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特許7511025チップ表面リンカー並びにその調製方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】チップ表面リンカー並びにその調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240627BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240627BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20240627BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N15/09 200
C12Q1/68
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022564503
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2021090905
(87)【国際公開番号】W WO2021219073
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】202010366021.0
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519241381
【氏名又は名称】ナンジン、ジェンスクリプト、バイオテック、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NANJING GENSCRIPT BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】28 Yongxi Road,Jiangning Science Park, Nanjing, Jiangsu 211100 China
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェイチー、フー
(72)【発明者】
【氏名】チェンシアン、ウー
(72)【発明者】
【氏名】チアンパン、ワン
(72)【発明者】
【氏名】ユーファン、ファン
(72)【発明者】
【氏名】マァンジア、ワン
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0186779(US,A1)
【文献】特表2019-503715(JP,A)
【文献】特表2018-524020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0261026(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0071463(KR,A)
【文献】Harper, J. C. et al.,"Selective immobilization of DNA and antibody probes on electrode arrays: simultaneous electrochemical detection of DNA and protein on a single platform",Langmuir,2007年,Vol. 23,pp. 8285-8287
【文献】Levrie, K. et al.,"Direct on-chip DNA synthesis using electrochemically modified gold electrodes as solid support",Japanese Journal of Applied Physics,2018年,Vol. 57; 04FM01,pp. 04FM01-1 - 04FM01-5
【文献】Lee, C.-S. et al.,"Electrically Addressable Biomolecular Functionalization of Carbon Nanotube and Carbon Nanofiber Electrodes",Nano Letters,2004年,Vol. 4,pp. 1713-1716
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00-3/10
C12N 15/00-15/90
C07H 21/00-21/04
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ表面リンカーであって、
(1)チップ表面に共有結合される結合分子基、及び
(2)ヒドロキシル基及びエステル基などの反応性基を含む機能分子基
を含み、
前記機能分子基が直接的に又は結合腕分子基によって前記結合分子基と結合しており、
前記機能分子基は、機能分子によって結合分子基、または結合腕分子基と反応され、且つそれに結合され、
前記機能分子は、長炭素鎖及びエステル基を含有するヒドロキシル物質であり、前記機能分子は、無水コハク酸修飾塩基モノマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル、コハク酸修飾塩基モノマー又はシュウ酸修飾塩基モノマー、好ましくは無水コハク酸修飾塩基モノマーから選択され、且つ
前記チップは、金属チップ、好ましくは金チップ、白金チップ又はアルミニウムチップである、
チップ表面リンカー。
【請求項2】
前記結合分子基は、結合分子のチップ表面との反応により形成される、請求項1に記載のチップ表面リンカー。
【請求項3】
前記結合分子は、p-アミノフェニル酢酸、p-アミノフェニルエタノール又はp-アミノフェニレンジアミン、好ましくはp-アミノフェニル酢酸から選択される、請求項に記載のチップ表面リンカー。
【請求項4】
前記機能分子中の前記塩基モノマーは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルの1つ以上から選択される、請求項に記載のチップ表面リンカー。
【請求項5】
前記結合腕分子基は、結合腕分子によって前記結合分子基と反応され、且つそれに結合され、請求項1~のいずれか一項に記載のチップ表面リンカー。
【請求項6】
前記結合腕分子は、ジアミン又はジオール物質である、請求項に記載のチップ表面リンカー。
【請求項7】
前記結合腕分子は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、1,8-オクタンジアミン、エチレングリコール、ヘキサンジオール、デカンジオール又は1,8-オクタンジオール、好ましくは1,8-オクタンジアミンから選択される、請求項又はに記載のチップ表面リンカー。
【請求項8】
前記チップは、金属白金チップである、請求項に記載のチップ表面リンカー。
【請求項9】
チップ表面リンカーの調製方法であって、
ステップ1:芳香族アミン結合分子を酸及び亜硝酸塩と混合して、混合溶液を得るステップ;
ステップ2:ステップ1における前記混合溶液をチップ表面と接触させ、且つ反応のために直流電圧を印加して、前記チップ表面に結合された結合分子基を形成するステップ;
場合によっては、ステップ2における反応させた前記チップ表面を反応のために結合腕分子と接触させて、結合腕分子基を結合させるステップ;
及び
ステップ3:反応させた前記チップ表面を機能分子と反応させて、機能分子基を前記結合分子基又は前記結合腕分子基に結合させ、前記機能分子基がヒドロキシル基及びエステル基を含有するチップ表面リンカーを得るステップ
を含む調製方法。
【請求項10】
前記結合分子は、アニリン物質である、請求項に記載の調製方法。
【請求項11】
前記結合分子は、p-アミノフェニル酢酸、p-アミノフェニルエタノール又はp-アミノフェニレンジアミン、好ましくはp-アミノフェニル酢酸から選択される、請求項又は10に記載の調製方法。
【請求項12】
前記直流電圧は、定常直流電圧であり、及び前記印加される直流電圧は、0.5~5.0V、好ましくは0.5~3.0Vから選択される、請求項11のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項13】
前記直流電圧は、10~50分間、好ましくは10~30分間にわたって印加される、請求項12のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項14】
前記亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム又は亜硝酸カルシウム、好ましくは亜硝酸ナトリウムから選択される、請求項13のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項15】
前記酸は、塩酸、硝酸又は硫酸、好ましくは塩酸から選択される、請求項14のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項16】
前記機能分子は、無水コハク酸修飾塩基モノマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル、コハク酸修飾塩基モノマー又はシュウ酸修飾塩基モノマー、好ましくは無水コハク酸修飾塩基モノマーから選択される、請求項15のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項17】
前記機能分子中の前記塩基モノマーは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルの1つ以上から選択される、請求項16に記載の調製方法。
【請求項18】
前記結合腕分子は、ジアミン又はジオール物質である、請求項17のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項19】
前記結合腕分子は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、1,8-オクタンジアミン、エチレングリコール、ヘキサンジオール、デカンジオール又は1,8-オクタンジオール、好ましくは1,8-オクタンジアミンから選択される、請求項18に記載の調製方法。
【請求項20】
前記直流電圧がステップ2において反応のために印加されるとき、温度は、4℃~40℃、好ましくは20℃~37℃であり;及び反応時間は、10~50分、好ましくは10~30分である、請求項19のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項21】
チップは、金属チップ、好ましくは金チップ、白金チップ及びアルミニウムチップである、請求項20のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項22】
核酸合成又はチップキット調製における、請求項1~のいずれか一項に記載のチップ表面リンカーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップ調製の技術分野、特に核酸の電気的に支援されたチップ合成に使用されるリンカー並びにその調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
安定なリンカーは、金属又は半導体チップにおいて非常に重要である。一方では、安定なリンカーは、表面上の多数のオリゴヌクレオチドポリマー(オリゴプール)及びDNAプローブのインサイチュ合成又は予備調製に使用可能であり、核酸分子が合成プロセス中に落下しないことを保証し、それにより合成品質を保証し得る。他方では、安定なリンカーは、チップ表面上の核酸に強固に結合することで、チップ上のインサイチュハイブリダイゼーション、チップスクリーニング及びチップ診断などの異なる使用を達成することができ;サンプルハイブリダイゼーションシグナルを検出及び分析することにより、定性又は定量分析は、サンプル中の特定のバイオマーカーに対して実施することができ、疾患診断、薬物スクリーニング、新しい医薬品開発、農業及び環境研究並びに他の分野において非常に大きい役割を果たし得る。しかしながら、チップ上での核酸の合成に使用される既存のリンカーの場合、特にリンカーの安定性及び調製コストの観点からいくつかの問題が依然として存在する。それらの問題は、リンカーを調製するための方法に関連する。先行技術におけるリンカーを調製するための方法は、主に小分子接着[1]、金属-スルフヒドリル反応[2]及びポリマーコーティング[3,4]を含む。それらの中で、小分子接着では、チップ表面上でリンカーを形成するため、高濃度小分子の接着が用いられる。この方法の不利益は、調製されたリンカーが弱い接着性を有し、特に核酸合成のプロセス中に落下することがあり、合成エラーの増加をもたらす点である。さらに、この方法によって調製されたリンカーは、水に感受性があり、後の適用中に落下することになり、顧客の応用ニーズをさらに満たすことが困難になる。金属-スルフヒドリル反応では、リンカーとして、金属と反応し、共有結合を形成するためのスルフヒドリルが使用される。この方法の課題は、帯電を用いて核酸を合成するとき、スルフヒドリルが還元され、金属表面から落下し、核酸合成の失敗をもたらし、後の応用にとってそれがより困難になる点である。ポリマーコーティングでは、チップ表面をコーティングするためのポリマー又はナノ物質が使用され、次にリンカーを形成するために対応する分子が修飾される。しかしながら、コーティング材及び金属表面の安定性の組み合わせは、限られており、コーティングの厚みは、各時間を制御することが困難であり、高度に均一な表面は、達成困難であり、熱水又は塩基性条件における安定性は、依然として不十分である。これらの問題の解決が緊急に求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
この観点から、本願は、チップ表面リンカー並びにその調製方法及び使用を提供する。本願によって提供されるチップ表面リンカーは、例えば、良好な安定性を有し、熱水及び塩基性条件において安定であり、良好な電気伝導度、通電中の安定性及び核酸合成に必要とされる有機溶媒に対する耐性を有し、且つ核酸合成に有利であるなどである。
【0004】
本発明は、チップ表面リンカーを提供し、リンカーは、ステップ1:酸及び亜硝酸塩の存在下において、直流電圧を印加して芳香族アミン結合分子をチップ表面と反応させて、チップ表面に結合された結合分子基(bonding molecule group)を形成するステップ;及びステップ2:機能分子を反応及び修飾に使用して、ヒドロキシル基及びエステル基を含有する機能分子基(functional molecule group)を含有するリンカーを得るステップによって得られる。
【0005】
いくつかの実施形態において、結合分子は、アニリン物質である。いくつかの他の実施形態において、結合分子は、p-アミノフェニル酢酸、p-アミノフェニルエタノール又はp-アミノフェニレンジアミン、好ましくはp-アミノフェニル酢酸から選択される。
【0006】
いくつかの実施形態において、直流電圧は、定常直流電圧であり、及び印加される直流電圧は、0.5~5.0V、好ましくは2.5~3.0V、より好ましくは2.5Vから選択される。他の好ましい定常直流電圧は、0.5V、0.6V、0.7V、0.8V、0.9V、1.0V、1.1V、1.2V、1.3V、1.4V、1.5V、1.6V、1.7V、1.8V、1.9V、2.0V、2.1V、2.2V、2.3V、2.4V、2.6V、2.7V、2.8V、2.9V、3.0V、3.1V、3.2V、3.3V、3.4V、3.5V、3.6V、3.7V、3.8V、3.9V、4.0V、4.1V、4.2V、4.3V、4.4V、4.5V、4.6V、4.7V、4.8V、4.9V又は5.0Vである。
【0007】
いくつかの実施形態において、直流電圧は、10~50分間、好ましくは10~30分間、より好ましくは20分間にわたって印加される。他の好ましい直流電圧印加時間は、10分、12分、14分、16分、18分、20分、22分、24分、26分、28分又は30分である。
【0008】
いくつかの実施形態において、亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム又は亜硝酸カルシウム、好ましくは亜硝酸ナトリウムから選択される。
【0009】
いくつかの実施形態において、酸は、塩酸、硝酸又は硫酸、好ましくは塩酸から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態において、機能分子は、長炭素鎖及びエステル基を含有するヒドロキシル物質である。いくつかの他の実施形態において、機能分子は、無水コハク酸修飾塩基モノマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル、コハク酸修飾塩基モノマー又はシュウ酸修飾塩基モノマー、好ましくは無水コハク酸修飾塩基モノマーから選択される。いくつかの実施形態において、機能分子中の塩基モノマーは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルの1つ以上から選択される。具体的な実施形態において、機能分子は、無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン、無水コハク酸修飾チミン又は無水コハク酸修飾ウラシルである。
【0011】
いくつかの実施形態において、結合腕分子基(connecting arm molecule group)は、結合分子基と機能分子基との間にさらに含まれる。好ましくは、結合腕分子基は、結合腕分子によって結合分子基と反応され、且つそれに結合され、及び機能分子基は、機能分子によって結合腕分子基と反応され、且つそれに結合される。
【0012】
いくつかの実施形態において、結合腕分子は、ジアミン又はジオール物質である。いくつかの他の実施形態において、結合腕分子は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、1,8-オクタンジアミン、エチレングリコール、ヘキサンジオール、デカンジオール又は1,8-オクタンジオール、好ましくは1,8-オクタンジアミンから選択される。いくつかの実施形態において、結合腕分子は、ジアミン物質である。いくつかの他の実施形態において、結合腕分子は、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミン又は1,8-オクタンジアミン、好ましくは1,8-オクタンジアミンから選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、チップは、金属チップ、好ましくは金チップ、白金チップ又はアルミニウムチップ、より好ましくは金属白金チップである。
【0014】
本発明は、チップ表面リンカーの調製方法であって、
ステップ1:芳香族アミン結合分子を酸及び亜硝酸塩と混合して、混合溶液を得るステップ;
ステップ2:ステップ1における混合溶液をチップ表面と接触させ、且つ反応のために直流電圧を印加して、チップ表面に結合された結合分子基を形成するステップ;及び
ステップ3:機能分子を反応及び修飾に使用して、ヒドロキシル基及びエステル基を含有する機能分子基を含有するリンカーを得るステップ
を含む調製方法をさらに提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、調製方法は、ステップ3前に、ステップ2における反応チップ表面を反応のために結合腕分子と接触させて、結合腕分子基を結合させるステップを含む。反応チップ表面は、反応のためにステップ3における機能分子とさらに接触されて、機能分子基を結合させる。
【0016】
いくつかの実施形態において、結合分子は、アニリン物質である。いくつかの他の実施形態において、結合分子は、p-アミノフェニル酢酸、p-アミノフェニルエタノール又はp-アミノフェニレンジアミン、好ましくはp-アミノフェニル酢酸である。
【0017】
いくつかの実施形態において、機能分子は、長炭素鎖及びエステル基を含有するヒドロキシル物質である。いくつかの他の実施形態において、機能分子は、無水コハク酸修飾塩基モノマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル、コハク酸修飾塩基モノマー又はシュウ酸修飾塩基モノマー、より好ましくは無水コハク酸修飾モノマーから選択され、機能分子中の塩基モノマーは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルの1つ以上から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、ステップ2における直流電圧は、定常直流電圧であり、及び印加される直流電圧は、0.5~5.0V、好ましくは0.5~3.0V、より好ましくは2.5Vから選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、ステップ2では、ステップ1で得られた混合溶液がチップ表面と接触され、及び定常直流電圧が反応のために印加されるとき、温度は、4℃~40℃、好ましくは20℃~37℃、例えば20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃又は37℃、好ましくは室温であり;及び反応時間は、10~50分、好ましくは10~30分、例えば10分、12分、14分、16分、18分、20分、22分、24分、26分、28分又は30分、より好ましくは20分である。
【0020】
いくつかの実施形態において、亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム又は亜硝酸カルシウム、好ましくは亜硝酸ナトリウムから選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、酸は、塩酸、硝酸又は硫酸、好ましくは塩酸から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、結合腕分子は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、1,8-オクタンジアミン、エチレングリコール、ヘキサンジオール、デカンジオール又は1,8-オクタンジオール、好ましくは1,8-オクタンジアミンから選択されるジアミン又はジオール物質である。いくつかの実施形態において、結合腕分子は、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、デカンジアミン又は1,8-オクタンジアミン、好ましくは1,8-オクタンジアミンから選択されるジアミン物質である。
【0023】
いくつかの実施形態において、チップは、金チップ、白金チップ及びアルミニウムチップ、好ましくは金属白金チップから選択される金属チップである。
【0024】
本発明は、核酸合成又はチップキット調製における上記のチップ表面リンカーの使用をさらに提供する。
【0025】
本発明は、チップ表面リンカーを提供する。酸及び亜硝酸塩の存在下において、直流電圧を印加して芳香族アミン結合分子をチップ表面と反応させて、チップ表面に結合された結合分子基が形成され、次に結合腕分子及び結合分子基を反応及び結合させ、結合腕分子基が形成され、次に機能分子を結合腕分子基と反応させ、ヒドロキシル基及びエステル基を含有する機能分子基を含有するリンカーが得られる。
【0026】
本発明に記載の結合分子は、アニリン物質などの芳香族アミン物質であり、p-アミノフェニル酢酸、p-アミノフェネチルアルコール又はp-アミノフェニレンジアミンであり得る。本発明のいくつかの実施形態において、結合分子は、p-アミノフェニル酢酸である。本発明に記載の結合分子基は、結合分子及びチップ表面が電気促進反応を経てから、チップ表面に共有結合される基である。いくつかの実施形態において、結合分子基は、酸及び亜硝酸塩の存在下において、定常直流電圧を印加して、芳香族アミン結合分子をチップ表面と反応させることによって形成される基である。いくつかの実施形態において、結合分子は、p-アミノフェニル酢酸、p-アミノフェニルエタノール又はp-アミノフェニレンジアミンであり得る。本発明において、芳香族アミン結合分子は、酸及び亜硝酸塩の存在下において、定常直流電圧を印加することによってジアゾ化されて芳香族炭素基を生成し、芳香族炭素基及びチップ電極材料は、共有結合を形成するように反応され、結合される。
【0027】
本発明で記載される結合腕分子は、ジアミン又はジオール物質であり、これは、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン、1,8-オクタンジアミン、エチレングリコール、ヘキサンジオール、デカンジオール又は1,8-オクタンジオールであり得る。本発明のいくつかの実施形態において、結合腕分子は、1,8-オクタンジアミンである。本発明で記載される結合腕分子基は、結合腕分子を結合分子基及び機能分子と順に反応させることによって生成される基である。いくつかの実施形態において、結合腕分子基は、エチレンジアミン基、ヘキサメチレンジアミン基、デカンジアミン基、1,8-オクタンジアミン基、エチレングリコール基、ヘキサンジオール基、デカンジオール基又は1,8-オクタンジオール基から選択され得る。本発明において、結合分子基と結合されたチップは、結合腕分子溶液中に浸漬され、それにより長鎖分子を修飾し、官能基とチップとの間の距離を増加させ、後の使用における立体障害を低減する。
【0028】
本発明において、機能分子は、長炭素鎖及びエステル基を含有するヒドロキシ物質であり、且つ無水コハク酸修飾塩基モノマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル、コハク酸修飾塩基モノマー又はシュウ酸修飾塩基モノマーであり得る。本発明のいくつかの実施形態において、機能分子は、無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン又は無水コハク酸修飾チミンの2つ以上の混合溶液である。本発明のいくつかの実施形態において、無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン又は無水コハク酸修飾チミン溶液は、単独で使用される。いくつかの実施形態において、機能分子基は、カルボン酸との反応後に除去されるヒドロキシル基及び無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン、無水コハク酸修飾チミン又は無水コハク酸修飾ウラシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、コハク酸修飾アデニン、コハク酸修飾グアニン、コハク酸修飾シトシン、コハク酸修飾チミン又はコハク酸修飾ウラシル及びシュウ酸修飾アデニン、シュウ酸修飾グアニン、シュウ酸修飾シトシン、シュウ酸修飾チミン又はシュウ酸修飾ウラシルのアミノ基といった基から選択され得る。本発明において、機能分子は、結合腕上で修飾され、形成された機能分子基は、後のチップ上での電気的に促進されたDNA合成及び切断を促進するヒドロキシル基及びエステル基を含有する。
【0029】
本発明のチップ表面リンカーは、(1)チップ表面に共有結合される結合分子基;(2)ヒドロキシル基及びエステル基などの反応性基を含む機能分子基;並びに(3)結合分子基を機能分子基に連結する結合腕分子基を含む。図1a~1dは、本発明の実施形態に従うチップリンカーの調製及びDNA合成の概略図であり、図1dにおいて、チップ表面は、結合分子、結合腕分子及び機能分子に順に連結され、チップ表面リンカーが得られ、チップ表面リンカーは、結合分子基、結合腕分子基及び機能分子基を含む。本発明で記載されるチップ表面リンカーに順に連結された結合分子は、p-アミノフェニル酢酸であり、結合腕分子は、1,8-オクタンジアミンであり、機能分子は、無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン又は無水コハク酸修飾チミンである。
【0030】
本発明で記載されるチップ表面リンカーは、共有結合を介してチップ表面に安定的に結合され、核酸の電気的に支援されたチップ合成などの用途に使用され得る。金属は、一般に、金属チップであるシートメタル材料であり、金属成分は、金、白金又はアルミニウムから選択され得る。本発明のいくつかの実施形態において、金属チップは、白金チップである。本発明の具体的な実施形態において、チップは、CustomArrayチップである。本発明の実施形態において、金属シートは、水及びアルコールで順にリンスされ、次に酸性溶液中に浸漬され、40~70℃などの特定の温度まで加熱され、5~30分間静置され、最後に水でリンスされ、乾燥され、乾燥したクリーンな金属表面を得ることができ、ここで、水は、一般に蒸留水であり、アルコールは、エタノールであり、酸性溶液では、主に金属粉塵の他の不純物、無機粒子及び有機小分子などの汚染物質が除去されたピランハ溶液(HSO:Hの体積比=3:1)が主に使用される。
【0031】
本発明は、チップ表面リンカーの調製方法であって、結合分子を塩酸及び亜硝酸ナトリウム溶液と混合して、混合溶液を得るステップ;及びその後、チップ表面を混合溶液と接触させ、且つ反応のために定常直流電圧を印加するステップと;図1dに示されるとおり、反応チップ表面を反応及び修飾のために結合腕分子溶液及び機能分子溶液と順に接触させ、リンカーを調製するステップを含む調製方法をさらに提供する。本発明の実施形態において、クリーンな金属チップが最初に提供され、結合分子を塩酸及び亜硝酸ナトリウム溶液と混合することによって混合溶液が得られ、最後に、金属チップは、反応のために混合溶液と接触される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、好ましくは15mMの塩酸が溶媒として使用され、冷却した結合分子が溶媒と混合され、次に亜硝酸ナトリウムが加えられ、それは、混合溶液を調製するように十分に急速振盪される。結合分子は、芳香族アミン物質、好ましくはアニリン物質、例えば、限定はされないが、p-アミノフェニル酢酸、p-アミノフェニルエタノール及びp-アミノフェニレンジアミンの1つ以上を含む。本発明のいくつかの実施形態において、結合分子は、p-アミノフェニル酢酸である。本発明の一実施形態において、0.10~0.15mMの冷却したp-アミノフェニル酢酸及び15mMの塩酸が均一に混合され、次に0.07~0.10mMの亜硝酸ナトリウムが加えられ、それは、混合溶液を調製するように十分に急速振盪される。洗浄された金属チップは、上記の混合溶液中に迅速に浸漬され、すなわち、金属表面は、混合溶液と接触され、定常直流電圧が印加され、それは、静置放置し、反応させる。本発明のいくつかの実施形態において、印加される定常直流電圧は、0.5V~3.0V、好ましくは2.5Vであり;反応温度は、20℃~37℃、好ましくは室温であり;及び反応時間は、10~30分、好ましくは20分である。本発明のいくつかの実施形態において、チップに印加される定常直流電圧は、0.5V~3.0Vであり、チップは、電気的に促進された反応のため、室温で10~30分間静置放置される。本発明の具体的な実施形態において、チップに印加される定常直流電圧は、2.5Vであり、チップは、電気的に促進された反応のため、室温で20分間静置放置される。このステップの原理は、芳香族アミン分子が、塩酸及び亜硝酸ナトリウムの存在下において、定常直流電圧を印加することによってジアゾ化され、芳香族炭素基が生成され、芳香族炭素基及び電極材料が共有結合を形成するように反応され、結合されるというものである。具体的な反応は、以下:
【化1】
のとおりであり、反応後、チップは、取り出され、水及びアルコールで順に洗浄され、次に酸性溶液でリンスされ、最後に水でリンスされ、ブロー乾燥される。
【0033】
反応チップ上で生じるカルボキシル及びアミノ基の架橋アシル化反応は、結合腕分子を修飾し、それにより官能基とチップとの間の距離を増加させ、後の使用における立体障害を低減し得る。本発明のいくつかの実施形態において、結合腕分子は、限定はされないが、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカンジアミン及び1,8-オクタンジアミンメタノールの1つ以上を含むジアミン物質である。本発明のいくつかの実施形態において、結合腕分子は、1,8-オクタンジアミンである。反応チップは、1,8-オクタンジアミンメタノール溶液中に浸漬され、8~12時間、好ましくは8時間静置放置して反応させ、次に水で洗浄され、ブロー乾燥される。
【0034】
次に、反応チップは、機能分子で修飾される。機能分子は、長炭素鎖及びエステル基を含有するヒドロキシル物質であり、限定はされないが、無水コハク酸修飾塩基モノマー、メタクリル酸ヒドロキシエチル、コハク酸修飾塩基モノマー又はシュウ酸修飾塩基モノマーを含む。本発明のいくつかの実施形態において、無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン、無水コハク酸修飾チミン又は無水コハク酸修飾ウラシルの溶液は、単独で使用される。本発明の他の実施形態において、無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン、無水コハク酸修飾チミン及び無水コハク酸修飾ウラシルの2つ以上の混合溶液が使用される。機能分子は、DNA合成及び切断に使用可能であるエステル基及びヒドロキシル基を含有する。エステル基は、チップ上で合成されたDNAを切断し、自由溶液様のオリゴプールにするのに使用される切断部位である。機能分子中に含有されるヒドロキシル基は、DNA合成の開始部位である。本発明のいくつかの実施形態において、塩基モノマーによって提供されるヒドロキシル基は、DNA合成に使用される。
【0035】
まとめると、アニリン物質(p-アミノフェニル酢酸及びp-フェニレンジアミンなど)の直流は、グラフティングを電気的に促進し(工業生産を促進し)、金属チップ表面上に安定な共有結合表面を形成するために使用され、次に、結合腕及び機能分子は、チップ表面上に安定なリンカーを形成するための修飾に使用される。安定なリンカーの形成原理は、(1)塩酸及び亜硝酸ナトリウムの存在下において、定常直流電圧を印加することにより、芳香族アミン分子がジアゾ化され、芳香族炭素基を生成し、芳香族炭素基及び電極材料を、共有結合を形成するように反応させ、結合させるステップ;(2)チップが、カルボキシル及びアミノ基の架橋反応を使用することにより、長鎖結合腕分子溶液中に浸漬され、それにより長鎖分子を修飾し、官能基とチップとの間の距離を増加させ、後の使用における立体障害を低減するステップ;及び(3)次に、機能分子が結合腕上で修飾され、機能分子は、ヒドロキシル基及びエステル基を含有し、チップ上での後の電気的に促進されたDNA合成及び切断を促進する、ステップを含む。
【0036】
本発明は、DNA合成又はチップキット調製における、上記のチップ表面リンカーの使用をさらに提供する。本発明のチップ表面リンカーは、以下の使用:チップ上でのDNA合成;疾患バイオマーカーチップの検出;POCT(ポイントオブケア検査)のチップキット開発;及びハイスループットなチップスクリーニングキットを含む。
【0037】
本発明におけるチップ表面リンカーは、熱水処理後、DNA合成にも使用され得、合成されたDNAは、オリゴヌクレオチド(DNAプライマーなど)とハイブリダイズされ、次に塩基及び熱いTEで処理され;合成されたDNAは、オリゴヌクレオチド(DNAプライマーなど)とのハイブリダイゼーションにも使用され得る。本発明のチップ表面リンカーによって合成されたDNAが反復的な核酸ハイブリダイゼーション、溶離、ハイブリダイゼーション及び再循環を受けた後、チップ表面リンカーは、依然として良好な安定性を維持し得る。本発明の実施形態において調製されたチップ表面リンカーは、良好な電気伝導度及び通電中の安定性を有し、DNAなどの核酸分子の電気的に支援された合成に使用され得る。リンカーがそのような特性を有しない場合、DNA合成は、影響を受けることになる。本発明のチップ表面リンカーは、DNA合成に必要とされる有機溶媒(それ以外ではDNA合成が実施不可である)に対して耐性がある。チップリンカーがチップハイブリダイゼーション検出に使用される場合、本発明は、既存のリンカーが水に感受性があり、加熱下で不安定であるという問題を解決可能であることから、チップは、再利用可能である。
【0038】
「チップ」という用語は、半導体又は金、銀及び白金などの金属などの無機物質で形成される固体支持体を指し、チップの表面は、通常、列及び行で配列される特定の部位によって形成されるマイクロアレイを有し、各部位は、化学的又は生化学的な分析、合成又は方法のいくつかのタイプにおいて使用され得る。マイクロアレイ上のこれらの部位は、典型的には、100ミクロンより小さい。本発明において、チップは、白金チップである。
【0039】
「リンカー」という用語は、一方の末端が固体表面(例えば、金属チップ)に結合されるか又は結合され得、もう一方の末端が、反応性基であって、小分子、オリゴマー又はポリマーなどの関連する化学物質に結合されるか又は結合され得る反応性基を有する、分子を指す。リンカーは、固体表面に結合され得、及び/又はリンカーの反応性基は、関連する化学物質に結合されている。リンカーの反応性基は、保護基に結合され得、保護基は、化学的に又は電気化学的に除去され得る。リンカーは、複数の分子基を含有し得、この分子は、共有結合される。
【0040】
「結合分子基」という用語は、基の一方の末端が固体表面(金属チップなど)に共有結合され得、基のもう一方の末端が、反応性基であって、小分子、オリゴマー又はポリマーなどの関連する化学物質に結合されるか又は結合され得、且つ本発明の結合腕分子又は機能分子に結合され得る反応性基を有する、リンカーの末端に位置する化学的分子を指す。結合分子基は、固体表面に結合されており、及び/又はその反応性基は、関連する化学物質(例えば、結合腕分子基又は機能分子基)に結合されている。結合分子基の反応性基は、保護基に結合され得、保護基は、化学的に又は電気化学的に除去され得る。
【0041】
「結合腕分子基」という用語は、基の一方の末端が結合分子基に結合され得、基のもう一方の末端が、反応性基であって、小分子、オリゴマー又はポリマーなどの関連する化学物質に結合されるか又は結合され得、且つ本発明の機能分子に結合され得る反応性基を有する、リンカーの中間部分に位置する化学的分子を指す。結合腕分子基は、結合分子基に結合され得、及び/又はその反応性基は、関連する化学物質(例えば、結合分子基又は機能分子基)に結合されている。結合腕分子基の反応性基は、保護基に結合され得、保護基は、化学的に又は電気化学的に除去され得る。結合腕分子基は、結合分子基上にインサイチュで形成され得る。結合腕分子基は、最初に形成され、次に固体表面に結合されている結合分子基に結合され得る。結合腕分子基は、最初に関連する化学物質上に外部で合成され、次に固体表面に結合されている結合分子基に結合され得る。関連する化学物質は、結合分子基に結合された結合腕分子基に結合され得、次に全体構造が固体表面上の反応部位に結合され得る。結合腕分子基の目的は、関連分子とチップの固体表面との間の距離を伸ばし、後の使用における立体障害を低減することである。本発明において、結合腕分子基は、エチレンジアミン基、ヘキサメチレンジアミン基、デカンジアミン基、1,8-オクタンジアミン基、エチレングリコール基、ヘキサンジオール基、デカンジオール基、1,8-オクタンジオール基などであり得る。
【0042】
「機能分子基」という用語は、基の一方の末端が結合腕分子基又は結合分子基に結合され得、基のもう一方の末端が、反応性基であって、小分子、オリゴマー又はポリマーなどの関連する化学物質に結合されるか又は結合され得、且つ本発明において、デオキシリボヌクレオチド分子に結合され得る反応性基を有する、リンカーの末端部分に位置する化学的分子を指す。機能分子基は、結合腕分子基及び/又は関連する化学物質が結合される反応性基に結合され得る。機能分子基の反応性基は、保護基に結合され得、保護基は、化学的に又は電気化学的に除去され得る。本発明において、機能分子は、無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン、無水コハク酸修飾チミン又は無水コハク酸修飾ウラシル;メタクリル酸ヒドロキシエチル;無水コハク酸修飾アデニン、無水コハク酸修飾グアニン、無水コハク酸修飾シトシン、無水コハク酸修飾チミン又は無水コハク酸修飾ウラシル;並びにシュウ酸修飾アデニン、シュウ酸修飾グアニン、シュウ酸修飾シトシン、シュウ酸修飾チミン及びシュウ酸修飾ウラシルなどであり得る。
【0043】
「塩基モノマー」という用語は、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマー又はコポリマーの塩基性構造の組み合わせ単位などの高分子を重合形成する能力がある分子を指す。モノマーの例として、A、C、T、G、アデニル酸、グアニル酸、シチジン、ウリジル酸、アミノ酸及び他の化合物が挙げられる。
【0044】
「アリール」という用語は、一価及び約4~20個の炭素原子を有する芳香族炭素環基を指す。アリールの例として、限定はされないが、フェニル、ナフチル及びアンスラセニルが挙げられる。置換アリールの1個以上の水素原子は、他の基と置換され得る。アリールは、定義によると一価であるが、アリールは、本明細書で用いられるとき、複数の原子価を有し、それにより置換の要件を満たすような基を含む。アリールは、融合環構造の一部であり得る。例えば、N-ヒドロキシサクシンイミドは、フェニル(ベンゼン)に結合され、N-ヒドロキシフタルイミドを形成する。
【0045】
「芳香族アミン分子」という用語は、芳香族置換基を有するアミンを指し、すなわち-NH2、-NH-又は窒素含有基が芳香環に結合され、芳香族炭化水素の構造は、一般に1つ以上のベンゼン環を含有する。アニリンは、そのような化合物の最も簡素な例である。本発明において、芳香族アミン分子は、p-アミノフェニル酢酸、p-アミノフェニルエタノール又はp-アミノフェニレンジアミンであり得る。
【0046】
「オリゴマー」という用語は、中間の相対分子質量を有する分子を指し、その構造は、基本的に低い相対分子質量を有する分子から実際に又は概念的に得られる少数の単位を含有する。分子の特性が1つ又はいくつかの単位の除去後に確かに有意に異なる場合、分子は、中間の相対分子質量を有すると考えられる。分子の一部又は全部が中間の相対分子質量を有し、基本的に低い相対分子質量を有する分子から実際に又は概念的に得られる少数の単位を含有する場合、分子は、オリゴマー性又は形容詞として使用されるオリゴマーとして説明可能である。オリゴマーは、一般に、モノマーから構成される。
【0047】
有益な効果
先行技術と比べて、本発明は、アニリン物質が定常直流電圧の条件下で炭素フリーラジカルを通して電極表面に有効に結合され、それにより金属-炭素共有結合を形成し、分子をチップ表面に安定に結合させ、次に結合腕分子及び機能分子がチップ表面上に安定なリンカーを形成するための修飾に使用されることを特徴とする。高い接着性を有するチップ表面リンカーは、本発明において得られ、チップ表面に安定に結合され得る。本発明のチップ表面リンカーは、熱水及び塩基性条件において安定であり、良好な電気伝導度、通電中の安定性及び核酸合成に必要とされる有機溶媒に対する耐性を有し、及び従って後の核酸合成及び他の使用において非常に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施例1中のDNA合成におけるチップ表面リンカーの調製及びその使用の概略図であり、ここで、(1)は、金属チップであり、(2)は、この方法によって調製されたリンカーであり、(3)は、このリンカー上で合成されたDNAである。
図2】熱水中での本発明の実施例1中の方法によって調製されたチップ表面リンカーの安定性と、従来のリンカーの安定性との比較の概略図である。
図3】核酸合成における本発明の実施例1中の方法によって調製されたチップ表面リンカーの安定性を示す。
図4】本発明の実施例1中の方法によって調製されたチップ表面リンカーの、DNA合成に使用された後のハイブリダイゼーション実験の概略図である。
図5】本発明の実施例1中の方法によって調製されたチップ表面リンカーによって合成されたDNAの切断性の概略図である。
図6】本発明の実施例1中の方法によって調製されたチップ表面リンカーによって合成されたDNAの概略図である。
図7】本発明の実施例1中の方法によって調製されたチップ表面リンカーによって合成されたDNAのゲル電気泳動図であり、サンプルは、実施例1中で調製されたチップ表面リンカーによって合成されたDNA(120nt)であり、対照は、米国特許出願公開第20060105355A1号明細書の実施例1に開示された元のリンカーチップによって合成されたDNA(120nt)であり、ラダーは、標準を表す(電気泳動後の、50nt、75nt、150nt、200nt及び300ntの核酸の位置が表示され得る)。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示の実施例における技術的解決は、以下に明確且つ詳細に記載され;明らかに、記載される実施例は、本開示の実施例の全てではなく、あくまで一部である。本発明の実施形態に基づいて、発明的努力を全く伴わずに当業者によって得られる他の全ての実施形態は、本発明の保護の範囲内に該当する。
【0050】
本願をさらに理解するため、本願によって提供されるチップ表面リンカー並びにその調製方法及び使用は、実施例と組み合わせて以下で詳述される。しかし、これらの実施例は、本発明の技術的解決を前提として実施され、詳細な実施形態及び具体的な操作プロセスは、あくまで本発明の特徴及び利点をさらに例示するために示され、本発明の特許請求の範囲を限定するためでないことが理解されるべきである。さらに、本発明の保護範囲は、下記の実施例に限定されない。
【実施例
【0051】
実施例1:DNA合成におけるチップリンカーの調製及びその使用
具体的な実験ステップ:
1.チップ洗浄:図1aに示すとおり、白金チップを蒸留水で5回、エタノールで5回及び蒸留水で3回、順にリンスし、次にチップをピランハ溶液(HSO:H=3:1の体積比)に浸漬し、乾燥器内に65℃で30分間静置し、チップを蒸留水で5回リンスし、アルゴンでブロー乾燥する;
2.チップ修飾:18.15mgの冷却したp-アミノフェニル酢酸を得て、15mMの塩酸(1820uLのHO、180uLの0.5M HCl)と均一に混合し、次に6.21mg亜硝酸ナトリウムを加え、それを十分に急速振盪する;
3.この混合液体をチップ表面上に迅速に加え、2.5Vの定常直流電圧をチップに印加し、電気的に促進された反応のため、チップを室温で20分間静置放置し、チップ修飾反応は、以下のとおりである:
【化2】
4.チップを取り出し、蒸留水で5回、エタノールで5回、15mMの塩酸で5回及び蒸留水で3回リンスし、次にアルゴンブロー乾燥する;
5.チップをメタノール(1mLのメタノール、100uLの水に溶解した1.53mgのNHS及び7.64mgのEDC、ここで、NHSは、N-ヒドロキシサクシンイミドであり、EDCは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである)中の1,8-オクタンジアミンの8.7mgの溶液中に浸漬し、それを8時間静置放置し、反応させ、蒸留水で5回リンスし、窒素でブロー乾燥する;
6.チップを無水コハク酸修飾塩基モノマー混合溶液(10.8mgの塩基モノマー(アデニン、チミン、グアニン又はシトシン)、100uLの水に溶解した1.53mgのNHS、7.64mgのEDC)中に浸漬し、それを8時間静置放置し、反応させる;
7.図1bに示すとおり、チップを5回にわたってエタノール、アセトン、エタノール及び蒸留水で順にリンスし、窒素でブロー乾燥し、この安定なリンカーを得る;
8.図1cに示すとおり、DNA合成のため、リンカーをCustomArrayチップシンセサイザー上に静置する。
【0052】
上記ステップによって調製されたリンカーの概略図を図1dに示す。チップを結合分子、結合腕分子及び機能分子に順に結合させ、チップリンカーを得て、リンカーは、結合分子基、結合腕分子基及び機能分子基を含む。次に、調製したリンカーを(CustomArrayチップシンセサイザーを使用する)DNA合成に使用し、得られた効果の概略図を図1cに示すが、完全なDNAが合成可能である。
【0053】
実施例2:熱水中の新しいリンカー及び古いリンカーの安定性の比較
チップ上でリンカーを修飾後、80℃で2日間にわたり、それを蒸留水中に静置し、続いてDNA合成を行う。
【0054】
元のリンカーでは、チップにポリヒドロキシマイクロ分子を堆積させ(米国特許出願公開第20060105355A1号明細書中の実施例1を参照されたい)、蒸留水でリンスし、乾燥し、次に80℃で2日間にわたって蒸留水中に静置し、アルゴンでブロー乾燥し、次にCustomArrayチップシンセサイザーを使用することにより、33ntのDNAがチップ上に合成され、チップをチップスキャナー(CustomArray,GenePix4000B)でスキャンする。図2aに示すとおり、DNA合成は、大部分の領域内で不可能である。
【0055】
本発明の実施例1中の方法に従い、新しいリンカーを調製する。新しいリンカーでは、チップを80℃で2日間にわたって蒸留水中に静置し、アルゴンでブロー乾燥し、次にCustomArrayチップシンセサイザーを使用し、33ntのDNAをチップ上に合成し、チップをチップスキャナー(CustomArray,GenePix4000B)でスキャンする。図2bに示すとおり、チップ表面上のDNAは、依然として安定に存在することができ、新しいリンカーが熱水中での十分な安定性を有することを示し、それは、後のチップ表面の高温ハイブリダイゼーション又は他の検出用途にとって大きい価値がある。
【0056】
実施例3:核酸合成用途における新しいリンカーの安定性
熱水処理及びDNA合成後、新しいリンカーを熱いTE及び塩基性溶液処理にかけ、次にハイブリダイゼーションに使用する。
【0057】
新しいリンカーを本発明の実施例1中の方法に従って調製する。新しいリンカーでは、チップを80℃で2日間にわたって蒸留水中に静置し、アルゴンでブロー乾燥し、次にCustomArrayチップシンセサイザーを使用することにより、33ntのDNAがチップ上で合成され、チップをチップスキャナーでスキャンする。結果を図3a及び図3bに示す。蛍光を有する2つのDNAプライマー(それぞれ100pM)を得て、チップ上で合成されたDNAとハイブリダイズし(室温で2時間のハイブリダイゼーション反応)、チップをPBS緩衝液でリンスし、チップスキャナーでスキャンする。図3cに示すとおり、異なる蛍光スポットを表示させ、それは、2つのDNAプライマーがチップ上で合成されたDNAとハイブリダイズ可能であることを示す。次に、チップを1MのNaOH溶液でリンスし、ハイブリダイズプライマーを除去し、80℃で2日間にわたってTE緩衝液(pH8.0の5mLの1Mトリス-HCl緩衝液と、pH8.0の1mLの0.5MのEDTAとの混合溶液)中に静置し、アルゴンでブロー乾燥し、次にチップスキャナーでスキャンする。結果を図3dに示す。蛍光を有する2つのDNAプライマー(それぞれ100pM)を得て、チップ上で合成されたDNAとハイブリダイズし(室温で2時間のハイブリダイゼーション反応)、チップをPBS緩衝液でリンスし、チップスキャナーでスキャンする。図3eに示すとおり、異なる蛍光スポットを表示させ、それは、2つのDNAプライマーがチップ上で合成されたDNAとハイブリダイズ可能であることを示す。それは、新しいリンカーが熱水中で十分な安定性を有し、アルカリ及び熱いTEに対して耐性があることを示し、それは、後のチップ表面の高温ハイブリダイゼーション又は他の検出用途にとって大きい価値がある、
【0058】
実施例4:反復的なハイブリダイゼーション-溶出-ハイブリダイゼーション用途における新しいリンカーの安定性
新しいリンカーは、本発明の実施例1中の方法に従って調製する。図4に示すとおり、チップをアルゴンでブロー乾燥させた後、CustomArrayチップシンセサイザーを使用することにより、33ntのDNAがチップ上で合成され、チップをチップスキャナーでスキャンする。結果を図4bに示す。蛍光を有する2つのDNAプライマー(それぞれ100pM)を得て、チップ上で合成されたDNAとハイブリダイズし(室温で2時間のハイブリダイゼーション反応)、チップをPBS緩衝液でリンスし、チップスキャナーでスキャンする。図4cに示すとおり、異なる蛍光スポットを表示する。次に、チップを100mMのNaOH溶液でリンスし、ハイブリダイズプライマーを除去し、アルゴンでブロー乾燥し、チップスキャナーでスキャンする。結果を図4dに示す。蛍光を有する2つのDNAプライマー(それぞれ100pM)を得て、チップ上で合成されたDNAとハイブリダイズし(室温で2時間のハイブリダイゼーション反応)、チップをPBS緩衝液でリンスし、チップスキャナーでスキャンする。右側の図4eに示すとおり、複数のサイクル後、チップは、依然としてハイブリダイゼーションに使用することができ、明らかな蛍光シグナルを有し、それは、このリンカーが反復的なハイブリダイゼーション及びアルカリ溶液溶出に耐えるのに十分に安定であることを示す。
【0059】
実施例5:チップからの合成されたDNAの切断性
リンカー(図5a)は、本発明の実施例1中の方法によって調製し、次にCustomArrayチップシンセサイザーにより、120ntのDNAがチップ上で合成される(図5b)。形成されたリンカーは、塩基性(アンモニア)及び加熱条件(65℃)下でチップからオリゴヌクレオチド(オリゴ)を切断し(16時間)、遊離オリゴを形成し得る、切断基(エステル基)を含有する。チップを水でリンスし、次にチップスキャナーを使用してスキャンし(図5c)、それは、全DNAが基本的に切断されることを示す。
【0060】
実施例6:DNA合成のための新しいリンカーのDNA品質の特徴付け
リンカーは、本発明の実施例1中の方法によって調製し、次にCustomArrayチップシンセサイザーを使用することにより、120ntのDNAがチップ上で合成される(図6に示すとおり)。形成されたリンカーは、塩基性(アンモニア)及び加熱条件(65℃)下でチップからオリゴヌクレオチド(オリゴ)を切断し(16時間)、遊離オリゴヌクレオチドプール(オリゴプール)を形成し得る切断基(エステル基)を含有する。Thermo Scientific(商標)NanoDrop(商標)One Microvolume UV-Vis Spectrophotometerによって決定された2つのチップの濃度は、21.4ng/uL及び19.4ng/uLであり、それは、要件を満たす。次に、PCR増幅を実施し、得られた産物をゲル電気泳動図分析にかける。図7に示すとおり、得られた産物のサイズは、標準産物のサイズに類似し、それらは、同じ位置に位置し、それは、そのようなリンカーによって合成された産物が正確であることを示す。
【0061】
参考文献:
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7