(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】ワイヤ送り装置、及びワイヤ送りを発生させるための方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20240627BHJP
B23K 9/133 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B23K9/12 301A
B23K9/133 502Z
(21)【出願番号】P 2021545894
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020052659
(87)【国際公開番号】W WO2020164949
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】102019103740.9
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516126791
【氏名又は名称】アレクサンダー ビンツェル シュヴァイステヒニーク ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】ALEXANDER BINZEL SCHWEISSTECHNIK GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー、ウード
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ、サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】ベンダー、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルミク、ラルフ
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0241161(US,A1)
【文献】特開2010-099710(JP,A)
【文献】特開2010-099677(JP,A)
【文献】特開2010-082699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/12
B23K 9/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱接合装置用でありワイヤを送給するためのワイヤ送り装置であって、前記ワイヤ送り装置(11)は、送り駆動部(5)により稼働可能な少なくとも1つの駆動要素(1)を備え、前記駆動要素(1)は、押付力(15)の印加のもと、前記ワイヤ送り装置(11)を通って案内されるワイヤ(13)に駆動運動(14)を摩擦係合により伝達するように加えることができ、
少なくとも1つの前記駆動要素(1)と連結され且つ押付力(15)の測定された値に基づいて制御装置(12)により制御可能であり、ワイヤ(13)に作用する押付力(15)を可変に設定するためのアクチュエータ(8)が設けられており、
押付力(15)は、少なくとも1つのワイヤ送給パラメータに依存し、開ループ制御可能又は閉ループ制御可能であり、そして、
前記アクチュエータ(8)は、アクチュエータ位置(19)を
測定するための
第1の測定装置
を有すること、及び/又は、ワイヤ(13)の送り量を
測定するための及び/又はワイヤ幾何学的形状を
測定するための少なくとも1つの
第2の測定装置(21、22)が設けられていること、
を特徴とするワイヤ送り装置。
【請求項2】
押付力(15)は、
前記第2の測定装置(21、22)を用いて決定された前記駆動要素(1)と送給すべきワイヤ(13)との間の滑り、及び/又は予め定められた送り量、及び/又は
前記第2の測定装置(21、22)により測定されたワイヤ幾何学的形状、及び/又は溶接パラメータに依存し、開ループ制御又は閉ループ制御されること、
を特徴とする、請求項1に記載のワイヤ送り装置。
【請求項3】
前記溶接パラメータは、溶接電流であること、
を特徴とする、請求項2に記載のワイヤ送り装置。
【請求項4】
前記駆動要素(1)と前記アクチュエータ(8)の間には、押圧ロッカ(16)が設けられていること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のワイヤ送り装置。
【請求項5】
前記押圧ロッカ(16)は、戻しばね(17)を有し、前記戻しばね(17)の復元力(18)は、押付力(15)に対して反対向きであること、
を特徴とする、請求項4に記載のワイヤ送り装置。
【請求項6】
前記押圧ロッカ(16)は、前記アクチュエータ(8)の従動部を構成する操作カム(10)を有し、また前記操作カム(10)を用いて操作可能であり且つ前記駆動要素(1)と連結された押圧タペット(23)を有すること、
を特徴とする、請求項5に記載のワイヤ送り装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記
第2の測定装置(21、22)は、送り量又はワイヤ幾何学的形状を光学的に(21)又は機械的に(22)検知すること、
を特徴とする、請求項1に記載のワイヤ送り装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のワイヤ送り装置(11)を用い、ワイヤ送り装置(11)を通って案内されるワイヤ(13)に送りを発生させるための方法であって、
送り駆動部(5)を用いて発生された駆動運動(14)が、前記送り駆動部(5)と連結された駆動要素(1、4)を用いて摩擦係合によりワイヤ(13)に伝達され、前記駆動要素(1、4)は、押付力(15)をもってワイヤ(13)に接しており、
押付力(15)は、測定された押付力(15)の値に基づいて開ループ制御及び/又は閉ループ制御されるアクチュエータ(8)を用い、様々な値に可変に設定可能であり、
押付力(15)は、少なくとも1つのワイヤ送給パラメータに依存し、開ループ制御又は閉ループ制御され、そして、
押付力(15)は、前記ワイヤ送り装置(11)の始動時には開始値に設定され、前記駆動要素(1)とワイヤ(13)の間に滑りが発生する場合には、滑り限界値の上側に位置する値に増加されること、及び、
押付力(15)の前記開始値は、最後に設定された押付力(15)の値に対応し、押付力(15)は、前記ワイヤ送り装置(1)の継続稼働において前記駆動要素(1)とワイヤ(13)の間に滑りが起こらない場合には減少され、滑りが新たに発生する場合には、前記滑り限界値の上側に位置する値に再び増加されること、
を特徴とする方法。
【請求項9】
押付力(15)は、
前記第2の測定装置(21、22)を用いて決定された前記駆動要素(1)と送給すべきワイヤ(13)との間の滑り、及び/又は予め定められた送り量、及び/又は
前記第2の測定装置(21、22)により測定されたワイヤ幾何学的形状、及び/又は溶接パラメータに依存し、開ループ制御又は閉ループ制御されること、
を特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶接パラメータは、溶接電流であること、
を特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
押付力(15)は、ステップ的に離散値に設定されること、
を特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
押付力(15)は、無段階で
様々な値に設定されること、
を特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
押付力(15)は、前記ワイヤ送り装置(11)において又は前記ワイヤ送り装置(11)と接続された溶接ユニットにおいて測定されたパラメータに依存して閉ループ制御されること、
を特徴とする、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
閉ループ制御の基礎となるアルゴリズムは、P制御器、PI制御器、PID制御器、I制御器、又はPD制御器の原理により設けられていること、
を特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
開ループ制御又は閉ループ制御により設定される押付力(15)の値は、中間保存され、システム状態を確認するために評価されること、
を特徴とする、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
力経過曲線が保存され、包絡線監視を用いて基準曲線と比較可能であること、
を特徴とする、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載したワイヤ送り装置、並びに請求項8の上位概念に記載したワイヤ送りを発生させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、特に、溶融ワイヤ電極を有するか又はワイヤ形状で供給される添加材料を有する熱接合装置において使用されるワイヤ送り装置、ないしそのようなワイヤ送り装置を稼働するための方法に関する。それらは、例えば、金属保護ガス溶接法(MSG)、特にMIG法ないしMAG法のための溶接トーチ又はろう付けトーチとすることができる。この際、MIG(Metal Inert Gas)は、所謂金属不活性ガス法のことである。MAG(Metal Active Gas)は、所謂金属活性ガス法のことである。また本発明は、添加材料がワイヤ形状で別個に接合箇所に提供される、WIG溶接装置(ラングステン不活性ガス溶接装置)及びプラズマ溶接装置のためのコールドワイヤ駆動部及びホットワイヤ駆動部、レーザ法、並びにハイブリッド法、例えばMSGレーザハイブリッド法又はタンデム法にも関することができる。
【0003】
手動案内式の溶接トーチの分野での使用が可能であることに加え、本発明の対象は、特に機械案内式のトーチで使用されるワイヤ送り装置に関する。機械案内式のトーチは、人間により案内されるのではなく、つまり手で案内されるのではなく、機械により案内されるトーチ、例えば多軸ロボットにより案内されるトーチである。
【0004】
冒頭に記載した形式のワイヤ送り装置には、該ワイヤ送り装置を通って案内されるワイヤ電極ないしワイヤに駆動運動を摩擦係合により加えるための少なくとも1つの駆動要素が設けられている。
【0005】
様々な形式のワイヤ送り装置は、従来技術から公知であり、例えば、下記特許文献1(FR 2 624 418 A1)、下記特許文献2(DE 20 2005 022 102 U1)、下記特許文献3(US 2,915,171 A)、下記特許文献4(US 2,053,260 A)、下記特許文献5(EP 1 384 547 B1)、下記特許文献6(DE 1 059 644 B)、又は下記特許文献7(DD 250 512 A1)から公知である。
【0006】
そこで示されているワイヤ送り装置は、主に溶接機において使用される。この際、それぞれ少なくとも1つの駆動要素が設けられており、該駆動要素は、送給すべきワイヤないし送給すべきワイヤ電極に押付力を加え、同時に送り運動をワイヤないしワイヤ電極に伝達する。押付力は、通常は手動設定される。それによりワイヤ送り装置の多くの製造者は、所定のワイヤ材料とワイヤ直径のために、押付力の手動設定に関する推奨事項を提示している。通常、そのような推奨事項は、工場側でワイヤ送給ローラ幾何学的形状の情報とともステッカとして送りケース内に書き留められる。
【0007】
部分的には、ワイヤないしワイヤ電極に予張力を及ぼす手動設定可能なばね装置が使用される。この際、押付力は、予張力ばねの変形に依存する。
【0008】
下記特許文献8(EP 2 640 544 B1)から、溶接装置の溶接ワイヤを送給する装置の送給ローラの押付圧について目標値を検出するための方法が公知である。押付圧の目標値は、固定されたパラメータに依存し、経験的に又は計算により検出され、送給装置において設定される。固定されたパラメータのデータは、溶接装置のコンフィギュレーションに関する追加的なパラメータとともに、データベース内に、それぞれ経験的に検出された押付圧の目標値とともに、又は押付圧のそれぞれの目標値を計算するための計算規則とともに保存される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】仏国特許出願公開第2624418号明細書
【文献】独国実用新案第202005022102号明細書
【文献】米国特許第2915171号明細書
【文献】米国特許第2053260号明細書
【文献】欧州特許第1384547号明細書
【文献】西独国特許出願公告第1059644号明細書
【文献】旧東ドイツ国経済特許第250512号明細書
【文献】欧州特許第2640544号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0241161号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015003083号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
押付力の手動設定における欠点は、機械オペレータが、所定の押付力に関するメーカ側の記載指示にもかかわらず、多くの場合、最大で利用可能な押付力を設定するということである。このことは、一方では、利便性から行われ、他方では、駆動要素とワイヤないしワイヤ電極との間で起こり得る滑り(スリップ)の恐れから行われる。つまり駆動要素とワイヤないしワイヤ電極との間の滑りの発生は、どんなことがあっても回避されるべきであり、なぜなら滑りは、溶接トーチ又はろう付けトーチの前端部において溶融領域内に進入する溶融ワイヤ電極の材料が少なすぎることをもたらしてしまうからである。その際には溶接継目ないしろう付け継目を構成するために十分な材料がなく、このことは、適切な溶接継目の品質の低下という結果をもたらすであろう。正に機械案内式の接合過程においてそのような品質欠陥は、どんなことがあっても回避されるべきである。
【0011】
他の理由は、特に複雑な装置内の駆動部にはアクセス(手が届くこと)が困難であるということにある。この理由から、押付力の連続的な管理、並びに定期的な手動設定は不可能であるか、又は可能でも極めて困難である。
【0012】
オペレータ側で頻繁に行われる最大値への押付力の設定は、様々な短期的ないし長期的な欠点を伴う。つまり一方では、押付力を高めすぎると、ワイヤ送り装置内で発生する機械的な摩耗が増加する。また高すぎる予張力は、送給すべきワイヤに対してその弾性範囲を超えて力が加えられ、ワイヤ送り装置の通過時に許容外で塑性変形されることをもたらしてしまう。つまりワイヤの本来の円形状の横断面が、高すぎる押付力により例えば楕円形の横断面又は角のある横断面へと変形される可能性があり、このことは、溶接トーチ又はろう付けトーチにおいて送給時又は電気接触時の問題をもたらし、或いは摩耗の増加をもたらし、従ってプロセス不規則性の結果として接合結合部の品質の低下をもたらすことになる。最終的に、不必要に高い押付力は、ワイヤ送り装置のエネルギー消費を増加させ、その寿命を減少させる。
【0013】
前述の欠点から出発し、本発明の基礎となる課題は、オペレータエラーを減少させ、熱接合結合部の高い品質を達成することのできる、改善されたワイヤ送り装置、並びにワイヤ送りを発生させるための方法を提示することである。
【0014】
またそれから得られる本発明の更なる課題は、先ずは駆動システム内の摩耗を最小限に抑え、この際、達成可能な継目品質をできるだけ高め、ないしプロセスを安定的に維持し、できるだけワイヤ送り装置のエネルギー消費を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、請求項1に記載したワイヤ送り装置により、並びに請求項8に記載した方法により解決される。
即ち本発明の第1の視点により、
熱接合装置用でありワイヤを送給するためのワイヤ送り装置であって、前記ワイヤ送り装置は、送り駆動部により稼働可能な少なくとも1つの駆動要素を備え、前記駆動要素は、押付力の印加のもと、前記ワイヤ送り装置を通って案内されるワイヤに駆動運動を摩擦係合により伝達するように加えることができ、
少なくとも1つの前記駆動要素と連結され且つ押付力の測定された値に基づいて制御装置により制御可能であり、ワイヤに作用する押付力を可変に設定するためのアクチュエータが設けられており、
押付力は、少なくとも1つのワイヤ送給パラメータに依存し、開ループ制御可能又は閉ループ制御可能であり、そして、
前記アクチュエータは、アクチュエータ位置を決定するための測定装置を有すること、及び/又は、ワイヤの送り量を決定するための及び/又はワイヤ幾何学的形状を監視するための少なくとも1つの測定装置が設けられていること、
を特徴とするワイヤ送り装置が提供される。
より詳しくは、前記第1の視点において、
熱接合装置用でありワイヤを送給するためのワイヤ送り装置であって、前記ワイヤ送り装置は、送り駆動部により稼働可能な少なくとも1つの駆動要素を備え、前記駆動要素は、押付力の印加のもと、前記ワイヤ送り装置を通って案内されるワイヤに駆動運動を摩擦係合により伝達するように加えることができ、
少なくとも1つの前記駆動要素と連結され且つ押付力の測定された値に基づいて制御装置により制御可能であり、ワイヤに作用する押付力を可変に設定するためのアクチュエータが設けられており、
押付力は、少なくとも1つのワイヤ送給パラメータに依存し、開ループ制御可能又は閉ループ制御可能であり、そして、
前記アクチュエータは、アクチュエータ位置を測定するための第1の測定装置を有すること、及び/又は、ワイヤの送り量を測定するための及び/又はワイヤ幾何学的形状を測定するための少なくとも1つの第2の測定装置が設けられていること、
を特徴とする。
更に本発明の第2の視点により、
上記ワイヤ送り装置を用い、ワイヤ送り装置を通って案内されるワイヤに送りを発生させるための方法であって、
送り駆動部を用いて発生された駆動運動が、前記送り駆動部と連結された駆動要素を用いて摩擦係合によりワイヤに伝達され、前記駆動要素は、押付力をもってワイヤに接しており、
押付力は、測定された押付力の値に基づいて開ループ制御及び/又は閉ループ制御されるアクチュエータを用い、様々な値に可変に設定可能であり、
押付力は、少なくとも1つのワイヤ送給パラメータに依存し、開ループ制御又は閉ループ制御され、そして、
押付力は、前記ワイヤ送り装置の始動時には開始値に設定され、前記駆動要素とワイヤの間に滑りが発生する場合には、滑り限界値の上側に位置する値に増加されること、及び、
押付力の前記開始値は、最後に設定された押付力の値に対応し、押付力は、前記ワイヤ送り装置の継続稼働において前記駆動要素とワイヤの間に滑りが起こらない場合には減少され、滑りが新たに発生する場合には、前記滑り限界値の上側に位置する値に再び増加されること、
を特徴とする方法が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記された図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)
熱接合装置用でありワイヤを送給するためのワイヤ送り装置であって、前記ワイヤ送り装置は、送り駆動部により稼働可能な少なくとも1つの駆動要素を備え、前記駆動要素は、押付力の印加のもと、前記ワイヤ送り装置を通って案内されるワイヤに駆動運動を摩擦係合により伝達するように加えることができ、そして、
少なくとも1つの前記駆動要素と連結され且つ押付力の測定された値に基づいて制御装置により制御可能であり、ワイヤに作用する押付力を可変に設定するためのアクチュエータが設けられていること。
(形態2)
前記駆動要素と前記アクチュエータの間には、押圧ロッカが設けられていること、が好ましい。
(形態3)
前記押圧ロッカは、戻しばねを有し、前記戻しばねの復元力(18)は、押付力に対して反対向きであること、が好ましい。
(形態4)
前記押圧ロッカは、好ましくは前記アクチュエータの従動部を構成する操作カムを有し、また前記操作カムを用いて操作可能であり且つ前記駆動要素と連結された押圧タペットを有すること、が好ましい。
(形態5)
前記アクチュエータは、アクチュエータ位置を決定するための測定装置を有すること、が好ましい。
(形態6)
ワイヤの送り量を決定するための及び/又はワイヤ幾何学的形状を監視するための少なくとも1つの測定装置が設けられていること、が好ましい。
(形態7)
少なくとも1つの前記測定装置は、送り量又はワイヤ幾何学的形状を光学的に又は機械的に検知すること、が好ましい。
(形態8)
特に形態1~7のいずれか1つに記載のワイヤ送り装置を用い、ワイヤ送り装置を通って案内されるワイヤに送りを発生させるための方法であって、
送り駆動部を用いて発生された駆動運動が、前記送り駆動部と連結された駆動要素を用いて摩擦係合によりワイヤに伝達され、前記駆動要素は、押付力をもってワイヤに接しており、そして、
押付力は、測定された押付力の値に基づいて開ループ制御及び/又は閉ループ制御されるアクチュエータを用い、様々な値に可変に設定可能であること。
(形態9)
押付力は、少なくとも1つのワイヤ送給パラメータに依存し、好ましくは、前記駆動要素と送給すべきワイヤとの間の滑り、及び/又は予め定められた送り量、及び/又は測定されたワイヤ幾何学的形状、及び/又は溶接パラメータ、特に溶接電流に依存し、開ループ制御又は閉ループ制御されること、が好ましい。
(形態10)
押付力は、前記ワイヤ送り装置の始動時には開始値に設定され、前記駆動要素とワイヤの間に滑りが発生する場合には、滑り限界値の上側に位置する値に増加されること、が好ましい。
(形態11)
押付力の前記開始値は、最後に設定された押付力の値に対応し、押付力は、前記ワイヤ送り装置の継続稼働において前記駆動要素とワイヤの間に滑りが起こらない場合には減少され、滑りが新たに発生する場合には、前記滑り限界値の上側に位置する値に再び増加されること、が好ましい。
(形態12)
押付力は、ステップ的に離散値に設定されること、が好ましい。
(形態13)
押付力は、無段階で又は準無段階で様々な値に設定されること、が好ましい。
(形態14)
押付力は、前記ワイヤ送り装置において又は前記ワイヤ送り装置と接続された溶接ユニットにおいて測定されたパラメータに依存して閉ループ制御されること、が好ましい。
(形態15)
閉ループ制御の基礎となるアルゴリズムは、P制御器、PI制御器、PID制御器、I制御器、又はPD制御器の原理により設けられていること、が好ましい。
(形態16)
押付力がそれらの値に対して開ループ制御又は閉ループ制御されるという値が中間保存され、システム状態を確認するために評価されること、が好ましい。
(形態17)
力経過曲線が保存され、包絡線監視を用いて基準曲線と比較可能であること、が好ましい。
【0017】
本発明は、特に熱接合装置用の、ワイヤを送給するためのワイヤ送り装置を有し、該ワイヤ送り装置は、送り駆動部により稼働可能な少なくとも1つの駆動要素を備え、該駆動要素は、押付力の印加のもと、ワイヤ送り装置を通って案内されるワイヤに駆動運動を摩擦係合により伝達するように加えることができる。
【0018】
本発明により、少なくとも1つの駆動要素と連結され且つ押付力の測定された値に基づいて制御装置により制御可能であり、ワイヤに作用する押付力を可変に設定するためのアクチュエータが設けられている。このようにしてユーザにより引き起こされる誤り操作を排除又は不可能にすることができる。この際、押付力の可変の設定ないし調節は、好ましくは、送り駆動部の作動時に行われる。ワイヤ送りにおける押付力の好ましくは電気駆動的な設定により、(特に複雑な装置内に組み込まれた駆動機構のため)物理的にもアクセスが極めて困難な駆動機構の場合にも最適の設定とすることができる。この際、当該システムは、プロセス内の能動的な制御が力を変更しないように簡素化されることが可能であるが、設定事項は、例えばパネル、ブルートゥース、WLANなどの遠隔操作を用いて設定される。
【0019】
更なる利点は、遥かに精密な押付力の設定が可能であるということにあり、このことは、特に軟質のろう付けワイヤ(ないしはんだ付けワイヤ)の場合に必要とされる。
【0020】
本発明の第1の有利な実施形態により、駆動要素とアクチュエータの間には、連結伝動装置が設けられ、特に押圧ロッカ(押圧アーム)が設けられている。それにより一方では、押付力を設定するためにアクチュエータにより生成された締付運動を適切に軽減させる(即ち弱める)ことが可能であり、それにより終端位置の間で比較的大きな行程(ストローク)を実行するアクチュエータを使用することもできる。同時に連結伝動装置の軽減具合を適切に選択することにより、アクチュエータの動作点を、アクチュエータにより生成された力が特に簡単に開ループ制御ないし閉ループ制御され得るように設定することができる。
【0021】
本発明の更なる有利な一実施形態において、連結伝動装置、特に押圧ロッカは、戻しばね(リターンスプリング)を有し、該戻しばねの復元力は、押付力に対して反対向きである。アクチュエータが押付力を生成するときにその復元力を最初に克服しなければならない戻しばねを使用することにより、アクチュエータの開ループ制御ないし閉ループ制御を更に簡素化することができる。
【0022】
本発明の更なる一変形形態により、連結伝動装置ないし押圧ロッカは、好ましくはアクチュエータの従動部を構成する操作カムを有し、また該操作カムを用いて操作可能であり且つ駆動要素と連結された押圧タペットを有する。連結伝動装置のそのような構成は、アクチュエータと駆動要素の間の機械的な固定結合を不必要なものとし、それにより例えばワイヤ送り装置の組み立て、整備、又は修理をより簡単に行うことができる。更にカム形状の適切な構成により、むしろ押圧タペットの行程(ストローク)にわたって可変の軽減具合(態様)を実現することが可能であり、このことによりアクチュエータの開ループ制御性ないし閉ループ制御性を更に簡素化することができる。
【0023】
本発明の更なる有利な一実施形態において、アクチュエータは、アクチュエータ位置及び/又はアクチュエータ力を決定するための測定装置を有する。この構成により、力伝達トレイン内の簡単な位置測定を用い、つまりアクチュエータと駆動要素の間の簡単な位置測定を用い、押付力を評価することが可能である。従って押付力の大きさの間接的な測定が可能である。また押付力の直接的な決定を考慮することもでき、この際にはアクチュエータ力が測定され、つまり例えばアクチュエータの従動部(出力部)に加わる力が測定され、従って駆動要素における押付力について直接的な導き出しが可能となる。駆動要素における押付力を決定するためには、場合により、連結伝動装置により引き起こされる力増強も計算により考慮されなくてはならない。
【0024】
本発明の有利な更なる一構成では、ワイヤの送り量(どのくらいの量ないし長さのワイヤが送られるかを表す)を決定するための及び/又はワイヤ幾何学的形状(どのような曲がりをワイヤがその長手方向で有するかを表す)を監視するための少なくとも1つの測定装置が設けられている。制御装置を用いてアクチュエータを駆動制御する際に測定装置の測定値を考慮することができ、それにより十分に高い押付力が常にワイヤに作用するが、高すぎる押付力がワイヤに作用することはあり得ない。それ故、押付力を設定するための制御量はワイヤ送り量である。それにより駆動要素とワイヤの間の望まれない滑りを確実に回避することができる。同時に高すぎる押付力を回避し、そのようにして構成部材の早期の摩耗を回避することができる。ワイヤの送り量の測定は、一方では、直接的にワイヤで行われる測定により、例えばワイヤと直接的に接触する測定ホイールにより行うことができる。或いはまた駆動運動を発生させる駆動部のモータ電流を測定することもできる。
【0025】
ワイヤ幾何学的形状ないし所謂変形の管理(モニタ)に基づき、例えば溶接出力及び押付力のようなプロセスパラメータについて材料選択の妥当性管理が可能である。例えば所定の材料が予め定められた設定圧で規定の変形を示す場合、材料に依存する押付力の設定は、高い確率で当該材料に対応すると見なすことができる。変形検知は、装置内へのワイヤの挿入の枠内において、溶接プロセスの実際の開始前での誤った材料選択の検知という利点をもたらす。確かに、誤った材料は、許容外の溶接パラメータを介して間接的に検知することもできるが、しかしそのような場合には、状況により構成部材が既に損傷された状態でありうる。変形管理により、既にワイヤの挿入時に誤った材料を検知することができる。
【0026】
本発明の更なる一変形形態において、少なくとも1つの測定装置は、送り量又はワイヤ幾何学的形状を光学的に又は機械的に検知する。送り量又はワイヤ幾何学的形状の光学的な検知は、一方では、測定を非接触式で、従って実際に摩耗のない状態で行えるという利点を有する。機械的な検知は、通常、より低コストで実現されることが可能であり、産業上の使用条件のもと、場合によりそこで発生する汚染に対してより耐性がある。
【0027】
また、ワイヤ直径が異なるワイヤを送給することが考えられる。この理由からワイヤ直径に適合された送給ローラが設けられていることが可能であり、それによりワイヤ直径が異なる場合にも常に送給ローラのほぼ同じ巻き出し回転円周(Abrollumfang、即ち、ワイヤの同じ送り速度)が保証されている。送給ローラのこの適合は、送給ローラの表面に設けられた様々な溝形状を介して実現することができる。従ってワイヤ直径が様々であるにもかかわらず、回転数からワイヤ送り量を導き出すことができる。また送給ローラのこの適合に基づき、モータ制御のためのフィードバックを設ける必要もない。このようにして、ワイヤに作用する押付力の本発明による設定をワイヤ駆動部に依存しないで実行することができる。
【0028】
本発明の独立した一思想により、特に上述したようなワイヤ送り装置を用い、ワイヤ送り装置を通って案内されるワイヤに送りを発生させるための方法が提供される。送り駆動部を用いて発生された駆動運動が、送り駆動部と連結された駆動要素を用いて摩擦係合によりワイヤに伝達され、この際、駆動要素は、押付力をもってワイヤに接している。
【0029】
更に本発明による方法は、押付力が、測定された押付力の値に基づいて開ループ制御及び/又は閉ループ制御されるアクチュエータを用い、様々な値に可変に設定可能であることを考慮している。
【0030】
今や本発明は、送給すべきワイヤに作用する押付力を機械的に、駆動要素とワイヤの間の滑りが回避され得るか又は少なくとも許容程度まで減少され得るように設定することを可能にする。更に機械的な設定により、高すぎる押付力を回避し、それにより全装置の摩耗を減少すること、ないし高い溶接品質に要求されるワイヤ幾何学的形状を保証することが可能である。本方法は、好ましくは、ワイヤ送り装置を用いて実行されることが可能である。押付力は、開ループ制御及び/又は閉ループ制御されるアクチュエータを用い、様々な値に設定可能である。
【0031】
本方法の第1の有利な更なる構成により、押付力は、少なくとも1つのワイヤ送給パラメータに依存し、好ましくは、駆動要素と送給すべきワイヤとの間の滑り、及び/又は予め定められた送り量、及び/又は測定されたワイヤ幾何学的形状、及び/又は溶接パラメータ、特に溶接電流に依存し、開ループ制御又は閉ループ制御される。このようにしてユーザによる誤り操作をほぼ排除することができる。従ってワイヤ送り装置を調節するには、押付力の手動設定ないし押付力の後からの適合操作は不必要である。このようにして、所望の送り量を確実にして規定どおりの溶接経過のために必要とされる押付力だけが設定される。
【0032】
本発明の更なる有利な一実施形態において、押付力は、ワイヤ送り装置の始動時には開始値に設定され、駆動要素とワイヤの間に滑りが発生する場合には、滑り限界値の上側に位置する値(即ち、限界値より高い値)に増加される。このようにして、現在発生している滑りが排除されるだけでなく、場合により新たに発生する滑りもワイヤの送給時の機械的な抵抗の増加により回避されるか又は明らかに少なくなるということを高い確率で保証することができる。滑り限界値に対し、つまり現在の実状下で正に滑りがもはや発生しないという押付力の値に対して「安全間隔」が維持される。
【0033】
本発明の更なる有利な一実施形態において、押付力の開始値は、最後に設定された押付力の値に対応し、押付力は、ワイヤ送り装置の継続稼働において駆動要素とワイヤの間に滑りが起こらない場合には減少され、滑りが新たに発生する場合には、滑り限界値の上側に位置する値に再び増加される。開ループ制御又は閉ループ制御の基礎となるアルゴリズムのこの補足により、ワイヤ送り装置の継続稼働中にワイヤに作用する押付力を、規定どおりの溶接過程を保証するために必要とされる程度に減少させることが可能である。
【0034】
更なる一変形形態において、押付力は、ステップ的(段階的)に離散値に設定される。このことは、アクチュエータの簡単な駆動制御を可能にする。或いはまた押付力を無段階で又は準無段階で様々な値に設定することもできる。押付力の値の無段階の設定又は準無段階の設定は、特に精密な開ループ制御又は閉ループ制御を可能にする。この際「準無段階」とは、アクチュエータを駆動制御する制御装置がその出力についてできるだけ大きな分解能で稼働されることとして理解することができる。それに対し、ステップ的に離散値に向けられた押付力の設定とは、アクチュエータの駆動制御のための値範囲内で、押付力のために幾つかの少ない固定的な値だけが予め設定されており且つ押付力はそれぞれこれらの固定的な値の1つに設定可能であることとして理解することができる。
【0035】
本発明の更なる有利な一実施形態において、押付力は、ワイヤ送り装置において又はワイヤ送り装置と接続された溶接ユニットにおいて測定されたパラメータに依存して閉ループ制御される。正しい押付力を設定又は適合するためのユーザの介入は、このようにして完全になくすことができる。従って、一方では、装置内で発生する機械的な摩耗を更に減少させ、溶接結合部の品質を更に改善することができる。
【0036】
例えば、包絡線監視(エンベロープモニタリング)が考えられ、この際、特にワイヤ送り装置の新品状態において、一度限りの基準曲線が構成部材において観察され、この際、力-時間-経過曲線、又は力-行程-経過曲線が記録される。そしてこの経過曲線は、力を予め設定するための基準曲線として用いられ、また所謂「コンディションモニタリング(状態監視)」のための基本値としても用いられる。
【0037】
本発明の更なる有利な一実施形態において、閉ループ制御の基礎となるアルゴリズムは、P制御器、PI制御器、PID制御器、I制御器、又はPD制御器の原理により設けられている。(ここにPはproportional、Iはintegral、Dはderivativeを表す。)そのような閉ループ制御では、先ず制御差が、パラメータ事前設定値と測定されたパラメータとの偏差(ずれ)から検出される。パラメータは、例えば滑りとすることができる。滑りのためのパラメータ事前設定値は、常にゼロ又はほぼゼロである。そして押付力の増加又は減少の強さは、制御差の強さ及び/又は制御差の変化速度に依存して生じる。それにより、一方では、より正確であるがより迅速でもある閉ループ制御が可能である。正に駆動要素とワイヤの間の滑りが、閉ループ制御のための案内量として、つまり決定的なパラメータとして使用される場合には、予張力の閉ループ制御から特に迅速な閉ループ制御が望まれている。
【0038】
本発明の更なる有利な一実施形態では、押付力がそれらの値に対して開ループ制御又は閉ループ制御されるという値、即ち開ループ制御又は閉ループ制御により目指される押付力の値が中間保存され、システム状態を確定するために評価されることが考慮されている。この変形形態は「コンディションモニタリング」に関する。この際、押付力の監視を介し、ワイヤ送給システムの状態に関する情報が間接的に獲得されるべきである。このことは、所定の力を上回る場合には、システムコンポーネントが摩耗されているか又は汚れていると見なせるということを意味し、このことは、洗浄又は交換を必要とさせるが、継続稼働中の完全な停止は防止される。
【0039】
監視のために、離散値又は包絡線(上記参照)も使用することができる。それに加え、所定の値をどのくらい長く上回っているかを監視することもできる。その目的は、利用者が早期に反応し、ワイヤ送給システムのための予防の保守措置を開始できることである。
【0040】
押付力についての包絡線は、システム監視のために用いられ、この際、主には、周期的に反復するタスクを伴う自動化された使用が観察されるべきである。例えばロボットは、持続的に同じ時間内で同一の軌道曲線を走行することになるだろう。それにより包絡線は、一方では、当該経路(Weg)にわたる力を表すことができるだろうが、このことは、場合によりロボット制御系との追加的な同期を、もしくは相対的な時間にわたってのみ、必要とする。更なる割り当て(相互関連)は、例えば、又はワイヤ送給速度、電流の強さ、又はレーザ出力のような、周期に依存するパラメータにより可能であろう。そのようなパラメータの1つ又は複数により、現在の値(実際値)と理想プロセスに基づく目標値との間の偏差を導き出すことができる。この目標値は、通常は、簡単なしきい値よりも精密である。
【0041】
本発明による方法の更なる一実施形態は、力経過曲線を保存(記憶)し、包絡線監視を用いて基準曲線と比較できることを考慮している。
【0042】
最後に、設定された力、変形、及びアクチュエータのモータ電流データが検知され、保存され、そしてアナログ式でケーブルを用い、又はデジタル式でケーブル接続を用い、又はデジタル式で無線により伝送され得ることを考慮することもできる。可能な技術的な方法は、特にレーザ測定システムであり、これらの方法は、例えば、ワイヤ引き抜き操作(工程)においてワイヤの直径と長円度に関するオンライン及びリアルタイムの管理のために使用される。これらは、レーザマイクロメータとも称される。
【0043】
本発明の更なる目的、利点、特徴、並びに適用可能性は、図面に基づく実施例の以下の説明から読みとれる。この際、本明細書に記載された全ての特徴及び/又は本図面に図示された全ての特徴は、それら自体で又はそれらの有意義な任意の組み合わせとして、請求項又は請求項の従属関係におけるそれらの関連付けに依存せずとも、本発明の対象を構成するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】機械的な測定装置を備えた一ワイヤ送り装置の斜視図を示す図である。
【
図2】光学的な測定装置を備えた一ワイヤ送り装置の斜視図を示す図である。
【
図3】
図1又は
図2によるアクチュエータと押圧ロッカを備えたワイヤ送り装置の一部分の平面図を示す図である。
【
図9】駆動ベルトを備えた一ワイヤ送り装置の斜視図を示す図である。
【
図10】駆動ベルトを備えた一ワイヤ送り装置の一部分を無くした状態の斜視図を示す図である。
【
図11】直接的に操作される押圧タペットを備えた一ワイヤ送り装置の斜視詳細図を示す図である。
【
図12】押付力を決定するためのフローチャートを示す図である。
【実施例】
【0045】
読みやすさを良くするために、同じ構成部材、又は同様に作用する構成部材には、各々の実施形態に基づいて図示された図面の各図において、同じ符号が付けられている。
【0046】
本発明の対象は、ワイヤ送り装置11に関し、特に、手動案内式の溶接トーチの分野での使用が可能であることに加え、機械案内式のトーチでも使用されるものに関する。本実施例で説明されるワイヤ送り装置11には、ワイヤ送り装置11を通って案内されるワイヤ電極ないしワイヤ13(
図8)に駆動運動を摩擦係合により加えるための少なくとも1つの駆動要素1、4が設けられている。
【0047】
この際、駆動要素1は、駆動ローラとして構成されており、また本発明の意味においては、所謂駆動キャタピラ又は駆動ベルト4を駆動要素として使用することも考えられる。駆動ベルト4として構成された駆動要素を備えるワイヤ送り装置11は、
図9及び
図10に示されている。
【0048】
図1及び
図2は、特に熱接合装置用でありワイヤ13を送給するためのワイヤ送り装置11を具体的に示している。
【0049】
図1及び
図2から、並びに特に
図3から
図5によるワイヤ送り装置11の詳細図から分かるように、ワイヤ送り装置11は、ワイヤ、電気、及び/又は保護ガスを供給するチューブパッケージのためのインタフェース2を有する。ワイヤ13は、中央接続部3を通ってワイヤ送り装置11内に導入される。
【0050】
ワイヤ送り装置11は、ここでは送り駆動部5により稼働可能な少なくとも1つの駆動要素1を有し、駆動要素1は、
図8が具体的に示しているように、押付力(F)15の印加のもと、ワイヤ送り装置11を通って案内されるワイヤ13に駆動運動(矢印)14(
図8)を摩擦係合により伝達するように加えることができる。
【0051】
本実施例において、送り駆動部5は、
図1から
図5で見てとれるように、ワイヤ送りボタン6により操作されることが可能である。
【0052】
異なるワイヤ直径のワイヤを使用するために、ワイヤ直径に適合された送給ローラが設けられていることが可能であり、それによりワイヤ直径が異なる場合にも常に送給ローラのほぼ同じ巻き出し回転円周(即ち、ワイヤの同じ送り速度)が保証されている。送給ローラのこの適合は、送給ローラの表面に設けられ様々な溝形状を介して実現することができる。従ってワイヤ直径が様々であるにもかかわらず、回転数からワイヤ送り量を導き出すことができる。また送給ローラのこの適合に基づき、モータ制御のためのフィードバックを設ける必要もない。このようにして、ワイヤに作用する押付力の本発明による設定をワイヤ駆動部に依存しないで実行することができる。
【0053】
更に
図1と
図2並びに
図9と
図10から、少なくとも1つの駆動要素1と連結され且つ押付力15の測定された値に基づいて制御装置12により制御可能であり、ワイヤ13に作用する押付力15を可変に設定するためのアクチュエータ8が見てとれる。ここでアクチュエータ8は、押圧ロッカ(押圧アーム)16として構成された力測定装置7に作用する操作カム10を駆動する。押圧ロッカ16は、戻し要素、特に戻しばね(リターンスプリング)17(
図6)を有することができ、それによりその復元力に基づき、操作後には再びその出発位置に戻される。
【0054】
場合により押付力15を手動で調節し直すためにも、押付力15を表示するために、表示部9、特にLEDから成るユニットを設けることができる。
【0055】
この際、押付力15の可変の設定ないし調節は、好ましくは、送り駆動部5の作動時に行われる。ワイヤ送りにおける押付力15の好ましくは電気駆動的な設定により、(特に複雑な装置内に組み込まれた駆動機構のため)物理的にもアクセスが極めて困難な駆動機構の場合にも最適な設定とすることができる。この際、当該システムは、プロセス内の能動的な制御が力を変更しないように簡素化されることが可能であるが、設定事項は、例えばパネル、又はブルートゥース、WLANなどを介して設定される。
【0056】
図6と
図7は、ハウジング20内に配設された、駆動要素1とアクチュエータ8の間の押圧ロッカ16が、押圧タペット23と戻しばね17を備えた連結伝動装置として構成されていることを示しており、この際、戻しばね17の復元力18は、押付力15に対して反対向きである(
図8)。それにより押付力15を設定するためにアクチュエータ8により生成された締付運動を適切に軽減させる(即ち弱める)ことが可能であり、それにより終端位置の間で比較的大きな行程(ストローク)を実行するアクチュエータ8を使用することもできる。同時に連結伝動装置の軽減具合を適切に選択することにより、アクチュエータ8の動作点を、アクチュエータ8により生成された力が特に簡単に開ループ制御ないし閉ループ制御され得るように設定することができる。
【0057】
図1及び
図2は、それぞれ、
測定装置21、22を示しており、この際、ワイヤ13の送り量(どのくらいの量ないし長さのワイヤが送られるかを表す)を決定するために及び/又はワイヤ幾何学的形状(どのような曲がりをワイヤがその長手方向で有するかを表す)を監視するために、
図1では少なくとも1つの機械的な測定装置21が見てとれ、
図2では少なくとも1つの光学的な測定装置22が見てとれる。機械的な測定装置21又は光学的な測定装置22は、送り量又はワイヤ幾何学的形状を機械的又は光学的に検知する。
【0058】
図11から、ワイヤ送り装置11の斜視詳細図において、操作カム10に代わり、気圧式又は液圧式の押付力調整装置を見ることができる。
図11による実施形態は、直接的な駆動部に関するものであり、この際、押圧タペット23(
図6)は、例えば気圧式又は液圧式の駆動部を用いて直接的に操作される。その他の図は、間接的な駆動部を示している。
【0059】
次に、特に上述のワイヤ送り装置11を用い、ワイヤ送り装置11を通って案内されるワイヤ13に送りを発生させるための本発明による方法を、
図12のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0060】
送り駆動部5を用い、駆動運動14が、送り駆動部5と連結された駆動要素1を用いて摩擦係合によりワイヤ13に伝達される。この際、駆動要素1は、押付力(F)15をもってワイヤ13に接している。押付力15は、押付力15の測定値に基づいて開ループ制御及び/又は閉ループ制御されるアクチュエータ8を用い、様々な値に可変で設定可能である。
【0061】
アクチュエータ8は、基本的に、電動式、気圧式、又は液圧式の作用原理に基づくか、しかしまたそれらの組み合わせに基づくことができ、それにより押付力は、本実施形態において、電動式、気圧式、又は液圧式で構成されていることが可能である。
【0062】
押付力15は、少なくとも1つのワイヤ送給パラメータに依存し、好ましくは、駆動要素1と送給すべきワイヤ13との間の滑り、及び/又は予め定められた送り量、及び/又は測定されたワイヤ幾何学的形状、及び/又は溶接パラメータ、特に溶接電流に依存し、開ループ制御又は閉ループ制御される。
【0063】
この際、先ず押付力15は、ワイヤ送り装置11の始動時には開始値に設定され、駆動要素1とワイヤ13の間に滑りが発生する場合には、滑り限界値の上側に位置する値(即ち、限界値より高い値)に増加される。
【0064】
押付力15の開始値は、最後に設定された押付力15の値に対応する。押付力15は、ワイヤ送り装置11の継続稼働において駆動要素1とワイヤ13の間に滑りが起こらない場合には減少され、滑りが新たに発生する場合には、滑り限界値の上側に位置する値(即ち、限界値より高い値)に再び増加される。
【0065】
押付力15のこの設定は、ステップ的(段階的)に離散値に対して行うことことができるか、又は様々な値に対して無段階で又は準無段階で行うことができる。
【0066】
本実施例において、押付力15は、ワイヤ送り装置11において又はワイヤ送り装置11と接続された溶接ユニットにおいて測定されたパラメータに依存して閉ループ制御される。
【0067】
閉ループ制御の基礎となるアルゴリズムは、P制御器、PI制御器、PID制御器、I制御器、又はPD制御器の原理により設けられている。
【0068】
特に本実施例では、所謂ティーチイン段階中にワイヤ送給システムのための最小の押付力15が最初のワイヤ送給の前に検出されることが考慮されている。この際、ティーチイン運転の範囲内で、好ましくは新しいワイヤ13を挿入するときに又は整備の後に、滑りがもはやなくなるまで押付力15がステップ的に増加される。検出された最小の押付力15に対するこの値は保存されるが、なぜなら、この値は、新たにティーチインを行うまで、それに続く全てのワイヤ送給における最小の押付力15としてもはや下回ることはないためである。
【0069】
ティーチイン段階の後に、ワイヤ送り装置は、通常稼働で作動する。通常稼働において、滑りがある場合、即ち(押付力について)許容できない偏差がある場合には、押付力15は、その偏差及び以前の押付力に比例して増加される。複数の測定点にわたって偏差が起こる場合には、これらの偏差は合計され、押付力15は、それらに依存して追加的に高められる。従って押付力15は、迅速にないし「アグレッシブに」高められ、この際には、絶対に必要な押付力15が短期的に必要な値を超えて上回ることを甘受してよい。それにより押付力15の引き続く減少が必要であり、また考慮されている。
【0070】
押付力15の増加後に新たな偏差がもはや測定されないのであれば、以前の増加に対して比例する押付力15の減少が行われる。測定のための時間インターバルは、時間的に一定であるか又はワイヤ送給速度に適合されており、このことは、一定のワイヤ送給量に対応する。
【0071】
測定可能な偏差を伴わない各ワイヤ送給サイクルの後に、押付力15は、追加的に減少される。この際、この減少は、ステップ的に複数のワイヤ送給サイクルにわたって行われ、この際、最小の押付力15は、上述のティーチイン段階から知られている。
【0072】
押付力15がそれらの値に対して開ループ制御又は閉ループ制御されるという値、即ち開ループ制御又は閉ループ制御により目指される押付力の値(目標値)は、中間保存され、システム状態を確定するために評価されることが可能である。
【0073】
また本発明の意味において、力経過曲線が保存され、包絡線監視を用いて基準曲線と比較されることも考えられる。
【0074】
本発明の意味において、同様に、アーク溶接トーチの幾何学的な再配向のとき、又はレーザ光学系の幾何学的な再配向のときに、出力が、例えば、電流の強さ又はレーザ出力が、各サイクルで規定の軌道ポジションにおいて変更されることを考慮することができる。このことは、ワイヤ送りのための抵抗を増加させ、またこのことは、押付力15の増加をもたらすが、通常のプロセス特性に割り当てられるべきである。例えば、全サイクル経過のために簡単なしきい値が使用される場合には、このしきい値は、最大値として全軌道曲線において考慮される必要があり、それにより軌道曲線の他の箇所におけるワイヤ送給問題は、恐らく認識されないままである。しかしこの軌道依存のしきい値が再配向の領域でのみ考慮される場合には、押付力15を具体的な軌道依存の目標値と比較することができる。
【0075】
本発明の意味において、同様に、ワイヤ13は、
図9と
図10による駆動ベルト4を介して蛇行形状(メアンダ形状)で案内されることも考えられる。このワイヤ運動は、駆動部8に機械的に連結連動されていることが可能である。しかしまた蛇行形状の運動のためにワイヤの別個の駆動部も考えられる。このようにしてベルト4は、ほぼその全表面にわたって均等に損耗され、それによりベルトの耐久性が明らかに長くされる。ベルト幅は、好ましくはほぼ20mmであり得る。
【符号の説明】
【0076】
1 駆動要素(駆動ローラ)
2 インタフェース
3 中央接続部
4 駆動要素(駆動ベルト)
5 送り駆動部
6 ワイヤ送りボタン
7 力測定装置
8 アクチュエータ
9 表示部
10 操作カム
11 ワイヤ送り装置
12 制御装置
13 ワイヤ
14 駆動運動
15 押付力
16 押圧ロッカ(ロッカアーム)
17 戻しばね
18 復元力
19 アクチュエータ位置
20 ハウジング(押圧ロッカ内)
21 機械的な測定装置
22 光学的な測定装置
23 押圧タペット