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特許7510936再生触媒を用いる硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】再生触媒を用いる硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/08 20060101AFI20240627BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20240627BHJP
   B01J 38/04 20060101ALI20240627BHJP
   B01J 27/051 20060101ALI20240627BHJP
   B01J 27/28 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
C10G45/08 B
B01J38/12 C
B01J38/04 A
B01J27/051 M
B01J27/28 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021534668
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2019084438
(87)【国際公開番号】W WO2020126677
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】1873238
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】デヴァース エロディ
(72)【発明者】
【氏名】ルフレーヴ フィリベール
(72)【発明者】
【氏名】ジラール エチエンヌ
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/167522(WO,A1)
【文献】特表2009-523597(JP,A)
【文献】特開平11-092772(JP,A)
【文献】特開2004-230383(JP,A)
【文献】特表2005-518937(JP,A)
【文献】特開昭55-073785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法であって、前記ガソリン留分、水素および再生触媒を接触させ、該再生触媒は、再生段階の後に有機化合物の添加を経なかったものであり、温度200℃~400℃、全圧1~3MPa、触媒の体積に相対する供給原料の体積による流量であるとして定義される毎時空間速度1~10h-1および水素/ガソリン供給原料の体積による比100~1200SL/Lで前記方法を行い、前記再生触媒は、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法に由来する少なくとも部分的に消耗した触媒に由来し、該方法において、ガソリン留分、水素およびフレッシュ触媒を接触させ、前記方法を行う際の温度は、200℃~400℃であり、全圧は、1~3MPaであり、毎時空間速度は、触媒の体積に相対する供給原料の体積による流量であるとして定義されて、1~10h -1 であり、水素/ガソリン供給原料の体積による比は、100~1200SL/Lであり、前記少なくとも部分的に消耗した触媒は、酸素含有ガス流中で行われ、360℃~500℃の温度で行われる再生段階に由来し、前記再生触媒は、再生段階の後に有機化合物の追加を受けず、前記再生触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の金属、第VIb族からの少なくとも1種の金属および酸化物担体を含み、前記再生触媒は、第VIb族からの金属を、再生触媒の全重量に対して、第VIb族からの前記金属の酸化物の重量で1重量%~20重量%の含有率で、第VIII族からの金属を、再生触媒の全重量に対して、第VIII族からの前記金属の酸化物の重量で0.1重量%~10重量%の含有率で有し、再生触媒は、残留炭素を、再生触媒の全重量に対して、0.1重量%~1.9重量%の含有率で含有し、硫黄を、再生触媒の全重量に対して、0.1重量%~4.9重量%の含有率で含有する、方法。
【請求項2】
再生触媒は、リンをさらに含有し、リンの含有率は、再生触媒の全重量に対するPとして表されて、0.3重量%~10重量%であり、再生触媒中のリン/(第VIb族からの金属)のモル比は、0.1~0.7である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再生触媒において、第VIb族からの金属は、タングステンおよびモリブデンから選ばれ、第VIII族からの金属は、ニッケルおよびコバルトから選ばれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
再生触媒は、比表面20~200m/g、好ましくは30~180m/gによって特徴付けられる、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
再生触媒の酸化物担体は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナあるいは単独でまたはアルミナまたはシリカ-アルミナとの混合物として用いられるチタンまたはマグネシウムの酸化物から選ばれる、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
水素化脱硫方法の前またはその間に再生触媒を硫化段階に付す、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
ガソリン留分は、接触分解ユニットに由来するガソリンである、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
再生段階の前に、脱油段階を行い、該脱油段階は、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法に由来する少なくとも部分的に消耗した触媒を不活性ガス流と300℃~400℃の温度で接触させることを含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
再生触媒は、再生段階の後に第VIb族および/または第VIII族からの金属、リンの追加を受けない、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
複数個の触媒床を含んでいる固定床タイプの反応器の触媒床において行い;供給原料の流通の方向で再生触媒を含有している触媒床の上流または下流の少なくとも1個の他の触媒床は、少なくとも一部、フレッシュ触媒および/または復活触媒を含有する、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
固定床タイプまたは沸騰床タイプの直列の少なくとも2基の反応器において行い;反応器のうちの少なくとも1基は、再生触媒を含有している一方で、別の反応器は、フレッシュ触媒または復活触媒、または再生触媒とフレッシュ触媒および/または復活触媒との混合物をあらゆる順序で含有し、第1の反応器に由来する流出物からのHSの少なくとも一部の除去を伴うかまたは伴わず、その後に、第2の反応器において前記流出物を処理する、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生触媒を採用するガソリン留分の水素化脱硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄は原油中に天然に存在する元素であり、それ故に精製処理の間にそれが除去されないならばガソリンおよびディーゼル燃料中に存在する。しかしながら、ガソリン中の硫黄は排出低減システム(触媒コンバータ)の効率に支障をきたし、大気汚染に寄与する。環境汚染と戦うために、厳密な硫黄の規制を全ての国が結果として徐々に取り入れているところであり、その規制は、例えば、欧州、中国、米国および日本において商業ガソリン中硫黄10ppm(重量)である。硫黄含有率を低減させるという課題は、本質的に、接触分解(FCC:Fluid Catalytic Cracking(流動接触分解))であるかまたは非接触分解(コーキング、ビスブレーキング、水蒸気分解)であるかはどうであれ、ガソリンプール中の主要な硫黄の前駆体を分解することによって得られるガソリンに焦点を当てられる。
【0003】
当業者に周知である、硫黄の含有率を低減させるための一つの解決方法は、炭化水素留分(特に接触分解ガソリン)の水素化処理(または水素化脱硫)を、水素および不均一触媒の存在中で行うことからなる。しかしながら、この方法は、採用された触媒が十分に選択的ではないならばオクタン価に非常に相当な降下を引き起こすという主要な不利益を呈する。オクタン価におけるこの低減は、水素化脱硫に付随するこのタイプのガソリン中に存在するオレフィンの水素化に特に結び付けられる。
【0004】
他の水素化処理方法、特にガスオイルタイプの供給原料のためのものとは同様ではなく、ガソリンの水素化脱硫は、それ故に、以下の二重の相反する制約に応じることを可能にする必要がある:ガソリンの極度の水素化脱硫を提供することおよび存在する不飽和化合物の水素化を制限すること。
【0005】
上記の二重の課題に応じるために最も広範に用いられているルートは、単位段階の配列が水素化脱硫を最大にしながらオレフィンの水素化を制限することを同時に可能にする方法を採用することからなる。それ故に、最新の方法、例えば、Prime G+(登録商標)法は、オレフィンに豊富な分解済みガソリンを脱硫する一方で、モノオレフィンの水素化およびその結果としてのオクタンの喪失およびそこから由来する高い水素消費を制限することを可能にする。このような方法は、例えば、特許出願(特許文献1および2)に記載されている。
【0006】
所望の反応選択性(水素化脱硫対オレフィンの水素化の比)を得ることは、それ故に、方法の選択に部分的に起因し得るが、全ての場合において、本質的に選択的な触媒系の使用は、非常に頻繁にキーファクターである。一般に、このタイプの適用のために用いられる触媒は、第VIb族からの元素(Cr、Mo、W)および第VIII族からの元素(Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Pd、Ni、Pt)を含有しているスルフィドタイプの触媒である。それ故に、特許(特許文献3)において、特許請求されているのは、MoOの表面濃度0.5×10-4~3×10-4g/mを呈している触媒により、水素化脱硫において高い選択性を達成することが可能となることである(オレフィンの水素化(HOO)33%に対して水素化脱硫(HDS)93%)。さらに、特許(特許文献4および5)によると、ドーパント(アルカリ金属、アルカリ土類金属)を従来のスルフィド相(CoMoS)にオレフィンの水素化を制限するという目的をもって加えることが有利であり得る。文献(特許文献6および7)は、選択的水素化脱硫触媒を記載しており、これらの文献も現状技術において知られている。
【0007】
石油留分の水素化処理のためのそれの使用の間に、水素化処理触媒は、コークおよび/または硫黄ベースであるかまたは他のヘテロ元素を含有している化合物の沈着に起因してそれの活性における低減を経験する。所定の期間を超えて、それの置き換えがそれ故に必要である。特に、燃料の硫黄規制の引き締め強化は、触媒の置き換えの頻度における増大を誘導し、これは、触媒に関連するコストにおける増大および使用済み触媒の量における増大につながる。
【0008】
これらの不利益と戦うために、中間留分(ガスオイル)または使用済み残渣の水素化脱硫のための触媒の再生(温和な焼成)が経済的かつ生態学的に有利な方法であるのは、それが、それらをゴミ処理場に埋め立てるかまたはそれらをリサイクルさせる(金属の回収)よりむしろ工業的なユニットにおいてこれらの触媒を再度用いることを可能にするからである。しかしながら、再生触媒は、一般的に、開始固体より低い活性である。それ故に、特許出願(特許文献8)には、再生の後に、蒸留液の水素化処理のための典型的な市販の触媒は、対応するフレッシュ触媒の活性の約75%~約90%の活性を有することができることが指し示されている。
【0009】
この課題を解決するために、これらの再生触媒は、一般的に、中間留分の範囲において種々の有機剤を添加される(「復活(rejuvenation)」段階)。多くの特許、例えば、特許文献9~13には、それ故に、中間留分の水素化処理のための触媒の復活を行うための異なる方法が提供されている。中間留分の水素化脱硫のための触媒は、ガソリンの選択的水素化脱硫のための触媒との比較において金属を高い含有率で有し、このものは、使用の間および再生の間に相当な焼結を経験する。それ故に、復活処理は、フレッシュ触媒に近い分散およびしたがってフレッシュ触媒に近い活性を取り戻すために金属相の分解および再分布の上に焦点が当てられる。
【0010】
ガソリンの選択的水素化脱硫のための触媒は、ガスオイルの水素化処理のための触媒とは異なる再生流出物を、水素化脱硫およびオレフィンの水素化のための反応に対して触媒の選択的な性質を維持する必要性に特に起因して呈する。これは、選択性における向上が一般的にガソリンの範囲における活性の向上または維持より望ましいためである。ガソリンの選択的水素化脱硫に関して、従来の再生が想定され得る一方で、当業者は、中間留分の水素化処理のための触媒のために何が立証されたのかを考慮して、触媒がフレッシュ触媒の活性より有意に低い活性を、再生の間に触媒上に担持された活性相における構造変化に起因して潜在的に低減した選択性を伴って呈することを予測する。
【0011】
それ故に、水素化脱硫、特に、ガソリン留分の水素化脱硫の方法であって、良好な触媒性能品質を、特に、水素化脱硫における触媒活性および選択性に関して呈し、使用済み水素化処理触媒に由来する触媒の利用を可能にする方法に精製業者の中に強い興味が今日依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第1077247号明細書(特開2001-55584号公報)
【文献】欧州特許出願公開第1174485号明細書(特開2002-47497号公報)
【文献】米国特許第5985136号明細書
【文献】米国特許第4140626号明細書
【文献】米国特許第4774220号明細書
【文献】米国特許第8637423号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1892039号明細書(特開2012-176403号公報)
【文献】米国特許出願公開第2011/0079542号明細書
【文献】米国特許第7906447号明細書
【文献】米国特許第8722558号明細書
【文献】米国特許第7956000号明細書
【文献】米国特許第7820579号明細書
【文献】中国特許出願公開第102463127号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の主題)
それ故に、本発明は、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫のための方法であって、前記ガソリン留分、水素および再生触媒を接触させ、温度200℃~400℃、全圧1~3MPa、触媒の体積に相対する供給原料の体積による流量であるとして定義される毎時空間速度1~10h-1、および水素/ガソリン供給原料の体積比100~1200SL/Lで前記方法を行い、前記再生触媒は、少なくとも部分的に消耗した触媒に由来し、この触媒は、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫のための方法に由来し、前記再生触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の金属と、第VIb族からの少なくとも1種の金属と、酸化物担体とを含んでいる、方法に関する。
【0014】
この理由は、ガソリンの選択的水素化脱硫のための方法において再生触媒を使用することにより、同一のフレッシュ触媒の使用と比較して活性において非常に小さい喪失のみがもたらされ、驚くべきことに、選択性における改善が引き起こされることが観察されたことにある。あらゆる理論にゆだねられることなく、触媒の再生によって引き起こされる活性相に関する変化および活性サイトの水素化脱硫反応の方へのより良好な選択性を引き起こすことにより、これらのサイトの数の低減を補填することが可能となり、それ故に、触媒の活性が維持されているように思われる。
【0015】
1種の代替の形態によると、再生触媒は、第VIb族からの金属を、再生触媒の全重量に対する、第VIb族からの前記金属の酸化物の重量で1%~20%の含有率で、第VIII族からの金属を、再生触媒の全重量に対する、第VIII族からの前記金属の酸化物の重量で0.1%~10%の含有率で有する。
【0016】
1種の代替の形態によると、再生触媒はリンをさらに含有し、リンの含有率は、再生触媒の全重量に対して、Pとして表されて0.3重量%~10重量%であり、再生触媒中のリン/(第VIb族からの金属)のモル比は0.1~0.7である。
【0017】
1種の代替の形態によると、再生触媒において第VIb族からの金属はタングステンおよびモリブデンから選ばれ、第VIII族からの金属はニッケルおよびコバルトから選ばれる。
【0018】
1種の代替の形態によると、再生触媒は、比表面20~200m/g、好ましくは30~180m/gによって特徴付けられる。
【0019】
1種の代替の形態によると、再生触媒の酸化物担体は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナからあるいは単独でまたはアルミナまたはシリカ-アルミナとの混合物として用いられるチタンまたはマグネシウムの酸化物から選ばれる。
【0020】
1種の代替の形態によると、再生触媒は、残留炭素を含有し、その含有率は、再生触媒の全重量に対して2重量%未満である。
【0021】
1種の代替の形態によると、再生触媒は硫黄を含有し、その含有率は、再生触媒の全重量に対して5重量%未満である。
【0022】
1種の代替の形態によると、再生触媒は、水素化脱硫方法の前またはその最中に硫化段階に付される。
【0023】
1種の代替の形態によると、ガソリン留分は、接触分解ユニットに由来するガソリンである。
【0024】
1種の代替の形態によると、再生触媒は、酸素含有ガス流中で行われ、350℃~550℃の温度で行われる再生段階に由来する。
【0025】
1種の代替の形態によると、再生段階の前に脱油の段階を行い、この脱油の段階は、少なくとも部分的に消耗した触媒であって、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法に由来するものを不活性ガス流と300℃~400℃の温度で接触させることを含む。
【0026】
1種の代替の形態によると、再生触媒は、再生段階の後に第VIb族および/または第VIII族からの金属、リンおよび/または有機化合物の添加を経ない。
【0027】
1種の代替の形態によると、本方法は、複数個の触媒床を含有している固定床タイプの反応器の触媒床中で行われる;供給原料の流通の方向において再生触媒を含有している触媒床の上流または下流の少なくとも1つの他の触媒床は、少なくとも一部において、フレッシュ触媒および/または復活触媒(rejuvenated catalyst)を含有している。
【0028】
別の代替の形態によると、本方法は、固定床タイプまたは沸騰床タイプの直列の少なくとも2基の反応器において行われる;反応器のうちの少なくとも1基は、再生触媒を含有する一方で、別の反応器は、フレッシュ触媒または復活触媒、または再生触媒とフレッシュ触媒および/または復活触媒との混合物を、あらゆる順序で含有し、第1の反応器に由来する流出物からHSの少なくとも一部を除去するかまたは除去せずに、その後に、第2の反応器において前記流出物を処理する。
【0029】
以降、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10族からの金属に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(本発明の説明)
それ故に、本発明は、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫のための方法であって、前記ガソリン留分、水素および再生触媒を接触させ、温度200℃~400℃、全圧1~3MPa、触媒の体積に相対する供給原料の体積による流量であるとして定義される毎時空間速度1~10h-1;および水素/ガソリン供給原料の体積比100~1200SL/Lで前記方法を行い、前記再生触媒は、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫のための方法に由来する少なくとも部分的に消耗した触媒に由来し、前記再生触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の金属、第VIb族からの少なくとも1種の金属および酸化物担体を含む、方法に関する。
【0031】
本発明による水素化脱硫方法により、ガソリン留分の有機硫黄化合物を硫化水素(HS)に変換する一方で、前記留分中に存在するオレフィンの水素化を可及的に制限することが可能となる。
【0032】
(処理されるべき供給原料)
本発明による方法により、あらゆるタイプの硫黄含有オレフィン性ガソリン留分、例えばコーキング、ビスブレーキング、水蒸気分解または接触分解(FCC:Fluid Catalytic Cracking(流動接触分解))のユニットに由来する留分を処理することが可能となる。このガソリンは、場合によっては、他の製造方法、例えば、常圧蒸留を起源とするガソリン(直接蒸留に由来するガソリン(または直留ガソリン))、または転化方法を起源とするガソリン(コーキングまたは水蒸気分解ガソリン)の有意なフラクションからなることができる。前記供給原料は、好ましくは、接触分解ユニットに由来するガソリン留分からなる。
【0033】
供給原料は、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分であり、その沸点の範囲は典型的には2または3個の炭素原子を有する炭化水素(C2またはC3)の沸点から260℃にまで、好ましくは2または3個の炭素原子を有する炭化水素(C2またはC3)の沸点から220℃にまで、より好ましくは5個の炭素原子を有する炭化水素の沸点から220℃にまで広がる。本発明による方法は、上記に言及の終点より低い終点を有する供給原料、例えばC5-180℃留分も処理することができる。
【0034】
接触分解(FCC)によって生じたガソリン留分の硫黄の含有率は、FCCによって処理される供給原料の硫黄の含有率、FCCの供給原料の予備処理の存在または非存在、並びに留分の終点に依存する。一般的には、ガソリン留分全体、特にはFCCを起源とするものの硫黄の含有率は、100重量ppm超、ほとんどの場合500重量ppm超である。200℃超の終点を有しているガソリンについて、硫黄の含有率は、しばしば1000重量ppm超である;それらは、所定の場合に、4000~5000重量ppm程度の値に達することさえできる。
【0035】
加えて、接触分解(FCC)ユニットに由来するガソリンは、平均で、0.5重量%~5重量%のジオレフィン、20重量%~50重量%のオレフィンおよび10重量ppm~0.5重量%の硫黄(一般的にはその300ppm未満はチオールである)を含有している。チオールは、一般的に、ガソリンの軽質フラクション中に、より具体的にはその沸点が120℃未満であるフラクション中に濃縮される。
【0036】
ガソリン中に存在する硫黄化合物は、ヘテロ環硫黄化合物、例えばチオフェン、アルキルチオフェンまたはベンゾチオフェンも含むことができることが留意されるべきである。これらのヘテロ環化合物は、チオールとは異なり、抽出方法によって除去され得ない。これらの硫黄化合物は、結果として、水素化処理によって除去され、この水素化処理は、それらの炭化水素およびHSへの変換をもたらす。
【0037】
好ましくは、本発明による方法によって処理されるガソリンは、分解方法に由来するガソリンの広範な留分(Full Range Cracked Naphthaに対するFRCN)を軽質ガソリン(Light Cracked Naphthaに対するLCN)および重質ガソリン(またはHeavy Cracked Naphthaに対するHCN)に分離することを目的とされる蒸留段階に由来する重質ガソリン(HCN)である。軽質ガソリンおよび重質ガソリンのカットポイントは、軽質ガソリンの硫黄の含有率を制限しかつガソリンプールにおいて、好ましくはさらなる後処理なくそれを使用することを可能にするように決定される。有利には、広範な留分FRCNは、蒸留段階の前に下記の記載される選択的な水素化段階に付される。
【0038】
(再生触媒)
本発明による方法において用いられる再生触媒は、少なくとも部分的に消耗した触媒(それ自体は、フレッシュ触媒に由来する)に由来し、それは、下記に記載されるような条件下に、所定の時間期間にわたって硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫のための方法において用いられたものであり、フレッシュ触媒より有意に低い活性を呈し、これは、それの交換を必要とする。
【0039】
フレッシュ触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の金属、第VIb族からの少なくとも1種の金属、酸化物担体および場合によるリンを含む。フレッシュ触媒は、硫化の前に酸素および/または窒素および/または硫黄を含有している少なくとも1種の有機化合物もさらに含むことができる。
【0040】
別の代替の形態によると、フレッシュ触媒は、リンを含まない。
【0041】
フレッシュ触媒の調製は知られており、一般的には、第VIII族からの金属および第VIb族からの金属および場合によるリンおよび/または有機化合物の酸化物担体上の含浸の段階、その後の、乾燥操作の段階、次いで、場合による焼成の段階を含む。焼成の段階により、活性相をそれらの酸化物の形態で得ることが可能となる。硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫のための方法におけるそれの使用の前に、フレッシュ触媒は、一般的には、下記の活性実在物を形成するように硫化に付される。
【0042】
本発明の代替の形態によると、フレッシュ触媒は、それの調製の間に焼成を経ない。すなわち、含浸済みの触媒前駆体は、不活性雰囲気下にまたは酸素含有雰囲気下に、水の存在中または非存在中で200℃超の温度での熱処理の段階に付されない。
【0043】
本発明の別の代替の形態によると、好ましくは、フレッシュ触媒は、それの調製の間に焼成段階を経る。すなわち、含浸済みの触媒前駆体は、200℃~1000℃、好ましくは350℃~750℃の温度での、典型的には15分~10時間の時間の期間にわたる、酸素含有雰囲気下の、水の存在中または非存在中の熱処理の段階に付される。これは、調製の間に焼成段階を経たフレッシュ触媒に由来する再生触媒は、調製の間に焼成段階を経なかったフレッシュ触媒に由来する再生触媒より少ない明白な活性の降下を示すことが注意されたためである。
【0044】
硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法の間に、コークおよび硫黄、さらには供給原料に由来する他の汚染物質、例えばケイ素、ヒ素および塩素が触媒上に形成されかつ/または沈着させられ、フレッシュ触媒を少なくとも部分的に消耗した触媒に転化させる。
【0045】
少なくとも部分的に消耗した触媒は、下記に記載される条件下に行われかつ200℃超の温度にある空気または酸素を含有しているガス下の熱処理を経ていない硫黄含有オレフィン性ガソリン留分の水素化脱硫方法から出る触媒を意味するとして理解される。それは、脱油を経たものであってよい。
【0046】
本特許出願における用語「コーク(coke)」または「炭素(carbon)」は、触媒の使用の間にそれの表面上に沈着させられた炭化水素をベースとする物質を示し、この物質は、高度に環化させられかつ縮合させられていることおよびグラファイトに類似の外観を有していることが留意されるべきである。
【0047】
少なくとも部分的に消耗した触媒は、特に、炭素を、少なくとも部分的に消耗した触媒の全重量に対して一般的には2重量%以下、好ましくは2重量%~10重量%、一層より好ましくは2.2重量%~6重量%の含有率で含有している。
【0048】
本発明による方法において採用される再生触媒を生じさせるために用いられる少なくとも部分的に消耗した触媒の再生方法は、コークおよび硫黄の除去の段階(再生段階)を含み、一般的には、脱油段階によって先立たれる。
【0049】
たとえこれが可能であるとしても、再生は、好ましくは、積み込まれた触媒を水素化脱硫反応器中に維持すること(現場内(in situ)再生)によっては行われない。好ましくは、少なくとも部分的に消耗した触媒は、それ故に、反応器から抽出され、再生プラントに送られて、前記プラントにおいて再生が行われる(現場外(ex situ)再生)。
【0050】
脱油段階は、一般的に、少なくとも部分的に消耗した触媒を不活性ガス(すなわち本質的に酸素を欠いている)の流れと、例えば窒素雰囲気中等で、300℃~400℃、好ましくは300℃~350℃の温度で接触させることを含む。触媒の単位体積当たりの流量に関する不活性ガスの流量は、3~7時間にわたって5~150SL・L-1・h-1である。
【0051】
代替の形態において、脱油段階は、軽質炭化水素によって、水蒸気処理または任意の他の類似の方法によって行われ得る。
【0052】
再生段階は、一般的には、酸素を含有しているガス、一般的には空気の流れ中で行われる。水の含有率は、一般的には0重量%~50重量%である。消耗触媒の単位体積当たりの流量に関するガスの流量は、好ましくは20~2000SL・L-1・h-1、より好ましくは30~1000SL・L-1・h-1、特に好ましくは40~500SL・L-1・h-1である。再生の継続期間は、好ましくは2時間以上、より好ましくは2.5時間以上、特に好ましくは3時間以上である。少なくとも部分的に消耗した触媒の再生が行われる際の温度は、一般的には350℃~550℃、好ましくは360℃~500℃である。
【0053】
再生段階において得られた再生触媒は、残留炭素を、再生触媒の全重量に対して2重量%未満、好ましくは0.1重量%~1.9重量%、優先的には0.1重量%~1.5重量%、特に好ましくは0.1重量%~1.0重量%の含有率で含有している。再生触媒は、残留炭素を含有していなくてもよい。
【0054】
本特許出願における用語「残留炭素(residual carbon)」は、少なくとも部分的に消耗した触媒の再生後に再生触媒中に残っている炭素(コーク)を意味することが留意されるべきである。再生触媒中のこの残留炭素の含有率は、ASTM D5373による元素分析によって測定される。
【0055】
再生段階において得られた再生触媒は、(場合による硫化の前に)残留硫黄を、再生触媒の全重量に対して5重量%未満、好ましくは0.1重量%~4.9重量%の含有率で含有しており、優先的には0.1重量%~2.0重量%、特に好ましくは0.2重量%~0.8重量%である。再生触媒は、残留硫黄を含有していなくてもよい。再生触媒中のこの残留硫黄の含有率は、ASTM D5373による元素分析によって測定される。
【0056】
本発明による方法の再生触媒は、一般的には、酸化物担体と、第VIb族からの少なくとも1種の金属および第VIII族からの少なくとも1種の金属から形成された活性相と、場合によるフレッシュ触媒のリンとからなる。
【0057】
フレッシュ触媒、少なくとも部分的に消耗した触媒または再生触媒中の第VIb族からの金属の含有率、第VIII族からの金属の含有率およびリンの含有率は、550℃での2時間にわたるマッフル炉中の触媒サンプルの強熱減量についての修正後の酸化物として表される。強熱減量は、湿気、炭素、硫黄および/または他の汚染物質の喪失に起因する。それは、ASTM D7348により決定される。
【0058】
再生触媒中の第VIb族からの金属の含有率、第VIII族からの金属の含有率および場合によるリンの含有率は、それが由来する少なくとも部分的に消耗した触媒の含有率に実質的に等しい。
【0059】
少なくとも部分的に消耗した触媒中の第VIb族からの金属の含有率、第VIII族からの金属の含有率および場合によるリンの含有率は、それが由来するフレッシュ触媒の含有率に実質的に等しい。
【0060】
本発明による水素化脱硫方法において用いられる再生触媒は、特に、非添加にされたもの(non-additivated)である。すなわち、それは、それの再生の後に導入される有機化合物を含有していない。さらに、第VIb族および/または第VIII族からの金属またはリンの非添加化は、再生段階の後に行われる。
【0061】
再生触媒の活性相中に存在する第VIb族からの金属は、優先的には、モリブデンおよびタングステンから選ばれる。再生触媒の活性相中に存在する第VIII族からの金属は、優先的には、コバルト、ニッケルおよびこれら2種の元素の混合物から選ばれる。再生触媒の活性相は、好ましくは、ニッケル-モリブデン、コバルト-モリブデンおよびニッケル-コバルト-モリブデンの元素の組み合わせによって形成される群から選ばれ、大いに好ましくは、活性相は、コバルトおよびモリブデンからなる。
【0062】
第VIII族からの金属の含有率は、再生触媒の全重量に対する、第VIII族からの金属の酸化物の重量で0.1重量%~10重量%、好ましくは0.6重量%~8重量%、好ましくは2重量%~7重量%、大いに好ましくは2重量%~6重量%、一層より好ましくは2.5重量%~6重量%である。
【0063】
第VIb族からの金属の含有率は、再生触媒の全重量に対する、第VIb族からの金属の酸化物の重量で1重量%~20重量%、好ましくは2重量%~18重量%、大いに好ましくは3重量%~10重量%である。
【0064】
再生触媒の第VIII族からの金属対第VIb族からの金属のモル比は、一般的には0.15~1.15、好ましくは0.19~0.8である。
【0065】
さらに、再生触媒が呈する、第VIb族からの金属の密度は、触媒の単位面積当たりの前記金属の原子数として表されて、触媒の面積(nm)当たり第VIb族からの金属0.5~30原子、好ましくは2~25原子、一層より好ましくは3~15原子である。第VIb族からの金属の密度は、触媒の単位面積当たりの第VIb族からの金属の原子数(触媒の面積(nm)当たりの第VIb族からの金属の原子数)として表されて、例えば、以下の関係式:
【0066】
【数1】
【0067】
から計算される:
式中;
X=第VIb族からの金属の重量%;
=アボガドロ数、6.022×1023に等しい;
S=触媒の比表面(m/g)、規格ASTM D3663により測定される;
=第VIb族からの金属のモル質量(例えばモリブデンについて95.94g/mol)。
【0068】
例えば、触媒が20重量%の酸化モリブデンMoO(すなわち13.33重量%のMo)を含有しておりかつ100m/gの比表面を有しているならば、密度d(Mo)は、
【0069】
【数2】
【0070】
に等しい。
【0071】
場合によっては、本発明による方法の再生触媒は、リンを一般的には触媒の全重量に対するPの重量で0.3重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%、大いに好ましくは1重量%~3重量%の含有率でさらに呈することができる。さらに、リンが存在している場合に、リン/(第VIb族からの金属)のモル比は、一般的には0.1~0.7、好ましくは0.2~0.6である。
【0072】
場合によっては、本発明による方法の再生触媒は、コークおよび硫黄に加えて、それが起源とするフレッシュ触媒によって処理された供給原料に由来する低含有率の汚染物質、例えばケイ素、ヒ素または塩素をさらに呈することができる。
【0073】
好ましくは、ケイ素の含有率(フレッシュ触媒上に可能性として存在するものを除く)は、再生触媒の全重量に対して、2重量%未満、大いに好ましくは1重量%未満である。
【0074】
好ましくは、ヒ素の含有率は、再生触媒の全重量に対して、2000重量ppm未満、大いに好ましくは500重量ppm未満である。
【0075】
好ましくは、塩素の含有率は、再生触媒の全重量に対して、2000重量ppm未満、大いに好ましくは500重量ppm未満である。
【0076】
大いに好ましくは、再生触媒は、汚染されておらず、すなわち、再生触媒の全重量に対して、100重量ppm未満の含有率のケイ素(フレッシュ触媒上に可能性として存在しているものを除く)、50重量ppm未満の含有率のヒ素および50重量ppm未満の塩素を含有している。
【0077】
好ましくは、本発明による方法の酸化物の形態にある再生触媒は、5~400m/g、好ましくは10~250m/g、好ましくは20~200m/g、大いに好ましくは30~180m/gの比表面によって特徴付けられる。比表面は、本発明では、規格ASTM D3663によるBET法によって、Rouquerol F.、Rouquerol J.およびSingh K.による研究「Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, Methodology and Applications, Academic Press」(1999)において記載されるようにして、例えば、Micromeritics(登録商標)ブランドのAutopore III(登録商標)モデルデバイスにより決定される。
【0078】
再生触媒の細孔容積は、一般的には0.4cm/g~1.3cm/g、好ましくは0.6cm/g~1.1cm/gである。全細孔容積は、規格ASTM D4284による水銀ポロシメトリによって濡れ角140°で、同一の研究書に記載されたようにして測定される。
【0079】
再生触媒のタップかさ密度(tapped bulk density:TBD))は、一般的には0.4~0.7g/mL、好ましくは0.45~0.69g/mLである。TBD測定は、触媒を測定シリンダであって、その容積が事前に決定されたものに導入すること、次いで、振動によって、一定の容積が得られるまでそれをタップすることからなる。タップされたもののかさ密度は、導入された質量とタップした後に占められた容積を比較することによって計算される。
【0080】
この触媒は、シリンダまたは多葉(三葉、四葉、その他)の小さい径を有する押出物の形態または球の形態であり得る。
【0081】
再生触媒の酸化物担体は、通常、以下:アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、さらには単独でまたはアルミナまたはシリカ-アルミナとの混合物として用いられるチタンおよびマグネシウムの酸化物からなる群から選ばれる細孔性固体である。それは、好ましくは、シリカ、遷移アルミナおよびシリカ-アルミナの系統からなる群から選ばれる;大いに好ましくは、酸化物担体は、少なくとも1種の遷移アルミナから本質的に構成される。すなわち、それは、最低51重量%、好ましくは最低60重量%、大いに好ましくは最低80重量%、実際にいっそう最低90重量%の遷移アルミナを含む。それは、好ましくは、遷移アルミナのみからなる。好ましくは、本発明による方法の再生触媒の酸化物担体は、「高温(high temperature)」遷移アルミナである。すなわち、それは、単独でまたは混合物としてのシータ-、デルタ-、カッパ-またはアルファ-の相のアルミナと、20%未満の量のガンマ-、カイ-またはエータ-の相のアルミナとを含有している。
【0082】
(水素化脱硫方法)
本発明による水素化脱硫方法は、硫黄含有オレフィン性ガソリン留分を、再生触媒および水素と、以下の条件下に接触させることからなる:
- 温度は、200℃~400℃、好ましくは230℃~330℃である
- 全圧は、1~3MPa、好ましくは1.5~2.5MPaである
- 毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、触媒の体積に相対した供給原料の体積による流量であると定義されて、1~10h-1、好ましくは2~6h-1である
- 水素/ガソリン供給原料の体積による比は、100~1200SL/L、好ましくは150~400SL/Lである。
【0083】
水素化脱硫方法は、固定床タイプまたは沸騰床タイプの1基または直列の複数基の反応器において行われ得る。直列の少なくとも2基の反応器によって本方法が行われるならば、第1の水素化脱硫反応器に由来する流出物からHSを除去するためのデバイスを提供することが可能であり、その後に、第2の水素化脱硫反応器において前記流出物が処理される。
【0084】
本発明による水素化脱硫方法は、再生触媒の存在中で行われる。それは、再生触媒とフレッシュ触媒または復活触媒との混合物の存在中でも行われ得る。
【0085】
フレッシュ触媒または復活触媒が存在する場合、それは、第VIII族からの少なくとも1種の金属、第VIb族からの少なくとも1種の金属および酸化物担体を含み、場合によっては、リンおよび/または有機化合物、例えば、上記に記載されたようなものを含む。
【0086】
フレッシュ触媒または復活触媒の活性相および担体は、再生触媒の活性相および担体と同一であってもなくてもよい。
【0087】
フレッシュ触媒の活性相および担体は、復活触媒の活性相および担体と同一であってもなくてもよい。
【0088】
再生触媒と、フレッシュ触媒または復活触媒との存在中で水素化脱硫方法が行われる場合、それは、複数個の触媒床を含有している固定床タイプの反応器中で行われ得る。
【0089】
この場合に、かつ第1の代替の形態によると、フレッシュ触媒または復活触媒を含有している触媒床は、供給原料の流通の方向で再生触媒を含有している触媒床に先立つことができる。
【0090】
この場合に、かつ第2の代替の好ましい形態によると、再生触媒を含有している触媒床は、供給原料の流通の方向でフレッシュ触媒または復活触媒を含有している触媒床に先立つことができる。
【0091】
この場合に、かつ第3の代替の形態によると、触媒床は、再生触媒とフレッシュ触媒および/または復活触媒との混合物を含有することができる。
【0092】
これらの場合に、操作条件は、上記に記載された操作条件である。それらは、一般的に、温度を除いては異なる触媒床において同一であり、温度は、一般的に水素化脱硫反応の発熱性に従って触媒床において上昇する。
【0093】
固定床タイプまたは沸騰床タイプの直列の複数基の反応器中、再生触媒とフレッシュ触媒または復活触媒との存在中で水素化脱硫方法が行われる場合に、1基の反応器は、再生触媒を含むことができる一方で、別の反応器は、フレッシュ触媒または復活触媒、または、再生触媒と、フレッシュ触媒および/または復活触媒との混合物を含むことができ、これはあらゆる順序である。第1の水素化脱硫反応器に由来する流出物からHSを除去するためのデバイスを提供することが可能であり、その後に前記流出物が第2の反応器において処理される。
【0094】
(選択的水素化(任意の段階))
1種の代替の形態によると、ガソリン留分は、本発明による水素化脱硫方法の前に選択的水素化段階に付される。
【0095】
好ましくは、本発明による水素化脱硫方法によって処理されるガソリンは、分解方法に由来するガソリンの広範な留分(またはFRCN;Full Range Cracked Naphtha(フルレンジ分解ナフサ))を軽質ガソリンおよび重質ガソリンに分離することを目指した蒸留段階に由来する重質ガソリンである。
【0096】
有利には、広範な留分FRCNは、蒸留段階の前に下記に記載される選択的水素化段階に付される。
【0097】
前記FRCN留分は、水素および選択的水素化触媒の存在中で事前に処理されて、ジオレフィンを少なくとも部分的に水素化し、かつ、供給原料中に存在するチオール(RSH)化合物の部分の分子量を増大させる反応を行い、オレフィンとの反応によってチオエーテルを与える。
【0098】
この目標を達成するために、広範なFRCN留分は、選択的水素化触媒の反応器に送られる。この反応器は、ジオレフィンを選択的に水素化しかつチオールの分子量を増大させるための触媒の少なくとも1個の固定床または移動床を含有している。ジオレフィンを選択的に水素化しかつチオールの分子量を増大させるための反応は、優先的には、硫化触媒上で行われる。この硫化触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の金属および場合による第VIb族からの少なくとも1種の金属および酸化物担体を含んでいる。第VIII族からの金属は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選ばれ、特にはニッケルである。第VIb族からの金属は、それが存在している場合、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選ばれ、大いに好ましくはモリブデンである。
【0099】
触媒の酸化物担体は、好ましくは、アルミナ、アルミン酸ニッケル、シリカ、炭化ケイ素またはこれらの酸化物の混合物から選ばれる。アルミナの使用が好適になされるが、一層より好ましくは高純度アルミナである。好ましい実施形態によると、選択的水素化触媒は、触媒の全重量に対して、ニッケルを酸化ニッケル(NiOの形態)の重量による含有率1%~12%で含有し、およびモリブデンを酸化モリブデン(MoOの形態)の重量による含有率6%~18%で含有し、ニッケル/モリブデンのモル比は、0.3~2.5であり、金属は、アルミナからなる担体上に沈着させられており、触媒を構成する金属の硫化度は50%超である。
【0100】
場合による選択的水素化段階の間に、ガソリンは触媒と接触させられ、その際の温度は、50℃~250℃、好ましくは80℃~220℃、一層より好ましくは90℃~200℃であり、それに伴う液体空間速度(liquid space velocity:LHSV))は、0.5h-1~20h-1であり、液体空間速度の単位は、触媒の体積(リットル)当たりかつ時間当たりの供給原料の体積(リットル)(L/L・h)である。圧力は、0.4MPa~5MPa、好ましくは0.6MPa~4MPa、一層より好ましくは1~2MPaである。場合による選択的水素化段階は、典型的には、H/ガソリン供給原料の比:水素2~100Sm/供給原料の体積(m)、好ましくは水素3~30Sm/供給原料の体積(m)により行われる。
【0101】
(硫化(場合による段階))
処理されるべき供給原料と接触させる前に、本発明による方法の再生触媒は、一般的に、硫化段階を経る。硫化は、好ましくは、スルホ還元媒体中、すなわち、HSおよび水素の存在中で行われて、金属酸化物を硫化物、例えば、MoSおよびCoに変換する。硫化は、触媒上に、HSおよび水素、あるいは触媒および水素の存在中で分解してHSを与えることができる硫黄化合物を含有している流れを注入することによって行われる。多硫化物、例えば、ジメチルジスルフィド(dimethyl disulfide:DMDS)は、触媒を硫化するために一般に用いられるHS前駆体である。硫黄は、供給原料を起源とすることもできる。温度は、HSが金属酸化物と反応して金属硫化物を形成するように調節される。この硫化は、本発明による方法の反応器の現場内(in situ)または現場外(ex situ)(反応器の内側または外側)で行われ得、その際の温度は、200℃~600℃、より優先的には300℃~500℃である。
【0102】
(実施例)
(実施例1:フレッシュ焼成済み触媒A(比較例)の調製)
触媒Aの担体は、遷移アルミナであり、その比表面は140m/gであり、細孔容積は1.0cm/gである。触媒Aの調製を、七モリブデン酸アンモニウムおよび硝酸コバルトの水溶液を担体に乾式含浸させることにより行う。金属の前駆体を含有している溶液の容積は、担体の塊体の細孔容積に厳密に等しい。水溶液中の金属前駆体の濃度の調節を、モリブデン、コバルトおよびリンの所望の重量百分率を最終触媒上に得るように行う。担体上の乾式含浸の後に、触媒を、水飽和チャンバ中1時間30分にわたって静置熟成させ、オーブン中空気下に90℃で12時間にわたって乾燥させ、次いで、空気下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0103】
焼成の後に得られた触媒Aは、15.5重量%の含有率のモリブデン(MoO相当)および3.4重量%の含有率のコバルト(CoO相当)を有している。この触媒は、Co/Moの原子比0.42を呈する。
【0104】
(実施例2:再生触媒B(本発明に合致する)の調製)
触媒Aを用いて接触分解(FCC)ガソリンを脱硫する。このガソリンの特徴を、表1に照合する。270℃で900時間にわたって横断床(traversed bed)タイプの反応器において、以下の条件下に反応を行う:P=2MPa、HSV=4h-1、H/HC=300リットル/炭化水素供給原料のリットル。DMDS(dimethyl disulfide:ジメチルジスルフィド)の形態で4重量%の硫黄を含有している供給原料により350℃で触媒を前処理して、酸化物相の硫化を提供する。等温実験反応器において上昇流で反応を行う。
【0105】
【表1】
【0106】
上記の接触分解(FCC)ガソリンの水素化脱硫の終結の際に反応器から使用済み触媒Aを抜き出す。その後、ソックスレーにおいて250℃で7時間にわたってトルエンにより使用済み触媒Aを洗浄する(脱油処理)。
【0107】
続いて、管状オーブンにおいて乾燥空気下に450℃で2時間にわたって使用済み/洗浄済みの触媒Aの再生を行い、触媒Bを得る。触媒Bの残留炭素の含有率はゼロである。残留硫黄の含有率は再生触媒の重量に対して0.6重量%である。
【0108】
(実施例3:触媒AおよびBの触媒の性能品質の評価)
モデル供給原料の代表物である接触分解(FCC)ガソリンは、10重量%の2,3-ジメチルブタ-2-エンおよび0.33重量%の3-メチルチオフェン(すなわち、供給原料中1000重量ppmの硫黄)を含有しており、このものを、種々の触媒の触媒性能品質の評価のために用いる。用いられる溶媒はヘプタンである。
【0109】
固定型横断床反応器において1.5MPaの全圧下に、210℃で、触媒4mLの存在中で水素化脱硫反応(HDS)を行い、その際、HSV=6h-1(HSV=供給原料の体積による流量/触媒の体積)およびH/供給原料の体積による比は300SL/Lである。HDS反応より前に、350℃で2時間にわたって15mol%のHSを含有している水素の流れ下に大気圧で触媒を現場内(in situ)硫化する。
【0110】
触媒のそれぞれを連続的に前記反応器内に置く。サンプルを異なる時間間隔で取り、ガスクロマトグラフィーによって分析して試薬の消失および生成物の形成を観察する。
【0111】
触媒活性および選択性に関して触媒の触媒性能品質を評価する。水素化脱硫(HDS)活性は、3-メチルチオフェンのHDS反応についての速度定数(kHDS)を導入された触媒の体積によって規格化し、硫黄化合物に対して一次速度論を仮定したものから表される。オレフィンの水素化についての活性(HydO)は、2,3-ジメチルブタ-2-エンの水素化反応についての速度定数を、導入された触媒の体積によって規格化しかつオレフィンに対して一次速度論を仮定したものから表される。
【0112】
触媒の選択性は、速度定数の規格化比kHDS/kHydOによって表される。kHDS/kHydO比は、触媒がより選択的になるにつれて増大することになる。得られた値は、触媒Aを基準とみなす(相対的なHDS活性および相対的な選択性が100に等しい)ことによって規格化される。それ故に、性能品質は、相対的なHDS活性および相対的な選択性にある(表2)。
【0113】
【表2】
【0114】
再生触媒Bは、フレッシュ触媒Aに類似の活性および(フレッシュ焼成済みの)比較の触媒Aに対するオレフィンの水素化に対する水素化脱硫における改善された選択性を呈する。
【0115】
触媒の選択性におけるこの改善は、オレフィンを含有しているガソリンの水素化脱硫のための方法であって、オレフィンの水素化に起因するオクタンの喪失を可及的に制限することが探し求められる方法における使用の場合に特に有利である。