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特許7510955スペーサに取り付けられたタービンリングアセンブリ
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  • 特許-スペーサに取り付けられたタービンリングアセンブリ 図1
  • 特許-スペーサに取り付けられたタービンリングアセンブリ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】スペーサに取り付けられたタービンリングアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/08 20060101AFI20240627BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
F01D11/08
F02C7/28 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021564987
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2020059592
(87)【国際公開番号】W WO2020224891
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】1904663
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クエンヌアン,リュシアン・アンリ・ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ダニス,アントワーヌ・クロード・ミシェル・エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】デュッフォ,クレマン・ジャン・ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジャロセ,クレマン
(72)【発明者】
【氏名】タブロー,ニコラ・ポール
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0087399(US,A1)
【文献】特表2017-524089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/08
F02C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線(XX)周りに延在するタービンリングアセンブリ(2)であって、タービンリング(4)を形成するセラミックマトリックス複合材料製の複数のリングセクタ(10)と、タービンケーシング(32)によって保持されたリング支持構造体(6)とを備え、各リングセクタ(10)は、互いに軸線方向に離間した上流ラグ(16)および下流ラグ(18)が半径方向外向きに延在する基部(12)を備え、下流ラグが上流ラグよりも半径方向外向きにさらに延在し、リング支持構造体(6)は、リングセクタ(10)の下流ラグ(18)が保持されるクランプ(20a)を有するスペーサ(20)と、リングセクタの上流ラグが保持される第1の上流フランジ(22)と、第1の上流フランジ(22)の上流において、第1の上流フランジ(22)が保持される力を吸収する第2の上流フランジ(24)と、を備え
リング支持構造体が、各リングセクタの基部の外面上に冷却空気を拡散させるように構成された空気ディフューザを更に備え、
リング支持構造体の空気ディフューザが、スペーサと第1の上流フランジとの間に軸線方向に保持されているクランプを備え、
空気ディフューザの上部が、スペーサと第1の上流フランジの肩との間で両方に接して、空気ディフューザがスペーサによっておよび前記肩によって半径方向に保持されるように配置構成される、タービンリングアセンブリ(2)。
【請求項2】
リング支持構造体(6)が、第1上流フランジ(22)、第2上流フランジ(24)および空気ディフューザ(26)のクランプ(26b)を一緒に締結するために、スペーサ(20)に螺合され、上流から下流に交差する複数の締結手段(40)を更に備える、請求項に記載のアセンブリ。
【請求項3】
リング支持構造体の第1上流フランジ(22)をリングセクタ(10)の上流ラグ(16)に対して保持することを意図した上流軸線方向スラッグ(42)を更に備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
リング支持構造体(6)のスペーサ(20)のクランプ(20a)をリングセクタ(10)の下流ラグ(18)に対して保持することを意図した下流軸線方向スラッグ(28)を更に備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
リング支持構造体(6)のスペーサ(20)が、前記リング支持構造体(6)をタービンケーシング(32)に取り付けるための上流フック(20b)を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
リング支持構造体(6)の第1上流フランジ(22)が、前記リング支持構造体(6)をタービンケーシング(32)に取り付けるためのフック(22a)を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
リング支持構造体(6)のスペーサ(20)が、タービンアセンブリの下流に配置された低圧タービンノズル(34)を保持するための下流フック(20c)をさらに備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
請求項1に記載のアセンブリ(2)を備えるターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械用のタービンリングアセンブリに関し、該アセンブリは複数の角度リングセクタを備え、これら角度リングセクタは、セラミックマトリクス複合材料製のタービンリングを形成するように端部から端部に配置される。
【0002】
本発明の適用分野の1つは、特に航空用ガスタービンエンジンのものである。
【背景技術】
【0003】
先行技術
セラミックマトリックス複合材料、すなわちCMCは、高温でそれらの機械的特性を保持することが知られており、それにより、それらは高温構造物の要素を構成することができる。
【0004】
航空用ガスタービンエンジンでは、効率の向上と一部の汚染物質排出量の削減により、より高温での運転が求められている。完全に金属製のタービンリングアセンブリの場合、アセンブリの全ての要素、特に、典型的には金属材料が許容する温度よりも高い、非常に高温の流れにさらされるタービンリングを冷却する必要がある。この冷却は、使用される冷却流がエンジンの主流から取り出されるので、エンジンの性能に大きな影響を及ぼす。さらに、タービンリングに金属を使用することは、タービンでの温度を上昇させる可能性を制限するが、しかしながら、このことは航空エンジンの性能を向上させることを可能にするであろう。
【0005】
さらに、金属タービンリングアセンブリは熱流の影響を受けて変形し、これは流路でのクリアランス、結果的にタービンの性能を変化させる。
【0006】
これが、エンジンの異なる高温部分にCMCを使用することが既に想定されている理由であり、特に、CMCは、伝統的に使用されている耐火金属の密度よりも低い密度という相補的な利点を有する。
【0007】
したがって、CMCからの単一部品でのタービンリングセクタの製造は、特に文献米国特許出願公開第2012/0027572号明細書に記載されている。リングセクタは、その内面がタービンリングの内面を画定する環状の基部と、金属リング支持構造体の2つのクランプ間に端部が半径方向に延在する2つのラグをそこから保持する外面とを含む。
【0008】
したがって、CMCリングセクタを使用することにより、タービンリングを冷却するために必要な換気を大幅に削減することができる。しかしながら、CMCは金属材料とは異なる機械的挙動を有し、その統合、ならびにタービン内での位置決め方法再考されなければならなかった。実際、CMCは焼きばめ(通常金属リングに使用される)には耐えられず、その熱膨張は金属材料よりも低い。
【0009】
さらに、CMCリングセクタの使用は、タービンケーシング上でのその統合に必要な部品の数を増加させ、それは、アセンブリのコストと重量を増加させ、複雑な取り付け操作(スリーブの焼きばめ、ブッシングの取り付けなど)を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2012/0027572号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の開示
したがって、本発明は、上述の欠点を有さないタービンリングアセンブリを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、軸線の周りに延在するタービンリングアセンブリであって、タービンリングを形成するセラミックマトリックス複合材料製のリングセクタと、タービンケーシングによって保持されるリング支持構造体とを備え、各リングセクタは、互いに軸線方向に離間された上流ラグと下流ラグとが互いに半径方向外側に延在する基部を備え、リング支持構造体は、リングセクタの下流ラグが保持されるクランプを有するスペーサと、リングセクタの上流ラグが保持される第1の上流フランジと、第1の上流フランジの上流において、第1の上流フランジが保持される力を吸収するための第2の上流フランジと、を備える、タービンリングアセンブリによって達成される。
【0013】
本発明によるタービンリングアセンブリは、特に、リング支持ケーシングに頼ることなく、リング支持構造体によってCMCリングがタービンケーシング上に直接保持される点で顕著である。特に、従来技術と比較して、本発明によるアセンブリは、リング支持ケーシングをなくし、このケーシング上でリング支持構造体を保持することを可能にするラジアルスラッグをなくす。
【0014】
さらに、リング支持構造体は、互いに分離かつ独立した幾つかの部品で作られており、これにより、角度セクタ当たりのこの構造体の取り付けが可能になり、クラウンの取り付けができなくなる。タービンリングアセンブリの取り付けは簡素化されており、工具を必要としない。さらに、製造公差はそれほど厳しくなく、スペーサは、360°フランジでは不可能なリングセクタ間のギャップを補償することを可能にする。また、ラジアルスラッグをなくすことで、リング支持構造体の部品を加工する作業を軽減する。これは、部品の節約をもたらし、従って、アセンブリの重量およびコストの低減をもたらす。
【0015】
有利には、リング支持構造体は、リングセクタの基部の外面上に冷却空気を拡散させることを意図した空気ディフューザを更に備える。この場合、リング支持構造体のディフューザは、スペーサと第1上流フランジとの間に保持されるクランプを備えてもよい。
【0016】
リング支持構造体は、第1上流フランジ、第2上流フランジおよび空気ディフューザのクランプを一緒に締結するために、スペーサにねじ込まれ、上流から下流に渡る複数の締結手段をさらに備えることが好ましい。
【0017】
また、有利には、アセンブリは、リングセクタの上流ラグに対してリング支持構造体の第1の上流フランジを保持するように意図された上流軸線方向スラッグをさらに備える。同様に、アセンブリは、好ましくは、リングセクタの下流ラグに対してリング支持構造体のスペーサのクランプを保持するように意図された、下流軸線方向スラッグをさらに備える。
【0018】
リング支持構造体のスペーサは、前記リング支持構造体をタービンケーシングに取り付けるための上流フックを備えてもよい。同様に、リング支持構造体の第1上流フランジは、前記リング支持構造体をタービンケーシングに取り付けるためのフックを備えてもよい。
【0019】
さらに、リング支持構造体のスペーサは、タービンアセンブリの下流に配置された低圧タービンノズルを保持するための下流フックをさらに備えてもよい。
【0020】
本発明はまた、上記で定義したアセンブリを備えるターボ機械に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明によるタービンリングアセンブリの縦断面図である。
図2図2は、図1のタービンアセンブリの概略および斜視図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態の説明
図1は、本発明によるタービンリングアセンブリ2を縦断面で示す。
【0023】
このアセンブリ2は、特に、縦軸線XXを中心とするセラミックマトリックス複合材料からなるタービンリング4と、金属リング支持構造体6とを備える。タービンリング4は、一組のタービンブレード8を取り囲んでいる。
【0024】
さらに、タービンリング4は、端部同士を円周方向に配置してリングを形成した複数の角度リングセクタ10から形成されている。図1において、矢印DAはタービンリングの軸線方向を示し、矢印DRはタービンリングの半径方向を示す。
【0025】
各角度リングセクタ10は、内面12aが設けられた基部12を有する、実質的に逆Pi(またはπ)字形の断面を有し、内面12aは、タービンリングの内面の角度のある部分を画定し、通常は摩耗性被覆層14が設けられ、当該被覆層はまた熱的および環境的障壁としても作用する。
【0026】
2つのラグ-すなわち、上流ラグ16および下流ラグ18-は、内面12aに対向する基部12の外面12bから半径方向に延びている。これらラグ16、18は、リングセクタ10の全幅(周方向)にわたって延びている。
【0027】
本発明によれば、リング支持構造体6は、互いに分離した(すなわち、独立した)複数の部品を組み立てることによって製造される。
【0028】
より具体的に図2に表わすように、これらの部品は、特にスペーサ20、第1上流フランジ22、力を吸収するための第2上流フランジ24、および空気ディフューザ26を含む。
【0029】
スペーサ20は、リングセクタ10の下流ラグ18がリングの縦軸線XXの周りに均等に分散された複数の下流軸線方向スラッグ28によって保持されるクランプ20aを備える。
【0030】
また、スペーサ20は、タービンケーシング32の下流フック30に係合することを意図した上流フック20bを備え、この上流フック20bは、タービンケーシングにリング支持構造体を直接取り付けることを可能にする。
【0031】
スペーサ20はまた、下流フック20cを備え、この下流フック20cは、それを保持するためにタービンリングアセンブリ2の下流に位置する低圧タービンノズル34の対応するフック(図には示されていない)と係合することを意図するものである。
【0032】
スペーサ20は、回転の一部(すなわち、360°の部分)とすることができ、または端から端まで配置された複数のスペーサセクタのアセンブリによって生成することができることに留意されたい。
【0033】
リングセクタ10の上流ラグ16は、第1上流フランジ22に対して保持される。
【0034】
また、第1上流フランジ22は、タービンケーシング32の上流フック36に係合することを意図したフック22aを備え、このフック22aは、タービンケーシングにリング支持構造体を直接取り付けることを可能にする。
【0035】
第1の上流フランジ22は、回転の一部(すなわち、360°)とすることができ、または、それぞれ180°の2つの半フランジのアセンブリによって生成されることができる。
【0036】
第1の上流フランジ22は、力を吸収するために、第2の上流フランジ24に対して上流に保持される。後者は、タービンリングアセンブリの上流に配置された高圧タービンノズル38の力を吸収することを目的としている。
【0037】
この前部フランジ24は、回転部分(すなわち360°)とすることができ、または扇形部分とすることができる。
【0038】
最後に、ディフューザ26はリングセクタの基部12の外面12bに冷却空気を拡散させるものである。この目的のために、それは、リングセクタの基部12の周囲に配置された空洞26aであって、ターボ機械のコンプレッサのステージから取り出され、その壁の多重穿孔によってリングセクタの基部の外面に向かって開口する冷却空気を供給される空洞26aを備える(図には示されていない)。
【0039】
また、空気ディフューザ26は、リングセクタ10の上流ラグ16に対して軸線方向アバットメントに直接入るクランプ26bを備えている。
【0040】
リング支持構造体6は、複数の締結手段40(例えば、ボルト締結)をさらに備え、これら締結手段40はスペーサ20にねじ込まれ、上流から下流に交差して第1上流フランジ22、力を吸収するための第2上流フランジ24およびディフューザ26のクランプ26bを一緒に締結する。
【0041】
タービンリングアセンブリ2は、リング支持構造体の第1上流フランジ22をリングセクタ10の上流ラグ16に対して保持することを意図した上流軸線方向スラッグ42をさらに備える。これらの上流スラッグ42は、リングの縦軸線XXの周りに均等に分配されている。
【0042】
このようにして、リングセクタ10の上流および下流ラグ16、18は、第1上流フランジ22とリング支持構造体6のスペーサ20のクランプ20aとの間に保持される。
【0043】
タービンブレード8頂部のクリアランスの制御は、タービンケーシング32の厚さを調整することによって、または後者に制御ボス(図には表されていない)を設けることによって達成することができることに留意されたい。
図1
図2