(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイ(SGW)ステータス検出および選択のための方法、システム、およびコンピュータ読取可能媒体
(51)【国際特許分類】
H04W 76/50 20180101AFI20240627BHJP
H04W 92/24 20090101ALI20240627BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20240627BHJP
H04W 88/14 20090101ALI20240627BHJP
【FI】
H04W76/50
H04W92/24
H04W24/04
H04W88/14
(21)【出願番号】P 2021568132
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 US2020024519
(87)【国際公開番号】W WO2020242564
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502303739
【氏名又は名称】オラクル・インターナショナル・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュネジャ,ロヒト
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517640(JP,A)
【文献】3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; General Packet Radio Service (GPRS) enhancements for Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN) access (Release 16),3GPP TS 23.401 V16.2.0,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/ archive/23_series/23.401/23401-g20.zip>,2019年03月25日,pp.35-56
【文献】Ericsson, Sprint,S1-U Path Failure Enhancement,3GPP TSG CT WG4 Meeting #86 C4-186551,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ct/WG4_protocollars_ex-CN4/TSGCT4_86_Palm_Beach/Docs/C4-186551.zip>,2018年08月23日,pp.1-4
【文献】Deutsche Telekom,Discussion on UE behaviour in case of IMS Emergency call failures,3GPP TSG CT WG1 Meeting #104 C1-172287,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ct/WG1_mm-cc-sm_ex-CN1/TSGC1_104_Zhangjiajie/Docs/C1-172287.zip>,2017年05月08日,pp.1-2
【文献】Deutsche Telekom,Definition and configuration of emergency request timer,3GPP TSG CT WG1 Meeting #104 C1-172289,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ct/WG1_mm-cc-sm_ex-CN1/TSGC1_104_Zhangjiajie/Docs/C1-172289.zip>,2017年05月08日,pp.1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出および選択のための方法であって、前記方法は、
少なくとも1つのプロセッサを含むモビリティ管理エンティティ(MME)において、
エコー要求タイムアウトとコールセットアップシグナリングタイムアウトとの組合せを使用して、シグナリングゲートウェイが危険な状態にあることを検出するステップと、
前記MMEによって維持されるシグナリングゲートウェイステータスデータベースにおいて、前記シグナリングゲートウェイを危険なものとしてマークするステップと、
危険なものとしてマークされたシグナリングゲートウェイを除外する態様で、緊急コールのためのシグナリングゲートウェイ選択を行なうステップと、
前記シグナリングゲートウェイ選択によって選択されたシグナリングゲートウェイに前記緊急コールをルーティングするステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記シグナリングゲートウェイが危険な状態にあることを検出するステップは、前記MMEから前記シグナリングゲートウェイへの1つのエコー要求タイムアウトと、前記MMEから前記シグナリングゲートウェイへの2つのセッション生成要求タイムアウトとに応答して、前記シグナリングゲートウェイが危険な状態にあることを検出するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エコー要求タイムアウトは、前記
2つのセッション生成要求タイムアウトに先立って生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エコー要求タイムアウトは、前記
2つのセッション生成要求タイムアウトのうちの一方の後に生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記エコー要求タイムアウトが生じるエコー要求メッセージの送信は、前記2つのセッション生成要求タイムアウトのうちの第2のセッション生成要求タイムアウトの検出によってトリガされる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記2つのセッション生成要求タイムアウトは、同じコールのためのものである、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記2つのセッション生成要求タイムアウトは、異なるコールのためのものである、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記シグナリングゲートウェイ選択を行なうステップは、進化型ノードB(eNode B)からの初期アタッチメッセージに応答して前記シグナリングゲートウェイ選択を行なうステップを含む、請求項
1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記シグナリングゲートウェイ選択を行なうステップは、コールのセットアップ中に前記コールに割り当てられたシグナリングゲートウェイが危険であると判断された前記コールのために、新たなシグナリングゲートウェイを選択するステップを含む、請求項
1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記シグナリングゲートウェイ選択を行なうステップは、コールに現在割り当てられ、危険なものとしてマークされたシグナリングゲートウェイ上にデフォルトベアラが存在する前記コールのために、新たなシグナリングゲートウェイを選択するステップを含む、請求項
1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出および選択のためのシステムであって、前記システムは、
少なくとも1つのプロセッサを含むモビリティ管理エンティティ(MME)と、
前記MMEに位置し、前記MMEによってアクセス可能なシグナリングゲートウェイについてのステータス情報を含む、シグナリングゲートウェイステータスデータベースと、
シグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータとを含み、前記シグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータは、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成される、システム。
【請求項12】
コンピュータの
前記プロセッサによって実行されると
請求項1~10のいずれか1項に記載の前記ステップを行なうように前記コンピュータを制御する
、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2019年5月24日に出願された米国特許出願連続番号第16/422,908号の優先権利益を主張する。当該出願の開示は、その全体がここに引用により援用される。
【0002】
技術分野
ここに説明される主題は、緊急コールを扱うためのシグナリングゲートウェイ(signaling gateway:SGW)の選択または再選択に関する。より特定的には、ここに説明される主題は、緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出および選択のための方法、システム、およびコンピュータ読取可能媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
シグナリングゲートウェイとは、ユーザ間に音声コールをセットアップするためにコールセットアップシグナリングメッセージをリモートシグナリングゲートウェイに通信する、電気通信ネットワークにおけるノードである。ある事例では、ハードウェアまたはソフトウェア障害のため、シグナリングゲートウェイが使用できなくなるかもしれない。他の事例では、エンドユーザ間のコールの複数のレッグがあるため、コールセットアップが遅延するかもしれない。コールセットアップ手順のために、障害を起こした、または起こしつつあるSGWを回避することが望ましいかもしれない。マルチレッグコールセットアップ横断の場合には、SGWがコールセットアップ要求に応答するのを待つことが望ましい。SGW障害とマルチレッグ横断とを区別することは難しいかもしれない。
【0004】
モビリティ管理エンティティ(mobility management entity:MME)とは、コールをセットアップするためにシグナリングゲートウェイと通信する、3GPPモバイル通信ネットワークにおけるノードである。MMEがシグナリングゲートウェイの障害を検出するための既存のメカニズムがあるものの、それらのメカニズムは、障害を検出する際に受け入れがたい遅延をもたらし得る。加えて、上述のように、シグナリングゲートウェイが障害を起こしたかどうか、または、コールを確立する際の遅延がコールの複数のレッグ間の通信に起因するかどうかを判断することは難しい。
【0005】
通常の優先コールなどのいくつかのタイプのコールについては、既存のシグナリングゲートウェイ障害検出メカニズムは十分である。なぜなら、コールセットアップの遅延は、通常の優先コールにとって重大でないためである。しかしながら、E911コールなどの緊急コールについては、遅延したコールセットアップは受け入れられない。
【0006】
したがって、緊急コールのためのシグナリングゲートウェイステータス検出および選択のための改良された方法、システム、およびコンピュータ読取可能媒体の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
概要
ここに説明される主題は、緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出および選択のための方法を含む。方法は、少なくとも1つのプロセッサを含むモビリティ管理エンティティ(MME)において、エコー要求タイムアウトとコールセットアップシグナリングタイムアウトとの組合せを使用して、シグナリングゲートウェイが危険な状態にあることを検出するステップを含む。方法はさらに、MMEによって維持されるシグナリングゲートウェイステータスデータベースにおいて、シグナリングゲートウェイを危険なものとしてマークするステップを含む。方法はさらに、危険なものとしてマークされたシグナリングゲートウェイを除外する態様で、緊急コールのためのシグナリングゲートウェイ選択を行なうステップを含む。方法はさらに、シグナリングゲートウェイ選択によって選択されたシグナリングゲートウェイに緊急コールをルーティングするステップを含む。
【0008】
ここに説明される主題の一局面によれば、シグナリングゲートウェイが危険な状態にあることを検出するステップは、MMEからシグナリングゲートウェイへの1つのエコー要求タイムアウトと、MMEからシグナリングゲートウェイへの2つのセッション生成要求タイムアウトとに応答して、シグナリングゲートウェイが危険な状態にあることを検出するステップを含む。
【0009】
ここに説明される主題の別の局面によれば、エコー要求タイムアウトは、セッション生成要求タイムアウトに先立って生じる。
【0010】
ここに説明される主題のさらに別の局面によれば、エコー要求タイムアウトは、セッション生成要求タイムアウトのうちの一方の後に生じる。
【0011】
ここに説明される主題のさらに別の局面によれば、エコー要求タイムアウトが生じるエコー要求メッセージの送信は、2つのセッション生成要求タイムアウトのうちの第2のセッション生成要求タイムアウトの検出によってトリガされる。
【0012】
ここに説明される主題のさらに別の局面によれば、2つのセッション生成要求タイムアウトは、同じコールのためのものである。
【0013】
ここに説明される主題のさらに別の局面によれば、2つのセッション生成要求タイムアウトは、異なるコールのためのものである。
【0014】
ここに説明される主題のさらに別の局面によれば、シグナリングゲートウェイ選択を行なうステップは、進化型ノードB(eNode B)からの初期アタッチメッセージに応答してシグナリングゲートウェイ選択を行なうステップを含む。
【0015】
ここに説明される主題のさらに別の局面によれば、シグナリングゲートウェイ選択を行なうステップは、コールのセットアップ中にコールに割り当てられたシグナリングゲートウェイが危険であると判断されたコールのために、新たなシグナリングゲートウェイを選択するステップを含む。
【0016】
ここに説明される主題のさらに別の局面によれば、シグナリングゲートウェイ選択を行なうステップは、コールに現在割り当てられ、危険なものとしてマークされたシグナリングゲートウェイ上にデフォルトベアラが存在するコールのために、新たなシグナリングゲートウェイを選択するステップを含む。
【0017】
ここに説明される主題のさらに別の局面によれば、緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出および選択のためのシステムは、少なくとも1つのプロセッサを含むモビリティ管理エンティティ(MME)を含む。システムはさらに、MMEに位置し、MMEによってアクセス可能なシグナリングゲートウェイについてのステータス情報を含む、シグナリングゲートウェイステータスデータベースを含む。システムはさらに、シグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータを含み、シグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータは、エコー要求タイムアウトとコールセットアップシグナリングタイムアウトとの組合せを使用して、シグナリングゲートウェイが危険な状態にあることを検出し、MMEによって維持されるシグナリングゲートウェイステータスデータベースにおいて、シグナリングゲートウェイを危険なものとしてマークし、危険なものとしてマークされたシグナリングゲートウェイを除外する態様で、緊急コールのためのシグナリングゲートウェイ選択を行ない、シグナリングゲートウェイ選択によって選択されたシグナリングゲートウェイに緊急コールをルーティングするためのものである。
【0018】
ここに説明される主題は、ハードウェアおよび/またはファームウェアと組合されたソフトウェアにおいて実現され得る。たとえば、ここに説明される主題は、プロセッサによって実行されるソフトウェアにおいて実現され得る。例示的な一実現化例では、ここに説明される主題は、コンピュータのプロセッサによって実行されると複数のステップを行なうようにコンピュータを制御するコンピュータ実行可能命令が格納された、非一時的コンピュータ読取可能媒体を使用して実現され得る。ここに説明される主題を実現するのに好適である例示的なコンピュータ読取可能媒体は、ディスクメモリデバイス、チップメモリデバイス、プログラマブルロジックデバイス、および特定用途向け集積回路などの非一時的コンピュータ読取可能媒体を含む。加えて、ここに説明される主題を実現するコンピュータ読取可能媒体は、単一のデバイスまたはコンピューティングプラットフォーム上に位置していてもよく、もしくは、複数のデバイスまたはコンピューティングプラットフォームに分散されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイ障害検出および再選択のための例示的な動作環境を示すネットワーク図である。
【
図2】緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイ障害検出および再選択のためのモビリティ管理エンティティのブロック図である。
【
図3A】シグナリングゲートウェイが危険なものとしてマークされることをもたらすであろう、メッセージとタイミングとの1つの組合せを示すコールフロー図である。
【
図3B】シグナリングゲートウェイが危険なものとしてマークされることをもたらすであろう、メッセージとタイミングとの別の組合せを示すコールフロー図である。
【
図3C】シグナリングゲートウェイが危険なものとしてマークされることをもたらすであろう、メッセージとタイミングとのさらに別の組合せを示すコールフロー図である。
【
図4A】シグナリングゲートウェイが危険なものとしてマークされた場合の、初期コールセットアップのためのシグナリングゲートウェイ選択を示すコールフロー図である。
【
図4B】コールセットアップ中にシグナリングゲートウェイが危険なものとしてマークされた場合の、中断されたコールセットアップのためのシグナリングゲートウェイ選択を示すコールフロー図である。
【
図5】緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出および選択のための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
ここに説明される主題は、緊急コールのための強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出および選択のための方法、システム、およびコンピュータ読取可能媒体を含む。上述のように、MMEなどのネットワークノードが、シグナリングゲートウェイがいつダウンするか、および、新たなシグナリングゲートウェイの再選択がいつ必要とされるかを迅速に検出できることは、緊急コール確立のために望ましい。シグナリングゲートウェイからの応答がコールセットアップ要求のために遅延した場合、MMEは、遅延が当該要求のマルチレッグ横断によって引き起こされたかどうか、または、シグナリングゲートウェイが障害を起こしたかもしくは再開したかを確認することができない。ここに説明される主題は、既存のシグナリングゲートウェイが障害を起こしたかまたは障害状態にありそうであると判断された場合に、シグナリングゲートウェイステータスの迅速な検出およびシグナリングゲートウェイの再選択を提供する。
【0021】
図1は、ここに説明される主題のための例示的な動作環境を示す。
図1を参照して、ユーザ装置(user equipment:UE)100は、ネットワークと通信するために進化型ノードB(evolved node:eNode B)102にアタッチするモバイルデバイスであってもよい。eNode B102はMME104に接続し、それはモビリティ管理機能とコールセットアップ機能とを行なう。ホームサブスクライバサーバ(home subscriber server:HSS)106は、モバイルサブスクリプションおよび位置情報を格納する。
【0022】
シグナリングゲートウェイ108および110は、UE100およびリモートユーザなどのユーザ間にコールをセットアップするために、コールセットアップ動作を行なう。そのため、シグナリングゲートウェイ108および110は各々、エンドユーザ間にコールを確立するために、セッション初期化プロトコル(session initiation protocol:SIP)または他のコールセットアッププロトコルを実行してもよい。図示された例では、2つのシグナリングゲートウェイ108および110がある。MME104は、所与のコールを確立するために、2つのシグナリングゲートウェイのうちの一方を選択してもよい。当該コールのためにシグナリングゲートウェイがいったん選択されると、障害が起こらない限り、当該シグナリングゲートウェイはコールセットアップシグナリング経路にとどまり、当該コールについての状態情報を維持するであろう。しかしながら、シグナリングゲートウェイ108または110のうちの一方が障害を起こした場合、MME104は障害を検出し、代わりの利用可能なシグナリングゲートウェイを用いて当該コールを再確立しようとしてもよい。ここに説明される主題は、シグナリングゲートウェイの障害の迅速な識別、および所与のコールを確立するための新たなシグナリングゲートウェイの再選択のための方法論を含む。
【0023】
図1にはパケットゲートウェイ(packet gateway:PGW)112も示されており、それは、ネットワーク要素間のコールセットアップシグナリング通信を含む、パケットベースのデータ通信を提供する。オンライン課金システム(online charging system:OCS)114およびオフライン課金システム(offline charging system:OFCS)116はそれぞれ、ユーザ間の通信のためのオンラインおよびオフライン課金機能を行なう。ポリシーおよび課金ルール機能(policy and charging rules function:PCRF)118は、ユーザ間の通信のためのネットワークポリシーを実行する。サブスクリプションプロファイルリポジトリ(subscription profile repository:SPR)120は、サブスクライバプロファイル情報を格納する。アプリケーション機能(application function:AF)122は、UEデバイスのためのアプリケーションサービスを提供する。一例では、UEデバイスは、センサなどのモノのインターネット(Internet of Things:IoT)デバイスであってもよく、AF122は、IoTデバイスからデータを取得するサーバであってもよい。
【0024】
シグナリングゲートウェイの障害を検出するためにMMEによって使用され得る1つのメカニズムは、3GPP TS 29.060、V 15.4.0(2019-03)に記載された経路管理手順である。TS 29.060に記載された経路管理手順によれば、ゲートウェイサポートノード(gateway support node:GSN)または無線ネットワークコントローラ(radio network controller:RNC)が、経路上でエコー要求を別のGSNまたはRNCに送信し、ピアGSNまたはRNCが動作状態にあるかどうかを調べてもよい。アクティブパケットデータプロトコル(packet data protocol:PDP)コンテキスト、マルチメディアブロードキャスト/マルチキャスト(multimedia broadcast/multicast:MBMS)UEコンテキスト、またはベアラコンテキストのうちの少なくとも1つに関連付けられた経路ごとに、エコー要求メッセージが送信されてもよい。エコー要求メッセージがいつ、どのように送信されるかは実行に固有のものであるが、3GPP TS 29.060は、エコー要求が各経路上で60秒ごとよりも頻繁に送信されるべきではないことを示している(3GPP TS 29.060のセクション7.2.1を参照)。
【0025】
送信ノードが経路上でエコー要求メッセージを送信すると、送信ノードはタイマを始動させる。エコー応答が受信される前にタイマがタイムアウトした場合、タイムアウトが生じ、経路はダウンしていると考えられる。エコー応答タイムアウトの例示的な値は5~15秒であってもよく、ネットワーク構成に依存してそれより長くてもよい。SGWは、エコー要求をいつでも受信し、エコー応答で返答するように準備されていなければならない。
【0026】
SGWまたはS11経路が障害を起こしたことをMMEが検出した場合、MMEは、SGWに関連付けられたすべてのUEについてのUEコンテキストデータを維持し、復旧タイマを始動させる。S11経路とは、MMEとSGWとの間の経路である。MMEとSGWとの間のインターフェイスは、S11インターフェイスと呼ばれる。UEコンテキストは、復旧タイマの持続時間の間、MME上で維持される。S11経路は各々、それ自体のタイマを有する。セッション保持タイムアウトは、SGW復旧のためのセッション保持タイマを構成する。セッション保持タイマは、1~3600秒の整数でなければならない。
【0027】
障害を起こしつつあるSGWを勘案するためにMMEによって実行される別のタイプの手順は、シグナリングメッセージの再送信を要求することである。3GPP TS 29.060によれば、T3応答タイマが、応答が送信されたとして定義されたシグナリング要求メッセージで始動される。T3応答タイマが満了する前に応答が受信されない場合、シグナリングメッセージ要求または応答はおそらくなくなってしまっている。要求を試みる総数がN3要求の回数よりも少ない場合、要求は再送信される。タイマは、エコー要求およびエコー応答のために制御プレーンアプリケーションおよびユーザプレーンアプリケーションで実行される。応答のための待ち時間(T3応答タイマ値)および再試行(N3要求)の回数は、ネットワークオペレータによって手順ごとに構成可能である。MMEは、接続性要求の再試行のために約5秒というデフォルトタイマを実行してもよい。MMEはまた、5回という最大再試行構成を有していてもよい。
【0028】
T3応答タイマがいったん満了すると、再試行を試みる回数がN3要求の回数よりも少ない場合には、T3応答タイマに対応するメッセージが再送信される。T3応答タイマおよびN3要求カウンタの設定は、実行に依存する。すなわち、タイマおよびカウンタは、手順ごとに構成可能である。セッション生成要求および応答などのマルチレッグ通信は、単一レッグ通信と比較して、より長いタイマ値と、おそらくより多くの再送信試行回数とを必要とする。このため、カウンタの値および再試行の回数に依存して、コールセットアップは、既存の3GPPエコー要求手順、応答手順、および再送信手順に従って著しく遅延し得る。
【0029】
SGW障害検出および回復に関連する3GPP機能性をさらに記載するさらに別の文書は、3GPP TS 29.274 V15.7.1(2019-03)である。3GPP 29.274によれば、エコー要求メッセージは、回復情報要素を含む。回復情報要素は、ローカル再始動カウンタの値を含む。回復情報要素におけるオプションの私的拡張部は、ベンダーまたはオペレータに固有の情報を含み得る。
【0030】
SGW障害からの回復に関連する3GPP機能性を記載するさらに別の3GPP文書は、3GPP TS 23.401 V16.2.0(2019-03)である。たとえば、3GPP TS 23.401のセクション4.3.8.2は、シグナリングゲートウェイ選択機能を定義する。シグナリングゲートウェイ選択機能は、UEにサーブするための利用可能なシグナリングゲートウェイを選択する。選択は、シグナリングゲートウェイがUEの場所にサーブするように、ネットワークトポロジーに基づいている。シグナリングゲートウェイの選択に関連する考慮事項は、シグナリングゲートウェイを変更する可能性と、負荷平衡考慮事項とを含む。シグナリングゲートウェイ選択は、MMEによって行なわれる。
【0031】
TS 23.401はまた、緊急コールなどの緊急サービスのための手順も定義する。しかしながら、緊急コールのためのシグナリングゲートウェイ選択または再選択のための手順についての言及はない。
【0032】
SGWがダウンした場合の回復手順を規定するさらに別の仕様は、ETSI TS 29.160 V15.2.0(2018-07)である。ETSI TS 29.160は、3GPP TS 29.060と同じ仕様である。ETSI TS 29.160によれば、ピアGSNからエコー要求を受信するGSNは、受信された再始動カウンタ値を、そのピアGSNのために格納された以前の再始動カウンタ値と比較するものとする。以前の値が格納されていない場合、エコー応答で受信された再始動カウンタ値が、ピアGSNのために格納される。ピアのために以前に格納された再始動カウンタの値が、エコー応答メッセージで受信された再始動カウンタ値よりも小さい場合、これは、エコー応答を送信したエンティティが再始動したことを示す。受信された新たな再始動カウンタ値は、受信エンティティがピアのための以前に格納された値を置き換えることによって格納されるものとする。
【0033】
SGW障害を検出するための既存のメカニズムは、上述のエコー要求手順および応答タイムアウトを含む。SGW障害は、SGW再始動の有無にかかわらず、構成可能な期間の間、MMEがUEコンテキストを維持することから構成される。MMEがSGWへの経路障害を検出し、MMEがSGW復旧をサポートする場合、MMEは、障害を起こしたSGWから別のSGWへセッションを配置し直す。MMEはSGWにエコー要求メッセージを送信し、連続する3つのエコー要求メッセージに対して応答が受信されない場合には、MMEはSGWを、ダウンしておりブラックリストに載っているとしてマークする。
【0034】
加えて、あるコールのための3つのセッション生成要求(create session request:CSReq)がタイムアウトした場合、SGWは、ダウンしておりブラックリストに載っているとしてマークされる。各CSReqタイムアウトの一般的なデフォルト値は60秒であり、ネットワークに依存してより長くなる場合もある。
【0035】
MMEが構成可能な復旧タイマによって定義された期間内にコンテキストを復旧することができない場合、SGWはダウンしているとしてマークされるであろう。SGW復旧タイマは、1~3600秒の範囲の値を用いてオペレータによって構成可能である。同じSGWが回復した場合、コンテキストデータはMME/PGW上で維持されていない。このため、SGW障害を検出するためにエコー要求または再送信タイムアウト手順のいずれかを使用すると、検出は180秒以上かかる場合がある。
【0036】
SGW障害の検出遅延が望ましくない1つの事例は、緊急コールについてのものである。緊急コールは、緊急登録を用いて作成される。一例では、MMEはSGWをダウンしているとしてマークしていないものの、部分的障害/障害状態への移行に起因してSGWから応答が得られない。緊急コールは、初期アタッチ手順中のUEによる緊急登録で始まる。登録メッセージにおけるアタッチタイプは、緊急アタッチを示す。MMEは、初期アタッチメッセージにおいて提供されたアクセスポイント名(access point name:APN)に基づいて、PGWを選択する。MMEは次に、選択されたPGWと追跡エリア識別子(tracking area identifier:TAI)リストとに基づいて、SGWを選択する。MMEが、ダウンしている/ブラックリストに載っているとしてマークされていないものの部分的障害状態にあるSGWを選択した場合、MMEは、3つのセッション生成要求および応答タイムアウトを用いて再試行するであろう。各タイムアウトはデフォルトで60秒間隔である。加えて、3つのエコー要求/応答が障害を起こした場合、MMEはSGWをダウンしているとしてマークするであろう。応答を待っている保留中のコールセットアップ要求がある場合、それらも同様に中断されるであろう。上述のように、SGW障害を扱うためのこれらの既存のメカニズムは、緊急コールをセットアップする際に受け入れがたい遅延をもたらし得る。
【0037】
SGW障害の検出遅延が緊急コール確立のさらなる遅延を引き起こす、緊急コールに関連する別の事例は、障害を起こしたSGWによってデフォルベアラが提供される場合である。前述の例と同様に、この例では、緊急コールは緊急登録を用いて作成される。MMEはSGWをダウンしているとしてマークしていないものの、部分的障害/障害状態への移行に起因してSGWから応答が得られない。この例では、デフォルトベアラがすでに、障害を起こしつつあるSGWを用いるユーザのために存在すると仮定される。MMEは、緊急コールを確立しながら、障害を起こしつつある同じSGWを選択する。MMEが、ダウンしている/ブラックリストに載っているとしてマークされていないものの部分的障害状態にある、障害を起こしつつあるSGWを選択した場合、MMEは、3つのセッション生成要求および応答タイムアウトを用いて再試行するであろう。各タイムアウトはデフォルトで60秒間隔である。加えて、3つのエコー要求/応答障害が起こった場合、SGWはダウンしているとしてマークされ、トランザクションは中断され、新たなセッション生成要求が代わりのSGWに送信される。この手順を使用すると、緊急コールを再確立する際の遅延は、受け入れがたくなり得る。
【0038】
緊急コール確立時にSGW障害を検出する際の受け入れがたい遅延を回避するために、ここに説明される主題は、SGWが危険なものとして、または部分的に障害が起こった状態にあるとして識別される、2段階の解決策を含む。危険な、健全な、ブラックリストに載っている、またはダウンしているSGWのリストが、MMEによって維持される。MMEは、SGWのリストおよびそれらの対応状態を使用して、緊急コールを可能にするかどうか、またはどのように可能にするかを判断する。
図2は、強化されたSGW障害検出および緊急コールルーティングを有するMME104を示すブロック図である。
図2を参照して、MME104は、少なくとも1つのプロセッサ200とメモリ202とを含む。MME104はさらに、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータを含み、それは、障害が起こった状態、または部分的に障害が起こった状態といったSGW状態を迅速に検出し、SGW状態をSGWステータスデータベース206に格納し、SGWステータスデータベース206における情報を使用して緊急コールを確立および再確立する。強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204の動作を、以下により詳細に説明する。
【0039】
一例では、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は、データベース206においてSGWを危険なものとしてマークするために、以下の条件を利用してもよい。以下の条件は、SGWを危険なものとしてマークするために使用されてもよい:
1. MME104からSGWへの少なくとも1つのエコー要求タイムアウト;および
2. MME104から問題となっているSGWへの任意のコールのための2つのセッション生成要求タイムアウト。セッション生成要求タイムアウトは、同じコールからのものでも、または異なるコールからのものでもよい。同じコールまたは異なるコールからの連続するセッション生成要求タイムアウトに基づいてSGWを危険なものとしてマークするかどうかは、構成可能なパラメータであってもよい。
【0040】
上に列挙された条件が満たされた場合、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は、SGWステータスデータベース206においてSGWを危険なものとしてマークしてもよい。MME104とテスト中のSGWとの間に2つのセッション生成タイムアウトが生じ、エコー要求タイムアウトが生じなかった場合、MME104は、エコー要求間のタイムアウト期間が満了するまで待つのではなく、直ちにエコー要求メッセージを送信してもよい。エコー要求がタイムアウトした場合、SGWは危険なものとしてマークされてもよい。エコー要求がタイムアウトしない場合、SGWは、データベース206においてアップしているかまたは利用可能であるとしてマークされてもよい。
【0041】
危険なものとしてマークされたSGWからの応答が受信された場合、SGWのステータスは、利用可能であるかまたアップしているとしてマークされてもよい。応答は、セッション生成要求に対する応答、またはエコー要求に対する応答であり得る。
【0042】
エコー要求タイムアウトは概して5秒であり、セッション生成要求タイムアウトは60秒である。これらの値のいずれも、ネットワーク構成に依存して増加され得る。このため、連続する3つのエコー要求タイムアウト、または連続する3つの接続要求タイムアウトを待つ代わりに、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は、少なくとも1つのエコー要求タイムアウトと2つのセッション生成要求タイムアウトとの上述の組合せに基づいて、SGWを危険なものとしてマークする。エコー要求タイムアウトとセッション生成要求タイムアウトとはSGWステータスを検出するために組合されて使用されるため、解決策は、これらのタイプのタイムアウトに個々に依拠する方法よりも頑強である。加えて、SGWを危険なものとしてマークするのに必要なタイムアウトの数が従来よりも少なくなるため、SGW障害または危険性をより迅速に検出することができる。最後に、危険なステータスを含むSGWステータスが、MME104によって維持されるデータベース206に格納され、SGW選択時にMME104によって使用されるため、緊急コールの遅延をもたらすであろう危険なSGWを回避することができる。
【0043】
別の例では、1つのエコー要求がすでに障害を起こし、2つの接続要求タイムアウトがMMEを横切ってSGWに生じた場合、危険なSGWの検出を早期に行なうことができる。この場合、SGWは危険なものとしてマークされ、緊急コールのために回避されるであろう。
【0044】
図3Aおよび
図3Bは、SGWが危険なものとしてマークされ得る2つの事例を示す例示的なコールフローである。
図3Aを参照して、コールフローのライン1で、MME104はエコー要求メッセージをSGW108に送信する。MME104がエコー要求メッセージを送信すると、MME104はエコー要求タイマを始動させ、それは、5秒などの比較的短い値に設定され得る。SGW108がエコー要求のためのタイムアウト期間内に、すなわち、エコー要求タイマが満了する前に応答しない場合、MME104はエコー要求タイムアウトカウンタをインクリメントして、エコー要求タイムアウトが生じたことを示してもよい。コールフロー図のライン2で、エコー要求タイマが満了し、MME108はエコー要求タイムアウトカウンタをインクリメントする。
【0045】
MME104がeNode Bから初期アタッチメッセージを受信すると、MME104は、負荷平衡などのシグナリングゲートウェイ選択基準を使用して、シグナリングゲートウェイを選択してもよい。MME104は、危険なものとしてマークされたあらゆるシグナリングゲートウェイを選択から除外してもよい。この例では、MME104はシグナリングゲートウェイ108を選択すると仮定される。したがって、コールフロー図のライン2で、MME104は接続セットアップ要求をSGW108に送信する。コールフローのライン3で、MME104はセッション生成要求をSGW108に送信する。セッション生成要求メッセージは、eNode Bから受信された初期アタッチメッセージに応答して送信されてもよい。MME104がセッション生成要求メッセージを送信すると、MME104は、セッション生成要求メッセージのためのタイマを始動させる。時間はエコー要求タイマよりも長い値に設定されてもよいが、その値は、コールが複数のレッグを有するかどうかに依存してもよい。MME104がセッション生成要求に対する応答を当該要求のためのタイムアウト期間内に受信しない場合、MME104はセッション生成要求カウンタをインクリメントしてもよい。
図3Aに示す例では、ライン5でセッション生成要求タイムアウトが生じると仮定される。セッション生成要求タイムアウトカウンタが満了すると、MME104はセッション生成要求タイムアウトカウンタをインクリメントする。このため、
図3Aのコールフローにおけるライン2の後では、エコー要求タイムアウトカウンタおよびセッション生成要求タイムアウトカウンタは双方とも、1という値を有する。
【0046】
MME104は、セッション生成要求の送信を、構成可能な回数再試行してもよい。構成可能な回数を上回っていないと仮定すると、コールフロー図のライン6で、MME104は別のセッション生成要求をSGW108に送信する。この例では、セッション生成要求メッセージは、同じコールのためのものである、ライン4におけるセッション生成要求メッセージの再送信である。ライン6においてセッション生成要求メッセージについてセッション生成要求タイマが満了すると、MME104はセッション生成要求タイムアウトカウンタをインクリメントする。エコー要求タイムアウトカウンタが少なくとも1であり、セッション生成要求タイムアウトカウンタが少なくとも2であるため、ライン7で、MME104はSGW108を危険なものとしてマークする。このため、MME104がSGWを危険なものとしてマークし得る1つのシナリオは、1つのエコー要求タイムアウトに2つのセッション生成要求タイムアウトが続く事態が生じる場合である。
【0047】
図3Bは、MME104がSGWを危険なものとしてマークし得る別のシナリオを示す。
図3Bでは、コールフロー図のライン1で、MME104はセッション生成要求メッセージをSGW108に送信する。セッション生成要求は、eNode Bからのセッション生成要求の受信に応答するものであってもよい。セッション生成要求メッセージを送信後、SGW108はセッション生成要求タイマを始動させる。タイマが満了する前に応答が受信されない場合、タイムアウトが生じる。したがって、ライン2で、セッション生成タイマが満了し、MME104はセッション生成要求タイムアウトカウンタをインクリメントする。
【0048】
コールフロー図のライン2で、MME104は第2のセッション生成要求メッセージをSGW108に送信する。第2のセッション生成要求メッセージは、ライン1におけるセッション生成要求と同じかまたは異なるコールのためのものであってもよい。ライン3でMME104がセッション生成要求メッセージを送信すると、MME104はセッション生成要求タイマを始動させる。セッション生成要求タイマが満了する前に応答が受信されない場合、タイムアウトが生じる。したがって、ライン4で、第2のセッション生成要求タイムアウトが生じ、MME104はセッション生成要求タイムアウトカウンタをインクリメントする。このため、ライン2の後では、セッション生成要求タイムアウトカウンタは、2という値を有する。
【0049】
コールフロー図のライン5で、次のエコー要求再送信期間を待つのではなく、2という値に達するセッション生成要求タイムアウトカウンタの値が、エコー要求メッセージをSGW108に送信するようにMME104をトリガしてもよい。セッション生成要求タイムアウトカウンタが2という値に達するとエコー要求メッセージを直ちに送信することは、危険なステータスを有するSGWの迅速な検出を容易にすることができる。MME104がエコー要求メッセージを送信すると、MME104はエコー要求タイマを始動させる。タイマが満了する前に応答が受信されない場合、タイムアウトが生じる。ライン6で、エコー要求タイマが満了し、MME104はエコー要求タイムアウトカウンタをインクリメントする。ライン6の後では、エコー要求タイムアウトカウンタは1という値を有し、接続セットアップ要求タイムアウトカウンタは2という値を有する。したがって、ライン7で、MME104はSGW108を危険なものとしてマークする。
【0050】
なお、コールセットアップ要求手順およびエコー要求手順は互いに独立して動作するので、コールセットアップ要求およびエコー要求のためのタイムアウト期間が平行に走る場合、タイムアウト期間がさらに短縮され得る。このシナリオを
図3Cに示す。
図3Cでは、ライン1で、MME104はセッション生成要求メッセージをSGW108に送信する。セッション生成要求タイムアウトが生じる前に、MME104はライン2でエコーメッセージをSGW108に送信する。ライン2でのエコー要求メッセージの送信は、連続するエコー要求メッセージ間の期間が経過することによってトリガされてもよい。ライン3で、MME104がエコー要求メッセージに対する応答を受信しないためにエコー要求タイマが満了し、MME104はエコー要求タイムアウトカウンタをインクリメントする。コールフロー図のライン4で、セッション生成要求タイマが満了し、MME104はセッション生成要求タイムアウトカウンタをインクリメントする。
【0051】
ライン5で、MME104は第2のセッション生成要求メッセージをSGW108に送信する。ライン6で、セッション生成要求タイマが満了し、MME104はセッション生成タイムアウトカウンタをインクリメントする。ライン6の後では、エコー要求タイムアウトカウンタは1という値を有し、セッション生成要求タイムアウトカウンタは2という値を有する。したがって、ライン7で、MME104はSGW108を危険なものとしてマークする。このため、
図3Cは、セッション生成要求メッセージおよびエコー要求メッセージのためのタイムアウト期間が平行に走る場合を示す。
【0052】
上述のように、SGWが危険なものとしていったんマークされると、緊急コールは危険なSGWにルーティングされるべきでない。一例では、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204が、緊急コールとしてマークされたコールのためのセッション生成要求を受信すると、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は、SGWステータスデータベース206におけるSGWのリストを横断してもよい。所与のSGWのステータスが危険なものとしてマークされている場合、それは、緊急コールセットアップのために回避されるであろう。SGWが危険であるかまたはダウンしているとしてマークされていない場合、それは、負荷平衡を含む任意の他の好適な基準に基づいて、緊急コールのために選択されてもよい。
【0053】
緊急コールのための初期アタッチのために、UEはコールを、初期アタッチメッセージにおける緊急コールとして識別する。そのようなメッセージがMME104に達すると、当該コールのために複数のSGWが利用可能であるかどうかが判断される。複数のSGWが利用可能であり、かつ、当該SGWのうちのいくつかが危険なものとしてマークされる場合、危険なSGWはSGW選択プロセスから省略されてもよい。強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は、危険なものまたはダウンしているとしてマークされていないSGWから選択してもよい。強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は次に、セッション生成メッセージを選択されたSGWにルーティングする。
【0054】
図4Aは、緊急コールの初期アタッチのための危険なシグナリングゲートウェイの迂回を示すコールフロー図である。
図4Aを参照して、コールフロー図のライン1で、UE100は緊急コールのために初期アタッチメッセージをeNode B102に送信する。ライン2で、eNode B102は初期アタッチメッセージをMME104に送信する。ライン3で、MME104は、データベース206にアクセスしてSGW108が危険なものとしてマークされていると判断することによって、シグナリングゲートウェイ選択を行なう。したがって、ライン4で、MME104は危険なSGW108を迂回し、危険なものとしてマークされていないSGW110にセッション生成要求メッセージを送信する。
【0055】
ここに説明される主題についての別の使用事例は、緊急コールセットアップがあるSGWを用いて進行中であり、かつ、当該コールセットアップ中に当該SGWが障害を起こすかまたは危険であると判断された場合に生じる。この例では、緊急コールセットアップが進行中である場合、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は、既存のSGWを用いるコールセットアップを中断し、危険でない新たなSGWを選択し、新たに選択されたSGWを用いてコールセットアップを開始する。
図4Bは、この場合を示す。
【0056】
図4Bを参照して、ライン1で、UE100は緊急コールのために初期アタッチメッセージをeNode B102に送信する。ライン2で、eNode B102は初期アタッチメッセージをMME104に送信する。ライン3で、MME104は、データベース206にアクセスして現在危険なものとしてマークされていないSGW108を選択することによって、シグナリングゲートウェイ選択を行なう。したがって、ライン4で、MME104はセッション生成要求メッセージをSGW108に送信する。
【0057】
ライン5で、エコー要求タイマが満了し、エコー要求タイムアウトをもたらす。この例では、エコー要求タイムアウトが生じたときに2つのCSeq要求タイムアウトが生じたと仮定される。その結果、ライン5で、MME104は、危険なものとしてマークされつつあるSGW108をマークする。ライン6で、CSeq要求タイマが満了するのを待つのではなく、MME104は、危険なSGW108を用いるコールセットアップを中断し、危険でない新たなSGW110を選択し、そしてライン7で、新たなセッション生成要求メッセージを危険でないSGW110に送信する。
【0058】
ここに説明される主題についてのさらに別の使用事例は、デフォルトベアラが存在する場合の緊急コールのルーティングである。この手順によれば、緊急911コールが発せられ、デフォルトベアラがシグナリングゲートウェイSGW1を用いるユーザのためにすでに存在し、かつ、SGW1が危険なものとしてマークされている場合、以下のステップが新たな要求の処理を説明する:
1. 新たなセッション生成要求がMMEに到着する;
2. MMEは、データベース206においてSGW1が危険なものとしてマークされていると判断し、このため、新たなセッションのためにSGW1によって提供されたデフォルトベアラを選択しない;
3. MMEは、コールのために別のSGWであるSGW2を選択する。SGW2は危険なものとしてマークされていない;
4. 新たなセッション生成要求がPGWにいったん到達すると、SGW1に対するPGWでのコンテキストデータブロックが削除される;
5. SGW1上のコンテキストデータブロックはタイムアウトするであろう;
6. 追加の構成では、一時的な緊急コールがいったん完了されると、SGW2上のコンテキストデータは、コンテキストデータがSGW1から取得されたものであるため、消去されてもよい;
7. SGW2を選ぶための構成が残っているものの、MMEは、将来のすべてのコールのためにSGW2を選択するように更新されてもよい。
【0059】
デフォルトベアラの場合のためのコールフローは、SGWが危険なものとしてマークされた時点でコールセットアップが進行中か否かに依存して、
図4Aまたは
図4Bに示すものと同じであってもよい。
【0060】
図5は、強化されたSGW障害検出および緊急コールルーティングのための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図5を参照して、ステップ500で、エコー要求タイムアウトとコールセットアップシグナリングタイムアウトとの組合せに基づいて、SGWが危険な状態にあると判断される。たとえば、所与のSGWのために1つのエコー要求タイムアウトと2つのコールセットアップシグナリングメッセージタイムアウトとが生じる場合、強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータ204は、SGWが危険な状態にあると判断してもよい。一例では、
図3Aに示すように、強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータ204は、1つのエコー要求タイムアウトに2つのセッション生成セットアップ要求タイムアウトが続くことに応答して、SGWを危険なものとしてマークしてもよい。
図3Bに示すような別の例では、セッション生成セットアップ要求タイムアウト期間とエコー要求タイムアウト期間との間に少なくとも何らかの重複がある場合、強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータ204は、SGWを危険なものとしてマークしてもよい。
図3Cに示すようなさらに別の例では、強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータ204は、第2のセッション生成要求タイムアウトによってトリガされたエコー要求メッセージを送信してもよく、エコー要求タイムアウトのタイムアウトに応答してSGWを危険なものとしてマークしてもよい。
【0061】
ステップ502で、SGWは、MMEによって維持されるSGWステータスデータベースにおいて危険なものとしてマークされる。たとえば、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は、データベース206において危険なものとして検出されたSGWをマークしてもよい。
【0062】
ステップ504で、シグナリングゲートウェイ選択が、危険なものとしてマークされたシグナリングゲートウェイを迂回する態様で、緊急コールのために行なわれる。たとえば、強化されたシグナリングゲートウェイステータス検出器兼緊急コールルータ204は、SGWステータスデータベース206における利用可能な危険でないシグナリングゲートウェイの中から、コールのための危険でないシグナリングゲートウェイを選択してもよい。選択は、
図4Aに示すように、SGWが以前に選択されなかった緊急コールのための初期シグナリングゲートウェイ選択であってもよい。別の例では、選択は、
図4Bに示すように、コールセットアップ中にコールのために選択された既存のシグナリングゲートウェイが危険なものとしてマークされている場合の、進行中のコールセットアップのための新たなシグナリングゲートウェイの選択であってもよい。
【0063】
ステップ506で、緊急コールは、SGW選択プロセスによって選択されたSGWにルーティングされる。コールを選択されたSGWにルーティングすることは、セッション生成セットアップ要求メッセージを選択されたSGWに送信することによって遂行されてもよい。
【0064】
ここに説明される主題の例示的な利点は、以下を含む:
1. 障害状態に移行しつつあるSGWを早期に検出できるため、緊急コールの確立時の遅延が減少する;
2. 障害を起こしつつあるSGWにルーティングされるコールの数が減少し、その結果、転送および再試行の回数が減少するため、ネットワーク最適化を得ることもできる;
3. 障害メッセージの数、ネットワーク利用、および、SGW移行のために必要な時間が減少する。
【0065】
既存の手順と比べた、初期緊急コール確立中のSGW障害の早期発見に関連する進歩または利点は、既存の手順では、別のSGWを選択するために連続する3つの接続要求タイムアウトが必要であるということである。接続要求タイムアウトのデフォルト値が60秒である場合、SGWをブラックリストに載せる前に180秒かかるであろう。
【0066】
同様に、エコー要求がイネーブルにされる場合、別のエコー要求が、60秒というデフォルト値と5秒というタイムアウトのためのデフォルト値との後で送信される。SGWをダウンしているとしてマークするには、3つの障害が必要とされるであろう。このため、既存のエコー要求手順を使用すると、SGW障害を検出するために最小で185秒が必要とされるであろう。
【0067】
強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204では、連続する3つの接続要求タイムアウトまたは連続する3つのエコー要求タイムアウトに依存する代わりに、これらのメッセージの組合せを使用して、コールセットアップ時間を減少させることができる。たとえば、強化されたSGWステータス検出器兼緊急コールルータ204は、コールの代わりに、ノードを越えて問題となっているSGWに向かうエコー要求障害についてチェックする。1つのエコー要求タイムアウトに応答して、障害が起こったエコー要求のカウンタがインクリメントされる。2つのコールセットアップ要求タイムアウトが生じた場合、エコー要求は、最後のエコー要求初期化以降60秒待つ代わりに、直ちに送信される。これは、60秒以上減少したコールセットアップ時間をもたらし得る。1つのエコー要求および2つのコールセットアップ要求に対する障害がMMEからSGWに生じる場合、SGWは、緊急コールのために危険なものとしてマークされる。
【0068】
エコー要求がすでに障害を起こし、もう2つのコールセットアップ障害が生じた場合、SGWは危険なものとしてマークされる。コールセットアップ応答が受信された場合、カウンタは消去され、SGWは危険なものとしてマークされない。このため、双方のタイプのメッセージを使用する検出の組合せは、緊急コールの迅速な確立をもたらす。
【0069】
ここに説明された早期のSGWステータス検出手順はまた、ベアラがすでにセットアップされている場合の再確立を容易にすることができるが、無線周波数(radio frequency:RF)側のチャネルはアイドルタイムアウトに起因してクリーンにされており、再アタッチが必要である。
【0070】
初期緊急アタッチが受信された場合、MME104は、危険な状態にあるかもしれない予め選択されたシグナリングゲートウェイまたは新たなシグナリングゲートウェイを選ぶ代わりに、危険なものとしてマークされていないSGWを選ぶ。
【0071】
緊急コールセットアップが進行中である場合、MME104は、コールセットアップシグナリングメッセージの受信不能に起因する完全障害検出タイムアウトを待つ代わりに、危険なSGWを早期に検出し、危険なSGWを用いるコールセットアップを中断し、危険でないSGWを用いてセッションを開始する。
【0072】
以下の各参考文献の開示はこれにより、その全体がここに引用により援用される。
参考文献
1. 3GPP TS 29.060、V 15.4.0(2019-03);第3世代パートナーシッププロジェクト;技術仕様グループコアネットワークおよび端末;汎用パケット無線サービス(General Packet Radio Service:GPRS);GnおよびGpインターフェイスを横切るGPRSトンネリングプロトコル(GPRS Tunneling Protocol:GTP)(リリース15)
2. 3GPP TS 29.274 V15.7.1(2019-03);第3世代パートナーシッププロジェクト;技術仕様グループコアネットワークおよび端末;3GPP進化型パケットシステム(Evolved Packet System:EPS);制御プレーンのための進化型汎用パケット無線サービス(GPRS)トンネリングプロトコル(GTPv2-C);ステージ3(リリース15)
3. 3GPP TS 23.401 V16.2.0(2019-03);第3世代パートナーシッププロジェクト;技術仕様グループサービスおよびシステム局面;進化型ユニバーサル地上波無線アクセスネットワーク(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network:E-UTRAN)アクセスのための汎用パケット無線サービス(GPRS)強化(リリース16)
4. ETSI TS 29.160 V15.2.0(2018-07)デジタルセルラー電気通信システム(フェーズ2+)(GSM)(登録商標);ユニバーサルモバイル電気通信システム(Universal Mobile Telecommunications System:UMTS);汎用パケット無線サービス(GPRS);GnおよびGpインターフェイスを横切るGPRSトンネリングプロトコル(GTP)(3GPP TS 29.060 バージョン15.2.0 リリース15)。
【0073】
ここに開示された主題のさまざまな詳細は、ここに開示された主題の範囲から逸脱することなく変更されてもよいということが理解されるであろう。また、前述の説明は限定のためではなく、例示のみのためのものである。