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特許7510998肺がん固形腫瘍の初代細胞と肺がん胸水の初代腫瘍細胞の培養方法およびキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】肺がん固形腫瘍の初代細胞と肺がん胸水の初代腫瘍細胞の培養方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/02 20060101AFI20240627BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20240627BHJP
【FI】
C12N5/02
C12N5/09
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2022506611
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-13
(86)【国際出願番号】 CN2019099246
(87)【国際公開番号】W WO2021022440
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】520492695
【氏名又は名称】北京基石生命科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GENEX HEALTH CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】201-C11 West, E-Park, No.65 Xingshikou Rd., Haidian District, Beijing 100195, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲いん▼申意
(72)【発明者】
【氏名】張函▲すうえ▼
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503360(JP,A)
【文献】国際公開第2013/012747(WO,A2)
【文献】特表2015-505818(JP,A)
【文献】特開2011-115106(JP,A)
【文献】特表2018-505138(JP,A)
【文献】特表2011-511949(JP,A)
【文献】特開2008-163029(JP,A)
【文献】Clinical and Experimental Metastasis,2012年09月26日,Vol. 30, No. 3,pp. 333-344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペニシリン-ストレプトマイシン、HEPES、非必須アミノ酸溶液、L-アラニル-L-グルタミン、ヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質MSP、コルチゾール、B-27TM Supplement(50X),minus vitamin A、インスリン、トランスフェリン、セレン、エタノールアミン溶液(ITS-X)、Y-27632およびDulbecco’s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12培地からなる肺がん初代細胞を培養するための培地であって、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるペニシリンの最終濃度は100-200U/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100-200μg/mLであり、前記HEPESの最終濃度は8-12mMであり、前記非必須アミノ酸溶液の最終濃度は0.8-1.2%(体積百分率)であり、前記L-アラニル-L-グルタミンの最終濃度は0.8-1.2%(体積百分率)であり、前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は10-100ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は10-50ng/mLであり、前記ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は5-25ng/mLであり、前記コルチゾールの最終濃度は20-50ng/mLであり、前記B-27TM Supplement(50X),minus vitamin Aの最終濃度は1.5-2.5%(体積百分率)であり、前記インスリン、トランスフェリン、セレン、エタノールアミン溶液(ITS-X)の最終濃度は0.8-1.2%(体積百分率)であり、前記Y-27632の最終濃度は5-20μMであり、残量はすべてDulbecco’s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12培地であり、前記非必須アミノ酸溶液の溶剤は水であり、溶質および濃度は以下のとおりである:グリシン10mM;L-アラニン10mM;L-アスパラギン10mM;L-アスパラギン酸10mM;L-グルタミン酸10mM;L-プロリン10mM;L-セリン10mMである、培地。
【請求項2】
肺がん初代細胞を培養するためのキットであって、
請求項1に記載の培地とサンプル解離液、サンプル保存液、サンプル洗浄液、細胞分離緩衝液、細胞消化液、消化停止液、および細胞凍結保存液の全部または一部とからなり、
前記サンプル解離液はコラゲナーゼI、コラゲナーゼIVおよびPBSからなり、そのうち、前記コラゲナーゼIの前記サンプル解離液における最終濃度は150-250U/mLであり、前記コラゲナーゼIVの前記サンプル解離液における最終濃度は150-250U/mLであり、残量はいずれもPBSであり、
前記サンプル保存液はウシ胎児血清、ペニシリン-ストレプトマイシン、HEPESおよびHBSSからなり、そのうち、前記ウシ胎児血清の前記サンプル保存液における最終濃度は1-5%(体積百分率)であり、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるペニシリンの前記サンプル保存液における最終濃度は100-200U/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの前記サンプル保存液における最終濃度は100-200μg/mLであり、前記HEPESの前記サンプル保存液における最終濃度は8-12mMであり、残量はいずれもHBSSであり、
前記サンプル洗浄液はペニシリン-ストレプトマイシンおよびPBSからなり、そのうち、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるペニシリンの前記サンプル洗浄液における最終濃度は100-200U/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの前記サンプル洗浄液における最終濃度は100-200μg/mLであり、残量はいずれもPBSであり、
前記細胞分離緩衝液はペニシリン-ストレプトマイシン、ヘパリンナトリウムおよびPBSからなり、そのうち、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるペニシリンの最終濃度は100-200U/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100-200μg/mLであり、前記ヘパリンナトリウムの最終濃度は10IU/mLであり、残量はいずれもPBSであり、
前記細胞消化液の組成は以下のとおりである:前記細胞消化液の各10mLには4-6mLのStemProTM AccutaseTM Cell Dissociation Reagent、最終濃度が5mMのEDTA、1.5-2.5mLのTrypLTM Express Enzyme (lX), no phenol redが含まれ、残量はすべてPBSであり、
前記消化停止液はウシ胎児血清、ペニシリン-ストレプトマイシンおよびDMEM培地からなり、そのうち、前記ウシ胎児血清の前記消化停止液における最終濃度は8-12%(体積百分率)であり、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるペニシリンの前記消化停止液における最終濃度は100-200U/mLであり、前記ペニシリン-ストレプトマイシンにおけるストレプトマイシンの前記消化停止液における最終濃度は100-200μg/mLであり、残量はいずれもDMEM培地であり、
前記細胞凍結保存液はDulbecco’s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12培地、DMSOおよび1%のメチルセルロース溶液からなり、そのうち、前記Dulbecco’s Modified Eagle Medium/Ham’s F-12培地、前記DMSOおよび前記1%のメチルセルロース溶液の体積の比率は20:2:(0.8-1.2)であり、前記1%のメチルセルロース溶液が濃度1g/100mlのメチルセルロース水溶液である、肺がん初代細胞を培養するためのキット。
【請求項3】
以下の(B1)~(B3)のいずれかの使用であって、
(B1)は、請求項1に記載の培地の肺がん初代細胞の培養における使用であり、
(B2)は、請求項2に記載のキットの肺がん固形腫瘍の初代細胞の培養における使用であり、
(B3)は、請求項2に記載のキットの肺がん固形腫瘍の初代細胞の培養における使用である、使用。
【請求項4】
肺がん初代細胞を培養する方法であって、当該肺がん初代細胞の種類が、肺がん固形腫瘍の初代細胞であり、以下のステップ:
(a1)請求項2に記載のサンプル解離液を用いて、対象から採取された肺がん固形腫瘍組織に対して解離処理を行い、肺がん固形腫瘍の初代細胞を取得するステップ、
(a2)請求項1に記載の培地を用いてステップ(a1)で解離された肺がん固形腫瘍の初代細胞を浮遊培養するステップ、
を含む、方法。
【請求項5】
ステップ(a1)において、組織1mgあたり0.1-0.3mLの用量でサンプル解離液により、細断された前記肺がん固形腫瘍組織を37℃に予熱した前記サンプル解離液で処理し、37℃の条件でサンプル解離を行い、解離時間は15分から3時間であることを含む方法に従って前記サンプル解離液を用いて前記対象から採取された肺がん固形腫瘍組織を解離する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a2)において、細胞培養容器Mを用い、前記培地を利用して前記肺がん固形腫瘍の初代細胞を浮遊培養し、37℃、5%のCOの条件で培養し、2-4日ごとに培地を交換することを含む方法に従って、前記培地で前記肺がん固形腫瘍の初代細胞を浮遊培養し、前記細胞培養容器Mは、(I)ポリスチレン製の細胞培養容器、ポリカーボネート製の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート製の細胞培養容器、COC樹脂製の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー製の細胞培養容器または低吸着表面を有する細胞培養容器;(II)(I)の細胞培養容器をペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾した細胞培養容器のいずれか一つである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
肺がん初代細胞を培養する方法であって、当該肺がん初代細胞の種類が、肺がん胸水初代腫瘍細胞であり、以下のステップ:
(b1)対象から採取された肺がん胸水から肺がん胸水初代腫瘍細胞を分離して取得するステップ、
(b2)請求項1における培地を用いてステップ(b1)で分離された肺がん胸水初代腫瘍細胞を浮遊培養するステップ
を含む、方法。
【請求項8】
ステップ(b1)において、請求項2に記載の細胞分離緩衝液で前記対象から採取された肺がん胸水を懸濁し、続いて、密度勾配遠心によって肺がん胸水の初代腫瘍細胞を取得することを含む方法に従って前記対象から採取された肺がん胸水から肺がん胸水の初代腫瘍細胞を分離して取得する、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b2)において、細胞培養容器Mを用い、前記培地を利用して前記肺がん胸水初代腫瘍細胞を浮遊培養し、37℃、5%のCOの条件で培養し、2-4日ごとに培地を交換することを含む方法に従って、前記培地で前記肺がん胸水初代腫瘍細胞を浮遊培養し、
前記細胞培養容器Mは、(I):ポリスチレン製の細胞培養容器、ポリカーボネート製の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート製の細胞培養容器、COC樹脂製の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー製の細胞培養容器または低接着表面の細胞培養容器、(II):(I)における細胞培養容器をペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾した細胞培養容器のいずれかである、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記(II)において、前記(I)における細胞培養容器に対して純酸素エッチングを行い、エッチング条件は出力20Wであり、エッチング時間は3分間であり、続いて1%のペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー溶液で前記細胞培養容器の表面を覆い、前記1%のペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー溶液を乾燥させてペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾を完了することを含む方法に従って、前記(I)における細胞培養容器に対してペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾を行い、
前記1%のペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー溶液の組成は、100mLあたりの1%のペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー溶液に1mLのペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマーが含まれ、残量がフッ素オイルである、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(a1)の前に、さらに体積百分率70-75%のエタノールで、対象から採取された肺がん固形腫瘍組織サンプルの表面を洗浄し、請求項2に記載のサンプル洗浄液および無菌PBS溶液を用いて前記対象から採取された肺がん固形腫瘍組織サンプルを順に洗浄する、前記肺がん固形腫瘍組織への解離前処理ステップを含む、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記解離前処理を行う前記対象から採取された肺がん固形腫瘍組織サンプルは、離体時間が2時間以内であり、かつ前記解離前処理が行われるまでに、請求項2に記載のサンプル保存液に保存されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a1)において、前記サンプル解離液で、前記対象から採取された肺がん固形腫瘍組織に対して解離処理を行った後に、さらに請求項2に記載の消化停止液で解離反応を終了し、細胞懸濁液を収集し、前記細胞懸濁液を濾過し、組織残片と癒着細胞を除去し、遠心分離した後に無菌PBSで細胞を再懸濁し、さらに遠心分離し、続いて請求項1に記載の培地で細胞ペレットを再懸濁することを含む、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a2)において、前記肺がん固形腫瘍の初代細胞が直径80-120μmの塊を形成する時に、前記肺がん固形腫瘍の初代細胞に対して継代を行うことをさらに含む、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b2)において、肺がん胸水の初代腫瘍細胞が直径80-120μmの塊を形成する時に、前記肺がん胸水の初代腫瘍細胞に対して継代を行うことをさらに含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記継代を行う際に用いる細胞消化液は、請求項2に記載の細胞消化液である、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記継代を行う際に用いる消化停止液は、請求項2に記載の消化停止液である、ことを特徴とする請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法はさらに2-3回の継代による増殖後の肺がん固形腫瘍の初代細胞または肺がん胸水初代腫瘍細胞を凍結保存および/または蘇生するステップを含み、
前記凍結保存を行う際に用いる細胞凍結保存液は請求項2に記載の細胞凍結保存液であり、
前記蘇生するステップが、以下のステップ:
蘇生する対象細胞が入った凍結保存管を液体窒素から取り出し、37-39℃の無菌水で細胞を迅速に融解する;800-1000gを室温で5-10分間、遠心した後、請求項1に記載の培地で細胞ペレットを再懸濁し、続いて細胞培養容器Mを用いて懸濁した細胞を培養し(初期播種密度は10個/cm容器底面積)、各管の細胞(10個)を3.5cm培養皿に蘇生させるステップ、培養条件は37℃、5%のCOであり、前記細胞培養容器Mは、(I)ポリスチレン製の細胞培養容器、ポリカーボネート製の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート製の細胞培養容器、COC樹脂製の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー製の細胞培養容器または低吸着表面を有する細胞培養容器;(II)(I)の細胞培養容器をペルフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー修飾した細胞培養容器のいずれか一つである、
を含む、ことを特徴とする請求項4~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項2に記載のサンプル保存液である、肺がん固形腫瘍組織のサンプル保存液。
【請求項20】
請求項2に記載の細胞分離緩衝液である、肺がん胸水の細胞分離緩衝液。
【請求項21】
請求項2に記載の細胞消化液である、肺がん初代の細胞消化液。
【請求項22】
請求項19に記載のサンプル保存液の肺がん固形腫瘍組織を保存するための使用。
【請求項23】
請求項20に記載の細胞分離緩衝液の、対象から採取された肺がん胸水から肺がん胸水初代腫瘍細胞を分離するための使用。
【請求項24】
請求項21に記載の細胞消化液の肺がん初代細胞を継代するための使用。
【請求項25】
請求項4~6のいずれか一項に記載のステップ(a1)を含む、対象から採取された肺がん固形腫瘍組織から肺がん腫初代細胞を解離する方法。
【請求項26】
離体したばかりの肺がん固形腫瘍組織を、請求項2に記載のサンプル保存液に入れて保存し、保存時間は2時間以内であることを含む、肺がん固形腫瘍組織を保存する方法。
【請求項27】
肺がん初代細胞が直径80-120μmの塊を形成する時に、前記肺がん初代細胞に対して継代を行い、前記継代を行う時に用いられる細胞消化液が請求項2に記載の細胞消化液であり、前記継代を行う時に用いられる消化停止液が、請求項2に記載の消化停止液であることを含む、肺がん初代細胞に対して継代を行う方法。
【請求項28】
前記肺がんは原発性肺がんである、ことを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項29】
前記肺がんは非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんである、ことを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項30】
前記非小細胞肺がんは非小細胞肺がん腺がんまたは非小細胞肺がん扁平上皮がんである、ことを特徴とする請求項29に記載の培地。
【請求項31】
前記肺がん初代細胞は肺がん固形腫瘍の初代細胞または肺がん胸水初代腫瘍細胞である、ことを特徴とする請求項1に記載の培地。
【請求項32】
肺がん初代細胞は肺がん患者の手術サンプル、穿刺サンプルまたは胸水サンプルから分離される、ことを特徴とする請求項1に記載の培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジー分野に関するものであり、具体的には肺がん固形腫瘍の初代細胞および肺がん胸水の初代腫瘍細胞の培養方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
肺がんは、世界で最も罹患率と死亡率が高いがんであり、そのうち、男性の肺がんの罹患率と死亡率はすべての悪性腫瘍の中で最も高く、女性の肺がんの罹患率と死亡率は二番目である。同時に、肺がんの罹患率および死亡率は、全ての悪性腫瘍において最も高い。肺がんは、人類の健康と生命を脅かす最も大きな悪性腫瘍の一つと言える。
【0003】
世界各国の科学研究および医療機関は肺がんの病因および発生進行プロセスに対する研究に力を入れているにもかかわらず、人類はまだこの病気についてほとんど知られていない。肺がんは複雑な病気であり、その発生、進行は動的なプロセスであり、多くのグナル分子の相互作用に関し、複雑な分子制御ネットワークを形成し、同時に外部環境要因の影響も受ける。肺がんの病因と発生進行プロセスには強い個体差があり、一概には言えない。
【0004】
手術のタイミングを逃した末期の肺がん患者にとって、化学療法および標的治療は最も重要な治療方法であり、初めて治療される患者に対する最初の化学療法処方の選択は患者の病状をコントロールにとって特に重要である。二世代シークエンシング技術を広く適用することに伴って、個別化遺伝子シークエンシングおよびデータマイニングが可能になり、しかし30%-50%の肺がん患者のみがシークエンシング結果から有効の可能性がある薬物を予測がつくことができ、且つこれらの薬物の処方が実際の化学療法において必ずがん細胞を効果的に死滅させることを保証できない。
【0005】
肺がん研究モデルとして肺がん細胞系を使用する従来の方法は、何千もの異なる肺がん患者体内のがん細胞の実際状況を代表しにくく、大きな制限性がある。一方、精密医学の概念を代表するPDXモデルは、モデリングサイクルが長すぎて臨床治療を指導できないという欠点を克服することが困難である。中末期の肺がん患者は胸水を合併することが多く、早速体外へ排出する必要があるため、胸水は非常に容易に入手できる臨床サンプルであり、そして胸水の中で剥離した肺がん細胞をよく見つけることができる。肺がん固形腫瘍の初代細胞培養物および肺がん胸水の初代腫瘍細胞培養物をモデルとして個別化精密研究することは、肺がん研究の分野ないし肺がん診断治療の分野において傾向になっている。
【0006】
従来の初代腫瘍の細胞培養技術は主に2D培養、3D培養、リプログラミング培養などのいくつかの種類であり、これらの方法はいずれも培養サイクルが非常に長く、培養成功率が低く、雑細胞が除去しにくいなどの問題に直面する。
【発明の概要】
【0007】
上記技術的問題を効果的に解決するために、本発明は新たな肺がん固形腫瘍の初代細胞および肺がん胸水の初代腫瘍細胞の培養技術およびキットを提供し、該技術の核心は以下のとおりである:(1)マイルドな細胞解離試薬で肺がん固形腫瘍組織を処理し、マイルドな方法で胸水における肺がん細胞を分離し、最大限にがん細胞の活性を確保する;(2)特殊な無血清培地を調製し、浮遊培養システムを利用して肺がん固形腫瘍由来の腫瘍細胞および肺がん胸水の初代腫瘍細胞に対してインビトロ培養を行い、がん細胞が正常に増殖することを確保すると同時に正常細胞の干渉を最大限に排除する。
【0008】
第一の態様において、本発明は、肺がんの初代細胞を培養するための培地に関する。
【0009】
本発明に係る肺がん初代細胞を培養するために用いられる培地は二重特異抗体P/S(ペニシリン-ストレプトマイシン)、HEPES、非必須アミノ酸溶液、GlutaMax、ヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質MSP、コルチゾール、B27、ITS-X(Insulin, Transferrin, Selenium, Ethanolamine Solution)、Y-27632およびAdvanced DMEM/F12培地からなる。そのうち、前記二重特異抗体P/Sにおけるペニシリンの最終濃度は100-200U/mL(例えば、100U/mL)である。前記二重特異抗体P/Sにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100-200μg/mL(例えば、100μg/mL)である。前記HEPESの最終濃度は8-12mM(例えば、10mM)である。前記非必須アミノ酸溶液の最終濃度は0.8-1.2%(例えば、1%であり、%は体積百分率を表す)である。前記GlutaMaxの最終濃度は、0.8-1.2%(例えば、1%であり、%は体積百分率を表す)である。前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は10-100ng/mLである。前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は10-50ng/mLである。前記ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は5-25ng/mLである。前記コルチゾールの最終濃度は20-50ng/mLである。前記B27の最終濃度は1.5-2.5%(例えば、2%であり、%は体積百分率を表す)である。前記ITS-Xの最終濃度は0.8-1.2%(例えば、1%であり、%は体積百分率を表す)である。前記Y-27632の最終濃度は5-20μMである。残量はすべてAdvanced DMEM/F12培地である。
【0010】
さらに、前記非必須アミノ酸溶液の溶剤は水であり、溶質および濃度は以下のとおりである:グリシン10mM;L-アラニン10mM;L-アスパラギン10mM;L-アスパラギン酸10mM; L-グルタミン酸10mM;L-プロリン10mM;L-セリン10mM。前記B27は「B-27TMSupplement (50X), minus vitamin A」(例えば、Gibco#1258701であり、または同じ組成の他の製品)である。前記「B-27TM Supplement (50X), minus vitamin A」には、ビオチン(Biotin)、DL-α-トコフェロール酢酸エステル(DL Alpha Tocopherol Acetate)、DL-α-トコフェロール(DL Alpha- Tocopherol)、BSA(fatty acid free Fraction V)、カタラーゼ(Catalase)、ヒト組換えインスリン(Human Recombinant Insulin)、ヒトトランスフェリン(Human Transferrin)、スーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide Dismutase)、コルチコステロン(Corticosterone)、D-ガラクトース(D-Galactose)、エタノールアミン塩酸塩(Ethanolamine HCl)、還元型グルタチオン(Glutathione (reduced))、L-カルニチン塩酸塩(L-Carnitine HCl)、リノール酸(Linoleic Acid)、リノレン酸(Linolenic Acid)、プロゲスチン(Progesterone)、プトレッシン(Putrescine 2HCl)、亜セレン酸ナトリウム(Sodium Selenite)、トリヨードサイロニン(T3 (triodo-I-thyronine))。前記ITS-Xの溶剤はEBSS溶液(Earle's平衡塩溶液)であり、溶質および濃度は以下のとおりである:インスリン1g/L;トランスフェリン1g/L;亜セレン酸ナトリウム0.00067g/L;エタノールアミン0.2g/L。前記GlutaMAXは高級細胞培養添加剤であり、細胞培地におけるL-グルタミンを直接代替することができる。前記GlutaMAXは「GlutaMAXTM Supplement」(例えば、Gibco#35050061であり、または同じ組成の他の製品)である。前記「GlutaMAXTMSupplement」成分はL-glutamineの代替物であるL-alanyl-L-glutamineであり、濃度が200nMであり、溶剤が0.85%のNaCl溶液である。前記Y-27632は「Y-27632 dihydrochloride(ATP競合的なROCK-IおよびROCK-II阻害剤であり、Kiはそれぞれ220nMと300nMである)」(例えば、MCE#129830-38-2であり、または同じ組成の他の製品)である。
【0011】
本発明の具体的な実施例において、前記二重特異抗体P/S(ペニシリン-ストレプトマイシン)のブランド品番はGibco#15140122である;前記HEPESのブランド品番はGibco#15630080である。前記非必須アミノ酸溶液のブランド品番はGibco#11140-050である。前記GlutaMAXのブランド品番はGibco#35050061である。前記ヒト組換えタンパク質EGFのブランド番号はPeprotech AF-100-15-100である。前記ヒト組換えタンパク質bFGFのブランド品番はPeprotech AF-100-18B-50である。前記ヒト組換えタンパク質MSPのブランド品番はR&D#352-MS-050である。前記コルチゾールのブランド品番はSigma#H0888である。前記B27のブランド品番はGibco#12587010である。前記ITSのブランド品番はGibco#51500056である。前記Y-27632のブランド品番はMCE#129830-38-2である。前記Advanced DMEM/F12培地のブランド品番はGibco#12634010である。
【0012】
さらに、前記肺がん初代細胞を培養するための培地の存在形態は二種類である可能性がある:
その一、前記肺がんの初代細胞を培養するための培地は前記二重特異抗体P/S、前記HEPES、前記非必須アミノ酸溶液、前記GlutaMax、前記ヒト組換えタンパク質EGF、前記ヒト組換えタンパク質bFGF、前記ヒト組換えタンパク質MSP、前記コルチゾール、前記B27、前記ITS-X、前記Y-27632および前記Advanced DMEM/F12培地で混合された溶液である。
前記培地を調製した後、0.22μMの針フィルター(Millipore SLGP033RS)で濾過除菌し、4℃で二週間保存できる。
その二、前記肺がんの初代細胞を培養するための培地における各成分は単独で存在し、使用する時に組成に従って調製する。
【0013】
さらに、そのうちヒト組換えタンパク質EGF、ヒト組換えタンパク質bFGF、ヒト組換えタンパク質MSP、コルチゾールおよびY-27632はストック(母液)形態で存在することができる(-80℃で長期保存できる);具体的には、1000倍ストック(母液)である。
【0014】
1000×ヒト組換えタンパク質EGFストックはヒト組換えタンパク質EGF、BSAおよびPBSからなり、そのうち前記ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残量はすべてPBSである。
【0015】
1000×ヒト組換えタンパク質bFGFストックはヒト組換えタンパク質bFGF、BSAおよびPBSからなり、そのうち前記ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残量はすべてPBSである。
【0016】
1000×ヒト組換えタンパク質MSPストックはヒト組換えタンパク質MSP、BSAおよびPBSからなり、そのうち前記ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20μg/mLであり、前記BSAの最終濃度は0.01g/mLであり、残量はすべてPBSである。
【0017】
上記三種類の1000倍ストックにおいて、前記BSAは、100倍ストック(母液)形態として存在してもよく(現配現用)、具体的にはBSAとPBSからなり、そのうちBSA(Sigma#A1933)の最終濃度は0.1g/mLであり、残量はすべてPBSである。
【0018】
また、1000×コルチゾールストックはコルチゾール、無水エタノールおよび超純水からなり、そのうちコルチゾールの最終濃度は25μg/mLであり、無水エタノールの最終濃度は5%(体積百分率)であり、残量はすべて超純水である。
【0019】
1000×Y-27632ストックはY-27632と超純水からなり、Y-27632の最終濃度は10mMであり、残量はすべて超純水である。
【0020】
第二の態様において、本発明は、肺がんの初代細胞を培養するためのキットに関する。
【0021】
本発明に掛かるキッとは、以下のいずれかであり得る:
(A1)は、上記第一の態様における前記培地とサンプル解離液、サンプル保存液およびサンプル洗浄液の全部または一部とからなる。
(A2)は、上記第一の態様における前記培地および細胞分離緩衝液からなる。
(A3)は、(A1)と、細胞消化液、消化停止液および細胞凍結保存液である試薬の全部または一部とからなる。
(A4)は、(A2)と、細胞消化液、消化停止液および細胞凍結保存液である試薬の全部または一部とからなる。
【0022】
前記サンプル解離液はコラゲナーゼI、コラゲナーゼIVおよびPBSからなる。そのうち、前記コラゲナーゼIの前記サンプル解離液における最終濃度は150-250U/mL(例えば、200U/mL)であり、前記コラゲナーゼIVの前記サンプル解離液における最終濃度は150-250U/mL(例えば、200U/mL)であり、残量はすべてPBSである。
【0023】
そのうち、プロテアーゼの酵素活性を用いてコラゲナーゼ(前記コラゲナーゼIまたは前記コラゲナーゼIV)の単位Uを定義し、すなわち、37℃、pH7.5の条件で、1Uプロテアーゼでコラゲナーゼ(前記コラゲナーゼIまたは前記コラゲナーゼIV)を5時間処理すると、1μmolのL-ロイシンを放出することができる。
【0024】
本発明の具体的な実施例において、前記コラゲナーゼIのブランド品番はGibco#17100-017であり、前記コラゲナーゼIVのブランド品番はGibco#17104-019であり、前記PBSのブランド品番はGibco#21-040-CVRである。
【0025】
そのうち、前記サンプル保存液はウシ胎児血清、二重特異抗体P/S、HEPESおよびHBSS(Hank's平衡塩溶液)からなり、そのうち、前記ウシ胎児血清の前記サンプル保存液における最終濃度は1-5%(例えば、2%であり、%は体積百分率を表す)であり、前記二重特異抗体P/Sにおけるペニシリンの前記サンプル保存液における最終濃度は100-200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記二重特異抗体P/Sにおけるストレプトマイシンの前記サンプル保存液における最終濃度は100-200μg/mL(例えば、100μg/mL )であり、前記HEPESの前記サンプル保存液における最終濃度は8-12mM(例えば、10mM)であり、残量はすべてHBSSである。
【0026】
本発明の具体的な実施例において、前記ウシ胎児血清のブランド品番はGibco#16000-044であり、前記二重特異抗体P/Sのブランド品番はGibco#15140122であり、前記HEPESのブランド品番はGibco#15630080であり、前記HBSSのブランド品番はGibco#14170161である。
【0027】
前記サンプル洗浄液は二重特異抗体P/S (ペニシリン-ストレプトマイシン)およびPBSからなり、そのうち、前記二重特異抗体P/Sにおけるペニシリンの前記サンプル洗浄液における最終濃度は100-200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記二重特異抗体P/S におけるストレプトマイシンの前記サンプル洗浄液における最終濃度は100-200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、残量はすべてPBSである。
【0028】
本発明の具体的な実施例において、前記二重特異抗体P/Sのブランド品番はGibco#15140122であり、前記PBSのブランド品番はGibco#21-040-CVRである。
【0029】
前記細胞分離緩衝液は二重特異抗体P/S(ペニシリン-ストレプトマイシン)、ヘパリンナトリウムおよびPBSからなり、そのうち、前記二重特異抗体P/Sにおけるペニシリンの最終濃度は100-200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記二重特異抗体P/Sにおけるストレプトマイシンの最終濃度は100-200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、前記ヘパリンナトリウムの最終濃度は10IU/mLであり、残量はすべてPBSである。
【0030】
本発明の具体的な実施例において、前記二重特異抗体P/Sのブランド品番はGibco#15140122であり、前記ヘパリンナトリウムのブランド品番号はSolarbio#H8270であり、前記PBSのブランド品番はGibco#21-040-CVRである。
【0031】
前記細胞消化液の組成は以下のとおりである。各10mLの前記細胞消化液には、4-6mL(例えば、5mL)のAccutase、最終濃度は5mMのEDTA(即ち10μL 0.5M EDTA)、1.5-2.5mL(例えば、2mL)のTrypLE Expressが含まれ、残量はPBSである。
【0032】
さらに、前記Accutaseは「StemProTM AccutaseTM Cell Dissociation Reagent」(例えば、Gibco#A11105-01であり、または同じ組成の他の製品)である。前記Accutaseは一種類の単一成分の酵素であり、D-PBS、0.5 mM EDTA溶液の中に溶解する。前記TrypLE Expressは「TrypLETM Express Enzyme (1X), no phenol red」(例えば、Gibco#12604013であり、または同じ組成の他の製品)である。前記「TrypLETM Express Enzyme (1X), no phenol red」には、200mg/LのKCl、200mg/LのKH2PO4、8000mg/LのNaCl、2160mg/LのNa2HPO4・7H2O、457.6mg/LのEDTAが含まれ、さらに、組み換えプロテアーゼが含まれる。
【0033】
本発明の具体的な実施例において、前記Accutaseのブランド品番はGibco#A11105-01であり、前記0.5M EDTAのブランド品番号はInvitrogen#AM9261であり、前記TrypLE Expressのブランド品番はGibco#12604013であり、前記PBSのブランド品番はGibco#21-040-CVRである。
【0034】
前記消化停止液はウシ胎児血清、二重特異抗体P/SおよびDMEM培地からなり、そのうち、前記ウシ胎児血清の前記消化停止液における最終濃度は8-12%(例えば、10%であり、%は体積百分率を表す)であり、前記二重特異抗体P/Sにおけるペニシリンの前記消化停止液における最終濃度は100-200U/mL(例えば、100U/mL)であり、前記二重特異抗体P/Sにおけるストレプトマイシンの前記消化停止液における最終濃度は100-200μg/mL(例えば、100μg/mL)であり、残量はすべてDMEM培地である。
【0035】
本発明の具体的な実施例において、前記ウシ胎児血清のブランド品番はGibco#16000-044であり、前記二重特異抗体P/Sのブランド品番はGibco#15140122であり、前記DMEM培地のブランド品番はGibco#11965-092である。
【0036】
前記細胞凍結保存液はAdvanced DMEM/F12培地、DMSOおよび1%のメチルセルロース溶液からなり、そのうち、前記Advanced DMEM/F12培地、前記DMSOおよび前記1%のメチルセルロース溶液の体積の比率は20:2:(0.8-1.2)、例えば、20:2:1であり、前記1%のメチルセルロース溶液は濃度が1g/100mlのメチルセルロース水溶液である。
【0037】
本発明の具体的な実施例において、前記Advanced DMEM/F12培地のブランド品番はGibco#12634010であり、前記DMSOのブランド品番はSigma#D2438であり、前記メチルセルロースのブランド品番はSigma#M7027である。
【0038】
前記サンプル保存液は、サンプル離体後の一時的な保存に用いることができ 、サンプルが離体した后、サンプル内の細胞の活性を短時間維持することができる。前記サンプル保存液は調製した後4 ℃で1ヶ月保存することができる。
【0039】
前記サンプル洗浄液はサンプルの洗浄および消毒に用いることができる。前記サンプル洗浄液は使用するたびに調製する必要がある。
【0040】
前記サンプル解離液はサンプルの解離に用いることができ、サンプルにおける肺がん固形腫瘍の初代細胞を組織から解離することができる。前記サンプル解離液は使用するたびに調製する必要があり、そのうち、コラゲナーゼIおよびコラゲナーゼIVはストック(母液)の形態で-20 ℃で長期保存することができ、具体的には10倍ストック(母液)であってもよい。10×コラゲナーゼIストックは前記コラゲナーゼIとPBSからなり、そのうち前記コラゲナーゼIの最終濃度は2000U/mLであり、残量はすべてPBSである。10×コラゲナーゼIVストックは前記コラゲナーゼIVとPBSからなり、そのうち前記コラゲナーゼIVの最終濃度は2000U/mLであり、残量はすべてPBSである。前記コラゲナーゼIおよびコラゲナーゼIVの酵素活性の定義は前述の通りである。
【0041】
前記細胞分離緩衝液は、胸水における細胞を浮遊するために用いられ、密度勾配で細胞を分離するために準備する。前記細胞分離緩衝液の調製が完了した後、4 ℃で1ヶ月保存することができる。
【0042】
前記細胞消化液は、細胞の凝集塊の消化と継代に用いることができ、肺がんの腫瘍塊を単一細胞まで消化することができる。前記細胞消化液は使用するたびに調製する必要がある。
【0043】
前記消化停止液は、試料解離または細胞消化プロセスを停止するために用いることができる。前記消化停止液を調製した後に4 ℃で一ヶ月保存することができる。
【0044】
前記細胞凍結保存液は使用するたびに調製する必要がある。そのうち、前記1%のメチルセルロース溶液は4℃で長期間保存することができる。
【0045】
第三の態様において、本発明は以下のいずれかの使用に関する。
(B1)前記第一の態様に記載の培地の肺がん初代細胞を培養するための使用。
(B2)前記第二の態様に記載の(A1)または(A3)に記載のキットの肺がん固形腫瘍の初代細胞を培養するための使用。
(B3)前記第二の態様に記載の(A2)または(A4)に記載のキットの肺がん胸水の初代腫瘍細胞を培養するための使用。
【0046】
第四の態様において、本発明は、肺がんの初代細胞を培養する方法に関する。
【0047】
本発明に係る肺がんの初代細胞を培養する方法は、方法Aまたは方法Bである:
方法A:肺がん固形腫瘍の初代細胞を培養する方法であり、以下のステップを含むことができる:
(a1)は、前記第二の態様に記載のサンプル解離液で肺がん固形腫瘍組織に対して解離処理を行い、肺がん固形腫瘍の初代細胞を取得するステップである;
(a2)は、前記第一の態様における培地を利用して、ステップ(a1)で解離された肺がん固形腫瘍の初代細胞を浮遊培養するステップである。
方法B:肺がん胸水初代腫瘍細胞を培養する方法であり、以下のステップを含むことができる:
(b1)は、肺がん胸水から肺がん胸水初代腫瘍細胞を分離して取得する浮遊培養するである;
(b2)は、請求項1に記載された培地を利用して、ステップ(b1)で分離された肺がん胸水初代腫瘍細胞を浮遊培養するステップである。
【0048】
さらに、ステップ(a1)において、以下のステップを含む方法に従って前記サンプル解離液を用いて前記肺がん固形腫瘍組織を解離することができ、即ち、組織1mgあたりのサンプル解離溶液を0.1-0.3mL(例えば、0.1 mL)の用量で、細かく切った前記肺がん固形腫瘍組織(例えば、0.8-1.2 mm3の破片に切ったもの)を、37℃に予熱したサンプル解離液で処理し、37℃の条件でサンプル解離を行い、解離時間は15分から3時間である。15分ごとに顕微鏡で、単一細胞が大量に観察されるまで、サンプルの解離の様子を観察する。
【0049】
さらに、ステップ(b1)において、以下のステップを含む方法に従って肺がん胸水から肺がん胸水の初代腫瘍細胞を分離して取得することができ、即ち、前記第二の態様に記載の細胞分離緩衝液で肺がん胸水における細胞を浮遊し、続いて、密度勾配遠心(Ficollリンパ細胞分離液を利用する)によって肺がん胸水の初代腫瘍細胞を得る。
【0050】
さらに、ステップ(a2)において、以下のステップを含む方法に従って前記肺がん腫初代細胞培地を用いて前記肺がん腫初代細胞を浮遊培養することができ、即ち、細胞培養容器Mを用い、前記培地を利用して前記肺がん固形腫瘍の初代細胞を浮遊培養し、37 ℃、5%のCO2の条件で培養し、細胞が直径80-120μm(例えば、100μm)の塊を形成するまで、2-4日(例えば、3日)ごとに培地を交換する。
【0051】
さらに、ステップ(b2)において、以下のステップを含む方法に従って前記培地で前記肺がん胸水初代腫瘍細胞を浮遊培養することができ、即ち、細胞培養容器Mを使用し、前記培地を利用して前記肺がん胸水初代腫瘍細胞を浮遊培養し、37 ℃、5%のCO2の条件で培養し、細胞が直径80-120μm(例えば、100μm)の塊を形成するまで、2-4日(例えば、3日)ごとに培地を交換する。
【0052】
なお、初期接種密度は105個/cm2容器底面積であり得、6ウェルプレートを例として、各ウェルごとに106個の細胞の密度でプレートする。
【0053】
なお、前記細胞培養容器Mは以下のいずれかであってもよい:(I)は、ポリスチレン製の細胞培養容器、ポリカーボネート製の細胞培養容器、ポリメチルメタクリレート製の細胞培養容器、COC樹脂製の細胞培養容器、シクロオレフィンポリマー製の細胞培養容器または低接着表面の細胞培養容器であり、(II)は、(I)における細胞培養容器をCYTOP修飾した後の細胞培養容器である。
【0054】
さらに、前記細胞培養容器は細胞培養シャーレ、細胞培養ウェルプレートまたは細胞培養に用いられるマイクロプレートチップである。
【0055】
前記(II)において、以下のステップを含む方法に従って前記(I)における細胞培養容器に対してCYTOP修飾を行うことができ、即ち、前記(I)における細胞培養容器に対して純酸素エッチングを行い、エッチング条件が出力20Wであり、エッチング時間が3分であり、続いて1%のCYTOP溶液で前記細胞培養容器の表面をコートし、前記1%のCYTOP溶液を乾燥させてCYTOP修飾を完了する。
【0056】
なお、前記1%のCYTOP溶液の組成は以下のとおりであり、即ち、100mLの前記1%のCYTOP溶液あたり、1mLのCYTOPが含まれ、残量はフッ素オイルである。
【0057】
さらに、ステップ(a1)の前に、さらに以下の前記肺がん固形腫瘍組織に対して解離前処理を行うステップを含むことができ、即ち、体積百分率が70-75%(例えば、75%)のエタノールで肺がん固形腫瘍組織サンプルの表面を10から30秒洗浄し;前記サンプル洗浄液で前記肺がん固形腫瘍組織サンプルを5-10回(例えば、5回)洗浄し、無菌のPBS溶液で前記肺がん固形腫瘍組織サンプルを5-10回(例えば、5回)洗浄し;続いて、肺がん固形腫瘍組織サンプル内の不純物、結合組織、脂肪組織、壊死組織などの初代細胞培養に影響を及ぼす成分を除去する。
【0058】
前記肺がん固形腫瘍組織に対する解離前処理のステップは氷上で操作する必要があり、すべての操作ステップは10分以内に完了する必要がある。
【0059】
さらに、前記解離前処理を行う前記肺がん腫組織サンプルは、その離体時間は2時間以内である必要があり、かつ前記解離前処理を行うまで前記サンプル保存液に保存される必要がある。
【0060】
さらに、ステップ(a1)において、前記サンプル解離液で前記肺がん固形腫瘍組織に対して解離処理を行った後にさらに以下のステップを含むことができ、即ち、8-15倍(例えば、10倍)体積の前記消化停止液を用いて解離反応を終了し、細胞懸濁液を収集する;100μmまたは40μmの無菌細胞ストレーナで前記細胞懸濁液を濾過し、組織破片および癒着細胞を除去する;800-1000g(例えば、800g)を室温で10-15分間(例えば、10分間)遠心分離し、上澄みを捨てた;その後、3-5mL(例えば、5mL)の無菌PBSで細胞を再懸濁する;再び、800-1000g(例えば、800g)を室温で10-15分間(例えば、10分間)遠心分離し、上澄みを捨てた;続いて、前記肺がん固形腫瘍の初代細胞培地で細胞ペレットを再懸濁し、顕微鏡で細胞状態を観察し、細胞計数を行う。
【0061】
さらに、ステップ(b1)の前にさらに肺がん胸水サンプルに対して分離前処理を行うステップを含み、即ち、肺がん胸水サンプルにおける不純物、凝血塊などの細胞密度勾配分離に影響を与える成分を除去する。
【0062】
さらに、ステップ(a2)において、さらに、前記肺がん固形腫瘍の初代細胞が直径80-120μm(例えば、100μm)の塊を形成する時に、前記肺がん固形腫瘍の初代細胞に対して継代を行うステップを含んでもよい。
【0063】
さらに、ステップ(b2)において、さらに、肺がん胸水の初代腫瘍細胞が直径80-120μmの塊を形成する時に、前記肺がん胸水の初代腫瘍細胞に対して継代を行うステップを含んでもよい。
【0064】
なお、前記継代を行う際に用いる細胞消化液は、前記第二の態様に記載の細胞消化液である。
【0065】
なお、前記継代を行う際に用いる消化停止液は、前記第二の態様に記載の消化停止液である。
【0066】
またさらに、前記継代を行う際の消化温度は37℃である。
【0067】
より具体的には、前記継代のステップを行う:継代対象の細胞塊を収集し、遠心分離した後に無菌のPBS溶液で細胞塊を洗浄し、さらに遠心分離し、続いて前記細胞消化液で細胞塊を再懸濁し、37℃の条件で細胞塊を単一細胞まで消化し、前記消化停止液(その用量は5-10倍であり得、例えば、10倍体積)で消化反応を停止し、細胞懸濁液を収集する;遠心分離した後に前記第一の態様に記載の培地で細胞ペレットを再懸濁し、計数し、続いて前記の細胞培養容器Mを用いて懸濁した細胞を培養し(初期接種密度は105個/cm2容器底面積であり得、6ウェルプレートを例として、各ウェルごとに106個の細胞の密度でプレートする)、培養条件は37℃、5%のCO2である。上記継代のステップにおけるすべての遠心は、具体的に、800-1000g(例えば、800g)、室温で10-20分間(例えば、10分間)の遠心であり得る。
【0068】
さらに、前記方法はさらに2-3回の継代による増殖後の前記肺がん固形腫瘍の初代細胞または前記肺がん胸水の初代腫瘍細胞を凍結保存および/または蘇生するステップを含む。前記凍結保存を行う場合に用いられる細胞凍結保存液は前記第二の態様に記載の細胞凍結保存液である。
【0069】
またさらに、前記凍結保存の具体的なステップを行う:凍結保存対象の細胞塊を収集し、遠心分離した後に無菌のPBS溶液で細胞塊を洗浄し、さらに遠心分離し、続いて前記細胞消化液で細胞塊を再懸濁し、37℃の条件で細胞塊を単一細胞まで消化し、前記消化停止液(その使用量は5-10倍であり得、例えば、10倍体積)で消化反応を停止し、細胞懸濁液を収集する;遠心分離した後に前記細胞凍結保存液を用い、0.5-2×10/mL(例えば、10/mL)の密度で細胞ペレットを再懸濁し、勾配冷却ボックスで一晩凍結保存した後に液体窒素に移して長期保存する。上記凍結保存ステップにおける全ての遠心は具体的に、800-1000g(例えば、800g)、室温で10-20分間(例えば、10分間)の遠心であり得る。
【0070】
またさらに、前記蘇生する具体的なステップを行う:蘇生する対象細胞がいれた凍結保存管を液体窒素から取り出し、37-39℃(例えば、37℃)の無菌水で細胞を迅速に融解する;遠心(例えば、800-1000g、例えば800gを室温で5-10分間、例えば、10分間)した後、前記第一の態様に記載の培地で細胞ペレットを再懸濁し、続いて前記の細胞培養容器Mを用いて懸濁した細胞を培養し(初期播種密度は105個/cm2容器底面積)、各管の細胞(106個)を3.5cm培養皿に蘇生し、培養条件は37℃、5%のCO2である。
【0071】
第五の態様において、本発明は以下のいずれかの試薬に関する:
(C1)は、肺がん固形腫瘍組織のサンプル解離液であって、前記第二の態様に記載のサンプル解離液であり、
(C2)は、肺がん固形腫瘍組織のサンプル保存液であって、前記第二の態様に記載のサンプル保存液であり、
(C3)は、肺がん胸水の細胞分離緩衝液であって、前記第二の態様に記載の細胞分離緩衝液であり、
(C4)は、肺がん初代の細胞消化物であって、上記第二の態様に記載の細胞消化液である。
【0072】
第六の態様において、本発明は以下のいずれかの使用に関する:
(D1)は、前記第五の態様における(C1)に記載のサンプル解離液の肺がん固形腫瘍組織から肺がん固形腫瘍の初代細胞を解離するための使用である。
(D2)は、前記第五の態様における(C2)に記載のサンプル保存液の肺がん固形腫瘍組織を保存するための使用である。
(D3)は、前記第五の態様における(C3)に記載の細胞分離緩衝液の肺がん胸水から肺がん胸水の初代腫瘍細胞を分離するための使用である。
(D4)は、前記第五の態様における(C4)に記載の細胞消化液の肺がん初代細胞に対して継代を行うための使用である。
【0073】
第七の態様において、本発明は以下のいずれかの方法に関する:
(E1)は、前記第四の態様に記載の方法におけるステップ(a1)を含む、肺がん固形腫瘍組織から肺がん固形腫瘍の初代細胞を解離する方法である。
(E2)は、離体したばかりの肺がん固形腫瘍組織を、前記第二の態様で記載したサンプル保存液に入れて保存し、保存時間は2時間以内であるステップを含む、肺がん固形腫瘍組織を保存する方法である。
(E3)は、上記第四の態様におけるステップ(b1)を含む、肺がん胸水から肺がん胸水初代腫瘍細胞を分離する方法である。
(E4)は、肺がん初代細胞が直径80-120μmの塊を形成する時、前記肺がん初代細胞に対して継代を行い、前記継代を行う時に用いられる細胞消化液が前記第二の態様に記載の細胞消化液であり、前記継代を行う時に用いられる消化停止液が、第二の態様に記載の消化停止液であるステップを含む、肺がん初代細胞に対して継代を行う方法である。
【0074】
上記各態様において、前記肺がんは原発性肺がんであり得る。病理学的タイプは、非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんである。病理学的ステージ(病期)は、ステージIIまたはステージIIIまたはステージIVである。さらに、肺がん固形腫瘍組織から肺がん初代細胞を分離するサンプルは、ステージIIまたはステージIIIのサンプルが好ましく、肺がん胸水から肺がん初代細胞を分離するサンプルがステージIVのサンプルである。
【0075】
さらに、非小細胞肺がんは、非小細胞肺がん腺がんまたは非小細胞肺がん扁平上皮がんであってもよい。
【0076】
上記各態様において、前記肺がん初代細胞は肺がん固形腫瘍の初代細胞または肺がん胸水の初代腫瘍細胞であってもよい。
【0077】
上記各態様において、前記肺がん初代細胞は、肺がん患者の手術サンプル(固形腫瘍組織である)、穿刺サンプル(固形腫瘍組織である)、または胸水サンプルから分離されることができる。そのうち、手術サンプルから得られた肺がん固形腫瘍組織標本の重量は20mgを超えることが最適である。胸水サンプルは50mL以上であることが最適である。穿刺サンプルは2本以上である。
【0078】
本発明において、上記のPBSはすべて1×PBS,pH7.3-7.5であってもよい。その具体的な組成は以下のとおりであり、即ち、溶剤は水であり、溶質および濃度はKH2PO4 144mg/L、NaCl 9000 mg/L、Na2HPO4・7H2O 795 mg/Lである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】肺がん組織が処理された後に得られた単細胞である。スケールが200μmで、10倍拡大したものである。
図2】肺がん組織の初代培養した後に得られた細胞塊である。スケールが100μmで、10倍拡大したものである。
図3】肺がん組織の初代培養した後に得られた肺がん細胞のHE染色図である。スケールが50μmで、40倍拡大したものである。
図4】肺がん組織の初代培養した後に得られたがん細胞塊の免疫蛍光染色図である。
図5】シークエンシング結果に基づいたコピー数変異解析(CNV)によって、各世代の肺がん初代細胞培養物(P1、P2、P3、P4)と原発肺がん腫瘍組織(Tumor)のコピー数変異状況が高い一致性を示す。
図6】肺がん胸水サンプルから分離された単細胞である。スケールは200μmである。
図7】肺がん胸水サンプルにおける初代細胞腫瘍細胞を培養した後に得られた細胞塊である。スケールは200μmである。
図8】肺がん胸水サンプルの初代培養した後に得られた肺がん細胞のHE染色図である。スケールは100μmである。
図9】肺がん胸水サンプルの初代培養した後に得られたがん細胞塊の免疫蛍光染色図である。
図10】シークエンシング結果に基づいたコピー数変異解析(CNV)によって、各世代の肺がん胸水初代細胞培養物(P1、P2、P3、P4、P5)が肺がん胸水におけるがん細胞のコピー数変異状況が高い一致性を示す。
図11】本発明の培養で得られた肺がん胸水の初代腫瘍細胞を用いてインビトロ薬物感受性テストを行った結果である。
図12】本発明のマイクロプレートチップ設計図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0080】
以下の実施例は本発明のより良い理解を容易にするが、本発明を限定しない。下記実施例における実験方法は、特に説明しない限り、いずれも従来の方法である。下記実施例で使用した試験材料は、特に説明しない限り、いずれも従来の生物化学試薬店から購入したものである。
【0081】
実施例1
肺がん固形腫瘍の初代細胞を培養するための試薬の調製
1.サンプル保存液(100mL)
サンプル保存液(100mL)の具体的な組成を表1に示す。
【0082】
【0083】
サンプル保存液の調製が完了した後、15mL遠心管に分注し、各管は5mLであった。分注した後4 ℃で1ヶ月保存することができる。
【0084】
2.サンプル洗浄液(100mL)
サンプル洗浄液(100mL)の具体的な組成を表2に示す。
【0085】
サンプル洗浄液は使用する直前に調製する必要がある。
【0086】
3.サンプル解離液(10mL)
サンプル解離液(10mL)の具体的な組成を表3に示す。
【0087】
【0088】
3において、コラゲナーゼストックの調製は表4および表5に示す。
【0089】
【0090】
10×コラゲナーゼIストックを調製した後、1.5mLの無菌遠心管に分注し、各管は1mLであった。該ストックは、-20℃で長期間保存することができる。
【0091】
【0092】
10×コラゲナーゼIVストックを調製した後、1.5mLの無菌遠心管に分注し、各管は1mLである。該ストックは、-20℃で長期間保存することができる。
【0093】
表4および表5において、プロテアーゼの酵素活性を用いてコラゲナーゼ(前記コラゲナーゼIまたは前記コラゲナーゼIV)の単位Uを定義し、即ち、37℃、pH7.5の条件で、1Uプロテアーゼでコラゲナーゼ(前記コラゲナーゼIまたは前記コラゲナーゼIV)を5時間処理すると、1μmolのL-ロイシンを放出することができる。
【0094】
4.細胞消化液(10mL)
細胞消化液(10mL)の具体的な組成を表6に示す。
【0095】
細胞消化液は使用する直前に調製する。
【0096】
5.消化停止液(100mL)
消化停止液(100mL)の具体的な組成を表7に示す。
【0097】
消化停止液を調製した後に4 ℃で一ヶ月保存することができる。
【0098】
6.肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(100mL)
肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(100mL)の具体的な組成を表8に示す。
【0099】
【0100】
肺がん固形腫瘍の初代細胞培地の調製が完了した後、0.22μM針フィルター(Millipore SLGP033RS)で濾過滅菌し、4 ℃で二週間保存できる。
【0101】
表8において、ヒト組換えタンパク質ストックの調製は表9-表12に示され、コルチゾールストックの調製は表13に示され、Y-27632ストックの調製は表14に示される。
【0102】
100×BSA溶液は使用する直前に調製する。
【0103】
【0104】
1000×ヒト組換えタンパク質EGFストックを調製した後、1.5mL無菌遠心管に分注し、該ストックは-80℃で長期保存することができる。
【0105】
【0106】
1000×ヒト組換えタンパク質bEGFストックを調製した後、1.5mLの無菌遠心管に分注し、該ストックは-80℃で長期保存することができる。
【0107】
【0108】
1000×ヒト組換えタンパク質MSPストックを調製した後、1.5mL無菌遠心管に分注し、該ストックは-80℃で長期保存することができる。
【0109】
【0110】
1000×コルチゾールストックを調製した後、1.5mLの無菌遠心管に分注し、該ストックは-80℃で長期保存することができる。
【0111】
【0112】
1000×Y-27632ストックを調製した後、0.5mLの滅菌遠心管に分注し、該ストックは-80℃で長期保存することができる。
【0113】
7.細胞凍結保存
細胞凍結保存液の具体的な組成を表15に示す。
【0114】
細胞凍結保存液は使用する直前に調製する。
【0115】
表15における1%メチルセルロース溶液の調製を表16に示す。
【0116】
1%のメチルセルロース溶液を調製した後、4 ℃で長期保存することができる。
【0117】
実施例2
肺がん固形腫瘍組織の術後標本の取得
1.三甲病院と協力し、協力の展開は正規の医学倫理審査を通過した。
2.主治医は医学ガイドラインに規定される臨床徴候に基づいてグループ入りの患者を選択し、且つ術中臨床徴候に基づいて適切なサンプルを選択してインビトロ培養に用い、サンプルの選択基準は以下のとおりである:原発性肺がんであって、病理学的ステージはステージIIまたはステージIIIであり、病理学的タイプは非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり、肺がん標本は20mgを超えるサンプルである。
3.主治医は、患者の性別、年齢、病歴、家族歴、喫煙歴、病理学的ステージタイプ、臨床診断などの基本的臨床情報を提供し、患者の氏名、身分証明書番号などの患者のプライバシーに関連する情報を隠し、統一された実験番号で代替し、実験番号の命名原則は収集したサンプルの8桁の日付+患者の入院番号の下4桁である。例えば、2018年1月1日に提供されたサンプルの場合、患者の入院番号がT001512765であり、サンプルの実験番号が201801012765である。
4.手術中に外科医により、手術室の無菌環境において新鮮な標本を採取し、予め準備されたサンプル保存液(実施例1参照)に入れる。サンプル離体した後に氷上で一時保存し、二時間で実験室に輸送し次の操作をする。
【0118】
実施例3
肺がん固形腫瘍組織サンプルの解離前処理
下記操作は氷上で操作する必要があり、操作ステップ全体は10分以内に完了する必要がある。
下記操作に用いる手術器具は、いずれも事前に高温高圧滅菌し、乾燥した後に使用できる。
1、サンプルを秤量した。
2、サンプル表面を75%(体積百分率)エタノールで10-30秒間洗浄した。
3、サンプルをサンプル洗浄液で5回、無菌PBS溶液で5回洗浄した。
4、眼科用カット、眼科ピンセット、メスなどの器材を用いて、サンプル内の脂肪組織、結合組織、壊死組織を注意深く剥離した。
【0119】
実施例4
肺がん固形腫瘍組織サンプルの解離
下記実施例に用いる手術器具は、いずれも事前に高温高圧で滅菌し、乾燥した後に使用できる。
1、眼科用カットで組織を約1mm3の小さな塊に細かく切った。
2、細断された組織サンプルを、組織1mg当たり0.1mLのサンプル解離溶液(表3)の使用量で、予め37℃に予熱したサンプル解離溶液で処理し、37℃の条件でサンプル解離を行い、解離時間を15分から3時間とした。単一細胞が大量に観察されるまでに、15分ごとに顕微鏡でサンプルの解離を観察した。
3、10倍体積の消化停止液(表7)で解離反応を終了し、細胞懸濁液を回収した。
4、100μm無菌細胞フィルターで細胞懸濁液を濾過し、組織残片および癒着細胞を除去した。
5、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、5mLの無菌PBSで細胞を再懸濁し、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
7、肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(表8)で細胞ペレットを再懸濁し、細胞状態を顕微鏡下で観察し、細胞の計数を行った。
【0120】
図1に示すように、解離した単細胞懸濁液において、腫瘍細胞の他に赤血球、リンパ球、線維細胞などの各種の他の細胞が多数混じる。本方法の利点の1つは、その後の培養プロセスで、がん細胞だけが大量に増殖することができ、他の細胞の割合は徐々に減少または消失し、最終的により純度の高い肺がん初代腫瘍細胞が得られるということである。
【0121】
実施例5
肺がん固形腫瘍の初代細胞の培養
1、低接着表面(low-attachment-surface)を用いて肺がん固形腫瘍の初代細胞の懸濁培養を行い、用いた培地は実施例1における肺がん固形腫瘍の初代細胞培地であり、6ウェルプレートを例とし、各ウェルごとに106個の細胞の密度でプレートし、37℃、5%のCO2の条件で細胞インキュベーターの中で培養した。
2、細胞状態を毎日観察し、細胞が直径100μm程度の塊を形成するまで、培地を3日ごとに交換した。
【0122】
図2に示すように、3-10日間の培養を経て、がん細胞は大量に増殖して直径が100μmの大きさの細胞塊を形成し、腫瘍細胞の総数は107を超えることができ、他のタイプの細胞数は明らかに減少してさらに消失する。本方法は大量のサンプルテストを経て、肺がん固形腫瘍の初代腫瘍細胞のインビトロ培養成功率は70%に達することができる。
【0123】
実施例6
肺がん固形腫瘍の初代細胞の継代
1、培養皿中の細胞塊を収集し、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
2、無菌PBS溶液で細胞塊を洗浄し、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
3、細胞消化液(表6)で細胞塊を再懸濁し、37℃の条件で消化を行った。細胞塊はすべて単一細胞に消化されるまで、5分ごとに顕微鏡下で細胞塊の消化状況を観察した。
4、10倍体積の消化停止液(表7)で解離反応を終了し、細胞懸濁液を収集した。
5、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(表8)で細胞ペレットを再懸濁し、細胞をカウントした。
7、低接着表面(low-attachment-surface)を用いて肺がん固形腫瘍の初代細胞培養を行い、用いられる培地は実施例1における肺がん固形腫瘍の初代細胞培地であり、6ウェルプレートを例とし、各ウェルごとに106個の細胞の密度でプレートし、37℃、5%のCO2の条件で細胞インキュベーターの中でインキュベートした。
【0124】
実施例7
肺がん固形腫瘍の初代細胞の凍結保存
浮遊培養の肺がん固形腫瘍の初代細胞は2-3回の継代増殖を経た後、凍結保存を行うことができる:
【0125】
1、シャーレの中の細胞塊を収集し、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
2、無菌PBS溶液で細胞塊を洗浄し、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
3、細胞消化液(表6)で細胞塊を再懸濁し、37℃の条件で消化を行った。細胞塊はすべて単一細胞に消化されるまで、15分ごとに顕微鏡下で細胞塊の消化状況を観察した。
4、10倍体積の消化停止液(表7)で反応を停止し、細胞懸濁液を収集し、細胞をカウントした。
5、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、細胞凍結保存液(表15)を用いて、10/mLの密度で細胞ペレットを再懸濁し、2mLの凍結管に各管に1mLの細胞懸濁液を入れ、勾配冷却ボックスで一晩凍結保存した後に液体窒素に移して長期保存した。
【0126】
実施例8
肺がん固形腫瘍の初代細胞の蘇生
液体窒素に保存された肺がん固形腫瘍の初代細胞は蘇生することができる:
【0127】
1、5分前に37℃の無菌水を準備した。
2、凍結保存管を液体窒素から取り出し、37℃の無菌水中で細胞を急速に解凍した。
3、800gを室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
4、肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(表8)で細胞塊を再懸濁し、低接着表面を用いて肺がん固形腫瘍の初代細胞を培養し、各管の細胞を3.5cmシャーレで蘇生し、37℃、5%のCO2の条件で細胞インキュベーターの中でインキュベートした。
【0128】
実施例9
肺がん固形腫瘍の初代細胞のHE染色による同定
下記実施例に用いる試薬消耗品を説明する:
HE染色キット(Beijingsolarbio science &technology co.,ltd.、#G1120);
陽イオン脱落防止スライドガラス(Beijing Zhongshan Golden Bridge Biotechnology Co., Ltd.);
キシレン、メタノール、アセトン(北京化学試剤社、分析純);
中性バルサム(Neutral balsam)(Beijing Yili Fine Chemicals Co., Ltd.)。
【0129】
1、肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(表8、そのうち、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は50ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20ng/mLであり、コルチゾールの最終濃度は20ng/mLあり、Y-27632の最終濃度は10μMである)で培養した浮遊肺がん固形腫瘍の初代細胞を、104/mLの濃度の細胞懸濁液にし、それを陽イオン脱落防止スライドガラスに10μL滴下し、自然乾燥させた。
2、空気乾燥した細胞に、50μLの4 ℃で予冷したメタノール/アセトン混合物(体積比1:1)を注意深く滴下し、続いて、スライドガラスを4 ℃の冷蔵庫に入れて10分間固定した。
3、細胞を固定したスライドガラスを取り出し、室温で自然乾燥した。
4、200μLのPBSでスライドガラスを二回洗浄した。
5、スライドガラスの水分が少し乾燥した時に、100μLのヘマトキシリン染色液を加えて1分間染色した。
6、ヘマトキシリン染色液を吸い取り、200μLの水道水で3回スライドガラスを洗浄した。
7、100μLの分化液を滴下して1分間分化させた。
8、分化液を吸い取り、順に水道水でスライドガラスを2回洗浄し、蒸留水でスライドガラスを1回洗浄した。
9、スライドガラス表面の水分を吸い取り、200μLのエオシン染色液を滴下して40秒間染色した。
10、エオシン染色液を吸い取り、順に75%、80%、90%、100%のエタノールで20秒、20秒、40秒、40秒すすぎ脱水した。
11、エタノールが乾燥した後、50μLのキシレンを滴下して細胞透過化を行った。
12、キシレンが完全に乾燥した後、中性バルサムを一滴滴下し、カバーガラスでシールし、顕微鏡で観察且つ撮影した。
【0130】
図3はインビトロで培養した肺がん固形腫瘍の初代腫瘍細胞のHE染色効果図を示し、これらの細胞は一般的に核細胞質比が高く、核が深く染まり、核内クロマチンが凝集し、多核、細胞のサイズが不均一などのがん細胞の特徴を有することが分かる。
【0131】
実施例10
肺がん固形腫瘍の初代細胞の免疫蛍光染色による同定
下記実施例に用いられる試薬説明:
パラホルムアルデヒド(北京化学試剤社、分析純)、超純水でパラホルムアルデヒド粉末を溶解し、4%(4g/100mL)のパラホルムアルデヒド溶液を作る;
メタノール、ジメチルスルホキシド(北京化学試剤社、分析純);
オキシドール(北京化学試剤社、35%);
メタノール、ジメチルスルホキシド、35%のオキシドールを4:4:1(体積比)の割合で混合してダンのすすぎ液を作る;
ウシ血清アルブミン(Sigma,#A1933)、PBS溶液でウシ血清アルブミンを溶解し、3%(3g/100mL)のBSA溶液を作る;
免疫蛍光一次抗体(Abcam,#ab17139);
免疫蛍光二次抗体(CST,#4408);
ヘキスト染色液(Beijing solarbio science & technology co.,ltd.、#C0021);
【0132】
以下のステップに基づいて肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(表8、そのうち、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は50ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20ng/mLであり、コルチゾールの最終濃度は20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度は10μMである)で培養して得られた肺がん固形腫瘍の初代細胞の塊に対して免疫蛍光染色を行い、一次抗体はCK8+CK18であり、上皮由来の細胞を特徴付ける。
【0133】
1、シャーレ内の肺がん固形腫瘍の初代細胞の塊を収集し、PBSで一回洗浄した後、4%のパラホルムアルデヒドで細胞ペレットを再懸濁し、4 ℃で一晩固定した。
2、800gで遠心分離して上澄みを捨て、予め冷却したメタノール溶液で細胞ペレットを再懸濁し、氷上で1時間放置した。
3、800gで遠心分離して上澄みを捨て、ダンのすすぎ液で細胞ペレットを再懸濁し、室温で2時間放置した。
4、800gで遠心分離して上澄みを捨て、順に75%、50%、25%(体積百分率)のPBS希釈メタノール溶液で細胞を洗浄し、毎回10分間であった。
5、800gで遠心分離して上澄みを捨て、3%のBSA溶液で細胞ペレットを懸濁し、室温で2時間ブロッキングした。
6、1:500の割合で、3%のBSA溶液で一次抗体を希釈し、得られた抗体希釈液(3%のBSA溶液)で細胞ペレットを再懸濁し、一次抗体により4℃で一晩インキュベートした。
7、800gで遠心分離して上澄みを捨て、PBS溶液で細胞ペレットを5回洗浄し、毎回20分間であった。
8、1:2000の割合で、3%のBSA溶液で二次抗体を希釈し、得られた抗体希釈液(3%のBSA溶液)を用いて細胞ペレットを再懸濁し、二次抗体により室温で2時間インキュベートした。
9、800gで遠心分離して上澄みを捨て、PBS溶液で細胞ペレットを5回洗浄し、毎回20分間であった。
10、1/10の体積比で100×ヘキスト染色液を加え、室温で20分間染色した。
11、PBS溶液を用いて細胞塊を2回洗浄し、毎回10分間であった。レーザー共焦点顕微鏡を用いて細胞塊の染色状況を観察した。
【0134】
図4はインビトロで培養された肺がん固形腫瘍の初代細胞塊の免疫蛍光染色の効果図を示し、細胞塊を構成する細胞はすべてCK8/CK18陽性であり、上皮由来であることが分かり、本方法で培養して得られたのは純度が比較的高い腫瘍細胞であることを証明する。20個の肺がん固形腫瘍サンプルの初代培養物に対して免疫蛍光染色同定を行い、統計結果は本方法によって得られた肺がん固形腫瘍の初代細胞において、腫瘍細胞の割合が75%-95%に達することを示す(表17)。
【0135】
【0136】
実施例11
肺がん固形腫瘍の初代細胞培養物と原発腫瘍組織
下記実施例で言及されるDNA抽出プロセスは、TIANGEN血液/組織/細胞ゲノム抽出キット(DP304)を用いて行った。
以下の実施例で言及されるライブラリ構築プロセスはNEB DNAシークエンシングーライブラリ構築キット(E7645)を用いて行った。
以下実施例で言及されるハイスループットシークエンシングは、Illumina HiSeq X-tenシーケンシングプラットフォームを指す。
【0137】
1、肺がん固形腫瘍サンプルを取得し、インビトロ培養操作を行う前に、まず10mgの肺がん固形腫瘍サンプルを取得してDNA抽出し、ライブラリ構築および全ゲノムハイスループットシークエンシング(WGS)を行い、シークエンシング深さが30Xであり、残りの固形腫瘍サンプルは肺がん固形腫瘍の初代細胞のインビトロ培養に用いた(具体的な方法は前記実施例を参照して行った)。
2、肺がん組織を処理した後に肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(表8、そのうち、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は50ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20ng/mLであり、コルチゾールの最終濃度は20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度は10μMである)で一定時間培養して、直径100μm以上の細胞塊を形成してP0世代細胞と表記し、その後、継代の回数に応じて順にP1、P2、…、Pnと表記した。P1、P2、P3、P4世代の肺がん固形腫瘍の初代細胞培養物からそれぞれ106個の細胞を取り、DNA抽出し、ライブラリ構築および全ゲノムハイスループットシークエンシング(WGS)を行い、シークエンシング深さが30Xであった。
3、各グループのシークエンシング結果はそれぞれコピー数変動解析(CNV)を行い、原発肺がん腫瘍組織と各世代の肺がん固形腫瘍の初代細胞培養物との間のコピー数変動を比較し、図5に示すように、各世代の肺がん固形腫瘍の初代細胞培養物(P1、P2、P3、P4)は原発肺がん腫瘍組織(Tumor)のコピー数変動状況と非常に一致し、そのため本方法により得られた肺がん固形腫瘍の初代細胞は患者の原発腫瘍の真実の状況を表すことができる。
【0138】
実施例12
異なる初代細胞培地で肺がん固形腫瘍の初代細胞を培養する成功率の比較
本実施例におけるすべてのサンプル初代培養の操作方法のプロセスはいずれも完全に一致し(前文を参照)、培地組成のみが異なる。テストした各種の初代細胞培地を表18に示す。そのうちプランDは本発明に採用する組成であり、具体的には表8(そのうち、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は40ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は20ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は20ng/mLであり、コルチゾールの最終濃度は20ng/mLであり、Y-27632の最終濃度は5μMである)に示す。
【0139】
【0140】
初代細胞培地の調製が完了した後、0.22μMの針フィルター(Millipore SLGP033RS)で濾過滅菌し、4 ℃で二週間保存できる。
【0141】
4種類の初代細胞培地プランによってそれぞれ20例の肺がん固形腫瘍組織サンプルを処理し、実施例3、4、5に記載の方法でサンプル処理および培養操作を行い、10日間培養した後に肺がん固形腫瘍の初代細胞培養の成功率を統計して表19に示す:
【0142】
【0143】
これから分かるように、初代細胞培地は肺がん固形腫瘍の初代細胞の培養成功率に対する影響が極めて大きく、本発明が使用する肺がん固形腫瘍の初代細胞培地(表8)は肺がん固形腫瘍組織サンプルにおけるがん細胞の増殖を最大限に刺激することができ、肺がん固形腫瘍の初代細胞の培養成功率を向上させる。
【0144】
実施例13
異なるサンプル保存液で肺がん固形腫瘍の初代細胞を培養する成功率の比較
本実施例におけるすべてのサンプル初代培養の操作方法のプロセスはいずれも完全に一致し(前文を参照)、サンプル保存液の組成のみが相違している。テストを行った各種のサンプル保存液を表20に示す。そのうち、プランEは本発明に採用した組成であり、具体的に表1に示す。
【0145】
【0146】
上記表における各種のサンプル保存液の調製が完了した後、15mL遠心管を用いて分注し、各管は5mLである。分注した後4 ℃で1ヶ月保存することができる。
【0147】
5種類のサンプル保存液プランはそれぞれ20例の肺がん固形腫瘍組織サンプルを処理し、サンプルが離体した後にサンプル保存液において4 ℃で一時保存し、離体してから2時間後に、実施例3、4、5に記載の方法でサンプル処理および培養操作を行い、10日間培養した後に肺がん固形腫瘍の初代細胞培養の成功率を統計して表21に示す:
【0148】
【0149】
以上から分かるように、サンプル保存液の組成は肺がん固形腫瘍の初代細胞培養の成功率に大きな影響を与え、本発明に用いるサンプル保存液(表1)は肺がん固形腫瘍組織サンプルにおけるがん細胞の活性を最大限に保護することができ、培養の成功率を向上させる。
【0150】
実施例14
異なるサンプル解離液で肺がん固形腫瘍の初代細胞を培養する成功率の比較
本実施例におけるすべてのサンプル初代培養の操作方法のプロセスはいずれも完全に一致し(前文を参照)、サンプル解離液の組成のみが相違している。テストを行った各種のサンプル解離液を表22に示す。そのうち、プランDは本発明に採用した組成であり、具体的には表3に示す。
【0151】
サンプル解離液は使用する直前に調製する。
【0152】
20例の肺がん固形腫瘍組織塊の重量が100mgを超えるサンプルを選択し、平均して四つに分け、それぞれ上記4種類のサンプル解離液を用い、実施例3、4、5に記載の方法に従ってサンプル処理および培養操作を行った。10日間培養した後に肺がん固形腫瘍の初代細胞培養の成功率を以下の表23に示す:
【0153】
【0154】
以上から分かるように、サンプル解離液の組成は肺がん固形腫瘍の初代細胞培養の成功率に対して大きな影響を与え、本発明に用いるサンプル解離液(表3)は肺がん固形腫瘍組織におけるがん細胞を最大限に分離することができ、肺がん固形腫瘍の初代細胞培養の成功率を向上させる。
【0155】
実施例15
異なる細胞消化液の肺がん固形腫瘍の初代細胞の継代成功率の比較
本実施例におけるすべてのサンプル初代細胞の継代操作方法のプロセスはいずれも完全に一致し(前文を参照)、細胞消化液組成のみが相違している。テストを行った各種の細胞消化液を表24に示す。そのうち、プランDは本発明に採用した組成であり、具体的には、表6を参照。
【0156】
細胞消化液は使用する直前に調製する。
【0157】
20例の培養成功した肺がん固形腫瘍組織サンプルを選択し、培養して得られた肺がん固形腫瘍の初代細胞に対して、それぞれ上記4種類の細胞消化液を用い、実施例6に記載の方法に基づいて連続継代の操作を行った。がん細胞が増殖して直径100μmの細胞塊を形成するたびに継代を行い(10回以下)、最大継代数が記録された。統計結果を表25に示す:
【0158】
【0159】
これから分かるように、細胞消化液の組成は肺がん固形腫瘍の初代細胞継代の成功率に対して大きな影響を与え、本発明が使用する細胞消化液(表6)は細胞塊におけるがん細胞を穏やかに解離することができ、サンプルを連続的に継代させて肺がん固形腫瘍の初代細胞活性を保持することができる。
【0160】
実施例16
穿刺微量サンプルを用いて肺がん初代腫瘍細胞の培養を行う
本実施例におけるすべてのサンプル初代培養の操作方法のプロセスは肺がん固形腫瘍の初代細胞培養方法と完全に一致し(前文を参照)、サンプル由来のみが相違しており、いずれも穿刺サンプルが二本であった(表26)。
【0161】
【0162】
表26から、穿刺で得られた微量サンプルは依然として高い成功率で肺がん初代細胞培養を行うことができることが分かる。
【0163】
実施例17
肺がん胸水初代腫瘍細胞を培養するための試薬の調製
【0164】
1.細胞分離緩衝液(100mL)
細胞分離緩衝液(100mL)の具体的な組成は表27に示す:
【0165】
細胞分離緩衝液を調製し終わったら、4 ℃で1ヶ月保存することができる。
【0166】
表27において、ヘパリンナトリウム溶液の調製を表28に示す。
1000×ヘパリンナトリウム溶液は使用する直前に調製する。
【0167】
2.細胞消化液(10mL)
細胞消化液(10mL)の具体的な組成を表6に示す(肺がん固形腫瘍の初代細胞培養に用いた細胞消化液の組成と同じ)。
【0168】
3.消化停止液(100mL)
消化停止液(100mL)の具体的な組成を表7に示す(肺がん固形腫瘍の初代細胞培養に用いた消化停止液の組成と同じ)。
【0169】
4.肺がん胸水初代腫瘍細胞培地(100mL)
肺がん胸水の初代腫瘍細胞培地(100mL)の具体的な組成を表8に示す(肺がん固形腫瘍の初代細胞培養に用いた肺がん固形腫瘍の初代細胞培地の組成と同じ)。
【0170】
5.細胞凍結保存
細胞凍結保存液の具体的な組成は表15に示すとおりである(肺がん固形腫瘍の初代細胞培養に用いる細胞凍結保存液の組成と同じ)。
【0171】
実施例18
肺がん胸水サンプルの取得
1、三甲病院と協力し、協力の展開は正規の医学倫理審査を通過した。
2、主治医は医学ガイドラインに規定される臨床徴候に基づいてグループ入りの患者を選択し、且つ術中臨床徴候に基づいて適切なサンプルを選択してインビトロ培養に用い、サンプルの選択基準は以下のとおりである:原発性肺がんであって、病理学的ステージはステージIVであり、病理学的タイプは非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんであり、患者は悪性胸水を排出する必要があり、排出量は50mL以上である。
3、主治医は、患者の性別、年齢、病歴、家族歴、喫煙歴、病理学的ステージタイプ、臨床診断などの基本的臨床情報を提供する。患者の氏名、身分証明書番号などの患者のプライバシーに関連する情報を隠し、統一された実験番号で代替し、実験番号の命名原則は収集したサンプルの8桁の日付+患者の入院番号の下4桁である。例えば、2018年1月1日に提供されたサンプルの場合、患者の入院番号がT001512765であり、サンプルの実験番号が201801012765である。
4、胸水サンプルは、無菌の器具および容器を用いて主治医によって採取される。サンプルが離体した後に氷上で一時保存し、72時間以内で実験室に輸送し次の操作をする。
【0172】
実施例19
肺がん胸水サンプルの前処理
下記実施例は氷上で操作する必要がある:
1、肺がん胸水サンプルを氷上で約30分間静置し、サンプルの中の凝血塊および大きな不溶性固体をサンプル管の底部に沈降させるようにした。
2、上澄みを50mLの無菌遠心管に注意深く移した。
3、2000g、常温で5分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
4、細胞分離緩衝液(表27)で細胞塊を再懸濁し、常温、2000gで5分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
5、細胞分離緩衝液(表27)で細胞塊を再懸濁し、107-108個/mLの細胞濃度に調整した。
【0173】
実施例20
肺がん胸水サンプルの密度勾配遠心
1、50mL無菌遠心管で細胞懸濁液と等体積のFicoll細胞分離液(MP#50494)を採取した。
2、細胞懸濁液を細胞分離液の上層に注意深く加え、両者の間に明確な界面を形成させるようにした。
3、2000g、水平式で常温で20分間遠心分離した。
4、中間層の白い膜を新しい管に吸い取った。
5、20mLの無菌PBSで細胞ペレットを再懸濁し、1500g、常温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、肺がん胸水の初代腫瘍細胞培地(表8)で細胞ペレットを再懸濁し、顕微鏡で細胞状態を観察し、細胞の計数を行った。
【0174】
図6に示すように、肺がん胸水サンプルから分離された単一細胞懸濁液には、腫瘍細胞の他に赤血球、リンパ球、線維細胞などの各種の他の細胞が多数混じる。本方法の利点の1つは、その後の培養プロセスで、がん細胞だけが大量に増殖することができ、他の細胞の割合は徐々に減少または消失し、最終的により純度の高い肺がん初代腫瘍細胞が得られる。
【0175】
実施例21
肺がん胸水由来初代腫瘍細胞の培養
1、低接着表面を用いて肺がん胸水初代腫瘍細胞の懸濁培養を行い、6ウェルプレートを例とし、各ウェルごとに106個の細胞の密度でプレートし、37℃、5%のCO2の条件で細胞インキュベーターの中で培養する。
2、細胞状態を毎日観察し、細胞が直径100μm程度の塊を形成するまで、培地を3日ごとに交換した。
【0176】
図7に示すように、3-10日間の培養を経て、がん細胞は大量に増殖して直径が100μmの大きさの細胞塊を形成し、腫瘍細胞の総数は107を超えることができ、他のタイプの細胞数は明らかに減少してさらに消失する。本方法は大量のサンプルのテストを経て、肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞のインビトロ培養成功率は80%に達することができる。
【0177】
実施例22
肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞の継代
1、シャーレ中の細胞塊を収集し、800g、室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
2、無菌PBS溶液で細胞塊を洗浄し、800g、室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
3、細胞消化液(表6)で細胞塊を再懸濁し、37℃の条件で消化を行った。細胞塊はすべて単一細胞に消化されるまで、5分ごとに顕微鏡下で細胞塊の消化状況を観察した。
4、10倍体積の消化停止液(表7)で解離反応を停止し、細胞懸濁液を収集した。
5、800g、室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、肺がん胸水初代腫瘍細胞培地(表8)で細胞ペレットを再懸濁し、細胞をカウントした。
7、低接着表面を用いて肺がん初代細胞の培養を行い、6ウェルプレートを例とし、各ウェルごとに106個の細胞の密度でプレートし、37℃、5% のCO2の条件で細胞インキュベーターの中で培養した。
【0178】
実施例23
肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞の凍結保存
懸濁培養した肺がん胸水初代腫瘍細胞が2-3回の継代増幅を経た後、凍結保存を行うことができる。
1、シャーレ中の細胞塊を収集し、800g、室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
2、無菌PBS溶液で細胞塊を洗浄し、800g、室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
3、細胞消化液(表6)で細胞塊を再懸濁し、37℃の条件で消化を行った。細胞塊を単一細胞に消化されるまでに、5分ごとに顕微鏡下で細胞塊の消化状況を観察した。
4、10倍体積の消化停止液(表7)で反応を停止し、細胞懸濁液を収集し、細胞をカウントした。
5、800g、室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
6、細胞凍結保存液(表15)を用いて、10/mLの密度で細胞ペレットを再懸濁し、2mLの凍結管に各管に1mLの細胞懸濁液を入れ、勾配冷却ボックスで一晩凍結保存した後に液体窒素に移して長期保存した。
【0179】
実施例24
肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞の蘇生
液体窒素に保存された肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞を蘇生することができる:
1、5分前に37℃の無菌水を準備した。
2、凍結保存管を液体窒素から取り出し、37℃の無菌水中で細胞を急速に解凍した。
3、800g、室温で10分間遠心分離し、上澄みを捨てた。
4、細胞塊を肺がん胸水初代腫瘍細胞培地(表8)で細胞ペレットを再懸濁し、低接着表面を用いて肺がん固形腫瘍の初代細胞を培養し、各管の細胞を3.5cmシャーレに蘇生し、37℃、5%のCO2の条件で細胞をインキュベーターの中で培養した。
【0180】
実施例25
肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞のHE染色による同定
下記実施例に用いる試薬消耗品の説明:
HE染色キット(Beijing solarbio science & technology co.,ltd.、#G1120);
陽イオン脱落防止スライドガラス(Beijing Zhongshan Golden Bridge Biotechnology Co., Ltd.);
キシレン、メタノール、アセトン(北京化学試剤社、分析純);
中性バルサム(Beijing Yili Fine Chemicals Co., Ltd.)。
【0181】
1、肺がん胸水初代腫瘍細胞培地(表8、そのうち、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は60ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は30ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は25ng/mLであり、コルチゾールの最終濃度は40ng/mLであり、Y-27632の最終濃度は15μMである)で培養して得られた懸濁肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞を、濃度が104/mLの細胞懸濁液に作り、10μLを陽イオン脱落防止スライドガラスに滴下し、自然乾燥させた。
2、空気乾燥した細胞に、50μLの4 ℃で予冷したメタノール/アセトン混合物(体積比1:1)を注意深く滴下し、続いて、スライドガラスを4 ℃の冷蔵庫に入れて10分間固定した。
3、細胞を固定するスライドガラスを取り出し、室温で自然乾燥した。
4、200μLのPBSでスライドガラスを二回洗浄した。
5、スライドガラスの水分が少し乾燥した時に、100μLのヘマトキシリン染色液を加えて1分間染色した。
6、ヘマトキシリン染色液を吸い取り、200μLの水道水で3回スライドガラスを洗浄した。
7、100μLの分化液を滴下して1分間分化させた。
8、分化液を吸い取り、順に水道水でスライドガラスを2回洗浄し、蒸留水でスライドガラスを1回洗浄した。
9、スライドガラス表面の水分を吸い取り、200μLのエオシン染色液を滴下して40秒間染色した。
10、エオシン染色液を吸い取り、順に75%、80%、90%、100%のエタノールで20秒、20秒、40秒、40秒すすぎ脱水した。
11、エタノールが乾燥した後、50μLのキシレンを滴下して細胞透過化を行った。
12、キシレンが完全に乾燥した後、中性バルサムを一滴滴下し、カバーガラスでシールし、顕微鏡で観察且つ撮影した。
【0182】
図8はインビトロで培養して得られた肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞HE染色効果図を示し、これらの細胞は一般的に核細胞質比が高く、核が深く染まり、核内クロマチン凝集、多核、細胞サイズが不均一などのがん細胞の特徴を有することが分かる。
【0183】
実施例26
肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞の免疫蛍光染色による同定
下記実施例に用いられる試薬説明:
パラホルムアルデヒド(北京化学試薬社、分析純)、超純水でパラホルムアルデヒド粉末を溶解し、4%のパラホルムアルデヒド溶液を作る;
メタノール、ジメチルスルホキシド(北京化学試薬社、分析純)
オキシドール(北京化学試薬社、35%)
メタノール、ジメチルスルホキシド、35%のオキシドールを4:4:1の割合で混合してダンのすすぎ液を作る;
ウシ血清アルブミン(Sigma、#A1933)、PBS溶液でウシ血清アルブミンを溶解し、3%のBSA溶液を作る;
免疫蛍光一次抗体(Abcam、#ab17139)
免疫蛍光二次抗体(CST、4408)
ヘキスト染色液(Beijing solarbio science & technology co.,ltd.、#C0021)
【0184】
以下のステップに従って肺がん胸水初代腫瘍細胞培地(表8、そのうち、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は60ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は30ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は25ng/mLであり、コルチゾールの最終濃度は40ng/mLであり、Y-27632の最終濃度は15μMである)で培養して得られた肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞塊に対して免疫蛍光染色を行い、一次抗体はCK8+CK18であり、上皮由来の細胞を特徴付ける。
【0185】
1、シャーレ内の胸水由来初代腫瘍細胞塊を収集し、PBSで一回洗浄した後、4%のパラホルムアルデヒドで細胞ペレットを再懸濁し、4 ℃で一晩固定した。
2、800gで遠心分離して上澄みを捨て、予め冷却したメタノール溶液で細胞ペレットを再懸濁し、氷上で1時間放置した。
3、800gで遠心分離して上澄みを捨て、ダンのすすぎ液で細胞ペレットを再懸濁し、室温で2時間放置した。
4、800gで遠心分離して上澄みを捨て、順に75%、50%、25%のPBS希釈メタノール溶液で細胞を洗浄し、毎回10分間であった。
5、800gで遠心分離して上澄みを捨て、3%のBSA溶液で細胞ペレットを懸濁し、室温で2時間ブロッキングした。
6、1:500の割合で、3%のBSA溶液で一次抗体を希釈し、抗体希釈液で細胞ペレットを再懸濁し、一次抗体により4 ℃で一晩インキュベートした。
7、800gで遠心分離して上澄みを捨て、PBS溶液で細胞ペレットを5回洗浄し、毎回20分間であった。
8、1:2000の割合で、3%のBSA溶液で二次抗体を希釈し、抗体希釈液を用いて細胞ペレットを再懸濁し、二次抗体により室温で2時間インキュベートした。
9、800gで遠心分離して上澄みを捨て、PBS溶液で細胞ペレットを5回洗浄し、毎回20分間であった。
10、1/10の体積比で100×ヘキスト染色液を加え、室温で20分間染色した。
11、PBS溶液を用いて細胞塊を2回洗浄し、毎回10分間であった。レーザー共焦点顕微鏡を用いて細胞塊の染色状況を観察した。
【0186】
図9はインビトロで培養した肺がん胸水由来初代腫瘍細胞塊の免疫蛍光染色の効果図を示し、細胞塊を組成する細胞はすべてCK8/CK18陽性であり、上皮由来であることが分かり、本方法で培養して得られたのは純度が比較的高い腫瘍細胞であることを証明した。20個の肺がん胸水初代培養物に対して免疫蛍光染色同定を行い、統計結果は本方法によって得られた肺がん胸水由来初代腫瘍細胞において、腫瘍細胞の割合が75%-95%に達することを示す(表29)。
【0187】
【0188】
実施例27
肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞培養物と原発腫瘍組織
下記実施例で言及されるDNA抽出プロセスは、TIANGEN血液/組織/細胞ゲノム抽出キット(DP304)を用いて実施された。
以下の実施例で言及されるライブラリ構築プロセスはNEB DNAシークエンシングライブラリ構築キット(E7645)を用いて行った。
以下実施例で言及されるハイスループットシークエンシングは、Illumina HiSeq X-tenシーケンシングプラットフォームを指す。
【0189】
1、肺がん胸水サンプルを取得し、インビトロ培養操作を行う前に、まず20mLの肺がん胸水サンプルを取得して遠心を行い、胸水細胞ペレットを取得してDNAを抽出し、ライブラリ構築および全ゲノムハイスループットシークエンシング(WGS)を行い、シークエンシング深さが30Xであり、残りの肺がん胸水サンプルを肺がん胸水初代腫瘍細胞のインビトロ培養に用いた(具体的な方法は前記実施例を参照して行う)。
2、肺がん胸水サンプルを処理した後に肺がん胸水初代腫瘍細胞培地(表8、そのうち、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は60ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は30ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は25ng/mLであり、コルチゾールの最終濃度は40ng/mLであり、Y-27632の最終濃度は15μMである)で一定時間培養して、形成した直径100μm以上の細胞塊をP0世代細胞と表記し、その後継代の回数に応じて順にP1、P2、…、Pnと表記した。P1、P2、P3、P4、P5世代の肺がん胸水由来初代腫瘍細胞培養物からそれぞれ106個の細胞を取り、DNAを抽出し、ライブラリ構築および全ゲノムハイスループットシーケンシング(WGS)を行い、シーケンシング深さが30Xであった。
3、各グループのシークエンシング結果はそれぞれコピー数変動解析(CNV)を行い、肺がん胸水におけるがん細胞と各世代の肺がん胸水の初代細胞培養物との間のコピー数変動を比較し、図10に示すように、各世代の肺がん胸水の初代細胞培養物(P1、P2、P3、P4、P5)は肺がん胸水におけるがん細胞のコピー数変動状況と非常に一致し、そのため本方法により得られた肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞は患者胸水におけるがん細胞の真実の状況を表すことができる。
【0190】
実施例28
異なる初代細胞培地で肺がん胸水由来の初代腫瘍細胞を培養する成功率の比較
本実施例におけるすべてのサンプル初代培養の操作方法のプロセスはいずれも完全に一致し(前文を参照)、培地組成のみが相違している。テストした各種の初代細胞培地を表30に示す。そのうちプランDは本発明に採用した組成であり、具体的には表8(そのうち、ヒト組換えタンパク質EGFの最終濃度は60ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質bFGFの最終濃度は30ng/mLであり、ヒト組換えタンパク質MSPの最終濃度は25ng/mLであり、コルチゾールの最終濃度は40ng/mLであり、Y-27632の最終濃度は15μMであった))に示す。
【0191】
【0192】
初代細胞培地の調製が完了した後、0.22μMの針フィルター(Millipore SLGP033RS)で濾過滅菌し、4 ℃で二週間保存することができる。
【0193】
4種類の初代細胞培地プランでそれぞれ20例の肺がん胸水サンプルを処理し、実施例19、4、21に記載の方法でサンプル処理および培養操作を行い、10日間培養した後に肺がん胸水の初代細胞培養の成功率を統計して表31に示す。
【0194】
【0195】
これから分かるように、初代細胞培地は肺がん胸水初代細胞の培養成功率に対する影響が極めて大きく、本発明が使用する肺がん胸水の初代腫瘍細胞培地(表8)は肺がん胸水サンプルにおけるがん細胞の増殖を最大限に刺激することができ、肺がん胸水の初代腫瘍細胞培養の成功率を向上させる。
【0196】
実施例29
異なる細胞消化液による肺がん胸水初代腫瘍細胞の継代成功率の比較
本実施例におけるすべてのサンプル初代細胞の継代操作方法のプロセスはいずれも完全に一致し(前文を参照)、細胞消化液組成のみが相違している。テストを行った各種の細胞消化物を表32に示す。そのうち、プランDは本発明に採用した組成であり、具体的には、表6を参照。
【0197】
細胞消化液は使用する直前に調製する。
【0198】
20例の培養が成功した肺がん胸水サンプルを選択し、培養して得られた肺がん胸水初代腫瘍細胞に対して、それぞれ上記4種類の細胞消化液を用い、実施例22に記載の方法に基づいて連続的に継代操作を行った。がん細胞が増殖して直径100μmの細胞塊を形成するたびに継代を行い(10回以下)、最大継代数が記録された。統計結果を表33に示す:
【0199】
【0200】
以上から分かるように、細胞消化液の組成は肺がん胸水初代腫瘍細胞の継代成功率に大きな影響を与え、本発明に使用した細胞消化液(表6)は細胞塊におけるがん細胞を穏やかに解離することができ、サンプルを連続的に継代させて肺がん胸水初代腫瘍細胞の活性を保持することができる。
【0201】
実施例30
異なる材質の細胞培養消耗材を用いて肺がん胸水初代腫瘍細胞の培養を行う
本実施例における全てのサンプル初代培養の操作方法のプロセスはいずれも完全に一致し(前文を参照)、細胞培養消耗材材質(修飾してない)のみが相違している(表34)。
【0202】
【0203】
表34から、異なる材質の培養消耗材は肺がん胸水初代腫瘍細胞の培養成功率に一定の影響を有し、そのうち低接着表面(LAS)の培養成功率が最も高いことが分かる。
【0204】
実施例31
CYTOPで修飾された細胞培養消耗材を用いて肺がん胸水初代腫瘍細胞培養を行う
本実施例におけるすべてのサンプル初代培養の操作方法のプロセスはいずれも完全に一致し(前文を参照)、CYTOPの修飾方法はいずれも完全に一致し、細胞培養消耗材の材質のみが相違している(表35)。
【0205】
なお、CYTOP修飾の方法は以下のとおりである:まず細胞培養容器に対して純酸素エッチングを行い、エッチング条件は出力20Wであり、エッチング時間は3分間である。続いて適量(96ウェルプレートを例とし、各ウェルが20μLであり、適量はシャーレの底部を完全に覆うことを指す)の1%のCYTOP溶液(組成は表36を参照)でシャーレまたは培養プレートの表面を覆い、CYTOP溶液が完全に乾燥した後に使用できる。
【0206】
【0207】
表35から、CYTOP修飾は各種の材料の培養成功率を効果的に向上させることができることが分かる。
【0208】
【0209】
1%のCYTOP溶液の調製が完了した後、常温で長期保存することができる。
【0210】
実施例32
肺がん胸水初代腫瘍細胞を用いて薬物感受性テストを行う
本実施例で用いられる化学療法薬物Taxol、Pemetrexed、Cis-platinはいずれもSelleck製である。
本実施例に記載のCelltiter-Glo細胞活性の検出キットはPromega製である。
【0211】
本発明で培養して得られた肺がん胸水の初代腫瘍細胞を用いてインビトロ薬物感受性テストを行った。標準サイズの96ウェル低接着細胞培養プレートを用いて、105/ウェルの密度で初代細胞を接種し、各薬物について5つの薬物濃度勾配を設定し、n=3とした。投与後、細胞を37℃、5%のCO2で7日間インキュベートした。薬物の効果が終わった後、Celltiter-Glo細胞活性検出キットを用いて各ウェルの細胞活性を検出した。実験結果を図11に示す。該結果は、本方法で得られた肺がん胸水初代腫瘍細胞がインビトロ薬物感受性検出に用いることができることを示した。
【0212】
実施例33
マイクロプレートチップの加工
本実施例において射出成形加工の方法によって、PMMA材料(またはPS、PC、COC、COP、LASなどの材料)で加工して本発明の肺がん初代細胞を培養するために用いられるマイクロプレートチップを得た。該チップは肺がん初代細胞培養およびインビトロ薬感受性検出実験に用いることができる。マイクロプレートチップの設計図面を図12に示す。
【0213】
実際の使用プロセスにおいて、具体的にはPMMA材料(またはPS、PC、COC、COP、LASなどの材料)を用いて、設計図面が図12に示すようなマイクロプレートチップの構造を製造し、続いて上記CYTOP修飾方法(実施例31を参照)によりその表面にCYTOP修飾を行い、ここでいう肺がん初代細胞培養に用いることができるマイクロプレートチップを得た。
【0214】
実施例34
各種の病理タイプの肺がんサンプルの初代細胞培養
前記の方法を用いて非小細胞肺がん腺がん、非小細胞肺がん扁平上皮がんおよび小細胞肺がんの手術サンプル、穿刺サンプルおよび胸水サンプルに対して初代細胞培養を行い、培養状況は表37のとおりである。
【0215】
【0216】
表37から分かるように、各種の病理タイプの各種類の肺がんサンプルはいずれも比較的高い成功率で肺がん初代細胞培養を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明は新鮮な肺がん固形腫瘍組織または肺がん胸水から肺がん初代腫瘍細胞を抽出し培養する方法およびキットを提供し、該方法は以下の利点を有する:肺がん固形腫瘍組織に対して、組織サンプルの用量が少なく、約20mgの肺がん手術サンプルだけが必要とする。肺がん胸水にとって、サンプルの取得が容易であり、肺がん患者の通常治療プロセスで排出された胸水を最大限に利用し、患者に対して余分な外傷および痛みがない;サンプルの用量が少なく、約50mLの肺がん胸水サンプルだけが必要とする;サンプルを採取した後に直ちに処理する必要がなく、サンプルが離体した後の72時間内に本方法に基づいて処理して90%以上の細胞生存率を確保することができる。培養サイクルが短く、3-10日だけで、107桁の肺がん初代腫瘍細胞を得ることができる。培養安定性が高く、本方法を用いて合格の肺がん手術標本に対してインビトロ培養を行う成功率が70%-80%に達する。細胞の純度が高く、本方法を利用して得られた肺がん初代細胞培養物において、がん細胞の割合は70%-95%に達することができ、雑細胞の干渉が少ない。本発明の方法により得られた肺がん初代細胞培養物は複数の細胞レベルのインビトロ実験、二世代シークエンシング、動物モデルの構築、細胞系の構築などに用いることができる。この培養方法は肺がんの研究および臨床診断治療分野に広い使用の将来性を有することが予想される。
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