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特許7510943PD-1軸指向型治療薬に対する応答を予測するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】PD-1軸指向型治療薬に対する応答を予測するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20240627BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240627BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240627BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240627BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240627BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240627BHJP
   C07K 14/725 20060101ALN20240627BHJP
【FI】
G01N33/48 M ZNA
G01N33/48 P
G01N33/574 A
C07K14/47
C07K14/705
A61K45/00
A61P35/00
A61K39/395 U
C07K14/725
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021542071
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019053774
(87)【国際公開番号】W WO2020072348
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】62/742,934
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/739,828
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】596102469
【氏名又は名称】ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】JOHNS HOPKINS UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コーヤステ, メルヌーシュ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, ジム
(72)【発明者】
【氏名】ペスティック-ドラゴヴィッチ, リディヤ
(72)【発明者】
【氏名】タン, レイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シャンシュー
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ウェンチュン
(72)【発明者】
【氏名】アンダース, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ディアズ, ルイス
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0285029(US,A1)
【文献】国際公開第2018/145023(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/085307(WO,A1)
【文献】特表2016-517115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0134771(US,A1)
【文献】国際公開第2018/160841(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/055014(WO,A1)
【文献】Validation of Multiplex Immunofluorescence Panels Using Multispectral Microscopy for Immune-Profiling of Formalin-Fixed and Paraffin-Embedded Human Tumor Tissues,Scientific Reports,2017年,Vol.7,13380,pp.1-11,DOI: 10.1038/s41598-017-13942-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-1軸指向型療法に応答する可能性について腫瘍試料をスコア化する方法であって、
(a)前記腫瘍試料から腫瘍切片のデジタル画像を取得することであって、前記腫瘍切片が、PD-L1、CD8、CD3、CD68、および上皮マーカー(EM)の各々について多重親和性組織化学的染色において染色される、取得することと、
(b)前記画像内の関心対象の領域(ROI)から特徴量を抽出することであって、前記特徴量が、
(i)前記ROI内のCD8細胞と、最も近いPD-L1/CD68細胞との間の平均距離、
(ii)前記ROI内のCD8細胞と、最も近いPD-L1/CD3細胞との間の平均距離、
(iii)前記ROI内の上皮細胞と、最も近いCD8細胞との間の平均距離、
(iv)CD8細胞から10μm以内の前記ROI内のPD-L1上皮細胞の数、
(v)CD8細胞から30μm以内の前記ROI内のPD-L1上皮細胞の数
(vi)上皮細胞から10μm以内の前記ROI内のCD8細胞の数
(vii)上皮細胞から30μm以内の前記ROI内のCD8細胞の数
(viii)前記ROI内のPD-L1/CD3細胞の密度
(ix)前記ROI内のPD-L1/CD3/CD8細胞の密度
(x)前記ROI内のPD-L1/CD8細胞の密度
(xi)前記ROI内のPD-L1/CD68細胞の密度
(xii)前記ROI内のPD-L1上皮細胞の密度
(xiii)前記ROI内のCD3細胞の密度
(xiv)前記ROI内のCD8細胞の密度
(xv)前記ROI内のCD68細胞の密度
(xvi)前記ROI内の上皮細胞の密度
(xvii)前記ROI内のPD-L1上皮細胞が占める面積と前記ROIの総面積との比率
(xviii)前記ROI内の上皮細胞が占める面積と前記ROIの総面積との比率
(xix)前記ROI内のPD-L1上皮細胞の数と前記ROI内の上皮細胞の総数との比率
(xx)前記ROI内のPD-L1/CD3細胞の数と前記ROI内のCD3細胞の総数との比率
(xxi)前記ROI内のPD-L1/CD3/CD8細胞の数と前記ROI内のCD3/CD8細胞の総数との比率
(xxii)前記ROI内のPD-L1/CD8細胞の数と前記ROI内のCD8細胞の総数との比率
(xxiii)前記ROI内のPD-L1/CD68細胞の数と前記ROI内のCD68細胞の総数との比率
(xxiv)前記ROI内のPD-L1/CD3/CD8細胞の数と前記ROI内のCD3/CD8細胞の総数との比率、
(xxv)前記ROI内のCD3/CD8細胞の数と前記ROI内のCD3細胞の総数との比率、および
(xxvi)CD3細胞が占める総面積
からなる群から選択される、抽出することと、
(c)前記特徴量を含む特徴ベクトルにスコアリング関数を当てはめて、前記腫瘍が前記PD-1軸指向型療法に応答する可能性を示すスコアを生成することと、
を含み、前記スコアリング関数が、PD-1軸指向型療法を用いた処置に先立って結果データが入手可能な患者のコホートから得られている、方法。
【請求項2】
前記ROIが、腫瘍ROI、間質ROI、上皮マーカー陽性(EM)ROI、上皮マーカー陰性(EM)ROI、腫瘍周囲内側(PI)ROI、腫瘍周囲外側(PO)ROI、および腫瘍周囲領域(PR)ROIからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ROIが、前記間質ROIまたは前記EMROIであり、かつ前記特徴ベクトルが、
(xx)前記ROI内のPD-L1/CD3細胞の数と前記ROI内のCD3細胞の総数との比率、
(xxii)前記ROI内のPD-L1/CD8細胞の数と前記ROI内のCD8細胞の総数との比率、
(xxiii)前記ROI内のPD-L1/CD68細胞の数と前記ROI内のCD68細胞の総数との比率、および
(xxiv)前記ROI内のPD-L1/CD3/CD8細胞の数と前記ROI内のCD3/CD8細胞の総数との比率
からなる群から選択される1つ以上の特徴量を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特徴ベクトルが、
前記間質ROI内または前記EM-ROI内のPD-L1 /CD68 細胞の数と、前記間質ROI内または前記EM-ROI内のCD68 細胞の総数との比率、
前記間質ROI内または前記EM-ROI内のPD-L1 /CD3 /CD8 細胞の数と、前記間質ROI内または前記EM-ROI内のCD3 /CD8 細胞の総数との比率、および
前記間質ROI内または前記EM-ROI内のPD-L1 /CD3 細胞の数と、前記間質ROI内または前記EM-ROI内のCD3 細胞の総数との比率
の各々を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ROIが、前記腫瘍ROIまたは前記EMROIであり、かつ前記特徴ベクトルが、
(i)前記EMROI内または腫瘍ROI内のCD8細胞と最も近いPD-L1/CD68細胞との間の平均距離、
(ix)前記ROI内のPD-L1/CD3/CD8密度、
(xx)前記ROI内のPD-L1/CD3細胞の数と前記ROI内のCD3細胞の総数との比率、
(xxii)前記EMROI内または腫瘍ROI内のPD-L1/CD8細胞の数と前記EMROI内または腫瘍ROI内のCD8細胞の総数との比率、
(xxiii)前記ROI内のPD-L1/CD68細胞の数と前記ROI内のCD68細胞の総数との比率、
(xxiv)前記ROI内のPD-L1/CD3/CD8細胞の数と前記ROI内のCD3/CD8細胞の総数との比率、および
(xxv)前記EMROI内または腫瘍ROI内のCD3/CD8細胞の数と前記EMROI内または腫瘍ROI内のCD3細胞の総数との比率
からなる群から選択される1つ以上の特徴量を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ROIが、前記腫瘍試料の形態学的に染色された切片のデジタル画像に由来し、前記形態学的に染色された切片および前記多重親和性組織化学的染色をされた試料が、連続切片であるかまたは前記ROIが、前記形態学的に染色された切片の前記デジタル画像においてユーザによって特定され、前記多重親和性組織化学的染色をされた切片の前記デジタル画像へ自動的に登録される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スコアリング関数が、二次判別分析(QDA)、線形判別分析(LDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)からなる群から選択されるモデリング関数に由来る、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記スコアリング関数が、処置への応答を予測するために前記選択された特徴に当てはまるQDAモデルであり、前記QDAモデルを当てはめるために使用される前記処置の結果が、
進行性疾患(PD)対安定性疾患(SD)対部分奏効(PR)+完全奏効(CR)、
PD対SD+PR+CR、および
PD+SD対PR+CR
からなる群から選択される構成においてまとめて群別化される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
PD-1軸指向型療法を受ける患者を選択する方法であって、
請求項1~のいずれか一項に記載の方法によってスコアを生成することと、
前記スコアを、事前に決定されたカットオフ値と比較することと、
前記スコアが、事前に決定されたカットオフ値を上回っているか下回っているかに基づいて、前記PD-1軸指向型療法または代替療法を受ける前記患者を選択することと、を含む、方法。
【請求項10】
PD-1軸指向型療法を受けるように選択された患者を処置する方法においてであって、
請求項に記載の方法に従って、前記PD-1軸指向型療法を受けるように選択された患者を処置する方法での使用のためのPD-1軸指向型治療薬。
【請求項11】
前記PD-1軸指向型治療薬が、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である、請求項10に記載の使用のためのPD-1軸指向型治療薬。
【請求項12】
前記PD-1軸指向型治療薬が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される、請求項11に記載の使用のためのPD-1軸指向型治療薬。
【請求項13】
(a)腫瘍の検査試料のデジタル画像上の関心対象の領域(ROI)に注釈を付けることであって、前記デジタル画像が、PD-L1、CD8、CD3、CD68、および上皮マーカー(EM)について試料多重親和性染色された(パネル1)デジタル画像である、注釈を付けることと、
(b)表4の左側の列の1つ以上の特徴量を前記ROIから抽出することと、
(c)スコアリング関数を、(b)の特徴(複数可)を含む特徴ベクトルに当てはめることと、
を含む、方法であって、
PD-1軸指向型療法に対する腫瘍の応答を予測するための前記スコアリング関数が、
(a’)
(i)前記PD-1軸指向型療法を用いた処置に先立って複数の患者から得られた腫瘍組織試料のデジタル画像のセットであって、各患者についての少なくとも1つのデジタル画像が、1つ以上の上皮マーカー、1つ以上の免疫細胞マーカー、および1つ以上のPD-1軸経路マーカーの各々についての多重親和性組織化学的染色において染色された組織切片のデジタル画像であること、ならびに
(ii)各患者についての処置後の応答データ
を取得することと、
(b’)多重染色された前記組織切片の前記デジタル画像から複数の特徴量を抽出することであって、前記複数の特徴量が、表4の特徴からなる群から選択される、抽出することと、
(c’)特徴選択関数を、前記抽出された複数の特徴量および処置後の応答データに当てはめて、前記PD-1軸指向型療法に対する応答との相関強度について、各特徴の階級を取得することと、
(d’)モデリング関数を、階級分類された前記特徴のうちの1つ以上および前記処置後の応答データに当てはめて、チェックポイント阻害剤療法に対する応答を予測する複数の候補モデルを生じること、および応答との一致度について各候補モデルを検査することと、
(e’)前記スコアリング関数として、前記応答との一致度が最も高い候補モデルを選択することと、
を含む方法によって開発されており、
前記モデリング関数が、二次判別分析(QDA)、線形判別分析(LDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)からなる群から選択される、方法。
【請求項14】
前記スコアリング関数が、処置への応答を予測するために前記選択された特徴に適合するQDAモデルであり、QDAモデルを適合させるために使用される処置結果が、
進行性疾患(PD)対安定性疾患(SD)対部分奏効(PR)+完全奏効(CR)、
PD対SD+PR+CR、および
PD+SD対PR+CR
からなる群から選択される構成においてまとめて群別化されるか、または
前記ROIが、前記検査試料の第1の連続切片のデジタル画像において注釈が付けられ、前記第1の連続切片が、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色され、前記ROIが、前記検査試料の少なくとも第2の連続切片のデジタル画像に自動的に登録され、前記第2の連続切片が、パネル1で染色されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
PD-1軸療法に対する患者の応答を予測するためのシステムであって、プロセッサと、前記プロセッサに連結されたメモリとを備えているシステムであって、前記メモリが、前記プロセッサによって実行されるとき、請求項1~または13もしくは14のいずれか一項に記載の1つ以上の方法を含む演算を前記プロセッサに実行させるコンピュータ実行可能命令を保存するためのものである、システム。
【請求項16】
a)前記組織試料の切片のデジタル画像を捕捉し、前記画像をコンピュータ装置に通信するように適合したスキャナまたは顕微鏡をさらに備えているか、または、
b)パネル1またはパネル2で前記組織試料の切片を組織化学的に染色するようにプログラムされた自動スライド染色装置をさらに備えている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記自動スライド染色装置によって染色された前記切片の1つ以上の連続切片を染色するようにプログラムされた自動ヘマトキシリンおよびエオシン染色装置をさらに備えている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
試料ならびに画像ワークフローおよび診断情報を追跡するための検査情報システム(LIS)をさらに備えており、前記LISが、前記組織試料に関する情報を受信および保存するように構成された中央データベースを備えており、前記情報が、以下、すなわち、前記腫瘍組織試料に関して実行される加工ステップ、前記腫瘍組織試料の切片のデジタル画像に関して実行される加工ステップ、前記腫瘍組織試料およびデジタル画像の加工履歴、および前記患者が療法に応答する可能性に関連する1つ以上の臨床変数、のうちの少なくとも1つを含む、請求項16または17に記載のシステム。
【請求項19】
演算を実行するためのプロセッサによって実行されるコンピュータ実行可能命令を保存するための非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記演算が、請求項1~または13もしくは14のいずれか一項に記載の方法を含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
これは、特許協力条約に基づく国際出願であり、2018年10月1日出願の米国仮特許出願第62/739,828号、および2018年10月9日出願の米国仮特許出願第62/742,934号に対する優先権を主張するものであり、これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCII対応テキストファイル(.TXT)として提出された配列表の参照
EFS-ウェブ法的枠組みおよび米国特許法施行規則第1.821~825節(MPEP第2442.03(a)節を参照されたい)に従って、ASCII準拠のテキストファイルの形式の配列表(2019年9月30日作成の「Sequence_Listing_3000022-004977_ST25.txt」という表題で、23475バイトの大きさ)は、本出願と同時に提出されており、配列表の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明の分野
本発明は、チェックポイント阻害剤療法に対する応答を予測するのに有用な腫瘍試料中のバイオマーカーの検出、特徴付け、および列挙に関する。
【0004】
関連技術の説明
癌は、腫瘍細胞および腫瘍微小環境において、プログラム死1(PD-1)経路、およびそのリガンドであるプログラム死リガンド1(PD-L1)の上方調節を経て、免疫監視機構および根絶を免れることがある。PD-1またはPD-L1に対する抗体によるこの経路の遮断は、一部の癌患者に顕著な臨床応答をもたらした。しかしながら、患者選択のための予測バイオマーカーの特定は、大きな課題である。
【0005】
PD-L1は、PD-1軸指向型治療薬を服用する患者の選択のために最も広範に使用されている予測バイオマーカーである。しかしながら、観察された結果には一貫性がなかった。Yiを参照されたい。
【0006】
ミスマッチ修復(MMR)不全症は、PD-1遮断に対する固形腫瘍の応答を予測する。Le(I)およびLe(II)を参照されたい。しかしながら、ミスマッチ修復不全症の患者が必ずしも全員、PD-1遮断処置に応答するわけではない。予測値は、研究と腫瘍の種類との間の関係の可変強度に対して制限されている。
【0007】
近年の研究は、癌細胞と免疫細胞との間の空間的配置および相互作用が患者の予後、生存、および処置に対する応答に影響を及ぼすことを示唆している。WangおよびBarrera。
【0008】
癌免疫療法を誘導するために、腫瘍の微小環境および関係するバイオマーカーを理解する必要性が高まっている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は概して、PD-1軸指向型療法に対する固形腫瘍の応答を予測する新たなバイオマーカーを特定および使用するシステムおよび方法に関する。
【0010】
一実施形態では、PD-1軸指向型療法に対する腫瘍の応答を予測するためのスコアリング関数を開発する方法が開示されており、該方法は以下を含む:(a)(a1)PD-1軸指向型療法を用いた処置の前に複数の患者から取得された腫瘍組織試料のデジタル画像のセットであって、各患者について少なくとも1つのデジタル画像が、1つ以上の上皮マーカー、1つ以上の免疫細胞マーカー、および1つ以上のPD-1軸経路マーカーの各々についての多重親和性組織化学的染色において染色された組織切片のデジタル画像である、デジタル画像のセット、ならびに(a2)各患者についての処置後の応答データを取得すること、(b)多重染色組織切片のデジタル画像から複数の特徴を抽出すること、(c)抽出された複数の特徴および処置後応答データに特徴選択関数を適用して、PD-1軸指向型療法への応答に対する相関の強度について各特徴の階級を取得すること、(d)1つ以上の階級分類された特徴および処置後応答データにモデリング関数を適用して、チェックポイント阻害剤療法に対する応答を予測する複数の候補モデルを生成し、応答との一致について各候補モデルを検査すること、(e)スコアリング関数として応答との一致度が最も高い候補モデルを選択すること。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、特徴は、表4の左の列における特徴からなる群から選択される。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PanCK、PD-L1、PD1、CD8、およびLAG3の各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル2)、該特徴は、表4の右の列における特徴からなる群から選択される。一実施形態では、該特徴選択関数は、集合特徴選択方法(例えば、Random Forest関数を含む)、フィルタ方法(例えば、相互情報に基づく関数、(mRMR)/相関係数に基づく関数、およびReliefに基づく関数を含む)、および/または埋め込まれた特徴選択関数(弾性ネット/最小絶対縮小関数または選択演算子(LASSO)関数など)からなる群から選択される。一実施形態では、候補モデルは、特徴選択関数によって特定される上位25個、上位20個、上位15個、上位10個、上位9個、上位8個、上位7個、上位6個、上位5個、上位4個、または上位3個の特徴のうちの1つ以上を使用して作成される。別の実施形態では、該候補モデルは、特徴選択関数の上位10個の特徴において特定される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの特徴を使用する。別の実施形態では、該候補モデルは、少なくとも2つの特徴選択関数の上位5個の特徴に存在する少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、モデリング関数は、二次判別分析(QDA)、線形判別分析(LDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)からなる群から選択される。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される。
【0011】
一実施形態では、PD-1軸指向型療法に応答する可能性について腫瘍試料をスコア化する方法が提供され、該方法は以下を含む:(a)腫瘍試料から腫瘍切片のデジタル画像を取得することであって、該腫瘍切片が、1つ以上の上皮マーカー、1つ以上の免疫細胞マーカー、および1つ以上のPD-1軸経路マーカーの各々について多重親和性組織化学的染色において染色される、取得すること、(b)該デジタル画像内の関心対象の領域(ROI)を特定すること、(c)それぞれのバイオマーカーについて染色された細胞に関する1つ以上の特徴をROIから抽出すること、および(d)スコアリング関数を、(c)の抽出された特徴(複数可)を含む特徴ベクトルに当てはめてスコアを生成することであって、該腫瘍が該PD-1軸指向型療法に応答する可能性を該スコアが示す、生成すること。一実施形態では、該ROIは、該腫瘍試料の形態学的に染色された切片のデジタル画像に由来し、該形態学的に染色された切片および該多重親和性組織化学的染色をされた試料は連続切片である。一実施形態では、該ROIは、該形態学的に染色された切片の該デジタル画像においてユーザによって特定され、該多重親和性組織化学的染色をされた切片の該デジタル画像へ自動的に登録される。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、表4の左の列における特徴からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要であると決定される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要な該上位10個の特徴のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、間質におけるPD-L1+CD3+CD8-細胞の割合、および間質におけるPD-L1+CD3+細胞の割合からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、間質におけるPD-L1+CD3+CD8-細胞の割合、および間質におけるPD-L1+CD3+細胞の割合の各々を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PanCK、PD-L1、PD1、CD8、およびLAG3の各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル2)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、表4の右の列における特徴からなる群から選択される。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要であると決定された、表4の右の列の少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された、表4の右の列の少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された、表4の右の列の少なくとも少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴は、上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1低強度CD8+細胞数、CD8+Lag3+細胞におけるLag3強度の最大値、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1+細胞数、およびCD8+細胞上のLag3+強度の最大値からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴は、上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数、PD-L1細胞から半径20μm以内の平均PD-1低強度CD8+細胞、CD8+Lag3+細胞におけるLag3強度の最大値、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1+細胞数、およびCD8+細胞上のLag3+強度の最大値の各々を含む。一実施形態では、該スコアリング関数は、二次判別分析(QDA)、線形判別分析(LDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)からなる群から選択されるモデリング関数から得られる。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される。
【0012】
一実施形態では、PD-1軸指向型療法を受ける患者を選択する方法が提供され、該方法は以下を含む:(a)腫瘍試料から腫瘍切片のデジタル画像を取得することであって、該腫瘍切片が、1つ以上の上皮マーカー、1つ以上の免疫細胞マーカー、および1つ以上のPD-1軸経路マーカーの各々について多重親和性組織化学的染色において染色される、取得すること、(b)該デジタル画像内の関心対象の領域(ROI)を特定すること、(c)それぞれのバイオマーカーについて染色された細胞に関する1つ以上の特徴をROIから抽出すること、(d)スコアリング関数を、(c)の抽出された特徴(複数可)を含む特徴ベクトルに当てはめてスコアを生成することであって、該腫瘍が該PD-1軸指向型療法に応答する可能性を該スコアが示す、生成すること、(e)該スコアを、事前に決めておいたカットオフ値と比較すること、および(f)(e)の比較に基づいてPD-1軸療法または代替療法を受けるよう患者を選択すること。一実施形態では、該ROIは、該腫瘍試料の形態学的に染色された切片のデジタル画像に由来し、該形態学的に染色された切片および該多重親和性組織化学的染色をされた試料は連続切片である。一実施形態では、該ROIは、該形態学的に染色された切片の該デジタル画像においてユーザによって特定され、該多重親和性組織化学的染色をされた切片の該デジタル画像へ自動的に登録される。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、表4の左の列における特徴からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要であると決定される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要な該上位10個の特徴のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、間質におけるPD-L1+CD3+CD8-細胞の割合、および間質におけるPD-L1+CD3+細胞の割合からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、間質におけるPD-L1+CD3+CD8-細胞の割合、および間質におけるPD-L1+CD3+細胞の割合の各々を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PanCK、PD-L1、PD1、CD8、およびLAG3の各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル2)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、表4の右の列における特徴からなる群から選択される。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要であると決定された、表4の右の列の少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された、表4の右の列の少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された、表4の右の列の少なくとも少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴は、上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1低強度CD8+細胞数、CD8+Lag3+細胞におけるLag3強度の最大値、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1+細胞数、およびCD8+細胞上のLag3+強度の最大値からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴は、上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数、PD-L1細胞から半径20μm以内の平均PD-1低強度CD8+細胞数、CD8+Lag3+細胞におけるLag3強度の最大値、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1+細胞数、およびCD8+細胞上のLag3+強度の最大値の各々を含む。一実施形態では、該スコアリング関数は、二次判別分析(QDA)、線形判別分析(LDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)からなる群から選択されるモデリング関数から得られる。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される。
【0013】
一実施形態では、腫瘍に罹患している患者を処置する方法が提供され、該方法は、以下を含む:(a)腫瘍試料から腫瘍切片のデジタル画像を取得することであって、該腫瘍切片が、1つ以上の上皮マーカー、1つ以上の免疫細胞マーカー、および1つ以上のPD-1軸経路マーカーの各々について多重親和性組織化学的染色において染色される、取得すること、(b)該デジタル画像内の関心対象の領域(ROI)を特定すること、(c)それぞれのバイオマーカーについて染色された細胞に関する1つ以上の特徴をROIから抽出すること、(d)スコアリング関数を、(c)の抽出された特徴(複数可)を含む特徴ベクトルに当てはめてスコアを生成することであって、該腫瘍が該PD-1軸指向型療法に応答する可能性を該スコアが示す、生成すること、(e)該スコアを、事前に決めておいたカットオフ値と比較すること、および(f)該患者がPD-1軸指向型療法に応答する可能性が高いことを示す場合、PD-1軸指向型療法を該患者に投与すること、または(e)の比較がPD-1軸指向型両方に応答する可能性が低いことを示す場合、PD-1軸指向型療法を含まない治療コースを該患者に投与すること。一実施形態では、該ROIは、該腫瘍試料の形態学的に染色された切片のデジタル画像に由来し、該形態学的に染色された切片および該多重親和性組織化学的染色をされた試料は連続切片である。一実施形態では、該ROIは、該形態学的に染色された切片の該デジタル画像においてユーザによって特定され、該多重親和性組織化学的染色をされた切片の該デジタル画像へ自動的に登録される。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、表4の左の列における特徴からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要であると決定される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom Forestによって、PD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要な該上位10個の特徴のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、間質におけるPD-L1+CD3+CD8-細胞の割合、および間質におけるPD-L1+CD3+細胞の割合からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル1)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、間質におけるPD-L1+CD3+CD8-細胞の割合、および間質におけるPD-L1+CD3+細胞の割合の各々を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色は、PanCK、PD-L1、PD1、CD8、およびLAG3の各々についてバイオマーカー特異的試薬を使用する組織化学的染色を含み(パネル2)、該ROIは、表3によるROIであり、該特徴は、表4の右の列における特徴からなる群から選択される。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に重要であると決定された、表4の右の列の少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された、表4の右の列の少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴はReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者応答の予測に最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された、表4の右の列の少なくとも少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴は、上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1低強度CD8+細胞数、CD8+Lag3+細胞におけるLag3強度の最大値、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1+細胞数、およびCD8+細胞上のLag3+強度の最大値からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該多重親和性組織化学的染色はパネル2を含み、該ROIは表3によるROIであり、該特徴は、上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数、PD-L1細胞から半径20μm以内の平均PD-1低強度CD8+細胞数、CD8+Lag3+細胞におけるLag3強度の最大値、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1+細胞数、およびCD8+細胞上のLag3+強度の最大値の各々を含む。一実施形態では、該スコアリング関数は、二次判別分析(QDA)、線形判別分析(LDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)からなる群から選択されるモデリング関数から得られる。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される。
【0014】
一実施形態では、(a)腫瘍の検査試料のデジタル画像上で関心対象の領域(ROI)に注釈を付けることであって、該デジタル画像が、PD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKについて試料多重親和性染色された(パネル1)デジタル画像である、注釈を付けること、(b)該ROIから表9の1つ以上の特徴を抽出すること、(c)スコアリング関数を、(b)の特徴(複数可)を含む特徴ベクトルに当てはめることであって、該スコアリング関数の出力は、PD-1軸指向型療法に対する患者の応答を予測する値であること、を含む方法が提供される。一実施形態では、該1つ以上の特徴は、ReliefFおよび/またはRandom ForestによるPD-1軸指向型療法に対する患者の応答の予測にとって重要であると決定される。一実施形態では、該特徴は、ReliefFおよび/またはRandom ForestによるPD-1軸指向型療法に対する患者の応答の予測にとって最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定される。一実施形態では、該少なくとも1つの特徴は、以下からなる群から選択される:間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、間質におけるPD-L1+CD3+CD8-細胞の割合、および間質におけるPD-L1+CD3+細胞の割合。一実施形態では、該特徴ベクトルは、間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、間質におけるPD-L1+CD3+CD8-細胞の割合、および間質におけるPD-L1+CD3+細胞の割合の各々を含む。一実施形態では、該特徴ベクトルは、ReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者の応答の予測に最も重要な該上位10個の特徴のうちの少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個を含む。一実施形態では、該スコアリング関数は、二次判別分類モデルを、選択された特徴に適合させて、処置に対する応答を予測することによって得られる。一実施形態では、二次判別分類モデルを適合させるために使用される処置結果は、PD対SD対PR+CR、PD対SD+PR+CR、およびPD+SD対PR+CRからなる群から選択される構成においてまとめて群別化される。一実施形態では、該ROIは、該検査試料の第1の連続切片のデジタル画像において特定され、該第1の連続切片は、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色され、該ROIは、該検査試料の少なくとも第2の連続切片のデジタル画像に自動的に登録され、該第2の連続切片は、パネル1で染色されている。一実施形態では、該方法は、コンピュータに実装される。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される。
【0015】
一実施形態では、(a)腫瘍の検査試料のデジタル画像上で関心対象の領域(ROI)に注釈を付けることであって、該デジタル画像が、PanCK、PD-L1、PD1、CD8、およびLAG3について試料多重親和性染色された(パネル2)デジタル画像である、注釈を付けること、(b)該ROIから表16の1つ以上の特徴を抽出すること、(c)スコアリング関数を、(b)の特徴(複数可)を含む特徴ベクトルに当てはめることであって、該スコアリング関数の出力は、PD-1軸指向型療法に対する患者の応答を予測する値であること、を含む方法が提供される。一実施形態では、該1つ以上の特徴は、ReliefFおよび/またはRandom ForestによるPD-1軸指向型療法に対する患者の応答の予測にとって重要であると決定された特徴である。一実施形態では、該1つ以上の特徴は、ReliefFおよび/またはRandom ForestによるPD-1軸指向型療法に対する患者の応答の予測にとって最も重要な上位10個の特徴のうちの1つであると決定された特徴である。一実施形態では、該特徴ベクトルは、「上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞」、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1低強度CD8+細胞数、CD8+Lag3+細胞におけるLag3強度の最大値、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1+細胞数、およびCD8+細胞上のLag3+強度の最大値からなる群から選択される少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、該特徴ベクトルは、上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数の各々を含み、場合により、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1低強度CD8+細胞数、CD8+Lag3+細胞におけるLag3強度の最大値、PD-L1+細胞から半径20μm以内の平均PD-1+細胞数、およびCD8+細胞上のLag3+強度の最大値からなる群から選択される少なくとも1つ以上の追加の特徴をさらに含む。一実施形態では、該特徴ベクトルは、ReliefFおよび/またはRandom ForestによってPD-1軸指向型療法に対する患者の応答の予測に最も重要な該上位10個の特徴のうちの1つであると決定された少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の特徴を含む。一実施形態では、該スコアリング関数は、二次判別分類モデルを、選択された特徴に適合させて、処置に対する応答を予測することによって得られる。一実施形態では、二次判別分類モデルを適合させるために使用される処置結果は、PD対SD対PR+CR、PD対SD+PR+CR、およびPD+SD対PR+CRからなる群から選択される構成においてまとめて群別化される。一実施形態では、該ROIは、該検査試料の第1の連続切片のデジタル画像において特定され、該第1の連続切片は、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色され、該ROIは、該検査試料の少なくとも第2の連続切片のデジタル画像に自動的に登録され、該第2の連続切片は、パネル2で染色されている。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される。
【0016】
一実施形態では、PD-1軸療法に対する患者の応答を予測するためのシステムであって、プロセッサと、該プロセッサに連結されたメモリとを備えているシステムが提供され、該メモリは、該プロセッサによって実行されるとき、本出願において明らかにされるPD-1指向型療法に対する患者の応答を予測する方法のうちの1つ以上を含む演算を該プロセッサに実行させるコンピュータ実行可能命令を保存するためのものである。一実施形態では、該システムは、該組織試料の切片のデジタル画像を捕捉し、該画像を該コンピュータ装置に通信するように適合したスキャナまたは顕微鏡をさらに備えている。一実施形態では、該システムは、パネル1またはパネル2で組織試料の切片を組織化学的に染色するようにプログラムされた自動スライド染色装置をさらに備えている。一実施形態では、該システムは、該自動スライド染色装置によって染色された切片の1つ以上の連続切片を染色するようにプログラムされた自動ヘマトキシリンおよびエオシン染色装置をさらに備えている。一実施形態では、該システムは、試料ならびに画像ワークフローおよび診断情報を追跡するための検査情報システム(LIS)をさらに備えており、該LISは、組織試料に関する情報を受信および保存するように構成された中央データベースを備えており、該情報は、以下、すなわち、腫瘍組織試料に関して実行される加工ステップ、腫瘍組織試料の切片のデジタル画像に関して実行される加工ステップ、腫瘍組織試料およびデジタル画像の加工履歴、および患者が療法に応答する可能性に関連する1つ以上の臨床変数(MMR状態またはMSI状態など)、のうちの少なくとも1つを含む。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される。
【0017】
一実施形態では、演算を実行するためのプロセッサによって実行されるコンピュータ実行可能命令を保存するための非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供され、該演算は、本出願において明らかにされるPD-1指向型療法に対する患者の応答を予測する方法のうちの1つ以上を含む。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、PD-1特異的モノクローナル抗体またはPD-L1特異的モノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1軸指向型療法は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびLY3300054からなる群から選択される。
【0018】
本特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれている。カラー図面(複数可)を含む本特許または特許出願公開のコピーは、申請に応じて、必要な手数料を支払うことにより、米国特許庁から提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本明細書に開示されるスコアリング関数を得るための例示的なアプローチを示す流れ図である。
図2】本明細書に説明するスコアリング関数を使用して検査試料をスコア化するための例示的なアプローチを示す流れ図である。
図3】本明細書に説明するスコアリング関数を集積する例示的なスコアリングシステムを示す。
図4A】本明細書に開示される画像解析システム上に実装された例示的な流れ図を示し、ROI生成プログラム機能が実行される前に、オブジェクト識別機能が画像全体に対して実行される。
図4B】本明細書に開示される画像解析システム上に実装された例示的な流れ図を示し、ROI生成プログラム機能が実行された後に、オブジェクト識別機能がROIに対してのみ実行される。
図5】実施例lに説明されるパネル1を使用した多重染色プロセスを示す。
図6】パネル1を用いて染色された例示的なスライドを示す。
図7】パネル1を用いて染色されたすべての場合におけるすべての特徴の重要度階級分類を示す。
図8】パネル1を用いて染色されたMMR欠乏症例の場合における特徴の重要度階級分類を示す。
図9】PD-1軸指向型療法処置に対して完全奏功を示した患者からのパネル1を用いて染色された試料の免疫組織化学的画像である。
図10】PD-1軸指向型療法処置を用いた処置の後に進行性疾患に罹患した患者からのパネル1を用いて染色された試料の免疫組織化学的画像である。
図11】パネル2についての実施例IIにおいて使用された染色および画像解析プロセスを示す。
図12】ReliefF特徴選択機能を使用したパネル2の上位15個の特徴の階級分類を示す。特徴は、次のとおりである。(1)PD-L1/CD8細胞から半径20μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の最大数、(2)PD-L1/CD8細胞からのPD-L1強度の最大値、(3)panCK領域におけるPD-1/PD-L1-/Lag3/CD8細胞とCD8細胞との数の比率、(4)PD-L1細胞から半径20μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の数における空間分散、(5)すべてのPD-L1細胞からのPD-L1強度の最大値、(6)panCK領域におけるLag3細胞の数、(7)panCK領域におけるPD-L1/panCK細胞の密度、(8)panCK領域におけるPD-L1細胞の数、(9)panCK領域におけるPD-L1細胞の数、(10)panCK領域におけるPD-1細胞の数、(11)PD-L1細胞から半径20μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の最大数、(12)PD-L1細胞から半径20μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の平均数、(13)CD8/Lag3細胞からのLag3強度の最大値、(14)panCK領域におけるCD8細胞の数、および(15)PD-L1/CD8細胞から半径20μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の数における分散。
図13】Random Forest特徴選択機能を使用したパネル2についての上位15個の特徴の階級分類を示す。特徴は、次のとおりである。(1)PD-L1細胞からその最も近くのPD-1細胞までの平均距離、(2)PD-L1/CD8細胞から半径20μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の最大数、(3)PD-L1/panCK細胞から半径20μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の最大数、(4)PD-L1細胞からその最も近くのPD-1細胞までの標準距離、(5)panCK領域におけるLag3/CD8細胞とCD8細胞との数の比率、(6)panCK領域におけるPD-L1/CD8細胞とCD8細胞との数の比率、(7)PD-L1細胞から半径10μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の平均数、(8)PD-L1細胞から半径10μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の数における分散、(9)すべてのPD-1細胞からのPD-1強度の平均値、(10)すべてのLag3細胞からのLag3強度の最小値、(11)panCK領域におけるPD-L1細胞の密度、(12)PD-L1/CD8細胞から半径10μm以内のPD-1低強度/CD8細胞の最大数、(13)panCK領域におけるPD-1細胞の数、(14)panCK領域におけるPD-1/PD-L1/Lag3/CD8細胞とCD8細胞との数の比率、および(15)Lag3/CD8細胞からのLag3強度の最大値。
図14A】PD-L1+細胞から半径10μm以内のPD-1+細胞の空間分散数の予測値(F1)、PD-L1細胞から半径20μm以内のPD-1低強度CD8細胞の平均数の予測値(F2)、およびCD8Lag3細胞におけるLag3強度の最大値の予測値(F3)を示す図を含有している。
図14B】PD-L1+細胞から半径10μm以内のPD-1+細胞の空間分散数の予測値(F1)、およびPD-L1細胞から半径20μm以内のPD-1低強度CD8細胞の平均数(F2)を示す散布図である。
図14C】PD-L1+細胞から半径10μm以内のPD-1+細胞の空間分散数の予測値(F1)、PD-L1細胞から半径20μm以内のPD-1低強度CD8細胞の平均数(F2)、およびCD8Lag3細胞におけるLag3強度の最大値(F3)を示す散布図である。
図15】無反応者および反応者の例示的な免疫組織化学的画像を示すとともに、グラフの再構成は。PD-L1細胞(灰色の点)、PD-L1+細胞から20μm以内のPD-1細胞(白色の点)、およびPD-L1+細胞から10μm以内のPD-1細胞(黒色の点)の位置を示す。フレーム(a)は、無反応者の生の蛍光画像である。フレーム(b)は、フレーム(a)からの白色のボックスのグラフの再構成であり、無反応者におけるPD-L1+細胞から20μm以内のPD-L1+細胞とPD-1細胞との空間的な関連性を示す。フレーム(c)は、フレーム(a)からの灰色のボックスのグラフの再構成であり、無反応者におけるPD-L1細胞から10μm以内のPD-L1+細胞とPD-1細胞との空間的な関連性を示す。フレーム(d)は、反応者の生の蛍光画像である。フレーム(e)は、フレーム(d)からの白色のボックスのグラフの再構成であり、反応者におけるPD-L1+細胞から20μm以内のPD-L1+細胞とPD-1細胞との空間的な関連性を示す。フレーム(f)は、フレーム(d)からの灰色のボックスのグラフの再構成であり、反応者におけるPD-L1細胞から10μm以内のPD-L1+細胞とPD-1細胞との空間的な関連性を示す。
図16A】panCK陰性領域におけるLag3/CD8細胞と全CD8細胞との数の比率に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16B】panCK陰性領域におけるLag3/CD8細胞とCD8細胞との数の比率に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16C】panCK陰性領域によって除されたLag3/panCK細胞の数に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16D】panCK陰性領域におけるLag3陽性細胞の数に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16E】CD8細胞におけるLag3強度の最大値に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16F】panCK陽性領域におけるLag3+細胞の数に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16G】PD-L1/panCK細胞から半径10μm以内のPD-1/CD8+細胞の平均数に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16H】PD-L1/panCK細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の平均数に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16I】PD-L1/CD8細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の数の分散に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16J】PD-L1/panCK細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の数の分散に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16K】PD-L1細胞から半径10μm以内のPD-1/CD8+細胞の数の分散に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16L】PD-L1/CD8細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の最大数に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。
図16M】PD-L1細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の最大数に基づいた、ペンブロリズマブ処置後の生存全体の予測のためのKaplan-Meier生存曲線である。各特徴量についてである。コホートを、特徴量の分布の中央値をカットオフとして使用して2つの群に分けた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Lackie,DICTIONARY OF CELL AND MOLECULAR BIOLOGY,Elsevier(4th ed.2007)、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,N.Y.1989)を参照されたい。「a」または「an」という用語は、「1つ以上」を意味することを意図している。「を含む(comprise)」、「を含む(comprises)」、および「を含んでいる」という用語は、ステップまたは要素の列挙に先行するとき、さらなるステップまたは要素の追加が、場合によるものであって、除外されるものではないことを意味することを意図している。
【0021】
抗体:本明細書の「抗体」という用語は、最も広範な意味で使用され、所望の抗原結合活性を呈する限りのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を含むがこれらに限定されない、さまざまな抗体構造を包含する。
【0022】
抗体断片:「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原を結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成した多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
バイオマーカー:本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」という用語は、生物学的試料または生物学的試料が得られる対象を特徴付けるために使用することができる、生物学的試料中に認められる何らかの分子または分子の群を指すものとする。例えば、バイオマーカーは、その存在、非存在、もしくは相対量が特定の細胞もしくは組織の種類もしくは状態を特徴とし、または特定の病理学的容態もしくは状態を特徴とし、または病理学的容態の重症度、病理学的容態の進行または退行の可能性、および/もしくは病理学的容態が特定の処置に応答する可能性を示す、分子または分子の群であってよい。別の例として、バイオマーカーは、細胞型または微生物(細菌、マイコバクテリウム、真菌、ウイルスなど)、または置換基分子もしくはその分子の群であってよい。
【0024】
バイオマーカー特異的試薬:一次抗体など、細胞試料中の1つ以上のバイオマーカーに直接、特異的に結合することができる特異的検出試薬。
【0025】
細胞試料:本明細書で使用される場合、「細胞試料」という用語は、細胞培養物、体液試料、または病理学的、組織学的、もしくは細胞学的解釈のために採取された外科標本など、インタクトな細胞を含有する何らかの試料を指す。
【0026】
検出試薬:「検出試薬」は、細胞試料中のバイオマーカー特異的試薬の近傍に染色剤を沈着させるために使用される何らかの試薬である。非限定的な例としては、バイオマーカー特異的試薬(一次抗体など)、二次検出試薬(一次抗体に結合することができる二次抗体など)、三次検出試薬(二次抗体に結合することができる三次抗体など)、バイオマーカー特異的試薬と直接的にまたは間接的に会合する酵素、蛍光染色剤または色素生成染色剤の沈着をもたらすこのような酵素と反応する化学物質、染色ステップ間に使用される洗浄試薬などが挙げられる。
【0027】
検出可能な部分:試料上に沈着した検出可能な部分の存在(すなわち、定性分析)および/または濃度(すなわち、定量分析)を示す検出可能なシグナル(視覚的、電子的、またはそ例外など)を生成することができる分子または材料。検出可能なシグナルは、光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外線周波数、可視光周波数、および紫外線周波数の光子を含む)の吸収、放出、および/または散乱を含む、何らかの公知のまたはまだ発見されていない機序によって生成することができる。「検出可能な部分」という用語は、色素生成の、蛍光の、リン光性の、および発光性の分子および材料、ある物質を別の物質へ変換して、(無色の物質を有色の物質へと変換するかもしくはその逆によって、または沈殿物を生成することもしくは試料の濁度を上昇させることによって)検出可能な差異を提供する触媒(酵素など)を含む。いくつかの例では、検出可能な部分は、クマリン、フルオレセイン(またはフルオレセイン誘導体および類似体)、ローダミン、レゾルフィン、ルミノフォアおよびシアニンを含むいくつかの一般的な化学クラスに属する蛍光体である。蛍光分子の追加の例は、Molecular Probes Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,Molecular Probes,Eugene,OR,ThermoFisher Scientific,11th Editionにおいて認めることができる。他の実施形態では、検出可能な部分は、ジアミノベンジジン(DAB)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL)、テトラメチルローダミン(DISCOVERY Purple)、N,N’-ビスカルボキシペンチル-5,5’-ジスルホナト-インド-ジカルボシアニン(Cy5)、およびローダミン110(ローダミン)を含む色素など、明視野顕微鏡を介して検出可能な分子である。
【0028】
特徴量:試料中のバイオマーカーのレベルまたはバイオマーカー間の関連性を示す値。例としては、発現強度(例えば、0+、1+、2+、3+尺度)、バイオマーカーに対して陽性の細胞数、細胞密度(例えば、ROIの領域にわたるバイオマーカー陽性細胞の数、ROIを規定する縁部の直線距離にわたるバイオマーカー陽性細胞、など)、画素密度(すなわち、ROIの領域にわたるバイオマーカー陽性画素の数、ROIを規定する縁部の直線距離にわたるバイオマーカー陽性画素の数、など)、バイオマーカー(複数可)を発現する細胞間の距離の平均値または中央値、などが挙げられる。特徴量は、合計量または全体的な量であってよい。
【0029】
組織化学的検出:組織試料の構造間の横断面の関連性の脈絡においてバイオマーカーまたは他の構造の顕微鏡による検出を可能にする様式で、組織試料中のバイオマーカーまたは他の構造をバイオマーカー特異的試薬または検出試薬で標識することを包含するプロセス。例としては、免疫組織化学(IHC)、色素生成インサイツハイブリッド形成(CISH)、蛍光インサイツハイブリッド形成(FISH)、銀インサイツハイブリッド形成(SISH)、ならびにホルマリン固定パラフィン包埋組織切片のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色が挙げられる。
【0030】
免疫チェックポイント分子:その活性化が細胞障害性T細胞応答を下方調節する免疫細胞によって発現されるタンパク質。例としては、PD-1、TIM-3、LAG-4、およびCTLA-4が挙げられる。
【0031】
免疫エスケープバイオマーカー:腫瘍がT細胞介在性免疫応答を回避するのを助ける腫瘍細胞によって発現されるバイオマーカー。免疫エスケープバイオマーカーの例としては、PD-L1、PD-L2、およびIDOが挙げられる。
【0032】
免疫学的バイオマーカー:特定のクラスの免疫細胞(CD3など)を示し、免疫応答(サイトカインタンパク質または特定の免疫細胞サブタイプ(複数可)の存在、非存在、または量など)を特徴付け、または免疫細胞の応答の種類もしくは程度に影響を及ぼす非免疫細胞の構造によって発現される、提示される、もしくはそうでなければ該構造上に位置するバイオマーカー(細胞表面で発現される抗原、MHC-リガンド複合体、および免疫エスケープバイオマーカーなど)を含むがこれらに限定されない、異常細胞に対する免疫応答を特徴とするかまたは該免疫応答に影響を与えるバイオマーカー。
【0033】
モノクローナル抗体:実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団を構成する個々の抗体が同一であり、および/または同一のエピトープを結合するが、例えば、自然に生じる突然変異を含有するか、またはモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる可能性のある変異体抗体は除かれ、このような変異体は概して、微量に存在する。通常、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を指向する。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集合から得られたものとしての抗体の特徴を示し、いかなる特定の方法によっても抗体の産生を必要とするものとして解釈されるものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されないさまざまな技術、またはこれらの組み合わせによって作製することができる。
【0034】
多重組織化学的染色:異なるバイオマーカーに結合する複数のバイオマーカー特異的試薬を単一の切片に適用し、異なる色彩の染色剤で染色する組織化学的染色法。
【0035】
PD-1軸指向型療法:PD-1が細胞活性を下方調節する能力を中断させる治療薬。例示的なPD-1軸指向型療法には、PD-1特異的モノクローナル抗体(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、およびチスレリズマブ)、PD-L1特異的モノクローナル抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびLY3300054)、およびPD-1小分子阻害剤(例えば、CA-170、Li&Tianによって総説されている前臨床開発中のその他)が含まれる。
【0036】
試料:本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、バイオマーカーの存在または非存在について検査することができる対象から得られた何らかの材料を指すものとする。
【0037】
二次検出試薬:バイオマーカー特異的試薬に特異的に結合することができる特異的検出試薬。
【0038】
切片:名詞として使用するとき、顕微鏡解析に適した組織試料の薄片であって、通常、ミクロトームを使用して切断する。動詞として使用するとき、切片を生成するプロセス。
【0039】
連続切片:本明細書で使用される場合、「連続切片」という用語は、組織試料からミクロトームによって連続して切断された一連の切片のいずれか1つを指すものとする。2つの切片が互いに「連続切片」と見なされるためには、必ずしも組織からの連続切片である必要はないが、組織学的染色後に構造を互いに一致させることができるように、同じ空間的な関連性で十分に類似した組織構造を概して含有しているものとする。
【0040】
単式組織化学的染色:単一のバイオマーカー特異的試薬を単一の切片に適用し、単一の色彩の染色剤で染色する組織化学的染色法。
【0041】
特異的検出試薬:細胞試料との関連で、標的化学構造に特異的に結合することができる物質の何らかの組成物。本明細書で使用される場合、「特異的結合」、「に特異的に結合する」、もしくは「に特異的な」という句、または他の類似の繰り返しは、標的と、生物分子を含む異種性分子集団の存在下で標的の存在を決定する特異的検出試薬との間の測定可能かつ再現性のある相互作用を指す。例えば、標的に特異的に結合する抗体は、より容易には、他の標的に結合するよりも大きな親和性、結合力で、および/または長い持続時間で、この標的を結合する抗体である。一実施形態では、特異的な検出試薬が無関連の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、標的への抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含むことができるが、該結合を必要とはしない。例示的な特異的検出試薬には、特定のヌクレオチド配列に特異的な核酸プローブ;抗体およびその抗原結合断片;ならびにADNECTIN(第10世代FN3フィブロネクチンに基づく足場、Bristol-Myers-Squibb Co.)、AFFIBODY(S.aureus由来のプロテインAのZドメインに基づく足場、Affibody AB,Solna,Sweden)、AVIMER(ドメインA/LDL受容体に基づく足場、Amgen,Thousand Oaks,CA)、dAb(VHまたはVL抗体ドメインに基づく足場、GlaxoSmithKline PLC,Cambridge,UK)、DARPin(アンキリンリピートタンパク質に基づく足場、Molecular Partners AG,Zurich,CH)、ANTICALIN(リポカリンに基づく足場、Pieris AG,Freising,DE)、NANOBODY(VHH(ラクダIg)に基づく足場、Ablynx N/V,Ghent,BE)、TRANS-BODY(トランスフェリンに基づく足場、Pfizer Inc.,New York,NY)、SMIP(Emergent Biosolutions,Inc.,Rockville,MD)、およびTETRANECTIN(テトラネクチンのC型レクチンドメイン(CTLD)に基づく足場、Borean Pharma A/S,Aarhus,DK)が含まれる。このような操作された特異的結合構造の説明は、Wurch et al.,Development of Novel Protein Scaffolds as Alternatives to Whole Antibodies for Imaging and Therapy:Status on Discovery Research and Clinical Validation,Current Pharmaceutical Biotechnology,Vol.9,pp.502-509(2008)によって総説されており、その内容は参照により組み込まれる。
【0042】
染色剤または染色する:名詞として使用されるとき、「染色剤」という用語は、明視野顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法などを含む顕微鏡解析のために細胞試料中の特定の分子または構造を視覚化するために使用することができる何らかの物質を指すものとする。動詞として使用されるとき、「染色する」という用語は、細胞試料上への染色剤の沈着を結果としてもたらす何らかのプロセスを指すものとする。
【0043】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」または「個体」という用語は哺乳動物である。哺乳動物としては、飼い馴らされた動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
【0044】
検査試料:試料が得られた時点で結果が不明な対象から得られた腫瘍試料。
【0045】
組織試料:本明細書で使用される場合、「組織試料」という用語は、試料が得られた対象内で存在した細胞間の横断面の空間的関連性を保存する細胞試料を指すものとする。
【0046】
腫瘍試料:腫瘍から得られた組織試料。
【0047】
II.バイオマーカーの説明
CD3:CD3は、細胞表面受容体複合体であり、T細胞系列を有する細胞について規定するバイオマーカーとして頻繁に使用される。CD3複合体は、4つの異なるポリペプチド鎖から構成されている。すなわち、CD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、CD3イプシロン鎖、およびCD3ゼータ鎖である。CD3ガンマおよびCD3デルタは各々、CD3イプシロンとヘテロ二量体(εγホモ二量体およびεδヘテロ二量体)を形成するのに対し、CD3ゼータは、ホモ二量体(ζζホモ二量体)を形成する。機能的には、εγホモ二量体、εδヘテロ二量体、およびζζホモ二量体は、T細胞受容体複合体とシグナル伝達複合体を形成する。ヒトCD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、CD3イプシロン鎖、およびCD3ゼータ鎖についての例示的な配列(ならびにそのアイソフォームおよび変異体)はそれぞれ、UniProt受入番号P09693(本明細書で配列番号1で開示されている正準アミノ酸配列)、P04234(本明細書で配列番号2で開示されている正準アミノ酸配列)、P07766(本明細書で配列番号3で開示されている正準アミノ酸配列)、およびP20963(本明細書で配列番号4で開示されている正準アミノ酸配列)で認めることができる。本明細書で使用される場合、「ヒトCD3タンパク質バイオマーカー」という用語は、正準ヒト配列および正準配列の機能を維持するその天然の変異体を有する何らかのCD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、CD3イプシロン鎖、およびCD3ゼータ鎖ポリペプチドを包含する。すなわち、正準ヒト配列および正準配列の機能を維持するその天然の変異体を有するCD3ガンマ鎖、CD3デルタ鎖、CD3イプシロン鎖、およびCD3ゼータ鎖ポリペプチドのうちの1つ以上を含むεγホモ二量体、εδヘテロ二量体、およびζζホモ二量体、ならびに先のCD3ホモ二量体またはヘテロ二量体のうちの1つ以上を含む何らかのシグナル伝達複合体である。いくつかの実施形態では、ヒトCD3タンパク質バイオマーカー特異的薬剤は、CD3ガンマ鎖ポリペプチド(配列番号1のポリペプチドなど)、CD3デルタ鎖ポリペプチド(配列番号2のポリペプチドなど)、CD3イプシロン鎖ポリペプチド(配列番号3のポリペプチドなど)、もしくはCD3ゼータ鎖ポリペプチド(配列番号4のポリペプチドなど)内で構造(エピトープなど)を特異的に結合する、またはεγホモ二量体、εδヘテロ二量体、もしくはζζホモ二量体内で位置する構造(エピトープなど)に結合する何らかのバイオマーカー特異的薬剤を包含する。
【0048】
CD8:CD8は、細胞障害性抑制因子T細胞サブセット、胸腺細胞、ある特定のナチュラルキラー細胞で、および骨髄細胞の亜集団内に認められるヘテロ二量体のジスルフィド結合膜貫通糖タンパク質である。CD8受容体のヒトアルファ鎖およびベータ鎖(ならびにそのアイソフォームおよび変異体)についての例示的な配列はそれぞれ、Uniprot受入番号P01732(本明細書で配列番号5で開示される正準アミノ酸配列)およびP10966(本明細書で配列番号6で開示される正準アミノ酸配列)で認めることができる。本明細書で使用される場合、「ヒトCD8タンパク質バイオマーカー」という用語は、正準ヒト配列を有する何らかのCD8アルファ鎖ポリペプチドおよび正準配列の機能を維持するその天然の変異体;正準ヒト配列を有する何らかのCD8ベータ鎖および正準配列の機能を維持するその天然の変異体;正準ヒト配列を有するCD8アルファ鎖ポリペプチドおよび正準配列の機能を維持するその天然の変異体を含む何らかの二量体;ならびに/または正準ヒト配列を有するCD8ベータ鎖ポリペプチドおよび正準配列の機能を維持するその天然の変異体を包含する。いくつかの実施形態では、ヒトCD8タンパク質バイオマーカー特異的薬剤は、CD8アルファ鎖ポリペプチド(配列番号5のポリペプチドなど)、CD8ベータ鎖ポリペプチド(配列番号6のポリペプチドなど)内で構造(エピトープなど)を得意的に結合する、またはCD8二量体内に位置する構造(エピトープなど)に結合する何らかのバイオマーカー特異的薬剤を包含する。
【0049】
CD68:CD68は、位置17p13.1の17番染色体に位置するCD68遺伝子によってコードされる糖タンパク質である。CD68タンパク質は、さまざまな異なる血球および筋細胞の細胞質顆粒内に認められ、単球、組織球、巨細胞、クッパー細胞、および破骨細胞を含むマクロファージ系列の細胞についてのバイオマーカーとして頻繁に使用される。ヒトCD68(ならびにそのアイソフォームおよび変異体)の例示的な配列は、Uniprot受入番号P34810(本明細書で配列番号7で開示される正準アミノ酸配列)で認めることができる。本明細書で使用される場合、「ヒトCD68タンパク質バイオマーカー」という用語は、正準ヒト配列を有する何らかのCD68ポリペプチドおよび正準配列の機能を維持するその天然の変異体を包含する。いくつかの実施形態では、ヒトCD20タンパク質バイオマーカー特異的薬剤は、ヒトCD68ポリペプチド(配列番号7のポリペプチドなど)内の構造(エピトープなど)を特異的に結合する何らかのバイオマーカー特異的薬剤を包含する。
【0050】
汎サイトケラチン:本明細書で使用される場合、「汎サイトケラチン」および「PanCK」は、組織試料中の上皮組織を特異的に染色するのに十分な複数のサイトケラチンに特異的に結合する何らかのバイオマーカー特異的試薬またはバイオマーカー特異的試薬の群を指す。例示的な汎サイトケラチンバイオマーカー特異的試薬は通常、以下のいずれかを含む。(a)複数のサイトケラチンに共通のエピトープを認識する単一のサイトケラチン特異的試薬であって、組織のほとんどの上皮細胞が、複数のサイトケラチンのうちの少なくとも1つを発現するか、または(b)バイオマーカー特異的試薬のカクテルが複数のサイトケラチンと特異的に反応するようなカクテルであって、組織のほとんどの上皮細胞が、複数のサイトケラチンのうちの少なくとも1つを発現する。この定義における「カクテル」への言及は、複数の各メンバーを含む単一の組成物、または複数の各メンバーを別個の組成物として提供することの両方を含むが、該複数を単一の色素またはそれらの組み合わせで染色する。PanCKカクテルは、NordiQCによって総説されている。いくつかの実施形態では、PanCKバイオマーカー特異的試薬は、5D3、LP34、AE1、AE2、AE3、MNF116、およびPCK-26からなる群から選択される抗体クローンのうちの2つ以上を含有する抗体カクテルを含む。一実施形態では、PanCKカクテルは、AE1およびAE3のカクテル、AE1、AE3、および5D3のカクテル、ならびにAE1、AE3、およびPCK26のカクテルからなる群から選択される。AE1およびAE3のカクテルは、Agilent Technologies(カタログ番号GA05361-2、IS05330-2、IR05361-2、M351501-2およびM351529-2)から市販されている。AE1、AE3、および5D3のカクテルは、BioCare(カタログ番号CM162、IP162、OAI162、およびPM162)およびAbcam(カタログ番号ab86734)から市販されている。AE1、AE3、およびPCK26のカクテルは、Roche(カタログ番号760-2135)から入手可能である。
【0051】
PD1:プログラム死1(PD-1)は、2番染色体上のPDCD1遺伝子によってコードされる受容体のCD28ファミリーのメンバーである。ヒトPD-1タンパク質(ならびにそのアイソフォームおよび変異体)についての例示的な配列は、Uniprot受入番号Q15116(本明細書で配列番号8で開示される正準アミノ酸配列)で認めることができる。いくつかの実施形態では、ヒトPD-1タンパク質バイオマーカー特異的薬剤は、ヒトPD-1ポリペプチド(配列番号8のポリペプチドなど)内の構造(エピトープなど)を特異的に結合する何らかのバイオマーカー特異的薬剤を包含する。
【0052】
PD-L1:プログラム死リガンド1(PD-L1)は、9番染色体上のCD274遺伝子によってコードされる1型膜貫通タンパク質である。PD-L1は、PD-1およびCD80のためのリガンドとして作用する。ヒトPD-L1タンパク質(ならびにそのアイソフォームおよび変異体)についての例示的な配列は、Uniprot受入番号Q9NZQ7(本明細書で配列番号9で開示される正準アミノ酸配列)で認めることができる。いくつかの実施形態では、ヒトPD-L1タンパク質バイオマーカー特異的薬剤は、ヒトPD-L1ポリペプチド(配列番号9のポリペプチドなど)内の構造(エピトープなど)を特異的に結合する何らかのバイオマーカー特異的薬剤を包含する。
【0053】
LAG3:リンパ球活性化遺伝子3タンパク質(LAG3)は、ヒト12番染色体上のLAG3遺伝子によってコードされる免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである。ヒトLAG3タンパク質(ならびにそのアイソフォームおよび変異体)についての例示的な配列は、Uniprot受入番号P18627(本明細書で配列番号10で開示される正準アミノ酸配列)で認めることができる。いくつかの実施形態では、ヒトLAG3タンパク質バイオマーカー特異的薬剤は、ヒトLAG3ポリペプチド(配列番号10のポリペプチドなど)内の構造(エピトープなど)を特異的に結合する何らかのバイオマーカー特異的薬剤を包含する。
【0054】
III.スコアリング関数の生成
図1は、本明細書に開示されるスコアリング関数を得るための例示的なアプローチを示す流れ図である。本方法およびシステムのスコアリング関数は概して、PD-1軸指向型療法を用いた処置に先立って患者のコホートに由来し、結果データ(3年または5年の全生存期間、無増悪生存期間、無再発生存期間、進行性疾患、安定疾患、部分奏功、完全奏功など)が入手可能な腫瘍試料から得られる101。検査するバイオマーカーのパネルが選択され、コホートの試料はバイオマーカー102について染色され、撮像される(しばしば形態学的に染色された連続切片とともに)103。関心対象の領域(ROI)は、デジタル画像(複数可)104において特定され、複数のバイオマーカー特徴がROI(複数可)105から抽出される。抽出された特徴を特徴選択関数によって評価し、特徴選択関数106を使用することによって、PD-1軸への応答と相関する該特徴を特定する。選択された特徴の1つ以上は、1つ以上のモデリング関数を使用して結果に対してモデル化され、候補スコアリング関数が特定され、場合により、1つ以上のカットオフが選択されて、スコアにより、例えば、ROC曲線を使用することによってコホートが群別化され(例えば、「応答する可能性が高い」群および「応答する可能性が低い」群、または「応答する可能性が高い」および「応答する可能性が低い」)、複数の群を比較するKaplan-Meier曲線を使用する107。次に、群間の所望の分離を示すスコアリング関数およびカットオフの組み合わせが、本明細書に説明されるスコア化システムおよび方法に含めるために選択される。
【0055】
III.A.スコアリング関数を生成するための試料および試料調製
スコアリング関数は通常、腫瘍に罹患しており、PD-1軸指向型療法に対する応答が既知である対象のコホートから得られた組織切片についてモデル化される101。いくつかの実施形態では、腫瘍は、癌腫、リンパ腫、または肉腫などの固形腫瘍である。一実施形態では、腫瘍は、皮膚、乳房、頭および/または頚部、肺、上部消化管(食道および胃を含む)、女性生殖器系(子宮、ファロピー、および卵巣の腫瘍を含む)、下部消化管(結腸、直腸、および肛門の腫瘍を含む)、腎尿路生殖器、外分泌、内分泌、腎臓、神経、またはリンパ球の起源の腫瘍である。一実施形態では、対象は、黒色腫、乳癌、卵巣癌、膵癌、頭頚部癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌(結腸、直腸、および肛門の癌を含む)、前立腺、尿路上皮癌、またはリンパ腫に罹患している。具体的な実施形態では、腫瘍は、非小細胞肺癌、頭頚部の扁平上皮癌、ホジキンリンパ腫、尿路上皮癌、胃癌、腎細胞癌、肝細胞癌、または大腸癌である。
【0056】
得られた試料101は通常、例えば、固定、蝋マトリックス(パラフィンなど)への包埋、および切片作製(ミクロトームなどを使用)を含む、組織化学的染色と和合性のある様式で加工された組織試料である。得られた試料が、関心対象のバイオマーカーのための試料の組織化学的染色および染色された試料のデジタル画像を生成することと和合性がある限り、本開示によって何ら特定の加工ステップは必要とされない。具体的な実施形態では、スコアリング関数は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料のミクロトーム切片を使用してモデル化される。加えて、スコアリング関数の生成のために、コホート101の試料は、疾患の再発、疾患の進行、疾患による死亡、全体的な死亡、進行性疾患、安定疾患、部分奏功、および/または完全奏功など、結果が既知である試料であるものとする。
【0057】
III.B.バイオマーカーパネル
スコアリング関数を生成するとき、試料の少なくとも1つの切片は、バイオマーカー特異的試薬のパネルで染色される102。パネルには通常、少なくとも1つの上皮マーカー特異的試薬(Pan-CK特異的試薬など)、少なくとも1つの免疫細胞特異的試薬(CD3、CD8、および/またはCD68特異的試薬など)、および少なくとも1つのPD-1軸バイオマーカー特異的試薬(PD-1、PD-L1、および/またはPD-L2特異的試薬)が含まれる。いくつかの実施形態では、パネルは、LAG3特異的試薬など1つ以上の追加の免疫チェックポイントバイオマーカー特異的試薬をさらに含むことができる。一実施形態では、バイオマーカー特異的試薬パネルは、CD8、上皮マーカー(EM)、CD68、CD3、およびPD-L1を含むパネル1、ならびにCD8、上皮マーカー(EM)、PD-L1、PD-1、およびLAG3を含むパネル2からなる群から選択される。パネル1およびパネル2において有用な上皮マーカーの例としては、サイトケラチンが挙げられる。一実施形態では、上皮マーカーは、PanCKバイオマーカー特異的試薬によって染色された1セットのサイトケラチンである。
【0058】
バイオマーカー特異的試薬のパネルを、1セットの適切な検出試薬と併用し、バイオマーカーで染色された切片を作製する。バイオマーカー染色は通常、バイオマーカーとバイオマーカー特異的試薬との間の特異的結合を促進する条件下で、試料の切片をバイオマーカー特異的試薬と接触させることによって達成される。次に、試料を1セットの検出試薬と接触させ、検出試薬がバイオマーカー特異的試薬と相互作用して、バイオマーカーの近傍にある検出可能な部分を沈着させるのを容易にし、それによりバイオマーカーに局在した検出可能なシグナルが生成する。通常、洗浄ステップは、組織の望ましくない非特異的染色を防ぐために、異なる試薬の適用の間に実行される。バイオマーカーで染色された切片は、場合により、高分子構造を可視化するために、造影剤(ヘマトキシリン染色剤など)で追加的に染色することができる。加えて、バイオマーカーで染色された切片の連続切片は、ROIの特定を容易にするために形態学的染色剤で染色されることがある。
【0059】
III.C.1.標識スキームおよび関係試薬
バイオマーカー特異的試薬は、バイオマーカー特異的試薬の近傍にある検出可能な部分の沈着を介在させることにより、バイオマーカーの検出を容易にする。
【0060】
いくつかの場合において、検出可能な部分がバイオマーカー特異的試薬に直接結合しており、したがって、バイオマーカー特異的試薬がその標的に結合する際、試料上に沈着する(概して、直接標識法と称される)。直接標識法はよく、より直接的に定量することができるが、感度の欠如に悩まされることがよくある。他の実施形態では、検出可能な部分の沈着は、バイオマーカー特異的試薬と関係する検出試薬の使用によってもたらされる(概して、間接標識法と称される)。間接標識法は、バイオマーカー特異的試薬の近傍に沈着することができる検出可能な部分の数が増えるので、特に色素と併用するとき、直接標識法よりも感度が高いことがよくある。
【0061】
いくつかの実施形態では、バイオマーカー特異的試薬に局在する酵素反応を介して検出可能な部分が沈着する間接的な方法が使用される。このような反応に適した酵素は周知であり、酸化還元酵素、加水分解酵素、および過酸化酵素を含むが、これらに限定されない。明示的に含まれる具体的な酵素は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびβ-ラクタマーゼである。該酵素は、バイオマーカー特異的試薬に直接結合することができるか、または標識コンジュゲートを介してバイオマーカー特異的試薬と間接的に結合することができる。本明細書で使用される場合、「標識コンジュゲート」は以下を含む:
(a)特異的検出試薬、および
(b)特異的検出試薬に結合した酵素であって、組織試料上での色素のインサイツ生成および/または沈着をもたらすのに適した反応条件下で、色素生成基質、シグナル伝達コンジュゲート、または酵素反応性色素と反応する、酵素。
非限定的な例では、標識コンジュゲートの特異的検出試薬は、二次検出試薬(一次抗体に結合した種特異的二次抗体、ハプテン結合一次抗体に結合した抗ハプテン抗体、またはビオチン化一次抗体に結合したビオチン結合タンパク質)、三次検出試薬(二次抗体に結合した種特異的三次抗体、ハプテン結合二次抗体に結合した抗ハプテン抗体、またはビオチン化二次抗体に結合したビオチン結合タンパク質など)、または他のこのような準備物であることができる。このように試料に結合したバイオマーカー特異的試薬に局在する酵素は次に、検出可能な部分を沈着させるために多くのスキームにおいて使用することができる。
【0062】
いくつかの場合では、酵素は色素生成化合物/基質と反応する。色素生成化合物/基質の詳細な非限定的な例としては、4-ニトロフェニルホスパート(4-nitrophenyphospate)(pNPP)、ファストレッド、ブロモクロロインドリルホスファート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、ファストレッド、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’-アジド-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリンスルホナート](ABTS)、o-ジアニシジン、4-クロロナフトール(4-CN)、ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)、o-フェニレンジアミン(OPD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトピラノシド(X-Gal)、メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド(MU-Gal)、p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシド(PNP)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルー、またはテトラゾリウムバイオレットが挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態では、酵素は、金属組織学的検出スキームにおいて使用することができる。金属組織学的検出方法には、水溶性金属イオンおよび酵素の酸化還元不活性基質と組み合わせてアルカリホスファターゼなどの酵素を使用することが含まれる。いくつかの実施形態では、基質は酵素によって酸化還元活性剤に変換され、酸化還元活性剤は金属イオンを還元し、この金属イオンに検出可能な沈殿物を形成させる。(例えば、2004年12月20日出願の米国特許出願第11/015,646号、PCT公開第2005/003777号および米国特許出願公開第2004/0265922号を参照されたく、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。)。金属組織学的検出方法には、酸化還元酵素(セイヨウワサビペルオキシダーゼなど)を水溶性金属イオン、酸化剤、および還元剤とともに使用して、検出可能な沈殿物を再度形成することが含まれる。(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,670,113号を参照されたい)。
【0064】
いくつかの実施形態では、酵素作用は、酵素と色素自体との間で起こり、反応は、色素を非結合種から試料上に沈着した種に変換する。例えば、DABとペルオキシダーゼ(セイヨウワサビペルオキシダーゼなど)との反応は、DABを酸化させ、このDABを沈殿させる。
【0065】
さらに他の実施形態では、検出可能な部分は、酵素と反応して試料または他の検出構成要素に結合することができる反応種を形成するように構成された潜在型反応性部分を含むシグナル伝達コンジュゲートを介して沈着する。これらの反応種は、それらの生成の近くで、すなわち酵素の近くで試料と反応することができるが、非反応種に迅速に変換するので、シグナル伝達コンジュゲートは、酵素が沈着する部位から遠位の部位に沈着しない。潜在型反応性部分の例としては、WO2015124703A1に説明されているものなどのキノンメチド(QM)類似体、およびWO2012003476A2に説明されているものなどのチラミドコンジュゲートが挙げられ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの例では、潜在型反応性部分は、N,N’-ビスカルボキシペンチル-5,5’-ジスルホナト-インド-ジカルボシアニン(Cy5)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL)、テトラメチルローダミン(DISCOパープル)、およびローダミン110(ローダミン)などの色素に直接結合している。他の例では、潜在型反応性部分は、特異的結合対の片方のメンバーに結合し、色素は、特異的結合対のもう片方のメンバーに連結する。他の例では、潜在型反応性部分は、特異的結合対の片方のメンバーに連結され、酵素は、特異的結合対のもう片方のメンバーに連結され、該酵素は、(a)色素生成基質と反応して、色素の生成をもたらすか、または(b)色素と反応して、色素(DABなど)の沈着をもたらす。具体的な結合対の例としては、以下が挙げられる。
(1)潜在型反応性部分に連結されたビオチンまたはビオチン誘導体(デスチオビオチンなど)、およびビオチン結合実体(アビジン、ストレプトアビジン、脱グリコシル化アビジン(NEUTRAVIDINなど)など)、またはニトロ化チロシンをそのビオチン結合部位に有し、色素へまたは色素生成基質と反応性のあるもしくは色素と反応性のある酵素へ連結されたビオチン結合タンパク質(CAPTAVIDINなど))(例えば、色素がDABであるとき、ビオチン結合タンパク質へ連結されたペルオキシダーゼ)、ならびに
(2)潜在型反応性部分に連結されたハプテン、および色素へまたは色素生成基質と反応性のあるもしくは色素と反応性のある酵素へ連結された抗ハプテン抗体(例えば、色素がDABのとき、ビオチン結合タンパク質へ連結されたペルオキシダーゼ)。
【0066】
バイオマーカー特異的試薬および検出試薬の組み合わせの非限定的な例は、表1に明らかにされており、具体的に含まれている。
【表1】
具体的な実施形態では、表1に明らかにされるバイオマーカー特異的試薬および特異的検出試薬は、抗体である。当業者によって認識されるであろうように、バイオマーカー特異的試薬の各々の検出スキームは、同じであっても、または異なっていてもよい。
【0067】
本発明の方法を用いての使用に適した検出試薬を含む市販の検出試薬または検出キットの非限定的な例としては、VENT ANA ultraView検出システム(HRPおよびAPを含む、酵素に結合した二次抗体)、VENT ANA iVIEW検出システム(ビオチン化抗種二次抗体およびストレプトアビジン結合酵素)、VENTANA OptiView検出システム(OptiView)(ハプテンに結合した抗種二次抗体および酵素多量体に結合した抗ハプテン三次抗体)、VENTANA Amplificationキット(一次抗体結合の部位にある酵素の数を増幅させるために、先のVENTANA検出システムのうちのいずれかと共に使用することができる非結合二次抗体)、VENTANA OptiView Amplificationシステム(ハプテンに結合した抗種二次抗体、酵素多量体に結合した抗ハプテン三次抗体、および同じハプテンに結合したチラミドが挙げられる。使用の際、二次抗体は試料と接触して一次抗体への結合をもたらす。次に、試料を抗ハプテン抗体とともにインキュベートして、酵素を二次抗体に会合させる。次に、試料をチラミドとともにインキュベートして、追加のハプテン分子の沈着をもたらす。次に、試料を抗ハプテン抗体とともに再度インキュベートして、追加の酵素分子の沈着をもたらす。次に、試料を検出可能な部分とともにインキュベートして、色素沈着をもたらし)、VENT ANA DISCOVERY、DISCOVERY OmniMap、DISCOVERY UltraMap抗ハプテン抗体、二次抗体、色原体、蛍光体、および色素キットであって、それらの各々は、Ventana Medical Systems,Inc.(Tucson,Arizona)、PowerVisionおよびPowerVision+IHC Detection Systems(HRPまたはAPと直接、酵素対抗体の比率の高いコンパクトなポリマーへと重合する二次抗体)、ならびにDAKO EnVision(商標)+System(二次抗体へ結合する酵素標識ポリマー)から入手可能である。
【0068】
III.C.2.多重標識スキーム
一実施形態では、バイオマーカー特異的試薬および検出試薬は、多重染色法において適用される。多重法では、バイオマーカー特異的試薬および検出試薬は、異なるバイオマーカーを示差標識することができる様式で適用される。
【0069】
異なるバイオマーカーの異なる標識を達成する1つの方法は、異なる抗体間または検出試薬間のオフターゲット交差反応性をもたらさないバイオマーカー特異的試薬、検出試薬、および酵素の組み合わせの組み合わせを選択することである(「組み合わせ染色」と称する)。例えば、二次検出試薬が使用される場合、各二次検出試薬は、切片上で使用される一次抗体のうちの1つのみに結合することができる。例えば、異なる動物種(マウス、ウサギ、ラット、および得られた抗体など)に由来する一次抗体を選択することができ、その場合、種特異的な二次抗体を使用することができる。別の例として、各一次抗体は、異なるハプテンタグまたはエピトープタグを含むことができ、二次抗体は、ハプテンタグまたはエピトープタグに特異的に結合するように選択される。加えて、検出試薬の各セットは、各バイオマーカー特異的試薬の近傍に異なる酵素を沈着させることなどによって、切片上に異なる検出可能な実体を沈着させるのに適しているものとする。このような準備物の例は、米国特許第8,603,765号に示されている。このような準備物は、バイオマーカー特異的試薬および関係する特異的結合試薬の各セットを同時に試料上に存在させることができ、ならびに/またはバイオマーカー特異的試薬および検出試薬のカクテルで染色を実行することができ、それによって染色ステップの数を低減させることができるという潜在的な利点を有する。しかしながら、試薬が異なる酵素と交差反応する可能性があり、さまざまな抗体が互いに交差反応して異常な染色につながる可能性がある場合、このような準備物は必ずしも実行可能であるとは限らない可能性がある。
【0070】
異なるバイオマーカーの示差標識を達成する別の方法は、各バイオマーカーについての試料を順次染色することである。このような実施形態では、第1のバイオマーカー特異的試薬が切片と反応し、続いて第1のバイオマーカー特異的試薬および他の検出試薬に対して二次検出試薬が反応し、結果として第1の検出可能な実体の沈着をもたらす。次に、切片を処理して、沈着した染色剤を適所に残したまま、バイオマーカー特異的試薬および関係する検出試薬を切片から除去する。このプロセスは、後続のバイオマーカー特異的試薬に対して繰り返される。バイオマーカー特異的試薬および関係する検出試薬を除去するための方法の例としては、その内容が参照により組み込まれるStack et al.,Multiplexed immunohistochemistry,imaging,and quantitation:A review,with an assessment of Tyramide signal amplification,multispectral imaging and multiplex analysis,Methods,Vol.70,Issue 1,pp 46-58(Nov.2014)、およびPCT/欧州特許第2016/057955号によって開示されたものなど、試料から抗体を溶離する緩衝液の存在下で試料を加熱すること(「ヒートキル法」と称される)が挙げられる。
【0071】
当業者によって認識されるように、組み合わせ染色法および逐次染色法を組み合わせることができる。例えば、一次抗体の部分セットのみが組み合わせ染色法と和合性がある場合、逐次染色法を改変することができ、組み合わせ染色と和合性のある抗体が、組み合わせ染色法を使用して試料に適用され、残りの抗体は、逐次染色法を使用して適用される。
【0072】
III.C.3.対比染色:
所望の場合、バイオマーカーで染色されたスライドを対比染色して、手動または自動のいずれかで、ROIを特定するために形態学的に関連する領域を特定するのを支援することができる。対比染色剤の例としては、ヘマトキシリン(青色からスミレ色までに染色)、メチレンブルー(青色に染色)、トルイジンブルー(核を濃い青色に、多糖類をピンク色から赤色までに染色)、ニュクリアファストレッド(ケルネクトロート色素とも呼ばれる、赤色に染色)、およびメチルグリーン(緑色に染色);エオシン(ピンク色に染色)などの非核色素生成染色剤;4’,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI、青色に染色)、ヨウ化プロピジウム(赤色に染色)、ヘキスト染色剤(青色に染色)、ニュクリアグリーンDCS1(緑色に染色)、ニュクリアイエロー(ヘキストS769121、中性pH下で黄色に染色し、酸性pH下で青色に染色)、DRAQ5(赤色に染色)、DRAQ7(赤色に染色);蛍光体標識ファロイジン、(繊維状アクチンを染色、色彩は、結合した蛍光体による)などの蛍光非核染色剤が挙げられる。
【0073】
III.C.4.試料の形態学的染色
ある特定の実施形態では、バイオマーカーで染色された切片の連続切片を形態学的に染色することも望まれる102。この切片は、スコア化が行われるROIを特定するために使用することができる103。基本的な形態学的染色技術はしばしば、核構造を第1の色素で染色し、細胞質構造を第2の染色剤で染色することに依存している。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色、ならびにLee染色(メチレンブルーおよび塩基性フクシン)を含むがこれらに限定されない多くの形態学的染色が公知である。具体的な実施形態では、各バイオマーカーで染色されたスライドの少なくとも1枚の連続切片は、H&E染色されている。手動および自動の方法を含む、H&E染色を適用する何らかの方法を使用することができる。一実施形態では、試料の少なくとも1枚の切片は、自動染色システムで染色された、H&E染色された試料である。H&E染色を実行するための自動システムは通常、バッチ染色(「ディップアンドダンク」とも称される)または個々のスライド染色の2つの染色原理のうちの1つで作動する。バッチ染色装置は概して、多くのスライドが同時に浸漬される試薬のバットまたは槽を使用する。その一方で、個々のスライド染色装置は、試薬を各スライドに直接適用し、2つのスライドが同じ試薬の一定分量を共有することはない。市販のH&E染色装置の例としては、Roche製のH&E染色装置シリーズのVENTANA SYMPHONY(個別スライド染色装置)およびVENTANA HE 600(個別スライド染色装置);Agilent Technologies製のDako CoverStainer(バッチ染色装置);Leica Biosystems Nussloch GmbH製のLeica ST4020 Small Linear Stainer(バッチ染色装置)、Leica ST5020 Multistainer(バッチ染色装置)、およびLeica ST5010 Autostainer XLシリーズ(バッチ染色装置)のH&E染色装置が挙げられる。
【0074】
III.D.ROI、オブジェクト、および特徴
一実施形態では、パネルのバイオマーカーと関係する1つ以上のオブジェクトは、バイオマーカーで染色された試料のデジタル画像において特定される104。オブジェクトの数および/または異なるオブジェクトの相互の関連性は、スコアリング関数の開発のために評価される特徴を定義するために使用される。各パネルから検出することができる潜在的なオブジェクトの非限定的な例示的なパネルを、以下の表2において明らかにする。
【表2】
【0075】
いくつかの実施形態では、1つ以上の関心対象の領域(ROI)もまた、バイオマーカーで染色された試料のデジタル画像において特定される104。該ROIは、組織切片の生物学的に関連する位置を包含し、該位置から関連するオブジェクトが特徴計算のために特定される。一実施形態では、該ROIは、腫瘍領域(TR)、浸潤前線、および腫瘍周囲(PT)領域などの腫瘍含有組織切片の形態学的領域である。
【0076】
ROIは、形態学的領域に限定することができるか、形態学的領域の外側の領域を含むように(すなわち、ROIの余白を形態学的領域の外側に規定された距離に拡大することによって)拡大することができるか、または形態学的領域の副領域に(例えば、ROIを形態学的領域の周囲の内側に規定された距離に縮小することによって、または(ある特定の細胞型のベースライン密度などの)ある特定の特徴を有するROI内に領域を特定することによって)制限することができる。縁部(浸潤前線など)によって規定される形態学的領域の場合、ROIは、例えば、縁部のいずれかの地点の規定された距離内でのすべての地点、縁部のいずれかの地点の規定された距離内での縁部の片側にあるすべての地点、縁部領域全体を包含する最小の幾何形状領域(円、楕円、正方形、長方形など)、縁部領域の中央地点を中心とする規定された半径を有する円内でのすべての地点などとして規定することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、同じROIは、すべての切片およびバイオマーカーについて使用することができる。例えば、形態学的に規定されたROIは、試料のH&E染色された切片において特定することができ、バイオマーカーで染色されたすべての切片について使用することができる。他の実施形態では、異なるROIを異なるバイオマーカーについて使用することができる。例えば、H&E染色スライドを使用して、腫瘍領域など、第1のROIとして使用される特定の形態学的領域を特定することができる。次に、第2の1つのまたは複数のROIは、バイオマーカーで染色された切片のうちの1つにおいて特定することができ、例えば、ある特定の閾値密度で細胞のクラスを有する領域(例えば、上皮領域対間質領域)を特定するために使用することができる。次に、第2の1つのまたは複数のROIを特徴計算のために使用することができる。
【0078】
さまざまなROIの非限定的な例を表3に示す。
【表3】
【0079】
いくつかの実施形態では、ROIは、デジタル画像において手動で識別される。例えば、訓練を受けた専門家は、試料のデジタル画像上に1つ以上の形態学的領域(複数可)(腫瘍面積および/または浸潤前線など)の輪郭を手動で描くことができる。次に、画像に輪郭を描かれた面積(複数可)を、特徴の計算のためのROIとして、またはROIの計算のための基準点として使用することができる。
【0080】
他の実施形態では、コンピュータ実装システムは、ユーザがROIに注釈を付けるのを支援することができる(「半自動化ROI注釈」と称される)。例えば、ユーザは、デジタル画像上の1つ以上の領域の輪郭を描くことができるので、システムはそれを自動的に完全なROIへと変換する。例えば、所望のROIがPI、PO、および/またはPR領域である場合、ユーザは腫瘍領域および浸潤前線の輪郭を描くことができ、システムはユーザが定義したPI、PO、およびPR領域を自動的に描く。別の実施形態では、ROIがEAまたはSAである場合、ユーザは、腫瘍領域、および場合により、画像内の浸潤前線を描くことができるので、これをバイオマーカーで染色された画像に登録し、システムは、関連するEAおよびSAのROIを、EM+細胞の所定の距離内でのすべての細胞をEA内にあるものとして、および所定の距離を超えたすべての細胞をSA内にあるものとして標識することによって作成する。別の実施形態では、システムはまた、コンピュータビジョンおよび機械学習を使用して、輪郭を描かれたおよび/または自動生成された領域と同様の形態学的特徴を有する領域を特定するパターン認識機能を適用することもできる。したがって、例えば、腫瘍領域は、以下を含む方法によって半自動化された様式で注釈を付けることができる。
(a)ユーザは、腫瘍領域の輪郭を描くことにより、試料のH&E画像内の腫瘍領域に注釈を付け、かつ
(b)コンピュータシステムは、パターン認識機能を適用して、輪郭が描かれた領域の形態学的特徴を有する試料の追加の領域を特定し、ここで、腫瘍領域全体は、ユーザによって注釈が付けられた面積と、システムによって自動的に特定される面積とを含む。
別の例では、PR、PI、および/またはPOのROIは、以下を含む方法によって半自動化された様式で注釈を付けることができる。
(a)ユーザは、腫瘍領域および浸潤前線の輪郭を描くことによって、試料のH&E画像内の腫瘍領域に注釈を付け、かつ
(b)コンピュータシステムは、注釈付きの浸潤前線の規定された距離内のすべての画素を包含するPR、PI、および/またはPOの領域(複数可)を自動的に規定し、かつ
(c)コンピュータシステムは、パターン認識機能を適用して、ステップ(b)によって特定されたPI、PO、および/またはPRの領域の形態学的特徴を有する試料の追加の領域を特定する。
他の多くの配置も同様に使用することができる。ROIの生成が半自動化されている場合、ユーザは、ROIを拡大したり、解析から除外されることになっているROIまたはROI内のオブジェクトの領域に注釈を付けたりすることなどによって、コンピュータシステムによって注釈を付けられたROIを改変する選択肢が与えられることができる。
【0081】
他の実施形態では、コンピュータシステムは、ユーザからのいかなる直接の入力もなく、ROIを自動的に提案することができる(「自動化されたROI注釈」と称する)。例えば、以前に訓練された組織セグメンテーション関数または他のパターン認識関数を、注釈が付けられていない画像に適用して、所望の形態学的領域を特定して、ROIとして使用することができる。ユーザは、ROIを拡大したり、解析から除外されることになっているROIまたはROI内のオブジェクトの領域に注釈を付けて分析から除外したりするなど、コンピュータシステムによって注釈が付けられたROIを改変する選択肢が与えられることができる。
【0082】
1つ以上の特徴がROI(複数可)から抽出され、定量されて、各試料についての特徴量が得られる105。例示的な特徴には、例えば、ROI内のオブジェクトの総数、ROI内の特定のオブジェクトの密度、ROI内の異なるオブジェクト間の空間的関連性、ROI内の特定のオブジェクトの空間的分布、ROI内の異なるオブジェクトの数の比率および/または密度の比率、異なるROI内の同じオブジェクトの比率(例えば、EAのROI対SAのROI内の特定の細胞の比率またはPIのROI対POのROI内の特定の細胞の比率)、大きめのROI内に収まる小さめのROI内に収まる大きめのROIの総オブジェクトの分率(例えば、EA、SA、PI、PO、またはPTのROI内に収まるTAのROIの特定の細胞型の分率を含む。各パネルについての具体的な例示的特徴を表4に明らかにする。
【表4】
特に明記されていない限り、表4の特徴についてのROIは、腫瘍面積である 特に明記されていない限り、表4に列挙されているいかなる密度も、面積密度(すなわち、ROIの面積にわたる陽性細胞の数)である。表4で使用されているように、「PD1低」、「PD1中」、および「PD1高」は、低、中、および高のPD-1染色強度を有する個々の細胞を指す。一実施形態では、「PD1低」細胞は、検査されたすべての試料にわたって測定されたすべてのPD-1+細胞の最下位3分の1の染色強度を有するPD-1+細胞であり、「PD1中」細胞は、検査されたすべての試料にわたって測定されたすべてのPD-1+細胞の中間3分の1の染色強度を有するPD-1+細胞であり、「PD1高」細胞は、検査されたすべての試料にわたって測定されたすべてのPD-1+細胞の最上位3分の1の染色強度を有するPD-1+細胞である。
【0083】
III.F.スコアリング関数のモデル化
スコアリング関数を特定するために、PD-1軸指向型治療コースに応答する相対的な可能性を予測する能力について特徴がモデル化される。
【0084】
一実施形態では、特徴は、特徴選択機能を実行することによって選択することができる106。コホートの各メンバーの特徴量および結果データが特徴選択関数へと入力され、次に、特徴選択関数は該データを使用して、所望の結果との相対的な相関関係により、さまざまな特徴を階級分類する。例示的な特徴選択関数は、集合特徴選択関数(例えば、Random Forest関数を含む)、フィルタ方法関数(例えば、相互情報に基づく関数、(mRMR)/相関係数に基づく関数、およびReliefに基づく関数を含む)、および/または埋め込まれた特徴選択関数(弾性ネット/最小絶対縮小関数または選択演算子(LASSO)関数など)を含む。一実施形態では、候補モデルは、特徴選択関数によって特定される上位25個、上位20個、上位15個、上位10個、上位9個、上位8個、上位7個、上位6個、上位5個、上位4個、または上位3個の特徴を使用して作成される。別の実施形態では、該候補モデルは、少なくとも2つの異なる特徴選択関数の上位10個の特徴において特定される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つの特徴を使用する。別の実施形態では、該候補モデルは、少なくとも2つの特徴選択関数の上位5個の特徴に存在する少なくとも1つの特徴を含む。一実施形態では、「反応者」は、部分奏功または完全奏功のいずれかを有する患者と見なされる。一実施形態では、「反応者」は、安定疾患、部分奏功、または完全奏功を有する患者と見なされる。
【0085】
候補モデルは、コホートの各メンバーについての選択された特徴量および結果データをモデリング関数へと入力することによって生成される。スコアリング関数として、応答との一致度が最も高い候補モデルが選択される。例示的なモデリング関数は、二次判別分析(QDA)、線形判別分析(LDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、および人工ニューラルネットワーク(ANN)を含む。一実施形態では、候補関数は、デジタル画像から抽出された特徴のみに基づいてモデル化した。他の実施形態では、候補関数は、年齢、性別、ミスマッチ修復状態、および/またはマイクロサテライト不安定性状態などの他の臨床変数を含む。一実施形態では、モデルを使用して、処置後の進行性疾患対処置後の安定疾患対療法に対する部分奏功または完全奏功を予測する。一実施形態では、モデルを使用して、患者が処置後に進行性疾患に罹患することになる可能性対患者が療法に対して安定疾患、部分奏功、または完全奏功を有することになる可能性を予測する。一実施形態では、モデルを使用して、患者が処置後に進行性疾患または安定疾患に罹患することになる可能性対患者が療法に対して安定疾患、部分奏功、または完全奏功を有することになる可能性を予測する。
【0086】
加えて、1つ以上の層別化カットオフを選択して、相対リスク(「高リスク」および「低リスク」、四分位数、十分位数など)により、患者を「リスクビン」へと分けることができる107。一例では、層別化カットオフは、受信者演算子特性(ROC)曲線を使用して選択される。ROC曲線によって、ユーザはモデルの感度(すなわち、できるだけ多くの「陽性」または「応答する可能性が高い」候補を捕捉することを優先する)とモデルの特異度(すなわち、「応答する可能性が高い」候補についての誤検出を最小限にする)との平衡をとることができる。一実施形態では、カットオフは、リスクビンに返信する可能性が高いか、返信する可能性が低いかの間で選択され、選択されたカットオフは、感度および特異度の平衡がとれている。一実施形態では、層別化カットオフは、(a)処置後に進行性疾患に罹患する可能性が高い患者と(b)療法に対して安定疾患、部分奏功、または完全奏功を有する可能性が高い患者とを区別する。一実施形態では、層別化カットオフは、(a)処置後に進行性疾患に罹患する可能性が高い患者と、(b)処置後に安定疾患に罹患する可能性が高い患者と、(c)療法に対して部分奏功または完全奏功を有する可能性が高い患者とを区別する。一実施形態では、層別化カットオフは、(a)処置後に進行性疾患または安定疾患に罹患する可能性が高い患者と(b)療法に対して部分奏功または完全奏功を有する可能性が高い患者とを区別する。
【0087】
モデルは、所望の場合、計算機利用統計分析ソフトウェア一式(とりわけ、統計計算用のR Project(https://www.r-project.org/で入手可能)、SAS、MATLABなど)を使用して実行することができる。
【0088】
IV.スコアリング関数を使用したスコア化
スコアリング関数がモデル化され、層別化カットオフの選択肢が選択された後、スコアリング関数を検査試料の画像に適用して、検査試料についてスコアを計算することができる。図2は、先に説明したスコアリング関数を使用して検査試料をスコア化するための例示的なアプローチを示す流れ図である。腫瘍組織切片をまず、PD-1軸指向型療法が検討されている患者から取得する201。組織切片は、結果がまだ既知ではないことを除き、通常、スコアリング関数のモデル化に使用される試料の種類と同様である。組織切片の少なくとも1枚は、スコアリング関数に関連するバイオマーカーについて染色され、その連続切片は、ROI選択に必要とされる場合、形態学的染色(H&Eなど)で染色される202。染色された切片を撮像し203、スコアリング関数に関連する1つ以上のROIが、関連する特徴量の計算に使用される何らかのオブジェクトとともに、バイオマーカーで染色された画像に注釈を付ける204。関連する特徴をROIから抽出し、各特徴についての特徴量を計算する205。次に、スコアリング関数によって使用されるすべての変数を含む特徴ベクトルを組み立て206、スコアリング関数を特徴ベクトルに適用する207。いくつかの場合、変数は、ROIから抽出された特徴量のみである。他の例では、例えば、年齢、性別、ミスマッチ修復状態(患者が欠乏性MMR(dMMR)を有するか上級MMR(pMMR)を有するかなど)、マイクロサテライト不安定性状態(患者がMSIであるかMSIであるかなど)などの追加の臨床変数を含むことができる。層別化カットオフが使用されている場合、出力スコアはまた、関連するリスクビンに割り当てられることもできる。次に、スコアは、例えば、該スコアを、PD-1軸指向型療法を投与するかどうかの判断に重要である可能性がある他の臨床変数と統合することによることを含む、臨床医によって診断および/または処置の判断へと統合することができる。
【0089】
一実施形態では、スコアリング関数は、スコア化システムに統合されている。例示的なスコア化システムを図3に示す。
【0090】
スコア化システムは、画像分析システム300を含む。画像分析システム300は、デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、タブレット、スマートフォン、サーバー、アプリケーション特異的計算装置、または本命最初に説明する技術および演算を実行することができる何らかの他の種類(複数可)の電子デバイス(複数可)などの1つ以上の計算装置を含むことができる。いくつかの実施形態では、画像分析システム300は、単一のデバイスとして実装することができる。他の実施形態では、画像分析システム300は、本明細書で論議されるさまざまな機能を達成する2つ以上のデバイスの組み合わせとしてまとめて実装することができる。例えば、画像分析システム300は、1つ以上のローカルエリアネットワークおよび/またはインターネットなどのワイドエリアネットワークを介して互いに通信上連結された1つ以上のサーバコンピュータおよび1つ以上のクライアントコンピュータを含むことができる。
【0091】
図3に示すように、画像分析システム300は、メモリ314、プロセッサ315、およびディスプレイ316を含むことができる。メモリ314は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM)などの読取り専用メモリ、フラッシュメモリ、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、光ディスクなど、何らかの種類の揮発性または不揮発性メモリの何らかの組み合わせを含むことができる。簡潔にする目的のために、メモリ314を図3に単一のデバイスとして図示しているが、メモリ314はまた、2つ以上のデバイスにわたって配置することもできることが認識される。
【0092】
プロセッサ315は、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、専用の信号または画像プロセッサ、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)、テンソル処理装置(TPU)などの何らかの種類の1つ以上のプロセッサを含むことができる。簡潔にする目的のために、プロセッサ315を図3に単一のデバイスとして図示しているが、プロセッサ315はまた、何らかの数のデバイスにわたって配置することもできることが認識される。
【0093】
ディスプレイ316は、LCD、LED、OLED、TFT、プラズマなどの何らかの適切な技術を使用して実装することができる。いくつかの実装形態では、ディスプレイ316は、タッチセンスディスプレイ(タッチスクリーン)であることができる。
【0094】
図3に示すように、画像分析システム300はまた、オブジェクト識別子310、関心対象の領域(ROI)ジェネレータ311、ユーザインターフェースモジュール312、およびスコア化エンジン313も含むことができる。これらのモジュールを図3に独立型モジュールとして図示しているが、各モジュールを代わりにいくつかの副モジュールとして実装することができ、いくつかの実施形態では、何らかの2つ以上のモジュールを単一のモジュールへと組み合わせることができることが当業者には明らかであろう。さらに、いくつかの実施形態では、システム100は、簡潔にするために図3に図示されていない追加のエンジンおよびモジュール(例えば、入力デバイス、ネットワークモジュールおよび通信モジュールなど)を含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、図3に図示するブロックのいくつかは、無効にすることができるかまたは省略することができる。後により詳細に論議されるように、システム100のいくつかまたはすべてのモジュールの機能性は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアにおいて、またはそれらの何らかの組み合わせとして実装することができる。本明細書に開示されるモジュールを実装するのに有用な例示的な市販のソフトウェアパッケージには、VENTANA VIRTUOSO;Definiens TISSUE STUDIO、DEVELOPER XD、およびIMAGE MINER;ならびにVisopharm BIOTOPIX、ONCOTOPIX、およびSTEREOTOPIXソフトウェアパッケージが含まれる。
【0095】
画像を取得した後、画像分析システム300は、画像をオブジェクト識別子310に通過させることができ、オブジェクト識別子310は、後でスコア化に使用される画像内の関連するオブジェクトおよび他の特徴を特定および標識するように機能する。オブジェクト識別子310は、各画像から、画像内のさまざまなオブジェクトを特徴付ける複数の画像特徴、ならびにバイオマーカー(複数可)の発現を表す画素を抽出(または生成)することができる。抽出された画像特徴は、例えば、Haralick特徴、語の袋特徴などのテクスチャ特徴を含むことができる。複数の画像特徴の値は、スコアリング関数の特徴に関連するバイオマーカーの発現を特徴付ける「特徴ベクトル」と以後称される高次元ベクトルへと組み合わせることができる。例えば、M個の特徴が各オブジェクトおよび/または画素について抽出される場合、各オブジェクトおよび/または画素は、M次元の特徴ベクトルを特徴とすることができる。オブジェクト識別子310の出力は、事実上、オブジェクトの位置および関心対象の画素に注釈を付け、該オブジェクトおよび画素を、オブジェクトまたは画素を説明する特徴ベクトルと関係づける画像のマップである。
【0096】
特定の種類のオブジェクト(膜、核、細胞など)とのバイオマーカーの関係づけに基づいてスコア化されるバイオマーカーについては、オブジェクト識別子310によって抽出された特徴は、関心対象のバイオマーカー陽性オブジェクトもしくは関心対象のバイオマーカー陰性マーカーとして、および/またはオブジェクトのバイオマーカー染色のレベルもしくは強度によって、試料中のオブジェクトを分類するのに十分な特徴もしくは特徴ベクトルを含むことができる。バイオマーカーがそれを発現させているオブジェクトの種類に応じて異なって重み付けされることができる場合、オブジェクト識別子310によって抽出された特徴は、バイオマーカー陽性画素と関係するオブジェクトの種類を決定することに関連する特徴を含むことができる。したがって、オブジェクトは次に、少なくともバイオマーカーの発現(例えば、バイオマーカー陽性またはバイオマーカー陰性の細胞)、および関連する場合、オブジェクトの亜型(例えば、腫瘍細胞、免疫細胞など)に基づいて分類することができる。オブジェクトとの関係とは無関係にバイオマーカー発現の程度がスコア化される場合、オブジェクト識別子310によって抽出された特徴は、例えば、バイオマーカー陽性画素の位置および/または強度を含むことができる。画像から抽出された正確な特徴は、適用されている分類関数の種類に依存し、当業者に周知であろう。
【0097】
ある特定のバイオマーカーパネルについて特定されたオブジェクトの例を以下の表5に明らかにする。
【表5】
【0098】
画像分析システム300はまた、画像をROI生成プログラム311に通過させることもできる。ROI生成プログラム311は、免疫コンテキストスコアが計算される画像の1つまたは複数のROIを特定するために使用される。オブジェクト識別子310が画像全体に適用されない場合、ROI生成プログラム311によって生成された1つまたは複数のROIはまた、オブジェクト識別子310が実行される画像の部分セットを規定するために使用することもできる。
【0099】
一実施形態では、ROI生成プログラム311は、ユーザインターフェースモジュール312を介してアクセスすることができる。バイオマーカーで染色された試料(またはバイオマーカーで染色された試料の形態学的に染色された連続切片)の画像は、ユーザインターフェースモジュール112のグラフィックユーザインターフェースに表示され、ユーザは、ROIと見なされる画像において1つ以上の領域(複数可)に注釈付けする。この例では、ROIの注釈付けは、いくつかの形式をとることができる。例えば、ユーザは手動でROIを規定することができる(以後、「手動ROI注釈付け」と呼ぶ)。他の例では、ROI生成プログラム311は、ユーザがROIに注釈を付けるのを支援することができる(「半自動化されたROI注釈付け」と称する)。例えば、ユーザは、デジタル画像上の1つ以上の領域の輪郭を描くことができるので、システムはそれを自動的に完全なROIへと変換する。例えば、所望のROIが腫瘍領域である場合、ユーザは腫瘍領域の輪郭を描き、システムは、例えばコンピュータビジョンおよび機械学習を使用して類似の形態学的領域を特定する。別の例として、ユーザは画像内の縁部に注釈を付けることができ(例えば、腫瘍の浸潤前線を規定する線をトレースすることによる)、ROI生成プログラム311は、ユーザが規定した縁部に基づいてROIを自動的に規定することができる。例えば、ユーザは、ユーザインターフェースモジュール312において浸潤前線または腫瘍領域の縁部に注釈を付けることができ、ROI生成プログラム311は、例えば、縁部内のあらかじめ規定された距離内の(例えば、PTのROI)、または縁部の片側のあらかじめ規定された距離内の(例えば、POまたはPIのROI)、または縁部の第1の側部にある第1のあらかじめ規定された距離内のおよび縁部の第2の側部にある第2のあらかじめ規定された距離内の(例えば、PTのROIであって、その内側部分および外側部分は、浸潤前線からの異なる標準距離を有する)すべてのオブジェクトを包含するROIを描くことによって、縁部をガイドとして使用してROIを作成する。
【0100】
他の実施形態では、ROI生成プログラム311は、ユーザからのいかなる直接入力もなしで(例えば、組織セグメンテーション機能を注釈のない画像に適用することによって)ROIを自動的に提案することができ、次に、ユーザは、これを適宜、受理、拒否、または編集することを選択することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、ROI生成プログラム311はまた、登録関数を含むことができ、それにより、連続切片の1セットの1つの切片において注釈が付けられたROIは、連続切片の該セットの他の切片に自動的に転送される。この機能は、H&E染色された連続切片がバイオマーカーで標識された切片と一緒に提供されるとき、特に有用である。このような実施形態では、ユーザは、例えば、H&E染色された切片のデジタル画像内に腫瘍領域を描くことができる。次に、ROI生成プログラム311は、H&E画像からバイオマーカーで染色された連続切片の画像までROIを登録し、H&E画像の組織構造を連続切片における相応の組織構造と一致させる。例示的な登録方法は、例えば、WO2013/140070およびUS2016-0321809に認めることができる。
【0102】
オブジェクト識別子310およびROI生成プログラム311は、何らかの順序で実装することができる。例えば、オブジェクト識別子310は、最初に画像全体に適用することができる。特定されたオブジェクトの位置および特徴は、後にROI生成プログラム311が実装されたときに保存および呼び出すことができる。このような構成では、スコアは、ROIの生成の際に即時、スコア化エンジン313によって生成することができる。このような流れ図を図3Aに示す。図4Aに見られるように、異なるオブジェクトの混合を有する画像が取得される(暗い楕円形および暗いひし形によって示されている)。オブジェクト特定タスクが実装された後、画像内のすべてのひし形が特定される(白抜きのひし形によって示されている)。ROIが画像に付記されると(破線によって示されている)、ROI領域内にあるひし形のみがROIについての量計算に含まれる。次に、該特徴量と、スコア化エンジン313によって実行されるスコアリング関数によって使用される何らかの追加の量とを含む特徴ベクトルが計算される。あるいは、ROI生成プログラム311は、最初に実装することができる。この流れ図では、オブジェクト識別子310は、ROI(計算時間を最小限にする)にのみ実装することができるか、またはそれでも画像全体に実装することができる(これにより、オブジェクト識別子を再実行することなくオンザフライ調整が可能になるであろう310)。このような流れ図を図4Bに示す。図4Bに見られるように、異なるオブジェクトの混合を有する画像が取得される(暗い楕円形および暗いひし形によって示されている)。ROIは、画像に付記される(破線によって示されている)が、オブジェクトはまだ標識されていない。オブジェクト特定タスクがROIに実装された後、ROI内のすべてのひし形が特定され(白抜きのひし形によって示されている)、ROIについての特徴量の計算に含まれる。次に、該特徴量(複数可)と、スコア化エンジン313によって実行されるスコアリング関数によって使用される何らかの追加の量とを含む特徴ベクトルが計算される。オブジェクト識別子310およびROI生成プログラム311を同時に実装することも可能である可能性がある。
【0103】
オブジェクト識別子310およびROI生成プログラム311の両方が実装された後、スコア化エンジン313が実装される。スコア化エンジン313は、ROIについての特徴量(複数可)を計算し、使用されている場合、あらかじめ決定された最大および/または最小のカットオフを計算する。スコアリング関数によって使用される計算された特徴量とその他の変数とを含む特徴ベクトルは、スコア化エンジンによってアセンブルされ、スコアリング関数が特徴ベクトルに適用される。
【0104】
各パネルについての具体的な例示的特徴を表6において明らかにする。
【表6】
【0105】
図3に図示されるように、いくつかの実施形態では、画像分析システム300は、画像取得システム320に通信上連結することができる。画像取得システム320は、試料の画像を取得し、該画像を分析およびユーザへの提示のために画像分析システム300に提供することができる。
【0106】
画像取得システム320は、染色されたスライドを20倍、40倍、または他の倍率で走査して、例えばスライドスキャナを含む高解像度の全スライドデジタル画像を生成することができるスライドスキャナなどの走査プラットフォーム325を含むことができる。基本的なレベルでは、通常のスライドスキャナには少なくとも次のものが含まれる。(1)対物レンズを備えた顕微鏡、(2)光源(色素に応じて、ハロゲン、発光ダイオード、白色光、および/またはマルチスペクトル光源など)、(3)スライドガラスを動かす(または、スライドの周りで光学系を移動させる)ロボット、(4)画像捕捉用の1つ以上のデジタルカメラ、(5)ロボット工学を制御し、デジタルスライドを操作、管理、および表示するためのコンピュータおよび関係するソフトウェア。スライド上のいくつかの異なるX-Y位置(およびいくつかの場合では複数のZ平面)のデジタルデータは、カメラの電荷結合素子(CCD)によって捕捉され、画像が互いに結合して走査された表面全体の合成画像が形成される。これを実現するための一般的な方法は、次のことを含む。
(1)スライドステージまたは光学系を非常に小さな増分で移動させて、隣接する正方形とわずかに重なる正方形の画像フレームを捕捉するタイルベースの走査。次に、捕捉された正方形を自動的に相互に一致させて、合成画像を作成し、および
(2)取得中にスライドステージが単一軸内を移動して、多数の合成画像の「ストリップ」が捕捉される、ラインベースの走査。次に、画像ストリップを互いに一致させて、より大きな合成画像を形成することができる。
さまざまなスキャナ(蛍光および明視野の両方)の詳細な概観は、Farahani et al.,Whole slide imaging in pathology:advantages,limitations,and emerging perspectives,Pathology and Laboratory Medicine Int’l,Vol.7,p.23-33(June 2015)に認めることができ、その内容は、全体として参照により組み込まれる。市販のスライドスキャナの例としては、次のものが挙げられる。3DHistech PANNORAMIC SCAN II;DigiPath PATHSCOPE、Hamamatsu NANOZOOMER RS、HT、およびXR;Huron TISSUESCOPE 4000、4000XT、およびHS;Leica SCANSCOPE AT、AT2、CS、FL、およびSCN400;Mikroscan D2;Olympus VS120-SL;Omnyx VL4、およびVL120;PerkinElmer LAMINA;Philips ULTRA-FAST SCANNER;Sakura Finetek VISIONTEK;Unic PRECICE 500、およびPRECICE 600x;VENTANA ISCAN COREOおよびISCAN HT;ならびにZeiss AXIO SCAN Z1。他の例示的なシステムおよび特徴は、例えば、WO2011-049608)または2011年9月9日出願の、撮像システム、カセット、およびそれを使用する方法という表題の米国特許出願第61/533,114号において認めることができ、その内容は全体として参照により組み込まれる。
【0107】
走査プラットフォーム325によって生成された画像は、画像分析システム300、または画像分析システム300によってアクセス可能なサーバーもしくはデータベースに転送することができる。いくつかの実施形態では、画像は、1つ以上のローカルエリアネットワークおよび/またはワイドエリアネットワークを介して自動的に転送することができる。いくつかの実施形態では、画像分析システム300は、走査プラットフォーム325および/または画像取得システム320の他のモジュールと統合することができるかまたはこれに含まれることができ、その場合、画像は、例えば、プラットフォーム325およびシステム320の両方によってアクセス可能なメモリを経て、画像分析システムに転送することができる。いくつかの実施形態では、画像取得システム320は、画像分析システム300に通信上連結することはできず、その場合、画像は、何らかの種類の不揮発性記憶媒体(例えば、フラッシュドライブ)に保存することができ、媒体から画像分析システム300へ、または該システムに通信上連結されたサーバーもしくはデータベースにダウンロードすることができる。先の例のいずれかにおいて、画像分析システム300は、生物学的試料の画像を取得することができ、該システムにおいて、試料は、スライドに固定することができ、組織化学的染色プラットフォーム323によって染色することができ、該システムにおいて、スライドは、スライドスキャナまたは別の種類の走査プラットフォーム325によって走査することができる。しかしながら、他の実施形態では、後に説明する技術がまた、他の手段を経て取得および/または染色された生物学的試料の画像に適用することもできることは認識される。
【0108】
画像取得システム320はまた、自動IHC/ISHスライド染色装置などの自動組織化学的染色プラットフォーム323も含むことができる。自動IHC/ISHスライド染色装置には通常、少なくとも次のものが含まれる。染色プロトコルにおいて使用されるさまざまな試薬のリザーバ、スライド上に試薬を分配するためにリザーバと流体連通している試薬分配ユニット、使用済み試薬および他の廃棄物をスライドから除去するための廃棄物除去システム、ならびに試薬分配ユニットおよび廃棄物除去システムの作動を調整する制御システム。染色ステップを実行することに加えて、多くの自動スライド染色装置はまた、染色に付随するステップを実行することもでき(または、このような補助ステップを実行する別個のシステムと互換性があり)、これには、スライドベーキング(試料をスライドに付着させるため)、脱蝋(脱パラフィンとしても呼ばれる)、抗原の回収、対比染色、脱水および透明化、ならびにカバーガラスかけ。その全体が参照により本明細書に組み込まれるPrichard,Overview of Automated Immunohistochemistry,Arch Pathol Lab Med.,Vol.138,pp.1578-1582(2014)は、intelliPATH(Biocare Medical)、WAVE(Celerus Diagnostics)、DAKO OMNISおよびDAKO AUTOSTAINER LINK 48(Agilent Technologies)、BENCHMARK(Ventana Medical Systems,Inc.)、Leica BOND、ならびにLab Vision Autostainer(Thermo Scientific)自動スライド染色装置を含む自動IHC/ISHスライド染色装置およびそのさまざまな特徴のいくつかの具体例を説明している。加えて、Ventana Medical Systems,Inc.は、以下の各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,650,327号明細書、第5,654,200号明細書、第6,296,809号明細書、第6,352,861号明細書、第6,827,901号明細書および第6,943,029号明細書、ならびに米国特許出願公開第20030211630号明細書および第20040052685号明細書を含む、自動分析を実行するシステムならびに方法を開示するいくつかの米国特許の譲受人である。市販の染色ユニットは通常、次の原理のうちの1つで作動する。(1)スライドを水平に配置し、組織試料(DAKO AUTOSTAINER Link 48(Agilent Technologies)およびintelliPATH(Biocare Medical)染色装置に実装されているものなど)を含有するスライドの表面上にパドルとして分配される、開放系個別スライド染色、(2)試薬が、試料上に配置された不活性流体層で覆われるかまたは該層を経て分配されるかのいずれかである、液体オーバーレイ技術(VENTANA BenchMarkおよびDISCOVERYの染色装置に実装されるなど)、(3)スライド表面を別の表面(別のスライドまたはカバープレートであってよい)の近傍に配置して、液体試薬を毛細管力で出させて試料と接触させて維持する狭い間隙を作る、毛細管間隙染色(DAKO TECHMATE、Leica BOND、およびDAKO OMNIS染色装置によって使用される染色原理など)。毛細管間隙染色の一部の反復では、(DAKO TECHMATEおよびLeica BONDなどの上の)間隙内の液体が混合することはない。動的間隙染色と称される毛細管間隙染色の変法では、毛細管力を使用して試料をスライドへ適用し、次に平行な表面を相互に移動させて、インキュベーション中に試薬を攪拌して、試薬の混合をもたらす(DAKO OMNISスライド染色装置(Agilent)上に実装された染色原理など)。移動中の間隙染色において、移動可能なヘッドは、スライド上に配置される。頭部の下面は、スライドの移動中にスライド上の液体から液体のメニスカスを形成することができるのに十分小さな第1の間隙によってスライドから離間している。スライドの幅よりも短い横方向の寸法を有する混合延在部は、移動可能なヘッドの下面から延在して、混合延在部とスライドとの間の第1の間隙よりも小さな第2の間隙を規定する。ヘッドの並進中、混合延在部の横方向の寸法は、概して第2の間隙から第1の間隙まで延在している方向に、スライド上の液体に横方向の移動を発生させるのに十分である。WO2011-139978 A1を参照されたい。スライド上に試薬を配置するためにインクジェット技術を使用することが近年提案された。WO2016-170008 A1を参照されたい。この染色技術のリストは包括的であることを意図しておらず、バイオマーカー染色を実行するためのいかなる完全自動化または半自動化のシステムも組織化学的染色プラットフォーム323へと組み込むことができる。
【0109】
画像取得システム320はまた、自動化H&E染色プラットフォーム324を含むこともできる。H&E染色を実行するための自動システムは通常、バッチ染色(「ディップアンドダンク」とも称される)または個々のスライド染色の2つの染色原理のうちの1つで作動する。バッチ染色装置は概して、多くのスライドが同時に浸漬される試薬のバットまたは槽を使用する。その一方で、個々のスライド染色装置は、試薬を各スライドに直接適用し、2つのスライドが同じ試薬の一定分量を共有することはない。市販のH&E染色装置の例としては、Roche製のH&E染色装置シリーズのVENTANA SYMPHONY(個別スライド染色装置)およびVENTANA HE 600(個別スライド染色装置);Agilent Technologies製のDako CoverStainer(バッチ染色装置);Leica Biosystems Nussloch GmbH製のLeica ST4020 Small Linear Stainer(バッチ染色装置)、Leica ST5020 Multistainer(バッチ染色装置)、およびLeica ST5010 Autostainer XLシリーズ(バッチ染色装置)のH&E染色装置が挙げられる。H&E染色プラットフォーム324は通常、バイオマーカー染色された切片(複数可)の形態学的に染色された連続切片が所望される流れ作業において使用される。
【0110】
スコア化システムは、検査情報システム(LIS)330をさらに含むことができる。LIS330は通常、以下から選択される1つ以上の機能を実行する。試料上、およびスライド上ならびに試料に由来する画像上で実行される記録および追跡プロセス、試料、スライド、および/または画像上で特定のプロセスを実行し、試料およびまたはスライドへ適用される特定の試薬についての情報(ロット番号、有効期限日、分配量など)を追跡するためのスコア化システムの異なる構成要素に命令すること。LIS330は普通、試料、試料と関係するラベル、スライド、および/または画像ファイル(バーコード(1次元バーコードおよび2次元バーコードを含む)、無線周波数ID(RFID)タグ、試料に固定された英数字コードなど)についての情報を含有する少なくとも1つのデータベース;ならびに試料もしくはスライド上のラベルを読み取りおよび/またはLIS330と免疫コンテキストスコア化システムの他の構成要素との間のスライドについての情報を通信する通信装置を備えている。したがって、例えば、通信装置は、試料加工ステーション、自動組織化学染色装置323、H&E染色プラットフォーム324、および走査プラットフォーム325の各々に配置することができる。試料をまず切片に加工するとき、試料についての情報(患者ID、試料の種類、切片(複数可)上で実行される加工など)が通信装置へと入力され、試料から作製された各切片についてラベルが作成される。その後の各ステーションで、ラベルが通信装置へと入力され(バーコードもしくはRFIDタグを走査するか、英数字コードを手動で入力することなどによる)、ステーションはデータベースと電子通信して、例えば、ステーションまたはステーションオペレータに命令して、切片上の特定のプロセスを実行し、および/または切片上で実行されている加工を記録する。走査プラットフォーム325において、走査プラットフォーム325はまた、画像が画像分析システム300に送信されるときに、実行される画像加工段階がLIS330のデータベースから画像分析システムへと送信することができ、および/または画像分析システム300によって画像上で実行される画像加工段階がLIS330のデータベースによって記録されるように、画像が由来する切片または試料と相関するコンピュータ可読ラベルまたはコードを用いて各画像をコードすることもできる。本発明の方法およびシステムにおいて有用な市販のLISシステムには、例えば、VENTANA Vantage Workflowシステム(Roche)が含まれる。
【実施例
【0111】
I.5Plex IHCおよびホールスライド画像分析を用いた、患者のミスマッチ修復状態および抗PD-1処置結果に関する、消化管腫瘍の腫瘍微小環境におけるPD-L1、CD8、CD3、CD68、およびPanCKの特徴づけ
I.A.背景技術
癌免疫療法を誘導するために、腫瘍の微小環境を理解する必要性が高まっている。マルチプレックス免疫組織化学的技術(IHC)は、組織の形態学的特徴を維持しながら、単一のスライド上で複数のバイオマーカーおよび該バイオマーカーの共発現を検出することによって、腫瘍の微小環境の特徴づけを可能にする。複数のバイオマーカーの共発現および該バイオマーカーの空間的関連性についての情報を抽出するには、個々のアッセイおよび該アッセイの使用目的に合わせて調整されたホールスライド画像分析アルゴリズムが必要とされる。癌は、腫瘍細胞および腫瘍微小環境において、プログラム死1(PD-1)経路、およびそのリガンドであるプログラム死リガンド1(PD-L1)の上方調節を経て、免疫監視機構および根絶を免れることがある。PD-1またはPD-L1に対する抗体によるこの経路の遮断は、一部の癌患者に顕著な臨床応答をもたらした。
【0112】
ミスマッチ修復(MMR)不全症は、PD-1遮断に対する固形腫瘍の応答を予測する。しかしながら、ミスマッチ修復不全症の患者が必ずしも全員、PD-1遮断処置に応答するわけではない。さまざまな応答を理解するために、本発明者らは、腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞との関連性においてPD-L1の発現を検出することによって、腫瘍の微小環境を評価した。
【0113】
I.B.試料、染色、および画像取得
自動分析のための許容され得る画像および組織品質を備えた60の処置前(抗PD-1ペンブロリズマブ)患者の消化管腫瘍標本のコホートが本研究に利用可能であった。評価不可能な応答を除去した後、54の症例が残った。表7は、ミスマッチ修復欠損に関する応答の内訳を示す。
【表7】
【0114】
試料をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、切片にし、顕微鏡スライド上にマウントした。
【0115】
スライドは、表8において明らかにするように、チラミドシグナル増幅手順において蛍光チラミド色素コンジュゲートを使用して、BenchMark ULTRA IHC/ISH自動スライド染色装置上でマルチプレックスフォーマットで染色した。
【表8】
チラミドシグナル増幅の一般的な概念は、US6,593,100に説明されている。染色手順は、Zhang I.によって説明されるのと本質的に同じである。図5に示すように、染色剤を順次適用した。各染色剤の沈着後、Zhang Iによって説明されているプロセスを含むヒートキルステップを適用した。例示的な染色済みスライドを図6に示す。また、各試料の連続切片を、VENTANA HE600自動スライド染色装置を使用してH&E用に染色した。
【0116】
IHC染色されたスライドをZeiss AxioScan Z1スライド走査装置上で走査し、H&E染色済みスライドをVENTANA ISCAN COREOスライド走査装置上で走査した。すべての画像は、Roche製のデジタル病理画像分析一式ソフトウェア一式であるDPathへと搬出された。
【0117】
I.C.画像の注釈づけおよびROI生成
腫瘍領域のROIおよび腫瘍の浸潤前線(利用可能な場合)に、病理医によって画像で注釈を付けた。加えて、壊死領域および分析から除外される他の領域には、病理学者によって注釈が付けられた。
【0118】
DPathシステムは、panCK+細胞の凝集体からの上皮腫瘍ROI、および間質領域に自動的に注釈を付けた。まず、腫瘍面積をタイルへと細分した。各タイルについて、panCKマスクはまず、各panCK+細胞に標識付けすること、および標識付けされた細胞間の結合を認めることによって最初に生成された。次に、以下によるリンパ球の浸潤を補正するために、マスクに対して後処理を実行した。
(a)形態学的な閉鎖演算の実行は、半径10画素の円盤状の構造化要素を使用した(解像度は1画素あたり0.325μmである)。
(b)80画素(8.5μm2)を超えるマスク内のいかなる穴も閉鎖して、「穴が埋められたPanCKマスク」を生成する。
(c)穴が埋められたPanCKマスクを多角形へ変換する。
次に、すべてのタイルからの多角形を集合させて、ホールスライドレベルで多角形を作成した。次に、ホールスライドレベルの多角形を低解像度のマスクに変換し(サイズを3^3だけ低減)、8.8μm拡大して、ホールスライドレベルの「+PanCK+細胞の凝集体」についての最終マスクを生成した。
【0119】
加えて、腫瘍周囲の内側のROIは、浸潤前線から腫瘍の0.5mm内側の面積として自動的に生成され、腫瘍周囲の外側のROIは、浸潤前線から腫瘍の0.5mm外側の面積として自動的に生成された。
【0120】
I.C.特徴計算およびデータ解析
各ROIについて次の特徴を計算した。すべての表現型の面積密度;PD-L1であるpanCK細胞の割合;PD-L1であるCD3細胞の割合;PD-L1であるCD8細胞の割合;PD-L1でもあるCD3CD8細胞の割合;最も近いPD-L1/CD68隣接物までのCD8+細胞の距離の記述統計;最も近いPD-L1/panCK隣接物までのCD8+細胞の距離の記述統計;最も近いPD-L1/CD3隣接物までのCD8+細胞の距離の記述統計;最も近いCD8隣接物までのpanCK細胞の距離の記述統計。CD8細胞から10、30μm以内のPD-L1/panCK細胞の平均数。計算された特徴の完全なリストは表9にある。
【表9】
【0121】
ReliefF特徴選択は、抗PD-1処置の結果により、症例を分類する上での各特徴の重要性を決定するために特徴に対して実行され、これに続いて10個の最も重要な特徴が選択され、処置に対する応答を予測するために二次判別分析モデルを該最も重要な特徴に当てはめた。処置結果は3つの構成においてまとめて群別した(PD=進行性疾患、SD=安定疾患、PR=部分奏功、CR=完全奏功):PD対SD対PR+CR、PD対SD+PR+CR、PD+SD対PR+CR。54の標本の大部分は、腫瘍の明確な浸潤前線がなかったので、その特徴は腫瘍周囲の内側および外側領域の分析から除外した。各構成についての分析は、1)すべての特徴、2)腫瘍のみの特徴、ならびに3)上皮および間質の特徴のみを使用して行った。このことは、最終的な分類への影響を調査するために相関性の高い特徴を除去する目的で行った。試料の大きさが小さいので、交差検定は実行せず、報告された分類結果はトレーニングセットの分類精度を表している。
【0122】
表10は、異なる構成および異なる特徴セットからの分類精度を要約している。
【表10】
影付きのセルは、第3の構成(バイナリ応答)について、多重化(Mpx)IHCデータが89%の精度に到達するのに対し、ミスマッチ修復(MMR)状態単独では70%に到達することを示している。図7は、すべての症例におけるすべての特徴の重要度階級分類を示している。次の特徴が最も重要であると特定された。
(1)間質におけるPD-L1+マクロファージの割合、
(2)間質におけるPD-L1+Tヘルパー細胞の割合、および
(3)間質におけるPD-L1+T細胞の割合。
【0123】
ミスマッチ修復(MMR)不全症は、抗PD-1処置への応答を予測することが過去に示された。マルチプレックス(Mpx)IHCデータがどのMMR不全症例が抗PD-1処置に応答するかを特定できるかどうかを特定する目的で、ミスマッチ修復欠全症例のみに焦点を当てた分析を行った。図8は、MMR不全症例における該分析構成における特徴の重要度階級分類を示している。図9は、処置に対して完全奏功を示した患者についての染色試料の画像であるのに対し、図10は、処置後に進行性疾患に罹患した患者の画像である。表11は、上皮および間質を使用すると、Mpx IHCデータは、PR+CRからPD+SDを分離する上で92%の分類精度に到達することができることを示している。
【表11】
表12は、該分類の混同行列を示している。37の不全症例のうち、34は反応者および非反応者についてのMpx IHCデータによって正確に特定されており、3つの症例のみが誤分類されている。対照的に、MMR不全症の53.7%は抗PD-1処置に応答している。
【表12】
【0124】
II.自動多重化IHCの定量的画像分析による消化管腫瘍における免疫療法への応答を予測するためのPD-1/PD-L1の空間的相互作用の探索
II.A.背景技術
PD-1/L1軸の遮断は、一部の癌患者において有効な免疫療法である。しかしながら、患者選択のための予測バイオマーカーの特定は、大きな課題である。IHCによるPD-L1発現レベルならびに新たなバイオマーカー-腫瘍の突然変異量およびミスマッチ修復(MMR)状態に基づく現行の臨床医療は不十分である。予測値は、研究と腫瘍の種類との間の関係の可変強度に対して制限されている。近年の研究は、癌細胞と免疫細胞との間の空間的配置および相互作用が患者の予後、生存、および処置に対する応答に影響を及ぼすことを示唆している。マルチプレックス免疫組織化学(IHC)組織染色は、特定の腫瘍および免疫分子の特徴に基づいて、腫瘍の微小環境の詳細な特性を提供することができる。
【0125】
II.B.試料、染色、および画像取得
自動分析のための許容され得る画像および組織品質を備えた50の処置前(抗PD-1ペンブロリズマブ)患者の消化管腫瘍標本のコホートが本研究に利用可能であった。表13に、応答の内訳を示している。
【表13】
試料をホルマリン固定し、パラフィン包埋し、切片にし、顕微鏡スライド上にマウントした。
【0126】
染色および画像解析の概観を図11に示している。スライドは、表14において明らかにするように、チラミドシグナル増幅手順において蛍光チラミド色素コンジュゲートを使用して、BenchMark ULTRA IHC/ISH自動スライド染色装置上でPanCK、PD-L1、PD1、CD8、LAG3についてのマルチプレックスフォーマットで染色した。
【表14】
実施例Iのように、染色剤を順次適用した。各染色剤の沈着後、Zhang(I).によって説明されているプロセスを含むヒートキルステップを適用した。また、各試料の連続切片を、VENTANA HE600自動スライド染色装置を使用してH&E用に染色した。
【0127】
スライド全体をZeiss AXIO Z1スキャナで走査し、病理学者が腫瘍面積に注釈を付けた。画像解析にはHalo Hi-Plexソフトウェアを使用した。MatLabコンピュータビジョン、画像加工、および機械学習ツールボックスを使用して、次のことを行った。(a)Halo出力csvファイルにおける空間位置から各細胞型のグラフを再構築し、(b)異なる細胞シグナル間の相互作用を特徴づける定量的な量を発生させ、(c)抗PD-1応答に関連して最も予測される特徴の組み合わせを階級分類およびマイニングし、かつ(d)選択した特徴に基づいて、予測モデルを構築および最適化する。
【0128】
II.C.画像の注釈づけおよびROI生成
腫瘍領域のROIおよび腫瘍の浸潤前線(利用可能な場合)に、病理医によって画像で注釈を付けた。DPathシステムは、実施例Iについて説明したとおり、panCK+細胞の凝集体からの上皮腫瘍ROI、および間質領域に自動的に注釈を付けた。
【0129】
II.C.特徴計算およびデータ解析
表16における特徴の各々を、各画像について解析し、ReliefFおよびRandom Forestの両方によって階級分類した。
【表16】
【0130】
ReliefFおよびRandom Forestの各階級からの上位15個の特徴の階級分類をそれぞれ図12および図13に示している。分析した190個の特徴のうち、RelieffおよびRandom Forestはいずれも、処置に対する応答を予測する上で上位2つの特徴において、次の特徴を階級分類する:「上皮腫瘍のPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数」。5分割交差検証法を使用した二次判別分析(QDA)により、85%の予測精度が得られる。「PD-L1+細胞の半径20μm以内のPD-1+細胞の平均数」および「CD8+細胞のLag3+強度の最大値」と組み合わせるとき、MMR状態とは無関係に、精度は90.2%に到達する(図14ならびに表17および表18を参照されたい)。
【表17】
【表18】
他の特徴は、精度がより低い(例えば、60~70%)。
【0131】
図14A~14Cは、以下を示している。(a)PD-L1+細胞から半径10μm以内のPD-1+細胞の空間分散数の予測値、(b)PD-L1細胞から半径20μm以内のPD-1低強度CD8細胞の平均数の予測値、(c)CD8Lag3細胞におけるLag3強度の最大値の予測値、および(d)(a)対(b)を示す散乱図。
【0132】
図15は、無反応者の例示的なIHC画像を示すとともに、グラフの再構成は。PD-L1細胞(灰色の点)、PD-L1+細胞から20μm以内のPD-1細胞(白色の点)、およびPD-L1+細胞から10μm以内のPD-1細胞(黒色の点)の位置を示す。見てわかるように、無反応者および反応者におけるPD-L1+細胞が同様に存在している。しかしながら、反応者は、反応者および無反応者におけるPD-L1細胞から20μm以内にCD8+PD-1細胞の存在がより高いことを示している。加えて、無反応者におけるよりも反応者において、PD-L1+細胞から10μm以内にPD-1細胞がより均一に分布している。
【0133】
II.D.生存分析
全生存(OS)データは、46人の患者の部分セットについて利用可能であった。表14の変数の各々について、生存分析を実施した。次の変数は、生存の利益について有意に予測した。(a)panCK陰性領域におけるLag3/CD8細胞と総CD8細胞との比率、(b)panCK陰性領域におけるLag3/CD8細胞とCD8細胞との数の比率、(c)Lag3/panCK細胞の数をpanCK陰性領域で除したもの、(d)panCK陰性領域におけるLag3陽性細胞の数、(e)CD8細胞におけるLag3強度の最大値、(f)panCK陽性領域におけるLag3+細胞の数、(g)PD-L1/panCK細胞から半径10μm以内のPD-1/CD8+細胞の平均数、(h)PD-L1/panCK細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の平均数、(i)PD-L1/CD8細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の数の分散、(j)PD-L1/panCK細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の数の分散、(k)PD-L1細胞から半径10μm以内のPD-1/CD8+細胞の数の分散、(l)PD-L1/CD8細胞から半径20μm以内のPD-1/CD8+細胞の最大数、および(m)PD-L1細胞から半径20μ以内のPD-1/CD8+細胞の最大数。各特徴量について、コホートを、特徴量の分布の中央値をカットオフとして使用して2つの群に分けた。Kaplan-Meier生存曲線を図16A図16Mに図示する。
【0134】
IV.例示的な画像分析システムおよび臨床作業の流れ
臨床医療では、スコアリング関数を予後分析へと統合し、処置判断を下すことができる。腫瘍の生検または外科的切除後、患者の腫瘍試料からの腫瘍断面を示す代表的な組織ブロックを分析のために選択する。この組織ブロックから少なくとも3枚の4μm厚の切片を切り出し、スライドガラスへ移動させる。切片は、次のとおり染色する。
1.IHC陰性対照(すなわち、一次抗体の代わりに一次抗体希釈剤を用いる染色プロトコル)、
2.少なくともPD-L1、PD1、CD8、およびLAG3一次抗体を含むマルチプレックスIHC、ならびに
3.H&E、である。
すべての切片を、スライドスキャナで走査する。画像をスライドメタデータと一緒に、デジタル病理学システムへ転送する。スライドのメタデータには、腫瘍試料の特定およびスライドの染色(H&E、IHC、または陰性対照)が含まれ、スライドを走査するときにユーザが入力するか、検査情報システムから自動的に取得するかのいずれかであることができる。デジタル病理学システムは、スライドのメタデータを使用して、表9または表16のうちの1つ以上の特徴の自動計算の実行を惹起する。例えば、該特徴には少なくとも、上皮腫瘍におけるPD-L1+細胞から20μm以内のCD8+/PD-1低強度細胞の最大数を含み、場合によりさらに、「PD-L1+細胞から半径20μm以内のPD-1+細胞の平均数」および「CD8+細胞上のLag3+強度の最大値」を含む。
【0135】
デジタル病理学システムでは、病理学者または専門の観察者がソフトウェアを見る上でH&Eスライドのデジタル画像を開き、スコア化する関連の形態学的面積を理解する。次に、ユーザは、表示ソフトウェアが提供する注釈ツールを使用して腫瘍に注釈を付ける。通常、腫瘍は、1つ以上の輪郭を作成し、該輪郭を腫瘍の輪郭として特定することによって規定される。このために、ユーザは腫瘍の輪郭と交差する追加の輪郭を作成する。交差点は、浸潤プロセスに関与する腫瘍の輪郭上の切片の開始および終了を規定する。新たな輪郭は、浸潤辺縁として特定される。
【0136】
次に、ユーザは隣接するIHCスライド上への注釈の自動転送を惹起する。デジタル病理学システムは、組織切片の位置、向き、および局所的な変形を考慮に入れて、隣接するスライド上へと注釈を転送する登録機能を提供する。ユーザは、ビューアソフトウェアでIHCスライド画像を開き、自動的に登録された注釈の場所を制御する。ビューアソフトウェアは、必要である場合、注釈を変更および編集するためのツールを提供する。編集機能には、注釈を移行させ、注釈を回転させ、および該注釈の輪郭を局所的に変更することを含む。ユーザはさらに、ビューアソフトウェアにおいてIHCスライド画像を、組織、染色、または画像の人工産物について調査する。ユーザは、このような人工産物領域を注釈で描き、分析から除外する該人工産物を特定する。
【0137】
デジタル病理学システムでは、ユーザは、1つ以上のIHCスライドを選択して、レポートの生成を惹起することができる。ユーザは、次の構成要素を含むことができる品質管理レポートを取得することができる。
1.すなわち、スライド上のすべての組織を示す低解像度から中解像度の画像である
2.同じ低解像度から中解像度の画像に、腫瘍の辺縁などの関心対象の形態学的領域を示す輪郭および/または透明な色彩の領域をオーバレイする。さらに、分析から除外するために注釈が付けられた領域をこの画像においてオーバレイする。
3.品質管理のために高解像度FOVの位置を示す、自動生成された小さな長方形のマーカーを用いた同じ低解像度から中解像度の画像
4.高解像度FOVの各々
5.自動化細胞計数によって決定された各細胞表現型の存在を示すマーカーでオーバレイされた高解像度FOVの各々。
1つの選択肢として、関心対象の形態学的領域および自動細胞計数からの細胞を示すマーカーはまた、ビューアソフトウェアにおいて表示することもできる。
【0138】
ユーザは、品質管理データを確認し、症例を受理または拒否することを決定する。受理された症例について、デジタル病理学システムは、定量的な読み取り値を報告し、スコア化モジュールに通過させる。これらの定量的読み出しには、次のものを含むことができる。
1.関心対象の各形態学的領域の面積(mm)。
2.関心対象の各形態学的領域における細胞の数。
3.関心対象の各形態学的領域における異なる表現型の細胞の空間分布および/または該細胞間の空間的関連性を説明する記述統計。
試料についての追加情報はさらに、例えば、MMR状態、療法(化学療法、放射線療法、および/または標的療法など)への対象の従前の曝露、TNM病期分類システムを用いた腫瘍スコア、および/もしくは全体的な腫瘍の病期、臨床変数(患者の年齢、腫瘍の側面、収集したリンパ節の数、および性別)など、デジタル病理学システムへと入力することができ、該追加情報をシステムによって使用して、例えば、適切なスコアリング関数を選択して、画像へ適用することができる。追加的または代替的に、ユーザは、このような基準または他の基準に基づいて適切なスコアリング関数を選択することができる。スコア化モジュールは、抽出した特徴に基づいてスコアを計算するが、該スコアは、生の数値として報告することができる。追加的に、ビニング関数をスコアに適用して、患者をリスクビン(例えば、チェックポイント阻害剤に対して「応答する可能性が高い」または「応答する可能性が低い」に基づいて母集団間にカットオフを適用することによる)および/または母集団層別化ビン(例えば、スコアに基づく四分位数または十分位数のビン)、および/またはスコアを階級分類するための特徴選択関数に割り当てることができる。臨床医はレポートを確認し、臨床病理学者に基づく結果について決定する患者と、結果について論議し、これは、次に、患者についての処置判断を下すために使用することができる。
【0139】
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