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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
   B02C 13/20 20060101AFI20240627BHJP
   B02C 13/28 20060101ALI20240627BHJP
   B02C 13/282 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
B02C13/20
B02C13/28
B02C13/282
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022531618
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020063441
(87)【国際公開番号】W WO2021104683
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】19212628.2
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516082523
【氏名又は名称】ペーエムエス ハンデルスコントア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PMS Handelskontor GmbH
【住所又は居所原語表記】Abteistr. 1, D-20149 Hamburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス シャーフェ
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530097(JP,A)
【文献】国際公開第2013/167398(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110505921(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107913768(CN,A)
【文献】特開昭50-156061(JP,A)
【文献】米国特許第04245999(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 13/00 - 13/31
18/00 - 18/38
9/00 - 11/08
19/00 - 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる密度および/または濃度の複数の材料から成る材料複合体を機械的に粉砕するための粉砕装置(10)であって、粉砕チャンバ(14)を有しており、前記粉砕チャンバは、前記粉砕チャンバ(14)の上方における供給手段(12)を備えた供給側と、排出側とを有しており、前記粉砕チャンバ(14)は、円筒形の粉砕チャンバ壁(42)によって包囲されており、かつ前記円筒形の粉砕チャンバ壁(42)における軸方向に連続する少なくとも2つの区分を有しており、該2つの区分には、内部にそれぞれ1つのロータ(26,28,30)が前記粉砕チャンバ(14)に対して同軸的に配置されており、前記ロータはそれぞれ、ロータ軸(25,27,29)と、少なくとも運転中は実質的に半径方向に前記粉砕チャンバ(14)内へ延びる打撃工具(38)とを有しており、少なくとも2つの連続する区分において、前記ロータ(26,28,30)は、互いに逆方向の回転方向を有しており、前記粉砕チャンバ壁(42)の内面には変向リブ(46,48)が配置されている、粉砕装置(10)において、
少なくとも1つの粉塵出口(70,72,74)が、前記粉砕チャンバ壁(42)に配置されており、前記粉塵出口(70,72,74)は、前記粉砕チャンバ(14)内で発生した粒子/空気混合物を排出するための空気流装置(84)に接続されており、前記空気流装置(84)は、前記粉砕チャンバ(14)から前記粒子/空気混合物を搬送するための少なくとも1つのファンを有しており、前記粉塵出口(70,72,74)は、前記粉砕チャンバ(14)の周囲において、上方の区分の下側に、かつ下方の区分の下側に配置されており、前記粉塵出口(70,72,74)は、前記空気流装置(84)に通路(76,82)を介して接続されており、前記通路(76,82)の少なくとも一部分は、上方に向かって延在しており、前記通路(76)のそれぞれには、遮断弁(78)が、対応する前記粉塵出口(70,72,74)を閉鎖するように配置されていることを特徴とする、粉砕装置(10)。
【請求項2】
前記粉塵出口(70,72,74)は、格子(88)によってカバーされている、請求項1記載の粉砕装置。
【請求項3】
入口漏斗(11)が供給手段(12)の上方に配置されていて、前記入口漏斗と前記供給手段(12)との間には、調節可能なサイズ(d)の入口領域が形成される、請求項1または2記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記入口漏斗(11)は、軸方向に移動可能であるように、前記粉砕チャンバの中心軸線と同軸的に配置されている、請求項記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記打撃工具(38)は、複数の平面内に、互いにずらされて配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの連続する区分において、前記ロータ(26,28,30)は、ロータケーシング(34)を有しており、前記ロータケーシングの半径は、前記粉砕チャンバの軸方向長さにわたって一定に保たれている、請求項1からまでのいずれか1項記載の粉砕装置。
【請求項7】
各ロータ(26,28,30)は、他のロータとは独立的に制御可能な専用の駆動装置を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の粉砕装置。
【請求項8】
各ロータ(26,28,30)は、前記打撃工具(38)を取り外し可能に固定するための固定装置(36)を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の粉砕装置。
【請求項9】
材料の供給方向において下流のロータ(28,30)は、その上流に配置された前記ロータ(26,28)よりも多くの打撃工具を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の粉砕装置。
【請求項10】
軸方向または斜めに延在する変向リブ(46)が、前記粉砕チャンバ壁に配置されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の粉砕装置。
【請求項11】
前記変向リブ(46,48)は、前記粉砕チャンバ壁(42)の内面に周方向かつ/または垂直方向に配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の粉砕装置。
【請求項12】
前記供給手段(12)は、前記ロータ(26,28,30)の中央の領域をカバーする供給コーンを有している、請求項1から11までのいずれか1項記載の粉砕装置。
【請求項13】
前記供給コーンは、調節可能な幅(d)のフィードギャップを提供する調節システム(13)を介して入口漏斗(11)と協働する、請求項12記載の粉砕装置。
【請求項14】
少なくとも1つの粉塵出口(96)は、前記粉砕チャンバ(14)のチャンバ底部(93)に通じている材料出口(92)に配置されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に金属、鉱石中の鉱物質化合物(鉱業分野において)、金属を含有する工業スラグ、廃棄物熱利用の金属含有スラグ、およびその他の材料複合体のための粉砕装置もしくは剥離装置に関する。鉱石中には、よく知られているように種々様々な金属や鉱物質化合物が存在しており、これらは今日の従来技術では、非常に手間をかけなければ相応の鉱石から分離させることができない。
【0002】
金属の効率的な取り出しは、鉱石中に存在するすべての材料を完全に剥離もしくは分離させることにより、大幅に簡略化される。金属の製錬プロセスにおいて、溶融過程のため、溶融された金属(例えばFeおよびCu)がスラグ中に侵入することは回避できず、このような金属の回収も困難である。
【0003】
廃棄物熱利用のスラグおよび灰、ならびに金属生産のスラグ中には、大量の鉄および非鉄金属が、鉱物スラグに結合された純粋な形態で、または著しくスケーリングされて存在している。これらの金属が、その化合物/スケーリングから放出または分離され、次いで磁石または非鉄金属分離器によって材料流から分離することができる場合にしか、材料複合体から効率的にこのような金属を回収することができない。
【0004】
従来技術では、このようなスラグは慣用のハンマーミルやインパクトミルによって細かく砕かれ、次いで磁石や非鉄金属分離装置に供給される。
【0005】
ハンマーミルやインパクトミルを用いると、20mmを上回る粒径を有する金属の分離および回収は可能でありかつ効率的でもある。このようなミルを用いて行われる比較的小さな金属粒子の放出に関しては、例えば20mm未満の極めて小さなギャップ間隔を設定する必要があり、これにより衝撃破砕を行わずにミル破砕が大幅に増大される。前記したミル粉砕の結果、軟質の非鉄金属は、もはや非鉄金属分離装置を使用しては分離できないほど粉砕されてしまう。したがって、従来技術の形態の粉砕装置によっては、限られた範囲で、純粋な形態でスラグ中に存在している小さな金属粒子しか回収することができない。
【0006】
欧州特許出願公開第2529835号明細書は、請求項1の上位概念の特徴を有する破砕装置を示している。
【0007】
そこで本発明の課題は、スラグや鉱石中に結合された純粋な金属粒子および鉱物質化合物の機械的な放出および/または細断および/または分離をすることができる粉砕装置を提供することにある。さらに、本発明は、異なる密度および/または濃度の複数の材料から成る材料複合体にも適用可能であることが望ましい。
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する粉砕装置により解決される。本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明による粉砕および/または分離装置は、供給側と出口側とを備えた自体公知の粉砕チャンバを有している。この粉砕チャンバは好ましくは、一般に鉛直方向に向けられた好適には筒状の、特に円弧状の粉砕チャンバ壁によって包囲されており、この場合、供給側が上方に、かつ出口側が下方または側方に位置している。しかしながら基本的に、水平方向の空気流を利用して、極めて小さな材料複合体だけを処理するために設備が使用される場合には、軸線を水平に配置することも可能である。それ以外は、鉛直方向の配置形式で、材料は上方から下方に向かって重力に従って、専用の駆動機械を有するファンロータによって供給される。本発明による粉砕装置は、材料複合体を分離させるために使用することができるが、複合体を粉砕するためだけに使用することもできる。
【0010】
粉砕チャンバは、筒軸線の方向に連続する少なくとも2つ、好適には3つの区分を有している。これらの区分にはそれぞれ、粉砕チャンバに対して中心にまたは同心的に配置された少なくとも1つのロータが存在しており、各ロータには、少なくとも粉砕装置の運転中は、粉砕チャンバ内へ半径方向に延びる複数の打撃工具が配置されている。打撃工具としてチェーンまたは可動の打撃工具が使用されるべき場合には、ロータが相応の回転速度で回転する場合にのみ、打撃工具は粉砕チャンバ内へ半径方向に延びることになる。打撃工具は、場合によっては、後で説明する粉砕チャンバ壁に設けられた自体公知の衝突バーとの関連においてさらに詳しく説明する方式で、材料複合体の破砕に役立つ。
【0011】
供給側には、供給手段、例えばフィードコーンが配置されており、このフィードコーンは、好ましくは粉砕チャンバを介してロータ軸をカバーしているので、好ましくは打撃工具の作用範囲内のみにおいて均一な材料供給が得られ、このことは良好な分離結果を得るために重要である。
【0012】
連続する少なくとも2つの、好適にはすべての区分におけるロータの回転方向は、それぞれ逆の方向であり、これにより、分離されるべき粒子と打撃工具との間に高い崩壊速度が生じる。それというのも、このようにして、ロータの打撃工具により加速させられた粒子が、材料流れ方向に見て後続のロータにおいて、逆方向に回転している打撃工具に正面衝突することが達成されるからである。つまり、この衝突エネルギは、粒子速度と打撃工具の速度とが加算されたものである。これにより、後続の打撃工具または粉砕チャンバ壁に設けられた衝突バーに対する、材料粒子の極度に高い衝突エネルギが得られ、このことは、材料複合体の内部に異なる密度および/または濃度、例えば弾性の複数の材料が存在する限りは、材料複合体の破砕をもたらすことになる。最終的にロータの回転速度は、本発明では粉砕チャンバの供給側の区分と出口側の区分との間で異なっていてよい。このようにして、材料複合体の衝突エネルギは、出口側に向かって粒子密度が高まる領域において増大可能である、ということが達成される。それというのも、そこではロータの回転速度、ひいては打撃工具の絶対速度もまた高まっているからである。
【0013】
好ましくは軸方向および/または周方向に間隔を置いて、複数の変向リブが粉砕チャンバ壁の内面に環状にまたは垂直方向に(衝突バー)配置されており、かつ/または粉砕チャンバ壁の半径は、上方から下方に向かって増大しており、これにより、粒子流が打撃工具の作用範囲には到達せずに、粉砕チャンバの外壁に沿って流れる、ということがなくなる。つまり、このようなバイパス流は効果的に阻止される。これらの変向リブは、好適には少なくとも2つのロータの領域に配置されているか、または各ロータ間で粉砕チャンバ壁に配置されており、これにより、粉砕チャンバの内面に落下する材料流は、打撃工具の作用範囲内へ効果的に変向されることになる。変向リブは、好適には外側上方領域から内側下方領域に向かって延在する上縁部を有しており、これにより変向リブのガイド機能が改善されている。
【0014】
少なくとも1つの粉塵出口が、粉砕チャンバ壁にかつ/または粉砕チャンバ壁の下方に配置されていて、かつ/または材料出口に接続されていて、粉塵出口は、空気流装置に接続されている。空気流装置は、粉砕チャンバから、チャンバ壁を貫通して延在する少なくとも1つの出口を介して粒子/空気混合物を排出するために設けられている。これにより、粉砕チャンバ内で発生した粒子/空気混合物をガイドして、粉砕チャンバの外側に排出することができる。空気流装置は、粉砕チャンバから粒子/空気混合物を吸引するための少なくとも1つのファンロータを有しており、これにより好ましくは、ファンの速度を、材料複合体の最適な分離のために制御することもできる。粉砕チャンバ内の材料は、通常、打撃工具によって、多数の粉塵粒子が発生するように破砕される。このような粉塵粒子内に有益な成分が含まれている場合には、ファンを高回転数に切り換えることができ、これにより、「有益な」粉塵は沈降タンクまたはフローテーションに案内されて、さらなる処理のために捕集することができる。粉塵が、むしろ望ましくない部分であった場合には、ファンを低回転数に切り換えることができる。このようにして、材料複合体の有益な成分は、概ね完全に排出することができ、この場合、微細な粉塵は逃出するか、または粉塵捕集装置に供給可能である。さらに、従来は極めて多くの複雑な手順、例えば化学的方法によってしか可能でなかったような、材料複合体の各成分の明確な分離が達成され得る。
【0015】
粉塵出口は、例えば、粉砕チャンバ内で発生したダストが効果的に引き出されるように、直接チャンバ壁にかつ/またはチャンバ壁の下方にかつ/または粉砕装置の材料出口に配置されてよい。
【0016】
粉砕チャンバ内の過剰に多量の粉塵は、打撃工具の動作に影響を与えるので、空気流装置を介しての粉砕シリンダから粉塵を吸引することはエネルギの節約となる。したがって、本発明により、粉砕装置の改善された効率が提供される。さらに、有益な材料が、「粉塵画分」中に存在している場合があるので、粉砕チャンバからの粉塵の規定された排出および排出された粉塵のさらなる処理のオプションにより、供給材料、通常は鉱石から、すべての有益な材料を精製するためのより良好な可能性が提供される。有益な材料は、本発明の高打撃破砕において、第1段階後に、すなわち最上部のロータの下方で、既に明らかとなる場合がある。したがって、第1のロータの後で/第1のロータの下方で、既に粉塵を吸引することは、有益な材料の活用のために、例えば浮選プラント内への直接の取り扱いのために、またはさらなる処理のための搬送のためのスラリー内での取り扱いのために有利であり得る。したがって、本発明の粉砕装置は、例えば、さらなる破砕段階またはボールミルをバイパスすることにより、鉱石から有益な材料を広範囲に取り出すことができるので、多くのエネルギを節約する。
【0017】
一般に、鉱業における鉱石の破砕は、プラントの総エネルギコストの50%超を占め、世界のエネルギ消費の2%超に影響を及ぼす。したがって、本発明は、プラントのエネルギフットプリント削減のために貢献することができる。
【0018】
材料粒子はさらに、十分に細かく砕かれた後で空気流装置によって粉砕チャンバから強制的に排出されるので、比較的大きな粒子の効率的な細断を妨げることはない。他方では、小さな、粉塵を発生さえすることもある材料粒子も安全に粉砕チャンバから処理領域に送られる、ということが保証され、そこで分離器、特に遠心分離器、特にサイクロンによって空気流から分離もしくは隔離することができる。分離後には、所望の鉱石成分を得るために、例えばスラグから鉱石含有物を分離するために、所定の方法ステップ、例えば密度分離を実施することができる。
【0019】
好ましくは、粉塵出口は、ファンロータを有する空気流装置に通路を介して接続されるので、ファンロータを、粉砕チャンバから分離して配置することができる。さらに通路は、十分に破砕されていない比較的大きな材料複合体の進入を遮断するように配置されてよい。したがって、ファンロータは、比較的大きな粒子の衝突に対しても保護されている。
【0020】
したがって、好ましくは、通路の少なくとも一部分は、上方に向かって延在している。これにより、重力に基づいて比較的大きな粒子は粉砕チャンバ内へと戻されるのに対して、粉塵は、引き続き上向きの部分に沿ってファンロータおよび選択的なダスト処理および排出装置へと到る。
【0021】
本発明の好適な実施態様では、粉塵出口は格子でカバーされている。このような手段によっても、まだ破砕されていない比較的大きな材料複合体が、粉砕チャンバを離れて、粉塵出口に入ることを阻止している。
【0022】
材料複合体が既に十分に破砕されている場所に粉塵が捕集されることを保証するために、粉塵出口は、粉砕チャンバの上方部分の下側に、かつ/または下方部分の下側に配置されている。
【0023】
オプションとして、入口ホッパがフィードコーンの上方に配置されていて、これに関しては、この入口ホッパとフィードコーンとの間に入口領域が形成されており、この入口領域のサイズ(例えば、幅「d」)は好ましくは調節可能または制御することができる。これは、例えば、入口ホッパおよび/またはフィードコーンの軸線方向の調節可能性によって実施されてよい。このようにして、材料の供給は、出口領域に配置されたファンロータの制御との相互作用により、微粒子を粉砕装置内に滞留させる時間を任意に設定することができるように制御することができ、これにより、細断された材料の粒度分布を、したがって、粉砕装置の分離特性も、様々な異なる材料複合体に合わせて、極めて個別に設定することができる。入口ホッパは、供給原料をフィードコーンに供給することを可能とする、実質的に同じ結果を達成する構成により形成されてもよい。好ましくは、ファンロータの付加的な調節可能性により、粉砕チャンバ内の粒子の滞留時間、ひいては結果として生じる粒度分布を、極めて正確に調整することができる。
【0024】
入口ホッパとフィードコーンとの間には、幅「d」を有するギャップの形態の入口領域が形成される。このようにして、供給材料は粉砕チャンバの回転領域全体に均一に供給される。入口領域の面積、すなわち入口ホッパとフィードコーンとの間の距離「d」は、調節可能である。このようにして、供給される体積流量は、入口領域の幅「d」を介して簡単に制御可能である。さらに、入口ホッパとフィードコーンとの間の入口領域の幅「d」のこのような制御によって、供給される複合体の最大直径を制限することができ、このこともやはり、設備全体の効率を向上させるのに貢献する。入口領域の幅の制御を介してさらに、粉砕装置内の空気流をも制御することができる。したがって、電子制御によるファンロータの制御に関連して、目的に合わせて最適に調整された粒子流を設定することができる。この入口領域の設定は理想的には、ファンロータの個別制御と協働する。これにより、粉砕チャンバにおける粒子の滞留時間、ひいては粉砕度を設定することができ、微調整さえもできるようになっている。
【0025】
入口領域のサイズを簡単に設定するために、好適には入口ホッパはスライドさせることができるように軸方向に保持されている。この解決手段は、技術的に容易に実現することができ、かつ極めて有効である。
【0026】
入口ホッパとフィードコーンとの間に形成された入口領域は、粉砕チャンバの中心軸線を中心として少なくともほぼ同一に形成されており、これにより、粉砕チャンバの回転領域全体における一様な供給、ひいては一様な粉砕効果が保証されている。
【0027】
本発明の1つの有利な改良において、粉砕装置はファン駆動装置用の制御装置を有しており、供給側には粉塵センサが配置されており、この場合、ファン駆動装置は、粉塵センサの出力信号に応じて制御可能である。これにより、粉塵が有益な成分を含有している限り、粉塵は微粒子回収設備、例えば洗鉱室またはフローテーション室に供給される、ということが達成され得る。または、環境に配慮した構成を実現するために、粉塵を粉塵捕集装置に送ることができる。
【0028】
この場合、制御装置とファン駆動装置とが、異なる回転速度でのファンロータの運転を可能にし、回転速度は粉塵センサの出力信号に応じて制御可能であるならば有利である。粉砕チャンバ内の粒子流は、この場合、期待される可能性のある粒子画分に応じて極めて正確に調整可能である。
【0029】
本発明の1つの有利な改良において、打撃工具は、1つのロータにおいて様々なレベルで互いにずらされて配置されている。このことは、供給材料の効率的で均一な粉砕をもたらす。
【0030】
本発明の1つの有利な改良において、供給側から出口側に向かって連続している複数の区分に設けられたロータは、それぞれロータケーシングを有しており、このロータケーシングの半径は、粉砕チャンバの軸方向の長さにわたって一定に保たれている。このようにして、ロータは高速で運動する粒子流に対して保護されており、粒子流は、各ロータの領域内で規定された形式で制限されている。このようにして、好適にはロータケーシングもやはり、フィードコーンによって覆われるので、材料流が、この領域では減少させられる。
【0031】
ロータは、好適には一定の半径を有する筒形のロータケーシングを有している。すなわち:筒の半径もしくは底面積は、あらゆる区分において同じである。このようなロータケーシングは、第1に材料がロータ内に固着することを防ぐ。第2に、筒は製造が容易である。筒は、多角形の、または丸い、例えば円形の底面を有していてよい。洗浄が容易であり、材料付着が防止され、かつ摩滅が少ないという理由から、筒の円形の底面が適切である。筒の有利な多角形の底面の場合は、粒子に対してある程度の影響を与えることができる。すなわち、ロータケーシングに落下する粒子は、多角形の縁部によって、再び外側に向かって、打撃工具の作用範囲内へ運ばれる。よって、多角形の底面、例えば正方形または星形の底面は、打撃工具との改善された相互作用において高度な粉砕効率を得ようとする場合に適している。
【0032】
好適には、ロータケーシングは、ロータ保持された複数の交換可能なロータケーシング構成要素を有している。粉砕チャンバの半径方向外側の領域へ材料粒子が運ばれる際に、ロータケーシングは、ある程度の摩耗に晒されるので、ロータケーシング部材だけを交換すればよく、これは、ロータ全体を交換せねばならない場合よりも、はるかに廉価である。さらに、ロータケーシングは、ロータのさらに内側に位置する部品、例えば軸受を保護する。
【0033】
好適には、ロータケーシングには、軸方向にまたは斜めに延びる複数の保持バーが配置されており、これらの保持バーは、材料流をロータケーシングから打撃工具の作用範囲に向かって変向させる。軸方向および半径方向で粉砕チャンバ内へ延びる保持バーは、好適には少なくとも第2のロータに、もしくは材料流方向に見て最後から2番目のロータに形成されている。これらの保持バーは、材料粒子をこれらの保持バーによって運び、これらの材料粒子を半径方向外側に向かって加速させるので、この材料は、打撃工具の作用範囲内へ再び進入し、そこで効果的に破砕され得る。
【0034】
基本的に、複数のロータ用に1つの駆動機械を使用して、対応する伝動装置を介した逆の回転方向と、異なる回転速度とを提供することが可能である一方で、好適なのは、各ロータが、他のロータとは関係なく運転もしくは制御可能な専用の駆動機械を有していることである。このようにして回転速度を、放出されるべき種々様々な材料複合体に対して個別に調節することができるようになっており、このことは、すべてのロータのための単一の駆動装置によっては、より複雑な方法によってしか実現され得ない。
【0035】
好適には、打撃工具は、ロータに形成された固定装置によって、取外し可能もしくは交換可能であるので、結果として容易に交換することができる。
【0036】
好適には、固定装置は、軸方向に相互間隔を置いてロータに堅固に配置された、互いに同心的な複数のプレートを有しており、これらのプレートは、互いに同心的な複数の穴を有しており、この穴にはボルトが貫通することができ、このボルトはさらに、打撃工具の取付け部分に形成された切抜き部をも貫通する。つまり打撃工具の取付け部分は、2つのプレート間のボルトが貫通する、例えば切抜き部または穴を有していてよい。したがって、打撃工具の取付け部分は、例えば少なくとも1つのチェーン部材または穿孔部によって形成されていてよい。これにより、ロータに対する打撃工具の、容易に取外し可能な簡単な固定が可能である。
【0037】
好適には、固定装置は、軸方向に互いにずらされた、打撃工具用の少なくとも2つの受容部を有している。このようにして、打撃工具は軸方向で互いににずらされて、しかし周方向では重なり合うように、ロータに取り付けることができ、これにより高度の粉砕効率が得られる。
【0038】
好適には、打撃工具は公知のように、チェーンおよび/またはバッフルプレートによって形成されている。これらは工業的規模で製造され、安価に市販されることができる。
【0039】
本発明の1つの有利な改良において、材料の供給方向に続く少なくとも1つのロータは、その前に配置されたロータよりも多くの打撃工具を有している。これにより、複数のロータが高速で回転する下方の高エネルギ領域において、打撃工具と粒子の衝突の頻度が高められ、このことは、ほぼすべての材料複合体の破砕の工程を支援する。
【0040】
空気流装置の出口側には、例えば、洗鉱室またはサイクロンには、「有益な」粉塵を引き続き処理するために回収することができる微粒子回収設備が接続されていてよい。もちろん、粉砕装置の出口側には、例えば廃棄処理のためにまたは空気流を作るために、粉塵を捕集するために、粉塵捕集機器を接続することもできる。
【0041】
本発明の1つの有利な改良において、空気流装置、特にファンロータには、制御ガイド機構を介して、選択的に、微粒子回収設備または粉塵捕集器が接続可能であり、このことは、様々な粒子画分の個別の処理要望に応じた、材料流の簡単な制御を可能にする。この構成は、上で説明したような平らな底部によって、特に簡単に実現可能である。
【0042】
好適には、ガイド機構は、粉塵センサの信号によって制御可能である。このようにして、粉塵センサにより入口領域およびファンの両方と、粒子の排出とが制御され得る。
【0043】
好適には、粉砕チャンバ壁には、複数の衝突バーが軸方向または斜めに配置されており、これらの衝突バーに材料流が衝突して、材料流は、衝突バーによって粉砕チャンバ壁から打撃工具の影響範囲に向かって戻るように変向されるので、材料は、次いで再び打撃工具の作用範囲に到達し、そこで効果的に破砕され得る。
【0044】
粉砕チャンバ壁の半径は、一定であるか、または好適には供給側から出口側に向かって増大しており、このことは、粒子を粉砕チャンバ壁の領域に集めるのではなく、常に打撃工具の領域に戻すように落下させ、そこで粒子はさらに破砕される。基本的には、粉砕チャンバ壁の半径は減少していてもよいが、これは閉塞の危険が増大することから、場合によっては問題がある。粉砕チャンバ壁の半径が下方に向かって増大している場合、この増大は連続的または段階的に行われてよい。
【0045】
粉砕チャンバ壁は、少なくとも粉砕チャンバ壁が筒状の場合には、その周にわたって複数の変向リブを有しており、これらの変向リブにより、材料流は粉砕チャンバ壁から打撃工具の作用範囲内へ変向される。このようにして、材料複合体の分離における高い効率が得られる。変向リブに対して代替的または付加的に、粉砕チャンバの直径も、入口側(または供給側)から出口側に向かって増大していてよく、これによりやはり、結果として材料流は重力と強制空気流とによって、打撃工具の作用範囲に向かって変向される。
【0046】
すなわち、上述した技術的な特徴の組合せは、第1に、材料複合体の衝突エネルギを出口側に向かって増大させ、同時に、最終的には、粉砕チャンバから排出される手前の最後の区分において、材料複合体が高い衝突エネルギで打撃工具と衝突バーと接触すべき粒子密度をもたらし、これにより、従来技術の場合のように材料複合体が微細化されることなしに、材料複合体の分散をもたらす。つまり、材料複合体中に含まれる金属粒子の大きさは、減少されない。この場合に生じる微細な材料粒子は、付加的な空気流装置によって強制的に粉砕チャンバの出口側に向かって処理領域内へ運ばれ、処理領域において材料粒子は空気流から分離され、これにより、粉砕チャンバにおける微細な材料粒子の滞留時間が、空気流装置を介して制御され得る。このためには好適には遠心分離器、すなわちサイクロンが適している。
【0047】
よって本発明の粉砕装置は、例えば鉱石に含まれる金属や鉱物質化合物またはFeまたはスラグまたはスケールに由来する非鉄金属の、効率的な粉砕、分離もしくは放出を可能にし、これは従来技術に基づく公知の粉砕装置によってはほとんど不可能である。この場合、本発明は、粉砕チャンバ内の打撃工具および/または衝突バーに対する、放出されるべき材料複合体の衝突エネルギを、金属成分自体は処理において細かく砕くことなしに最大化する構造体を利用する。つまり、化合物中の最も小さな材料成分をも、経済的に有意に分離することができる。したがって本発明により、分離すべき材料複合体の、最高衝突エネルギが得られ、これは極小さな微細化作用においても、材料複合体の破砕および放出をもたらす。
【0048】
さらに本発明の1つの態様では、粉砕チャンバ内の多くの材料粒子の運動エネルギが可能な限り高められ、打撃工具または衝突バーとの材料粒子または材料複合体の衝突が、ある程度の衝突エネルギにおいて達成され得る。本出願人は、このような衝突エネルギが、金属成分自体を著しく破砕することなしに、材料複合体を比較的確実に破砕する、ということを発見した。
【0049】
粉砕チャンバ内での材料粒子または材料複合体の相互作用回数を増やすために、粉砕チャンバ壁に複数の衝突レールを形成することができる、または軸方向と、半径方向内側とに向かって延在する打撃工具の数を増やすことができる。材料粒子は、打撃工具によって加速された後に、これらの衝突バーに衝突して、破砕される。
【0050】
次に、3つの区分を有する粉砕チャンバに基づき本発明を説明する。しかしながら、明確にしておきたいのは、本発明は2つの区分を、または4つ以上の区分を備えていても同様に機能する点である。軸方向の粉砕チャンバの区分は、ロータの軸方向の領域に対応している。
【0051】
材料供給方向に続く各ロータには、一定数の、または異なる数の打撃工具が配置されていてよい。つまり例えば第1のロータ、すなわち第1の区分に設けられたロータの場合、打撃工具の数は、まだ比較的少なくてよい。それというのも、この区分の役割は、材料粒子を半径方向外側に向かって運ぶことにより、材料粒子を後続のロータの打撃工具の作用範囲内へ方向付けることにあるからである。この作用範囲には既に、第1のロータにおけるよりも多くの打撃工具が配置されている。さらに、保持バーが第1のロータのロータケーシングに形成されていてよく、これにより、粉砕チャンバの半径方向外側領域における材料粒子は効率的に移送される。
【0052】
オプションとして、第2のロータ、すなわち第2の区分に設けられたロータには、第1のロータにおけるよりもはるかに多くの打撃工具が配置されていてよい。これらの打撃工具の目的は、徐々に密度を増していく材料粒子を、外側と下方の出口側とに向かって加速させることである。第2のロータのロータケーシングも、複数の保持バーを、または多角形の底面を有していてよく、これにより、粒子は半径方向外側に位置する領域へ運ばれて、そこで加速チャンバに設けられた多数の打撃工具により、第3のロータに向かって激しく加速させられる。
【0053】
第3のロータ、すなわち出口の手前の第3の区分に設けられたロータには、好適にはほとんどの打撃工具が配置されており、これらの打撃工具は、激しく加速させられた材料粒子を高い確率で破砕するために用いられる。
【0054】
つまり、連続する複数の区分に、徐々に数を増やして設けられた打撃工具と、逆の回転方向に関連して連続する複数の区分において徐々に高まる回転速度とによっては、1つの区分から次の区分に移行するすべての移行領域において、衝突エネルギの最大化がもたらされ、このことは、機械による材料複合体の効率的な放出につながる。複数の個別成分に破砕された材料複合体は、粉砕チャンバから排出された後で引き続き、例えばフローテーション、風力分離器、磁気分離器等といった自体公知の分離装置または粉砕装置において、互いに分離され得る。
【0055】
粉砕チャンバにおける金属粒子の衝突エネルギの最大化を実現し、かつ打撃工具に対する金属粒子の衝突をも保証するためには、打撃工具を上方から下方に向かって、ロータごとに互いにずらして(図4参照)取り付けることが有利である、ということが判った。
【0056】
ロータ速度(回転数)は、本実施例では3つの区分の上方から下方へ、それぞれ800rpm、1200rpm、1500rpmであってよく、この場合、ロータは第1の区分と第2の区分とにおいては同一方向に回転し、第2の区分と第3の区分とにおいては互いに逆方向に回転する。よって、第3の区分(高速衝突チャンバ)の外側領域における打撃工具の絶対速度は、150m/sを上回っている。このようにして、前処理チャンバおよび加速チャンバにおける粒子の逆方向の加速に関連して、200m/sを上回る衝突速度が実現され得る。
【0057】
衝突エネルギは、打撃工具の重量と粉砕チャンバの直径とに関連するロータの回転速度に基づき算出される。換言すると、最適な破砕もしくは放出(粒径または粒度も)を得るためには、必要な衝突エネルギを達成するために、様々な回転速度がテストされる。
【0058】
このようにして、物理的に可能かつ有意な限界内で、粉砕チャンバ内で打撃工具および/または衝突バーに接触した際の金属粒子の衝突速度ひいては衝突エネルギが最大化される。
【0059】
打撃工具は、例えば独国特許第102005046207号明細書に記載されているような、自体公知の形式で設計されている。つまり打撃工具は、チェーンおよび/またはバッフルプレート、またはこれらの要素の組合せから形成されていてよい。結局のところ、打撃工具の構成は、本発明にとって重要ではない。
【0060】
好適には、打撃工具は常に水平位置に留まるように、ロータに枢着されている。したがって、打撃工具を水平位置にもたらすためには、(従来のチェーンのように)高い回転速度は必要ない。さらにこれにより、1つのロータに複数の打撃工具を互いにずらして配置することができるようになっている。なぜならば、打撃工具はもはや、機械の停止状態において垂れ下がってはおらず、工程においてからまる恐れもないからである。よって、打撃工具が粉砕チャンバの筒軸線に対して垂直軸上の平面内でしか運動することができないような、打撃工具の可動性の構造が、極めて有利である。打撃工具が少なくともほぼ不動に、ロータに取り付けられていることが想定されていてもよい。
【0061】
もちろん、本発明はスラグ中の金属粒子への適用に限定されるものではなく、異なる密度または弾性の複数の材料から成る、あらゆる種類の材料複合体にも適用可能である。
【0062】
各区分のロータがそれぞれ専用の駆動機構を有している場合、粉砕チャンバの一方の端部に配置された駆動機構を介して、互いに同心的な複数の軸を介して各ロータを別個に駆動することができる。またはこれらの駆動機構はそれぞれ、特にアウタロータモータの形態で、対応する各ロータのロータケーシングの半径方向内側に位置していてよい。本発明の好ましい実施態様では、空気流装置の作動を補助するために、ロータに対して同心的に、好ましくは別個の駆動軸に、ファンが配置されており、粉砕チャンバ内で生じる粉塵は、このファンによって材料出口の方向に導かれる。
【0063】
粉砕チャンバ壁と、打撃工具と、ロータケーシングとは、好適には金属またはセラミック金属複合材料等の、耐衝撃性の硬質の材料から成っている。ロータケーシングと粉砕チャンバ壁とには、任意に摩耗プレートが内張りされていてよい。
【0064】
以下の用語は同義語として使用される:空気流装置-エアフロー装置;ファン-ファンロータ;粉砕-破砕;変向リブ-衝突バー;粉塵出口-出口。
【0065】
以下に、本発明を、例として、概略的な図面につき説明する。図面には以下の通り示されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】3つのロータを備えた本発明の機械的な粉砕装置の第1の実施態様を示す縦断面図である。
図2】粉塵出口として機能する材料出口を備えた、図1と同様の機械的な粉砕装置の第2の実施態様を示す縦断面図である。
図3】粉砕チャンバの内部から粉砕チャンバ壁を見た細部の図である。
図4図1の3つのロータと1つのファンロータとを備えた軸を示す斜視図である。
【0067】
図1は、材料粉砕および分離装置10を示しており、この装置は、円筒状の粉砕チャンバ14の上に配置された入口ホッパ11と、フィードコーン12とを有している。入口ホッパ11とフィードコーン12との間のギャップ「d」は、好ましくは、入口ホッパ11の高さ調節システム13を使用して、粉砕チャンバの円筒軸線、通常は鉛直軸線の方向で調節することができる。高さ調節システム13は、装置コントロール15によって制御されている。両者は、粉砕装置の構成要素を損傷または摩耗させることなく、粉砕装置の動作範囲全体に対して、すなわち円筒状の粉砕チャンバに関して完全な360°のフィーダ領域に対して、制御された均質な材料の供給をもたらす。粉砕チャンバの下方には、材料排出漏斗16が位置している。入口ホッパ11、フィードコーン12、粉砕チャンバ14、および材料排出漏斗16は、互いに連通しており、好適には図面に示されていないフレーム上に配置されている。円筒状の粉砕チャンバ14の中心軸線xは、回転軸線でもあり、鉛直に延在している。
【0068】
3つの同心の軸25,27および29が粉砕チャンバの中心xに設けられており、これらの軸は、装置コントロール15によって制御される、駆動ユニット18に配置された3つの別個の駆動装置に接続されている。図4の斜視図からも特に推察することができるように、これら3つの同心の軸25,27,29は、別個の駆動機構によって駆動され、これらの駆動機構は、本例では示されていないが、自体公知であり、駆動ユニット18内に配置されている。駆動機構によっては、3つのロータ26,28および30を歯車20,22および24(図4)によって、所望の回転方向および所望の回転速度で別個に制御することができる。各ロータは円筒状のロータケーシング34を有し、このロータケーシングの直径は、3つのロータ26,28および30すべてにおいて同一である。各ロータはさらに、打撃工具38のための固定装置36を有しており、ロータ26,28および30の固定装置36には、打撃工具38が固定されている。図4の実施態様では、打撃工具38は、ロータの回転に関係なく、水平位置に、すなわちロータ軸線に対して横方向にとどまっている。図1では、打撃工具、例えば、打撃バーは、チェーン部分37によってロータ26,28,30に取り付けられている。したがって、これらの打撃工具38は、粉砕装置の静置中は垂れ下がり、ロータ26,28,30が回転すると、回転力によって駆動されて半径方向位置へと動いている。
【0069】
粉砕チャンバ14は円筒形の粉砕チャンバ壁42を有しており、粉砕チャンバ壁の、粉砕チャンバに面した内面には、粉砕チャンバ壁を保護する摩耗プレート44が取り付けられていてよい。摩耗プレート44は、好適には交換可能に、粉砕チャンバ壁に取り付けられている。さらに、粉砕チャンバ14の内壁には、好適には45度の間隔を置いて、鉛直方向に延在するように、複数の衝突バー46が配置されており、これらの衝突バーは、打撃工具38により加速させられた材料のための衝突面として働く。
【0070】
好適には、第1および第2のロータの領域の高さにおいて、全周にわたって変向リブ48が設けられており、これらの変向リブは、特に粉砕チャンバ壁42の内面に環状に配置されていて、材料流を粉砕チャンバ壁42から打撃工具38の作用範囲内へ案内するために役立つ。
【0071】
細断された材料が排出漏斗16を通って排出される間、大量の粉塵、すなわち粒子/空気混合物が、粉砕チャンバ14内側の粉砕装置10の重破砕動作中に発生する。この粉塵は、粉砕チャンバ壁42に、好ましくは粉砕チャンバ14の周囲の1つまたは複数の位置において、好ましくは異なるレベルで配置された粉塵出口70,72,74を通じて排出される。したがって、第1の粉塵出口70は、最上部のロータ26の下方に設けられている。第2の粉塵出口72は、第2のロータ28の下方に設けられていて、第3の粉塵出口74は最下部の第3のロータ30の下方に設けられている。チャンバ壁42および摩耗プレート44におけるすべての粉塵出口70,72,74は、上方に向かって傾斜した接続通路76へと開かれていて、これにより、粉砕チャンバ14から比較的重い粒子が進入することを阻止している。接続通路76が上方へ向かって延在していることにより、粉塵のみが実際に粉塵出口70,72,74を通って供給されることが保証される。選択的に、各接続通路76には、遮断弁78が、対応する粉塵出口70,72,74を閉鎖するように配置されている。遮断弁は、装置コントロール15によって制御ライン80を介して制御される。これにより、特定の材料の取り出しにおいて価値があり得る異なる粉塵画分を、粉砕チャンバの異なる部分から収集することができる。接続通路76は、捕集ダクト82に接続されていて、この捕集ダクトはさらに、空気流装置84に接続されている。空気流装置84は、粉砕チャンバ14からの粉塵を吸引するために、少なくとも1つのファン等を有している。空気流装置は、出口ダクト86に接続されていて、この出口ダクトを介して、粒子/空気混合物は、さらなる処理工程へと、またはリサイクリング/クリーニングプラント等へと導かれる。さらなる処理はまた、さらなる分離装置、例えば、重力分離装置、回転分離装置、例えばサイクロン、フロータ等を含んでいてよい。
【0072】
粉塵センサ90を、粉砕チャンバ14の入口領域にまたは粉砕チャンバ14自体に配置することができる。粉塵センサ90は、装置コントロールに接続されており、供給される材料のために最適化された、かつ/または作動中に所定レベルの粉塵を含むために、かつ粉砕装置10の入口領域からの粉塵排出を防止するために最適化された、破砕および排出動作を可能にする。粉塵センサ90の信号に応答して、装置コントロール15によって、3つの軸25,27,29の速度を制御する駆動ユニット18、空気流装置におけるファンの速度、およびフィードコーン12からの入口ホッパ11の距離dを制御することができる。
【0073】
図2は、図1と同様の粉砕装置を示している。図1の出口漏斗16を有する粉砕装置とは異なり、図2の粉砕装置9は漏斗状のチャンバ底部93を有していて、このチャンバ底部は、破砕された材料を排出するための材料出口92に通じている。材料出口92は、例えばコンベヤ手段94、例えばコンベヤベルトに接続されて設けられている。空気流装置84の捕集ダクト82は、材料出口92における粉塵出口96に接続されており、粉塵出口は、単独で、またはチャンバ壁42における粉塵出口70,72,74と組み合わせて使用されてもよい。材料出口92における粉塵出口96には、好適には、材料出口92から比較的大きな粒子が吸い込まれることを回避するために格子が設けられている。
【0074】
図3は、粉砕チャンバ14の内側から粉砕チャンバ14のチャンバ壁42の内面を見た図を示している。チャンバ壁42の内面には、摩耗プレート44が被覆されている。図1または図2の粉砕装置の粉塵出口70,72,74は、好適には変向リブ48の下方に配置されており、これにより、粗い材料は衝突バー46によって変向されて、粉塵出口70,72,74から離される。粉塵出口70,72,74は好ましくは、粗い材料の進入を阻止するために、格子88によってカバーされている。粉塵出口70,72,74は、上向きに延在する接続通路76に接続されているので、粉塵出口70,72,74に進入するいかなる粗い材料も、重力によって、粉砕チャンバ14内へ落下させられる。したがって、粒子/空気混合物中の微粒子のみが、空気流装置84によって吸引され、粉塵に含まれる粒子をさらに処理するために、出口ダクト86を介して送られる。
【0075】
図1または図2において中央に挿入されたロータ構造の斜視図を示す図4により、ロータの設計をよりよく見ることができる。
【0076】
各ロータ26,28および30の固定装置36は、好適には4つのディスク50,52,54および56を互いに同心的に有しており、これらのディスク50,52,54,56のそれぞれは、互いに整列している複数の穴を有している。これらの同心的な穴をボルト60が貫通し、これらのボルトは、打撃工具38の、ロータに面した側の内側の端部に設けられた孔を貫通して、これにより打撃工具をロータ26,28,30に固定している。しかしながら、固定装置36は別様に形成されていてもよい。
【0077】
本実施例では、各ロータ26,28および30において打撃工具38は、4つのディスク50,52,54および56の間で3つの異なる高さ位置に設置することができるようになっている。本実施例では、ロータ26,28および30は同様にも設けられているとしても、より下方に位置するロータが、打撃工具の取付けのためのより多数のオプションを有していること、もしくは例示されているように、下方のロータには、上方のロータにおけるよりも多くの打撃工具が懸架されていることが想定されていてもよい。例えば、下方のロータには、より多くの同心的なディスクが形成されていてよく、上方のロータには、より少ない同心的なディスクが形成されていてよい。いずれにせよ、高い粒子速度が優勢な下方の分離コーム領域における打撃工具の密度がより高いと有利であり、これにより設備の効率は改善される。
【0078】
本実施態様では、打撃工具として複数のバッフルプレート38が設けられており、これらのバッフルプレートは、各ロータ26,28および30の固定装置36に取り付けられている。バッフルプレートの代わりに、リンクチェーンまたは別の自体公知の打撃工具が使用されてもよい。ロータの停止状態では、打撃工具は通常垂れ下がっており、回転速度が上がるにつれて回転力により、図示の作動方向を得るまで外側に向かって押圧され、この作動方向において打撃工具は、それぞれ粉砕チャンバ42の方向でロータ26,28,30から半径方向外側を向いている。
【0079】
ロータ26,28および30を介して、粉砕および分離チャンバ内の粉砕機構を設定することができ、一方で、入口ホッパとフィードコーンとの間のギャップ「d」と、空気流装置、例えばファンまたはファン列の制御装置とを介して、粉砕チャンバ内での流れ状況、ひいては超微粒子の滞留時間も設定することができる。これにより、材料複合体に含まれる複数の成分の最適な分離を保証するために、粉砕および分離装置を、特定の材料複合体用に調整されるように制御することができる。
【0080】
以下に、材料粉砕装置の動作について簡単に説明する。
【0081】
分離されるべき材料、例えば金属含有鉱石、金属含有工業スラグ、または金属内包物を有するスラグは、制御されながら、つまり装置コントロール15を介して、粉砕装置10の粉砕チャンバ14の入口ホッパ11の垂直方向調節13によってギャップ「d」を調節することにより制御されながら、入口ホッパ11とフィードコーン12とを介して供給される。粗い材料はそこで、最初に、その重量のため、出口漏斗16内へと落下する。より微細な材料および粒子は、破砕動作中に発生した重い粉塵内で混合され、空気/粒子混合物中の粒子の値に応じてさらに処理するために、またはリサイクルするために、または排出するために、粉塵出口70,72,74と、接続通路76と、捕集ダクト82とを介して、空気流装置84によって出口ダクト86内に導かれる。
【0082】
各ロータ26,28および30は、好適には常に、互いに逆方向に、すなわち交互の回転方向で回転しており、この場合、回転速度は好適には上方から下方に向かって上げることができる。上方のロータの回転速度は、例えば800rpmまでであってよいのに対し、真ん中のロータは1200rpmで回転し、下方のロータは1500rpmで回転する。落下する材料は、最上部の第1のロータ26に設けられた打撃工具38により部分的に細断され、部分的にロータの周方向で加速させられる。材料は、衝突バー46か、または逆方向に回転している真ん中のロータ28の打撃工具38に衝突し、そこで材料の粒子は今や、上方のロータによる逆方向の予備加速に基づき、より高い速度で衝突するので、粉砕効果が大幅に増大される。さらに、真ん中の第2のロータでも回転速度は第1のロータ26を上回っていてよいので、ここでも、材料粒子に作用する衝撃は、上方のロータにおけるよりもはるかに強力である。さらに、材料粒子は鉛直方向に延在する衝突バー46に衝突し、そこでもやはり細断される。粉砕チャンバ壁42の領域内で落下する材料は、変向リブ48により再び、半径方向でさらに内側に位置する粉砕チャンバ14の領域へ再び戻されて、そこで打撃工具38の作用範囲へとガイドされる。打撃工具は、各ロータにおいて異なる高さ(図4参照)に配置されているので、各材料粒子の、打撃工具との極めて高い衝突確率が得られ、このことは、装置に良好な効率をもたらす。
【0083】
出口領域に設けられた最下部の第3のロータ30は、最も高い速度で回転することができる。ここでも注目すべきは、材料粒子が真ん中の第2のロータ28によって逆方向により強く加速されているので、粒子が今や相応に高められた衝突速度で、逆方向に回転している下方のロータ30に当たる、という点である。好適には、下方のロータ30の領域に最も多く打撃工具38が配置されており、これにより、ここで粒子と打撃工具38もしくは鉛直方向の衝突バー46とが衝突する高い確率が得られるようになっている。このことは、極めて効率的な材料粉砕につながる。
【0084】
本発明は、本実施態様に限定されるものではなく、以下に記載する請求項の保護範囲内での変化態様が可能である。
【0085】
本発明により、打撃工具に対する、分離されるべき材料複合体の極めて高い衝突エネルギ量が得られ、破砕された粒子を、さらなる処理のために効果的に運ぶことができる。さらに材料分離は、材料流、特に超微粒子流の効果的な調整によって制御され得る。
【0086】
特に、打撃工具の数および配分は、図示の例と異なっていてよい。チェーンやバッフルプレート等の、様々な打撃工具が使用されてよい。最下部のロータの領域には、その上の領域におけるよりもずっと多くの打撃工具を全周にわたって配分することができる。これにより、第3の区分の領域における衝突の確率が高められる。
【0087】
粉砕チャンバ壁は、例えば保守作業を行うために粉砕チャンバへのアクセスを可能にするための、開放することのできる区分を有していてよい。これにより、打撃工具38または摩耗プレート44等の消耗品を、著しく簡単に交換することができる。
【符号の説明】
【0088】
9 第2の態様の粉砕装置
10 第1の態様の粉砕装置
11 入口ホッパ、入口漏斗
12 供給コーン
13 フィードギャップの幅dを調整するために入口ホッパを動かすための調節システム
14 粉砕チャンバ
15 装置コントロール
16 材料出口漏斗
18 分離されたロータ軸のための分離駆動装置を含む駆動ユニット
20 上方のロータ歯車
22 真ん中のロータ歯車
24 下方のロータ歯車
25 上方のロータの軸
26 真ん中のロータの軸
27 下方のロータの軸
28 上方のロータ
29 真ん中のロータ
30 下方のロータ
34 ロータケーシング
36 打撃工具のための固定装置
37 図1の打撃工具の接続チェーン部材
38 打撃工具
42 粉砕チャンバ壁
44 粉砕チャンバ壁の内面における摩耗プレート
46 垂直方向の変向リブ、衝突バー
48 周方向の変向リブ
50 固定装置の第1のディスク
52 固定装置の第2のディスク
54 固定装置の第3のディスク
56 固定装置の第4のディスク
60 ディスクに整列して設けられた複数の穴の間に延在し、打撃工具の穴を貫通するボルト
70 上方の粉塵出口
72 真ん中の粉塵出口
74 下方の粉塵出口
76 接続通路
78 接続通路における遮断弁
80 遮断弁のための制御ライン
82 捕集ダクト
84 空気流装置
86 出口ダクト
88 粉塵出口における格子
90 粉塵センサ
92 材料出口
93 チャンバ底部のような漏斗
94 コンベヤベルト
96 材料出口における粉塵出口
d フィードギャップの幅
図1
図2
図3
図4