(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】口腔表面特性検出
(51)【国際特許分類】
A61C 17/22 20060101AFI20240627BHJP
A46B 13/02 20060101ALI20240627BHJP
A46B 15/00 20060101ALI20240627BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20240627BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20240627BHJP
【FI】
A61C17/22 B
A46B13/02
A46B15/00 K
A61C19/04 Z
A61C19/06 A
(21)【出願番号】P 2023571165
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2022063283
(87)【国際公開番号】W WO2022248285
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-11-15
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ブランダオ シルヴァ プリシラ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン マルク トマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルハルト ルッツ クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】スペルト ハンネ アドリアナ アリジャ
(72)【発明者】
【氏名】コーエイマン ヘルベン
(72)【発明者】
【氏名】ハイワレ スジツマル
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529178(JP,A)
【文献】特表2019-532756(JP,A)
【文献】米国特許第10064711(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0137774(US,A1)
【文献】国際公開第2020/212248(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/22
A46B 13/02
A46B 15/00
A61C 19/04
A61C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔ケア装置用の処理ユニットであって、
サンプリング期間にわたって前記口腔ケア装置の1つ若しくは複数の可撓性クリーニング要素にかかる力、及び/又はこの撓みを示す1つ又は複数のセンサ信号を受信し、
前記受信した1つ又は複数のセンサ信号に基づき、前記サンプリング期間に関する前記1つ又は複数の可撓性クリーニング要素の位置及び/又は運動情報を取得し、
前記クリーニング要素の位置及び/又は運動情報に基づき、1つ又は複数の口腔表面特性を決定し、前記1つ又は複数の口腔表面特性が、表面摩擦の尺度を含む、処理ユニット。
【請求項2】
前記1つ又は複数の
口腔表面特性を決定することが、前記位置情報及び/又は運動情報に基づき、前記口腔表面のスティックスリップ状態を検出することを含む、請求項1に記載の処理ユニット。
【請求項3】
前記1つ又は複数の口腔表面特性が、歯のステインレベル、歯のステインカラー、歯表面の物理的な摩耗の尺度、細菌のバイオフィルムの存在、歯石の存在、歯肉病変の存在、及び補綴物の存在の1つ又は複数を含む、請求項1又は2に記載の処理ユニット。
【請求項4】
前記1つ又は複数の口腔表面特性を決定することが、
クリーニング要素の位置情報及び/又は運動情報と口腔表面特性とを関連付けるデータを含むデータベースにアクセスすること、及び/又は
1つ又は複数のクリーニング要素の位置データ及び/又は運動データを含む入力を受け取り、1つ又は複数の口腔表面特性を示す尺度を含む出力を生成するように訓練された、1つ又は複数の機械学習アルゴリズムを使用することを含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の処理ユニット。
【請求項5】
口腔内の位置の関数として、前記決定された1つ又は複数の口腔表面特性のデータ表現を生成するよう更に構成された、請求項1乃至4のいずれかに記載の処理ユニット。
【請求項6】
前記処理ユニットが更に、各サンプリング期間に対して前記決定された口腔表面特性をデータストアに格納することに基づき、ユーザの決定された口腔表面特性の履歴データセットをコンパイルする、請求項1乃至5のいずれかに記載の処理ユニット。
【請求項7】
前記処理ユニットが更に、前記決定された口腔表面特性をユーザに伝える感覚出力を生成する、請求項1乃至6のいずれかに記載の処理ユニット。
【請求項8】
口腔ケア装置であって、
口腔表面と係合する一組の可撓性クリーニング要素と、
前記クリーニング要素にかかる力及び/又はこのたわみを示す1つ又は複数のセンサ信号を生成する1つ又は複数のセンサと、
前記1つ又は複数のセンサ信号を受信する、請求項1乃至7のいずれかに記載の処理ユニットとを有する、口腔ケア装置。
【請求項9】
前記一組のクリーニング要素の少なくとも1つが、弾力性要素により前記口腔ケア装置の表面に取り付けられ、前記弾力性要素は、前記1つ又は複数のセンサの少なくとも1つと動作可能に結合される、請求項8に記載の口腔ケア装置。
【請求項10】
前記一組のクリーニング要素が、クリーニング要素の少なくともサブセットを含み、各サブセットは、材料の変形に基づき電気信号を生成する圧力応答性材料を含み、前記サブセットの各クリーニング要素が、前記1つ又は複数のセンサの少なくとも一部を形成する、請求項8又は9に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項11】
前記口腔ケア装置が、少なくとも1つのクリーニング要素の基部又はクリーニング要素のタフトを取り囲み、前記クリーニング要素又は前記クリーニング要素のタフトの撓みにより機械的に係合する少なくとも1つのリング部材を含み、前記センサ信号は、前記クリーニング要素又はクリーニング要素のタフトにより前記リング要素に及ぼされる力を示す、請求項8乃至10のいずれかに記載の口腔ケア装置。
【請求項12】
前記リング部材が、複数のリングセグメントへと周方向に分割され、前記1つ又は複数のセンサ信号は、前記クリーニング要素又はクリーニング要素タフトにより前記リング部材の各セグメントに及ぼされる力又は圧力を示す、請求項11に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項13】
前記リング部材が、材料の変形に基づき、電気信号を生成する圧力応答性材料を有する、請求項11又は12に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項14】
方法において、
処理ユニットが、サンプリング期間にわたって口腔ケア装置の1つ又は複数の可撓性クリーニング要素にかかる力、及び/又はこの撓みを示す1つ又は複数のセンサ信号を受信するステップと、
処理ユニットが、前記受信した1つ又は複数のセンサ信号に基づき、前記サンプリング期間に関する
可撓性クリーニング要素の位置情報及び/又は移動情報を取得するステップと、
処理ユニットが、前記
可撓性クリーニング要素の位置情報及び/又は運動情報に基づき、1つ又は複数の口腔表面特性を決定するステップであって、前記1つ又は複数の口腔表面特性が、表面摩擦の尺度を含む、ステップとを有する、方法。
【請求項15】
プロセッサ上で実行されるとき、プロセッサに、請求項14に記載の方法を実行させるためのコード手段を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔ケアの分野に関し、特に口腔表面の表面特性の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔表面特性及びその変化を監視することは、口腔の健康及び衛生に役立つ。例えば、歯の着色、歯垢、歯のバイオフィルムの沈着又は歯の表面の摩耗若しくは損傷を監視することは価値がある。口腔補綴物又はインプラントといった他の口腔表面も価値がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、表面特性の監視は、目視評価を用いて手作業で行われなければならない。例えば、歯磨きなどの日常的な口腔ケア活動中に、歯の表面特性を自動的に監視する手段を提供することは有利であろう。
【0004】
監視される一般的な歯の表面特性の一つは、歯の表面の着色(ステイン)である。歯の表面におけるステイン形成はゆっくり発生し、発見するのは難しい。現在、ステインの検出は目視評価を介して行われる。特に、これは、ロベーネ指数若しくはその変形を決定することによるステインの臨床的分類により、又はシェードガイドを用いて行われることができる。
【0005】
歯の外部着色は、歯を着色する物質の摂取などの生活習慣により、歯のペリクルに色が蓄積することで起こる。いくらかの人は、他の人より歯が着色しやすい傾向にある。この傾向に影響する関連要素は、エナメル質の欠損、唾液分泌不全及び口腔衛生状態の不良を含む。後者は最も一般的な要素であり、定期的な歯のクリーニングなどの予防処置、又は研磨、漂白若しくはマイクロアブレージョンなどの改善処置により管理されることができる。
【0006】
歯の着色を監視する手動の方法は、高度な訓練及び制御された照明状態を必要とする。またこの技術は、舌側切歯、頬側臼歯又は歯間領域など、アクセス性の悪い領域には困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特許請求の範囲により規定される。
【0008】
本発明の一側面による実施例によれば、口腔ケア装置用の処理ユニットが提供され、これは、口腔ケア装置の1つ又は複数の可撓性クリーニング要素に加えられた力、及び/又は、口腔ケア装置の1つ又は複数の可撓性クリーニング要素の撓みを示す1つ又は複数のセンサ信号を時間期間にわたって受信し、受信した1つ又は複数のセンサ信号に基づき、1つ又は複数の可撓性クリーニング要素の時間期間にわたる位置情報及び/又は運動情報を取得し、並びに上記クリーニング要素の位置及び/又は運動情報に基づき、1つ又は複数の口腔表面特性を決定し、上記1つ又は複数の口腔表面特性が、表面摩擦の尺度を含む。
【0009】
可撓性クリーニング要素は、可撓性突出クリーニング要素、例えばクリーニングフィラメント又はロッド又は部材であってもよい。クリーニング要素は例えば、毛又はフィラメントを含むことができる。
【0010】
センサ信号は、サンプリング期間にわたって得られる、又はサンプリング期間をカバーすることができる。取得された位置情報及び/又は運動情報は、サンプリング期間の情報であってもよい。サンプリング期間は例えば、口腔ケア装置の動作セッション、例えば口腔ケア装置の清掃セッションに対応することができる。
【0011】
取得されたセンサ信号は、弾性クリーニング要素の運動特性を示す信号とすることができる。
【0012】
歯の口腔表面特性は時間とともに変化することができ、訓練を受けた専門家による時間のかかる目視評価を必要とする場合がある。これは、歯における届くのが難しい領域に対する信頼性をなくす場合がある。
【0013】
本発明者らは、口腔ケア装置の作動中のクリーニング要素の運動学又は動力学が、表面ステイン又は他の表面変化などの口腔表面特性に依存して測定可能な態様で変化することに気付いた。こうして、使用中のクリーニング要素の運動パターンを検出することにより、これは、表面特性を決定する手段を提供する。問題の口腔表面が歯の表面である場合、本発明者らは、実験データから、歯のペリクル上のステイン及び/若しくは歯垢の蓄積、並びに/又は歯の表面の摩耗若しくは損傷が、歯の表面特性を変化させる場合があることに気付いた。例として、ステインの表面粗さは、ステインがない歯の表面粗さの最大10~15倍大きくなる場合がある。更なる例として、ヒトの唾液-紅茶ベースのステイン表面に対するナイロン毛のin vitroで測定される摩擦係数は、同じ設定におけるステインが付着していない歯に対するナイロン毛の摩擦係数の最大6倍大きいことが判明した。歯の表面のステイン除去及び/又は摩耗若しくは損傷の尺度は、クリーニング要素と歯との間の(静的又は動的)摩擦係数における変化を監視することにより摩擦測定を通して評価されることができる。
【0014】
処理ユニットは、清掃セッション中の口腔表面上でのクリーニング要素の定期的な相互作用を利用して、当該相互作用中のクリーニング要素の力学に関する情報を収集することができる。この情報から、ユーザの労力を増やすことなく、及び届きにくい場所でも口腔表面特性を評価することが可能である。口腔ケア装置は、非限定的な例として、電動歯ブラシ又はブラッシング用マウスピース装置とすることができる。
【0015】
取得された位置情報は、基準軸又は基準原点、例えばクリーニング要素がそこから延びる支持面又は本体に垂直な軸に対するクリーニング要素の角度姿勢を含むことができる。取得された位置情報は、基準座標系における1つ又は複数のクリーニング要素の遠位先端の位置情報を含むことができる。
【0016】
位置及び/又は運動情報は、複数のクリーニング要素の各々についてであってもよく、又は複数のクリーニング要素の少なくともサブセットに関連する集計データ若しくは平均データであってもよい。
【0017】
クリーニング要素の位置及び/又は運動情報は、運動パターン、運動速度、運動速度における変化(加速度)のようなクリーニング要素の運動学的又は動力学的情報を含むことができる。1つ又は複数の表面特性は、追加的又は代替的に、クリーニング要素により経験される力パターン、例えば、信号サンプリング期間にわたる時間の関数としての(法線方向又はせん断方向の1つ又は複数の)力の変動に基づかれることができる。
【0018】
口腔表面の摩擦の尺度は、摩擦係数とすることができる。
【0019】
1つ又は複数のセンサは、3Dダイナモメーター(例えば圧電式);1つ若しくは複数の歪みゲージ;静電容量式ゲージ;ホールセンサ;ファイバーブラッググレーティング;及び/又はファブリーペローセンサのいずれか1つ又は複数を含むことができる。
【0020】
決定された1つ又は複数の表面特性は、口腔表面の構造的変化、例えば、表面上の生物学的コーティング材料(例えば、バイオフィルム、歯科結石又は歯石)の存在、及び/又は表面構造的損傷(歯の摩耗又は破損の形態)を示す1つ又は複数の尺度を含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の表面特性を決定することは、位置情報及び/又は運動情報に基づき、口腔表面のスティックスリップ状態を検出することを含み得る。
【0022】
表面摩擦の高い表面にわたり引っ張られると、物体はスティックスリップ運動を示すことが多い。これは、物体がゼロ運動期間(スティック)で中断される1つ又は複数の過渡的な運動期間(スリップ)を含む不連続な運動を示すことを意味する。物理的には、これは物体を引っ張る力が、物体と表面との間の静止摩擦に打ち勝つのに必要な最小の力よりも下に落ちる(即ち位置エネルギーの谷に落ちる)ことを繰り返すことに対応する。
【0023】
スティックスリップ運動は、高い表面摩擦の歯面にわたり引っ張られるクリーニング要素に見られることができる。本発明者らにより、着色した歯にはより高い表面摩擦が存在することが見出された。従って、歯表面のスティックスリップ状態を特定することで、表面摩擦及び/又は着色の存在のインジケーションが得られることができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の口腔表面特性は、歯の着色レベル、歯のステインカラー、歯の表面の物理的な摩耗の尺度(例えば表面の侵食)、細菌性バイオフィルムの存在及び/又はカテゴリー、歯石の存在、歯肉又は歯における病変の存在、補綴物又はインプラントなどの歯列矯正用構造物といった非生物学的構造物の存在及び状態、のいずれか1つ又は複数を含む。
【0025】
例えば、歯の着色レベル又はステインカラーを決定することで、ロベーネ指数又は歯のシェードガイドのような手動のステイン評価法を置換又は補うことが可能である。
更に、決定された口腔表面特性は、目視による評価と比較して、口腔内の届きにくい領域でも容易に得ることができる場合がある。歯のステインの尺度は、いくつかの例では表面摩擦の尺度に基づき得られることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の口腔表面特性を決定することは、クリーニング要素の位置及び/又は運動情報を口腔表面特性に関連付けるデータを含むデータベースにアクセスすることを含むことができる。データベースは、1つ又は複数のルックアップテーブルを有する。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の口腔表面特性を決定することは、1つ又は複数のクリーニング要素の位置データ及び/又は運動データを含む入力を受け取り、1つ又は複数の口腔表面特性を示す尺度を含む出力を生成するように訓練された、1つ又は複数の機械学習アルゴリズムを使用することを有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、口腔表面特性を決定することは、得られたセンサ信号又は導出された位置及び/若しくは運動情報において、1つ又は複数の所定の運動シグネチャ又は運動パターンを検出することを含み得る。例えば、清掃機能のために歯と係合するときクリーニング要素の特定の特徴的な運動パターンは、特定の表面特性に関連付けられることができる。いくつかの例では、プロセッサは、1つ又は複数の運動シグネチャ又はパターンの特性又はパラメータ、例えば、クリーニング要素が歯面にわたり引きずられる際の接触力と運動速度との比、又は振動運動の振幅を検出するよう構成され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、処理ユニットは、決定された1つ又は複数の口腔表面特性のデータ表現を、特性が関係する表面の口腔内の位置の関数として生成するよう構成され得る。これは、得られた口腔表面特性の空間マップを提供するものとして理解されることができる。マップは、データが取得される際に、得られた口腔表面特性と口腔ケア装置のクリーニング要素の口腔内の位置とを関連付けることに基づき生成されてもよく、この情報から口腔表面マップが生成されてもよい。口腔表面マップは、ユーザの口腔衛生状態に関する決定された情報を表示する直感的な方法を提供し、歯科医に簡単に伝えられることができる。処理部は、センサ信号データが取得されるサンプリング期間に対応する口内位置データを受信するよう構成され得、このデータは、サンプリング期間中のユーザの口内における1つ又は複数のクリーニング要素の位置を示す。これは、得られた表面特性と位置とが相関される又は関連付けられることを可能にする。
【0029】
いくつかの実施形態では、処理ユニットは、サンプリング期間にわたってセンサ信号を取得するよう構成されることができ、処理ユニットは、各サンプリング期間に関して決定された口腔表面特性をデータストアに格納することに基づき、ユーザの決定された口腔表面特性の履歴データセットをコンパイルするように更に適合される。
【0030】
サンプリング期間は、口腔ケア装置の動作セッション、例えば清掃セッションに対応することができる。口腔ケア装置の過去の使用による表面特性データの記録を保存することにより、歯のステイン、歯の摩耗、歯の損傷、歯における沈着物の存在、又は他の任意の表面特性などの表面特性の履歴が観察され及び記録されることができる。歯の特性における変化が、口腔内のどこで、どのように発生するかを理解することは、将来的な問題の予防又は軽減のためのフィードバックをユーザに提供することができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、処理ユニットは、決定された口腔表面特性をユーザに伝えるための感覚出力を生成するように更に適合され得る。これは、ユーザにリアルタイムフィードバックを提供し、これは例えば、必要に応じて歯科医に相談するのに使用されることができる。口腔ケア装置により決定された情報は、更なる例では、歯科医に直接伝達されることができる。
【0032】
1つ又は複数の実施形態によれば、処理ユニットは、例えばユーザにより適用される口腔表面に対するクリーニング要素のベースライン適用力を決定するよう構成され得る。口腔表面特性の決定は更に、上記ベースライン適用力に基づかれることができる。
【0033】
適用力は、クリーニング要素にかかる力のベースラインである。測定される摩擦係数は、この適用力又は接触圧に依存する場合がある。従ってこの適用力を考慮することで、摩擦尺度が、適用力に基づき補正又は較正されることができ、精度が向上する。
【0034】
ベースライン力情報は、1つ又は複数の更なる表面特性を決定するために、得られた摩擦尺度と組み合わせて使用されることもできる。摩擦と所与の表面特性との関係は、ベースライン適用力に依存する場合がある。この場合、ベースライン力測定は、得られた更なる表面特性の特異性を向上させることができる。
【0035】
後述するように、場合によっては、摩擦係数とベースライン適用力との関係が対数関係になることもある。しかしながら、それは代替的に、線形関係又は多項式関係など、異なる関係になる場合もある。
【0036】
本発明の更なる態様による実施例は、口腔ケア装置を提供し、これは、口腔表面と係合する柔軟なクリーニング要素のセットと、1つ又は複数のクリーニング要素の力及び/又はたわみを示す1つ又は複数のセンサ信号を生成するよう構成された1つ又は複数のセンサと、上記に概説された、又は以下に説明される、又は本願の請求項による、任意の例又は実施形態による処理ユニットであって、1つ又は複数のセンサ信号を受信するよう構成された処理ユニットとを有する。
【0037】
口腔ケア装置は、非限定的な例として、電動歯ブラシ又はブラッシング用マウスピース装置とすることができる。処理ユニットは、口腔ケア装置内に収容されてもよいし、口腔ケア装置から分離してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、一組のクリーニング要素からの少なくとも1つのクリーニング要素は、弾力性要素により口腔ケア装置の表面に取り付けられることができ、上記弾力性要素は、上記1つ又は複数のセンサの少なくとも1つと動作可能に結合される。
【0039】
弾力性要素は、例えばバネ要素であってもよい。
【0040】
少なくとも1つのクリーニング要素を弾力性要素によりブラシヘッドに取り付けることにより、広範囲のクリーニング要素の位置及び/又は運動情報が正確な態様で決定されることができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のセンサは、歪みゲージ;静電容量式ゲージ;及び/又はホールセンサの少なくとも1つを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、要素の少なくともサブセットはそれぞれ、材料の変形に基づき電気信号(例えば、電荷、電流、電圧)を生成するよう構成された圧力応答性材料を有し、クリーニング要素のサブセットの各々は、1つ又は複数のセンサの少なくとも一部を形成する。
【0042】
圧力応答性材料は、圧電材料、電気活性ポリマー又は導電性エラストマーといった電気活性材料であってもよい。通常のクリーニング要素の位置にセンサを効果的に配置することで、生成される(電気的な)出力信号は、クリーニング要素が経験する力又は変位のより信頼性の高い表現を提供する。いくつかの実施形態では、クリーニング要素のサブセットの各々は、ファイバーブラッググレーティング又はファブリーペローセンサと組み合わされられることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、口腔ケア装置は、少なくとも1つのクリーニング要素の基部、又はクリーニング要素のタフトを取り囲むよう構成され、上記クリーニング要素又は上記クリーニング要素のタフトの撓みにより機械的に係合されるよう構成される少なくとも1つのリング部材を有することができる。上記センサ信号は、上記クリーニング要素又はクリーニング要素のタフトにより上記リング要素に及ぼされる力を示す。
【0044】
リング部材がクリーニング要素のタフトを取り囲む場合、それは好ましくは、タフトリング部材を兼ね、タフトの形状を保持するように作用する。
【0045】
いくつかの実施形態では、リング部材は、複数のリングセグメントへと円周方向に分割されることができ、センサ信号は、クリーニング要素又はクリーニング要素タフトによりリング部材の各セグメントに及ぼされる力を示す。リング部材をセグメント化し、各セグメントで力を検出することで、方向情報が得られることができる。
【0046】
リング部材は、材料の変形に基づき電気信号を生成するよう構成された圧力応答性材料を有することができる。
【0047】
上記の実施形態では、センサ信号は、周方向に連続する、又は周方向に分割された1つ又は複数のリング部材から得られることができ、各リング部材は、単一のクリーニング要素又は複数のクリーニング要素を取り囲むことができる。
【0048】
クリーニング要素のタフトの位置及び/又は運動情報を決定することは、より少ない数のセンサが使用されることを可能にする。
【0049】
リング部材で測定された反力は、クリーニング要素の力及び/又はたわみの代理を提供する。
【0050】
本発明の更なる態様による実施例は、方法を提供し、これは、口腔ケア装置の1つ若しくは複数の可撓性クリーニング要素に及ぼされる力及び/又は1つ若しくは複数の可撓性クリーニング要素のたわみを示す1つ又は複数のセンサ信号を受信するステップであって、1つ又は複数のセンサ信号がサンプリング期間をカバーする、ステップと、受信した1つ又は複数のセンサ信号に基づき、サンプリング期間のクリーニング要素の位置情報及び/又は運動情報を取得するステップと、上記クリーニング要素の位置情報及び/又は運動情報に基づき、1つ又は複数の口腔表面特性を決定するステップであって、上記1つ又は複数の口腔表面特性が、表面摩擦の尺度を含む、ステップとを有する。
【0051】
本発明の更なる態様による実施例は、コード手段を含むコンピュータプログラムを提供し、コード手段は、プロセッサ上で実行可能されるとき、上記若しくは下記に概説される任意の例若しくは実施形態による、又は本願の任意の請求項による方法をプロセッサが実行することをもたらすよう構成される。
【0052】
本発明のこれら及び他の側面が、以下に記載される実施形態から明らかとなり、実施形態を参照して説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】ペリクル-ステイン表面にわたるクリーニング要素通過の回数の関数としての摩擦力を示す実験結果を示す図である。
【
図2】クリーニングセッション中の時間の関数としてのクリーニング要素位置の変化を概略的に示す図である。
【
図3】クリーニングセッション中の時間の関数としての表面摩擦の変化によるクリーニング要素の角度位置の変化を概略的に示す図である。
【
図4】粗い表面と比べた滑らかな表面のクリーニング要素位置の変化を示す図である。
【
図5】きれいな表面と比較した平滑表面のクリーニング要素方向姿勢の変化を示す図である。
【
図6】基準座標系におけるクリーニング要素の姿勢位置の決定を示す図である。
【
図7】クリーニング要素にかかる力を測定する例示的なひずみゲージ構成を示す図である。
【
図8】たわみを感知する圧力応答性材料を有するクリーニング要素の使用を示す図である。
【
図9】クリーニング要素にかかる力を感知する感知リング部材の使用を示す図である。
【
図10】クリーニング要素にかかる力を感知する感知リング部材の使用を示す図である。
【
図11】クリーニング要素にかかる力を感知する感知リング部材の使用を示す図である。
【
図12】クリーニング要素にかかる力を感知する感知リング部材の使用を示す図である。
【
図13】1つ又は複数の実施形態による口腔ケア装置を示す図である。
【
図14】1つ又は複数の実施形態による例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の好適な理解のため、及びその実現方法をより明確に示すため、例示に過ぎない添付の図面が参照される。
【0055】
本発明が、図を参照して説明される。
【0056】
詳細な説明及び具体的な例は、装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示すものの、説明のみを目的としており、本発明の範囲を限定するものとして意図されていない点を理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、側面、及び利点が、以下の説明、添付の請求項、及び添付の図面からより好適に理解されるであろう。図は単なる概略的なものであり、縮尺に合わせて描かれていないことを理解されたい。同一又は類似の部分を示すために図を通して同じ参照番号が使用される点も理解されたい。
【0057】
本発明は、口腔ケア装置の突出したクリーニング要素に関する力及び/又はたわみデータを取得し、力及び/又はたわみデータからクリーニング要素の位置又は運動情報を得ることに基づき、口腔表面特性を決定する手段を提供する。ある時間期間にわたって取得された位置データ又は運動データから、摩擦などの1つ又は複数の表面特性が決定されることができる。表面特性は例えば、歯のバイオフィルムコーティングのような歯の表面付着物、歯の着色、歯の摩耗又は歯の損傷を含む。
【0058】
本発明者らは、着色又はバイオフィルムコーティングのような歯表面の沈着物が、歯表面の滑らかさ又は粘着性のような表面特性における変化をもたらすことに気付いた。以下に更に説明するように、物理的にこれらの変化は歯表面の摩擦係数の変化をもたらす。
【0059】
本発明の実施形態は、使用中の口腔清掃装置のクリーニング要素(毛など)の位置若しくは運動力学、又は使用中のクリーニング要素にかかる力の検出に基づかれる。本発明者らは実験により、表面特性が変化した歯(着色した歯又はステインペリクルに覆われた歯など)をブラッシングするとき、クリーニング要素の運動データが、きれいな表面をブラッシングする場合と比較して、位置、向き(例えば、角度姿勢)、及び動的応答(即ち、加えられた力に対する応答)において検出可能な差異を示すことを確立した。
【0060】
更なる背景として、
図1が参照され、これは、本発明者らにより行われた実験の結果を示す。
【0061】
ステインの除去及び表面摩擦が、回転式トライボメーター設定を用いて評価された。この設定では、ナイロン毛又はナイロンタフト(毛の束を意味する)が、ヒト唾液-紅茶ペリクル-ステインでコーティングしたポリマーに対して摺動された。毛又はタフトにかかる摩擦力及び法線力が終始測定され、摩擦係数が得られた。物体と表面との間の摩擦係数は、物体と表面との間の摩擦力と法線力との比として理解されることができる。これは、表面にわたり物体を動かすときに経験される摩擦力と、物体と表面の間の法線力とを測定することから得られることができる。
【0062】
実験から、着色面に対して摺動されるナイロン毛の摩擦係数は、着色面に対する毛の通過回数が増加するにつれて約0.65から0.35に減少することが分かり、これは、ステインが徐々に除去されることを示す。特に、各毛の通過は、表面のある程度のクリーニングを実行する。完全にクリーニングされた表面では、0.1~0.2の摩擦係数が測定された。こうして、着色された表面は、きれいな表面の6倍程度大きい摩擦係数を示した。これは、毛の通過回数の関数として、又は一様な周波数で振動する毛の時間の関数として摩擦係数を監視することにより、ステイン除去が検出されることができることを意味する。
【0063】
上記の実験結果が
図1に示される。グラフは、摩擦又は接線力(y軸)を時間(x軸)の関数として示す。このグラフは、4つの試行のそれぞれに対する結果を示す。各試行では、異なる個別の長さの複数の同心円状のリング軌道の1つに沿って毛が複数回通過された。ライン22は、半径11mmのリング軌道に沿って通過する10本の毛からの摩擦信号を表し、ライン24は、半径15mmのリング軌道に沿って通過する40本の毛からの摩擦信号を表し、ライン26は、半径19mmのリング軌道に沿って通過する10本の毛からの摩擦信号を表し、ライン28は、半径23mmのリング軌道に沿って通過する40本の毛からの摩擦信号を表す。この試験は、唾液及び紅茶の混合液であらかじめ着色された試験管内(in vitro)歯模型表面で行われた。
【0064】
異なる試験のそれぞれにおいて、個別のリング軌道上を毛が通過する回数が増えるにつれて、摩擦力(y軸)が減少していることがわかる(法線力は一定のまま)。これは従って、歯の表面の摩擦係数が、低下するステインレベルの関数として低下することが予想されることができることを示し、及び従って、摩擦係数が、ステイン若しくは清浄度の代理尺度、又は表面の平滑性に影響を及ぼす可能性のある他の任意の種類の表面コーティングの有無の代理尺度を提供することができることを示す。
【0065】
更に、本発明者らは、毛が擦られる表面に対する毛の位置及び/又は運動パターンと、表面の摩擦レベルとの関係を実証するための実験も行った。例えば、これは
図2に示されており、これは、歯の表面にわたり振動運動パターンで駆動される毛のY方向(接線方向、歯列に平行な方向)における変位を示す。グラフは、第1の表面(ライン32)及び第2の表面(ライン34)にわたり通過する毛のY変位(y軸)を時間(x軸)の関数として示す。見てわかるように、y軸における振動の振幅は、ブラッシング中に歯表面を横切る毛の位置の変化に基づき変化する。
【0066】
第1の表面(ライン32)は、より大きな着色度を示すより高い摩擦を持ち、第2の表面(ライン34)は、歯の低摩擦、低表面着色領域を示す。時間間隔0.05~0.07秒の間に、2つのトレース間に約1mmの変位差が見られる。この時間間隔は、
図2では「A」とラベル付けされる。変位差に加え、信号トレース32には、目に見えるスティックスリップ運動のシグネチャも存在し、これは、毛のスティッキングを示す、ほぼ一定の変位(0.06秒付近)の短いプラトーと、それに続く変位の急激な変化(オーバーシュート変位、又は「スリップ」で特徴付けられる)により特徴付けられる。
【0067】
毛の運動パターンが係合する表面の摩擦レベルの関数として変化することに加え、基準垂直軸に対する毛の平均角度姿勢(又は配向)が、毛が係合する表面に基づき変化することが示される。これは例えば、
図3に示されており、これは、XY、XZ及びYZ平面のそれぞれにおけるシミュレートされた毛の姿勢角度(y軸;度)を、時間(x軸)の関数として示す。実線42は、XY平面の角度姿勢、点線44は、XZ平面の角度姿勢、及び破線46は、YZ平面の角度姿勢である。図示されたシミュレーションでは、A及びCの時間期間の間、毛がきれいな歯表面に適用され、Bの時間期間では、毛が着色された歯の表面に適用された。きれいな歯表面に比べ、着色した歯表面では、毛の角度姿勢(向き)における(約2~7度の)明らかな変化が存在する。
【0068】
上記の実験は、毛の形態のクリーニング要素について行われたが、同じ原理が、エラストマー製のクリーニング突起、他のタイプのクリーニングフィラメント、又はクリーニング要素のタフトのような、他のタイプの突出したクリーニング要素又は部材にも適用されることを理解されたい。
【0069】
次に、口腔ケア装置の突出したクリーニング部材の力又は変位の感知に基づき、並びにクリーニング部材の位置データ及び/又は運動データに上記感知データをマッピングすることに基づき、口腔表面特性又はその代理を検出するための手段を提供する、本発明の複数の実施形態が概説される。測定期間又はサンプリング期間にわたる位置データ及び/又は運動データのパターンの分析から、表面摩擦の尺度を含む表面特性が得られることができる。いくつかの実施形態では、2次表面特性が、決定された表面摩擦の尺度に基づき得られることができる。
【0070】
本発明の少なくとも第1の態様によれば、口腔ケア装置用の処理ユニットが提供され、これは、口腔ケア装置の1つ又は複数の可撓性クリーニング要素にかかる力、及び/又はそのたわみを示す1つ又は複数のセンサ信号を受信し、受信した1つ又は複数のセンサ信号に基づき、1つ又は複数の可撓性クリーニング要素の位置情報及び/又は運動情報を取得し、並びに上記クリーニング要素の位置及び/又は運動情報に基づき、1つ又は複数の口腔表面特性を決定し、上記1つ又は複数の口腔表面特性が、表面摩擦の尺度を含む。
【0071】
決定された1つ又は複数の口腔表面特性を示すデータ出力が生成されることができる。
【0072】
処理ユニットは、上記のステップを実行するための1つ又は複数のプロセッサを有する。処理ユニットは、1つ又は複数のセンサ信号を受信し、オプションで、得られた口腔表面特性を表すデータ出力を出力するために、1つ又は複数のプロセッサと動作可能に結合された入力/出力又は通信モジュールを更に含んでもよい。
【0073】
いくつかの例では、処理ユニットは口腔ケア装置のハウジング内に配置されることができる。いくつかの例では、処理ユニットは口腔ケア装置から分離されていてもよく、例えば、口腔ケア装置に含まれる感知装置と通信可能に結合されたパーソナルコンピューティング装置で具体化される。
【0074】
感知データの処理及び解析(ソフトウェア側)の観点、及び感知データを取得するのに利用されるセンシング装置(ハードウェア側)の観点の両方において、表面特性データを得るためのさまざまなオプションがある。両観点における異なるオプションが以下に、概説される。様々なソフトウェア側のオプションは、様々なハードウェア側のオプションのいずれかと組み合わせられることができることを理解されたい。更に、本発明の一態様において、本発明のソフトウェア側は、例えば処理ユニットに具現化されて単独で提供されることもできるし、コンピュータ実現による方法として提供されることもできる。
【0075】
上述のように、平均的なクリーニング要素の姿勢位置は、歯の表面摩擦に基づき変化することが示される。従って、1つ又は複数の実施形態において、受信されたセンサデータは、センサデータによりカバーされる測定期間又はサンプリング期間にわたる1つ又は複数のクリーニング要素の姿勢位置を示す情報を得るために処理され得る。これは、
図4及び
図5に概略的に示され、図は、支持体54、例えば歯ブラシのヘッドを有し、そこから複数の突出したクリーニング要素又は部材56、例えば毛が外側に延びる例示的な口腔ケアユニットを示す。
図4は、高い表面摩擦を持つ表面58bと比べて、支持体に対するクリーニング要素遠位先端位置又は変位が滑らかな表面58aに対してどのように異なるかを示す。特に、一組のクリーニング要素56の場合、一組のクリーニング要素間の姿勢位置における変化は、摩擦が高い表面の方が摩擦が低い表面よりも大きい。更に、測定期間中、1つのクリーニング要素の姿勢位置の自然静止位置からの平均変位は、摩擦が高い表面ほど大きい。
【0076】
決定されたクリーニング要素の姿勢位置は、
図5に示されるように、クリーニング要素の角度位置又はクリーニング要素の向きを含むことができる。クリーニング要素の姿勢位置は、
図4に示されるように、垂直方向の変位、即ちz方向における変位を更に含むことができる。クリーニング要素の位置は、基準中立点(原点O)に対するクリーニング要素56の遠位先端の変位で表されることができる。ここで、基準中立点は例えば、クリーニング要素に外力が加えられていないときにクリーニング要素の先端が静止する点である。これは
図6に概略的に示され、この図は、原点Oを持つ基準座標系を示し、原点に対して、クリーニング要素の位置が決定されることができる。従って、クリーニング要素の位置の決定は、基準座標系に対する、例えばこの座標系内の基準原点に対するクリーニング要素の遠位先端の推定位置、変位又は角度を決定することを意味し得る。
【0077】
これは、
図6A及び
図6Bに概略的に示されており、各図は、中立の静止位置から、例えば支持体54表面に対して垂直な方向に偏向された単一のクリーニング要素56を示す。クリーニング要素の位置は、基準座標系X、Y、Z内のクリーニング要素の遠位先端部の推定位置で表されることができ、座標系は原点Oを持つ。これは、遠位先端部の位置座標(x、y、z)をもたらす。クリーニング要素は、最大変位を持つことができる。
図6A及び
図6Bはそれぞれ、このX-Y平面におけるクリーニング要素の最大変位を示す、X-Y平面における環状ループ64を概略的に示す。
【0078】
クリーニング要素56の位置は、
図6では3D直交座標で表される。それは代わりに極座標又は円筒座標で表されることもできる。この場合、それは、原点からのクリーニング要素先端の半径方向の距離rと、それぞれx軸及びz軸に対する要素先端の極角及び方位角の組み合わせとで表されることができる。
【0079】
図6は、単一のクリーニング要素の変位を示す。しかしながら、実際には、複数のクリーニング要素の各々の位置は、例えば、複数のクリーニング要素の各々の力、変位及び/又は弾性変形センサの測定値に基づき決定されてもよい。例えば、
図4は、複数のクリーニング要素の各クリーニング要素56の力、変位又は弾性変形を測定するためのひずみゲージ装置62の使用を示す。
図4は、z方向の力、変位及び/又は弾性変形が測定されることを示す。しかしながら更なる例では、2次元又は3次元における力、変位及び/又は弾性変形が測定されることもできる。
【0080】
いくつかの例では、1つ又は複数の口腔表面特性は、複数のクリーニング要素について得られた位置データから導出されることができる。いくつかの例では、口腔表面特性は、測定期間にわたる複数のクリーニング要素の位置又は平均位置の分散の尺度に基づき得られることができる。測定期間は例えば、定期的な口腔清掃セッションであってもよいし、又はそれは、複数のブラッシングセッションであってもよい。複数のブラッシングセッションである場合、位置データは、複数のセッションにわたって平均化されることができる。
【0081】
例えば、時間における所与の瞬間において、又はある時間ウィンドウの過程にわたり、クリーニング要素の位置間に高い変動がある場合、これは表面が高い摩擦レベルを持つことを示す場合がある。他の例では、口腔表面特性は、1つの瞬間における又は時間ウィンドウにわたる位置の時間平均における、1つ又は複数のクリーニング要素の絶対位置に基づき得られることができる。
【0082】
いくつかの実施例では、(単一のクリーニング要素、又は複数のクリーニング要素について)測定されたクリーニング要素位置と、1つ又は複数の表面特性の値とを関連付けるルックアップテーブル又はデータベースが使用され得る。これは、いくつかの実施例では、単一のクリーニング要素又は複数のクリーニング要素のある時間期間にわたる時間平均位置である。
【0083】
1つ又は複数の例によれば、取得されたクリーニング要素の位置又は運動データは、ベースライン又は基準データ、例えば、専門的なクリーニング又はホワイトニング処置により取得されたデータと比較され得る。これは、表面特性の変化を示す、クリーニング要素が示す運動パターンにおけるドリフトが検出されることを可能にする。
【0084】
上記の例では、センサデータはクリーニング要素の位置情報を得るために使用される。追加的又は代替的に、センサデータは、クリーニング要素の運動情報を得るために使用されることができる。運動情報は、時間の関数としてのクリーニング要素の位置若しくはたわみを示すデータ、又は時間の関数としての毛力を示すデータを有し得る。運動情報は、毛の運動学又は力学を示すデータを有することができる。
【0085】
上述したように、クリーニング要素が示す運動パターンは、それが係合する表面の摩擦レベルに基づき変化することが示される。それは、異なる特性を持つ表面に適用されるとき、異なる特徴的な運動パターンシグネチャーを示す場合がある。従って、1つ又は複数の実施形態によれば、処理ユニットは、受信したセンサデータから、センサ信号が受信されたサンプリング期間又は測定期間にわたる時間の関数として、複数のクリーニング要素の各々、又は単一のクリーニング要素の位置の測定値を得るよう構成され得る。これは、サンプリング期間の1つ又は複数のクリーニング要素の運動データと呼ばれることがある。運動データは、追加的又は代替的に、時間の関数としての力、時間の関数としての加速度、時間の関数としての角度姿勢、又は測定期間にわたる時間の関数としての空間的位置若しくは運動を表す他の任意の測定尺度を有することができる。
【0086】
運動データは、1つ又は複数の表面特性を決定するために処理又は分析され、表面特性は少なくとも表面摩擦の尺度を含む。少なくとも一組の実施形態では、運動データは、運動データ内の1つ又は複数の所定の運動シグネチャ又は運動パターンを識別又は抽出するように処理され得、運動シグネチャ又は運動パターンは、特定の口腔表面特性に関連付けられる。例えば、高摩擦表面は、静止状態から非静止状態への運動速度の急激な増加として識別可能なスティックスリップ運動パターンを示すことがある。言い換えれば、クリーニング要素は、表面への(静的な)付着に続き、クリーニング要素が表面から離脱するにつれて、口腔表面を横切る過渡的な動き(スティックスリップ運動)となるパターンを示す。対照的に、低摩擦の表面は滑らかで連続的な運動パターンを示すことがある。
【0087】
追加的又は代替的に、運動データは、運動信号の1つ又は複数の特性、例えばクリーニング要素の振動運動の振幅を決定するために処理され得る。
【0088】
上記のいずれの例においても、取得されたクリーニング要素の位置データ及び/又は運動データは、表面摩擦の尺度を含む表面特性情報を得るために使用される。これは例えば、表面摩擦係数である。位置データ及び/又は運動データから表面摩擦の尺度へのマッピングは、ルックアップテーブル又はデータベースを使用して実行されることができる。更なる例では、それは、サンプリング期間にわたる1つ又は複数のクリーニング要素の位置データ及び/又は運動データを入力として受け取り、クリーニング要素が係合した表面の表面摩擦を示す尺度を出力として生成するように訓練されたニューラルネットワークなどの機械学習アルゴリズムを使用して達成されることができる。
【0089】
1つ又は複数のクリーニング要素にかかる力、及び/又はそのたわみを示すセンサデータを取得する異なる手段が存在する。
【0090】
本発明の更なる態様によれば、口腔ケア装置が提供され、これは、口腔表面と係合する柔軟なクリーニング要素のセットと、1つ又は複数のクリーニング要素にかかる力及び/又は1つ又は複数のクリーニング要素のたわみを示す1つ又は複数のセンサ信号を生成するよう構成された1つ又は複数のセンサであって、1つ又は複数のセンサ信号が、サンプリング期間をカバーする、センサと、上記若しくは後述する任意の実施例若しくは実施形態による、又は本願の任意の請求項による処理ユニットとを有する。
【0091】
1つ又は複数のクリーニング要素は、例えば毛、例えばナイロン毛であってもよい。1つ又は複数のクリーニング要素は、エラストマー製のクリーニング部材、例えばクリーニングロッド又はプローブであってもよい。エラストマー材料は、例えばゴム材料又はシリコーン材料とすることができる。
【0092】
1つ又は複数の実施形態によれば、センサ信号は、それぞれがひずみゲージ、容量ゲージ及び/又はホールセンサを有する1つ又は複数のセンサを使用して得られることができる。
【0093】
1つ又は複数の実施形態によれば、一組のクリーニング要素からの少なくとも1つのクリーニング要素は、弾力性要素により口腔ケア装置の表面に取り付けられることができる。上記弾力性要素は、上記1つ又は複数のセンサの少なくとも1つと動作可能に結合される。弾力性要素は、例えばバネ要素の形をとることができる。バネ要素は例えば、らせんバネ要素、板バネ要素、又は緩いゴムバネ要素を有することができる。
【0094】
一例が
図7に示され、この図は、例示的なひずみゲージ装置にフィットされた例示的なクリーニング要素を示す。クリーニング要素56の近位端は、バネ要素68を介して第1のひずみゲージセンサ66aに結合される。クリーニング要素56の近位端は、第2のひずみゲージセンサ66bにも直接結合される。更なる一対のひずみゲージセンサ66cが、クリーニング要素の近位基部の両側に設けられる。歪みゲージセンサを3箇所に設けることで、遠位端でクリーニング要素にかかる力が3次元において感知されることができる。
【0095】
歪みゲージセンサの代わりに、静電容量式(プレート式)センサ、ホールセンサ、ファイバーブラッググレーティングセンサ及び/又はファブリーペローセンサが使用されることができる。
【0096】
センサ66a、66b、66c及び弾力性要素68は、口腔清掃装置の表面に凹設された空間又は空洞内に受容され得る。
【0097】
口腔ケア機能のための口腔ケア装置の使用中、例えば歯磨き中、弾力性要素は、毛の遠位端に及ぼされる力をセンサ66aに結合するために、それが位置する空間内で撓む。
【0098】
上記で概説した感知要素に加えて、又はその代わりに、1つ又は複数の実施形態によれば、クリーニング要素のセットは、材料の変形に基づき電気信号を生成するよう構成された圧力応答性材料をそれぞれが含むクリーニング要素の少なくともサブセットを有することができる。圧力応答性材料を持つ各クリーニング要素は、1つ又は複数のセンサの少なくとも一部を形成することができる。圧力応答性材料は、電気活性ポリマー及び/又は圧電材料を有することができる。
【0099】
一例が
図8に概略的に示され、これは、複数の可撓性クリーニング要素又は部材56が外側に延びる支持ユニット54を示す。例えば、支持ユニットは歯ブラシのヘッドであってもよく、クリーニング要素は毛又はエラストマークリーニング部材であってもよい。各クリーニング要素は、電気活性ポリマーのような圧力応答性材料で形成された軸方向コア72を有する。図示の例では、軸方向コアは、電流からユーザを保護するために絶縁シースで囲まれている。しかしながら、使用される圧力応答性材料に基づき、これは必須ではない場合がある。更に、図示の実施例では、圧力応答コアは、クリーニング要素の長手方向の全長に沿って延びている。しかしながら、これも必須ではない。圧力応答性材料は、クリーニング要素の長さの一部だけに沿って延びていてもよい。
【0100】
ワイヤのような電気接続トラックは、各クリーニング要素の近位基部から延び、各クリーニング要素の軸方向コアに電気的に接続される。使用中、口腔表面上を通過するクリーニング要素56のたわみが、圧力応答性材料72により生成される電流又は電圧を誘導し、これはクリーニング要素のたわみの関数として変化する。これは、各クリーニング要素コアにより生成される個別のセンシング信号をもたらし、この信号は処理ユニットに伝達される。処理ユニットは例えば、口腔ケア装置のハウジング内に配置されることができ、クリーニング要素と処理ユニットとの間に有線接続が設けられることができる。代替的に、センシング信号は、センシング信号を遠隔処理ユニットに無線送信するよう構成された通信モジュールに結合されてもよい。
【0101】
クリーニング要素に圧力応答性材料を組み込むことで、クリーニング要素は感知及びクリーニングの二重機能を提供する。
【0102】
更なる1つ又は複数の実施形態によれば、口腔ケア装置は、少なくとも1つのクリーニング要素の基部又はクリーニング要素のタフトを取り囲むよう構成された少なくとも1つのリング部材を備えることができる。リング部材は、その撓みによりクリーニング要素又はクリーニング要素のタフトに機械的に係合するよう構成される。センサ信号は、クリーニング要素又はクリーニング要素のタフトによりリング要素に及ぼされる力を示すことができる。リング部材は圧力感知手段を組み込むことができる。リング部材はいくつかの例では、法線力だけでなく、せん断力又は接線力を感知するように動作可能である。
【0103】
図9及び
図10は、この一連の実施形態による例を概略的に示す。複数のクリーニング要素56の各々は、近位基部においてリング部材76で囲まれている。代替的に、各リング部材がクリーニング要素のタフトの基部を取り囲むことができる。
図10は、クリーニング要素のタフトを取り囲む複数のリング部材76を含む、歯ブラシのヘッドなどの例示的な支持ユニット54の平面図を概略的に示す。
【0104】
各リング部材は、材料の変形に基づき電気信号を生成するよう構成された圧力応答性材料を有することができる。圧力応答性材料は例えば、電気活性ポリマー、圧力応答性エラストマー、強誘電体誘電体材料及び/又は圧電体材料とすることができる。代替的に、リング部材の内面に配置された感知要素、例えばリング部材の内面に蒸着及び/又は印刷されたひずみゲージを設けることにより感知が達成されることができる。
【0105】
使用中、クリーニング要素56の撓みが、リング部材76に対して力又は圧力が及ぼされることをもたらし、これは、クリーニング要素の撓み又は力を示す感知信号を提供するため、感知されることができる。法線力はオプションで、法線力を感知できるリング要素に基部を含めることによって感知されることもできる。こうして、リング部材は3Dダイナモメーター又は3D力/モーメントセンサーとして機能する。
【0106】
いくつかの実施形態によれば、リング部材の少なくともサブセットは、複数のリングセグメントに円周方向にセグメント化されてもよい。センサ信号は、クリーニング要素又はクリーニング要素タフトによりリング部材の各セグメントに及ぼされる力を示すことができる。
図11は、リング部材が2つのセグメント76a、76bに分割される一例を示す。
図12は、リング部材が4つのセグメント76a、76b、76c、76dに分割される更なる例を示す。更なる例では、任意の数のセグメントが提供されることができる。リング部材をセグメント化することにより、1つ又は1組のクリーニング要素(例えばタフト)の(より高解像度の)力方向情報又は運動方向情報が得られることができる。
【0107】
以上、センサデータを使用して取得されることができる位置データ及び/又は運動データの例と、センサデータを取得するためのハードウェアオプションの例が説明された。次に、1つ又は複数の口腔表面特性の取得に関する様々なオプションが説明される。
【0108】
口腔表面特性は、非限定的な例として、歯表面特性、歯肉表面特性並びに口腔補綴物及びインプラントの特性を含む。
【0109】
得られた1つ又は複数の口腔表面特性は好ましくは、少なくとも表面摩擦の尺度を含む。前述のように、歯のステインレベルは表面摩擦と相関していることが判明している。
【0110】
1つ又は複数の口腔表面特性は、非限定的な例として、歯のステインレベル、歯のステインカラー、歯の表面に対する物理的摩耗の尺度(例えば、表面の侵食)、細菌性バイオフィルムの存在及び/若しくはカテゴリー、歯石の存在、歯肉における病変の存在、又は補綴物若しくはインプラントのような歯列矯正構造の存在及び状態を含み得る。
【0111】
得られた1つ又は複数の口腔表面特性は、歯表面上の沈着物、例えばバイオフィルム沈着物、歯石又は歯垢の有無の検出を含み得る。この場合、得られた表面特性は、関連するコーティングの有無を示す2値尺度となりうる。これは、摩擦尺度から、又はサンプリング期間におけるクリーニング要素の位置及び/若しくは運動パターンから直接決定することができる。
【0112】
いくつかの例では、処理部は、ユーザの口内における1つ又は複数のクリーニング要素の位置を示す位置データを受信するように更に適合され得る。1つ又は複数の表面特性の決定はいくつかの例では更に、口の位置データに基づかれることができる。
【0113】
1つ又は複数の口腔表面特性を決定することは、クリーニング要素の位置及び/又は運動情報を口腔表面特性に関連付けるデータを含むデータベースにアクセスすることを有し得る。いくつかの例では、データベースは、所定の運動シグネチャ又は運動パターンを1つ又は複数の表面特性に関連付けることができる。システムは、センサデータを処理して、所定の運動シグネチャ又はパターン(存在する場合)を検出及び/又は抽出し、これらを使用して表面特性を決定するよう構成されることができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の表面特性の決定は、サンプリング期間にわたる1つ又は複数のクリーニング要素の位置データ及び/又は運動データを入力として受け取り、クリーニング要素が係合した表面の少なくとも1つの口腔表面特性を示す尺度を出力として生成するように訓練されたニューラルネットワークなどの機械学習アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0115】
前述のように、有利な一連の実施形態において、本方法は、歯の表面の着色を示す尺度を決定することを含む。得られた口腔表面特性は、歯のステインカラーを示す尺度を含むことができる。得られた口腔表面特性は、歯のステインレベルを示す尺度を含むことができる。
【0116】
実験データに基づき、本発明者らは、歯の着色の程度が、表面摩擦係数の尺度により正確に特徴付けられることを見出した。従って、実施形態は、得られた摩擦係数と歯の着色の尺度、例えばロベーネステインインデックスとの間のマッピングを可能にするルックアップテーブル、データベース又は他のマッピング手段を含むことができる。
【0117】
外部的な歯の着色は、口腔衛生状態の悪化から、タバコ又はポリフェノール色原体を多く含む飲料及び酒(コーヒー、紅茶など)といった特定の物質の摂取まで、さまざまな要因を持つことができる。根本的な原因、例えば着色の原因となった物質の種類に基づき、着色の化学組成は変化することができる。着色の化学組成は、表面形状、粗さ、硬度及び他の表面特性にも影響する。従って、1つ又は複数の実施形態によれば、着色の種類、例えばステインカラー又は着色の原因は、得られた摩擦係数に基づき、又はクリーニング要素の位置データ及び/若しくは運動データに基づき決定されることができる。これは例えば、実験データベース及び/又は機械学習ベースの方法に基づき所定のしきい値を使用することにより達成されることができる。
【0118】
1つ又は複数の実施形態によれば、1つ又は複数の得られた表面特性は、表面の構造的、幾何学的、地形的、又は形態学的特性の検出を含み得る。例えば、表面の構造的な形態、形状又は地形の変化は、例えば欠け又は傷などの損傷が発生したことを示す場合がある。この情報は、位置データ及び/又は運動データの解析から得られることができる。例えば、特定の歯をクリーニングする際のクリーニング要素の運動パターンである。
【0119】
1つ又は複数の実施形態によれば、処理ユニットは、サンプリング期間にわたってセンサ信号を取得するよう構成され、処理ユニットは、各サンプリング期間の決定された口腔表面特性をデータストアに格納することに基づき、決定された口腔表面特性の履歴データセットをコンパイルするように更に適合される。例えば、履歴データセットは、ローカル又はリモートのデータストアに保存されることができる。例えば、それは、処理ユニットがインターネット接続を介して通信するクラウドベースのデータストアに保存されることもできる。
【0120】
履歴データセットを使用して、決定された表面特性が経時的に監視され、変化又は傾向が検出されることができる。得られた値は、所定の時間期間、例えば1週間をカバーする複数のブラッシングセッションにわたって平均化され、基準レベル又はベースラインと比較されることができる。基準レベルは、クリーニング処置の直後、例えばホワイトニング処理又は専門的なクリーニングの直後に取得されるレベルであってもよい。基準レベルは、複数のユーザ、又は一般集団について取得されたプールデータから導き出された集団ベースのレベルであってもよい。表面特性における任意の大きな変化は、ユーザに報告されることができる。
【0121】
いくつかの例では、処理部は、ユーザの口腔内における1つ又は複数のクリーニング要素の位置を示す装置位置データを受信するように更に適合され得る。処理部は更に、口腔内の位置の関数として、決定された1つ又は複数の口腔表面特性のデジタル表現を生成するよう構成されることができる。これは、表面特性のマップとして知られるかもしれない。マップは単に、得られた表面特性と、その特性が対応する口の位置とのデータ表現を有することができる。追加的又は代替的に、マップの視覚的表現、例えば口の視覚的描写が生成されることができる。ここで、例えば色ベースの表現又はテキスト表現を使用して、1つ又は複数の表面特性の視覚的表現がその上にオーバーレイされる。装置の位置データは、口腔ケア装置の姿勢を検出するために口腔ケア装置に一体化される慣性測定ユニット(IMU)などの1つ又は複数の位置センサを用いて取得されることができる。一例として、口腔ケア装置の位置追跡を実施する適切な手段が、US2020/069042に概説される。
【0122】
一組の例では、デジタルマッピングは口腔内の歯の着色をマッピングするのに使用されることができる。生じるマップは、デジタルステインマウスマップと呼ばれることもある。これは有利には、臨床医によるトリアージを可能にし、クリーニング、ホワイトニング、歯肉の健康改善のための適切な処置が決定されることができる。その結果に基づきリスク層別化が行われることができる。例えば、荒い歯は、細菌の繁殖が多いことと相関される。
【0123】
臨床医が使用することに加えて、例えば、清掃セッション後にステインマップをレビューすることで、又は清掃セッションを行いながらリアルタイムでステインマップを見ることにより、得られたマップは、ユーザが自身の清掃技術を評価することを可能にする。上述したように、測定された摩擦係数は、ステインレベル又はステインカラーの代理尺度として使用されることができ、及び従ってステイン除去の追跡を可能にする。
【0124】
1つ又は複数の実施形態によれば、処理ユニットは、決定された口腔表面特性をユーザに伝えるための感覚出力を生成するように更に適合され得る。例えば、得られた口腔表面特性情報の視覚的表現が生成され、表示装置に出力されることができる。表示装置は補助表示装置であってもよい。それは、処理ユニット及び/又は口腔ケア装置とともにシステムの一部として提供されてもよい。
【0125】
1つ又は複数の実施形態によれば、処理ユニットは、ユーザによる口腔表面に対するクリーニング要素のベースライン適用力を決定するよう構成され得る。口腔表面特性の決定は更に、上記ベースライン適用力に基づかれることができる。
【0126】
適用力は、ユーザが口腔表面に適用することによりクリーニング要素に及ぼされる法線力又は負荷のベースラインである。測定された摩擦係数は、この適用力に依存する。いくつかの場合には、両者の関係が対数の関係になることもある。従ってこの適用力を考慮することで、摩擦尺度が、適用力に基づき補正又は較正されることができ、精度が向上する。
【0127】
較正は、摩擦係数と法線負荷/圧力との間の所定の関係に基づき行われることができる。斯かる関係から、圧力依存性を決定し、それに応じて、測定された摩擦力又は摩擦係数を補正することが可能である。これは、摩擦測定を、異なるベースラインの法線力レベルに対して、より特異的でロバストなものとする。
【0128】
上述のように、本発明の一態様による実施例は、口腔ケア装置を提供する。
【0129】
図13は、歯ブラシの形の例示的な口腔ケア装置90を示す。歯ブラシは、本願に開示される任意の実施形態による、又は本願の任意の請求項による、処理ユニット82を含むハウジングを持つハンドル部分92を有する。この装置は、ハンドル部に着脱自在に結合されたヘッド部分を有する。ヘッド部は、支持体54を形成する遠位端のブラシヘッド部を有し、その表面から外向きに延びる毛の形態の複数のクリーニング要素を有する。ブラシヘッド部は、1つ又は複数のクリーニング要素にかかる力及び/又は1つ又は複数のクリーニング要素のたわみを示す1つ又は複数のセンサ信号を生成するよう構成された1つ又は複数のセンサを有する。
【0130】
装置90は好ましくは、モータ84と、クリーニング要素の振動運動を誘発するためにブラシヘッド部に振動力を加えるドライブトレイン機構とを更に有する。装置90は好ましくは、モータに電力を供給するための充電式バッテリーを更に有する。
【0131】
図13は、歯ブラシの形態の口腔ケア装置を示すが、更なる実施形態によれば、他のタイプの口腔ケア装置が提供されてもよい。非限定的な例として、口腔ケア装置は、ブラッシング用マウスピース装置、口腔洗浄装置又は電動フロス装置を有し得る。
【0132】
本発明の更なる態様による実施例は、システムを提供し、このシステムは、上記で概説した若しくは以下に説明する任意の実施例若しくは実施形態による、又は本願の請求項のいずれかによる処理部と、口腔表面と係合する一組の可撓性クリーニング要素を含む口腔ケア装置と、1つ又は複数のクリーニング要素にかかる力及び/又は1つ又は複数のクリーニング要素のたわみを示す1つ又は複数のセンサ信号を生成するよう構成された1つ又は複数のセンサとを有する。
【0133】
本発明の更なる態様による実施例は、方法を提供する。
図14は、例示的な方法のブロック図である。本方法は、口腔ケア装置の1つ又は複数の可撓性クリーニング要素にかかる力及び/又はその撓みを示す1つ又は複数のセンサ信号を受信するステップ102と、受信した1つ又は複数のセンサ信号に基づき、クリーニング要素の位置及び/又は運動情報を取得するステップ104と、クリーニング要素の位置及び/又は運動情報に基づき、1つ又は複数の口腔表面特性を決定するステップ106であって、上記1つ又は複数の口腔表面特性が、表面摩擦の尺度を含む、ステップとを有する。この方法は、コンピュータ実現方法とすることができる。
【0134】
上述したように、1つ又は複数の口腔表面特性は、非限定的な例として、ステインの存在、表面摩耗、生物学的コーティング材料(例えば、歯石又はバイオフィルム)又は非生物学的材料(インプラント、クラウン)を含み得る。
【0135】
本発明の更なる態様による実施例は、コード手段を含むコンピュータプログラムを提供し、コード手段は、プロセッサ上で実行可能されるとき、上記若しくは下記に概説される任意の例若しくは実施形態による、又は本願の任意の請求項による方法をプロセッサが実行することをもたらすよう構成される。
【0136】
上述したように、実施形態は、データ処理を実行するために1つ又は複数のプロセッサを使用する。1つ又は複数のプロセッサは、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、複数の態様で実現されることができる。プロセッサは通常、1つ又は複数のマイクロプロセッサを使用し、必要な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされることができる。プロセッサは、一部の機能を実行する専用ハードウェアと、他の機能を実行する1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連回路との組み合わせとして実現されることもできる。
【0137】
本願の様々な実施形態で採用され得る回路の例は、以下に限定されるものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0138】
様々な実現において、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM及びEEPROMなどの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ又は複数の記憶媒体と関連付けられることができる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラで実行されるとき、必要とされる機能を実行する1つ又は複数のプログラムでエンコードされていてもよい。様々な記憶媒体は、プロセッサ若しくはコントローラ内に固定されていてよく、又はそこに格納される1つ若しくは複数のプログラムがプロセッサにロードされることができるように、搬送可能であってもよい。
【0139】
開示された実施形態への変形は、図、開示、及び添付の請求項の検討から、請求項に記載された発明を実施する当業者により理解及び実施されることができる。特許請求の範囲において、「有する」という語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外するものではない。
【0140】
1つのプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載された複数の項目の機能を果たすことができる。
【0141】
ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0142】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに、又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体に格納/配布されることができるが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介してなど、他の形態で配布されることもできる。
【0143】
特許請求の範囲又は明細書において、「~よう適合」という用語が使用される場合、「~よう適合」という用語は「~よう構成された」という用語と同等であることが意図されることに留意されたい。
【0144】
特許請求の範囲に記載される任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。