(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】灯具
(51)【国際特許分類】
F21V 9/32 20180101AFI20240627BHJP
F21K 9/232 20160101ALI20240627BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240627BHJP
【FI】
F21V9/32
F21K9/232 100
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2023531833
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2022024659
(87)【国際公開番号】W WO2023276774
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2021106374
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小西 正宏
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-107708(JP,A)
【文献】特開2015-176967(JP,A)
【文献】特開2012-064471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 9/32
F21K 9/232
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に蛍光体層が設けられた蛍光体基板と、
前記蛍光体基板に設けられ、ピーク波長が第1の波長の光を出力する少なくとも1つの第1の発光部と、
前記蛍光体基板に設けられ、ピーク波長が前記第1の波長と異なる第2の波長の光を出力する少なくとも1つの第2の発光部と、
前記第1の発光部に流れる電流を調整する調整用抵抗と、
を有し、
前記蛍光体層は、少なくとも前記第1の発光部と前記第2の発光部の周囲に、前記第1の発光部および前記第2の発光部とは別体に設けられており、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光を励起光として発光するときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体を含む、灯具。
【請求項2】
基板表面に蛍光体層が設けられた蛍光体基板と、
前記蛍光体基板に設けられ、ピーク波長が第1の波長の光を出力する少なくとも1つの第1の発光部と、
前記蛍光体基板に設けられ、ピーク波長が前記第1の波長と異なる第2の波長の光を出力する少なくとも1つの第2の発光部と、
前記第1の発光部と前記第2の発光部を実装する回路パターンと、
を有し、
前記蛍光体層は、少なくとも前記第1の発光部と前記第2の発光部の周囲に、前記第1の発光部および前記第2の発光部とは別体に設けられており、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光を励起光として発光するときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体を含
み、
前記回路パターンは、前記第1の発光部と前記第2の発光部に電力を供給する経路として、基板中心側に設けられたプラス電位部と、基板外周側に設けられたグランド電位部とを有する、灯具。
【請求項3】
基板表面に蛍光体層が設けられた蛍光体基板と、
前記蛍光体基板に設けられ、ピーク波長が第1の波長の光を出力する少なくとも1つの第1の発光部と、
前記蛍光体基板に設けられ、ピーク波長が前記第1の波長と異なる第2の波長の光を出力する少なくとも1つの第2の発光部と、
前記第2の発光部が出力する前記第2の波長の光により光触媒機能を発揮する光触媒部と、
を有し、
前記蛍光体層は、少なくとも前記第1の発光部と前記第2の発光部の周囲に、前記第1の発光部および前記第2の発光部とは別体に設けられており、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光を励起光として発光するときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体を含む、灯具。
【請求項4】
前記第1の波長のピーク波長は可視光の波長領域である、請求項1
から3のいずれか1項に記載の灯具。
【請求項5】
前記第2の波長のピーク波長は415nm以上460nm以下の範囲にある、請求項1
から3のいずれか1項に記載の灯具。
【請求項6】
前記第2の波長のピーク波長は315nm以上415nm以下の範囲にある、請求項1
から3のいずれか1項に記載の灯具。
【請求項7】
前記第2の発光部の発光素子を封止する封止材が無色透明である、請求項1
から3のいずれか1項に記載の灯具。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の発光部と前記少なくとも1つの第2の発光部が直列に接続された直列体を有する、請求項1
から3のいずれか1項に記載の灯具。
【請求項9】
前記直列体は、直列に接続された複数の前記第1の発光部を有する、請求項
8に記載の灯具。
【請求項10】
前記直列体は、直列に接続された複数の前記第2の発光部を有する、請求項
8に記載の灯具。
【請求項11】
前記直列体は、並列に接続された複数の前記第2の発光部を有する、請求項
8に記載の灯具。
【請求項12】
前記直列体が複数並列に接続されている、請求項
8に記載の灯具。
【請求項13】
前記第1の発光部の発光素子と前記第2の発光部の発光素子は発光ダイオード素子である、請求項1
から3までのいずれか1項に記載の灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光素子(LED素子)が搭載された基板を備えるLED照明器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1のLED照明器具の場合、複数の発光部(発光素子)を効率的に発光させるとともに所望の発光色で発光させる照明技術については開示がなく、新たな技術が求められていた。
【0005】
本発明は、複数の発光部を有する発光基板を備える灯具(発光装置)において、効率的に発光させかつ所望の発光色で発光させる照明技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]
基板表面に蛍光体層が設けられた蛍光体基板と、
前記蛍光体基板に設けられ、ピーク波長が第1の波長の光を出力する少なくとも1つの第1の発光部と、
前記蛍光体基板に設けられ、ピーク波長が前記第1の波長と異なる第2の波長の光を出力する少なくとも1つの第2の発光部と、
を有し、
前記蛍光体層は、少なくとも前記第1の発光部と前記第2の発光部の周囲に、前記第1の発光部および前記第2の発光部とは別体に設けられており、前記第1の波長の光と前記第2の波長の光を励起光として発光するときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体を含む、
灯具。
[2]
前記第1の波長のピーク波長は可視光の波長領域である、[1]に記載の灯具。
[3]
前記第2の波長のピーク波長は415nm以上460nm以下の範囲にある、[1]または[2]に記載の灯具。
[4]
前記第2の波長のピーク波長は315nm以上415nm以下の範囲にある、[1]または[2]に記載の灯具。
[5]
前記第2の発光部の発光素子を封止する封止材が無色透明である、[1]から[4]までのいずれか1に記載の灯具。
[6]
前記少なくとも1つの第1の発光部と前記少なくとも1つの第2の発光部が直列に接続された直列体を有する、[1]から[5]までのいずれか1に記載の灯具。
[7]
前記直列体は、直列に接続された複数の前記第1の発光部を有する、[6]に記載の灯具。
[8]
前記直列体は、直列に接続された複数の前記第2の発光部を有する、[6]または[7]に記載の灯具。
[9]
前記直列体は、並列に接続された複数の前記第2の発光部を有する、[6]または[7]に記載の灯具。
[10]
前記直列体が複数並列に接続されている、[6]から[9]までのいずれか1に記載の灯具。
[11]
前記第1の発光部の発光素子と前記第2の発光部の発光素子は発光ダイオード素子である、[1]から[10]までのいずれか1に記載の灯具。
[12]
前記第1の発光部に流れる電流を調整する調整用抵抗を備える、[1]から[11]までのいずれか1に記載の灯具。
[13]
前記第1の発光部と前記第2の発光部を実装する回路パターンを有し、
前記回路パターンは、前記第1の発光部と前記第2の発光部に電力を供給する経路として、基板中心側に設けられたプラス電位部と、基板外周側に設けられたグランド電位部とを有する、
[1]から[12]までのいずれか1に記載の灯具。
[14]
前記第2の発光部が出力する前記第2の波長の光により光触媒機能を発揮する光触媒部を有する、[1]から[13]までのいずれか1に記載の灯具。
【発明の効果】
【0007】
複数の発光部を有する発光基板を備える灯具(発光装置)において、効率的に発光させかつ所望の発光色で発光させる照明技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の発光装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態の発光装置の概略構成を示す分解斜視図である。
【
図4】実施形態の回路パターン層を露出して示した発光基板の平面図である。
【
図5】実施形態の発光基板の一部断面図を模式的に示した図である。
【
図7】実施形態の発光部の直列体の接続態様のバリエーションを示した回路図である。
【
図8】実施形態の発光基板の基本的な発光動作を説明するための図である。
【
図9】実施形態の第1の発光部と第2の発光部とが混載された発光基板の発光動作を説明するための平面図である。
【
図10】実施形態の第1の発光部と第2の発光部とが混載された発光基板の発光動作を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<発光装置100の概要>
図1は、本実施形態の発光装置100(灯具)の斜視図である。
図2は発光装置100の分解斜視図である。発光装置100は、LED電球であって、カバー部材110と、発光基板10と、胴部130と、駆動回路140とを備える。発光装置100は、電球形状の他に略円錐状または円筒状、直方体(箱形)に構成されてもよい。発光装置100は、室内外で使用される電球や、屋外の街路灯として構成されてもよいし、さらに、競技場の照明や大規模建造物の外照明(いわゆるタワー照明)に用いられる高出力照明装置として構成されてもよい。
【0010】
発光基板10は、上面視で略円形を呈しており、複数の発光部20が搭載されている。発光部20は、例えば、
図5で後述するように発光素子22としてLED(フリップチップLED)が組み込まれたCSP(Chip Scale Package)である。なお、発光部20として、CSPに限らず例えばSMD(Surface Mount Device)型LEDやフリップチップLEDを用いることができる。発光基板10の形状の一例として上面視で略円形を示しているが、発光装置100の形状や発光部20の搭載数や配置等に応じて、矩形やその他の形状が適宜選択される。発光基板10は、絶縁基板32の一方の面に蛍光体層36を設けた蛍光体基板30に複数の発光部20を搭載した構成である。
【0011】
胴部130は、例えばアルミダイキャスト等で形成されている。胴部130には内部空間が形成されており、胴部130の下部に口金132が取り付けられている。胴部130には、内部の熱を排出するための放熱用開口131が設けられている。胴部130の表面には放熱用塗料が塗装され電気的に絶縁されている。
【0012】
胴部130の内部空間には駆動回路140が配置され、その上に内部空間を蓋するように上述の発光基板10が取り付けられる。冷却ファンを設ける場合には、発光装置100内に温度センサを設け、駆動回路140が冷却ファンの駆動制御を行うことで、発光装置100の内部を所望の温度範囲に制御できる。また、発光基板10の下面、すなわち駆動回路140側には、放熱フィンが設けられてもよい。
【0013】
カバー部材110は、例えば熱可塑性樹脂やガラスで球形状に設けられており、図示下側(すなわち胴部130側)が開放している。カバー部材110は、発光基板10が取り付けられた胴部130の上部を覆うように、開放部分で取り付けられる。なお、カバー部材110には、拡散材が含まれてもよい。
【0014】
駆動回路140は、LEDドライバICやコンデンサ等を備え、発光部20のオン/オフデューティをPWM(Pulse Width Modulation)制御することで、発光部20を発光駆動させる。駆動回路140の一部構成は発光基板10に搭載されてもよい。
【0015】
発光装置100は、蛍光体層36を有する蛍光体基板30に、複数種類の発光部20を設けている。発光部20は、ピーク波長が第1の波長の光を出力する第1の発光部20Aと、ピーク波長が第1の波長と異なる第2の波長の光を出力する第2の発光部20Bとを有する。
第1の発光部20Aは、可視光の波長領域の光、例えば、白色光のスペクトルを有する光を出力する。
第2の発光部20Bは、第2の波長のピーク波長が415nm以上460nm以下の範囲にある青色光、または、第2の波長のピーク波長は315nm以上415nm以下の範囲にある紫色光(近紫外光)を出力する。以下では、第2の発光部20Bは、波長450nmの青色光を出力する形態について説明する。
【0016】
蛍光体層36は、少なくとも第1の発光部20Aと第2の発光部20Bの周囲に設けられている。蛍光体層36は、青色光を励起光として発光するときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体を含む。本実施形態では、蛍光体層36は、波長450nmの青色光によって励起された光が青色光に対する補色光(ここでは黄色光)となるように設定される。その結果、第2の発光部20Bの光と蛍光体層36による光との合成光が白色となる。
【0017】
〔発光基板10〕
発光基板10について、主に
図3~
図5を参照しながら説明する。
図3は、発光基板10の表面31側から見た平面図である。
図4は、
図3の発光基板10から発光部20及び蛍光体層36を省いて回路パターン層34を露出させた状態の発光基板10の平面図である。
図5は発光基板10の断面図であって、一つの発光部20に着目して模式的に示した断面図である。
【0018】
図3や
図4に示すように、発光基板10は、例えば上面視において円形である。発光基板10は、蛍光体基板30と、複数の発光部20と、コネクタ70及び電子部品(図示せず)とを有する。複数の発光部20、コネクタ70及び電子部品は蛍光体基板30に搭載される。
【0019】
発光基板10の中心には上下に貫通する中央開口37が設けられている。複数の発光部20は、コネクタ70に接続され、中央開口37からリード線(図示せず)により駆動回路140に接続される。コネクタ70は、アノード側のコネクタ(+)70Aと接地(GND)側のコネクタ(GND)70Bとを有する。
【0020】
〔発光部20〕
主に
図5に示すように、発光部20(第1の発光部20A、第2の発光部20B)は、それぞれ、一例として、発光素子22であるフリップチップLED(発光ダイオード素子)が封止樹脂23(封止材)に封止されている。第1の発光部20Aと第2の発光部20Bの基本的な構造は同じであり、違いは出力する光のスペクトル分布(すなわち色温度)が異なる点にある。その違いは主に封止樹脂23に含まれる蛍光体の種類または蛍光体の有無による。
【0021】
発光素子22は、例えば窒化インジウムガリウム(InGaN)を用いて構成されたLEDであって、ピーク波長450nmの青色光を出力する。
【0022】
第1の発光部20Aでは、発光素子22が黄色発光蛍光体を添加した封止樹脂23に封止されている。その結果、発光素子22により励起して発光した光は、封止樹脂23の蛍光体によって色変換され、例えば白色光として認識されるスペクトル分布で出力される。
【0023】
第2の発光部20Bでは、発光素子22が蛍光体を添加しない無色透明な封止樹脂23に封止されている。その結果、発光素子22により励起して発光した光は、封止樹脂23で色変換されることなく、ピーク波長が450nmの青色光として認識されるスペクトル分布で出力される。
【0024】
〔蛍光体基板30〕
蛍光体基板30は、絶縁基板32と、絶縁基板32の表面31に設けられた回路パターン層34と、蛍光体層36と、絶縁基板32の裏面33に設けられたコアメタル38とを有する。
【0025】
〔絶縁基板32〕
絶縁基板32は、一例として、以下のような特徴を有する。形状は、前述のとおり、一例として表面31側及び裏面33側から見て円形である。材質は、一例としてビスマレイミド樹脂及びガラスクロスを含む絶縁材である。厚みは、一例として100μmである。
縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、一例として、50℃~100℃の範囲において10ppm/℃以下である。また、別の見方をすると、縦方向及び横方向の熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、一例として、6ppm/℃である。この値は、本実施形態の発光部20の場合とほぼ同等(90%~110%、すなわち±10%以内)である。
ガラス転移温度は、一例として、300℃よりも高い。
貯蔵弾性率は、一例として、100℃~300℃の範囲において、1.0×1010Paよりも大きく1.0×1011Paよりも小さい。
縦方向及び横方向の曲げ弾性率は、一例として、それぞれ、常態において35GPa及び34GPaである。
縦方向及び横方向の熱間曲げ弾性率は、一例として、250℃において19GPaである。吸水率は、一例として、23℃の温度環境で24時間放置した場合に0.13%である。比誘電率は、一例として、1MHz常態において4.6である。誘電正接は、一例として、1MHz常態において、0.010である。
【0026】
〔回路パターン層34〕
回路パターン層34は、絶縁基板32の表面31に設けられた金属層(一例として銅箔層)であり、コネクタ70(コネクタ(+)70A、コネクタ(GND)70B)と導通している。回路パターン層34は、コネクタ70に接続されたリード線を介して電源(駆動回路140)から給電された電力を、発光部20(第1の発光部20A、第2の発光部20B)に供給する。
【0027】
回路パターン層34の一部は、第1の発光部20Aが接合される電極対34A及び第2の発光部20Bが接合させる電極対34Bとなっている。回路パターン層34における電極対34A、34B以外の部分を配線部分34Cという。回路パターン層34の回路パターンは、第1の発光部20Aや第2の発光部20Bの配置により適宜設定されるが、例えば、基板中心側に設けられたプラス電位部と、基板外周側に設けられたグランド電位部とを有する構成とすることができる。プラス電位部はコネクタ(+)70Aに接続される。グランド電位部はコネクタ(GND)70Bに接続される。
【0028】
〔蛍光体層36〕
本実施形態の蛍光体層36は、一例として、回路パターン層34における、電極対34A、34B、コネクタ70及び蛍光体基板30上に実装される電子部品以外の部分を覆うようにして、絶縁基板32の表面31に設けられている。換言すると、蛍光体層36は、第1の発光部20Aおよび第2の発光部20Bとは別体に設けられている。すなわち、第1の発光部20Aおよび第2の発光部20Bは、封止材として蛍光体層を有することがあるが、絶縁基板32の表面31に設けられる蛍光体層36は、第1の発光部20Aおよび第2の発光部20Bの封止材の蛍光体層とは異なる構成である。
【0029】
蛍光体層36は、例えば、後述する蛍光体(複数の蛍光体粒子の集合体)とバインダーとを含み、複数の蛍光体粒子が当該バインダーに分散された絶縁層である。蛍光体層36に含まれる蛍光体は、発光部20の発光を励起光として励起する性質を有する。具体的には、本実施形態の蛍光体は、発光部20の発光を励起光としたときの発光ピーク波長が可視光領域にある性質を有する。なお、当該バインダーは、例えば、エポキシ系、アクリレート系、シリコーン系等のバインダーであって、ソルダーレジストに含まれるバインダーと同等の絶縁性を有するものであればよい。
【0030】
蛍光体層36に含まれる蛍光体は、第2の発光部20Bの発光色(すなわち第2のピーク波長)及び蛍光体層36をどのような色で発光させるかによって適宜選択される。蛍光体層36は、例えば、Euを含有するα型サイアロン蛍光体、Euを含有するβ型サイアロン蛍光体、Euを含有するCASN蛍光体及びEuを含有するSCASN蛍光体からなる群から選ばれる1種以上の蛍光体である。なお、前述の蛍光体は、本実施形態での一例であり、YAG、LuAG、BOSその他の可視光励起の蛍光体のように、前述の蛍光体以外の蛍光体であってもよい。
【0031】
Euを含有するα型サイアロン蛍光体は、一般式:MxEuySi12-(m+n)Al(m+n)OnN16-nで表される。上記一般式中、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(ただし、LaとCeを除く)からなる群から選ばれる、少なくともCaを含む1種以上の元素であり、Mの価数をaとしたとき、ax+2y=mであり、xが0<x≦1.5であり、0.3≦m<4.5、0<n<2.25である。
【0032】
Euを含有するβ型サイアロン蛍光体は、一般式:Si6-zAlzOzN8-z(z=0.005~1)で表されるβ型サイアロンに発光中心として二価のユーロピウム(Eu2+)を固溶した蛍光体である。
【0033】
また、窒化物蛍光体として、Euを含有するCASN蛍光体、Euを含有するSCASN蛍光体等が挙げられる。
【0034】
Euを含有するCASN蛍光体(窒化物蛍光体の一例)は、例えば、式CaAlSiN3:Eu2+で表され、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ素窒化物からなる結晶を母体とする赤色蛍光体をいう。なお、本明細書におけるEuを含有するCASN蛍光体の定義では、Euを含有するSCASN蛍光体が除かれる。
【0035】
Euを含有するSCASN蛍光体(窒化物蛍光体の一例)は、例えば、式(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+で表され、Eu2+を付活剤とし、アルカリ土類ケイ素窒化物からなる結晶を母体とする赤色蛍光体をいう。
【0036】
〔コアメタル38〕
コアメタル38は、絶縁基板32の裏面33に配置される銅やアルミニウム等の金属板であり、熱放散性を向上させる。コアメタル38には必要に応じて放熱フィン等の放熱手段が取り付けられる。
【0037】
〔複数の発光部20の配置及び接続態様〕
図3、4及び
図6を参照して発光部20の配置及び接続態様について説明する。
図6は、発光部20の回路の例を示す図である。
【0038】
複数の発光部20は絶縁基板32の表面31側に全体に亘って配置されている。本実施形態では、7個の第1の発光部20Aと1個の第2の発光部20Bを直列に接続して1セットとした直列体が3セット並列に設けられている。
図3に示すように、便宜的に、発光基板10の領域を上面視で周方向に第1~第3領域2A~2Cに3等分して説明する。
【0039】
第1~第3の領域2A~2Cのそれぞれには、7個の第1の発光部20A(第1の発光部20A1~第1の発光部20A7)と1個の第2の発光部20Bの合計8個の発光部20が設けられている。それら8個の発光部20は、直列に接続した直列体として構成され、コネクタ(+)70Aとコネクタ(GND)70Bの間に、3つの直列体が並列に接続されている。上述のように、第1の発光部20Aは白色光を出力し、第2の発光部20Bが青色光は出力する。
【0040】
より具体的には、第1の領域2Aの直列体は、コネクタ(+)70Aからコネクタ(GND)70Bへ、第2の発光部20B、第1の発光部20A1、第1の発光部20A2、・・・及び第1の発光部20A7がこの順で直列に接続されている。
第2の領域2B及び第3の領域2Cの直列体についても、同様の接続態様となっている。
【0041】
コネクタ(+)70Aにはリード線が接続され、中央開口37を通り上述した駆動回路140に接続される。また、コネクタ(GND)70Bにはリード線が接続され、所定の接地(GND)に接続される。
【0042】
図7を参照して、第2の発光部20B、第1の発光部20A1、第1の発光部20A2、・・・及び第1の発光部20A7が構成する直列体の接続態様を6例を説明する。
【0043】
図7(a)は、上述した直列体の基本的な接続態様を示している。すなわち、コネクタ(+)70Aからコネクタ(GND)70Bへ、第2の発光部20B、第1の発光部20A1、第1の発光部20A2、・・・及び第1の発光部20A7がこの順で直列に接続されている。
【0044】
図7(b)は、
図7(a)の接続態様の変形例であり、第2の発光部20Bが2個直列に接続されている。すなわち、コネクタ(+)70Aと第1の発光部20A1との間に、第2の発光部20B1と第2の発光部20B2がこの順で直列に接続されている。
【0045】
図7(c)は、
図7(b)の接続態様の変形例であり、第2の発光部20Bが2個並列に接続されている。すなわち、コネクタ(+)70と第1の発光部20Aの間に、第2の発光部20B1と第2の発光部20B2が並列に接続されている。
【0046】
図7(d)は、
図7(a)の接続態様の変形例であり、第2の発光部20Bとコネクタ(+)70Aとの間に、直列体に流れる電流を調整する電流調整用抵抗25が接続されている。それぞれの直列体に、電流調整用抵抗25を設けることで、発光素子22のバラツキを調整し、各直列体の発光強度を所望(一般には同一)に調整することができる。
【0047】
図7(e)は、
図7(b)の接続態様の変形例であり、第2の発光部0B1とコネクタ(+)70Aとの間に、直列体に流れる電流を調整する電流調整用抵抗25が接続されている。
【0048】
図7(f)は、
図7(c)の接続態様の変形例であり、第2の発光部20B1とコネクタ(+)70Aとの間に、直列体に流れる電流を調整する電流調整用抵抗25が接続されている。
【0049】
〔発光基板10による発光動作〕
図8を参照して、表面31に蛍光体層36が設けられた発光基板10の基本的な発光動作を説明する。つづいて、
図9及び
図10を参照して、発光部20として第1の発光部20Aと第2の発光部20Bとを混載したときの発光動作について説明する。
【0050】
駆動回路140がオンとなると、
図8に示すように、発光部20は光Lを放射状に発散出射し、その光Lの一部は蛍光体基板30の表面31側に到達する。以下、出射された光Lの進行方向に分けて光Lの挙動について説明する。ここでは、光Lに蛍光体層36の蛍光体を励起させ励起光を出力させる波長が含まれるものとする。具体的には、蛍光体層36に分散されている蛍光体が青色光に励起ピークを持つ蛍光体(可視光励起蛍光体)を使用している。
【0051】
発光部20から出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射することなく電球外部、すなわちカバー部材110の外部に出射される。この場合、光Lの波長は、発光部20から出射された際の光Lの波長と同じままである。
【0052】
発光部20から出射された光Lの一部は、蛍光体層36に入射する。蛍光体層36に入射した光Lが蛍光体層36に分散されている蛍光体に衝突すると、蛍光体が励起して励起光を発する。蛍光体層36における励起光はそのまま蛍光体層36から出射するものもあるが、一部の励起光は下側の回路パターン層34に向かう。回路パターン層34に向かった励起光は、回路パターン層34での反射により外部に出射する。なお、蛍光体層36の蛍光体の種類によっては光Lの波長が異なるが、いずれの場合であっても光Lの波長変換がなされる。このように蛍光体層36を設けることで、蛍光体層36がない場合と異なり、蛍光体層36からも光が照射されるため、照射される光のグレアが低減される。
【0053】
図9及び
図10を参照して、発光部20として第1の発光部20Aと第2の発光部20Bとが混載構成の場合の発光動作について説明する。
図9は、第1の発光部20Aと第2の発光部20Bとが混載した発光基板10を模式的に示した平面図である。
図10は第1の発光部20Aと第2の発光部20Bとが混載した発光基板10を模式的に示した断面図である。上述のように、第1の発光部20Aは白色光を出力し、第2の発光部20Bは450nmをピーク波長とする光を出力する。
【0054】
蛍光体層36には、第2の発光部20Bの光(ピーク波長450nm)によって蛍光励起して発光する蛍光体が含まれている。第2の発光部20Bが出力した光のうち、蛍光体層36に入射した光は、蛍光体によって、第2の発光部20Bの光とは異なる光、例えば補色光に変換される。その結果、第2の発光部20Bの光は、直接出力される光と蛍光体層36により励起されて出力される光とが合わさって出力され、全体として白色光として認識される。
【0055】
このように、発光装置100が、白色光を出力する第1の発光部20Aと、青色光を出力する第2の発光部20Bと、青色光で蛍光励起する蛍光体を有する蛍光体層36とを有することで、グレアを低減させ、より自然の白色光に近い光を出力することができる。また、第2の発光部20Bの配置や光強度(出力や数)、蛍光体層36の材料、厚み、位置、領域等を調整することで、発光装置100として出力する色合いを調整することができる。
【0056】
〔その他機能(光触媒機能)〕
発光装置100には、光触媒を有する光触媒部が設けられてもよい。光触媒部は、第2の発光部20Bが出力する第2の波長の光により、光触媒機能を発揮する。すなわち、第2の発光部20Bが光触媒励起用光源とされる。第2の発光部20Bが出力する第2の波長の光としては、用いられる光触媒によるが、例えば、315nm~415nmの範囲の波長の光、すなわち近紫外光(紫外線)を用いることができる。また、第2の波長のピーク波長が415nm以上460nm以下の範囲にある青色光を用いることができる。
【0057】
光触媒として、第2の波長の光が近紫外光(紫外線)であれば例えば酸化チタンを用いることができ、青色光であれば、酸化タングステン(白金等の触媒併用)、窒素や硫黄、炭素などのイオンをドープした酸化チタン、鉄担持酸化チタン等を用いることができる。光触媒部は、例えば、カバー部材110の内面や、蛍光体基板30に上記に例示した光触媒(酸化チタンや酸化タングステン等)を主成分としたコーティング材を塗布することで得られる。
【0058】
光触媒部の光触媒(酸化チタンや酸化タングステン等)に第2の発光部20Bが出力する第2の波長の光が当たると、光触媒表面で酸化還元反応がおこり、分解力を有する活性酸素が発生し、臭い除去、抗菌・抗ウィルスといった機能を発揮する。カバー部材110の内部は、中央開口37や放熱用開口131を経由して発光装置100の外部と連通している。これによって、発光装置100の周囲環境の臭い除去、抗菌・抗ウィルス等を行うことができる。なお、第2の発光部20Bが近紫外光(紫外線)を出力する場合、カバー部材110に紫外線吸収剤を練り込む等の処理を施し、カバー部材110の外部に近紫外光(紫外線)が出力されることを防止することが好ましい。言い換えると、第2の発光部20Bが青色光を出力して光触媒機能を発現させる場合は、紫外線による人体等への影響を考慮する必要が無いため、そのような観点による設置位置の制限は無く、例えば、光触媒をカバー部材110の外側表面に設けてもよい。
【0059】
また、第2の発光部20Bを光触媒励起用光源として用いる場合、第2の波長の光として、青色光や近紫外光(紫外線)などのような短い波長の光が好んで用いられる。このとき発光装置100の出力は青色側にシフトしてしまう傾向がある。しかし、蛍光体層36が第2の波長の光による励起光(第2の波長より赤色側の波長の光)を出力することで、そのような青色側にシフトを抑制することができる。特に、発光装置100が電球色を出力するような場合に、青色側へのシフトが見た目として顕著に現れてしまうため、蛍光体層36による青色側へのシフトの抑制は非常に効果的である。すなわち、発光装置100に光触媒機能を付加しつつ、蛍光体層36によって、発光装置100が出力する光の青色側へのシフトを抑制することができる。
【0060】
なお、蛍光体層36における蛍光発光の励起効率が良い波長帯と光触媒部における触媒反応効率(励起効率)が良い波長帯がずれる場合がある。例えば、蛍光体層36における蛍光発光は450nm近傍が非常に高い効率を示し、一方、光触媒部における触媒反応は405nmが非常に高い効率を示す場合がある。そのような場合には、蛍光体層36における蛍光発光を重視する場合には、第2の発光部20Bの発光素子22として450nmの光を出力する素子を用い、光触媒部における触媒反応を重視する場合には、第2の発光部20Bの発光素子22として405nmの光を出力する素子を用い、両方を重視する場合は、450nmの光を出力する素子と405nmの光を出力する素子を併用するといった構成を採用することができる。
【0061】
<実施形態の効果>
本実施形態の特徴を纏めると次の通りである。
(1)発光装置100(灯具)は、基板表面(表面31)に蛍光体層36が設けられた蛍光体基板30と、
蛍光体基板30に設けられ、ピーク波長が第1の波長の光を出力する第1の発光部20Aと、
蛍光体基板30に設けられ、ピーク波長が第1の波長と異なる第2の波長の光を出力する第2の発光部20Bと、
を有し、
蛍光体層36は、少なくとも第1の発光部20Aと第2の発光部20Bの周囲に、第1の発光部20Aおよび第2の発光部20Bとは別体に設けられており、第1の波長の光と第2の波長の光を励起光として発光するときの発光ピーク波長が可視光領域にある蛍光体を含む。
これによって、効率的に発光させかつ所望の発光色で発光させる発光装置100(灯具)を実現できる。換言すると、発光装置100としてのグレアを低減し、また、出力する色合いを調整することができる。
(2)第1の波長のピーク波長は可視光の波長領域であってもよい。
例えば、第1の発光部20Aが白色光を出力するLEDである場合、グレアが強く認識されることがあるが、そのようなグレアを低減できる。また、第1の発光部20Aだけでは自然光との色合いが異なるような場合であっても、より自然な色合いを実現できる。
(3)第2の波長のピーク波長は415nm以上460nm以下の範囲にあってもよい。
(4)第2の波長のピーク波長は315nm以上415nm以下の範囲にあってもよい。
(5)第2の発光部20Bの発光素子を封止する封止材が無色透明である。
(6)第1の発光部20Aと第2の発光部20Bは直列に接続されてもよい。
第1の発光部20Aと第2の発光部20Bを直列に接続することで、それらに流れる電流値を同一にすることができ、それぞれの光の出力(強度)の調整が容易となる。特に、第1の発光部20Aと第2の発光部20Bとして、順方向電圧VF特性が異なるLED素子を使用する場合に、第1の発光部20Aや第2の発光部20Bへ設計通り電流を安定供給できる。
(7)複数の第1の発光部20Aと少なくとも1つの第2の発光部20Bとが直列に接続された直列体を有してもよい。
複数の第1の発光部20Aを直列に接続することで、第1の発光部20Aの光の強度のバラツキを抑制できる。
(8)直列体は、直列に接続された複数の第2の発光部20Bを有してもよい。
複数の第2の発光部20Bを直列に接続することで、第2の発光部20Bの光の強度のバラツキを抑制できる。
(9)直列体は、並列に接続された複数の第2の発光部を有してもよい。
複数の第2の発光部20Bを並列に接続することで、回路構成の自由度が向上する。第2の発光部20Bの光の強度のバラツキが発生する場合でも、蛍光体層36があることでそのようなバラツキを吸収することができる。
(10)直列体が複数並列に接続されてもよい。
(11)第1の発光部20Aの発光素子22と第2の発光部20Bの発光素子22は発光ダイオード素子(LED)である。
(12)第1の発光部20Aに流れる電流を調整する電流調整用抵抗25を備えてもよい。
複数の直列体が並列に接続される回路において、各直列体の電流値を一定にし、出力される光のバラツキを低減できる。
(13)第1の発光部20Aと第2の発光部20Bを実装する回路パターン層34(回路パターン)を有し、
回路パターン層34は、第1の発光部20Aと第2の発光部20Bに電力を供給する経路として、基板中心側に設けられたプラス電位部と、基板外周側に設けられたグランド電位部とを有する。このような構成により回路構成をシンプルにすることができる。
(14)第2の発光部20Bが出力する第2の波長の光により光触媒機能を発揮する光触媒部を有する。
これによって、発光装置100が配置された環境の浄化が可能となる。また、光触媒励起用光として青色光や近紫外光(紫外線)などのような短い波長の光を利用することで、出力光が青色側へシフトしてしまうような場合でも、蛍光体層36により青色側へのシフトを抑制できる。
【0062】
以上のとおり、本発明について前述の各実施形態を例として説明したが、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではない。例えば、発光部20の発光色は、直列体ごとや、並列体ごとに異なってもよい。駆動回路140が発光部20を発光駆動させる際に、直列体ごとや並列体ごとに出力調整をしたり、発光タイミングを調整することで、多彩な調光・調色が可能となる。
【0063】
この出願は、2021年6月28日に出願された日本出願特願2021-106374号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0064】
2A 第1の領域
2B 第2の領域
2C 第3の領域
10 発光基板
20 発光部
20A、20A1~20A7 第1の発光部
20B、20B1、20B2 第2の発光部
22 発光素子
23 封止樹脂
30 蛍光体基板
31 表面
32 絶縁基板
33 裏面
34 回路パターン層
38 コアメタル
34A、34B 電極対
34C 配線部分
36 蛍光体層
37 中央開口
70 コネクタ
70A コネクタ(+)
70B コネクタ(GND)
100 発光装置
110 カバー部材
130 胴部
131 放熱用開口
140 駆動回路