(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】画像診断用カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
A61B8/12
(21)【出願番号】P 2023104140
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2021509349の分割
【原出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2019061769
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】清水 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 弘之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰一
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/004355(WO,A1)
【文献】特開2017-056142(JP,A)
【文献】特開2006-223843(JP,A)
【文献】特開2016-019737(JP,A)
【文献】特開平07-059776(JP,A)
【文献】特開2005-027957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に挿入されるシースと、
前記シース内に位置するイメージングコア部と、
前記イメージングコア部の近位側に取り付けられ、前記シース内に位置する駆動シャフトと、を備え、
前記イメージングコア部は、
前記シースの径方向に向く超音波送受信面と前記超音波送受信面と反対側の背面とを有する超音波振動子と、
前記超音波振動子の前記背面を支持し、前記超音波振動子から送信される超音波の一部を吸収する背面材と、を備え、
前記駆動シャフトは、前記イメージングコア部とともに前記シースの延在方向に沿って前記シース内で移動可能であり、
前記背面材は、前記超音波振動子の遠位端面を覆う遠位カバー部を備える、
画像診断用カテーテル。
【請求項2】
前記イメージングコア部は、前記シース内で前記超音波振動子を保持するハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記超音波送受信面の面内方向において、前記超音波振動子の遠位側を遮らない、請求項1に記載の画像診断用カテーテル。
【請求項3】
前記ハウジングの遠位端は、前記超音波振動子の遠位端より遠位側に位置しない、又は、
前記ハウジングは、前記超音波振動子の遠位端より遠位側で、前記超音波振動子の
前記背面側のみに位置する、請求項
2に記載の画像診断用カテーテル。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記駆動シャフトに対して同軸状に配置される近位筒部と、前記近位筒部から遠位側に突出し、前記超音波振動子の
前記背面側に位置する突出部と、を備える、請求項
2又は3に記載の画像診断用カテーテル。
【請求項5】
前記超音波送受信面が向く側を上側とし、その反対側を下側とした場合に、前記突出部は、前記近位筒部の中心軸線よりも下側に位置する、請求項
4に記載の画像診断用カテーテル。
【請求項6】
前記突出部は、前記近位筒部の中心軸線方向に直交する方向の断面で円弧状に湾曲する凹状板部であり、
前記背面材の少なくとも一部は、前記凹状板部の凹部内に位置している、請求項
4又は5に記載の画像診断用カテーテル。
【請求項7】
前記超音波振動子の位置は、前記近位筒部の外周面よりも径方向の内側である、請求項4から
6のいずれか1つに記載の画像診断用カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は画像診断用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管等の断層画像を得る画像診断用カテーテルとして、血管内超音波診断法(IVUS:Intra Vascular Ultra Sound)によって画像を得る画像診断用カテーテルが知られている。特許文献1には、この種の画像診断用カテーテルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の画像診断用カテーテルは、血管等の細管の断層画像を得るために用いられている。特許文献1に記載の画像診断用カテーテルは、例えば心腔内で使用することも考えられる。しかしながら、血管よりも空間が大きいため、鮮明な断層画像を得るために、超音波の出力を上げることが必要となる。本発明者は、鋭意検討した結果、超音波の出力を上げることで、対象外の物体が断層画像にノイズとして反映され易くなるという新たな問題を発見するに至った。
【0005】
そこで本開示は、対象外の物体が断層画像にノイズとして反映されることを抑制可能な構成を有する画像診断用カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様としての画像診断用カテーテルは、生体内に挿入されるシースと、前記シース内で超音波を送受信可能な超音波振動子と、前記シース内で前記超音波振動子を保持するハウジングと、前記ハウジングの近位側に取り付けられ、前記シース内で回転可能な駆動シャフトと、を備え、前記超音波振動子における前記シースの径方向に向く超音波送受信面は、近位端よりも遠位端が前記シースの内周面に近づくように、前記シースの延在方向に対して傾斜しており、前記ハウジングは、前記超音波送受信面の面内方向において、前記超音波振動子の遠位側を遮らない。
【0007】
本開示の1つの実施形態として、前記ハウジングの遠位端は、前記超音波振動子の遠位端より遠位側に位置しない、又は、前記ハウジングは、前記超音波振動子の遠位端より遠位側で、前記超音波振動子の前記超音波送受信面の背面側のみに位置する。
【0008】
本開示の1つの実施形態として、前記超音波振動子の遠位端面は湾曲面を含む。
【0009】
本開示の1つの実施形態として、前記ハウジングは、前記駆動シャフトに対して同軸状に配置される近位筒部と、前記近位筒部から遠位側に突出し、前記超音波振動子の前記超音波送受信面の背面側に位置する突出部と、を備える。
【0010】
本開示の1つの実施形態として、前記突出部の遠位端は、前記超音波振動子の遠位端より遠位側に位置しない、又は、前記突出部は、前記超音波振動子の遠位端より遠位側で、前記超音波振動子の前記超音波送受信面の背面側のみに位置する。
【0011】
本開示の1つの実施形態として、前記超音波送受信面が向く側を上側とし、その反対側を下側とした場合に、前記突出部は、前記近位筒部の中心軸線よりも下側に位置する。
【0012】
本開示の1つの実施形態としての画像診断用カテーテルは、前記突出部と前記超音波振動子の間に位置し、前記超音波振動子を前記超音波送受信面の背面側から支持する背面材を備える。
【0013】
本開示の1つの実施形態として、前記突出部は、前記近位筒部の中心軸線方向に直交する方向の断面で円弧状に湾曲する凹状板部であり、前記背面材の少なくとも一部は、前記凹状板部の凹部内に位置している。
【0014】
本開示の1つの実施形態として、前記背面材は、前記超音波振動子の遠位端面を覆う遠位カバー部を備える。
【0015】
本開示の1つの実施形態として、前記ハウジングは、前記超音波振動子の側端面を覆っておらず、前記超音波振動子の側端面は湾曲面を含む。
【0016】
本開示の1つの実施形態として、前記背面材は、超音波を散乱する散乱剤を含む。
【0017】
本開示の1つの実施形態として、前記超音波振動子の位置は、前記近位筒部の外周面よりも径方向の内側である。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、対象外の物体が断層画像にノイズとして反映されることを抑制可能な構成を有する画像診断用カテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態としての画像診断用カテーテルと、この画像診断用カテーテルが接続される画像処理装置と、の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す画像診断用カテーテル及び画像処理装置が接続されている状態を示す概略図である。
【
図3】
図2に示す画像診断用カテーテルの遠位側の端部を示す断面図である。
【
図7】
図3に示すイメージングコア部の変形例を示す図である。
図7(a)は、イメージングコア部の側面図である。
図7(b)は、イメージングコア部の上面図である。
【
図8】
図3に示すイメージングコア部の別の変形例を示す図である。
【
図9】
図2に示す画像診断用カテーテルが心臓の右心房内に挿通されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係る画像診断用カテーテルの実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。また、本明細書では、本開示に係る画像診断用カテーテルの臓器等の内部に挿入する側を「遠位側」又は「先端側」、操作する手元側を「近位側」又は「基端側」と記載する。更に、本開示に係る画像診断用カテーテルのシースの延在方向を単に「延在方向A」と記載し、本開示に係る画像診断用カテーテルのシースの周方向を単に「周方向B」と記載し、本開示に係る画像診断用カテーテルのシースの径方向を単に「径方向C」と記載する。
【0021】
図1は、本開示に係る画像診断用カテーテルの一実施形態としての画像診断用カテーテル20と、この画像診断用カテーテル20が接続される画像処理装置1と、の概略構成を示すブロック図である。
図2は、画像診断用カテーテル20及び画像処理装置1が接続されている状態を示す概略図である。
図3は、画像診断用カテーテル20の遠位側の端部を示す断面図である。
【0022】
図1、
図2に示すように、画像処理装置1は、駆動部50と、台座59と、画像処理部60と、を備える。画像処理部60は、表示部51と、入力部52と、記憶部53と、制御部54と、情報入力部55と、を備える。画像処理部60は、生体内に挿入される画像診断用カテーテル20の後述するイメージングコア部21が取得する臓器、血管又は医療器具の情報に基づいて、断層画像を生成する。
【0023】
図1、
図3に示すように、画像診断用カテーテル20は、イメージングコア部21と、駆動シャフト22と、シース23と、を備える。画像処理装置1の情報入力部55は、画像診断用カテーテル20のイメージングコア部21と電気的に接続されている。
【0024】
イメージングコア部21は、心臓等の臓器若しくは血管(以下、適宜「臓器等」と記載する。)、又は、臓器等の内部に位置する医療器具、の情報を取得する。具体的に、イメージングコア部21は超音波振動子31を備える。イメージングコア部21の超音波振動子31は、臓器等、又は臓器等の内部に位置する医療器具に向けて超音波を送信し、当該臓器等又は当該医療器具から反射した超音波を受信する。画像処理装置1は、情報入力部55を介して、当該イメージングコア部21の超音波振動子31が受信した超音波情報に基づいて、臓器等又は医療器具の断層画像を生成する。さらに、画像処理装置1は、順次生成した複数の断層画像に基づいて、臓器等又は医療器具の3次元画像を生成及び表示してもよい。
【0025】
駆動部50は、モータを内蔵し、画像診断用カテーテル20の駆動シャフト22に連結される。
図3に示すように、駆動シャフト22の遠位側にイメージングコア部21が取り付けられている。そのため、駆動部50の回転駆動力は、駆動シャフト22を介してイメージングコア部21に伝達される。これにより、イメージングコア部21は、後述するシース23内で、周方向Bに回転可能である。
【0026】
また、
図2に示すように、駆動部50は、台座59にスライド移動可能に取り付けられている。画像診断用カテーテル20は、台座59に取り付けられている駆動部50に接続されている。駆動部50は、台座59に対して延在方向Aに沿って移動可能である。よって、駆動部50に連結されている駆動シャフト22は、駆動部50と共に、延在方向Aに沿って移動する。これにより、駆動シャフト22の遠位側に取り付けられているイメージングコア部21についても、駆動シャフト22に追従して、シース23内を、延在方向Aに沿って移動する。
【0027】
表示部51は、制御部54により生成された表示情報を表示出力する。表示部51は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示デバイスを含む。
【0028】
入力部52は、操作者による情報又は指示の入力を受け付けて、受け付けた入力情報又は入力指示を制御部54に出力する。入力部52は、例えばキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの入力デバイスを含む。入力部52がタッチパネルを含む場合、タッチパネルは表示部51と一体に設けられていてもよい。
【0029】
記憶部53は、制御部54に特定の機能を実行させるための種々の情報及びプログラムを記憶する。また、記憶部53は、制御部54により生成された被検者の臓器等の断層画像を記憶する。記憶部53は、例えばRAM又はROMなどの記憶装置を含む。
【0030】
制御部54は、画像処理装置1を構成する各構成部の動作を制御する。制御部54は、特定のプログラムを読み込むことにより特定の機能を実行する。制御部54は、例えばプロセッサを含む。
【0031】
情報入力部55は、イメージングコア部21が取得する臓器等、又は臓器等の内部に位置する医療器具等の超音波情報の入力を受け付ける。具体的に、情報入力部55は、駆動シャフト22内に延在する信号線24を介してイメージングコア部21と電気的に接続されており、イメージングコア部21が取得する超音波情報に関する信号を取得し、当該信号を制御部54に送信する。制御部54は、入力された情報に基づいて、臓器等、及び、臓器等の内部に位置する医療器具、を含む断層画像を生成する。
【0032】
図3に示すように、イメージングコア部21は、シース23内で超音波を送受信可能な超音波振動子31と、シース23内で超音波振動子31を保持するハウジング32と、を備える。
【0033】
図3に示すように、超音波振動子31は超音波を送受信可能な超音波送受信面31aを備える。超音波送受信面31aは、径方向Cに向いている。つまり、超音波振動子31は、超音波送受信面31aから、主に、径方向Cに向かって超音波を送信する。更に、超音波送受信面31aは、近位端よりも遠位端がシース23の内周面に近づくように、延在方向Aに対して傾斜している。この詳細は後述する。
【0034】
超音波振動子31は、超音波を対象部位に向かって送信し、当該対象部位ら反射する超音波を受信する。この超音波の送信から受信までの時間に基づき、当該対象部位までの距離等の情報が取得される。
【0035】
図3に示すように、ハウジング32は、超音波振動子31を保持する。また、ハウジング32は、超音波送受信面31aの面内方向Dにおいて、超音波振動子31の遠位側を遮らない。「超音波送受信面の面内方向」とは、超音波送受信面に平行な任意の方向を意味する。より具体的に、本実施形態のハウジング32の遠位端32aは、超音波振動子31の遠位端31eより遠位側に位置しない。この詳細は後述する。
【0036】
駆動シャフト22は、イメージングコア部21のハウジング32の近位側に取り付けられている。また、駆動シャフト22の近位側の端部は、上述した駆動部50と連結される。駆動シャフト22は、例えば、軸まわりの巻き方向が異なる多層のコイルによって構成可能である。コイルの材料としては、例えば、ステンレス、Ni-Ti(ニッケル・チタン)合金などが挙げられる。
【0037】
シース23は、イメージングコア部21及び駆動シャフト22の径方向C外側を覆う可撓性を有する管状部材である。本実施形態において、シース23は、イメージングコア部21及び駆動シャフト22が収容される第1ルーメン23aを区画している。また、シース23は、第1ルーメン23aの他に、ガイドワイヤ10を内挿可能な第2ルーメン23bを区画している。
図3では、イメージングコア部21及び駆動シャフト22が第1ルーメン23aに収容され、かつ、ガイドワイヤ10が第2ルーメン23bに内挿された状態を示している。画像診断用カテーテル20は、ガイドワイヤ10に沿って、臓器等に挿入される。本実施形態のシース23は、第2ルーメン23bが遠位端部にのみ区画された、ラピッドエクスチェンジタイプ(RXタイプ)であるが、RXタイプに限られず、例えば、オーバーザワイヤタイプ(OTWタイプ)であってもよい。
【0038】
シース23の第1ルーメン23aの遠位端は、壁部23cにより完全に閉鎖されている。但し、シース23の第1ルーメン23aの遠位端は、完全に閉鎖されている構成に限られず、外部に連通する、第1ルーメン23aよりも断面積の小さい貫通孔が形成されている壁部が設けられていてもよい。
【0039】
シース23は、可撓性を有する材料で形成できる。具体的なシース23の材料は、特に限定されず、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組合せたもの(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド、積層体等)を挙げることができる。
【0040】
次に、画像診断用カテーテル20のイメージングコア部21の更なる詳細について説明する。
図4は、イメージングコア部21の側面図である。
図5は、イメージングコア部21の上面図である。
図6は、
図5のI-I線での断面図である。ここで、本実施形態のイメージングコア部21の側面図とは、超音波送受信面31aが線状に見える視点から見た平面図を意味する。また、本実施形態のイメージングコア部21の上面図とは、イメージングコア部21を超音波送受信面31a側から見た平面図を意味する。
【0041】
上述したように、イメージングコア部21は、超音波振動子31及びハウジング32を備える。
図3、
図4に示すように、超音波振動子31の超音波送受信面31aは、近位端よりも遠位端がシース23の内周面に近づくように、延在方向Aに対して傾斜している。
【0042】
超音波振動子31は、例えば超音波の出力を高めた場合などに、超音波送受信面31a以外の面から超音波を送信する場合がある。このような場合に、超音波振動子31の遠位端面31bから送信された超音波は、シース23の第1ルーメン23aの遠位側の壁部23cに反射し、超音波送受信面31aにより受信される場合がある。これにより、対象外の物体であるシース23の壁部23cが断層画像にノイズとして反映されるという問題が生じ得る。
【0043】
しかしながら、超音波振動子31の超音波送受信面31aは、近位端よりも遠位端がシース23の内周面に近づくように、延在方向Aに対して傾斜している。そのため、超音波振動子31の遠位端面31bから超音波が送信されても、超音波送受信面がシースの延在方向Aと平行な構成と比較して、超音波がシース23の第1ルーメン23aの遠位側の壁部23cに到達し難い。また、超音波がシース23の第1ルーメン23aの遠位側の壁部23cに到達し反射したとしても、超音波送受信面31aが近位側に向くように傾斜しているため、超音波送受信面31aは、シース23の第1ルーメン23aの遠位側の壁部23cから反射した超音波を受信し難くなる。そのため、断層画像に、対象外の物体であるシース23の壁部23cがノイズとして反映されることを抑制できる。
【0044】
超音波送受信面31aの延在方向Aに対する角度は、特に限定されないが、例えば、5°~15°にすることが好ましく、7°~12°にすることがより好ましい。
【0045】
更に、
図3、
図4に示すように、ハウジング32は、超音波送受信面31aの面内方向Dにおいて、超音波振動子31の遠位側を遮らない。より具体的に、本実施形態のハウジング32の遠位端32aは、超音波振動子31の遠位端31eより遠位側に位置しない。本実施形態では、ハウジング32の遠位端32aの位置が、延在方向Aにおいて、超音波振動子31の遠位端31eの位置と略一致しているが、この構成に限られない。ハウジング32の遠位端32aが、超音波振動子31の遠位端31eより近位側に位置してもよい。
【0046】
ハウジング32をこのような構成とすることで、超音波振動子31の超音波送受信面31a及び遠位端面31bから送信される超音波が、対象外の物体としてのハウジング32に反射して、超音波ノイズとして超音波送受信面31aで受信されることを抑制できる。つまり、断層画像に、対象外の物体としてのハウジング32がノイズとして反映されることを抑制できる。
【0047】
但し、超音波振動子の遠位端より遠位側で、超音波振動子の超音波送受信面の背面側のみに位置するハウジングであってもよい(
図7(a)、
図7(b)参照)。このようなハウジングであっても、上記同様の効果を得ることができる。
【0048】
以上のように、
図3、
図4に示すイメージングコア部21によれば、超音波振動子31が、超音波送受信面31aの面内方向Dの遠位側からノイズとなる超音波を受信することを抑制できる。つまり、断層画像に対象外の物体がノイズとして反映されることを抑制できる。
【0049】
更に、
図5に示すように、本実施形態の超音波振動子31の遠位端面31bは湾曲面を含む。このようにすることで、超音波振動子31から送信される超音波の進行方向を分散させることができる。つまり、超音波振動子31の遠位端面31bから送信される超音波が、シース23の壁部23cに到達し難くなる。これにより、断層画像に対象外の物体としてのシース23の壁部23cがノイズとして反映されることを抑制できる。
【0050】
本実施形態の遠位端面31bは、超音波送受信面31aに対して略直交する面である。また、本実施形態の遠位端面31bは、
図5に示す上面視で、円弧状に湾曲する凸面である。しかしながら、遠位端面31bの湾曲面の形状は、本実施形態の形状に限られない。遠位端面31bは、例えば、
図4に示す側面視で超音波送受信面31aに対して傾斜する面であってもよく、
図4に示す側面視で湾曲する面であってもよい。また、遠位端面31bに凹凸が形成されていてもよい。但し、遠位端面31bは、本実施形態のように、超音波送受信面31aに対して略直交する面であり、
図5に示す上面視で湾曲する凸状の湾曲面であることが好ましい。このようにすることで、超音波送受信面31aを広く確保し易く、超音波出力を高め易い。このような湾曲面を含む遠位端面を備える超音波振動子の上面視の形状は、例えば、円形状、楕円形状、前方後円墳形状、などが挙げられる。
【0051】
また、超音波振動子31では、遠位端面31bに限らず、側端面31cから超音波が送信されることもある。側端面31cとは、延在方向Aと直交する方向の端面である。そのため、本実施形態の超音波振動子31の側端面31cは、
図5に示す上面視で直線状に延在する平面により構成されているが、湾曲面を含む側端面とすることが好ましい。このようにすることで、上述した遠位端面31bと同様、側端面から送信される超音波に起因する超音波ノイズが断層画像に反映され難くなる。
図7は、本実施形態のイメージングコア部21の変形例としてのイメージングコア部321を示す図である。
図7(a)は、イメージングコア部321の側面図である。
図7(b)は、イメージングコア部321の上面図である。
図7(a)、
図7(b)に示すハウジング32は、超音波振動子331の側端面331cを覆っていない。また、超音波振動子331の側端面331cは湾曲面を含んでいる。より具体的に、
図7(a)、
図7(b)に示す超音波振動子331では、遠位端面331b及び側端面331cは、上面視(
図7(b)参照)で、連続する一連の円弧形状を構成している。側端面331cの形状についても、
図7に示す形状に限られない。しかしながら、上述した超音波振動子31の遠位端面31b(
図5参照)と同様の理由から、
図7(a)、
図7(b)に示す側端面331cのように、超音波送受信面331aに対して略直交する面であり、上面視で湾曲する凸状の湾曲面であることが好ましい。
【0052】
但し、超音波振動子の超音波の直進性の観点では、上面視で直線状に延在する平面で構成された
図5に示す側端面31cとすることが好ましい。更に、超音波振動子の超音波の直進性の観点では、遠位端面についても、上面視で直線状に延在する平面で構成することが好ましい。
【0053】
また、
図7(a)、
図7(b)に示すイメージングコア部321のハウジング32は、超音波振動子331の遠位端331eより遠位側で、超音波振動子331の超音波送受信面331aの背面331d側のみに位置する。そのため、断層画像に、ハウジング32がノイズとして反映されることを抑制できる。
【0054】
再び本実施形態に戻り、
図3~
図6を参照して、イメージングコア部21の更なる詳細について説明する。
【0055】
本実施形態のイメージングコア部21は、上述した超音波振動子31及びハウジング32に加えて、背面材33を備える。
【0056】
本実施形態の超音波振動子31は、圧電素子と、音響整合部材と、を備える。圧電素子は、扁平状の圧電体と、この圧電体の厚み方向の少なくとも一方側に積層されている第1電極と、圧電体の厚み方向の少なくとも他方側に積層されている第2電極と、からなる。
【0057】
圧電素子の圧電体は、例えば、圧電セラミックシートにより構成される。圧電セラミックシートの材料としては、例えば、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウムなどの圧電セラミック材料が挙げられる。圧電体は、圧電セラミック材料ではなく、水晶により形成されていてもよい。
【0058】
圧電素子の第1電極及び第2電極は、例えば、マスク材を用いたイオンプレーティング法、蒸着法、スパッタ法により、圧電体の厚み方向の両面それぞれに電極層として積層させることで形成できる。第1電極及び第2電極の材料としては、例えば、銀、クロム、銅、ニッケル、金などの金属や、これら金属の積層体などが挙げられる。
【0059】
本実施形態の第1電極及び第2電極の一方の電極は、折返し電極により構成されている。そのため、
図5に示すように、信号線24は、圧電素子の厚み方向の一方側のみで、第1電極及び第2電極それぞれに、電気的に接続されている。但し、第1電極及び第2電極は、圧電素子の厚み方向の両側それぞれのみに位置する通常の電極であってもよい。
【0060】
音響整合部材は、圧電素子の厚み方向の一方側に積層されている。音響整合部材を設けることにより、被検体への超音波の伝播効率を高めることができる。つまり、音響整合部材は、超音波の伝播効率を高める音響整合層を構成している。本実施形態の超音波送受信面31aは、この音響整合部材により構成されている。
【0061】
音響整合部材としての音響整合層は、音響整合層を形成するシート材を圧電素子に張り合わせる方法、音響整合層を形成する液状の音響整合性材料を塗布して硬化させる方法、などによって形成することができる。音響整合部材の材料としては、例えば、エポキシ樹脂などの樹脂材料が挙げられる。また、音響整合部材は、樹脂材料から構成された樹脂層の積層体により構成されていてもよい。
【0062】
本実施形態の超音波振動子31は、上面視で1.5mm~2.5mmの矩形板状の遠位側の面に、凸状の湾曲面を施すことにより形成されている。上述した
図7に示す超音波振動子331は、上面視で、1.5mm~2.5mmの外径を有している。また、超音波振動子31(
図5等参照)及び331(
図7参照)から送信される超音波の出力周波数は、7MHz~20MHzである。また、超音波振動子31(
図5等参照)及び331(
図7参照)から送信される超音波の送信電圧は、例えば、10Vp-p~100Vp-pである。
【0063】
本実施形態のハウジング32は、駆動シャフト22に対して同軸状に配置される近位筒部41と、この近位筒部41から遠位側に突出し、超音波振動子31の超音波送受信面31aの背面31d側に位置する突出部42と、を備える。このような構成とすることで、簡易な形状のハウジング32により、ハウジング32が、超音波送受信面31aの面内方向Dにおいて超音波振動子31の遠位側を遮らない構成、を実現できる。
【0064】
より具体的に、本実施形態のハウジング32の遠位端32aは、突出部42の遠位端である。したがって、
図3、
図4に示すように、本実施形態では、突出部42の遠位端は、超音波振動子31の遠位端31eより遠位側に位置しない。このように、本実施形態のハウジング32によれば、簡易な構成で、超音波送受信面31aの面内方向Dにおいて超音波振動子31の遠位側を遮らない構成、を実現できる。特に、突出部42は、面内方向Dであり、かつ、延在方向Aに直交する方向(以下、「幅方向E」と記載する。)の全域において、超音波振動子31より遠位側に位置しないことが好ましい。つまり、本実施形態の突出部42は、
図5の上面視において、幅方向Eの両端部で、超音波振動子31より遠位側に位置する部分を有するが、このような部分がない構成とすることが好ましい。このようにすれば、超音波振動子31が遠位側からノイズとなる超音波を受信することを、より抑制できる。更に、
図7(b)に示すように、突出部42は、超音波振動子331の遠位端331eより遠位側で、超音波振動子331の超音波送受信面331aの背面側のみに位置してもよい。
【0065】
換言すれば、本実施形態のハウジング32は、側面視(
図4参照)で、遠位端32aまで切欠かれた切欠き部を有する。そして、超音波振動子31は、この切欠き部に配置されている。
【0066】
より具体的に、突出部42は、近位筒部41の中心軸線に平行な中心軸線方向(シース23内では延在方向Aと略等しい方向)に直交する方向の断面(
図6参照)で円弧状に湾曲する凹状板部である。換言すれば、本実施形態の突出部42は、半筒状の湾曲板部により構成されている。近位筒部41の中心軸線は、駆動シャフト22の中心軸線と一致し、シース23内ではシース23の中心軸線と略一致する。本実施形態では、近位筒部41の中心軸線、駆動シャフト22の中心軸線、及び、シース23の中心軸線を全て「中心軸線O」とする。
図3では、説明の便宜上、シース23の内周面と、ハウジング32の近位筒部41の外周面と、の間に隙間を設けているが、この隙間は実際はほとんどない。つまり、シース23の第1ルーメン23aの内径は、近位筒部41の外径と略等しく、近位筒部41の外周面は、周方向Bの複数の箇所又は周方向B全域で、シース23の内周面と当接している。
【0067】
図4に示すように、本実施形態の超音波振動子31の位置は、近位筒部41の外周面よりも径方向(シース23内では径方向Cと略等しい方向)の内側である。つまり、本実施形態の超音波振動子31は、近位筒部41の外周面よりも、径方向外側に突出しない。このようにすることで、近位筒部41の外周面がシース23の内周面と摺動して回転するときにも、超音波振動子31はシース23の内周面に当接し難い。つまり、超音波振動子31がシース23の内周面と当接することで破損することを抑制できる。
【0068】
また、
図4に示すように、本実施形態の突出部42としての凹状板部の周方向(シース23内では周方向Bと略等しい方向)の両側の端面42aは、側面視で、中心軸線方向に対して傾斜して延在している。この詳細は後述する。
【0069】
更に、
図5に示すように、超音波振動子31の近位端面は、上面視で、近位筒部41から遠位側に離間した位置に配置されている。このようにすることで、超音波振動子31の超音波送受信面31aから送信される超音波が、近位筒部41に反射されることを抑制できる。その結果、超音波送受信面31aが、近位筒部41に反射したノイズとなる超音波を受信することを抑制できる。更に、突出部42が延設されていない周方向領域での近位筒部41の遠位端に、延在方向Aに対して傾斜する傾斜遠位端部を形成してもよい。この傾斜遠位端部は、遠位側に向かうにつれて、突出部42に近づくように傾斜している。このようにすれば、超音波振動子31の超音波送受信面31aから送信された超音波が、近位筒部41に届き難くなる。
【0070】
ハウジング32の材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル-チタン合金(Ni-Ti)、タングステン等の金属が挙げられる。
【0071】
背面材33は、突出部42と超音波振動子31の間に位置し、超音波振動子31を超音波送受信面31aの背面31d側から支持する。背面材33は、例えば、ゴムや、タングステン粉末などの金属粉末を分散させたエポキシ樹脂など、により構成される吸音体である。この背面材33を設けることで、超音波振動子31から送信されるノイズの原因となる一部の超音波を吸収することができる。
【0072】
本実施形態の背面材33は、超音波振動子31の背面31d全域を覆っている。これにより、超音波振動子31の背面31dから送信される超音波を吸収できる。更に、本実施形態の背面材33は、超音波振動子31の近位側に位置し、超音波振動子31の近位端面を覆っている。つまり、本実施形態の背面材33は、超音波振動子31の背面31d側のみならず、近位筒部41内まで連続し、近位筒部41内全域に満たされている。これにより、超音波振動子31の近位端面から送信される超音波を吸収できる。
【0073】
背面材33は、超音波振動子31の背面31dに限らず、超音波振動子31の遠位端面31b及び側端面31cを覆っていてもよい。このようにすることで、超音波振動子31の遠位端面31b及び側端面31cから送信される超音波を、背面材33により吸収できる。そのため、超音波振動子31から送信されるノイズの原因となる一部の超音波を、より吸収することができる。
図8は、イメージングコア部21の変形例としてのイメージングコア部421を示す図である。
図8に示すイメージングコア部421は、超音波振動子31と、ハウジング32と、背面材433と、を備える。背面材433は、上述した背面材33と異なり、超音波振動子31の遠位端面31bを覆う遠位カバー部433aを備える。
図8に示す背面材433は、超音波振動子31の遠位端面31bを覆う遠位カバー部433aを備えるが、この構成に限られず、遠位カバー部433aに加えて又は代えて、超音波振動子の側端面を覆う側端カバー部を備える背面材としてもよい。
【0074】
また、
図8に示す背面材433は、超音波を散乱する散乱剤を含む。散乱剤としては、例えば、ガラスビーズ、ポリスチレンビーズなどが挙げられる。背面材433の遠位カバー部433aがこのような散乱剤を含むことで、背面材433による超音波の吸収効果に加えて、遠位端面31bから送信される超音波を散乱させることで、超音波送受信面31aがノイズとなる超音波を受信することを、より一層抑制できる。
【0075】
また、散乱剤の有無にかかわらず、背面材433は、ハウジング32の近位筒部41の外周面よりも径方向外側に飛び出すことがないようにすることが好ましい。このようにすることで、背面材433が、シース23(
図3参照)の内周面に当接することを抑制できる。
【0076】
再び、
図4、
図6を参照して、本実施形態のイメージングコア部21について説明する。上述したように、本実施形態の突出部42としての凹状板部の周方向両側の端面42aは、側面視で、中心軸線方向に対して傾斜して延在している。また、
図6に示すように、本実施形態の背面材33は、ハウジング32の突出部42としての凹状板部の凹部42b内に位置する本体部33cと、この本体部33cから突設され、凹状板部の周方向の両側の端面42aに支持されるフランジ部33dと、を備える。そのため、凹部42b内に背面材33の本体部33cを装填する際は、背面材33のフランジ部33dを、端面42aに支持させて位置決めする。つまり、端面42aを利用することで、背面材33を突出部42としての凹状板部に対して、容易に位置決めすることができる。更に、上述したように、端面42aが側面視で中心軸線方向に対して傾斜している。そのため、背面材33のフランジ部33dを、端面42aに支持させて位置決めするだけで、超音波振動子31を支持する背面材33の支持面33bを、延在方向Aに対して傾斜させることができる。そのため、超音波送受信面31aと略平行な背面31dを、背面材33の支持面33bに載置するだけで、超音波送受信面31aが延在方向Aに対して所望の角度で傾斜する状態を、容易に実現することができる。つまり、所望の角度に傾斜する超音波振動子31の超音波送受信面31aを、容易に実現することができる。
【0077】
更に、イメージングコア部21の超音波送受信面31aが向く側を上側とし、その反対側を下側とする。この場合に、
図4に示す側面視で、突出部42は、近位筒部41の中心軸線Oよりも下側に位置することが好ましい。このようにすることで、超音波振動子31の位置を、駆動シャフト22の中心軸線Oの位置に近づけ易くなる。超音波振動子31の位置を、駆動シャフト22の中心軸線Oの位置に近づけることで、超音波振動子31の回転を安定させることができる。また、このような構成とすることで、信号線24を駆動シャフト22内に引き込み易くなる。特に、超音波振動子31の回転の中心位置を、駆動シャフト22の中心軸線Oの位置と一致させることで、超音波振動子31の回転を、より安定させることができる。本実施形態では、
図4に示すように、突出部42としての凹状板部の周方向両側の端面42aの近位端が、側面視で、近位筒部41の中心軸線Oよりも下側に位置する。そのため、上述したように、超音波振動子31の位置を、駆動シャフト22の中心軸線Oの位置に合わせ易くなる。更に、超音波振動子31の位置を、駆動シャフト22の中心軸線Oの位置に近づけることで、回転に伴う位置の変動を抑制でき、より精度の高い生体組織の断層画像を生成できる。
【0078】
本体部33cは、凹部42b内の全て満たしていなくてもよい。但し、超音波の吸収性能を考慮すると、凹部42b内の全てを満たす構成とすることが好ましい。
【0079】
また、背面材33が、上述のフランジ部33dを備えることで、ハウジング32の突出部42の端面42aを、フランジ部33dで覆うことができる。これにより、超音波振動子31から送信される超音波が、ハウジング32の突出部42の端面42aに反射して超音波ノイズとして受信されることを抑制できる。
【0080】
最後に、本実施形態の画像診断用カテーテル20を用いて行う手技の一例について、
図9を参照して説明する。
図9では、心臓の右心房RA内に挿通されている画像診断用カテーテル20を示している。
図9に示すように、医療従事者等の操作者は、画像診断用カテーテル20を、被検者の右心房RAよりも径の小さい第1の血管としての下大静脈IVCを経て右心房RA内に挿入する。このとき、操作者は、右心房RA内に位置する医療器具としてのブロッケンブロー針80を、下大静脈IVCを経て右心房RA内に、ガイディングカテーテル84を通じて挿入する。ブロッケンブロー針80は、右心房RAと左心房LAとを隔離する卵円窩Hを貫通して右心房RAから左心房LAを開通させるために用いられる。
【0081】
図9に示すように、操作者は、画像診断用カテーテル20の遠位端部を、右心房RAから連通する右心房RAよりも径の小さい第2の血管としての上大静脈SVCに挿入する。具体的には、まず、ガイドワイヤ10を上大静脈SVCに挿入し、次にガイドワイヤ10に沿って画像診断用カテーテル20の遠位端部を上大静脈SVCに挿入することができる。これにより、画像診断用カテーテル20の遠位端部の振動が抑制される。更に、画像診断用カテーテル20の近位側は、右心房RAよりも径の小さい下大静脈IVCに入っているため、画像診断用カテーテル20は、右心房RAよりも径の小さい上大静脈SVCと下大静脈IVCとに亘って延在することとなり、画像診断用カテーテル20の右心房RA内に位置する部分の振動及び移動が抑制される。
【0082】
また、画像診断用カテーテル20の右心房RA内に位置する部分を湾曲させることで、超音波振動子31が収容されているシース23の第1ルーメン23aを湾曲させることができる。このように第1ルーメン23aを湾曲させることで、シース23の延在方向Aが変化し、超音波振動子31が移動する右心房RA内の位置を変化させることができる。そのため、例えば臓器等の内壁面の特に観察したい部位(例えば心臓の卵円窩H)に近づけることができる。
【0083】
超音波振動子31は、シース23の第1ルーメン23aで、周方向Bに回転しながら延在方向Aに移動する。その間、超音波振動子31は、径方向Cに超音波を送信すると共に、右心房RAの内壁面等に反射した超音波を受信する。これにより、超音波振動子31は、周囲情報として、右心房RAの内壁面の位置情報を取得する。更に、超音波振動子31は、周囲情報として、右心房RA内に位置する医療器具としてのブロッケンブロー針80の位置情報を取得する。そして、制御部54は、超音波振動子31が取得する周囲情報に基づいて、右心房RAの内壁面の位置情報、及び、ブロッケンブロー針80の位置情報、が反映された断層画像を生成する。
【0084】
上述したように、画像診断用カテーテル20の右心房RA内に位置する部分の振動及び移動が抑制された状態で、超音波振動子31をシース23内で移動させるため、超音波振動子31の周方向Bへの回転、及び、超音波振動子31の延在方向Aへの移動、が安定する。従って、右心房RAの内壁面の位置情報などの周囲情報を安定的に取得することができる。このとき、記憶部53は、超音波振動子31が延在方向Aに移動する際に制御部54が生成する断層画像と、その際の超音波振動子31の延在方向Aの位置と、を関連付けて随時記憶している。
【0085】
制御部54は、記憶部53に記憶された情報を用いて、断層画像を積層させることで、右心房RAの3次元画像を生成してもよい。
【0086】
画像診断用カテーテル20の超音波振動子31は、上述したように、超音波送受信面31a(
図4等参照)が近位側を向くように傾斜している。そのため、
図9に示すように、超音波振動子31を、ブロッケンブロー針80で穿刺される卵円窩Hよりも更に奥側に配置し、超音波振動子31の位置よりも近位側の断層画像を生成することで、ブロッケンブロー針80先端位置が、ブロッケンブロー針80のその他の部分と重ならない断層画像を取得し易くなる。つまり、超音波送受信面31a(
図4等参照)が近位側を向くように傾斜する構成とすることで、画像診断用カテーテル20と共に生体内に挿入されて使用される医療器具の先端位置が明確な断層画像を取得し易くなる。これは、
図9に示す手技に限れず、心房のような生体内の比較的広い空間で行われる手技であれば、同様に適用可能である。
【0087】
また、
図9では、臓器等の内腔の一例として心臓の右心房RAを示したが、本開示に係る画像診断用カテーテル20が挿入される臓器等の内腔は、特に限定されず、例えば、心臓の左心房であってもよく、心臓以外の臓器の内腔であってもよい。
【0088】
本開示に係る画像診断用カテーテルは、上述した実施形態及び変形例で示す具体的な構造に限られず、請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示は画像診断用カテーテルに関する。
【符号の説明】
【0090】
1:画像処理装置
10:ガイドワイヤ
20:画像診断用カテーテル
21、321、421:イメージングコア部
22:駆動シャフト
23:シース
23a:第1ルーメン
23b:第2ルーメン
23c:壁部
24:信号線
31、331:超音波振動子
31a、331a:超音波送受信面
31b、331b:遠位端面
31c、331c:側端面
31d、331d:背面
31e、331e:超音波振動子の遠位端
32:ハウジング
32a:ハウジングの遠位端
33、433:背面材
33b:支持面
33c:本体部
33d:フランジ部
41:近位筒部
42:突出部
42a:端面
42b:凹部
50:駆動部
51:表示部
52:入力部
53:記憶部
54:制御部
55:情報入力部
59:台座
60:画像処理部
80:ブロッケンブロー針
84:ガイディングカテーテル
433a:遠位カバー部
A:シースの延在方向
B:シースの周方向
C:シースの径方向
D:超音波送受信面の面内方向
E:幅方向
O:近位筒部、駆動シャフト及びシースの中心軸線
LA:左心房
RA:右心房
IVC:下大静脈
SVC:上上大静脈