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特許7510964電気医療デバイス制御システム、電源装置、中継機器および給電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】電気医療デバイス制御システム、電源装置、中継機器および給電方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022024610
(22)【出願日】2022-02-21
(65)【公開番号】P2023121329
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230121005
【弁護士】
【氏名又は名称】多田 宏文
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 久生
(72)【発明者】
【氏名】大島 祐介
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-292684(JP,A)
【文献】特開2001-178734(JP,A)
【文献】特開2008-036390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12-18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内で処置を行うことが可能な電気医療デバイス制御システムに用いられる電源装置であって、
カテーテルを含んで構成される電気医療デバイスと、前記電源装置と、の間に設けられ、前記電源装置からの電力を前記電気医療デバイスに中継する非ディスポーザブル機器に保持された、前記電気医療デバイスの種類を判別するために用いられる判別情報に基づく判別により得られる前記電気医療デバイスの種類に基づいて、前記電気医療デバイスに電力を供給する電源部を備え、
前記判別は、
配線上の電圧状態であって、前記判別情報に応じた電圧状態に基づいて行われる、または、
配線に流れる電流であって、前記判別情報に応じた電流に基づいて行われる電源装置(但し、前記判別情報が、前記電源装置と接続するための前記電気医療デバイスのコネクタの形状によって示されるものと、前記電源装置と接続するための前記電気医療デバイスに設けられたコネクタの形状によって示されるものと、を除く)。
【請求項2】
前記配線は、抵抗器が接続される配線である、請求項に記載の電源装置。
【請求項3】
前記判別情報に基づいて前記電気医療デバイスの種類を判別する判別部を備える請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
複数の電気医療デバイスのいずれかに選択的に電力を供給可能である、請求項1乃至のいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
前記種類は、最大出力電力である、請求項1乃至のいずれかに記載の電源装置。
【請求項6】
前記電気医療デバイス制御システムは、高電圧パルスを用いて患者の体内で処置を行うことが可能である、請求項1乃至のいずれかに記載の電源装置。
【請求項7】
前記処置は、焼灼治療である、請求項1乃至のいずれかに記載の電源装置。
【請求項8】
各種の情報を表示する表示部と、
操作者による操作に応じて、各種の設定値または所定の動作を指示するための指示信号を出力する入力部と、を備え、
前記表示部も前記入力部も、前記電源装置の所定の面に設けられる、請求項1乃至のいずれかに記載の電源装置。
【請求項9】
患者の体内で処置を行うことが可能な電気医療デバイス制御システムに用いられ、カテーテルを含んで構成される電気医療デバイスと、前記電気医療デバイスに電力を供給する電源装置と、の間に設けられ、前記電源装置からの電力を前記電気医療デバイスに中継するように構成された非ディスポーザブル機器であって、
前記電気医療デバイスの種類を判別するために用いられる判別情報を保持した判別情報保持部を備え、
前記判別は、
配線上の電圧状態であって、前記判別情報に応じた電圧状態に基づいて行われる、または、
配線に流れる電流であって、前記判別情報に応じた電流に基づいて行われる非ディスポーザブル機器(但し、前記判別情報が、前記電源装置と接続するための前記電気医療デバイスのコネクタの形状によって示されるものと、前記電源装置と接続するための前記電気医療デバイスに設けられたコネクタの形状によって示されるものと、を除く)。
【請求項10】
患者の体内で処置を行うことが可能な電気医療デバイス制御システムであって、
請求項に記載の電源装置と、
請求項に記載の非ディスポーザブル機器と、を備える電気医療デバイス制御システム。
【請求項11】
カテーテルを含んで構成される電気医療デバイスを備える、請求項1に記載の電気医療デバイス制御システム。
【請求項12】
カテーテルを含んで構成される電気医療デバイスと、前記電気医療デバイスに電力を供給する電源装置と、の間に設けられ、前記電源装置からの電力を前記電気医療デバイスに中継する非ディスポーザブル機器に保持された、前記電気医療デバイスの種類を判別するために用いられる判別情報に基づいて、前記電気医療デバイスの種類を判別することと、
前記種類に基づいて、前記電源装置から前記電気医療デバイスに電力を供給することと、を含み、
前記判別は、
配線上の電圧状態であって、前記判別情報に応じた電圧状態に基づいて行われる、または、
配線に流れる電流であって、前記判別情報に応じた電流に基づいて行われる給電方法(但し、前記判別情報が、前記電源装置と接続するための前記電気医療デバイスのコネクタの形状によって示されるものと、前記電源装置と接続するための前記電気医療デバイスに設けられたコネクタの形状によって示されるものと、を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気医療デバイス制御システム、電源装置、中継機器および給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーションカテーテル等の電気医療デバイスを制御するシステム(電気医療デバイス制御システム)が、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-517371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気医療デバイス制御システム等では一般に、小型化を図ったり、使用する際の利便性を向上させたりすることが求められている。小型化を図りつつ利便性を向上させることが可能な、電気医療デバイス制御システム、電源装置、中継機器および給電方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイス制御システムは、電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置と、電気医療デバイスと電源装置とを中継する1または複数の中継機器と、を備えている。中継機器に接続されている電気医療デバイスの種類は、少なくとも中継機器を用いた判別により得られる。電源装置は、電気医療デバイスの種類に応じた出力態様にて、電力を出力する。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る電源装置は、電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置であって、電気医療デバイスと電源装置とを中継する中継機器に接続されている電気医療デバイスの種類に応じた出力態様にて、電力を出力する電源部を備えている。中継機器に接続されている電気医療デバイスの種類は、少なくとも中継機器を用いた判別により得られる。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る中継機器は、電気医療デバイスと、電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置と、を中継する中継機器であって、電源装置に接続される入力部と、電気医療デバイスが接続される出力部と、出力部に接続されている電気医療デバイスの種類に関する判別に用いられ、接続先の電気医療デバイスの種類に応じて規定された判別情報と、を備えている。出力部に接続されている電気医療デバイスの種類は、少なくとも中継機器を用いた判別により得られる。中継機器は、電源装置から出力された電力を、入力部および出力部をそれぞれ経由して、電気医療デバイスの種類に応じた出力態様にて、接続先の電気医療デバイスへと出力する。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る給電方法は、電気医療デバイスに対して電源装置から電力を供給する給電方法であって、電気医療デバイスと電源装置とを中継する中継機器を少なくとも用いて、中継機器に接続されている電気医療デバイスの種類を判別し、電気医療デバイスの種類に応じた出力態様にて、電気医療デバイスに電力を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイス制御システムを有する電気医療デバイスシステムの全体構成例を表す模式図である。
図2図1に示した電気医療デバイスシステムの詳細構成例を表すブロック図である。
図3】実施の形態に係る判別に関わる部分の詳細構成例を抜粋して模式的に表す回路図である。
図4】実施の形態に係る判別の際に用いられる真理値表の一例を表す図である。
図5】電気医療デバイスの種類として含まれる情報の一例を表す図である。
図6】実施の形態に係る判別処理等の一例を表す流れ図である。
図7】変形例1に係る電気医療デバイス制御システムを有する電気医療デバイスシステムの全体構成例を表す模式図である。
図8】変形例1に係る判別に関わる部分の詳細構成例を抜粋して模式的に表す回路図である。
図9】変形例1に係る判別の際に用いられる真理値表の一例を表す図である。
図10】変形例2に係る電気医療デバイス制御システムを有する電気医療デバイスシステムの構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(中継機器を用いて接続先の電気医療デバイスの種類の判別を行う例)
2.変形例
変形例1(中継機器とともに電気医療デバイスも用いて判別を行う場合の例)
変形例2(判別部を電源装置内の代わりに中継機器内に設けた場合の例)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[電気医療デバイスシステム5の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る電気医療デバイスシステム5の全体構成例を、模式的に表している。電気医療デバイスシステム5は、患者の体内で処置等を行う際に用いられるシステムである。処置等とは、患部に対するアブレーション(焼灼)等の治療および切開等を含む。本開示における「給電方法」は、本開示の電気医療デバイスシステムにおいて具現化されるため、以下併せて説明する。
【0012】
電気医療デバイスシステム5は、電源装置3と、1または複数の中継機器6(図1の例では、3つの中継機器6a,6b,6c)と、各中継機器6に個別に接続される電気医療デバイス1(図1の例では、3つの電気医療デバイス1a,1b,1c)とを、備えている。電気医療デバイスシステム5を用いた処置等を行う際には、例えば、対極板4も適宜使用される。
【0013】
電源装置3および中継機器6により構成される制御システムは、本開示における「電気医療デバイス制御システム」の一具体例に対応している。
【0014】
(電気医療デバイス1)
電気医療デバイス1は、上記した処置等を行う際に使用されるデバイスであり、デバイス本体11と、1または複数の電極111とを、備えている。電気医療デバイス1は、例えば、アブレーションカテーテル、電極針、電気メス等により構成されている。
【0015】
電極111は、長尺状のデバイス本体11における先端付近に配置されている。図1の例では、デバイス本体11の先端付近に、1または複数の電極111が設けられている。具体的には、電気医療デバイス1aでは、デバイス本体11の先端付近に、1個の電極111が設けられている。電気医療デバイス1bでは、デバイス本体11の先端側が2つに分岐されており、各分岐部分の先端付近に、1個ずつの電極111(計2個の電極111)が設けられている。電気医療デバイス1cでは、デバイス本体11の先端付近に、複数個の電極111が設けられている。
【0016】
つまり、電気医療デバイス1aは、1個の電極111と対極板4(他の電極)との間で処置等が行われる、モノポーラ型となっている。電気医療デバイス1b,1cはそれぞれ、複数の電極111間で処置等が行われる、バイポーラ型となっている。なお、例えば、電気医療デバイス上における複数個の電極と対極板(他の電極)との間で処置等が行われる、モノポーラ型としてもよい。
【0017】
(中継機器6)
中継機器6は、電気医療デバイス1等と電源装置3とを中継する。具体的には、中継機器6aは、電源装置3と、電気医療デバイス1aおよび対極板4を含むセットとを中継する。中継機器6bは、電気医療デバイス1bと電源装置3とを中継する。中継機器6cは、電気医療デバイス1cと電源装置3とを中継する。
【0018】
中継機器6aは、接続ケーブルC1を介して電源装置3に接続される入力端子Tin61と、接続ケーブルC2を介して電気医療デバイス1aが接続される出力端子Tout62と、接続ケーブルC3を介して対極板4が接続される入力端子Tin62とを、有している。中継機器6b,6cは、それぞれ、接続ケーブルC1を介して電源装置3に接続される入力端子Tin6と、接続ケーブルC2を介して電気医療デバイス1bまたは電気医療デバイス1cが接続される出力端子Tout6とを、有している。図1の例では、破線の矢印にて示したように、各中継機器6a,6b,6cに個別に接続された3つの接続ケーブルC1のうち、選択された1つの接続ケーブルC1が、電源装置3の出力端子Tout3(電力Pout等が出力される端子)に対して接続される。つまり、電気医療デバイス1の使用時には、使用される電気医療デバイス1に対応する中継機器6のみが、電源装置3に接続される。
【0019】
なお、例えば、各出力端子Tout6,Tout62の形状を、中継機器6a,6b,6cごとに異ならせることで、中継機器6に対する電気医療デバイス1の誤接続が防止されるようにしてもよい。
【0020】
入力端子Tin6,Tin61はそれぞれ、本開示における「入力部」の一具体例に対応している。出力端子Tout6,Tout62はそれぞれ、本開示における「出力部」の一具体例に対応している。
【0021】
なお、中継機器6の詳細構成例については、後述する(図2図5)。
【0022】
(電源装置3)
電源装置3は、処置等を行うための電力Pout(例えば高周波(RF;Radio Frequency)の電力)を、電気医療デバイス1に対して供給する。具体的には、電源装置3は、出力端子Tout3から接続ケーブルC1、中継機器6および接続ケーブルC2を介して、電気医療デバイス1に対して電力Poutを供給する。
【0023】
なお、電源装置3の詳細構成例については、後述する(図2図5)。
【0024】
(対極板4)
対極板4は、処置等を行う際に、患者9の体表に装着された状態で用いられる。図1の例では、電気医療デバイス1aを用いて処置等が行われる際に、電極111と対極板4との間で、高周波通電がなされる(電力Poutが供給される)。
【0025】
[電源装置3・中継機器6の詳細構成]
続いて、図1に加えて図2図5を参照して、電源装置3および中継機器6の詳細構成例について説明する。
【0026】
図2は、電気医療デバイスシステム5の詳細構成例(電源装置3に対して、中継機器6aを介して電気医療デバイス1aおよび対極板4を接続した場合の例)を、ブロック図で表している。
【0027】
(電源装置3)
電源装置3は、図2に示したように、入力部31、電源部32、制御部33、表示部34および判別部35を、備えている。
【0028】
入力部31は、各種の設定値または所定の動作を指示するための指示信号(操作信号)を、出力する部分である。操作信号は、電源装置3の操作者(例えば技師等)によるボタン等の操作に応じて、入力部31から制御部33へ向けて出力される。ただし、設定値のうちの一部は、操作者による操作に応じて入力されるのではなく、例えば、製品の出荷時等に予め電源装置3内で設定されているようにしてもよい。
【0029】
電源部32は、制御部33による制御に従って、電力Poutを出力する。電源部32は、所定の電源回路(例えばスイッチングレギュレータ等)を用いて構成されている。例えば、電力Poutが高周波電力からなる場合、電力Poutの周波数は、450kHz~550kHz程度(好適には500kHz)である。
【0030】
制御部33は、電源装置3全体を制御すると共に所定の演算処理を行う部分である。制御部33は判別部35とともに、例えば、マイクロコンピュータ等を用いて構成されている。制御部33は、例えば、電源部32における電力Poutの供給動作と、表示部34における表示動作とを、それぞれ制御する。
【0031】
表示部34は、各種の情報を表示して外部へと出力する部分(モニター)である。表示部34は、各種の方式によるディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなど)を用いて構成されている。
【0032】
判別部35は、電源装置3(出力端子Tout3)に接続される中継機器6を用いて、所定の判別(中継機器6に接続されている電気医療デバイス1の種類に関する判別)を行う。判別部35は、中継機器6内の情報保持部61との間、および、制御部33との間で、各種情報の入出力を行う。なお、判別部35による判別の内容等の詳細については、後述する(図4図5)。
【0033】
(中継機器6)
中継機器6(中継機器6a)は、情報保持部61を更に備えている。
【0034】
情報保持部61は、判別部35による判別に用いられる情報である、判別情報610を保持している。判別情報610は、中継機器6に接続されている(接続先の)電気医療デバイス1の種類に応じて規定されており、機械的または電気的に規定されたビット情報IBを含んでいる。判別情報610が、電気的に規定されたビット情報IBを含んでいる場合、情報保持部61は、例えば、各種の記憶方式によるメモリ(記憶部)を用いて構成される。判別情報610が、機械的に規定されたビット情報IBを含んでいる場合、情報保持部61および判別情報610はそれぞれ、例えば、以下の図3にて示した機械的構造により実現される。
【0035】
図3は、本実施の形態に係る判別に関わる部分の詳細構成例(判別情報610として、機械的に規定されたビット情報IBを含んでいる場合の構成例)を、抜粋して模式的に回路図で表している。
【0036】
図3の例では、情報保持部61は、機械的に規定されたビット情報IBを含んだ判別情報610を構成する、3つのスイッチSa,Sb,Scを有している。具体的には、各スイッチSa,Sb,Scの状態(オン状態またはオフ状態)を示す情報が、判別情報610としてのビット情報IB(各ビットの情報:「0」または「1」)に、対応している。スイッチSaは、電源装置3内の判別部35に接続された配線Laと、グランドに接続された配線LGとの間に配置されている。スイッチSbは、判別部35に接続された配線Lbと配線LGとの間に配置されており、スイッチScは、判別部35に接続された配線Lcと配線LGとの間に配置されている。配線La,Lb,Lcにはそれぞれ、電源VDから抵抗器Rを経由した配線が、個別に接続されている。
【0037】
図3の例では、スイッチSa,Sbがそれぞれ、オフ状態(配線のオープン状態)に設定され、スイッチScがオン状態(配線のショート状態)に設定されている。これにより、図3中に破線の矢印で示したように、電源VDから抵抗器R、配線Lc、スイッチScおよび配線LGをそれぞれ経由して、所定値以上の電流ID(例えば1[mA]弱の電流)が、グランドへ向けて流れる。一方、配線La,LbおよびスイッチSa,Sbにはそれぞれ、所定値以上の電流IDは流れない。なお、各スイッチSa,Sb,Scがオフ状態の場合においても、電源VDから判別部35内(例えば10[MΩ]の入力抵抗器)を経由して、所定値未満の微小な電流(例えば、1[μA]弱の電流)は、流れている。
【0038】
判別部35は、各配線La,Lb,Lc上の電圧状態に基づいて、ビット情報IB(図3の例では、3ビットのビット情報IB)の内容を、判別する。つまり、スイッチSa,Sb,Scがオン状態に設定されている場合には、配線La,Lb,Lc上の電圧状態がグランドレベル(「L(ロー)」レベル)となるため、判別部35は、そのビットのビット情報IB=「0」として判定する。スイッチSa,Sb,Scがオフ状態に設定されている場合には、配線La,Lb,Lc上の電圧状態が電源VDレベル(「H(ハイ)」レベル)となるため、判別部35は、そのビットのビット情報IB=「1」として判定する。したがって図3の例では、配線La,Lb,Lc上の各電圧状態の順に示すと、3ビットのビット情報IB=「110」として判定される。なお、各ビットの並び順は、図3の例には限られず、任意に設定可能である。ビット情報IBを含む判別情報610の内容は、中継機器6に接続される電気医療デバイス1の種類(中継機器6の種類)ごとに、個別に設定されている。
【0039】
図4は、本実施の形態に係る判別の際に用いられる、真理値表Tbの一例を表している。具体的には、真理値表Tbは、判別情報610(ビット情報IB)の内容と、電源装置3からの電力Poutの出力態様との対応関係の一例を、示している。図5は、電気医療デバイス1の種類として含まれる情報の一例を表している。
【0040】
本実施の形態では、電源装置3(電源部32)は、中継機器6を用いた判別(判別部35における判別)により得られた、その中継機器6に接続されている電気医療デバイス1の種類に応じた出力態様にて、電力Poutを出力する。換言すると、電源装置3は、中継機器6(電気医療デバイス1)の種類ごとに異なる出力態様にて、各中継機器6に接続されている電気医療デバイス1に対して、電力Poutを出力する。この際に電源装置3から出力された電力Poutは、中継機器6における入力端子(入力端子Tin6または入力端子Tin61)および出力端子(出力端子Tout6または出力端子Tout62)をそれぞれ経由して、接続先の電気医療デバイス1へと出力される。ここで、「出力態様」とは、後述する電気医療デバイス1の種類、または、電気医療デバイス1の種類の範囲内において操作者が設定した設定値を、含んでいる。
【0041】
判別部35は、例えば図4に示したように、判別した判別情報610の内容に基づき、電源装置3に対する中継機器6の接続状況(接続状態または未接続状態)と、中継機器6に接続されている電気医療デバイス1の種類とについて、判別を行う。電気医療デバイス1の種類としては、例えば図5に示したように、電気医療デバイス1における出力形式と、電気医療デバイス1を使用する際の動作モードと、電気医療デバイス1における最大出力電力と、のうちの少なくとも1つの情報を含んでいる。出力形式、動作モードおよび最大出力電力における内容の具体例は、図5中に示したように、以下の通りである。
・出力形式:ユニポーラ型/バイポーラ型
・動作モード:凝固モード/切開モード
・最大出力電力:50[W]/100[W]/200[W]/その他
【0042】
また、判別情報610(ビット情報IB)の内容に応じた電力Poutの出力態様(出力モード)の具体例は、図4の真理値表Tbにて示したように、以下の通りである。なお、図4中には、各状態における電力Poutの出力の可否(IB=「111」以外:Poutの出力可、IB=「111」:Poutの出力不可)についても、併せて示している。また、「出力モードA」~「出力モードG」ではそれぞれ、上記した出力形式、動作モードおよび最大出力電力などの各内容が、個別に設定されている。
・IB=「000」:出力モードA
・IB=「001」:出力モードB
・IB=「010」:出力モードC
・IB=「011」:出力モードD
・IB=「100」:出力モードE
・IB=「101」:出力モードF
・IB=「110」:出力モードG
・IB=「111」:(中継機器6:未接続状態)
【0043】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
電気医療デバイスシステム5では、患者9の患部に対する処置等が行われる。処置等を行う際に、デバイス本体11が、その先端側から患者9の体内に挿入される。デバイス本体11の先端付近における電極111と対極板4との間に、電源装置3から電力Pout(例えば高周波電力)が供給されることで、患者9の体内の患部に対して、ジュール発熱による処置等が行われる。
【0044】
ところで、従来の一般的な電気医療デバイスシステムでは、電気医療デバイス自身に識別情報(例えば、電気医療デバイスの種類を示す情報)が内蔵されており、その識別情報を利用して、電気医療デバイスの種類(最大出力電力などの出力仕様)が判別されている。ところが、ディスポーザブル型の電気医療デバイスに識別情報を内蔵させると、電気医療デバイスのコストアップまたは大型化につながることがある。また、例えば、電源装置におけるコネクタ(電力の出力端子)を、複数種類設けることで、ある程度の出力仕様のバリエーションは用意できるものの、電源装置の筐体が大型化してしまうと共に、出力仕様の種類がコネクタの種類に制限され、利便性が損なわれることになる。
【0045】
このように、一般的な電気医療デバイスシステムでは、小型化を図りつつ利便性を向上させることが、困難であると言える。
【0046】
(B.判別処理等)
そこで本実施の形態の電気医療デバイスシステム5では、判別部35が中継機器6を利用して、接続先の電気医療デバイス1の種類等について、判別を行う。つまり、本実施の形態では、ディスポーザブル型(使い捨て型)の電気医療デバイス1ではなく、非ディスポーザブル型(再利用型)の中継機器6を利用して、そのような判別が行われる。以下、図1図5に加えて図6を参照して、本実施の形態に係る判別処理等について詳細に説明する。
【0047】
図6は、本実施の形態に係る判別処理等の一例を、流れ図で表している。
【0048】
図6に示した一連の処理では、電源装置3が起動すると、まず、判別部35は、ビット情報IB(判別情報610)の読み込みを行う(ステップS11)。次に判別部35は、読み込んだビット情報IBの内容が、IB=「111」以外であるのか否か(中継機器6の接続状態であるのか否か)について、判定する(ステップS12)。IB=「111」以外である(中継機器6の接続状態である)と判定された場合には(ステップS12:Y)、後述するステップS17へと進む。
【0049】
一方、IB=「111」である(中継機器6の未接続状態である)と判定された場合には(ステップS12:N)、所定時間(例えば、数秒間程度)の待機状態となる(ステップS13)。その後、判別部35は、ビット情報IBの読み込みを再度実行し(ステップS14)、IB=「111」以外であるのか否かについて、再度判定する(ステップS15)。IB=「111」以外である(中継機器6の接続状態である)と判定された場合には(ステップS15:Y)、後述するステップS17へと進む。一方、IB=「111」である(中継機器6の未接続状態である)と再度判定された場合には(ステップS15:N)、中継機器6の接続を促すメッセージが出力される(例えば、表示部34上に表示される)ことになる(ステップS16)。なお、その後は、ステップS13(所定時間の待機状態)へと戻る。
【0050】
上記したステップS17では、判別部35は、読み込んだビット情報IBの内容に応じて、真理値表Tbに基づく出力モードに設定する(ステップS17)。次いで、電源装置3(電源部32)は、入力部31から出力される操作信号(操作者による操作)に応じて、設定された出力モードにて動作(電力Pout出力による通電、または、スタンバイ状態となる非通電の動作)を行う(ステップS18)。
【0051】
続いて、判別部35は、ビット情報IBの内容がその後変化したのか否かについて、判定する(ステップS19)。ビット情報IBの内容が変化していないと判定された場合には(ステップS19:N)、ステップS18へと戻る。一方、ビット情報IBの内容が変化したと判定された場合には(ステップS19:Y)、判別部35は、電力Poutは出力状態(通電状態)であるのか否かについて、判定する(ステップS20)。これは、電力Poutの出力期間(通電期間)においては、通電時のノイズ信号に起因して、ビット情報IBの内容が変化してしまう可能性があるからである。
【0052】
電力Poutは出力状態(出力期間)であると判定された場合には(ステップS20:Y)、ステップS18へと戻る。つまり、判別部35は、電力Poutの出力期間においては、通電時のノイズ信号に起因したビット情報IBの内容変化の可能性があるため、変化後のビット情報IBの内容に基づく判別(ステップS17での出力モードの再設定)を、実行しない。
【0053】
一方、電力Poutは出力状態ではない(出力停止期間である)と判定された場合には(ステップS20:N)、以下のようになる。すなわち、この場合に判別部35は、変化後のビット情報IBの読み込みを行い(ステップS21)、IB=「111」以外であるのか否か(中継機器6の接続状態であるのか否か)について、再度判定する(ステップS22)。これは、ビット情報IBの内容変化が、電源装置3に接続される中継機器6の交換(中継機器6を一旦取り外す作業)に伴う内容変化であるのか否かについて、判断するためである。
【0054】
IB=「111」以外である(中継機器6の接続状態のままである)と判定された場合には(ステップS22:Y)、ステップS18へと戻る。つまり、この場合には、ビット情報IBの内容変化が、中継機器6の交換に伴う内容変化ではない(例えば、通電時以外の他のノイズ信号に起因した内容変化である)と判断される。したがって、この場合も、変化後のビット情報IBの内容に基づく判別(ステップS17での出力モードの再設定)が、実行されない。
【0055】
一方、IB=「111」である(中継機器6の非接続状態に遷移した)と判定された場合には(ステップS22:N)、ステップS13(所定時間の待機状態)へと進む。つまり、この場合には、ビット情報IBの内容変化が、中継機器6の交換(中継機器6を一旦取り外す作業)に伴う内容変化であると判断され、交換後の中継機器6が電源装置3に接続されるまで、待機することになる。このようにして判別部35は、電力Poutの出力停止期間において、ビット情報IB(判別情報610)の内容が変化したことを検知した場合、以下のようにする。すなわち、判別部35は、中継機器6の非接続状態の経由後(つまり、「S22:N」→S13→S14→「S15:Y」と経由した後)に、変化後のビット情報IBの内容に基づく判別(ステップS17)を、実行する。また、この場合には、中継機器6の接続を促すメッセージの出力(ステップS16)は行われずに、待機状態(ステップS13)へと進むことになる。なお、電源を落としてリセット等を行わずに、中継機器6を交換しても、中継機器6の駆動に支障はない。
【0056】
以上で、図6に示した一連の処理についての説明が、終了となる。
【0057】
(C.作用・効果)
このようにして本実施の形態では、電気医療デバイス1と電源装置3とを中継する中継機器6を用いた判別により得られた、その中継機器6に接続されている電気医療デバイス1の種類に応じた出力態様にて、電源装置3から電力Poutが供給される。換言すると、中継機器6(電気医療デバイス1)の種類ごとに異なる出力態様にて、各中継機器6に接続されている電気医療デバイス1に対して、電源装置3から電力Poutが供給される。
【0058】
これにより本実施の形態では、前述した一般的な電気医療デバイスシステムとは異なり、電気医療デバイス1および電源装置3の大型化を回避しつつ、電力Poutの出力態様に関して、拡張性を高める(出力態様のバリエーションを確保する)ことができる。その結果、本実施の形態では、小型化を図りつつ、利便性を向上させることが可能となる。
【0059】
本実施の形態では、電源装置3からの電力Poutの出力期間においては、判別を実行しないようにしたので、通電時のノイズ信号に起因した誤判定(通電時のノイズ信号に起因して内容変化したビット情報IBに基づく判定の実行)を、回避することができる。これにより、判別部35における判別精度が向上する結果、利便性を更に向上させることが可能となる。
【0060】
本実施の形態では、電力Poutの出力停止期間において判別情報610(ビット情報IB)の内容が変化したことを検知した場合、中継機器6の非接続状態の経由後にのみ、変化後の判別情報610の内容に基づく判別を実行するようにしたので、以下のようになる。すなわち、電源装置3に接続される中継機器6が交換される場合にのみ、変化後の判別情報610の内容に基づく判別を実行することから、例えば、通電時以外の他のノイズ信号に起因した内容変化に基づく誤判定を、回避することができる。これにより、判別部35における判別精度が向上する結果、利便性を更に向上させることが可能となる。
【0061】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
[変形例1]
(構成・動作)
図7は、変形例1に係る電気医療デバイスシステム5Aの全体構成例を、模式的に表している。電気医療デバイスシステム5Aでは電気医療デバイスシステム5とは異なり、後述するように、中継機器6とともに電気医療デバイス1も用いて、判別が行われる。
【0063】
電気医療デバイスシステム5Aは、電源装置3Aと、1または複数の中継機器6(図7の例では、2つの中継機器6b,6d)と、各中継機器6に個別に接続される電気医療デバイス1(図1の例では、3つの電気医療デバイス1b,1a1,1a2)とを、備えている。電気医療デバイスシステム5Aを用いた処置等を行う際には、例えば、対極板4も適宜使用される。
【0064】
図7の例では、図1の例と同様に、各中継機器6b,6dに個別に接続された2つの接続ケーブルC1のうち、選択された1つの接続ケーブルC1が、電源装置3Aの出力端子Tout3(電力Pout等が出力される端子)に対して接続される。
【0065】
電源装置3Aおよび中継機器6により構成される制御システムは、本開示における「電気医療デバイス制御システム」の一具体例に対応している。
【0066】
中継機器6dでは、中継機器6a(図1)において、出力端子Tout62の個数が変更(1個から2個への変更)されている。2個の出力端子Tout62にはそれぞれ、接続ケーブルC2を介して、電気医療デバイス1a1,1a2が個別に接続される。つまり、中継機器6dには、2つの電気医療デバイス1a1,1a2のうちの一方のみが接続されたり、2つの電気医療デバイス1a1,1a2の双方が同時に接続される。
【0067】
電源装置3Aでは、電源装置3(図1)において、判別部35の代わりに判別部35Aを設けており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0068】
図8は、変形例1に係る判別に関わる部分の詳細構成例(判別情報610Aとして、機械的に規定されたビット情報IBを含んでいる場合の構成例)を、抜粋して模式的に回路図で表している。なお、図8に示した電気医療デバイスシステム5Aでは、電源装置3Aに対して、中継機器6dを介して電気医療デバイス1a1および対極板4を接続した場合の例について、示している。
【0069】
中継機器6dは、図2図3に示した中継機器6(中継機器6a)において、判別情報610を有する情報保持部61の代わりに、判別情報610Aを有する情報保持部61Aを備えている。
【0070】
情報保持部61Aは、情報保持部61と同様に、ビット情報IBを含む判別情報610Aを有している。ただし、情報保持部61Aは、情報保持部61に設けられていた3つのスイッチSa,Sb,Scに加え、2つの接続用ピンPd,Peを有している。つまり、各スイッチSa,Sb,Scおよび各接続用ピンPd,Peの状態(オン状態またはオフ状態)を示す情報が、判別情報610Aとしてのビット情報IB(各ビットの情報:「0」または「1」)に、対応している。接続用ピンPdは、電源装置3A内の判別部35Aに接続された配線Ldと、グランドに接続された配線LGとの間に配置されている。接続用ピンPeは、電源装置3A内の判別部35Aに接続された配線Leと、配線LGとの間に配置されている。
【0071】
接続用ピンPdには、例えば図8に示したように、接続ケーブルC2内に含まれる配線L21を経由して、電気医療デバイス1a1が接続可能となっている。接続用ピンPeには、接続ケーブルC2内に含まれる配線を経由して、電気医療デバイス1a2が接続可能となっている。図8の例では、2つの接続用ピンPd,Peのうちの接続用ピンPdにのみ、電気医療デバイス1a1が接続されている。つまり、接続用ピンPdがオン状態(配線のショート状態)に設定され、接続用ピンPeがオフ状態(配線のオープン状態)に設定されている。これにより、図8中に破線の矢印で示したように、電源VDから抵抗器R、配線Ld、接続用ピンPd、配線L21および配線LGをそれぞれ経由して、所定値以上の電流IDが、グランドへ向けて流れる。一方、配線Leおよび接続用ピンPeにはそれぞれ、所定値以上の電流IDは流れない。なお、図3の例と同様に、各スイッチSa,Sb,Scまたは各接続用ピンPd,Peがオフ状態の場合においても、電源VDから判別部35内を経由して、所定値未満の微小な電流は、流れている。
【0072】
判別部35Aは、各配線La~Le上の電圧状態に基づいて、ビット情報IB(図8の例では、5ビットのビット情報IB)の内容を、判別する。つまり、スイッチSa,Sb,Scまたは接続用ピンPd,Peがオン状態に設定されている場合には、配線La~Le上の電圧状態がグランドレベル(「L」レベル)となるため、判別部35Aは、そのビットのビット情報IB=「0」として判定する。スイッチSa,Sb,Scまたは接続用ピンPd,Peがオフ状態に設定されている場合には、配線La~Le上の電圧状態が電源VDレベル(「H」レベル)となるため、判別部35Aは、そのビットのビット情報IB=「1」として判定する。したがって図8の例では、配線La~Le上の各電圧状態の順に示すと、5ビットのビット情報IB=「11001」として判定される。なお、各ビットの並び順は、図8の例には限られず、任意に設定可能である。ビット情報IBを含む判別情報610Aの内容は、中継機器6に接続される電気医療デバイス1の種類(中継機器6の種類)ごとに、個別に設定されている。このようにして判別部35Aは、中継機器6とともに電気医療デバイス1を更に用いて、判別を行う。
【0073】
図9は、変形例1に係る判別の際に用いられる、真理値表Tb’の一例を表している。具体的には、真理値表Tb’は、判別情報610A(ビット情報IB)の内容に応じた、電源装置3Aからの電力Poutの出力態様の一例を、示している。
【0074】
電源装置3Aは、中継機器6とともに電気医療デバイス1を更に用いた判別(判別部35Aにおける判別)により得られた、その中継機器6に接続されている電気医療デバイス1の種類に応じた出力態様にて、電力Poutを出力する。換言すると、電源装置3Aは、中継機器6(電気医療デバイス1)の種類ごとに異なる出力態様にて、各中継機器6に接続されている電気医療デバイス1に対して、電力Poutを出力する。
【0075】
判別部35Aは、例えば図9に示したように、判別した判別情報610A(ビット情報IB)の内容に基づき、以下の判別を行う。すなわち、判別部35Aは、電源装置3Aに対する中継機器6の接続状況(接続状態または未接続状態)と、中継機器6に対する電気医療デバイス1の接続状況と、中継機器6に接続されている電気医療デバイス1の種類および個数とについて、判別を行う。電気医療デバイス1の種類としては、例えば、前述した出力形式、動作モードおよび最大出力電力の各内容を、含んでいる。
【0076】
判別情報610Aの内容(5ビットのビット情報IBにおける各ビットの内容)に応じた電力Poutの出力態様の具体例は、図9の真理値表Tb’にて示したように、以下の通りである。なお、図9中には、各状態における電力Poutの出力の可否についても、併せて示している。
【0077】
・5ビット目の情報=「0」:中継機器6の接続状態(Poutの出力可)
・5ビット目の情報=「1」:中継機器6の未接続状態(Poutの出力不可)
【0078】
・4ビット目,3ビット目の情報=「00」:凝固モード(ユニポーラ型)
・4ビット目,3ビット目の情報=「01」:凝固モード(バイポーラ型)
・4ビット目,3ビット目の情報=「10」:切開モード(ユニポーラ型)
・4ビット目,3ビット目の情報=「11」:切開モード(バイポーラ型)
【0079】
・2ビット目,1ビット目の情報=「00」:2個の電気医療デバイス1a1,1a2の接続状態
・2ビット目,1ビット目の情報=「01」:1個(電気医療デバイス1a1)の接続状態(50[W]モード)
・2ビット目,1ビット目の情報=「10」:1個(電気医療デバイス1a2)の接続状態(100[W]モード)
・2ビット目,1ビット目の情報=「11」:2個とも未接続状態(Poutの出力不可)
【0080】
なお、2個の電気医療デバイス1a1,1a2の双方が接続状態であると判定された際に、例えば、2個の同時接続が許可されていない場合には、電力Poutの出力不可となるように設定してもよい。
【0081】
ここで、変形例1においても実施の形態と同様に、判別部35Aは、電源装置3Aからの電力Poutの出力期間においては、判別を実行しない。同様に、判別部35Aは、電源装置3Aからの電力Poutの出力停止期間において、判別情報610A(ビット情報IB)の内容が変化したことを検知した場合、中継機器6または電気医療デバイス1の非接続状態の経由後に、変化後の判別情報610Aの内容に基づく判別を実行する。
【0082】
(作用・効果)
このようにして変形例1では、判別部35Aにおいて、中継機器6とともに電気医療デバイス1を更に用いて、判別を行うようにしたので、以下のようになる。すなわち、変形例1では実施の形態の場合とは異なり、中継機器6の数を1個に抑えつつ、複数種類の電気医療デバイス1に対応できるようになる。これにより、判別に応じた電力Poutの出力態様のバリエーションについて、更にシンプルな構成にて、拡張性を向上させることができる。その結果、変形例1では実施の形態と比べ、利便性を更に向上させることが可能となる。
【0083】
変形例1では実施の形態と同様に、電力Poutの出力停止期間において、判別情報610A(ビット情報IB)の内容が変化したことを検知した場合、中継機器6または電気医療デバイス1の非接続状態の経由後にのみ、変化後の判別情報610Aの内容に基づく判別を実行するようにしたので、以下のようになる。すなわち、中継機器6または電気医療デバイス1が交換される場合にのみ、変化後の判別情報610Aの内容に基づく判別を実行することから、例えば、通電時以外の他のノイズ信号に起因した内容変化に基づく誤判定を、回避することができる。これにより、変形例1においても実施の形態と同様に、判別部35Aにおける判別精度が向上する結果、利便性を更に向上させることが可能となる。
【0084】
[変形例2]
図10は、変形例2に係る電気医療デバイスシステム5Bの構成例(電源装置3Bに対して、中継機器6Bを介して電気医療デバイス1aおよび対極板4を接続した場合の例)を、ブロック図で表している。つまり、電気医療デバイスシステム5Bは、電源装置3Bと、中継機器6Bと、電気医療デバイス1aとを、備えている。
【0085】
電源装置3Bおよび中継機器6Bにより構成される制御システムは、本開示における「電気医療デバイス制御システム」の一具体例に対応している。
【0086】
電気医療デバイスシステム5Bでは、実施の形態の電気医療デバイスシステム5(図2)において、電源装置3の代わりに電源装置3Bを設けると共に、中継機器6(中継機器6a)の代わりに中継機器6Bを設けており、他の構成は同様となっている。あるいは、電気医療デバイスシステム5Bでは、変形例1の電気医療デバイスシステム5A(図8)において、電源装置3Aの代わりに電源装置3Bを設けると共に、中継機器6(中継機器6d)の代わりに中継機器6Bを設けており、他の構成は同様となっている。
【0087】
電源装置3Bでは、電源装置3(図2)または電源装置3A(図8)において、判別部35または判別部35Aを省いて(設けないようにして)おり、他の構成は同様となっている。
【0088】
中継機器6Bは、情報保持部61を有する中継機器6a(図2)、または、情報保持部61Aを有する中継機器6d(図8)において、判別部35または判別部35Aを更に設けるようにしており、他の構成は同様となっている。
【0089】
このように変形例2では、判別部35または判別部35Aがそれぞれ、電源装置3,3A内の代わりに、中継機器6B内に配置されている。
【0090】
変形例2においても、基本的には、実施の形態または変形例1と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。
【0091】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0092】
例えば、上記実施の形態等では、電気医療デバイスシステムの全体構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての装置を備える必要はなく、また、他の装置を更に備えていてもよい。上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値、範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値、範囲、大小関係等であってもよい。
【0093】
上記実施の形態等では、電気医療デバイス(電気医療デバイスシステム)の具体例として、主に、アブレーションデバイス(アブレーションシステム)を挙げて説明したが、この例には限られず、他の電気医療デバイス(電気医療デバイスシステム)を適用してもよい。また、アブレーションデバイスとしても、例えば、マイクロ波または高電圧パルスなどの他の電磁波を使用したアブレーションを行う、アブレーションデバイスであってもよい。
【0094】
上記実施の形態等では、判別部が、電源装置内または中継機器内に設けられている場合の例について説明したが、例えば、判別部が他の装置内(電源装置および中継機器とは異なる別の装置内)に設けられているようにしてもよい。
【0095】
上記実施の形態等では、情報保持部および判別情報(ビット情報)の構成例について、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明した構成例には限られない。
【0096】
上記実施の形態等では、判別部における判別処理、および、判別により得られた電気医療デバイス(中継機器)の種類に応じた電力の出力態様等について、具体的に説明した。しなしながら、判別処理および電力の出力態様等の手法については、上記実施の形態等で挙げた手法には限られない。また、電気医療デバイスの種類としても、上記実施の形態等で説明した種類の内容には限られず、他の内容であってもよい。なお、判別処理の際に、例えば、ハイインピーダンス状態または導線の断線状態についても、併せて検出するようにしてもよい。
【0097】
上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0098】
また、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0099】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0100】
本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置と、
電気医療デバイスと前記電源装置とを中継する、1または複数の中継機器と
を備え、
前記中継機器に接続されている前記電気医療デバイスの種類は、少なくとも前記中継機器を用いた判別により得られ、
前記電源装置は、前記電気医療デバイスの種類に応じた出力態様にて、前記電力を出力する
電気医療デバイス制御システム。
(2)
前記中継機器は、前記判別に用いられ、接続先の前記電気医療デバイスの種類に応じて規定された判別情報を有する
上記(1)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(3)
前記判別情報が、機械的または電気的に規定された、ビット情報を含んでいる
上記(2)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(4)
少なくとも前記中継機器を用いた前記判別を行う判別部を、更に備えた
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(5)
前記判別部は、
前記電源装置に対する前記中継機器の接続状況と、
前記中継機器に接続されている前記電気医療デバイスの種類とについて、
前記判別を行う
上記(4)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(6)
前記判別部は、前記中継機器とともに前記電気医療デバイスを更に用いて、前記判別を行う
上記(4)または(5)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(7)
前記判別部は、
前記中継機器および前記電気医療デバイスを用いて、
前記電源装置に対する前記中継機器の接続状況と、
前記中継機器に対する前記電気医療デバイスの接続状況と、
前記中継機器に接続されている前記電気医療デバイスの種類と、
前記中継機器に接続されている前記電気医療デバイスの個数とについて、
前記判別を行う
上記(6)に記載の電気医療デバイス制御システム。
(8)
前記判別部は、前記電源装置からの前記電力の出力期間においては、前記電力の出力モードの再設定に対応する前記判別を、実行しない
上記(4)ないし(7)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(9)
前記判別部は、
前記電源装置からの前記電力の出力停止期間において、前記判別に用いられる判別情報の内容が変化したことを検知した場合、
前記中継機器または前記電気医療デバイスの非接続状態の経由後に、
変化後の前記判別情報の内容に基づく前記判別を、実行する
上記(4)ないし(8)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(10)
前記判別部が、前記電源装置内または前記中継機器内に、設けられている
上記(4)ないし(9)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(11)
前記電気医療デバイスの種類として、
前記電気医療デバイスにおける出力形式と、
前記電気医療デバイスを使用する際の動作モードと、
前記電気医療デバイスにおける最大出力電力と、
のうちの少なくとも1つの情報を、含んでいる
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の電気医療デバイス制御システム。
(12)
電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置であって、
前記電気医療デバイスと前記電源装置とを中継する中継機器に接続されている前記電気医療デバイスの種類に応じた出力態様にて、前記電力を出力する電源部を備え、
前記中継機器に接続されている前記電気医療デバイスの種類は、少なくとも前記中継機器を用いた判別により得られる
電源装置。
(13)
電気医療デバイスと、前記電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置と、を中継する中継機器であって、
前記電源装置に接続される入力部と、
前記電気医療デバイスが接続される出力部と、
前記出力部に接続されている前記電気医療デバイスの種類に関する判別に用いられ、接続先の前記電気医療デバイスの種類に応じて規定された判別情報と
を備え、
前記出力部に接続されている前記電気医療デバイスの種類は、少なくとも前記中継機器を用いた前記判別により得られ、
前記電源装置から出力された前記電力を、前記入力部および前記出力部をそれぞれ経由して、前記電気医療デバイスの種類に応じた出力態様にて、接続先の前記電気医療デバイスへと出力する
中継機器。
(14)
電気医療デバイスに対して電力を供給する給電方法であって、
前記電気医療デバイスと前記電源装置とを中継する中継機器を少なくとも用いて、前記中継機器に接続されている前記電気医療デバイスの種類を判別し、
前記電気医療デバイスの種類に応じた出力態様にて、前記電気医療デバイスに前記電力を出力する
給電方法。
(15)
電気医療デバイスに対して電力を供給する電源装置と、
電気医療デバイスと前記電源装置とを中継する、1または複数の中継機器と
を備え、
前記電源装置は、
前記中継機器の種類ごとに異なる出力態様にて、
各々の前記中継機器に接続されている前記電気医療デバイスに対して、前記電力を出力する
電気医療デバイス制御システム。
【符号の説明】
【0101】
1,1a,1a1,1a2,1b,1c…電気医療デバイス、11…デバイス本体、111…電極、3,3A,3B…電源装置、31…入力部、32…電源部、33…制御部、34…表示部、35,35A…判別部、4…対極板、5,5A,5B…電気医療デバイスシステム、6,6a~6d,6B…中継機器、61,61A…情報保持部、610,610A…判別情報、9…患者、Pout…電力、Tin6,Tin61,Tin62…入力端子、Tout3,Tout6,Tout62…出力端子、C1~C3…接続ケーブル、VD…電源、ID…電流、R…抵抗器、La~Le,LG,L21…配線、Sa~Sc…スイッチ、Pd,Pe…接続用ピン、IB…ビット情報、Tb,Tb’…真理値表。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10