望む場合に、人工装具ユーザは、人工装具の交換の労力から免れる。人工装具シャフトは人工装具ユーザの残りの四肢の解剖学的構造に適合しなければならないので、人工装具の交換は人工装具ユーザにとって非常に不快であり、したがって、本発明は非常に有利である。
【0011】
特に、センサキャリアは、義手または義足に配置するのに適している。これらは、広く普及したタイプの人工装具であり、したがって、ここに記載されるセンサキャリアによって改善され得る。
【0012】
保持部は、第1の編み構造に加えて、第2の編み構造を有することが好ましい。保持部上のこれらの編み構造は、人工装具部品上における確実な保持を可能にする。これらの編み構造は、基体上の異なる位置に配置され、その結果、基体は、2つ以上の位置で、安定した様式で固定的に人工装具部品と相互作用する。
【0013】
第2の編み構造は、好ましくは、第1の編み構造とは異なるように形成される。異なる編み構造は異なる伸び特性を有し、したがって、センサキャリアが人工装具部品上に確実に配置され得る。
【0014】
特に、第2の編み構造は、形状的に安定に人工装具部品を包含するように形成される。形状的に安定した編み構造は、この編み構造が人工装具部品に力による結合で接続されるので、人工装具部品に対する保持を改善する。例えば、形状的に安定した編み構造は、義足の踵と相互作用するセンサキャリアの領域上に配置される。これにより、人工装具ユーザは、例えば歩行または走行時に一連の運動をより良好に「感じる」ことができ、その結果、人工装具ユーザは人工装具に自信を持ち、その結果、歩行安全性が向上する。
【0015】
好ましくは、保持部は、その第1の編み構造に加えて、第1の編み構造および第2の編み構造とは異なるように形成された第3の編み構造を有する。これにより、編まれた織物チューブにしわが形成されるのを防止することによって、人工装具上のセンサキャリアの保持特性がさらに改善される。
【0016】
特に、第3の編み構造は弾性を有するように形成される。編まれた織物チューブは、付勢を有することができ、弾性を有する第3の編み構造を用いて人工装具部品上に容易に引き伸ばすことができる。
【0017】
好ましくは、保持部の第1の編み構造は、第1の糸太さを有し、保持部の第2の編み構造は、第2の糸太さを有する。本明細書に記載された、異なる編み構造は、編み構造自体を介して、ただし異なる糸太さを用いて、設定することができる、異なる機能性を有する。編み構造の、異なる機能性は、人工装具の異なる部分において有利である。同じ編み構造の保持特性は、異なる糸太さで改善することができる。例えば、ダイヤモンド形状の編み構造は、有利な伸び特性を有するので有利である。特に、第1の編み構造の糸太さは、0.1mm~0.6mmの範囲、有利には0.3mmである。特に、第2の編み構造の糸太さは、0.5mm~1.5mmの範囲、有利には1mmである。
【0018】
保持部の第3の編み構造は、第3の糸太さを有することが好ましい。第3の糸太さを有する第3の編み構造は、センサキャリアの適用領域の柔軟性を増大させる。
【0019】
特に、第3の編み構造の糸太さは、0.3mm~0.9mmの範囲、有利には0.6mmである。
【0020】
センサ部の編み構造は、保持部の第1の糸太さとは異なる糸太さを有することが好ましい。これにより、センサ部特有の編み構造の特性が向上する。例えば、センサ部の編み構造の糸太さは、保持部のそれよりも厚く、その結果、センサ部のセンサは、望ましくない機械的負荷から保護される。特に、センサ部の編み構造の糸太さは、0.6mm~1.5mmの範囲、有利には0.8mmである。
【0021】
好ましくは、編み構造のうちの少なくとも1つは、抵抗性合成繊維から作られる。合成繊維は、編みプロセスを用いて加工することができる、耐久性があり、丈夫な材料である。例えば、ナイロンまたはポリエステルまたは同等の特性を有する材料で作られた合成繊維が使用される。これらは、編まれた織物チューブが特定の領域で拡大したり摩耗したりするのを防止する。特に、義足の人工装具ソールの領域では、張力による損傷からセンサを保護するために、伸びおよび圧縮が防止されるべきである。
【0022】
好ましくは、センサ部は多層に形成され、センサ部は、センサが埋め込まれたセンサ層を有する。センサ層は、センサキャリア内のセンサの構造化された配置を可能にし、それによって、人工装具ユーザの個々の需要を考慮に入れることができる。センサ部の多層構造は、センサの保護を改善し、同時に、人工装具と環境(例えば、下面(底面)または内側靴)との間の減衰作用を追加する。
【0023】
それ自体知られているように、センサは、好ましくは、少なくとも1つの圧力センサを含む。少なくとも1つの圧力センサは、通常人工装具に直接作用する圧力を吸収し、それらを電気信号に変換するように形成される。次に、電気信号が送信される。例えば、少なくとも1つの圧力センサは、圧電的に構成される。
【0024】
代替的にまたは追加的に、センサは、少なくとも1つの力センサを含む。力センサは、通常人工装具に直接作用する力を吸収し、それらを電気信号に変換し、次いで、電気信号を送信するように形成される。例えば、歪みゲージは、軽量であり、場所を取らないようにセンサ層に配置することができるので、力センサとして使用される。さらに、力センサは、圧力と剪断力の両方を測定するように形成される。
【0025】
好ましくは、編み構造に加えて、センサ部上に、使用状態において人工装具部品とは逆の側の外側保護層が設けられる。外側保護層は、センサ層を、例えば、センサ層にしわをもたらす可能性がある、望ましくない機械的負荷から保護する。したがって、センサキャリアは、人工装具上に直接配置することができるだけでなく、靴または手袋などの衣料品の内側で人工装具と共に使用することもでき、この改善された手段なしでは、センサ層上にしわが生じる可能性がある。さらに、この外側保護層は、例えば、ユーザが追加の保護手段なしに下面または地面上を歩く場合に、センサ層の耐用年数を増加させる。
【0026】
好ましくは、人工装具部品に向いた側の内側保護層が設けられる。内側保護層は、例えば、センサキャリアが人工装具上に引き伸ばされたときに、内側に向かってセンサ層を機械的に保護するように形成される。センサキャリアを人工装具上に引き伸ばすことによって、つまり拡張力を内側保護層によって吸収することができ、したがって内側保護層はセンサ層から離れて維持されることができる。
【0027】
外側保護層は、好ましくは、少なくとも一方向に滑り抑制性を有するように形成される。これは、外側保護層が下面または内側靴に対して滑ることを防止し、したがって、センサ層がセンサキャリア内で滑ることも防止する。例えば、アルカンタラ(Alcantara)のような人工皮革を外側保護層として使用することができる。例えば、外側保護層の表面が滑り抑制性である。
【0028】
特に、外側保護層は、少なくとも部分的に、または全体として、滑り抑制性材料から製造される。滑り抑制性材料は、靴などの衣料品にセンサキャリアと共に配置された人工装具を移動させるときに、センサキャリアが滑るのを防止する。滑り抑制性材料は、接着様式で衣料品の材料と相互作用する。
【0029】
滑り抑制性材料はまた、キャリア材料上のコーティングとして適用することもできる。キャリア材料は、形状的に安定であることができ、また、コーティングのみが滑り抑制性であるように形成されることができる。例えば、シリコーンまたは同等の材料で作られたコーティングを有する人工皮革をキャリア材料として使用することができる。シリコーンは、キャリア材料に容易にかつ広い面積にわたって塗布することができ、高いレベルの接着安定性を有するので、コーティングの迅速な摩耗を防止することができる。
【0030】
これに代えて、またはこれに加えて、外側保護層は、少なくとも部分的に滑り促進性材料から形成される。滑り促進性材料は、外側保護層が少なくとも一方向に容易に摺動することを可能にし、その結果、例えば、センサキャリアは、衣料品内に容易に配置され得る。滑り促進性材料は、(少なくとも一方向に)摺動摩擦を伴って衣料品と相互作用する。
【0031】
特に、外側保護層は、少なくとも一方向に滑り促進性を有するように形成される。これは、衣料品内のセンサキャリアの配置を容易化し、センサキャリア上にしわが形成されることを防止する。滑り促進性材料は、キャリア材料上のコーティングとして使用することもできる。キャリア材料は、形状的に安定であることができ、コーティングは、滑り促進性を有することができる。例えば、キャリア材料として、ビニルフィルムのようなビニルからなるまたは同等の材料からなるコーティングを有する、人工皮革を使用することができる。ビニルフィルムは、容易にかつ広い面積にわたってキャリア材料に適用することができ、高いレベルの接着安定性を有し、その結果、コーティングの迅速な摩耗することを防止することができる。
【0032】
外側保護層は、好ましくは、滑り抑制性特性または滑り促進性特性を改善するためのプロファイル構造を有する。プロファイル構造は、本明細書に記載されるように、異なる特性を有する材料の構造化された配置であると理解され、それらは、センサキャリアの一方向における滑り抑制性特性または他の方向における滑り促進性特性を改善するために、互いに対し、構造化された距離で配置され、互いに相互作用する。例えば、滑らかで毛皮状の構造であってもよい。
【0033】
これに代えて、またはこれに加えて、内側保護層は、少なくとも一方向に滑り抑制性を有するように形成される。これにより、内側保護層が滑ることが防止され、したがって、センサ層がセンサキャリア内で滑ることも防止される。滑り抑制性材料は、キャリア材料上のコーティングとして使用することができる。キャリア材料は形状的に安定であることができ、コーティングは滑り抑制性であることができる。例えば、上述したように、シリコーンでコーティングされた人工皮革製のキャリア材料を使用することができる。
【0034】
内側保護層は、好ましくは、少なくとも一方向に滑り抑制性であるように形成される。これは、内側保護層が人工装具上で滑ることを防止し、したがって、センサ層がセンサキャリア内で滑ることも防止する。
【0035】
特に、内側保護層は、少なくとも部分的に滑り抑制性材料から製造される。滑り抑制性材料は、人工装具を使用するときにセンサキャリアが滑るのを防止する。滑り抑制性材料は、接着様式で人工装具の材料と相互作用する。
【0036】
代替的にまたは追加的に、内側保護層は、少なくとも部分的に滑り促進性材料から作られる。滑り促進性材料は、人工装具上にセンサキャリアを引っ張ることをより容易にする。このような構造では、滑り促進性材料は、少なくとも一方向に摺動摩擦を伴って人工装具と相互作用する。
【0037】
特に、内側保護層は、少なくとも一方向に滑り促進性を有するように形成される。これは、人工装具上にセンサキャリアを引っ張ることを容易化し、センサキャリア上にしわが形成されることを防止する。滑り促進性材料は、キャリア材料上のコーティングとして使用することができる。キャリア材料は形状的に安定であることができ、コーティングは滑り促進性を有するように形成することができる。例えば、上述したように、ビニルでコーティングされた人工皮革をキャリア材料として用いることができる。
【0038】
内側保護層は、滑り抑制性または滑り促進性特性を改善するためのプロファイル構造を有することが好ましい。内側保護層のプロファイル構造は、一方向に摺動摩擦を伴って人工装具と相互作用し、他の方向に接着様式で人工装具と相互作用する。
【0039】
これに代えて、またはこれに加えて、内側保護層は、少なくとも一方向に滑り抑制性を有するように形成される。これにより、内側保護層が滑ることが防止され、したがって、センサ層がセンサキャリア内で滑ることも防止される。
【0040】
特に、ここで説明するように、プロファイル構造はエンボス加工されており、その結果、センサキャリアを衣料品上に配置することを困難にすることなく、センサ部における滑り抵抗の特性がさらに補強される。
【0041】
センサ層は、機械的応力によるセンサ層のしわ形成が防止されるように、外側保護層と内側保護層との間に埋め込まれることが好ましい。
【0042】
特に、センサ層は、交換可能なように、外側保護層と内側保護層との間に分離可能に埋め込まれている。これにより、センサをクリーニングプロセスに含めることなく、センサキャリアをクリーニングすることが可能になる。
【0043】
センサ層は、好ましくは、センサ部に、材料同士が結合されて配置されている。センサ層は例えば第1の面でセンサ部に接着されており、その結果、剪断力が発生しても外側保護層または内側保護層を介して中和されることができ、センサ層に伝達されない。
【0044】
好ましくは、センサに電気的に接続された制御装置が設けられる。制御装置は、センサによって生成された電気信号を受信し、それをさらに処理することができる。センサは、電気ラインを用いて制御装置に接続される。電気ラインは、別々のラインであってもよいし、編み構造の1つに組み込まれた導電性糸であってもよい。
【0045】
制御装置は、好ましくは、センサ層のセンサに、分離可能に接続される。この目的のために、制御装置は、電気ラインが着脱可能または分離可能に配置される接続部を有することができる。場合によっては、制御装置は、例えばセンサ層内のセンサの構造的配置に関して調整することができるような、異なる制御プログラムを有することができる。さらに、センサ層は、異なる制御装置で動作させることができる。本発明によるセンサキャリア内またはセンサキャリア上での本発明によるセンサ層の使用は異なる制御装置に対して可能であり、その結果、センサ層またはセンサキャリアを、モジュールとして、異なるモジュールタイプの制御装置と組み合わせることができる。
【0046】
制御装置は、好ましくは、人工装具部品に取り付け可能である。したがって、制御装置は、人工装具部品上または人工装具上に、センサキャリアとは別個に配置することができる。例えば、人工装具部品は人工装具シャフトであり、それによって制御装置の安定した固定を提供することができる。この構成および以下のものもまた、センサキャリアの他の特徴とは独立して発明であり使用可能である。
【0047】
制御装置は、好ましくは、人工装具部品に、着脱可能に取り付け可能である。このようにして、制御装置は安定した状態に保たれ、人工装具ユーザにとって制御装置の交換が容易化される。
【0048】
制御装置は、好ましくは、磁気ホルダによって人工装具部品に取り付け可能である。これにより、制御装置の着脱可能な取り付けがさらに改善される。
【0049】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、本発明の例示的な実施形態が図面を参照して説明される以下の説明から明らかになる。第1、第2、第3、またはそれ以上のリストは、構成要素を識別するためにのみ使用される。
【0050】
特許請求の範囲および図面の技術的内容と同様に、参照記号のリストは、本開示の一部である。図は、一貫性のある包括的な方法で説明される。同一の参照符号は同一の構成要素を示し、異なる符号を有する参照符号は、機能的に同一または類似の構成要素を示す。
【0051】
米国特許出願公開第2016/206242A1号明細書は、柔軟で伸縮可能な衣料品のセンサ装置を開示しており、センサは、衣料品の下に横たわる皮膚または組織の生理学的パラメータを検出するように配置されている。衣料品に配置されたセンサはまた、組織または下にある皮膚に対して及ぼされる力または圧力などのパラメータを検出することができる。センサ装置は、導電性織物材料からなり、衣料品に直接組み込まれる圧力センサおよびラインを有する。
【0052】
米国特許出願公開第2016/206242A1号明細書の主題は、本発明に匹敵するセンサキャリアの印象を与え、それが、上記の文献がここに記載されている理由である。しかしながら、この公知の文献と課題と課題に対する解決策との間に、当業者がこの文献の教示を使用する動機は全くない。これは、この文献の主題が人工装具とは何の関係もないからである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明によるセンサキャリアを示す斜視図である。
図2図1によるセンサキャリアのセンサ層を示す平面図である。
図3】断面図IIIに沿った、図1によるセンサキャリアのセンサ部における図2によるセンサ層を示す図である。
図4図1によるセンサキャリアにおけるセンサ部の内側保護層を示す平面図である。
図5図1によるセンサキャリアにおけるセンサ部の外側保護層を示す平面図である。
図6】制御装置を備えた図1によるセンサキャリアを示す側面図である。
図7】人工装具上に制御装置を有する図1によるセンサキャリアを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、人工装具上または人工装具部品上に配置するためのセンサキャリア10を示し、人工装具は、例えば、義足である。センサキャリア10は、一方(前方)のチューブ端部で閉じられて、その閉じられたチューブ端部と反対側の(後方)のチューブ端部に織物チューブ開口部22を有する、編まれた織物チューブ21からなる基体20を備える。基体20は、センサ15(象徴的にのみ示されている)を備えたセンサ部25と、基体20を人工装具部品上に確実に保持することを可能にする第1の編み構造32を備えた保持部30とを有する。センサ部25は、第1の編み構造32とは異なる編み構造27を有し、これにより、センサ15を人工装具部品に対して確実に位置決めすることができる。センサ部25には、センサ15が構造的または体系的に配置されたセンサ層28が配置されている。編み構造27は、抵抗性合成繊維からなり、その糸太さは、長期間にわたってセンサ15を保護するように設計されている。保持部の第1の編み構造32は、センサ部の編み構造27の糸太さとは異なる糸太さを有する。
【0055】
図2は、センサキャリア10のセンサ部25に配置されたセンサ層28を示す。この例示的な実施形態では、センサ層28は、足のソールの形状を有する。センサ15は、センサ層28上の異なる位置に配置されている。4つのセンサ15が示されており、1つのセンサ15aが踵の領域に配置され、2つのセンサ15bおよび15cがソールの母指球の領域に配置され、1つのセンサ15dが足のソールのつま先の領域に配置されている。センサ15は、編み構造27を用いてセンサ部に保持されている。編み構造27の糸太さは、約0.8mmである。センサ15は、圧力センサおよび/または力センサであり、圧力が加えられると、圧力に比例する電気信号を生成する。センサ15は電気ライン(図6参照)に接続されており、この電気ラインを用いて電気信号をセンサ層28から送出することができる。
【0056】
図3は、幾つかの層に形成されたセンサ部25を示す。センサ15が埋め込まれたセンサ層28は、一方の側に内側保護層26を有し、反対側に外側保護層29を有する。2つの保護層26または29は、中間のセンサ層28を保護し、その結果、センサ層28のしわ形成を防止することができる。センサ層28は、外側保護層29に少なくとも周辺で接着される。
【0057】
図4は、センサ部25の内側保護層26を示す。この内側保護層26は、使用時に義足に向いた側にあり、人工装具部品に接触する。内側保護層26は、部分的に、内側層26が第1の方向37に滑るのを防止する滑り抑制性材料36から作られる。足のソールの場合、この滑り抑制性材料36は、例えば、踵の領域に配置される。内側保護層26は、部分的に、内側保護層26が第2の方向39に滑るのを改善する滑り促進性材料38から作られる。第1の方向37は、理想的には、第2の方向39と反対の方向に延びることができる。足のソールの場合、この滑り促進性材料38は、例えば、足趾球の領域に配置される。滑り促進性材料38は、多部品プロファイル構造40として形成され、その部品は、互いに対し、機能的な、構造化された距離を有する。例えば、滑り抑制性材料および滑り促進性材料は、異なる方向に各特性を有する1つの同じ材料からなる。
【0058】
図5は、センサ部25の外側保護層29を示す。この外側保護層29は、使用時には人工装具とは逆の側を向いており、また、この外側保護層29は、使用時に人工装具が支持される下面に接触する。外側保護層29は、部分的に、外側保護層29が下面上で第1の方向43に滑るのを防止する滑り抑制性材料42から作られる。足のソールの場合、この滑り抑制性材料42は、例えば、足趾球の領域に配置される。外側保護層29は、外側保護層29が下面上で第2の方向45に滑るのを改善する滑り促進性材料44から部分的に作られる。第1の方向43は、理想的には、第2の方向45とは反対の方向に延びることができる。足のソールの場合、この滑り促進性材料44は、例えば、踵の領域に配置される。滑り抑制性材料42は、ここでは、多部品プロファイル構造46として形成され、その部品は、互いに対し、機能的な、構造化された距離を有する。
【0059】
例えば、滑り抑制性材料および滑り促進性材料は、異なる方向に各特性を有する1つの同じ材料からなる。
【0060】
図6は、センサキャリア10を示しており、これはここではさらに制御装置50に電気的に接続されている。基体20は、織物チューブ開口部22を有する織物チューブ21を含む。基体20は、その第1の編み構造32に加えて、異なるように形成された第2の編み構造33を有する保持部30を有している。第1の編み構造32の糸太さは、約0.3mmである。第2の編み構造33は、形状的に安定しており、使用時に織物チューブ21内に配置される義足の踵部分を含む。第2の編み構造33の糸太さは、約1mmである。さらに、保持部は、弾性を有するように形成されて約0.6mmの糸太さを有する第3の編み構造34を有する。編み構造33、33、34は、合成繊維糸で編まれている。センサ部25は、制御装置50に電気的に接続されたセンサ15を備えている。この目的のために、各センサ15は、電気信号を交換するために各センサ15を制御装置50に接続する電気ライン16に接続される。外圧が検出されると、電気信号が、各センサ15で生成され、このセンサ15から制御装置50に送られ、そこで処理される。電気ライン16は、最初にセンサ層26内を走行し、センサ層26を離れ、織物チューブ21に沿って織物チューブ開口部22の方向に走行する。織物チューブ21は、織物チューブ開口部22の領域に接続部23(インターフェース)を有する。接続部23には、電気ライン16が制御装置50に分離可能に接続されるインターフェース48が配置されている。制御装置50は、電気ラインを有する導電帯49(平坦な導体)上に配置されている。導電帯49の電気ラインは、センサ15からの電気信号が制御装置50と交換できるように、制御装置50をインターフェース48に接続する。導電帯49は、インターフェース48から分離することができ、それによって、制御装置50は、分離可能な方法でセンサ15に接続される。
【0061】
図7は、人工装具60の義足61上のセンサキャリア10を示す。義足61は、それ自体知られているように、接続要素62を用いて人工装具シャフト62に機械的に接続される。義足61は、センサキャリア10内に配置されると、織物チューブ21内に挿入され、保持部30の編み構造32、33、34によって力による結合で保持される。義足61のソールは、センサキャリア10のソール部25に当接している。したがって、動作状態では、義足61のソールは、センサキャリアのセンサ15に対して間接的に位置する。制御装置50は、磁石ホルダ55を用いて、人工装具60の接続要素63上に着脱可能に配置されている。
【0062】
磁石ホルダ55は、例えば、ユーザが意図せずに何かに突き当たった場合に、制御装置50を比較的容易に、かつ破壊することなく、接続要素63から取り外すことができるという効果を有する。
【0063】
制御装置50は、人工装具60の人工装具シャフト62上に配置されているかまたは配置され得る、刺激器65に電気的に接続される。これによって、センサ15からの電気信号が、制御装置50において処理されて各刺激器65を励起するために使用され得ることが保証される。
【符号の説明】
【0064】
10 センサキャリア、15 センサ、16 15用の電気ライン、20 基体、21 織物チューブ、22 織物チューブ開口部、23 接続部、25 センサ部、26 内側保護層、27 25の編み構造、28 センサ層、29 外側保護層、30 保持部、32 30の第1の編み構造、33 30の第2の編み構造、34 30の第3の編み構造、36 滑り抑制性材料、37 第1の方向、38 滑り促進性材料、39 第2の方向、40 26のプロファイル構造、42 滑り抑制性材料、43 第1の方向、44 滑り促進性材料、45 第2の方向、46 29のプロファイル構造、48 インターフェース、49 導電帯、50 制御装置、55 磁石ホルダ、60 人工装具、61 義足、62 人工装具シャフト、63 接続要素、65 刺激器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7