(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】分子ベースのEO反応器(MB EORXR)におけるハイブリッド属性反応モデル(ARM)
(51)【国際特許分類】
G16C 20/10 20190101AFI20240627BHJP
【FI】
G16C20/10
(21)【出願番号】P 2022542301
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2020060136
(87)【国際公開番号】W WO2021141664
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500204511
【氏名又は名称】アスペンテック・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AspenTech Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ホウ・ジェン
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル・ダリン
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-166779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0228843(US,A1)
【文献】国際公開第2018/181320(WO,A1)
【文献】特開平9-138808(JP,A)
【文献】特開2020-155088(JP,A)
【文献】Molecular-Level Composition and Reaction Modeling for Heavy Petroleum Complex System,Springer International Publishing Switzerland 2015,2015年10月,p.1-27
【文献】Scott R. Horton,Molecular-Level Kinetic Modeling of Resid Pyrolysis,Industrial & Engineering Chemistry Research,2015年,p.4226-4235
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16C 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ上に実装され、コンピュータによって実行される、化学反応器内の化学反応をモデル化して、前記反応の生成物を決定するためのコンピュータ実装された方法であって、
前記コンピュータが、コンピュータメモリ内で、個々の分子
構造表現および分子属性表現を含む表現の組み合わせとして、供給原料中の分子の組成を表すことと、
前記コンピュータが、前記コンピュータメモリ内で、前記個々の分子
構造表現および前記分子属性表現に基づいて、化学反応器内での前記供給原料の化学反応の化学的性質の表現を定式化することと、
前記コンピュータが、前記個々の分子
構造表現、前記分子属性表現、および前記化学反応の前記化学的性質の前記定式化された表現を使用して、前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応のシミュレーションを実行することであって、前記シミュレーションが、前記反応の生成物の組成を決定し、前記反応の前記生成物の第一のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で個々の分子
構造表現された生成物として表現され、かつ前記反応の前記生成物の第二のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で、属性表現された生成物として表現される、ことと、
前記コンピュータが、前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物をサンプリングして、前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物の個々の分子
構造表現を自動的に決定し、これにより前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの個々の分子
構造表現が、結果としてもたらされる、こととを、を含む、方法。
【請求項2】
前記分子属性表現が、分子型および一つ以上の側鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学反応の前記化学的性質の前記表現が、熱化学、酸触媒化学、および金属触媒化学のうちの少なくとも一つに由来する化学反応を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、前記個々の分子
構造表現された生成物と、前記属性表現された生成物の前記個々の分子
構造表現とを組み合わせて、前記生成物の完全な分子組成物を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、ユーザー入力に基づいて、前記シミュレーションを実行するために使用される方程式を定義することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザー入力が、反応型、反応経路、熱力学的特性、物理的特性、および速度則の式のうちの少なくとも一つである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記供給原料が、炭化水素混合物、石炭、およびシェール油のうちの少なくとも一つである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コンピュータが、ユーザー入力に基づいて、前記個々の分子
構造表現または前記分子属性表現を使用して、前記供給原料中のどの分子を表現するかを選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ユーザー入力が、前記個々の分子
構造表現を使用して表現される分子に対する炭素数の制限および環数の制限を示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コンピュータが、前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、化学処理手順の修正を評価することと、
前記コンピュータが、前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、反応プロセスを最適化することと、
前記コンピュータが、前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、生成物の特性を予測することと、
前記コンピュータが、前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、下流ユニットについての分子詳細を予測することによって、前記化学反応器と前記下流ユニットの統合をモデル化することと、
前記コンピュータが、方程式指向(EO)方法を使用して、前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、複雑な炭化水素混合物の変換のシステムを最適化することと、のうち少なくとも一つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記シミュレーションを実行することが、属性ベースの質量平衡方程式、属性ベースのエネルギー平衡方程式、および属性ベースの運動量平衡方程式のうちの少なくとも一つを利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
化学反応器内での化学反応をモデル化して、前記反応の生成物を決定するシステムであって、
プロセッサと、
コンピュータコード命令が格納されたメモリと、を備え、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記メモリ内で、個々の分子
構造表現および分子属性表現を含む表現の組み合わせとして、供給原料中の分子の組成を表現させ、
前記メモリ内で、前記個々の分子
構造表現および前記分子属性表現に基づいて、化学反応器内での前記供給原料の化学反応の化学的性質の表現を定式化させ、
前記個々の分子
構造表現、前記分子属性表現、および前記化学反応の前記化学的性質の前記定式化された表現を使用して、前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応のシミュレーションを実行させ、前記シミュレーションが、前記反応の生成物の組成を決定し、前記反応の前記生成物の第一のサブセットが、前記メモリ内で個々の分子
構造表現された生成物として表現され、かつ前記反応の前記生成物の第二のサブセットが、前
記メモリ内で、属性表現された生成物として表現され、かつ、
前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物をサンプリングさせて、前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物の個々の分子
構造表現を自動的に決定させ、これにより前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応の生成物の前記第一および第二のサブセットの個々の分子
構造表現が結果としてもたらされるように構成される、システム。
【請求項13】
前記分子属性表現が、分子型および一つ以上の側鎖を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記化学反応の前記化学的性質の前記表現が、熱化学、酸触媒化学、および金属触媒化学のうちの少なくとも一つに由来する化学反応を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記個々の分子
構造表現された生成物と、前記属性表現された生成物の前記個々の分子
構造表現とを組み合わせて、前記生成物の完全な分子組成物を決定させるようにさらに構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
ユーザー入力に基づいて、前記シミュレーションの実行に使用される方程式を定義させるようにさらに構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
ユーザー入力に基づいて、前記個々の分子
構造表現または前記分子属性表現を使用して、前記供給原料中のどの分子を表現するかを選択させるようにさらに構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、化学処理手順の修正を評価することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、反応プロセスを最適化することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、生成物の特性を予測することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、下流ユニットについての分子詳細を予測することによって、前記化学反応器と前記下流ユニットの統合をモデル化することと、
方程式指向(EO)方法を使用して、前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子
構造表現に基づいて、複雑な炭化水素混合物の変換のシステムを最適化することと、のうち少なくとも一つを行わせるようにさらに構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記シミュレーションを実行する上で、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、属性ベースの質量平衡方程式、属性ベースのエネルギー平衡方程式、および属性ベースの運動量平衡方程式のうちの少なくとも一つを利用させるようにさらに構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
化学反応器内での化学反応をモデル化し、反応の生成物を決定するための非一時的コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が、その中に格納されたコンピュータコード命令を有するコンピュータ可読媒体を備え、前記コンピュータコード命令が、プロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに関連付けられた装置に、
コンピュータメモリ内で、個々の分子
構造表現および分子属性表現を含む表現の組み合わせとして、供給原料中の分子の組成を表現させ、
前記コンピュータメモリ内で、前記個々の分子
構造表現および前記分子属性表現に基づいて、化学反応器内での前記供給原料の化学反応の化学的性質の表現を定式化させ、
前記個々の分子
構造表現、前記分子属性表現、および前記化学反応の前記化学的性質の前記定式化された表現を使用して、前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応のシミュレーションを実行させ、前記シミュレーションが、前記反応の生成物の組成を決定し、前記反応の前記生成物の第一のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で個々の分子
構造表現された生成物として表現され、かつ前記反応の前記生成物の第二のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で、属性表現された生成物として表現され、かつ、
前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物をサンプリングさせて、前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物の個々の分子
構造表現を自動的に決定させ、これにより前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの個々の分子
構造表現が、結果としてもたらされるように構成された、非一時的コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月10日に出願された米国出願第16/739,291号の継続出願である。上記出願全体の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
既存のコンピュータベースの化学反応をモデル化するための方法およびシステムは、数千の種、および同様に数千の反応をモデル化することができる。しかしながら、これらの既存の方法は、重質残油(例えば、原油残渣)の反応をモデル化する場合など、特定の状況において構造および反応をモデル化することができない。
【0003】
したがって、化学反応をモデル化するための改善されたコンピュータ実装された方法およびシステムに対するニーズがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、化学反応器内での化学反応をモデル化するための方法およびシステムを提供する。実施形態は、化学反応をモデル化し、反応の生成物を決定することができる。
【0005】
こうした例示的実施形態の一つは、反応生成物を決定するための化学反応器内での化学反応をモデル化する方法を対象とする。方法は、コンピュータメモリ内で、個々の分子表現および分子属性表現を含む表現の組み合わせとして、供給原料中の分子の組成を表現する。方法は引き続き、コンピュータメモリ内で、個々の分子表現および分子属性表現に基づいて、化学反応器内での供給原料の化学反応の化学的性質の表現を定式化する。次に、方法は、個々の分子表現、分子属性表現、および化学反応の化学的性質の定式化された表現に基づいて、前記供給原料の化学反応の化学表現を使用して、化学反応器内での供給原料の化学反応のシミュレーションを実行する。シミュレーションは、反応の生成物の第一のサブセットが、コンピュータメモリ内で個々の分子表現された生成物として表現され、反応の生成物の第二のサブセットが、コンピュータメモリ内で属性表現された生成物として表現される、反応の生成物の組成を決定する。ある実施形態によれば、第一および第二のサブセットは重複しない。続行するために、第二のサブセットの属性表現された生成物はサンプリングされて、化学反応器内での供給原料の化学反応の生成物の第一および第二のサブセットの個々の分子表現が結果として生じるように、当該属性表現された生成物の個々の分子表現が自動的に決定される。このようにして、本方法は、反応の生成物に対する個々の分子表現を決定する。
【0006】
実施形態では、方法のステップ、すなわち、表現、製剤化、シミュレーション、およびサンプリングは、自動的に実行されてもよく、またはユーザー入力に応答して実行されてもよい。
【0007】
実施形態によれば、分子属性表現は、分子型および一つ以上の側鎖の表示を含む。別の実施形態では、化学反応の化学的性質の表現は、熱化学、酸触媒化学、および金属触媒化学のうちの少なくとも一つに由来する化学反応を含む。
【0008】
代替的な実施形態は、個々の分子表現された生成物と、属性表現された生成物の個々の分子表現とを組み合わせて、生成物の完全な分子組成を決定する。さらに別の例示的な実施形態は、ユーザー入力に基づいてシミュレーションを実行するために使用される方程式を定義する。こうした実施形態では、ユーザー入力は、反応型、反応経路、熱力学的特性、物理的特性、および速度則の式のうちの少なくとも一つを示す。
【0009】
別の実施形態は、ユーザー入力に基づいて、供給原料中のどの分子が個々の分子表現を用いて表されるか、およびどの分子が分子属性表現を用いて表現されるかを選択する。一つのこうした例示的な実施形態では、ユーザー入力は、個々の分子表現を使用して表現される分子に対する炭素数の制限および環数の制限を示す。
【0010】
実施形態はまた、さらなる処理を実行し、反応の決定された生成物に基づいて現実世界のアクションを実行および実施することができる。例えば、例示的な実施形態は、化学反応の生成物の第一および第二のサブセットについて決定された個々の分子表現に基づいて、化学処理手順の修正を評価する。別の実施形態は、化学反応の生成物の第一および第二のサブセットの決定された個々の分子表現に基づいて、反応プロセスを最適化する。さらに別の実施形態は、化学反応の生成物の第一および第二のサブセットの決定された個々の分子表現に基づいて、生成物の特性を予測する。例示的な実施形態は、化学反応物の生成物の第一および第二のサブセットについて決定された個々の分子表現に基づいて、下流ユニットの分子詳細を予測することによって、化学反応器と下流ユニットの統合をモデル化する。さらになお、別の例示的な実施形態は、方程式指向(EO)方法を使用して、化学反応の生成物の第一および第二のサブセットについて決定された個々の分子表現に基づいて、複雑な炭化水素混合物の変換のシステムを最適化する。
【0011】
実施形態は、属性ベースの質量平衡方程式、属性ベースのエネルギー平衡方程式、および属性ベースの運動量平衡方程式のうちの少なくとも一つを利用して、シミュレーションを実行する。さらに、実施形態は、当業者に公知の任意の供給原料をシミュレートするために使用されうることが知られている。例えば、実施形態では、供給原料は、炭化水素混合物、石炭、およびシェール油のうちの少なくとも一つである。
【0012】
別の実施形態は、反応の生成物を決定するための化学反応器内での化学反応をモデル化するシステムを対象とし、システムは、プロセッサおよびコンピュータコード命令がそれ上に格納されたメモリを含む。こうした実施形態では、プロセッサおよびメモリは、コンピュータコード命令を用いて、システムに本明細書に記載される任意の実施形態を実施させるように構成される。
【0013】
さらに別の実施形態は、化学反応器内での化学反応をモデル化し、反応の生成物を決定するためのコンピュータプログラム製品を対象とする。コンピュータプログラム製品は、コンピュータコード命令をそれ上に格納したコンピュータ可読媒体を含み、コンピュータコード命令は、プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに関連付けられた装置に、本明細書に記述された任意の実施形態を実施させる。
【0014】
前述のことは、添付の図面に示されているように、例示的な実施形態の以下のより具体的な説明から明らかであり、同様の参照文字は、異なる図面全体を通して同じ部分を参照している。図面は必ずしも原寸に比例しておらず、代わりに実施形態を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、最新のシミュレーション手法の計算性能を示すグラフである。
【
図2】
図2は、一実施形態による反応の生成物を決定するために、化学反応器内での化学反応をモデル化するための方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態を使用してシミュレーションすることができる重油中の代表的な分子の描写である。
【
図4】
図4は、反応をシミュレートするために実施形態で利用されうる概念的な重分子の表現である。
【
図5】
図5は、実施形態で用いられるサンプリング手法を示す。
【
図6】
図6は、実施形態で実施および使用される分子表現を示すチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態によってシミュレートされる反応を描写する。
【
図8】
図8は、反応の生成物を決定するために化学反応をシミュレートするための実施形態のフローチャートである。
【
図9】
図9は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図10】
図10は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図11】
図11は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図12】
図12は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図13】
図13は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図14】
図14は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図15】
図15は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図16】
図16は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図17】
図17は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図18】
図18は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図19】
図19は、最新のシミュレーション方法を使用して生成されたシミュレーション結果を、実施形態を使用して生成されたシミュレーション結果と比較するプロットである。
【
図20】
図20は、本発明の実施形態が実施されうる、コンピュータネットワークまたは類似のデジタル処理環境を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的な実施形態の説明は、以下の通りである。
【0017】
本明細書に引用されるすべての特許、公開された出願、および参考文献の教示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0018】
米国特許出願第16/250,445号に記載されるAspen Technology,Inc.(出願人)の分子ベースEO(方程式指向)反応器(MB EORXR)などの、化学反応をシミュレートするための既存の方法によって、ユーザーは分子レベルで精製化学をモデル化することができる。MB EORXRは、2400以上の種および5700の反応を使用して、炭化水素混合物の変換を、残油に至るまで、かつ残油を含めて記述することができる。しかしながら、MB EORXRの分子ベースのハイドロクラッカー/ハイドロトリーターでモデル化された重質残油の構造および反応は、依然として限定されている。最近の分析化学研究によれば、重質石油残油留分には数百もの異なる凝集環構造があり、これは、石油の反応性、熱力学、および主要な特性を決定する。この研究によれば、数百万もの個々の重分子構造が存在する。計算リソースは、MB EORXRなどの既存の方法を介して、このような大きなシステムをモデル化するための重要な課題である。ナフサから重質残油に至るまでの完全な詳細の組成をモデル化する分子ベースの反応器(本明細書では、完全MBモデルと称される)のための計算要件の統計を、表1に列挙する。
【0019】
【0020】
表1は、分子成分および反応の数が、軽質ナフサから重質残油まで指数関数的に増加することを示す。その結果、反応器床をモデル化するために必要な方程式の数も、ナフサから残油まで劇的に増加する。さらに、2~10個の反応器床を含む複雑なフローシートをモデル化するには、さらに多くの計算資源を必要とする。例えば、4床のハイドロクラッカーの方程式および変数の数は、単一の反応器床の数よりもほぼ1桁大きい。これらのシミュレーションを実行するために必要な多数の方程式は、方程式指向モデルの計算性能に著しい影響を与える可能性がある。
図1は、プロット100において、MB EORXRモデルにおける方程式101の数と、その解く時間102との関係を示す。プロット100に示す結果は、3.4GHzのCPUおよび32GBのRAMを搭載したコンピュータで得られた。
【0021】
図1から、(10^6)桁(以下、「O」)の方程式を有するモデルは、解くのにおよそ5分以上かかることが分かる。理想的には、工業反応器の典型的なフローシートを解く時間は、数分以内であるべきである。一部の用途(例えば、リアルタイム最適化(RTO))では、さらに迅速な解く時間O(秒)が必要である。したがって、産業用途に必要な性能を得るには、MB EORXRモデルの方程式の数は10^6未満に制限される必要がある。表1から、複雑なフローシートにある完全な分子詳細を備えたMB EO反応器を介して、ガスオイル、VGO、および残油の留分をモデル化する性能は、典型的な産業用途で要求される性能を満たすことはできない。
【0022】
米国特許出願第16/250,445号に記載される炭素数ベースのモデル低減は、大規模システムにおけるMB反応器の性能を改善するために実施することができるが、上述の計算問題に完全には対処することはできない。炭素数ベースのモデル低減には、主に二つの制限がある。
【0023】
第一の制限は、このアプローチは、数百の別個の分子型を含む可能性がある、重質残油の供給を処理するために十分に、複雑な系の種の数を減少させることができないことである。反応系にN個の分子型が存在し、各分子型に対してM個の炭素数由来の種が存在する場合、完全に詳細な組成を有するモデルにはN*M個の種が存在する。炭素数ベースのモデルの低減は、離散化された炭素数Mを、所定の基準で、より小さい数M’(すなわち、M’は典型的にはMの1/4~1/2の間である)へと減少させることができ、その結果得られる炭素数ベースの低減モデル中の種の数はN*M’である。ところが、大きな数であるNの分子型は、依然として、モデルについて解決困難なほどに多数の種をもたらしかねない。
【0024】
炭素数ベースのモデル低減の第二の制限は、モデルの頑健性である。低減された炭素数の集まりからの完全に詳細な種に対する分布を反転させるために、数値スプライン関数を使用するため、実際には、頑健性がそのアプローチの問題となる可能性がある。モデルの収束を行うためには、通常、より少ないステップ数とより多くの反復数が必要であり、これによりモデルの解決時間が増大する。これは、フローシートに複数の反応器床とリサイクルストリームが含まれる場合、または生成物の仕様が運動パラメータまたは動作条件を計算するために固定されている場合に、特に当てはまる。
【0025】
したがって、大きいMB EO反応器モデルの計算負荷を低減し、モデル解決の頑健性を維持するには、新しいアプローチが必要である。
図2は、一つのこうした例示的な方法220を示す。方法220は、コンピュータ実装され、当該技術分野で知られるようなハードウェアおよびソフトウェアの任意の組み合わせによって実行されてもよい。例えば、方法220は、プロセッサに方法220の工程221、222、223、および224を実装させるコンピュータコード命令を保存する関連付けられたメモリを有する一つ以上のプロセッサを介して実装されてもよい。さらに、方法220は、米国特許出願第16/250,445号に記載される、Aspen Technology,Inc.(出願人)の分子ベースEO(方程式指向)反応器(MB EORXR)などの既存のシミュレーションソフトウェアに実装されてもよい。こうした実装では、方法220および/または本明細書に記載される任意の他の実施形態は、MB EORXRブロックに実装されてもよい。
【0026】
方法220は、コンピュータメモリ内で、個々の分子表現および分子属性表現を含む表現の組み合わせとして、供給原料中の分子の組成を表現することによって、ステップ221で開始する。実施形態によれば、ステップ221での分子属性表現は、分子型および一つ以上の側鎖を含む。別の実施形態は、221で、ユーザー入力に基づいて、供給原料中のどの分子が個々の分子表現を用いて表されるか、およびどの分子が分子属性表現を用いて表現されるかを選択する。こうした例示的な実施形態では、ユーザー入力は、個々の分子表現を使用して表現される分子に対する炭素数の制限および環数の制限を示す。こうした実施形態では、制限よりも多くの炭素および環を有する分子は、分子属性表現を用いて表現される。実施形態によれば、供給原料は、
図6に関連して後述するように表現される。一実施形態では、供給原料は、個々の分子(IM)領域および分子属性表現(ARM)領域という二つの領域によって表現される。例示的なIM領域663を
図6に示す。IM領域内の分子は、個々に表現される。例示的なARM領域664を
図6に示す。ARM領域内の分子は、分子型および主側鎖の二つの構造属性によってそれぞれ表現される。ARM領域内の分子は、その化学構造によって分子型および主側鎖に解析される。結果として、分子型の分布および主側鎖長の分布は、ARM領域内のそれらの分子の所与のモル組成のセットによって得られる。
【0027】
方法220は引き続き、ステップ222で、コンピュータメモリ内で、個々の分子表現および分子属性表現に基づいて、化学反応器内での供給原料の化学反応の化学的性質の表現を定式化する。実施形態によれば、反応の化学的性質は、
図7に関連して後述するように表現される。一実施形態では、ステップ222で定式化される化学反応の化学的性質の表現は、熱化学、酸触媒化学、および金属触媒化学のうちの少なくとも一つに由来する化学反応を含む。実施形態によれば、化学反応の化学的性質の表現は、化学量論的反応および適切な速度則形態を含む。さらに、実施形態では、化学反応の化学的性質の表現は、他の例の中でも、パラフィン触媒クラッキング、パラフィンハイドロクラッキング、パラフィン熱分解、パラフィン水素化分解、側鎖クラッキング、パラフィン水素転移、パラフィン異性化、ナフテン環の異性化、ナフテン環の芳香化、芳香族環の飽和、オレフィン飽和、パラフィン脱水素化、水素化脱硫、水素化脱窒素、および水素化脱酸素などの、前記基礎熱化学、酸触媒化学および金属触媒化学に由来してもよい。概して、任意の化学反応は、化学結合切断/化学結合生成プロセスとみなすことができる。所与の機構については、反応物中の構造複合体の選択された化学結合が分解され、それらの構造複合体間の新しい化学結合の形成を介して生成物が生成される。通常、これらの構造複合体は個々の分子で産生され、個々の分子の化学反応が生成される。ところが、同じアプローチを、属性の構造複合体および分子属性表現の化学反応にも適用することができる。
【0028】
次に、ステップ223で、化学反応器内での供給原料の化学反応のシミュレーションが、個々の分子表現(ステップ221の出力)、分子属性表現、および化学反応の化学的性質の定式化された表現(ステップ222の出力)を用いて実行される。シミュレーションは、反応の生成物の第一のサブセットが、コンピュータメモリ内で個々の分子表現された生成物として表現され、反応の生成物の第二のサブセットが、コンピュータメモリ内で属性表現された生成物として表現される、反応の生成物の組成を決定する。一実施形態では、ステップ223で、以下に説明される方程式1~10を利用して、シミュレーションを実行する。実施形態は、223で、ユーザー入力に部分的に基づいて、シミュレーションを実行するために使用される方程式を定義する。実施形態によれば、ユーザー入力は、反応型、反応経路、熱力学的特性、物理的特性、および速度則の式のうちの少なくとも一つである。例えば、ユーザー入力は、他の例の中でも、個々の分子および分子属性の反応経路、すべての反応の反応型、すべての個々の分子および分子属性についての主要な熱力学的特性および物理的特性、ならびに速度則の式の仕様を含むことができる。実施形態では、223で、シミュレーションは、一つ以上の属性方程式を利用して実施されてもよい。例えば、223でのシミュレーションの実行は、属性ベースの質量平衡方程式、属性ベースのエネルギー平衡方程式、および属性ベースの運動量平衡方程式のうちの少なくとも一つを利用してもよい。
【0029】
引き続いて、ステップ224で、第二のサブセットの属性表現された生成物(ステップ223の出力)がサンプリングされて、第二のサブセットの属性表現された生成物の個々の分子表現が自動的に決定される。このようにして、ステップ224の結果として、化学反応器内での供給原料の化学反応の生成物の第一および第二のサブセットの個々の分子表現が得られる。このように、方法220は、反応の生成物に対する個々の分子表現を決定する。
【0030】
方法220の代替的な実施形態は、個々の分子表現された生成物(ステップ223からの出力)と、属性表現された生成物の個々の分子表現(ステップ224の出力)とを組み合わせて、生成物の完全な分子組成を決定する。
【0031】
方法220はまた、224で、さらなる処理を実行してもよく、または決定された反応の生成物に基づいて、現実世界のアクションを取ってもよい。例えば、例示的な実施形態は、化学反応の生成物(224での出力)の第一および第二のサブセットについて決定された個々の分子表現に基づいて、化学処理手順(例えば、現実世界の精製プロセス)の修正を評価する。別の実施形態は、化学反応の生成物の第一および第二のサブセットの決定された個々の分子表現に基づいて、反応プロセスを最適化する。さらに別の実施形態は、化学反応の生成物の第一および第二のサブセットの決定された個々の分子表現に基づいて、生成物の特性を予測する。例示的な実施形態は、化学反応物の生成物の第一および第二のサブセットについて決定された個々の分子表現に基づいて、下流ユニットの分子詳細を予測することによって、化学反応器と下流ユニットの統合をモデル化する。なお別の例示的な実施形態は、方程式指向(EO)方法を使用して、化学反応の生成物の第一および第二のサブセットについて決定された個々の分子表現に基づいて、複雑な炭化水素混合物の変換のシステムを最適化する。こうした実施形態では、その最適化は、リアルタイム最適化(RTO)を実行し、かつEOソリューション方法を使用して、最良の性能および柔軟性を得るために、オンラインシステムに適用することができる。さらに、例示的な実施形態では、EO方法は、反応器システムに必要な方程式を同時に解く。これは、リサイクル(例えば、ハイドロクラッカー用の水素リサイクル)および仕様変更(例えば、必要なクエンチガスを計算することによって各反応器床への入口温度を指定する)を伴うシステムに特に有効である。分子ベースのハイドロクラッカーにEOを使用することの欠点は、方程式の数が非常に多く、これはメモリ集約的で低速になりかねないことである。ところが、ハイブリッドARMアプローチでは、方程式の数を大幅に減らして、メモリ要件とソリューション性能を大幅に改善することで、これに対処する。
【0032】
さらに、実施形態、例えば、方法220を使用して、当業者に公知の任意の供給原料をシミュレートしうることが知られている。例えば、実施形態では、供給原料は、炭化水素混合物、石炭、およびシェール油のうちの少なくとも一つである。
【0033】
実施形態は、反応をシミュレートするための新しいハイブリッド属性反応モデル(ARM)アプローチを提供する。実施形態、例えば、ハイブリッドARMアプローチは、Aspen Technology,Inc.(出願人)から入手可能なMB EORXRブロックに実装されているものとして本明細書に記述されているが、実施形態はそのように限定されるものではなく、当業者に公知の任意の精製プロセスのワークフローまたは他のコンピュータ実装で用いられてもよい。MB反応器のハイブリッドARMモデルは、ナフサから重質残油に至るまで複雑な炭化水素混合物の種の数を著しく低減させ、完全な分子詳細と頑健な収束性能を維持しながら、計算上の制限を克服することができる。
【0034】
実施形態は、一連の分子構造属性(分子型および側鎖)を使用して、石油留分中の複雑な重分子を記述することができる。さらに、実施形態は、簡略化されたサンプリングプロトコルを活用して、制限された数の構造属性を並置することによって、Aspen Technology,Inc.(出願人)のMB EORXRの複雑な分子成分を定義することができる。小さなナフサ分子の個々の異性体も考慮される。
【0035】
一実施形態では、複雑な化学的性質の反応および動態が、より重い留分に対する制限された数の構造属性に関して記述される。より軽い留分の反応および動態は、個々の成分によって表現することができる。構造属性と個々の構成要素の組み合わせを、まとめて解決することができる。
【0036】
例示的な実施形態では、MB EORXRフレームワークおよびモデルビルダーが強化され、Aspen Technology,Inc.(出願人)のEO形式に関して、残差、スパース性、およびヤコビアンを含むハイブリッドARMモデルのコード生成の自動化がサポートされる。さらに、ARMモデルおよび個々のコンポーネントモデルを使用するための領域には柔軟性がある。ユーザーは、構造限界(例えば、炭素数および環数)を指定することによって、ハイブリッドMBモデル(ARMモデルおよび個々のモデル)の粒度を選択することができる。
【0037】
さらに、実施形態では、ハイブリッドARMモデルは、完全な分子詳細を維持することができる。ハイブリッドARM MBモデルを利用する実施形態の結果は、完全なMBモデルに近い。しかしながら、一実施形態によるハイブリッドARM MBモデルの計算負荷は、完全なMBモデルよりもはるかに小さい。さらに、ハイブリッドARM MBモデルは、解決に対して頑健性がある。結果として、実施形態は、産業用途におけるナフサから重質残油に至るまでの複雑なフローシートの迅速かつ頑健なソリューションを提供する。
【0038】
実施形態、例えば、ハイブリッドARMモデルをMB EORXRに実装することにより、ユーザーは、手ごろな価格の計算負荷で、複雑な精製化学のための分子レベルの運動モデルを作成することができる。有限数の構造属性と制限された数の個々の構成要素の組み合わせを使用して、ナフサから重質残油に至るまで、広範囲の複雑な炭化水素混合物での、ほぼ無限数の分子および反応が記述される。結果として、重質残油に至るまでの複雑な供給原料用のハイブリッドARMモデルは、数分以内に、完全な分子詳細を維持しながら、確実に解決することができる。
【0039】
石油炭化水素混合物(重油)の残油留分は、通常、数百万の複雑な大分子を含有する。これらの分子は、典型的には、島構造または群島構造として特定される。代表的な重分子330を
図3に示す。
【0040】
図3に示すように、残油分子は多くの場合、多数の凝集環構造および複数の異なる構造官能基を含む、錯体分子である。数百のこうした複雑な分子型が重質油留分中に存在する(米国特許出願第15/961,310号、Zhang,Linzhou,et al.“Molecular representation of petroleum vacuum resid”Energy & Fuels 28.3(2014):1736-1749;Zhang,Yunlong.“Identify Similarities in Diverse Polycyclic Aromatic Hydrocarbons of Asphaltenes and Heavy Oils Revealed by Noncontact Atomic Force Microscopy:Aromaticity,Bonding,and Implications in Reactivity”(2019))。大きな残油分子の環には、数多くの置換位置が存在する可能性がある。確率分布に従って可能性のあるすべてのコアを組み合わせると、重質残油中のほぼ無限数の分子への急増につながる。一方で、分析化学の限界により、重質油留分中の個々の異性体をそれぞれ明示的に検出することもできない。揮発性が低いため、利用可能な測定値からは、不完全な情報しか得ることができない。詳細な置換基の効果は明確でなく、また重油のアップグレーディングのプロセス(例えば、特性、反応性、および熱力学)にとっては比較的重要ではない。
【0041】
したがって、実施形態は、重油中の分子情報を記述するために、一組の構造属性を使用することができる。構造属性は、一組の分子ピースである。例えば、こうした実施形態の一つは、3種類の構造属性:コア、側鎖(SC)、およびインターコアリンク(IL)を使用して、錯体分子(例えば、Zhen,et al.“Molecular-Level Composition and Reaction Modeling for Heavy Petroleum Complex System”Structure and Modeling of Complex Petroleum Mixtures,Springer International Publishing,2015.93-119に記載のある分子など)を記述する。コアは、残油分子中の凝集環構造を記述するために使用される。100~1000程度のコアが、重質油留分中に存在する。SCは、コア構造に結合された遊離末端置換基を表現するために使用される。ILは、二つ以上のコア構造の間の置換基を表現するために使用される。100~1000程度のSCおよびILが、重質油留分中に存在する可能性がある。
図4に示す重分子440などの分子は、コア441a~b、SC442、およびIL443構造の並置として記述することができる。この表現(
図4に示すようなコア、側鎖、およびIL)を使用することで、重分子における置換効果の変動を簡略化し、重油変換のためのモデルにおける種の数の有意な減少を提供する。
【0042】
ところが、すべての可能性のあるILおよびSCの変形が完全にサンプリングされた場合でも、依然として大きな組合せ問題がある。したがって、実施形態は、産業用途によって可能な計算負荷を満足するために、簡略化されたサンプリングプロトコルを用いる。重分子を定義するための例示的な属性サンプリングプロトコルを
図5に示す。
【0043】
一実施形態では、SCおよびILに由来する置換基の組合せ問題は、主SCモデルによって低減される。コア構造中のすべての置換位置についてすべての可能なSCをサンプリングする代わりに、
図5に示すサンプリング方法は、錯体分子中に炭素数が1よりも多い主SCが一つだけあると仮定する。他の置換位置は、メチル基によってのみ結合することが可能である。
図5に示すサンプリング法は、固定構造基(例えば、メチル基)を使用してILを記述する。結果として、
図5に示すように、分子型(MT)と呼ばれる新しい属性は、遊離末端の置換位置および複数のコア間の、コアおよびメチル基の組み合わせによって定義される。MTは、
図5の左側のような島構造551a、および
図5の右側のような群島構造551bを表すために使用することができる。島構造551aは、島重分子が、所与のMTおよび所与の主SC 552によってサンプリングされる方法を示す。551a中の所与のMTは、一つのコア構造553および少数のメチル基554a~bのみを含む。所定の長さを有する主SC 552をそのMT 551aに結合することによって、島重分子が表現される。群島構造551bは、群島重分子が、所与のMTおよび所与の主SC555によってサンプリングされる方法を示す。551b中の所与のMTは、複数のコア構造556a~b、少数の遊離末端メチル基557a~c、およびIL558を含有する。所定の長さを有する主SC 555をそのMTに結合することによって、群島重分子が表現される。MTは、MB EORXRに適用される同族列と一致し、複雑なプロセスにおける分子の重要な挙動(反応、熱力学、および特性)を表現する。重質油留分中の置換基の変形は、主SC中にのみ現れる。追加の置換基の効果は、メチル基のみに簡略化される。この仮定は、主要な反応性、熱力学、および石油特性の類似性によって分子成分を特定することができるため、工学的観点からの最適な近似である。
【0044】
MTの構造の詳細は、その化学的専門知識の観点からユーザーによって決定することができる。例示的な実施形態は、デラウェア大学のKlein Research Group(KRG)が提供するKinetic Model Toolkit(KMT)を使用して、Aspen Technology,Inc.(出願人)のMB HCRモデルにMT構造を作成する。通常、重油までの炭化水素混合物中には、O(100~2000)のMTがある。主SCの変形は、炭化水素混合物中の1種類の側鎖の最大長によって決定される。典型的に、側鎖の最大長は、50~100である。現実には、各MTごとに主SCの別個の分布がある。ところが、こうした大きな組合せ問題を考慮するためには、実際的ではない量の計算資源を必要とすることになる。工学的観点からは、石油の原油および精製転換におけるこうした主SC分布には、この組合せ問題の低減に役立つ少数のパターンがある。原油の成熟は、粗製物中の主SCの分布に大きく影響し、したがって、アップグレードプロセスを介して導出された生成物中の主SCの分布に間接的に影響する(Tissot,Bernard P.,and Dietrich H.Welte.Petroleum formation and occurrence.Springer Science & Business Media,2013)。重油中のほとんどの複雑なMTは、高度に成熟した構造であり、そのため、実施形態は、重油中のすべてのMTによって使用される側鎖の均一な分布を適用することによって簡略化される場合がある。これにより、各タイプの側鎖について、主SCの変形をO(50~100)に低減する。さらに、パラフィン、オレフィン、硫化物、アミド、カルボン酸などの精製プロセスにおいて考慮する側鎖には、有限数のタイプがある。おおまかに、実施形態が考慮する側鎖のタイプの最大数は、O(5)である。多くの場合、一つまたはより少数の側鎖のタイプを選択することが許容され、したがって、側鎖のタイプの最小数は1である。
【0045】
その結果、すべてのタイプの主SCの変形はO(50~500)である。したがって、実施形態は、O(150~2500)の属性値を使用して、重油中の数百万の分子を記述することができる。上述の属性表現は、重油中の分子を効果的に記述するだけでなく、非常に高い計算性能が望まれる場合に、ガスオイルまたはより軽い留分も記述するように拡張することもできる。
【0046】
ところが、置換基の効果は、触媒改質などの選択されたプロセスにとって非常に重要であるため(例えば、キシレン異性体比は非常に重要である可能性がある)、この方法では簡略化することはできない一部の重要な異性体分子(通常はナフサ範囲)がある。異性体の同定は、典型的に重質留分をアップグレードする際にはあまり重要ではないが、実施形態では、生成物ストリームを重油変換(例えば、ディレードコーキング)からナフサプロセス(例えば、触媒改質)に伝える際に、それらの異性体の詳細を保持する/移す方法が考慮される。さらに、一様な主SCの分布は、より軽い留分には適用できない場合があり、したがって、実施形態では、ユーザーによって要求される情報の保持に基づき、それらは個別に処理される。結果として、一組の個々の分子が、より軽い留分の選択された変換における重要な異性体分子を記述するために、実施形態で利用される。
【0047】
実施形態は、属性の確率密度関数(pdf)のサンプリングを介したより重い留分の表現と、より軽い留分の個々の分子の表現とを一つに組み合わせることによって、複雑な炭化水素混合物中の分子成分を記述するための新しいハイブリッドARMアプローチを適用する。ハイブリッドARMの分子組成は、MB EORXRに図示されるように、一組の同族列として記述することができる。ところが、同族列の表660は、
図6に示すように更新される。
【0048】
図6の各列661a~nは、分子型(MT)を記述するために使用される。MTは、凝集環構造および置換メチル基を含有し、これは、精製転換における重要な基準(反応性、熱力学的、特性、例えば、物理的特性、セタン価、およびオクタン価など)の多くを明らかにすることができる。各MT661a~nの行662a~nは、主SCの延長部である。最大長は、サンプルの分析化学に基づいて決定することができる。表全体が、個々の分子(IM)領域663およびARM領域664の二つの領域に分割される。IM領域663およびARM領域664の領域を調整するために、2種類の基準がユーザーに提供される。第一の基準は、MTをIM領域663またはARM領域664に分類するために使用される、総環数、芳香族環数、およびDBE(二重結合当量)の組み合わせとしての、最小環基準665(
図6の縦線)である。第二の基準は、主SCの最小長666(
図6の横線)。種の両方の基準が満たされている場合、ARM領域664内である。そうでなければ、その種はIM領域663にある。
図6に示すように、表660の右下部分は、ARM領域664であり、表660のその他の部分は、IM領域663である。非環状種(例えば、パラフィン)は、IM領域663に属するデフォルトとして設定することができる。ARM領域664は、炭化水素混合物のより重い留分を表す。IM領域663内の種は、別個の側鎖の分布を有することができる。実施形態は、MTおよび主SC長さの観点から、同じ分子成分中の異性体を特定するために、別の異性体分布f
isomを課すことができる。例えば、ジメチルベンゼンは、
図6の一つのセル、例えば、662aが1の主SCを表す実施例のセル667である。ジメチルベンゼンの三つの異性体であるp-キシレン、o-キシレン、およびm-キシレンは、f
isomによって分化することができ、f
isomは、動態学、熱力学、および精製プロセスの知識によって決定することができる。その結果として、ハイブリッドARMアプローチは、制限された数のMTおよび主SCに関して重油を記述するだけでなく、個々の側鎖および異性体の詳細に関して、より軽い分子も表現するため、石油炭化水素混合物の全範囲に対して最適な分子表現である。
【0049】
上記のハイブリッドアプローチによって分子成分を決定した後、実施形態は、反応器内での動態を効果的にモデル化し続けることができる。個々の分子ごとにすべての反応を記述する代わりに、実施形態は、それぞれMTおよび主SCの2種類の属性に関して、ARM領域内の種に関与する反応をモデル化する。IM領域内にのみある種に関与する反応は依然として、従来のやり方で、例えば、個々の分子の観点からの反応を表すように、モデル化される。
【0050】
図7は、ハイブリッドARMアプローチを実施する実施形態における反応の概念を描写する。
図7の第一の反応770は、パラフィン異性化の例であり、反応770は、種がIM領域663内にのみ存在する反応を表現する。
図7のその他二つの反応、771および772は、種がARM領域664内にある反応である。一実施形態では、反応は、個々の種ではなく、属性の観点から記述される。第二の反応771は、ナフテン環と融合させた三芳香族環および二芳香族環といった、MT属性の観点からの芳香族飽和の例である。第三の反応772は、SC6(SCの長さは6)およびSC3(SCの長さは3)といった、主要SC(側鎖)属性の観点からの側鎖クラッキングの例である。IM領域内の種は、任意の個々の分子反応および任意の属性反応で現れる可能性がある。MTおよびSCはそれぞれ、属性反応でのみ反応する。言い換えれば、MTおよびSCを、同じ反応で一緒に発現することはできない。さらに、一つの反応の左側(LHS)および右側(RHS)は、一つのMTまたはSCのみを有することができる。結果として、反応器内の質量平衡方程式は、以下の式1~式6として記述することができる。
【0051】
【0052】
IM種の質量平衡方程式(方程式1)は、個々の反応および属性の反応(MTおよびSC)の速度を含む。MT属性の質量平衡方程式(方程式2)は、MTに関する属性反応の速度のみを含み、SC属性の質量平衡方程式(方程式3)は、SCに関する属性反応の速度のみを含む。すべてのIMの総モル流量は、FtotalIM(方程式4)と呼ばれる。すべてのMTの総モル流量は、すべてのSCの総モル流量と等しく、属性の総モル流量:FtotalAtt(方程式5)として命名される。反応器内のすべての種の総モル流量:Ftotalは、FtotalIMとFtotalAttの合計(方程式6)である。
【0053】
反応器モデルの統合後、実施形態は、ARM領域664内の反応に由来するすべての個々の種をサンプリングして、分子組成物全体を下流ユニットの演算に伝えるか、または選択された生成物の特性を推定する。式7は、MTおよびSCの確率密度関数をサンプリングすることによって、反応後の種の組成を計算する方法を示す。
【0054】
【0055】
例えば、MBハイドロクラッカー(HCR)モデルにおいて、MTiが、芳香族飽和反応および開環反応に由来する一つのメチル基で置換された単一の芳香族環である場合、およびSCjが、側鎖クラッキングに由来する1に等しい長さを有する主SCである場合、それらによって画定される構成要素のモル流量、ARM領域中のより重い留分をアップグレードすることによって生成されるジメチルベンゼンは、FtotalAttにFMTi中の確率MTi(モル分率)およびFSCj中の確率SCj(モル分率)を乗じることによって計算することができる。MB HCRモデルの軽産物をナフサ連続触媒再生(CCR)リフォーマーに伝える必要がある場合、ジメチルベンゼン(p-キシレン、o-キシレン、およびm-キシレン)の個々の異性体を考慮する必要がある。方程式7では、異性体分布fisomが、三つのキシレンのモル流量を計算するために、ジメチルベンゼンのモル流量に対する追加の乗数として課される。fisomは、動態、熱力学、および精製プロセスの知識によって決定される。例示的な実施形態では、fisomは、化学およびモデルに基づいており、ユーザーは、指定するモデルを設定できる。そのため、一実施形態では、fisomは、ユーザー仕様の入力変数である。HCRプロセスでは、三つのキシレンの分布を決定する芳香族メチルシフト反応の速度は、通常、クラッキング、飽和などの他の反応の速度よりも有意に速い。したがって、実施形態は、芳香族メチルシフト反応に仮想平衡近似を適用することができる。結果として、それらの熱力学的平衡によって制約される異性体分布を導出することができ、モデルで使用することができる。実施形態によれば、個々の異性体の分化を必要としない中等度またはより重い生成物については、fisomは1に設定される。次いで、IM領域663における個々の反応からの反応後の結果が、ARM反応からサンプリングされた反応後の種と組み合わされて、ハイブリッドARMアプローチからの生成物の全分子詳細が決定される。
【0056】
ユーザーの関心に応じて、IM領域663には典型的にはO(50~1000)種があり、IM領域内の反応物および反応生成物の数はO(50~1000)である。上述したように、典型的な精製反応器では、通常、元の供給原料の分子型および生成物の反応により生成される分子型を含むO(100~2000)のMTがある。さらに、通常、O(50~500)の主SCがある。ARM領域664における反応物および反応生成物の数は、MTおよびSCの総数:O(150~2500)の属性である。反応器モデルで使用するすべての反応における反応物および生成物の総数は、ハイブリッドARMアプローチにより、O(200~3500)である。実施形態が、反応器を唯一の個々の分子としてモデル化する場合、考慮する反応物および生成物の数は、O(5000~10^6)である。したがって、ハイブリッドARMアプローチは、計算負荷を大幅に低減することができる。概念的には、ARM領域664にN個のMTおよびM個の主SCがある場合、ハイブリッドARMアプローチは、N+M個の変数のみを使用して、個々の異性体を含む完全な分子詳細を維持しながら、反応器モデルのARM領域のN*M個の分子を表現することができる。
【0057】
図8は、Aspen Technology,Inc.(出願人)のMB反応器にハイブリッドARMを提供する本発明の実施形態のワークフロー880を示す。ワークフロー880では、供給原料881は、まず組成モデル(例えば、Aspen Technology,Inc.(出願人)の米国特許出願第15/961,310号の分子特性付け)882によって特徴付けられ、一組の分子組成物へと変換される。ユーザーによって選択されたARM基準を使用して、MB反応器は、それらの分子組成物883を、一組のIM種884と、2種類の属性値:MT(分子型)885およびSC(側鎖)886に解析する。次に、反応物のIM 884、MT 885、およびSC 886が、入力値としてハイブリッドARMモデル887に転送される。シミュレーションは、MB反応器のハイブリッドARMモデル887で実行され、その後、MB反応器のシミュレーションで、ハイブリッドARMからの出力値は、生成物のIM(個々の分子)888、MT889、およびSC890である。生成物のMT 889およびSC 890を、一組の構成要素へとサンプリング891し、次いで、892をIM 888と組み合わせて、MB反応器の生成物の完全な分子組成893を生成する。
【0058】
実施形態は、MB EORXRのアプローチに類似した、ハイブリッドARMモデル用のエネルギー平衡方程式および運動量平衡方程式を採用してもよい。エネルギー平衡方程式を、以下の式8に示し、運動量平衡方程式を、以下の式9および式10に示す。
【0059】
【0060】
断熱反応器(例えば、HCR)については、式8の第二の項は無視することができる。
【0061】
【0062】
一実施形態では、ハイブリッドARMモデルは、MB EORXRビルダーへと組み込まれる。結果として、ハイブリッドARMモデルの残余、分析的ヤコビアン、およびスパース性、式1~式6の質量平衡方程式、式8のエネルギー平衡方程式、式9~式10の運動量平衡方程式、および式7のサンプリングプロセスが自動的に生成される。さらに、IM領域およびARM領域の分類は、ユーザー入力の基準から、MB EORXRビルダーによって自動化することができる。
【0063】
以下の表2は、MB EORXRで使用される一組の選択された熱力学的特性および物理的特性を列挙する。ARM領域664における反応および種は、MTおよびSCといった二つの属性によって表現されるため、式1~式10で使用されるARM領域内の反応および種の特性推定は、個々の分子ではなく、それらの属性から計算される。構造属性(MTまたはSC)は、分子構造の断片である。これらの特性を得る方法は、個々の構成成分を計算するために使用される機能に類似している。構造情報の特性は、属性の構造から直接解析することができる。実施形態は、表2の熱力学的特性を推定するために、グループ寄与法(例えば、ベンソン法)を使用してもよい。分子の構造官能基を数える代わりに、一実施形態は、これらの方法を調整して、属性MTまたはSCの構造断片を使用する。
【0064】
【0065】
実施形態は、供給原料をシミュレートするための個々の分子表現および分子属性表現を利用することを確認するために検証されている。例えば、ハイブリッドARMアプローチの一つのこうした検証は、性能試験のためにAspen Technology,Inc.(出願人)のMB HCRを使用し、解決時間、スケール、およびモデルの精度を比較した。取り上げられた実施例は、VGOの単一水素化処理床モデルと、二つの処理床および二つのクラッキング床からなるVGOの単段式ハイドロクラッカーモデルとである。モデルは、低減を全くせずに完全な詳細の構成成分を用いてシミュレーション(フルモデルと呼ばれる)され、その後、ハイブリッドARM法によって計算(ARMモデルと呼ばれる)された。検証では、ARMの異なる基準を設定することにより、ARMモデルの9個のシナリオをシミュレートして、ARM低減の効果を異なる粒度で比較した。以下の表3は、異なるARM基準に基づく9個のARMモデルの説明を示す。
【0066】
【0067】
単一水素化処理床VGOモデルの計算要求の統計を表4に示す。
【0068】
【0069】
表4の行1~3は、高い粒度を有するARMモデルの結果を示し、IM領域(例えば、663)の種は、ディーゼル留分までである。表4の行4~6は、中程度の粒度のARMモデルの結果を示し、IM領域の種は、ナフサ留分までである。表4の行7~9は、粒度の低いARMモデルの結果を示し、IM領域の種は、一連のパラフィンのみに限定される。最後の行は、フルモデルの結果である。表4から、VGO単一水素化処理床モデルの計算要求は、ハイブリッドARMモデルによって大幅に減少することができ、VGO単一水素化処理床モデルの解決時間は、Ring1SC0のシナリオにおいて31.13秒から2.74秒に短縮することができることが分かる。ARMモデルは、Aspen Technology,Inc.(出願人)のEOエンジンのフルモデルのようにまとめるのが簡単で、追加のクリープステップは必要ない。
【0070】
計算性能の比較に加えて、フルモデルおよびARMモデルの使用の精度も評価されて、ARMモデルの妥当性が検証された。比較において、蒸留曲線(
図9)、炭素数の分布(
図10)、DBEの分布(
図11)、グローバルPIONA(
図12)、および重量ベースの収率(
図13)など、生成物の選択された特性が考慮された。生成物についてのこれらの選択された特性の比較結果を、
図9~
図13に示す。
【0071】
図9は、VGO単一水素化処理床モデルにおけるフルモデルおよびARMモデルを使用して決定された、予測される蒸留曲線をプロット990a~cで示す。プロット990aは、フルモデル991a、Ring3SC8モデル992a、Ring3SC4モデル993a、およびRing3SC0モデル994aを使用して決定された、予測される蒸留曲線を示す。プロット990bは、フルモデル991b、Ring1SC8モデル992b、Ring1SC4モデル993b、およびRing1SC0モデル994bを使用して決定された予測される蒸留曲線を示す。プロット990cは、フルモデル991c、Ring2SC8モデル992c、Ring2SC4モデル993c、およびRing2SC0モデル994cを使用して決定された予測される蒸留曲線を示す。
【0072】
図10は、VGO単一水素化処理床モデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測される炭素数の分布をプロット1000a~cで示す。プロット1000aは、フルモデル1001a、Ring3SC8モデル1002a、Ring3SC4モデル1003a、およびRing3SC0モデル1004aを使用して決定された予測される炭素数の分布を示す。プロット1000bは、フルモデル1001b、Ring2SC8モデル1002b、Ring2SC4モデル1003b、およびRing2SC0モデル1004bを使用して決定された予測される炭素数の分布を示す。プロット1000cは、フルモデル1001c、Ring1SC8モデル1002c、Ring1SC4モデル1003c、およびRing1SC0モデル1004cを使用して決定された予測される炭素数の分布を示す。
【0073】
図11は、VGO単一水素化処理床モデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測されるDBEの分布をプロット1100a~cで示す。プロット1100aは、フルモデル1101a、Ring3SC8モデル1102a、Ring3SC4モデル1103a、およびRing3SC0モデル1104aを使用して決定された予測されるDBEの分布を示す。プロット1100bは、フルモデル1101b、Ring2SC8モデル1102b、Ring2SC4モデル1103b、およびRing2SC0モデル1104bを使用して決定された予測されるDBEの分布を示す。プロット1100cは、フルモデル1101c、Ring1SC8モデル1102c、Ring1SC4モデル1103c、およびRing1SC0モデル1104cを使用して決定された予測されるDBEの分布を示す。
【0074】
図12は、VGO単一水素化処理床モデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された、予測されるPIONA重量割合をプロット1200a~cで示す。プロット1200aは、フルモデル1201a、Ring3SC8モデル1202a、Ring3SC4モデル1203a、およびRing3SC0モデル1204aを使用して決定された予測されるPIONA重量割合を示す。プロット1200bは、フルモデル1201b、Ring2SC8モデル1202b、Ring2SC4モデル1203b、およびRing2SC0モデル1204bを使用して決定された予測されるPIONA重量割合を示す。プロット1200cは、フルモデル1201c、Ring1SC8モデル1202c、Ring1SC4モデル1203c、およびRing1SC0モデル1204cを使用して決定された予測されるPIONA重量割合を示す。
【0075】
図13は、VGO単一水素化処理床モデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測される収率をプロット1300a~cで示す。プロット1300aは、フルモデル1301a、Ring3SC8モデル1302a、Ring3SC4モデル1303a、Ring3SC0モデル1304a、およびRing2SC8モデル1305aを使用して決定された予測される収率を示す。プロット1300bは、フルモデル1301b、Ring2SC8モデル1302b、Ring2SC4モデル1303b、およびRing2SC0モデル1304bを使用して決定された予測される収率を示す。プロット1300cは、フルモデル1301c、Ring1SC8モデル1302c、Ring1SC4モデル1303c、およびRing1SC0モデル1304cを使用して決定された予測される収率を示す。
【0076】
図9~
図13は、フルモデルとARMモデルの結果との間に良好な一致があることを示す。ARMモデルで設定した粒度が高いほど、フルモデルの結果とARMモデルの結果との一致度が高くなる。VGO単一水素化処理床モデルに対するフルモデルと比較したARMモデルに対するR二乗の結果を、表5に示す。
【0077】
【0078】
このVGO単一水素化処理床モデルの事例では、その結果が
図9~
図13に示されており、ARMモデルのすべてのシナリオは、フルモデルのシナリオに近い。Ring1SC0のシナリオは、最良の計算性能を提供しており、これは、フルモデルよりもほぼ15倍高速である。
【0079】
実施形態はまた、二つの処理床および二つのクラッキング床を含むハイドロクラッカーモデルをシミュレートする第二の事例についても検証した。VGO MBハイドロクラッカーモデルの計算要求の統計を表6に示す。
【0080】
【0081】
表6の行1~3は、高い粒度を有するARMモデルの結果を示し、IM領域の種は、ディーゼル留分までである。表6の行4~6は、中程度の粒度のARMモデルの結果を示し、IM領域の種は、ナフサ留分までである。表6の行7~9は、粒度の低いARMモデルの結果を示し、IM領域の種は、一連のパラフィンのみに限定される。最後の行は、フルモデルの結果である。表6から、VGO MBハイドロクラッカーモデルの計算要求は、ハイブリッドARMモデルによって大幅に減少することができ、VGO MBハイドロクラッカーモデルの解決時間は、Ring1SC0のシナリオにおいて378.81秒から20.45秒に短縮することができることが分かる。ARMモデルは、Aspen Technology,Inc.(出願人)のEOエンジンのフルモデルのようにまとめるのが簡単で、より多くのクリープステップは必要ない。
【0082】
計算性能の比較に加えて、VGO MBハイドロクラッカーの例におけるフルモデルおよびARMモデルの精度も検証された。比較において、蒸留曲線(
図14)、炭素数の分布(
図15)、DBEの分布(
図16)、グローバルPIONA(
図17)、重量ベースの収率(
図18)、および反応器出口温度(
図19)など、生成物の選択された特性が考慮された。生成物についての選択された特性の比較結果は、
図14~
図19に示す。
【0083】
図14は、VGO MBハイドロクラッカーモデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測される蒸留曲線をプロット1400a~cで示す。プロット1400aは、フルモデル1401a、Ring3SC8モデル1402a、Ring3SC4モデル1403a、およびRing3SC0モデル1404aを使用して決定された予測される蒸留曲線を示す。プロット1400bは、フルモデル1401b、Ring2SC8モデル1402b、Ring2SC4モデル1403b、およびRing2SC0モデル1404bを使用して決定された、予測される蒸留曲線を示す。プロット1400cは、フルモデル1401c、Ring1SC8モデル1402c、Ring1SC4モデル1403c、およびRing1SC0モデル1404cを使用して決定された予測される蒸留曲線を示す。
【0084】
図15は、VGO MBハイドロクラッカーモデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測される炭素数の分布をプロット1500a~cで示す。プロット1500aは、フルモデル1501a、Ring3SC8モデル1502a、Ring3SC4モデル1503a、およびRing3SC0モデル1504aを使用して決定された予測される炭素数の分布を示す。プロット1500bは、フルモデル1501b、Ring2SC8モデル1502b、Ring2SC4モデル1503b、およびRing2SC0モデル1504bを使用して決定された予測される炭素数の分布を示す。プロット1500cは、フルモデル1501c、Ring1SC8モデル1502c、Ring1SC4モデル1503c、およびRing1SC0モデル1504cを使用して決定された予測される炭素数の分布を示す。
【0085】
図16は、VGO MBハイドロクラッカーモデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測されるDBEの分布をプロット1600a~cで示す。プロット1600aは、フルモデル1601a、Ring3SC8モデル1602a、Ring3SC4モデル1603a、およびRing3SC0モデル1604aを使用して決定された予測されるDBEの分布を示す。プロット1600bは、フルモデル1601b、Ring2SC8モデル1602b、Ring2SC4モデル1603b、およびRing2SC0モデル1604bを使用して決定された予測されるDBEの分布を示す。プロット1600cは、フルモデル1601c、Ring1SC8モデル1602c、Ring1SC4モデル1603c、およびRing1SC0モデル1604cを使用して決定された予測されるDBEの分布を示す。
【0086】
図17は、VGO MBハイドロクラッカーモデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測されるPIONA重量割合をプロット1700a~cで示す。プロット1700aは、フルモデル1701a、Ring3SC8モデル1702a、Ring3SC4モデル1703a、およびRing3SC0モデル1704aを使用して決定された予測されるPIONA重量割合を示す。プロット1700bは、フルモデル1701b、Ring2SC8モデル1702b、Ring2SC4モデル1703b、およびRing2SC0モデル1704bを使用して決定された予測されるPIONA重量割合を示す。プロット1700cは、フルモデル1701c、Ring1SC8モデル1702c、Ring1SC4モデル1703c、およびRing1SC0モデル1704cを使用して決定された予測されるPIONA重量割合を示す。
【0087】
図18は、VGO MBハイドロクラッカーモデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測される収率をプロット1800a~cで示す。プロット1800aは、フルモデル1801a、Ring3SC8モデル1802a、Ring3SC4モデル1803a、Ring3SC0モデル1804a、およびRing2SC8モデル1805aを使用して決定された予測される収率を示す。プロット1800bは、フルモデル1801b、Ring2SC8モデル1802b、Ring2SC4モデル1803b、およびRing2SC0モデル1804bを使用して決定された予測される収率を示す。プロット1800cは、フルモデル1801c、Ring1SC8モデル1802c、Ring1SC4モデル1803c、およびRing1SC0モデル1804cを使用して決定された予測される収率を示す。
【0088】
図19は、VGO MBハイドロクラッカーモデルにおいて、フルモデルおよびARMモデルを使用して決定された予測される反応器出口温度をプロット1900a~cで示す。プロット1900aは、フルモデル1901a、Ring1SC8モデル1902a、Ring1SC4モデル1903a、およびRing1SC0モデル1904aを使用して決定された予測される反応器出口温度を示す。プロット1900bは、フルモデル1901b、Ring2SC8モデル1902b、Ring2SC4モデル1903b、およびRing2SC0モデル1904bを使用して決定された予測される反応器出口温度を示す。プロット1900cは、フルモデル1901c、Ring3SC8モデル1902c、Ring3SC4モデル1903c、およびRing3SC0モデル1904cを使用して決定された予測される反応器出口温度を示す。
【0089】
図14~
図19は、フルモデルの結果とARMモデルの結果との間に良好な一致があることを示す。ARMモデルで設定した粒度が高いほど、フルモデルとARMモデルの一致度が高くなる。VGO MBハイドロクラッカーモデルに対するフルモデルと比較したARMモデルのR二乗の結果を、以下の表8に示す。
【0090】
【0091】
このMBハイドロクラッカーモデルの事例では、ARMモデルのすべてのシナリオの結果と、フルモデルの結果との一貫性は良好である。最も低い粒度であるRing1SC0のシナリオは、最良の計算性能を提供しており、これは、フルモデルよりもほぼ18倍高速である。そのモデルから予測される結果は、フルモデルの結果と完全には合致しないが、Ring1SC0のシナリオの精度は、典型的な産業用途には十分である。したがって、MB EORXRにおけるハイブリッドARMアプローチは、複雑なフローシートにおける複雑な供給原料および変換の分子ベースの運動モデルを解決する非常に効率的な方法を提供する。重油の複雑な反応器モデルを、詳細な分子情報を失わずに、O(秒)以内で解決することができる。計算性能は、分子モデル化を、多範囲レベルでの幅広い精製プロセスのマルチスケールモデルに適用するための最も重要な課題の一つである(精製業界ではスマートマニュファクチャリングと呼ばれる)。ハイブリッドARMモデルは、有限数の属性を使用して、ほぼ無限数の分子種と、複雑な炭化水素混合物(例えば、重質残油)中でのそれらの反応を記述することによって、この問題に効果的に対処することができ、それゆえに精製業界でのスマートマニュファクチャリングを最適化する基礎である。
【0092】
図20は、本発明を実装し得る、コンピュータネットワークまたは類似のデジタル処理環境を図示する。
【0093】
クライアントコンピュータ/デバイス50およびサーバコンピュータ60は、アプリケーションプログラムおよびこれに類するものを実行する、処理、記憶、および入出力デバイスを提供する。クライアントコンピュータ/デバイス50はまた、通信ネットワーク70を介して、他のクライアントデバイス/プロセス50およびサーバコンピュータ60を含む、他のコンピュータデバイスにリンクできる。通信ネットワーク70は、リモートアクセスネットワーク、グローバルネットワーク(例えば、インターネット)、クラウドコンピューティングのサーバーまたはサービス、世界中に散らばったコンピュータの一群、ローカルエリアまたは広域ネットワーク、および互いに通信するためにそれぞれのプロトコル(TCP/IP、Bluetoothなど)を現在使用するゲートウェイの一部とすることができる。他の電子デバイス/コンピュータネットワークアーキテクチャも好適である。
【0094】
図21は、
図20のコンピュータシステムにおける、コンピュータ(例えば、クライアントプロセッサ/デバイス50またはサーバコンピュータ60)の内部構造図である。各コンピュータ50、60は、システムバス79を包含し、バスは、コンピュータまたは処理システムの構成要素間のデータ転送に使用される、一連のハードウェアラインである。バス79は本質的に、要素間の情報転送を可能にするコンピュータシステムの異なる要素(例えば、プロセッサ、ディスク記憶装置、メモリ、入出力ポート、ネットワークポートなど)を接続する、共有導管である。システムバス79に取り付けられるのは、様々な入出力デバイス(例えば、キーボード、マウス、ディスプレイ、プリンター、スピーカーなど)をコンピュータ50、60に接続するための、I/Oデバイスインターフェース82である。ネットワークインターフェース86によって、コンピュータが、ネットワーク(例えば、
図20のネットワーク70)に取り付けられる、様々な他のデバイスに接続することが可能になる。メモリ90は、本発明の実施形態を実装するために使用されるコンピュータソフトウェア命令92およびデータ94(例えば上記に詳述される方法220、MB EORXRなど)のための、揮発性記憶装置を提供する。ディスク記憶装置95は、本発明の実施形態を実装するために使用される、コンピュータソフトウェア命令92およびデータ94のための不揮発性記憶装置を提供する。中央処理装置84もまた、システムバス79に取り付けられ、コンピュータ命令の実行に備える。
【0095】
一実施形態では、プロセッサルーチン92およびデータ94は、本発明のシステムにソフトウェア命令の少なくとも一部分を提供する、コンピュータ可読媒体(例えば、一つ以上のDVD-ROM、CD-ROM、ディスケット、テープなどの取り外し可能な記憶媒体)を含む、コンピュータプログラム製品(概して92で参照される)である。コンピュータプログラム製品92は、当技術分野において周知のように、任意の好適なソフトウェアインストール手順によってインストールすることができる。別の実施形態では、ソフトウェア命令の少なくとも一部分は、ケーブル、通信および/または無線接続でダウンロードされてもよい。他の実施形態では、本発明のプログラムは、伝搬媒体に伝搬される信号(例えば、電波、赤外線波、レーザー波、音波、またはインターネットなどのグローバルネットワークもしくは他のネットワーク上で伝搬される電気的な波)上で具現化される、コンピュータプログラムを伝搬する信号製品107である。こうした搬送媒体または信号は、本発明のルーチン/プログラム92に対する、ソフトウェア命令の少なくとも一部分を提供する。
【0096】
代替の実施形態では、伝搬される信号は、伝搬媒体上で搬送されるアナログ搬送波またはデジタル信号である。例えば、伝搬される信号は、グローバルネットワーク(例えば、インターネット)、電気通信ネットワークまたは他のネットワーク上で伝搬される、デジタル化信号であってもよい。一実施形態では、伝搬される信号は、何ミリ秒、何秒、何分、またはそれより長い期間にわたってネットワーク上をパケットとして送られるソフトウェアアプリケーションに対する命令など、ある期間にわたって伝搬媒体を介して送信される信号である。別の実施形態では、コンピュータプログラム製品92のコンピュータ可読媒体は、コンピュータプログラムを伝搬する信号製品について上に記載するように、コンピュータシステム50が、伝搬媒体を受信し、そして伝搬媒体内の具現化される伝搬される信号を識別することなどによって、受信し、かつ読み出す伝搬媒体である。
【0097】
概して言うと、用語「搬送媒体」または過渡の搬送波は、前述の過渡信号、伝搬される信号、伝搬される媒体、記憶媒体およびこれに類するものを網羅する。
【0098】
他の実施形態では、プログラム製品92は、いわゆるサービスとしてのソフトウェア(SaaS)、またはエンドユーザをサポートする他のインストールまたは通信として実装されてもよい。
【0099】
実施形態またはその態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形態で実装されてもよい。ソフトウェアで実装された場合、ソフトウェアは、プロセッサが、ソフトウェアまたはその命令のサブセットをロードすることが可能になるように構成されている、任意の非一時的コンピュータ可読媒体上に格納されてもよい。次いで、プロセッサは、命令を実行して、本明細書に記載された様態で動作する、または装置を動作させるように構成される。
【0100】
さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、データプロセッサの特定の動作および/または機能を実行するものとして、本明細書に記載されてもよい。しかし、当然のことながら、本明細書に含まれるこうした記載は、単に便宜のためであり、かつ、実際には、こうした動作は、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピュータデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスからもたらされる。
【0101】
当然のことながら、フロー図、ブロック図、およびネットワーク図は、より多いもしくは少ない要素を含んでもよく、異なって配置されてもよく、または異なって表現されてもよい。しかし、さらに当然のことながら、特定の実装形態は、実施形態の実行を例解する、ブロック図およびネットワーク図、ならびに数枚のブロック図およびネットワーク図が、特定の方法で実装されることを、指示する場合がある。
【0102】
それに応じて、さらなる実施形態はまた、様々なコンピュータアーキテクチャ、物理的、仮想的、クラウドコンピュータ、および/またはそれらのいくつかの組み合わせに実装されてもよく、したがって、本明細書に記載のデータプロセッサは、例解の目的で意図されているに過ぎず、実施形態の限定として意図されるものではない。
【0103】
例示的な実施形態を特に示し、かつ説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に含まれる実施形態の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がなされてもよいことが理解されるであろう。
なお、本発明は、態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
化学反応器内の化学反応をモデル化して、前記反応の生成物を決定するためのコンピュータ実装された方法であって、
コンピュータメモリ内で、個々の分子表現および分子属性表現を含む表現の組み合わせとして、供給原料中の分子の組成を表すことと、
前記コンピュータメモリ内で、前記個々の分子表現および前記分子属性表現に基づいて、化学反応器内での前記供給原料の化学反応の化学的性質の表現を定式化することと、
前記個々の分子表現、前記分子属性表現、および前記化学反応の前記化学的性質の前記定式化された表現を使用して、前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応のシミュレーションを実行することであって、前記シミュレーションが、前記反応の生成物の組成を決定し、前記反応の前記生成物の第一のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で個々の分子表現された生成物として表現され、かつ前記反応の前記生成物の第二のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で、属性表現された生成物として表現される、ことと、
前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物をサンプリングして、前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物の個々の分子表現を自動的に決定し、これにより前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの個々の分子表現が、結果としてもたらされる、こととを、を含む、方法。
〔態様2〕
前記分子属性表現が、分子型および一つ以上の側鎖を含む、態様1に記載の方法。
〔態様3〕
前記化学反応の前記化学的性質の前記表現が、熱化学、酸触媒化学、および金属触媒化学のうちの少なくとも一つに由来する化学反応を含む、態様1に記載の方法。
〔態様4〕
前記個々の分子表現された生成物と、前記属性表現された生成物の前記個々の分子表現とを組み合わせて、前記生成物の完全な分子組成物を決定することをさらに含む、態様1に記載の方法。
〔態様5〕
ユーザー入力に基づいて、前記シミュレーションを実行するために使用される方程式を定義することをさらに含む、態様1に記載の方法。
〔態様6〕
前記ユーザー入力が、反応型、反応経路、熱力学的特性、物理的特性、および速度則の式のうちの少なくとも一つである、態様5に記載の方法。
〔態様7〕
前記供給原料が、炭化水素混合物、石炭、およびシェール油のうちの少なくとも一つである、態様1に記載の方法。
〔態様8〕
ユーザー入力に基づいて、前記個々の分子表現または前記分子属性表現を使用して、前記供給原料中のどの分子を表現するかを選択することをさらに含む、態様1に記載の方法。
〔態様9〕
前記ユーザー入力が、前記個々の分子表現を使用して表現される分子に対する炭素数の制限および環数の制限を示す、態様8に記載の方法。
〔態様10〕
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、化学処理手順の修正を評価することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、反応プロセスを最適化することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、生成物の特性を予測することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、下流ユニットについての分子詳細を予測することによって、前記化学反応器と前記下流ユニットの統合をモデル化することと、
方程式指向(EO)方法を使用して、前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、複雑な炭化水素混合物の変換のシステムを最適化することと、のうち少なくとも一つをさらに含む、態様1に記載の方法。
〔態様11〕
前記シミュレーションを実行することが、属性ベースの質量平衡方程式、属性ベースのエネルギー平衡方程式、および属性ベースの運動量平衡方程式のうちの少なくとも一つを利用する、態様1に記載の方法。
〔態様12〕
化学反応器内での化学反応をモデル化して、前記反応の生成物を決定するシステムであって、
プロセッサと、
コンピュータコード命令が格納されたメモリと、を備え、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記メモリ内で、個々の分子表現および分子属性表現を含む表現の組み合わせとして、供給原料中の分子の組成を表現させ、
前記メモリ内で、前記個々の分子表現および前記分子属性表現に基づいて、化学反応器内での前記供給原料の化学反応の化学的性質の表現を定式化させ、
前記個々の分子表現、前記分子属性表現、および前記化学反応の前記化学的性質の前記定式化された表現を使用して、前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応のシミュレーションを実行させ、前記シミュレーションが、前記反応の生成物の組成を決定し、前記反応の前記生成物の第一のサブセットが、前記メモリ内で個々の分子表現された生成物として表現され、かつ前記反応の前記生成物の第二のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で、属性表現された生成物として表現され、かつ、
前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物をサンプリングさせて、前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物の個々の分子表現を自動的に決定させ、これにより前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応の生成物の前記第一および第二のサブセットの個々の分子表現が結果としてもたらされるように構成される、システム。
〔態様13〕
前記分子属性表現が、分子型および一つ以上の側鎖を含む、態様12に記載のシステム。
〔態様14〕
前記化学反応の前記化学的性質の前記表現が、熱化学、酸触媒化学、および金属触媒化学のうちの少なくとも一つに由来する化学反応を含む、態様12に記載のシステム。
〔態様15〕
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記個々の分子表現された生成物と、前記属性表現された生成物の前記個々の分子表現とを組み合わせて、前記生成物の完全な分子組成物を決定させるようにさらに構成される、態様12に記載のシステム。
〔態様16〕
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
ユーザー入力に基づいて、前記シミュレーションの実行に使用される方程式を定義させるようにさらに構成される、態様12に記載のシステム。
〔態様17〕
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
ユーザー入力に基づいて、前記個々の分子表現または前記分子属性表現を使用して、前記供給原料中のどの分子を表現するかを選択させるようにさらに構成される、態様12に記載のシステム。
〔態様18〕
前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、化学処理手順の修正を評価することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、反応プロセスを最適化することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、生成物の特性を予測することと、
前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、下流ユニットについての分子詳細を予測することによって、前記化学反応器と前記下流ユニットの統合をモデル化することと、
方程式指向(EO)方法を使用して、前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの前記決定された個々の分子表現に基づいて、複雑な炭化水素混合物の変換のシステムを最適化することと、のうち少なくとも一つを行わせるようにさらに構成される、態様12に記載のシステム。
〔態様19〕
前記シミュレーションを実行する上で、前記プロセッサおよび前記メモリが、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、属性ベースの質量平衡方程式、属性ベースのエネルギー平衡方程式、および属性ベースの運動量平衡方程式のうちの少なくとも一つを利用させるようにさらに構成される、態様12に記載のシステム。
〔態様20〕
化学反応器内での化学反応をモデル化し、反応の生成物を決定するための非一時的コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品が、その中に格納されたコンピュータコード命令を有するコンピュータ可読媒体を備え、前記コンピュータコード命令が、プロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに関連付けられた装置に、
コンピュータメモリ内で、個々の分子表現および分子属性表現を含む表現の組み合わせとして、供給原料中の分子の組成を表現させ、
前記コンピュータメモリ内で、前記個々の分子表現および前記分子属性表現に基づいて、化学反応器内での前記供給原料の化学反応の化学的性質の表現を定式化させ、
前記個々の分子表現、前記分子属性表現、および前記化学反応の前記化学的性質の前記定式化された表現を使用して、前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応のシミュレーションを実行させ、前記シミュレーションが、前記反応の生成物の組成を決定し、前記反応の前記生成物の第一のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で個々の分子表現された生成物として表現され、かつ前記反応の前記生成物の第二のサブセットが、前記コンピュータメモリ内で、属性表現された生成物として表現され、かつ、
前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物をサンプリングさせて、前記第二のサブセットの前記属性表現された生成物の個々の分子表現を自動的に決定させ、これにより前記化学反応器内での前記供給原料の前記化学反応の前記生成物の前記第一および第二のサブセットの個々の分子表現が、結果としてもたらされるように構成された、非一時的コンピュータプログラム製品。