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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】相互結合に基づくキャリブレーション
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/11 20150101AFI20240627BHJP
   H04B 17/21 20150101ALI20240627BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20240627BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20240627BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
H04B17/11
H04B17/21
H04B7/06 982
H04B7/08 982
H01Q3/26 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023553412
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 US2022020593
(87)【国際公開番号】W WO2022197832
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】63/161,701
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517362118
【氏名又は名称】エーエスティー アンド サイエンス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AST & Science, LLC
【住所又は居所原語表記】100 SE 2nd St,Suite 3500 Miami, Florida 33131, U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤシムハ スリラム
(72)【発明者】
【氏名】カスパリス クリストス
(72)【発明者】
【氏名】キング ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラー デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ フイウェン
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/021628(WO,A1)
【文献】特開2007-174072(JP,A)
【文献】特開2006-279668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0242918(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/11
H04B 17/21
H04B 7/06
H04B 7/08
H01Q 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子であって、各々が送信経路を有する複数のアンテナ素子と、
送信キャリブレーションを実行するために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を前記送信経路に供給するように構成された処理装置とを有し、
前記処理装置は、さらに、前記複数のアンテナ素子の中から、中央に位置する1つのアンテナ素子を、前記複数のアンテナ素子が前記中央に位置する1つのアンテナ素子に直接隣接する複数の直接隣接するアンテナ素子を含、前記複数の直接隣接するアンテナ素子の各々が直接隣接している前記中央に位置する1つのアンテナ素子として選択し、
前記複数の直接隣接するアンテナ素子の前記送信経路を介して、複数のOFDMキャリブレーション信号を送信し、
選択された前記中央に位置する1つのアンテナ素子の受信経路を介して、前記複数のOFDMキャリブレーション信号を受信し、
前記複数の受信されたOFDMキャリブレーション信号に基づいて、前記選択された中央に位置する1つのアンテナ素子と、前記複数の直接隣接するアンテナ素子の各隣接するアンテナ素子との位相および振幅を計算するように構成されている、アンテナアレイ。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数のアンテナ素子はそれぞれ受信経路を有し、
前記処理装置は、受信キャリブレーションを行うために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を前記受信経路に供給するように構成されている、アンテナアレイ。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記処理装置は、搬送波信号に、前記搬送波信号の強度よりも少なくとも1桁小さい強度の前記OFDMキャリブレーション信号を、前記搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させずに重畳する、アンテナアレイ。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記OFDMキャリブレーション信号は、独立して推定可能であり、かつ、所定の時間内に正確なキャリブレーション推定値に結び付けることができる多数のサブキャリアから構成されている、アンテナアレイ。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記送信経路は、ベースバンド/無線周波数コンバーターと、発振器と、デジタル/アナログコンバーターと、送信フロントエンドモジュールと、送信アンテナとを含む、アンテナアレイ。
【請求項6】
請求項2において、
前記受信経路は、無線周波数/ベースバンドコンバーターと、発振器と、アナログ/デジタルコンバーターと、受信フロントエンドモジュールと、受信アンテナとを含む、アンテナアレイ。
【請求項7】
請求項2または6において、
前記受信経路は、OFDMキャリブレーション信号と重畳された搬送波信号であって、典型的には、前記OFDMキャリブレーション信号の強度は、前記搬送波信号の強度よりも少なくとも1桁小さく、それにより、前記搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない、重畳された搬送波信号を取得する、アンテナアレイ。
【請求項8】
請求項1または2において、
前記OFDMキャリブレーション信号が予め計算されている、アンテナアレイ。
【請求項9】
複数のアンテナ素子であって、各々が受信経路を有する複数のアンテナ素子と、
受信キャリブレーションを実行するために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を前記受信経路に供給するように構成された処理装置とを有し、
前記処理装置は、さらに、前記複数のアンテナ素子の中から、中央に位置する1つのアンテナ素子を、前記複数のアンテナ素子が前記中央に位置する1つのアンテナ素子に直接隣接する複数の直接隣接するアンテナ素子を含、前記複数の直接隣接するアンテナ素子の各々が直接隣接している前記中央に位置する1つのアンテナ素子として選択し、
前記複数の直接隣接するアンテナ素子の送信経路を介して、複数のOFDMキャリブレーション信号を送信し、
選択された前記中央に位置する1つのアンテナ素子の前記受信経路を介して、前記複数のOFDMキャリブレーション信号を受信し、
前記複数の受信されたOFDMキャリブレーション信号に基づいて、前記選択された中央に位置する1つのアンテナ素子と、前記複数の直接隣接するアンテナ素子の各隣接するアンテナ素子との位相および振幅を計算するように構成されている、アンテナアレイ。
【請求項10】
請求項において、
前記複数のアンテナ素子はそれぞれ送信経路を有し、
前記処理装置は、受信キャリブレーションを行うために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を前記送信経路に供給するように構成されている、アンテナアレイ。
【請求項11】
請求項10において、
前記処理装置は、搬送波信号に、前記OFDMキャリブレーション信号であって、その強度が、前記搬送波信号の強度よりも少なくとも1桁小さく、前記搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない前記OFDMキャリブレーション信号を重畳する、アンテナアレイ。
【請求項12】
請求項9または10において、
前記OFDMキャリブレーション信号は、独立して推定可能であり、かつ、所定の時間内に正確なキャリブレーション推定値に結び付けることができる多数のサブキャリアから構成されている、アンテナアレイ。
【請求項13】
請求項10において、
前記送信経路は、ベースバンド/無線周波数コンバーターと、発振器と、デジタル/アナログコンバーターと、送信フロントエンドモジュールと、送信アンテナとを含む、アンテナアレイ。
【請求項14】
請求項9または10において、
前記受信経路は、無線周波数/ベースバンドコンバーターと、発振器と、アナログ/デジタルコンバーターと、受信フロントエンドモジュールと、受信アンテナとを含む、アンテナアレイ。
【請求項15】
請求項9または10において、
前記受信経路は、前記OFDMキャリブレーション信号と重畳された搬送波信号であって、前記OFDMキャリブレーション信号の強度が、前記搬送波信号の強度よりも少なくとも1桁小さく、前記搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない、重畳された搬送波信号を取得する、アンテナアレイ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2021年3月16日に出願された米国仮出願第63/161701号の優先権を主張するものであり、その内容はここにその全体が組み込まれる。
【分野】
【0002】
本開示は、フェーズドアレイ(位相アレイ)の複数のアンテナ素子の相互結合に基づくキャリブレーション(校正)の実施に関するものである。
【背景】
【0003】
米国特許第9,973,266号および第10,979,133号は、宇宙空間で多数の小型衛星アンテナを組み立てて大型アレイを形成するシステムを示している。このアレイは、地表の指定された「セル」と無線通信するためのサービスビームを形成する。これらの特許の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。アレイ内の各小型衛星は、1つまたはそれ以上のデジタルビーム形成(DBF)用のプロセッサーと、対応する数の送受信(T/R)モジュールと、アンテナ素子とを有する。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、2021年4月6日に発行された米国特許第US10972195B1号を、相互結合に基づくフェーズドアレイキャリブレーションに、CDMAシーケンスではなくOFDM-BPSKシンボルシーケンスを使用することによって改良するものである。このような変更により、他の推定(振幅および群遅延)の精度を損なうことなく、所定の推定時間を使用して位相をより正確に推定することができる。米国特許第US10972195B1号の全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
フェーズドアレイの限界の1つは、アレイアセンブリで地上の複数の領域との間にビームを形成するには、各アナログT/Rモジュールの振幅特性および位相特性の正確な特性評価(キャラクタリゼーション、キャリブレーション(校正、較正)とも呼ばれる)が必要であることである。さらに、これらのT/Rモジュールの特性は、温度の変化(例えば、受ける太陽放射の影響)によって大きく変化する可能性がある。地球低軌道(LEO)の衛星では、温度変化は分単位でも大きい。そのため、キャリブレーションは送受信デジタルビームフォーミング(DBF)処理と同時に行う必要があり、複数のキャリブレーション測定を同時に行うことで容易になる。
【0006】
本開示は、例えば、米国特許第10972195B1号に関して、複数のフェーズドアレイ(位相アレイ)において正確な位相キャリブレーション(フェイズキャリブレーション)の推定値を得ることに関するものである。
【0007】
米国特許第10972195B1号で既に述べたように、アレイの再キャリブレーションは頻繁に行われる(そしてそれはサービス(使用)と同時に行われる)。フェーズドアレイの複数の素子をサービスから除外しても(キャリブレーションのためだけに使用しても)、フェーズドアレイの動作が著しく劣化することはなく、キャリブレーション信号がビームに大きな干渉を与えることもないが、キャリブレーションシーケンスの期間を最小化することで、上記による最小限の劣化さえも回避することができる。CDMAシーケンス(米国特許第10972195B1号で使用)ではなく、OFDMシーケンスを使用することで、位相キャリブレーションの精度を向上させるか、または所定の位相キャリブレーション精度に対してより短いキャリブレーションシーケンスを使用することができる。以下の説明では、CDMAと比較してOFDMキャリブレーションシーケンスが優れていることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示のいくつかの実施例のみを示しており、図に具体的に図示されていない他の実施例または様々な実施例の組み合わせは、依然として本開示の範囲内に含まれ得ることを理解されたい。次に、実施例について、図面を用いてさらに詳細に説明する。
【0009】
図1図1は、アンテナアセンブリの構成を示す。
【0010】
図2A図2Aは、アンテナアセンブリの3x3素子における測定の構成を示す。
【0011】
図2B図2Bは、上記のサンプルの構成における相互結合の振幅と位相の測定結果を示す。
【0012】
図3A図3Aは、TxおよびRxビームフォーミングのデフォルトの構成を示す。
【0013】
図3B図3Bは、Txパス(Tx経路)のキャリブレーションのための構成例を示す。
【0014】
図3C図3Cは、Rxパス(Rx経路)のキャリブレーションのための構成例を示す。
【0015】
図4図4は、キャリブレーション中のアンテナアセンブリの複数の素子の構成例を示す。
【0016】
図5図5は、第1のアンテナ素子が第2のアンテナ素子420を取り囲み、それらの間でキャリブレーションを行う様子を示す。
【0017】
図6図6は、時間領域(タイムドメイン)OFDMシンボルのグループ化と変調を示す。
【0018】
図7図7は、20MHz帯域幅のキャリブレーション信号のスペクトル例を示す。
【0019】
図8図8は、一実施例による複数のサンプルの受信コレクションを示す。
【0020】
図9図9は、直交BPSKコードによってキャリブレーション信号を直交化し、OFDMシンボルをキャリブレーションに使用する方法の一例を示す。
【0021】
図10図10は、OFDMサブキャリア割り当てによってキャリブレーション信号を直交化し、OFDMシンボルをキャリブレーションに使用する方法の一例を示す。
【詳細な説明】
【0022】
図面に図示された本開示の例示的で非限定的な実施形態を説明する際に、明確さのために特定の用語が援用される。しかしながら、本開示は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語は、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的等価物を含むことを理解されたい。本開示のいくつかの実施形態は、例示の目的で記載されており、本開示は、図面に具体的に示されていない他の形態で具体化され得ることが理解される。
【0023】
図1を参照すると、アンテナアセンブリ120、例えば、位相アレイアンテナ(フェーズドアレイアンテナ、フェーズドアレーアンテナ)の1つのアンテナアセンブリまたはサブアレイは、複数のアンテナ素子130を含む。2つのアンテナ素子MICRON-n、MICRON-n+1が図示されているが、任意の適切な数のアンテナ素子130を利用できることを示している。アンテナアセンブリ120は、「Micron(マイクロン、ミクロン)」とも称される(とも参照される)。図1に示される一実施形態では、複数のアンテナアセンブリ120は、米国特許第9,973,266号および米国公開公報第2019/0238216号に示されるような、機械的および/または電子的に連結されて、アンテナアセンブリ120となる単一の連続したフェーズドアレイを形成し、空間(宇宙空間)内に大きなアレイを形成する。
【0024】
各アンテナ素子130は、図1に示すように、送信ポート(TXポート)131および受信ポート(RXポート)132を含む。各アンテナ素子130はまた、それ自身のDBFプロセッサー137、138と、ミキサー139A、139Bとを含み、これらミキサーの複数のミキシング周波数ドライバ用の数値制御型発振器(NCO)は、それぞれ送信周波数および受信周波数に調整され、LTEバンドなどの所望のバンドへの/からのベースバンド信号をアップ/ダウン変換し、さらに、デジタル/アナログコンバーター(DAC)135と、アナログ/デジタルコンバーター(ADC)136と、図1において送信および受信フロントエンドモジュール(FEM)133、134として一括されているアナログフロントエンドコンポーネントとを含む。ミキシングには、乗算およびフィルタリング(不要な画像を除去する)が含まれる場合がある。
【0025】
一実施形態例では、複数のアンテナアセンブリ120は、共通クロックを分配するために、低ジッターおよびドリフトクロックの高速シリアライザー/デシリアライザー(SERDESなど)を介して中央プロセッサー(中央処理装置)に接続されてもよい。中央処理装置(CP)は、SERDESラインを介して、複数のビーム信号を送信ビーム形成処理137にブロードキャストし、蓄積された受信ビーム形成処理信号(138の出力)を収集する。また、衛星が軌道を周回する際に、各ビームの送受信ビームフォーミングのテーパーおよび位相情報を定期的に更新する。さらに、本明細書で説明するキャリブレーションプロセスおよびフェーズドアレイ監視制御(M&C)をコーディネート(実施、調整)する。ビームフォーミングサブシステム(中央処理装置と複数のアンテナアセンブリ120のフェーズドアレイで構成)は、トランスポンダー(中継装置)と通信することができ、トランスポンダーは、例えば、衛星を介して、地上局のアンテナと通信する。1つの中央処理が示されているが、例えば各アンテナ素子130がマイクロプロセッサーを有するような分散処理も提供することができる。
【0026】
例えば、アンテナアセンブリ120は、アンテナアセンブリ120の様々な機能(またはプロセス)を実行する(または制御する)ように構成された処理装置125と、複数のシンボルおよび/または他の適切なデータまたは複数の命令(処理装置125によって実行される命令など)を記憶するように構成された記憶装置126とを含むことができる。
【0027】
デジタルビーム形成処理装置(デジタルビームフォーミング処理装置)の送信ユニット137および受信ユニット138は、各ビームについて、各入力信号のサンプルに、あるテーパーおよび位相(フェーズドアレイ内の素子の位置によって決定される)を乗算し、それらの結果を、形成されたビームの数にわたって蓄積する処理を実行するように構成されてもよい。最終的に、デジタルデータは、デジタル/アナログコンバーター(DAC、135と記されている)およびアナログ/デジタルコンバーター(ADC、136と記されている)を介して、アナログデータに変換され、また、アナログデータから変換される。あるアンテナアセンブリ120、および隣接する複数のアンテナアセンブリ120上のデジタルコンポーネント(ADCおよびDACを含む)における全てのベースバンドおよびRF遅延は、SERDESフレームのタイミングにより厳密に制御/キャリブレーションされる。
【0028】
フェーズドアレイ構造の撓みにより、アレイ120内の複数のアンテナ素子130は動くことがあるが、その動きは小さく、位置変化はデジタル的に補正される。各アンテナアセンブリ120の局部発振器は、電源投入時またはリセット時にランダムに相対な開始位相を持ってもよい。なお、送信アンテナ素子は、それ自身(自己結合)、および、そのすぐ近くの隣接素子(直に隣接する素子と対角方向に隣接する素子とを含み、素子が完全に隣接素子に囲まれている場合は8つであり、角(エッジ)の素子の場合は、これより少ない)に放射することができる。その影響は、直には隣接していない素子に対してもあるが、単に存在する干渉レベルを増加させるだけであり、キャリブレーションシーケンスのコード長を長くすることで対処できる。フェーズドアレイのキャリブレーションを行うには、各結合のフェーズシフト(位相シフト)を推定または既知にする必要がある。
【0029】
前述では、受信経路のデジタル入力と送信経路のデジタル出力との位相差と振幅差の対数とを測定している。これらの測定値は、送信経路の位相、自己/相互結合位相、受信経路の位相の和、および/または、送信経路の振幅の対数、自己/相互結合位相の振幅の対数、受信経路の振幅の対数の和である。複数のアンテナアセンブリ間の全てのTxパス(送信パス、送信経路)位相、Rx経路(受信パス、受信経路)位相、およびキャリア位相の差が決定されるまで、このような測定が複数回行われる。さらに、受信経路のデジタル入力と送信経路のデジタル出力との振幅比の対数を測定する。ここで、測定された振幅比の対数は、送信経路のゲイン(利得)の対数、自己/相互結合のゲインの対数、受信経路のゲインの対数の和である。このような測定は、送信経路のゲイン、相互結合の振幅応答、受信経路のゲインの全ての対数が決定されるまで、複数回行われる。
【0030】
一実施例では、アンテナ素子130のアンテナは送信ポート131および受信ポート132を含んでよく、アンテナ素子130は送信ポート131を介して自身の受信ポート132に送信してもよい。別の例では、アンテナ素子130は、送信アンテナ131および受信アンテナ132を含んでもよく、アンテナ素子130は、送信アンテナ131を介して自身の受信アンテナ132に送信してもよい。したがって、自己結合は、例えば、アンテナ素子130とそれ自体との結合、すなわち、同じアンテナ素子130の送信ポート131および受信ポート132を介した結合、またはアンテナ素子130の送信アンテナおよび受信アンテナを介した結合であってもよい。相互結合は、例えば、第1のアンテナ素子130と、第1のアンテナ素子に隣接する第2のアンテナ素子130との間の、第1のアンテナ素子の送信アンテナおよび第1のアンテナ素子に隣接する第2のアンテナ素子の受信アンテナを介した結合であってもよい。
【0031】
キャリブレーションは、例えば、フェーズドアレイやアンテナアセンブリの電源投入時やリセット時、動作周波数が変化した時や変化しようとした時、温度が大きく変化した時(アンテナアセンブリの温度センサーによって補助される)、および/または電子部品の経年変化(経年劣化)があった時など、特定の時点で実行することができる。キャリブレーションが頻繁に行われる場合、経年変化による再キャリブレーションは自動的に行われる。キャリブレーションは、例えばビームフォーミングと同時に、干渉やゲインロスを低減する際に行ってもよい。キャリブレーションはスキャンアングルに依存せず、あるビームのキャリブレーションは、同じキャリアの他の全てのビームに適用されてもよい。
【0032】
サンプル測定(図2Aおよび図2B)は、送信経路から受信経路への方向が同じグループの相互結合測定値が非常に類似していることを示している(その方向は、N、NE、E、SE、S、SW、W、およびNWといった一般の基本的な方向で特定できる)。一般に、例えばNの相互結合とNEの相互結合はかなり異なる可能性がある。実際、これらは全て互いにかなり異なっている。しかしながら、ある素子のNE相互結合は、別の素子のNE相互結合と類似している。
【0033】
そのため、隣接方向および対角方向の8つの基本的な方向の、一組の相互結合の測定値が測定および保存され、後に、Tx経路およびRx経路の位相および振幅のキャリブレーションの推定に使用されてもよい(ただし、これらが温度/経年変化により実質的に変化しない場合に限る)。8つの枢軸方向(基本的な方向)は、例えば、4つの隣接方向と4つの対角方向とを含んでもよい。例えば、素子5について、4つの隣接方向は、素子5から素子6への方向、素子5から素子4への方向、素子5から素子2への方向、および素子5から素子8への方向を含み、4つの対角方向は、素子5から素子1への方向、素子5から素子3への方向、素子5から素子7への方向、および素子5から素子9への方向を含んでもよい。図2Aにおいて、各素子について、Aは素子のTxポートを表し、Bは素子のRxポートを表す。例えば、5Aは素子5のTxポートを表し、5Bは素子5のRxポートを表す。図2Aにおいて、5Bと3Aとの間の両矢印線、すなわち「5Bから3A」と表示された両矢印線は、素子5のRxポートと素子3のTxポートとの間の結合に関する相互結合の測定(測定値)を表す。図2Bにおいて、「5Bから3A」と表示された曲線は、素子5のRxポートと素子3のTxポートとの間の結合に関する相互結合の測定値の曲線である。相互結合の測定には、例えば、相互結合の振幅の測定または相互結合の位相の測定を含んでもよい。相互結合の振幅および位相は、方向に依存し得る。送受信FEMの振幅と位相は、素子間で大きく異なることがあり、また、それらが信号を受信する方向とは相関がなく、キャリブレーション(校正または等化)されてもよい。
【0034】
図3Aは、TxおよびRxビームフォーミングのデフォルト構成を示す。測定を可能にするために、トーン(音)、擬似雑音(PN)コード、またはOFDMキャリブレーションシーケンスなどの信号(CAL)(図3Aの319)が、送信機によって、そのデジタル/アナログコンバーターDACに送信されてもよい。PNコードは、例えば、2値の自己相関を有する2値シーケンスであってもよい。自己/隣接素子の受信経路への自己/相互結合により、位相/振幅の測定が自己/隣接素子で行われる。つまり、自己素子の受信経路への自己結合により、位相/振幅の測定が行われ、隣接素子の受信経路への相互結合により、位相/振幅の測定が隣接素子で行われる。複数の隣接素子からの測定値を平均化することで、推定誤差を低減できる。
【0035】
複数のトーン/ゴールドコード/直交周波数分割多重(OFDM)信号は、測定における干渉を避けるために、複数の異なるアンテナアセンブリの複数の隣接素子からのキャリブレーション信号を励起するために使用されてもよい。自身のアンテナ素子を含め、隣接する複数のアンテナ素子からの同時送信を可能にするには、9つのコードで十分である。振幅のキャリブレーションは、一定のエンベロープCAL信号(トーン/ゴールドコードなど)を使用する場合、位相シフトの影響を受けない。一方、OFDMシーケンスは高いピーク対平均電力比(PAPR)を示すことがある。この特徴により、非線形RFコンポーネント(パワーアンプなど)による相互変調(IMD)ノイズが発生する可能性がある。しかしながら、実際には、a)キャリブレーション信号は大幅な(充分な)電力バックオフで送信されるため、b)PAPRの低いOFDMキャリブレーションシーケンスを事前に(オフラインで)計算することにより、PAPRを最小化できるため、この影響は限定的である。一例として、PAPRが6.8dBの2048サブキャリアの2値位相偏移変調(BPSK)-OFDMシンボルを見つけるには、(BPSKシンボルシーケンスに関して)1000万回の無作為化検索が必要であった。
動作モード別の設定
【0036】
図3A~3Cに、異なる動作モードのスイッチ設定により幾つかの構成例を示す。図3Aは、デフォルトの動作モードである送受信(Tx/Rx)ビームフォーミングを示している。ここでは、TxおよびRxビームフォーミングのみが行われ、キャリブレーション測定は行われない。
【0037】
図3Aを参照すると、Tx/Rxビームフォーミングの間、ビームフォーミングされた信号、例えばLTE信号は、CAL信号319を加算することなく、加算回路321を介してベースバンド-RF間のNCO317に供給され、ベースバンド-RF間のNCO317はTx周波数にチューニングされている(同調されている)。ベースバンド-RF間のNCO317は、LTE信号を変換し、無線周波数デジタル/アナログコンバーター(RFDAC)315に信号を出力する。ベースバンド-RF間のNCO317から出力された信号は、RFDAC315によってアナログ信号に変換される。TxFEM133は、そのアナログ信号をTxアンテナ311に渡すように選択される。Txアンテナ311は、(自己/相互結合を介して)Rxアンテナ312へのアナログ信号にリークする(漏らす)が、RxFEMによって抑制される。Rxアンテナ312はアナログ信号を受信してもよい。RxFEM134は、そのアナログ信号を無線周波数アナログ/デジタルコンバーター(RFADC)316に渡すように選択される。RFADC316はアナログ信号をデジタル信号に変換する。そのデジタル信号はさらにRF-ベースバンド間のNCO318に供給される。RF-ベースバンド間のNCO318はRx周波数にチューニングされており(同調されており)、入力されたデジタル信号を変換してLTE処理用の信号を出力する。したがって、このシステムは、送信と受信の周波数(およびそれらのFEM)が異なるFDD(Frequency Division Duplex、周波数分割複信)でもキャリブレーションが可能となる。
【0038】
図3Bは、TxビームフォーマーとTxパス(Tx経路)のキャリブレーションを同時に行うための構成例を示している。一例の構成では、キャリブレーション信号(CAL信号)319は、素子のTxFEMの振幅および位相応答を特徴付けるために導入される。キャリブレーション信号は、トーンまたはバイフェーズ(2位相、PN)シーケンス/ゴールドコードまたはOFDM信号であってもよい。キャリブレーション信号319は、加算回路321によってビームフォーミングされた信号(例えば、LTE信号)に加算(追加)され、その結果、出力信号には送信ビームフォーミングされた信号とキャリブレーション信号とが含まれる。TxFEM133は、送信キャリア周波数帯域を送信できるように選択される。キャリブレーションを必要とする自己および隣接するTx経路は、それぞれ異なるコードでキャリブレーション信号を送信する。9個の素子の中央(中心)の素子5(例えば、図2Aを参照)のRxパス(Rx経路)は、Rxビームフォーミングを瞬間的に一時停止し、RxFEM134からRxオールパス(全通過)経路314に切り替え(すなわち、RxのFEM134をバイパスする)、Rxオールパス経路314は、送信キャリア周波数帯域と受信キャリア周波数帯域との両方を受信できるようにする。RFからベースバンド間のNCO318は、Txキャリブレーションのためにキャリブレーション測定320が行われ得るように、Tx周波数に同調される。一例では、9つの異なるコード(自己から1つ、隣接素子から8つ)が同時に使用されてもよく、自己および複数の隣接素子の複数の送信FEMが、これら9つの測定全てに共通の基準(リファレンス)である中央の素子の同じRxオールパス経路314に対してキャリブレーションされるようにすることができる。
【0039】
図3Cは、RxFEMのキャリブレーションのために、DBFプロセッサーからのLTE信号が一時的(このキャリブレーション測定が完了するまで)にスイッチオフされ、ベースバンド-RF間のNCO317がRx周波数に同調されてRx周波数でのキャリブレーション信号の生成が可能になり、Txオールパス(全通過)経路313を選択することによってTxFEM133がバイパスされ、RxFEM134が(通常通り)アクティブになり、RxビームフォーミングとRxキャリブレーション測定320の両方が有効になることを示している。図2Aの素子5のような中央の素子からの(TxFEM133がバイパスされた)キャリブレーション信号319は、自己および複数の隣接素子のRxFEM134を介して受信されるので、自己および複数の隣接素子のRxFEMが、これら9つの測定の全てに共通の基準である中央の素子の同じTxオールパス経路313に対して同時にキャリブレーションされるようにすることができる。一例では、TxFEMキャリブレーションの場合と異なり、RxFEMキャリブレーションでは、(複数の隣接素子のRXFEMへの送信用の)1つのキャリブレーション(トーンまたはPNコードまたはOFDM)信号のみを使用してもよい。
【0040】
したがって、FDDシステムに対してTx/Rxキャリブレーションを達成することができ;最大9個のキャリブレーションシーケンス(Micron1つあたり)をTXCALモードで同時に送信することができ、ただし、これらのコードの相互相関が小さく、1つの素子に対し9つの同様の相関を伴う場合に限り;Rxには1つのみのキャリブレーションシーケンスが必要であり;一方、9つの相関器が異なる素子に実装されており;キャリブレーションシーケンスはコードの長さを長くすることで(ビームフォーミング信号と比較して)低電力にすることができ;異なるMicronの複数の素子に対して並列にキャリブレーションのための測定が可能であり;5の場合、キャリブレーション信号を伝達する複数の素子は、サイドローブを避けるために擬似ランダムに選択される必要があり;そして、キャリブレーション信号がビーム信号と干渉するのを避けるために、コード自体は異なるMicronで異なる位相にする必要がある。
【0041】
図4は、例示的な構成を示し、この構成では、自己および相互結合測定が地上で行われ、キャリブレーション測定は機上で使用される。図4を参照すると、3×3のアンテナアセンブリ120が示されており、各アンテナアセンブリ120は、複数の素子130を含んでもよい(ここでは、さらに、第1および第2の素子を410、420として示す)。第2の素子420は、中央の素子として選択される可能性があるものである。各アンテナアセンブリ120は、例えば、4×4素子のグループを含んでもよい。異なるアンテナアセンブリ120の中央の素子は、共通する隣接するアンテナ素子を有していなければ、並列に(例えば、本開示を通じて使用される「並列」という用語は同時を含む)キャリブレーションされてもよい。これを確実にする1つの方法は、アンテナアセンブリを交互に(チェッカーボード式に並列に)キャリブレーションすることである。
【0042】
位相/対数振幅測定は、Tx経路の位相/対数振幅、自己/相互結合の位相/対数振幅、およびRx経路の位相/対数振幅の和である。すなわち、位相測定は、Tx経路の位相、自己/相互結合の位相、およびRx経路の位相の和であり、対数振幅測定は、Tx経路の対数振幅、自己/相互結合の対数振幅、およびRx経路の対数振幅の和である。
【0043】
図4を参照すると、送信キャリブレーションでは、第1のアンテナ素子410は送信中であり、第2のアンテナ素子420は共通のRx経路である(オールパス経路を有し、CAL信号を送信周波数で許可してRx経路で受信できるようにする)。受信キャリブレーションでは、素子410は受信中であり、素子420は共通のTx経路である(オールパス経路を有し、CAL信号を受信周波数で許可してTx経路で送信できるようにする)。全てのアンテナアセンブリ内(イントラアンテナアッセンブリ)のキャリブレーション測定値が揃った後(調整された後)、アンテナアセンブリ間(インターアンテナアッセンブリ)の測定値が調整される。
【0044】
このように、図4は4×4のアンテナ素子からなるアンテナアセンブリを9つ含むものを示している。各アンテナアセンブリで行われているイントラおよびインターMicronのキャリブレーション測定の対象となっているアンテナ素子のスナップショットを1つ示す(16個のうち選択された9個)。選択された9つのアンテナ素子が、そのアンテナアセンブリ内にある場合、この測定はイントラMicron(Micron内)として扱われる。選択された9つのアンテナ素子が隣接する2つのアンテナアセンブリにまたがっている場合、この測定はインターMicron(Micron間)として扱われる。各アンテナアセンブリにおいて、キャリブレーション測定中は、アンテナ素子の1つが中央の素子420(送信キャリブレーション中は共通Rx経路、受信キャリブレーション中は共通Tx経路)として機能し、中央の素子420を取り囲む全ての素子は、中央の素子420を取り囲む第2の素子410として扱われる。一旦、共通の経路を基準として9つの素子の測定が行われると、全てのアンテナ素子についての測定が行われる(カバーされる)まで、異なる位置に移動される。図示の実施形態では、中央下部のセットは、その特定の時点ではキャリブレーション測定を行っていない。中央上部では、周囲の素子410の一部が次のセット(図示の実施形態では右側)に伸びており、これは、インターMicron測定の一例を示し、あるアンテナアセンブリの測定値を、それに隣接するアンテナアセンブリの測定値と整合させる。このように、このシステムは複数の素子から同時にキャリブレーション測定値を取得することができる。
OFDMキャリブレーション信号の設計
【0045】
送信されるOFDMキャリブレーション信号は以下のように設計される。
【0046】
図5を参照すると、送信キャリブレーションにおいて、第1のアンテナ素子410は送信中であり、このためアクティブに送信しているキャリブレーション素子であり、第2のアンテナ素子420は共通のRx経路である(CAL信号を送信周波数でRx経路により受信できるようにするためのオールパス経路を有する)。周期的プレフィックス(接頭コード、CP)のない異なる(または固有の)BPSK-OFDM(またはQAM(Quadrature Amplitude Modulation 直交振幅変調)-OFDM)シンボルは、アクティブに送信している各キャリブレーション素子に割り当てられてもよく、異なるBPSK-OFDMまたはQAM-OFDMシンボルは相互相関が低く、および/またはランダム化されたBPSKシンボルを使用して生成されてもよい。
【0047】
アクティブなLTEキャリアが3つ(C1、C2、C3)あるシナリオ例では、OFDMシンボルを送信するための3つのチャネル(チャネルS1、チャネルS2、チャネルS3)が存在してもよく、チャネルS1はアクティブなLTEキャリアC1に対応し、チャネルS2はアクティブなLTEキャリアC2に対応し、チャネルS3はアクティブなLTEキャリアC3に対応する。アクティブなLTEキャリアの数は、他の適切な値(3以上の整数など)とすることができ、個々のアクティブなLTEキャリアが1つのチャネルに対応する。図6を参照すると、送信キャリブレーションの素子410-1については、(アクティブなLTEキャリアの数が3である場合)OFDMシンボルを送信するための、たとえば3つのチャネル(チャネルS1、チャネルS2、チャネルS3)が存在してもよい。送信キャリブレーションの素子410-1に対して、第1のチャネルS1は、OFDMシンボルE1_S1_1、E1_S1_2、・・・、~E1_S1_Qを有することができ、ここで、Qは、送信キャリブレーションの素子410-1の第1のチャネルS1のOFDMシンボルの数(例えば、総数)であり、シンボル参照番号の「E1」は、シンボルが第1の送信キャリブレーションの素子410-1に対応することを示し、シンボル参照番号の「S1」は、シンボルが第1のチャネルS1に対応することを示す。また、送信キャリブレーションの素子410-1の第1のチャネルS1のOFDMシンボルは、{E1_S1_q|qは、1~Qの範囲の整数}と表すこともできる。OFDMシンボルE1_S1_1、E1_S1_2、・・・、E1_S1_Qは、同一のOFDMシンボルを多数回繰り返したものである。OFDMシンボルE1_S1_1、E1_S1_2、・・・、E1_S1_Qは、図6に示すように、グループ化(等化グループ内で)することができる。OFDMシンボルの複数のグループは、送信キャリブレーションの素子410-1に使用される直交(BPSK)コードのそれぞれのビットによって変調することができる。
【0048】
送信キャリブレーションの素子410-1の第2のチャネルS2は、OFDMシンボルE1_S2_1、E1_S2_2、・・・、~E1_S2_Qを有することができ、ここで、Qは、送信キャリブレーションの素子410-1の第2のチャネルS2のOFDMシンボルの数(例えば、総数)であり、シンボル参照番号の「E1」は、シンボルが第1の送信キャリブレーションの素子410-1に対応することを示し、シンボル参照番号の「S2」は、シンボルが第2のチャネルS2に対応することを示す。また、送信キャリブレーションの素子410-1の第2のチャネルS2のOFDMシンボルは、{E1_S2_q|qは1からQまでの範囲の整数}と表すこともできる。同様に、送信キャリブレーションの素子410-1の第3のチャネルS3のOFDMシンボルは、{E1_S3_q|qは1からQまでの範囲の整数}と表すことができる。
【0049】
したがって、送信キャリブレーションの素子410-pについて、インデックスpは、1から送信キャリブレーションの素子の数(例えば、総数)Pまでの範囲の整数であり、j番目のチャネル(チャネルSj)は、OFDMシンボル{Ep_Sj_q|qは、1からQまでの範囲の整数である}、すなわち、Ep_Sj_1、Ep_Sj_2、・・・、からEp_Sj_Qを有する。インデックスjは、1からJまでの範囲の整数であり、Jは、それぞれの送信キャリブレーションの素子の送信シンボル用のチャネルの数(例えば、総数)である。
【0050】
Txキャリブレーション中、複数のアクティブな送信キャリブレーションの素子(8つのアクティブな送信キャリブレーションの素子として動作する素子410-1から410-8など)が存在し、それらがRx素子420における相互干渉の要因となる。複数のアクティブな送信キャリブレーションの素子による相互干渉を低減するために、キャリブレーション信号を直交化してもよい。いくつかの例では、OFDMサブキャリアの割り当てによって、複数のキャリブレーション信号が直交化される場合がある。したがって、サブキャリア周波数に対するOFDM直交性が導入され、サブキャリア相互干渉は存在しない。別の例では、複数のキャリブレーション信号は、複数のOFDMシンボルの複数のグループに対する2値直交コード変調によって直交化されてもよい。バイナリ直交コードを使用すると、CDMAコードが時間領域(すなわち、IFFT(逆高速フーリエ変換)後)の複数のOFDMシンボル(のグループ)に適用される。これにより、時間領域(タイムドメイン)で直交性が導入され、アクティブな送信キャリブレーションの素子間の干渉を低減するために使用される。バイナリ直交コード変調によって直交化された後、全てのアクティブな送信キャリブレーションの素子(例えば、8つの)にわたるキャリブレーション信号は、CDMAの意味で相互に直交する。図9は、OFDMシンボル群の2値直交コード変調によってキャリブレーション信号を直交させ、OFDMシンボルをキャリブレーションに使用する方法の一例を示す図であり、これについてはさらに後述する。
【0051】
アクティブにキャリブレーションする8個のTx素子(8つのアクティブなTxキャリブレーション素子)の例では、長さ8の直交するBPSKコード(すなわち、直交CDMAコード)がキャリブレーション中の各Tx素子に割り当てられ(図9のステップ611)、直交BPSKコードの長さは直交するBPSKコードのビットの数(X)である。直交BPSKコードの長さは、群遅延、位相誤差および振幅誤差を適切に制限するように適切に選択され、キャリブレーション中のTx素子の数と等しいか、またはそれ以上である必要がある。したがって、8個のアクティブなTxキャリブレーション素子は、8の直交するBPSKコードを持つことができる。各グループの時間領域のOFDMシンボルは、対応するコードビットの値(+/-1)を乗算され、それに応じて対応するコードビットによって変調される。図6の例では、4つの時間領域のOFDMシンボルE1_S1_2、E1_S1_3、E1_S1_4が同じグループにあり、それぞれ対応するコードビットB1で変調される。BPSKコードは、より多くのアクティブなTx素子が用いられる場合は、より長くすることができる。
【0052】
素子ごとに送信されるOFDMシンボルの総数を複数(例えば8個)の等しいグループ(同等のグループ)に分離(スプリット)する(ステップ612)。図6およびステップ612を参照すると、送信素子ごとの時間領域のOFDMシンボルの総数が複数のグループに分離(または分割)され、それらのグループの数は、それぞれの直交するBPSKコードのビットの数(X)に等しく、各コードビット(例えば、B1、B2、B3、・・・、B8)は、所定の送信素子で送信される全ての時間領域のOFDMシンボル(例えば、チャネルS1のE1_S1_1~E1_S1_Q)のうちの、複数の時間領域のOFDMシンボル(例えば、チャネルS1のE1_S1_1、E1_S1_2、E1_S1_3、E1_S1_4)のそれぞれのグループをカバーする(例えば、変調する)。なお、ここでのXは直交BPSKコードのビット数である。
【0053】
OFDMシンボルの複数の(例えば8つの)グループの各々をそれに対応するコードビットで乗算する(ステップ613)。図6および図9を参照すると、直交BPSKコードの個々のコードビットは、全時間領域のOFDMシンボルのうちの複数の時間領域のOFDMシンボルのそれぞれのグループを変調するために使用される。図6の例では、チャネルS1に対して、コードビットB1は、時間領域のOFDMシンボルの第1のグループ(GR-1)のE1_S1_1、E1_S1_2、E1_S1_3、E1_S1_4を変調するために使用され、コードビットB2は、時間領域のOFDMシンボルの第2のグループ(GR-2)のE1_S1_5、E1_S1_6、E1_S1_7、E1_S1_8を変調するために使用され、他についても同様である。例えば、時間領域のOFDMシンボルのE1_S1_2はB1で変調され、B1E1_S1_2に変換され、時間領域のOFDMシンボルのE1_S1_5はB2で変調され、B2E1_S1_5に変換される。
【0054】
グループ化(ステップ612など)および/または変調(ステップ613など)といった同じまたは類似の処理は、3つのアクティブなLTEキャリア(C1、C2、C3)に対応する3つのチャネル(S1、S2、S3)に対して並列に実行することができ、ここで、3つのアクティブなLTEキャリア(C1、C2、C3)は周波数で分離されているため、図6にも示される3つのチャネル(S1、S2、S3)のシンボルを変調するために同じ直交コードを使用することができる。グループ化(ステップ612など)および/または変調(ステップ613など)といった同じまたは類似の処理は、各キャリブレーション素子に対して異なるコードを使用して、8つのTxアクティブなキャリブレーション素子に対して並行に実行することができる。複数のキャリブレーション素子に対する異なるBPSKコードは、それら複数のキャリブレーション素子にわたって互いに直交する。
【0055】
ステップ614および図6を参照すると、複数のOFDMシンボルを順次送信する。隣接するグループとの間にOFDMシンボル期間(時間)のギャップが存在し得るが、受信機(受信側)がグループ境界の両側のOFDMシンボルをスキップすれば、そのような1つのOFDMシンボル期間のギャップは必要ではない。複数のOFDMシンボルは、順次(順番に、すなわち、時間領域において次々に)送信される。
【0056】
LTEキャリアの帯域幅が異なり、キャリブレーション信号の帯域幅をそれぞれのLTEキャリアの帯域幅に一致させる必要がある場合、それぞれのBPSK-OFDMシンボルがそれぞれのLTEキャリアの帯域幅と同じになるように、帯域幅が異なる固有のBPSK-OFDMシンボルをそれぞれのLTEキャリアに合わせて選択することができる。BPSK-OFDMシンボルは、OFDMシンボルがそれぞれの(対応する)コードビットによって変調された結果のシンボルである。例えば、BPSK-OFDMシンボルB1E1_S1_2は、OFDMシンボルE1_S1_2が対応するコードビットB1で変調された結果のシンボルである。
【0057】
これらの固有のOFDMシンボル(例えば、BPSK-OFDMシンボル)は、予め計算され、メモリデバイス(図1の記憶装置126など)に、例えば、直接、時間領域の複数のサンプルとして、または処理装置(図1の処理装置125など)によってIFFT(逆高速フーリエ変換)処理されるか、または処理され得る複数のBPSKシーケンスとして記憶されてもよい。処理装置125は、例えば、マイクロプロセッサーであってもよい。記憶装置126は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)であってもよい。
【0058】
ユニークな(固有の)BPSK-OFDMシンボルは、低PAPRを持つようにランダム化シミュレーション(または他の方法)によって選択または決定することができる。
【0059】
例えば、ランダム化(無作為化)シミュレーションによって~7dBのPAPRのシンボルを見つけることは、シミュレーション時間という点では現実的である。
【0060】
アクティブなLTEキャリアごとに、固有のBPSK-OFDMシンボルを何度も繰り返すことで、対応するキャリブレーション信号が生成される。
【0061】
シンボルの繰り返し回数は、キャリブレーション性能の目標を満たすために必要な処理の利得(ゲイン、プロセッシングゲイン、ノイズの平均化)に依存する。例えば、キャリブレーション信号の検出(位相、振幅、タイミング精度)を満たすために平均化が実行されたり、繰り返される。
【0062】
一部の例では、受信信号処理において最初と最後のOFDMシンボルが破棄されるため、OFDMシンボルを3回以上繰り返す必要があってもよい。
【0063】
図7は、20MHz帯域幅のキャリブレーション信号のスペクトル例を示している。例えば、キャリブレーション信号の例示的なスペクトルは、以下のような仕様か、またはそれに対応するように構成することができる。
‐Fs(サンプリング周波数)=20Msps
‐IFFTポイント数 N-IFFT=2048
‐アクティブキャリア=1843(90%)
‐変調=BPSK(低PAPRのためにシミュレーションで最適化されたシーケンス)
‐シンボルタイム=0.1024ms
‐サブキャリア間隔=9.765KHz
‐許容可能な最大遅延=0.1024ms
【0064】
いくつかの例では、最大の許容可能(分離可能な)遅延は1/(サブキャリア間隔)に等しい。特定の例では、最大の許容可能な遅延は数100usであってもよい。予想される最大遅延(デジタル経路の固定で既知の遅延を除く)がより短い場合、FFT長をさらに短くすることができ、リソースと電力の点でより効率的である。特定の例では、20MHz帯域幅のキャリブレーション信号のスペクトルの帯域幅利用率は約90%であり、それに応じて有効帯域幅は約18MHzである。
【0065】
図8は、一実施例において、ある受信素子におけるサンプルの収集を示す。Rx素子(例えば420)は、1つまたは複数のTx素子によって使用されるキャリブレーションパルスの開始に対する時間基準(おそらく、インターMicronの同期20MHzクロックドメイン上の既知の整数遅延内)を有することができると予想される。キャリブレーション開始パルスの検出と既知の遅延オフセットから、そのRx素子(アクティブなLTEキャリアデータストリームごとに)は、20Mspsドメイン内の最初のN-IFFTサンプルを破棄した後にサンプルの収集を開始する。
【0066】
Rx素子(例えば420)におけるリアルタイム処理には、受信したRxOFDMシンボルをメモリデバイス(RAMなど)に時間的に蓄積し、および平均化することが含まれる。各アクティブな送信キャリブレーション素子および各チャネルについて、Rx素子により受信された複数のOFDMシンボルは、送信された複数のOFDMシンボルを含むが、時間的に蓄積し、さらに平均化するために、OFDMシンボルグループの端(両端)のOFDMシンボルは除外または破棄される。例えば、800個のOFDMシンボルが8グループに分かれて送信され、各グループに100個のOFDMシンボルがある場合、受信機は(受信では)各グループの最初と最後のOFDMシンボルを破棄し、(100-2)×8=784個のOFDMシンボルを蓄積して平均化することができる。Txキャリブレーションで、素子420がRx素子として動作する例では、蓄積および平均化は、素子420内でまたは素子420によって実行できる。
【0067】
図8を参照すると、Rx素子は、(各アクティブなLTEキャリアデータストリームに対して)キャリブレーションプロセスの開始に対して1つのOFDMシンボル期間をスキップした後にサンプルの収集を開始するため、最初のN-IFFTサンプルに対応する最初のOFDMシンボル(OFDM-1)を破棄するように構成されてもよい。このRx素子は、各グループの最初および最後のOFDMシンボル(例えば、図8の例では第1のグループのOFDM-1およびOFDM-4)を破棄し、各グループの破棄された最初および最後のOFDMシンボル以外の残りのOFDMシンボル(例えば、図8の例に示されるOFDM-2およびOFDM-3を含む)を蓄積(累積)し、平均化するように構成されてもよい(ステップ616)。図8の例では、1つのグループは4つのOFDMシンボルを有する。しかしながら、グループ内のOFDMシンボルの数は、4より大きい値など、他の適切な値とすることができる。
【0068】
このような時間領域(タイムドメイン)での平均化は、キャリブレーション性能の目標を満たすために必要な処理利得(プロセッシングゲイン)が得られるようにすることを意図している。しかしながら、その有効性は以下の仮定に依存する。(1)Rxベースバンド信号に残留搬送波周波数オフセット(CFO)がないか、または残留CFOがほぼゼロである、例えば、受信信号はダウンコンバートされると0Hzとなる。これは重要である、というのは、残留CFOはベースバンドサンプルにおいて時間的に変化する位相シフトを生じさせ、これが非コヒーレントな(位相が不揃いな)サンプルの平均化に繋がるためである。積分時間が非常に長いため(数秒)、非常に小さなCFOでも、この技術の性能を劇的に低下させる可能性がある。
【0069】
(2)Rxベースバンド信号に残留サンプリング周波数オフセット(SFO)がない、すなわちTxDACとRxADCのクロック周波数に0ppmのオフセットと0Hzの不正確さがない。時間的に変化する位相シフトとは別に、SFOはサンプル収集の時間的なドリフトにも繋がる。
【0070】
(3)推定されるパラメーター(遅延、ゲイン、位相)が、サンプル平均期間中一定である。
【0071】
仮定(2)と(3)は、アレイ内の全てのTx素子およびRx素子に共通のクロック源を使用することで満たすことができる。
【0072】
Txキャリブレーションのために、そのRx素子はまた、受信されたOFDMシンボルに、対象となるTx素子およびOFDMシンボルのグループ化に対応する適切なコードビットによって重み付けを行うように構成されてもよい(ステップ615)。例えば、受信されたOFDMシンボル(複数(例えば、8個)のTx素子からのOFDMシンボルの組み合わせである)に、分離したいTxのアクティブなキャリブレーション素子に対応する直交BPSKコードのコードビットを乗算してもよく、それにより、Txのアクティブなキャリブレーション素子のOFDMシンボルを他のTxのアクティブなキャリブレーション素子から分離することができる。OFDMシンボルを重み付けするための乗算は、直交BPSKコードの各コードビットを使用して複数の時間領域のOFDMシンボルのそれぞれのグループを変調するステップ(ステップ613に示す)でOFDMシンボルにコードを適用するときと同様の方法で適用される。これらのコードで重み付けされ受信されたOFDMシンボルを記憶装置(RAMなど)に蓄積して平均化する(ステップ616参照)ことにより、コードで重み付けされ受信されたOFDMシンボルによる相互干渉を抑制することができる。
【0073】
Txキャリブレーションでは、受信されたRxOFDMシンボルを蓄積して平均化するとき(ステップ616)、交差およびシンボル間の干渉を防ぐために、OFDMシンボルグループ間の境界の両側にあるOFDMシンボルが破棄される。
【0074】
仮定1~3が満たされていれば、複数のTxキャリブレーション素子間の干渉はキャンセルされる。原理的には、この干渉をキャンセルする方式は、より長い直交コードを使用することにより、8個以上のTx素子に拡張することができる。
【0075】
上述した受信機(Rx)のリアルタイム処理により、低リソース、低消費電力での実装が可能となる。8個のTx素子と3個のLTEキャリアの全てを並列にキャリブレーションする例では、例えば、×8(Tx/Rx素子)×3(LTEキャリア)=24個のRAMブロックと、これらのRAMブロックにサンプルを蓄積するための関連する「Read-Add-Write(読み出し、追加、書き込み)」処理ユニットを使用して実行できる。
【0076】
複数のアレイ素子間でこれらのリソースを共有するアプローチの効率(面積対電力のトレードオフ)については、実装固有の調査が必要である。この処理が20Mspsドメインで行われることを考慮すると、Rx/Txキャリブレーション中にアイドル状態のTx/Rxデジタルビームフォーマーを1つ無効にすることで、消費電力を補うことが期待できる。
【0077】
図10は、OFDMサブキャリアを割り当てることにより複数のキャリブレーション信号を直交させ、複数のOFDMシンボルをキャリブレーションに使用する方法の一例を示す。このOFDMサブキャリアの割り当てを使用して複数のキャリブレーション信号を直交させる例では、複数のアクティブな送信キャリブレーション素子(8つのアクティブな送信キャリブレーション素子として動作する素子410-1~410-8など)の複数のキャリブレーション信号は、OFDMサブキャリア割り当てによって直交され、複数のアクティブな送信キャリブレーション素子間の相互干渉を低減することができる。例えば、アクティブなLTEキャリアのそれぞれ(C1など)は、アクティブなサブキャリアの複数の重複しないサブセットに分割できる。異なる送信キャリブレーション素子によって送信されるプロトタイプの複数のOFDMシンボルは(その後、何度も繰り返される)、複数の送信キャリブレーション素子に対してキャリブレーション信号が直交するように、アクティブなサブキャリアの複数の重複しないサブセットに割り当てられる(または使用される)ように構築される(図10のステップ621)。例えば、20MHzチャネルをキャリブレーションする場合、1843のアクティブなサブキャリアが使用され、8つのTxキャリブレーション素子がある場合、これらの1843のサブキャリアは、8つのTxキャリブレーション素子間でできるだけ均等に分割することができる。したがって、第1のTxキャリブレーション素子(410-1)によって送信される複数のOFDMシンボルとしては、(1843/8)の整数値である230のサブキャリアを0、8、16、24、32などのインデックスを付して使用することができる。第1のTxキャリブレーション素子(410-2)によって送信される複数のOFDMシンボルとしては、230個のサブキャリアを1、9、17、25、33などのインデックスを付して使用してもよい。素子8によって送信されるOFDMシンボルとしては、230個のサブキャリアを、7、15、23、31などのインデックスを付して使用することができる。したがって、OFDMサブキャリアの割り当てを使用することにより、複数のアクティブな送信キャリブレーション素子にわたって複数のキャリブレーション信号を直交させることができる。
【0078】
個々のTxキャリブレーション素子からの複数のOFDMシンボルは順次送信され(ステップ622)、複数のTxキャリブレーション素子は複数のシンボルを並列に送信するように構成されている。さらに、Rx素子420は、受信されたRxOFDMシンボルの最初のOFDMシンボルを破棄し(任意選択で、受信されたRxOFDMシンボルの最後のOFDMシンボルを破棄してもよいが、受信されたRxOFDMシンボルの最後のOFDMシンボルを破棄する必要はない)、受信されたRxOFDMシンボルの残りのOFDMシンボルをメモリデバイスに蓄積して平均化する(ステップ623)。例えば、Rx素子420は、受信した(受信された)OFDMシンボルをRAMデバイスに蓄積することができる。蓄積されたOFDMシンボルに対してFFTを実行した後、複数のサブキャリアの対応する複数のサブセットを処理することによって、異なる複数のTxチャネルを処理することができる。例えば、同じTxキャリブレーション素子に対応する複数のOFDMシンボルは、他のTxキャリブレーション素子から分離することができ、平均化することができる。OFDMサブキャリアの割り当てを使用して直交化する例では、LTEチャネルごとに1つのRAMブロックを使用すれば、8つのTx素子をカバーするのに十分な場合がある。
【0079】
Rxキャリブレーションの例では、素子420は1つのTx素子として動作し、複数の素子410-1~410-8は複数のRx素子として動作することができ、したがって、複数のTx素子による干渉を抑制するための直交化(OFDMサブキャリア割り当てまたは直交BPSKコードによる)を使用する必要はない。素子420(1つのTx素子として動作)は、複数のOFDMシンボルを順次送信し、OFDMシンボルに対して、OFDMサブキャリア割当または直交BPSKコードによる直交化が不要であり、そのため、直交BPSKコードのコードビットに対するグループ化も不要である。例えば、素子420は、繰り返される時間領域のOFDMシンボルの長いシーケンス(例えば、ギャップなし)を送信する。各Rx素子(410-1~410-8)は、受信されたRxOFDMシンボルの最初のOFDMシンボルを破棄し(任意に、受信されたRxOFDMシンボルの最後のOFDMシンボルを破棄してもよいが、受信されたRxOFDMシンボルの最後のOFDMシンボルを破棄する必要はない)、受信されたRxOFDMシンボルの残りのOFDMシンボルをメモリデバイスに蓄積して平均化する。
【0080】
蓄積された複数のOFDM信号は、キャリブレーションパラメーターの推定のために処理デバイス(図1の処理デバイス125など)によって後処理することができる。特に、蓄積された各シンボルに対して、以下の処理関数(処理機能)を実行することができる。
1) FFTを行い、アクティブなサブキャリアからBPSK(またはQAM)変調を除去する。
2) 「Weighted Normalised Linear Predictor」(WNLP、重み付き正規化線形予測法)を使用して遅延を推定する:
A.B.Awoseyilaらによる「improved single frequency estimation with wide acquisition range」(A.B.Awoseyila,C.Kasparis and B.G.Evans,Electronics Letters,Vol.44(3),pp.245-247;31/01/2008)と題された論文では、時間領域の搬送波周波数推定用の推定器が提案されているが、周波数領域の遅延推定にも適用可能である。比較的低いSNR(SN比、信号対ノイズ比)でもCRB(クラメール・ラオの境界)を達成することが示されている。A.B.Awoseyilaらの論文およびその参考文献に記載されているWNLP推定器と同様の代替案も適用可能である。
3) 位相を推定する:
4) 振幅を推定する:
【0081】
なお、OFDM技術では、帯域内の振幅と位相の変動がある場合、異なる周波数範囲に対して異なるパラメーターの推定値を計算できる。しかし、デフォルトの仮定では、キャリブレーション信号がカバーする全帯域に対して1組のパラメーター推定値が生成される。
パフォーマンス
【0082】
OFDM方式をアレイキャリブレーションに適用する場合、一般に、遅延推定性能に関する設定目標が最も厳しく、そのためキャリブレーション時間全体が左右される。したがって、このセクションでは、OFDM手法の遅延推定性能に焦点を当てる。
【0083】
比較的SNRレベルが低い場合でもクラメール・ラオの境界(CRB)を達成できるものとしてWNLP推定器が示されている。この結果は、OFDMベースのアレイキャリブレーションにおけるアルゴリズムの具体的な適用に関する追加のシミュレーションによって検証された。
【0084】
これに基づき、所定の遅延推定RMSE(二乗平均平方根誤差)目標値(RMSE秒)を達成するために必要なOFDM信号の総時間は、次の式で与えられる:
ここでは以下となる。
‐Fsは、ベースバンドOFDM信号のサンプリング周波数(Hz)
‐SNRは、Fsに等しい帯域幅での信号対雑音比
‐Nは、OFDM信号に含まれるサブキャリアの総数
‐Nは、OFDM信号のアクティブな(ゼロでない)サブキャリア数
【0085】
この式は、処理時間を短縮することはOFDM信号の有効帯域幅に強く依存することを示唆している。したがって、ベースバンドのサンプリング周波数が高く、アクティブなサブキャリアの割合が高いOFDM信号を使用することが設計目標になるはずである。
以下はOFDM信号の帯域幅(ベースバンド帯域幅BW)に対するTの依存性を表すいくつかの例を示す表である。
CDMA-PNコードベースのキャリブレーションとの性能比較例
シミュレーションシナリオ(シミュレーションの条件)
‐8個のTx素子がキャリブレーションの対象となり、1個のRx素子がキャリブレー
ション信号の観測と処理を行う、Txキャリブレーション
‐受信機におけるキャリブレーション信号処理部入力の想定SNR=-15dB
‐OFDMキャリブレーション信号のパラメーターは:
・20Mspsで生成された2048サブキャリアのベースバンドOFDMシンボ
ルで1843サブキャリアがアクティブ(BW(ベースバンド帯域幅)利用率
90%)
・8チップ直交コードで分離された8個のTx素子
‐CDMA-PNキャリブレーション信号のパラメーター:
・10Mcpsの長い複雑なPNコード
・送受信ともに90%の余剰帯域幅を持つRRCフィルタリング
・8つのTx素子間の干渉を最小化する直交コードを使用
・64個の並列相関器を使用して±1チップ間隔をカバー(実効x32オーバーサ
ンプリング)
・ゲイン/位相推定のための相関器のピークを検出し、遅延推定のために3点二次
補間を実行
シミュレーション結果:
【0086】
観測された性能の差は、主にOFDM信号の帯域幅利用率の高さに起因している。特に、両方の信号(OFDMおよびCDMA-PN)がFs=20Mspsでサンプリングされているにもかかわらず、OFDM信号の帯域幅利用率は約90%、CDMA-PN信号は約50%であり、それに応じて、OFDMのキャリブレーション時間は7.2秒で、CDMA-PNのキャリブレーション時間約25秒よりも短い。この観測結果は、表の3番目のシミュレーションケースでも裏付けられている。
【0087】
CDMAが320MHzで動作する相関器を使用するのに対し、OFDM方式はシンプルなサンプルアキュムレータを使用して20MHzで処理を行うため、処理の複雑さと消費電力の点でも大きな利点がある。
【0088】
本開示において、いくつかの実施形態では、キャリブレーション信号は、キャリア信号(LTE、5Gなどを含む3GPP(登録商標)信号など)の上に重畳されることがあり、キャリア信号と実質的に干渉しないので、結果として、OFDM信号に関連するPAPRの増加は、この用途において負の効果ではない。
【0089】
本開示の一態様では、図1図3、および図4を参照すると、アンテナアレイは複数のアンテナ素子(図1の130、図4の410、420など)を含み、複数のアンテナ素子の各々は送信パス(送信経路)を有し、送信キャリブレーションを実行するために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を送信経路に供給するように構成された処理デバイス(図1の125など)を含む。
【0090】
いくつかの例では、図1図3、および図4を参照すると、そのアンテナアレイにおいて、複数のアンテナ素子(130など)はそれぞれ受信パス(受信経路)を有し、処理装置(図1の処理装置125など)は、受信キャリブレーションを実行するために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を受信経路に供給するように構成されている。
【0091】
特定の例では、処理装置(処理装置125など)は、OFDMキャリブレーション信号を搬送波信号に重畳して送信することができ、OFDMキャリブレーション信号の強度(電力)は、搬送波信号の強度(電力)よりも少なくとも1桁小さく、搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させるものではない。例えば、OFDMキャリブレーション信号の強度は、搬送波信号の強度の約1~10%とすることができ、これにより、キャリブレーション信号の強度は、地表において非常に低いレベルで受信され、搬送波信号への干渉を回避できる。
【0092】
別の例では、OFDMキャリブレーション信号は、独立して推定可能であり、所定の時間内に正確なキャリブレーション推定値に結び付けることができる多数のサブキャリアで構成されている。
【0093】
いくつかの例では、送信経路は、ベースバンド/無線周波数コンバーター(ベースバンドから無線周波数へのコンバーター)、発振器、デジタル/アナログコンバーター、送信フロントエンドモジュール、および送信アンテナを含む。
【0094】
特定の例では、受信経路は、無線周波数/ベースバンドコンバーター(無線周波数からベースバンドへのコンバーター)、発振器、アナログ/デジタルコンバーター、受信フロントエンドモジュール、および受信アンテナを含む。
【0095】
別の例では、受信機は、OFDMキャリブレーション信号と重畳された搬送波信号を有することができ、この場合、OFDMキャリブレーション信号の強度(電力)は、搬送波信号の強度(電力)よりも少なくとも1桁小さいため、搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない。
【0096】
さらに別の実施例では、アンテナアレイの処理装置は、複数のアンテナ素子の中から中央に位置するアンテナ素子を選択し、選択された中央に位置する素子は、それら複数のアンテナ素子のうちの複数の直接隣接(直に隣接)するアンテナ素子を有し、それら複数の直接隣接するアンテナ素子の各々は、選択された中央のアンテナ素子に直接隣接(直に隣接)し、その隣接するアンテナ素子の送信経路を介して、複数のOFDMキャリブレーション信号を送信し、選択された中央の素子の受信経路を介して、それら複数のOFDMキャリブレーション信号を受信し、複数の受信されたOFDM信号により(したがって、基づいて)、選択された中央の素子および複数の直接隣接するアンテナ素子の各隣接するアンテナ素子の位相および振幅を計算するように構成されている。
【0097】
本開示のさらに別の態様では、図1図3、および図4を参照すると、アンテナアレイは、複数のアンテナ素子(図1の130、図4の410、420など)を含み、それら複数のアンテナ素子の各々が受信経路を有し、さらに、受信キャリブレーションを実行するために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を受信経路に供給するように構成された処理装置(図1の125など)を含む。
【0098】
いくつかの例では、それら複数のアンテナ素子はそれぞれ送信経路を有し、処理装置は直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を送信経路に供給して受信キャリブレーションを行うように構成されている。
【0099】
特定の例では、処理装置は、OFDMキャリブレーション信号を搬送波信号に重畳し、この場合、OFDMキャリブレーション信号の強度(電力)は、搬送波信号の強度(電力)よりも少なくとも1桁小さく、搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない。
【0100】
別の例では、OFDMキャリブレーション信号は、独立して推定可能で、所定の時間内に正確なキャリブレーション推定値に結び付けることができる多数のサブキャリアで構成されている。
【0101】
いくつかの例では、送信経路は、ベースバンド/無線周波数コンバーター、発振器、デジタル/アナログコンバーター、送信フロントエンドモジュール、および送信アンテナを含む。
【0102】
特定の例では、受信経路は、無線周波数/ベースバンドコンバーター、発振器、アナログ/デジタルコンバーター、受信フロントエンドモジュール、および受信アンテナを含む。
【0103】
別の実施例では、受信機は搬送波信号とOFDMキャリブレーション信号とを重畳し、OFDMキャリブレーション信号の強度(電力)は搬送波信号の強度(電力)よりも少なくとも1桁小さく、搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない。
【0104】
様々な実施例において、処理装置は、複数のアンテナ素子の中から中央に位置するアンテナ素子を選択し、その選択された中央に位置する素子は、それら複数のアンテナ素子のうちの複数の直接隣接(直に隣接)するアンテナ素子を有し、それら複数の直接隣接するアンテナ素子の各々は、選択された中央のアンテナ素子に直接隣接(直に隣接)し、隣接するアンテナ素子の送信経路を介して、複数のOFDMキャリブレーション信号を送信し、選択された中央の素子の受信経路を介して、それら複数のOFDMキャリブレーション信号を受信し、複数の受信されたOFDM信号により(したがって、基づいて)、選択された中央の素子および複数の直接隣接するアンテナ素子の各隣接するアンテナ素子の位相および振幅を計算するように構成されている。
上記には、複数のアンテナ素子であって、各々が送信経路を有する複数のアンテナ素子と、送信キャリブレーションを実行するために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を前記送信経路に供給するように構成された処理装置とを有するアンテナアレイが開示されている。前記複数のアンテナ素子はそれぞれ受信経路を有し、前記処理装置は、受信キャリブレーションを行うために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を前記受信経路に供給するように構成されていてもよい。前記処理装置は、搬送波信号に、前記搬送波信号の強度よりも少なくとも1桁小さい強度の前記OFDMキャリブレーション信号を、前記搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させずに重畳してもよい。前記OFDMキャリブレーション信号は、独立して推定可能であり、かつ、所定の時間内に正確なキャリブレーション推定値に結び付けることができる多数のサブキャリアから構成されていてもよい。前記送信経路は、ベースバンド/無線周波数コンバーターと、発振器と、デジタル/アナログコンバーターと、送信フロントエンドモジュールと、送信アンテナとを含んでもよい。前記受信経路は、無線周波数/ベースバンドコンバーターと、発振器と、アナログ/デジタルコンバーターと、受信フロントエンドモジュールと、受信アンテナとを含んでもよい。前記受信機は、OFDMキャリブレーション信号と重畳された搬送波信号であって、典型的には、前記OFDMキャリブレーション信号の強度は、前記搬送波信号の強度よりも少なくとも1桁小さく、それにより、前記搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない、重畳された搬送波信号を備えていてもよい。前記処理装置はさらに、前記複数のアンテナ素子の中から、中央に位置するアンテナ素子を選択し、その際、前記選択された中央に位置する素子が、複数のアンテナ素子のうちの複数の直接隣接するアンテナ素子を有し、前記複数の直接隣接するアンテナ素子の各々が直接隣接している前記選択された中央のアンテナ素子を選択し、前記複数の隣接するアンテナ素子の送信経路を介して、複数のOFDMキャリブレーション信号を送信し、前記選択された中央の素子の受信経路を介して、前記複数のOFDMキャリブレーション信号を受信し、前記複数の受信されたOFDM信号に基づいて、前記選択された中央の素子と、前記複数の直接隣接するアンテナ素子の各隣接するアンテナ素子との位相および振幅を計算するように構成されていてもよい。前記OFDMキャリブレーション信号が予め計算されていてもよい。
上記には、複数のアンテナ素子であって、各々が受信経路を有する複数のアンテナ素子と、受信キャリブレーションを実行するために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を前記受信経路に供給するように構成された処理装置とを有するアンテナアレイが開示されている。前記複数のアンテナ素子はそれぞれ送信経路を有し、前記処理装置は、受信キャリブレーションを行うために直交周波数分割多重(OFDM)キャリブレーション信号を前記送信経路に供給するように構成されていてもよい。前記処理装置は、搬送波信号に、前記OFDMキャリブレーション信号であって、その強度が、前記搬送波信号の強度よりも少なくとも1桁小さく、前記搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない前記OFDMキャリブレーション信号を重畳してもよい。前記OFDMキャリブレーション信号は、独立して推定可能であり、かつ、所定の時間内に正確なキャリブレーション推定値に結び付けることができる多数のサブキャリアから構成されていてもよい。前記送信経路は、ベースバンド/無線周波数コンバーターと、発振器と、デジタル/アナログコンバーターと、送信フロントエンドモジュールと、送信アンテナとを含んでもよい。前記受信経路は、無線周波数/ベースバンドコンバーターと、発振器と、アナログ/デジタルコンバーターと、受信フロントエンドモジュールと、受信アンテナとを含んでもよい。前記受信機は、前記OFDMキャリブレーション信号と重畳された搬送波信号であって、前記OFDMキャリブレーション信号の強度が、前記搬送波信号の強度よりも少なくとも1桁小さく、前記搬送波信号のPAPRを実質的に悪化させない、重畳された搬送波信号を取得してもよい。前記処理装置はさらに、前記複数のアンテナ素子の中から、中央に位置するアンテナ素子を選択し、前記選択された中央に位置する素子は、前記複数のアンテナ素子のうちの複数の直接隣接するアンテナ素子を有し、前記複数の直接隣接するアンテナ素子の各々が直接隣接している前記選択された中央のアンテナ素子を選択し、前記隣接するアンテナ素子の送信経路を介して、複数のOFDMキャリブレーション信号を送信し、前記選択された中央の素子の受信経路を介して、前記複数のOFDMキャリブレーション信号を受信し、前記複数の受信されたOFDM信号に基づいて、前記選択された中央の素子と、前記複数の直接隣接するアンテナ素子の各隣接するアンテナ素子との位相および振幅を計算するように構成されていてもよい。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10