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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240627BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240627BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H02M7/48 M ZAB
H02M1/08 A
H03K17/16 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021566808
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2020032150
(87)【国際公開番号】W WO2021131157
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019239428
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 英夫
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-090006(JP,A)
【文献】特開2011-055470(JP,A)
【文献】特開2019-198031(JP,A)
【文献】特開2005-304226(JP,A)
【文献】特開2019-057985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/08
H03K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧とグランド電位との間において直列に接続されてスイッチングアームを構成する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子と、
前記上側スイッチング素子を駆動する上側ドライバICと、
前記下側スイッチング素子を駆動して前記上側ドライバICとは個別のチップである下側ドライバICと、
を有し、
前記上側ドライバICは、前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とが接続されるノードに生じるスイッチ電圧をモニターする第1コントローラを有し、
前記第1コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第1駆動制御信号が前記上側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記スイッチ電圧の確認に基づいて前記上側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する、半導体装置。
【請求項2】
前記下側ドライバICは、前記スイッチ電圧をモニターする第2コントローラを有し、
前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記スイッチ電圧の確認に基づいて前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
ブート用コンデンサの一端と接続可能な第1端子と、
前記ノードに接続され、前記ブート用コンデンサの他端と接続可能な第2端子と、
電源電圧を印加可能な第3端子と、
前記第1端子と電気的に接続されるカソードと、前記第3端子と電気的に接続されるアノードを有するブート用ダイオードと、
をさらに有し、
前記下側ドライバICは、前記第1端子に生じるブート電圧をモニターする第2コントローラを有し、
前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記ブート電圧の確認に基づいて前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記下側ドライバICは、前記第1コントローラと通信可能な第2コントローラを有し、
前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記第1コントローラから前記上側スイッチング素子のオンオフ状態を通知され、前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
入力電圧とグランド電位との間において直列に接続されてスイッチングアームを構成する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子と、
前記上側スイッチング素子を駆動する上側ドライバICと、
前記下側スイッチング素子を駆動して前記上側ドライバICとは個別のチップである下側ドライバICと、
ブート用コンデンサの一端と接続可能な第1端子と、
前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とが接続されるノードに接続され、前記ブート用コンデンサの他端と接続可能な第2端子と、
電源電圧を印加可能な第3端子と、
前記第1端子と電気的に接続されるカソードと、前記第3端子と電気的に接続されるアノードを有するブート用ダイオードと、
を有し、
前記上側ドライバICは、前記第1端子に生じるブート電圧をモニターする第1コントローラを有し、
前記第1コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第1駆動制御信号が前記上側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記ブート電圧の確認に基づいて前記上側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する、半導体装置。
【請求項6】
前記下側ドライバICは、前記ノードに生じるスイッチ電圧をモニターする第2コントローラを有し、
前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記スイッチ電圧の確認に基づいて前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記下側ドライバICは、前記ブート電圧をモニターする第2コントローラを有し、
前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記ブート電圧の確認に基づいて前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記下側ドライバICは、前記第1コントローラと通信可能な第2コントローラを有し、
前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記第1コントローラから前記上側スイッチング素子のオンオフ状態を通知され、前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記スイッチングアームを含む3つのスイッチングアームを有し、
前記上側ドライバICは、3つの前記スイッチングアームにおける3つの上側スイッチング素子を駆動し、
前記下側ドライバICは、3つの前記スイッチングアームにおける3つの下側スイッチング素子を駆動する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)などのパワーデバイスと、パワーデバイスを駆動するドライバICと、を1つのパッケージに収めて構成したIPM(Intelligent Power Module)が登場している。
【0003】
IPMには、パワーデバイスとして直列に接続される上側スイッチング素子(上アームスイッチング素子)と下側スイッチング素子(下アームスイッチング素子)を含むものがある。このようなIPMにおいては、上側スイッチング素子の制御端を駆動する上側ドライバICと、下側スイッチング素子の制御端を駆動する下側ドライバICのように、ドライバICが2つの個別のICチップに分かれている場合がある(このようなIPMの一例は、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/3827号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子は、一方がオンの場合に他方がオフとなるように相補的にオンオフ制御される。このとき、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子との両方がオンとなって上側スイッチング素子と下側スイッチング素子にかけて大電流が流れることを防止するために、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子の両方をオフとする同時オフ期間であるデッドタイムが設けられる。
【0006】
従来、上記のような2つのドライバICを含むIPMにおいては、IPM外部のマイコンから出力されてIPMに入力される駆動制御信号によってデッドタイムを設けており、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子の同時オン防止はIPM内部の制御ではなくマイコンに依存していた。
【0007】
しかしながら、マイコンから出力される駆動制御信号が不確定要因で上側スイッチング素子と下側スイッチング素子を同時オンさせる駆動制御信号となる虞があり、この場合、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子にかけて大電流が流れる虞があった。
【0008】
上記状況に鑑み、本発明は、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子の同時オンを抑制することが可能となる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係る半導体装置は、
入力電圧とグランド電位との間において直列に接続されてスイッチングアームを構成する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子と、
前記上側スイッチング素子を駆動する上側ドライバICと、
前記下側スイッチング素子を駆動して前記上側ドライバICとは個別のチップである下側ドライバICと、
を有し、
前記上側ドライバICは、前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とが接続されるノードに生じるスイッチ電圧をモニターする第1コントローラを有し、
前記第1コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第1駆動制御信号が前記上側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記スイッチ電圧の確認に基づいて前記上側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としている(第1の構成)。
【0010】
また、上記第1の構成において、前記下側ドライバICは、前記スイッチ電圧をモニターする第2コントローラを有し、前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記スイッチ電圧の確認に基づいて前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としてもよい(第2の構成)。
【0011】
また、上記第1の構成において、ブート用コンデンサの一端と接続可能な第1端子と、前記ノードに接続され、前記ブート用コンデンサの他端と接続可能な第2端子と、電源電圧を印加可能な第3端子と、前記第1端子と電気的に接続されるカソードと、前記第3端子と電気的に接続されるアノードを有するブート用ダイオードと、をさらに有し、
前記下側ドライバICは、前記第1端子に生じるブート電圧をモニターする第2コントローラを有し、前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記ブート電圧の確認に基づいて前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としてもよい(第3の構成)。
【0012】
また、上記第1の構成において、前記下側ドライバICは、前記第1コントローラと通信可能な第2コントローラを有し、前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記第1コントローラから前記上側スイッチング素子のオンオフ状態を通知され、前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としてもよい(第4の構成)。
【0013】
また、本発明の第2態様に係る半導体装置は、
入力電圧とグランド電位との間において直列に接続されてスイッチングアームを構成する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子と、
前記上側スイッチング素子を駆動する上側ドライバICと、
前記下側スイッチング素子を駆動して前記上側ドライバICとは個別のチップである下側ドライバICと、
ブート用コンデンサの一端と接続可能な第1端子と、
前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子とが接続されるノードに接続され、前記ブート用コンデンサの他端と接続可能な第2端子と、
電源電圧を印加可能な第3端子と、
前記第1端子と電気的に接続されるカソードと、前記第3端子と電気的に接続されるアノードを有するブート用ダイオードと、
を有し、
前記上側ドライバICは、前記第1端子に生じるブート電圧をモニターする第1コントローラを有し、
前記第1コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第1駆動制御信号が前記上側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記ブート電圧の確認に基づいて前記上側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としている(第5の構成)。
【0014】
また、上記第5の構成において、前記下側ドライバICは、前記ノードに生じるスイッチ電圧をモニターする第2コントローラを有し、前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記スイッチ電圧の確認に基づいて前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としてもよい(第6の構成)。
【0015】
また、上記第5の構成において、前記下側ドライバICは、前記ブート電圧をモニターする第2コントローラを有し、前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記ブート電圧の確認に基づいて前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としてもよい(第7の構成)。
【0016】
また、上記第5の構成において、前記下側ドライバICは、前記第1コントローラと通信可能な第2コントローラを有し、前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記第1コントローラから前記上側スイッチング素子のオンオフ状態を通知され、前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としてもよい(第8の構成)。
【0017】
また、本発明の第3態様に係る半導体装置は、
入力電圧とグランド電位との間において直列に接続されてスイッチングアームを構成する上側スイッチング素子および下側スイッチング素子と、
前記上側スイッチング素子を駆動する上側ドライバICと、
前記下側スイッチング素子を駆動して前記上側ドライバICとは個別のチップである下側ドライバICと、
を有し、
前記上側ドライバICは、第1コントローラを有し、
前記下側ドライバICは、前記第1コントローラと通信可能な第2コントローラを有し、
前記第1コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第1駆動制御信号が前記上側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記第2コントローラから前記下側スイッチング素子のオンオフ状態を通知され、前記上側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定し、
前記第2コントローラは、当該半導体装置の外部より入力される第2駆動制御信号が前記下側スイッチング素子のターンオンを指令しているとき、前記第1コントローラから前記上側スイッチング素子のオンオフ状態を通知され、前記下側スイッチング素子のターンオンを許可するか否かを判定する構成としてもよい(第9の構成)。
【0018】
また、上記第1から第9のいずれかの構成において、前記スイッチングアームを含む3つのスイッチングアームを有し、前記上側ドライバICは、3つの前記スイッチングアームにおける3つの上側スイッチング素子を駆動し、前記下側ドライバICは、3つの前記スイッチングアームにおける3つの下側スイッチング素子を駆動する構成としてもよい(第10の構成)。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体装置によれば、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子の同時オンを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係るIPMシステムの構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係るIPMの内部構成を示す図である。
図3】第1実施形態に係るIPMに含まれる上側ドライバICおよび下側ドライバICにおけるスイッチングアームを駆動する回路構成を示す図である。
図4】駆動制御信号HinU、駆動制御信号LinU、スイッチ電圧Vsw(実線)、およびブート電圧Vboot(破線)の各波形の一例を示すタイミングチャートである。
図5】駆動制御信号HinU,LinUに異常が生じた場合の一例を示すタイミングチャートである。
図6】第2実施形態に係るIPMにおける上側ドライバICと下側ドライバICの構成を示す図である。
図7】第3実施形態に係るIPMにおける上側ドライバICと下側ドライバICの構成を示す図である。
図8】第4実施形態に係るIPMの内部構成を示す図である。
図9】第4実施形態に係るIPMにおける上側ドライバICと下側ドライバICの構成を示す図である。
図10】第5実施形態に係るIPMにおける上側ドライバICと下側ドライバICの構成を示す図である。
図11図3に示すIPM の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
<第1実施形態>
<<IPMシステムの構成>>
図1は、第1実施形態に係るIPMシステム15の構成を示す図である。図1に示すIPMシステム15は、MCU(Micro Control Unit;マイコン)7と、フォトカプラ5A~5Fと、フォトカプラ6と、IPM1と、プリント基板(PCB)10と、を備えている。
【0023】
MCU7と、フォトカプラ5A~5Fと、フォトカプラ6と、IPM1は、プリント基板10に半田等を用いて実装される。
【0024】
MCU7は、比較的に高速応答であるフォトカプラ5A~5Fの各々に駆動制御信号Sci1~Sci6を送信する。フォトカプラ5A~5Fは、入力された駆動制御信号Sci6~Sci6を各々電気的に絶縁をしつつIPM1側へ駆動制御信号HinU、HinV、HinW、LinU、LinV、LinWとして伝達させる。
【0025】
IPM1は、3相DCブラシレスモータ(不図示)を駆動するモータドライバとして機能し、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子とが直列接続されて構成されるスイッチングアーム(不図示)を3つ有している。すなわち、IPM1は、6つのスイッチング素子を有している。IPM1においては、入力された駆動制御信号HinU、HinV、HinW、LinU、LinV、LinWに基づいてドライバIC(不図示)が各上側スイッチング素子および各下側スイッチング素子の制御端を駆動する。これにより、IPM1はインバータとして動作する。なお、IPM1の詳細な構成については、後述する。
【0026】
また、IPM1からはフォールト信号Ftiが比較的に低速応答であるフォトカプラ6に送信される。フォールト信号Ftiは、低電圧状態や過熱状態などの異常が発生したときに送信される。フォトカプラ6は、入力されたフォールト信号Ftiを電気的に絶縁しつつMCU7側へフォールト信号Ftoとして伝達する。これにより、MCU7に異常状態を通知できる。
【0027】
<<IPMの構成>>
図2は、IPM1の内部構成を示す図である。図2に示すように、IPM1は、上側ドライバIC2と、下側ドライバIC3と、第1上側スイッチング素子4Aと、第2上側スイッチング素子4Bと、第3上側スイッチング素子4Cと、第1下側スイッチング素子4Dと、第2下側スイッチング素子4Eと、第3下側スイッチング素子4Fと、逆並列ダイオードD1~D6と、ブート用ダイオードDb1~Db3と、を樹脂等の封止材により封止してパッケージ化した半導体装置(半導体パッケージ)である。
【0028】
また、IPM1は、外部との電気的接続を確立するために、VBU端子、VBV端子、VBW端子、HINU端子、HINV端子、HINW端子、HVCC端子、HGND端子、LINU端子、LINV端子、LINW端子、LVCC端子、FO端子、CIN端子、LGND端子、P端子、U端子、V端子、W端子、NU端子、NV端子、およびNW端子の各外部端子(リード端子)を有している。
【0029】
第1上側スイッチング素子4Aと、第2上側スイッチング素子4Bと、第3上側スイッチング素子4Cと、第1下側スイッチング素子4Dと、第2下側スイッチング素子4Eと、第3下側スイッチング素子4Fとは、一例として、それぞれSi(シリコン)基板を用いたIGBTにより構成される。なお、これらのスイッチング素子は、IGBTに限らず、Si基板を用いたMOSFETにより構成されてもよいし、SiC基板やワイドバンドギャップ型と称される半導体基板を用いたIGBTやMOSFETで構成してもよい。
【0030】
P端子には、高電圧である入力電圧Vin(後述の図3)が印加される。入力電圧Vinは、例えば600Vである。第1上側スイッチング素子4AのコレクタにはP端子が接続される。第1上側スイッチング素子4Aのエミッタは、第1下側スイッチング素子4Dのコレクタに接続される。第1下側スイッチング素子4Dのエミッタは、NU端子に接続される。このように、第1上側スイッチング素子4Aと、第1下側スイッチング素子4Dとが直列に接続されて第1スイッチングアーム41を構成する。
【0031】
第2上側スイッチング素子4BのコレクタにはP端子が接続される。第2上側スイッチング素子4Bのエミッタは、第2下側スイッチング素子4Eのコレクタに接続される。第2下側スイッチング素子4Eのエミッタは、NV端子に接続される。このように、第2上側スイッチング素子4Bと、第2下側スイッチング素子4Eとが直列に接続されて第2スイッチングアーム42を構成する。
【0032】
第3上側スイッチング素子4CのコレクタにはP端子が接続される。第3上側スイッチング素子4Cのエミッタは、第3下側スイッチング素子4Fのコレクタに接続される。第3下側スイッチング素子4Fのエミッタは、NW端子に接続される。このように、第3上側スイッチング素子4Cと、第3下側スイッチング素子4Fとが直列に接続されて第3スイッチングアーム43を構成する。
【0033】
NU端子、NV端子、およびNW端子は、共通の抵抗Rs(後述の図3)を介してグランド電位の印加端に接続される。
【0034】
このように、IPM1は、6つのスイッチング素子を1つのパッケージに収めた構成となる。また、第1上側スイッチング素子4Aには、逆並列ダイオードD1が接続され、第2上側スイッチング素子4Bには、逆並列ダイオードD2が接続され、第3上側スイッチング素子4Cには、逆並列ダイオードD3が接続され、第1下側スイッチング素子4Dには、逆並列ダイオードD4が接続され、第2下側スイッチング素子4Eには、逆並列ダイオードD5が接続され、第3下側スイッチング素子4Fには、逆並列ダイオードD6が接続される。各スイッチング素子はIGBTで構成されるので、逆並列ダイオードD1~D6は外付けの素子として構成される。なお、各スイッチング素子がMOSFETで構成される場合は、逆並列ダイオードD1~D6は各スイッチング素子に内蔵される寄生ダイオード(ボディダイオード)として構成される。
【0035】
U端子は、第1上側スイッチング素子4Aと第1下側スイッチング素子4Dとが接続されるノードNswに接続される。U端子は、IPM1外部の3相DCブラシレスモータであるモータM(後述する図3)のU相端子に接続される。V端子は、第2上側スイッチング素子4Bと第2下側スイッチング素子4Eとが接続されるノードに接続される。V端子は、モータMのV相端子に接続される。W端子は、第3上側スイッチング素子4Cと第3下側スイッチング素子4Fとが接続されるノードに接続される。W端子は、モータMのW相端子に接続される。
【0036】
上側ドライバIC2は、VBU端子、VBV端子、VBW端子、HINU端子、HINV端子、HINW端子、HVCC端子、およびHGND端子に電気的接続される。
【0037】
VBU端子は、IPM1外部のブート用コンデンサ(U相用)Cb1(後述する図3)の一端に接続される。VBU端子は、ブート用ダイオードDb1のカソードに接続される。ブート用ダイオードDb1のアノードは、上側ドライバIC2に電気的接続される。VBV端子は、IPM1外部のブート用コンデンサ(V相用)(不図示)の一端に接続される。VBV端子は、ブート用ダイオードDb2のカソードに接続される。ブート用ダイオードDb2のアノードは、上側ドライバIC2に電気的接続される。VBW端子は、IPM1外部のブート用コンデンサ(W相用)(不図示)の一端に接続される。VBW端子は、ブート用ダイオードDb3のカソードに接続される。ブート用ダイオードDb3のアノードは、上側ドライバIC2に電気的接続される。
【0038】
HVCC端子は、上側ドライバIC2に電源電圧Vccを供給する端子である。HINU端子、HINV端子、およびHINW端子にはそれぞれ、外部のMCU7(図1)から駆動制御信号HinU、HinV、HinWが入力される。上側ドライバIC2は、これらの駆動制御信号HinU、HinV、HinWに基づいて第1上側スイッチング素子4A、第2上側スイッチング素子4B、第3上側スイッチング素子4Cのそれぞれのゲート(制御端)を駆動して、各上側スイッチング素子をオンオフ制御する。
【0039】
HGND端子とLGND端子は、IPM1の内部で互いに接続されている。
【0040】
下側ドライバIC3は、LINU端子、LINV端子、LINW端子、LVCC端子、FO端子、CIN端子、およびLGND端子に電気的接続される。
【0041】
LVCC端子は、下側ドライバIC3に電源電圧Vccを供給する端子である。LINU端子、LINV端子、およびLINW端子にはそれぞれ、外部のMCU7(図1)から駆動制御信号LinU、LinV、LinWが印加される。下側ドライバIC3は、これらの駆動制御信号LinU、LinV、LinWに基づいて第1下側スイッチング素子4D、第2下側スイッチング素子4E、第3下側スイッチング素子4Fのそれぞれのゲート(制御端)を駆動して、各下側スイッチング素子をオンオフ制御する。
【0042】
FO端子は、下側ドライバIC3から出力されるフォールト信号Fti(図1)をMCU7側へ出力させる端子である。CIN端子は、下側スイッチング素子4D~4Fを流れる電流を検出した電流検出信号Vis(後述する図3)が入力される端子である。
【0043】
このように、IPM1は、上側スイッチング素子を駆動する上側ドライバIC2と、下側スイッチング素子を駆動する下側ドライバIC3と、の個別のICチップを有する構成である2チップ構成を有している。なお、上側ドライバIC2は、例えば、高電圧に対応したSOI(Silicon ON Insulator)プロセスにより形成される。
【0044】
図3は、上側ドライバIC2および下側ドライバIC3におけるスイッチングアーム41(第1上側スイッチング素子4Aおよび第1下側スイッチング素子4D)を駆動する回路構成の一例を示す図である。すなわち、ここではモータMの3相のうちU相用の構成について代表的に説明する。
【0045】
図3に示すように、上側ドライバIC2は、入力側(HINU端子側)から出力側(U端子側)に向けて順に、抵抗R22、シュミットトリガ21、レベルシフタ22、コントローラ23、パルスジェネレータ24、レベルシフタ25、フィルタ26、RSフリップフロップ27、およびドライバ28を有する。
【0046】
抵抗R22は、HINU端子をグランド電位の印加端にプルダウンする。このため、HINU端子がオープン状態である場合には、MCU7からHINU端子に入力される駆動制御信号HinUがローレベル(第1上側スイッチング素子4Aがオフするための論理レベル)となるので、第1上側スイッチング素子4Aが意図せずにオンされることがない。
【0047】
シュミットトリガ21は、HINU端子に入力される駆動制御信号HinUをレベルシフタ22に伝達する。なお、シュミットトリガ21の閾値電圧には、所定のヒステリシスが与えられている。このような構成にすることにより、ノイズに対する耐性を高めることができる。
【0048】
レベルシフタ22は、シュミットトリガ21の出力信号をコントローラ23への入力に適した電圧レベルにレベルシフトして出力する。コントローラ23は、異常保護部301から入力される異常信号に基づいて、レベルシフタ22の出力信号をパルスジェネレータ24に伝達するか否か(ひいては第1上側スイッチング素子4Aの駆動可否)を制御する。
【0049】
パルスジェネレータ24は、コントローラ23の出力信号に基づいて、オン信号Sonおよびオフ信号Soffの各パルス信号を生成する。詳述すると、パルスジェネレータ24は、コントローラ23の出力信号の立上りエッジをトリガとして、オン信号Sonを所定のオン期間Ton1だけハイレベルとし、コントローラ23の出力信号の立下りエッジをトリガとして、オフ信号Soffを所定のオン期間Ton2だけハイレベルとする。なお、オン期間Ton1およびオン期間Ton2は、オン信号Sonとオフ信号Soffの双方が同時にはハイレベルとはならないように設定されている。すなわちIPM1が正常に動作しているとき、オン信号Sonとオフ信号Soffの一方がハイレベルときは、他方はローレベルになる。
【0050】
レベルシフタ25は、フィルタ26、RSフリップフロップ27、およびドライバ28を含む高電位ブロックと、パルスジェネレータ24を含む低電位ブロックとの間において、低電位ブロックから高電位ブロックに、信号レベルをシフトして伝達する回路である。詳述すると、レベルシフタ25は、低電位ブロックに属するパルスジェネレータ24から、オン信号Son とオフ信号Soffの各パルス信号が入力される。レベルシフタ25は、これらの信号をそれぞれレベルシフトさせ、第1シフト済み信号および第2シフト済み信号としてフィルタ26に出力する。なお、高電位ブロックは、VBU端子に印加されるブート電圧Vbootと、U端子に印加されるスイッチ電圧Vswとの間で動作する。
【0051】
フィルタ26は、レベルシフタ25から入力される第1シフト済み信号および第2シフト済み信号に対してフィルタ処理を行い、RSフリップフロップ27に出力する回路である。
【0052】
RSフリップフロップ27は、フィルタ26によりフィルタ処理が行われた第1シフト済み信号がセット信号Ssetとして入力されるセット端子(S端子)、フィルタ26によりフィルタ処理が行われた第2シフト済み信号がリセット信号Sresetとして入力されるリセット端子(R端子)、および出力信号Sqを出力する出力端子(Q端子)を有する。RSフリップフロップは、セット信号Ssetの立下りエッジをトリガとして出力信号Sqをハイレベルにセットし、リセット信号Sresetの立下りエッジをトリガとして出力信号Sqをローレベルにセットする。
【0053】
ドライバ28は、RSフリップフロップ27の出力信号に応じた信号である上側出力信号HOUを生成して、第1上側スイッチング素子4Aのゲートに上側出力信号HOUを出力する。なお、上側出力信号HOUのハイレベルはブート電圧Vbootとなり、ローレベルはスイッチ電圧Vswとなる。
【0054】
また、上側ドライバIC2は、抵抗R21を含んでいる。ブートストラップ回路BSUは、抵抗R21と、アノードが抵抗R21を介してHVCC端子に接続されたブート用ダイオードDb1と、ブート用ダイオードDb1のカソードに接続されたVBU端子とU端子との間に設けられたブート用コンデンサCb1と、を有する。すなわち、ブートコンデンサCb1の一端はVBU端子に接続され、他端はU端子に接続されている。
【0055】
ブートストラップ回路BSUは、VBU端子にブート電圧Vboot(ドライバ28などを含む高電位ブロックの駆動電圧)を生成する。抵抗R21は、電源電圧VccからHVCC端子を介してダイオードDb1に供給される電流を制限する。これにより、ブート用コンデンサCb1への充電電流が制限される。
【0056】
なお、第2上側スイッチング素子4B(V相)、第3上側スイッチング素子4C(W相)それぞれを駆動する回路構成は、上述した抵抗R22からドライバ28へかけての構成と同様に上側ドライバIC2において構成される。また、V相、W相それぞれに対応して、ブートストラップ回路BSUと同様のブートストラップ回路が構成される。
【0057】
下側ドライバIC3は、入力側(LINU端子側)から出力側(U端子側)に向けて順に、抵抗R31、シュミットトリガ31、レベルシフタ32、コントローラ33、遅延回路34、およびドライバ35を有する。
【0058】
抵抗R31は、LINU端子をグランド電位の印加端にプルダウンする。このため、LINU端子がオープン状態である場合には、MCU7からの駆動制御信号LinUがローレベル(第1下側スイッチング素子4Dをオフするための論理レベル)となるので、第1下側スイッチング素子4Dが意図せずにオンされることはない。
【0059】
シュミットトリガ31は、LINU端子に入力される駆動制御信号LinUをレベルシフタ32に伝達する。なお、シュミットトリガ31の閾値電圧には、所定のヒステリシスが与えられている。このような構成にすることにより、ノイズに対する耐性を高めることができる。
【0060】
レベルシフタ32は、シュミットトリガ31の出力信号をコントローラ33への入力に適した電圧レベルにレベルシフトして出力する。
【0061】
コントローラ33は、異常保護部301から入力される異常信号に基づいて、レベルシフタ32の出力信号を遅延回路34に伝達するか否か(ひいては第1下側スイッチング素子4Dの駆動可否)を制御する。
【0062】
遅延回路34は、コントローラ33の出力信号に所定の遅延(上側ドライバIC2のパルスジェネレータ24、レベルシフタ25、フィルタ26、およびRSフリップフロップ27で生じる回路遅延に相当)を与えてドライバ35に伝達する。
【0063】
ドライバ35は、遅延回路34により遅延されたコントローラ33の出力信号に基づいて、第1下側スイッチング素子4Dのゲートに下側出力信号LOUを出力する。なお、下側出力信号LOUのハイレベルは電源電圧Vccとなり、ローレベルはグランド電位となる。
【0064】
異常保護部301は、異常信号生成回路30、ローパスフィルタ36、温度保護回路(TSD[Thermal Shut Down]回路)37、および低電圧誤動作防止回路(ULVO回路)38、および過電流保護回路39を有する。
【0065】
TSD回路37は、IPM(半導体装置)1のジャンクション温度が所定の閾値温度を上回ったときに、温度保護信号を正常時の論理レベル(例えばローレベル)から異常時の論理レベル(例えばハイレベル)に切り替える。
【0066】
UVLO回路38は、電源電圧Vccが所定の閾値電圧を下回ったときに、誤動作防止信号を正常時の論理レベル(例えばローレベル)から異常時の論理レベル(例えばハイレベル)に切り替える。
【0067】
CIN端子は、NU端子と抵抗Rsの一端とが接続されるノードに接続される。ローパスフィルタ36は、CIN端子に電気的に接続されている。ローパスフィルタ36は、CIN端子に発生する電流検出信号Visを過電流保護回路39に出力する。過電流保護回路39は、コンパレータから構成され、その非反転入力端子(+)にローパスフィルタ36の出力が入力され、その反転端子(-)に基準電圧が印加される。過電流保護回路39は、電流検出信号Visが所定の閾値電圧を上回ったときに、過電流保護信号を正常時の論理レベル(例えばローレベル)から異常時の論理レベル(例えばハイレベル)に切り替える。
【0068】
異常信号生成回路30は、TSD回路37から入力される温度保護信号、UVLO回路38から入力される誤動作防止信号、過電流保護回路39から入力される過電流保護信号をそれぞれ監視している。異常信号生成回路30は、温度保護信号、誤動作防止信号、過電流保護信号の少なくともいずれかが異常を示している場合には、異常信号を正常時の論理レベル(例えばローレベル)から異常時の論理レベル(例えばハイレベル)に切り替える。異常信号生成回路30は、異常信号をコントローラ33に出力する。
【0069】
コントローラ33は、異常を示す異常信号を入力された場合、第1下側スイッチング素子4Dをオフとさせる。NMOSトランジスタNM31は、FO端子からフォールト信号Ftiを出力するためのオープンドレイン出力段を形成する。異常が生じていない場合には、NMOSトランジスタNM31が異常信号生成回路30によってオフとされ、フォールト信号Ftiがハイレベルとされる。一方、異常が生じている場合には、NMOSトランジスタNM31が異常信号生成回路30によってオンとされ、フォールト信号Ftiがローレベルとされる。
【0070】
なお、第2下側スイッチング素子4E(V相)、第3下側スイッチング素子4F(W相)それぞれを駆動する回路構成は、上述した抵抗R31からドライバ35へかけての構成と同様に下側ドライバIC3において構成される。
【0071】
<<同時オン防止制御>>
このような構成のIPM1における上側ドライバIC2は、上側スイッチング素子と下側スイッチング素子の同時オンを防止する制御機能を有しており、以下これについて述べる。ここでは、図3に示す構成による第1上側スイッチング素子4Aと第1下側スイッチング素子4Dの同時オン防止機能について代表的に説明する。
【0072】
図3に示す上側ドライバIC2の構成において、コントローラ23は、ノードNswと電気的に接続されている。これにより、コントローラ23は、ノードNswに発生するスイッチ電圧Vswをモニターすることができる。
【0073】
ここで図4は、駆動制御信号HinU、駆動制御信号LinU、スイッチ電圧Vsw(実線)、およびブート電圧Vboot(破線)の各波形の一例を示すタイミングチャートである。なお、図4は、MCU7から出力される駆動制御信号HinU,LinUが正常である場合を示す。
【0074】
図4において、タイミングt1の手前では、駆動制御信号HinUがハイレベルであり、コントローラ23の出力信号により、第1上側スイッチング素子4Aはオン状態である。また、駆動制御信号LinUがローレベルであり、コントローラ33の出力信号により、第1下側スイッチング素子4Dはオフ状態である。これにより、スイッチ電圧Vswは、入力電圧Vinとなる。
【0075】
そして、タイミングt1で駆動制御信号HinUがハイレベルからローレベルへ切り替えられると、コントローラ23の出力信号により、第1上側スイッチング素子4Aはターンオフされる。これにより、第1上側スイッチング素子4Aと第1下側スイッチング素子4Dがともにオフとなるデッドタイムが開始される。
【0076】
このとき、第1上側スイッチング素子4Aがオン状態のときに入力電圧Vin側から第1上側スイッチング素子4A、U端子を介してモータM内部のインダクタに流れていた電流は、インダクタの作用により、NU端子から第1下側スイッチング素子4Dに接続される逆並列ダイオードD4を介してU端子へ流れ続けようとする。これにより、U端子に生じるスイッチ電圧Vswは、グランド電位より逆並列ダイオードD4のVf(順方向電圧)だけ低い電圧となる。
【0077】
その後、タイミングt2で駆動制御信号LinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられると、コントローラ33の出力信号により、第1下側スイッチング素子4Dはターンオンされる。これにより、デッドタイムは終了し、スイッチ電圧Vswは、グランド電位となる。
【0078】
そして、タイミングt3で駆動制御信号LinUがハイレベルからローレベルへ切り替えられると、コントローラ33の出力信号により、第1下側スイッチング素子4Dはターンオフされ、デッドタイムが開始される。すると、インダクタの作用により、U端子から第1上側スイッチング素子4Aに接続される逆並列ダイオードD1を介してP端子へ電流が流れ続けようとする。これにより、スイッチ電圧Vswは、入力電圧Vinから逆並列ダイオードD1のVfだけ高い電圧となる。
【0079】
その後、タイミングt4で駆動制御信号HinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられると、まずコントローラ23は、スイッチ電圧Vswが入力電圧Vinより高い電圧になっているかを確認する。図4の場合では、スイッチ電圧Vswが入力電圧Vinより高い電圧となっているので、第1下側スイッチング素子4Dはオフ状態であることが確認されるので、コントローラ23は、第1上側スイッチング素子4Aをターンオンすべく出力信号を出力する。すなわち、コントローラ23は、第1下側スイッチング素子4Dがオフ状態であることを確認してから、第1上側スイッチング素子4Aのターンオンを許可する。このとき、スイッチ電圧Vswは、入力電圧Vinとなる。
【0080】
一方、図5は、駆動制御信号HinU,LinUに異常が生じた場合の一例を示している。より具体的には、タイミングt4で駆動制御信号HinUはローレベルからハイレベルへ切り替えられるが、駆動制御信号LinUは未だハイレベルからローレベルへ切り替えられていない。
【0081】
しかしながらこの場合、タイミングt4で、コントローラ23は、スイッチ電圧Vswをモニターすることで、スイッチ電圧Vswはグランド電位であって入力電圧Vinより高い電圧にはなっていないことを確認する。すなわち、第1下側スイッチング素子4Dはオフ状態になっていないことを確認できるので、コントローラ23は、第1上側スイッチング素子4Aのターンオンを許可せず、オフ状態を維持させる。そして、コントローラ23は、スイッチ電圧Vswのモニターを継続し、タイミングt5で駆動制御信号LinUがハイレベルからローレベルへ切り替えられ、第1下側スイッチング素子4Dがターンオフされる。このとき、コントローラ23は、スイッチ電圧Vswが入力電圧Vinより高い電圧となったことを確認するので、第1上側スイッチング素子4Aをターンオンすべく出力信号を出力し、第1上側スイッチング素子4Aのターンオンを許可する。
【0082】
このようにして、図5に示すようにMCU7から出力される駆動制御信号に異常が生じた場合でも、上側ドライバIC2による制御により、第1上側スイッチング素子4Aと第1下側スイッチング素子4Dの同時オンを防止することができる。また、本実施形態では、ドライバ28などの基準電位を設けるために、第1上側スイッチング素子4Aと第1下側スイッチング素子4Dとが接続されるノードNswを上側ドライバIC2に電気的に接続する必要が本来的にあり、その電気的接続を流用してコントローラ23はスイッチ電圧Vswをモニターすることができる。
【0083】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係るIPM1における上側ドライバIC2と下側ドライバIC3の構成を示す図である。図6は、先述した第1実施形態の図3に対応する図である。
【0084】
本実施形態の第1実施形態との相違点は、図6に示すように、上側ドライバIC2におけるコントローラ23がスイッチ電圧Vswの代わりにブート電圧Vbootをモニターすることである。そのため、本実施形態では、コントローラ23は、VBU端子に電気的に接続される。
【0085】
先述した図4に、破線でブート電圧Vbootを示している。タイミングt1の手前では、第1上側スイッチング素子4Aがオン状態、第1下側スイッチング素子4Dがオフ状態であり、ブート電圧Vbootは、入力電圧Vin(=スイッチ電圧Vsw)からブート用コンデンサCb1に蓄電された電荷による電圧だけ高い電圧となる。
【0086】
そして、タイミングt1で第1上側スイッチング素子4Aがターンオフされると、スイッチ電圧Vswはグランド電位より低い電圧となるが、電源電圧Vccにより抵抗R21およびダイオードDb1を介してブート用コンデンサCb1への充電が行われることにより、ブート電圧Vbootは、グランド電位より高い電圧にクランプされる。その後、ブート用コンデンサCb1への充電により、ブート電圧Vbootは徐々に上昇する。
【0087】
そして、タイミングt2で第1下側スイッチング素子4Dがターンオンされると、スイッチ電圧Vswはグランド電位となり、ブート用コンデンサCb1への充電はブート電圧Vboot=電源電圧Vcc-ダイオードDb1のVfとなるまで行われる。
【0088】
そして、タイミングt3で第1下側スイッチング素子4Dがターンオフされると、スイッチ電圧Vswが入力電圧Vinより高い電圧となり、ブート電圧Vbootは、スイッチ電圧Vsw+電源電圧Vcc-ダイオードDb1のVfとなる。その後、内部回路によるブート用コンデンサCb1の放電により、ブート電圧Vbootは徐々に低下する。
【0089】
そして、タイミングt4で駆動制御信号HinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられると、コントローラ23は、ブート電圧Vbootをモニターし、ブート電圧Vbootが入力電圧Vinよりも高い電圧となっているかを確認する。図4の場合は、ブート電圧Vbootが入力電圧Vinよりも高い電圧となっているので、コントローラ23は、第1上側スイッチング素子4Aをターンオンすべく出力信号を出力し、第1上側スイッチング素子4Aをターンオンさせる。すなわち、コントローラ23は、第1下側スイッチング素子4Dがオフ状態となっていることを確認してから、第1上側スイッチング素子4Aのターンオンを許可する。
【0090】
タイミングt4で第1上側スイッチング素子4Aがターンオンされると、スイッチ電圧Vswは入力電圧Vinとなり、ブート電圧Vbootは、入力電圧Vinからブート用コンデンサCb1に蓄電された電荷による電圧だけ高い電圧となる。その後、内部回路によるブート用コンデンサCb1の放電により、ブート電圧Vbootは徐々に低下する。
【0091】
仮に図5に示すタイミングt4のような場合は、第1下側スイッチング素子4Dがオン状態であり、ブート電圧Vbootは入力電圧Vinより低いので、コントローラ23は、第1下側スイッチング素子4Dがタイミングt5でターンオフされてブート電圧Vbootが入力電圧Vinより高くなったことを確認するまでは、第1上側スイッチング素子4Aのターンオンを許可しない。
【0092】
このようにして、本実施形態であっても、図5に示すようにMCU7から出力される駆動制御信号に異常が生じた場合でも、上側ドライバIC2による制御により、第1上側スイッチング素子4Aと第1下側スイッチング素子4Dの同時オンを防止することができる。また、本実施形態では、ドライバ28などの電源電圧として必要なブート電圧Vbootを流用してコントローラ23はブート電圧Vbootをモニターすることができる。
【0093】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態に係るIPM1における上側ドライバIC2と下側ドライバIC3の構成を示す図である。図7は、先述した第1実施形態の図3に対応する図である。
【0094】
本実施形態の第1実施形態との相違点は、図7に示すように、上側ドライバIC2のコントローラ23がスイッチ電圧Vswをモニター可能であるのに加えて、下側ドライバIC3のコントローラ33もスイッチ電圧Vswをモニター可能であることである。このため、本実施形態では、ノードNswが下側ドライバIC3と電気的に接続される。
【0095】
本実施形態では、第1実施形態と同様に駆動制御信号HinUがローレベルからハイレベルへ切り替えるときにコントローラ23がスイッチ電圧Vswを確認するのに加えて、駆動制御信号LinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられるときにコントローラ33がスイッチ電圧Vswを確認する。
【0096】
図4の場合であれば、駆動制御信号LinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられるタイミングt2で、コントローラ33は、スイッチ電圧Vswをモニターし、スイッチ電圧Vswがグランド電位よりも低い電圧であるかを確認する。ここでは、スイッチ電圧Vswはグランド電位よりも低いので、コントローラ33は、第1下側スイッチング素子4Dをターンオンすべく出力信号を出力し、第1下側スイッチング素子4Dをターンオンさせる。すなわち、コントローラ33は、第1上側スイッチング素子4Aがオフ状態であることを確認してから、第1下側スイッチング素子4Dのターンオンを許可する。
【0097】
仮に駆動制御信号LinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられるときに、第1上側スイッチング素子4Aがオン状態であり、スイッチ電圧Vswがグランド電位よりも低くない場合は、コントローラ33は、第1上側スイッチング素子4Aがターンオフされてスイッチ電圧Vswがグランド電位より低くなったことを確認するまでは、第1下側スイッチング素子4Dのターンオンを許可しない。
【0098】
このような本実施形態であれば、第1上側スイッチング素子4Aをターンオンさせるときの同時オン防止制御を行えるとともに、第1下側スイッチング素子4Dをターンオンさせるときの同時オン防止制御を行うことができる。
【0099】
なお、本実施形態の変形例として、コントローラ33は、スイッチ電圧Vswの代わりに、ブート電圧Vbootをモニターしてもよい。この場合、コントローラ33は、第1上側スイッチング素子4Aがオフ状態によりブート電圧Vbootが入力電圧Vinより低い電圧となっていることを確認できるまで、第1下側スイッチング素子4Dのターンオンを許可しない。
【0100】
または、本実施形態の別の変形例として、コントローラ23は、スイッチ電圧Vswの代わりに、ブート電圧Vbootをモニターしてもよい。さらに当該変形例において、コントローラ33は、スイッチ電圧Vswの代わりに、ブート電圧Vbootをモニターしてもよい。
【0101】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図8は、第4実施形態に係るIPM1の内部構成を示す図である。図8は、第1実施形態に係る図2に対応する図である。
【0102】
本実施形態の第1実施形態との相違点は、図8に示すように、上側ドライバIC2と下側ドライバIC3とのチップ間で通信50が可能であることである。このため、本実施形態では、上側ドライバIC2と下側ドライバIC3との間を通信線としてのワイヤにより接続する必要がある。
【0103】
図9は、第4実施形態に係るIPM1における上側ドライバIC2と下側ドライバIC3の構成を示す図である。図9は、第1実施形態の図3に対応する図である。
【0104】
図9に示すように、上側ドライバIC2のコントローラ23と下側ドライバIC3のコントローラ33との間で通信50が可能となっている。また、コントローラ23は、ドライバ28から出力されて第1上側スイッチング素子4Aのゲートに印加される上側出力信号HOUをモニター可能であり、コントローラ33は、ドライバ35から出力されて第1下側スイッチング素子4Dのゲートに印加される下側出力信号LOUをモニター可能である。
【0105】
本実施形態では、コントローラ23は、駆動制御信号HinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられるとき、通信50によりコントローラ33に第1下側スイッチング素子4Dのオンオフ状態を確認させる。コントローラ33は、下側出力信号LOUを確認して第1下側スイッチング素子4Dのオンオフ状態を通信50によりコントローラ23へ通知する。コントローラ23は、第1下側スイッチング素子4Dのオフ状態が確認できるまで、第1上側スイッチング素子4Aのターンオンを許可しない。
【0106】
一方、コントローラ33は、駆動制御信号LinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられるとき、通信50によりコントローラ23に第1上側スイッチング素子4Aのオンオフ状態を確認させる。コントローラ23は、上側出力信号HOUを確認して第1上側スイッチング素子4Aのオンオフ状態を通信50によりコントローラ33へ通知する。コントローラ33は、第1上側スイッチング素子4Aのオフ状態が確認できるまで、第1下側スイッチング素子4Dのターンオンを許可しない。
【0107】
このような本実施形態によっても、第1上側スイッチング素子4Aと第1下側スイッチング素子4Dの同時オン防止を図ることができる。ただし、本実施形態では、通信50のためにチップ間のワイヤでの接続が必要となり、第1~第3実施形態ではその必要がないので、その点では、第1~第3実施形態は有利である。
【0108】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態に係るIPM1における上側ドライバIC2と下側ドライバIC3の構成を示す図である。図10は、第4実施形態の図9に対応する図である。
【0109】
本実施形態では、第4実施形態と同様にコントローラ23とコントローラ33と間で通信50が可能であり、コントローラ23は、ドライバ28から出力される上側出力信号HOUをモニター可能である。さらに、本実施形態では、第1実施形態と同様に、コントローラ23は、スイッチ電圧Vswをモニター可能である。なお、コントローラ33は、下側出力信号LOUはモニターしない。
【0110】
このような構成により、コントローラ23は、第1実施形態と同様に、駆動制御信号HinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられたとき、スイッチ電圧Vswをモニターし、スイッチ電圧Vswが入力電圧Vinより高い電圧となっていることを確認できるまで、第1上側スイッチング素子4Aのターンオンを許可しない。
【0111】
一方、コントローラ33は、第4実施形態と同様に、駆動制御信号LinUがローレベルからハイレベルへ切り替えられたとき、通信50によりコントローラ23に第1上側スイッチング素子4Aのオンオフ状態を確認させる。コントローラ23は、上側出力信号HOUを確認して第1上側スイッチング素子4Aのオンオフ状態を通信50によりコントローラ33へ通知する。コントローラ33は、第1上側スイッチング素子4Aのオフ状態が確認できるまで、第1下側スイッチング素子4Dのターンオンを許可しない。
【0112】
このような本実施形態によっても、第1上側スイッチング素子4Aと第1下側スイッチング素子4Dの同時オン防止を図ることができる。
【0113】
なお、本実施形態の変形例として、コントローラ23は、スイッチ電圧Vswをモニターする代わりに、第2実施形態と同様にブート電圧Vbootをモニターしてもよい。
【0114】
<その他>
なお、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0115】
例えば、先述したIPMでは、6つのスイッチング素子(3つのスイッチングアーム)を有する構成としていたが、これに限らず、例えば2相交流を生成するインバータやフルブリッジ構成のDC/DCコンバータなどに適用する場合は、IMPは4つのスイッチング素子(2つのスイッチングアーム)を有してもよいし、DC/DCコンバータなどに適用するためにIPMは2つのスイッチング素子(1つのスイッチングアーム)を有してもよい。
【0116】
ただし、IPMが6つのスイッチング素子を有する構成では、仮にドライバICを1チップとすると、ドライバICとスイッチング素子とを接続するワイヤの長さのスイッチング素子間の差が大きくなる虞があるので、ドライバICを2チップとすることが望ましい場合も多く、特に本発明が有効となる。
【0117】
また、例えば先述した第1実施形態の構成(図3)を変形して、図11に示すような構成としてもよい。図11に示す構成では、図3に示した異常保護部301(異常信号生成回路30、ローパスフィルタ36、TSD回路37、UVLO回路38、および過電流保護回路39)、およびNMOSトランジスタNM31を下側ドライバIC3ではなく、上側ドライバIC2に設けている。なお、このような変形例は、第1実施形態に限らず、先述した第2~第5実施形態に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、例えば、DCブラシレスモータの駆動手段に利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 IPM
2 上側ドライバIC
3 下側ドライバIC
4A 第1上側スイッチング素子
4B 第2上側スイッチング素子
4C 第3上側スイッチング素子
4D 第1下側スイッチング素子
4E 第2下側スイッチング素子
4F 第3下側スイッチング素子
5A~5F、6 フォトカプラ
7 MCU
10 プリント基板
15 IPMシステム
21 シュミットトリガ
22 レベルシフタ
23 コントローラ
24 パルスジェネレータ
25 レベルシフタ
26 フィルタ
27 RSフリップフロップ
28 ドライバ
30 異常信号生成回路
31 シュミットトリガ
32 レベルシフタ
33 コントローラ
34 遅延回路
35 ドライバ
36 ローパスフィルタ
37 TSD回路
38 UVLO回路
39 過電流保護回路
301 異常保護部
D1~D6 逆並列ダイオード
Db1~Db3 ブート用ダイオード
Cb1 ブート用コンデンサ
BSU ブートストラップ回路
M モータ
R21、R22、R31、Rs 抵抗
NM31 NMOSトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11