(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】質量流量、密度、温度または流速を測定する測定システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/84 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
G01F1/84
(21)【出願番号】P 2021533703
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 AT2019060435
(87)【国際公開番号】W WO2020118341
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500461457
【氏名又は名称】アーファウエル リスト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブーフナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロートレンダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ シュタインへーフラー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ティナウアー
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト ビショフ
(72)【発明者】
【氏名】ハイメ ディアス フェルナンデス
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520436(JP,A)
【文献】特表2015-529781(JP,A)
【文献】特開2001-082989(JP,A)
【文献】特開平08-240469(JP,A)
【文献】特開2007-057270(JP,A)
【文献】特開2010-174736(JP,A)
【文献】特開昭50-143569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167906(US,A1)
【文献】特開2001-124609(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00384383(GB,A)
【文献】特開平09-043014(JP,A)
【文献】実開平04-099469(JP,U)
【文献】特表平02-504671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量流量、密度、温度または流速を測定する測定システムであって、
主導管(10)と、
前記主導管(10)内に配置された第1のコリオリ測定器(12)と、
前記主導管(10)内で前記第1のコリオリ測定器(12)に対して直列に配置された第2のコリオリ測定器(14)と、
前記第2のコリオリ測定器(14)を迂回することができるバイパス導管(16)と、
前記バイパス導管(16)内に配置された弁(18)と、
前記第1のコリオリ測定器(12)と前記第2のコリオリ測定器(14)とに接続された計算ユニット(32)とを備えた測定システムにおいて、
前記第1のコリオリ測定器(12)は、前記第2のコリオリ測定器(14)よりも大きな最大流量用に設計されており、
前記弁(18)は、圧力に応じて開き、限界圧力に達すると開口横断面を開放し始める弁であり、前記開口横断面は、圧力が上昇するにつれて増大
し、
前記バイパス導管(16)内で圧力に応じて開く前記弁(18)の下流側に、別の弁(20)が配置されていることを特徴とする、
質量流量、密度、温度または流速を測定する測定システム。
【請求項2】
圧力に応じて開く前記弁(18)は、逆止弁(18.1)である、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項1記載の測定システム。
【請求項3】
前記逆止弁(18.1)は、球形または円錐形の閉鎖体(22)を有している、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項2記載の測定システム。
【請求項4】
圧力に応じて開く前記弁(18)は、機械的に変位可能な差圧調整器(18.2)である、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項1記載の測定システム。
【請求項5】
前記バイパス導管(16)または前記主導管(10)内に圧力センサ(50)が配置されており、該圧力センサ(50)は、直接にまたは前記計算ユニット(32)を介して、圧力に応じて開く前記弁(18)に接続されており、圧力に応じて開く前記弁(18)は、前記圧力センサ(50)の測定値に応じて変位可能である、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項1記載の測定システム。
【請求項6】
前記弁(18)は、前記圧力センサ(50)により測定される圧力に応じて電空変換器(52)を介して変位可能な圧力調整器(18.3)である、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項5記載の測定システム。
【請求項7】
圧力に応じて開く前記弁(18)は、アクチュエータとして電動モータまたは電磁石を有しておりかつ前記圧力センサ(50)の測定値に応じて変位可能である、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項5記載の測定システム。
【請求項8】
圧力に応じて開く前記弁(18)は、ニードル弁である、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項6または7記載の測定システム。
【請求項9】
圧力に応じて開く前記弁(18)は、前記コリオリ測定器(12)がその最高精度を有する、最大流量が多い方の前記コリオリ測定器(12)の測定範囲内と、最大流量が少ない方の前記コリオリ測定器(14)の最大流量の範囲内とにおいて変位可能であるように設計されている、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項1から
8までのいずれか1項記載の測定システム。
【請求項10】
それぞれ異なる最大流量を有する3つ以上のコリオリ測定器(12,14)が直列に接続されており、最大流量が最も多い前記コリオリ測定器(12)を除いた全ての前記コリオリ測定器(12,14)は、バイパス導管(16)を介して迂回可能であり、該バイパス導管(16)内にはそれぞれ、圧力に応じて開く弁(18)が配置されている、質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項1から
9までのいずれか1項記載の測定システム。
【請求項11】
請求項1から
10までのいずれか1項記載の測定システムを用いて質量流量、密度、温度または流速を測定する方法において、
前記バイパス導管(16)内で圧力に応じて開く前記弁(18)が閉じられている第1の測定範囲(38)では、最大流量がより少ない方の前記コリオリ測定器(14)の測定値が、質量流量、密度、温度または流速の出力値として使用され、
圧力に応じて開く前記弁(18)は引き続き閉じられておりかつ流量および圧力が前記第1の測定範囲(38)における流量および圧力よりも大きくなっている第2の測定範囲(40)では、最大流量がより多い方の前記コリオリ測定器(12)の測定値と、最大流量がより少ない方の前記コリオリ測定器(14)の測定値とが測定され、該第2のコリオリ測定器の差圧に応じて重み付けされ、前記計算ユニットにおいて、前記第1のコリオリ測定器(12)と前記第2のコリオリ測定器(14)の重み付けされた各測定値から、質量流量、密度、温度または流速の出力値が算出され、
圧力に応じて開く前記弁(18)が開放されておりかつ前記バイパス導管(16)内の圧力が前記第2の測定範囲(40)における圧力を上回っている第3の測定範囲(44)では、最大流量がより多い方の前記コリオリ測定器(12)の測定値が、質量流量、密度、温度または流速の出力値として使用される、
質量流量、密度、温度または流速を測定する方法。
【請求項12】
前記第2の測定範囲(40)と前記第3の測定範囲(44)との間に位置する第4の測定範囲(46)では、最大流量が多い方の前記コリオリ測定器(12)の測定値が使用されると共に、前記バイパス導管(16)内で圧力に応じて開く前記弁(18)は依然として閉じられている、請求項1から
10までのいずれか1項記載の測定システムを用いて質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項
11記載の方法。
【請求項13】
圧力に応じて開く前記弁(18)の開放圧力は、前記測定システムへの入力圧力または前記測定システムからの出力圧力に応じて調整される、請求項5から7までのいずれか1項記載の測定システムを用いて質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項
11または
12記載の方法。
【請求項14】
圧力に応じて開く前記弁(18)が開かれる前記開放圧力は、前記入力圧力または要求された前記出力圧力が上昇した場合に高められるまたは低下させられる、請求項5から7までのいずれか1項記載の測定システムを用いて質量流量、密度、温度または流速を測定する、請求項
13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量流量、密度、温度または流速を測定する測定システムであって、主導管と、主導管内に配置された第1のコリオリ測定器と、主導管内で第1のコリオリ測定器に対して直列に配置された第2のコリオリ測定器と、第2のコリオリ測定器を迂回することができるバイパス導管と、バイパス導管内に配置された弁と、第1のコリオリ測定器と第2のコリオリ測定器とに接続された計算ユニットとを備えた測定システム、ならびにこのような測定システムを用いて質量流量、密度、温度または流速を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような測定システムと、付随する測定方法とは、設備内に存在する流量、密度または速度に関する記述が必要とされる多数の設備で利用される。使用される測定器により、相応の導管内で液体とガスの両方の流量を測定することができる。流量測定の一例は、自動車においてガス状または液状で存在し得る燃料の消費量測定に、このようなユニットを使用することである。
【0003】
周知の消費量測定システムでは一般に、流れが単相の場合に高い精度を有しておりかつガス状の媒体の流速および流量の測定にも適したコリオリ測定器が用いられる。これらのコリオリ測定器は、正しい測定結果を示すためには所定の圧力を形成する必要がある測定器である。さらに、これらの測定器は常に、1つの特定の流量範囲内でしか、十分に正確な測定結果を達成しない。この理由から、複数の異なる大きさのコリオリ測定器が互いに組み合わせられる測定装置が知られている。
【0004】
これに関する一例は、欧州特許出願公開第2660570号明細書に記載された、ガスタービンにガス状の燃料を供給するシステムである。ここでは消費量測定のために、2つの流量計を並列に接続しかつ第3の流量計を直列に接続することが提案される。この場合、3つの流量計は全て、内部に切替え弁が配置されたバイパス導管を介して迂回できるようになっている。このために、2つの小さい方の流量計は、大きい方の流量計の上流側で並列に接続されており、この場合、小型装置の最大流量の和は、大型装置の最大流量に相当する。この場合、流量計のうちの1つが較正のために取り外されるとき以外、3つの流量計は常に全てが通流されるようになっている。2つの小型流量計の和の結果は、大型流量計の測定結果と比較される。結果として、極度に大きな差がある場合には、各測定値が重み付けされるか、または各測定値のうちの1つだけが使用される。
【0005】
ただし、このような、直列または並列に接続される異なる大きさの流量計を使用すると、必要とされる、それぞれ異なる圧力に関する十分な精度を、大きな流量測定範囲にわたって連続して提供することができない、という問題が生じる。さらに、周知の構成の場合には、切替え弁を切り替えるとサージ圧力が発生し、これによりシステム全体に影響が及び、測定誤差につながるだけでなく、場合により、接続された被測定装置も損傷することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、顧客による、出力圧力に対する要求がそれぞれ異なっていても、広範な測定範囲にわたり極めて正確に流量を求めることができる、質量流量、密度、温度または流速を測定する測定システムおよび測定方法を提供することにある。この場合、サージ圧力や、これに関連する消費量ピークおよび接続された被検体の損傷を回避し、これによりガス状の媒体においても液状の媒体においても、正確かつ連続的な、動的な測定を行うことができるようにするためには、システムの一時的な振動過程を回避することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する、質量流量、密度、温度または流速を測定する測定システム、ならびに、対応する、請求項12記載の特徴を有する測定方法によって解決される。
【0008】
第1のコリオリ測定器は、第2のコリオリ測定器よりも大きな最大流量用に設計されており、弁は、圧力に応じて開く弁であるということに基づき、対応する測定範囲において、より高い精度でもって測定する測定器の測定値をそれぞれ使用することが可能になる。圧力に応じて開く弁とは、限界圧力に達すると開口横断面を開放し始める弁を意味し、この場合、この開口横断面は、圧力が上昇するにつれて増大する。このようにして、切替え弁に比べて、測定される流量の不連続性をもたらすサージ圧力を回避することができるようになっている。これらのサージ圧力は、バイパス導管の通流横断面全体が急に開放されると発生する恐れがあり、これにより急な応力緩和が生じ、その結果、より小さな最大流量を有するコリオリ測定器において急な圧力降下が生じる恐れがある。このことはシステム全体に作用し、これにより正しい測定値を読み取ることができなくなる恐れがある。
【0009】
正しい測定は、上記のような測定システムを用いて、質量流量、密度、温度または流速を測定する方法によって達成され、この方法では、バイパス導管内で圧力に応じて開く弁が閉じられている第1の測定範囲では、最大流量がより少ない方のコリオリ測定器の測定値が、質量流量、密度、温度または流速の出力値として使用され、圧力に応じて開く弁は引き続き閉じられておりかつ流量および圧力が第1の測定範囲における流量および圧力よりも大きくなっている第2の測定範囲では、最大流量がより多い方のコリオリ測定器の測定値と、最大流量がより少ない方のコリオリ測定器の測定値とが測定され、第2のコリオリ測定器の差圧に応じて重み付けされ、計算ユニットにおいて、第1のコリオリ測定器と第2のコリオリ測定器の重み付けされた各測定値から、質量流量、密度、温度または流速の出力値が算出され、圧力に応じて開く弁が開放されておりかつバイパス導管内の圧力が第2の測定範囲における圧力を上回っている第3の測定範囲では、最大流量がより多い方のコリオリ測定器の測定値が、質量流量、密度、温度または流速の出力値として使用される。コリオリ測定器の場合、被検体における消費量に関する正しい測定値を得るためには、測定器にわたり十分な流速が存在しておりかつ急な圧力変動が回避されることが必要とされている。大型のコリオリ測定器は常に通流されるが、流速が低いと、比較的低い精度の測定値を供給する。小型のコリオリ測定器の測定値は、圧力に応じて開く弁が閉じられているときにのみ使用される。この第2のコリオリ測定器は、流量が少ない場合に高精度の測定値を供給する。最大流量がより多い方の第1のコリオリ測定器の測定値は、第3の測定範囲からは常に、被検体の測定しようとする実際の値に相応している。なぜなら、サージ圧力が回避されると共に、小さい方のコリオリ測定器に生じる圧力変動に基づき発生することがある、被検体における実際値と比較した測定値の改ざんが防がれるからである。最大流量が多い方のコリオリ測定器によってもやはり測定され、ひいては被検体の所望の値が改ざんされる恐れがある流量変動を惹起するであろう圧力変動が、防がれる。なぜなら、圧力に応じて開く弁の切替え後にはほぼ一定の流量が、最大流量が少ない方のコリオリ測定器を通流し、これにより、差圧は第2のコリオリ測定器にわたり不変であり続け、圧力変動が回避されるからである。内挿範囲では、両方のコリオリ測定器が良好な測定値を供給し、次いでこれらの測定値を重み付けして内挿することができるため、特性線全体にわたり、連続的な出力信号を発生させることができる。
【0010】
これに関する本発明による方法の1つの進歩的な実施形態では、第2の測定範囲と第3の測定範囲との間に位置する第4の測定範囲において、最大流量が多い方のコリオリ測定器の測定値が使用されると共に、圧力に応じて開く弁は依然として閉じられている。この第4の測定範囲の挿入により、依然として小さい方のコリオリ測定器の測定値が考慮される範囲に対する安全距離が生じ、これにより、開放圧力が僅かに変動しても、小さい方のコリオリ測定器の傍らを流れる媒体に基づいて測定値誤差が生じる恐れは一切ない。
【0011】
本発明による測定システムでは、圧力に応じて開く弁は、好適には逆止弁である。この逆止弁は、外部からの制御無しでバイパス通路内の圧力に応じて、所定の圧力において通流横断面を徐々に開閉し、これにより、測定システムに作用を及ぼすと考えられるサージ圧力が確実に回避される、という利点を有している。外部の電力供給部は不要である。さらに、逆止弁はコンパクトであると共に、概ねメンテナンスフリーである。
【0012】
これに関する1つの進歩的な実施形態では、逆止弁は、球形または円錐形の閉鎖体を有している。この閉鎖体は、比較的小さな呼び寸法でも渦形成の傾向がないという利点を有している。渦形成は、圧力および流量に脈動を生じさせる恐れがあり、このことは、コリオリ測定器の測定値にネガティブな影響を及ぼすと考えられる。
【0013】
本発明の1つの代替的な構成では、圧力に応じて開く弁は、機械的に変位可能な差圧調整器である。この差圧調整器もやはり、選択された設定に応じて印加された所定の差圧において、自由通流横断面を徐々に開放するため、この場合もサージ圧力を回避できると共に、正確な測定結果が得られる。このような圧力調整器は極めて小さなヒステリシスを有しており、逆止弁とは異なり、その切替え点に関して調整可能である。
【0014】
これに関する本発明の1つの進歩的な有利な構成では、バイパス導管または主導管内に圧力センサが配置されており、圧力センサは、直接にまたは計算ユニットを介して、圧力調整器に接続されており、圧力調整器は、圧力センサの測定値に応じて変位可能である。出力圧力に関する顧客の要求に応じて、圧力センサにより検出される所定の圧力に到達すると、相応して弁の開放を行うことができるようになっている。
【0015】
好適には、弁は、圧力センサにより測定される圧力に応じて電空変換器を介して変位させられる圧力調整器である。このような電空変換器は、コイルに印加される電流に応じて、弁の出力部に所定の圧力が形成される弁である。換言すると、I/P変換器を備えた圧力調整器である。このI/P変換器を備えた圧力調整器は、空圧式に操作される弁を開放するために利用され得、通流横断面の開放は、電空変換器に印加される電流に応じて行われる。この場合、電流を、測定された圧力に直接に関連して、圧力センサに対する接続部を介して印加することができる。測定される様々な圧力に対してそれぞれ異なる電圧を電空変換器に記憶させることができるため、切替え点を運転中に変更することも簡単に可能であり、これにより、切替え点を入力圧力と出力圧力とに関して最適化することができる。相応して、切替え点は、入力圧力が高い場合には高くすることができ、これにより、流量が多い場合でも、依然として小さい方のコリオリ測定器により測定することができる。反対に、入力圧力が低い場合には、切替え点をより低い圧力に向かってずらすことができ、これにより、確かに小さい方のコリオリ測定器の精度を大きな測定範囲にわたって利用することはできないが、引き続き、顧客により設定された出力圧力は保持することができる。
【0016】
代替的に、弁は、アクチュエータとして電動モータまたは電磁石を有していてよくかつ圧力センサの測定値に応じて変位可能であってよい。この場合は、電空変換器を使用した場合と実質的に同じ利点が得られるが、より多くの熱が発生し、これらの熱の、媒体への入力は回避されねばならない。このような弁の調整は確かに手間がかかるが、極めて正確である。
【0017】
相応して、この方法に関しては、測定システムへの入力圧力または測定システムからの出力圧力に応じて、弁の切替え点を変位させると有利であり、このことは既に上述したように、出力圧力の保持の可能性および小さい方のコリオリ測定器の測定範囲の拡大を可能にする。このことは、やはり既述したように、入力圧力または要求された出力圧力が上昇した場合に、弁を開く圧力を高めるまたは低下させることにより、行われる。特定の出力圧力を保持しようとする場合には、場合により、切替え点を低下させること、つまり比較的低い圧力において既に弁を開放し、これによりシステム内の圧力降下を減少させることが必要とされている。このことは原則として、各測定間または測定中に行うことができ、この場合、測定中に変位させると圧力レベルが変化する恐れがあり、これにより測定精度が低下する。
【0018】
好適には、弁は、僅かな渦形成のみが懸念され、よって開放時の飛躍的な差圧は全く懸念されないニードル弁である。
【0019】
さらに、バイパス導管内で圧力に応じて開く弁の下流側に、別の弁が配置されていると有利である。この弁は、圧力に応じて開く弁においてシール点検を実施することができるようにするために利用される。
【0020】
もちろん同様に、それぞれ異なる最大流量を有する3つ以上のコリオリ測定器が直列に接続されると好適であり、この場合、最大流量が最も多いコリオリ測定器を除いた全てのコリオリ測定器は、バイパス導管を介して迂回可能であり、バイパス導管内にはそれぞれ、圧力に応じて開く弁が配置されている。この場合、これらのコリオリ測定器の測定値は、流量の増大に伴って順次使用され、圧力に応じて開く各弁は、それぞれ異なる差圧において開くようになっていると考えられる。圧力が上昇するとその都度、次に多い最大流量のコリオリ測定器の測定値が、計算ユニットにより使用される。
【0021】
好適には、圧力に応じて開く弁は、コリオリ測定器がその最高精度を有する、最大流量が多い方のコリオリ測定器の測定範囲内と、最大流量が少ない方のコリオリ測定器の最大流量の範囲内とにおいて切り替わるように設計されている。この範囲では、小型センサの絞り作用が極度に大きくなるため、許容される差圧または最大流速を超過するか、またはシステム内で十分な出力圧力を保つことが最早できなくなり、そのため、被検体に実際に印加される値を測定することができるようにするためには、追加的な横断面を開放する必要がある。この設計に基づき、相応して、サージ圧力の発生を防ぐと共に、小さい方のコリオリ測定器の可能な限り大きな測定範囲を利用することができ、これにより、最高測定精度も高められる。
【0022】
これに相応して、広範な流量範囲にわたり生じる流量を、下部測定範囲内のガスであっても極めて正確に測定可能な測定システムおよび測定方法が提供される。このような測定システムは、出力圧力に関する顧客の要望に簡単に適合させられると共に、周知の測定器に比べて大幅に高い精度を達成する。
【0023】
測定システムの、本発明による3つの実施例を図示すると共に、本発明による方法と同じく、以下で図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による測定システムの第1の実施例を示す概略図である。
【
図2】本発明による方法に関して、流量にわたる圧力が例示的に記入されたグラフを示す図である。
【
図3】本発明による測定システムの第2の代替的な実施例を示す概略図である。
【
図4】本発明による測定システムの第3の代替的な実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す本発明による測定システムは、質量流量を測定しようとする、ガス状または液状の媒体、例えばガス状の燃料が通流する、第1の主導管10から成る。
【0026】
この主導管10内には第1のコリオリ測定器12が配置されており、第1のコリオリ測定器12は、測定システム内への、予想され得る最大流量を上回る最大流量を有している。このようなコリオリ測定器12は、流量が少ないと、コリオリ測定器では正確な測定のためにはある程度の最小流量が必要とされているために生じるゼロ点ドリフトに基づき、正確な測定値を供給しない。
【0027】
この第1のコリオリ測定器12の下流側には、第2のコリオリ測定器14が主導管10内に配置されており、第2のコリオリ測定器14の最大流量は、第1のコリオリ測定器12の最大流量よりも少なくなっているが、第2のコリオリ測定器14は、流量が比較的少なくても、その測定範囲に基づき、第1のコリオリ測定器12よりも正確な測定値を供給する。
【0028】
ただしこの第2の下流側のコリオリ測定器14は、その最大流量の上の、上部被測定範囲に位置すると考えられ、これにより生じる絞り作用に基づき極度に大きな圧力損失が生じる恐れがあり、この圧力損失は、被検体において測定されるべき流量を改ざんする恐れがあるため、または、被検体において測定されるべき流量を、もはや十分ではない最低出力圧力に基づき不可能にする恐れがあるため、第1のコリオリ測定器12と第2のコリオリ測定器14との間で、主導管10からバイパス導管16が分岐している。このバイパス導管16は、本実施例では第2のコリオリ測定器の下流側で再び主導管10内に開口している。
【0029】
バイパス導管16内には、圧力に応じて切り替わる弁18が配置されており、弁18は、
図1に示す実施例では逆止弁18.1として形成されている。
【0030】
任意には、逆止弁18.1の下流側にさらに、追加的な弁20をバイパス導管16内に配置することができるが、追加的な弁20は、逆止弁18.1のシールを検査するためだけに用いられる。
【0031】
逆止弁18.1は、本実施例では球体22から成り、球体22は、ばね24により弁座26に対して荷重を加えられている。ばね24のばね強度および球体22に印加される圧力差に応じて、逆止弁18.1はバイパス導管16の通流横断面を開閉する。球体22に、ばね力を上回る圧力差が印加されると、相応して通流横断面が開放され、媒体は、主通路10から分岐するバイパス導管16の分岐部28からバイパス通路16を通り、バイパス導管16の開口30を介して主通路10に流れ戻る。
【0032】
この場合、逆止弁18.1は、流量が飛躍しても閉鎖体の振動は一切生じないように寸法決めされている。逆止弁18.1に対して極度に高い流速が生じると、弁の下流側に渦が発生し、これにより、可能な限り排除されるべき圧力脈動が生じる恐れがある。この理由から、逆止弁18.1は過剰に寸法決めされ、その呼び寸法が増大している。
【0033】
2つのコリオリ測定器12,14は、1つの計算ユニット32に接続されており、計算ユニット32にコリオリ測定器12,14の測定値が伝送され、計算ユニット32においてこれらの測定値が処理され、これにより、利用可能な測定結果が生じる。
【0034】
次に、この測定システムによる測定時に計算ユニット32において測定結果を得る方法を
図2に基づき説明する。
【0035】
媒体が入口34を介して主導管内に流入すると、最初に第1のコリオリ測定器12を通流し、圧力が形成される。同様に、第2のコリオリ測定器14も通流し、第2のコリオリ測定器14内にもやはり圧力が形成される。小さい方の第2のコリオリ測定器14は、既に比較的少ない流量においてその測定範囲に達し、この測定範囲において第2のコリオリ測定器14は、正確な測定値を供給する。正確な測定値は、
図2の左側のグラフ36に示されている。この時点では、より大きな最大流量を有するコリオリ測定器12において正確な測定値を得るための十分な通流は、まだ行われていない。相応して、この第1の測定範囲38では計算ユニット32により、第2のコリオリ測定器14の測定値が出力値として出力される。
【0036】
測定システム内の流量が増加すると、第1のコリオリ測定器12の精度が高まり、第2のコリオリ測定器14を介して圧力降下が高まる。相応して、第1のコリオリ測定器12の測定値と第2のコリオリ測定器14の測定値の両方が、第2のコリオリ測定器14の差圧に応じて重み付けされかつ内挿されることで計算ユニット32により考慮され処理される、第2の測定範囲40が選択される。第2のコリオリ測定器14は、周知の内径を備えた管部材と見なすことができ、これにより、第1のコリオリ測定器12による質量流量および密度の測定に基づき、第2のコリオリ測定器14の目下の差圧を常に計算することができ、次いで相応する重み付けを行うことができる。
【0037】
第1の測定範囲38と第2の測定範囲40の両方において、逆止弁18.1はバイパス導管16を閉鎖する。
【0038】
第1のコリオリ測定器12により正確な測定値が出力される程度に流量が多くなる引き続く範囲では、
図2の右側のグラフ42に示すこれらの測定値も、計算ユニット32により出力値として用いられる。
【0039】
この範囲は、2つの部分、つまり圧力に応じて開く弁18が印加された圧力に基づき開く第3の測定範囲44と、第2の測定範囲40と第3の測定範囲44との間に位置し、第1のコリオリ測定器12の測定値が出力値として利用されるが、圧力に応じて開く弁18は依然として閉じられている第4の測定範囲46とに分かれる。
【0040】
つまり、圧力に応じて開く弁18の切替え点48が、第2の小さい方のコリオリ測定器14の測定値が用いられる範囲に対して離間されており、これにより、圧力に応じて開く弁18の開放圧の変動による出力値の改ざんを排除できるようになっている。このようにして、例えば圧力に応じて開く弁18の既存のヒステリシスまたは劣化に起因する変位に基づく早期開放による第2のコリオリ測定器14の誤った測定結果に基づく誤った出力値が、確実に排除されることになる。
【0041】
逆止弁18.1の切替えによる、測定システムの出力値への作用は、逆止弁18.1が圧力の上昇によりさらに開き、これにより、追加的な通流横断面を徐々に開放する一方で、第2のコリオリ測定器14では抵抗が高まることにより、概ね排除されている。このようにして、圧力の飛躍が確実に防止される。
【0042】
図3には、本発明による測定システムの1つの代替的な実施形態が示されている。この測定システムは、逆止弁に代えて、機械的に変位可能な差圧調整器18.2が用いられるという点で、
図1に示した測定システムと異なっている。この差圧調整器18.2は、逆止弁18.1と実質的に同じ特性を有しているが、切替え点48が容易にかつ正確に調整可能でありかつ圧力調整器は極小さなヒステリシスを有している、という追加的な利点を有している。相応して、バイパス導管16内または主導管10からバイパス導管16への分岐部28には圧力センサ50が配置され得、この圧力センサ50は、相応する導管10,16内で圧力を測定すると共に、差圧調整器18.2の開放を、所望の切替え点に調整するために用いられる。運転中、この差圧調整器18.2の機能は、ヒステリシスが大幅に減少していること以外は、実質的に逆止弁の機能に相当する。
【0043】
1つの進歩的な構成が
図4に示されている。弁18として、圧力調整器18.3が使用され、圧力調整器18.3は、ここでは電空変換器52を介して作動し、電空変換器52には圧縮空気源54を介して、圧力調整器18.3を作動させるための圧縮空気が供給され、この圧縮空気は、印加される電流の強さに直接に関連して全体がまたは量を減らされて、圧力調整器18.3の作動室に供給される。電空変換器52も圧力センサ50と同様に、計算ユニット32に接続されている。
【0044】
このような構成は、圧力調整器18.3の切替え点を運転中に移動させることができ、ひいてはその時々の入力圧力または出力圧力に最適に適合させることができるという利点を有している。
【0045】
出力圧力は一般に、測定システムのユーザにより設定可能な値である。極めて高い実際の入力圧力が存在している場合には、圧力調整器18.3の切替え点を、より高い圧力の方にずらすことができ、これにより、小さい方のコリオリ測定器14を、より広範な圧力範囲にわたって利用することができるようになる。なぜなら、小さい方のコリオリ測定器14は、その測定範囲内で最大流量または最大流速に達するまで、より正確な測定値を供給するからである。相応して、小さい方のコリオリ測定器14の測定値が用いられる第1の測定範囲38がより広くなる一方で、その他の測定範囲40,44,46は右側にずらされる。
【0046】
極めて低い入力圧力が印加された場合には、反対に切替え点を左側にずらして第1の測定範囲を縮小することができる。このことは、設定した出力圧力を保つために必要な場合がある。
【0047】
切替え点48および測定範囲38,40,44,46をこのようにずらすために、計算ユニット32において、それぞれ異なって印加され、圧力センサ50を介して測定される各圧力に相応する特性線を設定することができ、これにより、それぞれ最適化された出力値が測定システムによって保たれる。
【0048】
説明した測定システムならびにこのような測定システムを用いた、説明した測定方法は、広範な圧力範囲および流量範囲にわたり連続的に提供される極めて正確な測定値を供給する。圧力変化時にシステムを一時的に振動させることは不要である。特にこの測定システムは、ガスの流量測定にも適しており、極めて少ない流量でも高い測定精度を達成する。
【0049】
もちろん、様々な代替案も考えられる。例えば、3つ以上の異なるコリオリ測定器を、最大流量が減少していくように直列に接続することもでき、この場合、最大のコリオリ測定器以外に、それぞれバイパスが設けられる。この場合、最下位の測定範囲では、最大流量が最も少ないコリオリ測定器の測定値が用いられる。この場合、バイパス導管内の各弁の開放前は、出力値の測定用に、より大きな各コリオリ測定器の測定値がそれぞれ用いられ、この場合は各1つの内挿範囲が介在している。この場合、弁の開放点は、弁に生じる差圧に相応して変化し、差圧は並列接続された各コリオリ測定器における圧力損失に基づき生じる。また、電空変換器に代えて、圧力センサおよび圧力調整器と共に、電動モータまたは電磁石により駆動されかつ圧力センサの値に応じて調整される弁が使用されてもよく、この弁によっても同じ利点を得ることができる。同様に、独立請求項の保護範囲内で、当業者には別の変更も生じる。